説明

融雪装置

【課題】給湯装置の流量調整が容易で、かつ給湯装置に結露が発生するのを防止できる融雪装置を提供する。
【解決手段】融雪装置1では、融雪対象領域6を循環した不凍液が流れる第2戻り管9と、各給湯装置2〜4で加熱された不凍液を融雪対象領域6に向けて流す往き管17との間にバイパス管18を設けている。第2戻り管9を流れる不凍液の一部を各給湯装置2〜4に不凍液を送る第3戻り管10に給湯装置側ポンプ31を設けている。バイパス管18には放熱側ポンプ32を設けている。給湯装置2〜4の各熱交換器の出口温度を一定に保つために、給湯装置2〜4に流す不凍液の目標循環流量を不凍液の戻り温度に比例させる。これにより、給湯装置2〜4において結露の発生を防止できるので、給湯装置2〜4の耐久性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融雪対象領域内の積雪を融雪する融雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路面の融雪対象領域内に埋設された放熱用のパイプに、給湯装置で加熱した熱媒体を循環させて、融雪対象領域内の積雪を溶かす融雪装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この融雪装置は、バーナ、熱交換器等を備えた熱源機としての給湯装置と、給湯装置からパイプに熱媒体を供給する往き管と、融雪対象領域を流れた熱媒体を給湯装置に戻す戻り管と、戻り管から給湯装置を経由せずに、戻り管内を流れる熱媒体の一部を分流して往き管内に合流させるバイパス管と、戻り管に設けられた循環ポンプとを備えている。バイパス管には、手動式の流量調整バルブが設けられている。
【0003】
上記構成を有する融雪装置において、循環ポンプが駆動すると、給湯装置で加熱された熱媒体が往き管を介してパイプを循環することで路面温度が上昇するので、融雪対象領域内の積雪が溶ける。パイプを循環した熱媒体は戻り管を流れて給湯装置に戻る。戻り管を流れる熱媒体の一部は、バイパス管を流れて往き管内の熱媒体と合流し、そのままパイプを循環する。戻り管と往き管との間にバイパス管を設けることで、戻り管を流れる熱媒体の流路抵抗が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−342578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の融雪装置では、戻り管から給湯装置に流れる熱媒体の流量と、戻り管からバイパス管に流れる熱媒体の流量との比率は固定である。そのため、給湯装置に流れる不凍液の流量は、路面に埋設されたパイプの流路抵抗によって大きく変化してしまう。パイプの流路抵抗は現場毎で異なる。従って、工事業者が現場にて、バイパス管に設けた流量調整バルブを手動で調整することで、給湯装置の流量を現場毎で調整しなければならず、手間であった。また、給湯装置における熱媒体の入水温度が低下し、それに伴って熱交換器における熱媒体の出口温度が低下し過ぎた場合は、熱交換器に結露が発生してしまい、給湯装置の耐久性が低下する可能性があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、給湯装置の流量調整の手間がなく、かつ給湯装置に結露が発生するのを防止できる融雪装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る融雪装置は、熱源であるバーナと、当該バーナの火力によって内部の通水を加熱する熱交換器とを内蔵した給湯装置を備え、融雪対象領域内に埋設されたパイプに、前記給湯装置から供給される熱媒体を循環させて、前記融雪対象領域内の積雪を融雪する融雪装置において、前記バーナによって加熱された熱媒体を前記パイプに供給するための往き管と、前記パイプを循環した熱媒体を前記給湯装置に戻すための戻り管と、前記戻り管と前記往き管とをバイパスして、前記戻り管を流れる熱媒体の一部を分流して前記往き管に供給するバイパス管と、前記戻り管において、前記バイパス管が接続する部分よりも熱媒体が流れる方向の下流側に設けられ、前記戻り管から前記給湯装置に流れる熱媒体の流量を調整する給湯装置側ポンプと、前記バイパス管に設けられ、前記バイパス管から前記往き管に流れる熱媒体の流量を調整する放熱側ポンプと、前記給湯装置に流れる熱媒体の流量を検出する給湯装置側流量検出手段と、前記給湯装置に流れる熱媒体の入水温度を検出する入水温度検出手段と、当該入水温度検出手段によって検出された前記入水温度に基づき、前記給湯装置に流れる熱媒体の目標流量を設定する目標流量設定手段と、前記給湯装置側流量検出手段によって検出された流量が、前記目標流量設定手段によって設定された前記目標流量になるように、前記給湯装置側ポンプを制御する給湯装置側ポンプ制御手段とを備えている。
【0008】
また、請求項2に係る発明の融雪装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記目標流量設定手段は、前記給湯装置に流れる熱媒体の流量が前記入水温度に比例するように、前記目標流量を設定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明の融雪装置は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記給湯装置に流れる熱媒体の入水温度を検出する入水温度検出手段と、前記往き管を流れ、かつ前記バイパス管を流れる熱媒体と合流した熱媒体の往き温度を検出する往き温度検出手段と、前記往き温度検出手段によって検出された前記往き温度と、前記入水温度検出手段によって検出された前記入水温度との差分が所定温度範囲内となるように、前記放熱側ポンプの駆動を制御する放熱側ポンプ制御手段とを備えている。
【0010】
