説明

蛍光強度検出装置

【課題】 コンパクトで安価な蛍光強度検出装置を提供すること。
【解決手段】 蛍光標識により標識された物質を含む検査媒体に励起光を照射し、励起され放射される蛍光を集光してその強度を検出するものであり、検査媒体を含む溶液を流す流路にその検査媒体を保持する保持体20を位置決めする位置決め部27を備えて形成され、光透過材からなる検出チップ1と、蛍光標識から放射される蛍光を集光させる集光レンズ2と、集光レンズ2で集光された蛍光の強度を検出する蛍光検出器4と、蛍光検出器4側から位置決め部27において位置決めされた保持体20の検査媒体に向かって、集光レンズ2により集光される蛍光の経路とは異なる経路で励起光を照射するように配置された励起光光源5と、を有する蛍光強度検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原・抗体反応により対象物質と競合物質を付着したマイクロビーズなどの保持体に励起光を照射し、励起によって保持体から放出された微弱な蛍光強度を検出するコンパクトで安価な蛍光強度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境悪化が叫ばれる中、ダイオキシン類などの環境汚染物質による生体への影響が危惧され、環境中、食品中などからこれからの化学物質の汚染被害を防止し、的確に対処するため簡便な定量方法が望まれている。下記非特許文献1には、そうした環境汚染物質の定量方法の一案が開示されている。この方法では、生物濃縮が非常に顕著であることが指摘されているコプラナーポリ塩化ビフェニルに特異的なモノクロール抗体を用いたマイクロフロー型の検出チップが使用されている。そして、定量には測定対象物質が低分子であることから競合法が採用され、酵素免疫検定法が検出チップ上で行われている。図6は、検出チップを示した斜視図であり、図7は、測定原理を示した図である。
【0003】
先ず、所定数のマイクロビーズが流路101中へ配置可能にした検出チップ100が使用される。その検出チップ100に形成された流路101は、例えば深さ100μm、流路幅1000μmで、90μmのポリスチレンビーズが送り込まれる。そのポリスチレンビーズ200は、表面へ特異的な抗体201を固定化した抗体固定化ビーズである。流路101中には、抗体固定化ビーズ200が配置可能なストッパ102が形成されている。そして、検出チップ100は、シリンジポンプを用いることでポリスチレンビーズ200の送液による配置を行えるように流路設計が行われている。
【0004】
そこで、先ず複数の抗体固定化ビーズ200が流路101中に送り込まれ、図7(a)に示すようにストッパ102に止められて位置決めされる。次に、その流路101中に標的となる対象物質211と酵素標識競合物質212が図7(b)に示すように流し込まれる。同時に流し込まれた対象物質211と酵素標識競合物質212が互いに競い合い、抗原・抗体反応により、図7(c)に示すように固体固定化ビーズ200の抗体201に付着する。その後、洗浄操作によって非特異的な箇所に付着した酵素標識競合物質が洗い流される。そして、図7(d)に示すように蛍光基質220が流路101に流し込まれた後、固体固定化ビーズ200に励起光が照射される。そこで、酵素標識競合物質212の蛍光を落射蛍光顕微鏡で検出し、相対的に対象物質211の定量測定が行われる。
【0005】
ここで図8は、落射蛍光顕微鏡の構成を簡略化して示した図である。落射蛍光顕微鏡120は、光源121から照射された励起光をコリメートするコリメートレンズ122,123と、励起光の必要波長成分を取り出す励起フィルタ124が配置されている。一方、検出チップ100の上方には、複数のレンズ群で構成される対物レンズ125が配置され、更にその上方には、光源121から抗体固定化ビーズ200への照射と、抗体固定化ビーズ200から撮像へと振り分けるダイクロイックミラー126、励起光成分を吸収する吸収フィルタ127、2〜3枚のレンズ群で構成された撮像(接眼)レンズ128及び高感度撮影が可能な冷却CCD129が配置されている。
