説明

融雪装置および融雪方法

【課題】 地下水を利用して効率良く融雪を行うことができ、構造が簡易な、融雪装置および融雪方法を提供する。
【解決手段】 投入槽5は、雪を地上から投入するための槽である。投入槽5は上方が開放可能であり、下方には傾斜面を有するシュータが設けられる。破雪部7は、投入槽5のシュータと連通しており、雪を細かく分断するための部位である。流雪部9は、破雪部7と連通しており、破雪部7より流出する雪や水が流れ込む。流雪部9には所定水位の水が溜められており、上方に雪が浮遊する。流雪部9には、蓄熱槽11が併設されている。蓄熱槽11は、内部に所定水位の水が貯留可能である。蓄熱槽11と流雪部9とは内部で連通している。蓄熱槽11内の水は流雪部9に送り込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水を雪に散水して雪を溶かす、融雪装置および融雪方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、豪雪地帯等においては、積雪時に除雪車によって道路が除雪される。道路脇等に除雪された雪は、地域に設置された所定の雪堆積場にトラック等により運搬され、集められる。
【0003】
しかし、早朝に降雪があった場合には、除雪車が通勤ラッシュとぶつかるため、除雪作業が進まない。また、主要幹線道路の除雪が優先されるため、住宅街の除雪は後回しとなり、住宅街の除雪が進まないという問題があった。
【0004】
また、雪堆積場の設置には限界があり、郊外に設けられた雪堆積場までの雪の運搬には、コストがかかり、また、輸送時の排気ガス等による環境汚染や交通渋滞等の問題がある。
【0005】
また、道路脇に除雪された雪が残されたまま、トラック等による排雪がなされない状態では、道路の見通しが悪く、交通事故などの招く恐れがある。
【0006】
したがって、除雪された雪は、除雪された場所からできるだけ近い位置で、確実に融雪されることが望ましい。
【0007】
このような除雪された雪を融雪する装置としては、地下水をくみ上げて、地下に埋設された融雪槽内の雪上に散水して融雪する融雪装置がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−339904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載の地下埋設式融雪装置は、地下水を利用するため、熱源などは必要なく、構造は簡易であるが、上方からシャワーを散水するのみであるので融雪効率はそれほど高くない。また、雪を細かくしたり雪を一度受け止めるための金網や、格子状の中蓋などは、一度に多くの雪を投入した際には雪が堆積するため、投入した雪が溶けるまで次の雪の投入を待つ必要があるという問題がある。
【0010】
また、除雪された雪は、通常押し固められた状態である場合が多く、格子状の中蓋上へ投入した場合には、雪が中蓋によっては簡単には分断されないという問題がある。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、地下水を利用して効率良く融雪を行うことができ、構造が簡易な、融雪装置および融雪方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、地下水によって雪を溶かす融雪装置であって、地下水をくみ上げる第1のポンプと、上方から雪を投入可能な投入槽と、前記投入槽と連通し、下面に傾斜面が形成され、前記第1のポンプで揚水された地下水を、前記傾斜面上の雪に吐出可能な吐出部が配置された破雪部と、前記破雪部と連通し、所定水位の水が溜められ、前記破雪部から流出した雪を浮遊させることが可能な流雪部と、前記流雪部内の雪を溶かすための水を貯留する蓄熱槽と、を少なくとも具備し、前記流雪部と前記蓄熱槽との水を循環する循環手段が設けられることを特徴とする融雪装置である。
【0013】
前記流雪部から流出した水を地下に浸透させる浸透槽をさらに具備してもよく、前記循環手段は、第2のポンプであり、前記第2のポンプによって前記蓄熱槽の水を前記流雪部へ送ってもよい。
【0014】
前記流雪部および/または前記蓄熱槽内の水を攪拌する攪拌手段を更に有し、
前記攪拌手段は、前記流雪部および/または前記蓄熱槽内をバブリングする手段を含んでもよい。
【0015】
