説明

血圧測定装置

【課題】 耳珠においても安定的に、かつ侵襲度を低く抑えながら、血圧を測定できるカフ装着構造を有する血圧測定装置を提供する。
【解決手段】
血圧測定装置1の装着部3は、内側カフ6と外側カフ7とそれらを保持する保持部材10とを有し、その保持部材は「コ」の字形状をなしている。そして、保持部材10は、外側カフ7を保持する第1の保持部材と内側カフ6を保持する第2の保持部材と第1及び第2の保持部材が取り付けられる主保持部材とで構成され、第1の保持部材及び第2の保持部材(支持部材85)は主保持部材に回動するように接合され、さらに、第1保持部材及び第2の保持部材(支持部材85)が回動せずに定常位置にある場合には、保持部材10において第1の保持部材と支持部材85とは略平行しており、内側カフ6と外側カフ7は対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧測定装置に係り、特に外耳及びその周辺部を被測定部位とした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧は、外部環境や内部環境の変化に応じて刻々変動している。このため、一拍一拍を連続的に記録できれば理想的となるが、たとえ連続的に記録できなくても、1日における血圧を定期的(間欠的)に連続測定して血圧の経時変化を測定することにより、健康管理を行うことも重要である。
【0003】
従来の血圧測定装置で定期的に血圧を測定する場合には、例えば、被験者の上腕にカフを巻いて血圧を測定することになる。この場合には、上腕を覆う大きなサイズのカフと、このカフに接続される血圧測定装置の本体とを身体に装着する必要がある。
【0004】
このため、血圧測定装置で定期的に血圧測定を行う場合には、被験者は、カフを上腕に装着し、このカフに接続される血圧測定装置の本体とを身体に装着した状態で日常生活を送る必要があるが、これでは日常生活における支障が大きい。また被験者は圧力測定のたびに上腕が圧迫されて痛みを感じるなどの負担をしいられる場合もある。
【0005】
この点を考慮して、耳たぶにカフを装着し、耳たぶを圧迫することにより脈波を測定する方法がある(特許文献1)。これによれば、上腕にカフを装着して血圧を測定する血圧計よりもカフおよび本体を小型化することができ、被験者の負担も軽減することができる。
【特許文献1】特開2005−6906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、耳たぶで脈波や血圧を測定するとしても、耳たぶの血管は非常に細く、安定的及び正確に血圧を測定することは困難である。特に耳たぶの血管は外気温が低くなると収縮してしまい、なおさら安定的な測定は困難となる。
【0007】
そこで、耳たぶに比べて血管の太い耳珠にカフを装着して血圧等を測定すれば、比較的上腕部に近い血圧が安定的に測定できるようになると考えられる。
【0008】
ところが、耳たぶはソフトで比較的大きく露出度が高くてカフが装着しやすいが、耳珠は比較的硬く形状の個人差も激しいため、特許文献1で開示された耳タブ装着用カフの構造をそのまま耳珠用に転用することはできない。つまり、特許文献1に開示された装着部の構造を用いたとしても、耳珠部における血圧の測定結果を安定的に出すのは難しい。また、無理に装着しようとすると、被験者への侵襲度が増加してしまう危険性もある。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、耳珠においても安定的に、かつ侵襲度を低く抑えながら、血圧を測定できるカフ装着構造を有する血圧測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明による血圧測定装置は、耳穴に挿入される内側カフと、耳珠の外側に位置される外側カフと、前記内側カフと前記外側カフとを保持する保持手段と、前記内側カフまたは前記外側カフの少なくとも一方に内蔵され、血管を流れる血液から脈波信号を検出する脈波検出手段と、前記内側カフと前記外側カフとで耳珠を挟持した後に、前記内側カフと前記外側カフとを流体で加圧および減圧する加減圧手段と、前記流体を送るために前記内側カフと前記外側カフと前記加減圧手段との間に接続される配管と、前記配管に接続され、前記内側カフと前記外側カフの圧力を検出する圧力検出手段と、前記各カフへの加圧時に、前記圧力検出手段による検出圧力値と、前記脈波検出手段による前記脈波信号とから最高血圧値を測定し、前記各カフの減圧時に、前記圧力検出手段による検出圧力値と前記圧力検出手段による前記脈波信号とから最低血圧値の測定をする血圧測定制御手段と、を備え、前記保持手段はその一端が開放されており、前記外側カフを保持する第1の保持部材と前記内側カフを保持する第2の保持部材と前記第1及び第2の保持部材が取り付けられる主保持部材とで構成され、前記第1の保持部材及び前記第2の保持部材は前記主保持部材に回動するように接合され、さらに、前記第1及び第2の保持部材が回動せずに定常位置にある場合には、前記保持手段において前記第1及び第2の保持部材とは略平行しており、前記内側カフと前記外側カフは対向していることを特徴とする。
【0011】
そして、前記保持手段における前記第1及び第2の保持部材の少なくとも1つは、所定幅で伸縮可能であり、前記内側カフと前記外側カフの対向位置を相対的にオフセットすることができるようになっている。
【0012】
さらに、前記外側カフと前記内側カフとの挟持幅を調節するための挟持幅調節機構を備え、前記挟持幅調節機構は、前記外側カフ及び前記内側カフの対向状態を維持しつつ、挟持幅を調節する。前記挟持幅調節機構は、望ましくは、ネジ機構又はブラッシングブッシュ機構である。そして、前記外側カフは、前記挟持幅調節機構に取り付けられており、望ましくは、前記外側カフは、首振り可能なように前記挟持幅調節機構に取り付けられている。その首振り構造は、望ましくは、玉軸受けで前記挟持幅調節機構に軸止される構造である。
【0013】
また、前記外側カフ及び内側カフにおける、前記耳珠に直接接触する接触面以外の側面は、蛇腹状に構成されており、前記外側カフ及び内側カフの前記蛇腹の段数は同じであることを特徴とする。
【0014】
さらに、前記第2の保持部材における前記内側カフが取り付けられる部分には、耳の一部が圧迫されることによる使用者の負担を軽減するためのクッション部が取り付けられている。
【0015】
前記外側カフと前記内側カフの断面形状は異なり、望ましくは、前記外側カフの断面形状は略円形であり、前記内側カフの断面形状は略楕円形又は長円形である。
