説明

蛍光分光測定用光ファイバアセンブリ

サンプル中の対象分析物の存在を検出するシステムであって、細長い透明のサンプル容器と、該サンプルに光学的に接続される励起光源であって、該励起光源からの照射は該サンプルの長さ方向に配向され、かつ、該照射は該サンプルから放射される放射光を誘起する、励起光源と、該サンプルのホルダの周りに配置された少なくとも2つのリニアアレイであって、該リニアアレイがそれぞれ、第1および第2の末端を有する複数の光ファイバから構成され、該ファイバの該第1の末端は該容器の長さ方向に沿って、その近傍に配置され、各該アレイの該ファイバの該第2の末端は束ねられて1つの末端ポートを形成し、該複数の光ファイバは該放射光を受光し、該ファイバの該第1の末端からの放射光を該ファイバの該第2の末端から構成される該末端ポートに送るリニアアレイとを備える、ことを特徴とするシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年3月25日に出願された米国仮特許出願第61/211,264号(本明細書中にその全体が参照により含まれる)の優先権の利益を主張する。
【0002】
連邦政府の権利に関する表明
本願は、米国エネルギー省によって与えられた、契約番号DE−AC52−06 NA 25396に基づく政府の援助を用いてなされたものである。米国政府は本発明について所定の権利を有する。
【0003】
発明の背景
本発明は、概して、サンプル中分析物の分光検出の向上のための、改良型光学構成のための装置および方法に関する。より詳細には、本発明は、プリオンおよび他の低レベル分析物の超高感度検出のための装置および方法に関する。
【0004】
レーザ誘起蛍光法、ならびに、赤外分光法、紫外・可視分光法、燐光分析法などの他のタイプの分光測定を行う従来の方法では、分析するサンプルを入れるための小さな透明のキュベットが用いられる。標準的なキュベットのサイズは、約1cm×1cmで高さ約3.5cmであり、底がシールされる。このキュベットは通常石英ガラス製または光学品質のホウケイ酸ガラス製であり、場合により光学的に研磨され、反射防止膜が設けられている。キュベットは上部の開放端から充填され、この開放端には栓が用いられる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測定を行うには、キュベットを調査される流体で充填し、キュベットの一面を通して焦点合わせしたレーザで照射する。入射窓から90度に配置されたキュベットの一面と直列にレンズが配置されてレーザで誘起された蛍光が集められ、これによりレーザ自身または他のノイズに由来する干渉が低減される。実際にはキュベットの少量のみがレーザによって照射されて検出可能な分光放射を生成する。立体角を理由としてレンズが分光放射のおよそ10%しか拾わないという事実により、検出信号は非常に低いものとなる。この一般的なシステムが少なくとも75年間用いられてきた。
【0006】
米国特許出願第11/634,546号(2006年12月7日出願)に記載の従前の改良によれば、当時の従来技術に対して10倍程度検出信号の量を増大させることができ、蛍光化合物のマイクロモルでの検出を行うことができた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、この技術をさらに改良し、蛍光化合物のアトモル量の検出を可能とするものである。
【0008】
以下、本発明のいくつかの非限定的な実施形態を記載する。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、サンプル中の対象分析物の存在を検出するシステムであって、細長い透明のサンプル容器と、該サンプルに光学的に接続される励起光源であって、該励起光源からの照射は該サンプルの長さ方向に配向され、かつ、該照射は該サンプルから放射される放射光を誘起する、励起光源と、該サンプルのホルダの周りに配置された少なくとも2つのリニアアレイであって、該リニアアレイがそれぞれ、第1および第2の末端を有する複数の光ファイバから構成され、該ファイバの該第1の末端は該容器の長さ方向に沿って、その近傍に配置され、各該アレイの該ファイバの該第2の末端は束ねられて1つの末端ポートを形成し、該複数の光ファイバは該放射光を受光し、該ファイバの該第1の末端からの放射光を該ファイバの該第2の末端から構成される該末端ポートに送る、リニアアレイと、d)該1つの末端ポートおよび1つの検出器に光学的に接続された末端ポートアセンブリと、を備えるシステムが提供される。
【0010】
