説明

蛍光標識のための化合物および方法

生体物質を標識するのに有用な化合物を、それらの使用法と共に提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2001年12月21日提出の米国特許出願第10/026,374号の継続出願である、2005年5月10日提出の米国特許出願第11/127,040号の一部継続出願である、2006年2月17日提出の米国特許出願第11/357,750号;および2001年12月21日提出の米国特許出願第10/026,374号の分割出願である2004年12月22日提出の米国特許出願第11/022,039号の恩典を主張し、これらはいずれも35 U.S.C.§ 119(e)の下に2001年9月7日提出の米国特許仮出願第60/317,875号に対する優先権の恩典を主張し;それぞれの内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
生体分析物の非放射性検出は現代の分析生物工学において重要な科学技術である。放射性標識の必要性をなくすことにより、安全性が高まり、試薬廃棄の環境への影響が大幅に減少して、分析コストの低減につながる。そのような非放射性検出法を用いる方法の例には、DNA配列決定、オリゴヌクレオチドプローブ法、ポリメラーゼ連鎖反応生成物の検出、イムノアッセイなどが含まれる。
【0003】
多くの適用において、混合物中の複数の空間的に重なる分析物の独立した検出、例えば、1チューブのマルチプレックスDNAプローブアッセイ、イムノアッセイ、多色DNA配列決定法などが必要とされる。多座DNAプローブアッセイの場合、多色検出を提供することにより、反応チューブの数を減らし、それにより実験プロトコルを単純化し、適用特異的キットの製造を容易にしうる。自動DNA配列決定の場合、多色標識によって1レーンで4塩基すべての分析が可能になり、それにより1色法よりも処理量を増やし、レーン間の電気泳動移動度のばらつきに関連する不確定性を排除することができる。
【0004】
マルチプレックス検出は、特に電気泳動による分離および酵素での処理を必要とする分析、例えば、DNA配列決定などのための色素標識の選択にいくつかの厳しい制約を課す。
【0005】
生体材料の標識に課せられる様々な制約のために、様々な色素に広く適用可能な方法が強く望まれる。驚くべきことに、本発明はそのような方法を、標識工程を行うのに有用な試薬と共に提供する。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
広い意味で、本発明は蛍光色素標識生体物質を調製する方法であって、非標識生体物質を蛍光色素縮合ラクトンおよび開環ラクトン誘導体と、蛍光色素を該生体物質に共有結合させ、蛍光色素標識生体物質を形成するのに十分な条件下で接触させる段階を含む方法を提供する。関連局面において、ラクトンおよび開環ラクトン色素を用いて生体物質または材料を、例えば、自動合成機で標識するのに適したホスホラミダイト試薬を調製することができる。
【0007】
蛍光色素縮合ラクトンおよび開環ラクトン誘導体は一般には下記からなる群より選択される式を有するとして提供される:

式中、R1およびR1'はそれぞれH、ハロゲン、スルホ、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオ、(C1-C8)アルコキシ、アリールおよびヘテロアリールから独立に選択され;R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびヘテロアリール(C1-C4)アルキルから独立に選択され;ここでR1、R1'、およびR5からR8のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR1、R1'、およびR5からR8のいずれかのアリールまたはヘテロアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよく;RAおよびRBは一緒になって1つから4つの5または6員環を有する置換または無置換縮合環系を形成する。一つの態様において、化合物は400nmから1200nmの発光波長を有する。
【0008】
蛍光色素縮合ラクトンおよび開環ラクトン誘導体は、クマリン、ベンゾクマリン、キサンテン、ベンゾ[a]キサンテン、ベンゾ[b]キサンテン、ベンゾ[c]キサンテン、フェノキサジン、ベンゾ[a]フェノキサジン、ベンゾ[b]フェノキサジンおよびベンゾ[c]フェノキサジンから選択される公知の色素に基づいている。
【0009】
本発明は縮合ラクトンおよび開環類縁体を調製する方法をさらに提供する。
【0010】
ラクトンおよび開環ラクトン色素が蛍光標識工程において有用なホスホラミダイト試薬ならびに固体支持体結合色素に変換される、追加の試薬および方法も提供される。
【0011】
本明細書において提供する試薬は安定で、多くの場合、試薬に長い保存寿命を提供する特定の保護基と共に提供され、様々な研究努力に携わる者にとって有用となる。
【0012】
発明の詳細な説明
略語および定義
特に記載がないかぎり、本明細書および特許請求の範囲において用いられる以下の用語は下に示す意味を有する。
【0013】
「アルキル」なる用語は、接頭辞に示す数の炭素原子を有する直鎖、分枝、もしくは環式飽和一価炭化水素基、または環式および直鎖もしくは分枝飽和一価炭化水素基の組み合わせを意味する。例えば、(C1-C8)アルキルはメチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、tert-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、シクロプロピルメチルなどを含むことになる。本明細書における定義(例えば、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールアルコキシなど)それぞれについて、アルキル部分の主鎖炭素原子の数を示す接頭辞が含まれていない場合、基またはその部分は8個以下の主鎖炭素原子を有する。
【0014】
「アルキレン」なる用語は、接頭辞に示す数の炭素原子を有する直鎖飽和二価炭化水素基または分枝飽和二価炭化水素基を意味する。例えば、(C1-C6)アルキレンはメチレン、エチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ペンチレンなどを含むことになる。
【0015】
「アルケニル」なる用語は、接頭辞に示す数の炭素原子を有し、少なくとも一つの二重結合を含む、直鎖一価炭化水素基または分枝一価炭化水素基を意味する。例えば、(C2-C6)アルケニルはエテニル、プロペニルなどを含むことになる。
【0016】
「アルキニル」なる用語は、少なくとも一つの三重結合を含み、接頭辞に示す数の炭素原子を有する、直鎖一価炭化水素基または分枝一価炭化水素基を意味する。例えば、(C2-C6)アルキニルはエチニル、プロピニルなどを含むことになる。
【0017】
「アルコキシ」、「アルキルアミノ」および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)なる用語はそれらの通常の意味で用いられ、それぞれ酸素原子、アミノ基または硫黄原子を介して分子の残部に結合されているアルキル基を意味する。同様に、ジアルキルアミノなる用語は、同じでも異なっていてもよい2つの結合されたアルキル基を有するアミノ基を意味する。
【0018】
「アリール」なる用語は、無置換であるか、またはアルキル、シクロアルキル、シクロアルキル-アルキル、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アシルアミノ、モノ-アルキルアミノ、ジ-アルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、COR(ここでRは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル-アルキル、フェニル、フェニルアルキル、アリールまたはアリールアルキルである)、-(CR'R'')n-COOR(ここでnは0から5の整数であり、R'およびR''は独立に水素またはアルキルであり、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル、フェニルアルキル、アリールまたはアリールアルキルである)もしくは(CR'R'')n-CONRaRb(ここでnは0から5の整数であり、R'およびR''は独立に水素またはアルキルであり、RaおよびRbは互いに独立に水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル、フェニルアルキル、アリールまたはアリールアルキルである)から選択される1つから4つの置換基、いくつかの態様において1、2または3つの置換基で独立に置換されている、環原子6から10個の一価単環式または二環式芳香族炭化水素基を意味する。より具体的には、アルキルなる用語は、フェニル、ビフェニル、1-ナフチル2-ナフチル、およびその置換型を含むが、それらに限定されるわけではない。同様に、「ヘテロアリール」なる用語は、一つまたは複数のヘテロ原子またはヘテロ原子官能基が環炭素に置き換わっているが、芳香族の性質は保持しているアリール基、例えば、ピリジル、キノリニル、キナゾリニル、チエニルなどを意味する。簡略のため、アリールなる用語は、他の基との組み合わせで用いる場合(例えば、アリールオキシ、アリールアルキルなど)、前述のアリール基およびヘテロアリール基の両方を含むことになる。
【0019】
「アリールアルキル」なる用語は、Raがアルキレン基(示した数の炭素原子を有するか、または特に明記されていなければ、6個以下の主鎖炭素原子を有する)であり、Rbが本明細書において定義するアリール基である、-RaRbなる基を意味する。アリールアルキル基の例には、ベンジル、フェニルエチル、3-(3-クロロフェニル)-2-メチルペンチルなどが含まれる。
【0020】
同様に「アリールアルケニル」なる用語は、Raがアルケニレン基であり、Rbが本明細書において定義するアリール基である-RaRbなる基、例えば、3-フェニル-2-プロペニルなどを意味する。
【0021】
「アリールヘテロアルキル」とは、Raがヘテロアルキレン基(示した数の炭素原子を有する)であり、Rbが本明細書において定義するアリール基である-RaRbなる基、例えば、2-ヒドロキシ-2-フェニル-エチルなどを意味する。
【0022】
「アリールオキシ」なる用語は、Rがアリール基である-ORなる基、例えば、フェノキシ、ナフチルオキシなどを意味する。
【0023】
「ハロ」なる接頭辞および「ハロゲン」なる用語は、置換基を記載するために用いる場合、-F、-Cl、-Brおよび-Iを意味する。
【0024】
「ヘテロアルキル」なる用語は、ヘテロアルキル基の結合点はヘテロアルキル基の炭素原子を通じてであるとの条件で、シアノ、-ORa、-NRbRc、および-S(O)nRd(ここでnは0から2の整数である)から独立に選択される1、2または3つの置換基を有する、本明細書において定義するアルキル基を意味する。Raは水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルボキサミド、またはモノ-もしくはジ-アルキルカルバモイルである。Rbは水素、アルキル、アリールまたはアリールアルキルである。Rcは水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルボキサミド、モノ-もしくはジ-アルキルカルバモイルまたはアルキルスルホニルである。Rdは水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アミノ、モノ-アルキルアミノ、ジ-アルキルアミノまたはヒドロキシアルキルである。代表的な例には、例えば、2-ヒドロキシエチル、2,3-ジヒドロキシプロピル、2-メトキシエチル、ベンジルオキシメチル、2-シアノエチル、および2-メチルスルホニル-エチルが含まれる。前述のそれぞれについて、Ra、Rb、Rc、およびRdはNH2、フッ素、アルキルアミノ、ジ-アルキルアミノ、OHまたはアルコキシでさらに置換されうる。加えて、炭素原子の数を示す接頭辞(例えば、C1-C10)は、シアノ、-ORa、-NRbRcまたは-S(O)nRd部分を除いて、ヘテロアルキル基部分の炭素原子の総数を意味する。
【0025】
「複素環式」なる用語は、一つまたは複数の環原子がO、NR(ここでRは独立に水素またはアルキルである)またはS(O)n(ここでnは0から2の整数である)から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子がCである、環原子3から8個の飽和または不飽和非芳香族環式基を意味し、ここで1個または2個のC原子はカルボニル基で任意に置き換えられていてもよい。ヘテロシクリル環は、アルキル、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノ-アルキルアミノ、ジ-アルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、-COR(ここでRは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル-アルキル、フェニル、フェニルアルキル、アリールまたはアリールアルキルである)、-(CR'R'')n-COOR(nは0から5の整数であり、R'およびR''は独立に水素またはアルキルであり、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル-アルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである)または-(CR'R'')n-CONRaRb(ここでnは0から5の整数であり、R'およびR''は独立に水素またはアルキルであり、RaおよびRbは互いに独立に水素、アルキル、フェニル、またはフェニルアルキルである)から選択される1、2または3つの置換基で独立に置換されていてもよい。より具体的には、ヘテロシクリルなる用語は、テトラヒドロピラニル、ピペリジノ、N-メチルピペリジン-3-イル、ピペラジノ、N-メチルピロリジン-3-イル、3-ピロリジノ、2-ピロリドン-1-イル、モルホリノ、チオモルホリノ、チオモルホリノ-1-オキシド、チオモルホリノ-1,1-ジオキシド、ピロリジニル、およびその誘導体を含むが、それらに限定されるわけではない。炭素原子の数を示す接頭辞(例えば、C3-C10)は、ヘテロ原子の数を除いて、ヘテロシクリル基部分の炭素原子の総数を意味する。
【0026】
「ヘテロアルキレン」なる用語は、-ORa、-NRbRc、および-S(O)nRd(nは0から2の整数である)から独立に選択される1、2または3つの置換基を有する、炭素1個から6個の直鎖飽和二価炭化水素基または炭素原子3から6個の分枝飽和炭化水素基を意味し、ここでRa、Rb、Rc、およびRdはヘテロアルキル基について本明細書において定義したとおりである。例には、2-ヒドロキシエタン-1,2-ジイル、2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイルなどが含まれる。
【0027】
前述の用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、および「アリール」)はそれぞれ、示した基の置換および無置換型の両方を含むことになる。基のそれぞれの型の置換基の例を以下に示す。
【0028】
アルキルおよびヘテロアルキル基(しばしばアルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロシクロアルキル、およびヘテロシクロアルケニルと呼ばれる基を含む)の置換基は下記から選択される様々な基でありうる:-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、- OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NH-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-CNおよび-NO2で、その数は0から4の範囲、いくつかの態様において、0、1、2または3つの置換基である。R'、R''およびR'''はそれぞれ独立に、水素、無置換(C1-C8)アルキルおよびヘテロアルキル、無置換アリール、1〜3個のハロゲンで置換されたアリール、無置換アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、またはアリール-(C1-C4)アルキル基を意味する。R'およびR''が同じ窒素原子に結合している場合、これらは窒素原子との組み合わせで5、6または7員環を形成しうる。例えば、-NR'R''は1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを含むことになる。前述の置換基に関する記述から、当業者であれば「アルキル」なる用語はその最も広い意味でハロアルキル(例えば、-CF3および-CH2CF3など)およびアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3など)などの基を含むことを理解するであろう。特に記載がないかぎり、いくつかの態様において、アルキル基は0〜3つの置換基、もう一つの態様において、0、1または2つの置換基を有することになる。
【0029】
同様に、アリール基の置換基は様々で、下記から選択される:-ハロゲン、-OR'、-OC(O)R'、-NR'R''、-SR'、-R'、-CN、-NO2、-CO2R'、-CONR'R''、-C(O)R'、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR''C(O)2R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NH-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-N3、-CH(Ph)2、過フルオロ(C1-C4)アルコキシ、および過フルオロ(C1-C4)アルキルで、その数は0から芳香環系の空き原子価総数までの範囲であり;ここでR'、R''およびR'''は、水素、(C1-C8)アルキルおよびヘテロアルキル、無置換アリールおよびヘテロアリール、(無置換アリール)-(C1-C4)アルキル、ならびに(無置換アリール)オキシ-(C1-C4)アルキルから独立に選択される。
【0030】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは任意に式-T-C(O)-(CH2)q-U-の置換基で置き換えられてもよく、ここでTおよびUは独立に-NH-、-O-、-CH2-または一重結合であり、qは0から2の整数である。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは任意に式-A-(CH2)r-B-の置換基で置き換えられてもよく、ここでAおよびBは独立に-CH2-、-O-、-NH-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR'-または一重結合であり、rは1から3の整数である。このようにして形成された新しい環の一重結合の1つは任意に二重結合で置き換えられてもよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは任意に式-(CH2)s-X-(CH2)t-の置換基で置き換えられてもよく、ここでsおよびtは独立に0から3の整数であり、Xは-O-、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-または-S(O)2NR'-である。-NR'-および-S(O)2NR'-の置換基R'は水素または無置換(C1-C6)アルキルから選択される。
【0031】
本発明の特定の化合物またはオリゴヌクレオチドは塩の形で存在しうる。そのような塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、マグネシウムまたは類似の塩などの塩基付加塩が含まれる。本発明の化合物または修飾オリゴヌクレオチドが相対的に塩基性の官能基を含む場合、そのような化合物の中性型を、望ましい酸の十分な量と、ニートまたは適当な不活性溶媒中で接触させることにより酸付加塩を得ることができる。許容される酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸水素酸、リン酸、リン酸水素酸、リン酸二水素酸、硫酸、硫酸水素酸、ヨウ化水素酸または亜リン酸などの無機酸由来のもの、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの有機酸由来の塩が含まれる。同様に、アルギン酸塩などのアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge, S.M., et al, ''Pharmaceutical Salts'', Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19参照)。本発明の特定の具体的化合物は塩基性および酸性官能基の両方を含み、これにより化合物を塩基または酸いずれかの付加塩に変換することが可能となる。
【0032】
化合物の中性型は塩を塩基または酸と接触させ、親化合物を通常の様式で単離することにより再生しうる。化合物の親型は様々な塩と、極性溶媒中の溶解性などの特定の物理的性質が異なるが、それ以外は塩は本発明の目的のために化合物の親型と等価である。
【0033】
本発明の特定の化合物は非溶媒和型ならびに水和型を含む溶媒和型で存在しうる。一般に、溶媒和型は非溶媒和型と等価で、本発明の範囲内に含まれることが意図される。本発明の特定の化合物は多結晶または非結晶型で存在しうる。一般に、すべての物理型は本発明によって企図される使用のために等価であり、本発明の範囲内であることが意図される。
【0034】
本発明の特定の化合物は不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有し;ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体および個々の異性体はすべて本発明の範囲内に含まれることが意図される。立体化学の決定および異性体の分離のための方法は当技術分野において周知である(ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY, 4th edition J. March, John Wiley and Sons, New York, 1992の第4章の記述参照)。
【0035】
本発明の化合物は、そのような化合物を構成する原子の一つまたは複数で、原子同位体の非天然比率も含みうる。例えば、化合物は例えばトリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)または炭素-14(14C)などの放射性同位体で放射性標識してもよい。本発明の化合物のすべての同位体変種は、放射性か否か(例えば、2H)にかかわらず、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0036】
「電子吸引基」なる用語は、それが結合している原子の電子密度を低下させる基を意味する。代表的な電子吸引基には、ハロゲン、シアノ、(C1-C6)ハロアルキルおよびスルホニルオキシおよびカルボキシが含まれる。これらの基は当技術分野において公知の方法により芳香環に導入することができる(''Tetrahedron Organic Chemistry Series'', Elsevier, London.;Fieser and Fieser ''Reagents for Organic Synthesis'', Wiley-Interscience, NY.)。
【0037】
「保護基」または「その保護型」とは、分子の反応性基に結合したときに、その反応性を遮断、低下または防止する原子団を意味する。保護基の例はT. W. Greene and P. G. Wuts, PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC CHEMISTRY, (Wiley, 2nd ed. 1991)、Beaucage and Iyer, Tetrahedron 48:2223-2311 (1992)、およびHarrison and Harrison et al., COMPENDIUM OF SYNTHETIC ORGANIC METHODS, Vols. 1-8 (John Wiley and Sons. 1971-1996)において見いだすことができる。代表的なアミノ保護基には、一つまたは複数のアルキル、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、トリメチルシリル(TMS)、2-トリメチルシリル-エタンスルホニル(SES)、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、ニトロ-ベラトリルオキシカルボニル(NVOC)などが含まれる(Boyle, A. L. (Editor), CURRENT PROTOCOLS IN NUCLEIC ACID CHEMISTRY, John Wiley and Sons, New York, Volume 1, 2000も参照されたい)。代表的なヒドロキシ保護基には、ベンジルおよびトリチルエーテルならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテルおよびアリルエーテルなどのヒドロキシ基がアシル化またはアルキル化されているものが含まれる。加えて、ヒドロキシ基はα-メチル-6-ニトピペロニルオキシカルボニルなどの光除去可能な基で保護することができる(McGall, G.H. and Fidanza, J. A., Photolithographic synthesis of high-density olignucleotide arrays, in DNA ARRAYS METHODS AND PROTOCOLS, Edited by Rampal J. B., METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, 170:71-101 (2001), Humana Press, Inc., NY;Boyle, Ann L. (Editor), Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry, John Wiley and Sons, New York, Volume 1, 2000)。
【0038】
前述の定義における「任意の」または「任意に(されていてもよい)」とは、続いて記載される事象または状況が起こってもよいが、起こる必要はなく、記載は事象または状況が起こる場合およびそれが起こらない場合を含むことを意味する。例えば、「アルキル基で一または二置換されていてもよいヘテロシクロ基」とは、アルキルはあってもよいが、ある必要はなく、記載はヘテロシクロ基がアルキル基で一または二置換されている場合およびヘテロシクロ基がアルキル基で置換されていない場合を含むことを意味する。
【0039】
「生体物質」なる用語は、本質的に任意のヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、アミノ炭水化物(amino carbohydrate)またはリガンド、ならびにその類縁体(例えば、修飾または非天然塩基を有するオリゴヌクレオチドなど)を意味する。
【0040】
「結合体」なる用語は、オリゴヌクレオチド、蛍光体、消光剤、副溝結合剤などの複数の成分の共有結合により形成される分子を意味する。
【0041】
「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」は交換可能に用いられ、修飾塩基、糖類縁体などを有するヌクレオチドを含むが、それらに限定されるわけではない、天然または合成いずれかのヌクレオチドのポリマーを意味する。前述のとおり、オリゴヌクレオチド結合体は、少なくとも一つの共有結合した蛍光体、消光剤、副溝結合剤(MGB)または他の有用な断片、ならびに列挙した成分の組み合わせを有する、定義したとおりのオリゴヌクレオチドを意味する。
【0042】
「固体支持体」なる用語は、自動オリゴヌクレオチド技術のために有用であり、適合性である、本質的に任意の固体または半固体マトリックスを意味し、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、プラスティック、組み合わせなどを含む。有用な固体支持体の例は、例えば、米国特許第5,262,530号、第5,419,966号、第5,512,667号および第5,589,586号に記載されている。
【0043】
本発明の実施は、特に記載がないかぎり、有機化学、生化学、オリゴヌクレオチド合成および修飾、生体結合体化学、核酸ハイブリダイゼーション、分子生物学、微生物学、遺伝学、組換えDNA、ならびに関連する分野における通常の技術を当技術分野の範囲内で用いることになる。これらの技術は文献に詳細に説明されている。例えば、Maniatis, Fritsch & Sambrook, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1982);Sambrook, Fritsch & Maniatis, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989);Ausubel, et al., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons (1987, 1988, 1989, 1990, 1991, 1992, 1993, 1994, 1995, 1996);Gait (ed.), OLIGONUCLEOTIDE SYNTHESIS: A PRACTICAL APPROACH, IRL Press (1984);Eckstein (ed.), OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES: A PRACTICAL APPROACH, IRL Press (1991)を参照されたい。
【0044】
一般
本発明は、縮合ラクトンまたは開環ラクトン官能基を有する様々な蛍光色素(または蛍光体)を調製して、保存安定性がよく、適当な求核剤(本明細書に記載の窒素含有求核剤など)との反応性のゆえに本質的に任意の生体物質(例えば、オリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、プローブなど)を標識するのに用いうる試薬を提供することができるとの発見に帰する。したがって、本発明は新しい「ラクトンおよび開環ラクトン色素」ならびにこれらの「ラクトンおよび開環ラクトン色素」を用いて生体物質を標識する方法を提供する。本発明は、本明細書に記載のラクトンおよび開環ラクトン色素から調製しうるホスホラミダイト誘導体化色素などの試薬をさらに提供する。加えて、ラクトンおよび開環ラクトン色素から同様に調製した支持体結合色素も記載する。
【0045】
標識するための「ラクトンおよび開環ラクトン色素」アプローチならびに試薬(例えば、支持体結合色素およびホスホラミダイトなど)は、例えば、クマリン色素、ベンゾクマリン色素、フルオレセイン色素、ロードル色素、フェノキサジン色素、ベンゾフェノキサジン色素、キサンテン色素およびベンゾキサンテン色素と適合性であることが判明している。
【0046】
これらおよび他の適当な色素クラスの例は、Haugland, et al., HANDBOOK OF FLUORESCENT PROBES AND RESEARCH CHEMICALS, SIXTH ED., Molecular Probes, Eugene, Ore. 1996;米国特許第5,187,288号;第5,188,934号;第5,227,487号、第5,248,782号;第5,304,645号;第5,433,896号;第5,442,045号;第5,556,959号;第5,583,236号;第5,808,044号;第5,986,086号;第6,020,481号;第6,162,931号;および第6,221,604号;Smith, et al., J. Chem. Soc. Perkin Trans. 2, 1993, 1195-1204;Whitaker, et al., Anal. Biochem. 207:267-279 (1992);ならびにHirschberg, et al., Biochemistry 37:10381-10385 (1998)に見いだすことができる。
【0047】
発明の態様
生体物質を標識する方法
一つの局面において、本発明は蛍光色素標識生体物質を調製する方法であって、非標識生体物質を蛍光色素縮合ラクトンまたは開環ラクトン誘導体と、蛍光色素を該生体物質に共有結合させ、蛍光色素標識生体物質を形成するのに十分な条件下で接触させる段階を含む方法を提供する。本明細書において用いられる「蛍光色素縮合ラクトンおよび開環ラクトン誘導体」またはより単純に「ラクトンおよび開環ラクトン色素」なる用語は、色素骨格に結合した縮合5、6または7員ラクトンを有する(例えば、2つの炭素原子および1つの酸素を色素と共有する)本質的に任意の蛍光色素またはその開環類縁体を意味する。以下のほとんどの場合に、6員ラクトンであるラクトンが例示されるが、本発明はそのように限定されるものではない。
【0048】
前述のとおり、本発明は核酸(ヌクレオチド、ヌクレオシド、DNA、RNA、PNA、ロックされた核酸、オリゴヌクレオチドなどを含む)、ペプチドまたはタンパク質、オリゴ糖、糖化タンパク質、および他の生体物質の標識において広く適用される。加えて、核酸は修飾塩基(例えば、5-置換ピリミジン、3-置換プリン、置換デアザプリン、置換ピラゾロ[3,4-d]ピリミジンなど)を含みうる。例えば、米国特許第6,452,348号および第6,660,845号を参照されたい。本発明は、副溝結合剤、挿入剤、架橋基などの結合基を有するオリゴヌクレオチドおよび修飾オリゴヌクレオチドの標識においても利用される。
【0049】
ラクトンおよび開環ラクトン色素
前述のとおり、本発明は、様々な色素の新しいラクトンおよび開環ラクトン誘導体の調製および使用に広く適用可能である。多くの態様において、ラクトンおよび開環ラクトン誘導体は、以下に例示するとおり、クロマン-2-オン断片(縮合ラクトンまたは開環ラクトン)を形成しうる任意の色素に基づいて調製することができる。窒素含有基質または生体物質とラクトンとの間の反応により開環時に共有結合を形成する。これは、まずラクトンを開環して酸または酸誘導体とし、酸を活性化し、酸、酸誘導体またはラクトンを適当な求核剤と反応させることによる段階的様式で達成してもよい。当然のことながら、当業者であれば本明細書に記載のラクトンおよび開環ラクトン法(例えば、色素に縮合したラクトン環の合成)を、環構造ならびにラクトン環および開環ラクトン環のために利用可能な原子価部位を有する本質的に任意の色素に対して適用しうることを理解するであろう。

