説明

螺旋案内路付き縦管

【課題】 マンホールを大型化させない簡易な構造で、螺旋案内路によって旋回流となって流下する下水が、その流量に関わりなく安定的な流況で空気連行量を低減させて、流出口からの流出速度を低下させることを可能にする。
【解決手段】 一実施形態としての縦管2は、上方下水管4と下方下水管5との間を連結し、内部に設けられた螺旋案内路21,23により下水を螺旋状に流下させる。縦管本体2aは、下端部に下水の流出口2cを備える。この流出口2cは螺旋案内路23の下端よりも下方に位置するように配設され、この流出口2cの下流側に吐出管32が設けられる。吐出管32は、縦管本体2aから流出する下水の流体圧によって拡径自在であり、可撓性を備えた管状体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道設備において高落差接合となる箇所に設置される螺旋案内路付き縦管に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道において流域下水道の幹線は、地中の比較的深い位置に計画されており、関連公共下水道との接続点では高落差接合となっている。このため、一つのマンホール内で高落差処理を行う場合には、マンホール内に設けられる縦管が長大化するので、縦管下端に到達する下水の落下衝撃が大きくなり、マンホールの底部を損傷したり、衝撃によって硫化水素が放散され下水道管のコンクリートを腐食させたりし、老朽化を促進するおそれがあった。
【0003】
そこで、近年では、マンホール内を自然流下する下水によってマンホール内部が損傷するのを防止するために、例えば、特許文献1、2に開示されているように、ドロップシャフトと呼ばれる高落差接合用の縦管をマンホール内に配置する方法が実施されている。この種の縦管は、垂直に配設された直管状の縦管本体内に、下水を螺旋状に案内して直線状に流下させないようにする螺旋案内路が設けられている。これにより、縦管に流入した下水を旋回流とすることができ、下水の流下エネルギーを減衰させて縦管底部まで導くので、縦管底部が大きな衝撃を受けるのを回避でき、摩耗したり破損したりするのを抑制することが可能となっている。
【0004】
また、従来の縦管で螺旋案内路の無い直管状の縦管であれば、下水が自然流下する間に空気を巻き込み、縦管の下端から排水される際に連行する空気量が多くなってしまうという問題点もあった。縦管は、下端部に設けられた流出口から、下流側幹線や下水道本管等の下流側管路へ接続されている。したがって、空気連行量が多いと縦管の下流側管路における下水の貯留許容量が低下してしまい、計画水量を確保できないという不都合が生じる。しかし、前記のような螺旋案内路付きの縦管を用いた場合には、空気連行量を大幅に低減できるというメリットもある。
【0005】
流出口から流出した下水は、下流側管路内を低速で流動している下水に合流する。マンホールと下流側管路との接続形態によっては、下水が下流側管路に対して、螺旋状の流れを維持したまま流出したり、左右に振れた非定常流のまま流出したりする場合がある。また、流出口からマンホール底部のインバートや下流側管路内の浅瀬の部分に、縦管本体からの下水が合流する場合もある。これらのような状態で下水が下流側管路に流出すると、下水が周囲に飛び散るおそれがあり、それに伴って、臭気が発生してマンホール内に溜まるおそれもある。
【0006】
また、下水が流出口から下流側管路に対して相対的に速い流速で流出すると、縦管内を流下する間に僅かに巻き込んだ空気によって、マンホールの底部を流れている下水に合流する際に、渦流(跳流)が発生したり、マンホール内の特定箇所にエアー溜を形成して増圧し、マンホール蓋を吹き飛ばしてしまったりする現象も生じる。低速で流れている下流側管路内の下水に渦流が発生すると、管路内に下水の滞留を生じるなど、円滑に排水することができないという問題があった。このため、流出口の口径を絞って流路抵抗を増加したり、流出口に邪魔板を設けたりすることによって流速を減衰させるなどの構造とすることが考えられた(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−41915号公報
【特許文献2】特開2004−137759号公報
