説明

蛍光体ペーストとその製造方法及びそれを用いた蛍光体膜とその製造方法

【課題】バインダー樹脂が不要で、簡単な方法で製造することができ、高い記録密度と耐剥離性とを兼ね備えた蛍光体膜を得ることができる蛍光体ペーストとその製造方法及びそれを用いた蛍光体膜とその製造方法を提供する。
【解決手段】反応性基を有する膜化合物の形成する被膜23で表面が被覆された蛍光体微粒子21と、反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤12とを溶媒と混合することにより蛍光体ペーストを得る。この蛍光体ペーストを第2の反応性基を有する第2の膜化合物の形成する被膜33で表面が被覆された基材31の表面に塗布し、反応性基及び第2の反応性基と架橋反応基との架橋反応により硬化した蛍光体膜10を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体ペーストとその製造方法及びそれを用いた蛍光体膜とその製造方法に関する。より具体的には、蛍光体微粒子の表面に反応性基を導入した反応性蛍光体微粒子と硬化剤とを含む蛍光体ペーストとその製造方法、及び反応性基と硬化剤との架橋反応により蛍光体微粒子を含む塗膜を硬化して得られる蛍光体膜とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CRT(陰極線管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)等の表示装置、蛍光灯等の照明機器、X線増感紙、蓄光蛍光体等に用いられる蛍光体膜の製造のために、蛍光体ペーストが広く用いられている。
従来の蛍光体ペーストは、蛍光体微粒子と、溶媒と、バインダー樹脂とを含んでおり、この蛍光体ペーストを基材に塗布して塗膜を形成した後、乾燥させ、あるいは、更に加熱処理を行い、バインダー樹脂を熱分解させると共に蛍光体微粒子を焼結させ(例えば、特許文献1参照)、或いはバインダー樹脂を硬化させて(例えば、特許文献2参照)、蛍光体膜を形成する。
【0003】
【特許文献1】特開2001−226669号公報
【特許文献2】米国出願公開第2003/0099859号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、特許文献2記載の発光ダイオードのように、形成された蛍光膜中にバインダー樹脂が残留する場合には、蛍光体膜中の蛍光体密度が低くなり発光効率が悪かった。
また、例えば、特許文献1に記載の蛍光体膜のように、塗膜の形成後、バインダー樹脂の熱分解及び蛍光体微粒子の焼結を行う場合には、蛍光体膜中の蛍光体密度を高くすることができるが、製造効率が悪い、蛍光体膜の基材に対する密着性が悪い、プラスチック等を基材に用いることができない等の問題点を有している。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、バインダー樹脂及び焼結の必要がなく、基材との接着性に優れた蛍光体膜を得ることができる蛍光体ペーストとその製造方法、及びそれを用いた蛍光体膜とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的に沿う第1の発明に係る蛍光体ペーストは、分子の一端に反応性基を有する膜化合物の形成する被膜で表面が被覆されている蛍光体微粒子と、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤とを含む。
【0007】
第1の発明に係る蛍光体ペーストにおいて、前記膜化合物はSiを介して前記蛍光体微粒子の表面に共有結合していてもよい。
【0008】
第1の発明に係る蛍光体ペーストにおいて、前記膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る蛍光体ペーストにおいて、前記反応性基がエポキシ基を含む官能基であり、前記硬化剤がイミダゾール化合物であってもよい。
【0010】
第1の発明に係る蛍光体ペーストにおいて、前記反応性基がアミノ基又はイミノ基であり、前記硬化剤が2以上のイソシアネート基を有する化合物であってもよい。
【0011】
第1の発明に係る蛍光体ペーストにおいて、前記反応性基は重合性を有し、光照射により該反応性基の重合を開始させる光硬化剤を更に含んでいてもよい。
また、その場合において、前記光硬化剤がカチオン系光硬化剤であってもよい。
【0012】
第2の発明に係る蛍光体ペーストの製造方法は、反応性基及び表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物を蛍光体微粒子と接触させ、前記表面結合基と前記蛍光体微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された反応性蛍光体微粒子を製造する工程Aと、前記反応性蛍光体微粒子と、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤と、溶媒とを混合する工程Bとを含む。
【0013】
第2の発明に係る蛍光体ペーストの製造方法において、前記工程Aにおいて、未反応の前記膜化合物は洗浄除去され、前記反応性蛍光体微粒子の表面で前記膜化合物が形成する被膜は、単分子膜であることが好ましい。
【0014】
第2の発明に係る蛍光体ペーストの製造方法において、前記表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程Aは、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われてもよい。
【0015】
第2の発明に係る蛍光体ペーストの製造方法において、前記表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程Aは、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われてもよい。
【0016】
第3の発明に係る蛍光体膜は、反応性基を有する膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された蛍光性微粒子と、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤とを含む混合物を、前記架橋反応基と反応して結合を形成する第2の反応性基を有する第2の膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された基材の表面に塗布し、前記反応性基及び前記第2の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により硬化している。
【0017】
第3の発明に係る蛍光体膜において、前記反応性基及び前記第2の反応性基がエポキシ基を含む官能基であり、前記硬化剤がイミダゾール化合物であってもよい。
【0018】
第3の発明に係る蛍光体膜において、前記反応性基及び前記第2の反応性基がアミノ基又はイミノ基であり、前記硬化剤が2以上のイソシアネート基を有する化合物であってもよい。
【0019】
第4の発明に係る蛍光体膜の製造方法は、反応性基及び表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物を蛍光体微粒子と接触させ、前記表面結合基と前記蛍光体微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された反応性蛍光体微粒子を製造する工程Aと、前記反応性蛍光体微粒子、加熱により前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤、及び溶媒とを混合して蛍光体ペーストを製造する工程Bと、基材に、前記架橋反応基と反応して結合を形成する第2の反応性基及び第2の表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する第2の膜化合物を接触させ、前記第2の表面結合基と前記基材の表面との間で結合を形成させ、前記第2の膜化合物で表面が被覆された反応性基材を製造する工程Cと、前記反応性基材の表面に前記蛍光体ペーストの塗膜を形成する工程Dと、前記塗膜を加熱して、前記反応性基と前記架橋反応基との反応、及び前記第2の反応性基と前記架橋反応基との反応により共有結合を形成させて前記塗膜を硬化させる工程Eとを含む。
【0020】
第4の発明に係る蛍光体膜の製造方法において、前記反応性基及び前記第2の反応性基は重合性を有し、前記工程Bにおいて、前記蛍光体ペーストに光照射により前記反応性基及び前記第2の反応性基の重合を開始させる光硬化剤を更に混合し、前記工程Eにおいて、まず前記塗膜の表面のパターン部分のみを選択的に露光し、該パターン部分において前記反応性基及び前記第2の反応性基の重合反応を起こさせ、前記パターン部分のみが前記反応性基及び前記第2の反応性基の重合により硬化した部分硬化塗膜を形成後、前記パターン部分以外の前記塗膜を洗浄除去し、次いで、前記部分硬化塗膜を加熱して、前記反応性基と前記架橋反応基との反応、及び前記第2の反応性基と前記架橋反応基との反応により共有結合を形成させて前記部分硬化塗膜を硬化させ、パターン状の蛍光体膜を製造してもよい。
【0021】
第4の発明に係る蛍光体膜の製造方法において、前記表面結合基及び前記第2の表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程A及びCは、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われてもよい。
【0022】