本発明の他の実施形態によれば、サンプル中の対象分析物の存在を検出するシステムであって、細長い透明のサンプル容器と、該サンプルと光学的に接続される励起光源であって、該励起光源からの照射は該サンプルの長さ方向に配向され、かつ、該照射は該サンプルから放射される蛍光放射光を誘起する、励起光源と、該サンプルのホルダの周りに1つの平面状アレイを構成し、隣接する該リニアアレイが互いに対して90度に配向されている少なくとも4つのリニアアレイであって、該リニアアレイがそれぞれ、第1および第2の末端を有する複数の光ファイバから構成され、該ファイバの該第1の末端は該容器の長さ方向に沿ってその近傍に配置され、各該アレイの該ファイバの該第2の末端は束ねられて1つの末端ポートを形成し、該複数の光ファイバは該放射光を受光し、該ファイバの該第1の末端からの放射光を該ファイバの該第2の末端から構成される該末端ポートに送る、リニアアレイと、該1つの末端ポートおよび1つの検出器に光学的に接続された末端ポートアセンブリであって、少なくとも1つのレンズを備える末端ポートアセンブリと、を備えるシステムが提供される。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、サンプル中の対象分析物の存在を検出する方法であって、細長い透明のサンプル容器を設けるステップと、該サンプルに光学的に接続される励起光源であって、該励起光源からの照射は該サンプルの長さ方向に配向され、かつ、該照射は該サンプルから放射される放射光を誘起する、励起光源を設けるステップと、該サンプルのホルダの周りに配置された少なくとも2つのリニアアレイであって、該リニアアレイがそれぞれ、第1および第2の末端を有する複数の光ファイバから構成され、該ファイバの該第1の末端は該容器の長さ方向に沿って、その近傍に配置され、各該アレイの該ファイバの該第2の末端は束ねられて1つの末端ポートを形成し、該複数の光ファイバは該放射光を受光し、該ファイバの該第1の末端からの放射光を該ファイバの該第2の末端から構成される該末端ポートに送る、リニアアレイを設けるステップと、該1つの末端ポートおよび1つの検出器に光学的に接続された末端ポートアセンブリを設けるステップと、を含む方法が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態によれば、サンプル中の対象分析物の存在を検出する方法であって、細長い透明のサンプル容器を設けるステップと、該サンプルと光学的に接続される励起光源であって、該励起光源からの照射は該サンプルの長さ方向に配向され、かつ、該照射は該サンプルから放射される蛍光放射光を誘起する、励起光源を設けるステップと、該サンプルのホルダの周りに1つの平面状アレイを構成し、隣接する該リニアアレイが互いに対して90度に配向されている少なくとも4つのリニアアレイであって、該リニアアレイがそれぞれ、第1および第2の末端を有する複数の光ファイバから構成され、該ファイバの該第1の末端は該容器の長さ方向に沿ってその近傍に配置され、各該アレイの該ファイバの該第2の末端は束ねられて1つの末端ポートを形成し、該複数の光ファイバは該放射光を受光し、該ファイバの該第1の末端からの放射光を該ファイバの該第2の末端から構成される該末端ポートに送る、リニアアレイを設けるステップと、該1つの末端ポートおよび1つの検出器に光学的に接続された末端ポートアセンブリであって、少なくとも1つのレンズを備える末端ポートアセンブリを設けるステップと、を備える方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかるシステムの一実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明にかかる末端ポートアセンブリの一実施形態の側面を示す概略図である。
【図3】本発明にかかるサンプル容器の一実施形態を示す概略図である。
【図4】図3に示すサンプル容器を側面から見た概略図である。
【図5】図3に示すサンプル容器を上から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、サンプル中の対象分析物の存在を検出するシステムに関する。対象分析物は生物学的性質または化学的性質を有するものであってよく、化学的部分(トキシン、代謝産物、薬物、残留薬物)、ペプチド、たんぱく質、細胞成分、ウイルスおよびこれらの組み合わせなどであってよいが、これらのものに限られない。対象分析物は、流体またはゲルなどの担持媒体のいずれに含まれていてもよい。一実施形態では、対象分析物はプリオン、特に細胞性プリオンたんぱく質(PrP)の立体構造変化形態(PrPSc)であり、プリオンは、凝集、不溶性、プロテアーゼ分解耐性、βシートリッチな二次構造といった特徴的な物理化学的性質および生化学的性質を有する。本明細書中で「プリオン」とは、伝染性海綿状脳症(TSE)またはプリオン病の発生に関係する、たんぱく質性の感染性病原体の異常なアイソフォーム(たとえば、PrPSc)を意味し、本明細書中においては、ヒトの疾患であるクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群(GSS)、致死性家族性不眠症(FFI)、クールー病、ならびに、動物型の疾患であるウシ海綿状脳症(BSE、狂牛病として一般的に知られている)、慢性消耗病(CWD)(オオシカおよびシカ)、スクレイピー(ヒツジ)を意味するが、これらのものに限られない。「たんぱく質性」とは、プリオンがたんぱく質および他の生化学的なものから構成されうることを意味し、したがってプリオンがたんぱく質のみから構成されることを示していないことを意味する。
