説明

蛍光読取装置および位置補正用チップ

【課題】本発明は、微生物、細胞、DNAなどを蛍光発光させ、その蛍光発光した発光点の色彩的特性を算出するために、波長域の異なる各画像の発光点の位置を補正し、発光点の色彩的特性を正確に算出する蛍光読取装置とその位置補正を正確に実施するための位置補正用チップを提供すること。
【解決手段】予め設定された1種類あるいは複数種類の異なる波長の光を受けて、異なる波長域で発光する発光体23を基材22の表面に固定した位置補正用チップ21を用いて各画像の発光点の位置を補正し、位置を修正した後、各画像の発光点の輝度値をもとに色彩的特性を算出することができる蛍光読取装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試料、食品検体などの細胞、微生物、DNAなどの検出について、それらを蛍光発光させ、その蛍光を読み取る蛍光読取装置およびその蛍光読取装置で発光点と読み取る際に、各画像の位置補正を行うための位置補正用チップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光色素を用いて画像を取得し、蛍光発光した微生物の計数を行う手法として、土壌や水環境などの夾雑物が多く存在する試料から、発光点の蛍光スペクトルをもとに、細胞を判別することのできる手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これは、干渉デジタル画像を取得できる顕微蛍光スペクトル測定装置を使用し、固体撮像素子(以下、CCD)で撮影された画像上のピクセルごとに得られた分光スペクトルを元に、あらかじめ指定したスペクトル波形と同一な波形をもつピクセルのみを抽出し、画像として生成することができるというものである。これを利用すると複雑なバックグラウンド自家蛍光をもつ夾雑物が混在するような試料であっても、目的の蛍光発光物を判別、計測できるというものである。
【0004】
また、細胞の発色を測定し、フローイメージサイトメータを用いて自動的に細胞を分類することのできる手法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
これは、血液に含まれる白血球やリンパ球などの細胞が複数種含まれる検体に対してギムザ染色を施し、レンズなどで拡大画像を取得して、CCDのRGB値からLab色空間への変換を行い、色彩的特性から該細胞のもつ特徴パラメータを抽出して、自動的に細胞種ごとに分類するというものである。
【特許文献1】特開2002−291499公報
【特許文献2】特開2004−340738公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような従来の方法では、干渉デジタル画像を取得する顕微蛍光スペクトル測定装置の構成において、受像素子以外にも精密な干渉ミラーを含む光学系などが非常に複雑であり、また1画面ごとに測定波長範囲を走査しなければならず、例えメンブランフィルタのようなろ過濃縮手段を利用しても、測定時間が非常に長くなってしまう為、現実的ではない。更に測定を行う間、常に強い励起光を照射し続ける必要があるため、蛍光色素が褪色しやすく、安定した計測を常に行うことが求められる微生物検査用途においては使用が困難である。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、夾雑物を判別するのに必要な色彩的特性を最小限に取得するために、CCD以外に予め設定した波長域の光しか透過しない分光フィルタを備える事で実現可能であり、更に測定時間も極めて短くて済むため迅速検査に使用することが可能であり、かつ蛍光色素の褪色も抑えることが可能であるために、高精度で蛍光発光した発光点の色彩的特性を算出する蛍光読取装置を提供することを目的としている。
【0008】
また、特許文献2のような手法の場合、メチレンブルーなどの着色する染色試薬を使用しているが、これらは増感作用を持たないため、大きさが非常に小さい微生物細胞の場合には、着色する量が微量であるため、染色された微生物の撮影された画像の発光量や発光点の面積も小さい。しかも、異なる波長域の分光フィルタでそれぞれ複数の画像を撮影すると、分光フィルタの特性上、屈折率などの光学特性が若干異なり、各画像は若干(数〜数10ピクセル)であるが、ずれるという問題点を有していた。細菌などの発光点は、1ピクセル〜10ピクレル、多くても30ピクセル程度で発光点を認識する。たとえば、発光点が4ピクセルで認識した場合、1辺が2ピクセルになり、波長域が異なる2つの画像で、さきほどの分光フィルタの屈折率の関係で、3ピクセル位置が異なると、2つの画像の発光点が同じ位置と認識できない。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、異なる波長域の分光フィルタを用いて各画像を撮像すると、各発光点の位置がずれるために、位置を補正し、補正した後の各発光点の各波長域の異なる輝度値から色彩的特性を算出する蛍光読取装置を提供することを目的としている。
【0010】
また、フローイメージサイトメータの場合、異なる波長域での各画像の発光点の位置がずれると補正することが困難である。さらに実際の検体を用いて位置補正を行うと、必ず各波長域で発光するとは限らないでの、実際の検体ごとに位置補正を行うことは難しい。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、予め設定された各照射光の波長に対して、設定された波長域で蛍光することを確認した発光体を用いることで、位置補正を行うことができる位置補正用チップを提供することができる。
【0012】
また、発光体の発光点を撮像した際に発光点の大きさ(面積、即ちピクセル数)が大きいと、各画像の発光点の位置が同じであるか、どうかを正確に確認できない。つまり、ある大きさ以上であると、本来違う位置で発光点であるにもかかわらず、同じ位置での発光点を判断する恐れがある。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、0.2〜7μm程度の細菌の大きさを認識するために、発光体の撮影されたピクレル数を最低限必要な大きさ(ピクセル数)である1〜30ピクセル数にし、各画像の補正位置を正確に求めることができる位置補正用チップを提供することを目的としている。
【0014】
また、蛍光染色法で細菌を検出する方法、その他、DNA、RNA、動物細胞や植物細胞、さらに免疫手法・FISH法を用いて蛍光発光したものを検出する方法において、一般的に蛍光の発光の強度(光量、輝度値など)は非常に弱く、発光点を載せている基材やフィルタなどから発光する背景(以下、バックグランド)が大きいと発光点を正確に撮影することが難しいという課題がある。
【0015】
本発明は、そのような従来の課題を解決するものであり、基材表面にバックグランドを非常に小さくするための加工を施すことで、精度良く位置補正を行うことができる位置補正用チップを提供する事を目的としている。
【0016】
また、位置補正は測定ごとにしなければならないという課題がある。
【0017】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、同一の光学系(光源、レンズ、分光フィルタ、CCDカメラなど)を用いて測定手する場合は、位置補正の値は基本的に変わらない。したがって、予め測定した補正を記憶することで、実際の検体を測定するだけで、自動的に位置補正を行い、その発光点の色彩的特性を算出する位置補正用チップを提供する事を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の蛍光読取装置は上記目的を達成するために、請求項1記載のとおり、画像の発光点の輝度値から発光点の色彩的特性を算出する装置において、1種類あるいは異なる波長の光を照射する複数の光源と光を受光する受光部とそれぞれ異なった波長域の光だけを通す複数の分光フィルタと、発光点の色彩的特性を調べる検体とからなり、異なる波長域で前記受光部により撮影された発光点を有した 複数の画像について、各画像の発光点の位置を補正し、位置を修正した後の画像の発光点の輝度値をもとに色彩的特性を算出するものである。