第4の発明に係る蛍光体膜の製造方法において、前記表面結合基及び前記第2の表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程A及びCは、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われてもよい。
【発明の効果】
【0023】
請求項1〜7記載の蛍光体ペースト、請求項8〜11、20記載の蛍光体ペーストの製造方法においては、蛍光体ペーストに用いられている蛍光体微粒子の表面が、膜化合物の形成する被膜で被覆されており、被膜の表面に存在する反応性基は、蛍光体ペーストに含まれる硬化剤中の架橋反応基との反応により結合を形成する。そのため、蛍光体膜の製造に際し、バインダー樹脂及び高温での焼結が不要である蛍光体ペーストが得られる。
【0024】
特に、請求項2記載の蛍光体ペーストにおいては、膜化合物がSiを介して蛍光体微粒子の表面に共有結合しているので、膜化合物の形成する被膜を蛍光体微粒子の表面に強固に結合固定することができる。
【0025】
請求項3記載の蛍光体ペースト及び請求項9記載の蛍光体ペーストの製造方法においては、膜化合物の形成する被膜が単分子膜であるので、バインダー相当成分を最少にできて、蛍光特性を向上できる。
【0026】
請求項4記載の蛍光ペーストにおいては、エポキシ基を含む反応性基とイミダゾール化合物である硬化剤との架橋反応により、N−CHCH(OH)結合が形成されるので、加熱により強固な結合を形成できる。
【0027】
請求項5記載の蛍光体ペーストにおいては、アミノ基又はイミノ基である反応性基とイソシアネート基との架橋反応により、NH−CONH結合が形成されるので、加熱により強固な結合を形成できる。
【0028】
請求項6記載の蛍光体ペーストにおいては、反応性基は重合性を有し、光照射により反応性基の重合を開始させる光硬化剤を更に含むので、光照射により蛍光体膜を形成することが可能な蛍光体ペーストを得ることができる。
請求項7記載の蛍光体ペーストにおいては、光硬化剤がカチオン系光硬化剤であるので、反応性基として、カチオン重合性を有するエポキシ基を用いることができる。
【0029】
請求項10記載の蛍光体ペーストの製造方法においては、工程Aが、アルコキシシリル基とヒドロキシル基との縮合反応を触媒する、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われるので、工程Aに要する時間を短縮し、蛍光体膜の製造をより高効率に行うことができる。
【0030】
請求項11、20記載の蛍光体ペーストの製造方法においては、工程Aが、アルコキシシリル基とヒドロキシル基との縮合反応を触媒する、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物からからなる群より選択される1又は2以上の存在下で行われるので、工程Aに要する時間を短縮し、蛍光体膜の製造をより高効率に行うことができる。
特に、これらの化合物と上述のカルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の両者が共に存在する場合には、これらの化合物は助触媒として作用するため、工程Aに要する時間をさらに短縮できる。
【0031】
請求項12〜14記載の蛍光体膜、及び請求項15〜18、19記載の蛍光体膜の製造方法においては、反応性基を有する膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された蛍光体微粒子と、反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤とを含む混合物を、第2の反応性基を有する第2の膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された反応性基材の表面に塗布し、反応性基及び第2の反応性基と架橋反応基との架橋反応により蛍光体ペーストの塗膜を硬化させる。そのため、基材と蛍光体膜が一体となり、耐剥離性に優れ蛍光体密度が高い蛍光体膜を、簡便な方法を用いて製造できる蛍光体膜及びその製造方法を提供できる。
【0032】
請求項13記載の蛍光膜においては、エポキシ基を含む反応性基及び第2の反応性基とイミダゾール化合物との架橋反応により、N−CHCH(OH)結合が形成されるので、加熱により強固な結合を形成できる。
【0033】
請求項14記載の蛍光体膜においては、それぞれアミノ基又はイミノ基のいずれかである反応性基及び第2の反応性基とイソシアネート基との架橋反応により、NH−CONH結合が形成されるので、加熱により強固な結合を形成できる。
【0034】
請求項16記載の蛍光体膜の製造方法においては、反応性基及び第2の反応性基が重合性を有しており、蛍光体ペーストに光硬化剤を更に混合し、工程Eにおいて、まず塗膜の表面のパターン部分のみを選択的に露光することにより、パターン部分でのみ重合反応を起こさせて部分硬化塗膜を形成している。したがって、基材の表面への前処理や、レーザーアブレーションによるパターン部分以外の蛍光体膜の除去等の煩雑な操作を行うことなく、パターン状に形成された蛍光体膜を製造できる。
【0035】
請求項17記載の蛍光体膜の製造方法においては、工程A及びCが、アルコキシシリル基とヒドロキシル基との縮合反応を触媒する、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われるので、工程A及びCに要する時間を短縮し、蛍光体膜の製造をより高効率に行うことができる。
【0036】
請求項18、19記載の蛍光体膜の製造方法においては、工程A及びCが、アルコキシシリル基とヒドロキシル基との縮合反応を触媒する、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物からからなる群より選択される1又は2以上の存在下で行われるので、工程A及びCに要する時間を短縮し、蛍光体膜の製造をより高効率に行うことができる。
特に、これらの化合物と上述のカルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の両者が共に存在する場合には、これらの化合物は助触媒として作用するため、工程A及びCに要する時間をさらに短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施の形態に係る蛍光体ペーストの一例である硫化カドミウムペースト及び本発明の第2の実施の形態に係る蛍光体膜の一例である硫化カドミウム硬化膜10について説明する。
硫化カドミウムペーストは、硫化カドミウム微粒子(蛍光体微粒子の一例)21の表面がエポキシ基(反応性基の一例)を有する膜化合物の形成する被膜の一例である単分子膜23で被覆されたエポキシ化硫化カドミウム微粒子(反応性蛍光体微粒子の一例)11と、エポキシ基と反応して結合を形成するイミノ基及びアミノ基(架橋反応基の一例)を有する硬化剤の一例である2−メチルイミダゾール12とを含む。
また、硫化カドミウム硬化膜10は、図1に示すように、硫化カドミウム微粒子21の表面がエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜23で被覆されたエポキシ化硫化カドミウム微粒子11と、エポキシ基と反応して結合を形成するイミノ基及びアミノ基を有する硬化剤の一例である2−メチルイミダゾール12とを含む混合物からなる硫化カドミウムペーストを、エポキシ基(第2の反応性基の一例)を有する第2の膜化合物の単分子膜33で覆われたガラス基材(基材の一例)31であるエポキシ化ガラス基材(反応性基材の一例)13の表面に塗布し、得られた硫化カドミウムペーストの塗膜14(図3参照)を、エポキシ基と架橋反応基との架橋反応により硬化することにより得られる。
【0038】
硫化カドミウムペーストの製造方法は、図2(a)、(b)に示すように、エポキシ基を有する膜化合物を硫化カドミウム微粒子21と接触させ、エポキシ化硫化カドミウム微粒子11を製造する工程Aと、エポキシ化硫化カドミウム微粒子11、2−メチルイミダゾール12(図1)、及び溶媒とを混合して硫化カドミウムペーストを製造する工程Bとを含んでいる。
また、硫化カドミウム硬化膜10の製造方法は、上記の工程A及びBと、ガラス基材31にエポキシ基を有する第2の膜化合物を接触させ、エポキシ化ガラス基材13を製造する工程Cと、エポキシ化ガラス基材13の表面に、工程Bで製造した硫化カドミウムペーストを塗布し、図3に示すような塗膜14を形成する工程Dと、エポキシ基と架橋反応基との架橋反応により塗膜14を硬化させ、硫化カドミウム硬化膜10(図1)を製造する工程Eとを含んでいる。
【0039】
以下、工程A〜Eについてより詳細に説明する。
工程Aでは、エポキシ基を有する膜化合物を硫化カドミウム微粒子21と接触させ、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜23で表面が覆われたエポキシ化硫化カドミウム微粒子11を製造する(図2)。
【0040】
用いることのできる硫化カドミウム微粒子21の粒径に特に制限はないが、10nm〜1μmの範囲内であることが好ましい。硫化カドミウム微粒子21の粒径が10nm未満である場合には、膜化合物の分子サイズの影響が無視できなくなり、粒径が1μmを上回る場合には、形成される硫化カドミウム硬化膜10の厚さに対して硫化カドミウム微粒子21の直径が大きくなり過ぎるため、空隙率が増大して蛍光効率が悪化する。
【0041】
エポキシ基を有する膜化合物としては、硫化カドミウム微粒子21の表面に吸着又は結合し、自己組織化により単分子膜を形成することのできる任意の化合物を用いることができるが、直鎖状アルキレン基の一方の末端にエポキシ基(オキシラン環)を含む官能基を、他方の末端にアルコキシシリル基(表面結合基の一例)をそれぞれ有し、下記の一般式(化1)で表されるアルコキシシラン化合物が好ましい。
【0042】
【化1】

