説明

融着性織布

本発明は、繊維産業において特に融着性芯地として使用され、かつ不織布キャリヤ層を含み、かつ結合剤によって選択領域で結合されており、残りの領域で結合されていない融着性織布であって、そのキャリヤ層の一方の面の少なくとも一部に接着コーティングが施されている融着性織布に関する。この融着性織布は製造が容易であり、対費用効果が高く、良好な弾性、良好な接着強度、良好な風合い、及び好ましい外観等の優れた特性によって特徴付けられ、従来法により堆積装置で繊維から繊維ウェブを製造する工程と、結合剤と熱可塑性ポリマーとの混合物を繊維ウェブの選択領域に塗布する工程と、前工程で得られた繊維ウェブを熱処理して乾燥させ、かつ結合剤で繊維ウェブの繊維を結合させて不織布を得て、場合によって結合剤の架橋を伴い、不織布の表面上に、又は不織布の表面と共に熱可塑性ポリマーを焼結する工程と、を含む方法によって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バインダーによって選択領域で結合されると共に残りの領域では結合されていない繊維ウェブで構成されるバッキング層を含み、かつそのバッキング層の少なくとも一方の面の少なくとも一部に熱可塑性ポリマーが設けられている、繊維産業において融着性芯地として特に有用な融着性織物シート材料に関する。
【背景技術】
【0002】
芯地は、衣類の隠れた足場である。芯地は、正確なフィット性及び最適な着用快適性を確保する。用途に応じて、芯地により、加工性が高まり、機能性が向上し、衣類が安定化する。衣類に加えて、これらの機能により、産業用繊維、例えば家具、室内装飾材料及び家庭用織物における用途を見出すことができる。
【0003】
芯地に必要とされる重要な特性は、柔軟性、弾力性、風合い、洗浄及び手入れ耐久性、さらに使用時におけるバッキング材料側の適切な耐摩耗性である。
【0004】
芯地は、結合繊維ウェブ不織布、織布、ループ型ニット又は同等の織物シート材料から構成され得る。通常、それらには接着化合物がさらに設けられ、それによって一般に、芯地は、熱及び/又は圧力により上部布地に接着され得る(融着性芯地)。このように、芯地は上部布地上に貼り合わされる。上記の様々な織物シート材料は、その製造方法に応じて、異なる特性プロファイルを有する。織布は、縦糸方向及び横糸方向のスレッド又はヤーンからなり、ループ型ニットは、ループ構造によって、織物シート材料に連結されたスレッド又はヤーンからなる。結合繊維ウェブ不織布は、機械的、化学的または熱的に結合されて繊維ウェブを形成するように堆積された個々の繊維からなる。
【0005】
機械的に結合される繊維ウェブ不織布の場合、繊維ウェブは、繊維を機械的に絡め合わせることによって固化される。これには、ニードリング技術、又は水若しくは蒸気の噴出を用いたインターレースのいずれかが用いられる。比較的不安定な風合いであるが、ニードリングによって、柔軟な製品が得られ、そのためこの技術は、かなり特殊な分野での芯地に対してのみ確立されている。さらに、機械的なニードリングには、一般に50g/mを超える坪量が必要であり、多くの芯地用途には重すぎる。
【0006】
水の噴出を利用して固化される不織布は、より少ない坪量で製造することができるが、一般に平坦であり、弾力性を欠いている。
【0007】
化学的に結合される繊維ウェブ不織布の場合には、繊維ウェブは、含浸、吹付けによって、又は他の通例の塗布方法によって、バインダー(例えば、アクリレートバインダー)で処理され、その後硬化される。バインダーは繊維を互いに接着して結合繊維ウェブ不織布を形成するが、バインダーが繊維ウェブ全体に広く分散し、複合材料の構成における場合と同様に、全体にわたって繊維を互いに接着させることから、比較的硬い製品が得られる結果となる。風合い又は柔軟性のばらつきは、繊維の混合又はバインダーの選択によってでは、完全には補償することができない。
【0008】