【0019】
また、請求項2記載の位置補正用チップは、蛍光読取装置の各画像の位置を補正する位置補正用チップにおいて、予め設定された1種類あるいは複数の異なる波長の光を受けて、前記照射された波長と異なる波長で発光する複数の発光体を基材の表面に固定したものである。
【0020】
また、請求項3記載の位置補正用チップは、請求項1記載の蛍光読取装置の前記受光部が固体撮像素子であり、撮像された発光点が1〜30ピクセルの面積になるようにした前記複数の発光体を基材の表面に固定したものである。
【0021】
また、請求項4記載の位置補正用チップは、前記基材の表面に発光体を載せ、基材からの分光反射率を低くする加工を施したものである。
【0022】
また、請求項5記載の位置補正用チップは、前記発光体が高分子蛍光粒子であるものである。
【0023】
また、請求項6記載の蛍光読取装置は、請求項2〜5記載のいずれかの位置補正用チップを用いて各画像の発光点の位置を補正し、その補正された補正値と記憶する記憶手段と前記発光点の色彩的特性を調べる検体の受光する波長が異なる各画像の発光点の位置を前記記録手段の補正値をもとに発光点の位置補正を行った後、各画像の発光点の輝度値をもとに色彩的特性を算出するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の蛍光読取装置によれば、透過波長域が異なる分光フィルタを用いることによって、各波長域の撮影された発光点の位置がずれるため、その発光点の位置を補正することで、本来発光点はひとつであるから、その発光点の各波長域の光量あるいは輝度値から色彩的特性を算出することができる。色彩的特性とは、発光点の色度、設定した複数の波長における輝度値の比などである。色彩的特性を算出するためには、波長域が異なる各画像の各発光点の位置を合わせた上で、その発光点の蛍光波長域の異なる各輝度値から算出する。したがって、位置補正を行い各発光点の位置を合わせることにより、各発光点の色彩的特性から微生物の特定(異物との区別他)や生菌・死菌の区別を確実に精度良く行うことができる。
【0025】
また、本発明の位置補正用チップは、波長域の異なる画像を撮影した際に生じる発光点の位置を補正するために用いるもので、単一あるいは複数の光源によって照射された単一あるいは複数の波長域の光で、予め設定した複数の波長域で蛍光発光することを確認した発光体を用いることによって、その発光体からの発光点について、各波長域での画像のCCDのピクセルの位置を正確に把握し、その位置から画像の2次元の位置を特定し、各画像での発光点が重なるように位置補正することで、位置補正を正確に行うことができる。
【0026】
また、発光点の大きさを1〜30ピクセルにすることで、小さな面積で位置補正ができるため、より正確に位置補正を行うことができる。
【0027】
また、基材表面に発光体を載せ、基材からの発光(バックグランド)を抑制する加工を施すことで、正確な位置情報を得ることができる。バックグランドを抑制する方法として、金属薄膜を発光体の上に形成することで、発光体の発光強度を制御することが可能になり、前記発光点の面積を目的の大きさに制御できる。また、発光体が動くと正確な位置を特定することが難しいため、固定することが必要です。金属薄膜をたとえばイオン蒸着などの方法で行うことで、発光体を固定することもできる。
【0028】
また、位置補正用チップで補正した補正値を記憶手段で記憶させることで、一度補正することで、あとはその補正値を用いて実際の検体の各発光点の色彩的特徴を算出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の請求項1記載の発明は、画像の発光点の輝度値から発光点の色彩的特性を算出する蛍光読取装置に関するものである。蛍光読取装置としては、蛍光色素で動物細胞、植物細胞、細菌などを染色し、蛍光発光した発光点をCCDカメラで撮影した画像から発光点を読取りものである。蛍光色素は、色々な原理によって、各種市販されている。また、FISH法などのように、蛍光色素が結合したDNAプローブで特定のDNAを有する微生物や細胞を検知するものや、DNAチップを用いて特定のDNAを検知するもの、あるいは免疫法で蛍光色素が結合した抗体を用いて、特定のタンパク質を検知するものなど蛍光色素を用いて、その蛍光の発光から各種細胞、微生物、DNA、タンパク質などを検知するために蛍光を読み取る装置に関するものである。この蛍光染色法を用いると、目的の検知するもの以外、たとえばごみ、ほこり、無機物などが一部発光することで、目的のものを正確に検知することが難しいことがある。たとえば、細胞や細菌を染色する蛍光試薬として1,4−ジアミジノ―2−フェニルインドールがあるが、この試薬は紫外光(UV)を照射すると、青色に蛍光発光する。しかし、緑あるいは赤の波長域の蛍光はほとんど発しない。通常は、青の波長域を透過する分光フィルタを用いて、その波長域の光量や輝度値を測定することで、細胞や細菌の検出を行うことができる。しかし、0.1〜数μmのアルミナのような物質が検体に含まれると、細菌と同様に発光し、細菌として検知する可能性がある。このアルミナは、青の波長だけでなく、赤の波長域でも蛍光を発する。つまり、1,4−ジアミジノ―2−フェニルインドールの蛍光色素を用いて、UV光を照射し、青の波長域だけで、ある設定した値よりも高い光量、輝度値であればまず細菌の可能性が高いとして判断し、次に赤の波長域での光量、輝度値がある設定した値以下であれば、細菌と確定し、以上であれば細菌以外のものであると判断できる。このように発光点の色彩的特徴を算出することで、微生物の認識を行うことができる他、生菌と死菌の区別、目的の検知物質の特定など色々な目的で活用できる。一方、カラーCCDを用いて、発光点の色彩をダイレクトに観察、検知することも可能であるが、カラーCCDの場合は、4つのピクセルに青、緑、赤の分光フィルタをつけて、それぞれの輝度値からソフトで色を決めて、画像として映し出す。しかし、顕微鏡を用い目視で観察する場合は大きく拡大するので、問題が少ないが、自動的に検知する装置であれば大きく拡大すると計測に時間がかかり実用的ではない。レンズの倍率が1〜10倍程度であれば、微生物のような小さなものを検知すると、発光点がせいぜい10ピクセル以下であり、大きくても30ピクセルになる。もちろん、CCDの画素数に依存するが、画像数が大きくなればレンズの倍率を下げ、1度の視野(撮影する検体の面積)をできるだけ大きくし、検知するものの発光点の大きさを1〜10、あるいは30ピクセルに設定することで、検体の面積が大きければスキャンの回数を減らし、計測時間も短くすることができる。受光部であるCCD全体に異なる波長域の分光フィルタを設置する、具体的にはUV光を照射して、青の波長域を透過する分光フィルタを通して発光点を撮影し、その後、赤の波長域を透過する分光フィルタと入れ替えて、同様に発光点を撮影する。この2つの画像の発光点を重ね合わせ、発光点の各が像の輝度値から発光点の色彩的特徴を算出するが、異なる波長域の分光フィルタを用いると、画像にずれが生じる。そのずれを補正することで、発光点が小さいものであっても色彩的特徴を精度よく算出できるという作用を有する。
【0030】
また、請求項2記載の発明は、予め設定した単一あるいは複数の照射する光の波長域に対して、予め設定された複数の波長域で蛍光発光することを確認した発光体を基材の上に動かないように固定し、その位置補正用チップを用いることで、異なる波長域の分光フィルタによる撮影された画像の位置のずれが正確にしかも簡単にわかるという作用を有する。
【0031】
また、請求項3記載の発明は、位置補正用チップの発光体の発光点の面積を1〜30ピクセルという小さな面積にすることで、画像のずれを1ピクセル単位で算出することが可能になり、微生物のような小さな発光(1〜30ピクセルの面積)に対しても、ずれを正確に算出し、色彩的特徴も精度良く算出できるという作用を有する。
【0032】
また、請求項4記載の発明は、前記画像においてオブジェクトが重なる領域のうち各発光点の最大輝度値を使用することを特徴としたものであり、一致させる領域を発光点の大きさの範囲内とすることで、他の発光点との誤一致を防止することができるという作用を有する。
【0033】