【0043】
化1において、Eはエポキシ基を有する官能基を、mは3〜20の整数を、Rは炭素数1〜4のアルキル基をそれぞれ表す。
用いることのできるエポキシ基を有する膜化合物の具体例としては、下記(1)〜(12)に示したアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0044】
(1) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(2) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(3) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OCH)3
(4) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(5) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(6) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(7) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(8) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(9) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OC)3
(10) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(11) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(12) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
【0045】
ここで、(CHOCH)CHO−基は、化2で表される官能基(グリシジルオキシ基)を表し、(CHCHOCH(CH)CH−基は、化3で表される官能基(3,4−エポキシシクロヘキシル基)を表す。
【0046】
【化2】

【0047】
【化3】

【0048】
エポキシ化硫化カドミウム微粒子11の製造は、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と、アルコキシシリル基と硫化カドミウム微粒子21の表面の水酸基22(図2(a)参照)との縮合反応を促進するための縮合触媒と、非水系の有機溶媒とを混合した反応液中に硫化カドミウム微粒子21を分散させ、室温の空気中で反応させることにより行われる。
【0049】
縮合触媒としては、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート等の金属塩が利用可能である。
縮合触媒の添加量は、好ましくはアルコキシシラン化合物の0.2〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜1質量%である。
【0050】
カルボン酸金属塩の具体例としては、酢酸第1スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクタン酸第1スズ、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄が挙げられる。
【0051】
カルボン酸エステル金属塩の具体例としては、ジオクチルスズビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸エステル塩が挙げられる。
カルボン酸金属塩ポリマーの具体例としては、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジメチルスズメルカプトプロピオン酸塩ポリマーが挙げられる。
カルボン酸金属塩キレートの具体例としては、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジオクチルスズビスアセチルラウレートが挙げられる。
【0052】
チタン酸エステルの具体例としては、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネートが挙げられる。
チタン酸エステルキレート類の具体例としては、ビス(アセチルアセトニル)ジ−プロピルチタネートが挙げられる。
【0053】
アルコキシシリル基と硫化カドミウム微粒子21の表面の水酸基22とが縮合反応を起こし、下記の化4で示されるような構造を有するエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜23を生成する。なお、酸素原子から延びた3本の単結合は硫化カドミウム微粒子21の表面又は隣接するシラン化合物のケイ素(Si)原子と結合しており、そのうち少なくとも1本は硫化カドミウム微粒子21の表面のケイ素原子と結合している。
【0054】
【化4】

