説明

蛍光性重合体微粒子及びその製造方法、蛍光検出用複合体、蛍光検出方法並びに蛍光検出キット

【課題】高い蛍光強度及び良好な経時安定性を有する蛍光性重合体微粒子を提供する。
【解決手段】疎水性コアと親水性シェルからなるコアシェル構造を有する重合体微粒子と、該重合体微粒子に内蔵されると共にランタノイド陽イオンを含有する蛍光性ランタノイド色素と、を含む蛍光性重合体微粒子において、前記親水性シェルを形成する親水性ポリマーを、主鎖中に下記一般式(I)で表される親水性ユニットを含み、側鎖に疎水性コアを形成する重合性ポリマーが結合した親水性ポリマーとする。
【化1】



[一般式(I)中、R1及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はシアノ基を表し、L及びLはそれぞれ独立に2価の連結基を表す。nはエチレングリコール鎖の平均繰り返し数を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光性重合体微粒子及びその製造方法、蛍光検出用複合体、蛍光検出方法並びに蛍光検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
微量な物質を視覚化又は定量するために、種々の標識物が開発されてきた。特に高感度を必要とする分野では、ラジオアイソトープが代表的な標識物であり、トリチウムや放射性ヨウ素等が代表例として用いられている。しかし、放射性物質の使用には、使用後の廃棄や取り扱いに多くの課題があるため、放射性物質に代わる手法が開発された。このような手法としては、例えば酵素標識法(ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、又はβ−D−ガラクトシダーゼ等が利用)や、蛍光物質標識法(フルオレッセイン又はローダミン等が利用)が挙げられる。
しかしこれらの方法では、標識としての絶対的感度が不足するという欠点がある。
【0003】
測定の精度及び感度を上昇させるために、蛍光物質標識法の一つの発展型として時間分解蛍光測定が開発された(例えば、特許文献1)。この方法は、ユーロピウムキレートに代表される蛍光消光時間の長い蛍光物質にパルスの励起光を照射し、直接の励起光や周辺物質に起因する短い蛍光が消光する一定時間の後に蛍光を測定して、ユーロピウム特異的蛍光を測定する方法である。
更に、感度を上げるために、このユーロピウムキレートや色素をポリスチレン粒子に閉じこめ、ポリスチレン粒子の表面に抗原又は抗体をコートして試薬とし、抗原抗体反応によって固定化されたポリスチレン粒子を視覚的に検出しようとする試みもなされている(例えば、特許文献2)。
【0004】
しかし、色素や蛍光物質をポリスチレン粒子に閉じこめて標識物質とする公知の方法では、簡便な操作で或る程度の感度が得られるものであるが、感度的に満足できるものでなく、更なる高感度化が求められていた。
更に、表面が疎水性ポリスチレンであるという特質から、(1)コートしたい抗原又は抗体等の機能性分子を結合した後、非結合表面にタンパク質や種々の生体物質の類似物質をコートしてポリスチレンの疎水性を覆い隠す方法、あるいは、(2)反応時に液体中に界面活性剤を加えてポリスチレン粒子が相互に影響し合うのを防ぐ方法等といった種々の工夫をして用いてきた。しかし、それでも非特異的な反応による判定の誤りが生まれることがあった。
【0005】
一方、ポリスチレン粒子に起因する非特異的反応を改良するために、水不溶性高分子化合物からなるコアの表面を、反応性基を有する水溶性シェル部分でブラシ状に覆ったコアシェル型微粒子を作成し、コア部分に蛍光色素を封入する技術及び、これによって得られた高い蛍光強度を安定して有する蛍光分析用組成物などが開発された(例えば、特許文献3及び4)。
【特許文献1】特開昭61−128168号公報。
【特許文献2】特開2000−345052号公報。
【特許文献3】国際公開第2002/097436号パンフレット
【特許文献4】特開2005−49207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このコアシェル型微粒子を利用した方法では、非特異的な反応によるノイズが抑制できるものの、蛍光強度的には満足できるものでない。また、経時安定性が低く、使用期間中に蛍光強度が減少することがある。
また、特許文献3に記載のコアシェル型微粒子では、親水性ユニットの末端に疎水性コアが結合しているため、分散状態での経時安定性が十分であるとは言い難かった。また、検出には紫外光での励起が必要であるため、分析対象物中に紫外光を吸収する物質(例えば、タンパク質等)が存在する場合に検出時のノイズ発生が問題となることがあった。
本発明の目的は、高い蛍光強度及び良好な経時安定性を有する蛍光性重合体微粒子と、このような蛍光性重合体微粒子を用いて検出対象物質を高感度に検出することができると共に良好な保存安定性を有する蛍光検出用複合体、蛍光検出キット及び蛍光検出方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の目的を達成すべく、特に重合体微粒子合成時に用いる親水性ポリマーに関して、鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、以下の通りである。
<1>疎水性コアと親水性シェルからなるコアシェル構造を有する重合体微粒子と、該重合体微粒子に内蔵されると共にランタノイド陽イオンを含有する蛍光性ランタノイド色素と、を含む蛍光性重合体微粒子であって、前記親水性シェルを形成する親水性ポリマーが、主鎖中に下記一般式(I)で表される親水性ユニットを含み、側鎖に、疎水性コアを形成する重合性ポリマーが結合していることを特徴とする蛍光性重合体微粒子。
【0008】
【化1】

【0009】
[一般式(I)中、R1及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はシアノ基を表し、L及びLはそれぞれ独立に2価の連結基を表す。nはエチレングリコール鎖の平均繰り返し数を表す。]
【0010】
<2> 前記親水性ポリマーは、前記一般式(I)で表される親水性ユニットを含む主鎖と、エチレン性不飽和結合を有するエチレン性不飽和結合基ユニットを含む側鎖と、を有する前駆体親水性ポリマーから誘導されたものであることを特徴とする前記<1>に記載の蛍光性重合体微粒子。
<3> 前記前駆体親水性ポリマーが、下記一般式(I)で表される親水性ユニットと、下記一般式(II)で表されるエチレン性不飽和結合基ユニットとを含むことを特徴とする前記<2>に記載の蛍光性重合体微粒子。
【0011】
【化2】

【0012】
[一般式(I)及び(II)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はシアノ基を表し、L及びLはそれぞれ独立に2価の連結基を表す。nはエチレングリコール鎖の平均繰り返し数を表す。Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは、酸素原子または、−NR21−を表す。R21は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。Lは2価の連結基を表し、Zはアリル基、アリルオキシエチル基、および一般式(III)または一般式(IV)で表される原子団を表す。
【0013】
【化3】

【0014】
一般式(III)及び(IV)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。mは1〜12を表す。]
【0015】
<4> 前記親水性ポリマーが、反応性官能基ユニットを更に含むことを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1項記載の蛍光性重合体微粒子。
<5> 前記反応性官能基ユニットが、下記一般式(V)で表されるアミノ基ユニットであることを特徴とする前記<4>に記載の蛍光性重合体微粒子。
【0016】
【化4】

【0017】
[上記一般式(V)において、R8は水素原子又はメチル基を表す。]
【0018】
<6> 前記蛍光性ランタノイド色素が、下記一般式(L−I)で表される含窒複素環配位子を少なくとも1個有することを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれか1項記載の蛍光性重合体微粒子。
【0019】
【化5】

【0020】
[一般式(L−I)において、A、A、Aは、下記一般式(L−II)〜(L−V)で表される原子団、または水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基を表し、互いに同一であってもよい。B、Bは、それぞれ独立に、窒素原子または=C(−R)−を表し、Rは水素原子または置換基を表す。
【0021】
【化6】

【0022】
各式中R11〜R19は、それぞれ水素原子または置換基を表す。R17とR18、R18とR19およびR17とR19は可能な場合には互いに結合して環を形成してもよい。lは0、1又は2を表す。Gは置換基を有してもよい炭素原子又は窒素原子を表す。Qは5員環又は6員環の含窒素複素環を形成するのに必要な原子団を表し、さらに含窒素複素環は縮合環を形成してもよい。Arは芳香族炭素環、芳香族複素環を表す。一般式(L−II)〜(L−V)において、#は一般式(L−I)で表される含窒素複素環と結合する位置を表す。]
【0023】
<7> 疎水性コアと親水性シェルからなるコアシェル構造を有する重合体微粒子と、該重合体微粒子に内蔵されると共にランタノイド陽イオンを含有する蛍光性ランタノイド色素と、を含む蛍光性重合体微粒子の製造方法であって、
下記一般式(I)で表される親水性ユニットを含む主鎖と重合性ユニットを含む側鎖とを有する前駆体親水性ポリマーと、ラジカル発生剤との存在下、水系溶媒中でラジカル重合性モノマーを分散重合して、親水性シェルを形成する親水性ポリマーに疎水性コアを形成する重合性ポリマーが結合したコアシェル型の重合体微粒子を形成すること
得られたコアシェル型の重合体微粒子に、前記ランタノイド色素を導入すること
を含む蛍光性重合体微粒子の製造方法。
【0024】
【化7】