また、請求項4に係る発明の融雪装置は、請求項3に記載の発明の構成に加え、前記入水温度検出手段によって検出された前記入水温度の温度上昇率を算出する温度上昇率算出手段と、当該温度上昇率算出手段によって算出された前記温度上昇率に基づき、熱媒体の逆流を検知する逆流検知手段と、当該逆流検知手段によって熱媒体の逆流を検知した場合に、前記バーナを強制的に消火し、かつ前記給湯装置側ポンプ及び前記放熱側ポンプを強制的に停止することによって、前記融雪装置の融雪動作を停止する融雪動作停止手段とを備えている。
【0011】
また、請求項5に係る発明の融雪装置は、請求項1から4の何れかに記載の発明の構成に加え、前記給湯装置側ポンプ及び前記放熱側ポンプはDCポンプであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明の融雪装置では、融雪対象領域内に埋設されたパイプに、給湯装置から供給される熱媒体を循環させて、融雪対象領域内の積雪を融雪する。バーナの火力で熱交換器において加熱された熱媒体は、往き管を通ってパイプに流れる。パイプを循環した熱媒体は、戻り管を通って給湯装置に戻る。戻り管を流れる熱媒体の一部は、バイパス管を通って往き管に流れ、往き管内を流れる熱媒体と合流する。給湯装置側ポンプは、戻り管から給湯装置に流れる熱媒体の流量を調整する。放熱側ポンプは、バイパス管から往き管に流れる熱媒体の流量を調整する。目標流量設定手段は、入水温度検出手段によって検出された入水温度に基づき、給湯装置に流れる熱媒体の目標流量を設定する。給湯装置側ポンプ制御手段は、給湯装置側流量検出手段によって検出された流量が、目標流量設定手段によって設定された目標流量になるように、給湯装置側ポンプを制御する。これにより、給湯装置の熱媒体の流量調整が容易である。さらに、熱媒体の入水温度に基づいて、目標流量を設定できるので、入水温度に応じて給湯装置の能力に見合った目標流量を設定できる。例えば、入水温度に応じて給湯装置の目標流量を設定することにより、給湯装置の熱交換器の出口温度を一定温度に保つことができるので、給湯装置において結露の発生を防止できる。
【0013】
また、請求項2に係る発明の融雪装置では、請求項1に記載の発明の効果に加え、目標流量設定手段は、給湯装置に流れる熱媒体の流量が入水温度に比例するように、目標流量を設定する。例えば、給湯装置の流量を一定にしてしまった場合、戻り温度が低い場合、給湯装置の熱交換器の出口温度が下がる。出口温度が低すぎる場合、熱交換器に結露が発生する。そこで、本発明では、目標流量を入水温度に比例させる。つまり、入水温度が低ければ目標流量を低く、入水温度が高ければ目標流量を高くする。給湯装置の能力が一定の場合、給湯装置の流量を入水温度に比例させることで、給湯装置の熱交換器の出口温度を一定にできる。これにより、給湯装置の熱交換器に結露が発生するのを確実に防止できる。
【0014】
また、請求項3に係る発明の融雪装置では、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、給湯装置に流れる熱媒体の入水温度は、入水温度検出手段によって検出される。往き管を流れ、かつバイパス管を流れる熱媒体と合流した熱媒体の往き温度は、往き温度検出手段によって検出される。ここで、往き温度と入水温度との差分が大きい場合、パイプの上流側で雪が溶けても、パイプの下流側では雪が溶けきらず、所謂「融雪ムラ」が生じる。これとは逆に、温度の差分が小さい場合は、融雪対象領域内のパイプに熱媒体が流れ過ぎており、放熱側ポンプの動力に無駄を生じている。そこで、放熱側ポンプ制御手段は、往き温度検出手段によって検出された往き温度と、入水温度検出手段によって検出された入水温度との差分が所定温度範囲内となるように、放熱側ポンプの駆動を制御する。これにより、融雪対象領域内のパイプに流れる熱媒体の流量を適切に調整できるので、融雪対象領域に融雪ムラが生じるのを防止でき、かつ放熱側ポンプを効率よく使用できる。
【0015】
また、請求項4に係る発明の融雪装置では、請求項3に記載の発明の効果に加え、温度上昇率判断手段が、戻り温度検出手段によって検出された戻り温度の所定時間における温度上昇率が所定値以上であるか否かを判断する。バーナ消火手段は、温度上昇率判断手段によって戻り温度の温度上昇率が所定値以上であると判断された場合に、バーナを強制的に消火する。戻り温度が急激に上昇した場合、熱媒体が逆流している可能性がある。この場合、バーナ消火手段がバーナを強制的に消火するので、不具合に対して迅速な対応が可能である。
【0016】
また、請求項5に係る発明の融雪装置では、請求項1から4の何れかに記載の発明の効果に加え、給湯装置側ポンプ及び放熱側ポンプは何れもDCポンプであるので、ACポンプに比べて、コンパクトで制御が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】融雪装置1の構成を示す概略図である。
【図2】融雪装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】融雪運転制御処理のメインのフローチャートである。
【図4】逆流検知処理のフローチャートである。
【図5】戻り温度と目標循環流量との関係を示したグラフである。
【図6】変形例である融雪装置150の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態である融雪装置1について、図面に基づいて説明する。これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。以下に記載されている装置の構造などは、特に特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0019】
はじめに、融雪装置1の構成について、図1を参照して説明する。融雪装置1は、親機である給湯装置2と、子機である給湯装置3,4とを熱源機として備える。融雪対象領域6の地中には、放熱用のヒーティングパイプ19が幾重にも屈曲して埋設されている。融雪装置1では、給湯装置2〜4で加熱された不凍液を熱媒体として、ヒーティングパイプ19に流すことによって、融雪対象領域6内の地面の温度が上昇する。これにより、融雪対象領域6内の積雪を溶かすことができる。ヒーティングパイプ19を流れた不凍液は、後述する各種配管7〜13を介して給湯装置2〜4に戻る。給湯装置2〜4で再び加熱された不凍液は、後述する各種配管14〜17を介して、ヒーティングパイプ19を再び流れる。融雪装置1では、このような融雪運転を行うことが可能である。