【0055】
アルコキシシリル基は、水分の存在下で分解するので、反応は相対湿度45%以下の空気中で行うことが好ましい。なお、縮合反応は、硫化カドミウム微粒子21の表面に付着した油脂分や水分により阻害されるので、硫化カドミウム微粒子21をよく洗浄して乾燥することにより、これらの不純物を予め除去しておくことが好ましい。
縮合触媒として上述の金属塩のいずれかを用いた場合、縮合反応の完了までに要する時間は2時間程度である。
【0056】
上述の金属塩の代わりに、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は2以上の化合物を縮合触媒として用いた場合、反応時間を1/2〜2/3程度まで短縮できる。
【0057】
あるいは、これらの化合物を助触媒として、上述の金属塩と混合(質量比1:9〜9:1の範囲で使用可能だが、1:1前後が好ましい)して用いると、反応時間をさらに短縮できる。
【0058】
例えば、縮合触媒として、カルボン酸金属塩キレートであるジブチルスズビスアセチルアセトナートの代わりにケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3を用い、その他の条件は同一にしてエポキシ化硫化カドミウム微粒子11の製造を行うと、エポキシ化硫化カドミウム微粒子11の品質を損なうことなく反応時間を1時間程度にまで短縮できる。
【0059】
さらに、縮合触媒として、ジャパンエポキシレジン社のH3とジブチルスズビスアセチルアセトネートとの混合物(混合比は1:1)を用い、その他の条件は同一にしてエポキシ化硫化カドミウム微粒子11の製造を行うと、反応時間を20分程度に短縮できる。
【0060】
なお、ここで用いることができるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等が挙げられる。
【0061】
また、用いることができる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸等が挙げられる。
【0062】
反応液の製造には、有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、シリコーン系溶媒、及びこれらの混合溶媒を用いることができる。アルコキシシラン化合物の加水分解を防止するために、乾燥剤又は蒸留により使用する溶媒から水分を除去しておくことが好ましい。また、溶媒の沸点は50〜250℃であることが好ましい。
【0063】
具体的に使用可能な溶媒としては、非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
さらに、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれらの混合物を用いることもできる。
【0064】
また、用いることができるフッ化炭素系溶媒としては、フロン系溶媒、フロリナート(米国3M社製)、アフルード(旭硝子株式会社製)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機塩素系溶媒を添加してもよい。
【0065】
反応液におけるアルコキシシラン化合物の好ましい濃度は、0.5〜3質量%である。
【0066】
反応後、溶媒で洗浄し、未反応物として表面に残った過剰なアルコキシシラン化合物及び縮合触媒を除去すると、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜23で表面が覆われたエポキシ化硫化カドミウム微粒子11が得られる。このようにして製造されるエポキシ化硫化カドミウム微粒子11の断面構造の模式図を図2(b)に示す。
【0067】
洗浄溶媒としては、アルコキシシラン化合物を溶解できる任意の溶媒を用いることができるが、安価であり、溶解性が高く、風乾により容易に除去することのできるジクロロメタン、クロロホルム、N−メチルピロリドン等が好ましい。
【0068】
反応後、生成したエポキシ化硫化カドミウム微粒子11を溶媒で洗浄せずに空気中に放置すると、表面に残ったアルコキシシラン化合物の一部が空気中の水分により加水分解を受け、生成したシラノール基がアルコキシシリル基と縮合反応を起こす。その結果、エポキシ化硫化カドミウム微粒子11の表面にポリシロキサンよりなる極薄のポリマー膜が形成される。このポリマー膜は、エポキシ化硫化カドミウム微粒子11の表面に共有結合により必ずしも全てが固定されているわけではないが、エポキシ基を含んでいるため、エポキシ化硫化カドミウム微粒子11に対してエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜23と同様の反応性を有している。そのため、洗浄を行わなくても、工程C以降の製造工程に特に支障をきたすことはない。
【0069】
なお、本実施の形態においては、膜化合物としてエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を用いたが、直鎖状アルキレン基の一方の末端にアミノ基を、他方の末端にアルコキシシリル基をそれぞれ有し、下記の一般式(化5)で表されるアルコキシシラン化合物を用いてもよい。
【0070】
【化5】

【0071】
上式において、mは3〜20の整数を、Rは炭素数1〜4のアルキル基をそれぞれ表す。
用いることのできるアミノ基を有する膜化合物の具体例としては、下記(21)〜(28)に示したアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0072】
(21) H2N(CH2)Si(OCH)3
(22) H2N(CH2)Si(OCH)3
(23) H2N(CH2)Si(OCH)3
(24) H2N(CH2)Si(OCH)3
(25) H2N(CH2)Si(OC)3
(26) H2N(CH2)Si(OC)3
(27) H2N(CH2)Si(OC)3
(28) H2N(CH2)Si(OC)3
【0073】
反応液において用いることのできる縮合触媒のうち、スズ(Sn)塩を含む化合物は、アミノ基と反応して沈殿を生成するため、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物に対しては縮合触媒として用いることができない。
したがって、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物を用いる場合には、カルボン酸スズ塩、カルボン酸エステルスズ塩、カルボン酸スズ塩ポリマー、カルボン酸スズ塩キレートを除き、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の場合と同様の化合物を単独で又は2種類以上を混合して縮合触媒として用いることができる。
用いることのできる助触媒の種類及びそれらの組み合わせ、溶媒の種類、アルコキシシラン化合物、縮合触媒、及び助触媒の濃度、反応条件並びに反応時間についてはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
なお、本実施の形態では、蛍光体微粒子として硫化カドミウム微粒子を用いたが、他の蛍光体微粒子を用いることもできる。用いることができる蛍光体微粒子としては、酸化物、リン酸化物、ハロゲン化物等の母体中に希土類又はマンガン等の不純物を添加したプラズマディスプレイ用蛍光体、ZnS:Ag,Cl、ZnS:Cu,Au,Al、YS:Eu等のCRT用蛍光体、NaI、ZnS等の放射線ルミネッセンス用蛍光体、ZnS、ZnCdS、CaS、ZnSe等の母体に活性成分として銅ハロゲン化物、Mn、希土類等を添加したEL(エレクトロルミネッセンス)用蛍光体等が挙げられる。
【0075】
硫化カドミウム微粒子以外の蛍光体微粒子であっても、その表面に水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する場合には、硫化カドミウムの場合と同様に、膜化合物としてアルコキシシラン化合物を用いることができる。また、硫化物蛍光体の場合には、例えば、P−S結合を介して硫黄原子に配位することができるアルキルホスフィン化合物を用いることができる。
(以上工程A)
【0076】
工程Bでは、エポキシ化硫化カドミウム微粒子11、2−メチルイミダゾール12、及び溶媒とを混合して硫化カドミウムペーストを製造する。
2−メチルイミダゾール12はエポキシ基と反応するアミノ基及びイミノ基をそれぞれ1−位及び3−位に有しており、下記の化6に示すような架橋反応により結合を形成する。
【0077】
【化6】

