説明

蛍光分析方法

【課題】DNA配列解析などのスループットが向上する、蛍光分析方法を提供する。
【解決手段】オリゴヌクレオチド等の生体関連分子が固定される基板に蛍光測定用の光を照射し、生じる蛍光を集光し、集光された光を分光し、2次元センサに光を結像させ、2次元センサにて蛍光検出する方法であって、異なる方向に波長分散を行い、それらを同時に検出することで、波長分散距離が格子間距離よりも長い場合でも、分光された波長毎の強度と分光対象物の位置を算定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光分析装置に関し、例えば、DNA,RNA、又はタンパク質等の生体関連物質に光を照射して光分析する光計測・分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板の表面に配置された物体に対して励起光を照射して物体の形状を観察する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、励起光源から出力された励起光を透明な基板に照射し、その内部で励起光を全反射させることにより、基板表面にエバネセント波を生成し、基板上の試料によるエバネセント波の散乱光を検出する装置が記載されている。ただし、特許文献1に記載の装置では散乱光を分光していない。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、エバネセント波で励起された試料成分からの蛍光及び散乱光を分光する装置が記載されている。ただし、特許文献2に記載の装置では試料成分が流路境界面に固定されていない。
【0004】
一方、基板表面に複数の生体分子を固定し、特許文献1と同様に基板表面の一定範囲にエバネセント波を生成し、そのエバネセント波によって励起された生体分子の発光を画像化する装置がある。基板上に非蛍光性の生体分子を固定し、蛍光性の分子を含む反応液を基板上に流入させ、生体分子固定位置からの蛍光を観測するものである。これにより、生体分子と反応液中の分子との結合反応を観察することができる。例えば、はじめに基板に非修飾一本鎖のDNAを固定し、塩基種ごとに異なる蛍光体で修飾された蛍光修飾塩基を含む反応液を導入し、一本鎖DNAに対して相補な塩基を結合させながら、分子固定位置からの蛍光を分光すれば、固定されたDNAの配列を解読することが可能である。
【0005】
近年、非特許文献2にあるように、基板にDNAなどを固定してその塩基配列を決定することが提案されている。基板表面にランダムに分析すべき試料DNA断片を1分子ずつ捕捉し、ほぼ1塩基ずつ伸長させて、その結果を蛍光計測より検出することにより塩基配列を決定するものである。具体的には、DNAポリメラーゼの基質として鋳型DNAに取り込まれてDNA鎖伸長反応を保護基の存在により停止することができ、かつ検出され得る標識を持つ4種のdNTPの誘導体(MdNTP)を用いてDNAポリメラーゼ反応を行わせる工程、次いで取り込まれたMdNTPを蛍光等で検出する工程、及びMdNTPを伸長可能な状態に戻す工程を1サイクルとし、それを繰り返すことにより試料DNAの塩基配列を決定する。本技術では、DNA断片を1分子ずつ配列決定することができるため、同時に数多くの断片を解析することができ、解析スループットを大きくすることができる。また、本方式では、単一DNA分子毎に塩基配列が決定できる可能性があるため、従来技術の問題であったクローニングやPCR等での試料DNAを精製,増幅が不要にできる可能性があり、ゲノム解析や遺伝子診断の迅速化が期待できる。なお、本方法では、分析すべき試料DNA断片分子が基板面にランダムに固定されるため、捕捉されたDNA断片分子数に対して数100倍の画素数を有する高価なカメラが必要となる。つまり、DNA断片分子同士の間隔が平均1ミクロンになるように調整した場合、より大きな間隔同士の分子もいれば、より近接した間隔の分子同士も存在し、これらを互いに分離して検出するには、基板面に換算して、より細かな間隔で蛍光像を検出する必要がある。通常、数10分の1の間隔で計測する必要がある。
【0006】
また、一方、非特許文献3および特許文献3では、全反射エバネッセント照射検出方式よりも励起光照射体積の一層の低減が可能となるナノ開口エバネッセント照射検出方式によって、蛍光検出の感度を更に向上させている。2枚のガラス基板,ガラス基板Aとガラス基板Bを平行に配置し、ガラス基板Aのガラス基板Bと対面する側の表面に、径50nmのナノ開口を有する膜厚約100nmの平面状のアルミニウム薄膜を積層する。アルミニウム薄膜は遮光性能を有している必要がある。2枚のガラス基板の中間に反応槽を構成し、反応槽に溶液を充填することによって、2枚のガラス基板の間に溶液層を形成する。反応槽には溶液の注入口と排出口があり、注入口から溶液を注入し、排出口から溶液を排出させることで、溶液をガラス基板およびアルミニウム薄膜と平行方向にフローさせることができる。これにより、溶液層の溶液を任意の組成に交換することが可能である。Arイオンレーザから発振した波長488nmの励起光を、ガラス基板Bと反対方向より、ガラス基板Aに対して垂直に、対物レンズで絞って照射すると、ナノ開口内部の底平面近傍の溶液層に励起光のエバネッセント場が形成され、それ以上先の溶液層内部に励起光が伝播することはない。一方、蛍光発光は、前記対物レンズを用いて2次元CCD上に結像することによって検出される。エバネッセント場では、励起光強度がナノ開口底平面から離れるに従って指数関数的に減衰し、ナノ開口底平面から30nm程度の距離で励起光強度が1/10となる。更に、ナノ開口エバネッセント照射検出方式では、全反射エバネッセント照射検出法と異なり、ガラス基板と平行方向の励起光照射幅が開口径すなわち50nmに限定されるため、励起光照射体積が一層低減される。このため、遊離の蛍光体の蛍光発光や水のラマン散乱を始めとする背景光を飛躍的に低減することが可能となる。その結果、より高濃度の遊離の蛍光体存在下で、対象とする生体分子に標識された蛍光体だけを選択的に検出することが可能となり、非常に高感度な蛍光検出を実現できる。本文献では、以上の蛍光検出方式をDNA分子の伸長反応によるdNTPの取り込み計測に応用している。
【0007】
以降では、試料成分固定面のように、エバネッセント場が開始される平面をエバネッセント場境界平面と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−257813号公報
【特許文献2】特開2005−70031号公報
【特許文献3】米国特許第6917726号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nature Vol. 374, 555-559 (1995).
【非特許文献2】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.100, pp3960, 2003
【非特許文献3】SCIENCE 2003, Vol.299, pp. 682-686.
【非特許文献4】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.102, pp5932, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
基板表面上に固定された生体分子の蛍光を画像化することにより生体分子を分析する装置においては、一般に基板上の個々の固定された領域(スポット)ごとに異なる種類の生体分子を固定し、各スポットからの蛍光を画像化によって分離して検出する。できる限り短時間で多数種の生体分子を分析し、また、消費される試薬量を低減するには、スポットは光学的に分解可能な範囲でできる限り基板上に高密度に生体分子を固定化するのが好ましい。また、1スポットあたりの試薬消費量を低減するためには、1スポット内に固定化する生体分子数は少ないほど好都合であり、1分子が理想的である。非特許文献1に記載されているように、蛍光検出法は1分子をも検出する感度を有しているけれども、少数分子からの蛍光を分光検出して良好なS/Nを得るには、損失の少ない分光イメージング法が好ましい。したがって、プリズムや回折格子などの分散素子による分散分光イメージング法、もしくはダイクロイックミラーで分光して複数のイメージセンサで画像を取得する方法(ダイクロ/マルチセンサ分光イメージング法)が好ましい。
【0011】
上記複数のスポットは光学的に分解可能な範囲でできる限り基板上に高密度に配置するのが好ましいが、ダイクロ/マルチセンサ分光イメージング法では、使用する蛍光標識物の種類の数だけイメージセンサが必要になるため、検出装置のコストが高くなるという問題がある。また、蛍光像をダイクロイックミラーなどで分割するため、S/Nが必ずしも大きくならない場合も多い。分散分光イメージング法にすれば、最小限の(たとえば1個)のイメージセンサで検出できるというメリットがあるが、スポット同士の間隔が狭くなると、スポットから発する蛍光を波長分散させた蛍光像が近接する別のスポットの蛍光像と重なってしまう。別のスポットの蛍光像と重ならない方向へ波長分散させることで、画素を有効に使う方法もあるが、どの角度に波長分散させたとしても、必ず別スポットと重なってしまうため、分散させる距離にはおのずと限界がある。従って蛍光検出精度を向上させるには、基板上に生体分子を固定化したスポットの間隔を広くしなければならなくなり、高密度化しにくいという問題があった。
【0012】
また従来の光学系においては、生体分子が基板上にランダムに固定された場合、基板上のスポット数に対して、数100倍以上の画素数が必要であり、検出速度が低下すると共に、高価な2次元センサが必要になるという問題点があった。さらに、また、より高解像度で蛍光像を検出しなければならないため、開口数NAの大きな集光レンズを使う必要があり、高価な系になるという問題点があった。
【0013】
本発明の目的は、少ない画素数で効率よく画像を検出する方法に関する。例えば、基板上に捕捉するDNA断片の分子からの蛍光像を2次元センサにて蛍光検出する際、少ない画素数で、効率よく検出する方法を提供することに関する。また、例えば基板上に固定化して捕捉するDNA断片の分子からの蛍光像を2次元センサにて蛍光検出する際、安価に、または操作性の良い検出方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、複数の測定対象物を精密配置し、複数の検出画素を備えた検出器の特定画素に各測定対象物をそれぞれ結像させることに関する。オリゴヌクレオチド等が固定される基板に蛍光測定用の励起光を照射し、生じる蛍光を集光し、集光された光を分光し、センサに光を結像させ、2次元センサにて蛍光検出する方法であって、該基板には、オリゴヌクレオチド等が固定される領域が複数設けられ、それらが基板上に配置され、波長分散を行い、該波長分散とは異なる波長分散条件で波長分散を行い、分光された波長ごとの強度と分光対象物の位置を算定することを特徴とする。本発明の特徴は、以下本発明を実施するための最良の形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、例えば、測定すべきオリゴヌクレオチドが固定されるべき領域に対して、必要な2次元センサの画素数は、測定精度を損なわずに、従来の数100倍から、10倍以下と少なくすることができ、効率よく検出することができる。そのため、同じ2次元センサを使う場合、一時により多くの領域からの蛍光像を得ることができ、高スループットが達成できる。また、少ない画素数のカメラを使う場合には、より安価に測定できることになる。
【0016】
また、本発明により、例えば、測定すべきオリゴヌクレオチドが固定された領域数が同じ場合、少ない画素数で、効率よく検出でき、2次元センサの価格を安価することができるようになる。また、光学分解能をオリゴヌクレオチドが固定される領域同士の間隔程度にすることができるため、大きな開口数の集光レンズを使う必要がなくなり、安価なレンズを使用することができ、液浸レンズも使う必要がないので、操作性が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施例の蛍光分析方法を使ったDNA検査装置の構成図。
【図2A】基板の構造図。
【図2B】基板,プリズム,流路の構造図。
【図3A】基板の蛍光を波長分散して検出する方式の説明図。
【図3B】基板の蛍光を波長分散して検出する方式の説明図。
【図3C】格子点の蛍光スペクトルの説明図(蛍光体なし)。
【図3D】格子点の蛍光スペクトルの説明図(蛍光体あり)。
【図3E】3×3画素/格子点における塩基同定〔格子点(10,2)がグアニン、格子点(10,5)がシトシン〕。
【図3F】3×3画素/格子点における塩基同定〔格子点(10,b)がアデニン〕。
【図3G】3×3画素/格子点における塩基同定〔格子点(10,b)がアデニン〕。
【図3H】3×3画素/格子点における塩基同定〔格子点(10,b)がグアニン〕。
【図3I】3×3画素/格子点における塩基同定〔格子点(10,b)がシトシン〕。
【図3J】3×3画素/格子点における塩基同定〔格子点(10,b)がチミン〕。
【図3K】3×3画素/格子点における塩基同定〔格子点(10,b)がチミン〕。
【図3L】3×3画素/格子点における塩基配列同定。
【図4】本発明の第2の実施例の蛍光分析方法を使ったDNA検査装置の構成図。
【図5A】2×2画素/格子点における塩基同定〔格子点(7,6)がアデニン、格子点(7,4)がグアニン、格子点(7,2)がシトシン、格子点(7,0)がチミン〕。
【図5B】2×2画素/格子点における塩基同定〔格子点(7,b)がアデニン〕。
【図5C】2×2画素/格子点における塩基同定〔格子点(9,b)がグアニン〕。
【図5D】2×2画素/格子点における塩基同定〔格子点(9,b)がシトシン〕。
【図5E】2×2画素/格子点における塩基同定〔格子点(9,b)がチミン〕。
【図5F】2×2画素/格子点における塩基配列同定。
【図6】基板とエバネッセント照明のためのプリズムとの接合部の構造図。
【図7】基板とエバネッセント照明のためのプリズムとの接合部の構造図。
【図8】基板とエバネッセント照明のためのプリズムとの接合部の構造図。
【図9】本発明の第5の実施例の基板の構造図。
【図10】フローセル垂直配置図。
【図11】フローセル傾斜配置図。
【図12】励起光形状設定のための光学配置図。
【図13】プリズム形状図。
【図14】伸長効率とディフェージング率の図。
【図15A】1×1画素/格子点における塩基同定〔格子点(6,5)がアデニン、格子点(6,4)がグアニン、格子点(6,3)がシトシン、格子点(6,2)がチミン〕。
【図15B】1×1画素/格子点における白色画素または灰色画素となる塩基配列の条件。
【図15C】1×1画素/格子点における白色画素または灰色画素となる塩基配列の組み合わせ。
【図15D】1×1画素/格子点における塩基配列同定のための白色画素と灰色画素パターン図。
【図15E】1×1画素/格子点における塩基配列候補同定(右側分散)。
【図15F】1×1画素/格子点における塩基配列候補同定(左側分散)。
【図15G】1×1画素/格子点における塩基配列候補同定(右側分散と左側分散)。
【図15H】1×1画素/格子点における参照配列における蛍光強度(右側分散と左側分散)。
【図15I】1×1画素/格子点における参照配列と塩基配列候補の蛍光強度比較による塩基配列同定。
【図15J】1×1画素/格子点における右側分散と左側分散の強度(分散率)を変えた場合の蛍光強度。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記の課題に対して鋭意検討した結果、光学素子を用いて波長分散させて検出する操作を、複数の方向に対して行い、データ解析を行うことで、隣接するビーズとの距離よりも大きい分散距離であっても蛍光色素の同定と波長分散対象物の位置を算定できるとの結論に達し、本発明を完成するに至った。以下、本発明を実施の形態例により説明するが、本発明は本例に限定されるものではない。
【0019】
〔実施例〕
以下、本発明を実施の形態例により説明するが、本発明は本例に限定されるものではな
い。
【0020】
<第1の実施形態>
基板表面に分析すべき試料DNA断片を1分子ずつ均等間隔で捕捉し、ほぼ1塩基ずつ伸長させて、取り込まれた蛍光標識を1分子ごと検出して塩基配列を決定する装置、方法について説明する。具体的には、DNAポリメラーゼの基質として鋳型DNAに取り込まれてDNA鎖伸長反応を保護基の存在により停止することができかつ検出され得る標識を持つ4種のdNTPの誘導体を用いてDNAポリメラーゼ反応を行わせる工程、次いで取り込まれたdNTP誘導体を蛍光等で検出する工程、及びdNTP誘導体を伸長可能な状態に戻す工程を1サイクルとし、それを繰り返すことにより試料DNAの塩基配列を決定する。なお、本操作は単分子蛍光検出法に基づくため、測定はHEPAフィルタを介したクリーンルーム様の環境にて行うことが望ましい。
【0021】
(装置構成)
図1は、本発明の蛍光分析方法を使ったDNA検査装置の構成図である。装置は顕微鏡に類似する装置の構成であり、基板8に捕捉するDNA分子の伸長状態を蛍光検出にて測定する。
【0022】
基板8は、図2に示すような構造をしている。基板8は少なくともその一部が透明材質でできており、材質としては合成石英などが使用できる。基板8には反応領域8aがあり、この部分は透明材質であり、この部分に試薬などが接触する。反応領域8a内にDNAが固定される領域8ijが複数形成されている。
【0023】
DNAが固定される領域8ijを、反応領域8a内にアレイ状に整列させる場合について説明する。領域8ijの個々の大きさは直径1000nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。この領域にはDNAを捕捉するための表面処理を施す。例えば領域8ijと、反応領域8a内の領域8ij以外の場所を、薄膜形成、エッチング技術などを用いて、領域8ijのみが表面処理剤が反応する材料で作製しておくことで、領域8ij上にのみ表面処理を施すことができる。その表面処理は、例えば、ストレプトアビジンを結合させておき、ビオチン標識したDNA断片を反応させることで、捕捉する。また、ポリTのオリゴヌクレオチドを固定化しておき、DNA断片の一端をポリA化処理して、ハイブリ反応にて捕捉することもできる。この際、DNA断片濃度が高い場合には個々の領域8ijに複数分子のDNAが入るが、DNA断片濃度を適当に調製することで、個々の領域8ijに単一分子のDNAのみが入るようにすることができる。なお、領域8ijをより小さくしていくことで、領域内に捕捉できる分子が1個になるようにすることができる。或いはビオチン化DNAをストレプトアビジン化ビーズに固定し、ビーズを反応領域8a内にばら撒くことでも、ビーズを領域8ijにアレイ上に配置することができる。或いはNature 437(7057):376−380に記載のエマルジョンPCRを用いて、同一のDNA配列を持つ鋳型が多数複製されたビーズを反応領域8a内にばら撒くことでも、ビーズを領域8ijにアレイ上に配置することができる。
【0024】
次にDNAが固定される領域8ijを、反応領域8a内にランダムに整列させる場合について説明する。これは領域8ijと、反応領域8a内の領域8ij以外の場所が、例えばストレプトアビジンなどの同一の表面処理が施されている場合である。従ってこの場合には、領域8ijはDNAが固定された領域を指す。この場合、DNA断片濃度が高い場合にはDNAの固定密度は高くなるが、DNA断片濃度を適当に調製することで、DNAの固定密度は低くなり、単一分子のDNAを十分な光学分解能で識別できる固定密度にすることできる。或いはビオチン化DNAをストレプトアビジン化ビーズに固定し、ビーズを反応領域8a内にばら撒くことでも、ビーズをランダムに配置することができる。或いはエマルジョンPCRを用いて、同一のDNA配列を持つ鋳型が多数複製されたビーズを反応領域8a内にばら撒くことでも、ビーズをランダムに配置することができる。ビーズの大きさは2000nm以下であり、より好ましくは10〜1000nmである。
【0025】
以後アレイ状の基板について説明するが、ランダム配置された基板を計測する場合においても、以下に記述する方法を適用することができる。アレイ状の基板では、すべての領域8ijに単一分子のDNAが固定化されている場合、領域8ijの一部のみDNAが固定化されている場合がある。