【0015】
サンプルは、サンプル307(図3)と光学的に接続される励起光源によって照射される。励起光源からの照射はたとえばサンプルの長さ方向に方向付けられている。励起光源としては、レーザ、フラッシュランプ、アークランプ、発光ダイオードなどが挙げられるが、これらのものに限られない。好ましくは、励起光源はレーザである。適したレーザの非限定の例としては、532nmの共振型Nd:YAGレーザが挙げられる。サンプルを照射することによって、サンプルは放射光を発する。この放射光は蛍光、燐光、紫外線、可視光線、赤外線、ラマン散乱光およびこれらの組み合わせからなる群から選択可能である。一実施形態では、この放射光は蛍光である。放射光は、当業者には容易に明らかな方法によって、サンプル中の分析物の濃度と関連づけることができる。
【0016】
図1は本発明にかかるシステム100を示す。この実施形態では、細長い透明のサンプル容器306を収めるサンプルホルダ102から、4つのリニアアレイ101が末端ポート103へと延びている。末端ポート104の一端は末端ポートアセンブリ200に挿入されている。リニアアレイは、第1および第2の末端を有する複数の光ファイバから構成されており、これらの複数の光ファイバは任意選択的に保護シースおよび/または絶縁シースで覆われている。ファイバの数は変えることができるが、一実施形態では、約10乃至約100、あるいは約25乃至約75、あるいは約50である。リニアアレイの数は変えることができるが、少なくとも2である。光ファイバの第1の末端がサンプル容器を取り囲み、かつ、サンプル容器に(たとえば、約1mm乃至約1cmで)非常に近接することができる十分な空間を提供できるほどに、サンプルホルダが十分大きくなければならないという点で、リニアアレイの最大数はサンプルホルダの大きさに依存する。一実施形態では、リニアアレイの数は2乃至10、あるいは約4乃至6、あるいは4である。一実施形態では、リニアアレイは一つの平面状アレイを構成し、このとき隣接するアレイは互いに等距離に配置され、サンプルホルダを取り囲んでいる。リニアアレイの数が4であるとき、隣接するアレイは互いに対して90度で配向される。リニアアレイの長さは幅広く変えることができるが、光ファイバの数および特性に依存する。その長さは、これらの光ファイバの一体性を損なうことなく各リニアアレイからの光ファイバを束ねることが可能な程度に十分でなければならない。基本的に光ファイバの長さに上限はなく、したがってサンプルの分析に用いられる診断設備から遠くにサンプルを配置することができる。
【0017】
複数の光ファイバの第1の末端は、たとえば、サンプルを含む容器の長さ方向に実質的に直線状に配列される。複数の光ファイバの第2の末端は束ねられて1つの末端ポートを形成する。換言すれば、各リニアアレイからのファイバの第2の末端の所定長さが纏められて1つの束を形成する。好ましくは、各リニアアレイからのファイバの第2の末端は、束の内でランダムに散在している。複数の光ファイバは対象分析物から発せられた放射光を受光し、ファイバの第1の末端からの放射光は、ファイバの第2の末端から構成される末端ポートに送られる。ファイバは高い開口数(NA)を有し、これはsineθ/2(θは入射光の受光角)に相応する。本発明において、NAは約0.20乃至約0.25の範囲であり、受光角は約20度乃至45度である。受光角は、放射光の実質的に全てが複数のファイバによって捕捉可能であるように選択される。これにより、希釈分析物(PrPScなど)の放射光の最適な収集効率が保証される。
【0018】
一実施形態では、光ファイバは石英ガラスである。ファイバの直径は、たとえば、約50μm乃至約400μmである。各リニアアレイからの光ファイバを束にすることにはいくつかの利点がある。各リニアアレイについて個別の検出器は必要とされず、1つの検出器を用いることができる。このことによって、4つのリニアアレイを含むシステムにおいて、検出用の領域は4つの個別の検出器の大きさの1/4となる。したがって、背景雑音は劇的に減少し、これは一方で信号雑音比を高め、検出限界を下げることとなる。一実施形態では、検出器のサイズは約0.5mm×0.5mm乃至約1mm×1mmである。本発明にかかるシステムの検出限界は、分析物の少なくとも1アトモル、あるいは少なくとも200アトモル、あるいは約0.1アトモル乃至約1.0アトモル、あるいは約0.1アトモル乃至約1ナノモル、あるいは約0.4アトモル乃至約1.0アトモルである。あるいは、システムの検出限界は分析物の少なくとも0.1アトグラム、あるいは、分析物の少なくとも10アトグラムである。
【0019】
