説明

融雪屋根材及び融雪屋根構造

【課題】昼間等においては、太陽電池モジュールは太陽光を受けて電気エネルギーに変換し、太陽電池モジュールからの発電電力によりソーラーシステムを得、降雪時等においては、発熱ヒータが発熱し、発熱ヒータの熱により太陽電池モジュール上の積雪を融雪する。
【解決手段】金属屋根材1の表面側に配置される断熱材2と、断熱材の表面側に配置されるシート状の発熱ヒータ3と、発熱ヒータの表面側に配置され、太陽光を電気エネルギーに変換可能な板状の太陽電池モジュール4とからなり、金属屋根材、上記断熱材、発熱ヒータ及び太陽電池モジュールの四部材を一体に形成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば家屋等の建築物や構築物の金属板葺き屋根に用いられる融雪屋根材及び融雪屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の融雪屋根材及び融雪屋根構造として、金属板葺き用の金属屋根材、金属屋根材の表面側に配置されるシート状の発熱ヒータ及び金属屋根材の裏面側に配置され、太陽光を電気エネルギーに変換可能な太陽電池モジュールの三部材を一体に形成し、この複数個の融雪屋根材を敷設し、昼間において、太陽電池モジュールにより太陽光を電気エネルギーに変換し、太陽光発電システムを構築すると共に降雪時においては、発熱ヒータを外部電力からの給電により発熱させ、発熱により屋根材上の雪を溶融除去する構造のものが知られている。
【特許文献1】特許第3418781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来構造の場合、金属板葺き用の金属屋根材の裏面側に発熱ヒータが配置されているから、発熱ヒータから発生した熱は金属屋根材及び太陽電池モジュールを伝導し、この二部材を伝導した熱により雪の溶融除去がなされることになり、発熱ヒータから発生した熱が下方に逃げ易いことも相まって、雪の溶融除去効率が低下しているという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、金属板葺き用の金属屋根材と、該金属屋根材の表面側に配置される断熱材と、該断熱材の表面側に配置されるシート状の発熱ヒータと、該発熱ヒータの表面側に配置され、太陽光を電気エネルギーに変換可能な板状の太陽電池モジュールとからなり、上記金属屋根材、上記断熱材、発熱ヒータ及び太陽電池モジュールの四部材を一体に形成してなることを特徴とする融雪屋根材にある。
【0005】
又、請求項2記載の発明は、上記太陽電池モジュールはアモルファスシリコン層及び薄膜多結晶シリコン層を積層してなる太陽電池が用いられていることを特徴とするものである。
【0006】
又、請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の融雪屋根材を敷設してなることを特徴とする融雪屋根構造にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述の如く、請求項1又は3記載の発明にあっては、融雪屋根材を予め工場内において製作し、建築現場において、複数個の融雪屋根材を屋根に敷設すると共に各太陽電池モジュール及び各発熱ヒータに電気工事を行うことになり、よって、昼間等においては、太陽電池モジュールは太陽光を受けて電気エネルギーに変換し、その太陽電池モジュールからの発電電力によりソーラーシステムを得ることができ、降雪時等においては、発熱ヒータが発熱し、発熱ヒータの熱により太陽電池モジュール上の積雪を融雪することができ、断熱材の存在により発熱ヒータの熱は下方に逃げずに上方に伝達され、それだけ融雪効率を向上することができ、特に、融雪屋根材は、金属屋根材、断熱材、発熱ヒータ及び太陽電池モジュールの四部材を一体に形成してなるので、融雪屋根材の敷設作業を容易に行うことができると共に建築現場における敷設作業性を高めることができ、しかも発熱ヒータは太陽電池モジュールに密着されているので、発熱ヒータの熱の太陽電池モジュールへの伝熱性が高まり、それだけ融雪効率を向上することができる。
【0008】
又、請求項2記載の発明は、上記太陽電池モジュールはアモルファスシリコン層及び薄膜多結晶シリコン層を積層してなる太陽電池が用いられているから、電気エネルギに変換できる光の波長の異なるシリコン層を備えていることなって、発電効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1乃至図8は本発明の実施の形態例を示し、Mは融雪屋根材であって、この場合、金属板葺き用の金属屋根材1の表面側に発泡スチロール、石膏ボードやウレタンフォーム、各種の発泡材等からなる断熱材2を配置し、断熱材2の表面側にシート状の発熱ヒータ3を配置し、発熱ヒータ3の表面側に太陽光を電気エネルギーに変換可能な板状の太陽電池モジュール4を配置し、この金属屋根材1、断熱材2、発熱ヒータ3及び太陽電池モジュール4の四部材を止め片5、フレーム6、ボルト6a、止め片ゴム等の面戸材7及びゴム等のガスケット8等により予め工場において、一体に形成し、主フレーム6の上部に上水切材9をボルト10により取付けると共に主フレーム6の下部に下水切材11をボルト10により取付けて構成している。
【0010】
この場合、金属屋根材1は亜鉛メッキ鉄板やカラー鉄板などからなり、屋根勾配の上方側に上はぜ接合部1a及び下方側に上はぜ接合部1bをそれぞれ形成している。
【0011】
