説明

蛍光偏光hERGアッセイ法

試験化合物を被験者における心毒性のその誘発能に関してスクリーニングするためのアッセイ法、方法、およびキットを開示する。特に、試験化合物が、ヒトにおける心電図によって測定した場合にQ-T間隔を延長する影響があるか否かについてである。本明細書において開示されるアッセイ法、方法、およびキットは、新規蛍光トレーサーとhERG K+チャネルとの間の結合相互作用、および試験化合物がその結合相互作用に影響を及ぼす性向を利用する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C. §119(e)の下で、その開示の全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、2008年2月28日に提出された米国特許仮出願第61/032,390号、2008年2月29日に提出された米国特許仮出願第61/032,604号、および2008年2月29日に提出された米国特許仮出願第61/032,809号の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、心血管安全性アッセイ法の分野、特に被験者における心毒性の誘発能に関して試験化合物をスクリーニングするためのアッセイ法、方法、およびキットに関する。本明細書において開示されるアッセイ法、方法、およびキットは、hERG K+チャネルと新規蛍光トレーサー化合物との相互作用に基づき、その相互作用は、高レベルのhERG K+チャネル発現を有するように操作された細胞株からの膜調製物によって利用される。本明細書において開示されるアッセイ法、方法、およびキットは、ヒトにおける心再分極に対して望ましくない影響、特に心電図においてQ-T間隔を延長する性向を有する化合物を同定するために有用でありうる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ヒトether-a-go-go関連遺伝子(hERG)は、大きく影響して心室の再分極をもたらす急速遅延内向き整流カリウムチャネル(IKr)をコードする(Curran, M. E.; Splawski, I.; Timothy, K. W.; Vincent, G. M.; Green, E. D.; Keating, M. T., A molecular basis for cardiac arrhythmia: HERG mutations cause long QT syndrome. Cell 1995, 80, (5), 795-803(非特許文献1);Sanguinetti, M. C; Jiang, C; Curran, M. E.; Keating, M. T., A mechanistic link between an inherited and an acquired cardiac arrhythmia: HERG encodes the IKr potassium channel. Cell 1995, 81, (2), 299-307(非特許文献2);Trudeau, M. C; Warmke, J. W.; Ganetzky, B.; Robertson, G. A., HERG, a human inward rectifier in the voltage-gated potassium channel family. Science 1995, 269, (5220), 92-5(非特許文献3);およびWarmke, J. W.; Ganetzky, B., A family of potassium channel genes related to eag in Drosophila and mammals. Proc Natl Acad Sci U S A 1994, 91, (8), 3438-42(非特許文献4)を参照されたい)。心室の筋肉内のチャネルの中を流れるIKr再分極電流の遮断によって、Q-T間隔の延長、トルサード・ド・ポワントと呼ばれる特徴的な心電図パターン、および場合によっては致死性不整脈が起こりうる(Sanguinetti, M. C; Tristani-Firouzi, M., hERG potassium channels and cardiac arrhythmia. Nature 2006, 440, (7083), 463-9(非特許文献5);およびHaverkamp, W.; Breithardt, G.; Camm, A. J.; Janse, M. J.; Rosen, M. R.; Antzelevitch, C; Escande, D.; Franz, M.; Malik, M.; Moss, A.; Shah, R., The potential for QT prolongation and proarrhythmia by non-antiarrhythmic drugs: clinical and regulatory implications. Report on a policy conference of the European Society of Cardiology. Eur Heart J 2000, 21, (15), 1216-31(非特許文献6)を参照されたい)。本明細書においてhERG K+チャネルと呼ばれるこのチャネルが多様な組の化学構造に結合するという乱雑な性質(Cavalli, A.; Poluzzi, E.; De Ponti, F.; Recanatini, M., Toward a pharmacophore for drugs inducing the long QT syndrome: insights from a CoMFA study of HERG K(+) channel blockers. J Med Chem 2002, 45, (18), 3844-53(非特許文献7)を参照されたい)と共に、その相互作用により出現する可能性がある潜在的致死的転帰のために、日米EU医薬品規制調和国際会議(International Congress of Harmonization)および米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)は、全ての新薬候補物質が、天然型または組換え型で発現されたヒトhERGタンパク質を用いる機能的パッチクランプアッセイ法において試験を受けるようにという勧告に至った(Bode, G.; Olejniczak, K., ICH topic: the draft ICH S7B step 2: note for guidance on safety pharmacology studies for human pharmaceuticals. Fundam Clin Pharmacol 2002, 16, (2), 105-18(非特許文献8)を参照されたい)。自動のハイスループットパッチクランプ法が最近開発されているが、そのようなシステムは専門のオペレータ、生きた細胞、および実質的な設備投資を必要とする(Bridgland-Taylor, M. H.; Hargreaves, A. C; Easter, A.; Orme, A.; Henthorn, D. C; Ding, M.; Davis, A. M.; Small, B. G.; Heapy, C. G.; Abi-Gerges, N.; Persson, F.; Jacobson, I; Sullivan, M.; Albertson, N.; Hammond, T. G.; Sullivan, E.; Valentin, J. P.; Pollard, C. E., Optimisation and validation of a medium-throughput electrophysiology-based hERG assay using IonWorks HT. J Pharmacol Toxicol Methods 2006, 54, (2), 189-99(非特許文献9);およびDubin, A. E.; Nasser, N.; Rohrbacher, J.; Hermans, A. N.; Marrannes, R.; Grantham, C; Van Rossem, K.; Cik, M.; Chaplan, S. R.; Gallacher, D.; Xu, J.; Guia, A.; Byrne, N. G.; Mathes, C, Identifying modulators of hERG channel activity using the PatchXpress planar patch clamp. J Biomol Screen 2005, 10, (2), 168-81(非特許文献10)を参照されたい)。さらに、パッチクランプ試験は費用がかかり、多数の化学的に多様な骨格がhERG K+チャネルを遮断することから、初期段階の薬物開発の際の心臓に対する潜在的傾向を緩和する戦略は典型的に、機能的パッチクランプアッセイ法におけるhERG電流を化合物が遮断するか否かを予測するために結合アッセイ法を使用する(Whitebread, S.; Hamon, J.; Bojanic, D.; Urban, L., Keynote review: in vitro safety pharmacology profiling: an essential tool for successful drug development. Drug Discov Today 2005, 10, (21), 1421-33(非特許文献11);およびDiaz, G. J.; Daniell, K.; Leitza, S. T.; Martin, R. L.; Su, Z.; McDermott, J. S.; Cox, B. F.; Gintant, G. A., The [3H]dofetilide binding assay is a predictive screening tool for hERG blockade and proarrhythmia: Comparison of intact cell and membrane preparations and effects of altering [K+]o. J Pharmacol Toxicol Methods 2004, 50, (3), 187-99を(非特許文献12)参照されたい)。
【0004】
[3H]-ドフェチリド(Diaz, G. J.; Daniell, K.; Leitza, S. T.; Martin, R. L.; Su, Z.; McDermott, J. S.; Cox, B. F.; Gintant, G. A., The [3H]dofetilide binding assay is a predictive screening tool for hERG blockade and proarrhythmia: Comparison of intact cell and membrane preparations and effects of altering [K+]o. J Pharmacol Toxicol Methods 2004, 50, (3), 187-99(非特許文献12);およびFinlayson, K.; Turnbull, L.; January, C. T.; Sharkey, J.; Kelly, J. S., [3H]dofetilide binding to HERG transfected membranes: a potential high throughput preclinical screen. Eur J Pharmacol 2001, 430, (1), 147-8(非特許文献13)を参照されたい)、[3H]-アステミゾール(Chiu, P. J.; Marcoe, K. F.; Bounds, S. E.; Lin, C. H.; Feng, J. J.; Lin, A.; Cheng, F. C; Crumb, W. J.; Mitchell, R., Validation of a [3H]astemizole binding assay in HEK293 cells expressing HERG K+ channels. J Pharmacol Sci 2004, 95, (3), 311-9(非特許文献14)を参照されたい)、または[35S]-MK499(Wang, J.; Della Penna, K.; Wang, H.; Karczewski, J.; Connolly, T. M.; Koblan, K. S.; Bennett, P. B.; Salata, J. J., Functional and pharmacological properties of canine ERG potassium channels. Am J Physiol Heart Circ Physiol 2003, 284, (1), H256-67(非特許文献15)を参照されたい)を用いる放射性リガンド結合アッセイ法は、hERG K+チャネル遮断を予測することが示されている。しかし、放射性リガンドの調製、保存、および廃棄は、アッセイ技法に時間と費用とを増大させる。加えて、hERG K+チャネルに結合する化合物を査定するために記述されている放射分析アッセイ法は、不均質なフィルター結合アッセイ法であり、真空マニホルドを用いて放射性リガンド結合膜タンパク質をフィルターの上に捕捉することによって、結合した放射性リガンドを含まない分離を必要とする。この技法により、アッセイ法は、大規模スクリーニングまたはルーチン化合物プロファイリングのために自動化することが難しくなり、それによってその実用性が制限される。加えて、過去十年の間に、そのようなアッセイ法の代わりとなる非放射活性法を開発することは産学双方の強い要請であった。
【0005】
蛍光偏光(FP)アッセイ法は、受容体に対するリガンドの親和性を特徴付けするために完全に均質な混合-および-読み取り(mix-and-read)フォーマットを提供し、多くの場合、多くの放射分析結合アッセイ法の代わりに用いることができる(Burke, T. J.; Loniello, K. R.; Beebe, J. A.; Ervin, K. M., Development and application of fluorescence polarization assays in drug discovery. Comb Chem High Throughput Screen 2003, 6, (3), 183-94(非特許文献16)を参照されたい)。この技術は、化合物が受容体から蛍光プローブ(「トレーサー」)を置き換わることができることに基づき、これは光学シグナルの変化として検出される。そのようなアッセイ法において、トレーサーは典型的に、受容体-リガンド相互作用の親和性を実質的に破壊することなく蛍光分子に化学的に付着されている、受容体に対する公知の高親和性リガンドからなる(Huang, X., Fluorescence polarization competition assay: the range of resolvable inhibitor potency is limited by the affinity of the fluorescent ligand. J Biomol Screen 2003, 8, (1), 34-8(非特許文献17)を参照されたい)。トレーサー分子がFPアッセイ法において平面偏光によって励起される場合、蛍光体が光子の励起と放出との間の時間(典型的にはナノ秒)においてその方向性を維持すれば、蛍光の偏光は保持される。溶液中で、タンパク質-トレーサー複合体は遊離のトレーサーそのものよりゆっくりと回転することから、この方向性は、トレーサーがタンパク質などのより大きい分子に結合した場合には主として維持される。トレーサーが受容体に結合するリガンドによって受容体から置き換えられる場合、トレーサーからの蛍光は、励起源に対して脱分極する。
【0006】
従来の放射性リガンド結合アッセイ法とFPアッセイ法との間の重要な実際上の相違点は、放射性リガンド結合アッセイ法とは対照的に、FPアッセイ法が、トレーサーの限られた量、および受容体-トレーサー相互作用のKd値またはそれより上の受容体濃度を用いて最適に形成される点である。これは、測定される光学シグナルが、遊離および結合して存在するトレーサー全てからのシグナルに依存するためであり、これは(分離後に)測定されるシグナルが結合したリガンドのみにより、遊離のリガンドはシグナルの一因とはならない放射性リガンド結合アッセイ法とは異なる。このように、FPアッセイ法では、いかなる未結合のトレーサーも、存在する脱分極した光の量の一因であり、それによって測定される偏光シグナルを低下させてアッセイウィンドウを低下させる。典型的に、FPアッセイ法は、アッセイウィンドウ(測定される最大偏光値から最小偏光値を差し引いたもの)とアッセイ感度(IC50値が真のKi値に近づく能力)とを比較検討するために、総トレーサーの50〜70%が競合するリガンドの非存在下で結合するように形成される(Huang, X., Fluorescence polarization competition assay: the range of resolvable inhibitor potency is limited by the affinity of the fluorescent ligand. J Biomol Screen 2003, 8, (1), 34-8(非特許文献17)を参照されたい)。精製された可溶性の組換え型タンパク質を用いてFPアッセイ法を開発する場合、これは典型的に、多くのそのようなタンパク質がそのようなアッセイ法にとって十分である量で容易に調製されることから問題ではない。しかし、この必要条件は、ほとんどの場合においてその膜成分から機能的型で精製されておらず、不溶性の脂質成分のみならず他のタンパク質が含まれるhERGなどの膜会合タンパク質に関するアッセイ法を開発する場合には難題を呈する。その上、大量の膜成分の存在は、散乱光によって(Banks, P.; Gosselin, M.; Prystay, L., Impact of a red-shifted dye label for high throughput fluorescence polarization assays of G protein-coupled receptors. J Biomol Screen 2000, 5, (5), 329-34(非特許文献18)を参照されたい)または膜そのものに対するトレーサー(しばしば親油性の蛍光体を含有する)の非特異的結合の増加が起こることによってアッセイ法を干渉しうる。
【0007】
したがって、hERG K+チャネルの低分子の親和性を同定および特徴付けするための、および放射性リガンド結合またはパッチクランプアッセイ法のいずれかから得られるデータと厳密な相関を証明するための均質なFPに基づくアッセイ法の開発は、これまでのところ実現されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Curran, M. E.; Splawski, L; Timothy, K. W.; Vincent, G. M.; Green, E. D.; Keating, M. T., A molecular basis for cardiac arrhythmia: HERG mutations cause long QT syndrome. Cell 1995, 80, (5), 795-803
【非特許文献2】Sanguinetti, M. C; Jiang, C; Curran, M. E.; Keating, M. T., A mechanistic link between an inherited and an acquired cardiac arrhythmia: HERG encodes the IKr potassium channel. Cell 1995, 81, (2), 299-307
【非特許文献3】Trudeau, M. C; Warmke, J. W.; Ganetzky, B.; Robertson, G. A., HERG, a human inward rectifier in the voltage-gated potassium channel family. Science 1995, 269, (5220), 92-5
【非特許文献4】Warmke, J. W.; Ganetzky, B., A family of potassium channel genes related to eag in Drosophila and mammals. Proc Natl Acad Sci U S A 1994, 91, (8), 3438-42
【非特許文献5】Sanguinetti, M. C; Tristani-Firouzi, M., hERG potassium channels and cardiac arrhythmia. Nature 2006, 440, (7083), 463-9
【非特許文献6】Haverkamp, W.; Breithardt, G.; Camm, A. J.; Janse, M. J.; Rosen, M. R.; Antzelevitch, C; Escande, D.; Franz, M.; Malik, M.; Moss, A.; Shah, R., The potential for QT prolongation and proarrhythmia by non- antiarrhythmic drugs: clinical and regulatory implications. Report on a policy conference of the European Society of Cardiology. Eur Heart J 2000, 21, (15), 1216-31
【非特許文献7】Cavalli, A.; Poluzzi, E.; De Ponti, F.; Recanatini, M., Toward a pharmacophore for drugs inducing the long QT syndrome: insights from a CoMFA study of HERG K(+) channel blockers. J Med Chem 2002, 45, (18), 3844-53
【非特許文献8】Bode, G.; Olejniczak, K., ICH topic: the draft ICH S7B step 2: note for guidance on safety pharmacology studies for human pharmaceuticals. Fundam Clin Pharmacol 2002, 16, (2), 105-18
【非特許文献9】Bridgland-Taylor, M. H.; Hargreaves, A. C; Easter, A.; Orme, A.; Henthorn, D. C; Ding, M.; Davis, A. M.; Small, B. G.; Heapy, C. G.; Abi-Gerges, N.; Persson, F.; Jacobson, I; Sullivan, M.; Albertson, N.; Hammond, T. G.; Sullivan, E.; Valentin, J. P.; Pollard, C. E., Optimisation and validation of a medium-throughput electrophysiology-based hERG assay using IonWorks HT. J Pharmacol Toxicol Methods 2006, 54, (2), 189-99
【非特許文献10】Dubin, A. E.; Nasser, N.; Rohrbacher, J.; Hermans, A. N.; Marrannes, R.; Grantham, C; Van Rossem, K.; Cik, M.; Chaplan, S. R.; Gallacher, D.; Xu, J.; Guia, A.; Byrne, N. G.; Mathes, C, Identifying modulators of hERG channel activity using the PatchXpress planar patch clamp. J Biomol Screen 2005, 10, (2), 168-81
【非特許文献11】Whitebread, S.; Hamon, J.; Bojanic, D.; Urban, L., Keynote review: in vitro safety pharmacology profiling: an essential tool for successful drug development. Drug Discov Today 2005, 10, (21), 1421-33
【非特許文献12】Diaz, G. J.; Daniell, K.; Leitza, S. T.; Martin, R. L.; Su, Z.; McDermott, J. S.; Cox, B. F.; Gintant, G. A., The [3H]dofetilide binding assay is a predictive screening tool for hERG blockade and proarrhythmia: Comparison of intact cell and membrane preparations and effects of altering [K+]o. J Pharmacol Toxicol Methods 2004, 50, (3), 187-99
【非特許文献13】Finlayson, K.; Turnbull, L.; January, C. T.; Sharkey, J.; Kelly, J. S., [3H]dofetilide binding to HERG transfected membranes: a potential high throughput preclinical screen. Eur J Pharmacol 2001, 430, (1), 147-8
【非特許文献14】Chiu, P. J.; Marcoe, K. F.; Bounds, S. E.; Lin, C. H.; Feng, J. J.; Lin, A.; Cheng, F. C; Crumb, W. J.; Mitchell, R., Validation of a [3H]astemizole binding assay in HEK293 cells expressing HERG K+ channels. J Pharmacol Sci 2004, 95, (3), 311-9
【非特許文献15】Wang, J.; Della Penna, K.; Wang, H.; Karczewski, J.; Connolly, T. M.; Koblan, K. S.; Bennett, P. B.; Salata, J. J., Functional and pharmacological properties of canine ERG potassium channels. Am J Physiol Heart Circ Physiol 2003, 284, (1), H256-67
【非特許文献16】Burke, T. J.; Loniello, K. R.; Beebe, J. A.; Ervin, K. M., Development and application of fluorescence polarization assays in drug discovery. Comb Chem High Throughput Screen 2003, 6, (3), 183-94
【非特許文献17】Huang, X., Fluorescence polarization competition assay: the range of resolvable inhibitor potency is limited by the affinity of the fluorescent ligand. J Biomol Screen 2003, 8, (1), 34-8
【非特許文献18】Banks, P.; Gosselin, M.; Prystay, L., Impact of a red-shifted dye label for high throughput fluorescence polarization assays of G protein-coupled receptors. J Biomol Screen 2000, 5, (5), 329-34
【発明の概要】
【0009】
hERG K+チャネル結合を査定するための放射分析アッセイ法に関連する問題を回避するために、これらのアッセイ法の均質なFPに基づく代用法が開発されている。従来の放射性リガンド置き換えアッセイ法は、当初、候補となる高親和性蛍光トレーサーを同定するために用いられた。しかし、最初の細胞株におけるhERG K+チャネル発現(Bmax)レベルはFPアッセイ法を形成するために不十分であったことから、細胞表面マーカー(CD8)の発現をhERG K+チャネルの発現と連動させることによって、双方のタンパク質をコードするバイシストロニック発現ベクターを用いて、hERG K+チャネル発現を増加させる戦略が開発された。この戦略によって、フローサイトメトリーを用いた高発現hERG K+チャネル細胞株のクローン単離が可能となり、さらなるトレーサーの開発およびアッセイ法の最適化が含まれる、FPアッセイ法の開発が可能となった。得られたFPアッセイ法は、hERG K+チャネル結合を予測して、標準的なプレートリーダーを用いて行うために単純であり、hERG K+チャネルの傾向に関して化合物を分類する手段として従来の放射分析結合アッセイ法の代わりに用いるために十分に適している。
【0010】
本明細書において、hERG K+チャネルに関する親和性および被験者における心毒性の誘発能を特徴付けするために、低分子を、すなわち試験化合物をスクリーニングするためのFPアッセイ法、方法、およびキットが記述される。加えて、本明細書において、開示のアッセイ法、方法、およびキットにおいて用いるために、新規蛍光トレーサー化合物および高レベルのhERG K+チャネル発現を有する膜調製物を調製するための方法が記述される。
【0011】
本発明の1つの局面は、以下の一般構造式(I)を有する新規蛍光トレーサー化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。

