説明

血流量を決定するためのシステムおよび方法

本発明は、診断の方法を提供する。該方法は、被検者の器官のインピーダンスを示す入力信号の絶対成分および位相成分を取得するステップと、位相成分に基づいて被検者のベースライン血流量を決定するステップと、少なくとも絶対成分に基づいて血流量の過渡変化を決定するステップと、ベースライン血流量および血流量の過渡変化を表示するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2008年9月22日に出願された米国特許出願No.61/136640からの優先権の利益を主張する。この特許文献の内容は参考としてここに完全に述べられているかのように組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、その一部の実施形態では、医療における診断に関し、さらに詳しくは、生体から受信する電気信号を解析することによって血流量を決定するためのシステムおよび方法に関するが、それに限定されない。
【背景技術】
【0003】
器官の電気的特性の測定、例えば、生体インピーダンスの測定に関連する技術は一般的に公知である。典型的には、そのような技術は、生理学的に有意な特徴を電気測定から抽出することによる生理学的パラメータの監視に関係する。例えば、米国特許第6577897号を参照されたい。特徴は、器官(例えば、血管、心臓、肺等)の状態に直接または間接的に関係する生理学的徴候の識別に役立つ測度を含み、かつ生死にかかわる危険な状態を含め種々の生理学的状態の測度を明らかにすることができる。
【0004】
例えば、心疾患は(i)中枢神経系コントロールから心筋へのインパルスが規則的な心拍数を提供することができない自律神経系の不全、および/または(ii)たとえ患者が規則的な心拍数を持っていてもその収縮力が不十分である、心筋自体の不十分な強度によって引き起こされることがある。いずれの場合も、疾患のある心臓によって供給される血液量つまり血流量は異常であり、患者の循環の状態の評価が何より重要であることは理解される。
【0005】
心拍数および血圧のような最も簡単な測定が多くの患者に適しているかもしれないが、心血管または血行動態の異常がある場合には、より詳細な測定が必要である。
【0006】
心拍出量(CO)は、ある時間中に心臓によって送り出される血液の量であり、該時間は一般的に1分であるとみなされる。心拍出量は、心拍数(HR)と、一回拍出量(SV)としても知られる各心拍で送り出される血液の量との積である。例えば、立位で静止時の一回拍出量は、大部分の成人で平均して60から80mlの間の血液となる。したがって、毎分80回の安静時心拍数で、安静時心拍出量は毎分4.8から6.4Lの間で変化する。
【0007】
一般的な臨床上の問題として、低血圧(低い血圧)の問題がある。これは、心拍出量が低いため、かつ/または全身の血管抵抗の低さのために発生することがある。この問題は、広範囲の患者に、特に集中治療室または術後ハイデペンデンシーユニット(high dependency unit)にいる患者に発生し得る。これらの高リスク患者では、中心静脈カテーテルを介する中心静脈圧の測定、および末梢動脈カテーテルを介する動脈血圧の連続表示を含め、より詳細な監視が一般的に確立される。
【0008】
上記の測定に加えて、心拍出量の測定は有用である。例えば動脈圧測定と組み合わせると、心拍出量は全身の血管抵抗を算出するために使用することができる。心拍出量の測定は、患者の初期心血管状態を確立するため、および輸血、変力薬の注入、(全身の血管抵抗を増大または低減する)血管作用薬の注入、または薬理学的にもしくはペーシングレート(pacing rate)を調整することによってのいずれかで心拍数を変化させることなど、様々な治療的介入に対する応答を監視するための両方に有用である。
【0009】
心拍出量を測定する幾つかの方法が現在知られている。代表例は、1870年にアドルフ・フィックによって記載されたフィック法(フィック法では、呼吸中に身体によって取り込まれた酸素の量、および静脈血と動脈血との間の酸素濃度の差を使用して、心拍出量を算出する)、心拍出量が血流速度(ドプラ偏移を介して記録される)、血管の断面積、および心拍数から導出される経食道心エコー検査法(例えば、米国特許第6142941号参照);ならびに動脈系のコンプライアンスが測定動脈圧から決定され、かつ平均動脈圧とコンプライアンスとの積を時定数で割ったものとして心拍出量を計算するために使用されるコンプライアンスに基づく方法(例えば、米国特許第6485431号参照)が挙げられる。また、熱希釈法(例えば、米国特許第4153048号参照)のようなカテーテルに基づく方法も公知である。
【0010】
胸部電気バイオインピーダンスとして知られる非侵襲的方法は、米国特許第3340867号に初めて開示され、最近、医療および産業界の注意を引き始めた[米国特許第3340867号、第4450527号、第4852580号、第4870578号、第4953556号、第5178154号、第5309917号、第5316004号、第5505209号、第5529072号、第5503157号、第5469859号、第5423326号、第5685316号、第6485431号、第6496732号、および第6511438号、米国特許出願第20020193689号]。胸部電気バイオインピーダンス法は、患者へのリスク無しで連続心拍出量測定をもたらすという利点を有する。
【0011】
生体インピーダンスを使用する様々な方法は、国際公開第WO2004098376号、第WO2006087696号、および第WO2009022330号、米国特許第6022322号、第5615689号、および第5642734号、ならびに米国特許出願公開第20030120170号、第20060085048号、および第20060122540号に見られ、これらの内容を参照によって本書に援用する。
【発明の概要】
【0012】
本発明の一部の実施形態の態様では、診断の方法を提供する。該方法は、被検者の器官のインピーダンスを示す入力信号の絶対成分および位相成分を取得するステップと、位相成分に基づいて被検者のベースライン血流量を決定するステップと、少なくとも絶対成分に基づいて血流量の過渡変化を決定するステップと、ベースライン血流量および血流量の過渡変化を表示するステップとを含む。
【0013】
本発明の一部の実施形態では、該方法はさらに、被検者から入力信号を取得するステップと、入力信号を絶対成分および位相成分に分離するステップとを含む。
【0014】
本発明の一部の実施形態では、絶対成分はエンベロープ識別装置によって入力信号から分離される。
【0015】
本発明の一部の実施形態では、位相成分は、入力信号を被検者に送信された無線周波数信号を示す信号と混合して混合信号を提供し、そして混合信号の一部分をフィルタで除去することによって、入力信号から分離される。
【0016】
本発明の一部の実施形態では、該方法はさらに、絶対成分に基づいて入力信号の外乱を識別するステップと、識別された外乱に応じてベースライン血流量を補正するステップとを含む。
【0017】
本発明の一部の実施形態では、該方法はさらに、絶対成分に基づいて被検者の体動を識別するステップを含む。
【0018】
本発明の一部の実施形態では、該方法はさらに、絶対成分に基づいて被検者の筋活動を識別するステップを含む。
【0019】
本発明の一部の実施形態では、血流量の過渡変化は、1分以下の期間(sub−minute time interval)によって特徴付けられる。
【0020】
本発明の一部の実施形態では、入力信号の分離はアナログ処理ユニットによって行なわれ、血流量のベースラインおよび過渡変化の決定はデジタル処理ユニットによって行なわれる。
【0021】
本発明の一部の実施形態では、該方法はさらに、1回拍出量、心拍出量、心収縮性、心室駆出時間、心係数、胸部体液容量、総末梢血管抵抗指数、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択された少なくとも1つの数量を計算するステップを含む。
【0022】
本発明の一部の実施形態では、少なくとも1つの数量の計算は、絶対成分を用いて少なくとも1つの数量の時間依存性を計算して第1時間依存性を提供すること、および位相成分を用いて少なくとも1つの数量の時間依存性を計算して第2時間依存性を提供することを含み、該方法はさらに、第1および第2時間依存性の間の相関係数を計算するステップと、相関係数に応答して少なくとも1つの数量を表示するステップとを含む。
【0023】
本発明の一部の実施形態では、該方法はさらに、被検者からECG信号を取得するステップと、ECG信号に基づいて入力信号をセグメント化して、各々が被検者の単一拍動に対応する時系列のセグメントを画定するステップと、セグメントの少なくとも1つに対し、セグメントの拍動形態を決定するステップと、拍動形態に基づいて、少なくとも1つのセグメントを診断から除外すべきか否かを決定するステップとを含む。
【0024】
本発明の一部の実施形態では、該方法はさらに、絶対成分および位相成分を使用して、血流量に関連付けられる特性キャパシタンスおよび特性抵抗を計算するステップと、特性キャパシタンスおよび特性抵抗に応答して血管コンプライアンスを評価するステップとを含む。
【0025】
本発明の一部の実施形態の態様では、データプロセッサに本書に記載する方法を実行するように命令するためのコード手段を含むコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ可読媒体を提供する。
【0026】
本発明の一部の実施形態の態様では、診断のためのシステムを提供する。該システムは、被検者の器官のインピーダンスを示す入力信号を被検者から受信するように構成された入力ユニットと、入力信号を絶対成分および位相成分に分離するように構成された信号分離ユニットと、位相成分に基づいて被検者のベースライン血流量を決定し、かつ少なくとも絶対成分に基づいて血流量の過渡変化を決定するように構成された処理ユニットと、ベースライン血流量および血流量の過渡変化を表示するための出力ユニットとを備える。