【0025】
[一般式(I)中、R1及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はシアノ基を表し、L及びLはそれぞれ独立に2価の連結基を表す。nはエチレングリコール鎖の平均繰り返し数を表す。]
【0026】
<8> 前記重合性ユニットが、エチレン性不飽和結合を側鎖として有するエチレン性不飽和結合基ユニットであることを特徴とする前記<7>に記載の蛍光性重合体微粒子の製造方法。
【0027】
<9> 前記前駆体親水性ポリマーが反応性官能基前駆体ユニットを更に含み、該反応性官能基前駆体ユニットの活性化によって反応性官能基を生成することを更に含む前記<7>又は<8>に記載の蛍光性重合体微粒子の製造方法。
【0028】
<10> 前記<1>〜<6>のいずれか1項記載の蛍光性重合体微粒子と、該蛍光性重合体微粒子及び検出対象物質を連結可能な連結物質と、で構成された蛍光検出用複合体。
【0029】
<11> 前記<1>〜<6>のいずれか1項記載の蛍光性重合体微粒子と、該蛍光性重合体微粒子及び検出対象物質を連結可能な連結物質とを用いて、該検出対象物質を検出することを特徴とする蛍光検出方法。
<12> 前記<1>〜<6>のいずれか1項記載の蛍光性重合体微粒子を含む蛍光検出キット。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、高い蛍光強度及び良好な経時安定性を有する蛍光性重合体微粒子と、このような蛍光性重合体微粒子を用いて検出対象物質を高感度に検出することができると共に良好な保存安定性を有する蛍光検出用複合体、蛍光検出キット及び蛍光検出方法とを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の蛍光性重合体微粒子は、疎水性コアと親水性シェルからなるコアシェル構造を有する重合体微粒子と、該重合体微粒子に内蔵されると共にランタノイド陽イオンを含有する蛍光性ランタノイド色素と、を含む蛍光性重合体微粒子であって、前記親水性シェルを形成する親水性ポリマーが主鎖中に前記一般式(I)で表される親水性ユニットを有し、側鎖に、疎水性コアを形成する重合性ポリマーが結合していることを特徴としている。
このような蛍光性重合体微粒子では、親水性シェルを形成する親水性ポリマーが、疎水性コアとグラフト的に結合しているため、親水性ポリマーが分岐した形で疎水性コアに結合する形(以下に一例を示す)となり、立体障害の効果から蛍光性重合体微粒子の分散安定性をより良好にすることができる。
【0032】
【化8】

【0033】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
<親水性ポリマー>
本発明にかかる重合体微粒子の親水性シェルを形成する親水性ポリマーは、主鎖中に下記一般式(I)で表される親水性ユニットを有している。これにより、重合体微粒子の分散安定性を向上させることができる。
【0034】
【化9】

【0035】
上記一般式(I)において、R1及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表す。前記アルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基)が好ましい。R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はシアノ基を表す。前記アルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基)が好ましい。L及びLはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、例えば、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキレンオキシ基、エステル結合及びカルボニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む2価の連結基を表し、炭素数1〜6のアルキレン基、エステル結合及びカルボニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む2価の連結基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基とエステル結合又はカルボニル基からなる2価の連結基であることが好ましい。
nは、エチレングリコール鎖の平均繰り返し数を表し、好ましくは5〜1000000であり、より好ましくは10〜100000、更に好ましくは20〜10000である。
【0036】
本発明においては、R及びRがそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であって、R及びRがそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基又はシアノ基であって、L及びLが炭素数1〜6のアルキレン基とエステル結合又はカルボニル基からなる2価の連結基であって、nが10〜1000000であることが好ましい。
一般式(I)で表される親水性ユニットとしては、粒子形成性と親水性の観点から、下記一般式(VI)の構造であることがより好ましい。
【0037】
【化10】

【0038】
一般式(VI)において、nはエチレングリコール鎖の平均繰り返し数を表し、mmは1〜10の整数を表す。nは好ましくは5〜1000000であり、より好ましくは10〜100000、更に好ましくは20〜10000である。また、mmは1〜6の整数であることが好ましく、2〜4の整数であることがより好ましい。
【0039】
本発明にかかる重合体微粒子は、疎水性コアを形成する重合性ポリマーが親水性ポリマーの側鎖に結合している。重合体微粒子を形成する親水性ポリマーは、前記一般式(I)で表される親水性ユニットと重合性基を有する重合性ユニットとを含む前駆体親水性ポリマーを用いて得ることができるが、本発明における好ましい前駆体親水性ポリマーでは、前駆体親水性ポリマー中の重合性ユニットが側鎖に重合性基を有している。
このような前駆体親水性ポリマーは、水系溶媒中に溶解し、後述のラジカル重合性モノマーとラジカル発生剤との反応によって生成したラジカル種と反応する。その結果、ラジカル重合性モノマーの重合体を疎水性コアとし、親水性ポリマーを親水性シェルとする微粒子を形成する。ここで親水性ポリマーは、側鎖に重合性基を有しているので、粒子表面に結合したときに、立体反発による粒子の良好な分散安定化の作用を示すことができる。
【0040】
上記前駆体親水性ポリマー中の重合性基ユニットとしては、下記一般式(II)で表されるエチレン性不飽和基ユニットであることが、粒子形成性の観点から好ましい。
【0041】
【化11】

【0042】
一般式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは、2価の連結基を表し、例えば、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキレンオキシ基、−COO−、−OCO−およびこれらの組み合わせによって形成される2価の原子団を表す。Lは、酸素原子または−NR31−を表す。R31は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)を表し、分岐または環状構造をとってもよい。
Zは、アリル基、アリルオキシエチル基、又は一般式(III)若しくは一般式(IV)で表される原子団を表す。下記一般式(III)及び(IV)において、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。また一般式(III)において、mは1〜12を表し、粒子形成性の観点から、好ましくは1〜6である。
【0043】
【化12】

【0044】
本発明にかかる親水性ポリマーは、後述する連結物質[例えば、生理活性物質(例えば、抗体、酵素、又は核酸)]と連結可能な反応性官能基を有することが好ましい。
反応性官能基は、上記親水性ポリマー中のユニットとして前駆体親水性ポリマー形成時に導入してもよく及び/又は、後述するコア部分表面に結合させた後から親水性ポリマーに導入することができる。前駆体親水性ポリマー形成時に反応性官能基ユニットとして導入することが、反応性官能基反応性の導入率を調整することがより容易にできるため好ましい。
【0045】
これらの反応性官能基は、いずれも水(又は水系溶媒)中で安定であり、しかも、本発明の蛍光性重合体微粒子を標識物質として使用する際の連結物質[例えば、生理活性物質(例えば、抗体、酵素、又は核酸)]と反応可能な官能基である限り、特に限定されるものではない。重合体微粒子表面に設ける官能基として好適なのは、アルデヒド基、カルボキシ基、メルカプト基、酸塩化物基等の酸ハロゲン化物基、酸無水物基、エステル基、アミド基、マレイミド基、ビニルスルホニル基、メタンスルホニルオキシ基、チオール基、水酸基、およびアミノ基等で、中でもアルデヒド基、カルボキシ基、酸塩化物基、酸無水物基、マレイミド基、チオール基、アミノ基等が更に好適で、アルデヒド基、マレイミド基、チオール基及びアミノ基が最も好適である。なお、エステル基は加水分解により容易にカルボキシ基に変換できるので、エステル基を表面に有する重合体微粒子は有用な中間体である。
これらの連結物質を結合するための官能基量を、本発明の蛍光性重合体微粒子の単位質量当たりの官能基当量として表現すると、通常、0.001〜0.5ミリ当量/グラム、好ましくは0.005〜0.2ミリ当量/グラム、より好ましくは0.01〜0.1ミリ当量/グラム、更に好ましくは0.02〜0.07ミリ当量/グラム、最も好ましくは0.03〜0.05ミリ当量/グラムとすることができる。
【0046】
アミノ基を導入するための反応性官能基ユニットとしては、下記一般式(V)で表されるアミノ基ユニットであることが、粒子形成性および連結物質としての生理活性物質との結合親和性の観点から好ましく、このアミノ基ユニットは、前駆体親水性ポリマー中の下記一般式(V−1)で表されるアミノ基前駆体ユニットから誘導されたものであることが好ましい。
【0047】
【化13】