【0020】
次に、給湯装置2の構造について、図1を参照して説明する。給湯装置2は親機として機能する。給湯装置2の筐体2Aの底部には、ガスが流入するガス流入口41と、ヒーティングパイプ19を流れて戻った不凍液が流入する入水口42と、筐体2A内で加熱された不凍液を出水させる出水口43とが各々設けられている。筐体2Aの燃焼室にはバーナ50が設けられている。バーナ50には、ガス流入口41に接続されたガス供給管45が接続されている。バーナ50の近傍には、火炎温度を検知するための熱電対105(図2参照)、失火を検知するためのフレームロッド106(図2参照)、バーナ50に点火するためのイグナイタ107(図2参照)が各々設けられている。
【0021】
ガス供給管45のガスが流れる上流側には、ガス流路の開閉を行うガス電磁弁51が設けられている。その下流側には、ガス流量を調整して、バーナ50の火力を調整するガス比例弁52が設けられている。入水口42と出水口43との間には、不凍液が流れる配管46が設けられている。配管46の途中には熱交換器(図示外)が設けられている。配管46において熱交換器よりも上流側には、配管46を流れる不凍液の戻り流量を検知するための流量センサ56と、不凍液の戻り温度(給湯装置2に対する入水温度)を検知するための戻り温度サーミスタ55とが設けられている
【0022】
さらに、給湯装置2には、融雪装置1の融雪動作を制御する制御装置5(図2参照)と、融雪装置1の動作を指示するリモコン36と、融雪対象領域6内の積雪を感知するための降雪センサ38と、融雪対象領域6の路面温度を検出するための路面温度センサ35とが各々設けられている。リモコン36には、融雪装置1の融雪動作中に不凍液の循環異常が発生したことを報知するための異常ランプ37が設けられている。図1では、路面温度センサ35は、融雪対象領域6の略中央に設置されているが、位置は限定されない。
【0023】
次に、給湯装置3,4の構造について、図1を参照して説明する。給湯装置3,4は子機として機能する。給湯装置3,4は、給湯装置2の構成とほぼ同じである。給湯装置3の筐体3Aの底部には、ガス流入口61と、入水口62と、出水口63とが各々設けられている。給湯装置4の筐体4Aの底部にも、ガス流入口81と、入水口82と、出水口83とが各々設けられている。給湯装置3,4の筐体3A,4A内には、給湯装置2と同様のバーナ50、ガス供給管45、ガス電磁弁51、ガス比例弁52、配管46が各々設けられている。
【0024】
次に、融雪装置1の配管構成について、図1を参照して説明する。ヒーティングパイプ19の不凍液が流れる下流側の一端部には、第1戻り管7の一端部が接続されている。第1戻り管7の他端部は、第1戻り管7から供給された不凍液中から空気を分離するためのエアセパレータ8の底部に接続されている。エアセパレータ8の底部には、第2戻り管9の一端部がさらに接続されている。第2戻り管9の他端部には、2流路に分岐する分岐部21が設けられている。分岐部21の一方には、給湯装置2〜4に不凍液を供給するための第3戻り管10の一端部が接続され、他方には後述するバイパス管18の一端部が接続されている。
【0025】
第3戻り管10は、給湯装置2〜4に亘って延設されている。第3戻り管10には、不凍液が流れる方向の上流側から下流側に向かって順に、接続部22,23,24が各々設けられている。接続部22には、分岐管11の一端部が接続されている。分岐管11の他端部は、給湯装置2の入水口42に接続されている。接続部23には、分岐管12の一端部が接続されている。分岐管12の他端部は、給湯装置3の入水口62に接続されている。接続部24には、分岐管13の一端部が接続されている。分岐管13の他端部は、給湯装置4の入水口82に接続されている。第3戻り管10の上流側であって分岐部21と接続部22との間には、給湯装置側ポンプ31が設けられている。給湯装置側ポンプ31は、給湯装置2〜4に供給する不凍液の流量を調整する。給湯装置側ポンプ31は、直流電源で駆動するDCポンプである。従って、給湯装置側ポンプ31が駆動すると、第3戻り管10を流れる不凍液は、接続部22,23,24から、各分岐管11,12,13を介して、各給湯装置2,3,4に流入する。
【0026】
一方、ヒーティングパイプ19の不凍液が流れる上流側の一端部には、給湯装置2〜4で加熱された不凍液をヒーティングパイプ19に流すための往き管17の一端部が接続されている。往き管17は、第3戻り管10と同様に、給湯装置2〜4に亘って延設されている。往き管17には、不凍液が流れる方向の下流側から上流側に向かって順に、接続部25,26,27が各々設けられている。接続部25には、分岐管14の一端部が接続されている。分岐管14の他端部は、給湯装置2の出水口43に接続されている。接続部26には、分岐管15の一端部が接続されている。分岐管15の他端部は、給湯装置3の出水口63に接続されている。接続部27には、分岐管16の一端部が接続されている。分岐管16の他端部は、給湯装置3の出水口83に接続されている。各給湯装置2〜4で加熱された不凍液は、各出水口43,63,83から、各分岐管14,15,16を流れ、接続部25,26,27から往き管17に流れて合流し、ヒーティングパイプ19に向けて流れる。
【0027】
さらに、往き管17において接続部25よりも下流側には合流部28が設けられている。第2戻り管9の分岐部21と、往き管17の合流部28との間には、バイパス管18が設けられている。バイパス管18は、第2戻り管9を流れた不凍液の一部を、給湯装置2〜4を通さずにそのまま往き管17に流すものである。バイパス管18には、放熱側ポンプ32が設けられている。放熱側ポンプ32は、バイパス管18を流れる不凍液の流量を調整することで、融雪装置1における全体の循環量を調整する。放熱側ポンプ32も、直流電源で駆動するDCポンプである。往き管17において合流部28の下流側には、往き管17を流れる不凍液の往き温度を検出するための往き温度サーミスタ58が設けられている。
