説明

融合光ファイバー光装置システム

【課題】 特に、高い屈折率の光ファイバーから成る融合光ファイバー光装置システムを提供すること。
【解決手段】 光ファイバーから成る少なくとも一つの光学的構成要素と、該光ファイバーで伝送される光が相互作用する少なくとももう一つの光学的構成要素から成る融合光ファイバー光装置システム。前記光ファイバーは、モル%で表される以下の組成のコアガラスから成り、本質的にCdOを含有しない。また、屈折率Ndは少なくとも1.8であって、CTEは74×10−7以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融合光ファイバー光装置システム、特に、高い屈折率の光ファイバーから成る装置に関し、特に、光ファイバーからなる少なくとも一つの光学的構成要素と、該光ファイバーからの光が作用する、少なくとも一つの他の光学的構成要素を持つ融合光ファイバー光装置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバー光学技術は、小さな繊維状の光学素材あるいは光ファイバーを通して、光の伝送を処理する。一般的に、ファイバーは中心部のコアと、ファイバーの長さ全体にわたる外側周囲のクラッドから成る。ファイバーを通した光の伝送は、内部の全反射現象に基づいている。内部で全反射するために、コアの屈折率(n)はクラッドの屈折率より大きくなければいけない。用途によっては、光ファイバー製造に用いられる素材が変わる。一般に、コアガラスとクラッドガラスの屈折率は、大きく異なることが望ましい。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、融合光ファイバー光装置システムの分野、特に、高い屈折率の光ファイバーから成る装置に関する。特に、本発明は、光ファイバーから成る少なくとも一つの光学的構成要素と、該光ファイバーからの光が作用する、少なくとも一つの他の光学的構成要素を持つ融合光ファイバー光装置システムに関する。
【0004】
本発明の好ましい態様においては、光ファイバーは、屈折率が少なくとも1.8であって、74×10−7以上の熱膨張係数(CTE)を有するコアガラスを持ち、本質的にCdOを含有せず、以下のモル%で表示される組成を有する。
La 1−23
ZrO 1−10
W0 ≧2.5
ZnO 1−15
BaO 0−9
20−70
Ta 0−3
CaO 0−7
PbO 6−35
SiO 0−40
As 及び/又は
Sb 0−0.1
Nb 0−3及び
Al 0−8
【0005】
本発明におけるもう一つの好ましい態様では、光ファイバーは、少なくとも1.8の屈折率と、74×10−7以上の熱膨張係数(CTE)を持ち、本質的にCdO、PbOを含有せず、モル%で表示される以下の組成を備えたコアガラスを有する。
La 1−23
ZrO 1−10
W0 ≧2.5
Ta 0−3
ZnO 1−15
BaO+CaO ≧4
20−70
Ta 0−3
SiO 0−40
As 及び/又は
Sb 0−0.1
Nb 0−3 及び
Al 0−8
【0006】
更にもう一つの好ましい態様では、光ファイバーのコアガラスは、少なくとも1.8の屈折率と,74×10−7以上のCTEを有するとともに、CdO、PbO、Taを本質的に含有せず、以下のモル%で表示される組成を有する。
La 1−23
ZrO 1−10
W0 ≧2.5
ZnO 1−15
BaO+CaO ≧4
20−70
SiO 0−40
As 及び/又は
Sb 0−0.1
Nb 0−3 及び
Al 0−8
【0007】
更にもう一つの好ましい態様では、光ファイバーのコアガラスは、少なくとも1.8の屈折率と,74×10−7以上のCTEを有すると共に、CdO、Yを本質的に含有せず、以下のモル%で表示される組成を有する。
La 1−23
ZrO 1−10
W0 ≧2.85
ZnO 1−15
BaO 0−9
20−70
CaO 0−7
PbO 5−35
SiO 0−40
As 及び/又は
Sb 0−0.1
Nb 0−3
Al 0−8 及び
Ta 0−2.9
【0008】
カドミウムのない組成に加えて、本発明においては、ヒ素、鉛、イットリウム、タンタルを減らすか、これらの全くないシステムを提供することが好ましい。本発明の光ファイバーシステムのコアに用いられるガラスの組成は、従来のコアガラス組成にみられた、鉛、イットリウム、タンタル、ヒ素及び/又はカドミウムの酸化物を、光学的及び物理的特性に重大な悪影響を与えることなく、かなり減らすか、排除するという利点がある。
【0009】