前記流雪部と前記浸透槽との間には、第3のポンプが設けられたピットが設けられ、前記流雪部から流出した水は前記ピットに流入して貯留され、前記第3のポンプは、前記ピット内の水温に応じて、前記ピット内の水を、前記浸透槽または前記蓄熱槽へ送水してもよい。
【0016】
前記吐出部は、前記傾斜面の傾斜方向に対して略垂直な方向に複数並列して設けられることが望ましい。前記蓄熱槽内には、複数の樹脂製骨格ブロックが組み合わされてもよい。
【0017】
第1発明によれば、投入された雪を傾斜面上で分断するため、分断された雪が順次流雪部に送られる。このため、投入槽内に雪が堆積することを防止できる。また、雪が浮遊する流雪部内の水は攪拌されるため、浮遊した雪を効率良く融解することができる。また、雪を浮遊させる流雪部と水温を一定に保つ蓄熱槽とを分離したため、雪が蓄熱槽内に堆積することがない。
【0018】
特に、蓄熱槽内の水を流雪部内へ循環させれば、より高い水温の水を流雪部に送ることができ、より効率良く流雪部内の雪を融解することができる。また、流雪部内をバブリングすれば、流雪部内に浮遊する雪を上方に浮上させ、さらに槽内の水が攪拌されるため、融雪効率を高めることができる。
【0019】
また、流雪部から流出した水をピットに溜め、ピット内の水温が低い場合には、そのまま浸透槽に送水して水を地下に浸透させ、ピット内の水温が所定以上であれば、ピット内の水を蓄熱槽に戻せば、より融雪効率を高めることができる。
【0020】
また、吐出部を傾斜面に対して略垂直に複数配列して設置すれば、雪を傾斜方向に対して細かく分断可能であるため、より効率良く投入された雪を分断可能であり、また分断された雪を効率良く流雪部に送ることができる。
【0021】
また、蓄熱槽内に樹脂製骨格ブロックが組み合わされるため、蓄熱槽の上方からの強度を高めることができ、またコンクリートにより蓄熱槽を構築するよりも工数、コストを削減することができる。また、蓄熱槽内を水が流れる際に樹脂製骨格ブロックにより蓄熱槽内の水の流れが複雑になり、蓄熱槽内の水が攪拌されるため、蓄熱槽内の水温が均一化される。
【0022】
第2の発明は、地下水によって雪を溶かす融雪方法であって、地下水をくみ上げる第1のポンプと、上方から雪を投入可能な投入槽と、前記投入槽と連通し、下面に傾斜面が形成され、前記第1のポンプで揚水された地下水を前記傾斜面上の雪に吐出可能な吐出部が配置された破雪部と、前記破雪部と連通し、所定水位の水が溜められ、前記破雪部から流出した雪を浮遊させることが可能な流雪部と、前記流雪部内の雪を溶かすための水を貯留する蓄熱槽と、前記流雪部から流出した水を地下に浸透させる浸透槽と、を具備する融雪装置を用い、前記第1のポンプにより、前記吐出部から雪に散水して、前記傾斜面の傾斜方向に対して略垂直な方向に雪を分断し、前記流雪部内に分断された雪を浮遊させ、前記蓄熱槽内と前記流雪部との間で水を循環させることで前記流雪部内の雪を融解し、前記流雪部から流れ出た水を前記浸透槽で地下に浸透させることを特徴とする融雪方法である。
【0023】
第2の発明によれば、投入された雪が傾斜面上で傾斜面に略垂直な方向に設けられた吐出部によって、雪の流れる方向と略垂直な向きに分断されるため、効率良く雪を流雪部に送りこむことができる。また、流雪部内に浮遊する雪に対しては、蓄熱槽内の水を流雪部内に送り込むため、効率良く雪を融解することができる。特に、雪を浮遊させる流雪部と、水温を一定に保つ蓄熱槽とを分離したため、浮遊する雪が蓄熱槽内に堆積することがない。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、地下水を利用して効率良く融雪を行うことができ、構造が簡易な、融雪装置および融雪方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】融雪装置1の構成を示す概略図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【図2】投入槽5および破雪部7を示す図で、(a)は立面図、(b)は平面図。
【図3】投入槽5に投入された雪57が破雪部7で分断される状態を示す図。
【図4】蓄熱層11および流雪部9を示す図で、(a)は立面図、(b)は(a)のI部C部拡大図。
【図5】蓄熱層11と流雪部9との水の循環を示す図。
【図6】浸透槽17を示す図。