【0048】
上記一般式において、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rはアシル基を表し、ホルミル基またはアセチル基であることが好ましい。
上記一般式(V)で表されるアミノ基前駆体ユニットを前駆体親水性ポリマーに導入することにより、本発明の蛍光性重合体微粒子の表面に例えば抗原又は抗体を結合するために反応性基として好ましいアミノ基を、主鎖中に多数導入することができる。
【0049】
本発明における前駆体親水性ポリマーを得るためには、例えば下記一般式(VII)で表される化合物と、下記一般式(VIII)で表される公知のラジカル重合性モノマーを、ラジカル重合することによって、カルボン酸を有するポリマーを得ることができる。
また反応性官能基ユニットを親水性ポリマーに導入する場合には、例えば下記一般式(IX)で表される公知のラジカル重合性モノマーを前述と同様に使用して、反応性官能基ユニットを有する親水性ポリマーを得ることができる。
【0050】
【化14】

【0051】
上記一般式(VII)、(VIII)及び(IX)において、L〜L、R〜R、R、R、nは、前記一般式(I)、(II)及び(V)のL1〜L、R〜R、R、R、nと同じ意味を表す。また、qは2〜1000の整数を表す。
下記一般式(VII)で、表される化合物は、ポリエチレンオキシユニットがアゾ基を介して複数結合した構造を有している高分子重合開始剤である。一般式(VII)で表される高分子重合開始剤の分子量としては、1000〜1000000が好ましく、5000〜100000がより好ましく、10000〜50000が更に好ましい。ポリエチレンオキシユニットの分子量としては、数平均分子量で、500〜50000が好ましく、1000〜10000がより好ましい。このような高分子重合開始剤の具体例としては、和光純薬工業(株)製の、VPE−0201、VPE−0401、VPE−0601をあげることができる。
【0052】
一般式(VII)で表される化合物の量は、目的とする前駆体親水性ポリマーのサイズ及び種類によって異なるが、ポリマーの親水性、粒子分散性の観点から、反応する全モノマー中5〜90質量%の範囲が好ましく、10〜80質量%が更に好ましく、20〜80質量%が特に好ましい。
一般式(VIII)で表されるモノマーの量は、目的とする前駆体親水性ポリマーのサイズ及び種類によって異なるが、粒子形成に必要なエチレン性不飽和結合導入量の観点から、反応する全モノマー中0.1〜30質量%の範囲が好ましく、0.5〜20質量%が更に好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。
一般式(IX)で表されるモノマーの量は、目的とする前駆体親水性ポリマーのサイズ及び種類によって異なるが、生理活性物質との結合量の観点から、反応する全モノマー中1〜99質量%の範囲が好ましく、5〜80%が更に好ましく、10〜50モル%が特に好ましい。
【0053】
前駆体親水性ポリマーを形成する重合反応において、溶媒としては、親水性ポリマー形成用の、高分子重合開始剤およびラジカル重合性モノマーを溶解する溶媒、例えば、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジメチルアセトアミド、水、ジメチルスルホキシドおよびこれらの混合物を使用できる。モノマー濃度は、分子量制御および反応安定性の観点からモノマーと溶媒の合計質量に対して10〜50質量%の範囲が好ましく、15〜40質量%の範囲がより好ましい。反応温度は、使用する開始剤の分解温度に応じて適宜設定できるが、40℃〜100℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。
【0054】
次に、上記で得られたカルボン酸含有ポリマーを、エチレン性不飽和基を含有する化合物と反応させることにより、エチレン性不飽和結合を含有する前駆体親水性ポリマーを合成することができる。
例えば、エチレン性不飽和結合を有する化合物として、アリルアルコール、アリルオキシエチルアルコール、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のアルコールを用い、カルボン酸とのエステル化反応により、ポリマー側鎖にエチレン性不飽和結合を導入することができる。この場合、触媒として、硫酸、塩酸、トルエンスルホン酸等の酸を使用できる他、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等のカルボジイミド化合物を縮合剤に用いることもできる。更に、エチレン性不飽和結合を有する化合物として、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ化合物を用い、エポキシドの開環反応により、ポリマー側鎖にエチレン性不飽和結合を導入することも可能である。この場合、触媒としてテトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム化合物、テトラブチルホスホニウムブロミド等の4級ホスホニウム化合物または、N,N−ジメチル−n−ドデシルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、4−ジメチルアミノピリジン等のアミン化合物を用いることができる。
【0055】
本発明にかかる前駆体親水性ポリマーの数平均分子量は、特に制限されないが、親水性および粒子形成性の観点から500〜20,0000が好ましく、1,000〜100,000が更に好ましい。
【0056】
前駆体親水性ポリマーを合成するためには、親水性、溶剤溶解性等を調節する目的で、上記(VII)〜(IX)で表される化合物およびモノマーに加えて、公知のラジカル重合性モノマーを上記モノマーに共重合することもできる。
公知のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−アセトキシスチレン等のスチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニル、ビニルイミダゾール等のビニルモノマーを挙げることができる。これらのラジカル重合性モノマーの共重合量としては、全親水性ポリマーに対して0〜30質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましい。
【0057】
以下に本発明にかかる前駆体親水性ポリマーの具体例(P−I〜P−14)を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、式中、nはエチレングリコール鎖の平均繰り返し数を表し、x、y、z、wはそれぞれの繰り返し単位のモル比を表す。
【0058】
【化15】

【0059】
【化16】

【0060】
<ラジカル重合性モノマー>
本発明における微粒子の疎水性コアを形成するための、疎水性ラジカル重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和結合基に結合可能な公知のラジカル重合性モノマーの疎水性モノマーを使用することができるが、水または水混和性溶媒中に溶解するものも使用することができる。
公知のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−アセトキシスチレン等のスチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等のビニルモノマーを挙げることができる。これらのモノマーは、単独で重合することも可能であり、2種以上のモノマーを共重合してもよい。
【0061】
また、粒子の強度向上の観点から、粒子ポリマーに架橋構造を導入することが可能である。このためには、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の2価のラジカル重合性モノマーを使用することが好ましい。2価のラジカル重合性モノマーは、粒子を形成する全ラジカル重合性モノマーに対し、0.01〜10質量%の範囲で使用することができ、0.1〜20質量%が更に好ましい。
【0062】
<重合体微粒子>
重合体微粒子の粒径には特に制限はないが、通常、体積平均粒径として0.01〜20μmの範囲とする。特に蛍光検出用複合体として用いる場合には、体積平均粒径が0.01〜2μmであることが好ましい。この値が大きすぎると沈降性等の理由で好ましくなく、逆に小さすぎると発光特性の点で好ましくない。こうした理由で、本発明の重合体微粒子の体積平均粒径はより好ましくは0.05〜1μm、更に好ましくは0.05〜0.5μm、最も好ましくは0.05〜0.3μmである。
【0063】
前記コア部分の形状は特に限定されるものではないが、一般的には大略球状あるいは大略楕球状である。また、前記コア部分の寸法も特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜変化させることができるが、大略球状のコア部分の直径は、一般的には5nm〜200nm程度である。
【0064】
前記コア部分の直径と前記シェル部分の厚さとの比率は、用途に応じて適宜変化させることができる。例えば、コア部分の直径を、例えば、5nm〜200nmとすることができ、また、シェル部分の厚さを、例えば、5nm〜500nmとすることができる。
【0065】
このようなコア部分とシェル部分との比率は、用いられる親水性ポリマーとラジカル重合性モノマーとの量比及び種類によって適宜調整することができる。
【0066】
<重合体微粒子の製造方法>
本発明にかかる重合体微粒子は、水系溶媒中で、前記のラジカル重合性モノマーを、前記前駆体親水性ポリマーとラジカル発生剤との存在下で分散重合させることにより、形成することができる。
【0067】
重合においては、ラジカル重合性モノマーと前駆体親水性ポリマーとを全量、水系溶媒中、即ち水または含水有機溶媒中に混合溶解し、ラジカル発生剤(重合開始剤)を添加する方法が可能であるが、反応温度、及び粒子径を制御するために、前駆体親水性ポリマーをあらかじめ溶解した水または含水有機溶媒中に、重合性モノマー及びラジカル発生剤を徐々に添加する方法も好ましい。
前駆体親水性ポリマーは、粒子形成性の観点からラジカル重合性モノマーの全質量に対し、1〜200質量%の範囲で使用することができ、10〜100質量%が更に好ましい。
【0068】
好適な水系溶媒としては、例えば、水と、メタノール、エタノール、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン等の水溶性有機溶媒との混合物が挙げられる。
ラジカル発生剤として一般的なものは、水溶性のラジカル発生剤、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸リチウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等、ラジカル重合性モノマーまたは含水有機溶媒に溶解性のもの、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル等の過酸化物等であるが、異種のラジカル発生剤を併用しても構わない。ラジカル発生剤は、ラジカル重合性モノマーの全重量に対し0.01〜5質量%の範囲で使用することが好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
反応温度は、使用する開始剤の分解温度に応じ適宜設定できるが、40℃〜100℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。
【0069】
なお、本発明の蛍光重合体微粒子において、本発明の趣旨を著しく損なわない限りにおいて任意の添加剤、例えばトリオクチルフォスフィンオキシドやトリブチルフォスフィンオキシド等の有機リン化合物のように、ランタノイド陽イオンに配位することで水和等による蛍光強度の低下を抑制することのできる添加剤を使用することも可能であり、かかる添加剤は重合時のモノマー溶液にあらかじめ添加しておくことも可能である。
【0070】
<蛍光性ランタノイド色素>
本発明に用いられる蛍光性ランタノイド色素とは、ランタノイド陽イオンと有機配位子を少なくとも1個有する蛍光色素である。この蛍光色素は、可視光で励起することができ、また配位子の増感作用(配位子を励起する光のエネルギーによりランタノイド陽イオンが発光する現象)を示す。
配位子として、高蛍光強度及び長い蛍光寿命を有する一般式(L−I)で表される含窒素複素環含有配位子を用いることが好ましい。
【0071】
【化17】