【0027】
本発明の一部の実施形態では、該システムはさらに、発振信号を生成するための電気発振器と、発振信号を被検者に送信し、かつ発振信号に対する被検者の応答を検知するための複数のコンタクト電極とを備え、入力ユニットは該応答を受信する。
【0028】
本発明の一部の実施形態では、信号分離ユニットは、絶対成分を入力信号から分離するためのエンベロープ識別装置を含む。
【0029】
本発明の一部の実施形態では、信号分離ユニットは、入力信号を被検者に送信された発振信号を示す信号と混合して混合信号を提供するための混合器と、混合信号の一部分を除去し、それによって位相成分を入力信号から分離するためのフィルタとを含む。
【0030】
本発明の一部の実施形態では、処理ユニットは、絶対成分に基づいて入力信号の外乱を識別し、かつ識別された外乱に応じてベースライン血流量を補正するように構成される。
【0031】
本発明の一部の実施形態では、処理ユニットは、絶対成分に基づいて被検者の体動を識別するように構成される。
【0032】
本発明の一部の実施形態では、処理ユニットは、絶対成分に基づいて被検者の筋活動を識別するように構成される。
【0033】
本発明の一部の実施形態では、血流量の過渡変化は1分以下の期間によって特徴付けられる。
【0034】
本発明の一部の実施形態では、信号分離ユニットはアナログであり、処理ユニットはデジタルである。
【0035】
本発明の一部の実施形態では、処理ユニットは、1回拍出量、心拍出量、心収縮性、心室駆出時間、心係数、胸部体液容量、総末梢血管抵抗指数、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択された少なくとも1つの数量を計算するように構成される。
【0036】
本発明の一部の実施形態では、処理ユニットは、絶対成分を用いて少なくとも1つの数量の時間依存性を計算して第1時間依存性を提供し、位相成分を用いて少なくとも1つの数量の時間依存性を計算して第2時間依存性を提供し、かつ第1および第2時間依存性の間の相関係数を計算するように構成され、出力ユニットは相関係数に応答して少なくとも1つの数量を表示する。
【0037】
本発明の一部の実施形態では、入力ユニットは被検者からECG信号を受信するように構成され、ここで処理ユニットは、ECG信号に基づいて入力信号をセグメント化して、各々が被検者の単一拍動に対応する時系列のセグメントを画定し、かつセグメントの少なくとも1つに対し、セグメントの拍動形態を決定し、かつ拍動形態に基づいて、少なくとも1つのセグメントを診断から除外するか否かを決定するように構成される。
【0038】
本発明の一部の実施形態では、セグメンテーションおよび拍動形態の決定は、絶対成分および位相成分に対して別々に実行され、少なくとも1つのセグメントを除外するか否かの決定は、絶対成分から決定された拍動形態を、位相成分から決定された拍動形態と比較することを含む。
【0039】
本発明の一部の実施形態では、処理ユニットは、絶対成分および位相成分の使用に基づいて血流量に関連付けられる特性キャパシタンスおよび特性抵抗を計算し、かつ特性キャパシタンスおよび特性抵抗に応答して血管コンプライアンスを評価するように構成される。
【0040】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0041】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでいる。さらに、本発明の装置、方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。
【0042】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピュータが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットフォームで実行される。任意選択的に、データプロセッサは、命令および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレイおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0044】
【図1】図1は、本発明の種々の例示的実施形態に係る診断の方法を記載するフローチャート図である。
【0045】
【図2】図2は、本発明の一部の実施形態に係る診断の方法をより詳細に示すフローチャート図である。
【0046】
【図3A−3B】図3Aは、本発明の実施形態に従って使用される、動的に変化する周波数上限の代表例を示す。図3Bは、本発明の実施形態に従って使用される、動的に変化する周波数下限の代表例を示す。
【0047】
【図3C】図3Cは、本発明の実施形態に従って使用される、動的に変化する周波数帯域の代表例を示す。
【0048】
【図4】図4は、本発明の様々な例示的実施形態に係る、周波数限界を選択するための反復的プロセスのフローチャート図である。
【0049】
【図5A−5B】図5Aは、ECG信号から心室駆出時間を抽出するための手順の略図である。図5Bは、本発明の種々の例示的実施形態に従ってフィルタ処理された信号の微分から心室駆出時間を抽出するための手順の略図である。
【0050】
【図5C−5D】図5C−5Dは、本発明の種々の例示的実施形態に係る拍動形態特性化手順の略図である。
【0051】
【図6】図6は、本発明の種々の例示的実施形態に従って、位相成分から得た時間依存性を絶対成分から得た時間依存性と相関させるための手順を記載するフローチャート図である。
【0052】
【図7】図7は、本発明の種々の例示的実施形態に係る診断のためのシステムの略図である。
【0053】
【図8】図8は、本発明の種々の例示的実施形態に従って、被検者を敗血症または非敗血症と診断するために使用することのできるヒストグラムである。
【0054】
【図9】図9は、本発明の種々の例示的実施形態に従って、被検者をうっ血性心不全または慢性閉塞性肺疾患を有すると診断するために使用することのできるヒストグラムである。
【0055】
【図10】図10は、本発明の一部の実施形態の方法およびシステムによって使用することのできる例示的回路構成の略図である。
【0056】
【図11】図11は、本発明の一部の実施形態に従って実施された実験で約260秒間被検者を監視した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明は、その一部の実施形態では、医療における診断に関し、さらに詳しくは、生体から受信する電気信号を解析することによって血流量を決定するためのシステムおよび方法に関するが、それに限定されない。
【0058】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0059】
本発明の一部の実施形態を以下で、本発明の実施形態の方法およびシステムによって実行することのできる動作を記載するフローチャート図に関連して説明する。特に異なる記載が無い限り、以下に記載する動作は同時にまたは逐次的に多くの組合せまたは実行順序で実行することができることを理解されたい。特にフローチャート図の順序は、限定とみなすべきではない。例えば、以下の説明またはフローチャート図に特定の順序で現われる2つ以上の動作は、異なる順序で(例えば、逆順で)、または略同時に実行することができる。加えて、下述する幾つかの動作は任意であって、実行しなくてもよい。
【0060】
本発明の実施形態の方法は、多くの形で具現することができる。例えば、該方法は、該方法を実行するためのコンピュータのような有形媒体で具現することができる。該方法は、該方法を実行するためのコンピュータ可読命令を含むコンピュータ可読媒体に具現することができる。また、有形媒体上でコンピュータプログラムを実行し、またはコンピュータ可読媒体上で命令を実行するように構成されたデジタルコンピュータ能力を有する電子装置に具現することもできる。
【0061】
次に図面を参照すると、図1は、本発明の種々の例示的実施形態に係る診断の方法を記載するフローチャート図である。
【0062】
方法は10で開始され、11に続き、そこで被検者の器官のインピーダンスを示す入力信号の少なくとも絶対成分および位相成分が取得される。器官は好ましくは被検者の胸部であるが、臀部、大腿、頸部、頭部、腕、前腕、腹部、臀筋、脚、および足など、それらに限らず他の器官も本発明の範囲から除外されない。絶対成分および位相成分は、例えば、入力信号を絶対成分および位相成分に分離する異なる回路構成チャネルを介して、別々に取得することができる。これは、以下でさらに詳述する通り、該方法でこれらの成分の各々を独立して処理することを可能にする。
【0063】
いかなる場合でも、電気信号は数学的に複素数として記載することができる。
【0064】
本書で使用する場合、用語「絶対成分」とは、この複素数の絶対値、すなわち複素平面内の複素数を記載するベクトルの長さを指し、用語「位相成分」とは、複素平面内のベクトルと実軸との間の角度を指す。
【0065】

【0066】
本発明の種々の例示的実施形態では、入力信号の絶対成分および位相成分への分離はアナログ処理ユニットによって行なわれる。例えば、絶対成分は、エンベロープ識別装置によって入力信号から分離することができる。位相成分は、入力信号を被検者に送信された無線周波数信号を示す信号と混合し、かつ混合信号の一部分をフィルタで除去することによって、入力信号から分離することができる。本発明の一部の実施形態に従って入力信号をその成分に分離するためのより詳細な技術は、本書で下述する。
【0067】
