説明

蛍光相関分光測定法を用いた過酸化水素量の測定方法及びその利用方法

【課題】B/F分離の必要がなく、しかも、従来と同程度の感度を有する、あるいはそれ以上の高感度化も可能な、蛋白の測定法に利用できる過酸化水素の定量方法を提供する。
【解決手段】蛍光標識したチラミドとフェノール基を有するキャリア物質とを過酸化水素及びペルオキシダーゼの存在下で反応させて、生成する蛍光標識を有する反応生成物の量を、蛍光相関分光測定法を用いて測定することにより、前記過酸化水素の量を測定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光相関分光測定法を用いた過酸化水素量の測定方法に関する。本発明は、蛋白の定量法(例えばELISA、CLEIA)において、反応生成物である過酸化水素を定量することができる方法、特に、反応生成物である過酸化水素の量が微量であっても定量することができる高感度定量方法を提供するものである。本発明の過酸化水素の定量方法を用いることで、目的の蛋白の定量も可能となる。従って、本発明は、生化学研究分野、臨床検査分野、分子生物分野、分化・発生の基礎研究分野等で活用できる技術である。
【背景技術】
【0002】
蛋白の定量法として、例えばELISA、CLEIA等の酵素免疫測定法が汎用されている(非特許文献1、2)。これらの方法では、標的の蛋白質に対して特異的な酵素標識抗体を用い、これらを標的蛋白に特異的に結合させ、ELISAプレートへの非特異的な吸着物質を洗浄、除去した後、酵素反応を行うことで添加した基質と反応させ、産生される発色、発光を測定し、あるいは標的蛋白に対して特異的な蛍光標識抗体を用いELISAプレートへの非特異的な吸着物質を洗浄、除去した後、蛍光を測定している。これにより、標的の蛋白質の検出や定量をしている。この発色や発光反応には、多くの場合、標識酵素として西洋わさび(ホースラディッシュ)ペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼまたはグルコースオキシダーゼ(GOD)を用い、これらの酵素を用いた反応で基質を分解定量する。発色反応において用いる基質は、反応前は無色または測定波長と違う波長に吸収を有する必要がある。一方、蛍光測定においては、非特異的に結合した蛍光やフリーに残存する蛍光を分離除去した後に、蛍光強度を測定する必要があった。
【非特許文献1】The development of the high sensitive thyroid stimulation hormone radioimmunoassay. Radioisotopes (1985) 34(9):501-504,
【非特許文献2】酵素免疫測定法 第3版 1987年 医学書院 石川 榮治 著
【非特許文献3】「マイクロチャネルを用いる酵素免疫測定法によるヒト唾液中イムノグロブリンAの迅速定量:分析化学、Vol. 54 (2005) , No. 9 pp.817-823」
【非特許文献4】バイオセンサーCMCテクニカルライブラリー「バイオセンサー」シーエムシー出版 軽部 征夫 監修 2002年
【非特許文献5】電子科学研究(1998)、巻6、p37−41
【特許文献1】日本特許第3365497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の酵素免疫測定法に関する従来技術では、高感度測定法としてラジオイムノアッセイ法が技術的に確立されている。しかし、現状の方法の感度は、10-16moles程度であり、これ以上の高感度化は、方法論としては技術的に不可能であると考えられ、検出装置の感度を上げることでさらなる高感度化が試みられている。しかし、検出装置の改良による高感度化では特別な施設が必要である。また、短寿命の核種を使用すれることでの高感度化もあり得るが、短寿命の核種を含む試薬は使用期限が極端に短く、時間の経過に伴って測定感度が急激に下がってしまう欠点があった。また、酵素免疫測定法は開発当初の比色法(10-13moles)から蛍光法、発光法へと高感度化(10-15moles)が進められ、専用測定装置も開発されているが、測定操作が簡便になっただけで、測定感度は限界がきている。
【0004】
また、上述の従来の免疫酵素測定法では、標的蛋白に特異的に結合した標識酵素である西洋わさび(ホースラディッシュ)ペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼやグルコースオキシダーゼ(GOD)活性を測定することで、標的蛋白を定量する。この方法では、抗原−抗体結合型と遊離型の分離(B/F分離)が必須である。また、蛍光を用いた検出法でも、抗原−抗体結合型と遊離型の分離(B/F分離)が必須である。
【0005】
ところで、グルコースとGOD(グルコースオキシダーゼ)を用いた反応系において、過酸化水素が発生する。ペルオキシダーゼの存在下で、この過酸化水素とAmplexTM Redを反応させると、非蛍光のAmplexTM Redが強い蛍光をもつレゾルフィンに変換し、その蛍光量からグルコース量やGODの活性測定が可能と考えられる。しかし、AmplexTM Redのように反応前には蛍光が無いかまたは蛍光が弱い基質は、多くは存在せず、多くの蛍光色素は反応前にも蛍光を発する場合が多い。非特許文献3に記載されているように、AmplexTM Red Assayキットによる酵素免疫測定法はあったが、RIA法を凌駕する感度は得られていない。
【0006】
尚、過酸化水素の定量方法としては、過酸化水素電極を用いる方法や過酸化水素をカタラーゼで酸素と水に分解し、生成する酸素を酸素電極で測定する方法などが知られている。(非特許文献4、特許文献1)