【0072】
一般式(L−I)において、A、A、Aは、下記一般式(L−II)〜(L−V)で表される原子団、または水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基を表し、互いに同一であってもよい。アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基である場合には、それぞれ重合体微粒子への取り込まれやすさ、溶剤溶解性の観点から炭素数1〜12であることが好ましい。
、A、Aは、蛍光強度、励起波長の調節、ランタノイドイオンとの親和性調節、重合体微粒子への取り込まれやすさ、溶剤溶解性の観点から下記一般式(L−II)〜(L−V)で表される原子団であることが好ましい。
【0073】
【化18】

【0074】
式中R11およびR12は、それぞれ水素原子または置換基を表すが、置換基の例としてアルキル基、アリール基、アミノ基、複素環基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、ウレイド基およびハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)などが挙げられる。ここで挙げた置換基の例において、水素原子以外の原子数は1〜50が好ましく、より好ましくは1〜30であり、1〜20が最も好ましい。また、置換基がアルキル基を含む場合には環状であっても、鎖状であってもよく、鎖状の場合には直鎖でも分枝しているものであってもよく、飽和であっても不飽和結合を含むものであってもよい。アルキル基やアリール基が置換基を有している場合、好ましい置換基の例としてはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、アシル基、アルキル又はアリールスルホニル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基またはカルボキシ基などが挙げられる。
【0075】
13〜R16はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R13〜R16が置換基を表す場合、好ましい例としては置換されてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シリル基、アルコキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、アシル基、アルキル又はアリールスルホニル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、スルホ基またはカルボキシル基であり、より好ましくは置換されてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基またはハロゲン原子またはシアノ基である。
13〜R16に関して、水素を除いた原子数は1〜60が好ましく、1〜45がより好ましく、1〜35が最も好ましい。
【0076】
17、R18及びR19は水素原子または置換基を表し、R17とR18、R18とR19及びR17とR19は互いに結合して環を形成してもよい。ここで、置換基とは、アルキル基、アリール基、カルボアミド基、スルホンアミド基、アルキオチオ基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基及びこれらの組合からなる群から選択される置換基を示す。lは0、1又は2を表す。R17〜R19に関して、水素を除いた原子数は1〜60が好ましく、1〜45がより好ましく、1〜35が最も好ましい。
Gは、炭素原子又は窒素原子を表すが、炭素原子の場合には置換基を有していてもよく、この場合の置換基としてはR11およびR12の例で挙げたものが使用できる。
Qは5又は6員の含窒素複素環を形成するのに必要な原子群を表し、さらに該含窒素複素環は縮合環を形成していてもよい。また、R17、R18又はR19と結合して環を形成してもよい。
【0077】
以下にQとして好ましい複素環の例を挙げる。以下の例においては複素環の骨格を表すものであり、部分的に飽和された骨格として用いられてもよく、ヘテロ原子の位置はそれぞれの環系で適宜選択が可能であり、縮合環については任意の位置で縮合してもよい。また、これらの環の組み合わせで表される環であってもよい。
ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、チオフェン、フラン、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、セレナゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、テトラジン、オキサジン、チアジン、オキサジアジン、チアジアジン、ピロロピロール、インドール、ピロロピラゾール、ピロロイミダゾール、ピロロトリアゾール、ピロロテトラゾール、チエノピロール、ピロロオキサゾール、チエノピロール、ピロロオキサゾール、ピロロチアゾール、ピロロピリジン、ピロロピリミジン、ピロロピラジン、ピロロピリダジン、ピロロトリアジン、ピロロテトラジン、ピロロオキサジン、ピロロチアジン、ピロロオキサジン、ピロロチアジアジン、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾセレナゾール、キノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、ベンゾトリアジン、ベンゾオキサジン、ベンゾチアジン、ピラゾロピラゾール、ピラゾロオキサゾール、ピラゾロチアジアゾール、ピラゾロピリジン、ピラゾロピリミジン、ピラゾロピラジン、ピラゾロピリダジン、ピラゾロトリアジン、ピラゾロオキサジン、ピラゾロチアジン、ピラゾロチアジアジン、イミダゾロピラゾール、ピラゾロトリアゾール、ピラゾロテトラゾール、チエノピラゾール、フロピラゾール、ピラゾロオキサゾール、イミダゾロイミダゾール、イミダゾロトリアゾール、イミダゾロテトラゾール、チエノイミダゾール、フロイミダゾール、イミダゾロオキサゾール、チエノイミダゾール、イミダゾロオキサジアゾール、イミダゾロチアジアゾール、イミダゾロセレナゾール、イミダゾロピリジン、イミダゾロピリミジン、イミダゾロピラジン、イミダゾロピリダジン、イミダゾロトリアジン、イミダゾロオキサジン、イミダゾロチアジン、イミダゾロオキサジアジン、イミダゾロチアジアジン、トリアゾロトリアゾール、チエノトリアゾール、フロトリアゾール、トリアゾロオキサゾール、トリアゾロチアゾール、トリアゾロオキサジアゾール、トリアゾロチアジアゾール、トリアゾロピリジン、トリアゾロピリミジン、トリアゾロピラジン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロトリアジン、トリアゾロオキサジン、トリアゾロチアジン、トリアゾロオキサジアジン、トリアゾロチアジアジン、テトラゾロオキサゾール、テトラゾロチアゾール、テトラゾロピリジン、テトラゾロピリミジン、テトラゾロピラジン、テトラゾロピリダジン、テトラゾロオキサジン、テトラゾロチアジン、チエノチオフェン、チエノフラン、チエノオキサゾール、チエノチアゾール、チエノオキサジアゾール、チエノチアジアゾール、チエノセレナゾール、チエノピリジン、チエノピリミジン、チエノピラジン、チエノピリダジン、チエノトリアジン、チエノテトラゾール、チエノオキサジン、チエノチアジン、チエノオキサジアジン、チエノチアジアジン、フロオキサゾール、フロチアゾール、フロオキサジアゾール、フロチアジアゾール、フロピリジン、フロピリミジン、フロピラジン、フロピリダジン、フロトリアジン、フロオキサジン、フロチアジン、オキサゾロオキサゾール、チアゾロオキサゾール、オキサゾロオキサジアゾール、オキサゾロチアジアゾール、オキサゾロピリジン、オキサゾロピリミジン、オキサゾロピラジン、オキサゾロピリダジン、オキサゾロトリアジン、オキサゾロオキサジン、オキサゾロチアジン、オキサゾロオキサジアジン、オキサゾロチアジアジン、チアゾロチアゾール、チアゾロオキサジアゾール、チアゾロオキサジアゾール、チアゾロセレナゾール、チアゾロピリジン、チアゾロピリミジン、チアゾロピラジン、チアゾロピリダジン、チアゾロトリアジン、チアゾロオキサジン、チアゾロチアジン、チアゾロオキサジアジン、チアゾロチアジアジン、ジチオール、ジオキソール、ベンゾジチオール、ベンゾジオキソール。
Qに関して、水素を除いた原子数は4〜70が好ましく、5〜55がより好ましく、6〜45が最も好ましい。
【0078】
、Bは、それぞれ独立に、窒素原子または=C(−R)−を表し、Rは水素原子または置換基を表す。B及びBのうち少なくとも一方が窒素原子を表すことが好ましい。
Rは水素原子または置換基を表す。Rが置換基を表す場合、好ましくは置換されてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シリル基、アルコキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、アシル基、アルキル又はアリールスルホニル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基またはカルボキシル基であり、より好ましくは置換されてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ハロゲン原子またはシアノ基である。Rに関して、水素原子以外の原子数は1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10が最も好ましい。
【0079】
Arは炭素数6〜30の芳香族炭素環、芳香族複素環を表す。芳香族炭素環の例としては、ベンゼン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環などが好ましく、これらの環に対してさらに環が縮合していてもよい。Arは置換基を有する場合、置換基の例としては、前述のR11、R12の置換基の例と同じ基を挙げることができる。
一般式(L−II)〜(L−V)において、#は一般式(L−I)で表される含窒素複素環と結合する位置を表す。
本発明にかかる含窒素複素環配位子としては、蛍光強度、吸収波長および重合体微粒子への取り込まれやすさの観点から一般式(L−VI)で表されるものが好ましく、更に好ましくは一般式(L−VII)で表されるものが好ましい。
【0080】
【化19】

