説明

螺旋気流による粉体空気輸送装置

【課題】 螺旋気流を利用した粉体空気輸送装置を改良し、より持続的な螺旋気流を確実に発生させることを目的とする。
【解決手段】 螺旋気流による空気輸送装置(10)は、パイプライン(22)と、パイプラインの下流端を吸引してパイプライン内に粉体搬送用空気流を発生させる手段(28)と、パイプラインの上流端においてパイプラインの内周に対してほぼ接線方向にパイプライン内に二次空気と粉体との混合物を導入する手段(36)とを備えている。導入手段(36)によってパイプライン内に接線方向に導入された二次空気と粉体との混合物(46)は旋回流(48)を生成するが、パイプライン内を流れる搬送用空気流によって軸線方向のベクトルを与えられ、パイプラインの内壁に沿って螺旋状に旋回しながら下流側へ進む螺旋気流を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプラインを用いて粉粒体を空気輸送する装置に係り、より詳しくは、パイプライン内に発生させた螺旋気流を利用する空気輸送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプラインを用いた粉体の空気輸送は、圧力空気流によって粉体を後方から圧送する圧送式と、真空を利用して前方から粉体を吸引する吸引式とに大別することができる。
従来技術においては、吸引式であれ圧送式であれ、螺旋気流を利用した空気輸送方装置が提案されている。
【特許文献1】特開平10-181883号および特開平11-199049号には、渦流を利用した吸引式の空気輸送装置が開示されている。この装置においては、輸送管内のエアー吸引方向と交差したスリットを備えた渦流発生ユニットが輸送管の末端に設けてあり、輸送管内に渦巻状で低速で進行する空気流を発生させるようになっている。 この装置においては、渦流発生ユニットが輸送管の終端に設けてあるので、輸送管の始端まで遡って渦流を波及させるのが困難であるという難点がある。
【特許文献2】特開昭60-31437号および特開昭62-58100号には、螺旋気流を利用した空気輸送方法が開示されている。この輸送方法では、輸送管の上流端にはコアンダ効果を利用したエジェクターが設けてある。エジェクターに圧力流体を供給すると、コリオリの力により竜巻に類似した螺旋気流が輸送管内に発生し、固体粒子は輸送管の内壁に接触することなく搬送される、と記載してある。 この輸送方法はコリオリの力を利用して竜巻に類似した螺旋気流を発生させるので、空気輸送に必要なエネルギをもった安定した螺旋気流を発生させるのが困難であると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、螺旋気流を利用した粉体空気輸送装置を改良し、より持続的な螺旋気流を確実に発生させることの可能な粉体空気輸送装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、より強力で持続的な螺旋流を発生させることの可能な粉体空気輸送装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、より長距離にわたって安定した螺旋流を持続させることの可能な粉体空気輸送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は螺旋気流による吸引式粉体輸送装置を提供するもので、この装置は、近位端と遠位端とを有するパイプラインと、前記パイプラインの遠位端を吸引することによりパイプラインの近位端から遠位端へと流れる粉体搬送用空気流を発生させる吸引手段と、前記パイプラインの近位端の側においてパイプラインの内周に対してほぼ接線方向にパイプライン内に二次空気と粉体との混合物を導入する手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0005】
作動時には、導入手段によってパイプライン内に接線方向に導入された二次空気と粉体との混合物は搬送用空気流によって軸線方向のベクトルを与えられ、パイプラインの内壁に沿って螺旋状に旋回しながら遠位端の方へ進む螺旋気流を形成する。
このように粉粒体を浮遊させて輸送する空気流はパイプラインの内周壁に沿って螺旋状に旋回するので、輸送中の粉体がパイプラインの底に沈降することがない。その結果、パイプラインの入口に投入した粉体の全量を確実に遠位端まで輸送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
非限定的な実施例を示す添付図面を参照しながら、本発明の実施例を説明する。
図1の全体概略図を参照するに、空気輸送装置10は、例えば、第1のホッパー12に投入された粉粒体を遠隔位置にある他のホッパー14に空気輸送するために使用される。粉体投入用ホッパー12には例えばホイストから吊り下げられたフレキシブル・コンテナーバッグ16などから粉体を投入することができる。
【0007】
空気輸送装置10は、近位端18から遠位端20まで延長するパイプライン22を有する。パイプライン22の遠位端20には、サイクロンなどの固気分離装置24と、バッグフィルターその他任意の形式の濾過器26と、ルーツブロワー、ターボブロワー、多段リングブロワー、真空ポンプなどからなる吸引装置28がこの順に接続されている。吸引装置28を作動させてパイプライン22の遠位端20を吸引して負圧にすると、パイプラインの近位端18から遠位端20へと流れる粉体搬送用吸引空気流が発生する。