【0007】
しかし、いずれも微量の過酸化水素の定量には不向きであり、微量の過酸化水素の定量には上記Amplex(登録商標)Red Assay Kitのような蛍光測定法が用いられている。しかし、蛍光として特殊なもの(反応前は無蛍光で、反応後にだけ蛍光を発する蛍光色素)しか使えないという欠点があった。
【0008】
そこで本発明は、B/F分離の必要がなく、しかも、従来と同程度の感度を有する、あるいはそれ以上の高感度化も可能な、蛋白の測定法に利用できる過酸化水素の定量方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明者らは、蛍光相関分光法に注目し、蛍光相関分光法によって、B/F分離が不要で、過酸化水素を従来と同程度以上の高い感度で定量できる方法を提供すべく種々検討した。
【0010】
蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy,以下FCS)は溶液中の蛍光分子のブラウン運動を利用して分子の数と分子の大きさ,または形といった物理量を測定する方法である。FCSの基本的な特徴は顕微鏡視野下の極微少領域における平均数個の蛍光分子のブラウン運動に由来する蛍光発光の「ゆらぎ」を通して,いわゆる均一溶液に含まれる蛍光分子の濃度や分子間相互作用を,物理的な分離過程を経ずに,しかもほぼ実時間でモニターできることである。そのため単一分子検出法の一つとして数えられている。このようにFCSは、単一分子検出法であり、特定の蛍光分子の濃度を測定することができる(非特許文献5)。
【0011】
このようなB/F分離を必要としないFCSを過酸化水素の定量に利用する方法として、生成する過酸化水素が触媒するチラミド転移反応によりキャリア高分子に蛍光色素を結合させ、その高分子に結合した蛍光色素の蛍光量を未反応のチラミド色素とB/F分離することなく測定することが可能であることを見いだし、さらには、産生された過酸化水素量、ひいては反応溶液中の目的の蛋白量の定量を可能であることを見いだして本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は以下の通りである。
[1]蛍光標識したチラミドとフェノール基を有するキャリア物質とを過酸化水素及びペルオキシダーゼの存在下で反応させて、生成する蛍光標識を有する反応生成物の量を、蛍光相関分光測定法を用いて測定することにより、前記過酸化水素の量を測定する方法。
[2]蛍光標識物質は、Rhodamine Green、Alexa488、GFP (green fluorescent protein)、YOYO1、TAMRA(carboxytetramethylrhodamine)、TMR(tetramethylrhodamine)、EVOblueTM, またはAlexa647である[1]に記載の方法。
[3]キャリア物質は、分子量が1kDa〜400kDaの範囲の物質である[1]または[2]に記載の方法。
[4]キャリア物質は、分子量が10kDa〜100kDaの範囲の物質である[1]または[2]に記載の方法。
[5]キャリア物質は、チロシン残基を有する物質であって、キャリア物質が有するフェノール基は、前記チロシン残基に由来するものである[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]チロシン残基を有する物質は、チロシン残基を有するタンパク質またはペプチドである[5]に記載の方法。
[7]キャリア物質は、ウシ血清アルブミン(分子量約64kDa)である[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]過酸化水素は、酸化還元酵素によって生成されたものである[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]酸化還元酵素は、グルコースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、アシルCoAオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、グリセロール‐3‐リン酸オキシダーゼ、グリセリロールオキシダーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、NADHオキシダーゼ、ウリカーゼ、キサンチンオキシダーゼ、チラミンオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、ヒスタミンオキシダーゼおよびスーパーオキシドジスムターゼから成る群から選ばれる少なくとも1種の酵素である[8]に記載の方法。
[10]ペルオキシダーゼは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、チトクロームP450、ミクロペルオキシダーゼおよびマンガンペルオキシダーゼから成る群から選ばれる少なくとも1種の酵素である[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]過酸化水素は、ヒドロキシラジカル分子により非酵素反応的に生成されたものである[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[12]蛍光標識を有する反応生成物を、未反応の蛍光標識したチラミドと分離すること無しに蛍光相関分光測定法により測定する[1]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13]グルコースにグルコースオキシダーゼを作用させて生成した過酸化水素の量を、[1]〜[12]のいずれかに記載の方法により測定することを含む、グルコース濃度の測定方法。