【0028】
ところで、エアセパレータ8の上部には、エアー抜き弁72を有するラジエータキャップ73が設けられている。ラジエータキャップ73には、エアセパレータ8内の不凍液の余剰分が流れる配管74が設けられている。配管74は、エアセパレータ8の隣に設けられた膨張タンク70の内側に挿入されている。膨張タンク70は、給湯装置2〜4の各配管を循環する不凍液の温度変化による膨張収縮を吸収する。これにより、融雪装置1が保持する不凍液を所定量に調整できる。膨張タンク70の上部には、膨張タンク70内に不凍液を供給するための不凍液補給口75と、タンク内の水位を検出するための水位電極76とが設けられている。膨張タンク70の側面上部には、タンク内からオーバフローした不凍液を外部に排出するためのオーバーフロー水排管78が設けられている。
【0029】
次に、融雪装置1の電気的構成について、図2を参照して説明する。融雪装置1は、制御装置5を給湯装置2の筐体2A(図1参照)内に備えている。制御装置5は、融雪装置1の制御を司るCPU101を備えている。CPU101には、ROM102と、RAM103と、EEPROM104とが各々接続されている。ROM102は、融雪運転制御プログラム等の各種プログラム、各種データの初期値等を記憶する不揮発性記憶素子である。RAM103は、実行中のプログラムを一時的に記憶したり、各種データ等を記憶する読み出し及び書き込み可能な揮発性記憶素子である。EEPROM104は、カウンタやパラメータ等を記憶する不揮発性記憶素子である。なお、図示しないが、制御装置5には、CPU101に対してクロックを供給する発振子が設けられている。制御装置5は、電源としての電池20を備えている。
【0030】
CPU101には、ガス比例弁駆動回路52Aと、マグネット駆動回路51Aと、熱電対回路115と、フレームロッド回路116と、イグナイタ回路117と、異常ランプ駆動回路37Aと、入出力(I/O)インターフェース121とが各々接続されている。ガス比例弁駆動回路52Aには、ガス比例弁52が接続されている。マグネット駆動回路51Aには、ガス電磁弁51が接続されている。熱電対回路115には、熱電対105が接続されている。フレームロッド回路116には、フレームロッド106が接続されている。イグナイタ回路117には、イグナイタ107が接続されている。異常ランプ駆動回路37Aには、異常ランプ37が接続されている。熱電対回路115及びフレームロッド回路116から出力される検出信号により駆動する安全回路114が、マグネット駆動回路51Aに接続されている。
【0031】
入出力インターフェース121には、給湯装置側ポンプ駆動回路31Aと、放熱側ポンプ駆動回路32Aと、往き温度サーミスタ(TH)58と、戻り温度サーミスタ(TH)55と、流量センサ56と、路面温度センサ35と、降雪センサ38と、リモコン36とが各々接続されている。給湯装置側ポンプ駆動回路31Aには、給湯装置側ポンプ31が接続されている。放熱側ポンプ駆動回路32Aには、放熱側ポンプ32が接続されている。
【0032】
次に、不凍液について説明する。本実施形態で使用される不凍液は、主に、エチレングリコールや、プロピレングリコール等のグリコール類を主成分とする一般的なものである。不凍液の粘性抵抗は、不凍液の温度低下と共に上昇する。本実施形態では、不凍液の温度を所定温度範囲内に維持することで、不凍液の粘性抵抗が制御される。
【0033】
次に、不凍液について、バーナ50を点火させる点火温度と、消火させる消火温度とについて説明する。後述する融雪装置1の融雪運転制御処理では、不凍液の「点火温度」と、「消火温度」とが予め設定されている。消火温度は、不凍液が高温の状態で熱交換器に通水して加熱された場合に、筐体内の内胴の内側で沸騰する可能性がある温度の上限値とされる。例えば、不凍液の沸騰温度を85℃とした場合、消火温度を45℃に設定する。点火温度は、これより低い温度(例えば、45℃より10℃低い35℃)に設定する。消火温度は、例えば、20〜60℃の範囲内で変更可能にする。従って、不凍液の戻り温度が点火温度以下であれば、バーナ50を点火し、点火温度を超えていれば、バーナ50を点火する必要はない。一方、戻り温度が消火温度以上であれば、バーナ50を消火し、消火温度未満であれば、バーナ50を消火する必要はない。
【0034】
次に、CPU101によって実行される融雪運転制御処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。本処理は、融雪装置1の電源がオンされると、ROM102(図2参照)に記憶された「融雪運転制御プログラム」が呼び出されて実行される。
【0035】
まず、運転条件が成立したか否かが判断される(S10)。運転条件とは、1.リモコン36に設けられた運転スイッチ39(図1参照)が押下されたこと、2.路面温度センサ35によって検出された路面温度が所定温度以下(例えば、−10℃)になったこと、3.降雪センサ38が融雪対象領域6内において所定の積雪を検知したこと、の3つの条件である。これら3つの条件が揃うまでは(S10:NO)、融雪動作を行う必要性に乏しいので、S10に戻って待機状態となる。なお、これとは別に、例えば、何れか1つの条件を満たした場合に、融雪動作を行う運転モードを設けてもよい。
【0036】
そして、運転条件が成立した場合(S10:YES)、融雪動作を行う必要性が高いので、給湯装置側ポンプ31、及び放熱側ポンプ32が同時にオンされる(S11)。すると、不凍液が融雪装置1内を循環し始める。次いで、流量センサ56によって、給湯装置2内の配管46を通過する不凍液の戻り流量が検出され、その検出された戻り流量が循環正常流量以上か否かが判断される(S12)。「循環正常流量」とは、例えば、給湯装置側ポンプ31及び放熱側ポンプ32がそれぞれエアを噛むことなく稼働できる最低流量(例えば、2.0L/min)である。
【0037】