パイプライン22の近位端18の上流側にはフィルター30が接続してあり、パイプライン22内に吸引される搬送用空気を濾過するようになっている。
フィルター30の下流には一次空気制御弁32が接続してあり、パイプライン22内へと吸引される空気量を制御することにより、パイプライン22内を流れる粉体搬送用空気流の流速を制御するようになっている。
【0008】
パイプライン22のうち近位端18に近接する区間はホッパー12の真下に配置してある。ホッパー12の下にはスクリューフィーダ34その他の粉体切り出し装置が接続してある。
スクリューフィーダ34の出口の下には、二次空気と粉体との混合物をパイプライン22に接線方向に導入するための装置36が設けてある。スクリューフィーダ34はホッパー12の粉体を切り出して、所望の供給量でこの粉体・二次空気導入装置36に供給するようになっている。
【0009】
図2は図1の2−2矢視拡大断面図で、この粉体・二次空気接線方向導入装置36の構成の一例を示す。図3は図2に示した粉体・二次空気導入装置36の分解斜視図である。
図2および図3を参照するに、粉体・二次空気導入装置36は、スクリューフィーダ34から切り出された粉体を受け取るための漏斗部38と、パイプライン22を接続するために漏斗部38の下端に一体的に接続又は接合されたT継手40と、T継手40の水平管部41の内側に嵌合された中空管状のオリフィスオフセット用インサート42とで構成することができ、これらの構成部品は例えばステンレス鋼で形成することができる。
図示した実施例では漏斗部38は略截頭円錐形であるが、截頭角錐台形にしてもよい。
T継手40は図1に示したようにパイプライン22の近位端18に近くにおいてパイプライン22の途中に接続される。
【0010】
オリフィスオフセット用インサート42はT継手40の水平管部41の内径にほぼ等しい外径を有し、T継手40の水平管部41の内側にピッタリと締まり嵌めされるようになっている。
図3から良く分かるように、インサート42の斜め上方の側壁にはスリット状のオリフィス44が設けてある。図示した実施例ではオリフィス44はスリット状に形成してあるが、円形、楕円形その他の形状にしてもよい。
オリフィスオフセット用インサート42は、そのオリフィス44が平面視においてT継手40の水平管部41の中心軸線から側方にオフセットされ、平面視においてオリフィス44の下縁がT継手40の垂直管部の開口に接するような角位置に位置決めされる(図2参照)。
T継手40に対するインサート42の角位置、ひいてはオリフィス44の開口面積は、T継手40の水平管部41の内側でインサート42を摩擦抵抗に抗して回転させることにより任意に調節することができる。
【0011】
この空気輸送装置10の作動を説明するに、吸引装置28を作動させ、一次空気制御弁32を調節して、パイプライン22内に所望の速度(例えば、20m/秒)の吸引空気流を発生させる。
パイプライン22内に吸引空気流を定立させると、パイプライン22内の負圧により、粉体・二次空気導入装置36のインサート42のオリフィス44から二次空気がT継手40の水平管部41内に吸引される。
前述したように、オリフィス44はT継手40の水平管部の中心軸線から側方にオフセットされているので、オリフィス44からT継手40内に吸引される二次空気流は、図2に矢印46で示したように、T継手40の水平管部41の内周に対してほぼ接線方向に流入する。その結果、オリフィス44からT継手40の水平管部41内に吸引された二次空気流は、図2に矢印48で示したように、T継手40の水平管部41内で水平管部41の軸線を中心として旋回しようとする。
この二次空気からなる旋回流48には、パイプライン22内を流れる吸引空気流によってパイプラインの軸線方向のベクトルが与えられるので、二次空気流はパイプラインの内壁に沿って螺旋状に旋回しながら吸引装置28の方へと進行する螺旋気流を生成するであろう。
【0012】
次に、スクリューフィーダ34を作動させてホッパー12に投入された粉体を切り出すと、粉体は粉体・二次空気導入装置36の漏斗部38内へ落下する。漏斗部38の下部開口へ滑り落ちた粉体はパイプライン22内の負圧により二次空気流と共にインサート42のオリフィス44を通ってT継手40の水平管部41内に吸い込まれる。その際、二次空気と粉体との混合物は、前述したように、かつ、図2に矢印46で示したように、 T継手40の水平管部41の内周に対して接線方向に水平管部41内に入り、 T継手40の水平管部41の内周に沿ってパイプライン22の軸線を中心として矢印48で示したように旋回する。
前述したように、T継手40の水平管部41内に接線方向に吸い込まれた二次空気と粉体との混合物からなるこの旋回流48には、パイプライン22内を下流に向かって流れる吸引空気流によってパイプラインの軸線方向のベクトルが与えられるので、この旋回流は、結果的に、パイプライン22の内壁に沿って螺旋状に旋回しながら下流側へ進行する螺旋気流を形成する。
この螺旋気流に担持された粉体はパイプライン22の底部に沈降することなく固気分離装置24まで空気輸送され、固気分離装置24で固気分離され、粉体はホッパー14に回収される。
【実施例1】
【0013】
実験例