【図7】流雪部9および蓄熱槽11にバブリングを行う状態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のQ−Q線断面図。
【図8】流雪部9aを示す図で、(a)は斜視図、(b)は流雪部9a内に雪57が浮遊する状態を示す図。
【図9】蓄熱槽11と流雪部9aとの間で水を循環させる状態を示す図。
【図10】流雪部および蓄熱槽のその他の形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる融雪装置1を示す概略図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。
【0027】
融雪装置1は、主に揚水部3、投入槽5、破雪部7、流雪部9、蓄熱槽11、浸透槽17等から構成される。図1(b)に示すように、各構成は、地下に配置されている。
【0028】
揚水部3は、地下水をくみ上げるための例えば井戸であり、揚水ポンプ19が設置される。揚水ポンプ19は一般の水中ポンプで良い。揚水部(揚水ポンプ19)の深さは、地下水位よりも深く、かつ、地上の気温等に影響を大きく受けない地下水深さであることが望ましい。
【0029】
揚水ポンプ19の深さが浅すぎると、地下水位よりも揚水ポンプ19が上方に位置して地下水を揚水できず、また、地下水以下であっても、地上の外気の影響が大きいと、水温が低く、融雪効率が低下する。一方、揚水ポンプ19の深さが深すぎると、過剰なポンプ能力が必要となり、施工コストも大きくなる。望ましい揚水ポンプ19深さは、例えば50m〜200m程度が望ましい。この場合、例えば地下水温度は17℃程度であることが多い。
【0030】
投入槽5は、雪を地上から投入するための槽である。投入槽5は上方が開放可能であり、下方には傾斜面を有するシュータが設けられる。
【0031】
破雪部7は、投入槽5のシュータと連通しており、雪を細かく分断するための部位である。投入槽5に投入される雪は、通常押し固められているため、後述する流雪部9に雪を効率良く送るために、細かく雪を分断する必要がある。破雪部7では、塊となった雪を細かく分断しつつ下流側の流雪部に雪を送り込む。投入槽5および破雪部7の詳細は後述する。
【0032】
流雪部9は、破雪部7と連通しており、破雪部7より流出する雪や水が流れ込む。流雪部9は、二手に分かれ、蓄熱槽11の周囲を通り、蓄熱槽11の投入槽5側とは反対側のピット15にわずかな傾斜角度をもって連通する管路である。流雪部9内には所定水位の水が流れており、上方に雪が浮遊する。流雪部9では、浮遊している雪が溶かされる。
【0033】
流雪部9に囲まれるように蓄熱槽11が設けられる。蓄熱槽11は、内部に所定水位の水が貯留可能である。蓄熱槽11内の水温は略一定であり、例えば、蓄熱槽11内の水温は平均的に4℃程度である。したがって、蓄熱槽11内の水は、雪を溶かすことができるために十分な水温である。なお、蓄熱槽11内の水温が低くなる場合には、図示を省略したルートで、揚水ポンプ19による地下水を直接蓄熱槽11内に導入してもよい。たとえば、雪が投入されていない時間帯には、投入槽5、破雪部9への地下水の導入を止めて、その間は蓄熱槽11内へ水を導入し、蓄熱槽11内の水温を高温(4℃以上)に保つようにしてもよい。
【0034】
蓄熱槽11の周囲には所定の間隔をあけて複数のピット13が併設されている。ピット13は、蓄熱槽11から流出した水を、流雪部9に循環させることが可能な循環手段である循環ポンプ25が設置される。また、ピット13近傍には点検口41が設けられる。流雪部9と蓄熱槽11との水の循環や点検口41については、詳細を後述する。
【0035】
流雪部9の下流側にはピット15が設けられる。ピット15は、流雪部9から流出した水を汲みだすためのものである。流雪部9から流出する水は、流雪部9内で雪を融解することにより水温が低下している。したがって、これ以上雪を溶かすためには水温が低すぎる場合(たとえば3℃以下)、ピット15内の水を循環ポンプ31によって後述する浸透槽17に送りこむ。
【0036】
一方、ピット内の水温がまだ十分に高い場合(例えば4℃以上)、ピット15内の水を、循環ポンプ31によって蓄熱槽11に送り込む。
【0037】
ピット15の下流側には必要に応じて浸透槽17が設けられる。浸透槽17は、雪の融解後の不要な水を地下に浸透させるための槽である。浸透槽17に流入した水は、浸透槽17の下面などから地面へ浸透する。
【0038】