【0016】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明を実施するための最良の形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成によれば、カフを耳珠の内外面に対して平らな状態で均等に接触させることができ、かつカフは耳珠の形状の個人差に充分対応した位置を保ちつつ、正確な血圧測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態の血圧測定装置を説明する。
【0019】
<耳介の構造>
本実施形態に係る血圧測定装置では、耳珠を測定部位としている。ここでは、まず耳介の構造について明らかにする。
【0020】
図1は耳介(耳)の各部位の名称を示す図である。図1に示される耳介220において、221は耳珠、222は対珠、223は耳甲介、224は対輪、225は耳輪、226は対輪脚、227は耳甲介腔、230は耳穴である。本実施形態では、後述する一対の装着部(内側カフ組立体6と外側カフ組立体7等からなる)は、耳珠221を挟むように装着される。
【0021】
<カフ装着外観>
図2は、図1中に示される耳珠221に、本実施形態に係る血圧測定装置1の装着部3を装着したときの様子を示す図である。
【0022】
「コ」の字型の保持部材10の上下両端にそれぞれ内側カフ組立体6と外側カフ組立体7が取り付けられている。このため、内側カフ組立体6と外側カフ組立体7とは対向するように配置されている。そして、挟持幅調節ネジ11で内側カフ組立体6と外側カフ組立体7との幅を調節できるようになっているので、装着部3を耳珠221に装着するときには、両カフの幅を耳珠221の厚さよりも少し広くして内側カフ組立体6を耳甲介腔227に入れ込むようにし、さらに挟持幅調節ネジ11を締めて耳珠221に装着部3が固定されるようにする。
【0023】
このように装着された装着部3は、配管4及び配線5を介して装置本体2と接続されている。配管4は、カフ加圧時に空気を送り込んだり、減圧時にカフ内の空気を排気するときに用いられる。また、配線5は、後述する光電脈波血圧測定のための各制御を実行する信号の送受信を後述の発光及び受光素子と装置本体2との間で行うための信号線である。
【0024】
なお、装置本体2は、被験者の胸ポケットに収納したり、腰に収納部を設けてそこに納めるようにしてもよい。
【0025】
<装着部3の構成>
図3は、装着部3の外観構成を示している。この装着部3は、概ね、保持部材10と内側カフ組立体6と外側カフ組立体7と挟持幅調節ネジ11(挟持幅調節機構)とから構成されている。
【0026】
保持部材10は、図3(a)で示されるように全体として「コ」の字形状をなしており、外側カフ組立体7が取り付けられる第1の保持部材と内側カフ組立体6が取り付けられる支持部材85と主保持部材とで構成されている。ここで「コ」の字形状とは、保持部材10の一端のみが開放端で、図3(a)で示される通常設定時の第1の保持部材と支持部材85(内側カフ組立体6が配置される部分)が互いに略平行となっていることを意味している。
【0027】
また、外側カフ組立体7が取り付けられる第1の保持部材の端部付近には挟持幅調節ネジ11のためのネジ穴が設けられている。そして、挟持幅調節ネジ11の先端に外側カフ組立体7が取り付けられている。以上のように保持部材10を構成することにより、内側カフ組立体6と外側カフ組立体7とが対向するようになっている。そして、挟持幅調節ネジ11を時計回りに回すと挟持幅が狭まり、逆に反時計回りに回すと広がる。
【0028】
また、保持部材10において、内側カフ組立体6が配置される部分の反対側には、耳の対輪224及び/又は耳甲介223周辺が圧迫されることによる使用者の物理的心理的負担を軽減するためのクッション部90が取り付けられている。このクッション部90は、柔らかい材質のものであって、例えばポリウレタン等が好適である。
【0029】
本実施形態に係る装着部3は外側カフ組立体7は固定されて常に内側カフ組立体6と対向するようになっているのではなく、より柔軟に様々な耳珠221の形状に対応するため、図3(b)に示されるように、外側カフ組立体7を玉軸受けで挟持幅調節ネジ11に軸止することにより、外側カフ組立体7がその玉軸で首振り動作可能なようになっている。
【0030】
また、装着部3は、図4に示すように、第1の保持部材接合部82の調節ネジ83を緩めるとネジ83を支点にして第1の保持部材は回動するようになっている。また、内側カフ組立体6を支持する支持部材85も、主保持部材接合部86の調節ネジ86を緩めることによってネジ86を支点にして支持部材85は回動するようになっている。従って、第1の保持部材及び支持部材85が使用者所望の角度をなす状態で調節ネジ83及び86を締めることにより、外側カフ組立体7が内側カフ組立体6と真正面に対向した状態(外側カフ組立体7の首を振っていない場合)から非対向状態に変更することができる。そして、外側カフ組立体7の首振り構造(図3(b)参照)と相まって両カフ組立体6及び7の位置関係を使用者の好みで微妙に変えられるので、より柔軟に耳珠221の個人差に対応することができる。つまり、カフを様々な形状をした耳珠221に適切に当てることができるので、より適切な血圧測定が可能となるのである。
【0031】
さらに、装着部3は、図5に示すように、保持部材接合部82の調節ネジ83を緩めると上述の回動動作に加えて、第1の保持部材のスライド動作を可能とし、内側カフ組立体6と外側カフ組立体7との横方向における相対的位置関係を変更することができる。このスライド動作は、主保持部材に調節ネジ83を受けるための長円形ネジ受け84を設けることにより実現する。つまり、調節ネジ83を緩めると、調節ネジ83の頭部がネジ受け84内で左右にスライド自在になり、調節ネジ83を締めることによりその締めた位置で固定されるのである。なお、同様のスライド機構によって内側カフ組立体6が配置されている支持部材85を所定幅で伸縮自在にしてもよい。つまり、内側カフ組立体6及び外側カフ組立体7とは相対的に対向位置がオフセットできるようになっていればよい。
【0032】
ここで、図5は、第1の保持部材が一番短くなった状態を示している(点線は図3の通常状態を示している)。この状態で装着部3を耳珠221に取り付けると、通常状態よりも耳穴の奥に内側カフ組立体6を入れることができる。従って、通常の横方向の状態(例えば図3の状態)では装着部3を装着したときの安定感やつけ心地が良くない場合でも被験者(例えば、患者)や測定者(例えば、医者)の好みに合せて、装着状態を決定することが容易にできるようになる。