[14]グルコースにグルコースオキシダーゼを作用させて生成した過酸化水素の量を、[1]〜[12]のいずれかに記載の方法により測定することを含む、グルコースオキシダーゼの活性測定方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、B/F分離の必要がなく、しかも、従来と同程度の感度を有する、あるいはそれ以上の高感度化も可能な、蛋白の測定法に利用できる過酸化水素の定量方法を提供することができる。
【0014】
蛍光相関分光測定機による蛍光強度測定法を用い、チラミド化蛍光色素を組み合わせることに定量的に過酸化水素を簡便に定量することが可能となった。従来のELISAやCLEIAの測定法において西洋わさびペルオキシダーゼやグルコースオキシダーゼ活性を発色反応や発光反応で産生されたシグナルを測定して標的蛋白の検出をしていたが、本法では反応系で産生される過酸化水素を直接測定することにより標的蛋白の検出することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、蛍光標識したチラミドとフェノール基を有するキャリア物質とを過酸化水素及びペルオキシダーゼの存在下で反応させて、生成する蛍光を有する反応生成物の量を、蛍光相関分光測定法を用いて測定することにより、前記過酸化水素の量を測定する方法に関する。
【0016】
[蛍光標識したチラミド]
本発明では蛍光標識したチラミドを用いる。蛍光標識は、蛍光相関分光測定法に用いることができ、チラミドに標識できる物質であれば、特に制限なく使用することができる。そのような蛍光標識物質としては、例えば、Rhodamine Green、 Alexa488、GFP (green fluorescent protein)、YOYO1 (dimer of oxazole yellow)、TAMRA(carboxytetramethylrhodamine)、TMR(methylrhodamine)、EVOblueTM、Alexa647 等を挙げることができる。但し、これらに限定される意図ではない。
【0017】
蛍光標識物質のチラミドへの標識は、公知の方法により行うことができる。例えば、TAMRAをチラミドに標識する(TAMRAにチラミド結合させる)には、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解したTAMRA NHSエステルとDMT−TEAに溶解したチラミドを反応させることによりTAMRA-チラミドを合成させることができる。
【0018】
蛍光標識したチラミドは、市販品としても入手可能である。市販品の具体例としては以下のものを挙げることができる。
モレキュラープローブ社:
Alexa Fluor 350, Alexa Fluor 488, Alexa Fluor 532, Alexa Fluor 546, Alexa Fluor 568, Alexa Fluor 594, Alexa Fluor 647
【0019】
パーキンエルマー社:
NEL741 TSA Plus Fluorescein System
NEL742 TSA Plus TMR System
NEL744 TSA Plus Cyanine 3 System
NEL745 TSA Plus Cyanine 5 System
【0020】
[フェノール基を有するキャリア物質]
本発明では、フェノール基を有するキャリア物質を用いる。本発明の方法で利用するペルオキシダーゼによる反応は、その一例を以下に示す通り、蛍光標識したチラミドとフェノール基を有するキャリア物質との反応である。この反応において、チラミドは、フェノール基と反応する。従って、キャリア物質は、フェノール基を有するものである。
【0021】
【化1】

【0022】
フェノール基は、パラ位にOH基を有し、OH基以外の置換基を有さないものであることが、チラミドとの反応を良好に実施するためには好ましい。
【0023】
フェノール基を有するキャリア物質は、チロシン残基を有するタンパク質またはペプチドであることが、入手及び調製が容易であるという観点から好ましい。従って、この場合、キャリア物質が有するフェノール基は、チロシン残基に由来するものである。但し、タンパク質またはペプチド以外に由来するチロシン残基を有する物質を、フェノール基を有するキャリア物質として用いることを妨げる意図ではない。フェノール基を有するキャリア物質は、チロシン残基を有する物質であることができ、チロシン残基を有する物質は、タンパク質及びペプチドであっても、それ以外のチロシン残基を有する物質であってもよい。
【0024】
フェノール基を有するキャリア物質は、分子量が約1kDa〜400kDa、より好ましくは約10kDa〜100kDaの範囲の物質であることが適当である。本発明の方法では、後述のように、蛍光標識を有する反応生成物を、未反応の蛍光標識したチラミドと分離すること無しに蛍光相関分光測定法(FCS)により測定する。FCS特有の性質として、蛍光標識を有する反応生成物と蛍光標識したチラミドの分子量サイズに一定以上の相違があることで、蛍光標識を有する反応生成物のみを選択的に計測できる。そのため、蛍光標識を有する反応生成物は、蛍光標識したチラミドより、分子量サイズが、約8倍以上、より好ましくは約10倍以上大きいことが好ましい。
【0025】
