説明

血液体外循環装置及びプライミング方法

【課題】低廉で簡易な構成を有しつつ自動プライミング処理を実現させることができる血液体外循環装置を提供する。
【解決手段】血液処理器10と、体内から取り出された血液を血液処理器10に供給するための血液供給流路20と、血液供給流路20に設けられ正逆回転可能な血液ポンプ30と、プライミング液を血液供給流路20に供給するためのプライミング液供給源40と、血液供給流路20にプライミング液供給源40を連結するプライミング液供給流路41と、血液処理器10で処理された血液を体内に返送するための血液返送流路50と、血液返送流路50に設けられたドリップチャンバ60と、を備える血液体外循環装置1であって、血液供給流路20の端部20aと血液返送流路50の端部50aとを接続し、プライミング液及び空気を外部に排出するための排出流路70をドリップチャンバ60に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液体外循環装置及びプライミング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、患者の体内から血液を取り出しこの血液に特定の処理を施して体内に戻す血液体外循環療法が採用されている。このような血液体外循環療法で用いられる血液体外循環装置は、体内から取り出した血液を循環させて体内に戻すための血液回路と、取り出した血液を浄化する透析器等の血液処理器と、を備えるものである。
【0003】
このような血液体外循環装置を用いて血液体外循環療法を実施する前には、使用する血液回路や血液処理器の内部を生理食塩水や透析液等の清浄な液体で洗浄し、液体を充填する「プライミング」という処理を行うのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。近年においては、初期充填液体が充填されたウェットタイプの血液処理器をドライな血液回路に取り付けて施行するプライミング処理と、初期充填液体が充填されていないドライタイプの血液処理器をドライな血液回路に取り付けて施行するプライミング処理と、が実用化されている。
【0004】
血液透析療法においては、例えば、所定量の電解質液を利用して、血液透析器及び血液回路(血液供給流路及び血液返送流路)のプライミング処理を行う。この際には、血液透析器及び血液回路内の空気を排出し、電解質液で血液回路を満たす必要がある。これは、血液透析治療の開始時に血液供給流路の先端に接続されている動脈穿刺針を通して体内から血液回路に血液を導き出す際に、血液回路内にあった空気が血液返送流路の先端に接続された静脈穿刺針を通して患者の体内に入らないようにするためである。
【0005】
このようなプライミング処理は比較的煩雑で長い時間を要するものであり、従来は多くの人員を必要としていた。このため、近年においては、プライミング処理を自動的に行うための技術が種々提案されている。
【0006】
例えば、図6に示すように、血液を浄化する血液透析器110と、血液透析器110に対して体内から取り出された血液を供給するための血液供給流路120と、血液供給流路120に設けられ血液を血液透析器110に送出するための血液ポンプ130と、血液供給流路120に電解質液を供給するための電解質液供給源140と、血液透析治療中の血液流通方向において血液ポンプ130よりも上流側に位置する血液供給流路120の部位に電解質液供給源140を連結する電解質液供給流路150と、血液透析器110で浄化された血液を体内に返送するための血液返送流路160と、血液供給流路120を流れる気泡が血液透析器110内に流入することを防止するための動脈側ドリップチャンバ170と、血液返送流路160を流れる気泡が体内に流入することを防止するための静脈側ドリップチャンバ180と、を備える血液透析装置100においては、以下のような手順で自動プライミング処理が実施されている。
【0007】
まず、血液ポンプ130として、正逆回転可能なローラポンプを採用し、動脈側ドリップチャンバ170及び静脈側ドリップチャンバ180には、それぞれ、空気を排出するための空気排出ライン171・181を設ける。そして、血液供給流路120の血液透析器110側と反対側の端部121と、血液返送流路160の血液透析器110側と反対側の端部161と、を接続して血液回路をループ状にする。その後、血液透析治療中の血液流通方向において電解質液供給流路150と血液供給流路120との接続部122よりも下流側の血液供給流路120内の空気を、動脈側ドリップチャンバ170に設けられた空気排出ライン171を通して排出する。