【0026】
一部のみDNAが固定化されている場合は、残りの領域8ijには固定化されておらず、空きの状態となる。なお、領域8ij同士の間隔dxは1ミクロン、間隔dyは3ミクロンとした。領域8ijはこのように、格子構造(2次元の長方格子構造)を形成し、その格子点の位置に領域8ijが配置される。このような、均等間隔の基板の作成法は、例えば、特開2002−214142号公報に記載の手法などで、作成する。なお、dx,dyは領域8ijの個々の大きさより大きく、4000nm程度以下が好ましい。基板の反応領域8aは76.2mm×25.4mmのスライドガラスの大きさとした。反応領域8aの大きさは、それより大きくても可であるし、例えば0.5mm×0.5mmの大きさのものを一定間隔で、1次元または2次元に複数個並べたようなものでもよい。なお、領域8ijには金属構造体を配置してもよい。金属構造体は半導体プロセスにて作成することもできる。電子線描画,ドライエッチング,ウェットエッチングなどが使用できる。金属構造体は、金,銅,アルミ,クロム等で、励起光の波長以下の大きさを有する形状であり、直方体,円錐,円柱,一部が突起状のものを有する構造などを使用する。
【0027】
dNTPの蛍光標識として種々の蛍光体を使うことができる。たとえば、Bodipy−FL−510,R6G、ROX、Bodipy−650を使用し、これらそれぞれ異なる4種の蛍光体で標識された3′末端がアリル基で修飾された4種のdNTP(3′−O−allyl−dGTP−PC−Bodipy−FL−510,3′−O−allyl−dTTP−PC−R6G,3′−O−allyl−dATP−PC−ROX,3′−O−allyl−dCTP−PC−Bodipy−650)を使用する。
【0028】
蛍光励起用のレーザ装置101a(Arレーザ,488nm:Bodipy−FL−510,R6G励起用)からのレーザ光をλ/4波長板102aを通して円偏光とする。蛍光励起用のレーザ装置101b(He−Neレーザ,594.1nm:ROX,Bodipy−650励起用)からのレーザ光をλ/4波長板102bを通して円偏光とする。両レーザ光をミラー104bとダイクロイックミラー104a(520nm以下を反射)で重ね合わせ、ミラー5を介して全反射照明用の石英製プリズム7に図のように入射面に垂直に入射し、DNA分子を捕捉した基板8の裏側から照射する。石英製プリズム7と基板8はマッチングオイル(無蛍光グリセリン等)を介して接触させており、レーザ光はその界面で反射することなく、基板8に導入される。基板8表面は反応液(水)で覆われており、その界面にてレーザ光は全反射し、エバネッセント照明となる。これにより、高いS/Nで蛍光測定が可能になる。
【0029】
なお、基板の近傍には、温調器が配置されているが、図では省略した。プリズム7と基板8の間で、励起光が通過する領域が光学的に透明であるヒーターまたはペルチエを用いることで温調を行うことができる。励起光が通過する領域に穴が開いており、そのなかにマッチングオイルを満たした構造であっても良い。また、通常観察のため、プリズム下部よりハロゲン照明ができる構造としているが、図ではこれを省略している。
【0030】
また、レーザ装置101a,101bとは別にレーザ装置100(YAGレーザ,355nm)を配置し、ダイクロイックミラー103(400nm以下を反射)でレーザ装置101a,101bのレーザ光と重ね合わせ同軸にして照射できるようにした。本レーザは、取り込まれたdNTP誘導体の蛍光検出後、dNTP誘導体を伸長可能な状態に戻す工程に使用するものである。
【0031】
基板8の上部には、試薬などを流し、反応させるためのフローチャンバ9が構成されている。チャンバには試薬導入口12があり、分注ノズル26を有する分注ユニット25,試薬保管ユニット27,チップボックス28により、目的の試薬液の注入などを行う。試薬保管ユニット27には、試料液容器27a,dNTP誘導体溶液容器27b,27c,27d,27e(27c,d,eは予備)及び洗浄液容器27f等が用意される。反応プロトコルに応じて、試薬の種類や数を増やすことができる。チップボックス28内の分注チップを分注ノズル26に取り付け、適当な試薬液を吸引し、チャンバ導入口から基板の反応領域に導入し、反応させる。廃液は廃液チューブ10を介して廃液容器11に排出される。これらは制御PC21により自動的に行われる。
【0032】
フローチャンバは光軸方向に透明材で形成され、蛍光検出される。蛍光13は、自動ピントあわせ装置29で制御される集光レンズ(対物レンズ)14で集められ、フィルタユニット15で必要な波長の蛍光を取り出し、不必要な波長の光を除去する。対物レンズ14を通過した必要な波長の蛍光は、平行光束となって波長分散プリズム17a,17bで2方向に分光される。波長分散プリズムで分光することで、例えば4色同時検出が可能になり、1色ずつ検出する場合と比較してスループットが向上する。また1色ずつ検出する場合は、データ容量が増えるだけではなく、各蛍光体の画像を重ね合わせて解析する必要があるため、解析時間が長くなってしまう。その像を結像レンズ18a,18bで、2次元センサカメラ19a,19b(高感度冷却CCDカメラ)に結像させ、検出する。
【0033】
カメラの露光時間の設定,蛍光画像の取り込みのタイミングなどの制御は、2次元センサカメラコントローラ20aを介して制御PC21が行う。フィルタユニット15には、レーザ光除去用のノッチフィルタ2種(488nm,594nm)、検出する波長体を透過させるバンドパス干渉フィルタ(透過帯域:510−700nm)を用いる。
【0034】
なお、装置は、調整などのため、透過光観察用鏡筒16とTVカメラ23とモニタ24を備えており、ハロゲン照明などで基板8の状態をリアルタイムで観察できるようになっている。
【0035】
プリズム17a,17bは図に示すように一体であってもよいし、別々のプリズムを近接、または一定距離離したものであっても良い。またプリズム17a,17bの分散角度は任意に設定でき、連続的に角度を変化させても良い。また平行光束に対して設置する角度は任意に設定できる。また平行光束の中心(プリズム上の点線)にプリズム17a,17bの分散角交点(プリズム上の点線とプリズムからの反射面の交点)を合わせる必要はない。平行光束の中心に分散角交点を合わせた場合、図1で2方向に分光される強度は等しくなる。分散角交点を平行光束中心からずらすことで、2方向に分光される信号強度の比率を変えることができる。この比率の違いを利用して、波長成分の信号強度の算定や、分光対象物の位置の特定を行うこともできる。また1方向へ波長分散した波長成分の信号強度で、もう1方向の波長分散した波長成分の信号強度を規格化することで、励起光源のふらつきなどノイズ成分を相殺できるため、S/Nは高くなる。また最大の2次元センサカメラの数は、分散方向の数になるが、光学素子を組み合わせることで、1つの2次元センサカメラにすることもできる。図1では、波長分散プリズム17a,17bにより光軸は傾くが、分散の異なるプリズムを複数枚組み合わせ、光軸が傾かないようにすることもできる。これにより1CCDで複数方向に分散させた画像を取得できる。
【0036】
図2にあるように、基板8には位置きめマーカ30,31が刻印されている。マーカ30,31は領域8ijの並びと平行に配置され、その間隔が規定されている。そこで、透過照明での観測でマーカを検出することで、領域8ijの位置を計算することができる。平行光束が入射,反射する波長分散プリズム17a,17bの部分に誤って手が触れて汚れたり、マッチングオイルが付着するなどしてしまうと、乱反射などが起こり正しい蛍光強度が得られなくなる。このような場合には、必要に応じて平行光束が入射,反射する波長分散プリズム17a,17bの部分に触れないように、くぼみをつけておくか、平行光束が入射,反射しない部分に、平行光束が入射,反射する部分をくり貫いた冶具を接着しても良い。
【0037】
本実施例で使用する2次元センサカメラとして、CCDエリアセンサを使用した。画素サイズが7.4×7.4ミクロンで、画素数2048×2048画素の冷却CCDカメラを使用する。なお、2次元センサカメラとしては、CCDエリアセンサの他、C−MOSエリアセンサなどの撮像カメラなどを一般に使うことができる。CCDエリアセンサにも、構造によって、背面照射型、正面照射型があり、どちらも使用できる。また、素子内部に信号の増倍機能を有する電子増倍型CCDカメラなども高感度化を図る上で有効である。また、センサは冷却型が望ましく、−20℃程度以下にすることで、センサの持つダークノイズを低減でき、測定の精度を高めることができる。
【0038】
反応領域8aからの蛍光像を一度に検出してもいいし、分割することもできる。この場合、基板の位置を移動させるためのX−Y移動機構部をステージ下部に配置し、制御PCで照射位置への移動,光照射,蛍光像検出を制御する。本例ではX−Y移動機構部は図示していない。
【0039】
(反応の工程)
段階的伸長反応の工程を以下に示す。反応工程は非特許文献2および非特許文献4を参考に行った。ストレプトアビジンを加えたバッファを導入口12よりチャンバに導入し、ストレプトアビジンを金属構造体に固定されているビオチンに結合させ、ビオチン−アビジン複合体を形成させる。ビオチン修飾したターゲットである一本鎖鋳型DNAにプライマをハイブリさせ、前記鋳型DNA−プライマ複合体と大過剰のビオチンを加えたバッファをチャンバへ導入し、ビオチン−アビジン結合を介して、単分子の前記鋳型DNA−プライマ複合体を格子点に配置された金属構造体に固定する。固定反応後に、余剰な鋳型DNA−プライマ複合体およびビオチンを洗浄用バッファにてチャンバより洗い流した。次に、それぞれ異なる4種の蛍光体で標識された3′末端がアリル基で修飾された4種のdNTP(3′−O−allyl−dGTP−PC−Bodipy−FL−510,3′−O−allyl−dTTP−PC−R6G,3′−O−allyl−dATP−PC−ROX,3′−O−allyl−dCTP−PC−Bodipy−650)およびThermo Sequenaseポリメラーゼを加えたThermo Sequenase Reactionバッファを導入口12よりチャンバへ導入し、伸長反応を行った。鋳型DNA−プライマ複合体に取込まれたdNTPは、3′末端はアリル基で修飾されているため、前記鋳型DNA−プライマ複合体に1塩基以上取込まれることはない。伸長反応後、未反応の各種dNTPおよびポリメラーゼを洗浄用バッファで洗い流し、Arレーザ光源101a,He−Neレーザ光源101bのそれぞれの光源から発振するレーザ光を同時にチップに照射する。レーザ照射により鋳型DNA−プライマ複合体に取込まれたdNTPに標識された蛍光体を励起し、そこから発する蛍光を検出する。鋳型DNA−プライマ複合体に取込まれたdNTPに標識された蛍光体の蛍光波長を特定することにより、前記dNTPの塩基種を特定できる。なお、エバネッセント照射であり、反応領域表面近傍のみが励起光照射領域となるため、前記表面以外の領域に存在する蛍光体を励起することはなく、背景光の少ない測定ができる。そのため、上記では、伸長反応後洗浄しているが、蛍光標識dNTP濃度が小さい場合、洗浄不要で測定が可能になる場合もある。
【0040】
次に、YAGレーザ光源100より発振するレーザ光をチップへ照射し、前記複合体に取込まれたdNTPに標識された蛍光体を光切断により取除く。次いで、パラジウムを含んだ溶液を流路内に導入し、パラジウム触媒反応により、前記複合体に取込まれたdNTPの3′末端のアリル基を水酸基に変える。前記3′末端のアリル基を水酸基に変えることにより、前記鋳型DNA−プライマ複合体の伸長反応が再開可能となる。前記触媒反応後に、洗浄用バッファにてチャンバを洗浄する。これを繰返すことにより、固定された一本鎖鋳型DNAの配列を決定する。なお、レーザ光源の出力を上げるほど、得られる蛍光強度は増加する。従ってレーザの替わりにLEDを用いた装置構成にして出力を上げてもよい。LEDの場合、シャッターを用いずにON/OFFができ、また電磁波を発生しないなどの利点がある。但し蛍光体は強い強度で照射するほど、蛍光寿命は短くなる。
【0041】
本システムでは、反応領域8aの複数の領域8ijからの発光を同時計測できるため、領域8ijにそれぞれ異なる鋳型DNAを固定した場合、前記複数の異なる鋳型DNA−プライマ複合体に取込まれたdNTPの塩基種を、つまり複数の鋳型DNAの配列を同時に決定できる。
【0042】
(蛍光の分散像検出)
図3は、基板の蛍光を波長分散して検出する方式の説明図である。図3Aは、基板8の表面の一部の概略図であり、DNAが固定されるべき複数の領域8ij(格子点)が形成されている。CCDカメラへの結像倍率を37倍とし、dx=1μmの距離を5分割してCCD画素で検出する。格子点の最も近接する間隔は1μmであり、その方向に分光させると、1画素あたり40nmの分散になる。
【0043】
図3Bのように最隣接している格子点ではなく、dy=3μmのため、3番目の距離で隣接する点(図中の8−32)の方向に分光すると、格子点間隔は3.6μmであり、1画素あたり11nmの分散になる。以上より分散距離を広く取ることで、500nm−700nmの範囲にある4種の蛍光体からの蛍光を識別しやすくなることがわかる。これは格子点間隔を広げるほど4種の蛍光体からの蛍光を識別しやすくなるが、格子点間隔を広げることはCCDの視野内に捉えられる領域8ij(格子点)の数が少なくなるため、鋳型DNAの配列決定のスループットが低下する。4種類の蛍光体の蛍光を識別するためには、1色の蛍光体を1画素づつ分光させることが望ましい。500nm−700nmの200nm範囲にある4種類の蛍光体を4画素で分散させる場合には、1画素あたり50nm(200nm/4画素)以下であればよい。但しこの値に限定されるものではなく、識別したい蛍光帯の種類よりも少ない画素数(サブピクセル単位)で識別することも可能である。
【0044】
図3Cは、DNAが固定されるべき複数の領域8ij(格子点)に金のナノ構造物を作成し、図3Bの方向に分光して検出したときの蛍光・発光スペクトルを示す。図では、格子点8−11と8−32からのスペクトルが検出されている。金のナノ構造体からはルミネッセンスが発生することが知られており、図のスペクトルはそれを示している。途中に強度が急激に小さくなっている部分があるが、これは、フィルタユニット15内の、594nmノッチフィルタにより、カットされているためである。この谷の位置を解析し、マーキングすることで、各格子点からの蛍光の波長軸を構成することができる。
【0045】
図3DはdNTPを伸長反応させた後の蛍光スペクトルであり、蛍光体の蛍光に基づくピークが観察される。594nmの基準点を元に、蛍光ピークを算定することで蛍光体種を決定できる。図では、R6GとROXであり、塩基種がそれぞれ、T、Aと決定される。
【0046】
図3E以降では、図1に示すように少なくとも2つ以上の分散方向を持たせた場合に、図3A〜図3Dで説明した波長分散距離の制約となる格子間距離や格子配置の影響を受けないため、高密度にアレイを配置してCCD画素を有効に使用し、スループットが向上することについて説明する。
【0047】
図3E〜図3Lは、基板8の表面の一部の概略図であり、DNAが固定されるべき複数の領域8ij(格子点)が形成されている。CCDカメラへの結像倍率を22.2倍とし、dx=1μmの距離を3分割してCCD画素で検出する。格子点の最も近接する間隔は、X、Y方向共に1μmであり、X方向に4画素(/蛍光体)で分光させると、1画素あたり50nmの分散となる。
【0048】
図3Eの図は、図1の19aまたは19bの2次元センサで撮影した画像をそれぞれ示している。丸が格子点の位置を、四角がCCDの1画素を示しており、CCDの画素の座標をX,Y方向それぞれに0から画素数分記載している。但しCCDは1000×1000や2000×2000画素で、全ての画素は記載できないため、CCDの左下の部分を拡大して示している。以降では、(a,b)はX=a,Y=bの座標を示す。例えば(0,0)はCCDの一番左下の画素である。また(4,2)(7,2)などの位置に格子点があることがわかる。図1より、波長分散方向はXの正方向と負方向になるが、これに限定されるものではない。例えばYの正方向と負方向に波長分散させることもできるし、Y=Xの方向(傾き45°)の方向にも波長分散させることもできる。図3Eでは、仮にA(アデニン)の格子点からの変位量を1画素、G(グアニン)の格子点からの変位量を2画素、C(シトシン)の格子点からの変位量を3画素、T(チミン)の格子点からの変位量を4画素として説明する。蛍光体の波長により分散の大きさが決まるため、各塩基に修飾した蛍光体で変位量は決定される。従って上述の蛍光体と変位量との関係に限定されるものではない。そのような光学的配置は分散プリズムの角度,プリズムとCCDとの距離,CCD位置の調整によって実現可能である。従ってアデニンを右方向に分散させた場合には、格子点からXが+1移動した場所に検出され、左方向に分散させた場合には、格子点からXが−1移動した場所に検出させることができる。チミンの場合4画素移動するが、この距離は格子点2つ分(3画素×2格子+1=7画素)未満である。1つの蛍光体あたりの波長分散画素数を1画素以上にしてもよいが、1画素あたりの蛍光強度は小さくなる。従って1つの蛍光体あたりの波長分散画素数は3画素以下が望ましい。但しこれに限定されるものではない。
【0049】
図3Eでは、特定の分散方向に対して、波長分散が強く検出された画素を灰色で塗りつぶしている(以降この点を灰色画素という表現で代用する)。実際の測定では、近隣の画素の蛍光強度から近似曲線を算出することで、蛍光強度の高い画素を特定することができる。従って灰色画素以外の画素の蛍光強度が0であることを意味しない。右方向に分散させた場合(左図)、(4,5)の格子点は(6,5)に分散波長のピークがある。(4,5)の左側にビーズがない場合、(7,5)の格子点の波長分散は(8,5)〜(11,5)のいずれかになるため、(6,5)に分散波長のピークは格子点(4,5)に存在する蛍光体であることがわかる。+2移動するのはグアニンであるため、格子点(4,5)に存在するのはグアニンと結論できる。同様に(a,5)の行の格子点の蛍光体は、全てグアニンであることがわかる。右方向に分散させた場合、例えば格子点(10,5)の場合は、(11,5)〜(14,5)(太線で囲んだ画素)に注目して、1つしか灰色の画素がなければその変位量から格子点(10,5)における蛍光体を同定できる。同様に左方向に分散させた場合、例えば格子点(10,5)の場合は、(6,5)〜(9,5)(太線で囲んだ画素)に注目して、1つしか灰色の画素がなければその変位量から格子点(10,5)における蛍光体を同定できる。以上より、(4,2)の格子点は(7,2)に分散波長のピークがあることから、シトシンと同定される。また(a,2)の行の格子点の蛍光体は、全てシトシンであることがわかる。
【0050】
図3Fは、図3Eにおいて太線で囲んだ画素に2つの灰色の画素がある場合である。これはアデニン(変位量+1画素)またはチミン(変位量+4画素)の場合に起こりうる。従ってこのどちらの塩基であるかを同定する必要がある。なおこの課題は、分散距離が格子間距離よりも短い場合には発生しない。図3Fは全て格子状の点が同じアデニンである場合に記載した。(10,2),(10,5),(10,8),(10,11),(10,14)の格子点について、図3Eで説明した太線で囲んだ画素について左右の分散方向をそれぞれみると、全て2画素(1と4の距離)が灰色画素となっている。従って太線内を見ただけでは、アデニンかチミンかを区別できない。この場合には、分散方向の一番反対側にある格子点の情報から順番に塩基を同定することができる。例として、右側に分散させた時の一番左側に存在する格子点(4,2)において、(5,2)〜(8,2)の範囲には(5,2)と(8,2)に灰色画素が存在するが、(5,2)が灰色画素となるのは、右側に分光しているため、格子点(4,2)にアデニンが存在する時だけである。従って(8,2)の灰色セルは、格子点(7,2)を波長分散したものであり、アデニンと同定される。以上より、数珠繋ぎ的に全ての格子点がアデニンであることが理解される。この同定方法は、分散方向に少なくとも1つの格子点を任意に欠落させることでも実現できる。