【特許文献3】特開2005−248424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、流出口からの流出量が一定でなく、流出量が増減すると、下流側管路においては水脈が定まらず、水流の拡散が生じるなど不安定な流況を示すことになってしまう。すなわち、流出口の口径を絞る等の方式は、縦管内を落下する下水量が所定量以上になった場合に、縦管本体の上部まで下水が貯留されてしまい、結果的に流出口から流出する下水の流速が増大するという現象が起こり、流出口の絞り量を設定して流速を制御することが困難であった。
【0009】
また、螺旋案内路の作用で安定した旋回流が形成され、下水の流下エネルギーが減衰されるが、縦管本体の下端部においても旋回流が存在していると、流出口から流出する下水が衝撃流となることがあり、流出口から周囲に飛び散るおそれがある。流出口の周囲に飛び散った下水は、マンホール内を汚染し、これによって臭気が発生したり、下水中の空気連行量も増大したりするおそれがある。また、下水の流下衝撃によって硫化水素が放散され、下水道管のコンクリートを腐食させ、老朽化が進むおそれもある。
【0010】
また、左右に振れた非定常流状態のまま、流出口からマンホール内の下流側管路を流れている下水に合流すると、下流側管路内にて下水が滞留したり周囲に飛び散ったりするとともに、縦管内を流下する際に混入した空気によって臭気が発生してマンホール内に溜まるおそれがある。
【0011】
加えて、縦管を設置したマンホールにおいては縦管の設置スペースに加え、縦管及び付帯設備の周囲に保守管理スペースを設けなければならず、構造物が大型化し、設計自由度が低い傾向にあった。大型化してしまうと、マンホールを設置する工事が大規模になり、施工に要する敷地面積も増大して土地の確保が困難になるため、できるだけマンホールの大きさを小さく設計することも求められていた。
【0012】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、螺旋案内路によって旋回流となって管本体部内を流下する下水が、その流量に関わりなく安定的な流況で空気連行量を低減させることができ、流出口からの流出速度を低下させた状態または略定常流状態で流出させることができ、下流側管路における様々な問題点を解消し、かつマンホールを大型化させない構造の螺旋案内路付き縦管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するため、本発明は、上方下水管から流入した下水を螺旋案内路により螺旋状に流下させる縦管本体と、螺旋案内路により減衰した下水を下方下水管へ流出する流出口とを備える螺旋案内路付き縦管であって、前記流出口は螺旋案内路の下端よりも下方に設けられ、流出口の下流側には可撓性を有する吐出管が備えられたことを特徴とする。
【0014】
このような構成により、縦管から流出する下水の流勢を抑制して定常流に近い状態とすることができ、その下水が衝撃流となるのを回避し、低速で下方下水管に合流させることができる。また、吐出管が可撓性を有することから、下方下水管における水流に追従した形状に変化させることもでき、流路抵抗を増加させることもない。
【0015】
また、本発明は、上方下水管から流入した下水を螺旋案内路により螺旋状に流下させる縦管本体と、螺旋案内路により減衰した下水を下方下水管へ流出する流出口とを備える螺旋案内路付き縦管であって、前記流出口は螺旋案内路の下端よりも下方に設けられ、流出口の下流側には可撓性を有する吐出管が備えられ、前記吐出管は下水の圧力によって振られ自在であることを特徴とする。
【0016】
このような構成により、縦管から流出する下水の流勢を抑制して定常流に近い状態とすることができ、その下水が衝撃流となるのを回避し、低速で下方下水管に合流させることができる。また、吐出管が可撓性を有し、下方下水管における水流により自在に振られうるので、流路抵抗を増加させることもない。
【0017】
よって、これらの構成を有することにより、縦管から流出する下水が、当該縦管が設置されたマンホール内部や下方下水管の内部を汚染したり、臭気が発生したりするのを防ぐことができる。
【0018】
また、本発明は前記構成の螺旋案内路付き縦管において、前記吐出管が、ワイヤ補強層を内装した構成であってもよい。これにより、簡易な構成で下水の流量の増減に対応させることができ、吐出管の強度及び耐久性を向上させることができる。
【0019】