【0033】
以上のように、本実施形態では、保持部材10が外側カフ組立体7の首振り構造と回動構造とスライド構造とを備えているので、血圧測定用により適切で、かつ被験者により快適な装着部3の装着状態を実現することができるようになる。
【0034】
また、外側カフ組立体7の当接面25は略円型をなしている。つまり、外側カフ組立体7の一部を構成するカフ部(カフ袋体22)は、図6(a)に示されるように上面から見ると略円型となっており、また、側面は例えば2段の蛇腹構造(図6(b)参照)を有している。
【0035】
これに対して、内側カフ組立体6の当接面25は略楕円形をなしている。つまり、内側カフ組立体6の一部を構成するカフ部(カフ袋体23)は、図7(a)に示されるように上面から見ると略楕円型となっており、また、側面は外側カフ組立体のカフ袋体22と同様、例えば2段の蛇腹構造(図7(b)参照)となっている。また、当接面25の楕円の長径の方向と、耳甲介腔227への挿入方向は一致している。これは、内側のカフ部を挿入方向に沿って細長くした方が、耳甲介腔227への挿入がスムーズにできるからである。実際、耳珠221の形状は個人差が激しいため、このように挿入を容易にするための構成は非常に重要である。そして、上述のようにカフ袋体23の側面を蛇腹構造(例えば、2段蛇腹)にしているが、外側カフ袋体22の段数と内側カフ袋体23の段数は、揃えた方が望ましい。これは、加圧及び減圧時のバランスを考慮したものである。また、ここでは、カフ断面形状(当接面形状)を楕円形としているが、細長形状であればよく、楕円形の他に長円形であってもよい。
【0036】
この内側カフ組立体6及び外側カフ組立体7の一部をなすカフ袋体22及び23の構成の更なる詳細については以下に説明する。
【0037】
<カフ袋体22、23の構成>
図6(a)は外側カフ組立体7の一部を構成するカフ袋体22の平面図、図6(b)はカフ袋体22の正面図、図6(c)はカフ袋体22の底面図である。また、図7は図6(a)のX-X線矢視断面図である。
【0038】
図7において、カフ袋体22は、加圧状態と減圧状態との間で弾性変形する筒部22bと、この筒部22bから延設されるとともに耳珠に当接する平らな当接面25となる蓋部22aとを有した帽子状として一体成形される。また、開口部28の縁部はフランジ部26として一体成形されている。また、蓋部22aの厚さの第1の寸法t1を、筒部22bの厚さの第2の寸法t2より大きく設定することで、耳珠に対して当接面25が常に平らな状態で接触できるように構成されている。
【0039】
この蓋部22aは、円形、楕円形状または長円形状に形成され、同様に筒部22bも円形筒体、楕円形状筒体または長円形状筒体に形成され、カフ部材はこれらの筒部に合致する形状に形成される。
【0040】
また、筒部22bは、1つ以上望ましくは2つの段差部を形成したベローズ体27として形成されるとともに、蓋部が円形である場合は、直径寸法が15〜5mmの範囲、望ましくは約8mmであり、第1の寸法t1が0.4〜1mmの範囲、望ましくは約0.6mmであり、第2の寸法t2が0.1〜0.8mm、望ましくは約0.3mmに設定される。
【0041】
次に、図8(a)はカフ袋体23の平面図、図8(b)はカフ袋体の正面図、図6(c)はカフ袋体の右側面図、図8(d)はカフ袋体の底面図である。また、図9(a)は図8(a)のX-X線矢視断面図であり、図9(b)は図8(a)のY-Y線矢視断面図である。
【0042】
本図において、カフ袋体22、23の蓋部が楕円形状または長円形状である場合は、長軸寸法が15〜5mmの範囲、望ましくは約10mmであり、短軸寸法が10〜4mmの範囲、望ましくは約8mmである。
【0043】
また、図9(a)において、第1の寸法t1が0.4〜1mmの範囲、望ましくは約0.6mm、そして第2の寸法t2が0.1〜0.8mm、望ましくは約0.3mmに設定される。
【0044】
さらにカフ袋体22、23は、シリコンラバー、天然ゴム、所定の合成樹脂を含むショア硬度が30〜60、望ましくは約50前後の弾性材料から一体成形される。
【0045】
以上のように耳珠221に当接する平らな当接面となる蓋部とを有した帽子状のカフ袋体22、23の蓋部の厚さの第1の寸法t1を、筒部の厚さの第2の寸法t2より大きくすることにより、加圧時においては、当接面25は平面状態を維持したままで加圧位置まで移動できる。また、減圧時にも当接面25は平面状態を維持したままで減圧位置まで移動できるようになる。さらにカフ袋体の筒部をベローズ体(蛇腹構造)27に形成することで当接面25を略平行移動できるようになる。
【0046】
なお、このようにカフ袋体22及び23の側面を蛇腹構造にすることにより、カフを加圧したときに、カフ袋体22及び23の当接面25が空気圧によってドーム状に膨らんで当接面25の押圧力が不均一になることを防止できる。つまり、耳珠221を均一に圧迫するのに不要な空気圧は蛇腹で吸収され、当接面25をフラットに保つことができるようになるのである。
【0047】
<外側カフ組立体7の取り付け>
図3(b)に示される装着部3の首振り構造は、図10に示されるように、外側カフ組立体7を玉軸受け部11aで挟持幅調節ネジ11に軸止することにより、実現されるようにしている。
【0048】
<嵌合部材の構成及び組み付け方法>
カフ袋体22、23を図10で図示したようにOリング24を用いてカフ部材に対する気密状態で固定することで加圧と減圧に耐え得るように構成することができるが、このような完成状態にすることはカフ袋体22、23とOリングの双方が弾性体であることから困難になる。そこで、カフ袋体を嵌合部材を用いてカフ部材に対してパチン嵌合することで、気密性と組み付け作業性の向上と図ると良い。
【0049】
図11(a)はカフ袋体22、23をカフ部材30に取り付ける様子を示した分解図、図11(b)は完成後のカフ組立体の要部断面図である。
【0050】
本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、先ず、破線で示されるLED20とフォトトランジスタ21は、センサ組立体31中の所定位置に正確に固定されており、リード線が図示のように下方に延びており、配線5に接続されている。また、カフ部材30は樹脂材料を用いて射出成形されており、センサ組立体31の取り付け基部30dと設けており、この基部30dの周囲は流路30aに連通している。この流路30aはパイプ部30bの中空部として形成されており、このパイプ部30bに対して配管4を図示のように接続する。
【0051】