本発明の光ファイバーシステムで用いられるコアガラスの組成物の優れた融合性と溶融性は、低融性で高屈折率の成分(例えば、BaO、CaO、WO、ZrO)に対するガラス成分(例えばSiO、B)の比率のバランスをとることによって達成された。
【0010】
本発明に用いられるコアガラス組成物は、ガラスの主成分Bを約20−70モル%含有することが好ましく、特に好ましくは約25−50モル%、そして、約30−40モル%含有することが最も好ましい。
もう一つのガラス成分SiOは、約0−40モル%の量で存する。組成物が約9−15モル%のSiOを含有することが最も好ましい。
【0011】
酸化タングステンWOは、ガラスの中に2.5モル%以上存する。そして光学的微調整に加え、酸化タングステンは、更に、ガラス系における結晶化傾向を減らすことに貢献する。WOの含量は2.5モル%以上であることが好ましく、2.75モル%以上あることが特に好ましい。更に2.85モル%以上であることが最も好ましい。一般的にはWOの量は6モル%より少ない。
【0012】
本発明に用いられるコアガラス組成物においては、Taの含有量が3モル%以下であることが好ましく、約0−2モル%、特に、約0−1.5モル%含有することが好ましい。ある態様では、Taを全く含有しないことが好ましい。ある態様においては、一緒に処理されるWO+Taの最大合計量は、3.5−10モル%であることが好ましく、最も好ましいのは、約3.5−7.5モル%である。
【0013】
結晶の安定性とその耐久性のために、コアガラスに、ZrOを約1−10モル%含有させ、好ましくは約5−10モル%、最も好ましくは約6−9モル%含有させてもよい。
【0014】
屈折率を大きくし、分散特性を高めるために、BaOの含有量は約0−9モル%、特に0−5モル%であることが好ましく、約2−4.50モル%であることが最も好ましい。Laの含有量は、約1−23モル%であることが好ましく、特に好ましくは約5−15モル%、最も好ましくは約7−13モル%である。
【0015】
一般的に、Sbは、Asの代わりにまたはAsと組み合わせて用いることができる。Asが存在しない場合が、特に有用である。Sbは、一般的に0−0.1モル%の量で用いられる。
【0016】
一緒に用いられるアルカリ土類成分CaOとBaOは、合計して4モル%以上であることが好ましく、6モル%以上であることが更に好ましく、8モル%以上であることが最も好ましい。一般的には、CaO+BaOの量は16モル%より少ない。酸化ニオブを用いる態様は、ガラスの屈折率を高めると共に、耐久性を向上させるために有効である。Nbの含有量は約0−3モル%であることが好ましく、0−2モル%であることが特に好ましく、0−1モル%であることが最も好ましい。
【0017】
本発明をもう一つの面からみると、本発明の光ファイバーシステムに用いられる新規なコアガラス組成物は、CTEが74×10−7以上、特に好ましくは75×10−7以上であり、最も好ましいのは、例えば、およそ76,77,78,79,80等76×10−7以上のものである。もう一つの面からみると、屈折率(ナトリウムdライン589.29nm)は、少なくとも1.8である。例えば、1.800,1.805,1.801,1.815,1.820,1.825,1.830,1.835等の何れでもよい。
【0018】
本発明における全てのガラスファイバー成分は、従来通り調整することができる。一般的に、コアガラス棒は、所望の組成を有する溶融液から引き出される。他の方法は、特別な鋳型に溶融液を入れて成型するものである。光伝送光ファイバーは、ここに開示された好ましいコアガラス組成物と適当なクラッドガラスを用い、公知の方法(例えば、二重るつぼ方式又はロッドインチューブ方式)によって、製造することができる。
【0019】
複数のガラス繊維からファイバーの束が作られる。繊維の束をねじることによって、ねじれた束が得られる。このねじれた束は、例えば光電子増倍管から生じる像を回転させ、例えばナイトヴィジヨン望遠鏡に用いられる。コアガラスにクラッドガラスを被覆する方法、棒を引きだし、束を集める等の方法は、すべて従来通りである。例えば、W. B. Allan、「光ファイバー、理論と実践」、プレナム出版 1973、J. Wilbur Hicks, Jr.,Paul Kiritsy, 共著「光ファイバー」ガラス産業4月ー5月編 1962,J. Hecht,「光ファイバーの理解」プレンティス ホール1999,を参照。
【0020】