式中、
Arは、ベンゾ、チエノ、フロ、およびピリドからなる群より選択される芳香環であり;
R1およびR2は、
(1)水素、
(2)非置換の、または
(a)R4およびR5が独立して水素もしくはC1-6アルキルである、-NR4R5
(b)N(R5)COC1-6アルキル、
(c)-NHSO2(C1-6アルキル)、
(d)R6およびR7が独立して、
(i)水素、
(ii)C1-6アルキル、または
(iii)N、S(O)n、またはOから選択される追加のヘテロ原子を含有してもよく、ピロリジン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、およびN-メチルピペラジンからなる群より選択される5員環または6員環の飽和複素環を表す、付着した窒素原子と一緒になったR6およびR7
である、-CONR6R7
(e)-CO(C1-6アルキル)、
(f)-OH、
(g)-O(C1-6アルキル)、
(h)-O(C1-6アルキル)-O-(C1-3アルキル)、
(i)-S(O)n(C1-6アルキル)、
(j)イミダゾール、
(k)2-イミダゾリジノン、
(l)2-ピロリジノン、
(m)-NH-C(NHR5)=N-CN、または
(n)-NH-C(SR5)=N-CN
によって置換された、C1-6アルキル
(3)-OH、
(4)非置換のまたはC1-3アルコキシによって置換された、C1-3アルコキシ、
(5)-N(R5)SO2(C1-6アルキル)、
(6)gが1〜5である、-N(R5)SO2(CH2)gCO2H、
(7)-N(R5)SO2(CH2)gCO2C1-6アルキル、
(8)-NO2
(9)-N(R5)COC1-6アルキル、
(10)-N(R5)SO2-C6H4-R4
(11)-N(R5)CO-C6H4-R4
(12)-NR4R5
(13)ハロ、
(14)-CO-C1-6アルキル、
(15)-CONR6R7
(16)-CN、
(17)-CO2R5
(18)-C(R5)=N-OR8
(19)非置換の、またはC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロ、もしくはヒドロキシによって置換された、ベンゾイル、
(20)-N(R5)COO(C1-6アルキル)、
(21)非置換の、またはC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、もしくはハロによって置換された、-N(R5)COO-フェニル、
(22)-N(R5)CONR4R5
(23)-S(O)nC1-6アルキル、
(24)-S(O)n-C6H4-R4
(25)-CF3
(26)非置換の、またはC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロ、もしくはヒドロキシによって置換された、フェニル、
(27)イミダゾリル、
(28)-SO2NR6R7
(29)pが2〜5である、-N[S(O)2C1-6 アルキル][(CH2)pCN]、
(30)-N(R5)-C(NR4R5)=N-CN、および
(31)-N(R5)-C(SR5)=N-CN
からなる群より独立して選択され;
W、X、およびYを含む環系は、W、X、およびYが独立して、-O-、C=O、-(CR4R5)n-、C=NOR8、CHOR9、-NR9-、CHNR10R11、-S(O)n-、=CH-、=N-、または結合である5員環系、6員環系、または7員環系であり、式中、
R4およびR5は先に定義されたとおりであり、
R8は、
(a)水素、または
(b)非置換のもしくは-COOR5によって置換された、C1-6アルキル
であり、
R9は、
(a)水素、
(b)C1-6アルキル、
(c)R12が、
(i)-NO2
(ii)C1-3アルキル
(iii) -O-C1-3アルキル、
(iv)ハロ、
(v)-CF3、または
(vi)水素
である、(CH2)n-C6H4-R12
(d)-CO-C1-6アルキル、
(e)-CO-C6H4-R12
(f)-COO-C1-6アルキル、または
(g)-CONR4R5
であり、
R10およびR11は独立して、
(a)水素、
(b)非置換の、またはgが1〜5であり、R13
(i)水素、
(ii)-OH、もしくは
(iii)-OC1-6アルキル
である-(CR4R5)n-(CR4R5)g-R13によって置換された、C1-6アルキル、
(c)非置換の、または
(i)-OH、
(ii)-N(R4R5)、
(iii)-OC1-6アルキル、もしくは
(iv)-CO2R5
によって置換された、-CO-C1-6アルキル、
(d)-CO-C6H4-R13、または
(e)N、S(O)n、またはOから選択される追加のヘテロ原子を含有してもよく、ピロリジン、モルホリン、ピペリジン、ピロリジノン、ピペリジノン、ピペラジン、およびN-メチルピペラジンからなる群より選択され、非置換のまたは酸素もしくはヒドロキシによって置換される5員環または6員環の飽和複素環を表す、付着した窒素原子と一緒になったR10およびR11
であり;
nは0、1、または2であり;
BはN含有の5〜7員環であり;
Lは-(CR4R5)m-Q-(CR4R5)q-NH-[CZ-(CR4R5)u-(D)w]z-であり、式中、
R4およびR5は先に定義されたとおりであり、
mおよびqは独立して1〜約5であり、
uは0〜約7であり、
wは0または1であり、
zは1または2であり、
Qは結合、-O-、C=O、CHOH、-NR5-、または-S(O)n-であり、
Zは=Oまたは=Sであり、ならびに
Dは-O-、-S(O)n-、-NR5-、または-NR5SO2-であり;ならびに
R3は蛍光色素である。
【0012】
本発明のもう1つの局面は、hERG K+チャネルまたはその断片の供給源に結合する本明細書において記述される蛍光トレーサーを用いる結合アッセイ法である、試験化合物をスクリーニングするためのアッセイ法を提供する。
【0013】
本発明のもう1つの局面は、以下の段階を含む、hERG K+チャネル遮断剤としての試験化合物の活性を特徴付けするための方法を提供する:
(a)SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を有するhERG K+チャネルを含有し、hERG K+チャネルをコードするヌクレオチド配列を含む核酸発現ベクターでトランスフェクトされた細胞に由来する、膜調製物に、本明細書において記述される蛍光トレーサーの存在下でアッセイ緩衝液において、該試験化合物を接触させる段階;
(b)該試験化合物が、hERG K+チャネルを含有する該膜調製物への蛍光トレーサーの結合に影響を及ぼすか否かをモニターする段階;および
(c)該試験化合物のhERG K+チャネル遮断剤活性を決定する段階。
【0014】
本発明のもう1つの局面は、以下を含む、試験化合物をスクリーニングするためのキットを提供する:
(a)本明細書において記述される蛍光トレーサー;
(b)hERG K+チャネルまたはその断片の供給源;および
(c)アッセイ緩衝液。
【0015】
本発明のもう1つの局面は、総膜タンパク質1 mgあたり少なくとも約100 pmolのhERG K+チャネルを発現する、hERG K+チャネル発現細胞集団を提供する。
【0016】
本発明のもう1つの局面は、構造式(I)

