説明

血液をろ過するための装置、システム及び方法

【課題】通常の血液透析治療を受けるまでの間、患者の血液から所望の予め定められた量の液体を効果的にろ過する。
【解決手段】血液をろ過するための装置(5)であり、この装置は血液用フィルターと、患者の動脈に接続可能でろ過される血液のための入り口(8)と、患者の静脈に接続可能でろ過された血液のための出口(9)と、を有するフィルターユニット(7)と、このフィルターユニットを収容し、血液のろ過工程中にフィルターを通過するろ液を受けるろ液容器(6)と、からなり、このろ液容器は、密閉式の容器であり、ろ液で満たされた状態で血液フィルターに逆圧を生じさせてろ過工程を中断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液用フィルターと、患者の動脈に接続可能であってろ過される血液の入り口と、患者の静脈に接続可能であってろ過された血液の出口と、を含むフィルターユニットと、ろ過工程中に前記血液フィルターを通過するろ液を受けるためのろ液容器とを含み、このろ液容器は、ろ液で満たされた状態で前記血液フィルターに亘って逆圧を発生させるために設けられた密閉容器であり、この逆圧によってろ過工程が中断される、血液をろ過する装置に関する。また本発明は、当該装置を含む血液の限外ろ過(ultra filtration)のためのシステムに関する。さらに本発明は、患者の血液をろ過する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性の腎臓疾患を患っている患者を血液透析で治療することは以前から知られている。血液透析治療は、通常、病院の血液透析治療室で1週間に3回の割合で行われ、これにより血液が浄化され、体内の液体バランスが、調整される。
【0003】
血液透析の条件の1つとして、血液が充分流れている患者の血流(bloodstream)への接続がある。この接続は、血液系(blood system)内にカテーテルを挿入するか、または、人工の腎臓に接続されたインプラント式の血流進入装置を用いて行われる。これらの装置は、多くの治療に繰り返し使用される。
【0004】
腎臓に疾患を有する患者の腎臓は、通常、尿を製することができないので、患者は、普通、体内に過剰に液体成分が溜まった状態で血液透析治療室に現れる。血液透析治療が終わると今度は、体内の液体成分が不足してしまう。このように体内の液体成分量が変動すると患者が治療を受けている腎臓の疾患以外にも重大な問題が生じる場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記問題点の解決策を提供し、特に慢性的腎臓疾患の診断を受けた透析を必要とする患者の体内の液体バランスを良好に制御できる簡単で経済的でしかも効果的な解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、血液用フィルターと、患者の動脈に接続可能であってろ過される血液の入り口と、患者の静脈に接続可能であってろ過された血液の出口と、を含むフィルターユニットと、ろ過工程中に前記フィルターユニットを通過する血液からろ過されたろ液を受けるためのろ液容器とを含み、このろ液容器は、ろ液で満たされた状態で前記血液フィルターに亘って逆圧を発生させるために設けられた密閉容器であり、この逆圧によってろ過工程が中断される、血液をろ過する装置において、ろ液容器がその上部に前記フィルターユニットを収容し、少なくともその下部にろ液貯留部分を有することを特徴とする血液ろ過装置によって達成される。
【0007】
このようにして通常の血液透析治療を受けるまでの間、患者の血液から所望の予め定められた量の液体を効果的にろ過することが可能になる。これは治療と治療の間の液体バランスを良好に制御する重要な機会を供し、液体レベルが長い間平衡になるので患者に大きな利点をもたらす。この手段は、体内の液体量が変動することによって生じる緊張を根本的に和らげることができる。
【0008】
本発明の装置は、透析の施設外でも使用できるように簡単に小型化することができる。患者は、従って、その装置を使用するための簡単なトレーニングだけで例えば家庭でそして移動中でさえも使用することができる。これによって患者は、治療の間ベッドに寝ていたり、特別な固定装置に体を固定したりしなくてよいのでこの装置の使用中、料理や掃除など他のことも同時にすることができる。特にフィルターユニットを収容するろ液容器を設けたことによって装置の製造および取り扱いが容易になっただけでなく、実際の使用方法も簡単になる。