【0078】
2−メチルイミダゾール12の添加量は、エポキシ化硫化カドミウム微粒子11の5〜15重量%が好ましい。2−メチルイミダゾール12の添加量がエポキシ化硫化カドミウム微粒子11の5重量%未満だと、製造させる硫化カドミウム硬化膜10の強度が低くなり、15重量%を上回ると、硫化カドミウムペーストがゲル化を起こしやすくなる等ハンドリングが悪化する。硫化カドミウムペーストの製造には、2−メチルイミダゾール12が可溶な任意の溶媒を用いることができるが、価格、室温での揮発性、及び毒性等を考慮すると、イソプロピルアルコール、エタノール等の低級アルコール系溶媒が好ましい。
【0079】
硫化カドミウムペーストの製造に用いる溶媒の量は、エポキシ化硫化カドミウム微粒子11の粒径、製造する硫化カドミウム硬化膜10の膜厚等によって適宜定められるため一義的に決定することは困難であるが、得られる硫化カドミウムペーストの粘度が5〜300Pa・sとなる程度の量が好ましく、より具体的にはエポキシ化硫化カドミウム微粒子11及び2−メチルイミダゾール12の10〜50重量%である。具体的には、エポキシ化硫化カドミウム微粒子11の表面を2−メチルイミダゾール12の単分子被膜で被覆するために必要な量に設定すればよい。
エポキシ化硫化カドミウム微粒子11、2−メチルイミダゾール12、及び溶媒の混合は、撹拌ばね、ハンドミキサー等の任意の手段により行うことができる。
【0080】
本実施の形態においては、硬化剤として2−メチルイミダゾールを用いたが、下記化7で表される任意のイミダゾール誘導体を用いることができる。
また、イミダゾール誘導体以外では、メラミン、イソシアヌル酸、トリアジン、バルビツール酸、パラバン酸、ウラシル、チミン等の2個以上の窒素を含む複素環化合物を用いることができる。更に、イミダゾール−金属錯体を用いてもよい。
【0081】
【化7】

