説明

血圧測定システム

【課題】随時又は継続的に測定可能であり、装着時に生じる張力を考慮して補正し、正確な血圧測定を実現する血圧測定システムを提供すること。
【解決手段】3軸方向に対して作用する力を検出する3軸力測定センサ4を用いて、血管壁に押圧して装着するセンサ部2と、該血管壁が発生する脈波を伝達する脈波伝達部材と、圧力方向成分の圧力とせん断方向成分の圧力を検出し、これら圧力から血圧値を算出する制御部5と、を具備する血圧測定システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象に装着し経時的に血圧を測定する血圧測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の血圧測定に用いる血圧センサとして、トノメトリ方式を採用した血圧センサが知られている。この血圧センサは、例えば、圧力センサアレイを橈骨動脈等へ桂皮的に押し付けて、血管壁の一部に平行且つ平坦な状態を作り出すことで、張力の影響が小さい領域を作り出し、その領域内で圧力センサアレイに抗して拍動する動脈の内圧の変動を測定する。その計測結果にラプラスの法則を用いて演算処理し、血圧値を取得している。
【0003】
このトノメトリ方式の特徴として、血管壁の硬さや張力の影響を受けることなく、血管内圧を測定できるという特徴がある。
例えば、特許文献1には、トノメトリ法を用いたセンサが提案されている。このセンサの装着は、例えば、手首橈骨動脈への圧力印加を指による加圧を行い、脈波を感じて計測位置の最適化を行う。ここでは、均一な加圧を行うために、参考加圧量を表示している。具体的には、被験者は自分の橈骨動脈を自らの指で時間をかけて均一にゆっくり押し、指が脈動を感じられなくなったら、逆に緩めていく。この時に、測定を行い、血圧値を算出している。
【0004】
また、特許文献2は、光と圧力検出によるセンサ部を用いて、センサ部を生体の一部に押圧して、生体からの反射光により光電容積脈波信号を取得し、得られた圧力とから血圧値を取得する生体情報測定装置が提案されている。センサ部が基板と発光又は受光手段との間に所定の形状を有する圧力伝達体を設けて、その圧力伝達体に圧力センサの受圧面を当接している。この構成によりセンサ部を皮膚に密着させれば、正確に計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−239114号公報
【特許文献2】特開2007−209374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したトノメトリ方式血圧計測計のセンサ部は、単に密着させるだけではなく、血管壁とセンサアレイ部分が平行かつ平坦であることが必要不可欠である。これは、ラプラスの法則を利用するためには、張力の影響を小さくすることが要求される。
【0007】
前述した特許文献1,2においては、扁平な接触面を作り出して、張力の影響を小さくすることが要求されるが、いずれも測定者自身の感覚が測定結果に影響している。つまり、血圧センサの装着作業を、共に測定者の手で感覚的に行っているため、正確に測定が行われたかは、測定不能の結果以外、正しく装着したか否か、測定誤差が大きいか否かの判断はできない。特に、特許文献1のように指で押さえた装着状態を、同じ状態で長い時間に亘り維持させることは難しく、経時間的に測定できるものではない。
【0008】
そこで本発明は、随時又は継続的に測定可能であり、装着時に生じる張力を考慮して補正し、正確な血圧測定を実現する血圧測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態は、互いに直交する3軸方向に対して、各軸に作用する力を検出する3軸力測定センサと、前記3軸力測定センサを一体的に覆い、血管壁に押圧され、該血管壁が発生する脈波を前記3軸力測定センサに伝達する脈波伝達部材と、前記3軸力測定センサが出力した圧力方向成分の圧力及びせん断方向成分の圧力から血圧値を算出する制御部と、を備える血圧測定システムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、随時又は継続的に測定可能であり、装着時に生じる張力を考慮して正確な血圧測定を実現する血圧測定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る血圧測定システムの基本的な概念的なブロック構成を示す図である。