の蛍光トレーサー化合物を調製するための方法であって、
(a)構造式(II)の化合物

を、構造式(III)の化合物

と、室温でジメチルホルムアミド/ジイソプロピルエチルアミン中で反応させる段階
を含む方法を提供する。
上記式中、
R1、R2、R3、R4、R5、Ar、B、D、L、Q、W、X、Y、Z、m、q、u、w、およびzは、先に定義されたとおりであり;
kは0または1であり;ならびに
R14は活性エステルの成分であり;
但し、Zが=Oである場合、kは1であり、ならびに
但し、Zが=Sである場合、kは0、uは0、w は1、zは1、およびDは=Nである。
【0017】
本発明の他の目的、特色、および長所は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかし、詳細な説明および具体的な例は、本発明の好ましい態様を示しているが、この詳細な説明から当業者には様々な変化および改変が明らかとなると考えられるがそれらも本発明の趣旨および範囲に含まれることから、それらは説明のために与えられるに過ぎないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】30 nM未満のIC50値で[3H]-アステミゾールを置き換える放射性リガンド置き換えアッセイ法によって決定した場合のhERG K+チャネルの親和性に関して、最初に評価した候補蛍光トレーサー(その内部化合物同定番号によって同定される)6個を示す。
【図2A】高発現hERG K+チャネル細胞株のクローン単離を示す。CD8+細胞の上位10%をFACSによって単離した。
【図2B】高発現hERG K+チャネル細胞株のクローン単離を示す。単細胞192個を拡張し、CD8発現に関して免疫細胞化学によって分析した。
【図2C】高発現hERG K+チャネル細胞株のクローン単離を示す。クローン6個を手動でのパッチクランプによって分析して、テール電流のピークを記録した。「T-REx」は分析した当初の誘導型hERG細胞株を指し、「プール」はCD8高発現細胞の最初の種類を指す。
【図2D】高発現hERG K+チャネル細胞株のクローン単離を示す。クローンDからの膜調製物を放射性リガンド結合によって分析した。(○)総結合リガンド、(●)特異的結合リガンド、(×)非特異的結合リガンド。
【図3】30μM E-4031の存在下(○)または非存在下(●)におけるhERG-CD8膜に対するPredictor(商標)hERG Tracer Redの観察された偏光値を示す。
【図4】hERG-CD8膜からのPredictor(商標)hERG Tracer Redの置き換えを示す。(A)E-4031(□)またはアステミゾール(○)による置き換え。(B)30μM E-4031の非存在下(○)または存在下(×)でのアステミゾールによる置き換え。補正データ(●)は、E-4031の存在下で認められた非特異的置き換えを説明する。
【図5】広範囲のhERG K+チャネルに対して親和性を有する公知のhERG K+チャネル遮断剤によるCD8-hERG膜からのPredictor(商標)hERG Tracer Redの置き換えを示す。生データは各々の記号によって示される。実線は、本明細書において記述されるように補正されている置換曲線を表す。
【図6】図6(A)は、経時的なシグナルの安定性(偏光シフトおよびIC50値)およびアッセイ法の頑健性(Z'値)を決定するための時間経過試験を示す。アッセイプレートを、トレーサーおよび膜をE-4031の一連の希釈液に添加後、(■)30分、(□)1時間、(●)2時間、(○)4時間、(▲)6時間、(×)24時間で読み取った。各々のデータ点は、Z'値(表2)を計算するために28個の同等物を含有する30μM E-4031データ点を除き、2つ組の測定の平均値を表す。誤差のバーを示すが、一般的にデータ点を記すために用いられた記号より小さい。図6(B)において、様々な濃度のDMSO(■)、メタノール(●)、またはエタノール(▲)の存在下でアッセイ法を繰り返して、2時間後に読みとり、IC50値を実線によってつなぎ、Z'値を破線によってつなぐ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
定義:
本発明を詳細に記述する前に、本発明は、特定の組成物またはプロセス段階が多様であってもよいことから、それらに限定されないと理解される。本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」には、本文が明らかにそうでないことを述べている場合を除き、複数形が含まれることに注意すべきである。
【0020】
特に明記していなければ、本明細書において用いられる全ての技術および科学用語は、本発明が関連する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。以下の用語は、本明細書において記述される本発明の目的のために定義される。
【0021】
「アルキル」は、炭素原子1〜10個、好ましくは炭素原子1〜6個を有する一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語には、例としてメチル(CH3-)、エチル(CH3CH2-)、n-プロピル(CH3CH2CH2-)、イソプロピル((CH3)2CH-)、n-ブチル(CH3CH2CH2CH2-)、イソブチル((CH3)2CHCH2-)、sec-ブチル((CH3)(CH3CH2)CH-)、t-ブチル((CH3)3C-)、n-ペンチル(CH3CH2CH2CH2CH2-)、およびネオペンチル((CH3)3CCH2-)などの直鎖状および分岐ヒドロカルビル基が含まれる。
【0022】
「アルコキシ」は、アルキルが本明細書において定義されるとおりである-O-アルキル基を指す。アルコキシには、例として、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシ、およびn-ペントキシが含まれる。
【0023】
「アリール」または「Ar」は、付着点が芳香族炭素原子であることを条件として、縮合環が芳香族(たとえば、2-ベンズオキサゾリノン、2H-1,4-ベンズオキサジン-3(4H)-オン-7-イル等)であってもなくてもよい単環(たとえば、ベンゾ)または多縮合環(たとえば、ナフチルまたはアンスリル)を有する炭素原子5〜14個の一価の芳香族炭素環基を指す。
【0024】
「アミノ」は、-NH2基を指す。
【0025】
「アルケニル」は、炭素原子2〜6個、好ましくは炭素原子2〜4個を有し、およびアルケニル不飽和部位の少なくとも1個、好ましくは1〜2個を有するアルケニル基を指す。そのような基は、たとえばビニル、アリル、およびブト-3-エン-1-イルによって例示される。
【0026】
「カルボキシル」または「カルボキシ」は、-COOHまたはその塩を指す。
【0027】
「H」は、水素を示す。
【0028】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを指す。
【0029】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は-OH基を指す。
【0030】
「ヘテロアリール」は、炭素原子1〜10個と、環内の酸素、窒素、およびイオウからなる群より選択されるヘテロ原子1〜4個との芳香族基を指す。そのようなヘテロアリール基は、単環(たとえば、ピリジニルまたはフリル)を有しうるか、あるいは芳香族であってもなくてもよく、および/または付着点が芳香族ヘテロアリール基の原子を通してであることを条件としてヘテロ原子を含有する多縮合環(たとえば、インドリジニルまたはベンゾチエニル)を有しうる。1つの態様において、ヘテロアリール基の窒素および/またはイオウ環原子は、任意で酸化されて、N-オキシド(N→O)、スルフィニル、スルホニル部分を提供する。
【0031】
「複素環」、「複素環の」、「ヘテロシクロアルキル」、または「ヘテロシクリル」は、縮合架橋およびスピロ環系、炭素原子1〜10個および環内に窒素、イオウ、または酸素からなる群より選択されるヘテロ原子1〜4個を含む単環または多縮合環を有する飽和または不飽和基を指し、縮合環系において、付着点が非芳香環を通してであることを条件として、1つまたは複数の該環がシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールでありうる。1つの態様において、複素環基の窒素および/またはイオウ原子は、任意で酸化されてN-オキシド、スルフィニル、スルホニル部分を提供する。
【0032】
「スピロシクリル」または「スピロ」は、スピロ縮合(環の唯一の共通のメンバーである1つの原子によって形成される縮合)を有するシクロアルキルまたはヘテロシクリル環を有する炭素原子3〜10個の二価の飽和環状基を指す。
【0033】
「塩」は、当技術分野において周知である多様な有機対イオンおよび無機対イオンに由来する化合物の許容される塩を指し、これには、例に過ぎないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、およびテトラアルキルアンモニウムが含まれ、分子が塩基性の官能基を含有する場合、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシレート、酢酸塩、マレイン酸塩、およびシュウ酸塩などの有機酸または無機酸の塩が含まれる。
【0034】
本明細書において用いられる「色素」という用語は、観察可能で検出可能なシグナルを産生するために光を放出する化合物を指す。
【0035】
本明細書において用いられる「蛍光体」または「蛍光発生」という用語は、関心対象の生物学的化合物または分析物に結合すると蛍光の変化を示す、組成物を指す。本発明の好ましい蛍光体には、水性培地において高い量子収率を有する蛍光色素が含まれる。例示的な蛍光体には、中でもキサンテン、インドール、ボラポリアザインデセン、フラン、およびベンゾフランが含まれる。本発明の蛍光体は、蛍光体の溶解度、スペクトル特性、または物理特性を変化させるために置換されてもよい。
【0036】
本明細書において用いられるように、「リンカー」という用語は、化学反応基または生物学的および非生物学的成分などのもう1つの部分に蛍光発生化合物または蛍光化合物を共有的に付着させる、C、N、O、およびSからなる群より選択される原子を組み入れる一連の安定な共有結合を指す。例示的な連結メンバーには、-C(O)NH-、-C(O)O-、-NH-、-S-、-O-等を含む部分が含まれる。
【0037】
本明細書において用いられる「BSA」という用語は、ウシ血清アルブミンを指す。
【0038】
本明細書において用いられる「CMV」という用語は、サイトメガロウイルスを指す。
【0039】
本明細書において用いられる「D-MEM」という用語は、ダルベッコ改変イーグル培地を指す。
【0040】
本明細書において用いられる「DMSO」という用語は、ジメチルスルホキシドを指す。
【0041】
本明細書において用いられる「EDTA」という用語は、エチレンジアミン四酢酸を指す。
【0042】
本明細書において用いられる「FACS」という用語は、蛍光自動細胞ソーティングを指す。
【0043】
本明細書において用いられる「FBS」という用語は、ウシ胎児血清を指す。
【0044】
本明細書において用いられる「FP」という用語は、蛍光偏光を指す。
【0045】
本明細書において用いられる「HEPES」という用語は、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を指す。
【0046】
本明細書において用いられる「hERG」という用語は、ヒト ether-a-go-go関連遺伝子を指す。
【0047】
本明細書において用いられる「LQTS」という用語は、Q-T延長症候群を指す。
【0048】
本明細書において用いられる「MEM NEAA」という用語は、非必須アミノ酸を有する最小基本培地を指す。
【0049】
本明細書において用いられる「PBS」という用語は、リン酸緩衝生理食塩液を指す。
【0050】
本明細書において用いられる「TdP」という用語は、トルサード・ド・ポワントを指す。
【0051】
本発明の特定の局面:
hERG K+チャネル結合を査定するためのFPアッセイ法の開発には、多様な骨格、置換基、リンカー、および蛍光体を有する一連の蛍光トレーサー化合物の合成が必要であった(Singleton, D. H.; Boyd, H.; Steidl-Nichols, J. V.; Deacon, M.; Groot, M. J.; Price, D.; Nettleton, D. O.; Wallace, N. K.; Troutman, M. D.; Williams, C; Boyd, J. G., Fluorescently Labeled Analogues of Dofetilide as High-Affinity Fluorescence Polarization Ligands for the Human Ether-a-go-go-Related Gene (hERG) Channel. J Med Chem 2007, 50, (13), 2931- 2941を参照されたい)。したがって、本発明の1つの局面は、以下の一般構造式(I)を有する新規蛍光トレーサー化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。

式中、
Arは、ベンゾ、チエノ、フロ、およびピリドからなる群より選択される芳香環であり;
R1およびR2は、
(1)水素、
(2)非置換の、または
(a)R4およびR5が独立して水素もしくはC1-6アルキルである、-NR4R5
(b)-N(R5)COC1-6アルキル、
(c)-NHSO2(C1-6アルキル)、
(d)R6およびR7が独立して、
(i)水素、
(ii)C1-6アルキル、もしくは
(iii)N、S(O)n、またはOから選択される追加のヘテロ原子を含有してもよく、ピロリジン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、およびN-メチルピペラジンからなる群より選択される5員環または6員環の飽和複素環を表す、付着した窒素原子と一緒になったR6およびR7
である、-CONR6R7
(e)-CO(C1-6アルキル)、
(f)-OH、
(g)-O(C1-6アルキル)、
(h)-O(C1-6アルキル)-O-(C1-3アルキル)、
(i)-S(O)n(C1-6アルキル)、
(j)イミダゾール、
(k)2-イミダゾリジノン、
(l)2-ピロリジノン、
(m)-NH-C(NHR5)=N-CN、または
(n)-NH-C(SR5)=N-CN
によって置換される、C1-6アルキル、
(3)-OH、
(4)非置換のまたはC1-3アルコキシによって置換される、C1-3アルコキシ、
(5)-N(R5)SO2(C1-6アルキル)、
(6)gが1〜5である、-N(R5)SO2(CH2)gCO2H、
(7)-N(R5)SO2(CH2)gCO2C1-6アルキル、
(8)-NO2
(9)-N(R5)COC1-6アルキル、
(10)-N(R5)SO2-C6H4-R4
(11)-N(R5)CO-C6H4-R4
(12)-NR4R5
(13)ハロ、
(14)-CO-C1-6アルキル、
(15)-CONR6R7
(16)-CN、
(17)-CO2R5
(18)-C(R5)=N-OR8
(19)非置換の、またはC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロ、もしくはヒドロキシによって置換される、ベンゾイル、
(20)-N(R5)COO(C1-6アルキル)、
(21)非置換の、またはC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、もしくはハロによって置換される、-N(R5)COO-フェニル、
(22)-N(R5)CONR4R5
(23)-S(O)nC1-6アルキル、
(24)-S(O)n-C6H4-R4
(25)-CF3
(26)非置換の、またはC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロ、もしくはヒドロキシによって置換される、フェニル、
(27)イミダゾリル、
(28)-SO2NR6R7
(29)pが2〜5である、-N[S(O)2C1-6 アルキル][(CH2)pCN]、
(30)-N(R5)-C(NR4R5)=N-CN、および
(31)-N(R5)-C(SR5)=N-CN
からなる群より独立して選択され;
W、X、およびYを含む環系は、W、X、およびYが独立して、-O-、C=O、-(CR4R5)n-、C=NOR8、CHOR9、-NR9-、CHNR10R11、-S(O)n-、=CH-、=N-、または結合である5員環系、6員環系、または7員環系であり、式中、
R4およびR5は先に定義されたとおりであり、
R8は、
(a)水素、または
(b)非置換のもしくは-COOR5によって置換される、C1-6アルキル
であり、
R9は、
(a)水素、
(b)C1-6アルキル、
(c)R12が、
(i)-NO2
(ii)C1-3アルキル
(iii) -O-C1-3アルキル、
(iv)ハロ、
(v)-CF3、または
(vi)水素
である、(CH2)n-C6H4-R12
(d)-CO-C1-6アルキル
(e)-CO-C6H4-R12
(f)-COO-C1-6アルキル、または
(g)-CONR4R5
であり;
R10およびR11は独立して、
(a)水素、
(b)非置換の、またはgが1〜5であり、R13
(i)水素、
(ii)-OH、もしくは
(iii)-OC1-6アルキル
である、-(CR4R5)n-(CR4R5)g-R13によって置換される、C1-6アルキル、
(c)非置換の、または
(i)-OH、
(ii)-N(R4R5)、
(iii)-OC1-6アルキル、もしくは
(iv)-CO2R5
によって置換される、-CO-C1-6アルキル、
(d)-CO-C6H4-R13、または
(e)N、S(O)n、またはOから選択される追加のヘテロ原子を含有してもよく、ピロリジン、モルホリン、ピペリジン、ピロリジノン、ピペリジノン、ピペラジン、およびN-メチルピペラジンからなる群より選択され、非置換のまたは酸素もしくはヒドロキシによって置換される5員環または6員環の飽和複素環を表す、窒素原子と一緒になったR10およびR11
であり;
nは0、1、または2であり;
BはN含有の5〜7員環であり;
Lは-(CR4R5)m-Q-(CR4R5)q-NH-[CZ-(CR4R5)u-(D)w]z-であり、式中、
R4およびR5は先に定義されたとおりであり、
mおよびqは独立して1〜約5であり、
uは0〜約7であり、
wは0または1であり、
zは1または2であり、
Qは結合、-O-、C=O、CHOH、-NR5-、または-S(O)n-であり、
Zは=Oまたは=Sであり、ならびに
Dは-O-、-S(O)n-、-NR5-、または-NR5SO2-であり;ならびに
R3は蛍光色素である。
【0052】
前述の蛍光トレーサーのサブセットがhERG K+チャネルに対して高親和性の結合を示したという認識にもかかわらず(図1)、知見は、少なくとも1つのそのような蛍光トレーサーがアッセイ法の開発にとって有用であることが判明する可能性があるものの、頑健なFPアッセイ法を可能にするには、標準的なhERG K+チャネル含有膜では不十分であることを示唆している。具体的に、最高の親和性の蛍光トレーサーを、hERG-T-REx(商標)293細胞株に由来する膜調製物を用いてFPアッセイ法においてその有用性に関して調べた。これらの最初の実験は、E-4031またはドフェチリドなどの公知のhERG K+チャネル遮断剤の存在下または非存在下で蛍光偏光の測定可能な差を示すことができなかった。これらの結果は、頑健なFPアッセイ法が、置き換え化合物の非存在下でトレーサーの約50%またはそれより多くに結合するために十分な高親和性トレーサーおよびタンパク質濃度の双方を必要とすることから意外ではなかった(Huang, X., Fluorescence polarization competition assay: the range of resolvable inhibitor potency is limited by the affinity of the fluorescent ligand. J Biomol Screen 2003, 8, (1), 34-8を参照されたい)。
【0053】
したがって、本発明のもう1つの局面は、hERG K+チャネル膜調製物の比活性(Bmax)を増加させることを提供する。FPアッセイ法を形成するために必要なBmaxレベルは、放射性リガンド結合およびパッチクランプアッセイ法において用いられる細胞株に関して典型的に記述されるレベルより十分に上であることから、hERG K+チャネル膜調製物の比活性(Bmax)を増加させることは、十分な親和性を有する蛍光トレーサー候補体を同定することと同様に重要であった。前者の目的を成就するために、2つのタンパク質の翻訳が内部リボソーム進入部位配列(IRES)によって連結される、hERG K+チャネルおよびCD8表面マーカーをコードするヌクレオチド配列で構成されるバイシストロニックエレメントの転写を駆動するCMVプロモーターを用いて発現ベクター(SEQ ID NO:2)を構築した。発現カセットの安定なゲノム組み込みが起こった細胞を選択する手段を提供するために、ピューロマイシン抵抗性マーカーを発現ベクターに含めた。1つの例示的な変化形において、発現ベクターには、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を有するhERG K+チャネルをコードするヌクレオチド配列が含まれる。もう1つの例示的な変化形において、発現ベクターには、SEQ ID NO:1の配列と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を有するhERG K+チャネルをコードするヌクレオチド配列が含まれてもよい。
【0054】
FACS、単細胞クローン拡大および免疫細胞化学染色の2連続ラウンドによる高度発現細胞のトランスフェクションおよび単離後、Bmax値が総膜タンパク質1 mgあたり450 pmolより多いhERG K+チャネルである、hERG K+チャネル発現細胞集団を得た。さらに、基礎となる方法論によって、広範囲のBmax値を有する、すなわち好ましくは総膜タンパク質1 mgあたり少なくとも約100 pmol〜450 pmolより多いhERG K+チャネル、より好ましくは総膜タンパク質1 mgあたり約200 pmol〜約450 pmolより多いhERG K+チャネル、さらにより好ましくは総膜タンパク質1 mgあたり約300 pmol〜約450 pmolより多いhERG K+チャネル、および最も好ましくは総膜タンパク質1 mgあたり450 pmolより多いhERG K+チャネルのBmaxを有するhERG K+チャネル発現細胞の産生を可能にする。
【0055】
本発明のもう1つの局面は、構造式(I)

