説明

螺旋案内路付き縦管の流入部構造

【課題】 合流式下水道に接続するマンホール内の流入部において、マンホール内に複数本設置された縦管を利用して、平常時と降雨時の下水の分水および落差処理を好適に行うことができるように、それぞれの縦管に螺旋案内路および分水が可能となる構造を設ける。
【解決手段】 縦管本体31,32の上部空間に設けられた流入部13は、マンホールM内を区画する隔壁12を備えるとともに、底部にインバート14が設けられて、平常時用の第1の縦管本体31へと流入水を導く流路が形成されている。そして、流入管2と第1の縦管本体31との間には、第1の縦管本体31へ流入する流量を調整するボルテックスバルブ4が配設されて、所定の水量を優先的に第1の縦管本体31に送水可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合流式下水が流入管から流入するマンホール内に水流を減衰させる螺旋案内路が設けられている縦管の流入部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されているように、マンホールの側壁からマンホール内に突出された流入管の一端に縦管の上端を接続し、縦管の下端をマンホール内の底部に設置して、流入管によりマンホール内に流入された下水を縦管に導入する技術が知られている。下水道において流域下水道の幹線は、地中の比較的深い位置に計画されており、関連公共下水道との接続点では高落差接合となっている。
【0003】
このため、一つのマンホール内で高落差処理を行う場合には、マンホール内に設けられる縦管が長くなるので、縦管下端から流出される下水の落下衝撃が大きく、マンホールの底部を損傷するおそれがあった。
【0004】
そこで、例えば特許文献2に記載されているように、縦管本体の内面に沿って上端から下端まで、螺旋状に形成された螺旋案内板を備えた縦管(ドロップシャフト)を配置する方法が採用されている。
【0005】
この種の縦管には、垂直に配設された直管状の縦管本体に対して、下水を螺旋状に旋回させて流下させる螺旋案内路が設けられている。これにより、マンホール内に流入した下水の流下エネルギーを減衰させて、流下した下水によって縦管底部が強い衝撃や荷重を受けるのを避けるとともに、強度を確保することによって底部の摩耗も抑制しうるように形成されている。また、螺旋案内路の軸芯部には、螺旋案内路に案内される下水中に含む空気を上方に排除するための中空状の中心筒(空気抜き芯筒)が設けられている。
【0006】
このような螺旋案内路付き縦管では、その上端部に流入する下水が、螺旋案内路に沿って流下する間に減衰される。したがって、マンホールの底部は、流下水の荷重や衝撃によっても破損や摩耗が抑制されるようになっている。
【0007】
また、公共下水道には、汚水と雨水を別々の管渠に排水する分流式下水道と、汚水および雨水を同一の管渠で排水する合流式下水道があるが、合流式下水道の高落差処理においても前記螺旋案内路を有する縦管が用いられることがある。
【0008】
このような合流式下水道の縦管では、晴天時または曇天時など平常時の下水を流入させるための縦管とは別に、降雨時の流量が増加した場合に下水を流入させる分水用の縦管もマンホールに設置していることが多い。このように、マンホールに流入する下水の流量に応じて下水を流下させるための縦管を2本設置しておくことで、降雨時の下水の増加にも対応できるようにしていた。
【特許文献1】実開平4−53842号公報
【特許文献2】特開平8−41915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、晴天時や曇天時に、合流式下水道の管渠内に滞留・沈殿していた汚泥等の汚濁物質は、降雨時の初期の下水に多量に含まれることになるため、この降雨初期には高濃度の汚濁水がマンホールに流入してくることになる。
【0010】
そのため、降雨時に、平常時用の縦管に下水が多量に流れ込んでしまうと、縦管の設計流量を越えてしまうだけでなく、高濃度の汚濁水に含まれる汚濁物質や異物等が螺旋案内路に詰まって、下水の流下を阻害したり、縦管やマンホール内の環境の悪化を招いたりするおそれがあった。そうすると、縦管に詰まった異物を取り除くことが困難となり、異物の詰まった縦管を部分的にまたは縦管全体を新たなものに取り替えることで対応しなければならないという問題点もあった。
【0011】
そこで本発明は、合流式下水道に接続するマンホール内の流入部において、マンホール内に複数本設置された縦管を利用して、平常時と降雨時の下水の分水および落差処理を好適に行うことができるように、それぞれの縦管に螺旋案内路および分水が可能となる構造を設けることで上記のような従来の問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するため、本発明は、合流式下水が流入管から流入するマンホール内に、平常時の流入水用である第1の縦管本体と、降雨時に所定量に達した流入水用である第2の縦管本体とが設置され、これらの各縦管本体内には流入水を螺旋状に流下させる螺旋案内路が設けられて落差処理を行う構成の螺旋案内路付き縦管の流入部構造であって、前記両縦管本体の上部空間に設けられた流入部には、前記第1の縦管本体へ流入する流量を調整するボルテックスバルブが前記流入管と第1の縦管本体の間に配設されて、所定の水量を優先的に前記第1の縦管本体に送水可能であることを特徴としている。
【0013】