次に、図1を用いて、水および雪の流れを説明する。揚水ポンプ19で汲みあげられた水は(図1(b)中矢印D方向)、一部は配管21を通り、吐出部である破雪ノズル23に送られ、残りは配管22を通り、投入槽5のシュータ上方に送られる(図1(b)中矢印E方向)。
【0039】
破雪ノズル23に送られた水は、破雪部7上方より下面の斜面に対して吐出される(図1(b)中矢印F方向)。なお、破雪ノズル23は、破雪部7下面の傾斜方向に対して略垂直な方向(すなわち、投入槽5から流雪部9へ向かう雪等の流れる方向に対して略垂直な方向)に向けて設けられた管体等に複数並列して設けられる。複数並列して設けられた破雪ノズル23が設けられた管体は、さらに破雪部7の傾斜方向に沿って複数本設けられる。
【0040】
破雪部7より流出した雪や水は、流雪部9に流入する。流雪部9内に流入した雪等は、流雪部9内を流れ、蓄熱槽11の周囲を流れ、ピット15に流入する(図1(b)中矢印G方向)。ピット15内に流入した水は、前述の通り、水温が低い場合には配管33を通り浸透槽17に送られ(図1(b)中矢印H方向)、水温が比較的高い場合には配管35を通り蓄熱槽11に送られる。なお、水の流れの制御は、図示を省略した温度計およびこれにより動作する制御弁等により行われる。また、ピット15内の水位や水温に応じて循環ポンプ31のオンオフを制御しても良い。なお、流雪部9は、破雪部7からの傾斜面53よりも下方に位置することが望ましい。傾斜面53よりも高い位置とすると、水が傾斜面53まで貯留されるため、破雪部7の機能が落ちるためである。
【0041】
蓄熱槽11に流入した水の一部は、蓄熱槽11と連通するピット13に流入する。ピット13内の水は、ピット13内に設置された循環ポンプ25によって汲みだされ、配管27を通り流雪部9に送り込まれる。なお、蓄熱槽11と流雪部9との間の水の循環については後述する。
【0042】
ピット15より汲みだされ、浸透槽17に流入した水は、浸透槽17の下面等から地下へ浸透する(図1(b)中矢印I方向)。以上により雪が融解され、溶けた水が地下に浸透される。なお、浸透槽17への送水は、循環ポンプ31を用いなくてもよく、例えば、浸透槽17を深くして、ピット15の水位が所定以上となった際に、ピット15よりあふれた水が浸透槽17に流入するようするなど種々の方法が考えられる。浸透槽17への送水は、送水可能であれば、いかなる方法であっても良い。
【0043】
次に、各構成の詳細を説明する。図2は投入槽5および破雪部7を示す図であり、図2(a)は、投入槽5および破雪部7の立面概略図、図2(b)は平面概略図である。
【0044】
投入槽5の上方には、蓋55が設けられる。蓋55は開閉可能であり、雪を投入する際には蓋55を開放し、投入槽5内に雪を投入する。投入槽5の下方には、破雪部7方向に傾斜するシュータ51が設けられる。シュータ51の傾斜角度は、例えば30°程度とすることが望ましい。
【0045】
シュータ51の上方には、配管22が接続されており、前述したように、配管22からは揚水ポンプ19で汲みあげられた水が流入する。
【0046】
投入槽5の側方には破雪部7が設けられる。破雪部7の下方には、シュータ51の傾斜面と接続され、流雪部9方向に傾斜する傾斜面53が設けられる。破雪部7の傾斜面53上方には、複数の破雪ノズル23が設けられる。破雪ノズル23は、前述の通り、破雪部7下方の傾斜面53の傾斜方向に対し略垂直な方向に向けて設けられた複数の配管21に並列して設けられる。すなわち、破雪ノズル23は、破雪部7下方の傾斜面53の傾斜方向に対し略垂直な方向に複数並列して配置される。すなわち、破雪部7においては、破雪部7の上方から下方の傾斜面53に向かって、傾斜面53の傾斜方向に略垂直な方向に帯状に水が吐出される。
【0047】
図3は、投入槽5に投入された雪57が破雪部7で細かく分断される状態を示す図である。まず、図3(a)に示すように、雪57が投入槽5に投入されると、雪57は、配管22から流れる水およびシュータ51の傾斜によって、シュータ51上を滑りながら破雪部7方向に移動する。この際、雪57は多くの場合押し固められた状態であり、大きな塊状である。
【0048】
次に、図3(b)に示すように、雪57の先端が破雪部7に入り込むと、破雪ノズル23の水によって、雪57が局所的に融解される。この際、破雪ノズル23が傾斜面53の傾斜方向に対して略垂直な方向に並列されているため、雪57は、破雪ノズル23の配列に対応して、傾斜面53の傾斜方向に対して略垂直な方向に分断される。雪57は、破雪ノズル23によって分断されながら、傾斜面53上を移動および停止を繰り返す。