ここで、戻り流量が循環正常流量未満の場合(S12:NO)、循環異常であるので、給湯装置側ポンプ31及び放熱側ポンプ32の故障、又は、第1戻り管7、エアセパレータ8、第2戻り管9、第3戻り管10、分岐配管11〜16、往き管17、ヒーティングパイプ19の破損等が考えられる。特に、給湯装置側ポンプ31が故障すると、配管46内を循環する不凍液の流量が不足し、空焚きによって熱交換器が破損する場合がある。そこで、給湯装置側ポンプ31及び放熱側ポンプ32の両方が強制的に停止され(S27)、異常ランプ37が点灯され(S28)、処理が終了する。これにより、循環異常を速やかに報知できるので、融雪装置1の安全が確保されると共に、融雪装置1の不具合に迅速に対応できる。
【0038】
一方、戻り流量が循環正常流量以上の場合(S12:YES)、少なくとも給湯装置側ポンプ31及び放熱側ポンプ32は正常に稼働し、不凍液が融雪装置1内を正常に循環している。そこで、不凍液の戻り温度の記録が開始される(S13)。この処理が開始されると、戻り温度サーミスタ55によって戻り温度が所定時間毎に検出され、戻り温度の履歴データとして、RAM103(図2参照)に随時記憶される。なお、戻り温度の検出は、給湯装置側ポンプ31及び放熱側ポンプ32がオンされて、少なくとも不凍液が融雪装置1を循環して元の位置に戻るのに要する時間(例えば、10分)の経過後に開始される。
【0039】
次いで、給湯装置2内の戻り温度サーミスタ55で検出された不凍液の戻り温度が、点火温度以下か否かが判断される(S14)。戻り温度が点火温度を超えている場合(S14:NO)、バーナ50は点火されずに、S14に戻る。戻り温度が点火温度以下になるまでは、バーナ50が点火されない状態で、融雪装置1内を不凍液が循環する。よって、不凍液の温度は徐々に低下する。
【0040】
そして、戻り温度が点火温度以下になった場合(S14:YES)、給湯装置2〜4の各バーナ50が各々点火される(S15)。具体的には、各給湯装置2〜4において、ガス電磁弁51が開かれ、ガス比例弁52は緩点火動作とされるので、各バーナ50にガスが供給される。これと同時に、イグナイタ107が連続的に放電されるので、各バーナ50がそれぞれ点火される。
【0041】
次いで、目標循環流量設定処理が実行される(S16)。ここでは、給湯装置2〜4に流す不凍液の目標循環流量(本発明の「目標流量」に相当)が設定される。目標循環流量は、戻り温度に関係なく給湯装置2〜4の熱交換器の出口温度を一定に保つために、戻り温度サーミスタ55によって検出される戻り温度に応じて設定する。例えば、給湯装置2〜4において、不凍液の戻り温度(入水温度)が低すぎると、熱交換器の温度低下、並びに燃焼排気の温度低下に伴って筐体2A〜4A内に結露が発生する可能性がある。そこで、各給湯装置2〜4において、戻り温度が低すぎる場合でも、戻り温度が高いときの熱交換器の出口温度になるように各給湯装置2〜4の目標循環流量を設定することで、各給湯装置2〜4において結露の発生を防止できる。例えば、給湯装置2の能力を36,000(kcal/h)とし、給湯装置2の熱交換器の出口温度を50(℃)に設定した場合、目標循環流量は、以下の式によって算出される。
・目標循環流量(L/min)=36,000(kcal/h)÷60(min/h)÷(50−戻り温度)
【0042】
例えば、戻り温度が0℃のときは、目標循環流量は、36,000÷60÷(50−0)=12(L/min)となる。戻り温度が10℃のときは、目標循環流量は、36,000÷60÷(50−10)=15(L/min)となる。戻り温度が−10℃のときは、目標循環流量は、36,000÷60÷(50−(−10))=10(L/min)となる。戻り温度が−20℃のときは、目標循環流量は、36,000÷60÷(50−(−20))=8.6(L/min)となる。戻り温度が−30℃のときは、目標循環流量は、36,000÷60÷(50−(−30))=7.5(L/min)となる。
【0043】
上記の式に基づき、不凍液の戻り温度に対して目標循環流量をプロットしたものが、図5に示すグラフである。このグラフに示すように、目標循環流量を不凍液の戻り温度に比例させることによって、給湯装置2〜4の各熱交換器の出口温度をそれぞれ一定に保つことができる。なお、ここでいう「比例」とは、一方の増減につれて他方が増減することを意味するものであり、y=axで示される正比例(直線的な増減)に限定する意味ではない。これにより、不凍液の戻り温度(入水温度)が低すぎた場合でも、熱交換器、並びに燃焼排気の温度が下がり過ぎない。よって、各給湯装置2〜4において結露の発生を防止できるので、給湯装置2〜4の耐久性を向上できる。また、戻り温度に基づき、不凍液の循環流量を抑制できるので、電力消費を節約できる。さらに、戻り温度が10℃以上の場合は、目標循環流量を一定(15(L/min))としている。これは、必要以上に不凍液を循環させないためである。
【0044】
次いで、流量センサ56で検出された不凍液の戻り流量が、S16の目標循環流量設定処理で設定された目標循環流量であるか否かが判断される(S17)。例えば、目標循環流量が12L/minに設定されている場合、各給湯装置2〜4に対してそれぞれ12L/minの流量で不凍液をそれぞれ供給するように、給湯装置側ポンプ31が制御される。従って、給湯装置側ポンプ31は、36L/min(=12L/min×3台分)の流量で不凍液を第3戻り管10に供給する。
【0045】
ここで、不凍液は温度変化によって粘性抵抗が変動するので、給湯装置側ポンプ31を同じ能力で制御していると、不凍液の流量も変動してしまう。さらに、現場毎で融雪面積が異なると、ヒーティングパイプ19の流路抵抗が変わるため、不凍液の流量はさらに変動する。そこで、流量センサ56で検出された不凍液の戻り流量が12L/minになるように、給湯装置側ポンプ31の能力が制御される。不凍液の戻り流量が給湯装置側ポンプ31によって自動的に調整されるので、給湯装置2〜4に流す不凍液の流量調整が容易である。
【0046】
例えば、流量センサ56で検出された不凍液の戻り流量が目標循環流量でなかった場合(S17:NO)、戻り流量が目標循環流量となるように、給湯装置側ポンプ31の能力が調整される(S29)。そして、S17に戻り、不凍液の戻り流量が目標循環流量となった場合(S17:YES)、燃焼比例温調制御が開始される(S18)。