【0081】
[式中Aは前記一般式(L−I)のAと同じ意味を表す。R11、R12及びGは、前記一般式(L−II)のR11、R12及びGと同じ意味を表す。]
【0082】
【化20】

【0083】
[式中、R11、R12、R17、G及びQは、前記一般式(L−II)及び(L−IV)のR11、R12、R17、G及びQと同じ意味を表す。]
以下に、本発明にかかる含窒素複素環配位子の具体例1〜32を示す。
【0084】
【化21】

【0085】
【化22】

【0086】
【化23】

【0087】
【化24】

【0088】
上記例示化合物は公知の化合物を用い、公知の反応条件において反応することにより合成することができる。一般式(L−I)で表される化合物は、好ましくは、シアヌル酸クロリドへの、A〜A原子団の求核置換反応により合成できる。
例えば、下記一般式(LP−I)で表される化合物と一般式(LP−III)で表される化合物を反応させることにより合成することができる。
【0089】
【化25】

【0090】
一般式(LP−I)中、Aは前記A、A、Aで記述したものと同様であり、Eは、離脱性の基またはAを表し、一般式(LP−III)中、R17は前述したものと同様であり、R20は、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいアリール基(ヘテロアリール基を含む)を表すが、好ましくは炭素数1〜30のものであり、1〜20がより好ましく、1〜12がさらに好ましい。
21およびR22は、それぞれ水素原子または置換基を表し、R20とR21およびR21とR22は可能な場合には互いに結合して環を形成してもよい。R21およびR22が置換基を表す場合、好ましい置換基としてはアルキル基、アリール基、アミノ基、複素環基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、ウレイド基およびハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)などが好ましい。ここで挙げた置換基の例において、水素を除いた原子数は1〜60が好ましく、より好ましくは1〜45であり、1〜35が最も好ましい。
Dは、一般式(LP−III)中のアンモニウムイオンの対イオンを表す。Zは、酸素原子、−CR2324−、NR25、硫黄原子を表し、可能な場合にはR17と互いに結合して環を形成してもよい。ここでR23、R24、R25は、置換されてもよいアルキル基またはアリール基を表すが、アルキル基の例としては炭素数1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10が最も好ましく、環状であっても、鎖状であってもよく、鎖状の場合には直鎖でも分枝しているものであってもよく、飽和であっても不飽和結合を含むものであってもよい。
【0091】
一般式(LP−I)におけるEとしての離脱性の基の例には、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アリールオキシ基(フェノキシ基、4−ニトロフェノキシ基など)、アリールチオ基(フェニルチオ基、4−ブロモフェニルチオ基など)、スルホニルオキシ基(p−トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基など)、カルバモイルオキシ基(ジメチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基など)が好ましく、ハロゲン原子が最も好ましい。
【0092】
一般式(LP−III)におけるDとしての対イオンには、好ましくは、ハライドイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)、硫酸イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、硫酸水素イオン、スルホン酸イオン(p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロルベンゼンスルホン酸イオンなど)、硫酸エステルイオン(モノメチル硫酸イオンなど)、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオンなどが挙げられる。
【0093】
本発明における含窒素複素環含有配位子は、一般式(LP−I)で表される化合物と一般式(LP−III)で表される化合物とを、好ましくは溶媒を用いて混合し、好ましくは塩基の存在下、適切な温度にて反応を行うことにより得ることができる。
【0094】
この場合、塩基としては、通常有機合成で用いられる塩基であればほとんどのものが使用できるが、好ましくはピリジン類(ピリジン、2,6−ルチジンなど)、3級アミン類(トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン、N−メチルモルホリン、トリブチルアミンなど)、グアニジン類(トリフェニルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジンなど)、アミジン類(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンなど)、アニリン類(N,N−ジエチルアニリンなど)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキンド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド、酢酸カリウム、酢酸ナトリウムなどを好ましく用いることができるが、ピリジン類、3級アミン類、グアニジン類、アミジン類がより好ましい。
【0095】
用いる溶媒に関してはプロトン性溶媒、非プロトン性溶媒のいずれも用いることができるが、非プロトン性溶媒が好ましく、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが好ましい。
反応温度は反応によってそれぞれ適当な温度が設定されるべきであるが、本発明においては一般に−20℃〜150℃が好ましく、0℃〜120℃がより好ましく、0℃〜100℃が最も好ましい。
反応の仕込み順はどの順に仕込んでもよいが、一般式(LP−I)で表される化合物と一般式(LP−III)で表される化合物を溶媒に溶解または懸濁し、撹拌しながら塩基を添加するのが好ましい。
【0096】
(合成例)例示化合物4の合成
例えば、上記化合物4は、下記の方法により合成することができる。
18.4gの塩化シアヌルを100mLのジメチルアセトアミドに溶解し、室温で69.2gの3,5−ジメチルピラゾールを添加した。ついで反応温度を80℃として2時間反応した。
冷却後、反応液を水に注ぎ、析出した結晶を濾取し、ジメチルホルムアミドから再結晶して、下記(LP−I−1)を得た。収量21.0g、収率57.9%
nmrスペクトルデータ(重クロロホルム):6.11(3H,s)、2.81(9H,s)、2.33(9H,s)
【0097】
【化26】