このような発明により、晴天時や曇天時などの平常時には、第1の縦管本体を下水が螺旋状に流下して縦管底部が強い衝撃や荷重を受けるのを避けるとともに、強度を確保することによって底部の摩耗も抑制できる構成を備えたものとなっている。これに対し、降雨時に下水の流入量が増加したときには、かかる第1の縦管本体に流入する流量を所定の水量に調整しつつ、これを越える流量の下水を第2の縦管本体に流入させて螺旋状に流下させるので、平常時と降雨時の下水の分水が可能となり、降雨時にも第1の縦管本体に高負荷をかけることなく円滑に落差処理を行うことが可能となる。
【0014】
また、本発明は前記螺旋案内路付き縦管の流入部構造において、前記流入部はマンホール内を区画する隔壁を備えるとともに底部にインバートが設けられて前記第1の縦管本体へ流入水を導く流路が形成されていることを特徴とする。
【0015】
これにより、平常時に下水が流入する第1の縦管本体に、マンホールの流入管から安定的に流入水を導くことができ、隔壁で区画された流入部の外側を維持管理スペースとして使用することが可能となる。
【0016】
また、本発明では、前記第2の縦管本体は前記第1の縦管本体よりも大口径を有することを特徴としている。
【0017】
このように第2の縦管本体が第1の縦管本体よりも大口径であるので、降雨時の下水の流入量の増加に対応させることができ、平常時には小口径の第1の縦管本体を利用することができるので、マンホールを必要以上に大型化することなく、好適に落差処理を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
上述のように構成される本発明の螺旋案内路付き縦管の流入部構造によれば、マンホール内に複数本設置された縦管を利用し、各縦管に螺旋案内路を設けるとともに平常時と降雨時の下水の分水が可能となる構造を設けることができ、これにより下水の流量に応じた分水を可能にして、好適な落差処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る螺旋案内路付き縦管の流入部構造を実施するための最良の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1および図2は本発明の螺旋案内路付き縦管の流入部構造の一例を示し、図1はマンホール内に設置される縦管の流入部構造を示すブロック図、図2は前記流入部構造を横断面により示す説明図である。
【0021】
図示するように、マンホールMには、合流式下水道の管渠から下水の流入を導く流入管2が側面に接続されている。また、マンホールM内には、落差処理を行う直管状の縦管3が2本設置されている。縦管3は、第1の縦管本体31と第2の縦管本体32を備えている。
【0022】
また、これらの縦管本体31,32の上部には、合流下水の流入部13が形成されている。流入部13はマンホールMの上層を構成し、スラブ11が設けられるとともに、マンホールM内を区画する隔壁12が備えられている。例示の形態では、隔壁12によってマンホールM内が3つの空間に区画されており、流入部13と作業空間15,15とが形成されている。
【0023】
作業空間15,15は、マンホールMの内壁面と隔壁12とによって流入した下水の進入しないように構成されており、維持管理スペースとして使用することが可能となっている。また、これらの作業空間15のスラブ11には、作業者が縦管本体31,32に沿ってマンホールMの下部へ降りて行くための点検口16が開設されている。
【0024】
マンホールMに設置されている2本の縦管本体31,32は、ともに前記流入部13に開口して配設されている。第1の縦管本体31は、平常時の合流下水が流入しうるように計画されており、第2の縦管本体32は降雨時に所定量に達した合流下水が流入しうるように計画されている。そして、第2の縦管本体32は、第1の縦管本体よりも大口径を有するように形成されている。
【0025】
それぞれの縦管本体31,32には、下方に向けて螺旋案内路311,321が形成されている。螺旋案内路311,321は、それぞれ上部と下部の2段に分けて配設され、これらの間に螺旋案内板のない中間案内路が形成されていることが好ましい。螺旋案内路311,321の螺旋のピッチは、縦管本体31,32の長さ(落差処理の高さ)や、流下させる下水の必要速度に応じて、適宜選択される。
【0026】
また、縦管本体31,32には、それぞれ中心筒312,322が設けられている。各中心筒312,322には上部側面にガイド板313,323が設けられている。ガイド板313,323は、縦管本体31,32内の螺旋案内路311,321の始端部から上方に向かって立設されており、流入管2から流入部13に流入した下水を螺旋案内路311,321の回転方向に導くために配置されている。すなわち、流入した下水をガイド板313,323に衝突させて、流下エネルギーを減衰させるとともに、縦管本体31,32の周方向に沿って一方向のみに下水を旋回させることを可能にし、下水を円滑に流下させるためにガイド板313,323が設けられている。
【0027】
例示の形態では、ガイド板313,323は、縦管本体31,32の半径方向に配設されて縦管本体31,32内をそれぞれ区画し、中心筒312,322の外周面および縦管本体31,32の内周面に一体的に形成されている。そして、このガイド板313,323に対して直交する方向から、流入管2がマンホールMに接続されている。
【0028】
このように構成される流入部13には、第1の縦管本体31へ流入する流量を調整するボルテックスバルブ4が設けられている。例示の形態では、ボルテックスバルブ4は、流入管2と第1の縦管本体31の間に配設されている。
【0029】