【0051】
図3Gは、図3F同様、太線で囲んだ画素に2つの灰色の画素がある場合である。但し分散方向に少なくとも1箇所異なる塩基が存在する場合について説明する。(10,2),(10,5),(10,8),(10,11),(10,14)の格子点について、太線で囲んだ画素について左右の分散方向をそれぞれみると、全て2画素(1と4の距離)が灰色画素になっている。従って太線内を見ただけでは、アデニンかチミンかを区別できない。但し分散方向に少なくとも1箇所異なる塩基が存在する場合、その格子点の塩基を決定することで、図3F同様に数珠繋ぎ的に塩基を決定できる。格子点(4,8)の塩基は、(6,8)が灰色画素であることから、グアニンと同定される。なぜならば仮に格子点(1,8)が存在して最も分散したとしても、(5,8)の画素に集光するため、(6,8)が灰色画素となりうる格子点は(4,8)しか存在しないからである。そうすると格子点(7,8)の左側への分散を考えた場合、(3,8)〜(6,8)の範囲には(6,8)のみが灰色画素である。従って格子点(7,8)の塩基はアデニンと同定できる。従って格子点(7,8)の右側への分散を考えた場合、(8,8)〜(11,8)の範囲には(8,8)と(11,8)が灰色画素であるが、格子点(7,8)の塩基はアデニンと同定されているため、この格子点を右側分散した場合には(8,8)が灰色画素となる。従って(11,8)の灰色画素は、格子点(7,8)由来ではない。従って格子点(10,8)由来と同定され、アデニンであることがわかる。仮に格子点(4,8)が存在して最も分散したとしても、(8,8)の画素に集光するため、(11,8)が灰色画素となりうる格子点は(10,8)しか存在しないからである。以上より、数珠繋ぎ的に分散方向全ての格子点の塩基を同定することができる。なお右方向への分散における(8,2)の灰色セルが、(11,2)などの灰色セルより濃く表示しているのは、2つの格子点の波長が同一画素に集光しているためである。以後の図でも同様の考え方で表示した。
【0052】
図3Hは、図3G同様、太線で囲んだ画素に2つの灰色の画素がある場合である。但しグアニン、シトシンの場合には図3F、図3Hのように図の太線枠以外の場所から塩基を数珠繋ぎ的に同定する必要はない。これについて以下に説明する。(10,2),(10,5),(10,8),(10,11),(10,14)の格子点について、太線で囲んだ画素について右側への分散みると、2つないし3つの灰色画素が存在する。但し2つないし3つの灰色画素のうち、(12,2),(12,5),(12,8),(12,11),(12,14)が灰色画素となっている。右側への分散で、(12,2)を灰色画素にする格子点は(10,2)しか存在しない。なぜならば仮に格子点(7,2)が存在して最も分散したとしても、(11,2)の画素に集光するため、(12,2)が灰色画素となりうる格子点は(10,8)しか存在しないからである。従って図の太線枠に複数の灰色画素が存在した場合でも、格子点から+2画素の画素が灰色画素である場合には、他の太線内の灰色画素に関係なく、グアニンと同定できる。これは格子点(10,5)の場合、右への分散も左側への分散も、太線内には2つの灰色画素があるが、(8,5)と(12,5)が灰色画素であるため、グアニンと同定される。これは左側への分散においても同様にあてはまる。(12,2),(12,5),(12,8),(12,11),(12,14)が灰色画素の場合、(13,2),(13,5),(13,8),(13,11),(13,14)は灰色画素にはなりえない。
【0053】
図3Iは、図3G同様、太線で囲んだ画素に2つの灰色の画素がある場合である。但しグアニン,シトシンの場合には図3F、図3Hのように図の太線枠以外の場所から塩基を数珠繋ぎ的に同定する必要はない。これについて以下に説明する。(10,2),(10,5),(10,8),(10,11),(10,14)の格子点について、太線で囲んだ画素について右側への分散を見ると、2つないし3つの灰色画素が存在する。但し2つないし3つの灰色画素のうち、(13,2),(13,5),(13,8),(13,11),(13,14)が灰色画素となっている。右側への分散で、(13,2)を灰色画素にする格子点は(10,2)しか存在しない。なぜならば仮に格子点(7,2)が存在して最も分散したとしても、(11,2)の画素に集光するため、(13,2)が灰色画素となりうる格子点は(10,2)しか存在しないからである。従って図の太線枠に複数の灰色画素が存在した場合でも、格子点から+3画素の画素が灰色画素である場合には、他の太線内の灰色画素に関係なく、シトシンと同定できる。これは左側への分散においても同様にあてはまる。これは格子点(10,5)の場合、右への分散も左側への分散も、太線内には2つの灰色画素があるが、(7,5)と(13,5)が灰色画素であるため、シトシンと同定される。(13,2),(13,5),(13,8),(13,11),(13,14)が灰色画素の場合、(12,2),(12,5),(12,8),(12,11),(12,14)は灰色画素にはなりえない。
【0054】
図3Jは、図3Eにおいて太線で囲んだ画素に2つの灰色の画素がある場合である。これはアデニン(変位量+1画素)またはチミン(変位量+4画素)の場合に起こりうる。従ってこのどちらの塩基であるかを同定する必要がある。なおこの課題は、分散距離が格子間距離よりも短い場合には発生しない。図3Jは全て格子状の点が同じチミンである場合に記載した。(10,2),(10,5),(10,8),(10,11),(10,14)の格子点について、太線で囲んだ画素について左右の分散方向をそれぞれみると、全て2画素(1と4の距離)が灰色画素となっている。従って太線内を見ただけでは、アデニンかチミンかを区別できない。この場合には、分散方向の一番反対側にある格子点の情報から順番に塩基を同定することができる。例として、右側に分散させた時の一番左側に存在する格子点(4,2)において、(5,2)〜(8,2)の範囲には(8,2)にのみ灰色画素が存在する。従って格子点(4,2)はチミンと同定される。以上より、数珠繋ぎ的に全ての格子点がチミンであることが理解される。この同定方法は、分散方向に少なくとも1つの格子点を任意に欠落させることでも実現できる。
【0055】
図3Kは、図3F同様、太線で囲んだ画素に2つの灰色の画素がある場合である。但し分散方向に少なくとも1箇所異なる塩基が存在する場合について説明する。(10,2),(10,5),(10,8),(10,11),(10,14)の格子点について、太線で囲んだ画素について左右の分散方向をそれぞれみると、全て2画素(1と4の距離)が灰色画素になっている。従って太線内を見ただけでは、アデニンかチミンかを区別できない。但し分散方向に少なくとも1箇所異なる塩基が存在する場合、その格子点の塩基を決定することで、図3J同様に数珠繋ぎ的に塩基を決定できる。格子点(4,1)の塩基は、左側分散で(0,1)〜(3,1)の範囲で(0,1)のみが灰色画素であるためである。従って格子点(4,1)の塩基はチミンと同定できる。従って格子点(7,1)の右側への分散を考えた場合、(8,1)〜(11,1)の範囲には(8,1)と(11,1)が灰色画素であるが、格子点(4,1)の塩基はチミンと同定されているため、この格子点を右側分散した場合には(8,1)が灰色画素となる。従って(11,1)の灰色画素は、格子点(10,1)由来ではない。従って格子点(7,1)由来と同定され、チミンであることがわかる。同様に格子点(10,1)もチミンと同定される。以上より、数珠繋ぎ的に分散方向全ての格子点の塩基を同定することができる。
【0056】
図3E〜図3Kに記載した塩基配列同定方法を図3Lに適用して、塩基配列を同定する。図3Lには右側分散と左側分散それぞれの灰色画素とその座標を表示した。まずはじめにシトシンとグアニンについて同定する。これはある特定の格子点について注目し、右側分散の時は+2、左側分散の時には−2画素が灰色画素である場合にはグアニンと同定できる。またある特定の格子点について注目し、右側分散の時は+3、左側分散の時には−3画素が灰色画素である場合にはシトシンと同定できる。これより図3Lの丸数字1に示す塩基が同定される。図3L丸数字1で灰色表示した格子点は、アデニンまたはチミンであることを示す。次に図3L丸数字1で灰色表示した格子点の中で、ある特定の格子点について注目し、右側分散させた時に+1または+4の画素のどちらか1つのみが灰色画素である場合、ある特定の格子点+1画素が灰色画素であればアデニン、ある特定の格子点+4画素が灰色画素であればチミンと同定できる。これより図3Lの丸数字2に示す塩基が同定される。この時点で同定されていない格子点(10,10)は左右両側の格子点(7,10),(13,10)の塩基がチミンである。格子点(10,10)のように、ある特定の格子点がアデニンまたはチミンであり、更に左右の分散方向の格子点[(7,10),(13,10)]の両方がチミンまたはアデニンである場合、この時点ではある特定の格子点(10,10)の塩基を特定できない。この場合、図3F、図3G、図3J、図3Kで説明したように、他の格子点の塩基配列情報を利用して数珠繋ぎ的に特定の格子点の塩基配列を同定することができる。格子点(10,10)の右側分散において、(11,10)〜(14,10)の灰色画素は(11,10)と(14,10)である。但し灰色画素(11,10)は格子点(7,10)の塩基がチミンであることから、格子点(10,10)の右側分散は(14,10)の灰色画素と特定される。従って格子点(10,10)はチミンであると同定される。以上図3Lで説明した方法は、任意の格子点が欠落しているか或いは蛍光体が存在しない場合にも適用することができる。
【0057】
以上より複数方向への分散画像より、塩基配列を同定することができる。また分散距離が4画素の場合、図3A〜図3Dの例では、隣接する格子間距離を分散距離(4画素)+1の計5画素必要であったが、図3E〜図3Lの例では、格子間距離は3画素で同様の解析が実現できる。従って1視野で検出できる格子点数は、図3E〜図3Lの例では図3A〜図3Dと比較して、(5×5)/(3×3)で約2.8倍になり、その分塩基配列を多く同定でき、スループットは向上する。分散方向や格子配置の検討により、この割合は更に高くなることはいうまでもない。例えば格子を2つ飛び越えない条件では、A(アデニン)の格子点からの変位量を0画素、G(グアニン)の格子点からの変位量を1画素、C(シトシン)の格子点からの変位量を2画素、T(チミン)の格子点からの変位量を3画素として、格子点の間隔を2×2画素にすることで、同様のことを実現できる。これにより1視野で検出できる格子点数は、図3E〜図3Lの例では図3A〜図3Dと比較して、(5×5)/(2×2)で約6.25倍スループットが向上する。
【0058】
以上のように、第1の実施形態によれば、分散分光イメージング法に基づくシステムにおいて、特定の格子点から発する蛍光像を、複数の波長分散方向に分散させることで、蛍光体の識別と波長分散対象物の位置の同定を精度よく行うことができる。また、金属構造物からの光ルミネセンスを検出することにより、波長基準を基板の反応点ごとに得ることができ、分散分光イメージング方式では困難であった発光した蛍光体の種別判定が高精度に行えるようになり、結果として高精度な塩基配列決定が可能となる。基板表面上に金属の構造物は金のほか、クロム,銀,アルミなどで構築することもできる。また、波長基準は、フィルタの中心波長だけではなく、レーザ散乱のスペクトルなどからも得ることができる。なお、本実施例では4種の異なる蛍光体を異なるdNTPに標識したが、4種のdNTPに同じ1種の蛍光体を標識することもできる。この場合、励起レーザ光源は1種となる。反応はA→C→G→T→A→C・・・と順番に行う必要がある。また、石英製プリズム7に対してレーザ光を垂直に入射している。これにより、基板とプリズムを一体化して移動させることができる。
【0059】
<第2の実施形態>
図4は、本発明の蛍光分析方法を使ったDNA検査装置の構成図である。図1はプリズム全反射方式の顕微鏡であったが、図4はレーザ入射方向と蛍光検出方向が同じ方向である顕微鏡である。このような装置としては、対物レンズの辺縁部よりレーザを全反射となる角度で照射することで、1分子検出可能な対物レンズ全反射方顕微鏡もあり、以下の実施例でも使用されうる。装置は顕微鏡に類似する装置の構成であり、基板8に捕捉するDNA分子の伸長状態を蛍光検出にて測定する。基板8は、図2に示すような構造をしている。基板8は少なくともその一部が透明材質でできており、材質としては合成石英などが使用できる。基板8には反応領域8aがあり、この部分は透明材質であり、この部分に試薬などが接触する。反応領域8a内にDNAが固定される領域8ijが複数形成されている。
【0060】
DNAが固定される領域8ijを、反応領域8a内にアレイ状に整列させる場合について説明する。領域8ijの個々の大きさは直径1000nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。この領域にはDNAを捕捉するための表面処理を施す。例えば領域8ijと、反応領域8a内の領域8ij以外の場所を、薄膜形成、エッチング技術などを用いて、領域8ijのみが表面処理剤が反応する材料で作製しておくことで、領域8ij上にのみ表面処理を施すことができる。その表面処理は、例えば、ストレプトアビジンを結合させておき、ビオチン標識したDNA断片を反応させることで、捕捉する。また、ポリTのオリゴヌクレオチドを固定化しておき、DNA断片の一端をポリA化処理して、ハイブリ反応にて捕捉することもできる。この際、DNA断片濃度が高い場合には個々の領域8ijに複数分子のDNAが入るが、DNA断片濃度を適当に調製することで、個々の領域8ijに単一分子のDNAのみが入るようにすることができる。なお、領域8ijをより小さくしていくことで、領域内に捕捉できる分子が1個になるようにすることができる。或いはビオチン化DNAをストレプトアビジン化ビーズに固定し、ビーズを反応領域8a内にばら撒くことでも、ビーズを領域8ijにアレイ上に配置することができる。或いはNature 437(7057):376−380に記載のエマルジョンPCRを用いて、同一のDNA配列を持つ鋳型が多数複製されたビーズを反応領域8a内にばら撒くことでも、ビーズを領域8ijにアレイ上に配置することができる。
【0061】
次にDNAが固定される領域8ijを、反応領域8a内にランダムに整列させる場合について説明する。これは領域8ijと、反応領域8a内の領域8ij以外の場所が、例えばストレプトアビジンなどの同一の表面処理が施されている場合である。従ってこの場合には、領域8ijはDNAが固定された領域を指す。この場合、DNA断片濃度が高い場合にはDNAの固定密度は高くなるが、DNA断片濃度を適当に調製することで、DNAの固定密度は低くなり、単一分子のDNAを十分な光学分解能で識別できる固定密度にすることできる。或いはビオチン化DNAをストレプトアビジン化ビーズに固定し、ビーズを反応領域8a内にばら撒くことでも、ビーズをランダムに配置することができる。或いはエマルジョンPCRを用いて、同一のDNA配列を持つ鋳型が多数複製されたビーズを反応領域8a内にばら撒くことでも、ビーズをランダムに配置することができる。ビーズの大きさは2000nm以下であり、より好ましくは10〜1000nmである。
【0062】
以後アレイ状の基板について説明するが、ランダム配置された基板を計測する場合においても、以下に記述する方法を適用することができる。アレイ状の基板では、すべての領域8ijに単一分子のDNAが固定化されている場合、領域8ijの一部のみDNAが固定化されている場合がある。一部のみDNAが固定化されている場合は、残りの領域8ijには固定化されておらず、空きの状態となる。なお、領域8ij同士の間隔dxは1ミクロン、間隔dyは3ミクロンとした。領域8ijはこのように、格子構造(2次元の長方格子構造)を形成し、その格子点の位置に領域8ijが配置される。このような、均等間隔の基板の作成法は、例えば、特開2002−214142号公報に記載の手法などで、作成する。なお、dx,dyは領域8ijの個々の大きさより大きく、4000nm程度以下が好ましい。基板の反応領域8aは76.2mm×25.4mmのスライドガラスの大きさとした。反応領域8aの大きさは、それより大きくても可であるし、例えば0.5mm×0.5mmの大きさのものを一定間隔で、1次元または2次元に複数個並べたようなものでもよい。なお、領域8ijには金属構造体を配置してもよい。金属構造体は半導体プロセスにて作成することもできる。電子線描画,ドライエッチング,ウェットエッチングなどが使用できる。金属構造体は、金,銅,アルミ,クロム等で、励起光の波長以下の大きさを有する形状であり、直方体,円錐,円柱,一部が突起状のものを有する構造などを使用する。
【0063】
dNTPの蛍光標識として種々の蛍光体を使うことができる。例えば、Bodipy−FL−510,R6G、ROX、Bodipy−650を使用し、これらそれぞれ異なる4種の蛍光体で標識された3′末端がアリル基で修飾された4種のdNTP(3′−O−allyl−dGTP−PC−Bodipy−FL−510,3′−O−allyl−dTTP−PC−R6G,3′−O−allyl−dATP−PC−ROX,3′−O−allyl−dCTP−PC−Bodipy−650)を使用する。
【0064】
蛍光励起用のレーザ装置101a(Arレーザ,488nm:Bodipy−FL−510,R6G励起用)からのレーザ光をλ/4波長板102aを通して円偏光とする。蛍光励起用のレーザ装置101b(He−Neレーザ,594.1nm:ROX,Bodipy−650励起用)からのレーザ光をλ/4波長板102bを通して円偏光とする。両レーザ光をミラー104bとダイクロイックミラー104a(520nm以下を反射)で重ね合わせ、レーザ行路5を通りDNA分子を捕捉した基板8の裏側から垂直に照射する。基板8表面は反応液(水)で覆われている。なお、基板の近傍には、温調器が配置されているが、図では省略した。また、通常観察のため、プリズム下部よりハロゲン照明ができる構造としているが、図ではこれを省略している。また、レーザ装置101a,101bとは別にレーザ装置100(YAGレーザ,355nm)を配置し、ダイクロイックミラー103(400nm以下を反射)でレーザ装置101a,101bのレーザ光と重ね合わせ同軸にして照射できるようにした。本レーザは、取り込まれたdNTP誘導体の蛍光検出後、dNTP誘導体を伸長可能な状態に戻す工程に使用するものである。
【0065】
基板8の上部には、試薬などを流し、反応させるためのフローチャンバ9が構成されている。チャンバには試薬導入口12があり、分注ノズル26を有する分注ユニット25,試薬保管ユニット27,チップボックス28により、目的の試薬液の注入などを行う。試薬保管ユニット27には、試料液容器27a,dNTP誘導体溶液容器27b,27c,27d,27e(27c,27d,27eは予備)及び洗浄液容器27f等が用意される。反応プロトコルに応じて、試薬の種類や数を増やすことができる。チップボックス28内の分注チップを分注ノズル26に取り付け、適当な試薬液を吸引し、チャンバ導入口から基板の反応領域に導入し、反応させる。廃液は廃液チューブ10を介して廃液容器11に排出される。これらは制御PC21により自動的に行われる。
【0066】
フローチャンバは光軸方向に透明材で形成され、蛍光検出される。蛍光13は、自動ピントあわせ装置29で制御される集光レンズ(対物レンズ)14で集められ、平行光束はダイクロイックミラー7で曲げられ、フィルタユニット15で必要な波長の蛍光を取り出し、不必要な波長の光を除去する。対物レンズを14を通過した必要な波長の蛍光は、平行光束となって波長分散プリズム17a,17bで2方向に分光される。波長分散プリズムで分光することで、例えば4色同時検出が可能になり、1色ずつ検出する場合と比較してスループットが向上する。また1色ずつ検出する場合は、データ容量が増えるだけではなく、各蛍光体の画像を重ね合わせて解析する必要があるため、解析時間が長くなってしまう。その像を結像レンズ18a,18bで、2次元センサカメラ19a,19b(高感度冷却CCDカメラ)に結像させ、検出する。
【0067】