【0050】
典型的には、求核剤は窒素求核剤(例えば、アミン、ヒドラジンなど)であり、リガンド(RM)は生体化合物(例えば、核酸、ペプチド、タンパク質など)または蛍光分子を、例えば、別の反応性基、ホスホラミダイト基もしくは固体支持体に結合するために用いる連結基でありうる。
【0051】
前記を考慮して、本発明は生体材料を標識する方法ならびに蛍光色素を連結基、固体支持体または生体材料に結合させるための、下記から選択される式を有する蛍光色素縮合ラクトンおよび開環ラクトン誘導体:

を適当な求核剤と反応させることによるホスホラミダイト試薬または固体支持体試薬を調製する方法を提供する。上式中、R1およびR1'はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオ、(C1-C8)アルコキシ、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立に選択されるメンバーであり;R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびヘテロアリール(C1-C4)アルキルからなる群より独立に選択され;ここでR1、R1'、およびR5からR8のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR1、R1'、およびR5からR8のいずれかのアリールまたはヘテロアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよい。加えて、記号RAおよびRBは一緒になって1つから4つの5または6員環を有する置換または無置換縮合環系を形成する。一つの態様において、化合物は400nmから1200nm、もう一つの態様において、400nmから約850nmの発光波長を有する。
【0052】
他の態様において、縮合ラクトンおよび/または開環ラクトン誘導体のいずれかをインサイチューで形成してもよい。
【0053】
本発明はいくつかのクロマン-2-オン色素に対して広く適用されるが、色素の特定の態様の概略を以下に記載する。
【0054】
A. キサンテン(フルオレセインおよびロードル)
本発明の方法は、キサンテン縮合ラクトン色素またはそれらのラクトン開環誘導体を用いて実施することができ、ここでラクトン色素は下記の式を有する:

式中、A1はO、N-Zまたは+NZ2であり、ここでZはそれぞれ独立にHもしくは(C1-C8)アルキルであるか、あるいは任意にR2もしくはR4と一緒になって置換もしくは無置換5もしくは6員環を形成するか、またはR2およびR4のそれぞれと一緒になって2つの置換もしくは無置換縮合6員環を形成し;R1、R1'、R2、R3およびR4はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオ、(C1-C8)アルコキシ、アリールおよびヘテロアリールから独立に選択され;R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびヘテロアリール(C1-C4)アルキルからなる群より独立に選択され;ここでR1'またはR1からR8のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR1'およびR1からR8のいずれかのアリールまたはヘテロアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよく;R0はハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、下記の式を有するアリールまたはヘテロアリールであり:

式中、X1、X2、X3、X4およびX5はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)アルキルチオ、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択される。加えて、X1からX5のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシでさらに置換されうる。任意に、任意の2つの隣接する置換基X1からX5は一緒になって、ハロゲンシアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシから選択される1つから4つの置換基でさらに置換されていてもよい縮合芳香環を形成しうる。
【0055】
特定の態様において、式I(ならびに本明細書の他の式)のラクトン環および開環ラクトン色素は異性体または互変異性体(例えば、R0が置換フェニルまたはピリジンであり、かつX5がCO2HまたはSO3Hである化合物から生じるスピロラクトンおよび開環ラクトン)で存在することになり、本発明に含まれる。

【0056】
互変異性体がR2とR4との間に位置するヒドロキシ(またはアミノ)基を有する場合、保護型も本発明により企図される。したがって、A1がO、N-Zまたは+NZ2として提供され、ここでZはそれぞれ独立にHまたは(C1-C8)アルキルである、本発明の式のために。本発明は、AがOHまたは保護ヒドロキシ基、およびNH2または保護アミノ基である化合物をさらに含む。
【0057】
したがって、一つの態様群において、キサンテン縮合ラクトンおよび開環ラクトン色素は、縮合ラクトン色素が下記の式の一つを有するものから選択される、フルオレセイン縮合ラクトンおよび開環ラクトン色素である:

式中、Aはヒドロキシ、アミノ、保護ヒドロキシもしくは保護アミノであるか、あるいは任意にR2もしくはR4と一緒になって5もしくは6員環を形成するか、またはR2およびR4のそれぞれと一緒になって2つの縮合6員環を形成し;R1'、R1、R2、R3およびR4はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオおよび(C1-C8)アルコキシから独立に選択され;R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリールおよびアリール(C1-C4)アルキルから独立に選択され;ここでR1からR8のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR5からR8のいずれかのアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよい。他の態様においては、Aがヒドロキシまたは保護ヒドロキシである式IaおよびIbの化合物である。保護基の例は(C2-C20)アルカン酸由来のアシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、イソブチリルなど)である。さらに他の態様は、R1'およびR1からR8がH、ハロゲン、CF3およびシアノから独立に選択される上式を有する化合物である。
【0058】
本発明の縮合ラクトンおよび開環ラクトンフルオレセイン色素は一般に下記のスキームに従って調製することができ、ここで適当に置換したレゾルシノール(i)を置換ベンゾフェノン(ii)と反応させ、次いでラクトン化して所望の化合物(iii)を生成する。特定の置換基は下式に含まれない。より詳細な反応スキームおよびこの群の特定のラクトンおよび開環ラクトン色素の表を「ラクトンおよび開環ラクトン色素の一般合成」なる標題の項に提供する。
【0059】
反応スキーム1