また、上記した目的を達成するため、本発明は、上方下水管から流入した下水を螺旋案内路により螺旋状に流下させる縦管本体と、螺旋案内路により減衰した下水を下方下水管へ流出する流出口とを備える螺旋案内路付き縦管であって、前記流出口は螺旋案内路の下端よりも下方に設けられ、流出口の下流側には可撓性を有する吐出管が備えられ、前記吐出管は下水の圧力によって拡径自在であることを特徴とする。
【0020】
このような構成により、縦管から流出する下水の流勢を抑制して定常流に近い状態とすることができ、その下水が衝撃流となるのを回避し、低速で下方下水管に合流させることができる。また、吐出管が可撓性を有することから、下方下水管における水流に追従した形状に変化させることもでき、流路抵抗を増加させることもない。さらに、吐出管は下水の圧力で自在に拡径するので、縦管への下水の流入量が増加した場合でも、吐出管が拡径して吐出流量を増加させて対応することができ、下水の流量に関わらず安定した流況で下方下水管に下水を流出することができる。
【0021】
また、本発明は前記構成の螺旋案内路付き縦管において、前記吐出管は内周面が略円筒形状であることが好ましい。さらに、前記吐出管は、流体圧が加わらない状態で下流側に向かって漸次縮径された形状であってもよい。
【0022】
このような構成により、吐出管は下水を円滑に排出し、また吐出管がオリフィス流路となって絞り効果をもたらして、下水を周囲に飛び散らせることなく円滑に流出させ、下水の流出に伴う空気連行量も極めて低く抑えることが可能となる。
【0023】
また、本発明は前記構成の螺旋案内路付き縦管において、前記流出口には横方向の流出管が設けられ、この流出管に吐出管が取り付けられ、この流出管の長さが縦管本体の口径Dに対して1/2Dまでの長さとされていることが好ましい。
【0024】
このような構成により、流出管の長さを短くすることができるので、マンホール内における流出管の設置スペースを縮小することができ、縦管及び流出管等の周囲に保守管理スペースを十分に確保することが可能である。したがって、マンホールを大型化せずとも、下水の流量に関わらず空気連行量を低減させて、流出口から流出する下水が衝撃流となるのを回避することができ、従来の種々の問題点を解消することが可能となる。
【0025】
また、前記吐出管は、その下流側端部が下方を向くように配設される場合には、下方下水管の口径を2D、計画水位をDとしたとき、下方下水管内における吐出口の高さが管底を基準にD〜3/2Dの範囲に設けられる構成であってもよい。
【0026】
これのような構成により、下方下水管を流れる下水の流況を乱すことなく下水を流下させることができ、縦管から安定した状態で下水を吐出することができる。
【発明の効果】
【0027】
上述のように構成される本発明の螺旋案内路付き縦管によれば、マンホールを大型化させない簡易な構造であって、縦管の螺旋案内路によって旋回流として流下する下水において、その流量に関わりなく安定的な流況で空気連行量を低減させることを可能にし、流出口からの流出速度を低下させることによって、下流側管路に円滑に合流させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る螺旋案内路付き縦管をマンホールの縦断面とともに示した説明図である。
【図2】実施形態1における吐出管の一例を模式的に示す説明図である。
【図3】実施形態1に係る螺旋案内路付き縦管であって通常の流量時の様子を模式的に示した説明図である。
【図4】実施形態1に係る螺旋案内路付き縦管であって大流量時の様子を模式的に示した説明図である。
【図5】前記吐出管の他の形態を示す説明図である。
【図6】実施形態2に係る螺旋案内路付き縦管を模式的に示した説明図である。
【図7】実施形態2における吐出管の取付構造の一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る螺旋案内路付き縦管を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る螺旋案内路付き縦管をマンホールの縦断面とともに示した説明図である。
【0030】
マンホール1の内部には、高落差接合となる下水道用管として直管状の縦管2が設置されている。縦管2は、上部に接続する上方下水管4から流入した下水を流下させて、下方下水管5へ向けて排出する。例示のマンホール1には、上方下水管4の管軸方向と、縦管2の管軸方向とが互いに直交し、かつ、マンホール1の内部でマンホール1の管軸に対して偏心させて縦管2が配設されている。