【0009】
内部に空気孔を有するろ液を集めるための実質的に剛性の容器を設けることによって、事実上あらゆる環境において容易に取り扱うことが可能な丈夫な装置が製造でき、提供できる。
【0010】
ろ液容器として、空の状態でつぶすことが可能な可撓性の伸縮自在な容器を設けることによって搬送、貯蔵およびこれらに関連する取り扱いが容易になる。
【0011】
本発明の装置は、使い捨ての一体ユニットを含む場合、さらに製造、取り扱いおよび使用が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を以下に添付図面を参照し、具体的に説明する。
【0013】
図1は、腎臓疾患を患っている透析患者が、血液ろ過装置5にホース3、4を介して接続されたインプラント式血流進入装置2を支持している状態を示している。血流進入装置2は、下記特許文献1に開示されているようなインプラント式装置であるのが好ましい。
【特許文献1】国際公開第WO99/20338号パンフレット
【0014】
当該進入装置は、「Hemaport 605」という登録商標で市販されている。この装置は、外部回路を介して血液を連続的に流れるようにするために動脈と静脈との間にかなりの圧力差を生じさせる。また充分な圧力差を生じさせる血液進入装置を本発明と共に使用してもよい。
【0015】
これに関連して患者の血流に侵入するために従来使用されてきた代用血管および管状器官(fistulas)では、本発明による血液ろ過装置を介して血液を流れるようにするには充分な圧力差が生じない。
【0016】
図1に示した態様では、血液ろ過装置は、締結ストラップ16を使用して患者1に保持される剛性の容器を含む。
【0017】
図2は、本発明の血液ろ過装置5をより具体的に示している。ここでは血液ろ過装置5は、上部にフィルターユニット7を含むろ液容器6を含んでいる。フィルターユニット7は、入り口と出口の領域に閉じた端部を有する実質的に管状で中空の限外ろ過フィルターから構成されている。入り口と接続するためのホース4が、フィルターユニットの内部に案内する入り口ニップル8に接続されている。
【0018】
フィルターユニット7の出口端部では、出口と接続するホース3が出口ニップル9と接続している。入り口および出口に接続するホース4、3は、それぞれ図1に示した血流進入装置2の動脈と静脈側に接続される。入り口および出口側のニップル8、9は、ろ液容器6の壁部の貫通孔(図示せず)に係合させることによってろ液容器に対してフィルターユニットを位置せしめることにも貢献する。
【0019】
血液ろ過装置を使用する際、血液は、入り口ニップル8からフィルターユニット7へと流れ、そこで血液の液体成分の一部がフィルターユニット7のフィルター壁を介してろ液としてろ過され、ろ液容器6の内側に集められる。血液の残りの成分は、出口ニップル9を介して接続ホース3へと排出され、図1に示す血流進入装置2を通って患者の血流へと戻される。
【0020】
フィルターユニット7のフィルターの特性は、上記液体成分の適量がろ液としてろ過されるように選択される。これは、限外ろ過フィルターのために使用時の特定の条件および用途に適用するように選択された材料特性の好適なフィルター領域を選択することによって試験することができる。考慮すべき条件の一例としては、患者の体重が挙げられる。
【0021】
ろ液容器6が、剛性または半剛性の容器である場合、ろ液容器中に存在するガスまたは空気をろ液のためのスペースを確保するために容器から逃がさなければならない。そのために少なくとも1つの空気孔10が、ろ液容器6の上部領域の好適な場所に設けられている。
【0022】
空気孔10には、好ましくはガスを逃がす間に液体が空気孔を介して漏れないように、ガスまたは空気は透過させるが、液体は透過させない膜を含む。これとは別に空気をろ液容器から逃がし、液体を容器中に留めるために、液体制御式のフラップ−バルブを使用することも可能である。
【0023】
ろ液容器6の容量は、例えば患者の体重および具体的な必要性において取り出される必要のある液体の量に応じて、0.2乃至1リットルの容量の範囲で選択することができる。
