説明

血小板アナログの製造

ヒト血小板に似せるために、慣用方法によりサイズを低減され、そして固定剤で処理されたヒト以外の脊椎動物から得られる赤血球は、血液細胞計数の異なる方法論により一貫した様式で検出されるサイズ分布を達成するためにさらに処理される。得られた細胞は、自動化血液細胞計数装置を較正し、そしてチェックするための対照として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動化血小板計数の対照として使用される人工ヒト血小板に特に注目した血液計測器具のリファレンス及び対照物の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
血液サンプル中に存在する様々なタイプの各細胞についての細胞計数を提供する自動化血液細胞分析器は、各細胞型の電気的及び/又は光学的性質を計測することにより細胞計数を提供する。これらの性質は、電気インピーダンス、電気伝導性、ラジオ周波数調節(radio frequency modulation)、光散乱性、及び光吸収性を様々な組合わせで含む。様々な分析器が市販され、そして臨床検査室において使用されており、個々の分析器は、データを収集し、そして処理する様式の点で異なる。
【0003】
血液細胞分析器の信頼性を検証するために、当該分析器を定期的に対照に対してチェックすることを連邦規則は求めている。これらの対照は、血液の物理的及び化学的性質に似た特定の性質を有し、そして安定な細胞又は粒子であって、その大きさ及び形が、ヒト血液中に存在する様々な細胞の大きさ及び形を厳密に近似させた細胞又は粒子を含む。残念なことに、様々な装置の間における異なる方法論が、異なる様式で対照に応答し、そして特定の装置上である種の細胞の代替品として役に立つ特定タイプの対照粒子が、異なる装置では別タイプの細胞のように、又はさらには細胞破砕物のように判断されることが明らかになっている。
【0004】
対照中に示されなければならないヒト血液中の細胞の様々なタイプの中で、血小板は特に問題を有する。対照中に実際の血小板を用いることは好ましくない。なぜなら、血小板が懸濁している血液が血管系から外に出た場合、血小板は崩壊し、血液凝固を引き起こすトロンボプラスチンの遊離を引き起こすからである。さらに、血小板は容易に活性化し、凝集する傾向を有し、そして高価である。これらの理由のため、低コストであり、そしてこれらの不所望な特性をもたない人工血小板が開発されてきた。人工血小板は、典型的に生物学的細胞であるか、又は非生物学的粒子である。生物学的細胞が使用される場合、これらは、実際の血小板と同じパラメーターにより検出されるようにする特徴を有し、そしてそれにより他の細胞型から区別されるように改変された血小板以外の細胞である。粒子が使用される場合、これらの粒子は、これらの特徴を有する粒子である。当該特徴は、検出の方法論に依存して異なる。幾つかの場合、識別特徴は、サイズ範囲及びサイズ分布であり、一方他の場合、化学的内容物、例えば、赤血球細胞中にヘモグロビンが存在することと比較してヘモグロビンを欠くことなど、は識別特徴として機能する。唯一の装置ではなく異なるタイプの装置において有用である対照にとって、装置の方法論に関わらず人工血小板成分が、血小板として検出可能であるということが重要である。これは残念ながら、計測された特徴がサイズ分布である場合でさえ、常には当てはまらない。つまり、ある対照が1の検出手段によりあるサイズ分布を有し、そして異なる検出手段により別のサイズ分布を有すると読まれることが一般的である。新鮮なヒト血小板は、ガウス分布ではなく対数正規サイズ分布を有し、そして粒子サイズに頼る検出機器は、対数正規分布を有する対照か、又は対数正規サイズ分布に近づいた集合を受け入れることができるコンピューターアルゴリズムのいずれかを有さねばならない。
【0005】
比較的高価でない実際のヒト血小板の代替物及びヒト血小板の崩壊及び凝集特徴を欠く代替物は、非ヒト脊椎動物由来の赤血球細胞である。これらの細胞を人工血小板として有用にするために、これらの細胞のサイズを小さくし、そして細胞膜を強化するために固定剤で処理される。ヤギは、血小板代替物としての赤血球の好ましい産生元である。なぜなら、ヤギの赤血球細胞は、ヒト血小板サイズ及びサイズ分布に類似するサイズ及びサイズ分布に変えられるか又は当該サイズ及びサイズ分布に配合することができるからである。サイズ調節の1の方法は、細胞を高浸透圧溶液中に懸濁して、浸透圧により細胞から細胞内液体(cellular fluid)を引き抜くことである。固定処理は、浸透圧が適用された場合に、細胞内液体の通過割合を調節又は制御する手段として固定処理が用いられるかに依存して、浸透圧の使用前又は後のいずれかで行われる。
【0006】