本発明のガラス組成物の範囲には、諸特性を改善した、カドミウムを含まない光学コアガラスが含まれる。これらの諸特性、特に光学的観点からの諸特性によって、光ファイバーは、光学的な応用、例えば、X線画像、結晶学、タンパク質結晶学等に使用するテーパ、天体画像アレイ、移動窓、携帯電話、生物測定用センサー等、例えばゴーグル、望遠鏡、望遠鏡光学等のナイトヴィジョンテクノロジー用、ビームスプリッタテクノロジーでは、例えば、ビームスプリッタ等、画像化では、例えば、伝送テーパ、ツイスター等、プロジェクシヨン、テレコミュニケーシヨン及びレーザーテクノロジー等への使用に適しているが、これらは、ここで特定されるもの以外にも従来通り用いられる。
【0021】
本発明の融合光ファイバー光装置システムは、一つ以上の光源、レンズ、窓、ビームスプリッタ、反射面又は伝達面、光検知器(CCD’s等)、検知器アレイ、燐光体コーティング、帯域フィルター、センサーアレイ、フィルターコーティング、多チャンネル板、マイクロプロセッサー、表示素子(LCD,LED 等)等を含んでいることの多いアプリケーションに通常見られるシステムを含有する。
【0022】
本発明の光ファイバー組成物は、従来通りのような組成物、あるいはこのような組成物の一部等と共に用いられる[例えばギブスン著「Seeing in the Dark(暗闇で見ること)、発明と技術のアメリカ遺産47−54ページ(1998)、I.P.Csorba著、「イメージチューブズ」、Sams & Co.(1985)]。
【0023】
さらに詳細に説明しなくても、これまでの記述から、当業者は本発明を最大限利用することができると信じられる。従って、以下の具体的態様は単なる例示であり、明細書の他の部分に制限を加えるものではない。尚、前記及び後述する実施例における温度はすべて摂氏であり、指示がない限り、パーツ及びパーセンテージはモル%によるものである。
【実施例】
【0024】
本発明におけるガラスは、通常の原料を溶融することによって作られる。表1−3は、各実施例の組成(酸化物ベース、モル%)、屈折率指数Nd、ガラス材としてのCTE及びガラス転移温度Tg[℃]を表わす。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
本発明のガラスは、以下のように製造される。
酸化物のための原料を計り分ける。精製剤又は薬剤を加えて完全に混ぜ合わせる。ガラス混合物を、連続白金溶融器または2リットルのるつぼ中で、約1300℃で溶かし、約1427℃で精製し、完全に均質にする。ガラスを約1149℃の注入温度で注入し、所望の大きさに加工する。
【0029】
前述の実施例において、一般的又は具体的に述べられた本発明の反応物質及び又は操作条件を、前述の実施例で用いられたものの代わりに用いることによって、同様のの結果を繰り返し得ることができる。前述の説明から、当業者は、容易に本発明の本質的な特性を突き止めることができ、その精神及び視点からはずれることなく、本発明を様々に変えたり修正することができ、様々な利用、及び様々な条件にかなうようにすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーから成る少なくとも一つの光学的構成要素と、該光ファイバーで伝送される光が相互作用する少なくとももう一つの光学的構成要素から成ると共に、前記光ファイバーがモル%で表示される以下の組成のコアガラスから成り、本質的にCdOを含有せず、屈折率Ndが少なくとも1.8であって、CTEが74×10−7以上である融合光ファイバー光装置システム。
La 1−23
ZrO 1−10
W0 ≧2.5
ZnO 1−15
BaO 0−9
20−70
Ta 0−3
CaO 0−7
PbO 6−35
SiO 0−40
As 及び/又は
Sb 0−0.1
Nb 0−3
Al 0−8
【請求項2】
Taが0−2モル%である、請求項1に記載された光装置システム。
【請求項3】
Taの量が0−1.5モル%である、請求項2に記載された光装置システム。
【請求項4】
WOの量が2.75モル%以上である、請求項1に記載された光装置システム。
【請求項5】
CTEが75×10−7以上である、請求項1に記載された光装置システム。
【請求項6】
CTEが76×10−7以上である、請求項5に記載された光装置システム。
【請求項7】
PbOの量が約9−35モル%である、請求項1に記載された光装置システム。
【請求項8】
PbOの量が約10−35モル%である、請求項7に記載された光装置システム。
【請求項9】
光装置システムがナイトヴィジョンテレスコープである、請求項1に記載された光装置システム。
【請求項10】
光装置システムがナイトヴィジョンゴーグルを有する、請求項1に記載された光装置システム。
【請求項11】
光装置システムがビームスプリッタを有する、請求項1に記載された光装置システム。