【図2】図2(a)は、3軸センサの断面構成を示す図、図2(b)は、センサ部分の構成を斜め上から見た内部構成を示す図である。
【図3】図3(a)は、第2の実施形態に係る血圧測定システムの3軸センサの配列の状態を示す図、図3(b)は、シート状に一体的にまとめた3軸センサアレイの構成を示す図、図3(c)は、3軸センサアレイを用いたセンサ部の断面構成を示す図である。
【図4】図4は、第2の実施形態の3軸センサアレイが血管壁と平行且つ平坦な状態で装着された状態を示す図である。
【図5】図5は、第2の実施形態におけるセンサ部による圧力検出の手順について説明するための図である。
【図6】図6は、比較のために従来の圧力センサアレイからなるセンサ部による圧力検出の手順について説明するための図である。
【図7】図7(a)は、第2の実施形態の3軸センサアレイが血管壁に傾斜を持った状態で装着された状態を示す図、図7(a)は、傾斜した3軸センサアレイに掛かる力の成分と方向等について説明するための図である。
【図8】図8は、第2の実施形態の3軸センサアレイが血管壁へ押し付ける力が不足した状態で装着された状態を示す図である。
【図9】図9は、第3の実施形態に係る血圧測定システムの概念的な構成を示す図である。
【図10】図10は、第3の実施形態に係る血圧測定システムのブロック構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る血圧測定システムの基本的な概念的なブロック構成を示す図である。
【0013】
この血圧測定システム1は、直接的又は、皮膚を挟んで間接的に、血管壁に押し付けるように装着するセンサ部2と、センサ部2から出力された検出信号に対して、ノイズ除去、A/D変換処理及び増幅等の信号処理を行う信号処理部6と、使用者による入力設定を含む操作を行うためのタッチパネルやキースイッチ等の操作部7と、取得した血圧値データや演算処理用アプリケーション又はパラメータを含む演算式データ等が記憶される揮発/不揮発性メモリの記憶素子からなる記憶部8と、液晶表示パネル等からなる表示部9と、構成全体を制御し、検出信号から血圧値を算出する制御部5とで構成される。尚、血圧測定システム1には、図示しないが、電源部、外部機器とのデータ通信を行うためのIF機能又はI/O端子等を備えている。
【0014】
センサ部2は、キャップ形状の空気室/カフからなるセンサ本体3(又は、受圧板)と、少なくとも1つの3軸力測定MEMSセンサ(以下、3軸センサ若しくは、後述する3軸センサアレイと称する)4とで構成される。尚、3軸とは、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸とする。
【0015】
センサ本体3は、図2(a)に示すように、キャップ形状の金属、硬質樹脂又はセラミックス等の硬質部材を用いて形成される。センサ4は、センサ本体3の開口側にエッジ部材16によりフレキシブルに支持される。センサ4が設けられたセンサ本体3内部には、図示しないコンプレッサが接続されて、圧力が可変可能で且つ一定の圧力を維持できる空気室として機能する。
【0016】
3軸センサ4は、図2(b)に示すように、互いに面が直交する方向で、片持ち梁で脚部が水平位置から屈曲して垂直方向に立ち上がったカンチレバー(例えば、ピエゾ抵抗カンチレバー)からなるX軸センサ12とY軸センサ13と、Z軸センサ14が基板11上に形成されている。これらのセンサは、半導体プロセスを用いて作製され、少なくとも立ち上がり部分となる脚部には、例えばピエゾ抵抗層が形成されている。X軸センサ12は、X軸方向の力を検出し、Y軸センサ13は、Y軸方向の力を検出する。従って、これらの2軸センサを組み合わせて用いることにより、XY軸方向に働くせん断力PTを測定することができる。また、Z軸センサ14は、XY軸と直交するZ軸方向に働く圧力(圧力方向成分の圧力)P2を測定することができる。
【0017】