【非特許文献1】民谷栄一「MEMS技術を用いるマイクロフロー型バイオセンサーの開発」p32−36、「表面技術」、2003年10号、社団法人 表面技術協会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした環境汚染物質などの定量測定を行う従来の検出装置は、蛍光を撮像する目的で落射蛍光顕微鏡が使用されていたため、装置全体が大型化してしまっていた。そのため、従来の蛍光検出装置は測定場所が実験室に限定されてしまい、ダイオキシン類や環境ホルモン物質などの有害環境物質の定量測定を現場で簡便に行うことができなかった。従って、屋外で使用できるようなコンパクトで持ち運びが可能な検出装置が望まれている。
また、従来の蛍光検出装置は、高価な冷却CCD129が搭載されている落射蛍光顕微鏡を使用しているため、装置全体が高価なものになってしまっていた。従って、安価な検出装置が望まれている。
更に、蛍光は、非常に微弱であり、しかも励起光と波長が近いため、吸収フィルタ127が設けられていても励起光を完全にカットできるわけではないので、冷却CCD129での検出感度が低下する。従って、高感度で検出できる検出装置が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、蛍光の発光強度を検出するコンパクトで安価な蛍光強度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蛍光強度検出装置の第1は、蛍光標識により標識された物質を含む検査媒体に励起光を照射し、該励起光により励起された前記蛍光標識から放射される蛍光を集光して、該蛍光の強度を検出する蛍光強度検出装置であり、前記検査媒体を含む溶液を流す流路に、その検査媒体を保持する保持体を位置決めする位置決め部を備えて形成され、前記励起光及び前記蛍光を透過する光透過材からなる検出チップと、前記励起光により励起された前記蛍光標識から放射される蛍光を集光させる集光レンズと、前記集光レンズで集光された蛍光が照射され、該蛍光の強度を検出する蛍光検出器と、前記検出チップの前記蛍光検出器側から前記位置決め部において位置決めされた前記保持体の検査媒体に向かって、前記集光レンズにより集光される前記蛍光の経路とは異なる経路で前記励起光を照射するように配置された励起光光源と、を有することを特徴とする。
【0009】
さらに、上記本発明の蛍光強度検出装置の第1において、前記検出チップは、該検出チップの前記蛍光検出器側の表面に前記集光レンズの一つとしてフレネルレンズが形成されるものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の蛍光強度検出装置の第2は、蛍光標識により標識された物質を含む検査媒体に励起光を照射し、該励起光により励起された前記蛍光標識から放射される蛍光を集光して、該蛍光の強度を検出する蛍光強度検出装置であり、前記検査媒体を含む溶液を流す流路に、その検査媒体を保持する保持体を位置決めする位置決め部を備えて形成され、前記励起光及び前記蛍光を透過する光透過材からなる検出チップと、前記位置決め部において位置決めされた前記保持体の検査媒体に対して前記励起光を照射するように配置された励起光光源と、前記励起光により励起された前記蛍光標識から放射された蛍光の強度を検出する蛍光検出器と、を有し、前記検出チップは、該検出チップの前記蛍光検出器側の表面に、前記蛍光標識から放射された蛍光を集光し前記蛍光検出器に照射するフレネルレンズが形成されるものであることを特徴とする。
【0011】
本発明の蛍光強度検出装置がフレネルレンズを有する場合、前記フレネルレンズは、前記検出チップの前記蛍光検出器側の表面に対して斜めに前記励起光を照射するように配置された前記励起光光源からの該励起光を通過し、前記蛍光標識から放射された蛍光を集光するようにしたものであるとすることができる。
【0012】
本発明の蛍光強度検出装置がフレネルレンズを有する場合、前記検出チップは、前記流路を挟んで前記フレネルレンズとは反対の面に前記蛍光標識からの蛍光を反射する反射板が取り付けられたものであるとすることができる。
【0013】
本発明の蛍光強度検出装置がフレネルレンズを有する場合、前記検出チップは、前記励起光及び前記蛍光を透過する樹脂系素材を射出成形して形成された上部基板と下部基板とが重ねられたものであって、下部基板の上面には前記流路が形成され、反対の下面には前記フレネルレンズが形成されたものであるとすることができる。