カフ部材30には、カフ袋体22、23の内周面44の小径部44aの寸法に合致するか、やや大きな寸法を有した外周面35が形成されるとともに、その下方において鍔部33が図示のように形成されており、この鍔部33の下方には一方の係止部となる溝部34が形成されている。
【0052】
また、カフ袋体22、23の開口部28の縁部からはフランジ部26が外側に向けて一体形成されている。
【0053】
一方、嵌合部材38は、カフ部材30に形成された一方の係止部に対して係止する他方の係止部38dが傾斜面38cの端部に形成されるとともに、フランジ部26を押さえる押圧面38aとが一体形成されている。
【0054】
以上の構成において、カフ部材30に対して先ずカフ袋体22、23を矢印方向に移動して内周面44aが外周面35に圧入する状態または軽く入る状態にした後に、嵌合部材38を次に圧入すると図11(b)に図示のように嵌合部材38によって、フランジ部26が圧縮された状態で固定されることになる。
【0055】
以上で完成することができるので、流路30aを介して加圧および減圧を行うようにできる。また、図11(b)において、カフ部材30の内周面30cは図示のようにセンサ組立体31の外周面よりも大きい寸法関係となるので、これらの隙間から加圧減圧を行うことが可能となる。さらに、図11(b)において、各素子のリード線に接続される小基板41が設けられているので、配線作業についても簡略化することができる。
【0056】
次に、図12は、別実施形態のカフ組立体の要部断面図であり、本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、センサ組立体31はカフ部材30に形成された貫通孔部30fの下方から挿入された後に、カフ部材30の爪部30kに小基板41の縁部が嵌合されて不動状態に固定される。また、嵌合部材38は、内周面の一部が山状になっており、カフ部材の谷部に嵌合できるように構成されている。さらに、フランジ部とカフ部材30の間の接合面にはシール剤42が敷設されており、さらなる気密性を保証している。
【0057】
図12に図示の構成によれば、カフ袋体22内部が加圧されることで、実線図示の位置から破線図示の位置に当接面25が平行移動できるようにベローズ部27が伸びるとともに、内部が減圧されると再び実線図示の位置に戻ることができる。
【0058】
上記説明したように、上腕や指を用いて定期的にかつ一定時間ごとに血圧測定する場合には、種々の問題が発生することから耳珠を血圧測定部位として耳を用いることで安定した高精度の血圧測定を行えるようになる。
【0059】
<遮光層を形成したカフ袋体>
上記のように光学式に脈波を検出するLED素子20とフォトトランジスタ21とをカフの内部に内蔵するように構成すると、耳珠に対して内外のカフを装着したときにカフの一部が外部に露出される状態になる。このため外乱光の影響を受け、特に、屋内ではさほど問題にならなくとも屋外に出かけて紫外線を含む太陽光に直接的に晒される使用状況下では正確な血圧測定が困難となる。
【0060】
図13(a)は遮光対策前のカフ組立体の要部断面図、図13(b)は遮光対策前のカフ組立体の要部断面図である。
【0061】
本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、カフ袋体22、23は透明または光透過性のシリコンラバー、天然ゴム、所定の合成樹脂を含むショア硬度が30〜60、望ましくは約50前後の弾性材料から一体成形される。そして、カフ袋体22、23は上記のようにカフ部材に対する気密状態で設けられ、図13(a)に図示のように当接面25が実線で示される位置と破線で示される位置との間で略平行移動される加圧状態と減圧状態との間で弾性変形される。
【0062】
このように構成すると、カフ袋体22、23は透明または半透明または光透過性であるので外乱光Lが内部に進入する。このため、太陽光に対して高感度のセンサを用いる場合には太陽光の影響を受けてしまい正確な血圧測定ができなくなる。
【0063】
そこで、図13(b)に図示のようにカフ袋体22において開口部46以外を光学的に遮蔽するための遮光層45を形成し、さらにこの遮光層45を筒部の内壁面44まで連続形成することで、図示のように外乱光Lが内部に進入することを防止して、血圧測定部位のみに光が照射され、反射光を受光することで場所によらず常時正確な血圧測定を行えるようにしている。この遮光層45は、図示のように内部に形成することで使用時の摩滅を防止できるようになるが、耐摩滅性を確保できる場合には外側に形成しても良いことは言うまでもない。
【0064】
また、カフ袋体の蓋部22aを図7を参照して述べたように円形にした場合には、遮光層45の開口部46の形状は相似形の小さな円形として形成される。一方、図8を参照して述べたように当接面25を楕円形状または長円形状に形成した場合には、遮光層45のの開口部46は円形または相似形の小さい楕円形状または長円形状にすると良い。
【0065】
そして、当接面25が直径寸法(D1)が15〜5mmの範囲、望ましくは約8mmの円形である場合は、開口部46の直径寸法が2〜8mmの範囲、望ましくは約5mmに設定されることとなる。また、当接面25が、長軸寸法(D2)が15〜5mmの範囲、望ましくは約10mmであり、短軸寸法(D1)が10〜4mmの範囲、望ましくは約8mmである楕円形状または長円形状である場合は、開口部46の直径寸法が2〜8mmの範囲、望ましくは約5mmの円形または、この円形と同等の開口面積を有する円形、楕円形状または長円形状に設定される。以上の開口部46を設けた遮光層45は、例えば2色射出成形法で形成することができる。
【0066】
図14は、カフ袋体22の内部に遮光層を形成する印刷工程図であって、カフ袋体22の中心断面図とともに示している。
【0067】
本図において、ステップS1ではゴム成形装置により成形され、バリ取り後のカフ袋体22の外観検査を行い不良品を排除し良品の選別を行うことで不図示の塗装トレー上にセットする。次のステップS2では、脱脂後に、異物混入無しを確認し、開口部46に相当する形状及び面積を有するとともに、軽い粘着力を有する粘着面を備えたマスキングシート70を、カフ袋体22の蓋部の裏面上の中心部分に貼り付ける。このとき位置決めようジグを使用すると良い。
【0068】
以上でカーボンブラックを含む顔料を混入したシリコン系のバインダー塗料の塗布を行う準備が整い、次にステップS3に進みインク塗布工程を行う。
【0069】