また、かかる流入管2と第1の縦管本体31との間には、スラブ11にインバート14が設けられて、第1の縦管本体31へ流入水を導く流路が形成されている。図2に示すように、インバート14は、流入管2とボルテックスバルブ4の間、およびボルテックスバルブ4と第1の縦管本体31との間にそれぞれ形成されている。
【0030】
そして、ボルテックスバルブ4は、平常時の流量が少ないときには、流速が遅く、バルブ内に旋回流を生じないので、バルブ内を直線流で下水が通過して流入水を所定の流量に抑えることができる。これに対し、降雨時に流入管2から流入する下水量が増加したときには、増大した下水の流速により、バルブ内に旋回流を生じ、内周面に沿った領域で流入水が流れて中心部は負圧となるように構成されている。これにより、バルブ内に空気を引き込んで実質的な開口面積は縮小され、絞り効果によってボルテックスバルブ4を通過する流量が制限されることになる。
【0031】
したがって、晴天または曇天などで設計流量内の下水がマンホールMに流入する平常時には、流入管2に流入した合流下水は、マンホールM内で流入部13のインバート14に導かれてボルテックスバルブ4に流入し、これを経て第1の縦管本体31に流入する。そして、この第1の縦管本体31を螺旋状に流下して流出管5からマンホールMの外部へ排出される。
【0032】
また、降雨時には、流入部13のボルテックスバルブ4により、所定水量の下水は優先的に第1の縦管本体31に送水される。これと同時に、流入部13のボルテックスバルブ4に流入しない下水、すなわち所定水量を越える下水は、第1の縦管本体31へ流入せずに、大口径の第2の縦管本体32の方へ流入することになる。
【0033】
これにより、降雨時の合流下水の流量が増大した場合にも、第1の縦管本体31には設計流量を超える下水が流入することはなく、スムーズな螺旋流を形成して落差処理を行うことができる。また、降雨時に増加した下水は、第1の縦管本体31よりも大口径で形成された第2の縦管本体32へと流入するので、第1の縦管本体31では処理しきれない下水もスムーズに第2の縦管本体32において落差処理されることとなる。このとき、第2の縦管本体32は大口径で形成されているので、増大した流量にも対応することができ、また合流下水に汚濁物質や異物が含まれていても、詰まることなく流下させることも可能になる。
【0034】
以上のように、本発明の流入部構造によれば、晴天時や曇天時などの平常時には、第1の縦管本体を下水が螺旋状に流下して縦管底部が強い衝撃や荷重を受けるのを避けるとともに、強度を確保することによって底部の摩耗も抑制できる構成を備えたものとなる。また、降雨時に下水の流入量が増加したときには、かかる第1の縦管本体に流入する流量を所定の水量に調整しつつ、これを越える流量の下水を第2の縦管本体に流入させて螺旋状に流下させるので、平常時と降雨時の下水の分水が可能となり、降雨時にも第1の縦管本体に高負荷をかけることなく円滑に落差処理を行うことができるものとなる。
【0035】
なお、上記説明においてマンホールMには2本の縦管3が設置される例について説明したが、本発明はこれに限定されず、3本以上の複数本の縦管が設置される場合でも同様に、平常時用の縦管本体に流入する流量を調整するボルテックスバルブを、当該縦管本体と流入管との間に配設することで上記と同様の効果を得ることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、合流式下水道において下水全量を流下させることのできる高落差接合のマンホールに設置する螺旋案内路式ドロップシャフトの縦管に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の螺旋案内路付き縦管の流入部構造の一例を示すブロック図である。
【図2】前記流入部構造を横断面により示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
M マンホール
11 スラブ
12 隔壁
13 流入部
14 インバート
15 作業空間
16 点検口
2 流入管
3 縦管
31 第1の縦管本体
32 第2の縦管本体
311,321 螺旋案内路
312,322 中心筒
313,323 ガイド板
4 ボルテックスバルブ
5 流出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合流式下水が流入管から流入するマンホール内に、平常時の流入水用である第1の縦管本体と、降雨時に所定量に達した流入水用である第2の縦管本体とが設置され、これらの各縦管本体内には流入水を螺旋状に流下させる螺旋案内路が設けられて落差処理を行う構成の螺旋案内路付き縦管の流入部構造であって、
前記両縦管本体の上部空間に設けられた流入部には、前記第1の縦管本体へ流入する流量を調整するボルテックスバルブが前記流入管と第1の縦管本体の間に配設されて、所定の水量を優先的に前記第1の縦管本体に送水可能であることを特徴とする螺旋案内路付き縦管の流入部構造。
【請求項2】
流入部はマンホール内を区画する隔壁を備えるとともに底部にインバートが設けられて前記第1の縦管本体へ流入水を導く流路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の螺旋案内路付き縦管の流入部構造。
【請求項3】
前記第2の縦管本体は前記第1の縦管本体よりも大口径を有することを特徴とする請求項1または2に記載の螺旋案内路付き縦管の流入部構造。

【図1】
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【図2】
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