細胞膜を通した液体の通過割合を調節するために固定処理が行われる場合、その目的は、所望される粒子サイズ範囲及びサイズ分布を達成することである。しかしながら、光学技術により計測された場合に特定の粒子サイズ範囲及び分布を達成することは、電気的技術により計測されるものと同じサイズ範囲及び分布を常にもたらすわけではない。当該欠点を修正する1の方法は、2001年4月16日に特許付与された、Ryan, W.L.(Streck Laboratories, Inc.,)の米国特許第5,008,201号により開示される。当該方法は、異なる集合の細胞を、異なる程度の固定にかけて、浸透圧を適用した際に各集合を異なる程度に縮めさせることによって、段階的な粒子サイズを調製することに関する。当該集合は、次に全体として所望のサイズ分布に近づける割合で混合される。これは、労働集約型であり、そして選択された割合及び異なる処理の程度の両方の点で誤りを起こしやすい。
【発明の開示】
【0007】
電気的計測により検出されるサイズ範囲及び分布に厳密に一致する光学計測により検出されるサイズ範囲及び分布を有する血小板アナログが、ヒト以外の脊椎動物の赤血球細胞であって、既にサイズの点で縮められ、そして固定された細胞から製造できるということがここに発見された。当該製造方法は、最初にサイズを低減されそして固定された細胞を、当該細胞に変性効果を与えるために十分な時間のあいだ室温を超える温度へと加熱し、次に室温又は室温付近の温度に細胞を冷却する前又は後に、当該細胞を固定剤に晒すことを含む。当該方法についての有利な結果は、異なる大きさを有する細胞の区別されるロットを別々に調製し、そして当該ロットを注意深く選択された割合で混合して所望のサイズ分布に近くされた組合わせを達成することを必要としないで達成することができる。その代わりに本方法は、1のロットについて行うことができ、そして電気的及び光学的計測方法の両方により検出される場合、所望の分布を達成することができる。当該製造方法は、実際のヒト血小板を評価するための対照として、サイズ及び分布特性を、縮められた細胞の使用を可能にするサイズ及び分布特性へと近似させる。
【0008】
いずれの特定の理論に束縛されることを意図しない一方、性能向上についての潜在的な理由は、ガウス分布より対数正規分布に近いサイズ分布を作り出したことに関すると本発明者は信じる。なぜなら、対数正規分布は、実際のヒト血小板の分布に良く似ているからである。本発明の方法は、ヒト血小板の光学屈折率によく似ている数値に当該細胞の光学屈折率を変化させる様式で、当該細胞の内容物を改変すると信じられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
一般的にヒト以外の脊椎動物由来の赤血球細胞を本発明の実施にあたり使用できる一方、ヤギの赤血球細胞(エリスロサイト)は、この目的のために従来技術において特に言及される。ヤギ赤血球の体積及びサイズ分布範囲は、ヤギの年齢及び性別、並びに遺伝因子、交配履歴、及びヤギの育種様式及び環境によってある程度変化する。しかしながら一般的に、ヤギ赤血球はヒト血小板の平均血小板体積の2〜3倍である平均赤血球体積を有する。
【0010】
ヤギ赤血球をヒト血小板のサイズ範囲にする製造方法は当該技術分野に知られている。上で記載される様に、浸透圧により当該赤血球から細胞内液体の制御された量を取り除き、それと併せて同様に上で記載される様に固定剤を用いて細胞膜を固定することは、これらの方法の中に含まれる。追加処理及び処理試薬は幾つかの場合同様に使用される。例えば抗凝結剤及び安定剤を含み、そして幾つかの場合、細胞内液体を引き抜いた後に細胞を焼き鈍し(anneal)するための熱処理を含む。しかしながら、これらの処理の全ては組み合わされ、そしてどのような順番でも、本発明を構成する処理ステップで赤血球を作成する。赤血球が真の血小板ではなく血小板アナログであると言う事実にも関わらず、「平均血小板体積」という用語により表現される本発明に従って処理される前の赤血球のサイズ範囲は、変化しうる。多くの場合、最良の結果は、約7フェムトリットル〜約15フェムトリットル、そして最も好ましくは約10フェムトリットル〜約13フェムトリットルのサイズ範囲で達成されよう。
【0011】
本発明の実施における第一ステップは、変性効果を達成するために十分な温度及び十分な時間のあいだサイズを小さくされた赤血球を加熱することである。当該熱処理は、細胞に損傷を与えず、又は細胞の凝集を引き起こすことなく当該効果を達成するために十分な程度及び期間である。温度は、当該細胞が当該温度に保持される時間の長さで変わりうる。多くの場合、治療時間の点で最も効果的な結果は、約50℃以上、好ましくは約50℃〜約75℃、そして最も好ましくは約50℃〜約60℃の温度に加熱することにより得られるであろう。好ましくは加熱期間は、約4時間〜約48時間であり、そして最も好ましくは約24時間以上である。加熱温度及び時間は変化しうる一方、より長い加熱時間及び高い加熱温度は、細胞体積の小さい処理細胞をもたらすであろう。加熱温度及び時間を選択することによりある程度、最終細胞サイズを調節することができる。望ましい場合、液体の蒸発又は大気への露出を避けるために、加熱は密閉容器内で行われうる。厳密に必須ではないが、不活性又は酸化されない大気中で加熱を行うことも望ましいこともある。全体として処理するための最も効果的な結果は、加熱ステップが固定剤を含めることなく行われる場合に、一般的に得られる。以下に記載される様に、固定剤は、こうして好ましくは、変性温度が所定の時間のあいだ維持された後に加えられる。