【0014】
さらに、本発明の第1及び第2の蛍光強度検出装置において、前記検出器は、フォトダイオード又はフォトマルチプライヤであるとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の蛍光強度検出装置の第1では、検出チップの蛍光検出器側から位置決め部において位置決めされた保持体の検査媒体に向かって、集光レンズにより集光される蛍光の経路とは異なる経路で励起光を照射し、検査媒体を標識する蛍光標識からの蛍光を集光して、その蛍光の全体の強度を検出するようにしたので、従来の落射蛍光顕微鏡と比べて、対物レンズやダイクロイックミラーや接眼レンズ等を使用する必要がなくなり、構成部品を少なくすることができる。そのため、構成を簡素化して、装置全体をコンパクトにすることができる。さらに、特別な構成部品を使用する必要もなく、かつ構成部品を少なくすることができるので、安価に提供することができる。また、集光レンズにより集光される蛍光の経路とは異なる経路で励起光を照射するようにしたので、集光される蛍光の経路と一部が一致する経路で励起光を照射する従来技術と比較して、励起光がノイズとして蛍光検出器に入射し難くなり、蛍光強度の検出を高感度で行うことができる。
【0016】
また、本発明の蛍光強度検出装置の第2では、検出チップの蛍光検出器側の表面にフレネルレンズを形成することにより、検出チップの位置決め部において位置決めされる保持体の検査媒体から近い位置に、フレネルレンズを集光レンズとして配置することができる。そのため、少なくとも一つの集光レンズを配置するスペースが軽減されるので、装置のコンパクト化に寄与する。また、検査媒体に近い位置に集光レンズを配置できるので、蛍光の集光効率を上げて感度を向上させることができる。
【0017】
さらに、フレネルレンズを検出チップの表面に形成する場合、検出チップの蛍光検出器側の表面に対して斜めに照射される励起光を通過するようにしたので、斜めからの励起光が更に角度を小さくして、位置決め部に位置決めされた保持体の検査媒体に照射されるため、励起光がノイズとして蛍光検出器に入射し難くなるので、蛍光強度の検出を高感度で行うことができる。また、フレネルレンズの反対側に、蛍光標識から放射された蛍光を反射する反射板を設けたので、蛍光検出器により効率良く蛍光を集光させて蛍光強度をより高感度に検出することができる。また、検出チップを樹脂成形することにより、装置を安価に提供することができる。
さらに、蛍光を集光してフォトダイオードやフォトマルチプライヤにより受光して蛍光を検出することにより、装置を安価に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明に係る蛍光強度検出装置について、その一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、蛍光強度検出装置の構成を検出チップを分解した状態にして簡略化して示した図である。
検出チップ1は、検査媒体を含む各種の液体を注入・抽出するためのバルブ21,22を備えた上部基板11と、保持体としてのマイクロビーズを配置して反応のための溶液を流す流路23が形成された下部基板12と、上部基板11の上にあって検出する蛍光シグナルを効果的に集光させるための反射板13とが重ねて構成されている。下部基板12は、バルブ21が重なる流入部25とバルブ22が重なる流出部26とが形成され、その間を直線で形成された流路23によってつながっている。上部基板11及び下部基板12は、例えば容易に射出成形できる透明な樹脂系素材で形成されたものである。ただし、樹脂系素材以外でも量産性にも優れるガラス基板で形成するようにしてもよい。
【0019】
ここで図2は、検出チップ1を断面で表した蛍光強度検出装置を示す図である。検出チップ1は、上部基板11、下部基板12および反射板13が図示するように重ねられ、一枚のプレートとして構成されている。そして、下部基板12の上面に形成された流路23には、溶液が流される中でマイクロビーズ20が位置決めされるようにストッパ27が形成されている。本実施形態では、この検出チップ1の特に下部基板12の下面に、図3に示すようなフレネルレンズ28が形成されている。フレネルレンズ28は、集光レンズの一種で、厚さを減らすため、いくつかのある幅をもった輪状レンジによって構成されたものである。ここで、検査媒体は、後述する対象物質や競合物質を含むものである。また、マイクロビーズ20は、該検査媒体と抗原・抗体反応する抗体を保持する抗体固定化ビーズである