【0082】
化7で表されるイミダゾール誘導体の具体例としては、下記(31)〜(38)に示すものが挙げられる。
(31) 2−メチルイミダゾール(R=Me、R=R=H)
(32) 2−ウンデシルイミダゾール(R=C1123、R=R=H)
(33) 2−ペンタデシルイミダゾール(R=C1531、R=R=H)
(34) 2−メチル−4−エチルイミダゾール(R=Me、R=Et、R=H)
(35) 2−フェニルイミダゾール(R=Ph、R=R=H)
(36) 2−フェニル−4−エチルイミダゾール(R=Ph、R=Et、R=H)
(37) 2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(R=Ph、R=Me、R=CHOH)
(38) 2−フェニル−4,5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール(R=Ph、R=R=CHOH)
なお、Me、Et、及びPhは、それぞれメチル基、エチル基、及びフェニル基を表す。
【0083】
また、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる無水フタル酸、無水マレイン酸等の酸無水物、ジシアンジアミド、ノボラック等のフェノール誘導体等の化合物を硬化剤として用いてもよい。この場合、架橋反応を促進するためにイミダゾール誘導体を触媒として用いてもよい。
【0084】
なお、本実施の形態においては反応性基としてエポキシ基を有する膜化合物を用いた場合について説明しているが、反応性基としてアミノ基又はイミノ基を有する膜化合物を用いる場合には、架橋反応基として2若しくは3以上のエポキシ基又は2若しくは3以上のイソシアネート基を有する硬化剤を用いる。イソシアネート基を有する化合物の具体例としては、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート等が挙げられる。
これらのイソシアネート基の添加量は、2−メチルイミダゾールの場合と同様、エポキシ化硫化カドミウム微粒子の5〜15重量%が好ましい。この場合、硫化カドミウムペーストの製造に用いることのできる溶媒としては、キシレン等の芳香族有機溶媒が挙げられる。
また、硬化剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル等の2又は3以上のエポキシ基を有する化合物を用いることもできる。
【0085】
また、反応性基としてエポキシ基を有する膜化合物を用いる場合、硫化カドミウムペーストは、更に、光硬化剤としてカチオン系光重合開始剤を含んでいてもよい。エポキシ基はカチオン重合性を有しているので、この場合には、光照射によるエポキシ基のカチオン重合により、硫化カドミウムペーストの塗膜を硬化することができる。
用いることができる光重合開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩等のカチオン性光重合開始剤が挙げられる。また、光源としては、高圧水銀灯、キセノンランプ等が挙げられる。
(以上工程B)
【0086】
工程Cでは、工程Aにおいて用いた膜化合物と同様のエポキシ基を有する第2の膜化合物をガラス基材31に接触させ、エポキシ基を有する第2の膜化合物の単分子膜33で表面が覆われたエポキシ化ガラス基材13を製造する。
なお、ガラス基材31の大きさ、形状及び厚さには特に制限はない。
【0087】
エポキシ化ガラス基材13の製造は、エポキシ基及びアルコキシシリル基(第2の表面結合基の一例)を含むアルコキシシラン化合物と、アルコキシシリル基とガラス基材31の表面の水酸基との縮合反応を促進するための縮合触媒と、非水系の有機溶媒とを混合した反応液をガラス基材31の表面に塗布し、室温の空気中で反応させることにより行われる。塗布は、ドクターブレード法、ディップコート法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の任意の方法により行うことができる。
【0088】
工程Cにおいて用いることのできるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の種類、縮合触媒、助触媒の種類及びそれらの組み合わせ、溶媒の種類、アルコキシシラン化合物、縮合触媒、及び助触媒の濃度、反応条件並びに反応時間については工程Aと同様であるので、説明を省略する。
【0089】
反応後、溶媒で洗浄し、未反応物として表面に残った過剰なアルコキシシラン化合物及び縮合触媒を除去すると、エポキシ基を有する第2の膜化合物の単分子膜33で表面が覆われたエポキシ化ガラス基材13が得られる。
【0090】
洗浄溶媒としては、工程Aと同様の洗浄溶媒を用いることができる。
反応後、生成したエポキシ化ガラス基材13を溶媒で洗浄せずに空気中に放置すると、表面に残ったアルコキシシラン化合物の一部が空気中の水分により加水分解を受け、生成したシラノール基がアルコキシシリル基と縮合反応を起こす。その結果、エポキシ化ガラス基材13の表面にポリシロキサンよりなる極薄のポリマー膜が形成される。このポリマー膜は、エポキシ化ガラス基材13の表面に共有結合により固定されていないが、エポキシ基を含んでいるため、エポキシ化ガラス基材13に対してエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜33と同様の反応性を有している。そのため、洗浄を行わなくても、工程C以降の製造工程に特に支障をきたすことはない。
【0091】
なお、本実施の形態においてはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を用いたが、工程Aと同様、直鎖状アルキレン基の一方の末端にアミノ基を、他方の末端にアルコキシシリル基をそれぞれ有するアルコキシシラン化合物を用いてもよい。
また、本実施の形態においては工程Aと同一のアルコキシシラン化合物を用いているが、異なるアルコキシシラン化合物を用いてもよい。ただし、工程Cにおいて用いる硬化剤の架橋反応基と反応して結合を形成する反応性基を有するものでなければならない。
【0092】
本実施の形態においては、基材材料としてガラスを用いたが、アルミニウム等の金属、ポリカーボネート等の合成樹脂を用いることもできる。
基材材料の表面に水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する場合には、ガラスの場合と同様に、第2の膜化合物としてアルコキシシラン化合物を用いることができる。この様な基材の具体例としては、アルミニウム等の金属、セラミックス等が挙げられる。
基材材料として合成樹脂を用いる場合には、プラズマ処理等により活性水素基を有する化合物をグラフトする等の処理を行うことにより、アルコキシシラン化合物を用いることができる場合がある。
(以上工程C)
【0093】
工程Dでは、エポキシ化ガラス基材13の表面に硫化カドミウムペーストを塗布し、図3に示すような塗膜14を形成する。
硫化カドミウムペーストの塗布には、ドクターブレード法、スピンコート法、スプレー法等の任意の方法により行うことができる。
形成される塗膜14の膜厚は、硫化カドミウムペーストの粘度、溶媒含量、原料として用いた硫化カドミウム微粒子の粒径、塗布回数等によって適宜制御することができる。
(以上工程D)
【0094】
工程Eでは、塗膜14を加熱し、エポキシ化硫化カドミウム微粒子11及びエポキシ化ガラス基材13上のエポキシ基と2−メチルイミダゾール12との架橋反応により塗膜14を硬化させ、硫化カドミウム硬化膜10を製造する。
加熱温度は、50〜200℃が好ましい。加熱温度が50℃未満だと、架橋反応の進行に長時間を要し、200℃を上回ると、塗膜14の表面で架橋反応が迅速に進行することにより、閉じ込められた溶媒が揮発しにくくなり均一な磁気記録層を有する硫化カドミウム硬化膜10が得られない。
【0095】
なお、本実施の形態においてはエポキシ化ガラス基材を用いたが、工程Cを省略して普通のガラス基材を基材として用いてもよい。
【0096】
工程Eにおいて、架橋反応により形成される結合は、共有結合、イオン結合、配位結合、及び分子間力による結合のいずれであってもよいが、形成される硫化カドミウム硬化膜10の強度及び硫化カドミウムペーストや塗膜14の形成の容易さ等を考慮すると、塗膜14の形成後に、加熱又は光等のエネルギー線の照射により形成される共有結合が好ましい。
加熱により形成される共有結合の具体例としては、エポキシ基とアミノ基又はイミノ基との反応(化8参照)により形成されるN−CHCH(OH)結合、イソシアネート基とアミノ基との反応(化9参照)により形成されるNH−CONH結合等が挙げられる。
【0097】
【化8】

【0098】
【化9】

【0099】
光照射により形成される共有結合の具体例としては、シンナモイル基(化10)又はカルコニル(chalconyl)基(化11)の光二量化反応により形成される共有結合が挙げられる。
【0100】
【化10】