本発明者らは、血流量に直接または間接的に関係する任意の数量に対し、位相成分および絶対成分から異なるタイプの情報を得ることができることを発見した。さらに詳しくは、本発明者らが実行した実験において、入力信号の位相成分は、入力信号の絶対成分と比較して、突然の血行動態変化にあまり影響されないことが明らかになった。本発明者らはしたがって、位相成分がそれぞれの数量のベースラインを示す情報を提供する一方、絶対成分または位相成分と絶対成分との組合せ(例えば、線形結合)がベースラインに対する変分を示す情報を提供するように、位相成分から抽出された情報を、絶対成分から抽出された情報と結合する技術を考案した。こうして、比較的長い(例えば、数十分ないし数時間程度の)期間に関連する情報は、信号の位相成分によって提供され、短い(例えば、数秒ないし数分程度、およびより好ましくは1分未満の)期間に関連する情報は、絶対成分または信号の2つの成分の結合によって提供される。これらの2種類の情報の結合は、正確かつ敏感な診断をもたらす。
【0068】
10秒未満、または5秒未満、または2秒未満、または1分未満の時間窓内に少なくとも30%の量だけ変動する数量に関係する診断を本書では、「実時間診断」と呼ぶ。
【0069】
こうして、該方法は11から12に進み、そこで被検者のベースライン血流量が位相成分に基づいて決定され、かつ13に進み、そこで血流量の過渡変化が絶対成分または絶対成分と位相成分との間の結合に基づいて決定される。ベースラインおよび血流量の過渡変化の決定は、デジタル処理ユニットによって実行されることが好ましい。
【0070】
該方法はまた、1回拍出量(SV)、心拍出量(CO)、心収縮性(HC)、心室駆出時間(VET)、心係数(CI)、胸部体液容量(TFC)、総末梢血管抵抗指数(TPRI)、およびそれらの任意の組合せのような、しかしそれらに限らず、1つ以上の血流量または血液量関連数量を計算するために、デジタル処理ユニットを使用することもできる。
【0071】
本発明者らは、血流量または血液量関連数量のベースラインを計算するために、入力信号の位相成分を利用することができ、かつ血流量または血液量関連数量の過渡変化を計算するために、入力信号の絶対成分または位相成分と絶対成分との結合を利用することができることを発見した。
【0072】
例えば、本発明の一部の実施形態では、該方法はHCおよびVETを計算する。これらの数量はいずれも、位相成分および絶対成分を用いて別々に計算することができる。任意選択的に、被検者のHCとVETとの間の比も、位相成分および絶対成分に対して別々に計算される。この比は、より一般的な熱性被検者群から敗血症被検者を分類するためにスコアとして利用することができ、敗血症被検者は、熱性であるが非敗血症の被検者と比較して、相対的に高い比を有する。加えて、HCとVETとの間の関係は、出血性、外傷性、心原性等のショックのような、他のタイプの被検者の状態に対する洞察をもたらし、輸液蘇生および輸液最適化治療の決定および改良に役立てることができる。
【0073】
本発明の一部の実施形態では、CI、SV、およびTPRIの数量は患者が座位のときに監視され、かつ患者の姿勢を仰臥位に変えた後、再び監視される。次いで該方法は、2つの姿勢の間のCIの差(dCI)、SVの差(dSV)、およびTPRIの差(dTPRI)を計算する。該方法は、医師が被検者を敗血症または非敗血症として診断することができるように(図8参照)、これらの差の1つ以上を表示することができる。任意選択的に、該方法は3つの差の2つ以上を使用してスコアを計算することができ、該スコアは、被検者を敗血症と宣言することができるか否かを示すことができる。そのようなスコアの代表例として、線形結合、例えば(dCI+dSV−dTPRI)/3がある。この実施形態では、スコアが予め定められた閾値(例えば、10%)より低い場合、被検者は敗血症と宣言され、スコアが予め定められた閾値より高い場合、被検者は非敗血症と宣言される。
【0074】
こうして、本実施形態は、例えば、ERで敗血症患者を自動的に予備選別するために使用することができる。
【0075】
上記スコアはいずれも、例えば治療中に敗血症被検者を監視し、それによって治療に対する被検者の応答を追跡するために使用することもできる。
【0076】
本発明の一部の実施形態では、該方法はCIおよびTFCを計算する。典型的には、CIは位相成分から計算され、TFCは絶対成分から計算される。CIおよびTFCの両方を計算する利点は、息切れが報告されたときに、医師がうっ血性心不全(CHF)被検者と慢性閉塞性肺疾患(COPD)被検者とを見分けることを可能にすることである。本発明の種々の例示的実施形態では、CIおよびTFCは被検者が座位のときに監視され、かつ患者の姿勢を仰臥位に変えた後、再び監視される。次いで、2つの姿勢の間のCIの差(dCI)およびTFCの差(dTFC)が計算される。dCIおよびdTFCに基づいて、スコアを確立することができ、該スコアは被検者がCHFまたはCOPDを患っているか否かを決定することができる。本実施形態に適したスコアの代表例として、dTFCおよびdCIの線形結合、例えばdTFC+dCIがある。この実施形態では、スコアが予め定められた閾値(例えば10%、例えばAcademic Emergency Medicine 2009、16(s1):S11を参照されたい)より低い場合、被検者はCHF被検者と宣言され、スコアが予め定められた閾値より高い場合、被検者はCOPDまたは非CHF被検者と宣言される(図9参照)。
【0077】
該方法は14に続き、そこでベースライン血流量もしくは関連数量、ならびに/または血流量もしくは関連数量の過渡変化が、例えばコンピュータモニタまたはプリンタのような表示装置によって表示される。
【0078】
該方法は15で終了する。
【0079】
図2は、本発明の一部の実施形態に係る方法をより詳細に記載するフローチャート図である。
【0080】
該方法は10で開始され、20に続き、そこで該方法は被検者から入力信号を取得する。これは典型的には、被検者の器官に取り付けられる電極の配列を用いて達成される。電極は器官の2つ以上の位置に取り付けられ、電極から受信した電圧信号に応答して出力信号を提供する回路構成にも接続される。出力信号は電極間の組織のインピーダンスを示す。これは全て、生体インピーダンスの技術分野の熟練者には周知であり、文献にも記載されている。例えば、内容を参照によって本書に援用する国際出願公開第WO2004/098376号および第WO2006/087696号を参照されたい。
【0081】
該方法は21に続き、そこで入力信号は絶対成分および位相成分に分離される。分離は、上に記載しかつ以下でさらに詳述する通り、異なる回路構成チャネルを用いて行なうことができる。
【0082】
該方法は12に進み、そこで被検者のベースライン血流量が位相成分に基づいて決定され、かつ13に進み、そこで血流量の過渡変化が、絶対成分または位相成分と絶対成分との結合に基づいて決定される。該方法は任意選択的に、上でさらに詳述した通り、1つ以上の血流量または血液量関連数量を計算する。
【0083】
本発明の種々の例示的実施形態では、該方法は22に続き、そこで該方法は入力信号の外乱を識別し、かつ識別された外乱に応じてベースライン血流量または関連数量を補正する。入力信号の外乱は絶対成分を用いて識別することができることを、本発明者らは発見した。これは、絶対成分が高い変動性を有し、したがって信号の外乱を検出し易いためである。
【0084】
信号の外乱は2つ以上の事象によって生じることがあり得る。代表例として、筋活動および体動が挙げられるが、これらに限定されない。23で該方法は任意選択的に、絶対成分に基づいて筋活動、体動、および/または外部外乱を識別する。
【0085】
本発明の一部の実施形態では、該方法は血流量数量の1つ以上(例えば、SV、CO、VET、CI、TFC、TPRI、HC等)について、それぞれの数量の時間依存性を計算する。好ましくは、該方法は絶対成分を使用しかつ位相成分を使用して別々に時間依存性を計算し、予め定められた1組の基準に基づいて、計算された時間依存性のうちの1つだけを表示する。例えば、該方法は、位相成分から得られた時間依存性と絶対成分から得られた時間依存性との間の相関係数を計算することができる。相関係数が予め定められた閾値より高い場合、該方法は両方の時間依存性を表示することができる。相関が低い場合、該方法は、時間依存性の1つ以上がアーチファクトであると決定し、それを表示しないと判断することができる。2つの時間依存性を相関させるための手順の代表例を、以下で図6に関連して提示する。
【0086】
本発明の種々の例示的実施形態では、該方法は25に進み、そこで該方法は被検者からECG信号を取得し、ECG信号に応答して入力信号の形態を決定する。例えば、該方法は、各々が被検者の単一拍動に対応する時系列のセグメントを画定するように、ECG信号に基づいて入力信号をセグメント化するためにセグメンテーションを使用することができ、かつセグメントの少なくとも1つに対し、該方法はセグメントの拍動形態を決定することができる。一度セグメントの形態が決定されると、該方法はそれぞれのセグメントを診断から除外すべきか否かを決定することができる。拍動形態を決定するための手順の代表例を、本書で以下に提示する。
【0087】
セグメント化および拍動形態の決定は、絶対成分および位相成分に対して別々に実行することが好ましい。この実施形態では、セグメントを診断から除外すべきか否かの決定は、絶対成分から決定された拍動形態を位相成分から決定された拍動形態と比較することを含む。
【0088】