【0098】
419mgの6−クロロ−5−シアノ−1,3−ジエチル−2−メチル−1H−ベンズイミダゾリウム p−トルエンスルホナートと363mgの上記化合物(LP−I−1)を8mLのジメチルスルホキシドに懸濁し、0.5mLのテトラメチルグアニジンを加えて、80℃で30分間反応した。
冷却後、水を加えて析出した結晶に減圧ろ過を施して、得られた結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行った。さらに、メタノールと酢酸エチルの混合溶媒から再結晶を行い、目的物を得た。収量287mg、収率55.7%。
nmrスペクトルデータ(重クロロホルム):7.34(1H,s)、7.21(1H,s)、6.04(2H,s)、5.31(1H,s)、4.53(2H,q)、4.39(2H,q)、2.70(6H,s)、2.33(6H,s)、1.31(3H,t)、1.28(3H,t)
他の例示化合物も、A〜Aに相当する部分を、対応する化合物に変更することにより、化合物4と同様に合成することができる。
本発明にかかる含窒素複素環配位子は、ランタノイド陽イオンに対して、0.1〜10当量の範囲で使用することができ、より好ましくは1〜5当量の範囲で使用することができる。
ランタノイド陽イオンとしては、2〜4価の陽イオンをあげることができ、具体例として、Ce3+,Pr3+,Nd3+,Nd4+,Sm2+,Sm3+,Eu2+,Eu3+,Tb3+,Dy3+,Dy4+,Ho3+,ER13+,Tm2+,Tm3+,Yb2+,Yb3+等が挙げられ、中でも、Pr3+,Nd3+,Sm3+,Eu3+,Tb3+,Dy3+,Ho3+,Er3+,Tm3+,Yb3+等の3価陽イオンは、紫外〜近赤外領域、長い寿命、狭い波長幅等の特徴を持つ蛍光を発することから好適であり、中でもNd3+,Sm3+,Eu3+,Tb3+,Dy3+,およびTm3+が更に好適であり、Eu3+およびTb3+が発光強度の点で最も好適である。
【0099】
一般式(L−I)以外の配位子に代えて又はこれを組み合わせて、蛍光強度、ランタノイド色素合成の容易さの観点から公知のランタノイド陽イオンの有機配位子を用いることもできる。
他の有機配位子の例としては、芳香族アミン類(Helv.Chim.Acta,Vol.79,P.789,1966)、β―ジケトン類(Anal.Chem.Vol.70,P.596-601,1998)、芳香族基含有カルボン酸類(Chem.Mater.,Vol.10,286-296,特開2000−345052号公報)をあげることができる。具体例として、4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオン、4,4,4−トリフルオロ−1−フェニル−1,3−ブタンジオン、4,4,4−トリフルオロ−1−(2−ナフチル)−1,3−ブタンジオンを挙げることができる。芳香族カルボン酸としては、フォーカルポイントにカルボキシレート基を有しかつ繰り返し単位に芳香環を有するデンドロンを挙げることができる。
【0100】
また、これらの配位子とともに、ランタノイド色素の蛍光強度低下を抑制する目的で、ホスフィンオキシド類、リン酸エステル類、スルホキシド類、亜リン酸エステル類、ホスフィン類、スルフィド類、アミン類、窒素含有芳香族複素環化合物を同時に用いることができる。
【0101】
ランタノイド元素含有溶液に、本発明における配位子を少なくとも含む配位子溶液を加えることにより、蛍光性ランタノイド錯体、即ち本発明における蛍光性ランタノイド色素を、容易に合成することができる。蛍光性ランタノイド錯体が、溶液中から析出する場合には、ろ別することができる。蛍光性ランタノイド錯体が析出しない場合は、溶媒を留去して結晶を得た後、必要に応じ精製して使用することができる。
本発明の重合体微粒子中の蛍光性ランタノイド錯体の濃度に制限はないが、通常、重合体微粒子の質量に対して、0.01〜50質量%、輝度の点で好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量である。
【0102】
<蛍光性重合体微粒子の製造方法>
本発明の蛍光性重合体微粒子は、本発明にかかる上記コアシェル型重合体微粒子を得た後に、蛍光性ランタノイド色素を導入(内蔵)することにより製造することができる。
色素の導入は次のように行うことができる。微粒子の疎水性部を形成する水不溶性高分子化合物を膨潤させる有機溶媒(例えば、アセトン又はトルエン等)が一定比率で含まれる溶液中に、微粒子及び蛍光性ランタノイド色素を浸漬させる。前記浸漬により、前記水不溶性高分子化合物は膨潤し、その膨潤に伴って蛍光性ランタノイド色素が微粒子に取り込まれる。続いて、この混合物から、有機溶媒を除去すると、前記水不溶性高分子化合物は収縮するが、疎水的な蛍光性ランタノイド色素は微粒子から外に出ることができず、微粒子に封入される。所望により、微粒子に取り込まれなかった蛍光性ランタノイド色素を除去することにより、本発明の蛍光性重合体微粒子を得ることができる。
【0103】
上記製造方法において、前記混合物から有機溶媒を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、エバポレートなどにより有機溶媒を蒸発乾固する方法、あるいは、非溶媒中で収縮させる方法(例えば、有機溶媒を含有する溶液を、前記有機溶媒を含有しない溶液に置換する方法)などを挙げることができる。
また、微粒子を膨潤するのに用いる前記有機溶媒含有溶液における有機溶媒の割合は、蛍光性ランタノイド色素が水不溶性高分子化合物に取り込まれる程度まで、前記水不溶性高分子化合物を膨潤させることができる割合である限り、特に限定されるものではないが、例えば、40〜60(vol/vol)%であることができる。
上記の方法の他に、重合性モノマー、マクロモノマーを含有する液体に蛍光性ランタノイド色素を溶解し、次いで重合することにより、微粒子形成と同時に蛍光性ランタノイド色素を導入する方法をとることも可能である。
【0104】
本発明にかかる親水性ポリマーに反応性官能基ユニットが含まれる場合には、反応性官能基前駆体ユニットの活性化によって反応性官能基を生成することを更に含む。このような活性化としては、反応性官能基ユニットの種類によって適宜選択することができる。
例えば反応性官能基前駆体ユニットとしてアミノ基前駆体構造を含む場合には、アミノ基前駆体構造をアミノ基に変換するために、重合体微粒子に対して酸またはアルカリ性処理を行う。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸等の有機酸が使用できる。pHとしては、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液が使用できる。pHとしては、9以上が好ましく、11以上がより好ましい。反応温度としては、25〜100℃が好ましく、40〜90℃がより好ましい。
このような活性化処理は、適用される具体的な処理に応じて蛍光性ランタノイド色素の導入工程の前及び後のいずれに行ってもよい。
【0105】
<蛍光検出用複合体>
本発明の蛍光検出用複合体は、本発明の蛍光性重合体微粒子と、蛍光性重合体微粒子及び検出対象物質を連結可能な連結物質とから構成されている。これにより、標的物質の検出を、連結物質を介した蛍光性重合体微粒子の蛍光発光に基づいて効率よく且つ高感度に行うことができる。
連結物質としては、抗原又は抗体を挙げることができる。このような抗体としては、ウサギ、ヤギ等のポリクローナル抗体、マウスのモノクローナル抗体のIgG、IgM、またはこれらを酵素処理又は還元剤処理して得るF(ab’)、Fab、Fab’分画等が挙げられる。一方、抗原としては、タンパク質、ポリペプチド、ステロイド、多糖類、脂質、薬物、花粉など種々のものが挙げられる。
【0106】
かかる抗体又は抗原の結合方法としては、重合体微粒子のアミノ基に対して抗体又は抗原の糖鎖を過ヨウ素酸を使用して結合する方法、重合体微粒子のアミノ基に対して抗体又は抗原のアミノ基をグルタルアルデヒドを使用して結合する方法、重合体微粒子のアミノ基に対して、Sulfo−SMCC(スルフォスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサンー1−カルボキシレート)との反応によりマレイミド基を導入し、抗体のメルカプト基と結合させる方法等をあげることができる。その結合量としては、重合体微粒子1ミリグラム当たりの質量として、通常50ナノグラム〜500マイクログラムが好ましく、500ナノグラム〜200マイクログラムがより好ましい。これにより、蛍光能を有する免疫分析試薬(蛍光免疫分析試薬)として使用可能である
【0107】
また、連結物質としては、抗原及び抗体の他に、アレルゲン、酵素、酵素基質、補酵素、酵素阻害剤、ホスト化合物、ホルモン、ホルモンレセプター、タンパク質、血液タンパク質、組織タンパク質、細胞、細胞破砕物、核物質、ウイルス、ウイルス粒子、代謝産物、神経伝達物質、ハプテン、薬物、核酸、金属、金属錯体、微生物、寄生虫、細菌、ビオチン、アビジン、レクチン、糖、生理活性物質、生理活性物質受容体、環境物質、化学種又はこれらの誘導体などから、検出対象物質に応じて適宜選択してもよい。例えば、予め検出対象物質をアビジン化処理することが可能である場合には、ビオチンを連結物質とすることができる。検出対象物質が所定のリガンドである場合、該リガンドに特異的に結合するレセプター及びその断片であってもよい。また、標的物質が核酸である場合、該核酸に特異的に結合するタンパク質やペプチド(アプタマー)であってもよい。
これらの連結物質との結合方法は、前述と同様に行ってもよく、その他の既知の結合方法によって結合してもよい。
このような連結物質は、検出対象物質そのものであってもよく、また蛍光性重合体微粒子と同様に検出対象物質に対して結合処理することにより、本蛍光検出用複合体によって検出可能としてもよい。
【0108】
<蛍光検出方法>