【0020】
こうした検出チップ1の下方には、フレネルレンズ28の真下に集光レンズ2、蛍光標識に対応したバンドパスフィルタ3、そして蛍光を受光するの蛍光検出器4が上下に並べて配置されている。ここで、蛍光検出器4は、例えばフォトダイオードやフォトマルチプライヤなどである。
更に、検出チップ1の斜め下方には、蛍光標識の励起光波長に対応したレーザ励起光光源5が配置されている。特に、レーザ励起光光源5は、そこから出力される励起光が抗体固定化ビーズ20に対して斜めから、しかも小さい角度で照射されるように配置されている。そして、フレネルレンズ28は、レーザ励起光光源5から放射された励起光が通過する大きさの径で形成され、凸レンズとして機能するため、抗体固定化ビーズ20に対して励起光が屈折してより鋭角に照射されるようになっている。
【0021】
本実施形態の蛍光強度検出装置は、検出チップ1が前述したように樹脂系素材を射出成形することによって安価に得ることができる。そこで、検出チップ1は、その流路23内に抗体固定化ビーズ20を予め入れたものとし、不図示の装置本体に対して着脱可能に構成することで、使い切りタイプにするようにしてもよい。なお、図2には便宜的にサイズの大きい1個の抗体固定化ビーズ20が記載されているが、実際には100μm程度のサイズの抗体固定化ビーズ20が例えば数万の単位で入れられている。
【0022】
ところで、検出対象となる蛍光は微弱である。そのため、レーザ励起光光源5から放射される励起光がより多く抗体固定化ビーズ20に照射し、より多くの蛍光をフレネルレンズ28で集光する必要がある。そこで本実施形態では、フレネルレンズ28の中心に抗体固定化ビーズ20が位置するようにストッパ27が形成されている。すなわち、抗体固定化ビーズ20は、1個の大きさが前述したように100μm程度であるため、それらがストッパ27の位置に集められた状態では、図2に示すように1個の抗体固定化ビーズが配置されているものと同様に考えることができる。従って、本実施形態の検出チップ1では、ストッパ27で止められた抗体固定化ビーズ20の位置にフレネルレンズ28の中心がほぼ重なるように形成され、励起光が抗体固定化ビーズ20に照射するようになっている。
【0023】
次に、こうした蛍光強度検出装置によって次のようにして定量測定が行われる。
本実施形態の抗原・抗体反応による蛍光標識の検出方法は、従来例で記載したものと同じように標的に対する抗体を付けた抗体固定化ビーズ20に対し、対象物質および蛍光標識された標識競合物質が規定圧で流路23内に注入される。それにより、流路23中に予め配置されている抗体固定化ビーズ20に対象物質と競合物質とが付着する。その後、洗浄などの工程を経て競合反応により標的、すなわち対象物質に比例した競合蛍光物質が抗体固定化ビーズ20上に標識される。なお、特許請求の範囲に記載する検査媒体とは、本実施形態ではこの対象物質と標識競合物質とが相当する。
【0024】
そして、レーザ励起光光源5から放射された励起光がフレネルレンズ28を通り、検出チップ1に形成された流路23上の抗体固定化ビーズ20に照射される。抗体固定化ビーズ20には蛍光標識された競合物質が付着しているため、そこに照射された励起光が励起して蛍光が放出する。そして、この蛍光を蛍光検出器4によって受光してその蛍光強度を検出することにより対象物質の定量測定が行われる。その際、励起光成分が蛍光検出器4に受光され、ノイズになることを防止する必要がある。
【0025】
この点、本実施形態では、レーザ励起光光源5から斜めに放射された励起光は、フレネルレンズ28によって屈折して更に鋭角になり、蛍光検出器4への検出圏外へと進むようになっている。すなわち、図4に示すように、余分な励起光成分は上部基板11を透過して反射板13を反射して大きくそれて、再びフレネルレンズ28に入ることなく下部基板12から検出チップ1の外へ出るようにようになっている。
【0026】