【0024】
ろ液容器6は、その内部のろ液12のレベル13が目視できるように半透明であることが好ましい。ろ液容器6は、ろ液レベル13を読むためのスケール11を有してもよい。
【0025】
本発明では、所望の量のろ液を血流から取り出す場合、ろ液容器6は、その所望の量のろ液で完全に満たされる。これによってフィルターユニットのフィルター壁に亘って逆圧が生じるのでフィルターユニット7のろ過作業が中断される。そしてこの中断により次に入り口ニップルを介してフィルターユニット7に入るすべての血液は、出口ニップル9を介して流れる。そこから血液は、出口接続ホース3および血流侵入装置2を介して血流中へと戻される(図1参照)。
【0026】
これとは別にろ液12が空気孔10より上のレベルに達したときに逆圧を発生させて、ろ液レベル13とフィルターユニット7との間の空気を閉じ込めることも可能である。このように空気を閉じ込めることによってろ過作用を終わらせるために充分な逆圧がフィルターの壁に亘って生じる。
【0027】
図3には可撓性の折りたたみ可能なパウチ型ろ液容器14を示す。この場合、パウチ型ろ液容器14が、フィルターユニット7の壁を介して利用できる圧力によってこれ以上膨張することができない程度に膨張したときに、ろ過作用を終わらせるのに充分な大きさの逆圧が、生じる。またこの場合、フィルターユニットはろ液容器14の内側に設置される。
【0028】
図4は図3を参照して説明したものと実質的に類似のろ液容器14が剛性外方容器15に内側に配置されている態様を示す。外側容器15は、必ずしも水密である必要はなく、可撓性の容器を保護し、可能であれば可撓性容器の容量を制限するものであればよい。
【0029】
本発明の血液ろ過のためのシステムのろ液容器、フィルターユニット、接続ホースおよび血流進入装置2と協働する接続ふたなどのすべての部材は、使用後廃棄可能であるものが好ましい。この接続ふたは上記特許文献1に記載されている種のものであってもよい。
【0030】
本発明を構成する部材に使用する材料は、医療目的のための要件を満たすものでなければならない。フィルターユニットに使用するフィルター材料は、限外ろ過フィルターなどの血液のろ過に通常使用する種のものであってもよい。
【0031】
本発明は、患者の血液から液体成分をろ過するものとしてここでは説明した。しかしながら、液体成分はまた特定の固体物質を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】患者によって使用されている本発明のシステムを示す。
【図2】図1のシステムに含まれる血液をろ過するための装置を示す。
【図3】本発明の装置の変型例を示す。
【図4】本発明の装置の別の変型例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液用フィルターと、患者の動脈に接続可能であってろ過される血液の入り口と、患者の静脈に接続可能であってろ過された血液の出口と、を含むフィルターユニット(7)と、ろ過工程中に前記フィルターユニットを通過する血液からろ過されたろ液(12)を受けるためのろ液容器(6、14)とを含み、このろ液容器は、ろ液で満たされた状態で前記血液フィルターに亘って逆圧を発生させるために設けられた密閉容器であり、この逆圧によってろ過工程が中断される、血液をろ過する装置(5)において、前記ろ液容器がその上部に前記フィルターユニットを収容し、少なくともその下部にろ液貯留部分を有し、さらに前記ろ液容器は、ろ液を集めるための実質的に剛性の容器であり、ろ過工程中この容器から空気を逃がすための空気孔(10)が設けられていることを特徴とする血液ろ過装置。
【請求項2】
血液用フィルターと、患者の動脈に接続可能であってろ過される血液の入り口と、患者の静脈に接続可能であってろ過された血液の出口と、を含むフィルターユニット(7)と、ろ過工程中に前記フィルターユニットを通過する血液からろ過されたろ液(12)を受けるためのろ液容器(6、14)とを含み、このろ液容器は、ろ液で満たされた状態で前記血液フィルターに亘って逆圧を発生させるために設けられた密閉容器であり、この逆圧によってろ過工程が中断される、血液をろ過する装置(5)において、前記ろ液容器がその上部に前記フィルターユニットを収容し、少なくともその下部にろ液貯留部分を有し、さらに前記ろ液容器は、空の状態では折りたたみ可能で、可撓性の膨張自在の容器であることを特徴とする血液ろ過装置。