熱により結合される繊維ウェブ不織布は一般に、芯地として使用するために、カレンダー仕上げ又は熱風で固化される。不織芯地の現在の標準技術は、点状カレンダー固化(pointwise calendar consolidation)である。本明細書における繊維ウェブは一般に、特にこの方法のために開発されたポリエステル繊維又はポリアミド繊維からなり、繊維の融点付近の温度でカレンダーによって固化される。そのカレンダーの1つのロールはポイント凹版(point engraving)を有する。このようなポイント凹版は、例えば64ポイント/cmからなり、例えばシール面12%を有し得る。ポイント配列なしでは、芯地はやや平坦に固化され、不適当に手触りが粗い。
【0009】
ポイント配列は、使用される繊維に応じて十分に柔軟な製品が形成されることを保証するが、結合繊維ウェブ不織布は、ポイントパターン(ポイント・シールの繰り返し)を有する。芯地の柔軟性は、結合ポイント間の繊維の可動性に起因する。しかしながら、箔化により固化される結合ポイントは硬化の一因となる。さらに、これらのポイントパターンは、非常に軽くて薄い上部布地を通して、見栄えを悪くする。さらに、接着化合物が、更なる作業で印刷によって、同様に点状に塗布される。2つの異なるポイント構造は、それらが重なり合うことによって、視覚的干渉(モアレ)効果を生み出し得る。魅力的な風合いを有し十分に柔軟な芯地が得られるが、標準的な技術では、ポイント・シール反復及び接着化合物のポイント塗布によって固化され被覆されるのは、一般に芯地の10〜45%である。
【0010】
織物シート材を製造するための上述した種々の方法は公知であり、教科書及び特許文献に記述されている。
【0011】
芯地に塗布される接着化合物は通常、熱により活性化可能であり、一般に熱可塑性ポリマーからなる。これらの接着化合物コーティングを塗布する技術は、従来技術に従い、繊維シート材料上への個別の作業により行われる。接着化合物に関する技術として、公知であり、かつ特許文献に記述されているのは一般に、パウダーポイント、ペースト印刷、ダブルポイント、スプリンクリング(sprinkling)、ホットメルト法である。ダブルポイントコーティングは現在、手入れ処理(caring treatment)後の上部布地への接着に関して最も有効であると考えられている。
【0012】
このようなダブルポイントは、アンダーポイント及びオーバーポイントからなるという点から、二層構造を有する。アンダーポイントは、基材(base material)を貫通し、接着化合物の逆しみに対するブロッキング層としての役割を果たし、オーバーポイント粒子を固定する役割を果たす。通例のアンダーポイントはバインダーからなり、かつ/又はポリマー充填混合物である。使用する成分に応じて、アンダーポイントは、上部布地との間に形成される接着結合及び基材における固定に寄与する。しかしながら、二層複合体における主要な接着成分であり、かつアンダーポイント上に粉末として散りばめられるのは、オーバーポイントである。散布後の余剰粉末(下層のポイント間)は、再度吸い取られる。その後行われる焼結の後、オーバーポイントは、アンダーポイント上で(熱により)結合され、上部布地に対して接着材料としての役割を果たすことができる。
【0013】
芯地に意図される目的に応じて、様々な数のポイントが印刷され、かつ/又は接着化合物の量又はポイントパターンの幾何学的配置は様々である。一般的なポイント数は、例えば、含浸量9g/mに関してはCP110、或いは、含浸量11g/mではCP52である。
【0014】
上述の方法によって、芯地として使用した場合に高い接着強度を有する融着性織物シート材料が提供されるが、この製造方法は不便でかつ高コストである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、特に繊維産業において融着性芯地として使用される融着性織物シート材料であって、非常に優れた触覚的性質及び視覚的性質、並びに上部布地への非常に高い接着強度を有し、さらに製造するのが簡単かつ安価なシート材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、この目的が、請求項1に記載のすべての特徴を有する融着性織物シート材料によって達成されることを見出した。本発明の好適な詳細は、従属請求項に記載されている。