本発明の蛍光検出方法は、上記蛍光性重合体微粒子と、蛍光性重合体微粒子及び検出対象物質を連結可能な連結物質、即ち、蛍光検出用複合体を用いて検出対象物質を検出することを含む。これにより、蛍光強度が高く高感度に検出可能な本発明の蛍光性重合体微粒子を用いて、高感度に検出対象物質を検出することができる。
蛍光検出用複合体については、上記事項をそのまま適用することができる。
【0109】
蛍光検出方法は、蛍光物質を利用した公知の蛍光検出方法における手順及び条件をそのまま適用することができ、測定対象物質と、蛍光検出用複合体とを接触させて検出試料を調製すること、蛍光検出用複合体を励起する励起光を照射すること、該照射による蛍光発光を測定することを含む。
【0110】
また本発明の蛍光検出方法は、発光寿命の長いランタノイド錯体(特にユーロピウム、テルビウム、ルテニウム)を蛍光色素として用いているので、バックグランド蛍光が消滅した後に、目的の蛍光を検出する遅延蛍光分析法であることが好ましい。例えば、ユーロピウム錯体の発光寿命は、数百μsecからmsecであり、一般的な有機色素の10万〜100万倍である。さらに250nm以上の大きいストークスシフト、シャープな蛍光ピーク等の特徴を有している。分析のためには、ランタノイドイオンの配位子を励起し、発生する遅延を時間分解蛍光測定装置で測定する。
【0111】
また、本発明における上記蛍光性ランタノイド色素は、可視光、例えば400nm程度の光による励起が可能である。このため、UVのような高エネルギーの励起光を使用する必要がなく、励起光源の選択の幅を広くすることができる。
これにより、低エネルギーの励起光源による蛍光検出を高感度に行うことができる。
本蛍光検出方法は、時間分解蛍光測定によるものであることが、測定の精度及び感度の観点から更に好ましい。時間分解蛍光測定における条件は、選択された金属イオンに応じて適宜選択することができる。
【0112】
<蛍光検出キット>
本発明の蛍光検出キットは、本発明の蛍光性重合体微粒子を含むものである。
これにより、標的物質の検出を、連結物質を介した蛍光性重合体微粒子の蛍光発光に基づいて効率よく且つ高感度に行うことができる。
本蛍光検出キットにおける蛍光性重合体微粒子は、連結物質と共に含まれるものであってもよく、また蛍光検出用複合体として含まれるものであってもよい。
また連結物質の種類に応じて、検出対象物質を蛍光検出用複合体によって検出可能にするための試薬を含むものであってもよい。このような試薬としては、例えば、蛍光検出用複合体中の連結物質としてビオチンを選択した場合では、検出対象物質をアビジン化するための試薬が挙げられる。
【実施例】
【0113】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0114】
(実施例1)
<前駆体親水性ポリマーP−1の合成>
窒素気流下、VPE−0201(和光純薬工業(株)製)10g、N−ビニルホルムアミド(アルドリッチ社製)38g、NKエステルSA(新中村化学(株)製)2gを、N,N−ジメチルアセトアミド150gに溶解し、80℃で4時間攪拌した後、100℃に昇温して2時間攪拌した。室温まで冷却後、反応混合物にN,N−ジメチルアセトアミド100gを加えて希釈した。次にこれを酢酸エチル4Lに注ぎ、析出したポリマーを吸引ろ過し、室温で真空乾燥した。46gのポリマー(PP−1)が得られた。0.1モル/Lの水酸化カリウム水溶液で、滴定し酸価を測定したところ、このポリマー1gあたり、0.13ミリモルの酸が含有されていた。
次に、上記で得られたポリマー(PP−1)20gをジメチルアセトアミド100gに溶解し、アリルアルコール1.8g、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン0.1g、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド1.9gを加え、40℃で4時間攪拌した。次に、酢酸0.5g、10gのエタノールを加え、40℃で2時間攪拌し、室温まで冷却した。次にこの反応混合物を、酢酸エチル3L中に注ぎ、沈殿したポリマーを吸引ろ過後、室温で真空乾燥し、19gの前駆体親水性ポリマーP−1を得た。0.1モル/Lの水酸化カリウム水溶液による滴定では、酸が検出されず、ポリマー中のカルボン酸がメタクリル酸ヒドロキシエチルとの反応によって消失していることが判った。またGPC測定からこの前駆体親水性ポリマーP−1の数平均分子量Mnは9500であった。
【0115】
<前駆体親水性ポリマーP−5の合成>
上記前駆体親水性ポリマーP−1の合成の過程で得られたポリマー(PP−1)10gをジメチルアセトアミド50gに溶解し、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル4g、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン0.05g、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド1gを加え、40℃で4時間攪拌した。次に、酢酸0.5g、10gのエタノールを加え、40℃で2時間攪拌し、室温まで冷却した。次にこの反応混合物を、酢酸エチル3L中に注ぎ、沈殿したポリマーを吸引ろ過後、室温で真空乾燥し、23gの前駆体親水性ポリマーP−5を得た。0.1モル/Lの水酸化カリウム水溶液による滴定では、酸が検出されず、ポリマー中のカルボン酸がメタクリル酸ヒドロキシエチルとの反応によって消失していることが判った。またGPC測定からこの前駆体親水性ポリマーP−5の数平均分子量Mnは9600であった。
【0116】
<蛍光性微粒子分散液の合成>
上記で合成した前駆体親水性ポリマーP−1(数平均分子量9500)2gを、蒸留水20gとエタノール6gの混合溶液中に溶解し、毎分50mLの窒素を流しつつ、60℃に加熱した。次に、この溶液中に、メタクリル酸メチル1g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.04gおよびエタノール8gからなる溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後60℃で5時間攪拌し、更に75℃で1時間攪拌し、室温まで冷却した。分散物を、蒸留水を用いて一日透析して精製を行った。更に遠心分離機を用いて粒子を分離した後、蒸留水を用いて希釈再分散し、粒子濃度を4質量%とした。粒度分布測定装置(コールターN4Plus、ベックマン・コールター(株)製)を用いて粒径を測定したところ体積平均粒径300nmであった。
粒子分散物1g対し、塩酸を2.5mL、蒸留水6.5g加え混合後、25℃で14時間攪拌し、粒子表面に結合した親水性ポリマー中のホルムアミド基の加水分解を行いアミノ基に変換した。蒸留水を用いて一日透析精製を行い、水溶性物質を除去した後、遠心分離機を用いて粒子を濃縮した後、蒸留水を加えて希釈濃度調節し、1.25質量%の表面にアミノ基を有する微粒子分散液を得た。この分散液のゼータ電位を測定したところ、+19mVの電位を示した。
次に、上記で得た表面にアミノ基を有する微粒子分散液4g、トリス(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオノ)ユーロピウム(III)6.0mgと、化合物例12のトリアジン環を有する配位子3.8mgを、メタノール1gで溶解した。次にこれを、上記で合成した表面にアミノ基を有する微粒子分散液4gに加え、室温で3時間攪拌した。その後、透析によりメタノールを除去し、45℃で3日間静置した後、室温に冷却して、表面にアミノ基を有する蛍光性微粒子分散液−1を得た。この蛍光性微粒子分散液−1は、420nmの励起光の照射により、615nmに強い蛍光を示した。
【0117】
<ビオチン連結微粒子の合成>
上記で合成した表面にアミノ基を有する蛍光性微粒子(ユーロピウム色素染色粒子)を、濃度、10mg/mLで、PBS緩衝液(pH7〜8.5)に分散した。微粒子分散液2mLに、20mM・EZ−Link・NHS−PEO4−Biotine(PIERCE社製)を20μL添加し室温で1時間反応させた。その後、透析により精製、表面にビオチンを有する蛍光性微粒子溶液を得た。更に、濃縮を行い粒子濃度を1質量%とした。
【0118】
<アビジン結合プレートを用いた検出>
上記で得たビオチン連結微粒子溶液を、0.001質量%、0.0001質量%、0.00001質量%となるように、精製水で希釈した。次にこれを、アビジン固定96穴マイクロプレート(Nunc社製、Nunc Immobilizer Streptavidin)に、200μLずつスポットし、室温で2時間静置した。次に、精製水で洗浄した。水分を取り除き、マイクロプレートの蛍光量を、プレートリーダーARBO(パーキンエルマー社製)を用いて測定した。励起波長として、420nmを用い、615nmの蛍光を時間分解蛍光測定モードで測定した。その結果、蛍光粒子濃度に依存した遅延蛍光が観察された。また、蛍光性微粒子分散液を40℃の環境下で2週間放置した後、再びマイクロプレート上にスポットし、前記と同様に蛍光測定を行った。マイクロプレートの蛍光強度はほとんど変化せず、保存性に優れた蛍光検出試薬であることを確認した。
【0119】
(実施例2〜4)
実施例1において、親水性ポリマーP−1、メチルメタクリレートの代わりに、それぞれ下記表1に示す親水性ポリマーおよびラジカル重合性モノマーを用いた他は、実施例1と同様に蛍光性微粒子を作製した。平均粒径を、表1に示す。更に実施例1と同様にしてビオチンを結合した粒子を作製し蛍光測定を行った。いずれの蛍光性微粒子分散液においても、蛍光性微粒子濃度に依存した遅延蛍光が観測され、いずれの蛍光性微粒子分散液においても、蛍光性微粒子分散液を40℃の環境下で2週間放置した後、マイクロプレート上にスポットし、前記と同様に蛍光測定を行った。マイクロプレートの蛍光強度はほとんど変化せず、保存性に優れた蛍光検出試薬であることを確認した。
【0120】
【表1】