【0060】
B. ベンゾ[a]キサンテン
本発明の方法において有用なベンゾ[a]キサンテン縮合ラクトン色素またはそれらのラクトン開環誘導体を提供し、ここでラクトン色素は下記の式を有する:

式中、A1はO、N-Zまたは+NZ2であり、ここでZはそれぞれ独立にHもしくは(C1-C8)アルキルであるか、または任意にR4と一緒になって置換もしくは無置換5もしくは6員環を形成し;R1、R1'、およびR4はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオ、(C1-C8)アルコキシ、アリールおよびヘテロアリールから独立に選択され;下付き文字nは0から4であり、かつX0はH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)アルキルチオ、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、アリール、ヘテロアリール、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択され;R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびヘテロアリール(C1-C4)アルキルからなる群より独立に選択され;ここでX0、R1'またはR1からR8のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつX0、R1'およびR1からR8のいずれかのアリールまたはヘテロアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよく;R0はハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニルおよび下記の式を有するアリールまたはヘテロアリールである。

【0061】
式II、ならびに上のアリールおよびへテロアリール置換基において、X1、X2、X3、X4およびX5はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)アルキルチオ、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択される。加えて、X1からX5のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシでさらに置換されうる。任意に、任意の2つの隣接する置換基X1からX5、または2つの隣接X0基は一緒になって、ハロゲンシアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシから選択される1つから4つの置換基でさらに置換されていてもよい縮合芳香環を形成しうる。下付き文字nは0から4の整数である。
【0062】
一つの態様群において、縮合ラクトンベンゾ[a]キサンテン色素またはそれらのラクトン開環誘導体は、縮合ラクトン色素が下記の式を有するものである:

式中、Aはヒドロキシもしくは保護ヒドロキシまたはアミノもしくは保護アミノであり;X0およびnはそれぞれ式IIに関して与えた意味を有し、かつX1、X2、X3、X4、R1、R1'、R4、およびR5からR8はそれぞれ式Iに関して上で示した意味を有する。他の態様はAがヒドロキシまたは保護ヒドロキシである式IIaおよびIIcの化合物である。保護基の例は(C2-C20)アルカン酸由来のアシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、イソブチリルなど)である。もう一つの態様において、R1'およびR1からR8はH、ハロゲン、CF3およびシアノから独立に選択され;かつX0はそれぞれH、ハロゲン、CF3またはシアノである。他の態様において、X1からX4の2つは一緒になって6員芳香環を形成する。他の態様において、IIaおよびIIcの化合物において、R5からR8はそれぞれHである。他の態様において、Aはヒドロキシまたは保護ヒドロキシであり;R5からR8はそれぞれHであり;X1からX4はそれぞれH、FまたはClであり;かつR1、R1'、およびR4はそれぞれH、F、Cl、CNおよびCF3から独立に選択される。
【0063】
一般に、これらの化合物は反応スキーム2の方法に従って調製することができる。
【0064】
反応スキーム2

【0065】
C. ベンゾ[b]キサンテン
本発明において有用なさらに他の化合物は、縮合ラクトンベンゾ[b]キサンテンまたはそれらのラクトン開環誘導体であって、ここでラクトン色素の構造は下記の式(III)および(III')で示す。

【0066】
これらの式それぞれにおいて、A1、R0からR8、X0は式IIに関して前述したとおりであり、下付き文字nは0から3の整数である。任意に、A1は隣接するX0基と一緒になって置換もしくは無置換5もしくは6員環を形成することもでき、または2つの隣接するX0基と一緒になって2つの置換もしくは無置換縮合6員環を形成することもできる。
【0067】
特定の縮合ラクトンベンゾ[b]キサンテンまたはそれらのラクトン開環誘導体を提供し、ここでラクトン色素は下記の式(IIIa)から(IIId)を有する:

式中、Aはヒドロキシ、アミノ、保護ヒドロキシ、保護アミノであり;R1'、R1、R3およびR4はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオおよび(C1-C8)アルコキシから独立に選択され;R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリールおよびアリール(C1-C4)アルキルから独立に選択され;ここでR1'、およびR1からR8のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR5からR8のいずれかのアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよい。残りの置換基(X0、X1からX4)は一般式IIIおよびIII'に関して示した意味を有する。
【0068】
他の態様において、本発明の方法は、Aがヒドロキシまたは保護ヒドロキシである式IIIaおよびIIIbの化合物を用いる。保護基の例は(C2-C20)アルカン酸由来のアシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、イソブチリルなど)である。さらに他の態様は、R1'およびR1からR8がH、ハロゲン、CF3およびシアノから独立に選択される式IIIaまたはIIIbの化合物である。もう一つの態様において、X0はそれぞれH、ハロゲン、CF3またはシアノである。他の態様において、X1からX4の2つは一緒になって6員芳香環または芳香族複素環を形成する。他の特定の態様において、IIIaおよびIIIbの化合物において、R5からR8はそれぞれHである。
【0069】
D. ベンゾ[c]キサンテン
本発明の方法において有用なさらに他の縮合ラクトンベンゾ[c]キサンテンまたはそれらのラクトン開環誘導体を提供し、ここでラクトン色素は下記の式を有する:

式中、下付き文字nは0から4であり、A1はO、N-Zまたは+NZ2であり、ここでZはそれぞれ独立にHもしくは(C1-C8)アルキルであるか、あるいは任意に隣接するX0基と一緒になって置換もしくは無置換5もしくは6員芳香環を形成するか、または2つの隣接するX0基と一緒になって2つの置換もしくは無置換縮合芳香族6員環を形成することができ;ハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシから選択される1つから4つの置換基でさらに置換されていてもよく;R1、R1'、R2、R3およびR4はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオ、(C1-C8)アルコキシ、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立に選択され;下付き文字nは0から4であり、かつX0はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)アルキルチオ、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、アリール、ヘテロアリール、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択され;R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびヘテロアリール(C1-C4)アルキルからなる群より独立に選択され;ここでR5からR8のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルおよびヒドロキシからなる群より独立に選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよく;かつR5からR8のいずれかのアリールまたはヘテロアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよく;R0はハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニルおよび下記の式を有するアリールまたはヘテロアリールからなる群より選択されるメンバーである:

式中、X1、X2、X3、X4およびX5はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)アルキルチオ、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択される。加えて、X1からX5のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシでさらに置換されうる。
【0070】
一つの態様において、A1はOである。
【0071】
一つの態様において、X0は電子吸引基である。もう一つの態様において、電子吸引基はハロゲン、シアノ、(C1-C6)ハロアルキルならびにスルホニルオキシおよびカルボキシからなる群より選択される。もう一つの態様において、電子吸引基はハロゲン、シアノおよびCF3からなる群より選択される。もう一つの態様において、電子吸引基はハロゲンである。もう一つの態様において、X0はClである。
【0072】
もう一つの態様において、R1'およびR1からR8はHである。
【0073】
もう一つの態様において、X1からX5はそれぞれH、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択される。他の態様において、X2からX5の2つは一緒になって6員芳香環または芳香族複素環を形成する。
【0074】
もう一つの態様において、本発明は下記の式(IVA)および(IV'A)の開環ラクトン色素を提供する:

式中、Aはヒドロキシ、アミノ、保護ヒドロキシまたは保護アミノであり;X0は電子吸引基であり;R1、R1'、R2、R3およびR4はHであり;R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびヘテロアリール(C1-C4)アルキルからなる群より独立に選択され;ここでR5からR8のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシからなる群より独立に選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよく;かつR5からR8のいずれかのアリールまたはヘテロアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよく;R0-X1部分は下記の式を有するアリールまたはヘテロアリール基であり:

X1は-CO2-または-SO2O-であり;
X2、X3、X4およびX5はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)アルキルチオ、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択されるか;または任意に、任意の2つの隣接する置換基X2からX5は一緒になって縮合アリール環を形成することができ;ここでX2からX5のいずれかのアルキルまたはアリール部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルヒドロキシ、(C1-C6)アルキルおよび(C1-C6)アルキルチオでさらに置換されることができ;かつ波線は分子の残部への結合点を示す。
【0075】
一つの態様において、Aはヒドロキシまたは保護ヒドロキシである。もう一つの態様において、Aはヒドロキシである。
【0076】
もう一つの態様において、X0はハロゲン、シアノ、(C1-C6)ハロアルキルならびにスルホニルオキシおよびカルボキシからなる群より選択される。もう一つの態様において、X0はハロゲン、シアノおよびCF3からなる群より選択される。もう一つの態様において、X0はハロゲンである。もう一つの態様において、X0はClである。
【0077】
もう一つの態様において、R1'およびR1からR8はHである。
【0078】
特に、縮合ラクトンベンゾ[b]キサンテンまたはそれらのラクトン開環誘導体を提供し、ここでラクトン色素は下記の式(IVa)から(IVd)を有する:

式中、Aはヒドロキシ、アミノ、保護ヒドロキシまたは保護アミノであり;R1'、R1、R2、R3およびR4はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオおよび(C1-C8)アルコキシから独立に選択され;R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリールおよびアリール(C1-C4)アルキルから独立に選択され;ここでR1'、およびR1からR8のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR5からR8のいずれかのアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよい。残りの置換基(X0、X1からX4)は上の一般式に関して示した意味を有する。
【0079】
一つの態様において、X0は電子吸引基である。もう一つの態様において、X0はハロゲン、シアノ、(C1-C6)ハロアルキルならびにスルホニルオキシおよびカルボキシからなる群より選択される。もう一つの態様において、X0はハロゲン、シアノおよびCF3からなる群より選択される。もう一つの態様において、X0はハロゲンである。もう一つの態様において、X0はClである。
【0080】
もう一つの態様において、R1'およびR1からR8はH、ハロゲン、CF3およびシアノから独立に選択される。もう一つの態様において、R1'およびR1からR8はHである。
【0081】
もう一つの態様において、X1からX5はそれぞれHである。もう一つの態様において、X2からX5の2つは一緒になって6員芳香環または芳香族複素環を形成する。
【0082】
他の態様において、本発明の方法はAがヒドロキシまたは保護ヒドロキシである式IVaまたはIVbの化合物を用いる。保護基の例は(C2-C20)アルカン酸由来のアシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、イソブチリルなど)である。もう一つの態様において、Aはヒドロキシである。さらに他の態様は、R1'およびR1からR8がH、ハロゲン、CF3およびシアノから独立に選択される式IVaまたはIVbの化合物である。もう一つの態様において、X0はそれぞれH、ハロゲン、CF3またはシアノである。他の態様において、X1からX4の2つは一緒になって6員芳香環または芳香族複素環を形成する。他の特定の態様において、IVaおよびIVbの化合物のR5からR8はそれぞれHである。
【0083】
さらなる態様において、化合物は下記の式を有する。

【0084】
一つの態様において、Aはヒドロキシまたは保護ヒドロキシである。
【0085】
一つの態様において、X0はハロゲン、(C1-C8)アルコキシ、シアノまたはCFである。一つの態様において、X0はハロゲン、シアノまたはCF3である。一つの態様において、X0はハロゲンである。
【0086】
さらなる態様において、化合物は下記の縮合3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン酸である。

【0087】
一つの態様において、X0はハロゲンである。
【0088】
さらなる態様において、化合物は下記の縮合3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン酸である。

【0089】
E. フェノキサジン
さらにもう一つの態様群において、縮合ラクトン色素またはそれらのラクトン開環誘導体はラクトン色素が下記の式(V)および(V')で表されるものである:

式中、記号A1、およびR1からR8は式II、IIIおよびIVの化合物に関して上で示した意味を有する。任意に、A1はR2もしくはR4と一緒になって置換もしくは無置換5もしくは6員環を形成することもでき、またはR2およびR4のそれぞれと一緒になって2つの置換もしくは無置換縮合6員環を形成することもできる。加えて、R9はR1'について示した基のいずれかでありうる。
【0090】
特定の態様において、R1、R2、R3、R4およびR9はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオおよび(C1-C8)アルコキシから独立に選択され;R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリールおよびアリール(C1-C4)アルキルから独立に選択され;ここでR1からR9のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR5からR8のいずれかのアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよい。さらに他の態様は、R1からR9がH、ハロゲン、CF3およびシアノから独立に選択される式Vの化合物である。他の特定の態様において、VおよびV'の化合物のR5からR8はそれぞれHであり、かつR1からR4およびR9は水素およびハロゲン、もう一つの態様において、H、ClおよびFからなる群より独立に選択される。
【0091】
本発明の縮合ラクトンおよび開環ラクトンフェノキサジン色素は一般に、下記のスキームに従って調製することができ、ここで適当に置換したニトロソレゾルシノール(vii)を適当に置換したジヒドロキシヒドロケイ皮酸(viii)と反応させ、次いでラクトン化して所望の化合物(ix)を生成する。特定の置換基は下式に含まれない。より詳細な反応スキームおよびこの群の特定のラクトンおよび開環ラクトン色素の表を「ラクトンおよび開環ラクトン色素の一般合成」なる標題の項に提供する。
【0092】
反応スキーム3

【0093】
F. ベンゾ[a]フェノキサジン
関連する態様群において、縮合ラクトンおよび開環ラクトン色素はベンゾ[a]フェノキサジン色素に基づいており、ここでラクトン色素は下記の式(VI)および(VI')で表される:

式中、A1はO、N-Zまたは+NZ2であり、ここでZはそれぞれ独立にHもしくは(C1-C8)アルキルであるか、または任意にR4と一緒になって置換もしくは無置換5もしくは6員環を形成し;R1、R4およびR9はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオ、(C1-C8)アルコキシ、アリールおよびヘテロアリールから独立に選択され;R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびヘテロアリール(C1-C4)アルキルからなる群より独立に選択され;ここでR1またはR4からR9のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR1およびR4からR9のいずれかのアリールまたはヘテロアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよく;X0はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)アルキルチオ、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、アリール、ヘテロアリール、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択される。加えて、任意のX0のアルキルまたはアリール部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシでさらに置換されうる。任意に、任意の2つの隣接X0基は一緒になって、ハロゲンシアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシから選択される1つから4つの置換基でさらに置換されていてもよい縮合芳香環または芳香族複素環を形成しうる。下付き文字nは0から4の整数である。
【0094】
G. ベンゾ[b]フェノキサジン
本発明の方法において有用なさらに他の化合物およびそれらのラクトン開環誘導体はラクトン色素が下記の式(VII)または(VII')を有するものである:

式中、A1はO、N-Zまたは+NZ2であり、ここでZはそれぞれ独立にHもしくは(C1-C8)アルキルであるか、あるいは隣接するX0基と一緒になって置換もしくは無置換5もしくは6員環を形成するか、または2つの隣接するX0基と一緒になって2つの置換もしくは無置換縮合6員環を形成し;R1、R3、R4およびR9はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオ、(C1-C8)アルコキシ、アリールおよびヘテロアリールから独立に選択され;R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびヘテロアリール(C1-C4)アルキルからなる群より独立に選択され;ここでR1またはR3からR9のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR1およびR3からR9のいずれかのアリールまたはヘテロアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよく;X0はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)アルキルチオ、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、アリール、ヘテロアリール、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択される。加えて、任意のX0のアルキルまたはアリール部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシでさらに置換されうる。任意に、任意の2つの隣接X0基は一緒になって、ハロゲンシアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシから選択される1つから4つの置換基でさらに置換されていてもよい縮合芳香環または芳香族複素環を形成しうる。下付き文字nは0から3の整数である。
【0095】
H. ベンゾ[c]フェノキサジン
本発明の方法において有用なさらに他の化合物またはそれらのラクトン開環誘導体はラクトン色素が下記の式(VIII)または(VIII')を有するものである:

式中、A1はO、N-Zまたは+NZ2であり、ここでZはそれぞれ独立にHもしくは(C1-C8)アルキルであるか、あるいは隣接するX0基と一緒になって置換もしくは無置換5もしくは6員環を形成するか、または2つの隣接するX0基と一緒になって2つの置換もしくは無置換縮合6員環を形成し;R1、R2、R3およびR9はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオ、(C1-C8)アルコキシ、アリールおよびヘテロアリールから独立に選択され;R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびヘテロアリール(C1-C4)アルキルからなる群より独立に選択され;ここでR1、R2、R3またはR5からR9のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR1、R2、R3またはR5からR9のいずれかのアリールまたはヘテロアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよく;X0はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)アルキルチオ、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、アリール、ヘテロアリール、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択される。加えて、任意のX0のアルキルまたはアリール部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシでさらに置換されうる。任意に、任意の2つの隣接X0基は一緒になって、ハロゲンシアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシから選択される1つから4つの置換基でさらに置換されていてもよい縮合芳香環または芳香族複素環を形成しうる。下付き文字nは0から3の整数である。
【0096】
I. クマリンおよびベンゾクマリン
本発明の方法はクマリンまたはベンゾクマリン縮合ラクトンおよび開環ラクトン色素を用いて実施することができる。
【0097】
本発明において有用なクマリン縮合ラクトンおよび開環ラクトン色素はラクトン色素が下記の式を有するものである:

式中、R1、R1'、R2およびR3はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオ、(C1-C8)アルコキシ、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立に選択され;R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびヘテロアリール(C1-C4)アルキルからなる群より独立に選択され;ここでR1'またはR1からR8のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジアルキルアミノ、アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR1'およびR1からR8のいずれかのアリールまたはヘテロアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよい。特定の態様において、R2およびR3は一緒になって縮合芳香環を形成する。記号A1はO、N-Zまたは+NZ2であり、ここでZはそれぞれ独立にHまたは(C1-C8)アルキルである。
【0098】
特定の態様において、R2およびR3はハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、および下記の式を有するアリールまたはヘテロアリールから独立に選択される:

式中、X1、X2、X3、X4およびX5はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)アルキルチオ、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択される。加えて、X1からX5のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジアルキルアミノ、アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシでさらに置換されうる。任意に、任意の2つの隣接する置換基X1からX5は一緒になって、ハロゲンシアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシから選択される1つから4つの置換基でさらに置換されていてもよい縮合芳香環を形成しうる。
【0099】
ベンゾクマリン系列の色素は式IXのものであり、ここでR2およびR3は一緒になって、ハロゲンシアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシから選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよい縮合ベンゼン環を形成する。
【0100】
特定のクマリン縮合ラクトンおよび開環ラクトン色素は反応スキーム4に概略を示すとおりに調製することができる。
【0101】
反応スキーム4

【0102】
ラクトンおよび開環ラクトン色素の一般合成
前述のラクトン色素は、下記の3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン酸部分で例示するとおり、開環色素から直接合成することができる。

【0103】
縮合ラクトンおよび開環ラクトン色素の多くは、当業者には容易に入手可能な一般的中間体から調製することができる。特に有用な中間体の2つのグループは2-置換1,3-ジヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルおよび異性体の4-置換2,6-ジヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルである。これらの化合物は以下に概略を示すとおりに調製することができる。
【0104】
2-置換1,3-ジヒドロキシフェニルプロピオン酸エステル5a〜cを、2-クロロ-1,3-ジメトキシベンゼン(1a)(Kovacic, P.; Kurz, M.E. J. Org. Chem. 1966, 31, 2459-2467;Wada, M.; Wakamori, H.; Hirawa, A.; Erabi, T. Bull. Chem. Soc. Jpn., 1992, 65(5), 1389-1391)または2-フルオロ-1,3-ジメトキシベンゼン(1b)(W.-C. Sun et al. J.Org.Chem. 1997, 62, 6469-6475)または2-フェニル-1,3-ジメトキシベンゼン(1c)(米国特許第6,221,604号)のいずれかから出発し、4段階(反応スキーム5A)で高い全収率で合成した。TiCl4存在下、α,α-ジクロロメチルメチルエーテルでホルミル化して、アルデヒド2を高収率(95%)で得た。これらの化合物を触媒量のピペリジン存在下、マロン酸との反応により、ケイ皮酸3へと定量的に変換した。接触水添(10%Pd/C、40psi)により酸4を95%を越える収率で得た。酢酸/臭化水素酸水溶液混合物を用いてのメトキシ基の脱保護と、続くカルボキシ基のエステル化(メタノール/HClガス)により、所望の2-置換1,3-ジヒドロキシフェニルプロピオン酸メチル5を得た。化合物5dは、Blickenstaff, R.T., et al. (Tetrahedron, 24: 2495-2498 (1968))に従い、別の合成経路で調製した。
【0105】
反応スキーム5
A. 2-置換1,3-ジヒドロキシフェニルプロピオン酸メチルの調製

B. 4-置換2,6-ジヒドロキシフェニルプロピオン酸メチルの調製

【0106】
異性体の2,6-ジヒドロキシフェニルプロピオン酸メチル30および31を、上に示すとおり3-(2,6-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸から出発して合成した(Mitoshi K. et al. Syn.Lett., 12:1472-1474(1997))。
【0107】
ジヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルは、クロマノン色素前駆体のいくつかのクラスの合成に用いられている。本明細書における合成アプローチは、多用途の置換ジヒドロキシフェニルプロピオン酸メチルを色素構築用の公知の合成経路と共に利用することに基づいている。中間体の適用は下記のクラスに限定されるものではなく、任意のレゾルシノールに基づく色素化学に広く適用されている。さらに、前述の中間体は様々な他の当技術分野において認められた方法を用いて調製することができる。
【0108】
クマリンラクトンおよび開環ラクトン色素合成
レゾルシノール類縁体5をジケトンと反応させて8-ハロクマリン6を高収率で得た。エステル基の加水分解により遊離酸7を生じ、これをトリフルオロ酢酸ペンタフルオロフェニル(PFP-TFA)存在下でラクトン化して、クロマノン8を得た。反応スキーム6を参照されたい。
【0109】
反応スキーム6
8-置換クマリンラクトンおよび開環ラクトンの合成

【0110】
フェノキサジンラクトンおよび開環ラクトン色素合成
フェノキサジンラクトンおよび開環ラクトン色素を、一般には反応スキーム3に概略を示すとおり、より具体的には下記の反応スキーム7に示すとおりに調製することができる。
【0111】
反応スキーム7
置換フェノキサジンラクトンおよび開環ラクトンの合成

【0112】
4-ニトロソレゾルシノール誘導体9(市販品または最先端技術に従って合成)および5を、MnO2存在下、溶媒としてメタノールを用いて反応させ、十分に純粋なN-オキシド10の結晶性沈澱を満足できる収率(20〜40%)で得た。エステル官能基をNaOHで加水分解し、続いてN-オキシド基を亜ジチオン酸ナトリウム処理により還元して、レゾルフィン誘導体11を得た。開環ラクトン11をPFP/TFAで処理して、ラクトン12の形成を触媒した。
【0113】
キサンテン色素ラクトンおよび開環ラクトン合成
不斉キサンテン色素の合成(反応スキーム8a)を2段階で達成した。第一段階で、レゾルシノール類縁体5をAlCl3存在下、フタル酸無水物13によりフリーデル-クラフツのアシル化にかけて、ベンゾフェノン14を良好から優秀な収率で調製した。第二段階で、ケトン14をレゾルシノール15と、溶媒としてメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸(プラス触媒量のメタンスルホン酸)のいずれかを用いて反応させた。溶媒に応じて、エステル16または遊離酸17のいずれかを得た。酸17をPFP-TFAで処理してラクトン18に変換した。
【0114】
反応スキーム8a
キサンテン色素ラクトンおよび開環ラクトンの合成

【0115】
不斉4,7-無置換キサンテン(X1およびX4がHである、スキーム8aの化合物)の別の合成をスキーム8bに提供する。2段階縮合法をキサンテン色素の4,7-無置換クラスのために例示するが、当業者であればこの方法はそのように限定されるものではなく、多くのキサンテン色素のより効率的調製に適用しうることを理解するであろう。
【0116】
スキーム8aを用いての不斉4,7-無置換の合成(X1およびX4=Hスキーム8a)は、17c(X1-X4=H)などの化合物を提供する。
【0117】
4,7-無置換不斉キサンテン色素の合成のために別の合成法を用いた(スキーム8b)。ベンゾフェノン14とレゾルシノール15との間の反応は、触媒としてのメタンスルホン酸および溶媒としてのトリフルオロ酢酸存在下、低温(0〜20℃)で行うことができる。これらの条件下では、所望のトリフェニルメタン中間体だけが形成され、これは無色スピロラクトン32として単離することができる(スキーム8b)。続く環化段階は水性溶液中、20〜60℃の中性から弱塩基性条件下で実施することができる。酸17は酸性化により沈澱させることができる。このアプローチにより、優れた収率での4,7-無置換不斉フルオレセインの調製が可能となる。
【0118】
この別法は非常に緩和な条件下(例えば、約0〜20℃の温度)で不斉キサンテン色素を合成する普遍的様式を提供し、したがって、より不安定な官能基導入のために有用である。この方法は通常のアプローチでは得難い不斉4,7-無置換キサンテンの調製に特に有用である。
【0119】
反応スキーム8b
2段階縮合法を用いての不斉4,7-無置換フルオレセインの合成

【0120】
反応スキーム8aおよび8bに示す方法に従って合成した化合物16および17を、nmで示す吸収極大(Abs)、発光極大(Em)およびストークスシフト(St)と共に表1に列挙する。
【0121】
(表1)

蛍光および吸光スペクトルは0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)中で記録した。
【0122】
反応スキーム8cは、異性体キサンテン色素(上の式Ibのラクトンおよび開環ラクトン色素の調製を例示する。
【0123】
反応スキーム8c

【0124】
ベンゾ[a]-およびベンゾ[c]キサンテン色素ラクトンおよび開環ラクトン合成
ベンゾ[a]およびベンゾ[c]キサンテン色素19(反応スキーム9)および23(反応スキーム10)を、キサンテン色素(反応スキーム8)と同様に、ベンゾフェノン14の1,3-または1,6-ジヒドロキシナフタレンいずれかとの縮合により合成した。エステル19を加水分解して酸20とし、次いでラクトンおよび開環ラクトン21に変換した。
【0125】
反応スキーム9
ベンゾ[a]キサンテン色素ラクトンおよび開環ラクトンの合成

【0126】
このスキームに従って調製した特定の化合物を、吸収、発光およびストークスシフトの波長と共に表2に提供する。
【0127】
(表2)反応スキーム9により合成した化合物の物理的特性

【0128】
反応スキーム10
ベンゾ[c]キサンテン色素ラクトンおよび開環ラクトン合成の例


【0129】
上のスキームは、ベンゾ[c]キサンテン-プロピオン酸色素前駆体の、置換ベンゾフェノンおよびナフタレン-1,6-ジオールからの合成を例示している。
【0130】
前記を考慮して、本発明は、一つの態様において、蛍光ベンゾ[c]キサンテン-プロピオン酸色素前駆体を調製する方法であって、ナフタレン-1,6-ジオール類縁体を置換ベンゾフェノンと接触させて、中間体蛍光ベンゾ[c]キサンテン-プロピオン酸色素を形成する段階を含む方法を提供する。
【0131】
生理的pHに近いpKaを有するベンゾ[c]キサンテンが米国特許第4,945,171号に開示されている。他のキサンテン色素とは異なり、ベンゾ[c]キサンテンは媒質のpHに応じて異なる特徴的波長の吸収および蛍光スペクトルを示す(例えば、SNARF(登録商標)-1色素、Haugland, The Handbook, Tenth Edition, Invitrogen, Carlsbad, CA, page 942を参照されたく、この化合物について異なるpHでの異なる吸収極大、および対応する異なる波長での異なる発光極大が示されている。
【0132】
本発明のベンゾ[c]キサンテン色素は類似のpH依存性発光スペクトルを示したが、pKaは典型的に生理的pHよりも低い。図1はpH4から8.0の範囲の緩衝液中、ベンゾ[c]キサンテン類縁体49のpH依存性吸収スペクトルを例示している。スペクトルは、a)トリスpH8.0、b)トリスpH7.5、c)リン酸pH7.0、d)[2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)pH6.0、e)酢酸pH5.0およびf)ギ酸アンモニウムpH4.0の0.05M緩衝液中で測定した。下記の構造で示す化合物について、類似のpH依存性吸収が観察された:

式中、AはOHであり、X0およびR1はClであり;X4およびX5はHまたはFであり;かつX2およびX3はH、FまたはClである。したがって、一つの態様において、本発明は本明細書に記載の構造を有するベンゾ[c]キサンテン色素を提供する。
【0133】
ラクトンおよび開環ラクトン色素を用いてのアミノ末端オリゴヌクレオチドの誘導体化
クロマノン色素前駆体のアミン誘導体化剤としての有用性を評価するために、アミノヘキシル末端オリゴヌクレオチド(ODN)の合成後修飾を試験した。発色団構造および脱離フェノールヒドロキシ基の酸性度の両方が異なる、4つのクラスのクロマノンを用いた。試薬とアミノヘキシル修飾ODNのトリエチルアンモニウム塩との間の反応を有機溶媒(DMSO)中で行った。小過剰(2〜5×)モルの反応性色素により、基本的にアミン含有リガンドの定量的標識(90+%)が達成された。結合体をゲル電気泳動および逆相HPLCで精製した。結合体の吸収および蛍光スペクトルの分析(表3)により、アミン含有リガンドへの色素取り込み成功および予想されるスペクトル特性が示された。
【0134】
反応スキーム11
ラクトンおよび開環ラクトン色素を用いての様々な色素によるアミノヘキシル-オクタチミジレートの誘導体化

【0135】
(表3)色素修飾オクタチミジレートの吸収および蛍光特性

*消衰係数は遊離色素の吸光スペクトルを対応する色素標識オクタチミジレートのスペクトルから差し引くことにより推定した。推定値は260nmの吸光度はT8(260nmのモル消衰係数=65000)および色素吸光度の合計であると仮定している。
**シグナル強度は対応する吸収極大(スリット2.5nm)での励起による発光極大(スリット2.5nm)で測定した相対モル蛍光として評価した。蛍光スペクトルは0.15Mホウ酸緩衝液pH8.5中、LS-50B(Perkin-Elmer)ルミネセンス分光光度計で記録した。
【0136】
前述の広く適用可能な合成法を考慮して、本発明は下記の式を有する縮合ラクトンおよび開環ラクトン色素をさらに提供する。

【0137】
上式中、R1およびR1'はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオ、(C1-C8)アルコキシ、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立に選択されるメンバーであり;R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびヘテロアリール(C1-C4)アルキルからなる群より独立に選択され;ここでR1、R1'、またはR5からR8のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR1、R1'、およびR5からR8のいずれかのアリールまたはヘテロアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよい。加えて、記号RAおよびRBは一緒になって1つから4つの5または6員環を有する置換または無置換縮合環系を形成する。一つの態様において、化合物は400nmから1200nm、もう一つの態様において、400nmから約850nmの発光波長を有する。
【0138】
縮合ラクトン色素の他の態様は、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IXまたはXのいずれかで示されるもの、ならびに式Ia、Ib、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVaおよびIVbの縮合ラクトンまたはそれらの開環ラクトンである。特定の縮合ラクトン色素はこれらの式それぞれに示される色素またはそれらの開環誘導体である。さらに他の態様は、本明細書において反応スキーム1から11のいずれかで調製し、詳細を記載する、縮合ラクトンおよび開環ラクトン色素である。
【0139】
色素試薬
前述の縮合ラクトンおよび開環ラクトン色素は生体材料を直接標識するために用いることができ、または本明細書に記載の方法、ならびに他の標識法において有用ないくつかの色素試薬を調製するために用いることもできる。
【0140】
下記のスキームは「色素ラクトンおよび開環ラクトン」(ベンゼン縮合ラクトンおよび開環ラクトンと略記)のアミノリガンドによる開環、およびプロリノールに基づく連結基による開環の両方を例示しており、後者はさらに合成してホスホラミダイト試薬または固体支持体結合試薬を調製する。