【0031】
縦管2の縦管本体2aは、下水の流入口2bを上部側面に備え、上方下水管4が接続されている。縦管本体2a内は、螺旋状に成形された板状体である螺旋案内板20が配設されて、上から上部螺旋案内路21、下部螺旋案内路23として構成され、上部螺旋案内路21と下部螺旋案内路23との間に螺旋案内板20の無い中間案内路22が設けられている。螺旋案内路21、23の螺旋ピッチは、縦管本体2aの長さや、流下させる下水の計画流量及び必要速度等に応じて、適宜選択される。
【0032】
縦管2の上部螺旋案内路21の中心部には、内部が中空とされた中心筒(空気抜き芯筒)24が設けられている。この中心筒24は、例えば縦管2の内径の約1/3の管径を有する小口径の円筒管を用いて形成され、縦管2と同心となるように配設されている。また、図1に示すように、中心筒24の上端は、上方下水管4の管頂よりも上方位置まで延出されて、マンホール1内に開放されている。下部螺旋案内路23の中心部は、中心筒が設けられていなくともよく、中心筒24とほぼ同寸の空洞部が形成されている。このような螺旋案内路21,23の中心は、縦管2内を下水が流下する間に、下水に含まれる空気を排出する作用をなし、空気連行量を低減させることを可能にしている。
【0033】
中心筒24の上部の側面にはガイド板25が設けられている。このガイド板25は、縦管2の管軸方向に沿って配設され、上方下水管4の管頂とほぼ同等の高さ位置から上部螺旋案内路21の始端部までとほぼ同等の長さを有するように形成されている。
【0034】
これにより、上方下水管4から縦管本体2aに流入した下水は、ガイド板25に衝突し、上部螺旋案内路21へ導かれ、螺旋の回転方向へ案内される。そして、下水は、上部螺旋案内路21に沿って流れて、一方向に旋回流を形成し初め、中間案内路22及び下部螺旋案内路23を通って縦管2内を流下していく。その過程で、下水は旋回流となり、落下エネルギーを減勢させるとともに下水と空気とを分離させる。
【0035】
このような縦管2に使用する材料は特に限定されるものではないが、強度や剛性等の観点から、例えば、硬質塩化ビニル樹脂、FRP、ポリカーボネート等の合成樹脂系材料が好ましく、これらの他に、FRPとモルタルとの積層体である繊維強化プラスチックモルタル(いわゆるFRPM)や、合成樹脂とセメント等との複合材等も好適である。また、中心筒24や螺旋案内路21、23は、強度や加工性等の面からはFRP、もしくは塩化ビニル樹脂を用いて形成されることが好ましく、さらに、塩化ビニル樹脂にFRPを積層させて補強を図ったものであってもよい。
【0036】
上部螺旋案内路21、中間案内路22、及び下部螺旋案内路23を通って旋回流となって流下した下水は、縦管本体2aの管底へ到達する。縦管本体2aの底部は、マンホール1の内部に設けられたコンクリートスラブ11に支持されている。また、この縦管本体2aの底部には、下水の流出口2cが設けられている。
【0037】
流出口2cは下部螺旋案内路23の下端よりも下方位置に開口されている。下水は、この流出口2cから、マンホール1の底部に貫通して設けられた下水幹線等の下方下水管5へと流れ出る。また、マンホール1の底部には、インバート12が設けられており、流出口2cからの下水を受け、下方下水管5を流れてきた下水とともに円滑に下流へと排水されるように意図されている。
【0038】
流出口2cには、横方向に流出管31が接続されている。また、流出管31の先端部には、吐出管32が備えられている。この流出管31には、縦管本体2aの内径よりも小さい口径を有するものを用いることができる。
【0039】
吐出管32は、縦管本体2aから流出する下水の流体圧によって拡径自在であり、かつ可撓性を備えた管状体である。先端部の吐出口321は、その可撓性から下方を向いて配設されている。
【0040】
図2は、本実施形態における吐出管32の一例を模式的に示した説明図である。この吐出管32は、流体圧が加わらない状態のとき、図中上方の基端部から、図中下方の先端部に向かって、漸次縮径された形状の管状体である。また、吐出管32は、図示するように逆円錐台形状の外形を有しているのが好ましく、吐出する下水に混入する空気量を少なくすることができ、調水を行うのが容易となる。
【0041】