蛍光標識したチラミドの分子量は、蛍光標識物質の分子量により変化するが、これらを総合的に勘案すると、フェノール基を有するキャリア物質の分子量は、上記のように約1kDa〜400kDaの範囲とすることが好ましい。より好ましくは約10kDa〜100kDaの範囲である。
【0026】
チロシン残基を有する物質が、チロシン残基を有するタンパク質またはペプチドである場合、そのようなタンパク質及びペプチドの一例として、ウシ血清アルブミン(分子量約64kDa)を挙げることができる。ウシ血清アルブミンは市販品を入手可能であり、ウシ血清からの精製方法や精製度により、多くの種類の試薬として販売されている。また、ウシ血清アルブミン以外の、ヒト、ウサギ、マウス、ヤギ、ニワトリ、モルモット等由来の血清アルブミンもチロシン残基を有するタンパク質またはペプチドとして同様に使用することができる。
【0027】
チロシン残基を有する物質は、チロシン残基を導入したタンパク質またはペプチドであることもできる。チロシン残基を導入したタンパク質としては、例えば、チロシン残基を導入したウシ血清アルブミンを挙げることができる。チロシン残基を導入したウシ血清アルブミンとしては、例えば、パラハイドロキシフェニルプロピオニル化ウシ血清アルブミンを挙げることができる。
【0028】
パラハイドロキシフェニルプロピオニル化ウシ血清アルブミンは、ウシ血清アルブミンにさらに、パラハイドロキシフェニル基を導入する目的で、パラハイドロキシフェニルプロピオニル化したものである。パラハイドロキシフェニルプロピオニル化ウシ血清アルブミンは、ボルトンハンター試薬を使いBSAのアミノ基にパラハイドロキシフェニルプロピオニル基を導入することで調製できる。パラハイドロキシフェニル基の導入量は、パラハイドロキシフェニル基の導入によって、変化するチラミドとの反応性を考慮して適宜決定できる。パラハイドロキシフェニル基の導入量は、反応条件、特に、パラハイドロキシフェニルプロピオニル基の原料となるボルトンハンター試薬とウシ血清アルブミンとの比率を調整することで、変化させることができる。ボルトンハンター試薬によるパラハイドロキシフェニルプロピオニル基の導入は、ウシ血清アルブミンに限らず、アミノ基を有する物質であれば適用できる。
【0029】
[過酸化水素]
本発明の方法は、前記化学式からも分かるように、反応系中に存在する過酸化水素の量を、蛍光標識を有する反応生成物の量を介して測定するものであり、過酸化水素の起源は、特に限定されない。但し、本発明の方法は、微量(例えば、約20nM〜200nM)の範囲の濃度の過酸化水素の定量に適している。但し、この範囲に限定される意図ではない。そのような観点から、グルコースオキシダーゼ等の酵素の反応により生成した微量の過酸化水素の定量に特に適している。酵素の反応により微量の過酸化水素が生成する系は、特に限定はされないが、例えば、過酸化水素が酸化還元酵素によって生成される系であることができる。さらに、上記酸化還元酵素は、例えば、グルコースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、アシルCoAオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ、グリセリロールオキシダーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、NADHオキシダーゼ、ウリカーゼ、キサンチンオキシダーゼ、チラミンオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、ヒスタミンオキシダーゼおよびスーパーオキシドジスムターゼから成る群から選ばれる少なくとも1種の酵素であることができる。さらに、過酸化水素は、ヒドロキシラジカル分子により非酵素反応的に生成されたものであることもできる。
【0030】
酵素の反応により微量の過酸化水素が生成する系としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0031】
1)
グルコース + O2 + H2O(グルコースオキシダーゼ)→ グルコン酸 + H2O2
【0032】
2)
コレステロールエステル+ H2O(コレストロールエステラーゼ)→ コレステロール + 脂肪酸
【0033】
コレストロール + O2(コレストロールエステラーゼ)→ Δ4−コレステノン + H2O2
【0034】
3)
アルコール + O2 + H2O(アルコールオキシダーゼ)→ HCHO + H2O2
【0035】
4)
Acyl-CoA + O2 (アシルCoAオキシダーゼ)→ enoyl-CoA + H2O2
【0036】
5)
アミノ酸 + O2 +H2O (アミノ酸オキシダーゼ)→ 2オキソ酸 + NH3 + H2O2
【0037】
6)
コリン + H2O + 2O2(コリンオキシダーゼ)→ ベタイン + 2H2O2
【0038】
7)
乳酸 +O2(乳酸オキシダーゼ)→ ピルビン酸 + H2O2
【0039】
8)
ピルビン酸+ Pi + O2(ピリビン酸オキシダーゼ)→ アセチルホスフェート + CO2 + H2O2
【0040】
9)
グリセロール-3-リン酸 + O2(グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ)→ ジヒドロアセトン3リン酸 + H2O2
【0041】
10)
グリセロール + O2(グリセロールオキシダーゼ)→ ジヒドロアセトン + H2O2
【0042】
11)
ザルコシン + H2O + 2O2(ザルコシンオキシダーゼ)→ グリシン+ホルムアルデヒド + H2O2
【0043】
12)
2ビリルビン + O2(ビリルビンオキシダーゼ)→ 2ビリベルジン + H2O2