【0101】
【化11】

【0102】
光硬化剤として光カチオン重合開始剤を含む硫化カドミウムペーストを用いた場合には、パターン部分のみ選択的に光を透過するフォトマスクを通して塗膜14の表面に光照射(露光)を行うと、照射を受けたパターン部分でのみ選択的にエポキシ基のカチオン重合を進行させ、露光部分のみを選択的に硬化させることができる。その後、溶媒等を用いて洗浄を行うと、塗膜14中の硬化が進行しなかった部分の硫化カドミウムペーストのみが除去され、パターン状の部分硬化膜が得られる。更に加熱処理を行うことにより、未反応のエポキシ基と2−メチルイミダゾール12とが反応して、パターン状の蛍光体膜が得られる。
露光に用いるマスクとしては、半導体素子の製造等におけるフォトリソグラフィに用いられるレチクル用材料等の、光を透過せず、少なくとも露光の間は照射光による損傷を受けない任意の材質のものを用いることができる。また、露光は等倍露光でもよく、微細なパターンを形成する場合等には縮小投影露光を用いてもよい。
(以上工程E)
【実施例】
【0103】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら制限されるものではない。本実施例においては、代表例として硫化カドミウム微粒子を用いた硫化カドミウム硬化膜の製造について説明する。
【0104】
(実施例1)
(1)エポキシ化硫化カドミウム微粒子の製造
硫化カドミウム微粒子を用意し、よく洗浄して乾燥した。
3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(化12、信越化学工業株式会社製)0.99重量部、及びジブチルスズビスアセチルアセトナート(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン−ジメチルホルムアミド混合溶媒(1:1 v/v)に溶解し、反応液を調製した。
【0105】
【化12】

【0106】
このようにして得られた反応液中に硫化カドミウム微粒子を混合し、撹拌しながら空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物及びジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去すると、膜厚が1nm程度の3−グリシジルオキシプロピルシラン化合物の単分子膜で表面が被覆されたエポキシ化硫化カドミウム微粒子が得られた。
【0107】
(2)硫化カドミウムペーストの製造
(1)で製造したエポキシ化硫化カドミウム微粒子100重量部と、2−メチルイミダゾール7重量部を混合し、これにイソプロピルアルコール40重量部を加えた。得られた混合物を十分混合して硫化カドミウムペーストを得た。
【0108】
(3)エポキシ化ガラス基材の製造
ガラス基材を用意し、よく洗浄して乾燥した。
3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(化12)0.99重量部、及びジブチルスズビスアセチルアセトナート(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン−ジメチルホルムアミド混合溶媒(1:1 v/v)に溶解し、反応液を調製した。
【0109】
反応液をガラス基材板の表面に塗布し、空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物及びジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去した。
【0110】
(4)塗膜の形成、及び硫化カドミウム硬化膜の形成
(2)で製造した硫化カドミウムペーストを、(3)で製造したエポキシ化ガラス基材上に塗布し、膜厚3μmの塗膜を形成した。
室温下でイソプロピルアルコールを蒸発させた後、ガラス基材及びその上に形成された塗膜を170℃で30分間加熱することにより、硫化カドミウム硬化膜を形成した。
【0111】
得られた硫化カドミウム硬化膜は、エポキシ基と2−メチルイミダゾールとの架橋反応により形成された結合を介してエポキシ化ガラス基材の表面に固定されているので、耐剥離強度及び耐久性に優れていた。
【0112】
(実施例2)
(1)アミノ化硫化カドミウム微粒子の製造
硫化カドミウム微粒子(平均粒径100nm)を用意し、よく洗浄して乾燥した。
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(化13、信越化学工業株式会社製)0.99重量部、及び酢酸(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン−ジメチルホルムアミド混合溶媒(1:1 v/v)に溶解し、反応液を調製した。
【0113】
【化13】