先端部の吐出口321は、基端部側の口径dに対し、約1/5d〜1/2dの大きさで形成されている。吐出管32は、吐出口321がマンホール1の底部(図1における下方)に向けて、基端部が流出管31に取り付けられる。吐出管32の取付手段は任意であるが、維持管理の観点から、締着バンド等の適宜の取付具33を利用して固定することで、取り外して点検及び交換可能とされることが好ましい。
【0042】
かかる吐出管32は、下水の流体圧によって拡径自在もしくは振られ自在な性質を有し、可撓性のある材料により構成されていればよく、材料が特に限定されるものではない。例示すると、合成ゴムやエラストマー系材料を含む弾性ゴム等のゴム系材料を吐出管32に用いることができる。より具体的には、吐出管32の材料として、耐摩耗性及び耐薬品性を備えているとさらに好適であり、例えば、シリコン系ゴム、EPDM系ゴム、ウレタン系ゴム等からなる管状体を用いることができる。
【0043】
このような構成により、縦管2の内部にて螺旋状に流下した下水は、流出口2cから流出する際に、残存する遠心力によって周囲に飛び散ろうとするが、流出管31が縦管本体2aの外周面から突出して設けられているので、その流勢を抑える作用をなす。
【0044】
さらに、流出管31に接続した吐出管32が、流出する下水の飛散しようとするエネルギーを吸収し、圧力損失を高めて減衰させ、吐出口321がオリフィス流路の絞り効果をもたらして下水を低速で吐出する。これにより、下水が吐出管32から周囲に飛び散ることなく流出し、定常流に近い状態となってマンホール1底部のインバート12を流れる下水にスムーズに合流する。
【0045】
図1において、吐出管32の先端部(吐出口321)と、インバート12を流れる下水の水面との距離は、離れすぎていると下水の着水時に流況を乱すおそれがある。そのため、図示するように、吐出管32は、下方下水管5の管頂よりも低い高さに吐出口321が位置するように配設される。好ましくは、下方下水管5の口径が2D、計画水位がDであるとき、下方下水管5内における吐出口321の高さhが管底を基準にD〜3/2Dの範囲に設けられることである。これにより、下方下水管5を流れる下水の流況を乱すことなく下水を流下させることができ、縦管2から安定した状態で下水を吐出することができる。
【0046】
なお、下水量が一時的に計画水量を超えるなど、下方下水管5の水面が吐出口321よりも高くなる場合があっても、吐出管32はその可撓性により下水の流れに追従する方向に形状を変化させることができるので、下水の流れを妨げるおそれがない。
【0047】
図3及び図4は、実施形態1に係る螺旋案内路付き縦管2を模式的に示した説明図であり、図3は、通常の流量時を示し、図4は、大流量時を示している。
【0048】
前記のように吐出管32を設けることにより、縦管2の下端から流出する下水の流速を大型な装置を用いることなく効果的に低下させることができるが、さらに、下水の流量の変化にも対応させることができる。
【0049】
例えば、図3に示す計画水量どおりの通常の流量時には、吐出口321が絞られた形態を維持し、オリフィス流路を形成しており、下水の流勢が抑えられて定常流に近い状態の低速で下水が流出する。
【0050】
これに対し、大量の降雨があった場合など、図4に示すように下水の流量が一時的に増大した際には、吐出管32が、増大した下水の流体圧によって略円筒状に拡径し、流下水量を増大させることができる。これにより、下水流量が通常より増加した時であっても、縦管本体2aの上部まで下水が貯留されることがなく、円滑に排水され、吐出管32から流出する下水の流速が増大するという悪影響も防ぐことができる。その結果、下水が吐出管32から周囲に飛び散ることなく安定的に流出し、マンホール1底部のインバート12を流れる下水にスムーズに合流することになる。
【0051】
また、図4に示す大流量時に対応した吐出管32の形態として、図5に例示するように、先端部から中間部にかけてスリット(切れ目)322が設けられたものであってもよい。このスリット322は、吐出管32の吐出口321側から基端部方向に切り込みとして設けられ、全体長さの約半部程度の長さを有する。また、スリット322は、吐出管32に周方向に均等に配置されて、2〜4本程度設けられてもよい。
【0052】
かかる吐出管32を用いた場合にも、図3に示す通常の流量時には、大きな流体圧が作用しないため、スリット322が閉じられた状態でオリフィス流路を維持し、絞り効果を発揮する。また、図4に示す大流量時には、吐出管32を流れる下水の流体圧によって、スリット322が開き、吐出口321が押し拡げられ、流下水量を増大させることが可能となる。