図2は本発明にかかる末端アセンブリの一実施形態を示す。光ファイバの束から構成される1つの末端ポート104の一端は、末端アセンブリ200の入口202に挿入されている。放射光は光ファイバによって末端アセンブリ200を通って出口207へ送られ、その後、一方で検出器に接続されている出力用光ファイバ208に送られる。出力用光ファイバ208の直径は、たとえば、約300μm乃至約500μm、好ましくは約400μmである。したがって、末端ポートアセンブリによって1つの末端ポートが検出器に接続されている。末端ポートアセンブリはたとえば、入射放射光を平行にする第1のレンズ203を有する。末端ポートアセンブリはたとえば、出力される放射光を出力用光ファイバ208に適したNAに焦点合わせする第2のレンズ204をさらに有する。末端ポートアセンブリはたとえば、少なくとも1つのノッチフィルタ205および少なくとも1つの帯域フィルタ206をさらに有する。
【0020】
適した検出器の非限定の例としては、光ダイオード検出器、光電子増倍管、電荷結合素子、光子計数装置、光学分光計およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0021】
図3は本発明にかかる、適したサンプルホルダ102の一実施形態を示す。細長い透明の容器306がサンプルホルダ300を通されるための空間が形成されるように、スペーサ303が配置されている。一実施形態では、サンプルホルダ300は細管であり、ガラス、石英または他の当業者に知られている適切な材料から構成されている。たとえば、細管は100μlの流体を保持することができる。スペーサ303は、光ファイバの第1の末端が透明容器を包囲し、そのすぐ近傍にあるように、スロット304(または空間)が形成されるように設けられている。スペーサ303は、ネジ等の留め具301などの手段によってスペーサに取り付けられた上部板305と下部板302によって固定されている。
【0022】
本発明にかかるシステムの別の利点は、レーザにパワーを与えるために必要とされる以外に、対象分析物からの放射光を収集し、検出するのに外部電源が必要とされないことである。このことによって、システムは簡素化され、可搬性が向上され、適用範囲は広くなる。さらに、外部電源がないことによって、克服されるべき背景雑音が低減され、これは一方で検出限界を下げることに貢献する。
【0023】
捕捉される放射光は、光検出器によって電気信号に変換され、分析器(図示せず)に送られる。分析器はこの電気信号を受信し、分析物の存在についてサンプルを分析する。分析器の例は当業者にはよく知られている。分析器の例としては、電気信号の位相感度検出を可能にするロックインアンプ、または、本明細書中に記載の異なる種類の光検出器によって生成される電気信号を分析する当業者に知られた任意の他の手段が挙げられる。
【実施例】
【0024】
実施例1
固相共振型Nd:YAGレーザ(Beam of Light Tech.(オレゴン州クラッカマス)製)からの時間変調光を、典型電力30mWで波長532nmの持続波を用いて、細管の軸に沿って焦点合わせすることにより、サンプルを励起させる。この波長は参照物質であるローダミンの吸収ピークによく一致する。光ファイバアセンブリは、ほぼ細管の1/3の長さにわたって細管の外周の周りに互いに90度で配置される4つのリニアアレイを含んで設計した。開口数(0.22、または〜23度の受光角)が大きいことから、このファイバの配置によってサンプルの視界は完全に覆われる。4つのリニアアレイによって収集された光は纏められ(すなわち、束ねられまたは組み合わされ)、ホログラフィノッチフィルタ(Kaiser Optical Systems(ミネソタ州アンアーバー)製)および帯域フィルタ(Omega Optical, Inc.(バーモント州ブラットルボロ)製)が取り付けられている移動式光学系に集められる。これらはそれぞれ、励起光源からの散乱光を除くため、および、レポーター染料の蛍光検出を帯域制限するために用いられる。光はその後1つのマルチモード400μm光ファイバ(Thorlabs, Inc.(ニュージャージー州ニュートン)製)に戻されて焦点合わせされ、BNCコネクタに直接取り付けられた検出電子機器のプリアンプの低ノイズ光起電ダイオード検出器(United Detector Technology(カリフォルニア州ホーソーン)製)に出力される。放射光の検出には位相敏感性の「ロックイン」検出スキームが用いられる。励起光源は、検出システムに関する参照周波数を発生する光学チョッパ(Thorlabs, Inc.製)を用いて変調される。ダイオード検出器はトランスコンダクタンスプリアンプ(Stanford Research Systems, Inc.(カリフォルニア州サニーベール)製)の入力に取り付けられ、全体のラインインピーダンスを低減し、これらの低レベル信号のインピーダンスマッチングの難しさをなくす。