また、請求項5記載の発明は、基材の表面に発光体が載せ、基材からの分光反射率を低くする加工を施すことで、バックグランドを抑制できるため、発光体の発光のみを検出できるという作用を有する。
【0034】
また、請求項6記載の発明は、位置補正用チップを用いて、算出した補正値を記憶手段に記録されることで、測定ごとに位置補正を行う必要がなく、発光点の色彩的特徴を算出できる。レンズ、CCD、分光フィルタ、焦点距離など光学系が同一であれば、画像のずれは同一と判断できる。したがって、上記光学系が同一で自動的に測定できる蛍光読取装置であれば、一度位置補正された補正値は記憶手段に記憶し、そのまま使用しても問題ない。この記憶手段は、蛍光読取装置に設置しても良いし、パソコンなどで画像処理を行う場合には、パソコンに蛍光読取装置を特定させる認識番号などと補正値の両方を記憶し、蛍光読取装置が別の装置に変っても、その装置に応じた補正値を用いて、発光点の色彩的特徴を算出できるという作用を有する。記憶手段としては記憶できれば良く、例えば、メモリー、パソコンのハードディスクなどがある。
【0035】
なお、レンズ、CCD、分光フィルタなどは、同じ仕様に基づいて製造されたものであっても、仕様の誤差範囲で若干であるはあるがひとつひとつ異なり、蛍光読取装置とすれば、画像のずれ幅も異なる。実際の製造では、全く同じものを大量に製造することは困難であるため、蛍光読取装置ごとに補正値を決定する必要がある。また、一般的に蛍光読取装置は、振動や衝撃に弱く、振動が加わるとピントがずれることがあり、このような場合は、再度画像のずれの位置補正を行う必要がある。再度補正された補正値を記憶手段に際記憶させることで、発光点の色彩的特徴を算出することも可能である。
【0036】
(実施の形態1)
まず、蛍光染色して蛍光読取装置を用いて、目的のものを検出するものは各種あるが、ここでは微生物を検出する方法について述べる。細菌、真菌などの微生物を含む試料を測定するために、固定部となるスライドグラスや、培養ディッシュ、マルチウェルプレート、またはろ過膜や、測定に適した形状を持つセルの観察面表面の表側、もしくは裏側の一方に微生物を固定する。固定は、ポリ‐L‐ リジンのような試薬や、ゼラチンなどの粘着性、付着性をもった高分子材料を表面に薄く塗布し、微生物を含んだ試料を滴下し、表面に吸着させる。またメンブランフィルタのようなろ過膜の場合、上方から液体試料を吸引してろ過し、メンブランフィルタ表面に微生物を平面状に捕捉し、固定する。本発明において、最も好適に実施するものとしては、このようなろ過膜を使用することで、以下の染色や洗浄などの操作が簡便かつ微生物を流失することなく扱うことができるのでよい。また、メンブランフィルタは、薄く、小さいため、そのままでは取り扱いが容易でない。そのため、専用の支持台、吸引口付きのホルダーを使用する、もしくは膜に保持部を結合するか、一体化させたデバイスとすることで容易に膜を取り扱うことができる。
【0037】
また本発明において微生物を含有するか含有する可能性のある検体は液状検体であるが、検査対象が飲料水などの液状サンプルの場合は、それ自体が液状検体となる。検査対象が野菜や肉をはじめとする食材などの固体サンプルの場合は、それをホモジナイズして液状検体としたり、その表面から綿棒などを用いて細胞および微生物を採取し、これを生理食塩水や燐酸緩衝液などに遊離させて液状検体としたりする。また、まな板などの調理器具などが検査対象となる場合、その表面から綿棒などを用いて微生物を採取し、これを生理食塩水などに遊離させて液状検体とする。こうした液状検体をメンブランフィルタで吸引および加圧濾過、また場合によっては超音波を利用して加振ろ過することでメンブランフィルタ上に細胞および微生物を捕捉することができる。
【0038】
また、固定部としては、メンブランフィルタ以外にも、プレパラート表面や、可視光の透過性が高く、平面性の高いプレートの表面や、プレート間の間隙に固定し、もしくは粘着性を持ったシート状、ディスク状のチップデバイス表面、平板培地表面、もしくはシャーレやディッシュ、マルチウェルプレートなどの表面、電極材料や吸着材料の表面などに行う。このとき、固定は、遠心力や、静電気力、誘電泳動力、疎水力などの物理吸着力以外にも、ゼラチンなどの接着成分によるものや、抗原・抗体反応、リガンド・レセプターの反応などの生物的な結合力を用いることができる。
【0039】
また、蛍光染色試薬の浸透を調整するために、必要に応じて、適当な濃度の2価金属錯体や、カチオン性界面活性剤を混合した水溶液などを液体試料に混合させるか、もしくは細胞および微生物が固定部の上方から接触、またはろ過するか、または下方から接触させるなどの手法により、細胞および微生物の細胞膜透過性を一定に保たせることができる。
【0040】
なお、2価金属錯体としては、エチレンジアミン四酢酸などを0.5から100mM程度の濃度範囲にて使用する。
【0041】
なお、カチオン性界面活性剤としては、Tween20やTween60、Tween80、TritonX−100などの細胞に対して侵襲性が低いものが使用でき、これらを0.01から1%程度の濃度範囲にて使用する。
【0042】
次に蛍光染色手段として、乾燥防止成分を混合し、生死菌染色試薬または死菌染色試薬のいずれか、または両方を一定濃度含む染色試薬を固定表面に一定量滴下する。
【0043】
蛍光色素は、核酸結合性の構造をもつが好ましく、生死菌染色試薬として使用するものは、紫外励起で青色蛍光を発するものであれば、1,4−ジアミジノ―2−フェニルインドール(DAPI)、青色励起で緑色蛍光または黄緑色、黄色蛍光を発するもので、例えばアクリジンオレンジ、オキサゾールイエロー、チアゾールオレンジや、SYTO9、SYTO13、SYTO16、SYTO21、SYTO24、SYBR Green I、SYBR Green II、SYBR Goldなどのポリメチン架橋非対称シアニン色素系化合物が使用できる。また、用途によってはグラム陽性菌を染色し、グラム陰性菌は染色されないヨウ化ヘキシジウムなどの生死菌染色試薬を使用することも有効である。
【0044】
また、死菌染色試薬としては、緑色蛍光を発するもので、例えばアクリジン2量体、チアゾールオレンジ2量体、オキサゾールイエロー2量体などのモノメチン架橋非対称シアニン色素2量体や、SYTOX Green、TO−PRO−1などのモノメチン架橋非対称シアニン色素系化合物、赤色蛍光を発するものであれば、ヨウ化プロピジウム、臭化ヘキシジウム、臭化エチジウム、LDS−751、SYTOX Orangeなどのポリメチン架橋非対称シアニン色素などが使用できる。
【0045】
なお、これらの蛍光色素は、細胞および微生物を含む試料に対して、あらかじめ0.1から100μMとなるようを混合しておき、同時に作用させるか、もしくは別々に、時間を置かず、もしくは適当な時間間隔を開けて所定の濃度で作用させることとする。
【0046】
なお、メンブランフィルタ上に捕捉した細胞および微生物を含む物質表面が、測定中に乾燥し、発光強度が変化することを防ぐための手段として、染色試薬には10から60%w/vのグリセロールや、10から90%v/vのD(−)−マンニトールやD(−)−ソルビトールなどの糖アルコール類のいずれかを1種類以上混合させておく。
【0047】
なお、乾燥固化して保存する目的として、ポリビニルアルコールを10から80%程度の適当な濃度にて混合、もしくは後から表面を覆うことで、蛍光発光を比較的安定に保存することができる。
【0048】
なお、固定部として適しているメンブランフィルタとしては、例えば、孔径が0.2μm〜1μmのポリカーボネート製など公知のものを用いることができる。
【0049】
また、画像検出には、蛍光色素に対して特定の波長を照射するための励起光源、分光フィルタ、励起光を直径3mm程度に集光する為の集光レンズ、励起光の成分を除去する為のハイパスフィルタ、試料から発せられる蛍光から特定の波長成分を取り出すための受光フィルタ、拡大する為のレンズユニット、蛍光像を画像の電気信号に変換するためのCCDやCMOSなどの受像素子により構成される。
【0050】