そして、レーザ励起光光源5により励起して抗体固定化ビーズ20から放出した蛍光は、図5に示すように検出チップ1の上下基板11,12内に拡散する。抗体固定化ビーズ20から放出された蛍光は、反射板13に全反射するなどして蛍光検出器4が配置されている下方のフレネルレンズ28に入り、より収束方向へ屈折する。本実施形態では、こうして反射板13を設けることにより、微弱な蛍光をより多くフレネルレンズ28に導き、そこで集光させて蛍光検出器4へと入射させるようにしている。特に本実施形態では、フレネルレンズ28が抗体固定化ビーズ20に極めて近いので、放出された蛍光を効率よく集光する。
【0027】
そして、抗体固定化ビーズ20から放出した蛍光は、フレネルレンズ28から検出チップ1を出射し、第2の集光レンズ2の曲率により更に屈折して集光してバンドパスフィルタ3を透過して抗体固定化ビーズ20などによる励起光の反射成分がカットされる。その後、バンドパスフィルタ3を透過した蛍光波長成分のみが蛍光検出器4に入射する。そして、本実施形態では、こうして蛍光強度が蛍光検出器4で検出され、対象物質の定量測定が行われる。
【0028】
よって、本実施形態の蛍光強度検出装置によれば、蛍光強度を検出するものとして検出チップ1、集光レンズ2、バンドパスフィルタ3、蛍光検出器4及びレーザ励起光光源5と、主要な構成が極めて簡素になり、従来の落射蛍光顕微鏡を用いた撮像検出を行う従来の装置に比べて構成部品が少なく、装置全体をコンパクトにすることができた。また、落射蛍光顕微鏡を構成する冷却CCDなどのように高価な構成部品がないため、蛍光強度検出装置を安価に提供することが可能になった。
また、本実施形態の蛍光強度検出装置では、蛍光を集光する集光レンズの一つを検出チップ1にフレネルレンズ28として形成したので、装置全体をよりコンパクトにすることが可能になった。そして、このように凸レンズとして機能するフレネルレンズ28を検出チップ1に形成したので、固体固定化ビーズ20に極めて近い位置に集光レンズを配置させることになった。そのため、微弱な蛍光の集光効率を上げるこができ、より検出感度を上げることになった。
【0029】
また、本実施形態では、レーザ励起光光源5からの励起光を斜めに放射し、更にフレネルレンズ28で屈折させることにより、反射板13を反射して余分な励起光成分が大きくそれて、再びフレネルレンズ28に入ることがないようにしたので、ノイズを大幅にカットすることができて検出感度を上げることができる。一方で、蛍光を反射板13で全反射させて微弱な蛍光をより多くフレネルレンズ28に導くようにしたので、集光効率が高く、この点でも検出感度を上げることができる。
更に、本実施形態の蛍光強度検出装置は、検出チップ1を樹脂系素材によって射出成形することで安価にすることができ、流路23内に抗体固定化ビーズ20を予め入れた使い切りタイプの検出チップ1にすることで、取り扱いが非常に便利になった。
【0030】
以上、本発明の蛍光強度検出装置について一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
前記実施形態では、対象物質と標識競合物質とを合わせて検査媒体として説明したが、例えば対象物質が蛍光標識されたものである場合には、その対象物質が検査対象物質に相当する。
また、例えば、保持体としては、蛍光のみではなく光を放射するものであればよく、例えば量子ドットのようなものでもよい。
また、検出対象を保持する形態は、ポリスチレンビーズなどでなくても、例えば繊維体など、反応が可能であって検出対象を保持できるものあればよい。ただし、検出する発光物質の集光を阻害しないものが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】蛍光強度検出装置の一実施形態について、その構成を検出チップを分解した状態で簡略化して示した図である。
【図2】蛍光強度検出装置の一実施形態について、その構成を検出チップを断面で表した図である。
【図3】フレネルレンズが形成された検出チップの下面を示した図である。
【図4】励起光の進路を示した図である。
【図5】蛍光の反射状態を示した図である。
【図6】酵素免疫検定法を行う検出チップを示した斜視図である。
【図7】酵素免疫検定法における測定原理を示した図である。
【図8】落射蛍光顕微鏡の構成を簡略化して示した図である。
【符号の説明】
【0032】
1 検出チップ
2 集光レンズ