【0049】
以上により、図3(c)に示すように、分断された雪57が、後方の流雪部9方向に移動する。なお、雪57は、破雪ノズル23から吐出される水がかかる部分のみが局所的に集中して融解するため、破雪ノズル23からの水量はわずかで良い。すなわち、破雪部7では、雪57を小さく分断するのに必要な水量のみを必要とし、投入された雪57すべてを融解するために必要な水量である必要はない。
【0050】
次に、流雪部9および蓄熱槽11について説明する。図4は、流雪部9および蓄熱槽11の一部を示す図であり、図4(a)は図1(a)のB−B線断面図であり、図4(b)は図4(a)の拡大図である。
【0051】
流雪部9は、例えばコンクリート製のボックスカルバートである。流雪部9は蓄熱槽11に併設されるが、蓄熱槽11に隣接するピット13の位置では、流雪部9はピット13を迂回するように設置される。ピット13と蓄熱槽11とは内部で連通しており、蓄熱槽11と同一水位でピット13内には水が溜められる。ピット13内には、循環ポンプ25が設置される。
【0052】
循環ポンプ25は、配管27と接続される。配管27は流雪部9上方に接続される。すなわち、循環ポンプ25は、ピット13内の水を、配管27を介して、流雪部9上方から流雪部9内へ送ることができる。流雪部9内には循環ポンプ26が設置される。循環ポンプ26は、配管29と接続される。配管29は蓄熱層11に接続される。すなわち、循環ポンプ26は、流雪部9内の水を、配管29を介して、蓄熱層11内へ送ることができる。
【0053】
蓄熱槽11内には樹脂製の骨格ブロックである複数の樹脂ブロック39が上方まで積み上げられて設けられる。樹脂ブロック39は水が流れる空間を確保するとともに、上方や周囲からの土圧等に対抗するための強度を有する。蓄熱槽の外周には、蓄熱槽11内の水が周囲の地盤に流出しないように遮水シート43で覆われる。
【0054】
蓄熱槽11の略中央には点検口41が設けられる。点検口41は、定期的な槽内の点検等を行うための作業用ピットである。点検口41に該当する部位には、上下方向に連通するように樹脂ブロック39が配置されておらず、上下に貫通する孔が形成される。
【0055】
図4(b)は図4(a)のC部拡大図である。点検口41の上方の樹脂ブロック39上には、天板45が設けられる。なお、遮水シート43は天板43を覆うように設けられる。天板45上には、点検口41の出入口49が設けられる。出入口49は、例えば円筒状の部材である。出入口49の上方には開閉可能な蓋47が設けられる。なお、必要に応じて、蓄熱槽11の上面と土砂の間または蓄熱槽11側面の外周には、例えば樹脂製の断熱材などを敷き詰めることができる。このようにすれば、蓄熱槽11の断熱性が向上する。断熱材としては、例えばポリスチレンの発泡体などが使用できる。
【0056】
なお、以後の図面においては、内部中間部位に積み上げられた樹脂ブロック39の一部については図示を省略する。
【0057】
次に、流雪部9と蓄熱槽11との水の循環について説明する。図5は、蓄熱槽11と流雪部9との水の流れを示す図である。流雪部9内には、所定水位の水が流れる。流雪部9内は、完全な空洞であるため、破雪部9より流入した雪57は、流雪部9内では浮遊した状態となる。蓄熱槽11とピット13とは、下方で連通しており、蓄熱槽11内の水は、ピット13内に流入する(図中矢印J方向)。ピット13内に流入した水は、循環ポンプ25によって汲み上げられ、配管27を通り、流雪部9内へ流入する(図中矢印K方向)。
【0058】
流雪部9の上方から流入する水は、直接雪57に掛けられ、または、流雪部9内の水温を上昇させることで、流雪部9内部を流れる雪57を融解する。流雪部9内の水は、雪57が融解されながら、ピット15(図1)方向へゆっくりと流れていく。流雪部9内の底部近傍には、循環ポンプ26が設置される。循環ポンプ26は、流雪部9内の水を汲み上げ(図中矢印L方向)、蓄熱槽11へ水を循環させる(図中矢印M方向)。以上により、蓄熱槽11内の水と流雪部9の水の一部が循環し、高い率良く流雪部9内の雪57を融解することができる。
【0059】