【0044】
13)(NADHオキシダーゼ)
2NADH + H2 + 2O2(NADHオキシダーゼ)→ 2NAD + 2H2O2
【0045】
14)
尿酸 + H2O + O2(ウリカーゼ)→ アラントイン + CO2 + H2O2
【0046】
15)
キサンチン + H2O + O2(キサンチンオキシダーゼ)→ 尿酸 + H2O2
【0047】
16)
RCH2NH2 + H2O + O2(チラミンオキシダーゼ)→ RCHO + NH3 + H2O2
【0048】
17)
ガラクトース +H2O + O2(ガラクトースオキシダーゼ)→ ガラクトヘキソジアルドース + H2O2
【0049】
18)
ヒスタミン + H2O + O2(ヒスタミンオキシダーゼ)→ イミダゾールアセトアルデヒド + NH3 + H2O2
【0050】
19)
・O2- + ・O2- +2H+(スーパーオキシドジスムターゼ)→ O2 + H2O2
【0051】
20)
・OH + ・OH → H2O2
【0052】
グルコースオキシダーゼにより過酸化水素が生成する系の利用例としては、上記1)に示す、グルコースにグルコースオキシダーゼを作用させて生成した過酸化水素の量を、本発明の方法により測定することを含む、グルコース濃度の測定方法を挙げることができる。
【0053】
また、グルコースオキシダーゼにより過酸化水素が生成する系の別の利用例としては、上記1)に示す、グルコースにグルコースオキシダーゼを作用させて生成した過酸化水素の量を、本発明の方法により測定することを含む、グルコースオキシダーゼの活性測定方法を挙げることができる。
【0054】
さらに、過酸化水素が生成する系の利用例としては、上記反応により基質と酵素を組み合わせて生成した過酸化水素の量を、本発明の方法により測定することを含む、基質濃度の測定またはその酵素活性の測定法に利用できる。例えば、従来のELISA法の検出方法における、過酸化水素を測定する系(例えば、グルコースオキシダーゼ系またはビオチンラベルしたグルコースオキシダーゼの発色またはルシフェラーゼの化学発光の系)にも、本発明の方法は利用できる。即ち、標識酵素としてグルコースオキシダーゼを使用するELISA法において、前記反応系1)で示す反応により、生成する過酸化水素を本発明の方法を用いて測定することができる。このELISA法における測定対象は特に制限はないが、標識酵素で標識した抗体によって特異的に認識される物質であり、例えば、タンパク質等の抗原性物質を挙げることができる。抗原性物質としては、タンパク質以外に例えば、ダイオキシン、PCNB、農薬、糖鎖等を挙げることができる。尚、ELISA法に用いる過酸化水素を生成する酵素は、グルコースオキシダーゼに限らず、過酸化水素を生成する前述した種々の酵素であることができる。
【0055】
また、過酸化水素が生成する系の利用例としては、過酸化水素を測定することを利用した核酸の定量方法を挙げることもできる。この方法は、例えば、グルコースオキシダーゼを固定化した核酸またはグルコースオキシダーゼを固定化した核酸プローブとハイブリダイズした核酸配列の存在量を、固定化されたグルコースオキシダーゼによる過酸化水素の生成を測定することで、定量するものである。グルコースオキシダーゼの核酸または核酸プローブへの固定化は、公知の手段を適宜用いることができるが、例えば、アビジンまたはストレプトアビジン−ビオチンの系を用いて行うことができる。アビジンまたはストレプトアビジン−ビオチンの系を用いる場合は、例えば、ビオチン化dUTPを用いてビオチン化した核酸または核酸プローブを調製し、アビジンまたはストレプトアビジン化したグルコースオキシダーゼを調製し、これらを混合することができる。固定化する酵素としては、グルコースオキシダーゼに限らず、過酸化水素を生成する前述した種々の酵素を用いることができる。
【0056】
[ペルオキシダーゼ]
本発明では、ペルオキシダーゼを用いる。このペルオキシダーゼは、蛍光標識したチラミドとフェノール基を有するキャリア物質とを過酸化水素の存在下で反応させることができるものであれば、特に制限はない。ペルオキシダーゼは、ヘム酵素群であり、例えば、以下のものを挙げることができる。ペルオキシダーゼとしては、動物・植物・微生物界に広く分布する酵素の一種で、西洋ワサビ・酵母・甲状腺・唾液・牛乳・小腸粘膜・白血球・赤血球などの中に存在するものが挙げられる。ペルオキシダーゼは、具体的には、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、チトクロームP450、ミクロペルオキシダーゼおよびマンガンペルオキシダーゼから成る群から選ばれる少なくとも1種の酵素であることができる。本発明では特に植物にしか存在しない西洋ワサビペルオキシダーゼを用いることが好ましい。
【0057】
[反応]
本発明におけるペルオキシダーゼにより触媒される反応は、下記に示すように、蛍光標識したチラミドとフェノール基を有するキャリア物質とを過酸化水素の存在下で反応させて、蛍光標識を有する反応生成物を生成するものである。
【化2】

【0058】
この反応は、使用する蛍光標識したチラミド、フェノール基を有するキャリア物質、ペルオキシダーゼの種類やこれらの物質の濃度及び過酸化水素の濃度に応じて、その条件は適宜決定できる。反応温度は、室温(例えば、約10〜30℃、好ましくは約15〜25℃)とすることが適当である。但し、ペルオキシダーゼが有する至適温度によっては、より低温またはより高温で実施することもできる。蛍光標識したチラミド、フェノール基を有するキャリア物質、及びペルオキシダーゼの使用量(濃度)は、例えば、以下のようにすることができる。但し、これらの範囲は例示であって、反応条件等を考慮して、適宜変更可能である。