本発明の種々の例示的実施形態では、該方法は26に進み、そこで該方法は血管のコンプライアンスを評価する。これは、血流量に関連付けられる特性キャパシタンスおよび特性抵抗を計算し、かつ特性キャパシタンスおよび抵抗に応答して血管のコンプライアンスを評価することによって、達成することができることを、本発明者らは発見した。特に、心室から動脈内への血液の流出は容量(C)効果および抑制(R)効果をもたらし、よって大動脈のコンプライアンスが高ければ高いほど、測定信号のC成分が高くなることを、本発明者らは発見した。こうして、CをRとは別個に測定することによって、本実施形態は、それ以外では標準生体インピーダンス測定によって示されない、解剖学的および生理学的パラメータに関する情報を提供する。例えば、本実施形態は、たとえ被検者が同一または類似のCOを有していても、血管コンプライアンスの観点から被検者を区別することができる。この実施形態は、石灰化大動脈、動脈硬化症、病的血行動態状態、例えば敗血症性ショックおよびシャントの診断に役立てることができる。
【0089】
一部の実施形態では、RおよびCは、同一被検患者に対して充分なサンプリングレートで反復的に測定される。次いで測定値は、C‐R平面内に等高線地図を生成するために使用される。地図の等高線は被検者の心拍毎に周期を追跡する。等高線の特性は、本発明の好適な実施形態では、血流量および血流量関連数量を決定するために使用することができる。これは、例えば異なる形状の等高線に異なる血流量値を割り当てるルックアップテーブルを用いて行なうことができる。
【0090】
本発明の一部の実施形態では、位相成分および絶対成分の各々が、血流量または関連数量の決定前にフィルタリングされる。フィルタリングは、デジタル処理ユニットを使用して、かつ被検者の生理学的状態に応答して、実行することが好ましい。フィルタリングは、例えばその内容を参照によって本書に援用する国際特許公開第2009/022330号に記載されたフィルタリング技術を使用することによって、位相成分および絶対成分に対して別々に行なうことができる。
【0091】
本発明の種々の例示的実施形態では、フィルタリングは、被検者の生理学的状態の変化に応答して動的に適応される周波数帯域に応じて行なわれる。生理学的状態に対する周波数帯域の適応は、当業界で公知の任意の適応スキームに従って行なうことができる。例えば、周波数帯域の1つ以上のパラメータ(例えば、下限、上限、帯域幅、中心周波数)は、生理学的状態を特徴付けるパラメータの線形関数とすることができる。そのようなパラメータは、例えば毎分心拍数とすることができる。
【0092】
本発明の一部の実施形態に従って位相成分および絶対成分に別々に使用される、動的に変化する周波数限界の代表例を、図3Aおよび3Bに示す。図3Aおよび3Bに示すのは、被検者の心拍数に対する周波数限界(図3Aは上限、図3Bは下限)の関数的依存性である。図3Aに示す通り、周波数帯域の上限は、毎分約60回(bpm)の心拍数で上限が約6Hzとなり、かつ約180bpmの心拍数で上限が約9Hzとなるように、線形的に変化する。図3Bに示す通り、周波数帯域の下限は、約60bpmの心拍数で下限が約0.9Hzとなり、約180bpmの心拍数で下限が約2.7Hzとなるように、線形的に変化する。
【0093】
本書で使用する場合、用語「約(about)」または「略(approximately)」とは±10%を指す。
【0094】
本発明の一部の実施形態では、上限は、F(HR)=6+1.5×[(HR/60)−1]Hzと定義される関数F(HR)に略等しく、ここでHRは被検者のbpm単位の心拍数である。一部の実施形態では、上限は常にF(HR)に等しく、他の実施形態では、上限は反復プロセスを用いて設定される。
【0095】
本発明の一部の実施形態では、下限は、F(HR)=0.9×(HR/60)Hzと定義される関数F(HR)に略等しい。一部の実施形態では、下限は常にF(HR)に等しく、他の実施形態では、下限は反復プロセスを用いて設定される。
【0096】
本発明の一部の実施形態に適した反復プロセスの代表例を、本書で以下に提示する。
【0097】
本発明の一部の実施形態に係る、動的に変化する周波数上限および動的に変化する周波数下限によって特徴付けられる動的に変化する帯域通過フィルタ(BPF)を図3Cに示す。図示する通り、各心拍数は、下限および上限によって画定される周波数帯域に関連付けられる。例えば60bpmの心拍数の場合、図3Cは、下限が約0.9Hzおよび上限が約6HzのBPFを示す。
【0098】
上に提示した値および図3A〜Cに示す関数的関係は例示的実施形態であって、本発明の範囲をいかなる形でも限定するものとみなすべきではないことを理解されたい。他の例示的実施形態では、周波数帯域と生理学的状態との関数的関係は異なる勾配および/またはオフセットを有することができ、あるいは該関数的関係は非線形とすることができる。
【0099】
以下は、本発明の一部の実施形態に従って、位相成分および絶対成分に別々にフィルタリングする帯域通過フィルタの周波数帯域を決定するための反復プロセスの説明である。反復プロセスは、一部の実施形態では、それぞれのフィルタ処理された成分から抽出または算出された生理学的パラメータの値と、基準信号、例えばECG信号から抽出または算出された同じ生理学的パラメータの値との比較に基づくことができる。
【0100】
用語「生理学的パラメータ」とは、測定可能または算出可能であり、かつ生理学的活動、特に心臓の活動を表わすが、必ずしもそれに限らない、任意の可変パラメータを指す。本発明の種々の例示的実施形態では、生理学的パラメータは心拍数それ自体以外である。生理学的パラメータは時間関連パラメータ、振幅関連パラメータ、またはそれらの組合せとすることができる。
【0101】
典型的には、フィルタ信号および基準信号は、時間の関数としての振幅で表わされる。したがって、時間関連パラメータは典型的に信号の横座標値を用いて計算され、振幅関連パラメータは典型的に信号の縦座標値を用いて計算される。
【0102】
本実施形態に適した時間関連生理学的パラメータの代表として、収縮期時間、拡張期時間、前駆出期、および駆出時間が挙げられるが、それらに限定されない。本実施形態に適した振幅関連生理学的パラメータの代表例として、心収縮力、単一拍動中の零より上の最大振幅、単一拍動中の最大ピークピーク振幅、および単一拍動中のRMSレベルが挙げられるが、それらに限定されない。また、信号の2点間の平均勾配など、それに限らず、種々の勾配パラメータも考えられる。
【0103】
本発明の種々の例示的実施形態では、生理学的パラメータは心室駆出時間(VET)である。
【0104】
以下の実施形態は、生理学的パラメータとして特にVETに注目して説明するが、VETについてのより詳細な言及は、本発明の範囲をいかなる形であれ制限するものと解釈すべきではないことを理解されたい。
【0105】
本発明者らは、特定の被検者について相当量の生物学的情報をF(HR)と5.5Hzと間の周波数範囲から得ることができることを発見した。ここでHRは被検者の心拍数である。さらに、幾つかの医学的状態について、情報の一部は5.5HzとF(HR)との間に存在し得ることも、本発明者らによって発見された。
【0106】
同じ生理学的パラメータを抽出または算出するための2つの異なる技術の間の比較の利点は、それにより、帯域通過フィルタの周波数上限を実質的に最適化することが可能になることである。本発明の種々の例示的実施形態では、反復プロセスの繰返しの度に、比較が繰り返される。比較が予め定められた基準を満たすと、周波数上限は、上限の低閾値と上限の高閾値との間の平均を算出することによって更新される。周波数下限は一定限界、例えば約0.9Hzないし約2.7Hzの一定周波数とすることができ、あるいは動的、例えばF(HR)とすることができる。HRはそれぞれの繰返し前または繰返し中の被検者の心拍数である。
【0107】
上限の低閾値および高閾値は、2通り以上の方法で設定することができる。一部の実施形態では、低閾値および高閾値は予め定められ(すなわちそれらは反復プロセスの前に事前に決定され)、一部の実施形態では、閾値は反復プロセスの前回の繰返し中に設定され、一部の実施形態では、閾値の一方は予め定められ、他方の閾値は反復プロセスの前回の繰返し中に設定される。いずれの場合も、初回の繰返しは、反復プロセスの前に事前に決定された2つの閾値に基づく。少なくとも初期には(すなわち初回の繰返しでは)、第1閾値は約F(40)とすることができ、それは本発明の種々の例示的実施形態では約5.5Hzであり、かつ第2閾値は、HRをそれぞれの繰返し前または繰返し中の被検者の心拍数として、F(HR)の計算値とすることができることが、本発明の発明者らによって明らかになった。
【0108】
繰返し中に使用される予め定められた基準は、例えば2つの計算の結果が類似していること(例えば、相互に約40%または30%または25%以内であること)とすることができる。予め定められた基準はまた、2つの計算の間の差の方向に関連することもできる。概して、時間関連パラメータについては、上限は、基準信号に基づいて計算されたパラメータの値が、フィルタ処理された信号に基づいて計算されたパラメータの値より高い場合に更新され、振幅関連パラメータについては、上限は、基準信号に基づいて計算されたパラメータの値が、フィルタ処理された信号に基づいて計算されたパラメータの値より低い場合に更新される。勾配関連パラメータについては、上限は典型的に、基準信号に基づいて計算されたパラメータの値が、フィルタ処理された信号に基づいて計算されたパラメータの値より高い場合に更新される。
【0109】
上記基準間のブール組合せを基準として使用することもできる。例えばANDブール組合せを使用することができ、その場合、2つの計算の結果が類似しており、かつフィルタ処理された信号による計算が異常な生理学的状態を示す一方、基準信号による計算が正常な生理学的状態を示すときに、周波数上限を更新することができる。
【0110】
図4は、本発明の種々の例示的実施形態に従って、周波数上限を選択するための反復プロセスのフローチャート図である。生理学的パラメータがVETである場合について記載しているが、上述の通り、本発明の範囲をこのタイプの生理学的パラメータに限定することを意図するものではない。
【0111】