【0047】
燃焼比例温調制御では、例えば、往き温度サーミスタ58で検出された不凍液の往き温度と設定温度とに差がある場合は、ガス比例弁52の開度が調整されると共に、筐体2A〜4A内に設けたファン(図示外)の回転数が調整されることによって火力が調整され、不凍液が設定温度に調整される。
【0048】
続いて、不凍液の往き温度と、戻り温度との温度差が所定範囲内であるか否かが判断される(S19)。不凍液の往き温度と、戻り温度との温度差は、例えば、13〜17℃の範囲内になるように調整する。往き温度と戻り温度との温度差が所定範囲を超えていた場合(S19:NO)、放熱側ポンプ32の能力が調整される(S30)。ヒーティングパイプ19の上流側では、不凍液の温度が高いので雪は溶けるが、下流側では不凍液の温度が下がり過ぎているので、単位面積当たりの熱負荷が低下し、溶け残りが発生する。つまり、融雪対象領域6において溶け方に差が出てしまうことから、所謂「融雪ムラ」を生じる。
【0049】
さらに、不凍液の戻り温度が下がり過ぎているので、粘性抵抗が上昇する。粘性抵抗が上昇すると不凍液が流れにくくなるので、融雪装置1の全体の循環流量は規定流量(例えば、120L/min)より少なくなっている。この場合、放熱側ポンプ32のポンプ能力が引き上げられる(S30)。これによって、不凍液の循環流量を規定流量に復帰させることができる。そして、往き温度と戻り温度との温度差が徐々に縮まるので、13〜17℃の範囲内に収まることによって、融雪ムラが無くなり、融雪対象領域6内の積雪を均一に溶かすことができる。
【0050】
これに対し、往き温度と戻り温度との温度差が所定範囲よりも低かった場合(S19:NO)、往き温度と戻り温度とにほとんど差を生じていないので、融雪対象領域6に積もった雪は既に溶けている可能性が高い。雪が溶けていると、不凍液は雪から熱をあまり奪われないにも関わらず、給湯装置2〜4によって加熱されるため、不凍液の戻り温度は徐々に上昇する傾向が見られる。不凍液の戻り温度が上昇するにつれて、不凍液の粘性抵抗は低下する。粘性抵抗が低下すると不凍液が流れ過ぎてしまうため、融雪装置1の全体の循環流量は規定流量(例えば、120L/min)よりも多くなっていることが考えられる。この場合、放熱側ポンプ32のポンプ能力が引き下げられる(S30)。これによって、不凍液の循環流量を規定流量に復帰させることができる。そして、往き温度と戻り温度との温度差が徐々に大きくなり、13〜17℃の範囲内に収まることによって、不凍液がヒーティングパイプ19に流れ過ぎるのを防止できる。つまり、不凍液が流れ過ぎないので、放熱側ポンプ32の動力の無駄を低減できる。
【0051】
そして、S19に戻り、往き温度と戻り温度との温度差が所定範囲内になった場合(S19:YES)、流量センサ56で検出された戻り流量が、消火流量以下か否かが判断される(S20)。消火流量は、循環正常流量よりも低く、バーナ50の点火後に、加熱された不凍液が融雪装置1内を循環するのに必要とされる最低流量(例えば、1.5L/min)に設定されている。戻り流量が、消火流量以下の場合は(S20:YES)、バーナ50が点火されて、不凍液が加熱されているにも関わらず、戻り流量が上昇していないので、給湯装置側ポンプ31及び放熱側ポンプ32の故障、又は、第1戻り管7、エアセパレータ8、第2戻り管9、第3戻り管10、分岐配管11〜16、往き管17、ヒーティングパイプ19の破損等が考えられる。そこで、バーナ50が強制的に消火され(S31)、給湯装置側ポンプ31及び放熱側ポンプ32の両方が強制的に停止され(S32)、異常ランプ37が点灯され(S33)、処理が終了する。これにより、循環異常を速やかに報知できるので、融雪装置1の安全が確保されると共に、融雪装置1の不具合に迅速に対応できる。
【0052】
一方、戻り流量が消火流量を超えていた場合(S20:NO)、不凍液の粘性抵抗が低下して、不凍液の戻り流量が増加している可能性がある。不凍液の粘性抵抗が低下していると、不凍液の戻り温度が高くなっている可能性がある。そこで、戻り温度サーミスタ55で検出された戻り温度が、予め設定された消火温度以上か否かが判断される(S21)。戻り温度が消火温度以上であった場合(S21:YES)、このままバーナ50による加熱を継続すると、筐体内の内胴の内側で沸騰する可能性が高いので、給湯装置2〜4の各バーナ50は消火され(S35)、S14に戻り、点火温度以下に低下するまで、バーナ50が消火された状態で、不凍液が融雪装置1内を循環する。これ以降は、上記した処理の繰り返しである。
【0053】
これに対し、戻り温度が消火温度未満であった場合(S21:NO)、続いて、運転条件が解除されたか否かが判断される(S22)。まだ運転条件が成立している場合(S22:NO)、S16に戻り、上記したように、融雪運転が継続される。
【0054】
一方、上記した3つの条件のうち何れか1つでも条件を満たさなくなった場合(S22:YES)、融雪装置1の融雪運転を終了するために、給湯装置2〜4の各バーナ50が消火され(S23)、給湯装置側ポンプ31及び放熱側ポンプ32が停止される(S24)。そして、戻り温度の記録が終了され(S25)、RAM103(図2参照)に一旦記憶された戻り温度の履歴データは削除される。そして、S10に戻り、再度運転条件が成立するまで待機状態となる。こうして、融雪装置1の電源がリモコン36でオフされるまで、融雪運転制御処理が実行される。
【0055】
次に、CPU101によって実行される逆流検知処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。本処理は、融雪装置1の電源がオンされると、ROM102(図2参照)に記憶された「逆流検知プログラム」が呼び出されて実行される。不凍液の逆流は、放熱側ポンプ32の故障が原因の1つとして考えられる。本実施形態では、給湯装置側ポンプ31及び放熱側ポンプ32のモータ回転数を随時検出することによって循環異常を検知しているが、それができない場合に本処理は特に有効である。