3 バンドパスフィルタ
4 蛍光検出器
5 レーザ励起光光源
11 上部基板
12 下部基板
13 反射板
20 マイクロビーズ
23 流路
27 ストッパ
28 フレネルレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光標識により標識された物質を含む検査媒体に励起光を照射し、該励起光により励起された前記蛍光標識から放射される蛍光を集光して、該蛍光の強度を検出する蛍光強度検出装置であり、
前記検査媒体を含む溶液を流す流路に、その検査媒体を保持する保持体を位置決めする位置決め部を備えて形成され、前記励起光及び前記蛍光を透過する光透過材からなる検出チップと、
前記励起光により励起された前記蛍光標識から放射される蛍光を集光させる集光レンズと、
前記集光レンズで集光された蛍光が照射され、該蛍光の強度を検出する蛍光検出器と、
前記検出チップの前記蛍光検出器側から前記位置決め部において位置決めされた前記保持体の検査媒体に向かって、前記集光レンズにより集光される前記蛍光の経路とは異なる経路で前記励起光を照射するように配置された励起光光源と、
を有することを特徴とする蛍光強度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載する蛍光強度検出装置において、
前記検出チップは、該検出チップの前記蛍光検出器側の表面に前記集光レンズの一つとしてフレネルレンズが形成されるものであることを特徴とする蛍光強度検出装置。
【請求項3】
蛍光標識により標識された物質を含む検査媒体に励起光を照射し、該励起光により励起された前記蛍光標識から放射される蛍光を集光して、該蛍光の強度を検出する蛍光強度検出装置であり、
前記検査媒体を含む溶液を流す流路に、その検査媒体を保持する保持体を位置決めする位置決め部を備えて形成され、前記励起光及び前記蛍光を透過する光透過材からなる検出チップと、
前記位置決め部において位置決めされた前記保持体の検査媒体に対して前記励起光を照射するように配置された励起光光源と、
前記励起光により励起された前記蛍光標識から放射された蛍光の強度を検出する蛍光検出器と、を有し、
前記検出チップは、該検出チップの前記蛍光検出器側の表面に、前記蛍光標識から放射された蛍光を集光し前記蛍光検出器に照射するフレネルレンズが形成されるものであることを特徴とする蛍光強度検出装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載する蛍光強度検出装置において、
前記フレネルレンズは、前記検出チップの前記蛍光検出器側の表面に対して斜めに前記励起光を照射するように配置された前記励起光光源からの該励起光を通過し、前記蛍光標識から放射された蛍光を集光するようにしたものであることを特徴とする蛍光強度検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載する蛍光強度検出装置において、
前記検出チップは、前記流路を挟んで前記フレネルレンズとは反対の面に前記蛍光標識からの蛍光を反射する反射板が取り付けられたものであることを特徴とする蛍光強度検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載する蛍光強度検出装置において、
前記検出チップは、前記励起光及び前記蛍光を透過する樹脂系素材を射出成形して形成された上部基板と下部基板とが重ねられたものであって、下部基板の上面には前記流路が形成され、反対の下面には前記フレネルレンズが形成されたものであることを特徴とする蛍光強度検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載する蛍光強度検出装置において、
前記検出器は、フォトダイオード又はフォトマルチプライヤであることを特徴とする蛍光強度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−10515(P2006−10515A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188329(P2004−188329)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】