の蛍光トレーサー化合物を調製するための方法であって、
(a)構造式(II)の化合物

を、構造式(III)の化合物

と、室温でジメチルホルムアミド/ジイソプロピルエチルアミン中で反応させる段階
を含む方法を提供する。
上記式中、
R1、R2、R3、R4、R5、Ar、B、D、L、Q、W、X、Y、Z、m、q、u、w、およびzは、先に定義されたとおりであり;
kは0または1であり;ならびに
R14は活性エステルの成分であり;
但し、Zが=Oである場合、kは1であり、ならびに
但し、Zが=Sである場合、kは0、uは0、w は1、zは1、およびDは=Nである。
【0056】
1つの例示的な態様において、化合物(III)は、R14がスクシニミジルであるようなカルボン酸スクシニミジルエステルである。もう1つの例示的な態様において、化合物(III)は、R14が4-スルホ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニルであるような、カルボン酸4-スルホ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニルエステルである。なおもう1つの例示的な態様において、化合物(III)はイソチオシアネートである。
【0057】
本発明のもう1つの局面は、hERG K+チャネルまたはその断片の供給源に結合する本明細書において記述される蛍光トレーサーを用いる結合アッセイ法である、試験化合物をスクリーニングするためのアッセイ法を提供する。例として、アッセイ法は、
(a)異なる量の試験化合物もしくは試験化合物の混合物の存在または非存在下で、アッセイ緩衝液において蛍光トレーサーまたはその塩を、hERG K+チャネルまたはその断片の供給源と共にインキュベートする段階;および
(b)hERG K+チャネルまたはその断片に結合した蛍光トレーサーの量に対する該試験化合物または該試験化合物の混合物の影響を測定する段階
を含む。
【0058】
例示的な態様において、アッセイ緩衝液は、15 mM〜50 mM HEPES、5 mM〜20 mM KCl、0.5 mM〜2 mM MgCl2、および0.02%〜約0.1%PLURONIC F- 127を含み、ならびにhERG K+チャネルまたはその断片の供給源は、以下からなる群より選択される:
(i)hERG K+チャネルまたはその断片を細胞表面上に発現する細胞に由来する、膜調製物;
(ii)hERG K+チャネルまたはその断片を細胞表面上に発現する細胞;および
(iii)hERG K+チャネルまたはその断片を組織表面上に発現する組織に由来する、膜調製物。
【0059】
好ましい態様において、hERG K+チャネルまたはその断片の供給源は、hERG K+チャネルまたはその断片を細胞表面上に発現する細胞に由来する膜調製物であり、アッセイ緩衝液は、25 mM HEPES、15 mM KCl、1 mM MgCl2、および0.05%PLURONIC F- 127を含み、アッセイ緩衝液のpHは室温でpH 7.2〜pH 7.6である。最も好ましい態様において、細胞は、総膜タンパク質1 mgあたり約450 pmolより多いhERG K+チャネルを発現して、アッセイ緩衝液はpH 7.4である。
【0060】
本発明のもう1つの局面は、hERG K+チャネル遮断剤としての試験化合物の活性を特徴付けするための方法を提供する。例として、方法は、以下を含む:
(a)SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を有するhERG K+チャネルを含有し、hERG K+チャネルをコードするヌクレオチド配列を含む核酸発現ベクターでトランスフェクトされた細胞に由来する、膜調製物に、本明細書において記述される蛍光トレーサーの存在下でアッセイ緩衝液において、該試験化合物を接触させる段階;
(b)hERG K+チャネルを含有する該膜調製物への蛍光トレーサーの結合に該試験化合物が影響を及ぼすか否かをモニターする段階;および
(c)該試験化合物のhERG K+チャネル遮断剤活性を決定する段階。
【0061】
例としての態様において、核酸発現ベクターにはさらに、内部リボソーム進入部位をコードするヌクレオチドとCD-8原形質膜タンパク質をコードするヌクレオチド配列とが含まれ、内部リボソーム進入部位およびCD-8原形質膜タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、hERG K+チャネルをコードするヌクレオチド配列の下流に連続して位置する。もう1つの例としての態様において、核酸発現ベクターは、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列を有し、試験化合物がhERG K+チャネルを含有する膜調製物への蛍光トレーサーの結合に影響を及ぼすか否かをモニターする段階は、蛍光偏光によって測定される。好ましい態様において、アッセイ緩衝液は、pH 7.4であり、25 mM HEPES、15 mM KCl、1 mM MgCl2、および0.05%PLURONIC F-127を含み、hERG K+チャネルの発現は、内部リボソーム進入部位タンパク質をコードするヌクレオチド配列によってCD-8血漿タンパク質の発現と連動している。
【0062】
本発明のもう1つの局面は、試験化合物をスクリーニングするためのキットを提供する。例として、キットは、
(a)本明細書において記述される蛍光トレーサー;
(b)hERG K+チャネルまたはその断片の供給源;および
(c)アッセイ緩衝液
を含む。
【0063】
好ましい態様において、hERG K+チャネルまたはその断片の供給源は、hERG K+チャネルまたはその断片を細胞表面上に発現する細胞に由来する膜調製物であり、該細胞は、総膜タンパク質1 mgあたり少なくとも約100 pmolのhERG K+チャネルを発現し、アッセイ緩衝液には、25 mM HEPES、15 mM KCl、1 mM MgCl2、および0.05%PLURONIC F-127がpH 7.4で含まれる。
【0064】
本発明の詳細な説明を上記で提供してきたが、以下の実施例は、本発明を説明する目的で与えられ、本発明の範囲または特許請求の範囲に対する制限であると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0065】
化学合成
リンカー(4)の調製

【0066】
2,2'-オキシビス(エタン-2,1-ジイル)ジメタンスルホネート(2)

ジエチレングリコール(1、5.0 mL、53 mmol)およびトリエチルアミン(Et3N、16.2 mL、116 mmol)を、10 mL滴下漏斗、温度計、アルゴン注入口、および磁気撹拌棒を備えた100 mL三つ口丸底フラスコにおいてジクロロメタン40 mLに溶解した。溶液を氷浴において0〜5℃に冷却した。塩化メタンスルホニル(MsCl、8.4 mL、108 mmol)を、反応溶液を15℃未満に維持するように滴下漏斗から滴下して加えた。氷浴を外して反応物を周囲温度で終夜(約16時間)撹拌した。水(25 mL)を加えて、固体が溶解するまで混合物を撹拌した。層を分離して、有機(下層)層を氷冷3 M塩酸の20 mLによって2回、5%炭酸ナトリウム水溶液25 mLおよび飽和塩化ナトリウム水溶液25 mLによって連続的に洗浄した。有機層(下層)を無水硫酸ナトリウムによって乾燥させて、濾過し、ロータリーエバポレーターにおいて蒸発乾固させるとオレンジ色の固体13 gが提供された。
【0067】
この材料を、シリカゲル60(230〜400メッシュ)150 g上でのフラッシュクロマトグラフィーによって、1:1酢酸エチル:トルエンによって溶出することによって精製して、画分約125 mLを収集した。TLC(シリカゲル、4:1酢酸エチル-トルエン、モリブデン酸セリウムアンモニウム可視化;Rf(1)=0.05〜0.3、Rf(2)=0.46〜0.64)に基づいて、画分を合わせて減圧下でロータリーエバポレーションによってスラリーとなるまで濃縮した。スラリーを氷浴中で冷却して、固体を吸引濾過によって収集して、氷冷トルエンによって洗浄して、25℃の真空下で乾燥させると、2,2'-オキシビス(エタン-2,1-ジイル)ジメタンスルホネート(2)が白色固体(11.79 g、収率85%)として与えられ、これはTLCによって均質であった。

【0068】
2-(2-(ビス(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)エトキシ)エチルメタンスルホネート(3)

2,2'-オキシビス(エタン-2,1-ジイル)ジメタンスルホネート(2、10 g、38 mmol)、炭酸カリウム末(5.3 g、38 mmol)、およびジ-tert-ブチルイミノジカルボキシレート(9.1 g、42 mmol)を、100 mL丸底フラスコにおいて無水DMF 25 mLに溶解した。混合物を、60〜65℃で約3時間撹拌した。無水DMF 10 mLをさらに加えて、60〜65℃での撹拌を継続した。約24時間後、TLC(シリカゲル、1:1酢酸エチル-トルエン、モリブデン酸セリウムアンモニウム可視化;Rf(2)=0.3〜0.4、Rf(3)=0.6〜0.7)はなおも開始材料(2)を示したことから、60〜65℃での撹拌を継続した。さらに約24時間後、TLCはさらなる変化を示さなかったことから、反応物を室温まで冷却した。水(30 mL)および酢酸エチル(60 mL)を加えて、混合物を分液漏斗に移した。層を分離して、水層(下層)を酢酸エチルによって抽出した。酢酸エチル抽出物を合わせて、1 M塩酸25 mL、水25 mLを2回、および飽和塩化ナトリウム水溶液25 mLによって連続的に洗浄した。酢酸エチル溶液を無水硫酸ナトリウムによって乾燥させて、濾過し、ロータリーエバポレーターにおいて減圧下の後に高真空下で濃縮すると、非常に淡い黄色の油13.72 gが与えられた。
【0069】
この材料をシリカゲル60(230〜400メッシュ)260 g上でのフラッシュクロマトグラフィーによって、15:85酢酸エチル-ヘキサン、25:75酢酸エチル-ヘキサン、および30:70酢酸エチル-ヘキサンによって連続的に溶出させて精製し、画分約125 mLを収集した。TLC(シリカゲル、15:85酢酸エチル-ヘキサン、モリブデン酸セリウムアンモニウム可視化)に基づいて、画分を合わせて減圧下でロータリーエバポレーションによって濃縮すると、透明な無色の油7.21 gを生じた。この材料はTLC(シリカゲル、1:1酢酸エチル-ヘキサン、モリブデン酸セリウムアンモニウム可視化;Rf(2)=0.08〜0.2、Rf(3)=0.65〜0.75、Rf=0.45〜0.5およびRf=0.55〜0.65で微量の不純物)によってまだ均質ではなかったため、シリカゲル60(230〜400メッシュ)150 g上でのフラッシュクロマトグラフィーによって、20:80酢酸エチル-ヘキサンによって溶出して再度精製し、画分約125 mLを収集した。TLC(シリカゲル、1:1酢酸エチル-ヘキサン、モリブデン酸セリウムアンモニウム可視化)に基づいて、画分を合わせてロータリーエバポレーターにおいて減圧下の後に高真空下で濃縮すると、2-(2-(ビス(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)エトキシ)エチルメタンスルホネート(3)が透明な無色の油(4.58 g、収率31%)として与えられた。TLC(シリカゲル、1:1酢酸エチル-ヘキサン、モリブデン酸セリウムアンモニウム可視化)により、Rf=0.65〜0.75で3が示され、Rf=0.45〜0.5で微量の不純物が示された。

【0070】
tert-ブチル2-(2-ブロモエトキシ)エチルカーバメート(4)

臭化リチウム(7.6 g、87 mmol)をアセトン33 mL中で化合物3(3.35 g、8.74 mmol)の溶液に加えて、55〜60℃の油浴中で加熱した。約3時間後、TLC(1:1酢酸エチル-ヘキサン、モリブデン酸セリウムアンモニウム可視化)は、開始材料(3、Rf=0.7〜0.8)の完全な消失と主要な新規産物(4、Rf=0.8〜0.9)の出現を示した。反応混合物を室温まで冷却して水(約15 mL)を加えた。得られた溶液を酢酸エチル25 mLによって2回抽出した。合わせた酢酸エチル抽出物を水(15 mL)によって洗浄して、無水硫酸ナトリウムによって乾燥させて、濾過し、減圧下でロータリーエバポレーションによって濃縮すると、透明で無色の油(2.05 g)を生じた。
【0071】
この材料をシリカゲル60(230〜400メッシュ)60 g上でのフラッシュクロマトグラフィーによって、15:85酢酸エチル-ヘキサンによって溶出することによって精製し、約50 mL画分を収集した。TLC(シリカゲル、50:50酢酸エチル-ヘキサン、モリブデン酸セリウムアンモニウム可視化)に基づき、画分を合わせてロータリーエバポレーターにおいて減圧下の後に高真空下で濃縮すると、tert-ブチル2-(2-ブロモエトキシ)エチルカーバメート(4)が透明な無色の油(1.92 g、収率82%)として与えられ、これはTLCによって均質であった。

【0072】
色素に連結したスピロピペリジンケトンの調製(13)

【0073】
1'-ベンゾイルスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-4-オン(7)

2'-ヒドロキシアセトフェノン(5、5.88 mL、48.85 mmol)、1-ベンゾイル-4-ピペリドン(6、10 g、49 mmol)、およびピロリジン(4.1 mL、49 mmol)のメタノール溶液55 mLを65℃の油浴中で加熱した。約18時間後、油浴を外して、溶液を室温まで冷却させた。追加の1-ベンゾイル-4-ピペリドン(6、100 mg、0.5 mmol)を加えて65℃での加熱を再開した。さらに約2.5時間後、油浴を外して、溶液を室温まで冷却させた。この混合物をロータリーエバポレーターにおいて減圧下の後に高真空下で濃縮すると、粘性のオレンジ色の油を生じた。この油をジエチルエーテルによって粉砕すると、固体が提供され、これを吸引濾過によって収集して、ジエチルエーテルによって洗浄し、室温で真空下で乾燥させると1'-ベンゾイルスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-4-オン(7)が乳白色の固体(14.72 g、収率93.8%)として与えられた。濾液を蒸発乾固させて、ジエチルエーテルによって粉砕し、濾過してジエチルエーテルによって洗浄して、室温の真空下で乾燥させると、追加の化合物7が淡褐色の固体(0.54 g、収率3.7%)として与えられた。いずれの試料もTLC(シリカゲル、ジクロロメタン中で1.5%メタノール、UV可視化;Rf(7)=0.15〜0.2)によって均質であった。
【0074】
1'-ベンゾイル-6-ニトロスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-4-オン(8)

1'-ベンゾイルスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-4-オン(7、12.6 g、39.2 mmol)をアルゴン下で激しく撹拌しながら無水酢酸120 mLに懸濁した。混合物を氷浴中で0〜5℃に冷却して、発煙硝酸(15 mL)を滴下して加えた。硝酸を加えると、懸濁した固体が溶解した。添加の終了後、反応物を氷浴温度で5分間撹拌した後、室温まで加温した。室温で約45分後、反応物は急速に発熱性となり、氷浴中で再度冷却した。総反応時間の約1時間後、少量のアリコート(飽和炭酸ナトリウム水溶液中で停止させて、酢酸エチルによって抽出する)のTLC(シリカゲル、50:50酢酸エチル-ヘキサン、ヨウ素およびUV可視化)は、多数の産物を示したが、開始化合物7[Rf(7)=0.3〜0.4]の完全な消費を示した。総反応時間の約1.5時間後、反応混合物を氷冷飽和炭酸ナトリウム水溶液300 mLに注いだ。混合物を数分間撹拌後、溶液がpH 6〜7に達するまで固体炭酸ナトリウムを加えた。この溶液を酢酸エチル200 mLによって3回抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムによって乾燥させ、濾過してロータリーエバポレーターにおいて減圧下で濃縮すると、オレンジ-茶色の泡(16.6 g)が与えられた。
【0075】
この材料を先の小規模反応からの材料0.62 gと合わせて、酢酸エチルに溶解する段階、シリカゲル60(70〜230メッシュ、50 g)を加える段階、および減圧下でのロータリーエバポレーションによって溶媒を除去する段階によって、シリカゲルに予め吸収させた。得られた粉末を、スラリーを充填した(10:90酢酸エチル-ヘキサンによって)100 gシリカゲル60(70〜230メッシュ)フラッシュクロマトグラフィーカラムの上に適用して、10:90酢酸エチル-ヘキサン、20:80酢酸エチル-ヘキサン、30:70酢酸エチル-ヘキサン、40:60酢酸エチル-ヘキサン、および50:50酢酸エチル-ヘキサンによって連続的に溶出させ、約125 mL画分を収集した。TLC(シリカゲル、50:50酢酸エチル-ヘキサン)に基づいて、画分を合わせて、ロータリーエバポレーターにおいて減圧下で濃縮すると、わずかに不純物を有する(先のTLCによって)黄色固体8.33 gが提供された。
【0076】
この材料を、ジクロロメタンに溶解する段階、シリカゲル60(70〜230メッシュ、25 g)を加える段階、および減圧下でロータリーエバポレーションによって溶媒を除去する段階によって、再度、シリカゲルに予め吸収させた。得られた粉末を、スラリーを充填した(50:50酢酸エチル-ヘキサンによって)335 gシリカゲル60(70〜230メッシュ)フラッシュクロマトグラフィーカラムの上に適用して、50:50酢酸エチル-ヘキサン、および60:40酢酸エチル-ヘキサンによって連続的に溶出させて、約125 mL画分を収集した。TLC(シリカゲル、1:1酢酸エチル-ヘキサン)に基づいて、画分を合わせて、ロータリーエバポレーターにおいて減圧下で濃縮すると、黄色の泡状固体6.59 gが提供され、これはTLC(シリカゲル、50:50酢酸エチル-ヘキサン、または3%メタノールのジクロロメタン溶液、UV可視化)によってなおわずかに不純物を有した。
【0077】
この材料をシリカゲル60(70〜230メッシュ)264 g上でのフラッシュクロマトグラフィーによって、ジクロロメタン、1%メタノールのジクロロメタン溶液、および2%メタノールのジクロロメタン溶液によって連続的に溶出させることによって再度精製し、約125 mL画分を収集した。TLC(シリカゲル、3%メタノールのジクロロメタン溶液、UV可視化)に基づいて、画分を合わせてロータリーエバポレーターにおいて減圧下で濃縮すると、1'-ベンゾイル-6-ニトロスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-4-オン(8、6.5 g、収率45%)が淡黄色の泡状固体として与えられた。TLC(シリカゲル、3%メタノールのジクロロメタン溶液、UV可視化)によって、この材料は、1つの主成分(Rf=0.2〜0.3)プラス微量の混入物質(Rf=0.14〜0.17)を含有した。
【0078】
6-アミノ-1'-ベンゾイルスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-4-オン(9)