図2および図3に示した粉体・二次空気導入装置36を試作した。図示した装置との相違は、オリフィスオフセット用インサート42のオリフィスを円形にしたことのみであった。この粉体・二次空気導入装置36のT継手40の水平管部の下流側に透明プラスチック製のパイプラインを接続し、ルーツブロワを用いてこのパイプラインの下流端を吸引しながら、一次空気制御弁を調節することによりパイプライン内に風速約20m/秒の吸引空気流を定立した。
T継手40の水平管部内でオリフィスオフセット用インサート42を手で回して、 T継手40の水平管部に対するインサート42の角位置を変えることにより、T継手40の水平管部の入口開口とインサート42のオリフィスとの重なり合いを変えながら、シャベルを用いてこの粉体・二次空気導入装置36の漏斗部38へ粉体を投入し、螺旋気流の発生状況および粉体の空気輸送状況を観察した。
インサート42の円形のオリフィスを真上に位置決めし、円形オリフィスの中心をT継手40の水平管部の入口開口の中心に一致させた時には、旋回流は発生せず、貼付の図4の写真から分かるように、パイプライン内に螺旋気流は発生しなかった。吸引空気流はパイプライン内を一真っ直ぐに流れ、時折、パイプラインの底部には吹き溜まりのように粉体が沈降することがあったが、吸引空気流によって下流側へ駆動されるのが観察された。
【0014】
次に、インサート42を回して、インサート42の円形のオリフィスの下縁が平面視においてT継手40の垂直管部の開口の縁に接するような角位置にインサートを位置決めし、漏斗部38へ粉体を投入したところ、貼付の図5の写真から分かるように、パイプラインの内壁に沿って粉体と二次空気との混合物からなる持続的な螺旋気流が発生し、粉体は実験用パイプラインの下流端まで滞留や沈降を起こすことなく搬送された。
【0015】
図示しない他の実施例として、本発明は、また、圧送式の粉体空気輸送装置を提供する。この圧送式粉体空気輸送装置は:
近位端と遠位端とを有するパイプラインと、
入口と縮径された喉部と入口とほぼ同径の出口とを備え、出口が前記パイプラインの近位端に接続されたベンチュリ管と、
前記ベンチュリ管の入口に圧力空気を供給することによりベンチュリ管の喉部に負圧を発生させると共に前記パイプラインの近位端から遠位端へと流れる粉体搬送用空気流を発生させる圧力空気供給手段と、
前記ベンチュリ管の喉部に対してほぼ接線方向に二次空気と粉体との混合物を導入する手段とを備え、
作動時には、前記導入手段によってベンチュリ管の喉部に接線方向に導入された二次空気と粉体との混合物が次いでパイプライン内を流れる間に前記搬送用空気流によって軸線方向のベクトルを与えられ、パイプラインの内壁に沿って螺旋状に旋回しながら遠位端の方へ進む螺旋流を形成する。
【0016】
更に、この圧送式空気輸送装置の変化形においては、ベンチュリ管に代えてコアンダ効果を利用した圧縮空気駆動のエジェクタを使用することができ、このエジェクタの負圧側に二次空気と粉体との混合物をパイプラインに接線方向に導入するための装置を配置することができる。
【0017】
以上には本発明の特定の実施例を記載したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の修正や変更を施すことができる。例えば、粉体輸送用流体として窒素など空気以外の気体も使用することができ、斯る均等物の使用も本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の空気輸送装置の全体概略図である。
【図2】図1に示した空気輸送装置の粉体・二次空気接線方向導入装置の断面図である。
【図3】図2に示した粉体・二次空気接線方向導入装置の分解斜視図である。
【図4】実験例の写真で、螺旋気流が発生していない状態のパイプラインを示す。
【図5】実験例の写真で、パイプライン内に螺旋気流が発生している状態を示す。
【符号の説明】
【0019】
10: 輸送装置
12: 粉体投入用ホッパー
14: 輸送先ホッパー
18: パイプラインの近位端
20: パイプラインの遠位端
22: パイプライン
28: 吸引手段
36: 粉体・二次空気導入装置
42: オリフィスオフセット用インサート
44: インサートのオリフィス
46: 旋回流
48: 螺旋気流

特許出願人 株式会社 ワイ・エム・エス
代理人 弁理士 伊藤 宏

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と遠位端とを有するパイプラインと、
前記パイプラインの遠位端を吸引することによりパイプラインの近位端から遠位端へと流れる粉体搬送用空気流を発生させる吸引手段と、
前記パイプラインの近位端の近傍においてパイプラインの内周に対してほぼ接線方向にパイプライン内に二次空気と粉体との混合物を導入する手段とを備え、
作動時には、前記導入手段によってパイプライン内に接線方向に導入された二次空気と粉体との混合物が前記搬送用空気流によって軸線方向のベクトルを与えられ、パイプラインの内壁に沿って螺旋状に旋回しながら遠位端の方へ進む螺旋気流を形成するようにしたことを特徴とする吸引式粉体空気輸送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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