蛍光染色試薬として使用する蛍光色素の主な発光波長であるが、例えば、青色励起の場合には波長が470nmから510nm付近の波長成分を含む励起光を照射した場合、波長が510nmから540nm付近の蛍光を発する。緑色励起の場合には、510nmから550nm付近の波長成分を含む励起光を照射し、波長が560から620nm付近の蛍光を発する。オレンジ色励起の場合には、波長が540nmから610nm付近の波長成分を含む励起光を照射した場合、波長が560nmから630nm付近の蛍光を発する。
【0051】
そのため、検出手段である励起光源として、発光ダイオードを使用する場合、青色のものでは、好ましくは480nm付近の波長を発することができるもの、緑色のものでは、好ましくは535nm付近の波長を発することができるもの、黄色からオレンジ色のものでは、好ましくは560nm付近の波長を発することができるものを使用する。
【0052】
なお、発光ダイオードを使用する場合、励起光の成分が広帯域に渡る場合が多く、蛍光画像のバックグラウンドの増加の要因となりうるため、適切な干渉フィルタを使用して、特定の波長成分を切り出して使用する。
【0053】
また、励起光源としてレーザーを用いる場合には、青色のものでは、好ましくは475nm付近の波長を発することができるもの、緑色のものでは、好ましくは535nm付近の波長を発することができるものを使用する。
【0054】
また、励起光源としてハロゲンランプや水銀ランプを使用する場合には、適当な波長域を透過する性質を有した分光フィルタとして、染色試薬の励起波長に合わせて最適な干渉フィルタを使用することができる。また、0.1から10nmの波長分解能を有する反射型や透過型の回折格子により、最適な角度を与え、任意の波長を含む励起光を取り出すことができる。
【0055】
集光レンズは、蛍光染色された細胞および微生物が展開されているメンブレンフィルタに対し、照射範囲が、例えば直径が3mm程度の一定面積となるよう励起光を照射することができる。さらに光を散乱させるための拡散板などを上流側に組み合わせることでより均一な励起光を照射することもできる。
【0056】
サンプルに照射された励起光により発生した蛍光は、ハイパスフィルタを通過することで、色彩的特性は損なわれず、効果的に励起光由来の光成分がカットされる。
【0057】
当該蛍光はレンズユニットを通し、受光部としてCCDを用い、目的の波長域を透過する性質を有した複数の分光フィルタを用いて、波長域ごとに画像を撮影する。これは発光点の面積が数ピクレスのときに有利である。赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3原色を取得できるRGB3種類の蛍光フィルタを含む3CCDなどの電荷結合素子ユニットを用いてもよく、露光時間0.1秒から10秒程度の露光時間でRGB3色からなる画像撮影することにより取得される。カラーCCDは、発光点の面積が、16ピクセル以上、好ましくは36ピクセル以上の場合に有利である。
【0058】
取得する色の輝度情報は、蛍光染色試薬である蛍光色素の蛍光波長範囲であれば、使用可能である。例えばシアニン色素であるSYBR Greenの場合、極大蛍光波長は521nmであるが、蛍光スペクトルは620nm付近まで広がっており、生死菌染色試薬として使用した場合、530nm付近の緑色(G)を画像(a)、610nm付近の赤色(R)を画像(b)として取得することができ、(a)、(b)を使用して微生物と夾雑物との判別が行える。
【0059】
また、単板モノクロCCDやCMOSを使用した場合、適切な受光フィルタを切り替えて使用することで、必要な波長の輝度情報を含む画像を取得することができる。このとき、別の利点として、同一のCCDを使用することで、異なるCCDによる感度特性の差の影響は全く受けずに測定を行うことが可能となり、感度補正を行う工程を省略することができる。
【0060】
これらの操作により取得された複数の蛍光画像は、演算部であるマイコンや外部端末上のプログラムによって処理される。
【0061】
演算部には、画像からドット欠けなどの輝点を除去するための輝点除去部と、画像から発光点を抽出するための発光点抽出部、複数の画像の発光点を照合し、一致させる発光点照合部、照合されて数値が結合されたデータを出力する出力部、蛍光発光を評価する蛍光評価部、染色試薬の輝度より微生物の生死を判別する生死判断部、そして色彩的特性を表す変数によって発光点が微生物もしくは夾雑物であることを判別する微生物判断部、そして測定した画像の有効面積を算出する有効エリア算出部により構成される。
【0062】
まず、輝点除去部であるが、これはCCDなどの受像素子に見られる画素ピクセルの感度ムラや、感度消失した部分によるドット欠けと呼ばれる現象があるが、このドット欠けの輝点が画像上に現れると、微生物の発光点と間違える恐れがあるか、または微生物の発光点を取得できない原因となり、誤差の要因となりうる。そのためこのような輝点は除去する必要があるが、輝点除去用の画像として、光源を照射しない暗視野画像を、露光時間をサンプル測定と同程度かもしくは長めに設定して取得し、輝点のみが写っている画像を得る。そして発光点を写した各画像から輝点画像を減算することにより、輝点のみを削除することが可能となる。そのようにして輝点を除去した画像を以下において使用する。
【0063】
発光点抽出部について、画像中に含まれる発光点のうち、設定された面積、輝度の範囲に該当するものを抽出する。例えば、面積を2から15、輝度を15から255とすると、面積が16以上であるような大きい夾雑物はあらかじめカウントから除外することができ、また輝度が14以下のバックグラウンドノイズ(暗ノイズ)を除去することができる。このしきい値は、レンズの倍率や、励起光源の強度、露光時間などにより最適な値が変化するため、微生物を最適に抽出できる値は、あらかじめ検証して確認することが必要である。
【0064】
なお、最大輝度を示した座標の(x、y)の値、RGBの値を含む場合、それぞれの輝度も数値として同時に抽出される。この処理は、汎用的な画像処理ソフトウェアであるImage Pro Plusなどを使用して実行できる。また、同様の処理を組み込んだプログラムとすることもできる。
【0065】
次に発光点照合部によって、抽出された発光点の数値データと、異なる輝度情報を含む同位置の発光点の数値データとを、座標をもとに比較、照合され、結合される。
【0066】
このとき、異なる輝度情報を含む画像とは、異なる分光フィルタで取得された画像のことを指すが、画像間では分光フィルタの特性や、機械的誤差に起因する座標ズレがわずかに生じる為、そのまま画像のピクセル座標を照合した場合、一致しないことがある。そこで、一方の座標に画像ズレを補正する座標補正値を補って照合させるのだが、同一の光学系の部材から構成されていれば、補正値が変ることは少ない。しかし、機械的誤差については温湿度などの使用環境の影響により、使用するごとに座標ズレの値が変化してしまう場合がある。そのため、座標補正値を測定毎に更新して使用することで、測定ごとに最適な値を使用することが有効である。
【0067】
座標を補正するための補正値は、あらかじめ取得した位置補正用画像から補正値を読み取ることにより取得する。位置補正用画像は、取得する全ての波長域において写りこむ蛍光体を使用して撮像する。取得する波長が緑色と赤色であれば、長波長側の赤色の蛍光粒子が使用でき、同程度の発光強度が得られるように励起光源の強度と露光時間を調節して行う。
【0068】
この位置補正用画像は、複数の実際に撮影する励起波長を照射して、設定した蛍光波長域の蛍光した発光点を撮影したものである。例えば、紫外光を照射して青色の蛍光波長域で撮影した画像の発光点と、緑光で照射して、赤の蛍光波長域で撮影した画像の発光点は、同じになることが理想であるが、実際には分光フィルタの光学的な特性などによって位置(座標)がずれることがある。この2つの画像の各発光点について、画像の座標(具体的には受光してある輝度値以上のピクセルについて、2次元のx、y座標)を求め、そのx、y座標の位置の差を算出する。そして、たとえば、青の蛍光波長域の画像を基準にして、他の蛍光波長域で撮影された発光点の座標の差(位置のずれ)を算出する。その差は、装置が同じ場合は、変化しない値であるので、実際の検体を撮影した画像の発光点の座標から差を差し引いて、各発光点の座標を補正する。発光点はある面積(ピクセル数)で発光点していることが多いため、面積全体、最大輝度値を有したピクセルの位置、面積内の輝度値から重心を求めるなど発光点の特性に応じて位置補正を行うことができる。