【0017】
本発明に従い、バインダーによって選択領域で結合されると共に残りの領域では結合されていない繊維ウェブで構成されるバッキング層を有し、かつそのバッキング層の少なくとも一方の面の少なくとも一部に熱可塑性ポリマーが設けられている、繊維産業において融着性芯地として特に有用な融着性織物シート材料は、
従来法により堆積装置(laydown apparatus)で繊維から繊維ウェブを製造する工程(a)と、
バインダーと熱可塑性ポリマーとの混合物を繊維ウェブの選択領域に塗布する工程(b)と、
工程(b)で得られた繊維ウェブを熱処理し、乾燥させると共にバインダーにより繊維ウェブの繊維を結合して結合繊維ウェブ不織布を形成し、場合によってバインダーを架橋し、結合繊維ウェブ不織布の表面上にその表面と一体的に熱可塑性ポリマーを焼結する工程(c)と、
を含む方法によって得られることを特徴とする。
【0018】
本発明の利点は、一例としてポイント印刷法を用いて、一般性を失うことなく記述される。
【0019】
本発明の熱融着性シート材料は、高い接着強度を有する点で注目に値する。実際の接着化合物として作用する、バインダーと熱可塑性ポリマーとで構成される結合ポイントは、驚くべきことに、3P/ダブルポイント構造の従来の接着化合物による結合ポイントと同等の接着強度を有することが明らかとなった。しかしながら、従来のダブルポイントとは対照的に、本発明の結合ポイントは、一段階の工程で塗布することができ、この工程段階はさらに、繊維ウェブから結合繊維不織布を製造するためのバインダーの塗布を同時に含む。従って、本発明の熱融着性シート材料はさらに、製造するのが簡単かつ安価である。
【0020】
同時にまた繊維結合ポイントを部分的に形成するバインダーと熱可塑性ポリマーとの結合ポイントは、固化(consolidation)ポイント間の繊維の移動可能度(possible mobility)を最高にするという結果をもたらす。従って、織物シート材料は、高い弾力性、高い柔軟性、及び心地良い手触りを有する。この織物シート材料は、公知の芯地と対比して、ポイントのグリッドが付加的に設けられていないため、従来技術で知られる望ましくないモアレ効果は、薄手の上部布地を使用した場合でさえ起こらない。その結果、本発明の織物シート材料は、好ましい外観を示す。
【0021】
バインダーを用いた結合が行われることから、ポイント・シール法による熱固化の場合と同様に高価な特殊繊維は必要ないが、例えば特殊に捲縮された繊維を用いてより弾性力のある製品を得ることも可能である。
【0022】
使用されるバインダー量の熱可塑性ポリマー量に対する比、及び繊維ウェブの湿潤性の違いによって、非常に厳密に結合された耐摩耗性製品であってかつ、起毛織布に相当し得る表面を有する非常に柔軟な結合繊維ウェブ不織布を得ることが可能となる。熱可塑性ポリマーの割合を高くすることによって、非常に高い離層抵抗を達成することが可能となる。溶液(liquor)から直接的又は間接的に、好ましくは粒状の熱可塑性ポリマーの表面を修飾することによって、バインダーマトリックスへのその組み込み量を変更することができる。粒子表面がバインダーマトリックスの他の成分によって非常に高い割合で占められることは、実現可能な結合力に対して好ましくない影響を与える。
【0023】
バッキング層に使用される材料の選択、バインダーの選択、及び熱可塑性ポリマーの選択は、それぞれの意図する用途及び/又は特定の品質要求基準を考慮してなされる。原則的に、本発明は全く制限を課さない。当業者は目的に適した材料の組み合わせを容易に見出すことができる。
【0024】
繊維ウェブ用の繊維は、例えば、ポリエステル、ポリアミド、再生セルロース等の人造繊維、及び/又はバインダー繊維、及び/又は羊毛又は綿等の天然繊維、を含み得る。人造繊維は、捲縮可能な、捲縮性の及び/又は非捲縮性のステープルファイバー(短繊維)、捲縮可能な、捲縮性の及び/又は非捲縮性の直接紡糸連続フィラメント繊維、及び/又はメルトブロー繊維等の有限繊維(finite fibers)を含み得る。
【0025】
繊維ウェブは、単層構造又は多層構造を有し得る。