この工程では刷毛塗りまたはスプレーガンによる上記のバインダー塗料の塗装を行うことで、破線図示の遮光層45を形成する。この段階では、まだ十分に乾燥していないことから、次のステップS4の常温乾燥工程において、約1時間の放置を行い、乾燥を促進した後にマスキング70をピンセットなどの工具を用いて取り除く。
【0070】
この後、ステップS5に進み、オーブン装置に乾燥後のカフ袋体が入れられ焼き付け塗装のためのオーブン処理が約200℃で約10〜15分間行われる。その後、オーブン装置から塗装トレーが外部に取り出され、ステップS6の仕上げ検査工程において、外観検査が行われて、異物、開口部46への塗料のはみ出し、塗装ムラなどの検査が行われて良品を選別して終了する。
【0071】
以上の各工程を経て完成されたカフ袋体22を図13(b)に図示のように取り付けて使用する。
【0072】
なお、以上はカフ袋体の内側に遮光層を形成する工程例であるが、カフ袋体の外側に遮光層を形成する場合にも略同様の工程で良いこととなる。さらに、上記の2色射出成形法によれば上記の塗装工程が不要になるが、成形金型が複雑かつ高価となるのでカフ製造の数量との兼ね合いでどちらの方法を採用するのかが決定されるであろう。
【0073】
<挟持幅調節ネジ11と異なる挟持幅調節機構の別の構成例>
上述のように挟持幅調節ネジ11は、例えば保持部材10に形成された雌ネジ孔に対して調節ネジ11の本体の外周面に形成された雄ネジ部を図示のように螺合することで、調節ネジ11の正逆方向の回動によりカフ袋体23を設けた外側カフ組立体を任意に移動できるとともに、調節ネジ11の端部において一体形成された玉軸受け部11aをカフ部材30の嵌合孔部47に対して圧入することで、首振り自在に設ける様にしている(図9参照)
しかし、例えば外側カフ組立体の移動ストロークが大きい場合は、気の短い人または指先が不自由な人にとってこの調節ネジ11の回転操作が面倒になる場合がある。そこで、外側カフ組立体の移動ストロークの大小にかかわらず、一気に所望の位置に移動できるようにする一方向移動部材である、ブラッシングブッシュ49をこの調節ネジ11の替わりに用いることもできる。
【0074】
すなわち、図15において、一方向移動部材であるブラッシングブッシュ49はその外周面に複数の弾性変形自在の鍔部49bを、また端部において玉軸受け部49aをナイロン系の所定樹脂材料から図示のように一体成形している。鍔部49bの直径寸法は第3保持部材15の他端に形成された孔部15aの内径寸法よりも大きく設定されている。 このために、ブラッシングブッシュ49を矢印方向に、一方向に孔部15aに挿入すると3枚の鍔部49bが図示のように挿入方向に逆らうように斜めに変形するとともに弾性変形力で孔部15aの内周面に対して当接する状態になる。この状態で外側カフ組立体を保持できる。また、挿入時より大きな力で引っ張ることで、不図示のストッパー部が孔部15aの縁部に当接して元の位置に引き出すことができるように構成されている。なお、このブラッシングブッシュ49は所謂ワンタッチファスナーとも呼ばれる製品に近い構成を備えることとなる。
【0075】
<配管4と配線5の一体化構成>
次に、図1において配管4と配線5とは個別に設けられているが、これでは使用上において相互に絡まったりして都合が悪い。一方で、配管4は空気を含む流体の流路となる中空部が長手方向に沿って形成されているので、この中空部に配線5を通すことで、配線5が外部に露出しないように構成することができる。しかし、このように構成すると配線5を配管4の外部に引き出す部位において気密性を確保するためのシール部分が必要となるが、配管4は自由に曲げられるのでシール性の確保が困難となり、長期に渡る耐久性に問題を残す。また、組み付け作業上も支障を来たすことになる。
【0076】
そこで、配管4と配線5とを一体化する場合に、シール性の向上と作業効率のアップを同時に図ることのできる構成について種々検討した。
【0077】
この検討の結果、図16に図示される外観斜視図のように配線5、5を配管4の外周面においてその長手方向に沿うように敷設し、かつ配線5、5と配管4とを、伸縮性を有する被覆部材9で被覆して一体化することが最良であると結論した。
【0078】
具体的には、上記の発光素子と受光素子に夫々接続される配線5は、発光素子と受光素子の夫々から接続される撚り線5a、5bであり、配管4は、シリコンラバー、天然ゴム、所定の合成樹脂を含む弾性材料を用いて図示のような中空状に成形され、被覆部材9は、所定番手を有する繊維体から網目状に形成される。また、この被覆部材9に対して耐ノイズ性向上のための金属塗膜処理を施し、さらに不図示のカバーを被せて構成される。
【0079】
以上のように配管4と配線5とを一体化した場合には、例えば図15において一方を把持したときに、一点鎖線で示される円弧内において自由に曲げることが可能となる。さらに、配線5は図13(a)、(b)で図示したように配管4の外周面から直接引き出すことが可能になるのでシール部材は一切不要になる。また、被覆部材9に金属処理を施した場合には、さらに耐ノイズ性を向上することができる。
【0080】
上記説明したように、上腕や指を用いて定期的にかつ一定時間ごとに血圧測定する場合には、種々の問題が発生することから耳珠を血圧測定部位として耳を用いることで安定した高精度の血圧測定を行えるようになる。
【0081】
このように耳珠を血圧測定部位として用いる血圧測定装置により継続的に精度良く血圧測定を行うためには、電池駆動される加圧ポンプにより加圧空気を各カフに送り込むこととなるが、電池駆動される加圧ポンプを用いると電池の消耗が激しいことから、長期間に渡る測定ができなくなるので手動式の加圧ポンプにしても良い。加圧される流体媒体としては種々の流体があり、気体の場合には空気があり、液体の場合には水、シリコンオイルを含む油脂類、アルコールなどがあり適宜選択されることとなる。
【0082】
<光電容積脈波血圧計の回路構成>
図17は、図1の耳式血圧計1を光電容積脈波血圧計として構成した場合の装置本体2内における動作回路100の構成を示すブロック図である。図17において、耳珠221に装着される装着部3の内側カフ(組立体)6の内部には、光電センサ(脈波センサ)を構成する発光素子であるLED20と受光素子であるフォトトランジスタ21が含まれている。配管4は前述の通り、ゴム管(エアチューブ)であり、内側カフ6内への空気の流路を成す。圧力ポンプ108は電動小型モータを駆動源としており、コンデンサータンク107中に圧縮空気を送り、整流後に内側カフ組立体6内に圧力空気を送り込む。また、配管4から分岐接続される急排弁104は不図示の電磁弁機構が設けられており、内側カフ組立体6内の圧力を急速に減少させる。さらに同様に分岐接続される微排弁105は、内側カフ組立体6内の圧力を一定速度(例えば2〜3mmHg/sec)で減少させる。また、配管4から分岐接続される圧力センサ106は、カフ6内の圧力に応じて電気的パラメータを変化させる。この圧力センサ106に接続される圧力検出アンプ(AMP)107は、圧力センサ106の電気的パラメータを検出し、これを電気的信号に変換し、かつ増幅してアナログのカフ圧信号Pを出力する。