塩化スズ(II)二水和物(25.4 g、112 mmol)の濃塩酸溶液152 mLを、アルゴン雰囲気下で約50分間かけて1'-ベンゾイル-6-ニトロスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-4-オン(8、5.9 g、16 mmol)のテトラヒドロフラン溶液152 mLに滴下して加えた。反応混合物をその後室温で撹拌した。全体で約2時間後、少量のアリコート(過剰量の水酸化ナトリウム水溶液の中で停止させ、酢酸エチルによって抽出)のTLC(シリカゲル、10%メタノールのジクロロメタン溶液、UV可視化、Rf(8)=0.75〜0.85)は、反応が完了していることを示した。反応混合物を氷浴中で0〜5℃に冷却して、pHが11〜13に達するまで40%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して加えた。得られた溶液を酢酸エチル150 mLによって3回抽出して、合わせた酢酸エチル抽出液を水50 mLおよび飽和塩化ナトリウム水溶液50 mLによって連続して洗浄した。有機抽出物を無水硫酸ナトリウムによって乾燥させて、濾過し、ロータリーエバポレーターにおいて減圧下の後に高真空下で濃縮すると、粘性の黄色の油8.2 gを生じ、これはTLC[シリカゲル、10%メタノールのジクロロメタン溶液(Rf 0.4〜0.65)、または3%メタノールのジクロロメタン溶液(Rf 0.2〜0.35)、UV可視化]上でいくつかのスポット(1つは主要)を示した。
【0079】
この材料をシリカゲル60(230〜400メッシュ)220 g上でのフラッシュクロマトグラフィーによって、ジクロロメタンおよび2%メタノールのジクロロメタン溶液によって連続的に溶出させることによって精製し、約200 mL画分を収集した。TLC(シリカゲル、10%メタノールのジクロロメタン溶液、UV可視化)に基づき、画分を合わせて、ロータリーエバポレーターにおいて減圧下の後に高真空下で濃縮すると、オレンジ色の残渣4.2 gが提供され、これはTLCによっていくつかのスポットを示した。
【0080】
この材料をシリカゲル60(230〜400メッシュ)200 g上でのフラッシュクロマトグラフィーによって、40:60酢酸エチル-トルエン、50:50酢酸エチル-トルエン、および70:30酢酸エチル-トルエンによって連続的に溶出させることによって再精製して、約125 mL画分を収集した。TLC(シリカゲル、1:1酢酸エチル-トルエン、UV可視化)に基づいて、画分を合わせてロータリーエバポレーターにおいて減圧下の後に高真空下で濃縮すると、6-アミノ-1'-ベンゾイルスピロ-[クロマン-2,4'-ピペリジン]-4-オン(9)2.15 g(収率39%)が黄色の固体として提供され、これはTLC[Rf(9)=0.25〜0.3、シリカゲル、1:1酢酸エチル-トルエン、UV可視化]によってほぼ均質であった。
【0081】
N-(1'-ベンゾイル-4-オキソスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-6-イル)メタンスルホンアミド(10)

塩化メタンスルホニル(0.51 mL、6.6 mmol)を6-アミノ-1'-ベンゾイルスピロ-[クロマン-2,4'-ピペリジン]-4-オン(9、1.85 g、5.50 mmol)のピリジン溶液18.5 mLに加えた。反応混合物を室温で撹拌した。約1.5時間後、少量のアリコート(氷冷3 M塩酸水溶液中で停止させて、酢酸エチルによって抽出)のTLC(シリカゲル、1:1酢酸エチル-トルエン、UV可視化)は、反応が完了したことを示した[Rf(9)=0.25〜0.3、Rf(10)=0.15〜0.25]。全体で約2時間後、反応混合物を氷冷3 M塩酸水溶液75 mLに注いで10分間撹拌した。固体を吸引濾過によって収集して、水によって洗浄し、周囲温度で真空下で乾燥させると、ピンク色の固体2.17 gを生じた。この材料をメタノール(50 mL)とエタノール(50 mL)の混合物に懸濁して、沸騰するまで加熱した。溶解が完了するまで追加のメタノールを加えて、温溶液を濾過した(重力)。得られた溶液を室温まで冷却させた(いくつかの沈殿物)後、0〜5℃の冷蔵庫で冷却した。沈殿した固体を吸引濾過によって収集して、氷冷1:1メタノール-エタノールによって洗浄し、周囲温度で真空下で乾燥させると、N-(1'-ベンゾイル-4-オキソスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-6-イル)メタンスルホンアミド(10)0.86 g(収率38%)が淡ピンク色の固体として与えられた。この材料はTLC(シリカゲル、5%メタノールのジクロロメタン溶液、UV可視化、Rf(10)=0.3〜0.35)によって均質であった。
【0082】
N-(1'-ベンゾイル-4-オキソスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-6-イル)-メタンスルホンアミド(10)の淡ピンク色の固体としての追加の0.42 g(収率18%)が、母液をロータリーエバポレーションによって減圧下で蒸発乾固させた後に、2:1メタノール-エタノールから残渣を再結晶させることによって得られた。この材料はTLC(シリカゲル、5%メタノールのジクロロメタン溶液、UV可視化、Rf(10)=0.3〜0.35)によって均質であった。
【0083】
N-(4-オキソスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-6-イル)メタンスルホンアミド塩酸塩(11)

N-(1'-ベンゾイル-4-オキソスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-6-イル)メタンスルホンアミド(10、0.81 g、1.95 mmol)を無水エタノール(10 mL)と6 M塩酸水溶液(10 mL)との混合物に懸濁して、油浴中で85〜90℃で撹拌した。1時間後、油浴温度を95℃に増加した。95℃で〜3.5時間後、反応を室温まで冷却させた。TLC(シリカゲル、10%メタノールのジクロロメタン溶液、UV可視化)は、開始材料[Rf(10)=0.65〜0.7]が残っていないことを示した。溶媒をロータリーエバポレーターにおいて減圧下で除去した。エタノールを残渣に加えた後、ロータリーエバポレーターにおいて減圧下で蒸発乾固させた。エタノールの付加および蒸発乾固をさらに2回繰り返した。残渣を真空下で乾燥させると、N-(4-オキソスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-6-イル)メタンスルホンアミド塩酸塩(11)0.77 g(収率114%)が淡黄色固体として与えられ、これはTLC[シリカゲル、少量の濃縮水酸化アンモニウム水溶液を含有する10%メタノールのジクロロメタン溶液、UV可視化、Rf(11)=0.12〜0.19]によって均質であった。Mass spec: m/z = 311.2 [M+H]+
【0084】
tert-ブチル2-(2-(6-(メチルスルホンアミド)-4-オキソスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-1'-イル)エトキシ)エチルカーバメート(12)

N,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.3 mL、7.5 mmol)、tert-ブチル2-(2-ブロモエトキシ)エチル-カーバメート(4、0.59 g、2.2 mmol)およびN-(4-オキソスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-6-イル)メタンスルホン-アミド塩酸塩(11、0.5 g、1.4 mmol)の無水DMF溶液10 mLを60〜65℃で撹拌した。約24時間後、TLC(シリカゲル、10%メタノールのジクロロメタン溶液、UV可視化)は、開始アミン11(Rf=0.02〜0.06)のほぼ完全な消失および1つの主要な新しい産物(Rf=0.35〜0.45)の出現を示した。反応物を室温まで冷却させて、水10 mLを加えた。得られた混合物を酢酸エチルの助けを借りて分液漏斗に移して層を分離した。水層を酢酸エチル20 mLによって抽出した。有機抽出物を合わせて、水10 mLおよび飽和塩化ナトリウム水溶液10 mLによって連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウムによって乾燥させて、濾過し、ロータリーエバポレーターによって減圧下の後に高真空下で濃縮すると、オレンジ色-茶色の油0.94 gが提供された。
【0085】
この材料を前回のより小さい反応物からの94 mgと合わせて、シリカゲル60(230〜400メッシュ)43 gでのフラッシュクロマトグラフィーによって、5%メタノールのジクロロメタン溶液によって溶出させて精製し、約40 mL画分を収集した。TLC(シリカゲル、10%メタノールのジクロロメタン溶液、UV可視化)に基づいて、画分を合わせて、ロータリーエバポレーターにおいて減圧下で濃縮すると、tert-ブチル2-(2-(6-(メチルスルホンアミド)-4-オキソスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-1'-イル)エトキシ)エチルカーバメート(12)0.51 g(合わせた収率59%)が黄色の泡として与えられ、これはTLC(Rf=0.4〜0.5)によって均質であった。

【0086】
蛍光トレーサー(13)

tert-ブチル2-(2-(6-(メチルスルホンアミド)-4-オキソスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-1'-イル)エトキシ)エチルカーバメート(12、5.0 mg、0.010 mmol)のジクロロメタン(0.9 mL)およびトリフルオロ酢酸(TFA、0.1 mL)の混合物中での溶液を室温で約3時間撹拌した。この溶液を<35℃でロータリーエバポレーターにおいて減圧下で蒸発乾固させた。トルエン(約1 mL)を加えて、溶液を<35℃でロータリーエバポレーターによって減圧下で蒸発乾固させた。トルエンの付加/蒸発の一続きをさらに1回または2回繰り返した。
【0087】
残渣を無水DMF 4.0 mLに溶解して、溶液のアリコート1.0 mLを「アミン反応性」[イソチオシアネート、カルボン酸スクシニミジルエステル、またはカルボン酸STP(4-スルホ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)エステル]蛍光色素約1 mgを含有する5 mL丸底フラスコに移した。無水ジイソプロピルエチルアミン(0.2 mL)を各フラスコに加えた。フラスコをアルミニウムホイルで包んで、光を遮断して、反応物を室温でアルゴン下で終夜(16〜20時間)撹拌した。メタノール(0.5 mL)を各フラスコに加えて、溶液を室温で1〜3時間撹拌した。溶媒を<35℃でロータリーエバポレーターにおいて減圧下で除去した。トルエン(約1 mL)を加えて、溶液を<35℃でロータリーエバポレーターにおいて減圧下で蒸発乾固させた。トルエンの付加/蒸発の一続きをさらに1回または2回繰り返した。得られた材料を調整的HPLCによって精製した。(同じ一般的技法を使用して、中間体化合物14から一般式13の追加の蛍光トレーサー、中間体化合物17から一般式20の蛍光トレーサー、および中間体19から一般式21の蛍光トレーサーを調製した。その全てのトレーサーが表1に記載される)。
【0088】
代表的なHPLC条件
カラム:Zorbax RX、C-8、5ミクロン、4.6 mm×25 cm
緩衝液A:0.1%TFA、10%アセトニトリル
緩衝液B:0.085%TFA、90%アセトニトリル
勾配:2-25分10-50% B;35-45分50-100%B
流速:1.0 mL/分
注入:緩衝液Aにおいて1.4 mMを100μL
【0089】
N-(1'-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)-4-オキソスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-6-イル)メタンスルホン-アミド二塩酸塩(14)

濃塩酸10滴をtert-ブチル2-(2-(6-(メチルスルホンアミド)-4-オキソスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-1'-イル)エトキシ)エチルカーバメート(12、0.51 g、1.02 mmol)の氷酢酸溶液5 mLに加えて、得られた溶液を室温で撹拌した。約1.5時間後、TLC(シリカゲル、10%メタノールのジクロロメタン溶液、UV可視化)は、開始材料12(Rf=0.2〜0.3)の完全な消失およびその起源での新しいスポットを示す。揮発性の成分をロータリーエバポレーターによって減圧下で除去した。トルエン(約10 mL)を加えて、ロータリーエバポレーターにおいて減圧下で蒸発させた。トルエンの付加および蒸発をさらに2回繰り返して残渣を高真空下で乾燥させた。得られた残渣をジエチルエーテル3 mLによって粉砕すると、褐色の固体が形成された。ジエチルエーテルをロータリーエバポレーターにおいて減圧下の後に高真空下で除去すると、褐色の固体を生じた。
【0090】
(R)-tert-ブチル2-(2-(4-ヒドロキシ-6-(メチルスルホンアミド)スピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-1'-イル)エトキシ)エチルカーバメート(16)

tert-ブチル2-(2-(6-(メチルスルホンアミド)-4-オキソスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-1'-イル)エトキシ)エチル-カーバメート(12、0.25 g、0.50 mmol)を、2-プロパノール0.038 mL(0.5 mmol)を含有するジクロロメタン5 mLに溶解して、溶液を-20℃に冷却した。ボランジメチルスルフィド複合体(Me2S・BH3、0.126 mL、約1.26 mmol)を滴下して加えて、溶液を-20℃で1時間撹拌した。(S)-テトラヒドロ-1-メチル-3,3-ジフェニル-1H,3H-ピロロ-[l,2-c][l,3,2]オキサザボロール-ボラン複合体(15、15 mg、0.05 mmol;Xavier, L. C; et al. Org. Syn. 1998, Coll. Vol. 9, 676において記述されるように、(S)-テトラヒドロ-1-メチル-3,3-ジフェニル-1H,3H-ピロロ[1,2-c][1,3,2]オキサザボロールから調製)を1回で加えて、混合物を-20℃で30分間撹拌した。反応混合物を0℃に徐々に(約30分かけて)加温して、0℃で2.5〜3時間撹拌した。TLC(シリカゲル、10%メタノールのジクロロメタン溶液、UV可視化)は、開始ケトン12(Rf=0.4〜0.5)の完全な消失を示す。メタノール(4.5 mL)を加えて反応物を室温まで加温させた。反応フラスコに短い経路の蒸留ヘッドを備えて、油浴中に入れ、留出液の温度が62℃に達するまで加熱して揮発成分を除去した。メタノールをさらに5 mL加えて、フラスコを約75℃の油浴中で30分間加熱して、メタノールの約半分を蒸留によって除去した。フラスコを室温まで冷却して、アセトニトリル(5 mL)を加えて、混合物を周囲温度でロータリーエバポレーターによって減圧下の後に高真空下で蒸発乾固させると、黄色の固体(粗16)が与えられ、これはTLC[シリカゲル、10%メタノールのジクロロメタン溶液、または少量の水酸化アンモニウム水溶液を含有する10%メタノールのジクロロメタン溶液、ヨウ素可視化;Rf(12)=0.35〜0.4、10%MeOH/CH2Cl2においてRf(主成分)=0.03~0.17;Rf(12)=0.47〜0.53、NH4OHを含有する10%MeOH/CH2Cl2においてRf(主成分)=0.25〜0.35]によって多数の成分を示した。
【0091】
この材料(粗16)をシリカゲル60(230〜400メッシュ)カラム10 g上でのフラッシュクロマトグラフィーによって、0.2%水酸化アンモニウム水溶液を含有するジクロロメタン中で7%メタノールによって溶出することによって精製し、約10 mL画分を収集した。TLC(シリカゲル、10%メタノールのジクロロメタン溶液、ヨウ素可視化)に基づいて、画分を合わせてロータリーエバポレーターにおいて減圧下で濃縮すると、(R)-tert-ブチル2-(2-(4-ヒドロキシ-6-(メチルスルホンアミド)スピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-1'-イル)エトキシ)エチルカーバメート(16)195 mg(収率77%)が泡状の白色固体として与えられた。1H NMRは所望の産物(16)と一貫した。Mass spec:m/z=500.1551([M+H]+に関する予測値=500.2425)
【0092】
N-(1'-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)スピロ[クロメン-2,4'-ピペリジン]-6-イル)メタンスルホンアミド二塩酸塩(17)