これらのX軸センサ12、Y軸センサ13及びZ軸センサ14は、シリコンゴム等の可撓性又は弾性を有する樹脂材料又はゴム材料からなる脈波伝達部材15により封止されて、外形が立方体形状に形成されている。脈波伝達部材15は、血管の膨張と収縮による脈動をX軸センサ12、Y軸センサ13及びZ軸センサ14に脈波(又は、歪み)として伝達することができる部材である。3軸センサ4は、少なくとも血管(皮膚)と当接する側の面が平坦であり、垂直方向に立ち上がったカンチレバーと直交する面を有する形状であればよく、例えば、樽型形状であってもよい。図2においては、Z軸センサ14を、X,Y軸センサ12,13と同様な一端を固定した片持ち型カンチレバーとしたが、圧力による可動部分を短冊形に限らず、例えば、可動部分を円盤形状として、周囲の3点又は4点支持による構成でもよい。又は可動部分を矩形形状として各4辺を支持する構成であってもよい。尚、これらの支持部材は、基材(例えば、シリコン基板)と基材上にピエゾ抵抗材料を形成して構成される。
【0018】
このように構成された血圧測定システムによる測定原理について説明する。
前述したトノメトリ方式血圧計測計のセンサ部は、ラプラスの法則を利用するためには、張力の影響を小さくすることが要求され、血管壁とセンサアレイ部分が平行かつ平坦であることが必要とされている。
【0019】
これに対して、空気室に圧力を印加して、皮膚を挟んで血管壁に押圧している本実施形態のセンサ部2は、血管から斜め方向に押されていた場合、Z軸センサ14によりZ軸方向における圧力方向成分の圧力P2と、X軸センサ12とY軸センサ13によりせん断方向成分の圧力PTとが検出される。制御部5において、これらの成分の圧力を合成することにより、血圧値を取得することができる。
【0020】
以上のように、本実施形態によれば、血圧即ち、圧力方向の力を検出する際に、X,Y軸センサ12,13によるせん断方向の力の検出を行うことができるため、センサ装着時に血管壁と3軸センサの当接面が平行かつ平坦であることの必要がなく、例え傾いた状態に装着されていたとしても、正確な血圧値を得ることができる。従って、本実施形態の血圧測定システムは、血圧測定にあたって、センサが容易に装着することができ、且つ正確な血圧値を得ることができる。
【0021】
次に、第2の実施形態の血圧測定システムについて説明する。
本実施形態は、前述したと同じ構成の3軸センサ4を複数用いて配列、例えばマトリックス状に配置した3軸センサアレイをセンサ部に用いる。本実施形態の血圧測定システムは、図1に示した複数の3軸センサにより3軸センサアレイ4を構成し、複数の検出信号を処理することとなるが、基本的な構成は、第1の実施形態と同様である。センサ部2に3軸センサアレイ4を採用するのは、1つの3軸センサであっても基本的に測定することはできるが、測定のために装着する際に血管に確実に対向させる必要があり、アレイ化することで、さらに容易に装着でき、且つさらに正確な血圧値を検出するためである。
【0022】
このセンサ部2は、まず、図3(a)に示すように、それぞれに作製した3軸センサをマトリックス状に仮配置して、図3(b)に示すように、PDMS(ポリジメチルシロキサン)等からなる弾性変形体21によって、シート状となるシートセンサ部22に一体的にまとめる。この3軸センサアレイ4は、図3(c)に示すように、キャップ形状のセンサ本体3の開口側にエッジ部材23によりフレキシブルに支持される。3軸センサアレイ4が設けられたセンサ本体3内部は、図示しないコンプレッサが接続されて、圧力が可変可能な空気室として機能する。このセンサ部2は、3軸センサ毎にそれぞれが独立して3軸方向の力を検出することができるため、従来の圧力センサアレイとは構成及び検出信号の処理が異なっている。
【0023】
次に、本実施形態のセンサ部2による圧力検出について説明する。
図5は、本実施形態におけるセンサ部2による圧力検出の手順を示し、図6は比較のために従来の圧力センサアレイからなるセンサ部による圧力検出の手順を示している。ここでは、センサ部は、例えば、手首橈骨動脈への装着を例にする。
【0024】
本実施形態のセンサ部2による圧力検出は、まず、皮膚下に血管が存在する位置にセンサ部2を押し当てるように装着する。装着後、制御部5は、図示しない駆動部(コンプレッサ等)を駆動制御して、センサ本体3内の空気室に圧力を印加して、所定圧力を保持する。
【0025】
次に、制御部5は、センシングを行い、センサ部2の各3軸センサからZ軸方向の圧力方向成分の圧力P2が起因する脈波(垂直方向におけるひずみ抵抗変化)と、XY軸方向におけるせん断方向成分の圧力PTの脈波を測定する。この時、血管上に存在するセンサの出力のみを採用する。血管上に存在しないセンサは、拍動しないため、定常的な値(略一定値)を出力しているため、センシングにより、検出結果から排除する。これらの測定されたせん断方向成分の圧力PTのうちの最小のセンサ部2を選択する。