次に、浸透槽17について説明する。図6は蓄熱槽17を示す図である。浸透槽17の周囲には透水シート59が設けられる。したがって、浸透槽17からは水が地盤に浸透する。浸透槽17内には、複数の樹脂ブロック39が設けられる(樹脂ブロック39は一部図示を省略)。樹脂ブロック39は水が流れる空間を確保する。また、浸透槽17の略中央には点検口61が設けられる。なお、浸透槽17に設けられる樹脂ブロック39および点検口61等は、蓄熱槽11における樹脂ブロック39および点検口41とほぼ同一の構成であるため重複した説明を省略する。
【0060】
流雪部9と連通するピット15内の水位は、流雪部9内の水位よりわずかに低く、流雪部9を流れてきた水はピット15に流入する(図中矢印N方向)。ピット15内の底部近傍に設置された循環ポンプ31は、ピット15内の水を汲み上げ、ピット15内の水温等に応じて浸透槽17(図中矢印H方向)または蓄熱槽11(図中矢印I方向)へ水を送る。浸透槽17内の水は、地中に浸透する(図中矢印P方向)
【0061】
以上説明したように、第1の実施の形態にかかる融雪装置1によれば、雪57を細かく分断する投入槽5〜破雪部7と、雪57を融解する流雪部9および雪57の融解を効率良く行うための蓄熱槽11およびピット15と、水を地面に浸透させるための浸透槽17とがそれぞれ別に設けられるため、雪57を効率良く確実に融解することができる。特に、投入された雪57が傾斜面53上で、傾斜方向に略垂直な方向に分断されるため、効率良く分断された雪を流雪部9に送ることができる。このため、投入槽5内への雪57の堆積を防止することができる。また、流雪部9内では雪57を浮遊させることが可能であるため、雪57が堆積することなく確実に融解することができる。
【0062】
また、蓄熱槽11の水を流雪部9に送り込み、水を循環させることができるため、流雪部9内に浮遊した雪57を効率良く融解することができる。特に、雪57を浮遊させる流雪部9と、雪57を融解するための水の水温を一定に保つ蓄熱槽11とを分離したため、雪57が蓄熱槽11内に堆積することがなく、雪57を溶かす部位と水温を一定に保つ部位とが異なるため、それぞれの機能を効率良く発揮することができる。
【0063】
また、流雪部9から流出した水をピット15に溜め、ピット15内の水温が低い場合には、そのまま浸透槽17に送水して水を地下に浸透させ、ピット15内の水温が所定以上であれば、ピット15内の水を蓄熱槽11に戻すため、地下水を効率良く利用することができ、融雪効率が高い。
【0064】
また、蓄熱槽11内には樹脂ブロック39が組み合わされるため、蓄熱槽11の上方からの強度を高めることができるとともに、蓄熱槽11を構築する際の工数およびコストを削減することができる。また、蓄熱槽11内を水が流れる際に樹脂ブロック39により蓄熱槽11内の水の流れが複雑になり、蓄熱槽11内の水が循環されるため、蓄熱槽11内の水温が均一化される。
【0065】
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態にかかる融雪装置は、第1の実施の形態にかかる融雪装置と同様の構成を有し、さらに、攪拌手段が設けられる。なお、以後の実施形態において、第1の実施の形態にかかる融雪装置1と同様の機能、効果を果たす構成要素は図1等と同一番号を付し、重複した説明を避ける。
【0066】
図7は、攪拌手段であるバブリングノズル67を蓄熱槽11内等設置した状態を示す図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は図7(a)のQ−Q線断面図である。
【0067】
流雪部9外部にコンプレッサ63が設けられる。コンプレッサ63からはエアが送られる。コンプレッサ63から送られるエアは、配管65を介して流雪部9および蓄熱槽11内下部に設けられた複数のバブリングノズル67に送られる。バブリングノズル67からはそれぞれの槽内の水に気泡を発し、気泡によって水が攪拌される。なお、槽内へのバブリングは、流雪部9および蓄熱槽11のいずれか一方に行っても良い。
【0068】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態にかかる融雪装置1と同様の効果を得ることができる。また、流雪部9内では、雪57をより確実に浮上させるとともに、雪57周囲の水を動かすため、より効率良く雪57を融解することができる。
【0069】