カメラの露光時間の設定,蛍光画像の取り込みのタイミングなどの制御は、2次元センサカメラコントローラ20aを介して制御PC21が行う。フィルタユニット15には、レーザ光除去用のノッチフィルタ2種(488nm,594nm)、検出する波長体を透過させるバンドパス干渉フィルタ(透過帯域:510−700nm)を用いる。なお、装置は、調整などのため、透過光観察用鏡筒16とTVカメラ23とモニタ24を備えており、ハロゲン照明などで基板8の状態をリアルタイムで観察できるようになっている。
【0068】
プリズム17a,17bは図に示すように一体であってもよいし、別々のプリズムを近接、または一定距離離したものであっても良い。またプリズム17a,17bの分散角度は任意に設定でき、連続的に角度を変化させても良い。また平行光束に対して設置する角度は任意に設定できる。また平行光束の中心(プリズム上の点線)にプリズム17a,17bの分散角交点(プリズム上の点線とプリズムからの反射面の交点)を合わせる必要はない。平行光束の中心に分散角交点を合わせた場合、図1で2方向に分光される強度は等しくなる。分散角交点を平行光束中心からずらすことで、2方向に分光される信号強度の比率を変えることができる。この比率の違いを利用して、波長成分の信号強度の算定や、分光対象物の位置の特定を行うこともできる。また最大の2次元センサカメラの数は、分散方向の数になるが、光学素子を組み合わせることで、1つの2次元センサカメラにすることもできる。図1では、波長分散プリズム17a,17bにより光軸は傾くが、分散の異なるプリズムを複数枚組み合わせ、光軸が傾かないようにすることもできる。これにより1CCDで複数方向に分散させた画像を取得できる。図2にあるように、基板8には位置きめマーカ30,31が刻印されている。マーカ30,31は領域8ijの並びと平行に配置され、その間隔が規定されている。そこで、透過照明での観測でマーカを検出することで、領域8ijの位置を計算することができる。
【0069】
本実施例で使用する2次元センサカメラとして、CCDエリアセンサを使用した。画素サイズが7.4×7.4ミクロンで、画素数2048×2048画素の冷却CCDカメラを使用する。なお、2次元センサカメラとしては、CCDエリアセンサの他、C−MOSエリアセンサなどの撮像カメラなどを一般に使うことができる。CCDエリアセンサにも、構造によって、背面照射型、正面照射型があり、どちらも使用できる。また、素子内部に信号の増倍機能を有する電子増倍型CCDカメラなども高感度化を図る上で有効である。また、センサは冷却型が望ましく、−20℃程度以下にすることで、センサの持つダークノイズを低減でき、測定の精度を高めることができる。
【0070】
反応領域8aからの蛍光像を一度に検出してもいいし、分割することもできる。この場合、基板の位置を移動させるためのX−Y移動機構部をステージ下部に配置し、制御PCで照射位置への移動,光照射,蛍光像検出を制御する。本例ではX−Y移動機構部は図示していない。
【0071】
<第3の実施形態>
図5A〜図5Fは、基板8の表面の一部の概略図であり、DNAが固定されるべき複数の領域8ij(格子点)が形成されている。CCDカメラへの結像倍率を14.4倍とし、dx=1μmの距離を2分割してCCD画素で検出する。格子点の最も近接する間隔は、X、Y方向共に1μmであり、X方向に4画素(/蛍光体)で分光させると、1画素あたり50nmの分散となる。
【0072】
図5Aの図は、図1の19aまたは19bの2次元センサで撮影した画像をそれぞれ示している。丸が格子点の位置を、四角がCCDの1画素を示しており、CCDの画素の座標をX、Y方向それぞれに0から画素数分記載している。但しCCDは1000×1000や2000×2000画素で、全ての画素は記載できないため、CCDの左下の部分を拡大して示している。以降では、(a,b)はX=a,Y=bの座標を示す。例えば(0,0)はCCDの一番左下の画素である。また(3,0)(5,2)などの位置に格子点があることがわかる。図1より、波長分散方向はXの正方向と負方向になるが、これに限定されるものではない。例えばYの正方向と負方向に波長分散させることもできるし、Y=Xの方向(傾き45°)の方向にも波長分散させることもできる。図5Aでは、仮にA(アデニン)の格子点からの変位量を0画素、G(グアニン)の格子点からの変位量を1画素、C(シトシン)の格子点からの変位量を2画素、T(チミン)の格子点からの変位量を3画素として説明する。蛍光体の波長により分散の大きさが決まるため、各塩基に修飾した蛍光体で変位量は決定される。従って上述の蛍光体と変位量との関係に限定されるものではない。そのような光学的配置は分散プリズムの角度,プリズムとCCDとの距離,CCD位置の調整によって実現可能である。従ってアデニンを右方向に分散させた場合には、格子点からXが±0移動した場所に検出され、左方向に分散させた場合には、格子点からXが±0移動した場所に検出させることができる。チミンの場合3画素移動するが、この距離は格子点2つ分(2画素×2格子+1=5画素)未満である。1つの蛍光体あたりの波長分散画素数を1画素以上にしてもよいが、1画素あたりの蛍光強度は小さくなる。従って1つの蛍光体あたりの波長分散画素数は3画素以下が望ましい。但しこれに限定されるものではない。図3E〜図3Lとは格子間距離が異なるが、同様の考え方で塩基配列が同定されることを以下に説明する。図5A〜図5Fでは、特定の分散方向に対して、波長分散が強く検出された画素を灰色で塗りつぶしている(以降この点を灰色画素という表現で代用する)。実際の測定では、近隣の画素の蛍光強度から近似曲線を算出することで、蛍光強度の高い画素を特定することができる。
【0073】
図5Aは、分散方向に対して全ての塩基配列が同じ場合について記述している。格子点(7,6)に注目して右方向に分散させた場合(左図)、(7,6)〜(10,6)の範囲(太線枠で表示)の灰色画素は、(7,6)と(9,6)である。従って塩基の候補は、AまたはCである。一方左側に分散させた場合(右図)、(4,6)〜(7,6)の範囲(太線枠で表示)の灰色画素は、(5,6)と(7,6)である。従って塩基の候補は、AまたはCである。ゆえに右側の分散方向、左側の分散方向共に塩基の候補はAまたはCとなり、塩基を同定できない。これは格子点(7,6)の左右に存在する格子点(5,6),(9,6)の塩基もAまたはCとなり、塩基を同定できない。この場合は、分散方向に対して一番反対側の格子点の塩基を同定することで、その他の分散方向に存在する塩基を数珠繋ぎ的に同定できる。例えば右側分散させる場合、分散方向に対して一番反対側(左側)の格子点は(3,6)である。この格子に注目すると、右側分散させた場合(左図)、(3,6)〜(6,6)の範囲の灰色画素は、(3,6)と(5,6)である。従って塩基の候補は、AまたはCである。一方左側に分散させた場合、(0,6)〜(3,6)の範囲の灰色画素は、(3,6)のみである。従って、格子点(3,6)の塩基はアデニンと同定される。次に格子点(3,6)の隣の格子点(5,6)の右側分散を考える。(5,6)〜(8,6)の範囲の灰色画素は、(5,6)と(7,6)である。但し格子点は(3,6)はアデニンであるため、右側分散させた場合に灰色画素は(3,6)であり、(5,6)は灰色画素とはならない。従って(5,6)が灰色画素となるためには、格子点(5,6)はアデニンでなければならない。ゆえに格子点(5,6)の塩基はアデニンと同定される。次に格子点(5,6)の隣の格子点(7,6)の右側分散を考える。(7,6)〜(10,6)の範囲の灰色画素は、(7,6)と(10,6)である。但し格子点(5,6)はアデニンであるため、右側分散させた場合に灰色画素は(5,6)であり、(7,6)は灰色画素とはならない。従って(7,6)が灰色画素となるためには、格子点(7,6)はアデニンでなければならない。ゆえに格子点(7,6)の塩基はアデニンと同定される。このようにして、波長分散方向の塩基が全て同じである場合でも、数珠繋ぎ的に塩基を同定することができる。この方法は分散方向に対して少なくとも1つの格子点を欠損させておくか、或いは蛍光体を取り込ませないようにしておいても実現できる。
【0074】
同様に格子点(7,4)に注目して右方向に分散させた場合(左図)、(7,4)〜(10,4)の範囲(太線枠で表示)の灰色画素は、(8,4)と(10,4)である。従って塩基の候補は、GまたはTである。一方左側に分散させた場合(右図)、(4,4)〜(7,4)の範囲(太線枠で表示)の灰色画素は、(4,4)と(6,4)である。従って塩基の候補は、GまたはTである。ゆえに右側の分散方向、左側の分散方向共に塩基の候補はGまたはTとなり、塩基を同定できない。これは格子点(7,4)の左右に存在する格子点(5,4),(9,4)の塩基もGまたはTとなり、塩基を同定できない。この場合は、分散方向に対して一番反対側の格子点の塩基を同定することで、その他の分散方向に存在する塩基を数珠繋ぎ的に同定できる。例えば右側分散させる場合、分散方向に対して一番反対側(左側)の格子点は(3,4)である。この格子に注目すると、右側分散させた場合(左図)、(3,4)〜(6,4)の範囲の灰色画素は、(4,4)と(6,4)である。従って塩基の候補は、GまたはTである。一方左側に分散させた場合、(0,4)〜(3,4)の範囲の灰色画素は、(2,4)のみである。従って、格子点(3,4)の塩基はグアニンと同定される。次に格子点(3,4)の隣の格子点(5,4)の右側分散を考える。(5,4)〜(8,4)の範囲の灰色画素は、(6,4)と(8,4)である。但し格子点(3,4)はグアニンであるため、右側分散させた場合に灰色画素は(5,4)であり、(6,4)と(8,4)は灰色画素とはならない。ここで右側分散の場合、(6,4)を灰色画素にできるのは、(6以下、4)の格子点である。格子点(3,4)はグアニンであるため(6,4)を灰色画素にできないこと、格子点(1,4)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできないことから、(6,4)を灰色画素にできるのは格子点(5,4)のみであることがわかる。ゆえに格子点(5,4)はグアニンと同定される。次に格子点(5,4)の隣の格子点(7,4)の右側分散を考える。(7,4)〜(10,4)の範囲の灰色画素は、(8,4)と(10,4)である。但し格子点(5,4)はグアニンであるため、右側分散させた場合に灰色画素は(6,4)であり、(8,4)と(10,4)は灰色画素とはならない。ここで右側分散の場合、(8,4)を灰色画素にできるのは、(8以下、4)の格子点である。格子点(5,4)はグアニンであるため(8,4)を灰色画素にできないこと、格子点(3,4)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできない条件であることから、(8,4)を灰色画素にできるのは格子点(7,4)のみであることがわかる。ゆえに格子点(7,4)はグアニンと同定される。このようにして、波長分散方向の塩基が全て同じである場合でも、数珠繋ぎ的に塩基を同定することができる。この方法は分散方向に対して少なくとも1つの格子点を欠損させておくか、或いは蛍光体を取り込ませないようにしておいても実現できる。
【0075】
同様に格子点(7,2)に注目して右方向に分散させた場合(左図)、(7,2)〜(10,2)の範囲(太線枠で表示)の灰色画素は、(7,2)と(9,2)である。従って塩基の候補は、AまたはCである。一方左側に分散させた場合(右図)、(4,2)〜(7,2)の範囲(太線枠で表示)の灰色画素は、(5,2)と(7,2)である。従って塩基の候補は、AまたはCである。ゆえに右側の分散方向、左側の分散方向共に塩基の候補はAまたはCとなり、塩基を同定できない。これは格子点(7,2)の左右に存在する格子点(5,2),(9,2)の塩基もAまたはCとなり、塩基を同定できない。この場合は、分散方向に対して一番反対側の格子点の塩基を同定することで、その他の分散方向に存在する塩基を数珠繋ぎ的に同定できる。例えば右側分散させる場合、分散方向に対して一番反対側(左側)の格子点は(3,2)である。この格子に注目すると、右側分散させた場合(左図)、(3,2)〜(6,2)の範囲の灰色画素は、(5,2)のみである。従って、格子点(3,2)の塩基はシトシンと同定される。次に格子点(3,2)の隣の格子点(5,2)の右側分散を考える。(5,2)〜(8,2)の範囲の灰色画素は、(5,2)と(7,2)である。但し格子点(3,2)はシトシンであるため、右側分散させた場合に灰色画素は(5,2)である。また(7,2)の灰色画素は、格子点(5,2)でも格子点(7,2)でも灰色画素とすることが可能である。従って右側分散だけでは格子点(5,2)の塩基は、AまたはCとなり、同定できない。次に格子点(5,2)の左側分散を考える。(2,2)〜(5,2)の範囲の灰色画素は、(3,2)と(5,2)である。ここで格子点(3,2)はシトシンであるため、(3,2)を灰色画素にはできないこと、格子点(7,2)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできないことから、(3,2)を灰色画素にできるのは格子点(5,2)のみであることがわかる。ゆえに格子点(5,2)はシトシンと同定される。次に格子点(5,2)の隣の格子点(7,2)の右側分散を考える。(7,2)〜(10,2)の範囲の灰色画素は、(7,2)と(9,2)である。但し格子点(5,2)はシトシンであるため、右側分散させた場合に灰色画素は(7,2)である。また(9,2)の灰色画素は、格子点(7,2)でも格子点(9,2)でも灰色画素とすることが可能である。従って右側分散だけでは格子点(7,2)の塩基は、AまたはCとなり、同定できない。次に格子点(7,2)の左側分散を考える。(4,2)〜(7,2)の範囲の灰色画素は、(5,2)と(7,2)である。ここで格子点(5,2)はシトシンであるため、(5,2)を灰色画素にはできないこと、格子点(9,2)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできないことから、(5,2)を灰色画素にできるのは格子点(7,2)のみであることがわかる。ゆえに格子点(7,2)はシトシンと同定される。このようにして、波長分散方向の塩基が全て同じである場合でも、数珠繋ぎ的に塩基を同定することができる。この方法は分散方向に対して少なくとも1つの格子点を欠損させておくか、或いは蛍光体を取り込ませないようにしておいても実現できる。
【0076】
同様に格子点(7,0)に注目して右方向に分散させた場合(左図)、(7,0)〜(10,0)の範囲(太線枠で表示)の灰色画素は、(8,0)と(10,0)である。従って塩基の候補は、GまたはTである。一方左側に分散させた場合(右図)、(4,0)〜(7,0)の範囲(太線枠で表示)の灰色画素は、(4,0)と(6,0)である。従って塩基の候補は、GまたはTである。ゆえに右側の分散方向、左側の分散方向共に塩基の候補はGまたはTとなり、塩基を同定できない。これは格子点(7,0)の左右に存在する格子点(5,0),(9,0)の塩基もGまたはTとなり、塩基を同定できない。この場合は、分散方向に対して一番反対側の格子点の塩基を同定することで、その他の分散方向に存在する塩基を数珠繋ぎ的に同定できる。例えば右側分散させる場合、分散方向に対して一番反対側(左側)の格子点は(3,0)である。この格子に注目すると、右側分散させた場合(左図)、(3,0)〜(6,0)の範囲の灰色画素は、(6,0)のみである。従って、格子点(3,0)の塩基はチミンと同定される。次に格子点(3,0)の隣の格子点(5,0)の右側分散を考える。(5,0)〜(8,0)の範囲の灰色画素は、(6,0)と(8,0)である。但し格子点(3,0)はチミンであるため、右側分散させた場合に灰色画素は(6,0)である。また(8,0)の灰色画素は、格子点(5,0)でも格子点(7,0)でも灰色画素とすることが可能である。従って右側分散だけでは格子点(5,0)の塩基は、GまたはTとなり、同定できない。次に格子点(5,0)の左側分散を考える。(2,0)〜(5,0)の範囲の灰色画素は、(2,0)と(4,0)である。ここで格子点(3,0)はシトシンであるため、(2,0)を灰色画素にはできないこと、格子点(7,0)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできないことから、(2,0)を灰色画素にできるのは格子点(5,0)のみであることがわかる。ゆえに格子点(5,0)はチミンと同定される。次に格子点(5,0)の隣の格子点(7,0)の右側分散を考える。(7,0)〜(10,0)の範囲の灰色画素は、(8,0)と(10,0)である。但し格子点(5,0)はチミンであるため、右側分散させた場合に灰色画素は(8,0)である。また(10,0)の灰色画素は、格子点(7,0)でも格子点(9,0)でも灰色画素とすることが可能である。従って右側分散だけでは格子点(7,0)の塩基は、GまたはTとなり、同定できない。次に格子点(7,0)の左側分散を考える。(4,0)〜(7,0)の範囲の灰色画素は、(4,0)と(6,0)である。ここで格子点(5,0)はチミンであるため、(5,0)を灰色画素にはできないこと、格子点(9,0)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできないことから、(4,0)を灰色画素にできるのは格子点(7,0)のみであることがわかる。ゆえに格子点(7,0)はチミンと同定される。このようにして、波長分散方向の塩基が全て同じである場合でも、数珠繋ぎ的に塩基を同定することができる。この方法は分散方向に対して少なくとも1つの格子点を欠損させておくか、或いは蛍光体を取り込ませないようにしておいても実現できる。以上より図5Aにおいて、4種類の塩基のうちある特定の塩基のみが分散方向の格子点に存在する場合に、その塩基配列を決定することができる。
【0077】
図5Bで、分散方向の格子点において、少なくとも1つの格子点の塩基がそれ以外の格子点の塩基(アデニン)とは異なる場合に、塩基を同定する方法について説明する。図5Bに示すある特定の格子点について、右側分散方向における灰色画素〔格子点画素〜(格子点画素+3画素)〕より、塩基候補を列挙する。同様に左側分散方向における灰色画素〔格子点画素〜(格子点画素−3画素)〕より、塩基候補を列挙する。図では5列の格子点があるが中央3列の格子点について、以下にその結果を示す。
【0078】
ここで右側分散と左側分散から得られる塩基候補のうち、ある特定の塩基のみが共通する場合にはその時点で、塩基を同定できる。またそれ以外の格子点については塩基の候補のみ決定される。上表の“塩基候補”の欄にその結果を記載した。次に塩基が同定されていない格子点について、塩基が同定されている格子点の情報からその塩基を特定する。例として、格子点(5,4)の場合について考える。それ以外の同定されていない格子点についても同様の考え方を適用することで塩基を同定できる。格子点(5,4)の右側分散を考える。(5,4)〜(8,4)の範囲の灰色画素は、(6,4)と(7,4)である。また左側分散させたときに(2,4)〜(5,4)の範囲の灰色画素は、(3,4)と(4,4)である。ここで格子点(5,4)の右側の塩基はアデニンと同定されている。格子点(5,4)において、同定されている格子点(7,4)がアデニンの場合、その格子点とは反対方向への分散(左側分散)を考える。格子点(5,4)の左側分散における灰色画素は、(3,4)と(4,4)である。ここで格子点(7,4)はアデニンであるため、(4,4)を灰色画素にはできないこと、格子点(9,4)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできないことから、(4,4)を灰色画素にできるのは格子点(5,4)のみであることがわかる。ゆえに格子点(5,4)はグアニンと同定される。このようにして、上表において“塩基候補”が複数ある格子点全てについて、塩基を同定し、その結果を“同定塩基”の欄に記載した。
【0079】
図5Cで、分散方向の格子点において、少なくとも1つの格子点の塩基がそれ以外の格子点の塩基(グアニン)とは異なる場合に、塩基を同定する方法について説明する。図5Cに示すある特定の格子点について、右側分散方向における灰色画素〔格子点画素〜(格子点画素+3画素)〕より、塩基候補を列挙する。同様に左側分散方向における灰色画素〔格子点画素〜(格子点画素−3画素)〕より、塩基候補を列挙する。図では5列の格子点があるが中央3列の格子点について、以下にその結果を示す。