【0053】
なお、吐出管32は、前記のように吐出口321が基端部の口径dに比べて小さく形成された管状体だけに限定されず、下水の流体圧によって拡径自在で可撓性もしくは振られ自在性を備えた管状体であれば、サクションホースと呼ばれるような円筒形状の合成樹脂製ホースであってもよい。さらに、この場合、吐出管32の強度を確保するために、ワイヤ補強層を内装した構成であってもよい。これらいずれの形態の吐出管32によっても、流出する下水の飛散しようとするエネルギーを吸収して圧力損失を高め、減衰させて、低速で吐出するのを可能にする。また、長期的な使用により吐出管32に破損や劣化が生じた場合には、適宜取り替えることが可能である。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る螺旋案内路付き縦管について説明する。図6は、実施形態2の下水流出部構造を模式的に示した説明図であり、図7は吐出管の取付構造の一例を示す部分断面図である。
【0054】
なお、この実施形態に係る螺旋案内路付き縦管は、流出口2aの構造及び吐出管32の設置形態に特徴があり、縦管2等の周辺構造及び吐出管32の形状そのものは、前記実施形態1と同様のものを適用可能である。そこで、実施形態1と異なる部分について主に説明し、他の構成については実施形態1と共通の符号を用いて重複する説明を省略することとする。
【0055】
この実施形態では、縦管本体2aの底部がマンホール1の底部に設置され、流出口2cが縦管本体2aの下側面に設けられている。図7に示すように、流出口2cには、FRPM管で構成される流出管31が接続されている。流出管31の両端部にはそれぞれ鍔部311、311が設けられている。流出管31の一端は、縦管本体2aの外側面に、鍔部311を利用して外側からFRP積層によって一体的に接合されている。流出管31の他端には鍔部311に係止させて吐出管32が取着されている。
【0056】
吐出管32は、実施形態1に説明したいずれの形態の吐出管であってもよい。加えて、吐出管32の基端部に内側に突出する係止凸部323が設けられていることにより、流出管31の鍔部311に係止して、容易に取り付けることができる。例示の形態では、締着バンド等の取付具33を2本、係止凸部323の外面に嵌着させることにより、流出管31と吐出管32とが結合されている。下水は、流出管31及び吐出管32を通って飛散しようとするエネルギーが抑制され、下方下水管5内で飛散することなく円滑に流出して、マンホール1底部から下方下水管5を流れてくる下水に合流することになる。また、下水量が一時的に増加することがあっても、吐出管32はその可撓性により下水の流れに追従する方向に形状を変化させることができるので、下水の流れを妨げるおそれがない。
【0057】
ここで、流出管31の長さLは、マンホール1の大きさや下水の計画流量により適宜決定することができるが、縦管本体2aの口径Dに対して1/2Dの長さがあれば足り、非常に短く形成することが可能である。すなわち、従来の構造では、流出管を長くすることで流出口から流出する下水の流下エネルギーを低減させていたが、本実施形態では吐出管32が下水の流下エネルギーを吸収し、圧力損失を高めることができるので、流出管31を短くすることが可能となる。
【0058】
これにより、マンホール1内における流出管31の設置スペースを縮小することができ、縦管2及び流出管31等の周囲に保守管理スペースを十分に確保することが可能であり、マンホールの口径を大きくする必要もない。したがって、マンホール1を大型化することなく、下水の空気連行量を低減させて、その流量に関わりなく安定的に、流出速度を低下させた状態で下水を流出することができる。
【0059】
また、図7において、実線で描かれた吐出管32は、流出管31に接続された際の状態を示しており、通水すると、図6に示されるように吐出口321が下方下水管5の管底の方向を向く。また、大流量時には、図7において2点鎖線で描かれるように、増加した下水の流体圧によって吐出管32が拡径して、流下水量を増大させることができる。
【0060】
なお、螺旋案内路付き縦管2は、図示省略するが、図1に示す実施形態に限らず、縦管本体2aの下部が曲がらずにそのまままっすぐ下方下水管5へ接続するような形状であってもよく、かかる縦管2に吐出管32を設けた構成であってもよい。この実施形態では、縦管本体2aの下部に吐出管32が下向きに取り付けられる。吐出管32の形状や下水が吐出管32を流れる状況は、実施形態1で示した構成と同様である。