反復プロセスは60で開始され、61に続き、そこで周波数上限はF(HR)の値に設定される。HRは反復プロセスの繰返し前の被検者の心拍数である。心拍数は入力することができ、またはプロセスによって、例えば、ECG信号から決定することができる。プロセスは62に続き、そこで初期値が2つの周波数閾値に割り当てられる。周波数閾値は図4ではT1およびT2によって表わされる。本発明の種々の例示的実施形態では、T1の初期値はF(40)であり、T2の初期値は初期周波数上限である。
【0112】
プロセスは63および64に続き、そこでVETが、フィルタ処理されたそれぞれの成分(63)および基準信号(64)、例えばECGから別々に計算される。それぞれの成分から計算されたVETは、図4ではVET1と表わされ、ECG信号から計算されたVETは図4ではVET2と表わされる。初回の繰返しで、VET1の計算に使用されるフィルタ処理された信号は、61で初期設定された周波数上限および下限の間に画定された帯域通過フィルタを用いて、それぞれの成分をフィルタリングすることによって得ることが好ましい。
【0113】
プロセスは判定65に続き、そこでVET1およびVET2が比較される。VET1がVET2より高い場合、反復プロセスは73に続き、そこでプロセスは終了する。VET1がVET2より高くない場合、プロセスは66に続き、そこで上限はT1およびT2の平均AVEに更新される。本発明の種々の例示的実施形態では、AVE(T1、T2)はT1およびT2の算術平均(すなわちAVE(T1、T2)=(T1+T2)/2)であるが、一部の実施形態では、異なる平均スキーム(例えば、加重平均、幾何平均、調和平均、RMS等)を使用することができるので、必ずしもそうする必要は無い。
【0114】
66からプロセスは67に続き、そこでVET1は、更新された帯域通過フィルタを用いてフィルタ処理された信号から再計算される。更新された帯域通過フィルタの下限は初期下限とすることができ、あるいはそれは、それぞれの成分のフィルタリングの直前の被検者の心拍数に基づいて(例えば、上述したFに応じて)更新することができる。更新された帯域通過フィルタの上限は更新上限とすることが好ましい。任意選択的に、プロセスは68に続き、そこでVET2も基準信号から再計算される。代替的に、64からのVET2の値を使用することができる。
【0115】
プロセスは次いで判定69に続き、そこでプロセスは予め定められた終了基準が満たされるか否かを決定する。予め定められた終了基準が満たされると、反復プロセスは73に続き、そこでプロセスは終了する。満たされない場合、プロセスは判定70に続き、そこでVET1およびVET2が比較される。VET1とVET2との間のずれが予め定められた閾値Δより低く、かつVET1がVET2より低い場合、プロセスは71に続き、そこで上限の値がT2に割り当てられる。それ以外の場合、プロセスは72に続き、そこで上限の値がT1に割り当てられる。
【0116】
71および72からプロセスは66に戻り、そこで追加的反復が開始される。
【0117】
判定70で使用される閾値Δは典型的に、VET2の端数または(VET2−VET1)/VET2の端数として表わされる。本発明の種々の例示的実施形態では、Δ=p*VET2であり、ここでp<0.5であり、例えばp=0.4、またはp=0.3、またはp=0.25である。
【0118】
判定69で使用される終了基準は、例えば最大反復回数とすることができる。この実施形態では、プロセスは反復回数を計数し、およびそれらを予め定められた反復回数閾値と比較する。反復回数が反復回数閾値を越えると、プロセスは終了条件が満たされたと決定し、終了73に続く。典型的には、予め定められた反復回数閾値の値は約3回ないし約10回、例えば5回または6回であるが、必ずしもそうではない。
【0119】
終了基準はまた、予め定められたVET閾値TVETに対するVET1の値の比較を含むことができ、VET閾値は絶対値、被検者特定的値、またはVET2に対する相対値とすることができる。この実施形態では、プロセスはVET1の値をTVETと比較する。VET1がTVETより高い場合、プロセスは終了条件が満たされたと決定し、終了73に続く。典型的には、TVETの相対値が使用されるが、必ずしもそうではない。例えば、本発明の種々の例示的実施形態では、TVET=p*VET2であり、ここでp<0.5であり、例えばp=0.4、またはp=0.3、またはp=0.25である。
【0120】
上記実施形態のいずれにおいても、VETは(VET1またはVET2のどちらでも)単一心拍動に対して計算することができ、あるいは、より好ましくは、2回以上の心拍動で平均することができる。単一拍動を使用するより平均化手順を使用する利点は、反復プロセス中に信号に存在することのあるランダム外乱が減衰されることである。それでもなお、単一拍動からのVETの抽出は、本発明の範囲から除外されない。
【0121】
単一心拍動の場合、VETの計算は、拍動の形態を特徴付け、拍動上で2つ以上の識別可能な点を識別し、かつ識別された点間の時間を測定することによって実行することができる。
【0122】
図5Aは、基準信号がECG信号であるときにVET2を抽出するための手順を示す。図5Aに示されるのは、時間の関数としてのECG信号の単一拍動の典型的な形態である。VET2は、ECG信号のRピークとTピークとの間の期間(横座標値間の差)と定義することができる。
【0123】
フィルタ処理された信号が血行動態リアクタンスである場合、VET1の値は、フィルタ処理された信号の一次微分から抽出することが好ましい。手順を図5Bに示す。これは、血行動態リアクタンスNおよびその一次微分dNの単一拍動の典型的な形態を時間の関数として示す。図示する通り、dNは拍動に2つの零0および0を有し、ゼロの間に局所的極大点M、第2零の後に局所的極小点Mがある。本発明の一部の実施形態では、VET1は、第1零0と、第2零0の後の第1極小Mとの間の期間(横座標値間の差)と定義される。
【0124】
フィルタ処理された信号の拍動形態は、基準信号における識別可能な点を識別し、かつフィルタ処理された信号上のアンカ点を定義するためにこれらの点(横座標値)に関連付けられる時間を使用することによって、特徴付けることができる。
【0125】
それぞれの成分が血行動態リアクタンスであり、かつ基準信号がECG信号である実施形態について、フィルタ処理された信号の2つの例示的な拍動形態の特徴化手順を図5Cおよび5Fに示す。
【0126】
図5Cにおいて、dN(血行動態リアクタンスNの一次微分)の単一拍動は、2つのアンカ端点の間に画定される。第1(左)端点は、ECG信号のQピークの横座標値を有し、第2(右)端点はECG信号のRピークの横座標値を有する。換言すると、dNの単一拍動は、ECGにおける5つの連続区間の和、すなわちQR+RS+ST+TQ+QRに等しい幅を有する。
【0127】
図5Dにおいて、dNの単一拍動は3つのアンカ点、すなわち図5Cに記載した2つのアンカ点、および2つの端点間にある血行動態リアクタンスNの全体の最大点Aの横座標座値を有する中間アンカ点を用いて画定される。
【0128】
VETを平均するときに、計算は2通り以上の方法で行なうことができる。
【0129】
一部の実施形態では、各拍動に対し1つの局所的VETをもたらすために、それぞれの信号の予め定められた期間にわたる複数の拍動に対し、同じ形態特性化が使用される。VETは全ての局所的VETの平均と定義することができる。算術平均、加重平均、幾何平均、調和平均、RMS等を含め、それらに限らず、任意の平均化手順を使用することができる。
【0130】
一部の実施形態では、拍動の形態は、フィルタ処理された信号における拍動のアンサンブルにわたって平均されて、平均拍動形態がもたらされ、VETは、平均拍動形態上で2つ以上の識別可能な点を識別し、かつ識別された点間の時間を測定することによって決定される。例えば、アンサンブルにおける各拍動に対し、上述の通り形態を特徴付けることができ、全ての形態を、例えば各点毎に平均することができる。形態はまたセグメント単位で平均することもできる。この実施形態は、単一拍動が3つ以上のアンカ点を用いて画定される場合に特に有用であり、その場合、拍動上の各セグメント(2つの連続アンカ点の間)を、例えば各点毎に平均することができる。次いで、平均セグメントを継合することによって、平均拍動形態を得ることができる。例えば、図5Dに示す実施形態では、拍動は2つの中間アンカ点および中間点を用いて画定される。この実施形態では、各拍動が左セグメント(Qの横座標値からAの横座標値まで)および右セグメント(Aの横座標値からRの横座標値まで)を有する。アンサンブルにおける全ての拍動の左セグメントを平均して、左セグメント平均を提供することができ、かつアンサンブルにおける全ての拍動の右セグメントを平均して、右セグメント平均を提供することができる。平均拍動形態は、左セグメント平均を右セグメント平均に継合することによって得ることができる。
【0131】
本発明の種々の例示的実施形態では、アンサンブルにおける拍動のタイムスケールは、アンサンブルにおける全ての拍動が単一タイムスケールに収まるように調整される。
【0132】
この平均化の結果は単一拍動形態であり、上述の通り、そこからVET1を抽出することができる。例えば、血行動態リアクタンスの一次微分を使用する場合、平均形態は典型的に図5Bに示す形状を有する。次いで0から0の間の期間としてVET1を抽出することができる。信号の一次微分は平均化の前または後に計算することができる。一次微分が平均化の前に計算される場合、上述した平均化手順は信号の微分に対して実行される。一次微分が平均化の後に計算される場合、上述した平均化手順は信号に対して実行され、次いで得られた平均が微分される。平均化後の一次微分の計算は、ノイズ低減の観点から好ましい。
【0133】
VETを抽出するために平均化手順が実行される予め定められた期間は、典型的には約10回の拍動に及ぶ。