【0141】
前記を考慮して、本発明は蛍光色素標識ホスホラミダイト試薬を調製する方法であって:
(a)蛍光色素縮合ラクトンまたは開環ラクトン誘導体を連結基成分と接触させて、中間体蛍光色素標識連結基を形成する段階;および
(b)該中間体蛍光色素標識連結基をホスホラミダイト部分と、ホスホラミダイト部分を該蛍光色素標識連結基に共有結合させるのに十分な条件下で接触させて、該蛍光色素標識ホスホラミダイト試薬を形成する段階
を含む方法をさらに提供する。他の態様において、蛍光色素縮合ラクトン誘導体はI、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、およびIXならびに対応する開環ラクトン誘導体からなる群より選択される式を有する。もう一つの態様において、蛍光色素縮合ラクトン誘導体はIa、Ib、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、VおよびVIならびに対応する開環ラクトン誘導体からなる群より選択される式を有する。他の態様において、連結基成分はアミノ、ヒドロキシ、ヒドラジノおよびチオールから選択される2つの反応性官能基を含み、直鎖もしくは環状のいずれか、または直鎖および環状の組み合わせである。さらに他の態様は、連結基が(C2-C20)アルキレンまたは(C2-C20)ヘテロアルキレン基を含む態様である。関連する態様において、連結基は環状で、かつ5員複素環を含み、もう一つの態様において、連結基はプロリノールリンカーである。
【0142】
これらのホスホラミダイト試薬を調製しうる便宜、および固体支持体結合色素試薬の調製に対するこの型の方法のさらなる適用を考慮して、本発明は、もう一つの局面において、下記から選択される式で表される色素試薬を提供する。

【0143】
上式中、R1およびR1'はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオ、(C1-C8)アルコキシ、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立に選択されるメンバーであり;R5およびR6はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびヘテロアリール(C1-C4)アルキルからなる群より独立に選択され;ここでR1、R1'、R5およびR6のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR1、R1'、R5およびR6のいずれかのアリールまたはヘテロアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよい。加えて、記号RAおよびRBは一緒になって、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシから選択される1つから6つの置換基で置換されていてもよい、1つから4つの5または6員環を有する置換または無置換縮合環系を形成し;RxはHおよびヒドロキシ保護基からなる群より選択され;下付き文字pは1から3の整数であり;WまたはWおよびKは一緒になって二官能性リンカー、三官能性リンカーまたは多官能性リンカーでありうる連結基である(例えば、文献に詳細に記載されている二および三官能性リンカー、ならびに米国特許第5,419,966号の3'-アルキルアミンリンカーおよび米国特許第5,512,667号に記載のプロリノールに基づくリンカーを参照されたく;三および四官能性リンカーは米国特許第5,451,463号、第5,942,610号および第5,696,251号にも記載されており;固相合成で用いるための光切断可能な連結基は米国特許第5,739,386号に記載されており;三官能性リンカーはGlen Research, Sterling, VAからも入手可能である)。加えて、連結基Wは、C、N、O、PおよびSからなる群より選択され、水素原子を除く、可能な原子価を満たす4から50個の原子を有し、かつ隣接するカルボニル基に直接連結した窒素原子をさらに有する、非環状、環状、芳香族またはその組み合わせでありえ;KはH、OH、SH、NH、(C1-C8)アルキル、アリールおよび窒素もしくはヒドロキシ保護基からなる群より選択されるか、または前述のとおりWと一緒になり(いくつかの態様において、Kは孤立電子対であるように);下付き文字nは0または1であり;nが1であるとき、Yは切断可能な連結基であり、Lは固体支持体であり;nが0であるとき、Lはホスホラミダイトまたは反応性官能基である。色素試薬は、いくつかの態様において、400nmから1200nm、もう一つの態様において、400nmから約850nmの発光波長を有する。
【0144】
一つの態様群において、nは1であり、Yは下記からなる群より選択される切断可能な連結基である:

式中、下付き文字qおよびrは独立に1から15の整数であり;Rはそれぞれ独立に(C1-C8)アルキルまたは(C1-C8)アルコキシである。
【0145】
もう一つの態様群において、RA、RBおよびそれぞれが結合している環はクマリン、ベンゾクマリン、キサンテン、ベンゾ[a]キサンテン、ベンゾ[b]キサンテン、ベンゾ[c]キサンテン、フェノキサジン、ベンゾ[a]フェノキサジン、ベンゾ[b]フェノキサジンおよびベンゾ[c]フェノキサジンからなる群より選択される色素を形成する。
【0146】
一つの特定の態様群において、色素試薬は下記の式、およびその互変異性体を有する:

式中、A1はO、N-Zまたは+NZ2であり、ここでZはそれぞれ独立にHまたは(C1-C8)アルキルであり;Rxは保護基であり;R1、R2、R3、R4およびR9はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオ、(C1-C8)アルコキシ、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立に選択され;R5およびR6はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびヘテロアリール(C1-C4)アルキルからなる群より独立に選択され;ここでR1からR6およびR9のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR1からR6およびR9のいずれかのアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよく;任意に、R2はR3と一緒になって、ハロゲンシアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシから選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよい縮合芳香環または芳香族複素環を形成する。文字W、K、YおよびL、ならびに下付き文字pおよびnは、色素試薬に関して上で示した意味をそれらの一般的解釈で有する。
【0147】
前述のこの態様群の範囲内で、色素試薬はもう一つの態様において下記の式を有する。

【0148】
反応スキーム12はクロマノン色素前駆体を用いてのホスホラミダイト試薬の調製を例示する。
【0149】
反応スキーム12
レゾルフィン含有ホスホラミダイトの合成

【0150】
レゾルフィンホスホラミダイト28を12aから2段階で全収率50%で調製した。第一段階で、DMT保護ヒドロキシプロリノール(Fmoc-DMT-ヒドロキシプロリノールから合成)をまずラクトンおよび開環ラクトン12aと効率的に反応させてDMT-ヒドロキシプロリノールレゾルフィン中間体26を得、次いでこれを無水トリメチル酢酸と直接反応させてピバロイル保護中間体27を得た。第二段階で、27の二級ヒドロキシ基を三級アミン存在下、2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホラミダイトを用いてホスフィチル化した。
【0151】
反応スキーム12に概略を示した方法を考慮して、特定の色素試薬はホスホラミダイト部分に直鎖または環状連結基(例えば、アルキレン、ヘテロアルキレン、プロリノール型リンカーなど)を介して結合している保護フェノキサジン色素を有するものである。一つの態様において、下記の式を有する色素試薬である。

【0152】
関連する態様において、本発明は、フェノキサジン部分が以下に例示する保護型で存在するロイコフェノキサジン色素試薬を提供する。

式中、Rx、RyおよびRzはそれぞれ保護基、例えば(C2-C20)アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、t-ブトキシカルボニルなど)であり、残りの特徴は上のフェノキサジン色素試薬について記載したとおりである。
【0153】
もう一つの態様群において、色素試薬はキサンテン色素試薬であり、下記の式、およびその互変異性体で表される:

式中、RxおよびRyは独立に選択された保護基であり;R1'、R1、R2、R3およびR4はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオ、(C1-C8)アルコキシ、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立に選択され;R5およびR6はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびへテロアリール(C1-C4)アルキルからなる群より独立に選択され;ここでR1'およびR1からR6のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR1'およびR1からR6のいずれかのアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよく;任意に、R2はR3と一緒になって、ハロゲンシアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシから選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよい縮合芳香環または芳香族複素環を形成する。文字W、K、YおよびL、ならびに下付き文字pおよびnは、色素試薬に関して上で示した意味をそれらの一般的解釈で有する。
【0154】
もう一つの態様群において、色素試薬はキサンテン色素試薬であり、下記の式、およびその互変異性体で表される:

式中、下付き文字nは0から4であり、X0はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)アルキルチオ、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、アリール、ヘテロアリール、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択され;RxおよびRyは独立にHまたは選択された保護基であり;R1'、R1、R2およびR3はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオ、(C1-C8)アルコキシ、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立に選択され;R5およびR6はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびへテロアリール(C1-C4)アルキルからなる群より独立に選択され;ここでR1'およびR1からR6のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR1'およびR1からR3、R5およびR6のいずれかのアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよく;任意に、R2はR3と一緒になって、ハロゲンシアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシから選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよい縮合芳香環または芳香族複素環を形成し;pは1から3の整数であり;Wは、C、N、O、PおよびSからなる群より選択され、水素原子を除く、可能な原子価を満たす4から50個の原子を有し、かつ隣接するカルボニル基に直接連結した窒素原子をさらに有する、非環状、環状、芳香族またはその組み合わせであり;Kは孤立電子対、H、OH、SH、NH、(C1-C8)アルキル、アリール、アミノ保護基およびヒドロキシ保護基からなる群より選択され、かつLはホスホラミダイト部分、固体支持体および生体物質からなる群より選択されるリガンドであり、ここで生体物質は核酸、ペプチド、タンパク質、アミノ炭水化物、オリゴ糖、グリコシル化タンパク質およびその類縁体からなる群より選択される。
【0155】
反応スキーム13は、キサンテン含有ホスホラミダイト試薬の調製を例示する。当業者であれば、化合物18dはキサンテン系列の他のラクトンおよび開環ラクトン色素(例えば、キサンテン、ベンゾ[a]キサンテン、ベンゾ[b]キサンテン、ベンゾ[c]キサンテン)で置き換えることができ、連結基(5-アミノペンタノール)は本明細書および実施例に記載の他の直鎖または環状連結基で置換しうることを理解するであろう。そのような置換の使用は、本発明によって企図される全範囲のホスホラミダイト試薬を得る方法を提供する。
【0156】
反応スキーム13
キサンテン含有ホスホラミダイトの合成

【0157】
キサンテン含有ホスホラミダイト43を、ラクトン18dから出発してアミダイト28と同様に調製した。しかし、反応スキーム12の合成経路とは対照的に、39の一級ヒドロキシ基を一時的保護DMT基でブロックして40とし、フェノール基の保護中の無水トリメチル酢酸との競合反応を回避した(化合物41参照)。DMT基は10%メタノール/ジクロロメタン中の希トリフルオロ酢酸溶液を用いて41から容易に除去した。得られたジピバロイル中間体42を標準の方法を用いてホスホラミダイト43に変換した。
【0158】
キサンテンに基づく色素試薬の範囲内の一つの態様において、色素試薬は下記の式から選択されるものである。

【0159】
他の試薬はPA-1またはPA-2が下記の色素それぞれに結合しているものである:

式中、色素は保護基(例えば、ピバロイルエステルなど)なしで示しており、波線はPA-1およびPA-2への結合点を示す。
【0160】
より一般には、ホスホラミダイト試薬の一つの表示を下記のとおりに提供する:

式中、RA、RB、R1、R1'およびRxは前述の意味を有し、Rは(C2-C12)アルキレンまたは(C5-C12)ヘテロアルキレン連結基である。
【0161】
関連する態様において、ベンゾ[c]フルオレセインおよび5,6-ジクロロフルオレセイン色素試薬を提供する。より具体的には、これらの試薬は下記の式を有する:

式中、R1、R2、R3およびR4は前述の、特に式Icに関する置換基であり;RzはH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオおよび(C1-C8)アルコキシからなる群より選択される置換基であり;Rz、R1、R2、R3およびR4の少なくとも1つは連結基であるとの追加の特徴を有する。
【0162】
本発明は、色素試薬が、前述のベンゾ[c]フルオレセインおよび5,6-ジクロロフルオレセイン色素試薬などの、結合した色素試薬を有するオリゴヌクレオチドプローブである、生体物質をさらに提供する。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドプローブは直鎖ビーコンアッセイなどのアッセイで用いるための結合した消光剤をさらに含む。さらに他の態様において、オリゴヌクレオチドプローブは結合した副溝結合剤を有する。様々な消光剤および副溝結合剤が、それらのオリゴヌクレオチドプローブへの結合法と共に、当技術分野において公知である(例えば、同時係属中の特許出願第09/447,936号;第09/457,616号;および第09/876,830号参照)。一つの態様において、消光剤および副溝結合剤成分は、5,6-ジクロロフルオレセイン色素が3'末端に結合しているオリゴヌクレオチドプローブの5'末端に結合しているか;または、消光剤および副溝結合剤成分は、5,6-ジクロロフルオレセイン色素が5'末端に結合しているオリゴヌクレオチドプローブの3'末端に結合している。
【0163】
標識修飾塩基
本発明は、前述の縮合ラクトンおよび開環ラクトン色素を用いて標識した修飾塩基をさらに提供する。様々な修飾塩基を用いることができ、当業者には公知である。基本的に、反応性官能基側鎖を有する任意のヌクレオチド塩基、ならびにヌクレオチド類縁体(例えば、ピリミジン、プリン、ピラゾロピリミジン、デアザプリンなど)を用いることができる。本発明のこの局面に対するいかなる限定も意図することなく、反応スキーム14はラクトンおよび開環ラクトン色素と2つの修飾塩基それぞれとの反応を例示する。これらの反応は本明細書におけるすべてのラクトンおよび開環ラクトン色素に容易に適合する。
【0164】
クロマノン色素前駆体とアミンリガンドとの反応例を反応スキーム14に示す。アミノ基を含む3-置換ピラゾロ[3,4,d]ピリミジンまたは5-置換ピリミジンを関連するホスホラミダイト試薬に変換することができる。
【0165】
反応スキーム14

【0166】
縮合3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン酸ベンゾ[c]キサンテン(49)の合成を反応スキーム15に示す。n-BuLi存在下での1,6-ジメトキシナフタレン(45)とC2Cl6との反応により、7-クロロ-1,6-ジメトキシナフタレン(47)およびその異性体1-クロロ-2,5-ジメトキシナフタレン(46)を得た。結晶化の後に得た純粋な化合物47をPBr3で脱メチル化して化合物48とし、次いでこれを2-({2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]-3-フェニルフェニル}カルボニル)安息香酸(14I)と反応させて所望の49を得た。
【0167】
反応スキーム15

【0168】
合成中間体
ラクトンおよび開環ラクトン色素を調製する際に有用な特定の中間体も、本発明の一局面として企図される。これらの中間体は下記の式を有する。

【0169】
これらの式中、Rはエステル基(例えば、低級アルキル、アリール、アリールアルキルなど)である。
【0170】
一つの態様において、R1、Ra、RbおよびRcはH、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アリールオキシ、アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロシクリルヘテロアリール、スルホニル、スルファミド、アミノ、アミド、ハロゲン、トリフルオロメチル、ハロメチルからなる群より独立に選択されるか、または任意にR1、Ra、RbおよびRcの2つの隣接するメンバーは一緒になって5〜7員環を形成し;かつR5、R6、R7、R8はH、アルキル、アリール、アリールアルキルからなる群より選択されるか、または任意にR5、R6、R7およびR8の2つは一緒になって5〜7員環を形成する。一つの態様において、RaまたはRcの少なくとも一つはヒドロキシであり、R1またはRbの少なくとも一つは水素である。
【0171】
一つの態様において、R1およびRa、またはRaおよびRbまたはRbおよびRcは芳香環もしくは非芳香環、または複素環を形成する。
【0172】
他の態様において、R5からR8はHであり、かつRaはOHである。もう一つの態様において、RcはHであり、かつRはメチルまたはエチルである。さらにもう一つの態様において、R1はCl、Fまたはフェニルである。もう一つの態様において、化合物は下記からなる群より選択される。