信号はその後ロックインアンプ(Stanford Research Systems製)で検出され、LabView(登録商標)(National Instruments Inc.(テキサス州オースチン)製)プログラムでデータ取得が行われる。このプログラムは電圧の読み取りに関してロックインアンプを動作させる(pole)電子ストリップチャートから構成され、操作者に測定の時間履歴を周期的に表示し、ASCIIファイルにタイムスタンプとともに値を記録する。ロックインアンプの時定数は数十ヘルツの帯域を与えるように選択される。測定においては時定数として3秒を選択した。安定な読み取りのため、ロックインには持続時間においていくつかの時定数(本例では3乃至30秒)が必要とされる。新たなサンプルをロードしてから信号が安定化した(20乃至30秒)後に、測定値を取得した。励起光源の変調およびロックイン検出器の参照周波数は753Hzであり、環境ノイズを最少化するために選択したものである。これに加え、ロックインアンプを用いてライン周波数および2倍ライン周波数での信号のフィルタリングを行い、プリアンプ信号を変調周波数で帯域フィルタリングした。サンプルに対して1nA/Vのプリアンプ感度を選択し、1Mオームの入力インピーダンスが得られた。測定を行う際、1セットの開始手順を維持した。この手順とは、全ての電子機器(レーザ、ロックインアンプ、アンプ、プリアンプ)の15分間のウォームアップ、システムが確実に適切に電気的に接地されているようにする暗信号レベルの視認チェック、安定性と出力レベルに関するチェックのためのレーザパワーの測定、レーザ配置の視認チェック、である。ベースライン信号のコントロール測定は蒸留脱イオン水を入れた細管を用いてチェックした。
【0025】
濃度を低下させてローダミンレッドの蛍光放射を測定することにより、装置の感度限界をテストした。ローダミンレッドは0.01アトグラム(ag)[20アトモル(am)]の濃度で検出可能であった。特異性および感度を、シカ、ハムスター、マウスおよびヒツジの全長組み替えPrP(rPrP)を用いたアッセイによって求めた。テストした種にかかわらず、PrPの検出可能限界は10ag以上であった。
【0026】
健常なおよび感染したハムスター、シカおよびヒツジ由来脳ホモジェネートを、本発明にかかる方法における使用に関して調べた。10%脳ホモジェネートのウェスタンブロットによって、出発材料中のPrPScの存在が確認された。完全なたんぱく質分解の確認として健常なハムスターの脳材料由来のPrPの除去と共に行われるPK分解後のPrPScがより低い分子量にシフトするという特徴的バンドを有する、典型的なPrPバンドパターンがPK処理前の10%脳ホモジェネートにおいて明らかにされた。臨床動物由来の清浄剤抽出脳ホモジェネートの連続希釈から、PrPScのウェスタンブロットによる検出限界は約10−3乃至10−4であり、キャプチャ酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によるPrPScの検出はさらに10乃至10倍希釈物に感度を有する(データ示さず)ことが示された。これに対し、同一のモノクローナル抗体(Mab)および脳ホモジェネートを用いて、本例で報告されるアッセイの感度は、ウェスタンブロットおよびキャプチャELISAのそれを少なくとも5桁の大きさで上回った。本発明の方法を用いて、信号ベースライン(S/B)比が脳ホモジェネート中のPrPの検出可能性の評価に用いられた。1.1を超えるS/B比がPrPの存在を示すことがわかった。ハムスター、ヒツジおよびシカの健常および感染脳組織由来の、PK処理およびPK非処理脳ホモジェネートの連続希釈物をSOFIAでアッセイした。予想されたように、PK処理後の健常脳組織由来の全てのサンプルは、試験した濃度にかかわらず、1.1未満のS/B比を有し、PrPが存在しないことを示した。全ての信号出力または1.1を超えるS/B比によって示されるように、PK処理感染ハムスター脳ホモジェネートの、連続10倍希釈物由来プロテアーゼ耐性PrPScは、10−11の希釈物で検出可能であり、ヒツジおよびシカ由来のものについては10−10の希釈で検出可能であった。さらに、PK処理脳ホモジェネートからの最大PrPSc検出は、ハムスターに関して10−7乃至10−8倍希釈の範囲であり、ヒツジおよびシカについても同様であった。
【0027】