【0069】
位置補正を行い各発光点の位置を合わせることにより、各発光点の色彩的特性から、微生物の特定、生菌と死菌の区別、微生物と異物との区別、あるいは異物を微生物と誤認するのを防止することなど、微生物の特定、微生物計測、微生物数の計量、あるいは生菌・死菌の区別などを確実に精度良く行うことができる。
【0070】
また、蛍光体により補正値を自動で算出させるような処理の場合には、個数が多くなると演算する数も多くなり、時間がかかってしまうため、画面あたり5から50個の範囲内が望ましく、1から数分程度と比較的短時間で求めることができる。5より少ないは、補正の精度が低下し、200個以上になると、発光点が多すぎて、どの発光点を同じとするかの認識が難しくなる。200個以下であればプログラムによって位置補正はできる。
【0071】
このような濃度(個数)になるように調整し、確認された蛍光粒子の懸濁液を一定量メンブランフィルタにろ過する、または固定部と反応させることにより、位置補正用画像を取得するための位置補正用チップを作成する。また、これを位置補正用チップとして長期的に繰返し使用したい場合には、ビーズを高分子などで固定するか、金属蒸着で金属薄膜を覆ってしまうことにより固定しておくことで繰返し使用しても外れずに位置が一定になる。また、発光体としては、粒子でなくその他にも、蛍光性の樹脂をマスキングして微小パターンやスポットを形成させるなどにより作成することも有効である。
【0072】
このようにして作成された位置補正用チップは、装置に設置されて実際の計測と同じ動きを与えて画像を撮像する。これにより、モーターの位置制御誤差やバックラッシュなどの機械的誤差、フィルタやレンズの製造誤差、装置を組み上げる際の製造誤差に由来する光軸のズレなどで発生する画像の座標ズレを再現した画像を取得し、その補正値を求めて実際の計測で使用することで、位置精度が高められる。
【0073】
画像中に見られる微生物の発光点を示すオブジェクトは、拡大レンズ系の合計が200から300倍程度および35万画素のCCDのときは、オブジェクトの面積は受像素子上で1から20ピクセル程度になり、一般的には大きくても30ピクセル程度である。もちろん、この値は、倍率やCCDの画素数などによって変化する値ではあるが、微生物であれば、1cellを測定するピクセル数としては効率が良い。これは微生物の細胞1個の直径が0.6から5μm程度であるときに撮像された値である。一方、微生物細胞が2から複数個繋がっていた場合、発光点のオブジェクトの面積は大きくなり、30ピクセルを越えるものも見られる。このような大きな発光点のオブジェクトは、共焦点光学系などの特殊な光学系を使用しない限りは、殆どの場合一つのオブジェクトとして検出され、二つのオブジェクトを分離して検出することが難しい。
【0074】
このとき問題となるのは、二つのオブジェクトが異なる発光特性をもつ場合に、各画像を比較して発光点を照合して輝度を結合したときに、同一のオブジェクトとして検出される、隣り合った微生物の発光輝度を誤って結合してしまうと、本来の微生物の発光特性とは全く異なる不正確なデータが形成されてしまうという恐れがある。そのような事例を防止するためには、発光点の座標をオブジェクトの最大輝度値を示す座標とし、画像間の発光点を照合するときは、その座標から非常に近傍に限定された誤差範囲エリア内にあるもう一方の画像の座標をもつ発光点とのみ結合されるようにすることが必要である。
【0075】
そのため、同一の発光点のオブジェクトとして抽出されているものであっても、照合した場合に一致しないことがありうる。そのとき結合する輝度データが存在しなくなってしまうことを防止するために、照合するもう一方の画像に一致する発光点が検出されなかった場合に、もう一方の画像中の同じ座標のピクセルの輝度値を抽出し、この値を結合させることが有効である。これにより、発光点が一方の画像でしか抽出されなかった場合でも、輝度情報を欠如させることなく、精度よく照合データを作成することができることになる。
【0076】
また、最終菌数の検出精度にも関連するが、生菌と死菌が繋がって存在している場合、上記のような工程を持たせなければ、オブジェクトを死菌として検出してしまう可能性があるが、これにより生菌と死菌が繋がったものとして検出することができるようになり、培養法などとの相関性が向上することに繋がる。
【0077】
照合されて結合されたデータは、出力部によりデータファイルとして出力される。この時点でデータファイルとして保存することで、この後の工程を一度にまとめて処理することも可能となるため、作業が効率化される。
【0078】
発光点の輝度情報をもつデータファイルに対して、生死判断部によって発光点が生菌群であるか、もしくは死菌群であるかいずれかに分類される。このとき、生菌群、もしくは死菌群であることを示すパラメータを与えることで、以降の処理が行いやすくなり、処理を効率化することができる。尚、パラメータとは生菌群であれば1、死菌群であれば2であるというように、発光点のデータの変数を与えることにより行うこととする。
【0079】
生菌群または死菌群であるかを判断する為には、以下のようにグラフを使用することが望ましい。まず、発光点のデータのうち、生死菌染色試薬の輝度と、死菌染色試薬の輝度を用いて、この二つの値よりドットプロットを作成し、表示させる。これは、横軸に生死菌染色試薬の輝度値、縦軸に死菌染色試薬の輝度値をとり、検出された発光点毎にプロットしていく。尚、ドットプロットの表示は、画像処理を行うプログラムのインターフェース上に行うことが良く、発光点のデータファイルを読み出した場合に表示させるようにするとよい。
【0080】
次に、表示されたドットプロットに対して、カーソルを使用して境界線を作成する。境界線は、1本ないし複数本の直線や曲線、多角線などで自由に作成することができるものとし、プロットを見ながら、プロットの集団を分類しやすいように、作成する。なお、境界線の作成工程は、簡単に行えるようにグリッドなどを使用する、あるいは輪郭やプロットにトラップさせるような機能を持たせると、作成が容易であり、かつ正確に行うことができる。
【0081】
また、多角線の場合には、線が交差しないように、一方の方向のみに作成可能とすると確実である。
【0082】
作成した境界線は、取り消すことや、保存することができるようにし、繰り返し使用することができるようにする。
【0083】
次に、作成した境界線をもとに、境界線に相当するしきい値を算出する。算出されたしきい値に対して、グラフの上・左側にあるものが死菌群、反対が生菌群として分類し、パラメータを与えて処理する。
【0084】
生菌群、死菌群が判断された後、微生物判断部によって夾雑物を分離除外する場合は、以下の処理を行う。微生物と夾雑物の判別は、色彩的特性の値を算出することによってなされる。
【0085】
色彩的特徴とは、各波長域の異なる画像の発光点のRGBの輝度値より演算されて与えられた色度、色相角などの色彩を示す値のことである。色彩的特長を示す表色系は、Lab表色系や、LCh表色系、XYZ表色系などの表色系が使用される。ここではXYZ表色系に基づいた色度を用いる。取得される輝度はRGBの色空間のものであるため、このRGBそれぞれの輝度値から、XYZ表色系への変換が行われる。
(数式1)
X=0.3933×R/255+0.3651×G/255+0.1903×B/255
Y=0.2123×R/255+0.7010×G/255+0.0858×B/255
Z=0.0182×R/255+0.1117×G/255+0.9570×B/255
さらに、
x=X/(X+Y+Z)
y=Y/(X+Y+Z)
式中のR、G、BはそれぞれR輝度値、G輝度値、B輝度値であることを示す。これにより細胞および微生物または夾雑物かの判断に必要な値として、最終的にx、yの値が算出される。
【0086】