【請求項12】
BaO+CaOの量が約4モル%以上である、請求項1に記載された光装置システム。
【請求項13】
BaO+CaOの量が約6モル%以上である、請求項12に記載された光装置システム。
【請求項14】
BaO+CaOの量が約8モル%以上である、請求項13に記載された光装置システム。
【請求項15】
WO+Taの量が約3.5−7.5モル%である、請求項13に記載された光装置システム。
【請求項16】
光ファイバーから成る少なくとも一つの光学的構成要素と、該光ファイバーで伝送される光が相互作用する少なくとももう一つの光学的構成要素から成ると共に、前記光ファイバーがモル%で表示される以下の組成のコアガラスから成り、本質的にCdO及びPbOを含有せず、屈折率Ndが少なくとも1.8であってCTEが74×10−7以上である融合光ファイバー光装置システム。
La 1−23
ZrO 1−10
W0 ≧2.5
Ta 0−3
ZnO 1−15
BaO+CaO ≧ 4
20−70
Ta 0−3
SiO 0−40
As 及び/又は
Sb 0−0.1
Nb 0−3
Al 0−8
【請求項17】
Taの量が約0−2モル%である、請求項16に記載された光装置システム。
【請求項18】
Taの量が約0−1.5モル%である、請求項17に記載された光装置システム。
【請求項19】
WOの量が約2.75モル%以上である、請求項16に記載された光装置システム。
【請求項20】
CTEが約75×10−7である、請求項16に記載された光装置システム。
【請求項21】
CTEが約76×10−7以上である、請求項20に記載された光装置システム。
【請求項22】
光装置システムがナイトヴィジョンテレスコープである、請求項16に記載された光装置システム。
【請求項23】
光装置システムがナイトヴィジョンゴーグルを有する、請求項16に記載された光装置システム。
【請求項24】
光装置システムがビームスプリッタを有する、請求項16に記載された光装置システム。
【請求項25】
光ファイバーから成る少なくとも一つの光学的構成要素と、該光ファイバーで伝送される光が相互作用する少なくとももう一つの光学的構成要素から成ると共に、前記光ファイバーがモル%で表示される以下の組成のコアガラスから成り、本質的にCdO、PbO及びTaを含有せず、屈折率Ndが少なくとも1.8であって、CTEが74×10−7以上である融合光ファイバー光装置システム。
La 1−23
ZrO 1−10
W0 ≧2.5
ZnO 1−15
BaO+CaO ≧4
20−70
SiO 0−40
As 及び/又は
Sb 0−0.1
Nb 0−3
Al 0−8
【請求項26】
WOの量が約2.75モル%である、請求項25に記載された光装置システム。
【請求項27】
CTEが約75×10−7である、請求項25に記載された光装置システム。
【請求項28】
CTEが約76×10−7である、請求項27に記載された光装置システム。
【請求項29】
光装置システムがナイトヴィジョンテレスコープである、請求項25に記載された光装置システム。
【請求項30】
光装置システムがナイトヴィジョンゴーグルを有する、請求項25に記載された光装置システム。
【請求項31】
光装置システムがビームスプリッタを有する、請求項25に記載された光装置システム。
【請求項32】
光ファイバーから成る少なくとも一つの光学的構成要素と、該光ファイバーで伝送される光が相互作用する少なくとももう一つの光学的構成要素から成ると共に、前記光ファイバーがモル%で表示される以下の組成のコアガラスから成り、本質的にCdO及びYを含有せず、屈折率Ndが少なくとも1.8であって、CTEが74×10−7以上である融合光ファイバー光装置システム。
La 1−23
ZrO 1−10
W0 ≧2.85
ZnO 1−15
BaO 0−9
20−70
CaO 0−7
PbO 5−35
SiO 0−40
As 及び/又は
Sb 0−0.1
Nb 0−3
Al 0−8
Ta 0−2.9

【公開番号】特開2007−121506(P2007−121506A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−311078(P2005−311078)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(505399856)ショット コーポレーション (1)
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT CORPORATION
【Fターム(参考)】