【0173】
実施例
計測機器:フォトダイオードアレイ(PDA)検出器を装備したHPLCシステム。カラム-Rainin C18、Dynamax-100A、SHORT-ONE(4.6×100mm)。移動相は0.1M酢酸トリエチルアンモニウム(pH7.5)中のアセトニトリルの勾配(0〜100%)10分間の後、100%アセトニトリル洗浄10分間であった。流速は1ml/分であった。試料ループは20μlであった。
【0174】
実施例1
3-クロロ-2,4-ジメトキシベンズアルデヒド(2a)を1,3-ジメトキシベンゼン(1a)からPlattner, J. J. et al. J.Med.Chem. 1984, 27(8), 1016-1026に従って調製した。
【0175】
3-(3-クロロ-2,4-ジメトキシフェニル)アクリル酸(3a)
無水ピリジン(80ml)中の化合物(2a)(11.07g、55.2mmol)、マロン酸(8.639g、83mmol)およびピペリジン(2ml、1.722g、20.2mmol)の溶液を2時間還流(浴温110℃)した。反応混合物を冷却し、減圧下で濃縮し、5%クエン酸水溶液(250ml)でpH3まで酸性化した。得られた不均質混合物を数分間超音波処理した。沈澱した材料をろ過し、水(2×20ml)で洗浄し、KOH上で減圧乾燥して、純粋な(HPLC、1H NMR)所望の酸3aを白色固体で得た(12.7g、52.3mmol、収率95%)。

【0176】
3-(3-クロロ-2,4-ジメトキシフェニル)プロピオン酸(4a)
MeOH(50ml)およびTHF(200ml)の混合物中の3a(12.57g、51.88mmol)の懸濁液を、10%Pd/C(0.3g)存在下、50psiで4時間水素添加した。触媒をセライトを通してろ去し、ろ液を濃縮して、分析上純粋な(HPLC、1H NMR)4aを白色固体で得た(12.6g、51.5mmol、収率99%)。

【0177】
3-(3-クロロ-2,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン酸メチル(5a)
酢酸(75ml、78.67g、1.3mol)および48%臭化水素酸水溶液(75ml、111.75g、0.66mol)の混合物中の1(10.0g、40.9mmol)の溶液を15時間還流(浴温+120℃)した。反応混合物を冷却し、減圧下で濃縮した。得られた固体材料をトルエン(3×100ml)との共蒸発により乾燥し、メタノール(100ml)に溶解した。塩化水素を5分間通気した。得られた熱溶液を室温まで冷却し、次いで濃縮した。粗生成物をシリカゲルでEtOAc:ヘキサン(1:4)溶出によるクロマトグラフィにかけた。純粋な生成物分画の濃縮により、表題化合物を淡黄褐色油状物で得(9.2g、98%)、これは減圧乾燥中にゆっくり固化した。

【0178】
化合物2b、3b、4bおよび5bを、対応するクロロ類縁体について記載した方法を用い、同様の収率で合成した。
【0179】
3-フルオロ-2,4-ジメトキシベンズアルデヒド(2b)

【0180】
(2E)-3-(3-フルオロ-2,4-ジメトキシフェニル)プロパ-2-エン酸(3b)

【0181】
3-(3-フルオロ-2,4-ジメトキシフェニル)プロパン酸(4b)

【0182】
3-(3-フルオロ-2,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン酸メチル(5b)

【0183】
2,4-ジメトキシ-3-フェニルベンズアルデヒド(2c)
化合物2cを1cから、2aについて記載した方法を用い、収率95%で合成した。

【0184】
(2E)-3-(2,4-ジメトキシ-3-フェニルフェニル)プロパ-2-エン酸(3c)
化合物3cを2cから、3aについて記載した方法を用い、収率96%で合成した。

【0185】
3-(2,4-ジメトキシ-3-フェニルフェニル)プロパン酸(4c)
化合物4cを3cから、4aについて記載した方法を用い、収率98%で合成した。

【0186】
3-(2,4-ジヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパン酸メチル(5c)
無水CH2Cl2(20ml)中のジメトキシ酸4c(1.35g、4.7mmol)の溶液を撹拌しながら、BBr3(4.72g、1.78ml、18.9mmol)をシリンジから5分かけて注意深く加えた。得られた混合物を磁気撹拌機で8時間撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣をトルエン(2×20ml)と共蒸発させ、メタノール(20ml)に溶解し、HClガスを溶液中に2分間通気した。溶媒蒸発後に得られた材料を冷水(30ml)と酢酸エチル(100ml)との間で分配した。有機相を飽和NaHCO3(2×10ml)、食塩水(20ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮した。得られた粗生成物を短いシリカゲルカラムで酢酸エチル溶出によるクロマトグラフィにかけた。純粋な生成物分画を濃縮して5cを黄褐色油状物で得た(1.2g、94%)。

【0187】
3-(8-クロロ-7-ヒドロキシ-4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-6-イル)プロパン酸メチル(6a)
メタンスルホン酸(7ml)中の5a(1.0g、4.3mmol)の撹拌溶液にジケトン(0.7ml、9.1mmol)を滴下した。得られた溶液を70℃で5分間加熱し、冷却した。メタノール(20ml)を加え、反応混合物を沸騰するまで加熱した。この処理により、環化段階の間に生じた少量の遊離酸をエステル化した。メタノールを蒸発させ、水を加えて生成物を沈澱させた。粗製材料をシリカで酢酸エチル溶出によるクロマトグラフィにかけた。純粋な生成物分画を濃縮し、減圧下で乾燥して、所望の生成物を淡黄色固体で得た(0.82g、64%)。

【0188】
3-(8-クロロ-7-ヒドロキシ-4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-6-イル)プロパン酸(7a)
エステル6a(0.75g、2.5mmol)を1N NaOH(10ml)に溶解した。室温で30分間維持した後、溶液を1N HClでpH3まで酸性化した。沈澱した材料をろ取し、水で洗浄した。P2O5上で減圧乾燥して酸7aをオフホワイト固体で得た(0.705g)。

【0189】
10-クロロ-6-メチル-2H-ピラノ[5,6-g]クロマン-2,8-ジオン(8a)
トリフルオロ酢酸ペンタフルオロフェニル(PFP-TFA)(0.4ml、2.3mmol)を、無水CH2Cl2(8ml)中の7a(0.65g、2.3mmol)およびトリエチルアミン(0.5ml)の溶液に加え、反応混合物を1時間撹拌した。沈澱した生成物をろ過し、酢酸エチルで洗浄した。減圧下で乾燥して所望のラクトンを淡黄色固体で得た(0.5g、82%)。

【0190】
10-フルオロ-6-メチル-2H-ピラノ[5,6-g]クロマン-2,8-ジオン(8b)を化合物5bから、クロロ類縁体8aとの類推により同様の化学収率で合成した。
【0191】
3-(8-フルオロ-7-ヒドロキシ-4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-6-イル)プロパン酸メチル(6b)

【0192】
3-(8-フルオロ-7-ヒドロキシ-4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-6-イル)プロパン酸(7b)

【0193】
10-フルオロ-6-メチル-2H-ピラノ[5,6-g]クロマン-2,8-ジオン(8b)

【0194】
化合物9a、9b、9cを4-ニトロソレゾルシノールについて記載の一般法により合成した(Kendall et. al. J. Amer. Chem. Soc. 82: 1853-4 (1960))。
【0195】
3-(7-ヒドロキシ-10-オキシド-3-オキソ-3H-フェノキサジン-8-イル)プロパン酸メチル(10a)
Kendall et. al. J. Amer. Chem. Soc. 82: 1853-4 (1960)の方法によって合成した4-ニトロソレゾルシノール(9a)(33.13g、238mmol)をメタノール(1.1L)に+40℃で超音波処理により溶解した。得られた溶液を3L丸底フラスコに移し、氷水浴を用いて+2℃まで冷却した。メタノール(100ml)中のエステル5d(46.8g、238mmol)の溶液およびMnO2(20.68g、238mmol)を加え、混合物を0〜2℃に冷却した。濃硫酸(25.5ml、46.9g、478mmol)を、冷却し、強く撹拌しながら2分かけて加えた。得られた混合物を室温で4時間撹拌し、次いでエーテル(1.2L)で希釈した。沈澱した材料をろ取し、MeOH/エーテル(1:1)混合物(2×100ml)およびエーテル(2×100ml)で洗浄した。減圧下で乾燥して、10aを黒褐色固体で得た(26.32g、35%)、融点233℃(分解)。

【0196】
化合物10b、10c、10d、10eを非ハロゲン化類縁体10aとの類推により調製した。
【0197】
3-(6-クロロ-7-ヒドロキシ-10-オキシド-3-オキソ-3H-フェノキサジン-8-イル)プロパン酸メチル(10b)

【0198】
3-(6-フルオロ-7-ヒドロキシ-10-オキシド-3-オキソ-3H-フェノキサジン-8-イル)プロパン酸メチル(10c)

【0199】
3-(6-フルオロ-7-ヒドロキシ-10-オキシド-3-オキソ-3H-フェノキサジン-8-イル)プロパン酸メチル(10d)

【0200】
3-(7-ヒドロキシ-3-オキソ-3H-フェノキサジン-8-イル)プロパン酸(11a)
メチルエステル(10a)(22.83g、72.4mmol)を0.5M水酸化ナトリウム水溶液(400ml)に溶解し、溶液を1時間撹拌した。亜ジチオン酸ナトリウム溶液(200ml、100mmol)を加え、反応混合物をさらに15分間撹拌した。生成物を沈澱させるために、3M塩酸(80ml)を注意深く加え、得られた懸濁液を10分間撹拌し、遠心分離した。上清をデカンテーションし、残渣を水(約800ml)に再懸濁し、再度遠心分離した。この操作をもう一回繰り返した。最終上清はpH3〜4であった。遠心分離した材料を減圧下、40℃で終夜乾燥して所望の生成物(11a)を褐色固体で得た(14.12g、68%)。

【0201】
化合物11b、11c、11d、11eを非ハロゲン化類縁体11aとの類推により調製した。
【0202】
3-(4-クロロ-7-ヒドロキシ-3-オキソフェノキサジン-2-イル)プロパン酸(11b)

【0203】
3-(4-フルオロ-7-ヒドロキシ-3-オキソフェノキサジン-2-イル)プロパン酸(11c)

【0204】
3-(4,6-ジフルオロ-7-ヒドロキシ-3-オキソフェノキサジン-2-イル)プロパン酸(11d)

【0205】
3-(4,6,8-トリフルオロ-7-ヒドロキシ-3-オキソフェノキサジン-2-イル)プロパン酸(11e)

【0206】
3,4-ジヒドロ-2H-ピラノ[3,2-b]フェノキサジン-2,9-ジオン(12a)
無水DMF(200ml)中の酸12a(10.36g、36.3mmol)の懸濁液にN,N,-ジイソプロピルエチルアミン(26.13ml、150mmol)を加え、得られた混合物を磁気撹拌機で10分間撹拌した。反応フラスコを水浴(約+20℃)中に入れ、PFP-TFA(18.9ml、110mmol)をシリンジから5〜10分の間に加えた。2時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮し、エーテル(200ml)で希釈した。沈澱した材料をろ過し、エーテル(2×30ml)、2-プロパノール(2x50ml)およびエーテル(3×30ml)で洗浄した。減圧下で乾燥して所望のラクトン12aを橙色固体で得た(6.56g、67%)。融点268℃(分解)。

【0207】
化合物12b、12c、12d、12eを非ハロゲン化類縁体12aとの類推により調製した。
【0208】
12-クロロ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラノ[3,2-b]フェノキサジン-2,9-ジオン(12b)

【0209】
12-フルオロ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラノ[3,2-b]フェノキサジン-2,9-ジオン(12c)

【0210】
10,12-ジフルオロ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラノ[3,2-b]フェノキサジン-2,9-ジオン(12d)

【0211】
8,10,12-トリフルオロ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラノ[3,2-b]フェノキサジン-2,9-ジオン(12e)

【0212】
3,4,5,6-テトラクロロ-2-({3-クロロ-2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]フェニル}カルボニル)安息香酸(14a)
無水テトラクロロフタル酸(17.4g、60.8mmol)を無水1,2-ジクロロエタン(160ml)に懸濁し、30分間撹拌して固体のほとんどを溶解した。AlCl3(21.0g、158mmol)を一度に加え(軽度の発熱)、続いて無水1,2-ジクロロエタン(80ml)中の溶液としてエステル5a(14.0g、60.7mmol)を加えた。混合物を15〜20分間撹拌し、澄明溶液を得た。次いで、反応混合物を室温でさらに20時間撹拌した。HPLC分析により、それまでに出発化合物はほぼ完全に消費された。
【0213】
溶媒を蒸発させ、得られたゴム状残渣を酢酸エチル(500ml)と冷5N HCl(500ml)との間で分配した。水相をさらに酢酸エチルで抽出し、合わせた有機溶液を1N HCl(300ml)、飽和NaCl(300ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶液を濃縮して淡黄色固体を得、これをCH2Cl2(200ml)で粉砕し、0℃に冷却し、次いでろ過した。CH2Cl2(2×50ml)で洗浄し、減圧下で乾燥して、所望の生成物を白色固体で得た(21.0g)。母液からさらに生成物2.1gを得た。全収量23.1g(74%)。

【0214】
化合物14b〜14nを14aと同様に合成した。
【0215】
3,4,5,6-テトラフルオロ-2-({3-フルオロ-2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]フェニル}カルボニル)安息香酸(14b)

【0216】
3,4,5,6-テトラクロロ-2-({3-フルオロ-2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]フェニル}カルボニル)安息香酸(14c)

【0217】
2-({3-クロロ-2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]フェニル}カルボニル)-3,4,5,6-テトラフルオロ安息香酸(14d)

【0218】
4,5-ジクロロ-2-({3-クロロ-2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]フェニル}カルボニル)安息香酸(14e)

【0219】
4,5-ジクロロ-2-({3-フルオロ-2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]フェニル}カルボニル)安息香酸(14f)

【0220】
2-({2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]フェニル}カルボニル)-3,4,5,6-テトラフルオロ安息香酸(14g)

【0221】
2-({3-クロロ-2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]フェニル}カルボニル)安息香酸(14h)

【0222】
2-({2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]-3-フェニルフェニル}カルボニル)安息香酸(14i)

【0223】
2-({2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]-3-フェニルフェニル}カルボニル)-4,5-ジクロロ安息香酸(14j)

【0224】
2-({2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]-3-フェニルフェニル}カルボニル)-3,4,5,6-テトラクロロ安息香酸(14k)

【0225】
2-({2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]フェニル}カルボニル)安息香酸(14l)

【0226】
2-({2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]フェニル}カルボニル)-4,5-ジクロロ安息香酸(14m)

【0227】
2-({3-フルオロ-2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]フェニル}カルボニル)安息香酸(14n)

【0228】
3,6-ジクロロ-2-({3-クロロ-2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]フェニル}カルボニル)安息香酸(14o)

【0229】
3,6-ジフルオロ-2-({3-クロロ-2,4-ジヒドロキシ-5-[2-(メトキシカルボニル)エチル]フェニル}カルボニル)安息香酸(14p)

【0230】
3-(4,5,6,7,13,16-ヘキサクロロ-12,15-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸メチル(16a)
4-クロロレゾルシノール(15a)(0.56g、3.9mmol)および14a(1.0g、1.93mmol)をメタンスルホン酸(10ml)に懸濁した。懸濁液をアルゴン雰囲気下、70℃で1時間撹拌し、冷却した。氷と水の混合物(50g)を加えて生成物を沈澱させた。酢酸エチル(50ml)を加えて沈殿を抽出した。有機層から生成物を炭酸水素ナトリウム溶液で抽出した。水相をエーテルで洗浄して過剰の4-クロロレゾルシノールを除去し、濃塩酸で酸性化した。沈澱した材料、純粋な生成物16aを酢酸エチルに溶解し、Na2SO4で乾燥した。溶液を濃縮し、減圧下で乾燥して、表題化合物16aを橙色固体で得た(1.18g、97%)。