蛍光標識したチラミド: 1nM〜10nM
フェノール基を有するキャリア物質: 1ug/ml〜1mg/ml
ペルオキシダーゼ: 0.1U/ml〜10U/ml
【0059】
[蛍光相関分光測定法による測定]
上記ペルオキシダーゼによる反応で生成した蛍光標識を有する反応生成物の濃度を、蛍光相関分光測定法を用いて測定する。まず、蛍光相関分光測定法について説明する。
【0060】
蛍光相関分光測定法は、焦点レーザー顕微鏡を用いた測定であり、基本は1フェムトリットル以下になる共焦点体積を、ブラウン運動により出入りする蛍光色素や蛍光ラベルした分子の拡散係数を求める計測方法である。通常の操作による希釈で、この共焦点体積に存在する分子を10個程度にすることが出来るために、連続光による励起でも、蛍光強度が分子の出入りに対応してマイクロ秒時間領域での蛍光揺らぎが観測できる。揺らぎの速さを時間相関関数として解析すると蛍光する分子の拡散係数と分子の個数を求めることが出来る。
【0061】
蛍光相関分光測定法は、より具体的には以下の通りである。
使用した蛍光相関分光装置のダイヤグラムを図1a に示す。基本的な構成はレーザー光励起の共焦点蛍光顕微鏡を試料測定部とし,そこでの蛍光発光を検出器でとらえた後、デジタル相関器でデータの記録と解析を行うようになっている。試料測定部を模式的に図2b に示した。励起光であるレーザー光は試料溶液のほんの一点に集中され、かつ共焦点光学系の特性からその一点からの蛍光発光を検出系でとらえることになる。実際の溶液中の測定領域は理想的な点ではなく図1c に示すような円柱状の領域となり、その大きさは直径が約400 nm、軸長が約2 mm、容積としてフェムトリットル(10−15 L)の領域になる。この大きさがFCS が対象としている領域であり容積となる。
【0062】
1 M 濃度で1 L の溶液には約6×1023個の分子が存在しているが、フェムトリットル領域には6×108個の分子が存在し、実際の実験でもよく使われる10 nM(10−8 M)程度の濃度になるとその領域には平均5、6 個の分子が存在することになる。ここでFCS の測定領域は溶液中であり、各蛍光分子はブラウン運動を行っている。一定の測定領域における分子の数は常に一定ではなくある値を中心に変動し「数ゆらぎ」が起きている。さらにこの数ゆらぎに起因して、測定される蛍光の強度に「強度ゆらぎが」発生することになる。この蛍光強度のゆらぎを解析することで拡散速度に関する情報と分子の数に関する情報を得ることができる。
【0063】
次に、本発明において、生成した蛍光標識を有する反応生成物の濃度を、蛍光相関分光測定法を用いて測定する方法を具体的に説明する。使用できる蛍光相関分光測定機は、レーザービームを開口数の大きい対物レンズ(水浸対物レンズ:NA1.0以上)で回折限界まで絞込み、レーザービームの焦点の蛍光だけを検出するために、レーザービームの結像位置にピンホールを置く共焦点光学系からなる測定機器である。蛍光分子を励起するため、レーザーは、チラミドの標識に使用する蛍光分子の種類に応じて適宜決定できるが、例えば、488nm、532nm、または633nmの波長を有するレーザー光を用いることが望ましい。検出器は、暗電流が小さく、光電変換効率が高い、アバランシュフォトダイオードで構成されることが適当である。但し、光電変換効率が十分に高いならば、光電子倍増管を検出器として使用することもできる。
【0064】
さらに、この蛍光相関分光測定機を用いて以下のように、生成した蛍光標識を有する反応生成物の濃度を測定することができる。
(1)FCS専用ガラスボトムプレートを用意する。
(2)FCS測定用標準色素試薬をDyeウェルに分注する。
(3)チラミド反応後のサンプル80μLを各ウェルに分注する。
(4)プレート用遠心機により遠心し(100 g, 1分以下)気泡を除去する。
(5)FCS測定装置をセットし、測定する(過酸化水素を添加していないサンプルをネガティブコントロールとし、過酸化水素を十分量添加したサンプルをポジティブコントロールとする)
(6)FCS測定は1ウェル当たり、3〜5秒測定を3回〜5回行う。
(7)FCS測定後は、ネガティブコントロールから得られる第1成分(蛍光色素)の拡散時間DF1を基準に、ポジティブコントロールから得られる第2成分(チラミド反応の結果蛍光標識されたキャリアタンパク質)の拡散時間DF2を決定する。
(8)各サンプルは、(7)で決定したDF1,DF2を元にカーブフィッティングを行い、過酸化水素濃度を定量する。
【0065】
蛍光相関分光測定法(FCS)は、B/F分離が不必要な測定法であり、反応によって蛍光物質が分子量の大きなキャリア物質に結合した場合、フリーの低分子蛍光物質が共存していてもキャリア物質に結合した蛍光物質の割合を求めることが可能である。本発明では、蛍光物質をキャリア物質に結合する方法としてチラミド転移反応を利用した。このチラミド転移反応では、ペルオキシダーゼと過酸化水素の存在下で、蛍光物質を結合したチラミド分子を、チロシン残基を持ったキャリア物質(蛋白、ペプチド、チロシンリッチ合成ペプチド、さらに詳しくは牛血清アルブミンやチロシン残基を多くもった蛋白や組換え蛋白等)に転移できる。この反応液にはフリーの蛍光分子が結合したチラミド分子とキャリア物質に結合した蛍光分子が共存するが、FCS法で測定することによりこの反応をB/F分離なしで迅速に感度良く測定が可能となった。
【実施例】
【0066】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0067】