10倍連続希釈PK非処理健常脳ホモジェネートの場合、SOFIAによって、PrPは、ハムスターに関しては10−11の希釈物で、シカおよびヒツジに関しては10−10の希釈物で検出可能であり(10−6乃至10−7の希釈物でピーク検出)、その後のS/B比は全て1.1未満に落ちた。263K感染ハムスター、スクレイピー感染ヒツジおよびCWD感染シカのPK非処理脳組織由来のもののS/B比は、PrPの存在を示し続けた。関連組織由来の連続希釈脳ホモジェネートは全て、ヒツジおよびシカに関しては10−11の希釈物で(10−7の希釈物でピーク検出)、ハムスターに関しては10−13の希釈物で(10−8の希釈物でピーク検出)、1.1を超えるS/B値を示した。これらの結果は、プロテアーゼ非処理感染脳組織由来のPrPが、PrP検出可能なレベルを超えて希釈可能でありながらも、全てのPrPScを検出する能力が保持されていることを示す。これらの結果は、臨床疾患にある感染脳中のPrPよりも、少なくともさらに1log多い全PrPScが存在することをさらに示唆する。このことを支持するものとして、PrPScがスクレイピー感染中に脳内に蓄積され、PrPのそれよりも10倍大きい濃度に達するということが先に報告されている。263K感染ハムスターに関する先に公開されたデータ(R. Atarashi et al. "Ultrasensitive detection of scrapie prion protein using seeded conversion of recombinant prion protein," Nature Meth. vol. 4 (2007) pp. 645-650)を用いると、SOFIAは、PK非処理ハムスター脳由来のPrPScについて約10agの検出限界を有する。ハムスターのデータの直接外挿によれば、1フェムトグラムのPrPScがヒツジおよびシカの脳材料から検出可能であることが示唆される。しかし、等しい抗体反応性を仮定すると、希釈サンプルのウェスタンブロットは、1グラム等量をベースとして、ハムスターの脳内には、ヒツジおよびシカの脳材料よりも少なくとも10乃至100倍多いPrPScが存在することが示唆され、これは、ヒツジおよびシカにおけるたんぱく質の検出が10乃至100agまたはこれよりも良い範囲にあることを示唆した。
【0028】
本発明の全ての実施形態において、他に特に言及しない限り、パーセントはすべて組成物全体の重量割合である。割合(ratio)はすべて、他に特に言及しない限り、重量割合である。範囲はすべて包括的でありかつ化合可能である。数値量はすべて、他に特に言及しない限り、「約」の語により修正されるものと理解される。
【0029】
発明の詳細な説明において引用した全ての文献は、関連部分において、本明細書中にその全体が参照により含まれる。任意の文献の引用は、本発明に関する従来技術であることを認めるものであるとして理解されるべきではない。用語の任意の意味または定義が参照により含まれる文献の同一の用語の任意の意味または定義に反する場合、本願の書類において当該用語に与えられている意味または定義が優先される。
【0030】
本発明の特定の実施形態について例示し、記載したが、種々の他の変更および修正が本発明の概念および範囲を逸脱すること無く行うことができることは当業者には明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲において、本発明の範囲内にあるかかる全ての変更および修正が含まれるものと理解される。
【符号の説明】
【0031】
100 システム、 101 リニアアレイ、 102 サンプルホルダ、 103 末端ポート、 104 末端ポート、 200 ポートアセンブリ、 202 出口、 203 第1のレンズ、 204 第2のレンズ、 205 ノッチフィルタ、 206 帯域フィルタ、 208 光ファイバ、 300 サンプルホルダ、 301 留め具、 302 下部板、 303 スペーサ、 304 スロット、 305 上部板、 306 容器、 サンプルホルダ、 307 サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の対象分析物の存在を検出するシステムであって、
a)細長い透明のサンプル容器と、
b)該サンプルに光学的に接続される励起光源であって、該励起光源からの照射は該サンプルの長さ方向に配向され、かつ、該照射は該サンプルから放射される放射光を誘起する、励起光源と、
c)該サンプルのホルダの周りに配置された少なくとも2つのリニアアレイであって、該リニアアレイがそれぞれ、第1および第2の末端を有する複数の光ファイバから構成され、
i)該ファイバの該第1の末端は該容器の長さ方向に沿って、その近傍に配置され、
ii)各該アレイの該ファイバの該第2の末端は束ねられて1つの末端ポートを形成し、
iii)該複数の光ファイバは該放射光を受光し、該ファイバの該第1の末端からの放射光を該ファイバの該第2の末端から構成される該末端ポートに送る、
リニアアレイと、
d)該1つの末端ポートおよび1つの検出器に光学的に接続された末端ポートアセンブリと、
を備える、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記末端ポートアセンブリは、少なくとも1つのレンズをさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記末端ポートアセンブリは、ノッチフィルタをさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記末端ポートアセンブリは、帯域フィルタをさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