【0026】
繊維線密度(繊度)が6.7dtex(デシテックス)以下の繊維が、芯地に特に適している。それより粗い線密度を有する繊維は、そのかなりの繊維剛性のために通常使用されない。1.7dtex程度の繊維線密度が好ましいが、1dtex未満の線密度を有する超極細繊維も考えられる。
【0027】
バインダーは、アクリレート、スチレン−アクリレート、エチレン−酢酸ビニル、ブタジエン−アクリレート、SBR、NBR、及び/又はポリウレタン系バインダーとすることができる。
【0028】
接着化合物としての役割を果たす熱可塑性ポリマーは、好ましくは、ポリエステル(共重合ポリエステル)ベースのポリマー、ポリアミド(共重合ポリアミド)ベースのポリマー、ポリオレフィンベースのポリマー、ポリウレタンベースのポリマー、エチレン酢酸ビニルベースのポリマー、及び/又は上記のポリマーの組み合わせ(混合物及び連鎖成長付加コポリマー)、を含む。
【0029】
バインダーと熱可塑性ポリマーとの混合物は、上述したようにポイントパターンでバッキング層に塗布されることが好ましい。これによって、材料の柔軟性及び弾力性が確保される。このポイントパターンは、規則的又は不規則的な分布とすることができる。しかしながら、本発明は、決してポイントパターンに限定されない。バインダーと熱可塑性ポリマーとの混合物は、例えば線状、縞状、網状又は格子状構造を含む所望の幾何学的配置で塗布することができ、ポイントは、長方形、ダイヤモンド形又は楕円形等の形状を有する。
【0030】
本発明の熱融着性シート材料の好ましい製造方法は、
従来法により堆積(laydown apparatus)装置で繊維から繊維ウェブを製造する工程(a)と、
バインダーと熱可塑性ポリマーとの混合物を繊維ウェブの選択領域に塗布する工程(b)と、
工程(b)で得られた繊維ウェブを熱処理し、乾燥させると共にバインダーにより繊維ウェブの繊維を結合して結合繊維ウェブ不織布を形成し、場合によってバインダーを架橋し、結合繊維ウェブ不織布の表面上にその表面と一体的に熱可塑性ポリマーを焼結する工程(c)と、
を含む。
【0031】
ステープルファイバーを使用する場合、少なくとも1つのローラーカードでそれらをカーディングして繊維ウェブを形成すると有利である。不規則な重ね合わせ(random lapping)が好ましいが、特殊な不織布の特性を実現すべき場合、及び/又は多層繊維構造が望まれる場合には、縦方向及び/又は横方向の重ね合わせ、及び/又はさらに複雑なローラーカード配置との組み合わせも可能である。
【0032】
非結合繊維ウェブは、印刷機によってバインダーと熱可塑性ポリマーとを含む混合物を用いて直接印刷され得る。この目的のため、結合繊維ウェブにおいて機械的な繊維間接着性を高めて印刷作業をより着実なものとするように、印刷前に繊維ウェブを圧縮し、繊維助剤で湿潤し、又は他の望ましい方法で処理するのがおそらく賢明である。
【0033】
好ましくは、印刷用混合物は分散液の状態で(分散液状で)存在する。非結合繊維ウェブを正確に印刷することは難しいため、使用される分散液成分は、使用する繊維基材及び熱可塑性ポリマーに正確に適合しなければならない。
【0034】
使用される分散液は、好ましくは、
アクリレート、スチレン−アクリレート、エチレン−酢酸ビニル、ブタジエン−アクリレート、SBR、NBR、及び/又はポリウレタン系の架橋剤又は架橋性バインダーと、
増粘剤(例えば、一部架橋されたポリアクリレート及びその塩)、分散剤、湿潤剤、流動調整剤、風合い改質剤(例えば、シリコーン化合物又は脂肪酸エステル誘導体)及び/又は充填剤(フィラー)等の助剤と、
接着化合物として作用する一種又は複数種の熱可塑性ポリマーと、
を含む。
【0035】