【0056】
例えば、図1において、給湯装置2で加熱された不凍液は分岐管14から往き管17を流れるが、放熱側ポンプ32が故障した場合、往き管17の合流部28からバイパス管18に不凍液が引き込まれる。この場合、温度の高い不凍液は、路面側を循環することなく、そのまま給湯装置2内に供給されてしまうので、戻り温度が急激に上昇する。この戻り温度の急激な上昇を検知することで、不凍液の逆流を検知する。
【0057】
まず、給湯装置側ポンプ31及び放熱側ポンプ32がオンされたか否かが判断される(S40)。給湯装置側ポンプ31及び放熱側ポンプ32がオンされていない場合(S40:NO)、S40に戻って、待機状態となる。給湯装置側ポンプ31及び放熱側ポンプ32がオンされている場合(S40:YES)、これらポンプ31,32がオンされてから所定時間経過したか否かが判断される(S41)。ここでいう所定時間とは、給湯装置側ポンプ31及び放熱側ポンプ32がオンされてから、戻り温度サーミスタ55で検出される戻り温度の履歴データが所定量蓄積されるのに要する時間として設定される。なお、履歴データは、少なくとも2つあれば、後述する温度上昇率を算出するために十分である。まだ所定時間を経過していない場合(S41:NO)、RAM103に記憶されている戻り温度の履歴データがまだ少ないので、S41に戻って待機状態となる。
【0058】
そして、各ポンプがオンされてから所定時間経過した場合(S41:YES)、RAM103に戻り温度のデータが所定量蓄積されたので、その不凍液の戻り温度の履歴データから温度上昇率が算出される(S42)。例えば、以下の式に基づいて、温度上昇率が算出される。
・温度上昇率=(前回の戻り温度−今回の戻り温度)÷(戻り温度の検出間隔)
【0059】
続いて、算出された温度上昇率が予め設定された所定値以上であるか否かが判断される(S43)。温度上昇率が所定値未満であった場合(S43:NO)、S40に戻り、処理が繰り返される。
【0060】
一方、温度上昇率が所定値以上であった場合(S43:YES)、戻り温度が急激に上昇しているので、不凍液が逆流して循環している可能性がある。不凍液が循環しているので、融雪運転を中止するために、バーナ50が消火され(S44)、給湯装置側ポンプ31及び放熱側ポンプ32の両方が停止され(S45)、異常ランプ37が点灯され(S46)、処理が終了する。これにより、融雪装置1の安全が確保されると共に、融雪装置1の循環異常に迅速に対応できる。
【0061】
なお、以上説明において、図1に示すヒーティングパイプ19が本発明の「パイプ」に相当し、第1戻り管7、第2戻り管9、第3戻り管10、分岐管11〜13が本発明の「戻り管」に相当し、分岐管14〜16、往き管17が本発明の「往き管」に相当する。流量センサ56が本発明の「給湯装置側流量検出手段」に相当し、戻り温度サーミスタ55が本発明の「入水温度検出手段」に相当し、往き温度サーミスタ58が本発明の「往き温度検出手段」に相当する。図1に示す第2戻り管9の分岐部21が本発明の「前記戻り管において、前記バイパス管が接続する部分」に相当する。図3に示すS16の処理を実行するCPU101が本発明の「目標流量設定手段」に相当し、S29の処理を実行するCPU101が本発明の「給湯装置側ポンプ制御手段」に相当し、S30の処理を実行するCPU101が本発明の「放熱側ポンプ制御手段」に相当し、S31、S32の処理を実行するCPU101が本発明の「融雪動作停止手段」に相当する。図4に示すS42の処理を実行するCPU101が本発明の「温度上昇率算出手段」に相当し、S43の処理を実行するCPU101が本発明の「逆流検知手段」に相当する。
【0062】
以上説明したように、本実施形態である融雪装置1では、3台の給湯装置2〜4を熱源機として備え、不凍液を熱媒体として、融雪対象領域6内の積雪を溶かすものである。融雪装置1では、融雪対象領域6を循環した不凍液が流れる第2戻り管9と、各給湯装置2〜4で加熱された不凍液を融雪対象領域6に向けて流す往き管17との間にバイパス管18を設けている。第2戻り管9を流れる不凍液の一部を各給湯装置2〜4に不凍液を送る第3戻り管10に給湯装置側ポンプ31を設けている。バイパス管18には放熱側ポンプ32を設けている。
【0063】
このような構成において、第3戻り管10は、各給湯装置2〜4に供給する不凍液のみが流れる配管である。よって、不凍液の粘性抵抗が温度に伴って変化しても、給湯装置側ポンプ31の能力を可変することによって、第3戻り管10を流れる不凍液の流量を制御できるので、各給湯装置2〜4に対して不凍液を安定して供給できる。
【0064】
また、放熱側ポンプ32は、圧力損失の大きい給湯装置2〜4を通さずに、バイパス管18を通じて往き管17内に不凍液を流すので、融雪対象領域6内のヒーティングパイプ19に対して、放熱側ポンプ32の動力をそのまま伝達できる。即ち、放熱側ポンプ32を効率よく使用できる。
【0065】
そして、不凍液の戻り温度に関係なく給湯装置2〜4の各熱交換器の出口温度を一定に保つために、給湯装置2〜4に流す不凍液の目標循環流量を、不凍液の戻り温度に比例させるように設定する。その設定された目標循環流量で各給湯装置2〜4に対して不凍液がそれぞれ供給されるように、給湯装置側ポンプ31が制御される。給湯装置2〜4の各熱交換器の出口温度が一定に保たれることによって、熱交換器、並びに燃焼排気の温度が下がり過ぎない。これにより、結露の発生を防止できるので、給湯装置2〜4の耐久性を向上できる。また、戻り温度に基づき、不凍液の循環流量を抑制できるので、電力消費の節約もできる。
【0066】
また、給湯装置側ポンプ31及び放熱側ポンプ32は、何れも直流で駆動するDCポンプであるので、ACポンプに比較して、各ポンプのモータの回転数を制御するのが容易であり、本実施形態のような制御に適している。なお、ACポンプを用いる場合は、インバータ回路や位相制御することで制御可能であるが、上記理由からDCポンプが好ましい。また、DCポンプはACポンプに比較して一般的にサイズが小さいので、扱いにも便利である。