【0026】
又は、全センサ部における圧力方向成分の圧力P2が起因する脈波と、XY軸方向によるせん断方向成分の圧力PTの脈に関するデータより、各センサの血圧値を算出し、その平均値を血圧値として算出する。この平均値は、血管上に存在するセンサからの出力の平均値である。血管上に存在しないセンサは、前述したようにセンシングにより排除する。
【0027】
制御部5は、数式(1)から得られた圧力方向成分の圧力P2とせん断方向成分の圧力PTとから血圧値P1を求める。
【数1】

【0028】
但し、P1:血圧値(動圧成分)、P2:圧力方向成分の圧力、PT:せん断方向成分の圧力(張力に起因する値)、k1,k2, k3:定数、Rx, Ry, Rz:それぞれの軸方向に対応するピエゾ抵抗、ΔRx,ΔRy,ΔRz:それぞれの軸方向に対応するピエゾ抵抗変化とする。
【0029】
尚、従来の圧力センサアレイによる圧力検出は、腕への装着は、前述したように、血管壁とセンサアレイ部分が平行かつ平坦に装着して、張力の影響が小さくなるようにする。次に、空気室に圧力を印加して、各圧力センサの脈波(容積脈波)を測定する。この容積脈波の中から最大脈波を示しているセンサ選定する。つまり、容積脈波が最大脈波を検出するセンサ部は、せん断方向成分PTの影響が最も低い、即ち張力が0と見なすセンサ部である。そのセンサ部が出力した容積脈波を圧力成分に変換して血圧値P1としている。
【0030】
以上のように、本実施形態の血圧測定システムによる血圧測定は、センサ部2の装着が容易であり、従来の圧力センサアレイでは装着時の工夫により存在しないと見なしている張力に対して、実測したせん断方向成分PTを考慮して補正を行うため、より正確な値を求めることができる。
【0031】
次に、本実施形態において、想定されるセンサ部2の使用形態について説明する。
本実施形態のセンサ部2は、例えば、手首橈骨動脈への装着を例とすると、第1に、装着した際に、前述した従来のトノメトリ方式の血圧センサと同様に、3軸センサアレイ4が血管壁と平行且つ平坦な状態で装着されて、血管壁の張力が0となっている装着状態(図4参照)。第2に、装着した際に、3軸センサアレイ4が血管壁に対して、傾きを持ち平行に押し当てられず、血管壁と3軸センサアレイ4が平行ではない装着状態(図7)。第3に、装着した際に、3軸センサアレイ4を血管へ押し付ける力が不足して、血管壁が平坦になっていない装着状態(図8)。大別すると、これらの3つの状態が想定される。
【0032】
これらの各装着状態について説明する。
図4に示すように、本実施形態におけるセンサ部2の3軸センサアレイ4が血管壁と平行且つ平坦な状態で装着されていた場合には、図5において説明したと同じ手順により測定を行うと、前述した従来技術と同様に、張力の影響が小さくなっているため、せん断方向成分PTが0又は略0となり、圧力成分P2が圧力成分P1となり血圧値として求められる。
【0033】
次に、図7(a)に示すように、3軸センサアレイ4が血管壁に対して傾斜を持って押し当てられた測定について説明する。
図7(a)に示すように、3軸センサアレイ4が血管に対して傾斜を持った状態で押し当てられてしまうため、3軸センサアレイ4が押し当てる力の方向に対して、血管32が3軸センサアレイ4を押し上げる方向に角度差を生じる。この角度差により、従来の圧力センサアレイであれば、正確な血圧P1と比較すると、計測される血圧が小さくなっている。
【0034】
本実施形態の3軸センサアレイ4は、3軸方向で検出できるため、図7(b)に示すように、血管32に対して3軸センサアレイ4が傾斜して押し当てられた時の力を、圧力方向成分の圧力P2(Z軸方向)と、せん断力方向成分の圧力PT(XY軸方向)に分解し、両者の力を計測する。このため、せん断力方向成分の圧力PTを用いることにより、力の方向の傾斜(又は、方向のずれ)を補正できる。従って、3軸センサアレイ4が血管32に対して平行に押し当てられていない状況下でも、正確に血圧値を計測できる。
【0035】
次に、図8に示すように、3軸センサアレイ4が血管へ押し付ける力が不足して、血管壁が平坦になっていない状態における測定について説明する。