一方、血液透析治療中の血液流通方向において電解質液供給流路150と血液供給流路120との接続部122よりも上流側の血液供給流路120内の空気を、静脈側ドリップチャンバ180に設けられた空気排出ライン181を通して排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−190068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前記したような自動プライミング処理可能な血液透析装置100においては、図6に示すように、動脈側ドリップチャンバ170側と静脈側ドリップチャンバ180側との双方に、空気排出ライン(171・181)を通して排出される空気の量を制御する機構(172・182)を設ける必要があった。このため、装置の構成が複雑になるとともに、装置が高価なものとなっていた。また、動脈側ドリップチャンバが設けられていない血液回路においては、前記したような手順で自動プライミング処理を行うことができないという問題も存在していた。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、低廉で簡易な構成(例えば動脈側ドリップチャンバが設けられていない構成)を有しつつ自動プライミング処理を実現させることができる血液体外循環装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明に係る血液体外循環装置は、血液浄化膜を介して血液が流れる血液流路及び透析液が流れる透析液流路が形成されて成る、血液を浄化するための血液処理器と、体内から取り出された血液を血液処理器に供給するための血液供給流路と、血液供給流路に設けられ血液を血液処理器に送出するための正逆回転可能な血液ポンプと、プライミング液を血液供給流路に供給するためのプライミング液供給源と、血液流通方向において血液ポンプの上流側に位置する血液供給流路の部位にプライミング液供給源を連結するプライミング液供給流路と、血液処理器で処理された血液を体内に返送するための血液返送流路と、血液返送流路に設けられ血液返送流路を流れる気泡が体内に流入することを防止するためのドリップチャンバと、を備えており、さらに、血液供給流路の血液処理器側と反対側の端部と、血液返送流路の血液処理器側とは反対側の端部と、が接続されるように構成され、ドリップチャンバにはプライミング液及び/又は空気を外部に排出するための排出流路が設けられているものである。
【0012】
かかる構成を採用すると、血液流通方向において血液ポンプの下流側にある空気を、血液ポンプの逆回転駆動により血液ポンプの上流側に移動させることができる。さらに、この空気を、プライミング液供給源からプライミング液供給流路を介して血液供給流路へと供給されるプライミング液によって置換して、血液返送流路の(静脈側)ドリップチャンバに設けられた排出流路から外部に排出することができる。従って、動脈側ドリップチャンバを設ける必要がなくなるため、血液体外循環装置の構成の簡素化及び低廉化を実現させつつ自動プライミング処理を実施することが可能となる。
【0013】
本発明に係る血液体外循環装置において、排出流路から必要な量の空気の排出が終了したことを検知する空気排出終了センサをさらに備えることができる。
【0014】
前記空気排出終了センサは、排出流路から空気の後にプライミング液が排出されたことを検知するプライミング液センサであってもよい。
【0015】
前記空気排出終了センサが、プライミング液供給源の重量を測定して排出流路から排出すべき空気と同容積のプライミング液の質量が減少したことを検知する重量センサであってもよい。
【0016】
前記空気排出終了センサが、排出流路から排出すべき空気と同容積のプライミング液を供給したことを検知する、プライミング液供給流路に設けられたプライミング液供給ポンプと、このプライミング液供給ポンプを制御するための制御装置と、から構成されていてもよい。
【0017】
前記空気排出終了センサが、ドリップチャンバ内の圧力を測定するための圧力測定装置であってもよい。
【0018】
かかる構成では、排出流路から空気が排出されている場合には圧力測定装置によるドリップチャンバ内の圧力の測定値は大気圧であるが、排出流路からの空気の排出が終了し、引き続いて、プライミング液が排出され始めると、排出流路の流量抵抗のため、圧力測定装置によるドリップチャンバ内の圧力の測定値は大気圧よりも高いものとなる。したがって、かかる構成では、圧力測定装置によるドリップチャンバ内の圧力が、大気圧からより高いレベルに上昇したことをもって、排出流路から必要な量の空気の排出が終了したことを検知することができる。
【0019】
また、本発明に係る血液体外循環装置において、排出流路に電磁弁を設け、空気排出終了センサで必要な量の空気の排出が終了したことを検知した場合に血液ポンプ及び電磁弁が連動するように構成することができる。
【0020】
かかる構成を採用すると、排出流路からの必要な量の空気の排出が終了したことを空気排出終了センサが検知した場合に、血液ポンプ及び電磁弁を連動させることができるので、自動プライミング処理の次の工程に効率良く移行することが可能となる。