(R)-tert-ブチル2-(2-(4-ヒドロキシ-6-(メチルスルホンアミド)スピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-1'-イル)エトキシ)-エチルカーバメート(16、193 mg、0.386 mmol)を氷酢酸5 mLに溶解した。溶液を冷水浴において冷却して、濃塩酸8滴を加えた。水浴を外して反応物を室温まで加温させた。3時間後、TLC(シリカゲル、少量の水酸化アンモニウム水溶液を含有する10%メタノールのジクロロメタン溶液、ヨウ素可視化)は、開始化合物16(Rf=0.3〜0.35)の完全な消失および1つの新しい化合物(17、Rf=0.18〜0.25)の出現を示した。反応混合物をロータリーエバポレーターにおいて減圧下で濃縮して乾固させた。トルエンを加えてロータリーエバポレーターにおいて減圧下で蒸発乾固させた。このトルエンの付加および蒸発をさらに2回繰り返して、残渣を周囲温度で高真空下で乾燥させると、粘性の黄色の残渣を生じた。この材料をジエチルエーテルによって粉砕すると、N-(1'-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)スピロ[クロメン-2,4'-ピペリジン]-6-イル)メタンスルホンアミド二塩酸塩(17)210 mg(収率120%)を淡黄色固体として生じた。Mass spec: m/z = 382.13 [M+H]+
【0093】
tert-ブチル2-(2-(4-(ヒドロキシイミノ)-6-(メチルスルホンアミド)スピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-1'-イル)エトキシ)エチルカーバメート(18)

無水ピリジン(40μL、0.5 mmol)および塩酸ヒドロキシルアミン(8 mg、0.11 mmol)をtert-ブチル2-(2-(6-(メチルスルホンアミド)-4-オキソスピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-1'-イル)エトキシ)エチルカーバメート(12、50 mg、0.10 mmol)の無水メタノール溶液5 mLに加えた。この溶液を室温で約1時間撹拌した後、約60℃で約1時間撹拌した。追加の塩酸ヒドロキシルアミン(6.2 mg、0.09 mmol)および無水ピリジン(40μL、0.5 mmol)を加えて、60〜65℃で撹拌を約1時間継続した。より多くの塩酸ヒドロキシルアミン(13.9 mg、0.20 mmol)を加えて、撹拌を60〜65℃で約80分間継続した。塩酸ヒドロキシルアミン(7 mg、0.10 mmol)を加えて、撹拌を60〜65℃で約2時間継続した。TLC(シリカゲル、10%メタノールのジクロロメタン溶液、UV可視化)は、開始ケトン12(Rf=0.35〜0.4)の完全な消失および1つの新しいスポット(18、Rf=0.18〜0.27)を示した。反応混合物をロータリーエバポレーターにおいて減圧下で乾固するまで濃縮した。残渣を酢酸エチル5 mLに溶解して、0.5 M塩酸水溶液10 mL、水5 mL、および飽和塩化ナトリウム水溶液5 mLによって連続的に抽出した。TLC(前述のように)は、合わせた水性抽出物において産物(18)を示し、これを水酸化ナトリウムペレットを加えることによってpH約13に調節した後、3 M塩酸水溶液を加えることによってpH約4に調節した。水溶液を酢酸エチル20 mLによって3回抽出した。合わせた酢酸エチル抽出物を無水硫酸ナトリウムによって乾燥させ、濾過して、ロータリーエバポレーターによって減圧下の後高真空下で終夜蒸発乾固させると、tert-ブチル2-(2-(4-(ヒドロキシイミノ)-6-(メチルスルホンアミド)-スピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-1'-イル)エトキシ)エチルカーバメート(18)50.3 mg(収率98%)が与えられた。
【0094】
N-(1'-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)-4-(ヒドロキシイミノ)スピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-6-イル)メタンスルホンアミド二塩酸塩(19)

tert-ブチル2-(2-(4-(ヒドロキシイミノ)-6-(メチルスルホンアミド)-スピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-1'-イル)エトキシ)エチルカーバメート(18、50.3 mg、0.10 mmol)を氷酢酸1 mLに溶解した。溶液を冷水浴において冷却して濃塩酸2滴を加えた。水浴を外して溶液を室温まで加温した。45分後、TLC(シリカゲル、10%メタノールのジクロロメタン溶液、UV可視化)は、開始材料(Rf(18)=0.15〜0.25)の完全な消失およびRf=0での1つの新しい産物の出現を示した。トルエン(5 mL)を加えた後、ロータリーエバポレーターにおいて減圧下で蒸発させた。このトルエンの付加および蒸発をさらに2回繰り返して、残渣を高真空下で約1時間乾燥させると、N-(1'-(2-(2-アミノ-エトキシ)エチル)-4-(ヒドロキシイミノ)スピロ[クロマン-2,4'-ピペリジン]-6-イル)メタンスルホンアミド二塩酸塩(19)39.2 mg(収率82%)が与えられた。
【0095】