【0080】
ここで右側分散と左側分散から得られる塩基候補のうち、ある特定の塩基のみが共通する場合にはその時点で、塩基を同定できる。またそれ以外の格子点については塩基の候補のみ決定される。上表の“塩基候補”の欄にその結果を記載した。次に塩基が同定されていない格子点について、塩基が同定されている格子点の情報からその塩基を特定する。例として、格子点(5,4)の場合について考える。それ以外の同定されていない格子点についても同様の考え方を適用することで塩基を同定できる。格子点(5,4)の右側分散を考える。(5,4)〜(8,4)の範囲の灰色画素は、(5,4)と(8,4)である。また左側分散させたときに(2,4)〜(5,4)の範囲の灰色画素は、(2,4)と(5,4)である。ここで格子点(5,4)の右側の塩基はグアニンと同定されている。格子点(5,4)において、同定されている格子点(7,4)がグアニンの場合、その格子点とは反対方向への分散(左側分散)を考える。格子点(5,4)の左側分散における灰色画素は、(2,4)と(5,4)である。ここで格子点(7,4)はグアニンであるため、(5,4)を灰色画素にはできないこと、格子点(9,4)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできないことから、(5,4)を灰色画素にできるのは格子点(5,4)のみであることがわかる。ゆえに格子点(5,4)はアデニンと同定される。このようにして、上表において“塩基候補”が複数ある格子点全てについて、塩基を同定し、その結果を“同定塩基”の欄に記載した。
【0081】
図5Dで、分散方向の格子点において、少なくとも1つの格子点の塩基がそれ以外の格子点の塩基(シトシン)とは異なる場合に、塩基を同定する方法について説明する。図5Dに示すある特定の格子点について、右側分散方向における灰色画素〔格子点画素〜(格子点画素+3画素)〕より、塩基候補を列挙する。同様に左側分散方向における灰色画素〔格子点画素〜(格子点画素−3画素)〕より、塩基候補を列挙する。図では5列の格子点があるが中央3列の格子点について、以下にその結果を示す。
【0082】
ここで右側分散と左側分散から得られる塩基候補のうち、ある特定の塩基のみが共通する場合にはその時点で、塩基を同定できる。またそれ以外の格子点については塩基の候補のみ決定される。上表の“塩基候補”の欄にその結果を記載した。次に塩基が同定されていない格子点について、塩基が同定されている格子点の情報からその塩基を特定する。例として、格子点(9,4)の場合について考える。それ以外の同定されていない格子点についても同様の考え方を適用することで塩基を同定できる。格子点(9,4)の右側分散を考える。(9,4)〜(12,4)の範囲の灰色画素は、(9,4)と(11,4)である。また左側分散させたときに(6,4)〜(9,4)の範囲の灰色画素は、(7,4)と(9,4)である。ここで格子点(9,4)の左側の塩基はシトシンと同定されている。格子点(9,4)において、同定されている格子点(7,4)がシトシンの場合、それと同一方向への分散(左側分散)を考える。格子点(9,4)の左側分散における灰色画素は、(7,4)と(9,4)である。ここで格子点(7,4)はシトシンであるため、(7,4)を灰色画素にはできないこと、格子点(11,4)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできないことから、(7,4)を灰色画素にできるのは格子点(9,4)のみであることがわかる。ゆえに格子点(9,4)はシトシンと同定される。このようにして、上表において“塩基候補”が複数ある格子点全てについて、塩基を同定し、その結果を“同定塩基”の欄に記載した。
【0083】
図5Eで、分散方向の格子点において、少なくとも1つの格子点の塩基がそれ以外の格子点の塩基(チミン)とは異なる場合に、塩基を同定する方法について説明する。図5Eに示すある特定の格子点について、右側分散方向における灰色画素〔格子点画素〜(格子点画素+3画素)〕より、塩基候補を列挙する。同様に左側分散方向における灰色画素〔格子点画素〜(格子点画素−3画素)〕より、塩基候補を列挙する。図では5列の格子点があるが中央3列の格子点について、以下にその結果を示す。
【0084】
ここで右側分散と左側分散から得られる塩基候補のうち、ある特定の塩基のみが共通する場合にはその時点で、塩基を同定できる。またそれ以外の格子点については塩基の候補のみ決定される。上表の“塩基候補”の欄にその結果を記載した。次に塩基が同定されていない格子点について、塩基が同定されている格子点の情報からその塩基を特定する。例として、格子点(9,4)の場合について考える。それ以外の同定されていない格子点についても同様の考え方を適用することで塩基を同定できる。格子点(9,4)の右側分散を考える。(9,4)〜(12,4)の範囲の灰色画素は、(10,4)と(12,4)である。また左側分散させたときに(6,4)〜(9,4)の範囲の灰色画素は、(6,4)と(8,4)である。ここで格子点(9,4)の左側の塩基はチミンと同定されている。格子点(9,4)において、同定されている格子点(7,4)がチミンの場合、それと同一方向への分散(左側分散)を考える。格子点(9,4)の左側分散における灰色画素は、(6,4)と(8,4)である。ここで格子点(7,4)はチミンであるため、(6,4)を灰色画素にはできないこと、格子点(11,4)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできないことから、(6,4)を灰色画素にできるのは格子点(9,4)のみであることがわかる。ゆえに格子点(9,4)はチミンと同定される。このようにして、上表において“塩基候補”が複数ある格子点全てについて、塩基を同定し、その結果を“同定塩基”の欄に記載した。
【0085】
図5A〜図5Eに記載した塩基配列同定方法を図5Fの全ての格子点に適用して、塩基配列を同定する。図5Fには右側分散と左側分散それぞれの灰色画素とその座標を表示した。図5Fに示すある特定の格子点について、右側分散方向における灰色画素〔格子点画素〜(格子点画素+3画素)〕より、塩基候補を列挙する。同様に左側分散方向における灰色画素〔格子点画素〜(格子点画素−3画素)〕より、塩基候補を列挙する。これを図5Fの全ての格子点について実施した。4列目(a,4)の格子点についての結果を以下に示す。
【0086】
4列目(a,4)の格子点では上表の“塩基候補”の時点で全ての塩基が同定されている。次に2列目(a,2)の格子点についての結果を以下に示す。
【0087】
2列目(a,2)の格子点では上表の“塩基候補”の時点で全ての塩基は同定されていない。塩基候補がAとCの2つある格子点(7,2)について、塩基を同定する。同定されている格子点(5,2)がシトシンの場合、その格子点と同一方向への分散(左側分散)を考える。格子点(7,2)の左側分散における灰色画素は、(4,2)〜(7,2)の範囲で(5,2)と(7,2)である。ここで格子点(5,2)はシトシンであるため、(5,2)を灰色画素にはできないこと、格子点(9,2)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできないことから、(5,2)を灰色画素にできるのは格子点(7,2)のみであることがわかる。ゆえに格子点(7,2)はシトシンと同定される。この方法では格子点(7,2)の塩基を、格子点(5,2)の塩基情報から決定したが、格子点(9,2)の塩基情報からも同定できる。同定されている格子点(9,2)がシトシンの場合、その格子点と同一方向への分散(右側分散)を考える。格子点(7,2)の右側分散における灰色画素は、(7,2)〜(10,2)の範囲で(7,2)と(9,2)である。ここで格子点(9,2)はシトシンであるため、(9,2)を灰色画素にはできないこと、格子点(5,2)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできないことから、(9,2)を灰色画素にできるのは格子点(7,2)のみであることがわかる。ゆえに格子点(7,2)はシトシンと同定される。格子点(7,2)の塩基を、格子点(5,2)と格子点(9,2)の塩基情報を利用することで、それぞれシトシンと同定された。このようにある特定の格子点の塩基を、波長分散方向に近接した両隣の塩基から同定することで、塩基配列の決定精度は高くなる。例えばある特定の格子点において、分散方向のどちらかの格子点が欠落している場合や蛍光体を取り込んでいない場合や蛍光体を取り込んでいるが塩基の同定が難しい場合、それらとは反対方向の格子点の塩基からのみある特定の格子点の塩基を同定できる。この現象により塩基配列の決定精度が悪くなる場合には、その格子点の座標と同定した塩基データに目印の情報(フラグ)をつけておくことができる。例えば新規にゲノム配列を決定する際に、DNAを短い断片にして、ランダムに多数の断片を分離して配列決定し、その断片配列情報の重ねあわせによりゲノム配列を決定する(デノボシークエンス)。断片配列情報の重ねあわせの過程において、上述したフラグのついた塩基がある場合には、例えばその塩基情報を除外、或いは重ねあわせに対する制約(アルゴリズム)を小さくして断片配列情報を重ねあわせることにより、配列決定精度を高めることができる。最後に0列目(a,0)の格子点についての結果を以下に示す。
【0088】
0列目(a,0)の格子点では上表の“塩基候補丸数字1”の時点で全ての塩基は同定されていない。格子点(5,0)はAまたはG、格子点(7,0)はCまたはT、格子点(9,0)はAまたはGであり、塩基が同定されていない。従って塩基が同定された分散方向両隣にある格子点の情報から、塩基を同定する必要がある。格子点(5,0)は格子点(3,0)がチミンであることから、格子点(9,0)は格子点(11,0)がチミンであることからそれぞれの格子点の塩基を同定できる。但し格子点(7,0)に関しては、分散方向両隣にある格子点〔格子点(5,0)と格子点(9,0)〕の塩基が同定されていないため、この時点では格子点(7,0)の塩基を同定できない。従ってまずは格子点(5,0)と格子点(9,0)の塩基を同定する必要がある。格子点(5,0)に関しては、同定されている格子点(3,0)がチミンの場合、その格子点と反対方向への分散(右側分散)を考える。格子点(5,0)の右側分散における灰色画素は、(5,0)〜(8,0)の範囲で(5,0)と(6,0)である。ここで格子点(5,0)はチミンであるため、(5,0)を灰色画素にはできないこと、格子点(3,0)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできないことから、(5,0)を灰色画素にできるのは格子点(5,0)のみであることがわかる。ゆえに格子点(5,0)はアデニンと同定される。次に格子点(9,0)に関しては、同定されている格子点(11,0)がチミンの場合、その格子点と反対方向への分散(左側分散)を考える。格子点(9,0)の左側分散における灰色画素は、(6,0)〜(9,0)の範囲で(8,0)と(9,0)である。ここで格子点(11,0)はチミンであるため、(9,0)を灰色画素にはできないこと、格子点(13,0)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできないことから、(9,0)を灰色画素にできるのは格子点(9,0)のみであることがわかる。ゆえに格子点(9,0)はアデニンと同定される。以上より格子点(5,0)、格子点(11,0)共にアデニンと同定され、この時点での塩基候補の結果を上表の“塩基候補丸数字2”へ記入した。“塩基候補丸数字2”の時点で同定されていない塩基の格子点は、格子点(7,0)である。塩基候補がCとTの2つある格子点(7,0)について、塩基を同定する。同定されている格子点(5,0)がアデニンの場合、その格子点と同一方向への分散(左側分散)を考える。格子点(7,0)の左側分散における灰色画素は、(4,0)〜(7,0)の範囲で(4,0)と(5,0)である。ここで格子点(5,0)はアデニンであるため、(4,0)を灰色画素にはできないこと、格子点(9,0)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできないことから、(4,0)を灰色画素にできるのは格子点(7,0)のみであることがわかる。ゆえに格子点(7,0)はチミンと同定される。この方法では格子点(7,0)の塩基を、格子点(5,0)の塩基情報から決定したが、格子点(9,0)の塩基情報からも同定できる。同定されている格子点(9,0)がアデニンの場合、その格子点と同一方向への分散(右側分散)を考える。格子点(7,0)の右側分散における灰色画素は、(7,0)〜(10,0)の範囲で(9,0)と(10,0)である。ここで格子点(9,0)はアデニンであるため、(10,0)を灰色画素にはできないこと、格子点(5,0)は分散方向へ2つ隣の格子点を灰色画素にはできないことから、(10,0)を灰色画素にできるのは格子点(7,0)のみであることがわかる。ゆえに格子点(7,0)はチミンと同定される。格子点(7,0)の塩基を、格子点(5,0)と格子点(9,0)の塩基情報を利用することで、それぞれチミンと同定された。このようにある特定の格子点の塩基を、波長分散方向に近接した両隣の塩基から同定することで、塩基配列の決定精度は高くなる。このようにある特定の格子点の塩基を、波長分散方向に近接した両隣の塩基から同定することで、塩基配列の決定精度は高くなる。例えばある特定の格子点において、分散方向のどちらかの格子点が欠落している場合や蛍光体を取り込んでいない場合や蛍光体を取り込んでいるが塩基の同定が難しい場合、それらとは反対方向の格子点の塩基からのみある特定の格子点の塩基を同定できる。この現象により塩基配列の決定精度が悪くなる場合には、その格子点の座標と同定した塩基データに目印の情報(フラグ)をつけておくことができる。例えば新規にゲノム配列を決定する際に、DNAを短い断片にして、ランダムに多数の断片を分離して配列決定し、その断片配列情報の重ねあわせによりゲノム配列を決定する(デノボシークエンス)。断片配列情報の重ねあわせの過程において、上述したフラグのついた塩基がある場合には、例えばその塩基情報を除外、或いは重ねあわせに対する制約(アルゴリズム)を小さくして断片配列情報を重ねあわせることにより、配列決定精度を高めることができる。これまではX方向の分散のみ扱ってきたが、XYの4方向に分光させることでデータの信頼性は更に増す。図1のプリズム17a,17bに17c,17dを加えて4つの集光レンズと4つのCCDで検出することもできる。
【0089】
以上より複数方向への分散画像より、塩基配列を同定することができる。また分散距離が4画素の場合、図3A〜図3Dの例では、隣接する格子間距離を分散距離4画素必要であったが、図5A〜図5Fの例では、格子間距離は2画素で同様の解析が実現できる。従って1視野で検出できる格子点数は、図5A〜図5Fの例では図3A〜図3Dと比較して、(4×4)/(2×2)で4倍になり、その分塩基配列を多く同定でき、スループットは向上する。分散方向や格子配置の検討により、この割合は更に高くなることはいうまでもない。例えば格子を2つ飛び越えない条件では、A(アデニン)の格子点からの変位量を0画素、G(グアニン)の格子点からの変位量を1画素、C(シトシン)の格子点からの変位量を2画素、T(チミン)の格子点からの変位量を3画素として、格子点の間隔を1×1画素にすることで、同様のことを実現できる。これにより1視野で検出できる格子点数は、図3E〜図3Lの例では図3A〜図3Dと比較して、(4×4)/(1×1)で16倍スループットが向上する。
【0090】
以上のように、第6の実施形態によれば、分散分光イメージング法に基づくシステムにおいて、特定の格子点から発する蛍光像を、複数の波長分散方向に分散させることで、蛍光体の識別と波長分散対象物の位置の同定を精度よく行うことができる。また、金属構造物からの光ルミネセンスを検出することにより、波長基準を基板の反応点ごとに得ることができ、分散分光イメージング方式では困難であった発光した蛍光体の種別判定が高精度に行えるようになり、結果として高精度な塩基配列決定が可能となる。基板表面上に金属の構造物は金のほか、クロム,銀,アルミなどで構築することもできる。また、波長基準は、フィルタの中心波長だけではなく、レーザ散乱のスペクトルなどからも得ることができる。なお、本実施例では4種の異なる蛍光体を異なるdNTPに標識したが、4種のdNTPに同じ1種の蛍光体を標識することもできる。この場合、励起レーザ光源は1種となる。反応はA→C→G→T→A→C・・・と順番に行う必要がある。また、石英製プリズム7に対してレーザ光を垂直に入射している。これにより、基板とプリズムを一体化して移動させることができる。
【0091】
<第4の実施形態>
図6は基板とエバネッセント照明のためのプリズムとの接合部の別の構造を示す。図1と同じく、石英製プリズム7に基板8をカップリングする。カップリング材として透明な弾性体、たとえば、PDMS樹脂201(屈折率=1.42,内部透過率=0.966/厚み2mm材)を介して接合する。PDMS樹脂の屈折率はガラスに近く、また透明であるため、基板とプリズムで挟み押し付けることで光学的に接着する。測定中、基板内の測定視野の移動は、プリズム込みでXYステージにて行うことができる。
【0092】
図7,図8は、基板とエバネッセント照明のためのプリズムとの接合部の別の構造を示す。測定基板200は専用のホルダ203に埋め込まれて固定される。この下部(反応表面側,格子構造形成側)にフローチャンバ204を固定される。フローチャンバ204はPDMSで形成し、ホルダ203と接着され、測定基板200の反応領域に試薬,洗浄液などをフローできるようになっている。これをXYステージ209(図8に図示)に固定された基板保持具205に接触させる。フローチャンバ204の流路208と貫通孔206の位置をそろえて配置する。貫通孔206は外部のフローシステムと連結される。また、基板保持具205は、その中央に大きな開口部207を有しており、集光レンズ14と測定基板200とが近接でき、蛍光を高効率で集光できる。測定基板200の裏面(図では上側)のホルダ203内の窪み202にマッチングオイルを保持し、プリズム7を配置する。窪み202にマッチングオイルに替えてPDMS樹脂を埋めることでマッチングすることでもよい。プリズム7はプリズムホルダ210に固定されており、基板との着脱機能を有しており、エバネッセント照明する場合に基板と接着する。なお、プリズムをアクリルなどで作成し、それを基板と一体化して固着した状態のものを使うこともできる。
【0093】
<第5の実施形態>
反応基板の別の実施例を示す。本実施例での基板60の構造を図9に示す。基板60は、反応領域60aを有し、その内部にDNAが固定される領域60ijが複数形成されており、さらに複数の60ijの周りを光学的に不透明なマスク60bで覆う構造とする。マスク材料としては、アルミニウム,クロムなどの金属,炭化シリコンなどが適用でき、蒸着などで、薄膜化する。領域60ijの個々の大きさは直径100nm以下である。この開口をマスク60bのなかに作成する方法としては、プロジェクション法での蒸着(蒸着源と基板との間に適当なマスクを配置して蒸着する)、電子ビームリソグラフィー,フォトリソグラフィーによる直接描画によって作成できる。ドライエッチング、ウェットエッチングを用いても良い。本例によっても、上記実施例1と同様の効果が得られる。また、反応領域60ij以外はマスクされているため、不要な迷光、蛍光が低減でき、より高感度に測定することができるようになる。微小開口を有する金属薄膜の基板の場合は、生体分子は開口中に固定する。この場合、生体分子周囲の試料液のラマン散乱光と生体分子近傍の金属構造物の光ルミネセンス・光散乱を検出することで、構造物の空間位置を検出することができ、位置の基準マーカとして活用できる。開口中に金属構造体を作成してもよい。
【0094】
<第6の実施形態>