【0121】
(比較例1)
Anal.Chem., 2003,75,6124-6132に記載の方法に従い、下記化学式で表されるポリエチレンオキシ末端にアミノ基と、重合性不飽和結合ユニットとをそれぞれ有するラジカル重合性マクロモノマーを合成した。GPC測定から数平均分子量は7000であった。
【0122】
【化27】

【0123】
次に、スチレン(100当量)と上記マクロモノマー(5当量)及び1,4−ジビニルベンゼン(2当量)を、ラジカル発生剤V−65(2当量、和光純薬(株)製)の共存下、エタノール/蒸留水=4/1(体積比)中で70℃に6時間加熱し、ラジカル重合を行った。反応物をろ過し、ろ液を、蒸留水を用いて一日透析(分画分子量=12000〜14000)を行い精製し、表面にアミノ基を有する微粒子の分散物を得た。粒度分布測定装置(コールターN4Plus、ベックマン・コールター(株)製)を用いて粒径を測定したところ平均粒径が130nmであった。蒸留水を用いて希釈し、粒子濃度を1.25質量%とした。
次に、上記で得た表面にアミノ基を有する微粒子分散液4g、トリス(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオノ)ユーロピウム(III)6.0mgと、化合物例12のトリアジン環を有する配位子3.8mgを、メタノール1gで溶解した。次にこれを、上記で合成した表面にアミノ基を有する微粒子分散液4gに加え、室温で3時間攪拌した。その後、透析によりメタノールを除去し、45℃で3日間静置した後、室温に冷却して、表面にアミノ基を有する蛍光性微粒子分散液−5を得た。
この蛍光性微粒子分散液−5は、420nmの励起光の照射により、615nmに蛍光性微粒子濃度に依存した遅延蛍光を示した。しかし、その蛍光強度を実施例1と比較すると、同一の蛍光性微粒子濃度において、実施例1の蛍光強度の50%であった。また、蛍光性微粒子分散液−5を40℃の環境下で2週間放置した後、再び蛍光測定を行ったところ、粒子の凝集が観察され、蛍光強度は保存前の50%に更に減少した。
【0124】
(比較例2)
比較例1において、化合物12のトリアジン環を有する配位子を添加しなかった以外は、比較例1と同様にして、蛍光性微粒子分散液−6を得た。
この蛍光性微粒子分散液−6においては、420nmの励起光の照射では、615nmに蛍光を観測できなかった。また、340nmの励起光を照射したところ、蛍光性微粒子濃度に依存した遅延蛍光を示した。しかし、その蛍光強度を実施例1と比較すると、同一の蛍光性微粒子濃度において、実施例1の蛍光強度の50%であった。また、蛍光性微粒子分散液−6を40℃の環境下で2週間放置した後、再び蛍光測定を行ったところ、粒子の凝集が観察され、蛍光強度は保存前の50%に更に減少した。
【0125】
以上より、本発明の蛍光性重合体微粒子は、高い蛍光強度と良好な経時安定性を有する蛍光性重合体微粒子であることがわかる。一方、比較例の蛍光性重合体微粒子は、本発明の蛍光性重合体微粒子に比べて、蛍光強度及び分散液状態での経時安定性に劣ることが分かる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性コアと親水性シェルからなるコアシェル構造を有する重合体微粒子と、該重合体微粒子に内蔵されると共にランタノイド陽イオンを含有する蛍光性ランタノイド色素と、を含む蛍光性重合体微粒子であって、前記親水性シェルを形成する親水性ポリマーが、主鎖中に下記一般式(I)で表される親水性ユニットを含み、側鎖に、疎水性コアを形成する重合性ポリマーが結合していることを特徴とする蛍光性重合体微粒子。
【化1】


[一般式(I)中、R1及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はシアノ基を表し、L及びLはそれぞれ独立に2価の連結基を表す。nはエチレングリコール鎖の平均繰り返し数を表す。]
【請求項2】
前記親水性ポリマーは、前記一般式(I)で表される親水性ユニットを含む主鎖と、エチレン性不飽和結合を有するエチレン性不飽和結合基ユニットを含む側鎖と、を有する前駆体親水性ポリマーから誘導されたものであることを特徴とする請求項1記載の蛍光性重合体微粒子。
【請求項3】
前記前駆体親水性ポリマーが、下記一般式(I)で表される親水性ユニットと、下記一般式(II)で表されるエチレン性不飽和結合基ユニットとを含むことを特徴とする請求項2記載の蛍光性重合体微粒子。
【化2】


[一般式(I)及び(II)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はシアノ基を表し、L及びLはそれぞれ独立に2価の連結基を表す。nはエチレングリコール鎖の平均繰り返し数を表す。Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは、酸素原子または、−NR31−を表す。R31は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。Lは2価の連結基を表し、Zはアリル基、アリルオキシエチル基、および一般式(III)または一般式(IV)で表される原子団を表す。
【化3】


一般式(III)及び(IV)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。mは1〜12を表す。]
【請求項4】
前記親水性ポリマーが、反応性官能基ユニットを更に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の蛍光性重合体微粒子。
【請求項5】
前記反応性官能基ユニットが、下記一般式(V)で表されるアミノ基ユニットであることを特徴とする請求項4記載の蛍光性重合体微粒子。
【化4】


[上記一般式(V)において、R8は水素原子又はメチル基を表す。]
【請求項6】
前記蛍光性ランタノイド色素が、下記一般式(L−I)で表される含窒複素環配位子を少なくとも1個有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の蛍光性重合体微粒子。
【化5】


[一般式(L−I)において、A、A、Aは、下記一般式(L−II)〜(L−V)で表される原子団、または水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基を表し、互いに同一であってもよい。B、Bは、それぞれ独立に、窒素原子または=C(−R)−を表し、Rは水素原子または置換基を表す。
【化6】


各式中R11〜R19は、それぞれ水素原子または置換基を表す。R17とR18、R18とR19およびR17とR19は可能な場合には互いに結合して環を形成してもよい。lは0、1又は2を表す。Gは置換基を有してもよい炭素原子又は窒素原子を表す。Qは5員環又は6員環の含窒素複素環を形成するのに必要な原子団を表し、前記含窒素複素環は縮合環をさらに形成してもよい。Arは芳香族炭素環、芳香族複素環を表す。一般式(L−II)〜(L−V)において、#は一般式(L−I)で表される含窒素複素環と結合する位置を表す。]
【請求項7】
疎水性コアと親水性シェルからなるコアシェル構造を有する重合体微粒子と、該重合体微粒子に内蔵されると共にランタノイド陽イオンを含有する蛍光性ランタノイド色素と、を含む蛍光性重合体微粒子の製造方法であって、
下記一般式(I)で表される親水性ユニットを含む主鎖と重合性ユニットを含む側鎖とを有する前駆体親水性ポリマーと、ラジカル発生剤との存在下、水系溶媒中でラジカル重合性モノマーを分散重合して、親水性シェルを形成する親水性ポリマーに疎水性コアを形成する重合性ポリマーが結合したコアシェル型の重合体微粒子を形成すること、
得られたコアシェル型の重合体微粒子に、前記ランタノイド色素を導入すること、
を含む蛍光性重合体微粒子の製造方法。
【化7】


[一般式(I)中、R1及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はシアノ基を表し、L及びLはそれぞれ独立に2価の連結基を表す。nはエチレングリコール鎖の平均繰り返し数を表す。]
【請求項8】
前記重合性ユニットが、エチレン性不飽和結合を側鎖として有するエチレン性不飽和結合基ユニットであることを特徴とする請求項7記載の蛍光性重合体微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記前駆体親水性ポリマーが反応性官能基前駆体ユニットを更に含み、該反応性官能基前駆体ユニットの活性化によって反応性官能基を生成することを更に含む請求項7又は8記載の蛍光性重合体微粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項記載の蛍光性重合体微粒子と、該蛍光性重合体微粒子及び検出対象物質を連結可能な連結物質と、で構成された蛍光検出用複合体。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項記載の蛍光性重合体微粒子と、該蛍光性重合体微粒子及び検出対象物質を連結可能な連結物質とを用いて、該検出対象物質を検出することを特徴とする蛍光検出方法。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項記載の蛍光性重合体微粒子を含む蛍光検出キット。


【公開番号】特開2008−231378(P2008−231378A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77175(P2007−77175)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】