【0231】
化合物16b〜16gを、対応する中間体14および15から、16aについて記載の方法を用いて合成した。
【0232】
3-(16-クロロ-4,5,6,7,13-ペンタフルオロ-12,15-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸メチル(16b)

【0233】
3-(4,5,6,7,16-ペンタクロロ-13-フルオロ-12,15-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸メチル(16c)

【0234】
3-(13,16-ジクロロ-4,5,6,7-テトラフルオロ-12,15-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸メチル(16d)

【0235】
3-(16-クロロ-4,5,6,7-テトラフルオロ-12,15-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸メチル(16e)

【0236】
3-(4,5,6,7-テトラフルオロ-12,15-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸メチル(16f)

【0237】
3-(4,5,6,7,16-ペンタクロロ-12,15-ジヒドロキシ-1-オキソ-13-フェニルスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸メチル(16g)

【0238】
3-(4,5,6,7,13,16-ヘキサクロロ-12,15-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸(17a)
トリフルオロ酢酸(200ml)中の14a(20.0g、39mmol)および4-クロロレゾルシノール(15a)(20.0g、138mmol)の懸濁液を撹拌しながら70℃で5分間加熱して固体を溶解した。メタンスルホン酸(10ml)を一度に加え、反応混合物を70℃で2時間撹拌した。混合物を冷却し、減圧下で濃縮した。油状残渣を水(500ml)で粉砕し、酢酸エチル(300ml)で抽出した。有機相を5%炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄して、生成物を抽出した。水相をエーテルで洗浄し、次いで塩酸でpH3まで酸性化した。細かい沈澱をガラスフィルターでろ取し、水で洗浄した。減圧下で乾燥(P2O5上)して、表題酸17aを橙色固体で得た(21.6g、90%)。

【0239】
3-(13,16-ジクロロ-4,5,6,7-テトラフルオロ-12,15-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸(17b)

【0240】
3-(12,15-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸(17c)

【0241】
3-(4,7,13,16-テトラクロロ-12,15-ジヒドロキシ-14-メチル-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸(17d)

【0242】
3-(4,7,13,16-テトラクロロ-12,15-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸(17e)

【0243】
3-(4,7,13-トリクロロ-12,15-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸(17f)

【0244】
3-(13,16-ジクロロ-4,7-ジフルオロ-12,15-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸(17g)

【0245】
3-(5,6,13,16-テトラクロロ-12,15-ジヒドロキシ-14-メチル-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸(17h)

【0246】
3-(5,6,13,16-テトラクロロ-12,15-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸(17i)

【0247】
3-(5,6,13-トリクロロ-12,15-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-11-イル)プロパン酸(17j)

【0248】
8,12,22,23,24,25-ヘキサクロロ-9-ヒドロキシスピロ[3,4-ジヒドロ-2H-ピラノ[3,2-b]キサンテン-6,3'-3-ヒドロイソベンゾフラン]-2,19-ジオン(18a)
酸17a(7.84g、12.9mmol)を無水CH2Cl2(100ml)にトリエチルアミン(10ml)存在下で溶解した。PFP-TFA(9ml、52mmol)を撹拌しながら加え、反応を30分間進行させた。TLC分析(CH2Cl2:MeOH=9:1)によりRf約0.8に1つの主生成物が認められた。溶媒を蒸発させて黄褐色油状物を得た。冷メタノール(100ml)で粉砕して所望のラクトン18aの懸濁液を生じた。約5分間撹拌した後、固体をろ取し、冷メタノールで洗浄した。減圧下で乾燥して、18aをオフホワイト固体で得た(6.8g、88%)。

【0249】
8,12,22,23,24,25-ヘキサクロロ-9-ヒドロキシスピロ[3,4-ジヒドロ-2H-ピラノ[3,2-b]キサンテン-6,3'-3-ヒドロイソベンゾフラン]-2,19-ジオン(18b)

【0250】
9-ヒドロキシスピロ[3,4-ジヒドロ-2H-ピラノ[3,2-b]キサンテン-6,3'-3-ヒドロイソベンゾフラン]-2,19-ジオン(18c)

【0251】
8,12,23,24-テトラクロロ-9-ヒドロキシ-10-メチルスピロ[3,4-ジヒドロ-2H-ピラノ[3,2-b]キサンテン-6,3'-3-ヒドロイソベンゾフラン]-2,19-ジオン(18d)

【0252】
3-(4,5,6,7,17-ペンタクロロ-14,18-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,12'-ベンゾ[a]キサンテン]-19-イル)プロパン酸メチル(19a)
1,3-ジヒドロキシナフタレン(0.57g、3.56mmol)および14a(1.0g、1.93mmol)をメタンスルホン酸(10ml)に懸濁した。懸濁液をアルゴン雰囲気下、70℃で1時間撹拌し、冷却した。氷と水の混合物(50g)を加えて生成物を沈澱させた。酢酸エチル(50ml)を加えて沈殿を抽出した。有機層からの生成物を炭酸水素ナトリウム溶液で抽出した。水相をエーテルで洗浄して過剰の4-クロロレゾルシノールを除去し、濃塩酸で酸性化した。沈澱した材料、純粋な生成物16aを酢酸エチルに溶解し、Na2SO4で乾燥した。溶液を濃縮し、減圧下で乾燥して、表題化合物19aを橙色固体で得た(1.01g、82%)。

【0253】
エステル19b〜19iを、化合物19aについて記載の方法により調製した。
【0254】
3-(4,5,6,7,17-ペンタフルオロ-14,18-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,12'-ベンゾ[a]キサンテン]-19-イル)プロパン酸メチル(19b)

【0255】
3-(4,5,6,7-テトラクロロ-17-フルオロ-14,18-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,12'-ベンゾ[a]キサンテン]-19-イル)プロパン酸メチル(19c)

【0256】
3-(17-クロロ-4,5,6,7-テトラフルオロ-14,18-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,12'-ベンゾ[a]キサンテン]-19-イル)プロパン酸メチル(19d)

【0257】
3-(5,6,17-トリクロロ-14,18-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,12'-ベンゾ[a]キサンテン]-19-イル)プロパン酸メチル(19e)

【0258】
3-(5,6-ジクロロ-17-フルオロ-14,18-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,12'-ベンゾ[a]キサンテン]-19-イル)プロパン酸メチル(19f)

【0259】
3-(4,5,6,7-テトラフルオロ-14,18-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,12'-ベンゾ[a]キサンテン]-19-イル)プロパン酸メチル(19g)

【0260】
3-(17-クロロ-14,18-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,12'-ベンゾ[a]キサンテン]-19-イル)プロパン酸メチル(19h)

【0261】
3-(17-フルオロ-14,18-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,12'-ベンゾ[a]キサンテン]-19-イル)プロパン酸メチル(19i)

【0262】
3-(4,5,6,7,17-ペンタクロロ-14,18-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,12'-ベンゾ[a]キサンテン]-19-イル)プロパン酸(20a)
エステル19a(1.32g、2.06mmol)を1N NaOH(13ml)に超音波処理を用いて溶解した。室温で1時間撹拌した後、溶液を1N HClでpH3まで酸性化した。得られた沈殿をろ取し、水で洗浄した。P2O5上で減圧乾燥して酸20aを橙色固体で得た(1.1g、85%)。

【0263】
3-(17-クロロ-14,18-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,12'-ベンゾ[a]キサンテン]-19-イルプロパン酸(20b)
酸20bを化合物20aと同様に調製した。

【0264】
4,5,6,7,17-ペンタクロロ-14-ヒドロキシスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,14'-ベンゾ[f]クロマノ[7,6-b]4H-クロメン]-1,19-ジオン(21a)
ラクトン21aを化合物18aについて記載の方法により調製した。

【0265】
17-クロロ-14-ヒドロキシスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,14'-ベンゾ[f]クロマノ[7,6-b]4H-クロメン]-1,19-ジオン(21b)
ラクトン21bを化合物18aについて記載の方法により調製した。

【0266】
3-(4,5,6,7,20-ペンタクロロ-12,19-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,7'-ベンゾ[h]キサンテン]-18-イル)プロパン酸(22)
化合物22を、18aおよび1,6-ジヒドロキシナフタレンから、19aについて記載の一般法を用いて収率75%で調製した。

【0267】
4,5,6,7,22-ペンタクロロ-12-ヒドロキシスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,7'-ベンゾ[h]クロマノ[7,6-b]4H-クロメン]-1,20-ジオン(23)

【0268】
アミノ末端オリゴヌクレオチドのクロマノン色素誘導体を用いての誘導体化
DMSO(30μL)中の5'-アミノヘキシル-オクタチミジレート(0.2μmol)の溶液にラクトン8、12、18または21の1つ(1μmol)を加え、続いてトリエチルアミン(0.5μL)を加えた。混合物を数秒間超音波処理して試薬を溶解し、反応を3〜6時間進行させた。反応の進行を逆相HPLCでモニターし、典型的に0.5μLの一定量を分析のために取った。生成物を沈澱させるために(いくつかの場合には誘導体化剤と共に)、LiClO4の2%溶液(1mL)を加え、沈澱を遠沈して集め、アセトンで洗浄し、乾燥した。粗生成物を変性ゲル電気泳動と、続く逆相HPLCで精製した。
【0269】
(5S,3R)-5-{[ビス(4-メトキシフェニル)フェニルメトキシ]メチル}ピロリジン-3-オール(25)
無水CH2Cl2(250ml)中のFmoc-DMT-プロリノール(24)(Normand, H et al Tetrahedron Lett., 1994, v.35; 51; 9509-9512.)(31.39g、48.9mmol)の溶液を撹拌しながら、これにDBU(11.5ml、76.7mmol)を加えた。室温で0.5時間撹拌した後、反応混合物を濃縮し、シリカでまずEt3N-MeOH-CH2Cl2(2:3:95)と、次いでEt3N-MeOH-CH2Cl2(2:10:88)混合物により溶出してのクロマトグラフィにかけた。純粋な生成物分画を濃縮し、減圧下で乾燥して、アミン25を白色泡状物で得た(15.07g、73%)。
【0270】
2,2-ジメチルプロパン酸8-[3-((5S,3R)-5-{[ビス(4-メトキシフェニル)フェニルメトキシ]メチル}-3- ヒドロキシピロリジニル)-3-オキソプロピル]-7-オキソフェノキサジン-3-イルおよび2,2-ジメチルプロパン酸2-[3-((5S,3R)-5-{[ビス(4-メトキシフェニル)フェニルメトキシ]メチル}-3-ヒドロキシピロリジニル)-3-オキソプロピル]-7-オキソフェノキサジン-3-イルの混合物(27)
ラクトン12a(7.5g、28.07mmol)を無水DMF(150ml)中のアミン25(14.13g、433.68mmol)の溶液に一度に加えた。室温で0.5時間撹拌した後、ジイソプロピルエチルアミン(10.88g、14.67ml、84.2mmol)と、続いて無水トリメチル酢酸(12.55g、16.37ml、67.36mmol)を加え、反応混合物をさらに1時間撹拌した。溶媒蒸発後に得られた材料をシリカでまずEtOAc:Et3N(98:2)と、次いで0から5%勾配のMeOH/EtOAc溶出によるクロマトグラフィにかけた。純粋な生成物を含む分画を集め、濃縮して、アモルファス固体(21.7g)を得た。残留メタノールを除去するために、固体をEtOAc(60ml)に溶解し、撹拌中のヘキサン(600ml)にゆっくり加えて沈澱させた。沈澱をろ過し、ヘキサンで洗浄した。減圧下で乾燥して、27を黄橙色固体で得た(17.9g、83%)(9:1の異性体混合物)。
【0271】
2,2-ジメチルプロパン酸8-[3-((2S,4R)-2-{[1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-2-エチリデンブタ-3-エニルオキシ]メチル}-4-{(2-シアノエトキシ)[エチル(メチルエチル)アミノ]ホスフィノオキシ}-ピロリジニル)-3-オキソプロピル]-7-オキソフェノキサジン-3-イルおよび2,2-ジメチルプロパン酸2-[3-((2S,4R)-2-{[ビス(4-メトキシフェニル)フェニルメトキシ]メチル}-4-{[ビス(メチルエチル)アミノ](2-シアノエトキシ)ホスフィノオキシ}ピロリジニル)-3-オキソプロピル]-7-オキソフェノキサジン-3-イルの混合物(28)
無水CH2Cl2(200ml)中の27(10.5g、13.62mmol)の溶液を撹拌しながら、これにジイソプロピルエチルアミン(6.99ml、5.187g、40.13mmol)と、続いて2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルクロロホスホラミダイト(4.22g、3.98ml、17.84mmol)を加えた。室温で2時間撹拌した後、メタノール(0.2ml、4.9mmol)を加えて過剰のクロロホスホラミダイトを失活させた。反応混合物を濃縮し、EtOAc:ヘキサン:Et3N(60:40:5)混合物(1L)で予備洗浄し、次いでEtOAc:ヘキサン(3:2)混合物で平衡化したシリカゲルカラムに載せた。生成物を10〜60%勾配の酢酸エチル/ヘキサンで溶出した。純粋な生成物分画を濃縮して、所望のホスホラミダイトを橙色泡状物で得た。生成物を固体で得るために、泡状物を無水エーテル(20ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下で激しく撹拌中のヘキサン(700ml)に滴下することにより沈澱させた。沈澱をろ過し、減圧下で乾燥して、28をアモルファス固体で得た(8.9g、67%)。31P NMR (DMSO-d6): δ 143.64, 143.04
【0272】
3-(2,6-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル(30)を、3-(2,6-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸(29)のメタノール溶液(Mitoshi K. et al. Syn.Lett.,12; 1997; 1472-1474)を無水HClガスで処理することにより調製した。

【0273】
3-(3-クロロ-2,6-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル(31)
メタノール(50ml)中の30(5.0g、25.5mmol)の溶液にN-クロロスクシンイミド(3.4g、25.5mmol)を加えた。反応混合物を室温で終夜撹拌し、濃縮した。残渣をヘキサンおよび酢酸エチルの混合物に懸濁し、沈澱したスクシンイミドをろ去した。溶媒を蒸発させた後に得た粗生成物をシリカでヘキサン-酢酸エチル4:1で溶出してのクロマトグラフィにかけた。純粋な生成物分画を濃縮して表題化合物を無色油状物で得(4.4g)、これは減圧下で長時間乾燥中にゆっくり結晶化した。

【0274】
4,5-ジクロロ-2-({5-クロロ-2,4-ジヒドロキシ-3-[2-(メトキシカルボニル)エチル]フェニル}カルボニル)安息香酸(35)
ベンゾフェノン35を、化合物14aについて記載の一般法に従い、同様の合成収率で合成した。

【0275】
3-(5,6,11,16-テトラクロロ-12,15-ジヒドロキシ-14-メチル-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-13-イル)プロパン酸(37)
トリフルオロ酢酸(5ml)中の35(200mg、0.45mmol)および2-メチル-4-クロロレゾルシノール(110mg、0.69mmol)の懸濁液にメタンスルホン酸(0.7ml)を加えた。反応混合物を室温で6時間撹拌して暗紫色溶液を得た。溶媒をロータリーエバポレーターにより室温で除去し、水を加えて無色の中間体36を沈澱させた。固体をろ取し、水で洗浄し、水(15ml)に再度懸濁した。水酸化ナトリウム溶液(1N、5ml)を加え、得られた溶液を室温で20分間維持し、1N HClでpH2まで酸性化した。沈澱した生成物をろ過し、水で洗浄した。減圧下で乾燥して、所望の色素を橙色固体で得た(202mg、81%)。