【0134】
図6は、本発明の種々の例示的実施形態に従って、位相成分から得た時間依存性を絶対成分から得た時間依存性と相関させるための手順を記載したフローチャート図である。各成分は80aおよび80bで、例えば上述した適応手順を用いて入力され、かつフィルタリングされる。フィルタリング段階の後に、各成分は、各成分の振幅形態を得るために、時間的にセグメント化される(81aおよび81b)。これは、以下でさらに詳述する通り、ビート毎のセグメント化または幾つかの連続した単一拍動の平均形態とすることができる。
【0135】
絶対成分は外乱を生じやすく、位相成分はより安定しているので、それらの間の相関82を検査する83ことによって、絶対成分の形態は位相成分の形態と比較される。相関は正規化相関であることが好ましい。例えば、該方法は最初に、位相成分から決定された形態ベクトルと、絶対成分から決定された形態ベクトルとの間の共分散Cを計算することができる。その後、該方法は共分散行列の対角diagCを計算することができ、列ベクトルdiagCに行ベクトルdiagCを乗算しかつこのように形成された乗算の各要素の平方根を取ることによって形成された行列sqrt(diagC・diagC)を使用して、共分散行列Cを正規化することができる。次いで、結果的に得られる正規化共分散行列Cは、C=C/sqrt(diagC・diagC)によって与えられる。ここで、除算は要素対要素の除算と理解すべきである。次いで相関係数は、正規化共分散行列Cの非対角要素の1つと定義することできる。
【0136】
相関が予め定められた閾値Ctrと等しいかそれ以上である場合、手順は、両成分が実質的に外乱を含まず、さらなる処理に有効であると決定する84。他方、相関がCtr未満である場合、手順は、絶対成分の形態が歪められていると決定する。この場合、手順は、位相成分から決定された形態も歪められているか否かを検査する。これは、位相成分から移動平均拍動形態を計算し85、81aで計算された拍動形態と85で計算された拍動形態とを相関させる86ことによって達成することができる。相関86は、上述の通り正規化相関とすることができる。次いで手順は相関係数の値を検査する87。相関がCtrと等しいかそれ以上である場合、手順は、位相成分だけがさらなる処理に有効であると決定し88、絶対成分をさらなる処理から除外する。相関がCtr未満である場合、手順は、両方の成分をさらなる処理から除外する90。相関閾値Ctrの典型値は約0.8である。この値は、相関が正規化された場合に特に有用である。
【0137】
手順は91で終了する。
【0138】
上記手順は、2つの成分から得られるどの情報がさらなる解析に有効であり、よってノイズを著しく低減するかを、いつでも決定するために使用することができる。
【0139】
例えば、SVを計算したい場合、以下の手順を使用することができる。
【0140】
両方の成分が有効であるならば、SVは次式の1つを用いて計算することができる。
SV=a・[SV]+b・d[SV],または
SV=a・[SV]+b・d[SV]+c・d[SV],または
SV=a・[SV]+k・[SV]+b・d[SV]+c・d[SV]
式中:
、k、b、およびcは、経験的に決定することのできる重みパラメータである。
[SV]は、位相成分から計算された1回拍出量である。
[SV]は、絶対成分から計算された1回拍出量である。
d[SV]は[SV](n)−[SV](n−1)と定義され、ここで[SV](n−1)および[SV](n)は2つの連続有効拍動(本実施例では拍動番号nおよびn−1)の絶対成分から計算された1回拍出量である。
d[SV]は[SV](n)−[SV](n−1)と定義され、ここで[SV](n−1)および[SV](n)は2つの連続有効拍動(本実施例では拍動番号nおよびn−1)の位相成分から計算された1回拍出量である。
【0141】
位相成分だけが有効である場合、SVは次式を用いて計算することができる。
SV=a・[SV]+b・d[SV]
式中、aおよびbは、経験的に決定することのできる重みパラメータである。
【0142】
上記手順において、[SV]および[SV]は各々、当業界で公知の任意の技術を用いて、信号のそれぞれの成分から計算することができる。好適な実施形態では、計算は、国際公開出願第WO2004/098376号または国際公開出願第WO2006/087696号の教示に従って行なわれ、それらの内容を参照によって本書に援用する。
【0143】
心収縮性HCを抽出するために、位相成分および絶対成分とは別個に決定される拍動形態を使用することができる。心収縮性は、時間に対するリアクタンスの一次微分dX/dtによって提示することが好ましい。
【0144】
両方の成分が有効である場合、該方法はHCを計算するために次式の1つを使用することが好ましい。
HC=a・[HC]+b・d[HC],または
HC=a・[HC]+b・d[HC]+c・d[HC],または
HC=a・[HC]+k・[HC]+b・d[HC]+c・d[HC]
式中:
、k、b、およびcは、経験的に決定することのできる重みパラメータである。
[HC]は、位相成分から計算された時間に対するリアクタンスの一次微分である。
[HC]は、絶対成分から計算された時間に対するリアクタンスの一次微分である。
d[HC]は[HC](n)−[HC](n−1)と定義され、ここで[HC](n−1)および[HC](n)は、2つの連続有効拍動(本実施例では拍動番号nおよびn−1)の絶対成分から計算された、時間に対するリアクタンスの一次微分である。
d[HC]は[HC](n)−[HC](n−1)と定義され、ここで[HC](n−1)および[HC](n)は、2つの連続有効拍動(本実施例では拍動番号nおよびn−1)の位相成分から計算された、時間に対するリアクタンスの一次微分である。
【0145】
位相成分だけが有効である場合、HCは次式を用いて計算することができる。
HC=a・[HC]+b・d[HC]
式中、aおよびbは、経験的に決定することのできる重みパラメータである。
【0146】
VETを抽出するために、位相成分および絶対成分とは別個に決定された拍動形態を使用することができる。
【0147】
両方の成分が有効である場合、該方法はVETを計算するために次式の1つを使用することが好ましい。
VET=a・[VET]+b・d[VET],または
VET=a・[VET]+b・d[VET]+c・d[VET],または
VET=a・[VET]+k・[VET]+b・d[VET]+c・d[VET]
式中:
、k、b、およびcは、経験的に決定することのできる重みパラメータである。
[VET]は、(例えば図5Aおよび5Bに関連して上述した手順に従って)位相成分から計算されたVETである。
[VET]は、(例えば図5Aおよび5Bに関連して上述した手順に従って)絶対成分から計算されたVETである。
d[VET]は[VET](n)−[VET](n−1)と定義され、ここで[VET](n−1)および[VET](n)は、2つの連続有効拍動(本実施例では拍動番号nおよびn−1)の絶対相成分から(例えば図5Aおよび5Bに関連して上述した手順に従って)計算されたVETである。
d[VET]は[VET](n)−[VET](n−1)と定義され、ここで[VET](n−1)および[VET](n)は、2つの連続有効拍動(本実施例では拍動番号nおよびn−1)の位相相成分から(例えば図5Aおよび5Bに関連して上述した手順に従って)計算されたVETである。
【0148】
位相成分だけが有効である場合、VETは次式を用いて計算することができる。
VET=a・[VET]+b・d[VET]
式中、aおよびbは、経験的に決定することのできる重みパラメータである。
【0149】
抽出されたHCおよびVETはさらに、以下で詳述するように、例えば熱性被検者から敗血症被検者を分類する目的で、HCとVETとの比率を計算するための方法によって使用することができる。
【0150】
多くの他の血流量および血液量数量を同様のやり方で計算することができ、本書に記載する詳細を提供された当業者には、CO、CI、TFC、TPRI、dCI、dTFC、dTPRI等を含め、それらに限らず、他の血流量および血液量数量に対し手順および式をいかに調整すべきかが分かるであろう。例えば、COは1回拍出量SVに被検者の心拍数を乗算することによって算出することができ、CIはCOを被検者の身体の表面積で除算することによって算出することができ、TFCは、インピーダンスが器官の体液の量に反比例するので、位相成分および絶対成分から直接得ることができ、TPRIは平均血圧(MBP)をCIで除算することによって算出することができる。
【0151】
次に図7を参照すると、それは、本発明の種々の例示的実施形態に係る診断のためのシステム30の略図である。システム30は、被検者34の器官38のインピーダンスを示す入力信号36を被検者34から受信する入力ユニット32を含む。
【0152】
本発明の種々の例示的実施形態では、システム30は、発振信号56を生成する電気発振器54と、発振信号56を被検者34に送信し、かつ被検者34の応答を検知するための複数のコンタクト電極57とを備え、ここで入力ユニット32は入力信号36の形の応答を受信する。
【0153】
システム30はさらに、入力信号36を絶対成分42および位相成分44に分離する信号分離ユニット40を備える。本発明の種々の例示的実施形態では、信号分離ユニット40はアナログ処理ユニットである。入力信号36の分離は、当業界で公知の任意の技術によって行なうことができる。例えば、一部の実施形態では、信号分離ユニット40は、絶対成分を入力信号から分離するエンベロープ識別装置46を含み、かつ一部の実施形態では、信号分離ユニット40は、入力信号と発振信号56を示す信号56aとを混合する混合器48と、混合信号50の一部分を除去し、こうして位相成分44を入力信号36から分離するフィルタ52とを含む。
【0154】