発光点毎に算出された色度の値であるが、発光点はそれぞれ生菌群、死菌群であるかを判別するためのパラメータが与えられており、生菌群であった場合には、生菌群に対して設定された色度しきい値と比較し、死菌群であった場合には、死菌群に対して設定された色度しきい値と比較して、それぞれに夾雑物が除外される。夾雑物が除外され、生菌、死菌として判断されたものは、積算され、カウントされる。なお、色度まで算出しなくても、受光側の分光フィルタによって、各波長域の発光点の輝度値から直接判断することもできる。たとえば、通常は青の波長域で設定された輝度値より高い値であり、赤の波長域では設定された値より低くければ、微生物と判断し、赤の波長域では設定された値より高ければ、微生物以外と判断するなど、実際の検体を測定し、得られた検証結果からそれぞれの値を設定することで判断することも色彩的特徴とすることができる。
【0087】
次に、このカウント値に対して、実際に使用した検体に含まれる単位量あたり(たとえば1mLや1グラムなど)の菌数の総数を算出する。そのためには、測定した画像のうち、画像処理して使用した有効エリア面積を有効エリア算出部にて求める。測定に使用した有効エリアは、画像の補正値を変数とした関数で求められる。
【0088】
画像の縦の長さをP、横の長さをQ、縦方向の座標補正値をα、横方向の座標補正値をβとすると、1画面あたりの有効エリア画素数Mは数式2のように表される。
【0089】
(数式2)
M =(P−α)×(Q−β)
また、有効エリア面積は、レンズ系の倍率などから、画素あたりの面積を求め、画素あたりの面積をsとするとし、測定視野数をNとして、1画面あたりの有効エリア面積Sと全有効面積は、
(数式3)
S = Ms
全有効面積:S×N
となる。
【0090】
得られた面積に対して、微生物の固定部の固定部分の表面積(例えば、メンブランフィルタの全面積)の値を割り返す。これにより得られた数値を、カウント菌数に掛け合わせることで、最終的な、微生物の生菌または死菌の総数を算出し、菌数を求めることができる。
【0091】
以上の手法を用いて、試料中や細胞培養液に含まれていた微生物の生死を判別し夾雑物と分離して、数を計量することができるのである。
【0092】
図1は、本発明を好適に実施するための蛍光読取装置で、一例として蛍光染色された微生物を計数するものであり、その装置の一態様を示す構成図である。この蛍光読取装置1は、検出手段として励起光源2、干渉フィルタ3、集光レンズ4、緑色の分光フィルタ5、赤色の分光フィルタ6、レンズユニット7、受光素子8を含む。励起光源2から発せられた励起光から目的の波長を取り出すために干渉フィルタ3で分光する。分光された励起光は集光レンズ4を経て検査台9にセットされたメンブランフィルタ10(別途の操作によりメンブランフィルタ上に核酸結合性の蛍光色素で染色された微生物を捕捉してあるもの)上に集光される。メンブランフィルタ10は、発光点の色彩的特徴を調べる検体であり、この場合、発光点とは蛍光染色試薬で染色された微生物である。励起光源2から発せられた青色の励起光は、集光レンズ4によって集光されるが、その際、集光レンズ4によって励起光を照射する範囲は直径3mm程度の微小な一定面積に集光される。励起光を照射されて染色された微生物は蛍光を発する。その蛍光は、緑色の分光フィルタ5あるいは赤色の分光フィルタ6を通り、レンズユニット7により拡大され、受光素子8からなるCCDユニット11に到達し、電気信号化される。これにより得られた信号は画像化され、演算部12によって画像処理される。なお、緑色の分光フィルタ5は、緑色の波長域を透過する特性を持ち、赤色の分光フィルタ6は、赤色の波長域を透過する性質を持っている。これらは、それぞれの波長域の画像を撮影するときに切り替えて使用する。また、励起光源2は複数または1種類であっても、複数の干渉フィルタ3を用いて、複数の励起波長域の光を照射しても良い。励起光、受光する光の波長域も青、緑、赤などではなく、もっと狭い範囲あるいは広い範囲の波長域にすることでも良く、目的の検査するものを検出および特定するために必要な色彩的特徴がわかるようにすることであれば良い。
【0093】
図2は、演算部12における演算工程フローを示した図である。記憶部13、発光点抽出部14、発光点照合部15、出力部16、蛍光評価部17、そして有効エリア算出部18から構成されている。記憶部は、演算部12の外つまり別のメモリーなどに保存することも可能である。
【0094】
まず位置補正を行う方法として、位置補正用チップを撮影した座標補正用画像を読み込んで座標補正値を算出することと、記憶部13から、既に一度位置補正を実施しており、光学系などが同一である装置を用いる場合には、その補正値を記憶部から読み込みことができる。装置の固体認識番号と位置補正値をいっしょに記憶することで、装置の固体認識番号から一度補正を実施したことがある、その時の補正値などの情報を確認して、操作する人が任意に選択できるソフトにすることもできる。次にしきい値などの変数を入力し、輝点除去部によって輝点を除去した画像を作成する。続いて、発光点抽出部により画像中の発光点を特定し、数値データを抽出する。画像によっては座標補正値により座標を補正する。異なる輝度情報を含む発光点のデータは、発光点照合部によって照合し、結合される。これにより集合された数値データは、出力部16によってデータファイルに出力され、保存される。データファイルに対して、生死判断部19によって生菌群または死菌群であるかを判別し、発光点毎に生菌もしくは死菌のフラグを立てる。微生物判断部20により、フラグを検出して生菌群か死菌群かを判断した後、各群ごとに設定した微生物もしくは夾雑物であるかをしきい値と照合して判別し、最終の菌数を算出、出力する。これらは画像処理をプログラミングされたマイコン等であり、外部接続した端末などによって操作されるソフトウェアと通信して使用されるものも該当する。図1では、この演算部を蛍光読取装置内部に設けられているが、この演算部をパソコンにすることも可能である。CCDユニット11で撮影した画像をパソコンで読み込む、または通信し、その画像から好ましい市販のソフトあるいはそのために作成したプログラムを用いてパソコンで位置補正および発光点の画像処理などを行っても良い。
【0095】
図3(a)は、微生物判断部20の詳細を示す。E.coliを含む水検体をメンブレンフィルタにろ過し、生死細胞用蛍光色素であるSYTO9と、死細胞用蛍光色素であるヨウ化プロピジウムを用いて染色したものを、単板モノクロCCDと、青色励起光照射におけるG(緑)輝度画像とR(赤)輝度画像を取得したデータの一例を示す表である。このとき、B輝度画像は、励起光の波長と重なるために取得できず、数値を代入して使用している。この変数は、最適な値に調整することができる。
【0096】
図3(b)に示される工程は、発光点のRGBの輝度から色彩的特徴の一実施例であるXYZ表色系の(x、y)の値への変換を示す。この工程はまず、RGBの輝度を測定する手段によって取得されたRGBそれぞれの輝度値から、リニアRGBへの変換、ガンマ補正がなされる。これにさらに視覚的特性を重み付けし、微生物または夾雑物かの判断に必要な値として、最終的にx、yの値が求められる。このとき、例えば光学フィルタによって青色(B)をカットし、緑色(G)および赤色(R)のみが取得されるような条件の場合には、青色の感度は得られないものとして、あらかじめ実験によって最適化された固定値を代入して使用することや、またはRまたはGの輝度値による関数を設定して使用することもできる。これにより得られた色度の値に対してしきい値と比較することで、微生物か夾雑物であるかを判別する。なお、このときのしきい値は実験により決定する。
【0097】
(実施の形態2)
図4は、本発明を好適に実施するための位置補正用チップの一態様を示す斜視図である。
【0098】
この位置補正用チップ21は、基材22の上に予め設定された1種類あるいは複数の波長域の照射光で、予め設定された複数の波長域で蛍光を発する発光体23が設置されている。この基材22の周囲には、基材22の変形を防止し、持ちやすいように樹脂製のリング24があり、このリング24と基材22はしっかりと固定されている。基材22の上に発光体23があり、さらにその上から基材全体に金属薄膜25が形成されている。
【0099】
