説明

蛍光ランプ

【課題】石英ガラス製の発光管を有し、紫外線を放射する蛍光ランプにおいて、発光管内外の温度差が大きくても蛍光体層の剥離がない構造を提供することである。
【解決手段】前記発光管の内表面であって光取出領域以外の領域にシリカ粒子を主成分とする紫外線反射層を形成し、この紫外線反射層の内側であって当該発光管の全周に石英ガラスよりも軟化点が低い物質からなるガラス層を形成し、このガラス層の内側に蛍光体層を形成するとともに、前記紫外線反射層の厚さを30〜500μmとしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は蛍光ランプに関するものであり、特に、紫外線を放射する蛍光ランプに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
大型テレビなどに使われる液晶パネルの製造工程では、波長300nm〜400nmを中心とする紫外線を放射する光源が求められており、その一つとして、紫外線放射型の蛍光ランプが注目されている。
しかし、従来の紫外線放射型の蛍光ランプの発光管には、一般に、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ珪酸ガラス等のいわゆる硬質ガラスが使われていたが、これら硬質ガラスは紫外線を吸収してしまうため紫外線放射型のランプには望ましくない。
【0003】
そこで、発光管として石英ガラスを用いた蛍光ランプが、例えば、特許文献1,2などに提案されている。石英ガラスは紫外光の透過特性が良く、効率よく光を取り出すことができるからである。
ところで、蛍光ランプの製造工程では、発光管を構成するガラス材料を軟化点付近まで昇温させ、その状態において蛍光体を付着させなければならない。石英ガラスの軟化点温度は1600℃近傍と高温であるため、このような高温まで石英ガラスを加熱させて蛍光体を付着させようとすると、蛍光体自体がその高温によって劣化してしまうという問題があった。
一方で、蛍光体が劣化しないような温度、例えば900℃以下で発光管を加熱することも考えられるが、その場合には、石英ガラスが十分に軟化せず、蛍光体の石英ガラスへの付着が弱くなり、ランプ点灯中に蛍光体が剥がれてしまうという問題が発生してくる。
さらに、石英ガラスと蛍光体が良好に付着できたとしても、ランプの点灯・消灯時に、該ランプの外表面と放電空間内の温度差が大きいと、同様に、蛍光体が剥離することがあり、結果として放射光量を低下させてしまうという不具合がある。特に、液晶パネルの製造工程に用いられる蛍光ランプでは、液晶パネルの温度上昇を抑制するために強い冷却が行われるので、ランプ内外での温度差が大きくなり、上記蛍光体の剥離という不具合は深刻なものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−503046号公報
【特許文献2】特表2007−534128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、石英ガラス製の発光管内に蛍光体層を形成した紫外線反射型の蛍光ランプにおいて、蛍光体層を発光管内表面に強固に付着させるとともに、ランプ内外での温度差が大きくても該蛍光体層が容易には剥離しないようにした構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る蛍光ランプは、発光管の内表面であって光取出領域以外の領域にシリカ粒子を主成分とする紫外線反射層を形成し、該紫外線反射層の内側であって当該発光管の全周に石英ガラスよりも軟化点が低い物質からなるガラス層を形成し、該ガラス層の内側に蛍光体層を形成するとともに、前記紫外線反射層の厚さが30〜500μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の蛍光ランプによれば、紫外線反射層の内側にガラス層を設けたので、蛍光体層との間に石英ガラスよりも軟化点が低いガラス層が介在し、該ガラス層の粒子の表面が軟化する温度まで上昇させることで、蛍光体をガラス層に強固に付着させることができる。
また、該ガラス層が軟化することで、石英ガラス表面と強固に固着させることができる。
そして、シリカ粒子を主成分とする紫外線反射層の厚さを30〜500μmとすることにより、該紫外線反射層に保温機能を持たせることができ、ランプ外部が冷却されて、発光管内と温度差ができたとしても、発光管内表面の蛍光体層が大きく温度変化することがないので、該蛍光体層が剥離するようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の蛍光ランプの軸方向断面図。
【図2】図1のA−A横方向断面図。
【図3】紫外線反射層の厚さによる蛍光体層の剥離実験結果を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の軸方向の断面図であり、図2は、そのA−A横断面図である。
図において、蛍光ランプ1は、全体が扁平形状の石英ガラスからなる発光管2を有する。該発光管2の寸法は例えば、14mm×42mm×650mm、厚さ2mmである。
前記発光管2の上下外表面には対向する一対の外部電極3,3が設けられている。
発光管2から紫外光を取り出す光出射領域2aを除いた発光管2の内表面に紫外線反射層4が設けられている。換言すれば、発光管2の内表面の軸方向に沿う一部の領域を除いて紫外線反射層4が形成され、この紫外線反射層4が形成されていない領域が光出射領域2aを構成する。