【0012】
熱処理に続く固定剤での処理は、一般的に血小板、赤血球、及び血液細胞の処理のために当該技術分野に既に知られている固定剤を用いて行われ、そして当該技術分野に知られている他の処理方法は同様に使用することができる。固定剤の例は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、四酸化オスミウム、塩化水銀、アクロレイン、及びタンニン酸である。これらは、単独で又は組合わせて使用することができ、そして市販されている固定剤製剤は同様に使用することができる。市販の固定剤の一例は、HistoChoice(商標)固定剤(Amresco Inc., Solon, Ohio, USA)である。他の例は、Zenker’s(American Master Tech Scientific, Inc., Lodi, California, USA)、B5、B3( 両方ともAmerican Master Tech Scientific, Inc., Lodi, California, USA)、及びBouin’s(Medical Chemical Corporation, Torrance, California, USA)である。アルデヒド架橋固定剤が好ましく、その例は、グルタルアルデヒド及びホルムアルデヒドである。特に好ましい固定剤はグルタルアルデヒドである。特に好ましい固定剤はグルタルアルデヒドである。
【0013】
使用される固定剤の量は、本発明に決定的なものではなく、そして広く変更することができる。多くの場合、効果的な結果は、細胞の懸濁液に対して約3%〜30%の液体固定試薬で達成されるであろう。ここで当該懸濁液は、体積で懸濁液の100部あたり約1〜約25部の細胞濃縮物を含む。好ましくは懸濁液は、体積で懸濁液の100部あたり約3〜約15部の細胞濃縮物を含み、そして固定剤は、懸濁液に対して(体積で)約5%〜約20%の量に加えられる。他の固定条件は、同様に決定的ではなく、そして変化しうる。固定の露出時間は、例えば、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは約8時間〜約48時間、そして最も好ましくは約16〜約24時間である。固定剤での処理は、変性条件下では行われず、そして従って、当該処理は一般的に熱処理よりは低い温度で行われる。30℃未満の温度は、固定ステップに好ましく、そして室温(周囲)温度は一般的に適切である。固定が行われる雰囲気は、一般的に当該固定剤と化学的に干渉しない任意の雰囲気で行われうる。空気は一般的に許容される雰囲気であるが、液体体積を保存するため、懸濁液は、好ましくは、固定の間に密封容器に維持される。
【0014】
変性と固定の後に、細胞は、低浸透圧、等張、高浸透圧の液体を含む様々な液体のいずれかの中に懸濁することができる。等張の水溶液、つまり、細胞膜を通した浸透圧の差を形成しない液体は、最終血液対照製品に最も適合するので好ましい。慣用される添加剤は、従来技術の標準細胞懸濁液において役に立つという同じ目的で加えることができる。例えば、プロピレングリコールは、細胞質をきれいにし、そして細胞と細胞との結合を低減するために加えることができる。
【0015】
本発明の特定の実施態様では、細胞は、本発明の加熱及び固定ステップの前に前処理される。前処理は、等張希釈液、生理食塩水希釈液、又は水、そして幾つかの場合これらの培地のいずれかに溶解されたプロピレングリコールで希釈された形態の中で、上で記載された温度範囲以下の温度で少なくとも1時間、適度に加熱することにより達成される。前処理の好ましい温度範囲は、約30℃〜約40℃であり、そして前処理時間は約2時間〜約4時間である。前処理は、光学的方法の血小板計数と電気的方法の血小板計数との一致を改善する傾向を有する。
【0016】
血小板計数の光学的方法と電気的方法との間の一致の更なる改善が、上で記載される様々な処理ステップに加えてヒト赤血球の懸濁液中に細胞をインキュベートすることにより達成される。当該インキュベートは、好ましくは少なくとも1日、より好ましくは少なくとも5日、そして最も好ましくは少なくとも10日間室温で行われる。
【0017】
以下の実施例は、例示の目的にのみ提供される。