実施例1
FCSによる低分子蛍光色素と高分子化蛍光色素混在状態における検量曲線1
高分子蛍光色素を作るために以下の操作を行い調製した。TAMRAが結合したチラミド試薬を用い(大過剰のペルオキシダーゼ(POD)と過酸化水素を含む)、チラミド転移反応によりBSA(ウシ血清アルブミン(分子量約64kDa))をTAMRAで標識した(100mM Tris、170μM BSA、1μMチラミド、10u/ml POD、1mM H2O2、室温30分間反応)。フリーのチラミド色素を取り除くために、ゲルろ過カラムにアプライし、高分子画分(TAMRA標識BSA)を精製した(Sephadex-G25、10cm)。精製したTAMRA標識BSAと低分子TAMRAを終濃度7nMになるように一定の割合で混ぜた終濃度500μg/ml BSAを含む100mMTris-HCl(pH 7.5)に分取し、FCS測定装置にて高分子画分の割合(F2%)を求めた。結果を図2に示す。
【0068】
蛍光色素(TAMRA)とTAMRAをチラミド転移反応でBSAに結合させた高分子体(TAMRA標識BSA)を一定の割合で加えたとき、その混合割合に応じてFCSで測定可能であった。従ってFCS解析により、フリーの蛍光色素が混在している状態でも、高分子に結合した蛍光分子(TAMRA標識BSA)の割合を求めることができることがわかった。
【0069】
実施例2
FCSによる添加過酸化水素の定量曲線
Tris-HCl(pH 7.5)緩衝液に10nMチラミド試薬、10u/mlペルオキシダーゼ及び500μg/ml BSA(ウシ血清アルブミン(分子量約64kDa))を加え、この溶液に過酸化水素を0-5μM(終濃度はそれぞれ1/25)添加し、室温で30分反応させてTAMRA標識BSAを生成させた。添加した過酸化水素の各濃度に対して、FCS測定装置にて高分子画分の割合(F2%)を求めた。結果を図3に示す。
【0070】
チラミド反応で生成されるTAMRA標識BSAをFCSで測定することにより、反応系に添加した過酸化水素量を濃度依存的に定量できることがわかった。過酸化水素濃度は20-200nMの範囲で直線的に測定できた。
【0071】
実施例3
FCSによるグルコースの定量
グルコースにグルコースオキシダーゼを反応させて産生される発生期の過酸化水素を測定することにより、グルコース量の定量を試みた。グルコースオキシダーゼ(GOD)の反応は以下のとおりである。
【化3】

【0072】
10u/mlGOD、10nMチラミド、10u/mlペルオキシダーゼ、500 μg/ml BSA(ウシ血清アルブミン(分子量約64kDa))及び0-30μMグルコース(終濃度0-1.2μM)を含むTris-HCl(pH 7.5)緩衝液を混和し、室温にて30分反応させ、TAMRA標識BSAを生成させた。添加したグルコース量に対して、FCS測定装置にて高分子画分の割合(F2%)を求めた。結果を図4に示す。
【0073】
添加したグルコース量に依存して終濃度0.8μMまでのグルコース量を測定することができた。従って、添加グルコース量に依存して発生する過酸化水素を、チラミド試薬とFCS測定の組み合わせによって定量することができた。本測定法は、糖尿病患者の血清グルコース量(糖尿病患者の血清グルコース量約200mg/dl)の測定に使用できる系であることがわかった。
【0074】
実施例4
FCSによる発生過酸化水素を測定することによるグルコースオキシダーゼ活性の測定
グルコースにグルコースオキシダーゼを反応させて産生される発生期の過酸化水素により、チラミド反応で生成されるTAMRA標識BSA量をFCSで測定した。グルコースオキシダーゼ(GOD)の反応は以下のとおりである。
【化4】

【0075】
20mM グルコース、10nMチラミド、10u/mlペルオキシダーゼ、500 μg/ml BSA
及びGOD(原液2.5u/mlとその1000倍までの希釈液)を含むTris-HCl(pH 7.5 )緩衝液を混和し、室温にて60分まで反応させ、TAMRA標識BSAを生成させた。添加したグルコースオキシダーゼの各希釈液に対して、経時的にFCS測定装置にて高分子画分の割合(F2%)を求めた。結果を図5に示す。
【0076】
3倍希釈GODを添加した系のみで、経時的に高分子画分の割合(F2%)が増加した。一方GODをそれ以上希釈した場合には、F2%の上昇は認められなかった。この結果は、3倍希釈GOD(終濃度0.83u/ml) 以上の濃度の酵素添加により、本反応系で検出できる過酸化水素が産生し、TAMRA標識BSAが生成されたものと考えられる。従って、グルコースとGODの反応で産生される過酸化水素を、チラミド転移反応とFCS装置の組み合わせでF2%を測定することにより、GODの活性が測定できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明を応用した測定法を利用することにより、現在汎用されているELISAやCLEIA測定法を簡便な高感度測定法に変えることができる。本発明を利用できる検査法としては、BSE検査や血液製剤のウイルス検査における検出感度不足による汚染食品や輸血製剤による感染防御に極めて有効な方法になりうる。また、末梢血からの超早期がん診断が可能になる。
【0078】
その他、今後急速に市場が拡大する分野では、遺伝子組換え医薬品・抗体医薬・再生医療・組織工学から由来する製品の厳密で高感度な品質保証のための超高感度残留タンパク質(異種由来タンパク質)の検出系にも汎用的に利用することが可能と思われる。