【0096】
(表1)一般式13、20、および21の蛍光トレーサー

【0097】
材料および方法
膜の調製
hERG-T-REx(商標)293細胞株(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、蛍光トレーサー分子の親和性を試験するための膜調製物を生成した。細胞を、製造元の推奨プロトコールに従って37℃で5%CO2雰囲気下で維持して、1μg/mLドキシサイクリン(MP biomedicals, Solon, OH)を加えることによってhERGチャネルを発現するように誘導した。24時間の誘導後、細胞を二価のイオンを含まないPBS(Invitrogen)によって洗浄して、回収し、Versene(Invitrogen)によって1回洗浄した後、約500 gで5分間遠心沈殿した。細胞沈降物を氷中に維持して、20 mM HEPES(pH 7.4)、5 mM KCl、1 mM EDTA、1 mM PMSF、0.01 mM E-64、および10μg/mlロイペプチンを含有する氷冷ホモジナイゼーション緩衝液に浮遊させた。細胞をBio Polytron携帯型ホモジナイザー(Brinkmann, Westbury, NY)によってホモジナイズして、40,000 gで4℃で10分間遠心沈殿させて、上清を捨てた。膜沈降物を氷冷ホモジナイゼーション緩衝液に浮遊させた後、ホモジナイズして、再度遠心分離した。上清を捨てて、膜沈降物を20 mM HEPES(pH 7.4)、5 mM KCl、1 mM MgCl2、および1 mM EGTAを含有する保存緩衝液に浮遊させた。膜沈降物をピペッティングによって破壊して、均一な浮遊液が達成されるまで超音波処理した。得られた膜調製物をアリコートにして、-80℃で保存した。アッセイ最適化のプロセスの際に、ホモジナイゼーションおよび保存緩衝液を、25 mM HEPES(pH 7.5)、15 mM KCl、1 mM MgCl2、および0.05%Pluronic F-127を含有する実験によって決定されたアッセイ緩衝液に交換した。
【0098】
放射性リガンド結合アッセイ法
飽和結合アッセイ法に関して、hERG膜を、60 mM KCl、71.5 mM NaCl、1 mM CaCl2、2 mM MgCl2、0.1%BSA、および10 mM HEPES、pH 7.4を含有するアッセイ緩衝液に希釈した。次に、膜/緩衝液混合物80μLを、20×非標識アステミゾール(非特異的結合を決定するため)5μLまたは空のウェル(総結合)のいずれかを含有する96ウェル深底ウェルアッセイブロック(Corning, Lowell, MA)の各ウェルに加えた。標識[3H]-アステミゾールを適切な濃度で5×保存液の20μLとして加えた。非特異的結合を、アッセイされる標識の各濃度に関して同時に決定した。アッセイ法は全て、3つ組のウェルを用いて行い、アッセイ法における膜タンパク質の最終濃度は、20μg/ウェルであった。
【0099】
試験化合物のIC50を決定するために、hERG膜をアッセイ緩衝液に希釈して、膜/緩衝液混合物80μLをウェルあたり、20×非標識アステミゾール(非特異的結合を決定するため)5μL、20×参照化合物5μL、または空のウェル(総結合)のいずれかを含有する96ウェル深底ウェルアッセイブロックの各ウェルに加えた。[3H]-アステミゾールを5×保存液の20μLとして加えた。試験化合物は典型的に、2つ組のウェルにおいて8個の濃度を用いて試験した。アッセイ法における膜タンパク質の最終濃度は10μg/ウェルであり、[3H]-アステミゾールの最終濃度は1.5 nMであった。
【0100】
優しくボルテックスミキサーによって混合した後、アッセイブロックをパラフィルムで覆って、室温で2時間インキュベートした。0.3%ポリエチレンイミン溶液(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)に2時間予め浸漬してあったGF/B Unifilters(PerkinElmer, Waltham, MA)を通しての濾過によって反応を停止させた。フィルタープレートを、131.5 mM NaCl、1 mM CaCl2、2 mM MgCl2、10 mM HEPESおよび0.1%BSAを含有する6〜8倍量の冷(4℃)洗浄緩衝液によって洗浄した後、温ブロックにおいて85℃で1〜2時間乾燥させた。プレートの底を密封して、Microscint 20(PerkinElmer)50μLを各ウェルに加えた。プレートの上部をTopSeal(PerkinElmer)によって密封してプレートを少なくとも2時間後にTopCountシンチレーションカウンター(PerkinElmer)において分析した。
【0101】
パッチクランプ記録
hERGを発現する細胞を55 mmの丸いカバーガラスの上に載せて、インキュベーターにおいて終夜接着させた。カバーガラスをバスチャンバー内の顕微鏡のステージに載せて、PBSまたは同等物によって1 mL/分で灌流した。GΩシールを得た後、全細胞記録モードを用いて電流を記録した(Hamill, O. P.; Marty, A.; Neher, E.; Sakmann, B.; Sigworth, F. J., Improved patch-clamp techniques for high-resolution current recording from cells and cell-free membrane patches. Pflugers Arch 1981, 391, (2), 85-100を参照されたい)。細胞を-90 mVで維持して電流を667 Hzでフィルタリングして、EPC 10/2増幅器(HEKA, Oberkochen, Germany)を用いて2.0 kHzで試料を採取した。電位依存的活性化曲線を、コマンド電位を50 msで-70 mVに段階的に増加させた後に、コマンド電位を2秒間の間で-70 mVから+40 mVの範囲に10 mVずつ増加させる段階、コマンド電位を2秒間で-70 mVに戻す段階、および保持電位を5秒ごとに-90 mVに戻す段階によって得た。
【0102】
細胞の操作
hERGチャネルとCD8細胞表面マーカーとをコードするヌクレオチド配列で構成されるバイシストロニックエレメントの転写を駆動するためにCMVプロモーターを用いて発現ベクターを構築した。2つのタンパク質の翻訳は、内部リボソーム進入部位(IRES)によって連結された。発現カセットの安定なゲノム組み込みが起こった細胞を選択する手段を提供するために、ピューロマイシン抵抗性マーカーを発現ベクターに含めた。293細胞培養物は、FBS(10%)、MEM-NEAA、HEPES、およびP/Sを添加した高グルコースD-MEM+Na-pyruvate+GlutaMAX(商標)で構成される293増殖培地において37℃で5%CO2において維持された。トランスフェクションの前日、細胞を6ウェル培養皿(Corning)において約80%コンフルエンシーで平板培養した。Lipofectamine(商標)LTXおよびPlus(商標)試薬(Invitrogen)を用いて製造元のプロトコールに従って、細胞にプラスミドDNAをトランスフェクトした。翌日、細胞を採収してT175フラスコ(Corning)に拡大して、ピューロマイシン(Sigma)を培地に最終濃度0.3μg/mlとなるように加えることによって選択に供した。細胞をhERG-CD8発現293細胞の安定なプールを生成するために約3週間選択下で維持および分割した。
【0103】
免疫細胞化学およびFACS
単細胞FACSに関して、細胞をPBSによって洗浄して、トリプシン-EDTA(Invitrogen)によって採収した後、293増殖培地の少なくとも等量によって不活化した。細胞を計数して、1000×gで5分間遠心沈殿させて、0.1%BSAを添加したPBSに10×106個/mLで浮遊させた。製造元の提案するプロトコールに従って、マウス抗ヒトCD8 Alexa Fluor(登録商標)488モノクローナル抗体(Invitrogen)10μLを細胞2×106個あたりに加えて(200μL)、室温で30〜60分間インキュベートさせた。細胞を1000×gで5分間繰り返し(3回)遠心沈殿させて、PBS+0.1%BSAにおいて洗浄した後、PBS+0.1%BSA 2 mLに浮遊させて、濾過し、ソーティングのために約1×106個/mLの分散した単細胞浮遊液を得た。細胞浮遊液を488 nmレーザーラインを用いてFACSVantage(BD Biosciences, San Jose, CA)に適用して、530 nmを中心とする蛍光フィルターに収集した。染色した集団の上位10%の単細胞を96ウェルマイクロプレートに単離して約3週間拡大した。
【0104】
免疫細胞化学は、細胞をPBSによって洗浄して、4%パラホルムアルデヒドのPBS溶液において10分間固定することによって、96ウェルマイクロプレート(Corning)において行った。細胞を0.25%TritonX-100のPBS溶液によって3分間透過性にして、PBSによって3回洗浄し、1%BSAのPBS溶液によって30分間遮断した。細胞を、PBSにおいて一次マウス抗ヒトCD8モノクローナル抗体(2μg/mL)によって室温で60分間染色した。一次抗体を1%BSAのPBS溶液によって3回洗浄して、細胞を二次ヤギ抗マウスAlexa Fluor(登録商標)488(1:500)によって室温で30分間染色した後、1%BSAのPBS溶液によって3回洗浄した後PBSによって1回洗浄した。免疫蛍光をTecan Safire2プレートリーダー(Tecan Instruments, Raleigh-Durham, NC)において、488 nmでの励起および520 nmでの蛍光(帯域幅10 nm)を用いて測定した。
【0105】
蛍光偏光アッセイ法
トレーサーの評価は、hERG特異的(および置き換え可能な)トレーサー結合の程度を査定するために、10μMドフェチリド(Sequioa Research Products, Pangbourne, UK)の存在下または非存在下で、希釈した膜調製物と蛍光トレーサーとをインキュベートすることによって行った。実験を、多様な緩衝液(データは示していない)において行い、最適なFPアッセイ緩衝液の組成が、25 mM HEPES(pH 7.5)、15 mM KCl、1 mM MgCl2、および0.05%Pluronic F-127からなることが実験的に決定された。化合物の置き換えアッセイ法は、最初に、試験化合物を含むまたは含まないアッセイ緩衝液10μLを、384ウェル無処置ポリスチレンアッセイプレート(Corning #3677)のウェルに加えて、膜調製物とトレーサーの混合物10μLを最終アッセイ濃度の2倍で加えることによって行った。反応物を2〜4時間インキュベートした後、評価されるトレーサーにとって適切な偏光の励起および蛍光フィルターまたはモノクロメータの状況を用いて、Tecan InfiniTE F500またはTecan Safire2マイクロプレートリーダーにおいて読み取った。FPアッセイ法に関する最適な条件を、30μM E-4031(Tocris Bioscience, Ellisville, MO)の存在下および非存在下で、蛍光トレーサーの様々な濃度に対して膜タンパク質のマトリクスを滴定することによって決定した。総膜タンパク質および蛍光トレーサーのこれらの実験的に決定された濃度を用いて、hERGチャネルを遮断することが知られている一連の化合物希釈液に対して競合アッセイ法を行った。最終的に最適化されたトレーサー(Predictor(商標)hERG Tracer Red)を用いて、最終的な最適化アッセイ条件は、最終アッセイ容積20μLにおいて、1 nMトレーサーおよび85μg/mL膜タンパク質(膜調製物のBmax約450 pmol/mg)を含有した。Tecan Safire2マイクロプレートリーダーを用いて、アッセイウェルを530 nmで励起して585 nm(帯域幅20 nm)での蛍光を測定した。置き換えられうる非hERG特異的トレーサーの量を測定するように設計された実験において、アッセイ法はまた30μM E-4031を含有した。
【0106】
データ分析
データをMicrosoft(登録商標)Office Excel 2003およびPrism 4 for Windows(GraphPad Software Inc., San Diego, CA)を用いて分析した。
【0107】
高親和性蛍光トレーサーの同定
一連の候補トレーサーを、hERG K+に対するその親和性が多様である化合物を生成するために合成した。化合物の変化体は、多数の化学的骨格を様々な機能的構成成分、リンカー、および蛍光体と組み合わせることによって成就された(Singleton, D. H.; Boyd, H.; Steidl-Nichols, J. V.; Deacon, M.; Groot, M. J.; Price, D.; Nettleton, D. O.; Wallace, N. K.; Troutman, M. D.; Williams, C; Boyd, J. G., Fluorescently Labeled Analogues of Dofetilide as High-Affinity Fluorescence Polarization Ligands for the Human Ether-a-go-go-Related Gene (hERG) Channel. J Med Chem 2007, 50, (13), 2931-2941を参照されたい)。トレーサーの親和性は最初、hERG K+チャネルに対するトレーサーの親和性を測定するために放射性リガンド置き換えアッセイ法を用いて評価された。これらの化合物のサブセットは、高親和性でhERG K+チャネルに結合することが決定され、この知見は、これらがアッセイ法開発のための蛍光トレーサー分子として有用となることを示唆した(図1)。
【0108】
より高い比活性を有する膜調製物の生成
図1において示される最高親和性のトレーサーを、hERG-T-REx(商標)293細胞株に由来する膜調製物を用いてFPアッセイ法におけるその性能に関して調べた。この細胞株からの膜調製物は、およそ7 pmolのhERGタンパク質/mg総タンパク質の比活性(Bmax値)を有した。初回FP実験は、アッセイ法において6001 mg/mLもの高い総膜濃度を用いた場合であっても、いかなる候補トレーサーによっても、E-4031またはドフェチリドなどの公知のhERGチャネル遮断剤の存在下または非存在下で、偏光値の測定可能な差を生じることができなかった。これらの結果は、頑健なFPアッセイ法が高親和性トレーサーを必要とするのみならず、置き換え化合物の非存在下で少なくとも約50%またはそれより多くのトレーサーに理想的に結合するために十分であるタンパク質濃度の双方を必要とすることを考慮すれば意外ではなかった(Huang, X., Fluorescence polarization competition assay: the range of resolvable inhibitor potency is limited by the affinity of the fluorescent ligand. J Biomol Screen 2003, 8, (1), 34-8を参照されたい)。関心対象タンパク質の高い特異的含有量はまた、膜または他の膜タンパク質との非特異的相互作用を最小限にするためにも望ましい。ゆえに、本発明者らは、IRESエレメントによってCD8受容体とhERGチャネルの発現を連動したバイシストロニックベクターを用いて293細胞の安定なプールを生成することによって、hERGチャネル膜調製物のBmaxを増加させようとした。そのような細胞において、CD8マーカーの高レベルは、hERGチャネルの高レベルと相関すると予想されると考えられる。高発現細胞をFACSによって単離して、CD8+集団の上位10%の細胞(図2、パネルA)をソーティングして、96ウェルプレートにおいて単細胞として単離した。単細胞クローンを拡大した後、染色して、最高のCD8発現レベルを有する個々のクローンを同定した(図2、パネルB)。このように調べたクローン約192個中6個を今後の試験のために単離して、原形質膜での機能的hERGチャネル発現の程度を決定するためにパッチクランプ記録によって調べた(図2、パネルC)。真のクローン集団を確保するため、およびhERGチャネル含有膜に関する最善の細胞基質を確保するために、これらのクローンの1つ(クローンD)を拡大した後、FACS単離、クローン拡大、および免疫細胞化学染色の第二ラウンドに供した。最高発現クローンからの膜タンパク質を、放射性リガンド結合によって調製して特徴付けしたところ、>450 pmol/mgのBmaxが決定された(図2、パネルD)。これはhERG-T-REx(商標)293細胞株に由来する膜調製物と比較して>50倍増加である。
【0109】
蛍光偏光アッセイ法の最適化
放射性リガンド置き換えアッセイ法において当初同定された候補体高親和性トレーサー6個を用いて、hERG-CD8 293細胞株からの膜調製物を、増加濃度の膜調製物によって固定量の各トレーサー(1 nM)を滴定することによって、FP実験において用いるために評価した。特異的結合と非特異的結合とを識別するために、10μMドフェチリドの存在下または非存在下でアッセイ法を行った。6個の候補トレーサーの中で、1つのみ(IM-0107)が約70%結合トレーサーを誘発するために必要な膜の濃度で特異的結合と非特異的結合との間で>100 mPのアッセイウィンドウを提供した。このトレーサーを用いてさらなるアッセイ最適化が可能であったが、用いた蛍光体の励起および蛍光スペクトルはテキサスレッドのスペクトルと類似であり、これは一般的な「赤色」(TAMRA様)または「遠赤色」(Cy5-様)蛍光体の間に入る。このため、最適な性能のためにはプレートリーダー(Tecan InfiniTE F-500)において非標準フィルターと注文製の光二色性鏡の双方が必要であった。多様な市販のプレートリーダーについてアッセイ法を容易に行うために、初回評価の結果に基づいて、反復トレーサー合成のもう1つのラウンドを行った。この第二ラウンドの合成において、トレーサー評価は、よりやっかいな放射性リガンド置き換えアッセイ法よりむしろFPアッセイ法を用いてトレーサー性能を特徴付けすることによって容易となった。
【0110】
この第二ラウンドの合成によって、Predictor(商標)hERG Tracer Redが同定され、これはトレーサーの75%特異的結合のために必要な膜の濃度(85μg/mL総タンパク質、図3)で、結合したトレーサーと置き換えられたトレーサーとの間で大きい偏光シフトを有する、hERG-CD8膜に対する強い特異的結合を示すTAMRA様の励起および蛍光スペクトルを有するトレーサーである。評価したトレーサーの全てに関して、飽和E-4031の存在下でのmP値の膜依存的増加によって認められるように、トレーサーの実質的な非特異的結合が観察された。膜の存在下でのトレーサーからの特異的シグナルは、Safire2プレートリーダーを用いた場合、全ての測定に関して平行および垂直な放出チャネルの双方において膜単独の>40倍であったことから、この偏光シグナルは、膜からの散乱光によるアーチファクトではなかった。
【0111】
1 nM Predictor(商標)hERG Tracer Redおよび85 μg(総タンパク質)/mL CD8_hERG膜を用いる初回トレーサー置き換えアッセイ法を、それぞれ低い1桁から低い2桁のnM範囲のKi値でhERGに結合することが示されている、2つの十分に特徴付けがなされたhERG結合リガンド、すなわちアステミゾールとE-4031を用いて行った(Finlayson, K.; Turnbull, L.; January, C. T.; Sharkey, J.; Kelly, J. S., [3H]dofetilide binding to HERG transfected membranes: a potential high throughput preclinical screen. Eur J Pharmacol 2001, 430, (1), 147-8;Chiu, P. J.; Marcoe, K. F.; Bounds, S. E.; Lin, C. H.; Feng, J. J.; Lin, A.; Cheng, F. C; Crumb, W. J.; Mitchell, R., Validation of a [3H]astemizole binding assay in HEK293 cells expressing HERG K+ channels. J Pharmacol Sci 2004, 95, (3), 311-9;およびFinlayson, K.; Pennington, A. J.; Kelly, J. S., [3H]dofetilide binding in SHSY5Y and HEK293 cells expressing a HERG-like K+ channel? Eur J Pharmacol 2001, 412, (3), 203-12を参照されたい)。E-4031による置き換えは、1部位競合モデルと一貫するデータおよび11 nMのIC50値(図4)を生じた。しかし、アステミゾールによる置き換えは、第二の部位に対するトレーサーの結合が高濃度(>1μM)のアステミゾールの存在下に限って置き換えられる、2部位結合モデルに一貫するように思われるデータを生じた。過剰発現されたhERG K+チャネルを欠損する親293細胞からの対照膜を用いて実験を繰り返したところ、この同じ低親和性置き換えが同様に認められ、膜における非hERG成分または膜そのものがトレーサーに結合できること、およびこの相互作用が一定の化合物によって置き換えられうることを示唆した。この非hERG成分を補正するために、アステミゾールによるトレーサーの置き換えを、トレーサーの全てのhERG特異的結合に競合すると予想される30μM E-4031の存在下または非存在下で繰り返した。置き換え曲線の非hERG成分を除去することによってデータを補正すると(図4、パネルB)、2.7 nMのIC50値が得られた。E-4031の存在または非存在におけるアステミゾール置き換えアッセイ法を行うより単純な代用として、飽和E-4031を含有する対照ウェルにおいて認められるより低い偏光値を提供する置き換えデータを捨てることができ、次にアステミゾールデータを、飽和E-4031を含有する対照ウェルにおいて認められる値に固定した最小のmP値を有する曲線に適合させる。
【0112】
Predictor(商標)hERG Tracer Redを用いるFPアッセイ法は、文献においてnMからμMのKiまたはIC50値が報告されている広範囲の親和性に対してhERG K+チャネルを遮断することが知られている一連の化合物に対して確認された(図5)。アステミゾールと同様に、いくつかの化合物は、化合物の高濃度でトレーサーの非hERG結合成分を置き換えることができたが、これは容易に補正されて、補正されたIC50値と、文献において報告されている値との間に優れた相関が存在した(表2)。本発明者らは次に、全てのアッセイ成分の添加後の異なる時点でのシグナルの安定性(IC50値)およびアッセイ法の頑健性(Z'値の決定;Zhang, J. H.; Chung, T. D.; Oldenberg, K. R., A simple statistical parameter for use in evaluation and validation of high throughput screening assays. J Biomol Screen 1999, 4, 67-73を参照されたい)を評価した。図6および表3において示されるように、アッセイ法は、30分〜6時間の間に25%未満変動するIC50値を報告し、その後24時間以内にわずかに増加する(およそ2倍)。総偏光シフトはこの実験の過程において増加し続けるが、Z'値は調べた全ての時点で優れていた(≧0.87)。加えて、アッセイ法をDMSO、エタノール、またはメタノールの増加濃度の存在下で繰り返すと(化合物の保存のために一般的に用いられる溶媒に対するアッセイ法の認容性を決定するために)、Z'またはE-4031 IC50値において10%溶媒までで無視できる影響が認められた(図6、パネルB)。異なる実験において、アッセイ法は、ポリプロピレンプレート(Matrical MP101-1-PP)を用いて類似の品質のデータを提供することが認められたが、NBSコーティングポリスチレンプレート(Corning 3676)を用いた場合には性能はわずかに劣った。
【0113】
(表2)パッチクランプまたは放射性リガンド置き換えアッセイ法によって報告された、および本明細書において記述されるFPアッセイ法におけるIC50値(nM)の比較

放射性リガンド置き換えまたはパッチクランプアッセイ法の文献値は、

において見いだされる。
【0114】
(表3)本明細書において記述されるFPアッセイ法に関する経時的なアッセイ法のシグナル安定性および頑健性

IC50値はE-4031に関する。Z'値はDMSO(対照)または30μM E-4031のいずれかを含有する28個の複製ウェルから計算された。
【0115】
トレーサーを置き換えるためにアステミゾールを用いるFPアッセイ法の結果は、本明細書において記述される高発現hERG細胞および非トランスフェクト293細胞から調製された膜において第二の低親和性結合部位が存在することを示唆している。ドフェチリド(Finlayson, K.; Turnbull, L.; January, C. T.; Sharkey, J.; Kelly, J. S., [3H] dofetilide binding to HERG transfected membranes: a potential high throughput preclinical screen. Eur J Pharmacol 2001, 430, (1), 147-8を参照されたい)またはアステミゾール(Chiu, P. J.; Marcoe, K. F.; Bounds, S. E.; Lin, C. H.; Feng, J. J.; Lin, A.; Cheng, F. C; Crumb, W. J.; Mitchell, R., Validation of a [3H] astemizole binding assay in HEK293 cells expressing HERG K+ channels. J Pharmacol Sci 2004, 95, (3), 311-9を参照されたい)に関する第二のより低親和性の結合部位は、これまでに放射性リガンド結合試験において同定されている。放射性リガンド試験においてなお特徴付けされていないこれらの部位はそれでも、試験化合物に関するhERG親和性の正確な決定を防止しない。本発明のhERG K+チャネルに関して本明細書において、30μM E-4031の存在下で認められる値を超えて明らかな阻害を示す試験化合物からのデータを補正するために2つの単純な技法が記述されている。
【0116】
インビトロアッセイ法における任意のhERGの予測可能性の最終的な測定はしばしば、動物モデルにおけるQ-T間隔の延長と相関関係があるととられるが(Lynch, J. J., Jr.; Wallace, A. A.; Stupienski, R. F., 3rd; Baskin, E. P.; Beare, C. M.; Appleby, S. D.; Salata, J. J.; Jurkiewicz, N. K.; Sanguinetti, M. C; Stein, R. B.; et al., Cardiac electrophysiologic and antiarrhythmic actions of two long- acting spirobenzopyran piperidine class III agents, L-702,958 and L-706,000 [MK-499]. J Pharmacol Exp Ther 1994, 269, (2), 541-54;およびGintant, G. A.; Su, Z.; Martin, R. L.; Cox, B. F., Utility of hERG assays as surrogate markers of delayed cardiac repolarization and QT safety. Toxicol Pathol 2006, 34, (1), 81-90)、本明細書において記述されるhERG K+チャネルアッセイ法は、終わりから2番目の結果を達成し、すなわち文献で報告されたhERG電流の遮断能を有する化合物に関するパッチクランプIC50値に関して文献データと優れた相関を有する。アッセイ法は、文献でのパッチクランプIC50値と、パッチクランプデータセット間のわずか3倍の相違で一致し、FP結果をパッチクランプと放射性リガンド結合データとの双方の間で比較すると、FPデータはこれらの技術によって報告された範囲内に入る。アッセイ法は完全に均質であり、化合物干渉の問題を弱めるために赤色にシフトしたトレーサーを用い、少なくとも24時間のアッセイ読み取りウィンドウにわたって>0.8のZ'値を有する。本発明者らは、いくつかの化合物が標準的なE-4031より大きいFPシグナルの置き換えを生じることを観察したが、このシグナルはhERG依存的ではなく、容易に同定されて、IC50プロファイリングに関して補正されうる。併せて、これらの特色によって、アッセイ法はルーチンのおよび自動でさえの化合物プロファイリングに十分に適する。
【0117】
上記引用の参考文献のみならず、米国特許第5,206,240号、およびそこで開示される全ての合成法は、それらが本明細書において完全に記載されるように参照により本明細書に完全に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式の蛍光トレーサー化合物、またはその薬学的に許容される塩:

式中、
Arは、ベンゾ、チエノ、フロ、およびピリドからなる群より選択される芳香環であり;
R1およびR2は、
(1)水素、
(2)非置換の、または
(a)R4およびR5が独立して水素もしくはC1-6アルキルである、-NR4R5
(b)-N(R5)COC1-6アルキル、
(c)-NHSO2(C1-6アルキル)、
(d)R6およびR7が独立して、
(i)水素、
(ii)C1-6アルキル、または
(iii)N、S(O)n、もしくはOから選択される追加のヘテロ原子を含有してもよく、ピロリジン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、およびN-メチルピペラジンからなる群より選択される5員環または6員環の飽和複素環を表す、付着した窒素原子と一緒になったR6およびR7
である、-CONR6R7
(e)-CO(C1-6アルキル)、
(f)-OH、
(g)-O(C1-6アルキル)、
(h)-O(C1-6アルキル)-O-(C1-3アルキル)、
(i)-S(O)n(C1-6アルキル)、
(j)イミダゾール、
(k)2-イミダゾリジノン、
(l)2-ピロリジノン、
(m)-NH-C(NHR5)=N-CN、または
(n)-NH-C(SR5)=N-CN
によって置換される、C1-6アルキル、
(3)-OH、
(4)非置換のまたはC1-3アルコキシによって置換される、C1-3アルコキシ、
(5)-N(R5)SO2(C1-6アルキル)、
(6)gが1〜5である、-N(R5)SO2(CH2)gCO2H、
(7)-N(R5)SO2(CH2)gCO2C1-6アルキル、
(8)-NO2
(9)-N(R5)COC1-6アルキル、
(10)-N(R5)SO2-C6H4-R4
(11)-N(R5)CO-C6H4-R4
(12)-NR4R5
(13)ハロ、
(14)-CO-C1-6アルキル、
(15)-CONR6R7
(16)-CN、
(17)-CO2R5
(18)-C(R5)=N-OR8
(19)非置換の、またはC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロ、もしくはヒドロキシによって置換される、ベンゾイル、
(20)-N(R5)COO(C1-6アルキル)、
(21)非置換の、またはC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、もしくはハロによって置換される、-N(R5)COO-フェニル、
(22)-N(R5)CONR4R5
(23)-S(O)nC1-6アルキル、
(24)-S(O)n-C6H4-R4
(25)-CF3
(26)非置換の、またはC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロ、もしくはヒドロキシによって置換される、フェニル、
(27)イミダゾリル、
(28)-SO2NR6R7
(29)pが2〜5である、-N[S(O)2C1-6 アルキル][(CH2)pCN]、
(30)-N(R5)-C(NR4R5)=N-CN、および
(31)-N(R5)-C(SR5)=N-CN
からなる群より独立して選択され;
W、X、およびYを含む環系は、W、X、およびYが独立して、-O-、C=O、-(CR4R5)n-、C=NOR8、CHOR9、-NR9-、CHNR10R11、-S(O)n-、=CH-、=N-、または結合である5員環系、6員環系、または7員環系であり、式中、
R4およびR5は先に定義されたとおりであり、
R8は、
(a)水素、または
(b)非置換のもしくは-COOR5によって置換される、C1-6アルキル
であり、
R9は、
(a)水素、
(b)C1-6アルキル、
(c)R12が、
(i)-NO2
(ii)C1-3アルキル
(iii) -O-C1-3アルキル、
(iv)ハロ、
(v)-CF3、もしくは
(vi)水素
である、(CH2)n-C6H4-R12
(d)-CO-C1-6アルキル、
(e)-CO-C6H4-R12
(f)-COO-C1-6アルキル、または
(g)-CONR4R5
であり、
R10およびR11は独立して、
(a)水素、
(b)非置換の、またはgが1〜5であり、R13が、
(i)水素、
(ii)-OH、もしくは
(iii)-OC1-6アルキル、
である、-(CR4R5)n-(CR4R5)g-R13によって置換される、C1-6アルキル、
(c)非置換の、または
(i)-OH、
(ii)-N(R4R5)、
(iii)-OC1-6アルキル、もしくは
(iv)-CO2R5
によって置換される、-CO-C1-6アルキル、
(d)-CO-C6H4-R13、または
(e)N、S(O)n、またはOから選択される追加のヘテロ原子を含有してもよく、ピロリジン、モルホリン、ピペリジン、ピロリジノン、ピペリジノン、ピペラジン、およびN-メチルピペラジンからなる群より選択され、非置換のまたは酸素もしくはヒドロキシによって置換される5員環または6員環の飽和複素環を表す、付着した窒素原子と一緒になったR10およびR11
であり;
nは0、1、または2であり;
BはN含有の5〜7員環であり;
Lは-(CR4R5)m-Q-(CR4R5)q-NH-[CZ-(CR4R5)u-(D)w]z-であり、式中、
R4およびR5は先に定義されたとおりであり、
mおよびqは独立して1〜約5であり、
uは0〜約7であり、
wは0または1であり、
zは1または2であり、
Qは結合、-O-、C=O、CHOH、-NR5-、または-S(O)n-であり、
Zは=Oまたは=Sであり、ならびに
Dは-O-、-S(O)n-、-NR5-、または-NR5SO2-であり;ならびに
R3は蛍光色素である。
【請求項2】
hERG K+チャネルまたはその断片の供給源に結合する請求項1記載の蛍光トレーサーまたはその薬学的に許容される塩を用いる結合アッセイ法である、試験化合物をスクリーニングするためのアッセイ法。
【請求項3】
試験化合物をスクリーニングする段階が、
ヒト心電図におけるQ-T間隔を延長し、それによってヒト被験者における心毒性または心不整脈を誘発する該試験化合物の性向に関する指標
を提供する、請求項2記載のアッセイ法。
【請求項4】
以下の段階を含む、請求項2記載のアッセイ法:
(a)異なる量の試験化合物もしくは試験化合物の混合物の存在下または非存在下で、アッセイ緩衝液において、蛍光トレーサーまたはその塩を、hERG K+チャネルまたはその断片の供給源と共にインキュベートする段階;および
(b)hERG K+チャネルまたはその断片に結合した蛍光トレーサーの量に対する該試験化合物または該試験化合物の混合物の影響を測定する段階。
【請求項5】
前記アッセイ緩衝液が、KCl、MgCl2、およびPLURONIC F-127を含有するHEPESに基づく緩衝液である、請求項4記載のアッセイ法。
【請求項6】
前記アッセイ緩衝液が、15 mM〜50 mM HEPES、5 mM〜20 mM KCl、0.5 mM〜2 mM MgCl2、および0.02%〜約0.1%PLURONIC F-127を含む、請求項5記載のアッセイ法。
【請求項7】
前記アッセイ緩衝液が、25 mM HEPES、15 mM KCl、1 mM MgCl2、および0.05%PLURONIC F-127を含む、請求項6記載のアッセイ法。
【請求項8】
前記アッセイ緩衝液が室温でpH 7.2〜pH7.6のpHである、請求項7記載のアッセイ法。
【請求項9】
前記アッセイ緩衝液がpH 7.4である、請求項8記載のアッセイ法。
【請求項10】
前記の試験化合物または試験化合物の混合物の影響を蛍光偏光によって測定する、請求項9記載のアッセイ法。
【請求項11】
段階(b)が以下の段階を含む、請求項4記載のアッセイ法:
(i)各試料に関して特異的に結合した蛍光トレーサーを決定する段階;および
(ii)前記の試験化合物または試験化合物の混合物による蛍光トレーサー結合の阻害を計算する段階。
【請求項12】
前記hERG K+チャネルまたはその断片の供給源が、以下からなる群より選択される、請求項2記載のアッセイ法:
(i)該hERG K+チャネルまたはその断片を細胞表面上に発現する細胞に由来する、膜調製物;
(ii)該hERG K+チャネルまたはその断片を細胞表面上に発現する細胞;および
(iii)該hERG K+チャネルまたはその断片を組織表面上に発現する組織に由来する、膜調製物。
【請求項13】
前記hERG K+チャネルまたはその断片の供給源が、該hERG K+チャネルまたはその断片を細胞表面上に発現する細胞に由来する膜調製物である、請求項12記載のアッセイ法。
【請求項14】
前記細胞が、総膜タンパク質1 mgあたり少なくとも約100 pmolのhERG K+チャネルを発現する、請求項13記載のアッセイ法。
【請求項15】
前記細胞が、完全自動化ハイスループットパッチクランプシステムを用いたパッチクランピングによって決定した場合のhERG電流が約1500 pA〜約2500 pAの範囲である、hERG K+チャネルを発現する、請求項13記載のアッセイ法。
【請求項16】
前記細胞が、HEK293細胞またはCHO細胞である、請求項13記載のアッセイ法。
【請求項17】
前記細胞が、
(i)SEQ ID NO:1のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を有するhERG K+チャネルをコードするヌクレオチド配列を含む、単離および精製された核酸;ならびに
(ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸配列またはその断片を有するhERG K+チャネルをコードするヌクレオチド配列を含む、単離および精製された核酸
からなる群より選択される発現ベクターでトランスフェクトされた、請求項13記載のアッセイ法。
【請求項18】
前記核酸が、内部リボソーム進入部位タンパク質をコードするヌクレオチド配列およびCD-8原形質膜タンパク質をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項17記載のアッセイ法。
【請求項19】
前記の内部リボソーム進入部位タンパク質およびCD-8原形質膜タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、前記hERG K+チャネルをコードするヌクレオチド配列の下流に連続して位置する、請求項18記載のアッセイ法。
【請求項20】
前記hERG K+チャネルの発現が、内部リボソーム進入部位タンパク質をコードするヌクレオチド配列によって、CD-8血漿タンパク質の発現と連動している、請求項19記載のアッセイ法。
【請求項21】
以下の段階を含む、hERG K+チャネル遮断剤としての試験化合物の活性を特徴付けするための方法:
(a)SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を有するhERG K+チャネルを含有し、hERG K+チャネルをコードするヌクレオチド配列を含む核酸発現ベクターでトランスフェクトされた細胞に由来する、膜調製物に、請求項1記載の蛍光トレーサーまたはその薬学的に許容される塩の存在下で、アッセイ緩衝液において該試験化合物を接触させる段階;
(b)該試験化合物が、hERG K+チャネルを含有する該膜調製物への蛍光トレーサーの結合に影響を及ぼすか否かをモニターする段階;および
(c)該試験化合物のhERG K+チャネル遮断剤活性を決定する段階。
【請求項22】
前記細胞が、HEK 293細胞またはCHO細胞である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記細胞が、総膜タンパク質1 mgあたり少なくとも約100 pmolのhERG K+チャネルを発現する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記細胞が、完全自動化ハイスループットパッチクランプシステムを用いたパッチクランピングによって決定した場合のhERG電流が約1500 pA〜約2500 pAの範囲であるhERG K+チャネルを発現する、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記核酸発現ベクターが、内部リボソーム進入部位タンパク質をコードするヌクレオチド配列およびCD-8原形質膜タンパク質をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記の内部リボソーム進入部位タンパク質およびCD-8原形質膜タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、前記hERG K+チャネルをコードするヌクレオチド配列の下流に連続して位置する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記核酸発現ベクターがSEQ ID NO:2のヌクレオチド配列を有する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記hERG K+チャネルの発現が、内部リボソーム進入部位タンパク質をコードするヌクレオチド配列によって、CD-8血漿タンパク質の発現と連動している、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記アッセイ緩衝液が、25 mM HEPES、15 mM KCl、1 mM MgCl2、および0.05%PLURONIC F-127を含む、請求項21記載の方法。
【請求項30】
前記アッセイ緩衝液が室温でpH 7.2〜pH 7.6のpHである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記アッセイ緩衝液がpH 7.4である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記試験化合物がhERG K+チャネルを含有する膜調製物への蛍光トレーサーの結合に影響を及ぼすか否かをモニターする段階が、蛍光偏光によって測定される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
以下を含む、試験化合物をスクリーニングするためのキット:
(a)請求項1記載の蛍光トレーサーまたはその薬学的に許容される塩;
(b)hERG K+チャネルまたはその断片の供給源;および
(c)アッセイ緩衝液。
【請求項34】
前記hERG K+チャネルまたはその断片の供給源が、hERG K+チャネルまたはその断片を細胞表面上に発現する細胞に由来する膜調製物である、請求項33記載のキット。
【請求項35】
前記細胞が、総膜タンパク質1 mgあたり少なくとも約100 pmolのhERG K+チャネルを発現する、請求項34記載のキット。
【請求項36】
前記細胞が、完全自動化ハイスループットパッチクランプシステムを用いたパッチクランピングによって決定した場合のhERG電流が約1500 pA〜約2500 pAの範囲であるhERG K+チャネルを発現する、請求項34記載のキット。
【請求項37】
前記細胞がHEK 293細胞またはCHO細胞である、請求項34記載のキット。
【請求項38】
前記細胞が、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列を有する発現ベクターでトランスフェクトされた、請求項34記載のキット。
【請求項39】
前記hERG K+チャネルの発現が、内部リボソーム進入部位タンパク質をコードするヌクレオチド配列によって、CD-8血漿タンパク質の発現と連動している、請求項38記載のキット。
【請求項40】
前記アッセイ緩衝液が、25 mM HEPES、15 mM KCl、1 mM MgCl2、および0.05%PLURONIC F-127を含む、請求項33記載のキット。
【請求項41】
前記アッセイ緩衝液が室温でpH 7.2〜pH 7.6のpHである、請求項40記載のキット。
【請求項42】
前記アッセイ緩衝液がpH 7.4である、請求項41記載のキット。
【請求項43】
総膜タンパク質1 mgあたり少なくとも約100 pmolのhERG K+チャネルを発現する、hERG K+チャネルを発現する細胞集団。
【請求項44】
細胞集団の細胞が、完全自動化ハイスループットパッチクランプシステムを用いたパッチクランピングによって決定した場合のhERG電流が約1500 pA〜約2500 pAの範囲であるhERG K+チャネルを発現する、請求項43記載のhERG K+チャネル発現細胞集団。
【請求項45】
細胞集団の細胞がHEK 293細胞またはCHO細胞である、請求項43記載のhERG K+チャネル発現細胞集団。
【請求項46】
細胞集団の細胞が、以下からなる群より選択される発現ベクターでトランスフェクトされた、請求項43記載のhERG K+チャネル発現細胞集団:
(i)SEQ ID NO:1のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を有するhERG K+チャネルをコードするヌクレオチド配列を含む、単離および精製された核酸;ならびに
(ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸配列またはその断片を有するhERG K+チャネルをコードするヌクレオチド配列を含む、単離および精製された核酸。
【請求項47】
前記核酸が、内部リボソーム進入部位タンパク質をコードするヌクレオチド配列およびCD-8原形質膜タンパク質をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項46記載のhERG K+チャネル発現細胞集団。
【請求項48】
前記の内部リボソーム進入部位タンパク質およびCD-8原形質膜タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、前記hERG K+チャネルをコードするヌクレオチド配列の下流に連続して位置する、請求項47記載のhERG K+チャネル発現細胞集団。
【請求項49】
前記hERG K+チャネルの発現が、内部リボソーム進入部位タンパク質をコードするヌクレオチド配列によって、CD-8血漿タンパク質の発現と連動している、請求項48記載のhERG K+チャネル発現細胞集団。
【請求項50】
構造式(I)

の蛍光トレーサー化合物を調製するための方法であって、
該方法が、
(a)構造式(II)

の化合物を、構造式(III)

の化合物と、室温でジメチルホルムアミド/ジイソプロピルエチルアミン中で反応させる段階
を含み、
上記式中、
R1、R2、R3、R4、R5、Ar、B、D、L、Q、W、X、Y、Z、m、q、u、w、およびzは、請求項1において定義されたとおりであり;
kは0または1であり;ならびに
R14は活性エステルの成分であり;
但し、Zが=Oである場合、kは1であり、ならびに
但し、Zが=Sである場合、kは0、uは0、w は1、zは1、およびDは=Nである、
方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−517317(P2011−517317A)
【公表日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−548928(P2010−548928)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/035591
【国際公開番号】WO2009/108905
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】