【0276】
5,9,23,24-テトラクロロ-10-ヒドロキシ-11-メチルスピロ[1,2-ジヒドロ-2H-ピラノ[2,3-c]キサンテン-7,3'-3-ヒドロイソベンゾフラン]-3,19-ジオン(38)
ラクトン38を化合物18aについて記載の一般法に従って合成した。

【0277】
2,2-ジメチルプロパン酸11-[2-(N-{6-[ビス(4-メトキシフェニル)フェニルメトキシ]ヘキシル}カルバモイル)エチル]-15-(2,2-ジメチルプロパノイルオキシ)-5,6,13,16-テトラクロロ-14-メチル-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-12-イル(41)
無水DMF(20ml)中の18d(2.67g、4.9mmol)、5-アミノヘキサノール(0.7g、5.4mmol)およびトリエチルアミン(5ml)の溶液を室温で5時間維持した。TLC分析(MeOH:CH2Cl2、1:9)により18dの新しい移動度の低い生成物(化合物39)への完全な変換が認められた。DMTr-クロリド(6.0g)を数回に分け、数時間かけて、中間体39がすべて化合物40に変換されるまで加えた(TLC分析)。
【0278】
N-メチルイミダゾール(5ml)および無水トリメチル酢酸(6ml)を加えた。反応混合物を撹拌しながら50℃で7時間加熱した。溶媒を減圧下で蒸発させ、得られた油状物を水(200ml)と酢酸エチル(150ml)との間で分配した。有機相を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒濃縮後に得られた材料をシリカでヘキサン-酢酸エチル3:1で溶出してのクロマトグラフィにかけた。生成物含有分画を濃縮して41を淡黄色アモルファス固体で得た(3.4g、61%)。

【0279】
2,2-ジメチルプロパン酸15-(2,2-ジメチルプロパノイルオキシ)-5,6,13,16-テトラクロロ-11-{2-[N-(6-ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]エチル}-14-メチル-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-12-イル(42)
10%メタノール/ジクロロメタン(50ml)中の41(3.4g、3mmol)の溶液にトリフルオロ酢酸(0.15ml)を加えた。1時間撹拌した後、溶液をトリエチルアミン(0.15ml)で処理して酸を中和した。反応混合物をシリカゲルカラムで酢酸エチル溶出によるクロマトグラフィにかけた。純粋な生成物分画を濃縮して表題化合物(42)をオフホワイトのアモルファス固体で得た(2.0g、73%)。

【0280】
2,2-ジメチルプロパン酸11-{2-[N-(6-{[ビス(メチルエチル)アミノ](2-シアノエトキシ)ホスフィノオキシ}ヘキシル)カルバモイル]エチル}-15-(2,2-ジメチルプロパノイルオキシ)-5,6,13,16-テトラクロロ-14-メチル-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-12-イル(43)
無水CH2Cl2(10ml)中の42(1.2g、1.45mmol)の溶液を撹拌しながら、これにジイソプロピルエチルアミン(0.5ml)と、続いて2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルクロロホスホラミダイト(0.35ml、1.5mmol)を加えた。1時間撹拌した後、反応をメタノール(0.05ml)で停止し、酢酸エチル(50ml)で希釈した。溶液を飽和炭酸水素ナトリウム、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒の蒸発後に得られた粗製材料を、少量のエーテルから無水ヘキサン中で沈澱させて精製した。沈澱した固体をろ取し、ヘキサンで洗浄した。減圧下で乾燥して、43を無色のアモルファス固体で得た(1.1g、74%)。
【0281】
化合物46から49を以下に記載のとおりに合成した。
【0282】
7-クロロ-1,6-ジメトキシナフタレン(47)
磁気撹拌子および温度計を備えた0.5L丸底フラスコに1,6-ジメトキシナフタレン(14.56g、77.36mmol)、THF(50ml)を加え、得られた溶液を-78℃(アセトン/ドライアイス浴)に冷却した。ブチルリチウムの溶液(ヘキサン中1.6M、53.18ml、85.09mmol)をシリンジから10分間で加えた。混合物を室温に戻し、20時間撹拌した。次いで、反応混合物を-78℃に再度冷却し、THF(50ml)中のヘキサクロロエタン(20.144g、85.09mmol)の溶液をシリンジから10分間で加えた。反応混合物を室温に戻し、1N HCl(150ml)、EtOAc(200ml)で希釈し、分液漏斗に移した。有機相を飽和NaCl溶液(2×30ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣を減圧フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、150g、35-65m、溶離剤10%EtOAc/ヘキサン)で精製して、47および46の混合物(約3:2)を得た。エーテルからの多重結晶化により純粋な所望の生成物(47)を白色固体で得た(5.0g、22.5mmol、収率=29%)。

【0283】
7-クロロ-1,6-ジヒドロキシナフタレン(48)
磁気撹拌子を備えた50ml丸底フラスコに、無水CH2Cl2(20ml)中の化合物47(2.0g、9.0mmol)を加えた。フラスコにアルゴン雰囲気を充填し、BBr3(9.0g、3.39ml、36.0mmol)をシリンジから5分間で加えた。得られた混合物を磁気撹拌機により室温で終夜撹拌した。反応混合物を氷-水混合物(30g)中に注意深く注ぎ、CH2Cl2で希釈し、2%NaOHを加えて中和した(pH約6〜7)。有機相を分離し、NaHCO3(2×10ml)およびNaCl(20ml)溶液で洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧下で乾燥して、所望の生成物48を飛散性のオフホワイト固体で得た(1.54g、7.9mmol、収率88%)。

【0284】
3-(11-クロロ-12,19-ジヒドロキシ-1-オキソスピロ[3-ヒドロイソベンゾフラン-3,7'-ベンゾ[h]キサンテン]-18-イル)プロパン酸(49)
48(1.39g、7.12mmol)、14l(2.45g、7.12mmol)、TFA(21ml)およびメタンスルホン酸(7ml)の混合物を撹拌しながら70℃で2時間加熱した。得られた溶液を冷却し、水(400ml)に加えて生成物を沈澱させた。固体をろ取し、水で洗浄し、減圧下で乾燥した。粗製材料を熱酢酸エチル中で粉砕し、冷却してろ過した。減圧下で乾燥して、所望の色素49を得た(2.8g、98%)。

【0285】
本明細書に記載の実施例および態様は例示のためのものにすぎず、当業者にはそれらを考慮して様々な改変または変更が示唆され、本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれることになる。本明細書において引用するすべての出版物、特許、および特許出願は、すべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0286】
【図1】ベンゾ[c]キサンテン49のpH依存性吸収スペクトルを例示する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記からなる群より選択される式を有する化合物、またはそれらのラクトン開環誘導体:

式中、Aはヒドロキシ、アミノ、保護ヒドロキシまたは保護アミノを表し;
下付き文字nは0から4の整数であり;
X0はそれぞれハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)アルキルチオ、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、アリール、ヘテロアリール、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択され;
R1'、R1、R2、R3およびR4はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルキルチオおよび(C1-C8)アルコキシから独立に選択され;
R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリールおよびアリール(C1-C4)アルキルから独立に選択され;ここでR1'、およびR1からR8のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシで置換されていてもよく;かつR5からR8のいずれかのアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよい。
【請求項2】
Aがヒドロキシまたは保護ヒドロキシである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Aがヒドロキシである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
X0がハロゲン、シアノ、(C1-C6)ハロアルキルならびにスルホニルオキシおよびカルボキシからなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
X0がハロゲン、シアノおよびCF3からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
X0がハロゲンである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
X0がClである、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
R1'およびR1からR8がHである、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
下記からなる群より選択される式を有する化合物:

式中、Aはヒドロキシ、アミノ、保護ヒドロキシまたは保護アミノを表し;
下付き文字nは0から4の整数であり;
X0はそれぞれハロゲン、シアノ、ハロ(C1-C8)アルキル、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択され;
R1、R1'、R2、R3およびR4はそれぞれHであり;
R5、R6、R7およびR8はそれぞれH、(C1-C8)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1-C4)アルキルおよびヘテロアリール(C1-C4)アルキルからなる群より独立に選択され;ここでR5からR8のいずれかのアルキル部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-もしくはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルまたはヒドロキシからなる群より独立に選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよく;かつR5からR8のいずれかのアリール部分またはヘテロアリール部分はハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオおよび(C1-C6)アルコキシからなる群より選択される1つから4つの置換基で置換されていてもよく;
R0-X1部分は下記の式を有するアリール基またはヘテロアリール基であり:

X1は-CO2-または-SO2O-であり;
X2、X3、X4およびX5はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、CF3、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)アルキルチオ、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択されるか;または任意に、任意の2つの隣接する置換基X2からX5は一緒になって縮合アリール環を形成することができ;ここでX2からX5のいずれかのアルキル部分またはアリール部分はハロゲン、カルボキシ、スルホ、アミノ、モノ-またはジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、シアノ、ハロアセチルヒドロキシ、(C1-C6)アルキルおよび(C1-C6)アルキルチオでさらに置換されることができ;かつ波線は分子の残部への結合点を示す。
【請求項10】
Aがヒドロキシまたは保護ヒドロキシである、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
Aがヒドロキシである、請求項9記載の化合物。
【請求項12】
X0がハロゲン、シアノおよびCF3からなる群より選択される、請求項9記載の化合物。
【請求項13】
X0がハロゲンである、請求項9記載の化合物。
【請求項14】
X0がClである、請求項9記載の化合物。
【請求項15】
R1'およびR1からR8がHである、請求項9記載の化合物。
【請求項16】
下記からなる群より選択される式を有する、請求項9記載の化合物:


【請求項17】
Aがヒドロキシまたは保護ヒドロキシである、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
X0がハロゲン、(C1-C8)アルコキシ、シアノまたはCFである、請求項16記載の化合物。
【請求項19】
X0がハロゲン、シアノおよびCF3からなる群より選択される、請求項16記載の化合物。
【請求項20】
X0がハロゲンである、請求項16記載の化合物。
【請求項21】
X0がClである、請求項16記載の化合物。
【請求項22】
下記の式を有する、請求項16記載の化合物:


【請求項23】
X0がハロゲンである、請求項22記載の化合物。
【請求項24】
X0がClである、請求項22記載の化合物。
【請求項25】
下記の式を有する、請求項22記載の化合物:

2-(2-クロロ-3-ヒドロキシ-9-カルボエチル-10-オキソ-10H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イル)安息香酸。
【請求項26】
下記の式を有する化合物、およびその互変異性体:

式中、下付き文字nは0から4であり;
下付き文字pは1から3の整数であり;
X0はそれぞれハロゲン、シアノ、CF3、SO3HおよびCO2Hからなる群より独立に選択され;
RxおよびRyは独立にHまたは選択された保護基であり;
R1'、R1、R2、R3、R5およびR6はそれぞれHであり;
Wは、C、N、O、PおよびSからなる群より選択され、水素原子を除く、可能な原子価を満たす4個から50個の原子を有し、かつ隣接するカルボニル基に直接連結した窒素原子をさらに有する、非環状、環状、芳香族またはそれらの組み合わせである、二価、三価または四価のリンカーであり;
Kは孤立電子対、H、OH、SH、NH、(C1-C8)アルキル、アリール、アミノ保護基およびヒドロキシ保護基からなる群より選択され、かつLはホスホラミダイト部分、固体支持体および生体物質からなる群より選択されるリガンドであり、ここで生体物質は核酸、ペプチド、タンパク質、アミノ炭水化物(amino carbohydrate)、オリゴ糖、グリコシル化タンパク質およびそれらの類縁体からなる群より選択される。
【請求項27】
nが1であり、かつYが下記からなる群より選択される、請求項26記載の化合物:

式中、下付き文字qおよびrは独立に1から15の整数であり;かつRはそれぞれ独立に(C1-C8)アルキルまたは(C1-C8)アルコキシである。
【請求項28】
試薬が400nmから約850nmの発光波長を有する、請求項26記載の化合物。
【請求項29】
X0がClであり;下付き文字nが1であり、かつ下付き文字pが2である、請求項26記載の化合物。
【請求項30】
下記から選択される式を有する、請求項29記載の化合物:


【請求項31】
下記からなる群より選択される式を有する化合物、およびその互変異性体:

式中、
RxおよびRyはHまたは独立に選択された保護基であり;
R1'、R1、R2、R3およびR4はそれぞれH、ハロゲン、シアノ、およびCF3からなる群より独立に選択され;
波線は生体物質へのまたは生体物質を色素に連結している連結基への結合点を示す。
【請求項32】
下記の化合物、およびその互変異性体:

式中、
波線は生体物質へのまたは生体物質を該化合物に連結している連結基への結合点を示す。
【請求項33】
生体物質がオリゴヌクレオチドである、請求項31記載の化合物。
【請求項34】
結合した消光剤をさらに含む、請求項31記載の化合物。
【請求項35】
結合した副溝結合剤をさらに含む、請求項31記載の化合物。
【請求項36】
結合した消光剤および副溝結合剤をさらに含む化合物であって、色素がオリゴヌクレオチドプローブの3'末端に結合しており、消光剤および副溝結合剤がオリゴヌクレオチドプローブの5'末端に結合している、請求項31記載の化合物。
【請求項37】
結合した消光剤および副溝結合剤をさらに含む化合物であって、色素がオリゴヌクレオチドプローブの5'末端に結合しており、消光剤および副溝結合剤が該オリゴヌクレオチドプローブの3'末端に結合している、請求項31記載の化合物。
【請求項38】
蛍光色素標識ホスホラミダイト試薬を調製する方法であって:
(a)請求項1から25のいずれか一項記載の蛍光色素縮合誘導体と連結基成分とを接触させて、中間体蛍光色素標識連結基を形成する段階;および
(b)該中間体蛍光色素標識連結基とホスホラミダイト部分とを、ホスホラミダイト部分を該蛍光色素標識連結基に共有結合させるのに十分な条件下で接触させて、蛍光色素標識ホスホラミダイト試薬を形成する段階
を含む、方法。
【請求項39】
連結基成分がアミノ、ヒドロキシ、ヒドラジノおよびチオールから選択される2つの反応性官能基を含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
連結基が直鎖もしくは環状またはそれらの組み合わせである、請求項38記載の方法。
【請求項41】
連結基が(C2-C20)アルキレン基または(C2-C20)ヘテロアルキレン基を含む、請求項38記載の方法。
【請求項42】
連結基が環状で、かつ5員複素環を含む、請求項38記載の方法。
【請求項43】
環状連結基がプロリノールリンカーである、請求項42記載の方法。
【請求項44】
生体物質がオリゴヌクレオチドである、請求項38記載の方法。
【請求項45】
生体物質が、一つまたは複数の修飾塩基を有するオリゴヌクレオチドである、請求項38記載の方法。
【請求項46】
化合物をインサイチューで形成する、請求項38から46記載の方法。
【請求項47】
請求項1から25のいずれか一項記載の結合した化合物を有する生体物質。
【請求項48】
請求項1から25のいずれか一項記載の結合した化合物を有するオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項49】
結合した消光剤をさらに含む、請求項48記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項50】
結合した副溝結合剤をさらに含む、請求項48記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項51】
結合した消光剤および副溝結合剤をさらに含むオリゴヌクレオチドプローブであって、色素が該オリゴヌクレオチドプローブの3'末端に結合しており、消光剤および副溝結合剤が該オリゴヌクレオチドプローブの5'末端に結合している、請求項48記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項52】
結合した消光剤および副溝結合剤をさらに含むオリゴヌクレオチドプローブであって、色素が該オリゴヌクレオチドプローブの5'末端に結合しており、消光剤および副溝結合剤が該オリゴヌクレオチドプローブの3'末端に結合している、請求項48記載のオリゴヌクレオチドプローブ。

【図1】
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【公表番号】特表2009−527591(P2009−527591A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555459(P2008−555459)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/062076
【国際公開番号】WO2007/098336
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(507046554)エポック バイオサイエンシズ インコーポレーティッド (5)
【Fターム(参考)】