そして、前記紫外線反射層4の内側には、前記光出射領域2aも含めて発光管2の内表面全周に亘って、石英ガラスよりも軟化点が低い物質からなるガラス層5が形成されている。
更に、該ガラス層5の内側に蛍光体層6が形成されている。
【0010】
ここでガラス層5を構成する石英ガラスの軟化点(1600℃)よりも低い軟化点のガラスとは、例えば、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、バリウムケイ酸ガラス等を含むガラスである。
また、蛍光体層6を構成する蛍光体は、例えば、ユーロピウム付活ホウ酸ストロンチウム(Sr−B−O:Eu)、セリウム付活アルミン酸マグネシウムランタン(La−Mg−Al:Ce(LAMと称する))、ガドリウム、プラセオジム付活リン酸ランタン(La−P−O:Gd,Pr)などが使われる。これらの蛍光体は、いずれも波長250nm未満の領域の紫外光を吸収して、300〜400nmの波長帯の紫外線に変換する。
【0011】
そして、紫外線反射層4はシリカ粒子(SiO)を主成分としていて、該シリカ粒子は発光管2を構成する材料と同じであるため接着性(接着強度)という点で有利である。
そしてシリカ粒子の粒子径範囲は、例えば、0.1〜2μm、中心粒径(数平均粒子径のピーク値)は0.3μmである。
この粒子径や中心粒径は、紫外線反射を効果的に得るために選択され、粒子径は0.01〜10μm、中心粒径は0.1〜3μmの範囲から選択されることが好ましい。
【0012】
また、発光管2には、発光ガスとして例えば、キセノンが53kPa封入されている。そして、該発光管2の外表面には格子状の金属からなる電極3,3が設けられ、その寸法は例えば、32×500mmである。
【0013】
以上のような構成の蛍光ランプ1において、紫外線反射層4の厚さを変えたランプをそれぞれ製作し、蛍光体層6の剥離の有無を調べる。
ガラス層:厚さ10μm
蛍光体層の厚さ:15μm
実験方法について説明する。不図示の冷却管(外径85mm、厚さ3mmの石英ガラス管)の内部に蛍光ランプ1を光出射部2aが下向きとなるように(実際の照射装置と同じく下向きに照射するため)設置し、冷却管内部に5m/minの空気を流してランプを空冷する。ランプを15分点灯させ、5分消灯する動作を100回繰り返した後、剥離して光出射部に落下した蛍光体層6の有無を確認した。なお、ランプ入力は、350Wである。
【0014】
実験結果を図3に表す。
×:ランプ軸方向全体において蛍光体層の剥離あり
△:実用上問題ない程度の剥離あり
○:蛍光体層の剥離は全くなし
この実験結果より、紫外線反射層4の厚さを30μm以上にすることで蛍光体層6の剥がれを抑制できることが確認された。
この効果は、次のように推察される。紫外線反射層4は主成分としてシリカ粒子を堆積させて形成しているので、その内部に多数の空隙が存在する。この空隙の断熱作用により該紫外線反射層4は保温性能を持つ。つまり、紫外線反射層4を所定厚さ以上に設けたことで、ランプが強く冷却された場合でも、その保温効果によって、ガラス層5や蛍光体層6まで冷却されることがなく、ランプ内部の高温状態との温度差が生じず、加えて、ランプの消灯時における急激な温度低下も抑制されたことで、前記ガラス層5の剥離がなくなり、従って蛍光体層6の剥離もなくなる。
また、紫外線反射層4の厚さを増すことで、保温効果は向上する。ただ、紫外線反射層4は数100μm程度の厚さで形成可能ではあるが、紫外線反射層4自体が剥離することなく形成するには500μm以下であることが好ましい。以上の結果、紫外線反射層4の厚さが30〜500μm、望ましくは、60〜500μmにおいて蛍光体層の剥離を良好に防止できる。
【0015】
以上説明したように、本発明に係る蛍光ランプは、前記発光管の内表面にシリカ粒子を主成分とする紫外線反射層を形成し、この紫外線反射層の内側の全周に石英ガラスよりも軟化点が低い物質からなるガラス層を形成し、このガラス層の内側に蛍光体層を形成したことにより、蛍光体層が発光管に強固に付着するとともに、前記紫外線反射層の厚さを30〜500μmとしたことにより、該紫外線反射層に保温機能を持たせて、ランプ内外での温度差が大きくても蛍光体層が発光管から剥離することがないという効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0016】
1 蛍光ランプ
2 発光管
3 電極
4 紫外線反射層
5 ガラス層
6 蛍光体層




【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラス製の発光管を有し、紫外線を放射する蛍光ランプにおいて、
前記発光管の内表面であって光出射領域以外の領域にシリカ粒子を主成分とする紫外線反射層を形成し、該紫外線反射層の内側であって当該発光管の全周に石英ガラスよりも軟化点が低い物質からなるガラス層を形成し、該ガラス層の内側に蛍光体層を形成してなり、
前記紫外線反射層の厚さが30〜500μmであることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記蛍光ランプは、波長300nm〜400nmの紫外線を主に放射するものであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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