熱可塑性ポリマーは、好ましくは粒子の状態で(粒子状で)存在する。織物バッキング層は粒子とバインダーとの分散液で印刷され、場合によって更なる成分との分散液で印刷されるため、驚くべきことに、バインダーは粗い粒子から分離し、粗い粒子は結合領域の上側、例えばポイント表面に静止することが分かった。バインダーは、結合繊維ウェブ不織布を形成するために繊維ウェブに固定されること及び互いに繊維ウェブを結合することに加えて、より粗い粒子をも結合する。同時に、粒子とバインダーとの部分的な分離が、繊維ウェブの表面で起こる。バインダーは材料中により深く浸透し、粒子は表面に蓄積する。その結果、ポリマーの粗い粒子はバインダーマトリックス中に結合するが、同時に結合繊維ウェブ不織布の表面の空いた領域は、上部布地への直接的な接着結合に利用することができる。ダブルポイントに類似の構造が開発されているが、公知のダブルポイント法におけるこの構造の製造とは異なり、同時にバインダーを塗布する役割を果たす単一段階の工程のみが必要とされる。二重層接着化合物ポイントは、最初に塗布される層がブロッキング層として作用することから、接着化合物の逆しみが生じにくい点で注目に値する。驚くべきことに、ダブルポイントに類似する本発明の結合ポイントもまた、この優れた特性を示す。明らかに、本明細書に記載の方法によって、結合ポイントにおいてその場でブロッキング層が形成され、熱可塑性ポリマーの逆しみが効果的に抑制され、結果的に製品の優れた特性が高められる。
【0036】
粒子サイズは、印刷される領域、例えば結合ポイント、の所望のサイズに従って決定される。ポイントパターンの場合には、粒径(粒子の直径)は、0μmよりも大きくかつ500μm未満の範囲で様々である。原則的に、熱可塑性ポリマーの粒子サイズは単一ではなく分布を有し、すなわち常に粒径分布を有する。上記の限界値は、それぞれの主な端数(fractions)である。粒子サイズは、目的の塗布率、ポイントサイズ及びポイント分布に合致しなければならない。
【0037】
使用されるバインダーのガラス転移点は様々であるが、柔軟性のある製品に関しては、10℃未満のガラス転移点Tgを有する「柔軟な」バインダーが好ましいことは従来どおりである。補助材料は、ペーストの粘度を調節する役割を果たす。適切なバインダーによって、広範囲に亘って芯地の触感性を変化させることが可能となる。
【0038】
印刷作業後、材料を熱処理にかけて乾燥させ、バインダーによって繊維ウェブの繊維を結合して結合繊維ウェブ不織布を形成し、任意にバインダーを架橋し、結合繊維ウェブ不織布の表面上に、その表面と一体的に熱可塑性ポリマーを焼結する。次に、融着性織物シート材料として材料を巻き上げる。
【0039】
しかしながら、本発明の熱融着性織物シート材料の使用はこの用途に限定されない。他の用途としては、例えば、布張りされた家具等の家庭用織物、強化された座席構造、座席カバー等の融着性織物シート材料、又は、自動車室内、靴構成要素、若しくは医療・衛生分野における融着性及び伸縮性織物シート材料が考えられる。
【0040】
本発明は、繊維産業で融着性芯地として使用される本発明の融着性織物シート材料の具体例を用いて、一般性を失うことなく記述される。
【0041】
用いられる試験方法:
以下に記載する説明的実施形態(実施例)に示すように、工場内(in-house)において、140℃及び12秒の連続プレスにて、ポプリン型の上部布地への融着が行われた。DIN 54310又はDIN EN ISO 6330に基づいて離層抵抗が決定された。離層抵抗試験において、上部布地と芯地との接着が非常に強力であり、実施されている試験中、層間剥離が完了する前に芯地が裂けた場合には、離層抵抗値は「sp」で示される。接着性は原則として芯地の内部強度よりも強いため、これは目標とされる最大値である。
【0042】
接着化合物の逆しみを決定するために、外側の上部布地と共に芯地から形成される内部サンドイッチを上記の設定に従って融着プレスに通す。内層の接着性が低いほど、接着化合物の逆しみが少なくなる。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
坪量35g/mを有し、かつ異なる熱収縮を有する4.4dtex/60mmのPET/coPET(ポリエステル/コポリエステル)のs/s(並列)複合繊維20%と1.7dtex/36mmの標準ポリエステル繊維80%とからなる繊維ウェブをローラーカードにかけ、120℃にてプレスシステムでカレンダー掛けし、1対のロールを通し、含浸量150%まで水で湿潤する。次に、湿潤した繊維ウェブを110ポイント/cmで回転スクリーン印刷機に通し、バインダー・ポリマー分散液を用いて点状に印刷する。印刷後の繊維ウェブは、ベルト乾燥機にて175℃で乾燥され、バインダーは架橋し、ポリマー粒子は繊維ウェブの上でそれと共に焼結される。