また一般研究用試薬、環境計測、バイオセンサー等への直接的な利用も見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】蛍光相関分光装置の説明図。
【図2】実施例1においてFCS測定装置にて測定した高分子画分の割合(F2%)を示す。
【図3】実施例2においてFCS測定装置にて測定した高分子画分の割合(F2%)を示す。
【図4】実施例3においてFCS測定装置にて測定した高分子画分の割合(F2%)を示す。
【図5】実施例4においてFCS測定装置にて測定した高分子画分の割合(F2%)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光標識したチラミドとフェノール基を有するキャリア物質とを過酸化水素及びペルオキシダーゼの存在下で反応させて、生成する蛍光標識を有する反応生成物の量を、蛍光相関分光測定法を用いて測定することにより、前記過酸化水素の量を測定する方法。
【請求項2】
蛍光標識物質は、Rhodamine Green、Alexa488、GFP (green fluorescent protein)、YOYO1、TAMRA(carboxytetramethylrhodamine)、TMR(tetramethylrhodamine)、EVOblueTM, またはAlexa647である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
キャリア物質は、分子量が1kDa〜400kDaの範囲の物質である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
キャリア物質は、分子量が10kDa〜100kDaの範囲の物質である請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
キャリア物質は、チロシン残基を有する物質であって、キャリア物質が有するフェノール基は、前記チロシン残基に由来するものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
チロシン残基を有する物質は、チロシン残基を有するタンパク質またはペプチドである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
キャリア物質は、ウシ血清アルブミン(分子量約64kDa)である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
過酸化水素は、酸化還元酵素によって生成されたものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
酸化還元酵素は、グルコースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、アシルCoAオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ、グリセリロールオキシダーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、NADHオキシダーゼ、ウリカーゼ、キサンチンオキシダーゼ、チラミンオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、ヒスタミンオキシダーゼおよびスーパーオキシドジスムターゼから成る群から選ばれる少なくとも1種の酵素である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ペルオキシダーゼは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、チトクロームP450、ミクロペルオキシダーゼおよびマンガンペルオキシダーゼから成る群から選ばれる少なくとも1種の酵素である請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
過酸化水素は、ヒドロキシラジカル分子により非酵素反応的に生成されたものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
蛍光標識を有する反応生成物を、未反応の蛍光標識したチラミドと分離すること無しに蛍光相関分光測定法により測定する請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
グルコースにグルコースオキシダーゼを作用させて生成した過酸化水素の量を、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により測定することを含む、グルコース濃度の測定方法。
【請求項14】
グルコースにグルコースオキシダーゼを作用させて生成した過酸化水素の量を、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により測定することを含む、グルコースオキシダーゼの活性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−228637(P2008−228637A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71782(P2007−71782)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(399053416)学校法人村崎学園 徳島文理大学 (4)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(507090661)株式会社札幌バイオ工房 (3)
【Fターム(参考)】