又、この場合、上記太陽電池モジュール4は、図4の如く、外面のガラス4a、透明電極4b、アモルファスシリコン層4c、薄膜多結晶シリコン層4d及び裏面電極4eからなり、即ち、アモルファスシリコン太陽電池と薄膜多結晶シリコン太陽電池の所謂ハイブリッド型太陽電池構造を採用している。勿論他の構造の太陽電池セルを用いてもよい。
【0012】
又、発熱ヒータ3は、この場合、図4の如く、アルミ箔からなる薄膜状の電熱材3aを透明ポリエチレン樹脂からなる絶縁材3bで被覆して全体として厚さが0.2mm乃至0.5mm程度の長尺シート状に形成され、この発熱ヒータ3を、予め工場内において、断熱材2及び太陽電池モジュール4の裏面に接着手段により接着固定するように構成している。
【0013】
又、この場合、発熱ヒータ3及び太陽電池モジュール4は、図示省略の制御器に接続され、制御器には電力会社からの商用電力系統も接続され、太陽電池モジュール4からの発電電力が曇りや雨の天候時、夜間等において不足の場合には電力会社からの商用電力を購入し、しかして、太陽電池モジュール4からの発電電力及び又は商用電力系統からの購入電力の併用給電により発熱ヒータ3に給電するように構成されていると共に太陽モジュール4からの発電量が消費量を上回った場合にはその余剰発電電力を電力会社に販売するように構成されている。
【0014】
尚、上記発熱ヒータ3としては、種々の構造のものを用いることができ、この際、発熱温度を30℃乃至50℃以下に自己温度制御可能な電熱材3aを用いることもでき、例えば、発熱温度が30℃乃至50℃以上に上昇すると抵抗値が急激に増加し、電流が減少し、この温度において発熱温度を自己制御する構造のものを用いることもある。
【0015】
しかして、この実施の形態例の融雪屋根材Mを予め工場内において製作し、建築現場において、例えば複数個の融雪屋根材Mを屋根Kの野地板K1上の防水フェルト材F2上にブラケット11及びバッカー12を用いて、図7、図8の如く、敷設すると共に各太陽電池モジュール4及び各発熱ヒータ3に電気工事を行うことになり、よって、昼間等においては、太陽電池モジュール4は太陽光Sを受けて電気エネルギーに変換し、その太陽電池モジュール4からの発電電力によりソーラーシステムを得ることができ、降雪時等においては、発熱ヒータ3が発熱し、発熱ヒータ3の熱により太陽電池モジュール4上の積雪を融雪することができ、断熱材2の存在により発熱ヒータ3の熱は下方に逃げずに上方に伝達され、それだけ融雪効率を向上することができ、特に、融雪屋根材Mは、金属屋根材1、断熱材2、発熱ヒータ3及び太陽電池モジュール4の四部材を一体に形成してなるので、融雪屋根材Mの敷設作業を容易に行うことができると共に建築現場における敷設作業性を高めることができ、しかも発熱ヒータ3は太陽電池モジュール4に密着されているので、発熱ヒータ3の熱の太陽電池モジュール4への伝熱性が高まり、それだけ融雪効率を向上することができる。
【0016】
この場合、上記太陽電池モジュール4はアモルファスシリコン層4c及び薄膜多結晶シリコン層4dを積層してなる太陽電池が用いられているから、電気エネルギに変換できる光の波長の異なるシリコン層を備えていることなって、発電効率を高めることができる。
【0017】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、横葺きや縦葺き屋根にも適用でき、又、太陽電池モジュール4及び発熱ヒータの3構造や金属屋根材1と断熱材2、発熱ヒータ3及び太陽電池モジュール4の四部材を一体化する一体化構造は適宜変更して設計されるものである。
【0018】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態例の全体側断面図である。
【図2】本発明の実施の部分断面斜視図である。
【図3】本発明の実施の部分分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態例の部分断面図である。
【図5】本発明の実施の形態例の部分断面斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態例の全体平面図である。
【図7】本発明の実施の形態例の敷設状態の全体側断面図である。
【図8】本発明の実施の形態例の敷設状態の全体側断面図である。
【符号の説明】
【0020】
M 融雪屋根材
1 金属屋根材
2 断熱材
3 発熱ヒータ
4 太陽電池モジュール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板葺き用の金属屋根材と、該金属屋根材の表面側に配置される断熱材と、該断熱材の表面側に配置されるシート状の発熱ヒータと、該発熱ヒータの表面側に配置され、太陽光を電気エネルギーに変換可能な板状の太陽電池モジュールとからなり、上記金属屋根材、上記断熱材、発熱ヒータ及び太陽電池モジュールの四部材を一体に形成してなることを特徴とする融雪屋根材。
【請求項2】
上記太陽電池モジュールはアモルファスシリコン層及び薄膜多結晶シリコン層を積層してなる太陽電池が用いられていることを特徴とする融雪屋根材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の融雪屋根材を敷設してなることを特徴とする融雪屋根構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−144469(P2006−144469A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338578(P2004−338578)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(504386657)
【Fターム(参考)】