【実施例】
【0018】
小さい開始粒子及び大きい開始粒子を伴う小バッチ(small batch)
電気インピーダンス計測について最適化された従来の調製血小板アナログの処理が、光学及び電気インピーダンス粒子計測器の両方について最適化されたサイズ、分布、及び光学屈折度を達成するために本発明の方法によってさらにどのように処理できるかを本実施例は示す。一連の血小板アナログ、つまり、すでに焼き鈍しされ、つまり浸透圧により細胞内液体を引き抜き、そして固定剤で固定することによってサイズの低減を達成するために従来技術の方法により処理されたヤギ赤血球のサンプル、を懸濁培地中に懸濁し、そして部分に分ける。各部分を処理のために別々の容器に配置した。処理済みの2個のロットの赤血球を使用した。そのうち1つは、7.7fLの平均血小板体積を有し、そしてもう一方は11.5fLの平均血小板体積を有した。各サイズ範囲のうちで、異なるサンプルを、細胞を入れる懸濁培地の点及びそれに続く処理ステップであって、熱の適用及び固定剤での処理を含む処理ステップの点で別々に処理した。
【0019】
一般的な方法は以下の通りである。濃縮血小板アナログ、各サイズについて5mlの体積を100mlの目盛りつきシリンダーに入れた。第一シリンダーに小サイズのアナログそして第二シリンダーに大サイズのアナログを入れた。各シリンダーを次に等張水溶液で100mlにした。2個の目盛りつきシリンダーの各々から45mlをとり、そして別々の50mlの遠心管にいれた。さらに5mlの等張液を各遠心管に加えて、各遠心管の総体積を50mlにした。
【0020】
2個の遠心管を56℃で一晩水浴中に配置した。各遠心管の内容物を半分に分け、25mlのインキュベート済み細胞懸濁液を含む4個の遠心管を得た。グルタルアルデヒド試薬(2.5ml)を25mlの加熱サンプルとあわせ、混合し、そして室温で一晩固定した。固定後、固定された細胞を等張懸濁剤で3回洗浄し、そして同じ懸濁剤であるがポリエチレングリコールを加えた懸濁剤中で懸濁した。次に、一定量の細胞を3000rpmで24分間遠心した。遠心後、生理食塩水溶液中のヒト赤血球細胞の懸濁液で上清を置換した。2個のアナログサイズの各々について3セットの実験を行った。第一セットは、熱処理及びグルタルアルデヒド処理を伴わず、第二セットは熱処理のみを伴い(グルタルアルデヒド処理は行わない)、そして第三セットは熱処理とグルタルアルデヒド処理の両方を伴った。
【0021】
アッセイを、Abbott CELL−DYN4000血液分析器(Abbott Laboratories, Abbott Park, Illinois, USA)で行った。当該血液分析器は、光学的方法及びインピーダンス方法により、血小板サイズの粒子を評価する。アッセイ結果を、以下の図1〜6の散布図で示す。
【0022】
【表1】

【0023】
これらの各散布図において、2個の平行線は光学計数の限界を示し、当該二個の平行線の外側の点は、光学計数に含まれない粒子を表す。平行線の外側にある点が最も少ない散布図は図3と図6であり、その結果これらは、光学計数とインピーダンス計数との間で最もよく一致するサンプルである。これらは、熱処理とグルタルアルデヒド処理の両方を受けたサンプルである。
【0024】
実施例2
中間サイズ開始粒子を伴う大バッチ
以下の例外を伴って実施例1の方法を行った。開始物質として使用された焼き鈍し済みのヤギ赤血球細胞のMPVは、10.4fLであった。50mlの焼き鈍し済みの赤血球濃縮物を等張溶液で最終体積1lになるように希釈した。次にサンプルを1Lの遠心容器にいれ、そして水浴で56℃に熱した。24時間加熱後、十分なグルタルアルデヒド試薬を含む1Lの容器に注ぎいれ、最終溶液は体積で10%のグルタルアルデヒドを含んだ。グルタルアルデヒド中での固定を24時間続け、その後サンプルを4時間、有機物緩衝生理食塩水(organic buffered saline solution)中で洗浄した。同じ様式で調製した平行サンプルを次に11日間室温で赤血球細胞を含む培地中で処理した。1のセットが加熱処理又はグルタルアルデヒド固定のいずれも受けず、そして別のセットが加熱処理のみを受けるという点を除いて、さらなるサンプルの平行セットを同じ様式で調製した。
【0025】
アッセイを実施例1に記載のAbbott CELL-DYNE 4000で行った。アナライザーから得た計数データーを、6個のサンプル全部について(つまり、3個は赤血球細胞懸濁液中で処理され、そして3個は当該様式で処理される)表IIに示し、そして赤血球細胞懸濁液で処理された3個のサンプルについて図7、8、及び9に示した。表IIは、各セットについてのサンプル数(n)及び各サンプルセットに対する平均及び変動計数(C.V.)を記載する。
【0026】
【表2】

【0027】