【0044】
バインダー・ポリマー分散液は以下の組成を有する。
=−28℃の自己架橋性ブチルアクリレート/エチルアクリレートバインダー分散液:20部
溶融領域約115℃のコポリアミド粉末(粒径が0より大きく200μm以下):20部
湿潤剤a//n/i:1部
増粘剤:3部
水:56部
【0045】
(実施例2)
坪量25g/mを有し、かつ1.7dtex/38mmのナイロン6繊維50%と1.7dtex/34mmのPET(ポリエステル)繊維50%とからなる繊維ウェブをローラーカードにかけ、150℃にてプレスシステムでカレンダー掛けし、ボトムロールが細かい溝付きのスクーピングロール(scooping roll)である1対のロールを通し、含浸量110%まで水で湿潤する。次に、湿潤した繊維ウェブを110ポイント/cmで回転スクリーン印刷機に通し、バインダー・ポリマー分散液を用いて点状に印刷する。印刷後の繊維ウェブは、ベルト乾燥機にて175℃で乾燥され、バインダーは架橋し、ポリマー粒子は繊維ウェブの上でそれと共に焼結される。
【0046】
バインダー・ポリマー分散液は以下の組成を有する。
=−28℃の自己架橋性ブチルアクリレート/エチルアクリレートバインダー分散液:15部
溶融領域約110℃のコポリアミド粉末(粒径が0〜120μm):30部
湿潤剤a//n/i:1部
増粘剤:2部
水:52部
【0047】
(実施例3)
坪量40g/mを有し、かつ2.2dtex/38mmの螺旋状捲縮コポリエステル繊維30%と1.7dtex/34mmのPET(ポリエステル)繊維70%とからなる繊維ウェブをローラーカードにかけ、110℃にてプレスシステムでカレンダー掛けし、1対のロールを通し、含浸量140%まで水+0.5%助剤で湿潤する。次に、湿潤した繊維ウェブを37ポイント/cmで回転スクリーン印刷機に通し、バインダー・ポリマー分散液を用いて点状に印刷する。印刷後の繊維ウェブは、ベルト乾燥機にて175℃で乾燥され、バインダーは架橋し、ポリマー粒子は繊維ウェブの上でそれと共に焼結される。
【0048】
バインダー・ポリマー分散液は以下の組成を有する。
=−28℃の自己架橋性ブチルアクリレート/エチルアクリレートバインダー分散液:10部
=−10℃の自己架橋性ブチルアクリレート/エチルアクリレートバインダー分散液:10部
溶融領域約120℃のコポリアミド粉末(粒径が80〜200μm):45部
湿潤剤a//n/i:1部
増粘剤:2部
水:32部
【0049】
各実施例に従って製造された織物シート材料の製品特性を表1に示す。表2は、実施例1による織物シート材料とサーマルボンドによる比較例との比較を示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
本発明に係る全ての織物シート材料は、高い離層抵抗に加えて、高い機械的強度、高い伸長性、及び良好な摩耗抵抗を有する点で注目に値することが、表に示される数値から明らかである。実施例1の接着化合物の逆しみに関する挙動のみが、比較例よりもわずかに劣る。本発明に係る織物シート材料の、表に示されていない更なる有利な特性は、表面のかなりの滑らかさである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーによって選択領域で結合されると共に残りの領域では結合されていない繊維ウェブで構成されるバッキング層を有し、かつそのバッキング層の少なくとも一方の面の少なくとも一部に熱可塑性ポリマーが設けられている、繊維産業において融着性芯地として特に有用な融着性織物シート材料であって、
従来法により堆積装置で繊維から繊維ウェブを製造する工程(a)と、
前記バインダーと前記熱可塑性ポリマーとの混合物を前記繊維ウェブの選択領域に塗布する工程(b)と、