【0083】
上記のLED20は脈動する血管血流に対して光を照射し、フォトトランジスタ21は該血管血流による反射光を検出する。配線5を介して接続されるフィルタAMP109は脈波検出アンプであり、フォトトランジスタ21の出力信号を増幅してアナログの脈波信号Mを出力する。ここで、LED20には配線5を介して光量を自動的に変化させる光量制御部118が接続される一方で、脈波検出アンプ109には、ゲインを自動的に変化させるゲイン制御部119aと、脈波検出フィルタ・アンプ109を構成するフィルタアンプ(図示せず)の時定数を変化させる時定数制御部119bとが接続されている。また、図示のように接続されるA/D変換器(A/D)110は、アナログ信号M、PをデジタルデータDに変換する。
【0084】
制御部(CPU)111は、光電容積脈波血圧計の主制御を行う。このCPU111は調整圧力を記憶する調整圧力レジスタ111aを有している。この制御の詳細は図18のフローチャートと図19の動作波形図に従って後述する。
【0085】
ROM112は、CPU111が実行する後述の制御プログラムを格納している。RAM113は、データメモリや画像メモリ等を備えている。液晶表示器(LCD)114は、画像メモリの内容を表示する。操作部116は、使用者の操作により測定開始指令や調整圧力値の設定等を行うときに使用される。ブザー115は、使用者に対して装置が操作部116内のキーの押し下げを感知したことや測定終了等を知らせる。尚、本例では、CPU111に調整圧力レジスタ111aを設けたが、RAM113に調整圧力記憶部を設けてもよい。
【0086】
また、LCDの表示パネル14は、ドットマトリックス方式の表示パネルを使用しており、従って多様な情報(例えば文字、図形、信号波形等)を表示できる。また操作部116は測定開始スイッチ(ST)とカフの圧力値等を入力するためのキーを有している。また、バッテリーを交換自在にした電源部121と不図示の電源スイッチがさらに設けられている。
【0087】
さらに、装置本体2は不図示のコネクタまたは携帯電話に接続される外部通信部が設けられており、パソコンに対して接続することでパソコンの動作制御パラメータ設定部、データクリア部、データ保存部との間で各種データのやり取り及び血圧測定結果の保存をできるようにしている。
【0088】
図18は、図2の装置本体2の実体配置図であって、蓋を外して示した図である。本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、この装置本体2は上下寸法が約120mm、幅寸法が約80mm、厚み寸法が27mmであり、全体の重量が180グラムである。このように、極力小型軽量にすることで常時携帯した場合であっても、日常生活に支障がないようにしている。
【0089】
また、上記の各制御をつかさどる電子部品は内部の空間を占める実装面積を有する基板140上に実装されている。一方、圧力ポンプ108とコンデンサータンク107と微排気弁105、急速排気弁104は一体形成される配管4に対して上記のように接続されるとともに、図示のような相互配置関係とすることで、交換自在に設けられる4本の単4電池の電源部121と併設可能にしている。このように限られた内部空間を有効活用できるように構成されている。また、繰り返し使用できる充電式の2次電池や簡単に入手できる市販の単4電池は、不図示の蓋体を開閉することで簡単に交換できる。
【0090】
<光電容積脈波血圧計の動作>
次に、本実施形態に係る光電容積脈波血圧計としての耳式血圧計1の動作について以下に説明する。図19は耳式血圧計(光電容積脈波血圧計)1の測定処理を説明するためのフローチャートである。本図において、装置に対して電源スイッチにより電源投入すると、まず不図示の自己初期診断処理を行い装置の初期値化が行われる。その後、測定開始スイッチを押すことにより処理が開始される。
【0091】
ステップS101ではカフ圧Pを読み取り、ステップS102でカフ1の残圧が規定値以内か否かを判別する。残圧が規定値を超えていれば、ステップS123でLCD114に「残圧エラー」を表示する。残圧が規定値以内であればステップS103でカフの加圧値(例えば120〜210mmHgの最高血圧値より大きい値)を操作部118を使用して設定し、ステップS104で光量及びゲインを所定の値に設定する。
【0092】
加圧値および光量・ゲインの設定が終わると、ステップS105、S106では急排弁104及び微排弁105を閉じる。ステップS107では圧力ポンプ3を駆動開始し加圧(昇圧)を開始する。これが加圧時の計測行程の開始であり、カフ圧は一定速度(例えば2〜3mmHg/sec)で増加開始する。この間にステップS108で各機能ブロックによるデータ処理が行われ、最低血圧及び最高血圧の測定が行われる。最高血圧が測定される(S109)とステップS112で加圧ポンプ103の駆動を停止する。
【0093】
ステップS110ではカフ圧がS103で設定した加圧値Uより高いか否かを判別する。P>Uでなければまだ正常測定範囲にあるので、引き続き測定を行う。一方、P>Uの時はもはやカフ圧が設定値よりも高いのでステップS111でLCD114に「測定エラー」を表示する。必要なら「加圧時信号異常」等の詳細情報を付記表示する。ステップS113では加圧時に得られた脈波信号の信号レベルが精度の高い血圧測定が可能であるための所定のレベルの範囲内に有るか否かを判別する。所定の範囲内であると判別された場合は、ステップS120でLCD114に測定した最高血圧値及び最低血圧値を表示し、ステップS121でブザー115にトーン信号を送る。
【0094】
ステップS113で所定の範囲内で無いと判別された場合は、ステップS114で脈波信号の信号レベルを基に光量及びゲインの調整を行う。ステップS114では、例えば次のような処理が行われる。脈波の搬送波が規格値(A/D変換器110のフルスケールの20〜40%)以下の場合はステップ光量が最大か否かをチェックし、最大でなければ光量制御部118を制御して光量を上げ、光量が最大の場合はゲインを上げる。一方、搬送波レベルが規格値以上の場合は、ゲインが最小か否かがチェックし、最小でないならばゲイン制御部119aによりフィードバック制御してゲインを下げる。最小ならば光量を下げる。