【0021】
本発明に係る第一のプライミング方法は、血液を特定の態様で処理する、初期充填液体で充填されていない血液処理器と、体内から取り出された血液を血液処理器に供給するための血液供給流路と、血液供給流路に設けられ血液を血液処理器に送出するための正逆回転可能な血液ポンプと、プライミング液を血液供給流路に供給するためのプライミング液供給源と、血液流通方向において血液ポンプの上流側に位置する血液供給流路の部位にプライミング液供給源を連結するプライミング液供給流路と、血液処理器で処理された血液を体内に返送するための血液返送流路と、血液返送流路に設けられ血液返送流路を流れる気泡が体内に流入することを防止するためのドリップチャンバと、プライミング液及び空気を前記ドリップチャンバから外部に排出するための排出流路と、を備えている血液体外循環装置を用いたプライミング方法であって、治療前のプライミング時、血液供給流路の血液処理器側と反対側の端部と、血液返送流路の血液処理器側とは反対側の端部と、を接続して連通可能とするとともに、血液処理器を血液導入口が上方を向いた状態にし、さらに、血液ポンプを停止させた状態で、プライミング液供給源からプライミング液供給流路を通って血液供給流路に供給されるプライミング液で、血液供給流路とプライミング液供給流路との接続部からドリップチャンバまでの間の血液流路(血液供給流路及び血液返送流路)を充填するとともに、血液供給流路とプライミング液供給流路との接続部からドリップチャンバまでの間の血液流路に存在していた空気を排出流路から外部に排出させる第1プライミング工程と、血液ポンプを逆回転させて、血液供給流路とプライミング液供給流路との接続部とドリップチャンバとの間の血液流路のプライミング液及びドリップチャンバに存在するプライミング液を、血流方向においてドリップチャンバよりも上流側に流通させるとともに、血液供給流路におけるプライミング液供給流路との接続部よりも血流方向において下流側にある空気を、接続部とドリップチャンバとの間の血液流路及びドリップチャンバに移動させる第2プライミング工程と、プライミング液供給源からプライミング液供給流路を通して血液供給流路にプライミング液を供給することにより、接続部とドリップチャンバとの間の血液流路に移動した空気を排出流路から外部に排出する第3プライミング工程と、プライミング液供給源からプライミング液供給流路を通して血液供給流路に供給されるプライミング液を、血液ポンプを正回転又は逆回転させつつ、排出流路から外部に排出させる第4プライミング工程と、を含むものである。
【0022】
本発明に係る第二のプライミング方法は、血液を特定の態様で処理する、初期充填液体が充填された血液処理器と、体内から取り出された血液を血液処理器に供給するための血液供給流路と、血液供給流路に設けられ血液を血液処理器に送出するための正逆回転可能な血液ポンプと、プライミング液を血液供給流路に供給するためのプライミング液供給源と、血液流通方向において血液ポンプの上流側に位置する血液供給流路の部位にプライミング液供給源を連結するプライミング液供給流路と、血液処理器で処理された血液を体内に返送するための血液返送流路と、血液返送流路に設けられ血液返送流路を流れる気泡が体内に流入することを防止するためのドリップチャンバと、プライミング液及び空気をドリップチャンバから外部に排出するための排出流路と、を備えている血液体外循環装置を用いたプライミング方法であって、治療前のプライミング時、血液供給流路の血液処理器側と反対側の端部と、血液返送流路の血液処理器側とは反対側の端部と、を接続して連通可能とするとともに、血液処理器を血液導入口が上方を向いた状態にし、さらに、血液ポンプを停止させた状態で、プライミング液供給源からプライミング液供給流路を通って血液供給流路に供給されるプライミング液で、血液供給流路とプライミング液供給流路との接続部からドリップチャンバまでの間の血液流路(血液供給流路及び血液返送流路)を充填するとともに、血液供給流路とプライミング液供給流路との接続部からドリップチャンバまでの間の血液流路に存在していた空気を排出流路から外部に排出させる第1プライミング工程と、血液ポンプを正回転させて、血液処理器を充填していた充填液を血液流出口からドリップチャンバに導く第2プライミング工程と、血液ポンプを逆回転させて、血液供給流路とプライミング液供給流路との接続部とドリップチャンバとの間の血液流路のプライミング液及びドリップチャンバに存在するプライミング液を、血流方向においてドリップチャンバよりも上流側に流通させるとともに、血液供給流路におけるプライミング液供給流路との接続部よりも血流方向において下流側にある空気を、接続部とドリップチャンバとの間の血液流路及びドリップチャンバに移動させる第3プライミング工程と、プライミング液供給源からプライミング液供給流路を通して血液供給流路にプライミング液を供給することにより、接続部とドリップチャンバとの間の血液流路に移動した空気を排出流路から外部に排出する第4プライミング工程と、プライミング液供給源からプライミング液供給流路を通して血液供給流路に供給されるプライミング液を、血液ポンプを正回転又は逆回転させつつ、排出流路から外部に排出させる第5プライミング工程と、を含むものである。