表2及び図7、8、及び9のデータは、光学計数データーとインピーダンス計数データーとの間の最良の一致が、サンプルが加熱されそして固定された場合に得られるということを示した。当該様式で処理されたサンプルは、両方の計測方法において、平行線の外側にある点が最も少なく、そして最も少ないC.V.値を有した。
【0028】
実施例3
前処理の効果
本実施例は、本発明の熱処理及び固定ステップの前に焼き鈍されたヤギ赤血球細胞の前処理の効果を示す。前処理は、様々な希釈液中に2〜4時間室温で又は37℃に温和に加熱して設定することからなる。
【0029】
希釈液は、前の実施例において使用された等張水溶液、個別のサンプルに個別に使用されたリンゲル生理食塩水、及び水であった。さらなるサンプルを同じであるが、さらに20重量%又は40重量%のプロピレングリコールを含む希釈剤で前処理した。さらなるサンプルを前処理し、ヒト赤血球細胞を含む培地中で熱及び固定処理にかけた。前処理に続き、前述の実施例と同様に様々なサンプルを熱とグルタルアルデヒドで処理した。
【0030】
結果は、最終粒子サイズの点で様々であり、そして血小板フィットにおいて改善された。最大の最終粒子サイズは、水で前処理されたサンプル中で観察され、そして一般的に最終粒子サイズは、前処理された培地の伝導性に反比例した。光学に基づく血小板計数と電気インピーダンスに基づく血小板計数との間の一致の点で、これらの前処理された希釈剤のいずれかに40%未満のプロピレングリコールを含んだ培地中で前処理されたサンプルの性能は、前処理後に改善された。
【0031】
前述の実施例は例示の目的で提供される。本発明の範囲内に入るさらなるバリエーション、変更、及び置換は、当業者に容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明に従って製造されなかった小さいサイズの血小板アナログの散布図である。
【図2】図2は、本発明に従って加熱されたが、その後に固定されていない小さいサイズの血小板アナログの別の散布図である。
【図3】図3は、本発明に従って加熱され、次に固定された小さいサイズの血小板アナログの散布図である。
【図4】図4は、本発明に従って製造されなかった大きなサイズの血小板アナログの散布図である。
【図5】図5は、本発明に従って加熱されたが、その後に固定されなかった大きなサイズの血小板アナログの別の散布図である。
【図6】図6は、本発明に従って加熱され、次に固定された大きなサイズの血小板アナログの散布図である。
【図7】図7は、本発明に従って製造されなかった中間サイズの血小板アナログの散布図である。
【図8】図8は、本発明に従って加熱されたが、その後に固定されなかった中間サイズの血小板アナログの別の散布図である。
【図9】図9は、本発明に従って加熱された、次に固定された中間サイズの血小板アナログの散布図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動化血液細胞分析器においてリファレンス対照として使用するためのヒト血小板アナログの製造方法であって、当該方法が以下の:
(a) 細胞内液体を引き抜くことによりサイズを低減され、そして固定剤で固定されたヒト以外の脊椎動物の赤血球細胞を、変性効果を達成するために十分な程度に当該細胞を固定剤の非存在下で熱することによって処理し、
(b) 上記加熱の後に上記細胞を固定剤と反応させる
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記赤血球細胞がヤギ赤血球細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)の前記加熱が約50℃〜約75℃で行われ、そして当該時間は約4時間〜約24時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)の前記加熱が約50℃〜約60℃で行われ、そして当該時間は約4時間〜約48時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)が、30℃未満の温度で少なくとも約2時間行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)が、室温で8〜48時間行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)が、室温で16〜24時間行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)の前記固定剤が、架橋固定剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a)の前記固定剤が、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、四酸化オスミウム、アクロレイン、及びタンニン酸からなる群から選ばれるメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)の前記固定剤が、グルタルアルデヒド及びホルムアルデヒドからなる群から選ばれるメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)の前記固定剤がグルタルアルデヒドである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