工程(b)で得られた前記繊維ウェブを熱処理し、乾燥させると共に前記バインダーにより繊維ウェブの繊維を結合して結合繊維ウェブ不織布を形成し、場合によって前記バインダーを架橋し、前記結合繊維ウェブ不織布の表面上にその表面と一体的に前記熱可塑性ポリマーを焼結する工程(c)と、
を含む方法によって得られる融着性織物シート材料。
【請求項2】
前記繊維ウェブが、ポリエステル、ポリアミド、再生セルロース等の人造繊維、及び/又はバインダー繊維、及び/又は羊毛及び綿繊維等の天然繊維、を含むことを特徴とする請求項1に記載の融着性織物シート材料。
【請求項3】
前記人造繊維が、捲縮可能な、捲縮性の及び/又は非捲縮性のステープルファイバー、捲縮可能な、捲縮性の及び/又は非捲縮性の直接紡糸連続フィラメント繊維、又はメルトブロー繊維等の有限繊維を含むことを特徴とする請求項2に記載の融着性織物シート材料。
【請求項4】
前記繊維の繊維線密度が6.7デシテックス未満であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の融着性織物シート材料。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリエステル(共重合ポリエステル)ベースのポリマー、ポリアミド(共重合ポリアミド)ベースのポリマー、ポリオレフィンベースのポリマー、ポリウレタンベースのポリマー、エチレン酢酸ビニルベースのポリマー、及び/又は上記のポリマーの組み合わせ(混合物及び連鎖成長付加コポリマー)を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の融着性織物シート材料。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリマーが粒子の状態で前記混合物中に存在することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の融着性織物シート材料。
【請求項7】
前記粒子の直径が500μm未満であることを特徴とする請求項6に記載の融着性織物シート材料。
【請求項8】
前記バインダーが、アクリレート、スチレン−アクリレート、エチレン−酢酸ビニル、ブタジエン−アクリレート、SBR、NBR、及び/又はポリウレタン系のバインダーを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の融着性織物シート材料。
【請求項9】
熱可塑性ポリマーとバインダーとの前記混合物が、分散液の状態で塗布されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の融着性織物シート材料。
【請求項10】
前記分散液が、増粘剤、分散剤、湿潤剤、流動調整剤、風合い改質剤、及び/又は充填剤等の助剤を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の融着性織物シート材料。
【請求項11】
前記分散液がスクリーン印刷法によって塗布されることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の融着性織物シート材料。
【請求項12】
バインダーと熱可塑性ポリマーとの前記混合物又は分散液が、規則的又は不規則的に分布するポイントパターンで前記バッキング層に塗布されることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の融着性織物シート材料。

【公表番号】特表2011−503371(P2011−503371A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532448(P2010−532448)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006235
【国際公開番号】WO2009/059651
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(510057615)カール・フロイデンベルク・カー・ゲー (19)
【Fターム(参考)】