この位置補正用チップの製造方法について、一実施例について述べる。基材は、孔径0.2〜1μmの無数の細孔を有するメンブレンフィルタが望ましい。また、基材からの蛍光を抑制する加工を施した、つまりバックグランドが低いものが良く、そのために黒色あるいはそれに使い色が良く、黒色であっても蛍光発光が強いものもあり、分光反射率が低いものが良い。発光体としては、高分子蛍光粒子や染色した微生物などが挙げられる。高分子蛍光粒子は長期間にわたって安定で均一な発光を維持するので、画像の位置補正を正確に繰り返して何度も行うことができ、しかも人体に対する安全性が確保されている点において利用価値が高い。高分子蛍光粒子は、ポリスチレンやスチレン−ジビニルベンゼンなどを材質とする粒子であって、粒子を重合する際に特定波長の励起光によって発光する蛍光染料を添加して製造されるものであり、種々のものが市販されている。高分子蛍光粒子は0.1乃至1.0μmの粒子径のものを使用することが望ましい。
【0100】
小さすぎるとその個数を精度よく計測することが困難になったり、基材としてメンブレンフィルタを採用した場合、フィルタの孔から高分子蛍光粒子が落下するので検査用検体としての加工性が悪くなったりする一方、大きすぎると発光強度が強すぎることにより、画像として撮影した際の発光点の大きさが30ピクセル以上になり位置補正の精度に影響を及ぼす恐れがある。高分子蛍光粒子は、単一種類の高分子蛍光粒子を固定してもよいし、例えば、400乃至450nmの波長の励起光によって緑色発光する高分子蛍光粒子と、500乃至550nmの波長の励起光によって赤色発光する高分子蛍光粒子といったように、予め設定された波長域の照射光によって設定された波長域で蛍光発光するものであればよい。
【0101】
また、検知する目的のものを蛍光染色試薬で染色し、それを用いることもできる。例えば、微生物を検知する場合は、染色された微生物を用いることもでき、この場合にも、同様に蛍光が発することを確認したものを使用する必要がある。
【0102】
この発光体を水に懸濁し、その溶液を基材として採用したメンブレンフィルタでろ過をする。ろ過をすることで、メンブレンフィルタ上に発光体を載せることができる。発光体の個数は、撮影された1画面あたり5から50個の範囲内が望ましく、多くても200個以下が良い。もちろん、200個以上でも位置補正を行うプログラムで対応は可能であるが、計算時間を少なくできる。
【0103】
但し、撮影された発光体の発光点が、隣接することは発光点の位置特定が難しくなるため望ましくなく、少なくとも数ピクセルは離れている必要がある。この個数は、水に懸濁するときの発光体の量とその溶液のろ過量で制御することができる。発光体の基材への固定は、計測時に動かない程度であれば問題ない。発光体の基材への付着力で固定されていればそれでも問題ないが、取扱いが難しくなるため、しっかりと固定する方が良い。基材は樹脂フィルムの他、ガラス、紙、金属などであってもよい。ろ過以外に発光体を基材上にのせ固定することができれば、その他の方法でも良い。
【0104】
基材からの蛍光ノイズであるバックグランドを抑制する方法として、暗色(黒色あるいは黒に近い色)にすることが挙げられるが、その他に金属薄膜を基材および発光体の上に形成することが望ましい。バックグランドを抑制するとは、基材全体の分光反射率を低くすることとごみなどが蛍光発光することを防止することである。この抑制方法として金属薄膜は有効である。金属薄膜は、設定された波長域での分光反射率の低い金属あるいは合金などで行うことが良く、少なくともアルミニウムや銀よりも反射率が低いものが良い。
【0105】
好ましくは、金、銅、クロム、白金、パラジウムから選ばれる少なくとも一種類の金属成分を含む薄膜が良い。薄膜は、一種の金属成分からなるものの他、合金、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属炭窒化物などからなるものであってもよい。また、積層薄膜であってもよい。薄膜の形成方法としては、真空蒸着法、イオンスパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の気相成長法が好適に採用される。真空蒸着法で薄膜を形成すると、この薄膜で発光体の固定することもできる。また、基材上にごみなどがあった場合に、それが蛍光ノイズになることがあり、そのごみの上から金属薄膜が形成されることで、これも防止できる。
【0106】
発光体の発光点の撮影された大きさは、位置補正をできるだけ正確に測定するために、1〜30ピクセルの面積が良い。但し、1ピクセルは、画素欠陥による蛍光ノイズと判断できないことがあり、また、発光点は正方形(固体撮影素子は長方形であるため)が望ましいため、4(2×2)、9(3×3)、16(4×4)、25(5×5)すなわち4〜25ピクセルが望ましい。但し、この発光点の大きさを制御することは難しい。
【0107】
発光体の大きさも全てが均一ではなく、また、上下の位置関係で光学系の焦点の関係で大きさも変化する。そのため、金属薄膜の膜厚である程度調整することも可能である。膜厚は、薄いほどコスト的に有利であるが、10〜100nmとすることが望ましい。10nmを下回ると基材からのバックグランドを抑制する効果が十分に発揮されない恐れがある。また、通常高分子の蛍光粒子を用いると蛍光発光の光量が大きく、発光点の面積が大きくなる。したがって、金属薄膜の膜厚を厚くすると光量が遮られ発光点の面積が小さくなる。発光点の面積を金属薄膜の膜厚で調整することが必要であるが、100nmを超えると表面に割れ、ひびなどが生じやすくなるため、できるだけ薄い方が良い。
【0108】
但し、発光体の発光点の面積を一律1〜30ピクセルの範囲内にすることは非常に難しい。実際には、全てがこの範囲にする制御する必要はなく、できれば半分以上、少なくても5個以上は1〜30ピクセルの面積であれば、位置補正を行うことができる。
【実施例1】
【0109】
E.coliを含む菌液と、水道水(塩素除去済み)の中の菌数を測定する。これらの液体試料を、孔径が0.45μm、直径9mmの黒色メンブランフィルタに表面を金蒸着したものの上方からピペットにて滴下し、吸引ろ過した。メンブランフィルタは、そのままでは表面に触れてしまう恐れがあり、扱いにくいため、周囲を樹脂枠で覆い、一体化させたものを使用した。吸引ろ過圧は、あまり高すぎるとろ過できず、低すぎると微生物へのダメージとなってしまうばかりか、メンブランフィルタが破損することがあるため、100から400Torr付近のポンプ圧に設定して行った。
【0110】
メンブランフィルタ上にろ過するとき、計数しやすさや、逆算する精度の問題から、微生物などの発光物はできるだけ均一に分散させる必要がある。そのため、メンブランフィルタのろ過性能を均一にするために、メンブランフィルタ下方の吸引口にはろ紙などを挟み、吸引圧を拡散して、メンブラン全体に均一にかかるようにして行った。また、それとは別に、メンブランフィルタのポアの通過抵抗を減少させるため、液体試料をろ過する前に、少量の界面活性剤希釈液(Tween20 0.1%)をろ過した。液体試料は、E.coli菌液の場合は0.1mL、水道水の場合は20mLろ過した。
【0111】
続いてメンブランフィルタ上に捕集された微生物に対して、蛍光染色を行った。染色試薬は、生死菌染色試薬であるSYTO24と、死菌染色試薬であるSYTOX Orange(いずれも商品名)を使用した。これらの染色試薬は、空気中で光を吸収して分解しやすいため、ジメチルスルホキシドにて500μMに調整し、少量ずつマイクロチューブに分注してストック液とし、保管した。保管は、マイクロチューブ内に窒素を封入し、マイナス20度のフリーザーにて暗所保管した。必要本数を解凍し、それぞれの試薬10μLに対して希釈液を全量が1mLになるように加え、混合した。
【0112】
この希釈液は、試薬の溶解性と、保存性、細胞への浸透性、乾燥防止性、低自家蛍光性である必要があるが、このような条件を満たすものとして、D−ソルビトールを蒸留水で50%程度に希釈しTris−HClと少量の界面活性剤(Tween20)を混合したものを使用した。
【0113】
終濃度5μMに調整した試薬は、1種類ずつ微生物が捕集されたメンブランフィルタ上方から滴下し、常温にて数分間染色し、余剰の試薬は吸引ろ過にて除去した。染色順序は限定されず、生死菌染色試薬、死菌染色試薬いずれから行っても同様に染色することができる。
【0114】
染色したのち、余剰試薬を吸引によってできる限り除去した後、メンブランフィルタを微生物計数装置に設置し、計測を行った。