【0114】
このようにして得られた反応液中に硫化カドミウム微粒子を混合し、撹拌しながら空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物及び酢酸を除去した。
【0115】
(2)硫化カドミウムペーストの製造、塗膜の形成、及び硫化カドミウム硬化膜の形成
(1)で製造したアミノ化硫化カドミウム微粒子100重量部と、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート9重量部を混合し、これにキシレン40重量部を加えた。得られた混合物を十分混合して硫化カドミウムペーストを得た。
【0116】
(3)アミノ化ガラス基材の製造
ガラス基材を用意し、よく洗浄して乾燥した。
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(化13)0.99重量部、及び酢酸(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン−ジメチルホルムアミド混合溶媒(1:1 v/v)に溶解し、反応液を調製した。
【0117】
反応液をガラス基材板の表面に塗布し、空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物及び酢酸を除去した。
【0118】
(4)硫化カドミウムペーストの製造、塗膜の形成、及び硫化カドミウム硬化膜の形成
(2)で製造した硫化カドミウムペーストを、(3)で製造したアミノ化ガラス基材上に硫化カドミウムペーストを塗布し、膜厚3μmの塗膜を形成した。
室温下でキシレンを蒸発させた後、アミノ化ガラス基材及び塗膜を170℃で30分間加熱することにより、硫化カドミウム硬化膜を形成した。
【0119】
(実施例3)
(1)エポキシ化硫化カドミウム微粒子の製造
実施例1の(1)と同様の方法を用いて、エポキシ化硫化カドミウム微粒子を製造した。
【0120】
(2)光硬化剤を含む硫化カドミウムペーストの製造
(1)で製造したエポキシ化硫化カドミウム微粒子100重量部と、適量の2−メチルイミダゾールと、適量のイルガキュア(登録商標)250((4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート)と炭酸プロピレンとの3:1混合物、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を混合し、これにイソプロピルアルコール40重量部を加えた。得られた混合物を十分混合して硫化カドミウムペーストを得た。
【0121】
(3)エポキシ化ガラス基材の製造
実施例1の(3)と同様の方法を用いて、エポキシ化ガラス基材を製造した。
【0122】
(4)塗膜の形成、及びパターン状の硫化カドミウム硬化膜の形成
(2)で製造した硫化カドミウムペーストを、(3)で製造したエポキシ化ガラス基材上に塗布し、膜厚3μmの塗膜を形成した。
室温下でイソプロピルアルコールを蒸発させた後、フォトマスクを用いて254nmの遠紫外線を照射すると、露光部のみが硬化した。これをエタノールで洗浄すると、硬化部のみを残すパターン状の部分硬化膜が得られた。更に、170℃で30分間加熱することにより、パターン状の硫化カドミウム硬化膜を形成できた。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第2の実施の形態に係る蛍光体膜の断面構造を模式的に表した説明図である。
【図2】同蛍光体膜の製造方法において、エポキシ化硫化カドミウム微粒子を製造する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前の硫化カドミウム微粒子の断面構造、(b)はエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜が形成された硫化カドミウム微粒子の断面構造をそれぞれ表す。
【図3】同蛍光体膜の製造方法において、硫化カドミウムペーストの塗膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図である。
【符号の説明】
【0124】
10:硫化カドミウム硬化膜、11:エポキシ化硫化カドミウム微粒子、12:2−メチルイミダゾール、13:エポキシ化ガラス基材、14:塗膜、21:硫化カドミウム微粒子、22:水酸基、23:エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜、31:ガラス基材、33:エポキシ基を有する第2の膜化合物の単分子膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子の一端に反応性基を有する膜化合物の形成する被膜で表面が被覆されている蛍光体微粒子と、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤とを含むことを特徴とする蛍光体ペースト。
【請求項2】
請求項1記載の蛍光体ペーストにおいて、前記膜化合物はSiを介して前記蛍光体微粒子の表面に共有結合していることを特徴とする蛍光体ペースト。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の蛍光体ペーストにおいて、前記膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることを特徴とする蛍光体ペースト。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛍光体ペーストにおいて、前記反応性基がエポキシ基を含む官能基であり、前記硬化剤がイミダゾール化合物であることを特徴とする蛍光体ペースト。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛍光体ペーストにおいて、前記反応性基がアミノ基又はイミノ基であり、前記硬化剤が2以上のイソシアネート基を有する化合物であることを特徴とする蛍光体ペースト。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光体ペーストにおいて、前記反応性基は重合性を有し、光照射により該反応性基の重合を開始させる光硬化剤を更に含むことを特徴とする蛍光体ペースト。
【請求項7】
請求項6記載の蛍光体ペーストにおいて、前記光硬化剤がカチオン系光硬化剤であることを特徴とする蛍光体ペースト。
【請求項8】
反応性基及び表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物を蛍光体微粒子と接触させ、前記表面結合基と前記蛍光体微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された反応性蛍光体微粒子を製造する工程Aと、前記反応性蛍光体微粒子と、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤と、溶媒とを混合する工程Bとを含むことを特徴とする蛍光体ペーストの製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の蛍光体ペーストの製造方法において、前記工程Aにおいて、未反応の前記膜化合物は洗浄除去され、前記反応性蛍光体微粒子の表面で前記膜化合物が形成する被膜は、単分子膜であることを特徴とする蛍光体ペーストの製造方法。
【請求項10】
請求項8及び9のいずれか1項に記載の蛍光体ペーストの製造方法において、前記表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程Aは、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われることを特徴とする蛍光体ペーストの製造方法。
【請求項11】
請求項8及び9のいずれか1項に記載の蛍光体ペーストの製造方法において、前記表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程Aは、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われることを特徴とする蛍光体ペーストの製造方法。
【請求項12】
反応性基を有する膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された蛍光性微粒子と、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤とを含む混合物を、前記架橋反応基と反応して結合を形成する第2の反応性基を有する第2の膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された基材の表面に塗布し、前記反応性基及び前記第2の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により硬化していることを特徴とする蛍光体膜。
【請求項13】
請求項12記載の蛍光体膜において、前記反応性基及び前記第2の反応性基がエポキシ基を含む官能基であり、前記硬化剤がイミダゾール化合物であることを特徴とする蛍光体膜。
【請求項14】
請求項12記載の蛍光体膜において、前記反応性基及び前記第2の反応性基がアミノ基又はイミノ基であり、前記硬化剤が2以上のイソシアネート基を有する化合物であることを特徴とする蛍光体膜。
【請求項15】
反応性基及び表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物を蛍光体微粒子と接触させ、前記表面結合基と前記蛍光体微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された反応性蛍光体微粒子を製造する工程Aと、前記反応性蛍光体微粒子、加熱により前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤、及び溶媒とを混合して蛍光体ペーストを製造する工程Bと、基材に、前記架橋反応基と反応して結合を形成する第2の反応性基及び第2の表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する第2の膜化合物を接触させ、前記第2の表面結合基と前記基材の表面との間で結合を形成させ、前記第2の膜化合物で表面が被覆された反応性基材を製造する工程Cと、前記反応性基材の表面に前記蛍光体ペーストの塗膜を形成する工程Dと、前記塗膜を加熱して、前記反応性基と前記架橋反応基との反応、及び前記第2の反応性基と前記架橋反応基との反応により共有結合を形成させて前記塗膜を硬化させる工程Eとを含むことを特徴とする蛍光体膜の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の蛍光体膜の製造方法において、前記反応性基及び前記第2の反応性基は重合性を有し、前記工程Bにおいて、前記蛍光体ペーストに光照射により前記反応性基及び前記第2の反応性基の重合を開始させる光硬化剤を更に混合し、前記工程Eにおいて、まず前記塗膜の表面のパターン部分のみを選択的に露光し、該パターン部分において前記反応性基及び前記第2の反応性基の重合反応を起こさせ、前記パターン部分のみが前記反応性基及び前記第2の反応性基の重合により硬化した部分硬化塗膜を形成後、前記パターン部分以外の前記塗膜を洗浄除去し、次いで、前記部分硬化塗膜を加熱して、前記反応性基と前記架橋反応基との反応、及び前記第2の反応性基と前記架橋反応基との反応により共有結合を形成させて前記部分硬化塗膜を硬化させ、パターン状の蛍光体膜を製造することを特徴とする蛍光体膜の製造方法。
【請求項17】
請求項15及び16のいずれか1項に記載の蛍光体膜の製造方法において、前記表面結合基及び前記第2の表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程A及び工程Cは、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われることを特徴とする蛍光体膜の製造方法。
【請求項18】
請求項15及び16のいずれか1項に記載の蛍光体膜の製造方法において、前記表面結合基及び前記第2の表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程A及び工程Cは、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われることを特徴とする蛍光体膜の製造方法。
【請求項19】
請求項17記載の蛍光体膜の製造方法において、前記工程A及び工程Cは、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われることを特徴とする蛍光体膜の製造方法。
【請求項20】
請求項10記載の蛍光体ペーストの製造方法において、前記工程Aは、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われることを特徴とする蛍光体ペーストの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−303277(P2008−303277A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150768(P2007−150768)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】