本発明の蛍光分析方法を使ったDNA検査装置について説明する。本発明は、配列情報を1つまたは複数の鋳型から、並行して、実質的に同時に収集するために使用され得るさまざまな自動配列決定システムを提供する。好ましくは、鋳型は、実質的に平面状の基材上でアレイ状である。本発明のシステムの一例は、図1,図4で説明したように、CCDカメラ,蛍光顕微鏡,可動ステージ,フローセル,温度制御装置,液体操作装置,プリズム,分散プリズム,分光フィルタ,集光レンズおよびコンピュータ等を備えている。これらの構成要素の置き換えや、システムにより構成要素の数の増減がなされること、フィルタの光学特性を変更すること、構成要素の置換えに伴う光学素子の追加や変更がされることは言うまでもない。例えば、CCDカメラの代わりにTDIなどのイメージセンサを用いたり、励起光源としてレーザの替わりにLED(Laser Emitted Diode)を用いたり、2台のCCDカメラの替わりに1台または4台のCCDカメラを用いたりできる。LEDを用いた励起方法については、例えばWO2007/054301,WO2008/043500などに記述されている。
【0095】
本発明の蛍光分析方法は、様々な配列決定法、例えば限定されないが、合成方法による配列決定(Sequence by Synthesis)、合成による蛍光インサイチュで配列決定(FISSEQ)(例えば、Mitra RDら.、Anal Biochem.、320(l):55−65,2003)、ライゲーション(Sequence by ligation)による配列決定方法(例えば、US特許2008/0003571),逐次合成方式による単一分子シーケンス法(例えば、US特許2002/0164629),リアルタイム反応方式による単一分子シーケンス法(例えば、Jonas Korlashら.、PNAS.、Vol.105,1176−1181,2008)などを行うために使用され得る。FISSEQは、半固相支持体内または該支持体上に直接固定化された鋳型上、半固相支持体内または該支持体上の微粒子上に固定化された鋳型上、基材に直接結合された鋳型上などで行われ得る。本発明のシステムの重要な要素の1つは、フローセルである。一般にフローセルは、内部を流体が流動し得る流入ポートおよび流出ポートを有するチャンバを含む。種々のフローセルならびにその製造のための材料および方法については、例えば、米国特許第6,406,848号および同第6,654,505号ならびにPCT公開公報WO98053300に記述されている。流体の流動により、種々の試薬をフローセル内に位置する存在体(例えば、鋳型,微粒子,解析物など)に添加し、これらから除去することが可能になる。好ましくは、本発明の配列決定システムにおける使用に適したフローセルは、流体がその表面を流動するような基材、例えば、スライドなどの実質的に平面状の基材が取り付けられる位置、および照光,励起,シグナル取得などを可能にする窓を備える。本発明の方法によれば、微粒子などの存在体は、典型的にはフローセル内に配置する前に、基材上にアレイ状にする。
【0096】
本発明のある特定の実施形態において、フローセルは垂直に配向させ、これにより、気泡をフローセルの上面から散逸させることが可能になる。フローセルは、流体経路がフローセルの下部から上に流れるように、例えば、流入ポートがセルの下部に存在し、流出ポートがセルの上に存在するように配設する。導入され得る気泡は浮揚性であるため、これは、照光窓を障害することなく速やかに流出ポートに浮揚する。気泡を液体の表面まで、その密度が該液体のものより低いことによって上昇させる。好ましくは、鋳型を直接接着もしくは固定した基材、自身に直接もしくは間接的に結合された微粒子(例えば、共有結合もしくは非共有結合により基材に結合)、または基材に接着もしくは固定された半固相支持体内または該支持体上に固定化された微粒子を有する基材をフローセル内に垂直になるように、すなわち、基材の最大の平面状の表面が、設置面に対して垂直になるように取り付ける。フローセルを垂直配置する構成として、以下の2方式が考えられる。以下の2方式では、図4の構成における対物レンズ14近傍の部分を拡大した。但し図1のプリズム型全反射顕微鏡などその他のシステムにも適用できる。1つ目は、図10aに示すようにステージ自体を垂直にする構成である。この構成において、フローセル平面をスキャンするために要求されるステージ32は、XYステージである。但し焦点が合わないなどの理由で更に必要な場合には、XYステージの替わりにXYZステージを組み付けるか、対物レンズ14にZ方向に対応するステージを設置することができる。なおフローチャンバ9は対物レンズ14とは反対側に設置されており、励起光の入射,蛍光信号の取得共に対物レンズ14側から行う場合、フローチャンバ14の材質に制約はなく、不透明な材質(アルミやSUSなどの金属)を用いることができる。フローチャンバ14にヒーターまたはペルチエなどを接続することで、温度調節を行うことができる。なお図4における基板8は省略した。またフローチャンバ9とステージ32の間の黒丸は、送液チューブからの気泡や溶存酸素を示している。2つ目は、図10bに示すように水平に配置したXYZステージに、フローセルを支えるフローセルホルダを垂直に配置する構成である。この構成において、フローセル平面をスキャンするために要求されるステージは、XZステージである。但し焦点が合わないなどの理由で更に必要な場合には、XZステージの替わりにXYZステージを組み付けるか、対物レンズにY方向に対応するステージを設置することができる。好ましい実施形態では、微粒子は、支持体または基材内またはその上面に固定化されているため、互いに対して実質的に固定された位置に維持され、これにより逐次的な画像取得と画像レジストレーションが容易になる。また本発明のある特定の実施形態において、フローセルを垂直配置する替わりに、フローセルを傾斜配置させ、気泡をフローセルの上面から散逸させることができる。フローセルを傾斜配置する構成として、以下の2方式が考えられる。1つ目は、図10cに示すようにステージ自体を傾斜させる構成である。この構成において、フローセル平面をスキャンするために要求されるステージは、XYステージである。但し焦点が合わないなどの理由で更に必要な場合には、XYステージの替わりにXYZステージを組み付けるか、対物レンズにZ方向に対応するステージを設置することができる。ステージを傾斜配置する角度は20°程度が望ましいが、これに限定されるものではない。2つ目は、図10dに示すように水平に配置したXYZステージに、フローセルを支えるフローセルホルダと対物レンズを傾斜配置する構成である。この構成において、フローセル平面をスキャンするために要求されるステージは、XZステージである。但し焦点が合わないなどの理由で更に必要な場合には、XZステージの替わりにXYZステージを組み付けるか、対物レンズにフローセル平面に垂直に対応するステージを設置することができる。好ましい実施形態では、微粒子は、支持体または基材内またはその上面に固定化されているため、互いに対して実質的に固定された位置に維持され、これにより逐次的な画像取得と画像レジストレーションが容易になる。更に本発明のある特定の実施形態において、フローセルを垂直または傾斜配置する替わりに、フローセルを水平配置させることも可能である。フローセルを水平配置する構成として、以下の3方式が考えられる。1つ目は、図10eに示すようにステージとフローセルを水平配置する構成である。この構成において、フローセル平面をスキャンするために要求されるステージは、XYステージである。但し焦点が合わないなどの理由で更に必要な場合には、XyYステージの替わりにXYZステージを組み付けるか、対物レンズにZ方向に対応するステージを設置することができる。フローセル内に液体を流すことにより、気泡を除去することができる。また液体の流れるフローセル上面に付着した気泡が、蛍光検出などの検出系に影響しない場合には必ずしも気泡を除供する必要がない。2つ目は、図10fに示すようにステージとフローセルを水平配置し、液体の流れるフローセル上面の高さをステージ面に対して傾斜させる構成である。これにより気泡を除去することができる。傾斜させる角度は20°程度が望ましいが、これに限定されるものではない。この構成において、フローセル平面をスキャンするために要求されるステージは、XYステージである。但し焦点が合わないなどの理由で更に必要な場合には、XYステージの替わりにXYZステージを組み付けるか、対物レンズにZ方向に対応するステージを設置することができる。フローセル内に液体を流すことにより、気泡を除去することができる。3つ目は、図10gに示すようにステージとフローセルを水平配置し、液体の流れるフローセル上面の高さをステージ面に対して傾斜させる構成である。但し傾斜させる位置は、蛍光検出などの検出に影響しない領域に限定する。これにより気泡を除去することができる。傾斜させる角度は20°程度が望ましいが、これに限定されるものではない。この構成において、フローセル平面をスキャンするために要求されるステージは、XYステージである。但し焦点が合わないなどの理由で更に必要な場合には、XYステージの替わりにXYZステージを組み付けるか、対物レンズにZ方向に対応するステージを設置することができる。フローセル内に液体を流すことにより、気泡を除去することができる。蛍光検出などの検出に影響しない領域で、液体の流れるフローセル9上面の高さをステージ面に対して傾斜させた上視図を図11a〜図11cに示す。図はあくまでも例であり、これらに限定されるものではない。いずれの図も試薬の注入口(黒丸で図示)から排出口(白丸で図示)を含む斜線部に示す部分が傾斜しており、気泡を排出することができる。斜線部中の矢印は気泡の移動方向を示している。また検出面(非斜線部)は水平面になっている。本発明のフローセルは、任意のさまざまな目的、例えば、限定されないが、解析方法(例えば、配列決定,ハイブリダイゼーションアッセイなどの核酸解析法;タンパク質解析法,結合アッセイ,スクリーニングアッセイなど)に使用され得る。フローセルはまた、合成を行うため、例えば、コンビナトリアルライブラリーを作製するためなどに使用され得る。フローセルは、自動温度制御ステージ上に取り付けられ、液体操作システム(例えば、マルチポートバルブを有するシリンジポンプなど)に接続されている。該ステージは、他の反応工程、例えば、伸長,反応,洗浄などが別のフローセルで行われている間に、1つのフローセルが画像化されるのを可能にするために、多数のフローセルを収容する。このアプローチは、高価な光学システムの利用を最大限にするとともに、処理量を増大させる。同時処理可能なフローセルの枚数は、1枚の基板を検出するのに要する時間と、反応工程時間とによってその最大値が決定される。流体ラインには、気泡を検出するため、および試薬の使用をモニタするための光学および伝導性センサが設置されている。流体工学システム内の温度制御およびセンサにより、試薬が、長時間の安定に適切な温度に維持されるが、フローセル内に侵入するとき作業温度またはで上昇せず、アニーリング,ライゲーションおよび切断工程中での温度変動が回避されることが確保される。試薬は、好ましくは、誤負荷を回避するためキット内に予め装填しておく。
【0097】
光学装置としては、図1では2つのCCDカメラが含まれ、分散プリズムにより分光された画像を撮影する。但しCCDカメラの個数は分散プリズムによる分光方向の数だけ準備してもよく、光学素子によってはその数を減らすことも可能である。例えば図1の分散プリズム17a,17bからの分散が視野の中心軸(図1の点線)上に集光するようにすれば、CCDカメラ19a,19bは1つに、集光レンズ18a,18bも1つにすることができる。但しこの場合、2方向に分散させた情報を1つのCCDで検出することになる。従って例えば図5aの右側分散と左側分散の画像が重なった画像が得られることになる。そうすると実施例3で示した解析方法では、塩基配列の特定が困難な場合がある。その場合には、例えば図1の分散プリズム17a,17bに入る平行光束をどちらか一方のみにするためのシャッターを分散プリズム手前に設置することで、1つのCCDであってもシャッターの切替えにより2方向に分散させた情報を1つのCCDでそれぞれ取得することができる。
【0098】
また蛍光体の光退色性効果を低減させるため、照光光学装置は、イメージセンサで画像化される領域だけに照光されるように、視野周辺の多重照光が回避されるように設計されたものであり得る。通常CCDセンサは四角形(正方形),励起光(例えばレーザ光)は円形である。仮に正方形形状を有するCCDセンサ全面に、円形のビームを照射した場合、CCDセンサ以外の部分へ照光される割合は、

となり、上下左右の隣接視野にそれぞれ約14%の照光が発生する。励起光の直径がCCDセンサの対角線長さより大きいほどこの割合は増加する。一般的に励起光の励起密度分布は中心が最も強く、周辺ほど弱くなるため、ビーム直径はCCDの対角線長さより大きくする必要がある。この結果、例えば左上から右下にスキャンする方式の場合、検出前に既に多重照光されている割合は、少なくとも視野全体の28%(14×2)となる。蛍光強度が弱い場合、検出前に蛍光強度が0になる蛍光消光現象が発生する可能性があるため、回避する必要がある。そこでこれを回避するための光学素子の配置例を図12に示す。図12は図4の装置構成を模したものであるが、あくまでも一例であり、これに限定されるものではない。レーザ101をCCDセンサ19の形状に対応するスリット33を通して、ダイクロイックミラー34で反射させ、対物レンズ14を通過し、基板8へ照射させる。基板8へは全反射が発生する角度(ガラスと水の場合約68°)でレーザ101が入射するため、スリット33通過後の励起光の形状は、励起光101を全反射角度で輪切りにした時にその形状がCCDセンサ19の形状と一致するようにする。励起された蛍光は再び対物レンズ14とダイクロイックミラー34を透過して、CCDセンサ19で検出される。CCDセンサの形状に合わせた励起光を照射することができるため、前述の多重照光を回避することができる。スリット33の位置は基板8に近い方が良いが、これに制約されるものではない。
【0099】
また必要に応じて任意の光学フィルタを設置してもよい。例えば図1,図4に示す装置において、分散プリズム17a,17b手前の平行光束または分散プリズム後ろの位置に、4色蛍光体の蛍光強度を調整するフィルタを設置することで、4色蛍光体の蛍光強度を揃えてから波長分散させることができる。これにより蛍光体毎の強度を揃えることができる。これにより、例えば図3Lなどで2つの格子点からの波長分散がある特定の画素で検出される場合、各蛍光体の蛍光強度が等しければ、何個の蛍光体信号であるかを識別できる。例えば図5において、右側分散で、格子点座標(a−2,b)の塩基がシトシン、(a−1,b)の塩基がグアニンであった場合、(a,b)の画素にシトシンとグアニン由来の蛍光信号が計測される。グアニンの蛍光強度とシトシンの蛍光強度比が例えば10:1であった場合、その蛍光強度がグアニン単独(10)か、グアニンとシトシン(10+1=11)かを判別することは難しい。予め4色蛍光体強度を調整しておくことで、例えばグアニンの蛍光強度とシトシンの蛍光強度比が1:1であれば、(a,b)の画素で蛍光強度2であればシトシンとグアニンの両方が由来であることがわかる。この比は1:1に揃える必要はない。例えばアデニン,グアニン,シトシン,チミンの蛍光強度比を1:2:3:4などの一定の比率でずらしておくことで、塩基配列をより特定しやすくすることもできる。4色蛍光体の蛍光強度を調整するフィルタの波長特性は、鋳型の蛍光体の取り込み効率,蛍光体波長,蛍光体のモル吸光係数などによって決めることができ、光学メーカーにてフィルタを特注製作することが可能である。このような光学フィルタをターレットに複数搭載し、必要に応じて切替えながら使用することもできる。
【0100】
また必要に応じて異なる方向に分光した蛍光信号の強度を調整してもよい。例えば図1において、分散プリズム17a,17bにより分散させた蛍光信号を、集光レンズ18a,18bの手前あるいは後ろにNDフィルタを置くことで調整できる。或いは分散プリズム17a,17bの分散角交点の位置を視野中心(図1の点線)から左右にずらすことでもCCDセンサ19a,19bで検出される蛍光強度比を変えることができる。これにより例えば図5Fにおいて、右側分散させたときと左側分散させた時の蛍光強度比が、調整した蛍光強度比になっているかを比較することで、塩基を特定しやすくすることができる。例えば図5において右側分散と左側分散の比を7:3として、格子点(a,b)がシトシンであった場合、右側分散は格子点(a+2,b)に左側分散は格子点(a−2,b)に7:3の蛍光強度比で検出される。例えばこの比が7:6であった時には、左側分散で格子点(a−2,b)に検出される他の格子点、例えば格子点(a+1,b)がチミンであることなどが考えられ、塩基配列を決定するための情報となる。これに加えて異なる方向に分光した蛍光信号の強度比を連続的に変えたり、蛍光体毎の蛍光強度比を変えながら、CCDセンサで検出して、異なる画像間(例えば右側分散で取得した複数の画像比較)での比較からも、蛍光体を同定することができる。例えば図5において右側分散と左側分散の比を7:3として、格子点(a,b)がシトシンであった場合、右側分散は格子点(a+2,b)に左側分散は格子点(a−2,b)に7:3の蛍光強度比で検出される。例えばこの比が7:6であった時には、左側分散で格子点(a−2,b)に検出される他の格子点、例えば格子点(a+1,b)がチミンであることなどが疑われる。この際に例えば左側分散におけるチミンの蛍光波長を遮断する光学フィルタをターレットで切り替えてCCDセンサで検出しておくで、同じ左側分散の画像でも格子点(a−2,b)に7:6の蛍光強度比であったものが、例えば7:3となり、格子点(a,b)がグアニン、格子点(a+1,b)がチミンであると同定しやすくなる。
【0101】
また必要に応じて、蛍光体の分散距離を変化させることもできる。例えば図1,図4における分散プリズムの分散角を異なる角度に設定したり、分散プリズムを追加したり、ビームエキスパンダーを用いるなどして実現できる。また分散プリズムをターレットに複数配置して、異なる分散距離を実現することもできる。
【0102】
例えば図5において右側分散と左側分散の比を7:3として、格子点(a,b)がシトシンであった場合、右側分散は格子点(a+2,b)に左側分散は格子点(a−2,b)に7:3の蛍光強度比で検出される。例えばこの比が7:6であった時には、左側分散で格子点(a−2,b)に検出される他の格子点、例えば格子点(a+1,b)がチミンであることなどが疑われる。この際に例えば左側分散の距離を大きくすることで、チミンはシトシンよりもより左側の画素へ分光され、その距離は分散角度などの設定により予め知ることができる。従って格子点(a,b)がグアニン、格子点(a+1,b)がチミンであると同定しやすくなる。
【0103】
また必要に応じて、蛍光体の蛍光強度の時間的ばらつきを利用することもできる。これは図1,図4の例でわかるように、ある瞬間における蛍光(平行光束)を異なる分散方向へ分光しているために実現できることである。蛍光強度の時間的ばらつきについて、蛍光体の1分子計測の知見では、励起光を照射し続けているにもかかわらず、蛍光強度が有る瞬間に0になり、一定時間後に蛍光信号が再び計測されるブリンキングと呼ばれる現象が発生する。ブリンキングは励起光強度が高いほど発生しやすく、蛍光体によっても差があることが知られている。対策としてβメルカプトエタノールなどのスカベンジャー試薬を、蛍光体に入れておくことによりブリンキングを抑制できるが、完全に抑えることは困難である。ブリンキングは1分子を対象とした計測においては、大きな課題となっている。特に1分子の鋳型に蛍光分子を伸長停止させないでリアルタイムで取り込みながら、取り込んだ塩基を決定する方法では、同じ蛍光信号が明滅した場合に、ブリンキングが発生して再びその蛍光体が蛍光信号を発生したのか、同じ塩基配列のものを複数回取り込んだのかを区別することが難しい。多分子の蛍光体の集合体の場合、1個1個の蛍光体がブリンキングを起こしたとしても、集合体自体がブリンキングを起こすほどにはならないが、蛍光強度は時間によりばらつく。また蛍光体は励起光を宛て続けるとその蛍光信号が0になる消光現象が発生する。従って多分子の蛍光体の集合体であっても、励起光をあて続けるとその蛍光強度が現象し、やがて0になる。この時間は蛍光体ごとに異なるため、この情報を利用することもできる。例えば図5において右側分散と左側分散の比を7:3として、格子点(a,b)がシトシン1分子であった場合、右側分散は格子点(a+2,b)に左側分散は格子点(a−2,b)に7:3の蛍光強度比で検出される。例えばある瞬間に右側分散と左側分散の蛍光強度が0になった場合、格子点(a,b)はシトシン由来であることがわかる。仮にある瞬間に右側分散の蛍光強度が半分に、左側分散の蛍光強度が0になった場合には、右側分散で(a+2,b)に検出されている蛍光体は1つ〔(a,b)のシトシン〕ではなく、複数存在することが推定される。これは多分子の蛍光体の集合体(例えば微小なビーズにエマルジョンPCRなどで同一の鋳型を複数固定した場合)であっても適用できる。また必要に応じて、プリズムの分光方向を変えることもできる。例えば分散方向を360°変えながらCCDセンサで画像取得するなどした場合、格子点を中心とした円を描くことができ、それにより、格子点に存在する蛍光体を特定しやすくなる。