【0067】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。上記実施形態では、子機の給湯装置を2台備えているが、子機の台数は限定されない。子機の台数は、融雪装置1を設置する環境、設置場所の天候状況、融雪負荷、融雪対象領域の面積等に応じて変更するのが好ましい。従って、子機は1台でもよく、3台以上であってもよい。融雪面積や融雪負荷等は現場ごとで異なるので、現場に合わせて熱源機としての給湯装置の台数を調節すればよい。
【0068】
また、各配管の流路抵抗や、不凍液の粘性抵抗等を考慮して、給湯装置側ポンプを複数にしてもよく、さらにはバイパス管を複数設けてもよい。例えば、図6に示す変形例である融雪装置150を用いて説明する。なお、融雪装置150は、上記実施形態の融雪装置1とほぼ同じ構成であるので、同じ構成部分については同じ符号を用いて説明する。
【0069】
融雪装置150では、第3戻り管10に2つの給湯装置側ポンプ311,312を直列に設けている。これにより、不凍液を各給湯装置に向けてより強く押し出すことができる。さらに、第3戻り管10と往き管17との間には、2本のバイパス管181,182を並列に設けている。バイパス管181には放熱側ポンプ321を設け、バイパス管182には放熱側ポンプ322を設けている。このような構成にすることで、第2戻り管9を流れる不凍液を、往き管17に向けて無理なく供給できる。また、各バイパス管に1つの放熱側ポンプを設けているので、各ポンプに対する不凍液の負荷が少なく、ポンプ効率も向上できる。
【0070】
また、上記実施形態では、親機の給湯装置2に設けた流量センサ56、戻り温度サーミスタ55を用いて、不凍液の戻り流量及び戻り温度を検出したが、子機の給湯装置3,4に設けた流量センサ56、戻り温度サーミスタ55を用いて検出してもよい。また、流量センサ56、戻り温度サーミスタ55は、筐体2A内でなくても、筐体2Aの外側にある分岐管11に設けてもよい。
【0071】
また、熱源機としての給湯装置は、顕熱を利用して熱媒体を加熱する通常の給湯装置の他に、顕熱及び潜熱を回収できる潜熱回収型給湯装置でもよい。給湯装置の加熱方式については限定されない。
【符号の説明】
【0072】
1,150 融雪装置
2〜4 給湯装置
5 制御装置
6 融雪対象領域
7 第1戻り管
8 エアセパレータ
9 第2戻り管
10 第3戻り管
11〜13 分岐管
14〜16 分岐管
17 往き管
18 バイパス管
19 ヒーティングパイプ
21 分岐部
31 給湯装置側ポンプ
32 放熱側ポンプ
50 バーナ
55 戻り温度サーミスタ
56 流量センサ
58 往き温度サーミスタ
181,182 バイパス管
311,312 給湯装置側ポンプ
321,322 放熱側ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源であるバーナと、当該バーナの火力によって内部の通水を加熱する熱交換器とを内蔵した給湯装置を備え、融雪対象領域内に埋設されたパイプに、前記給湯装置から供給される熱媒体を循環させて、前記融雪対象領域内の積雪を融雪する融雪装置において、
前記バーナによって加熱された熱媒体を前記パイプに供給するための往き管と、
前記パイプを循環した熱媒体を前記給湯装置に戻すための戻り管と、
前記戻り管と前記往き管とをバイパスして、前記戻り管を流れる熱媒体の一部を分流して前記往き管に供給するバイパス管と、
前記戻り管において、前記バイパス管が接続する部分よりも熱媒体が流れる方向の下流側に設けられ、前記戻り管から前記給湯装置に流れる熱媒体の流量を調整する給湯装置側ポンプと、
前記バイパス管に設けられ、前記バイパス管から前記往き管に流れる熱媒体の流量を調整する放熱側ポンプと、
前記給湯装置に流れる熱媒体の流量を検出する給湯装置側流量検出手段と、
前記給湯装置に流れる熱媒体の入水温度を検出する入水温度検出手段と、
当該入水温度検出手段によって検出された前記入水温度に基づき、前記給湯装置に流れる熱媒体の目標流量を設定する目標流量設定手段と、
前記給湯装置側流量検出手段によって検出された流量が、前記目標流量設定手段によって設定された前記目標流量になるように、前記給湯装置側ポンプを制御する給湯装置側ポンプ制御手段と
を備えたことを特徴とする融雪装置。
【請求項2】
前記目標流量設定手段は、前記給湯装置に流れる熱媒体の流量が前記入水温度に比例するように、前記目標流量を設定することを特徴とする請求項1に記載の融雪装置。
【請求項3】
前記給湯装置に流れる熱媒体の入水温度を検出する入水温度検出手段と、
前記往き管を流れ、かつ前記バイパス管を流れる熱媒体と合流した熱媒体の往き温度を検出する往き温度検出手段と、
前記往き温度検出手段によって検出された前記往き温度と、前記入水温度検出手段によって検出された前記入水温度との差分が所定温度範囲内となるように、前記放熱側ポンプの駆動を制御する放熱側ポンプ制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の融雪装置。
【請求項4】
前記入水温度検出手段によって検出された前記入水温度の温度上昇率を算出する温度上昇率算出手段と、
当該温度上昇率算出手段によって算出された前記温度上昇率に基づき、熱媒体の逆流を検知する逆流検知手段と、
当該逆流検知手段によって熱媒体の逆流を検知した場合に、前記バーナを強制的に消火し、かつ前記給湯装置側ポンプ及び前記放熱側ポンプを強制的に停止することによって、前記融雪装置の融雪動作を停止する融雪動作停止手段と
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の融雪装置。
【請求項5】
前記給湯装置側ポンプ及び前記放熱側ポンプはDCポンプであることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の融雪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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