【0023】
初期充填液体が充填された血液処理器のプライミングにあっては、充填液体が充填された血液処理器に、一旦、空気が流入すると、流入した空気は、空気塞栓となり、血液透析療法中に、血液処理器における血液の凝固の原因となる。しかるに、本発明に係る第二の(初期充填液体が充填された血液処理器の)プライミング方法においては、プライミング液供給源から血液供給流路に供給されるプライミング液で、血液供給流路とプライミング液供給流路との接続部からドリップチャンバまでの間の血液流回路を充填した後、血液ポンプを正回転させて、血液処理器を予め充填していた充填液の一部を、血液処理器の血液流出口からドリップチャンバに導く工程を加え、以て、血液処理器とドリップチャンバとの間の空気をドリップチャンバに設けられた排出流路から外部に排出するようにしている。かかる工程により、本プライミンク方法においては、予め充填液体が充填されていた血液処理器に空気が流入することは、有効に防止されているのである。
【0024】
本発明に係る第一(第二)のプライミング方法の第4(第5)プライミング工程において、プライミング液供給源からプライミング液供給流路を通して血液供給流路に供給されるプライミング液を、血液ポンプを正回転又は逆回転させつつ、血液処理器から血液浄化膜を介して血液流路から透析液流路へ排出することもできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、低廉で簡易な構成(例えば動脈側ドリップチャンバが設けられていない構成)を有しつつ自動プライミング処理を実現させることができる血液体外循環装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一実施形態に係る血液透析装置(血液体外循環装置)の構成を説明するための構成図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る血液透析装置(血液体外循環装置)を用いた自動プライミング処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第二実施形態に係る血液透析装置(血液体外循環装置)の構成を説明するための構成図である。
【図4】本発明の第三実施形態に係る血液透析装置(血液体外循環装置)の構成を説明するための構成図である。
【図5】本発明の第二及び第三実施形態に係る血液透析装置(血液体外循環装置)を用いた自動プライミング処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】従来の血液透析装置の構成を説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下の各実施形態においては、本発明に係る血液体外循環装置の例として血液透析装置を挙げて説明することとする。
【0028】
<第一実施形態>
最初に、図1及び図2を用いて、本発明の第一実施形態について説明する。
【0029】
まず、図1を用いて、本実施形態に係る血液透析装置1の構成について説明する。血液透析装置1は、血液を浄化する血液透析器10と、血液透析器10に対して体内から取り出された血液を供給するための血液供給流路20と、血液供給流路20に設けられ、血液を送出するための血液ポンプ30と、を備えている。血液供給流路20は、血液透析中の血液流通方向において血液ポンプ30よりも上流側に位置する上流側血液供給流路21と、血液透析中の血液流通方向において血液ポンプ30よりも下流側に位置する下流側血液供給流路22と、から構成されている。
【0030】
また、血液透析装置1は、電解質液供給源(プライミング液供給源)40が電解質液供給流路(プライミング液供給流路)41を介して、血液透析治療中の血液流通方向において血液ポンプ30よりも上流側に位置する上流側血液供給流路21の部位(接続部21a)に連結されている。血液ポンプ30としては、プライミング中に、電解質液(プライミング液)を、血液透析治療中の血液流通方向において上流側にも下流側にも流通させることができるように正逆回転可能なローラポンプが採用されている。
【0031】
また、血液透析装置1は、血液透析器10で浄化された血液を体内に返送するための血液返送流路50と、血液返送流路50を流れる気泡が体内に流入することを防止するためのドリップチャンバ60と、を備えている。血液返送流路50は、血液透析中の血液流通方向においてドリップチャンバ60よりも上流側に位置する上流側血液返送流路51と、血液透析中の血液流通方向においてドリップチャンバ60よりも下流側に位置する下流側血液返送流路52と、から構成されている。