加熱前のステップ(a)の前記赤血球細胞が、約7〜約15フェムトリットルの平均血小板体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
加熱前のステップ(a)の前記赤血球細胞が、約9〜約15フェムトリットルの平均血小板体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
加熱前のステップ(a)の前記赤血球細胞が、約10〜約13フェムトリットルの平均血小板体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(a)の前記赤血球細胞が、単一のバッチであり、その全ての部分がサイズの点で低減され、そして当該加熱前の共通条件下で固定される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
自動化血液細胞分析器用のリファレンス対照においてヒト血小板のアナログとして使用するための改変血液細胞であって、以下の:
(a) 細胞内液体の引き抜きによりサイズを低減され、そして固定剤で固定されたヒト以外の脊椎動物の赤血球細胞を、変性効果を達成するために十分な時間のあいだ固定剤の非存在下で当該細胞を変性温度に加熱することによって処理し、
(b) 上記加熱の後に上記細胞を固定剤と反応させる
を含む方法により製造される、前記細胞。
【請求項17】
前記赤血球細胞がヤギ赤血球細胞である、請求項16に記載の改変赤血球細胞。
【請求項18】
前記変性温度が約50℃〜約75℃であり、そして前記時間が約4時間〜約24時間である、請求項16に記載の改変血液細胞。
【請求項19】
前記変性温度が約50℃〜約60℃であり、そして前記時間が約4時間〜約24時間である、請求項16に記載の改変血液細胞。
【請求項20】
前記ステップ(b)が、30℃未満の温度で少なくとも約2時間行われる、請求項16に記載の改変血液細胞。
【請求項21】
前記ステップ(b)が、室温で8〜48時間行われる、請求項16に記載の改変血液細胞。
【請求項22】
前記ステップ(b)が、室温で16〜24時間行われる、請求項16に記載の改変血液細胞。
【請求項23】
ステップ(a)の前記固定剤が、架橋固定剤である、請求項16に記載の改変血液細胞。
【請求項24】
ステップ(a)の前記固定剤が、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、四酸化オスミウム、及びタンニン酸からなる群から選ばれるメンバーである、請求項16に記載の改変血液細胞。
【請求項25】
ステップ(a)の前記固定剤が、グルタルアルデヒド及びホルムアルデヒドからなる群から選ばれるメンバーである、請求項16に記載の改変血液細胞。
【請求項26】
ステップ(a)の前記固定剤がグルタルアルデヒドである、請求項16に記載の改変血液細胞。
【請求項27】
加熱前のステップ(a)の前記赤血球細胞が、約7〜約15フェムトリットルの平均血小板体積を有する、請求項16に記載の改変血液細胞。
【請求項28】
加熱前のステップ(a)の前記赤血球細胞が、約9〜約15フェムトリットルの平均血小板体積を有する、請求項16に記載の改変血液細胞。
【請求項29】
加熱前のステップ(a)の前記赤血球細胞が、約10〜約13フェムトリットルの平均血小板体積を有する、請求項16に記載の改変血液細胞。
【請求項30】
ステップ(a)の前記赤血球細胞が単一のバッチであり、その全ての部分が、前記加熱前にサイズの点で低減され、そして共通な条件下で固定された、請求項16に記載の改変血液細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−534957(P2008−534957A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504050(P2008−504050)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/005551
【国際公開番号】WO2006/107421
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(591099809)バイオ−ラッド ラボラトリーズ,インコーポレイティド (79)
【Fターム(参考)】