4つの前記リニアアレイを備える、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記複数のリニアアレイは1つの平面状アレイを構成し、隣接する前記リニアアレイは互いに対して90度に配向されている、請求項4記載のシステム。
【請求項7】
前記励起光源はレーザである、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記放射光は、蛍光、燐光、紫外線、可視光線、赤外線、ラマン散乱光およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
各前記アレイの前記ファイバの前記第2の末端は、ランダムな順で束ねられている、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
電源に接続されていない、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記検出器は約0.5mm×0.5mm乃至約1mm×1mmのサイズを有する、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
各前記リニアアレイは、約10乃至約100の前記ファイバから構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
前記光ファイバは、約20度乃至約45度の受光角を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
サンプル中の対象分析物の存在を検出するシステムであって、
a)細長い透明のサンプル容器と、
b)該サンプルと光学的に接続される励起光源であって、該励起光源からの照射は該サンプルの長さ方向に配向され、かつ、該照射は該サンプルから放射される蛍光放射光を誘起する、励起光源と、
c)該サンプルのホルダの周りに1つの平面状アレイを構成し、隣接する該リニアアレイが互いに対して90度に配向されている少なくとも4つのリニアアレイであって、該リニアアレイがそれぞれ、第1および第2の末端を有する複数の光ファイバから構成され、
i)該ファイバの該第1の末端は該容器の長さ方向に沿ってその近傍に配置され、
ii)各該アレイの該ファイバの該第2の末端は束ねられて1つの末端ポートを形成し、
iii)該複数の光ファイバは該放射光を受光し、該ファイバの該第1の末端からの放射光を該ファイバの該第2の末端から構成される該末端ポートに送る、
リニアアレイと、
d)該1つの末端ポートおよび1つの検出器に光学的に接続された末端ポートアセンブリであって、少なくとも1つのレンズを備える末端ポートアセンブリと、
を備える、ことを特徴とするシステム。
【請求項15】
前記サンプルは約0.1アトモル乃至約1ナノモルの対象分析物を含む、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記末端ポートアセンブリは、ノッチフィルタおよび帯域フィルタをさらに備える、請求項14記載のシステム。
【請求項17】
前記励起光源はレーザである、請求項14記載のシステム。
【請求項18】
前記検出器は、約0.5mm×0.5mm乃至約1mm×1mmのサイズを有する、請求項14記載のシステム。
【請求項19】
各前記リニアアレイは、約10乃至約100の前記ファイバを備える、請求項14記載のシステム。
【請求項20】
前記光ファイバは、約20度乃至約45度の受光角を有する、請求項14記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−522221(P2012−522221A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502257(P2012−502257)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/028692
【国際公開番号】WO2010/111508
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(508115026)ロス アラモス ナショナル セキュリティー,エルエルシー (9)
【氏名又は名称原語表記】LOS ALAMOS NATIONAL SECURITY,LLC
【住所又は居所原語表記】LOS ALAMOS NATIONAL LABORATORY,LC/IP,MS A187,Los Alamos,NM 87545,U.S.A.
【出願人】(510150927)ザ リサーチ ファンデーション オブ ステート ユニバーシティ オブ ニューヨーク (3)
【Fターム(参考)】