【0104】
例えば図5において右側分散と左側分散の比を7:3として、格子点(a,b)がシトシンであった場合、右側分散は格子点(a+2,b)に左側分散は格子点(a−2,b)に7:3の蛍光強度比で検出される。例えばこの比が7:6であった時には、左側分散で格子点(a−2,b)に検出される他の格子点、例えば格子点(a+1,b)がチミンであることなどが疑われる。この際に例えば分散プリズムを回転させながら、それに応じてCCDセンサや集光レンズの位置を移動して検出するか、あるいは分散方向を連続的に換えた分散プリズム(分散角交点へ向かってすり鉢上の構造であるプリズムまたは分散角交点を頂点とした円錐形状の分散プリズム)を利用することで、格子点を中心とする同心円を観察できる。従って格子点(a,b)がグアニンであれば格子点(a,b)を中心とする半径1画素の円、格子点(a+1,b)がチミンであれば、格子点(a+1,b)を中心とする半径3画素の円を描くことができ、同定しやすくなる。また分散プリズムの形状によっては、格子点を中心とする円ではなく楕円を描かせることもでき、塩基を同定しやすくなる。また分散プリズムではなく、基板を載せているステージを回転させても良い。この場合は格子点を中心とする円ではなく、ステージの回転中心を中心とした円を描くことができる。以上より、これまで上述してきた方法は、組み合わせて行うこともできることが理解される。
【0105】
分散プリズムの形状も必要に応じて変更することができる。図13に例を示す。図13は図1または図4の分散プリズム周辺の構造である。なお分散プリズム17の形状は、紙面垂直方向にも同様な形状(図13aであれば4方向への分散なので、レンズ、CCDの数も増える)であってもよいし、視野中心の点線周りに回転させた形状でもあってもよい(図13aであれば分散角交点へ向けたすり鉢型形状である)。図13aは視野中心に分散プリズム17a,17bの分散プリズム交点(分散角交点)がきている。従って分散プリズムで平行光束は2分割され、CCDセンサでの蛍光強度比は1:1となる。この配置では、分散をすることで、蛍光強度は分散をさせない場合の半分になる。図13bは視野中心と分散プリズム17a,17bの分散プリズム交点(分散角交点)とがずれた配置である。これによりCCD19a,19bでの蛍光強度比を変えることができる。図13cは平行光束中心部が分散しないプリズム配置である。従ってCCDセンサ19cでは、分散をさせない時の格子点の位置を特定できるため、仮に平行光束が分散プリズムに垂直に入射しないなどの理由で相対的な位置ずれが発生した場合でも、その位置を補正することができる。図13dはCCDの数を減らすために分散プリズム形状を変えたものである。但し1CCDで検出する場合は2方向へ分散させた情報を同時に検出してしまう。これを防ぐ必要がある場合には、図13eに示すシャッター33を移動させることで、ある特定方向への分散画像のみを取得できる。但しこの場合は例えば右側分散と左側分散の画像が時間的に異なる画像のため、ブリンキングなどの現象があっても一方向への分散画像の中でしか検出されないことがある。高速にシャッターを切り替えることで補正することもできるが、完全ではない。但し同じ格子点に多くの蛍光体が存在する場合には、CCDの数を減らせるため、有効な方法である。図13fは図13b同様に視野中心と分散プリズム17の分散プリズム交点(分散角交点)とがずれた配置である。図13eのシャッターを組み合わせることで、CCD19での蛍光強度比を変えることができる。
【0106】
配列決定システムの処理量は、主に、装置が1日あたりにもたらすことができる画像の数および1つの画像あたりの配列データのヌクレオチド(塩基)の数によって規定される。装置は、好ましくは、カメラが常時作動中で維持されるように設計され、計算は、100%カメラ利用に基づいて行う。1つの塩基の実体を決定するのに各ビーズが4色で画像化される実施において、1つのカメラで4画像、2つのカメラで2画像、または4つのカメラで1画像のいずれかが使用され得る。複数のCCDセンサでの画像化により、1つのCCDセンサ他の選択肢よりも得られる波長分散情報が多くなり、好ましいシステムでは、該アプローチが用いられる。
【0107】
通常の方法では、1つの塩基の実体を決定するのに4枚の画像を取得し、それらの画像をアライメントして、ビーズ位置を特定することで塩基配列を決定する。従って4枚の画像を取得する時間がかかること、4枚の画像をアライメントする時間がかかること、4枚の画像を保存するメモリ容量が必要となる。そこで更に劇的に高い処理のアプローチとして、図1,図4で示したように4色を1画像で取得する方式を説明した。図13eに示す分散プリズムを図1または図4に示す装置に配置することにより、1CCDで4色を検出する方式(分散−1CCD方式)である。従って1つの塩基の実体を決定するのに1枚の画像を取得すれば良い。従って残り3枚の画像取得が不要となるため、3枚(3色)分のステージ移動時間と、露光時間の短い3枚(3色)分の露光時間を短縮することができる。これは露光時間の最も長い蛍光色素の露光時間で、視野を露光することで、残り3色分の信号を得ることができるためである。また1つの塩基の実体を決定するのに1枚の画像で良いため、画像のアライメントが不要なこと、残り3枚の画像を保存するメモリ容量が不要となることが特長である。分散−1CCD方式での工程を以下に説明するが、これに限定されたものではない。まずフローセル内に固定された蛍光標識ビーズを検出して、フローセル内の全ビーズ位置を特定する。或いは蛍光の替わりに散乱像を取得することで、ビーズ位置を特定する。次に蛍光標識したビーズに対して、分散プリズムを透過した4色の蛍光色素が検出される位置を把握する。分散プリズムを透過させることで、蛍光波長に応じて検出位置が変化するため、特定したビーズ位置に対する変位量を求めることで、4色のうちでどの蛍光色素が検出されたかを特定することができる。ビーズの光る位置が蛍光色素により変化するため、画像のアライメントが困難な場合には、必要に応じて画像アライメント用のマーカ(位置不変の対象物)を設置することができる。マーカは、同じ蛍光色素のみを取り込む鋳型(例えば全てアデニンを取り込む鋳型)を用いることができるほか、基板内に十字マークや、凹凸を施すなどすることができる。分散プリズムを用いることによる検出位置の変位は、分散プリズムの角度や分散プリズムからCCDセンサ検出面までの距離によって規定される。従ってビーズが配置されている平均間隔よりも、蛍光色素4色の分散間隔の方が大きい場合には、どちらのビーズの蛍光を検出しているか判断できない。従ってビーズの平均間隔よりも、4色の分散間隔を小さくする必要がある。一方でビーズの平均間隔を小さくしてビーズ密度を上げることで、1画像あたりに撮影されるビーズ数が増えることから、スループットは向上する。以上の制約を鑑みたうえで、分散−1CCD方式でスループットを上げる方法としては以下が考えられる。
【0108】
1つ目は、ビーズの配置をランダムに配置するのではなく、アレイ上に配置する。分散間隔を隣接するビーズ距離以下に設定することで、スループットを向上できる。ランダムにビーズを配置した場合には、ビーズの間隔が小さい場所では4色の分散間隔よりもビーズ間隔が小さいことからどちらのビーズの蛍光を検出しているか判断できず、またビーズの間隔が大きい場所では4色の分散間隔よりもビーズ間隔が十分に大きいことから、スループットの点で劣ってしまう。従ってより好ましくは、ビーズはアレイ上に配置することが望ましい。4色の分散間隔を識別できる最小値に設定することで、ビーズを最密に配置できるため、スループットは最も高くなる。またアレイ上に配置したビーズにおいて、アレイの配置する角度によっても、許容される分散間隔は広くなる。これは例えば正方形の頂点にビーズを配置した場合、対角線上に分散させる方が、許容される分散間隔がルート2倍になることからも理解される。また分散プリズムを回転させて分散方向を変えることもできる。例えば180°変えて測定することで、その平均値は元のビーズに一致するため、信頼性は高くなる。また分散方向を45°変えることで、1ビーズ/3×2画素のアレイでも4色を判定することができる。更にプリズムを回転させながら検出することで、ビーズを中心とした同心円の軌跡を描くことができ、塩基を同定することができる。プリズムを回転させることが困難な場合は、複数のプリズムを用意して光軸をミラー、シャッターなどで切り替えて同様の機能を行うこともできる。プリズムの分散方向の画像を組み合わせることで、同心円を形成し、蛍光色素を同定する。この方式では、4色の分散間隔が、ビーズ間隔よりも大きい場合であっても蛍光色素を同定することができるため、ビーズ密度を高くでき、スループットは更に高くなる。また4色蛍光色素を分散させる距離を広く取ることもでき、蛍光色素同定の識別能が向上する。この方式では分散の最も大きい蛍光色素の蛍光強度が、分散プリズムの回転により小さくなる。従って分散プリズムを回転、停止させて測定するか、検出できる程度の速度で回転させながら測定する必要がある。或いは常に4色の蛍光色素のいずれかが検出されることがわかっている場合には、分散距離の最も大きい1色を検出しない条件で検出することで、スループットを向上させることができる。この方式では重なり合うピクセルを分散に使えるため、スループットは更に大きくなる。上述の方法で同心円を描くことにより、近接したビーズにそれぞれ取り込まれた蛍光色素を識別することも可能である。またその他にも4色蛍光色素のフィルタを高速で切り替えて1つのCCDセンサで検出する方式(フィルタ切替−1CCD方式)もある。フィルタ切替−1CCD方式では、3色分の蛍光色素を検出するための視野移動の時間をなくすことができるため、スループットが向上する。また常に4色の蛍光色素のいずれかが検出されることがわかっている場合には、露光時間の長い1色を検出しないようにすることで、スループットを向上させることができる。または以上の組合せとして分散−2CCD方式などが考えられる。画像化光学装置は、標準的な無限遠補正顕微鏡対物レンズおよび標準的なビームスプリッタおよびフィルタから構成されたものであり得る。標準的な2,000×2,000ピクセルCCDカメラは、画像を取得するために使用され得る。該システムには、光学装置のための適切な機械的支持体が組み込まれている。照光強度は、好ましくは、後の解析ソフトウエアによる使用のためにモニタされ、記録される。
【0109】
複数の画像(例えば、代表的な実施形態において、およそ1000以上の非重複画像フィールド)を速やかに取得するため、該システムには、好ましくは、高速オートフォーカスシステムを用いる。画像自体の解析に基づくオートフォーカスシステムは、当該技術分野でよく知られている。これは、一般的に、1回のフォーカシング事象に少なくとも5フレームを必要とする。これは、フォーカシング画像を取得するために余分な照光が必要とされるという点で、低速および高価の両方である。本発明のある特定の実施形態において、択一的なオートフォーカスシステム、例えば、該機械的システムが応答し得るのと同等に高速にフォーカシングし得る独立した光学装置に基づくシステムが使用される。かかるシステムは当該技術分野で知られており、例えば、CDプレーヤーに用いられるフォーカシングシステム(サブミクロンフォーカシングを実現)が挙げられる。
【0110】
本発明のある特定の実施形態において、該システムは、遠隔操作される。特定のプロトコルを実行するためのスクリプトは、セントラルデータベース内に保存し、各配列決定実行のためにダウンロードされ得る。試料は、バーコードまたはRFIDタグを付けて、試料追跡の完全性および試料と最終データとの関連付けが維持され得る。リアルタイムのセントラルモニタリングにより、プロセスエラーの迅速な解決が可能になる。ある特定の実施形態において、機器によって収集された画像は、直ちにセントラルマルチテラバイト保存システムおよび1つ以上のプロセッサバンクにアップロードされる。セントラルデータベースからの追跡データを用い、プロセッサ(1つまたは複数)により画像が解析され、配列データが作製され、任意選択で、例えば、機器の性能を調節するために、バックグラウンド蛍光レベルおよびビーズ密度などのメトリクスが処理される。
【0111】
制御ソフトウエアは、ポンプ,ステージ,カメラ,フィルタ,温度制御を適正にシーケンス処理するため、ならびに画像データの注記付けおよび保存のために使用される。ユーザーインターフェースは、例えば、作業者が機器をセットアップし、維持するのを補助するために設けられ、好ましくは、スライドの負荷/取り出しおよび流体ラインの準備(プライミング)のためのステージを位置合わせする機能を含むものである。例えば、作業者に、種々の実行パラメータ、例えば、温度,ステージ位置,光学フィルタ構成の現状、実行プロトコルの状態などを示すためのディスプレイ機能を含め得る。好ましくは、試薬ロットおよび試料IDなどの追跡データを記録するデータベースへのインターフェースを含める。
【0112】
また、本発明は、本発明の配列決定法を適用することにより得られた情報を保存するコンピュータ可読媒体を提供する。情報としては、生データ(すなわち、さらなる処理または解析がされていないデータ)、処理または解析されデータなどが挙げられる。データには、画像,数値も含まれる。情報は、典型的には、検索が容易なように配設された、例えば、コンピュータメモリ内に保存されたデータベース、すなわち、情報(例えば、データ)のコレクションに保存され得る。情報としては、例えば、配列および配列に関する任意の情報(例えば、部分配列),配列と参照配列との比較,配列解析の結果,ゲノム情報、例えば、多型情報など(例えば、ある特定の鋳型が多型を含むか否か)または変異情報など、連鎖情報(すなわち、例えば、染色体内での核酸配列の別の核酸配列に対する物理的な位置に関する情報),疾患関連情報(すなわち、疾患の存在または疾患に対する感受性を、被験体の身体的形質、例えば、被験体の対立遺伝子と相関させる情報)などが挙げられる。情報は、試料ID,被験体IDなどと関連したものであり得る。試料,被験体などに関するさらなる情報は、例えば、限定されないが、試料の供給源,試料において行われた処理工程、情報の解釈、試料または被験体の供給源などに含まれ得る。本発明はまた、前述の任意の情報をコンピュータ可読形式に受信する、例えば、コンピュータ可読媒体に保存することを含む方法を含む。該方法は、該情報に基づく診断的、予後的もしくは予測的情報を提供する工程、または第3者に、好ましくはコンピュータ可読媒体に保存された情報を単に提供する工程をさらに含み得る。1つ以上の鋳型から配列情報を収集するために使用され得る代表的な本発明の自動配列決定システムを記載する。好ましくは、鋳型を、実質的に平面状の基材、例えば、ガラス顕微鏡スライド上に配置させる。例えば、鋳型は、基材上でアレイ状であるビーズに結合されたものであり得る。セルは、各洗浄工程前にすべての試薬が噴出されるように、空気が充分充填されたものであり得る。フローセルは、4種類の蛍光体で標識されたプローブ混合物、切断試薬、任意の他の所望の試薬,酵素並行化バッファ,洗浄バッファおよび単一のポートを介するフローセルへの空気の送達を可能にするバルブ付きシリンジポンプを有する流体取り扱い部と接続されている。システムの操作は完全に自動化されており、多数のI/Oポートを有する専用のコンピュータを用いて、制御ソフトウエアによりプログラミング可能である。Cooke Sensicamカメラには1.3メガピクセル冷却CCDが組み込まれているが、より低いまたはより高い感度を有するを有するカメラもまた使用され得る。CCDセンサは例えば、4メガピクセル、8メガピクセルなども使用され得る)。フローセルには、0.25ミクロンステージが用いられており、形状は1ミクロンである。
【0113】
この実施例では、自身に結合された標識された核酸を有するビーズのアレイからの画像の取得および処理のための代表的な方法を記載する。正確な素性の同定およびアライメントは、各取得画像の信頼できる解析に重要である。サブピクセルレベルでの格子点位置の特定方法としては、例えばUS/20080003571があるが、これに限定されるものではない。一般的にクラスタ方式の塩基配列決定方式では、解読塩基数が増えるほど、伸長反応に位相差を生じるディフェージングが生じる。これは鋳型に蛍光色素がビーズ上の鋳型に取り込まれる確率が100%ではないため、サイクル数を重ねるごとに伸長反応にずれを生じるためである。これを回避する方法として、予めディフェージングをソフト解析により予想しておく方法がある。図14に原理を示す。例としてAGCTの配列を読む場合を示す。伸長効率が90%の場合、66%が4塩基連続で伸長するが、29%は3塩基しか伸長しない。この29%については次に伸びる塩基がTと予想でき、かつ反応皇室からその90%(0.29×0.9)が伸長するため、この効果をソフトで除外して配列解析を行うことにより、読取塩基長を長くすることができる。本発明の配列決定本明細書に記載の方法は、さまざまな異なる配列決定システム、画像捕捉および処理方法などを用いて実施され得ることに注意されたい。
【0114】
<第7の実施形態>
図3E〜図3Lでは、3×3画素に1つの格子点が存在する場合について、その塩基配列を決定できることを示した。また図5A〜図5Fでは、2×2画素に1つの格子点が存在する場合について、その塩基配列を決定できることを示した。本実施形態では1×1画素に1つの格子点が存在する場合について、その塩基配列を決定できることを以下に示す。これが可能であれば、そこから任意の格子点を除いた場合についてもその塩基配列を決定できることは自明であるため、2×2や3×3画素の1つの格子点が存在する場合や、ランダムに格子点が存在する場合についても同様の方法が適用できることになる。また分散距離が4画素より大きくても小さくても同様の方法が適用できることになる。1×1画素に1つの格子点が存在する場合には、2×2画素や3×3画素に1つの格子点が存在する場合に用いた方法だけでは、その塩基配列を特定することは難しい。
【0115】
図15では、基板8の表面の一部の概略図であり、DNAが固定されるべき複数の領域8ij(格子点)が形成されている。CCDカメラへの結像倍率を7.2倍とし、dx=1μmの距離を1分割してCCD画素で検出する。格子点の最も近接する間隔は、X,Y方向共に1μmであり、X方向に4画素(/蛍光体)で分光させると、1画素あたり50nmの分散となる。
【0116】
図15Aの図は、図1の19aまたは19bの2次元センサで撮影した画像をそれぞれ示している。丸が格子点の位置を、四角がCCDの1画素を示しており、CCDの画素の座標をX、Y方向それぞれに0から画素数分記載している。但しCCDは1000×1000や2000×2000画素で、全ての画素は記載できないため、CCDの左下の部分を拡大して示している。1×1画素に1つの格子点を配置しているため、2000×2000のCCDであれば400万の格子点を一度に検出できる。
【0117】