【0095】
光量・ゲインの調整が終わると、ステップS115では微排弁105を開く。これが減圧(降圧)時の計測行程の開始であり、カフ圧は一定速度(例えば2〜3mmHg/sec)で減少開始する。この間にステップS116で各機能ブロックによるデータ処理が行われ、最高血圧及び最低血圧の測定が行われる。ステップS117では減圧時の最低血圧値の検出の有無を判別する。検出されていなければ引き続き計測を行う。ステップS118ではカフ圧が所定値L(例えば40mmHg)より低いか否かを判別する。P<Lでなければまだ正常測定範囲にあり、フローはステップS116に戻る。一方、P<Lの時はもはやカフ圧が正常測定範囲よりも低いのでステップS119でLCD114に「測定エラー」を表示する。必要なら「減圧時信号異常」等の詳細情報を付記表示する。
【0096】
また、ステップS117の判別で測定終了の時は正常測定範囲で計測行程終了したことになり、ステップS120でLCD14に測定した最高血圧値及び最低血圧値を表示し、ステップS121でブザー115にトーン信号を送る。好ましくは、正常終了後と異常終了時とでは異るトーン信号を送る。ステップS122ではカフ6の残りの空気を急速排気し、次の測定開始を待つ。
【0097】
<血圧の算出動作>
図20は、カフ圧と脈波信号の相関関係を示す図である。本図において、加圧時測定(ステップS108)の開始から減圧時測定(ステップS116)の終了までの時間における波形を夫々示している。
【0098】
図20のグラフに対し血圧測定は概略以下のように行われる。すなわち、加圧時測定においては、脈波信号の大きさの変化が始まった点(a)のカフ圧を最低血圧、脈波信号の消失時点(b)のカフ圧を最高血圧とする。一方、減圧時の血圧測定は加圧時の血圧測定とは逆となり、脈波信号の出現時点(c)のカフ圧を最高血圧、脈波信号の大きさの変化が無くなった点(d)のカフ圧を最低血圧とする。
【0099】
なお、本実施形態では血管内の血液による反射光を検出する例を示したが、替わりに透過光を検出するものであってもよい。
【0100】
以上説明したように、本実施形態の光電容積脈波血圧計により、脈波信号の信号レベルが所定の規格範囲内に収まるよう信号レベルを調整可能とし、精度の高い測定を可能とすると同時に、血圧測定時間の短縮を可能とすることにより、カフ圧による利用者への身体的負担を軽減することを可能にする光電容積脈波血圧計を提供することができる。なお、耳珠およびその周辺部は痛みに対し鈍感な部分であるため、カフ圧による痛みが軽減できるという効果もあり、さらにこの事により、血圧の連続測定に適用が容易となるという効果も生まれる。
【0101】
なお、上述の血圧測定装置は発光素子20及び受光素子21を用いて脈波を検出しているが、耳珠へ圧力を圧迫するカフを備え、生体表面の血管による脈動を当該カフで圧力変化として捉えることによっても脈波を検出することができる。即ち、圧力を印加したカフで生体から得られる脈動をカフ内の圧力の変化に変換し、圧力検知装置でカフ内の圧力変化を検知するものである。このような構成によっても生体の脈波を検出することができる。また、生体に接するカフ部分に小型マイクロフォンを設置し、生体の一部をカフにて圧迫するときに発生するコロトコフ音を検出し、所定レベル以上のコロトコフ音の発生あるいは消滅に基づいて血圧を測定するようにしても良い。
【0102】
<その他の実施形態>
上述の実施形態では、図17に示されるように、耳珠221を挟む構成を有する一対のカフの一方側(内側カフ組立体6内部)にのみに血管の血流に対して光を照射する照射部(LED20)と血流からの反射光を検出する受光部(フォトトランジスタ21)を備えるようにしている。
【0103】
図21は、別実施例の光電容積脈波血圧計としての耳式血圧計1の構成例を示すブロック図である。本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、耳珠221を挟むための内側カフ組立体6及び外側組立体7の双方に光の照射部となるLED20a及び20aと反射光を検出する受光部となるフォトトランジスタ21a及び21bとを内蔵している。
【0104】
このように内外のカフにセンサを設けて、耳珠の裏側及び表側の血圧を同時に計測可能とするように構成しても良い。このように構成することにより、一方側のカフは外耳及びその周辺部の裏側にある血管(細動脈)を圧迫し、他方側のカフは外耳及びその周辺部の表側にある浅側頭動脈或いはその分枝血管を圧迫することができる。
【0105】
図22は、内外カフ同時測定による血圧測定結果を示す図である。図示のように加圧曲線W1が減少されるにともない、内側カフ6の脈波信号K1が変化し、外側カフ7の脈波信号K2が変化する。図示のように脈波信号K1は、脈波信号K2の波形よりも早い時点で振幅が大きく変化し始める。このように変化する各脈波信号の双方の使用することでより精度の高い最高血圧と最低血圧の測定ができる。
【0106】
なお、このように外耳及びその周辺部(より特定的には耳珠及び周辺部)の血圧を測定するのは以下の理由もある。
【0107】
すなわち、耳珠およびその周辺部の血管(細動脈)は脳内の血管に近接していることが知られており、脳内に由来する血圧変化が測定可能と考えられている。一方、耳珠周辺部には、耳の軟骨部(主に耳珠)に存在する血管(細動脈)の他に、心臓に直結する動脈(浅側頭動脈)も位置する。そのため、耳珠周辺部においては小さな装置で異なる情報(つまり脳内由来の血圧と心臓由来の血圧)をもつ血圧を同時に測定可能であるという利点がある。本実施形態の光電容積脈波血圧計により、脈波信号の信号レベルが所定の規格範囲内に収まるよう信号レベルとすることが可能となり、外耳周辺部の精度の高い血圧測定が可能となる。同時に、血圧測定時間の短縮を可能とすることにより、カフ圧による利用者への身体的負担を軽減することを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】耳の構造を示す図である。
【図2】本発明に係る耳式血圧計1を耳介に対する使用状態にした様子を示す外観斜視図である。
【図3】本発明に係る耳式血圧計1の装着部3の外観構成を示す図である。
【図4】装着部3において外側カフ組立体7及び内側カフ組立体6を開いた状態を示す図である。
【図5】外側カフ組立体7をスライドさせた状態を示す図である。
【図6】(a)はカフ袋体22の平面図、(b)はカフ袋体の正面図、(c)はカフ袋体の底面図である。