システム30は、本書で詳細に上述した通り、位相成分44に基づいて被検者のベースライン血流量を決定し、かつ絶対成分42または位相成分44と絶対成分42との結合(例えば、線形結合)に基づいて血流量の過渡変化を決定する、処理ユニット58をさらに備える。処理ユニット58はデジタルであることが好ましい。ユニット40がアナログであり、かつユニット58がデジタルである場合、ユニット40とユニット58との間の通信は、41に概略的に示すアナログ・デジタル・カードを介することが好ましい。
【0155】
本発明の一部の実施形態では、処理ユニット58は絶対成分に基づいて入力信号の外乱を識別し、かつ識別された外乱に応じてベースライン血流量を補正する。本発明の一部の実施形態では、処理ユニット58は、絶対成分に基づいて被検者の体動を識別する。本発明の一部の実施形態では、処理ユニット58は、絶対成分に基づいて被検者の筋活動を識別する。
【0156】
本発明の一部の実施形態では、処理ユニット58は、1回拍出量、心拍出量、心収縮性、心室駆出時間、心係数、胸部体液容量、総末梢血管抵抗指数、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択された少なくとも1つの数量を計算する。
【0157】
システム30は、ベースライン血流量および/または血流量の過渡変化を表示する出力ユニット59を備えることもできる。ユニット59は、例えば、コンピュータモニタ、プリンタ等のような表示装置とすることができる。好ましくは、処理ユニット58は、絶対成分42から数量のうちの少なくとも1つの数量の1つの時間依存性を計算し、位相成分44からそれぞれの数量の別の時間依存性を計算し、かつ2つの時間依存性の間の相関係数を計算する。この実施形態では、出力ユニット59は相関係数に応答してそれぞれの数量を表示する。
【0158】
本発明の一部の実施形態では、入力ユニット32は被検者34からECG信号100をも受信する。この実施形態では、処理ユニット58は入力信号36の形態を決定するためにECG信号を利用する。例えば、ユニット58は、上で詳述した通り、ECG信号100に基づいて入力信号36をセグメント化し、かつ少なくとも1つのセグメントの拍動形態を決定する。処理ユニット58はまた、上で詳述した通り、拍動形態に基づいて診断からセグメントを除外するか否かを決定することもできる。提示を明確にするために、ECG信号100は単一リードに由来するように図式的に示されているが、ECG信号は複数のリードから確立することができ、かつ、その場合には処理ユニットがそのように構成されることを、当業者は理解されるであろう。
【0159】
本発明の一部の実施形態では、処理ユニット58は、上で詳述した通り、絶対成分および位相成分に基づいて、血流量に関連付けられる特性キャパシタンスおよび特性抵抗を計算する。一部の実施形態では、出力ユニット59はC‐R平面内に等高線地図を生成する。これらの実施形態では、ユニット58は地図の等高線に識別子を提供することができ、出力ユニット59は、好ましくは等高線地図と共にこれらの識別子を表示する。識別子は等高線の形状に対応し、かつ血流量および血流量関連数量を表わすことが好ましい。
【0160】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0161】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0162】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0163】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0164】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0165】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0166】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0167】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0168】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0169】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0170】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0171】
例示的システム
本発明の一部の実施形態に係る例示的回路構成を図10に示す。該例示的回路構成は、電気正弦波を発生する発振器JSCを含む。波は任意の周波数、好ましくは無線周波数とすることができる。本実施形態に適した周波数の代表例は75KHzであるが、他の周波数も除外されない。発振器は低い振幅および位相ノイズを有することが好ましい。
【0172】
該システムはまた、発振器の信号を被検者の身体に注入しかつ身体から信号を読み出す電極の配列をも含む。本実施形態では、身体と回路構成との間に良好な電気的接続を確立するように設計された、パッドに埋め込むことのできる8個の電極がある。良好かつ安定した接続を確立するために、パッドを身体に取り付ける前に、パッドにジェルを塗布することができる。図10に示す通り、2つの電極群が存在し、1つは身体の右側に取り付けるための群、もう1つは身体の左側に取り付けるための群である。本実施例では、各電極群が4つのパッドを含み、2つは注入用、2つは身体からの信号の検知用である。注入用パッドは発振器に接続され、検知用パッドはアナログ処理ユニットに接続される。
【0173】
アナログ処理ユニットは、電極によって検知された差分信号を受信する。処理ユニットの入力インピーダンスは非常に高いことが好ましい。以下では、入力インピーダンスを無限インピーダンスとみなす。処理ユニットの目的は、電流が注入パッドによって体内に注入されたときの検知パッド間の電位差を測定することによって、身体部分の電気インピーダンスを提供することである。このインピーダンスは多くの方法で測定することができる。インピーダンスを測定するための特定の手順に対するより詳細な言及は、いかなる形でも本発明の範囲を限定するものと解釈されないことを理解されたい。
【0174】
処理ユニットにおいて、1対の検知パッドによって受信された信号は増幅およびフィルタ処理を受け、次いで複素係数によって加重され、かつさらなる処理用に単一信号を生成するために、増幅およびフィルタ処理のみを受けた第2信号を加算される。
【0175】
信号は次いで、2つの処理チャネルに分割される。振幅検出器と呼ばれる第1チャネルは、インピーダンスの絶対成分である読み出された信号のエンベロープを検出する。位相検出器と呼ばれる第2チャネルは、信号の位相成分を検出する。アナログ信号はアナログ処理ユニットによって生成され、デジタル処理ユニットによる処理のためにアナログ・デジタル変換器(A/D)によってサンプリングされる。
【0176】
インピーダンスの抵抗成分およびキャパシタンス成分
特定の理論に束縛されることなく、以下の考慮事項はインピーダンスの抵抗成分およびキャパシタンス成分の瞬間挙動および連続的挙動を導出するために使用することができる。
【0177】
振幅Iの制約正弦波電流が外側パッドによって送り込まれ、器官を通過する。インピーダンスZが内側パッド間で測定される。内側パッドは、電流Iが外側パッドによって注入されたときに電圧ZIを検知する。簡素化するために、Zは並列の抵抗器RおよびコンデンサCによって表わすことができると想定する。心臓が収縮および拡張の周期を経験するときに、特定量の血液が1つの位置から別の位置に移動し、血液のこの変位量はR、C,およびZの変化を導く。これらの変化を(特定被検者の幾つかのパラメータと共に)監視することにより、1回拍出量のような多くの血流量関連数量を測定することが可能になる。
【0178】

【0179】

【0180】
例示的診断
図11は、約260秒間の被検者の監視結果を示す。被検者は3つの技術を用いて監視した。本実施形態の技術を用いた監視を(a)と指定した曲線で示し、ゴールドスタンダードの肺動脈カテーテル法(Swan Ganz)を用いた監視を(b)と指定した曲線で示し、かつ上腕動脈ラインを介して得られた動脈圧波のパルス形状を解析するモニタを用いたCO監視(Edwards Life Sciences、 Flotrac‐Vigileo)を(c)と指定した曲線で示す。
【0181】
185分あたりで血行動態学的チャレンジが起きた。この血行動態学的チャレンジは被検者のCOを数分にわたって約40%減少させた。図11に示す通り、本実施形態の技術は、従来の技術(b)によってもたらされるベースラインとほぼ同一の正確なCOベースラインをもたらす。他方、本実施形態の技術は、血行動態学的チャレンジが発生したときに、技術(b)より応答性が高い。本実施形態の技術はまた、従来の技術(c)と比較して、より正確なベースライン結果をもたらす。したがって、従来の技術とは異なり、本実施形態は高い精度と高い応答性とを結合する。
【0182】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0183】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の器官のインピーダンスを示す入力信号の絶対成分および位相成分を取得するステップと、
前記位相成分に基づいて被検者のベースライン血流量を決定するステップと、
少なくとも前記絶対成分に基づいて血流量の過渡変化を決定するステップと、
前記ベースライン血流量および前記血流量の過渡変化を表示するステップと
を含む診断の方法。
【請求項2】