【0061】
以上のような螺旋案内路付き縦管2により、下水の流量に関わりなく空気連行量を低減させて、縦管2の下端部で旋回流が存在していても、流出口2cから流出する下水が衝撃流となるのを回避でき、下方下水管5における水脈を安定させて従来の種々の問題点を解消することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、下水道において高落差接合となる箇所に設置する縦管として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 マンホール
12 インバート
2 縦管
2a 縦管本体
20 螺旋案内板
21 上部螺旋案内路
22 中間案内路
23 下部螺旋案内路
24 中心筒
25 ガイド板
31 流出管
32 吐出管
321 吐出口
322 切れ目(スリット)
4 上方下水管
5 下方下水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方下水管から流入した下水を螺旋案内路により螺旋状に流下させる縦管本体と、螺旋案内路により減衰した下水を下方下水管へ流出する流出口とを備える螺旋案内路付き縦管であって、
前記流出口は螺旋案内路の下端よりも下方に設けられ、流出口の下流側には可撓性を有する吐出管が備えられたことを特徴とする螺旋案内路付き縦管。
【請求項2】
上方下水管から流入した下水を螺旋案内路により螺旋状に流下させる縦管本体と、螺旋案内路により減衰した下水を下方下水管へ流出する流出口とを備える螺旋案内路付き縦管であって、
前記流出口は螺旋案内路の下端よりも下方に設けられ、流出口の下流側には可撓性を有する吐出管が備えられ、前記吐出管は下水の圧力によって振られ自在であることを特徴とする螺旋案内路付き縦管。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の螺旋案内路付き縦管において、
前記吐出管はワイヤ補強層が内装されていることを特徴とする螺旋案内路付き縦管。
【請求項4】
上方下水管から流入した下水を螺旋案内路により螺旋状に流下させる縦管本体と、螺旋案内路により減衰した下水を下方下水管へ流出する流出口とを備える螺旋案内路付き縦管であって、
前記流出口は螺旋案内路の下端よりも下方に設けられ、流出口の下流側には可撓性を有する吐出管が備えられ、前記吐出管は下水の圧力によって拡径自在であることを特徴とする螺旋案内路付き縦管。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の螺旋案内路付き縦管において、
前記吐出管は、内周面が略円筒形状であることを特徴とする螺旋案内路付き縦管。
【請求項6】
請求項5に記載の螺旋案内路付き縦管において、
前記吐出管は、流体圧が加わらない状態で下流側に向かって漸次縮径された形状の管状体であることを特徴とする螺旋案内路付き縦管。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに請求項に記載の螺旋案内路付き縦管において、
前記吐出管には下流側端部から中間部にかけての切れ目が複数本設けられていることを特徴とする螺旋案内路付き縦管。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の螺旋案内路付き縦管において、
前記流出口には横方向の流出管が設けられ、この流出管に吐出管が取り付けられ、流出管の長さが縦管本体の口径Dに対して1/2Dまでの長さとされていることを特徴とする螺旋案内路付き縦管。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の螺旋案内路付き縦管において、
前記吐出管は、その下流側端部が下方を向くように配設され、下方下水管の口径を2D、計画水位をDとしたとき、下方下水管内における吐出口の高さが管底を基準にD〜3/2Dの範囲に設けられることを特徴とする螺旋案内路付き縦管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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