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態にかかる融雪装置は、第1の実施の形態にかかる融雪装置と同様の構成を有すが、融雪部の側面にスリットが設けられ、直接蓄熱槽11等と連通する。
【0070】
図8(a)は斜視図、図8(b)は正面断面図である。流雪部9aの一方の側面には、複数のスリット37が設けられる。スリット37は流雪部9aの側面の上下方向に設けられ、流雪部9aの長手方向(破雪部7からピット15に向かう方向)に複数並列して設けられる。蓄熱槽11は、流雪部9aのスリット37が設けられた側に配置され、スリット37を介して、流雪部9aと蓄熱槽11とが連通している。すなわち、蓄熱槽11内の水と流雪部9a内の水は対流可能である。図8(b)に示すように、流雪部9a内には、所定水位の水が流される。なお、スリット37は、流雪部9aの全長にわたって形成されなくてもよく、部分的に形成されてもよい。
【0071】
図9は、流雪部9aと蓄熱槽11との関係を示す図である。蓄熱槽11内には循環ポンプ25が設置される。なお、循環ポンプ25は、蓄熱槽11と連通するピット等に設置してもよい。循環ポンプ25で汲み上げられた蓄熱槽11内の水は、流雪部9a上部から流雪部9a内に流入する(図中矢印R方向)。上部から送られる水により、流雪部9a内に浮遊する雪が融解される。流雪部9a内の水は、スリット37を通過して、蓄熱槽11内に循環する。
【0072】
第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態にかかる融雪装置1と同様の効果を得ることができる。また、流雪部9a内からの水を汲みだすポンプが不要となる。
【0073】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
例えば、流雪部9および蓄熱槽11の形態は、前述のものに限られない。図10は、流雪部および蓄熱槽の他の実施形態を示す図である。たとえば、図10(a)に示すように、蓄熱槽11aと連通するピット13側方に、円形断面の流雪部9bを設けてもよい。すなわち、流雪部9bとしてはボックスカルバートではなく管体を用いても良い。管体の流雪部9bとしては、例えば塩化ビニル製の管体やヒューム管等が使用できる。流雪部9bの上方には、配管71が設けられる。配管71は、ピット13内の循環ポンプ25bと接続されている。流雪部9bの下方には配管73が設けられ、配管73を介して流雪部9bと蓄熱槽11bとが連通している。
【0075】
循環ポンプ25bによって汲みあげられた水は、配管71を通って、流雪部9b内に送られる(図中矢印T方向)。流雪部9b内の水は、下方の配管73を通って蓄熱槽11に戻る(図中矢印U方向)。以上により流雪部9bと蓄熱槽11の水が循環し、流雪部9b内の水が攪拌される。なお、配管71は流雪部9b内の水面よりも高い位置に設けられることが望ましい。これにより、配管71から流出する対流水を雪57上に直接かけることができ、融雪効率が高い。
【0076】
また、図10(b)に示すように、流雪部9c内に循環ポンプ25cを設けても良い。循環ポンプ25cにより汲みあげられた流雪部9c内の水は、配管68を介して両蓄熱槽11内に送られる(図中矢印W方向)。蓄熱槽11の所定の高さ(配管68よりも低い位置)には配管69が設けられる。配管69は流雪部9cに連通しており、蓄熱槽11内の水は配管69を介して流雪部9c内に流出する(図中矢印V方向)。これにより流雪部9c内の水と蓄熱槽11内の水が循環し、雪57が効率良く融解される。
【0077】
この際、循環ポンプ25cの揚水能力に対して配管69の径を十分小さくすることで、流雪部9c内の水位を配管69よりも低くすることができ(すなわち、流雪部9c内の水位よりも蓄熱槽11からの対流水の出口を高い位置にすることができ)、これにより、流雪部9c内に浮遊する雪57上に直接蓄熱槽11内の水をかけることができる。このため、雪57の融解効率が高い。
【0078】
以上のように、本発明は、雪を浮遊させることが可能な流雪部と、雪が内部に侵入せず、水温を一定に保つことが可能な蓄熱槽とを別々に設けることができれば、このほか種々の態様が採用できる。
【符号の説明】
【0079】
1………融雪装置
3………揚水部
5………投入槽
7………破雪部
9、9a、9b、9c………流雪部
11、11a、11b………蓄熱槽
13………ピット
15………ピット