以降では、(a,b)はX=a,Y=bの座標を示す。例えば(0,0)はCCDの一番左下の画素である。また(3,0)(5,2)などの位置に格子点があることがわかる。図1より、波長分散方向はXの正方向と負方向になるが、これに限定されるものではない。例えばYの正方向と負方向に波長分散させることもできるし、Y=Xの方向(傾き45°)の方向にも波長分散させることもできる。図15Aでは、仮にA(アデニン)の格子点からの変位量を0画素、G(グアニン)の格子点からの変位量を1画素、C(シトシン)の格子点からの変位量を2画素、T(チミン)の格子点からの変位量を3画素として説明する。蛍光体の波長により分散の大きさが決まるため、各塩基に修飾した蛍光体で変位量は決定される。従って上述の蛍光体と変位量との関係に限定されるものではない。そのような光学的配置は分散プリズムの角度,プリズムとCCDとの距離,CCD位置の調整によって実現可能である。1つの蛍光体あたりの波長分散画素数を1画素以上にしてもよいが、1画素あたりの蛍光強度は小さくなる。従って1つの蛍光体あたりの波長分散画素数は3画素以下が望ましい。但しこれに限定されるものではない。図15では、特定の分散方向に対して、波長分散が強く検出された画素を灰色で塗りつぶしている(以降この点を灰色画素という表現で代用する)。実際の測定では、近隣の画素の蛍光強度から近似曲線を算出することで、蛍光強度の高い画素を特定することができる。図15Aは、分散方向に対して全ての塩基配列が同じ場合について記述している。格子点(6,2)の右側分散を考えると、(6,2)〜(9,2)の範囲が全て灰色画素になっている。このように1×1画素の格子点配置では、全ての画素が灰色画素である可能性がある。図15Aは格子点(a,5)が全てアデニン、格子点(a,4)が全てグアニン、格子点(a,3)が全てシトシン、格子点(a,2)が全てチミンの場合である。このように格子点3つ分隣の画素を灰色画素にできる。そこで(a,b)が灰色画素と非灰色画素(以降白色画素と表現する)である塩基配列の条件を、右側分散と左側分散のそれぞれについて図15Bに示す。塩基配列の可能性としては、A(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)、−(格子点なしまたは蛍光体取り込みなし)の5種類が考えられる。これより白色画素であるのは丸数字1の場合であり、灰色画素であるのは丸数字2〜丸数字16までの15通りのいずれかの場合である。従って例えば格子点(a,b)が右側分散で白色画素となるのは、44=256通りである。全ての配列組み合わせは54=625通りであるため、灰色画素となるのは625−256=369通りである。これは左側分散についても同様である。また右側分散も左側分散も白色画素になるのは、47=16384通りである。全ての配列組み合わせは57=78125通りであるため、右側分散または左側分散のどちらかで灰色画素となるのは、78125−16384=61741通りである。図15Cは図15Bの配列候補となる塩基を書く格子点について灰色で示したものである。右側分散、左側分散共に丸数字1の行(斜線の灰色セル)のみが白色画素であり、丸数字2〜丸数字16は全て灰色画素の場合の配列組み合わせである。
【0118】
ここで図15dに示す(a−3,b)〜(a+3,b)の右側分散、左側分散の結果が得られている時の塩基配列を考える。(a−3,b)で、右側分散で検出されるのは(a−6,b)〜(a−3,b),(a+3,b)で、左側分散で検出されるのは(a+6,b)〜(a−3,b)であるため、(a−6,b)〜(a+6,b)までの格子点について考える。図15dでは、右側分散、左側分散共に格子点(a,b)のみが白色画素でありそれ以外は右側分散、左側分散共に灰色画素である。まず右側分散について考える。
【0119】
図15Eは右側分散させたときに、取り得る可能性のある配列候補を適当に選択したものである。白色画素は(a,b)のみであるため、(a,b)の右側分散は丸数字1の配列である。従って図の真ん中にある(a,b)の中で丸数字1の列を黒丸で表現した(最終番号丸数字1)。それ以外の座標については全て白色画素である。従って丸数字2〜丸数字16の配列候補のうち、任意のものを選択して、そのような配列を取り得るかを検証する必要がある。図15Eでは灰色画素について、全て丸数字2の配列候補を選択した(最終番号丸数字2)。丸数字2の列を黒丸で表現し、全ての座標に関して、重なる塩基候補について、塩基候補(右側分散)の欄に黒丸で表現した。この時点で、例えば(a−3,b),(a−2,b),(a−1,b)はアデニン、(a,b)は格子点なしまたは蛍光体取り込みなし、(a+1,b),(a+2,b),(a+3,b)はアデニンの塩基候補を得ることができる。なお(a−4,b)については2つの塩基候補、(a−5,b)については3つの塩基候補、(a−6,b)については4つの塩基候補がある。(a+4,b)〜(a+6,b)に関しては、右側分散の場合全ての配列を取りうる。
【0120】
次に右側分散で得られた塩基候補を満たす左側分散の候補があるかを図15Fで検討する。各座標について、右側分散で得られた塩基候補を満たすことができる配列候補の組合せを検討し、可能である場合にはその配列候補の組合せを黒丸で表現した。例えば(a−3,b)は丸数字2、(a−2,b)は丸数字2、(a−1,b)は丸数字2、(a,b)は丸数字1、(a+1,b)は丸数字2または丸数字8、(a+2,b)は丸数字2または丸数字7または丸数字8または丸数字14、(a+3,b)は丸数字2または丸数字6または丸数字7または丸数字8または丸数字12または丸数字13または丸数字14または丸数字16の配列候補であれば、右側分散、左側分散共に図15Dの結果が得られることがわかる。そのような塩基配列を“塩基候補“とした。このような”塩基候補”は他の配列候補の組み合わせでも得られ、図15Gにそれらの例を示した。なおここで示した以外の組み合わせもあるが、ここでは省略する。図15Eと図15Fの配列組み合わせは、図15GのNo.1の欄に示している。これより他にも多くの“塩基候補“が存在することがわかる。従って更に別の方法を用いてこれらの塩基候補の中でどの配列であるかを絞り込む必要がある。
【0121】
ここで現在読んでいる配列を図15Hに示す参照配列である(a−3,b)−AAAGAAA−(a+3,b)であるとする。この場合に右側分散と左側分散でそれぞれ検出される塩基を黒丸で表示した。例えば右側分散では、(a+1,b)の座標でアデニンとグアニン由来の蛍光信号が検出されるため、AとGの欄に黒丸を表示している。ここでAは格子点(a+1,b)由来、Gは格子点(a,b)由来である。そうした際に各画素で検出される蛍光塩基の合計値を“合計“欄に示した。右側分散の時は、(a−3,b)−1,1,1,0,2,1,1−(a+3,b)であり、左側分散の時は、(a−3,b)−1,1,2,0,1,1,1−(a+3,b)である。各蛍光体の蛍光強度を同一にする方法については、第6の実施形態で述べたとおりである。従ってこの蛍光強度の情報により、図15Gの塩基候補の中で参照配列が絞り込めるかを検討する。図15Iはその結果の一例である。図15Gの“塩基候補“の中でNo.1〜3について計算した。その結果参照塩基以外の配列では、蛍光塩基の合計値が参照配列と異なるため、塩基候補から除外できることが分かる。従って3−1の候補配列(a−3,b)−AAAGAAA−(a+3,b)が求める塩基候補であることがわかる。また右側分散と左側分散の強度比(分散率)を設定することで、図15Jに示す塩基配列に対応した画素と蛍光強度の画像が得られ、塩基配列を特定しやすくなる。更に第6の実施形態で述べた方法などを用いることで、塩基同定の信頼性は高くなる。以上より複数方向への分散画像より、塩基配列を同定することができる。また分散距離が4画素の場合、図3A〜図3Dの例では、隣接する格子間距離を分散距離4画素必要であったが、図5A〜図5Fの例では、格子間距離は1画素で同様の解析が実現できる。従って1視野で検出できる格子点数は、図5A〜図5Fの例では図3A〜図3Dと比較して、(4×4)/(1×1)で16倍になり、その分塩基配列を多く同定でき、スループットは向上する。
【0122】
以上のように、第7の実施形態によれば、分散分光イメージング法に基づくシステムにおいて、特定の格子点から発する蛍光像を、複数の波長分散方向に分散させることで、蛍光体の識別と波長分散対象物の位置の同定を精度よく行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
伸長反応を利用したDNAシーケンサ,DNAマイクロアレイリーダーなどに利用できる。
【符号の説明】
【0124】
5,104b ミラー
6,32,104a,103 ダイクロイックミラー
7 プリズム
8,60 基板
8a 反応領域
8ij DNAが固定される領域
9 フローチャンバ
10 廃液チューブ
11 廃液容器
12 試薬導入口
13 蛍光
14 集光レンズ(対物レンズ)
15 フィルタユニット
16 透過光観察用鏡筒
17a,17b 波長分散プリズム
18a,18b 結像レンズ
19a,19b 2次元センサカメラ
20a,20b 2次元センサカメラコントローラ
21 制御PC
22,24 モニタ
23 TVカメラ
25 分注ユニット
26 分注ノズル
27 試薬保管ユニット
27a 試料液容器
27b,27c,27d,27e dNTP誘導体溶液容器
27f 洗浄液容器
28 チップボックス
29 自動ピントあわせ装置
30,31,61,62,63 位置きめマーカ
32 ステージ
33 スリット
34 ダイクロイックミラー
60a 反応領域
60b マスク
60ij DNAが固定される領域
100,101a,101b,101c,101d レーザ装置
102a,102b,102c,102d λ/4波長板
200 測定基板
201 PDMS樹脂
202 窪み
203 ホルダ
204 フローチャンバ
205 基板保持具
206 貫通孔
207 開口部
208 流路
209 XYステージ
210 プリズムホルダ
dx,dy 領域8ijの間隔の寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴヌクレオチド等の生体関連分子が固定される基板に蛍光測定用の光を照射し、生じる蛍光を集光し、集光された光を分光し、2次元センサに光を結像させ、2次元センサにて蛍光検出する方法であって、実質的に透明な基板と、該基板に分子が固定されうる領域は複数設けられ、それらが基板上に配置され、波長分散を行い、該波長分散とは異なる波長分散条件で波長分散を行い、分光された波長ごとの強度と分光対象物の位置を算定することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項2】
請求項1記載の蛍光分析方法において、集光された光を分光するための光学素子を1つ以上用いることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項3】
請求項2記載の蛍光分析方法において、分散プリズム、回折格子のいずれかの光学素子を用いることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項4】
請求項3に記載の蛍光分析方法において、2方向以上に波長分散させる分散プリズムを用いることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項5】
請求項3に記載の蛍光分析方法において、2方向以上に波長分散させる分散プリズムの分散角度が異なることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項6】
請求項3から5に記載の蛍光分析方法において、分光しない部分を含む分散プリズムを用いることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項7】
請求項6に記載の蛍光分析方法において、分光しない部分のデータから、分光対象物の位置を算定することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項8】
請求項3から7に記載の蛍光分析方法において、360°の方向に波長分散させる分散プリズムを用いることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項9】
請求項8記載の蛍光分析方法において、すり鉢形状または円錐形状の分散プリズムを用いることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項10】
請求項1〜9記載の蛍光分析方法において、該波長分散とは異なる位置に波長分散を行う方法として、波長分散方向と波長分散距離を変えることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項11】
請求項1記載の蛍光分析方法において、波長分散条件ごとに蛍光強度を調整することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項12】
請求項11記載の蛍光分析方法において、分散プリズムの頂点位置を蛍光の平行光束中心からずれた位置に配置することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項13】
請求項11記載の蛍光分析方法において、光学フィルタを設置することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項14】
請求項11記載の蛍光分析方法において、スリットを設置することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項15】
請求項1記載の蛍光分析方法において、該基板に分子が固定されうる領域が格子状に配置されている蛍光分析方法。
【請求項16】
請求項15記載の蛍光分析方法において、該格子構造が、2次元の長方格子構造である蛍光分析方法。
【請求項17】
請求項15記載の蛍光分析方法において、該格子構造が、三角格子構造である蛍光分析方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか記載の蛍光分析方法において、該格子構造の格子点位置に金属の微小な構造物を設けたことを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項19】
請求項18記載の蛍光分析方法において、金属の微小な構造物は、金,クロム,銀,アルミなどの金属の微粒子、一部に微細な突起を有する構造体などの、励起光の波長以下の大きさをなす金属構造体であることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか記載の蛍光分析方法において、該格子構造の格子点位置に微小開口を有し、光学的に不透明な材質の薄膜で構成された基板を使用することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか記載の蛍光分析方法において、オリゴヌクレオチド等の生体関連分子を金属構造体表面、または開口部底部に固定することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか記載の蛍光分析方法において、格子点の間隔が、100nmから10000nmであることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか記載の蛍光分析方法において、オリゴヌクレオチド等の生体関連分子が固定される領域の大きさは100nm径以下であることを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか記載の蛍光分析方法において、蛍光を450nmから750nmの範囲で分光することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか記載の蛍光分析方法において、格子点間隔よりも分散距離の方が長いことを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか記載の蛍光分析方法において、2次元センサの3×3画素に1個の割合で格子点を配置して、波長分散により、分光された波長毎の強度と分光対象物の位置を特定することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項27】
請求項1から25のいずれか記載の蛍光分析方法において、2次元センサの2×2画素に1個の割合で格子点を配置して、波長分散により、分光された波長毎の強度と分光対象物の位置を特定することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項28】
請求項1から25のいずれか記載の蛍光分析方法において、2次元センサの1×1画素に1個の割合で格子点を配置して、波長分散により、分光された波長毎の強度と分光対象物の位置を特定することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項29】
請求項1記載の蛍光分析方法において、波長分散を行い、該波長分散とは異なる波長分散条件で波長分散を行う工程を、同時に行うことを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項30】
請求項1記載の蛍光分析方法において、波長分散位置を変えながら、2次元センサを露光し続けて蛍光検出することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項31】
請求項1記載の蛍光分析方法において、蛍光測定用の光の形状をスリットで調整することで、2次元センサで検出される領域のみに該蛍光測定用の光を照射することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項32】
請求項1記載の蛍光分析方法において、伸長反応の位相差をそれまでに取得した情報を用いて補正することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項33】
請求項1記載の蛍光分析方法において、1方向の波長分散における分光された波長ごとの強度を用いて、それとは異なる波長分散条件における波長ごとの強度を規格化することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項34】
請求項1記載の蛍光分析方法において、異なる波長分散における強度を用いて、分光対象物の波長ごとの強度を同定することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項35】
請求項1記載の蛍光分析方法において、異なる波長分散条件の蛍光を1台の2次元センサで検出することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項36】
請求項1記載の蛍光分析方法において、異なる波長分散条件の蛍光を2台以上の2次元で検出することを特徴とする蛍光分析方法。
【請求項37】
請求項35または36記載の蛍光分析方法において、シャッター切替えにより異なる波長分散条件のデータを収集することを特徴とする蛍光分析方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図3J】
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【図3K】
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【図3L】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図15F】
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【図15G】
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【図15H】
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【図15I】
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【図15J】
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【公開番号】特開2010−286421(P2010−286421A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141786(P2009−141786)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】