3軸センサアレイ4を血管32へ押し付ける力が不足した場合には、血管壁が平坦に至らず丸みを持った状態となる。この場合、3軸センサアレイ4により計測される力は、血圧と血管壁の張力の合計した力が計測される。そのため、従来の圧力センサアレイであれば、血管へ押し付ける力が不足している場合には、血圧が真の値より小さく計測されている。
【0036】
本実施形態の3軸センサアレイ4は、拍動により血管壁が押される圧力(圧力方向成分の圧力P2)と、血管壁に働く張力(せん断力方向成分の圧力PT)を計測することができる。
従って、従来では実際の存在の有無に問わず、装着時に無くなったと見なしている張力が実際には、装着未完全により存在していた場合に、真の血圧と比較して小さく計測されてしまっていた差分を、本実施形態では、せん断方向に計測された張力として求めていることから、正しい血圧値に補正することができる。
【0037】
また、前述した第1,第2の実施形態による血圧測定システムは、装置単体として構築しても良いが、前述した構成部位を例えば腕時計やリストバンド等に実装して、他の機器や物品と兼用して利用することも可能である。
【0038】
次に、第3の実施形態の血圧測定システムについて説明する。
図9には、血圧測定システムの概念的な構成を示し、図10は、システムのブロック構成を示す図である。
本システム41は、着脱可能な装着具、例えばベルト42と携帯型端末装置(測定装置本体)45とで構成される。
【0039】
ベルト42は、被測定者の腕31に巻回されて装着される。ベルト42には、皮膚を挟んで血管上に位置するセンサユニット43と、通信用のアンテナ44とが設けられている。また、通信アンテナ44と携帯型端末装置45とは、相互に無線通信を行う。
【0040】
センサユニット43は、平坦な基板上に配置された少なくとも1つの前述した3軸力測定MEMSセンサを備えるセンサ部51と、センサ部51に電源を供給する電池53と、アンテナ44を通じて端末装置に取得したデータ(血圧値を算出するための圧力データ等)を通信する通信部52とが、1つのユニットとして一体的に構成される。
【0041】
センサ部51は、3軸力測定MEMSセンサを用いた場合、張力に起因するせん断方向の圧力を計測することができるため、第1,第2の実施形態のような空気室やカフが不要になる。また、本実施形態では駆動電源として、ボタン電池やリチウムイオン電池等の小型電池を用いる構成であるが、電池に替わってキャパシタンス等の蓄電素子を搭載して、アンテナ44を利用して電磁波によるエネルギー送電により充電して用いてもよい。
【0042】
端末装置45は、アンテナ44により発信された情報を受信するアンテナ62と、受信した無線信号を電気信号(情報信号)に変換する通信部62と、情報信号に対して、ノイズ除去及びデジタル化処理等を行う信号処理部63と、血圧値の算出及び装置全体の制御を行う制御部64と、センサ部43から随時取得する血圧値及びそれに関連する情報と、演算処理等に必要なデータを記憶する記憶部と、液晶パネルからなる表示部65とで構成される。
【0043】
尚、図示していないが、端末装置45には、ボタンスイッチ、キーボード又は、タッチパネル等の入力のための操作部が設けられている。また、端末装置45は、専用の機器に限定されるものではなく、携帯電話機、携帯型コンピュータ又は、携帯型電子情報機器(PDA)に、端末装置45の機能を搭載してもよい。また、センサ部51は、センサアレイを構成する必要がないため、センサ部分の小型化が可能である。勿論、センサアレイを構成してもよい。
【0044】
また、本実施形態では、センサユニット43と端末装置45は、無線通信を通じたデータ(血圧値及び関連する情報)の送受を行う例であったが、他にも、光通信を用いてもよい。さらに、例えば、インターネット、LAN等の既存の通信ネットワークを通じて、データの通信を行ってもよい。本実施形態では、装着器具としては、ベルトを例としたが、絆創膏のような粘着テープを用いた構成であってもよい。
【0045】
本実施形態によれば、センサユニットが端末本体と分離され、小型で装着が容易であり、被測定者の行動が制限されない。また、端末本体が携帯電話機やPDA等に搭載できるため、より安易に利用することができる。
【0046】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
・本発明の血圧測定システムは、トノメトリ方式における従来の血圧センサの圧力センサアレイのセンサ素子を、圧力とせん断力が計測できる3軸力計測MEMSセンサに、置きかえることによって、幅広い状況で利用できる血圧センサを実現する。