【0115】
微生物計数装置は、図1に記載されたものであるが、今回、青色LED(約470nm)と、黄色LED(約560nm)を使用し、分光フィルタとして緑色は530から550nmに透過性をもつものと、赤色は590から610nmに透過性を持つものを使用した。なお、光源には、光束を撮像範囲に照射しやすいよう集光レンズを設けている。
【0116】
また、メンブランフィルタの設置ステージには着脱可能な機構を設け、さらにステージ部材がメンブランフィルタを裏側から平面かつピントが合う高さに固定できるようにし、ピント調節を不要とした。メンブランフィルタを固定したステージは、モーター駆動のXYステージにより移動可能であり、プログラムによってあらかじめ指定した位置への移動を連続的に行うことができるものとした。
【0117】
メンブランフィルタ表面の蛍光画像の取得は、メンブランフィルタの上方に設置された赤外カットフィルタを施した単板モノクロCCDカメラと、拡大レンズ系にて行った。画像を取得する際には、励起光となるLEDが点灯して照射され、分光フィルタを切り替えて目的の波長の画像を取得できるものとし、これらのカメラ、光源、フィルタ、およびステージは、動作をプログラムされたマイコンを使用して制御されるものとした。そして、実際の微生物が捕集されたメンブレンフィルタを計測する前に、図4で示した位置補正用チップを用いて、緑色の分光フィルタを用いて撮影した画像と、赤色の分光フィルタを用いて撮影した画像をもとに位置補正を行い、位置補正を行った発光点について解析を行った。
【0118】
画像の取得は、同一の位置で(a)青色励起,緑色蛍光、(b)青色励起、赤色蛍光、(c)黄色励起、赤色蛍光、の3種類の画像を、露光時間が0.1から3秒程度で連続的に取得し、ステージによって次の撮像領域に移動し、同様に画像を取得するものとした。また、測定の最初には、LEDを点灯させずに画像を取得し、ドット欠けのみを含む画像を取得しておいた。
【0119】
画像を全て取得した後、演算部によりドット欠けの除去、発光点の抽出、照合が行われ、発光点ごとに輝度値を求めたデータを作成した。
【0120】
図5の(a)はE.coliと水道水中にみられる発光点のプロットを生死菌染色試薬であるSYTO24の蛍光波長である青励起、緑蛍光での輝度と、死菌染色試薬であるSYTOX Orangeの蛍光波長である黄色励起、赤蛍光での輝度を2軸におき、ドットプロットを作成したものである。
【0121】
このとき、任意に設定できる境界線として、cがy=100、dがx=yのような直線を設定し、cより小さく、かつdより小さい領域を生菌群、それ以外の領域を死菌群として指定し、該当する領域の発光点に対してフラグを立て、発光点の分類を行った。
【0122】
次に、生菌群として分類された発光点の集団を、XYZ表色系における色度データのうち、xとyの値をグラフ上にプロットした(図5の(b))。このとき、E.coli生菌がx<0.37、y>0.54の領域に分布していたのに対し、水道水中の発光物はxが0.3から0.6、yが0.3から0.6と幅広い領域に分布していることが確認された。このとき、しきい値は、E.coliの値を参考に設定し、xはe=0.37、yはf=0.54として、x<e、y>fの領域に分類された集団を微生物として判別し、水道水中に含まれる発光物のような夾雑物を判別した。その結果、検出された発光点のうち夾雑物の大半を分離することができ、水道水では図5の(a)のとおり生死判断部によって100個の点から32個の点が抽出されたが、さらに図4の(b)によってそのうちの8個が微生物の生菌であると判別することができた。
【0123】
このしきい値は一例であるが、染色に使用する蛍光色素の種類や、濃度、希釈する溶液の極性などによっても変化することから、使用が想定される環境に最も適した値をあらかじめ設定しておくことが好ましい。
【0124】
なお、最終菌数の妥当性については、培養困難である菌も存在する為、適切な培養方法、培地の種類を複数組み合わせて使用し、評価することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、蛍光色素で動物細胞、植物細胞、細菌などを染色し、蛍光発光した発光点をCCDカメラで撮影した画像から発光点を解析するための蛍光読取処置および複数の波長域の画像の発光点の位置を補正するための位置補正用チップであり、発光点の色彩的特徴を算出することができる点において産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の実施の形態1の蛍光読取装置を示す構成図
【図2】本発明の実施の形態1の演算部による演算工程フローを示す図
【図3】(a)E.coliの輝度と色度の演算結果を示す図、(b)色度の演算工程フローを示す図
【図4】本発明の実施の形態1の位置補正用チップを示す斜視図
【図5】(a)本発明の実施例1のE.coliと水道水中の発光物の輝度のドットプロット及び生死判断部による分類方法を示す図、(b)同生菌群の色度図と微生物判断部による判断方法を示す図
【符号の説明】
【0127】
1 蛍光読取装置
2 励起光源
3 干渉フィルタ
4 集光レンズ
5 緑色の分光フィルタ
6 赤色の分光フィルタ
7 レンズユニット
8 受光素子
9 検査台
10 メンブランフィルタ
11 CCDユニット
12 演算部
13 記憶部
14 発光点抽出部
15 発光点照合部
16 出力部
17 蛍光評価部
18 有効エリア算出部
19 生死判断部
20 微生物判断部
21 位置補正用チップ
22 基材
23 発光体
24 リング
25 金属薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の発光点の輝度値から発光点の色彩的特性を算出する蛍光読取装置において、1種類あるいは異なる波長の光を照射する複数の光源と光を受光する受光部とそれぞれ異なった波長域の光だけを通す複数の分光フィルタと、発光点の色彩的特性を調べる検体とからなり、異なる波長域で前記受光部により撮影された発光点を有した複数の画像について、各画像の発光点の位置を補正し、その位置を補正した後の画像の発光点の輝度値をもとに色彩的特性を算出することを特徴とする蛍光読取装置。
【請求項2】
蛍光読取装置の各画像の発光点の位置を補正する位置補正用チップにおいて、予め設定された1種類あるいは複数の異なる波長の光を受けて、前記照射された波長と異なる波長で発光する複数の発光体を基材の表面に固定した位置補正用チップ。
【請求項3】
1種類あるいは異なる波長の光を照射する複数の光源と光を受光する受光部とそれぞれ異なった波長域の光だけを通す複数の分光フィルタと、発光点の色彩的特性を調べる検体とからなり、異なる波長域で前記受光部により撮影された発光点を有した複数の画像について、各画像の発光点の位置を補正し、その位置を補正した後の画像の発光点の輝度値をもとに色彩的特性を算出する蛍光読取装置の前記受光部が固体撮像素子であり、撮像された発光点の面積が1〜30ピクセルの面積を有している前記複数の発光体を基材の表面に固定した請求項2記載の位置補正用チップ。
【請求項4】
基材の表面に発光体を載せ、前記基材からの分光反射率を低くする加工を施した請求項2または3記載の位置補正用チップ。
【請求項5】
発光体が高分子蛍光粒子である請求項2から4のいずれか記載の位置補正用チップ。
【請求項6】
請求項2〜5記載のいずれかの位置補正用チップを用いて各画像の発光点の位置を補正し、その補正された補正値と記憶する記憶手段と前記発光点の色彩的特性を調べる検体の受光する波長が異なる各画像の発光点の位置を前記記録手段の補正値をもとに発光点の位置補正を行った後、各画像の発光点の輝度値をもとに色彩的特性を算出することを特徴とする請求項1記載の蛍光読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−14689(P2008−14689A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184049(P2006−184049)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】