17………浸透槽
19………揚水ポンプ
21、22………配管
23………破雪ノズル
25、25a、25b、25c………循環ポンプ
27………配管
31………循環ポンプ
33、35………配管
37………スリット
39………樹脂ブロック
41………点検口
43………遮水シート
45………天板
47………蓋
49………出入口
51………シュータ
53………傾斜面
55………蓋
57………雪
59………透水シート
61………点検口
63………コンプレッサ
65………配管
67………バブリングノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下水によって雪を溶かす融雪装置であって、
地下水をくみ上げる第1のポンプと、
上方から雪を投入可能な投入槽と、
前記投入槽と連通し、下面に傾斜面が形成され、前記第1のポンプで揚水された地下水を、前記傾斜面上の雪に吐出可能な吐出部が配置された破雪部と、
前記破雪部と連通し、所定水位の水が溜められ、前記破雪部から流出した雪を浮遊させることが可能な流雪部と、
前記流雪部内の雪を溶かすための水を貯留する蓄熱槽と、
を少なくとも具備し、
前記流雪部と前記蓄熱槽との水を循環する循環手段が設けられることを特徴とする融雪装置。
【請求項2】
前記流雪部から流出した水を地下に浸透させる浸透槽をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の融雪装置。
【請求項3】
前記循環手段は、第2のポンプであり、前記第2のポンプによって前記蓄熱槽の水を前記流雪部へ送ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の融雪装置。
【請求項4】
前記流雪部および/または前記蓄熱槽内の水を攪拌する攪拌手段を更に有し、
前記攪拌手段は、前記流雪部および/または前記蓄熱槽内をバブリングする手段を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の融雪装置。
【請求項5】
前記流雪部と前記浸透槽との間には、第3のポンプが設けられたピットが設けられ、前記流雪部から流出した水は前記ピットに流入して貯留され、前記第3のポンプは、前記ピット内の水温に応じて、前記ピット内の水を、前記浸透槽または前記蓄熱槽へ送水することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の融雪装置。
【請求項6】
前記吐出部は、前記傾斜面の傾斜方向に対して略垂直な方向に複数並列して設けられることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の融雪装置。
【請求項7】
前記蓄熱槽内には、複数の樹脂製骨格ブロックが組み合わされることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の融雪装置。
【請求項8】
地下水によって雪を溶かす融雪方法であって、
地下水をくみ上げる第1のポンプと、上方から雪を投入可能な投入槽と、前記投入槽と連通し、下面に傾斜面が形成され、前記第1のポンプで揚水された地下水を前記傾斜面上の雪に吐出可能な吐出部が配置された破雪部と、前記破雪部と連通し、所定水位の水が溜められ、前記破雪部から流出した雪を浮遊させることが可能な流雪部と、前記流雪部内の雪を溶かすための水を貯留する蓄熱槽と、前記流雪部から流出した水を地下に浸透させる浸透槽と、を具備する融雪装置を用い、
前記第1のポンプにより、前記吐出部から雪に散水して、前記傾斜面の傾斜方向に対して略垂直な方向に雪を分断し、
前記流雪部内に分断された雪を浮遊させ、
前記蓄熱槽内と前記流雪部との間で水を循環させることで前記流雪部内の雪を融解し、
前記流雪部から流れ出た水を前記浸透槽で地下に浸透させることを特徴とする融雪方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−21370(P2011−21370A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166738(P2009−166738)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(394022794)古河総合設備株式会社 (8)
【Fターム(参考)】