【図7】図4(a)のX-X線矢視断面図である。
【図8】(a)はカフ袋体23の平面図、(b)はカフ袋体の正面図、(c)はカフ袋体の右側面図、(d)はカフ袋体の底面図である。
【図9】(a)は図6(a)のX-X線矢視断面図であり、(b)は図6(a)のY-Y線矢視断面図である。
【図10】外側カフ組立体7の首振り構造を実現するための玉軸受け構造を示す図である。
【図11】(a)はカフ袋体をカフ部材に取り付ける様子を示した分解図、(b)は完成後のカフ組立体の要部断面図である。
【図12】別実施形態のカフ組立体の要部断面図である。
【図13】(a)遮光対策前のカフ組立体の要部断面図、(b)遮光対策前のカフ組立体の要部断面図である。
【図14】カフ袋体22の内部に遮光層を形成する印刷工程図であって、カフ袋体22の中心断面図とともに示した印刷工程図である。
【図15】一方向移動部材のブラッシングブッシュの端部で自由度を有して設けられるカフ組立体の要部断面図である。
【図16】配線と配管を一体化した様子を示す外観斜視図である。
【図17】図1の耳式血圧計1の構成例を示すブロック図である。
【図18】図1の装置本体2の実体配置図である。
【図19】耳式血圧計1の動作説明フローチャートである。
【図20】血圧測定の波形図である。
【図21】別実施形態の耳式血圧計1の構成例を示すブロック図である。
【図22】内外カフ同時測定による血圧測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0109】
1 耳式血圧計
2 装置本体
3 装着部
4 配管
5 配線(信号・電源線)
6 内側カフ組立体
7 外側カフ組立体
9 被覆部材
10 保持部材
11 挟持幅調節ネジ
17 スペーサー
18 第1調節ネジ
19 第2調節ネジ
20 発光素子(LED)
21 受光素子(フォトトランジスタ)
22、23 カフ袋体
24 オーリング
25 当接面
26 フランジ部
27 ベローズ部
28 開口部
38 嵌合部材
42 シール剤
44 内壁面
45 遮光層
46 開口部
70 マスキング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳穴に挿入される内側カフと、耳珠の外側に位置される外側カフと、
前記内側カフと前記外側カフとを保持する保持手段と、
前記内側カフまたは前記外側カフの少なくとも一方に内蔵され、血管を流れる血液から脈波信号を検出する脈波検出手段と、
前記内側カフと前記外側カフとで耳珠を挟持した後に、前記内側カフと前記外側カフとを流体で加圧および減圧する加減圧手段と、
前記流体を送るために前記内側カフと前記外側カフと前記加減圧手段との間に接続される配管と、
前記配管に接続され、前記内側カフと前記外側カフの圧力を検出する圧力検出手段と、
前記脈波信号から血圧値を測定する血圧測定制御手段と、を備え、
前記保持手段はその一端が開放されており、前記外側カフを保持する第1の保持部材と前記内側カフを保持する第2の保持部材と前記第1及び第2の保持部材が取り付けられる主保持部材とで構成され、前記第1の保持部材及び前記第2の保持部材は前記主保持部材に回動するように接合され、
さらに、前記第1及び第2の保持部材が回動せずに定常位置にある場合には、前記保持手段において前記第1及び第2の保持部材とは略平行しており、前記内側カフと前記外側カフは対向していることを特徴とする血圧測定装置。
【請求項2】
前記保持手段における前記第1及び第2の保持部材の少なくとも1つは、所定幅で伸縮可能であり、前記内側カフと前記外側カフの対向位置を相対的にオフセットすることができることを特徴とする請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項3】
さらに、前記外側カフと前記内側カフとの挟持幅を調節するための挟持幅調節機構を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の血圧測定装置。
【請求項4】
前記挟持幅調節機構は、前記外側カフ及び前記内側カフの対向状態を維持しつつ、挟持幅を調節することを特徴とする請求項3に記載の血圧測定装置。
【請求項5】
前記挟持幅調節機構は、ネジ機構であることを特徴とする請求項3又は4の何れか1項に記載の血圧測定装置。
【請求項6】
前記挟持幅調節機構は、ブラッシングブッシュ機構であることを特徴とする請求項3又は4の何れか1項に記載の血圧測定装置。
【請求項7】
前記外側カフは、前記挟持幅調節機構に取り付けられていることを特徴とする請求項3乃至6の何れか1項に記載の血圧測定装置。
【請求項8】
前記外側カフは、首振り可能なように前記挟持幅調節機構に取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載の血圧測定装置。
【請求項9】
前記外側カフは、玉軸受けで前記挟持幅調節機構に軸止されていることを特徴とする請求項8に記載の血圧測定装置。
【請求項10】
前記外側カフ及び内側カフにおける、前記耳珠に直接接触する接触面以外の側面は、蛇腹状に構成されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の血圧測定装置。
【請求項11】
前記外側カフ及び内側カフの前記蛇腹の段数は同じであることを特徴とする請求項10に記載の血圧測定装置。
【請求項12】
前記第2の保持部材における前記内側カフが取り付けられる部分には、耳の一部が圧迫されることによる使用者の負担を軽減するためのクッション部が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の血圧測定装置。
【請求項13】
前記外側カフと前記内側カフの断面形状は異なることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の血圧測定装置。
【請求項14】
前記外側カフの断面形状は略円形であり、前記内側カフの断面形状は略楕円形又は長円形であることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載の血圧測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−288638(P2006−288638A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112572(P2005−112572)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】