【請求項3】
前記空気孔が空気透過性であって液体を透過させない膜を含むことを特徴とする請求項1記載の血液ろ過装置。
【請求項4】
前記可撓性の膨張自在な容器が、外方剛性容器(15)内に収容されることを特徴とする請求項2記載の血液ろ過装置。
【請求項5】
前記フィルターユニットとろ液容器が、使い捨てユニットであることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の血液ろ過装置。
【請求項6】
前記血液フィルターが、実質的に管状のフィルターであることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の血液ろ過装置。
【請求項7】
前記血液フィルターが、限外ろ過フィルターであることを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載の血液ろ過装置。
【請求項8】
前記ろ液容器の容量が、0.2乃至1リットルの範囲で選択されることを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載の血液ろ過装置。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれか1項記載の血液ろ過装置を含む血液を限外ろ過するためのシステム。
【請求項10】
インプラント式の血流進入装置(2)を含むことを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項11】
血液用フィルターと、入り口ニップルを介して患者の動脈に接続可能であってろ過される血液の入り口と、出口ニップルを介して患者の静脈に接続可能であってろ過された血液の出口と、を含むフィルターユニット(7)と、ろ過工程中に前記フィルターユニットを通過する血液からろ過されたろ液(12)を受けるためのろ液容器(6、14)とを含み、前記フィルターユニットは、前記入り口ニップル及び出口ニップルに接続される該フィルターユニットの入り口と出口の領域に閉じた端部を有し、前記ろ液容器は、ろ液で満たされた状態で前記血液フィルターに亘って逆圧を発生させるために設けられた密閉容器であり、この逆圧によってろ過工程が中断される、血液をろ過する装置(5)において、前記ろ液容器がその上部に前記フィルターユニットを収容し、少なくともその下部にろ液貯留部分を有することを特徴とする血液ろ過装置。
【請求項12】
入り口と出口を有するフィルターユニット(7)と、ろ過工程中に前記フィルターユニットを通過する血液からろ過されたろ液(12)を受けるためのろ液容器(6、14)であって、前記ろ液容器はその上部に前記フィルターユニットを収容し、前記フィルターユニットは、入り口ニップル及び出口ニップルに接続される該フィルターユニットの入り口と出口の領域に閉じた端部を有した、フィルターユニット(7)とろ液容器(6、14)とを供する工程と、
患者の動脈と前記フィルターユニットの入り口とを接続し、さらに患者の静脈と前記フィルターユニットの出口とを接続する工程と、
前記フィルターユニットを通して血液の液体成分の一部をろ液としてろ過するために充分な圧力差を生じさせる工程と、
少なくとも前記ろ液容器の下部にろ液を集める工程と、
前記ろ液容器内の血液フィルターに亘って逆圧が発生した際に、ろ過工程が中断される工程と、
を含む、患者の血液をろ過する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−221058(P2010−221058A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131999(P2010−131999)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【分割の表示】特願2004−505125(P2004−505125)の分割
【原出願日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【出願人】(500184741)ヘマプール アーベー (1)
【氏名又は名称原語表記】HEMAPURE AB
【Fターム(参考)】