被検者から前記入力信号を取得するステップと、前記入力信号を絶対成分および位相成分に分離するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記絶対成分はエンベロープ識別装置によって前記入力信号から分離される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記位相成分は、前記入力信号を被検者に送信された無線周波数信号を示す信号と混合して混合信号を提供し、そして前記混合信号の一部分をフィルタで除去することによって、前記入力信号から分離される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記絶対成分に基づいて前記入力信号の外乱を識別するステップと、前記識別された外乱に応じて前記ベースライン血流量を補正するステップとをさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記絶対成分に基づいて被検者の体動を識別するステップをさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記絶対成分に基づいて被検者の筋活動を識別するステップをさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記血流量の過渡変化は、1分以下の期間によって特徴付けられる、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記入力信号の分離はアナログ処理ユニットによって行なわれ、前記血流量のベースラインおよび過渡変化の決定はデジタル処理ユニットによって行なわれる、請求項2〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
1回拍出量、心拍出量、心収縮性、心室駆出時間、心係数、胸部体液容量、総末梢血管抵抗指数、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択された少なくとも1つの数量を計算するステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの数量の計算は、
前記絶対成分を用いて前記少なくとも1つの数量の時間依存性を計算して第1時間依存性を提供すること、および
前記位相成分を用いて前記少なくとも1つの数量の時間依存性を計算して第2時間依存性を提供することを含み、
該方法はさらに、前記第1および第2時間依存性の間の相関係数を計算するステップと、
前記相関係数に応答して前記少なくとも1つの数量を表示するステップと
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
被検者からECG信号を取得するステップと、
前記ECG信号に基づいて前記入力信号をセグメント化して、各々が被検者の単一拍動に対応する時系列のセグメントを画定するステップと、
前記セグメントの少なくとも1つに対し、前記セグメントの拍動形態を決定するステップと、前記拍動形態に基づいて、前記少なくとも1つのセグメントを診断から除外すべきか否かを決定するステップと
をさらに含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記セグメンテーションおよび前記拍動形態の決定は、前記絶対成分および前記位相成分に対して別々に実行され、前記少なくとも1つのセグメントを除外するか否かの決定は、前記絶対成分から決定された拍動形態を、前記位相成分から決定された拍動形態と比較することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記絶対成分および前記位相成分を使用して、前記血流量に関連付けられる特性キャパシタンスおよび特性抵抗を計算するステップと、前記特性キャパシタンスおよび前記特性抵抗に応答して血管コンプライアンスを評価するステップとをさらに含む、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
データプロセッサに請求項1〜14のいずれかに記載の方法を実行するように命令するためのコード手段を含むコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
診断のためのシステムであって、
被検者の器官のインピーダンスを示す入力信号を被検者から受信するように構成された入力ユニットと、
前記入力信号を絶対成分および位相成分に分離するように構成された信号分離ユニットと、
前記位相成分に基づいて被検者のベースライン血流量を決定し、かつ少なくとも前記絶対成分に基づいて血流量の過渡変化を決定するように構成された処理ユニットと、
前記ベースライン血流量および前記血流量の過渡変化を表示するための出力ユニットとを備えるシステム。
【請求項17】
発振信号を生成するための電気発振器と、前記発振信号を被検者に送信し、かつ前記発振信号に対する被検者の応答を検知するための複数のコンタクト電極とを備え、前記入力ユニットは前記応答を受信する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記信号分離ユニットは、前記絶対成分を前記入力信号から分離するためのエンベロープ識別装置を含む、請求項16又は17に記載のシステム。
【請求項19】
前記信号分離ユニットは、前記入力信号を被検者に送信された発振信号を示す信号と混合して混合信号を提供するための混合器と、前記混合信号の一部分を除去し、それによって前記位相成分を前記入力信号から分離するためのフィルタとを含む、請求項16〜18のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
前記処理ユニットは、前記絶対成分に基づいて前記入力信号の外乱を識別し、かつ前記識別された外乱に応じて前記ベースライン血流量を補正するように構成される、請求項16〜19のいずれかに記載のシステム。
【請求項21】
前記処理ユニットは、前記絶対成分に基づいて被検者の体動を識別するように構成される、請求項16〜20のいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
前記処理ユニットは、前記絶対成分に基づいて被検者の筋活動を識別するように構成される、請求項16〜20のいずれかに記載のシステム。
【請求項23】
前記血流量の過渡変化は1分以下の期間によって特徴付けられる、請求項16〜22のいずれかに記載のシステム。
【請求項24】
前記信号分離ユニットはアナログであり、前記処理ユニットはデジタルである、請求項16〜23のいずれかに記載のシステム。
【請求項25】
前記処理ユニットは、1回拍出量、心拍出量、心収縮性、心室駆出時間、心係数、胸部体液容量、総末梢血管抵抗指数、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択された少なくとも1つの数量を計算するように構成される、請求項16〜24のいずれかに記載のシステム。
【請求項26】
前記処理ユニットは、前記絶対成分を用いて前記少なくとも1つの数量の時間依存性を計算して第1時間依存性を提供し、前記位相成分を用いて前記少なくとも1つの数量の時間依存性を計算して第2時間依存性を提供し、かつ前記第1および前記第2時間依存性の間の相関係数を計算するように構成され、前記出力ユニットは前記相関係数に応答して前記少なくとも1つの数量を表示する、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記入力ユニットは被検者からECG信号を受信するように構成され、前記処理ユニットは、前記ECG信号に基づいて前記入力信号をセグメント化して、各々が被検者の単一拍動に対応する時系列のセグメントを画定し、かつ前記セグメントの少なくとも1つに対し、前記セグメントの拍動形態を決定し、かつ前記拍動形態に基づいて、前記少なくとも1つのセグメントを診断から除外するか否かを決定するように構成される、請求項16〜26のいずれかに記載のシステム。
【請求項28】
前記セグメンテーションおよび前記拍動形態の決定は、前記絶対成分および前記位相成分に対して別々に実行され、前記少なくとも1つのセグメントを除外するか否かの決定は、前記絶対成分から決定された拍動形態を、前記位相成分から決定された拍動形態と比較することを含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記処理ユニットは、前記絶対成分および前記位相成分の使用に基づいて前記血流量に関連付けられる特性キャパシタンスおよび特性抵抗を計算し、かつ前記特性キャパシタンスおよび前記特性抵抗に応答して血管コンプライアンスを評価するように構成される、請求項16〜28のいずれかに記載のシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3A−3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図5A−5B】
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【図5C−5D】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−502724(P2012−502724A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527470(P2011−527470)
【出願日】平成21年9月22日(2009.9.22)
【国際出願番号】PCT/IL2009/000916
【国際公開番号】WO2010/032252
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(511068463)チーター メディカル インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】