・前記3軸力計測MEMSセンサの置き換えにより、圧力だけでなく、血管の円周方向の力、つまり張力も計測できる個別の圧力素子を実現することで、張力が0ではない場合であっても、正確な血圧値を計測することができる。
【0047】
・前記3軸力計測MEMSセンサをシート状に作り込み、血管壁に直接的に貼り付ける、又は血管壁に対して皮膚を介して間接的に貼り付けることにより、血圧計測ができる。
・前記3軸力計測MEMSセンサは、センサアレイを構成する個々のセンサにおいて、圧力に加えて、せん断力も計測できる機能を備えることで、平行かつ平坦に装着されなければ計測できなかった課題を解決し、幅広い状況、例えば、日常生活で、一日中連続して計測が可能な健康管理用の血圧センサを実現することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…血圧測定システム、2…センサ部、3…センサ本体、4…3軸力測定MEMSセンサ(センサ/センサアレイ)、5…制御部、6…信号処理部、7…操作部、8…記憶部、9…表示部、10…センサ本体(空気室/カフ)、11…基板、12…XZ軸センサ、13…YZ軸センサ、14…樹脂部材、16…エッジ部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する3軸方向に対して、各軸に作用する力を検出する3軸力測定センサと、
前記3軸力測定センサを一体的に覆い、血管壁に押圧され、該血管壁が発生する脈波を前記3軸力測定センサに伝達する脈波伝達部材と、
前記3軸力測定センサが出力した圧力方向成分の圧力及びせん断方向成分の圧力から血圧値を算出する制御部と、
を具備することを特徴とする血圧測定システム。
【請求項2】
複数の3軸力測定センサをマトリックス状に配置して、弾性変形体により一体的に形成されるセンサアレイと、
前記3軸力測定センサを一体的に覆い、血管壁に押圧して、該血管壁が発生する脈波を前記3軸力測定センサに伝達する脈波伝達部材と、
前記センサアレイの各3軸力測定センサが出力したせん断方向成分の圧力の中で、最小値を出力した3軸力測定センサが出力した圧力方向成分の圧力とせん断方向成分の圧力とから血圧値を算出する制御部と、
を具備することを特徴とする血圧測定システム。
【請求項3】
複数の3軸力測定センサをマトリックス状に配置して、弾性変形体により一体的に形成されるセンサアレイと、
前記3軸力測定センサを一体的に覆い、血管壁に押圧して、該血管壁が発生する脈波を前記3軸力測定センサに伝達する脈波伝達部材と、
前記センサアレイの各3軸力測定センサがそれぞれに出力した圧力方向成分の圧力とせん断方向成分の圧力から算出した複数の血圧値の平均値を血圧値とする制御部と、
を具備することを特徴とする血圧測定システム。
【請求項4】
平坦な基板上に配置されて、血管壁に押圧して該血管壁が発生する脈波を圧力方向成分及びせん断方向成分による圧力を検出する少なくとも1つの3軸力測定センサを備えるセンサ部と、前記センサ部が取得した圧力データを送信する送信部とを有するセンサユニットと、
前記センサユニットと、前記送信部から圧力データを発信する第1のアンテナ部とを搭載する着脱可能な装着具と、
前記第1のアンテナ部から発信された前記圧力データを受信して、前記圧力方向成分の圧力及び前記せん断方向成分による圧力データから血圧値を算出する制御部と、算出された前記血圧値を記憶する記憶部と、算出された血圧値を含む情報を表示する表示部とを有する携帯可能な端末装置と、
を具備することを特徴とする血圧測定システム。
【請求項5】
前記血圧測定システムの前記制御部は、前記血圧値P1、前記圧力方向成分P2及び、前記せん断方向成分による圧力PTとした場合に、k1,k2を定数として、次式(1)
【数2】

から血圧値P1が算出されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の血圧測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−239840(P2011−239840A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112387(P2010−112387)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】