【0032】
また、血液透析装置1は、ドリップチャンバ60から電解質液、及び/又は、空気を排出するための空気・電解質液排出ライン(排出流路)70が設けられている。空気・電解質液排出ライン70には、空気・電解質液排出ライン70を開閉するための電磁弁71が設けられている。空気・電解質液排出ライン70の下流側には、排液受け72を介して、電解質液センサ(プライミング液センサ)80が設置されている。電解質液センサ80は、本発明における空気排出終了センサとして機能するものである。
【0033】
本実施形態における電解質液センサ80は、比較的小容量の容器81と、この容器81内の上部に設けられた二本の電極82a・82bと、二本の電極82a・82bが電解質液に浸るほどに容器81内の電解質液の液面が上昇するとサイフォンの原理により容器81内の電解質液を外部に排出するサイフォンシステム83と、を有している。電解質液センサ80では、容器81内に空気・電解質液排出ライン70から流出してきた電解質液が流入すると、その液面が上昇し、やがて二本の電極82a・82bが電解質液に浸ることによって電極間に電気が流れるようになり、同時にサイフォンシステム83により容器81内に貯留した電解質液が排出されて、電解質液が次回流入したときにこれを検知することが可能な状態になっている。そして、電解質液センサ80は、血液ポンプ30、電磁弁42及び電磁弁71と連動するように構成されており、効率良く次の工程に移行できるようになっている。
【0034】
次に、図2のフローチャートを用いて、本実施形態に係る血液透析装置1において自動プライミング処理を実施する場合の各工程について説明する。本プライミング処理は、電解質液が充填された(いわゆるウェットタイプの)血液透析器10を含む血液回路のプライミング処理である。
【0035】
なお、予め充填液が充填された状態の血液透析器のプライミング処理を行う際に、血液透析器内の充填液の一部が空気に置き換えられた場合には、空気に押されて血液透析器の外に出た充填液を再び血液透析器内に戻しても何ら問題は生じない。しかし、血液透析器内の充填液の全てが空気に置き換えられた場合には、空気に押されて血液透析器の外に出た充填液を再び血液透析器内に戻すと、気泡が血液透析器内の血液流路を閉塞する現象(いわゆるエアロック)が生じ、血液透析器はもはや患者に使用できない状態となる。このため、予め充填液が充填された状態の血液透析器のプライミング処理を行う場合には、各工程の最中に血液透析器内の充填液の全てが空気に置き換わる、という事態を回避する必要がある。
【0036】
まず、プライミング処理に先立って、血液供給流路20の血液透析器10側と反対側の端部である動脈側アクセス接続部20aと、血液返送流路50の血液透析器10側と反対側の端部である静脈側アクセス接続部50aと、をコネクタ90を用いて接続して血液回路をループ状とする(閉回路形成工程:S1)。
【0037】
次いで、血液ポンプ30が停止しており空気・電解質液排出ライン70に設けられた電磁弁71が開かれた状態で、電解質液供給流路41に設けられた電磁弁42を開く。これにより、電解質液供給源40に保存されていた電解質液を、重力に従って電解質液供給流路41を自然流下させて上流側血液供給流路21に流入させる。このように流入させた電解質液により、上流側血液供給流路21内(電解質液供給流路41と上流側血液供給流路21との接続部21aよりも上流側の部分)に存在していた空気と、下流側血液返送流路52内に存在していた空気と、がドリップチャンバ60に設けられている空気・電解質液排出ライン70を通って血液透析装置1の外部に排出される。空気が排出されると、電解質液供給源40から電解質液供給流路41を自然流下して上流側血液供給流路21に流入した電解質液が、空気に続いて上流側血液供給流路21及び下流側血液返送流路52をドリップチャンバ60に向かって流通し、空気・電解質液排出ライン70を通って血液透析装置1の外部に排出され、排液受け72を経由して電解質液センサ80の容器81の内部に流入する。容器81の内部で電解質液の液面が上昇し、電極82a・82bの両方が電解質液に浸ることにより両電極間に電流が流れると、電解質液センサ80からは血液ポンプ30、電磁弁42及び電磁弁71に信号が送られる。一方、容器81内の電解質液はサイフォンの原理に基づくサイフォンシステム83により外部に排出される(第一自然流下工程:S2)。
【0038】
第一自然流下工程S2を経て電解質液センサ80から送られる信号により、電磁弁71が解放された状態で、血液ポンプ30は正回転を開始する。これにより、電解質液供給源40内の電解質液が電解質液供給流路41及び上流側血液供給流路21を経て、血液透析器10の方向に送出されるとともに、下流側血液供給流路22内に存在していた空気が血液透析器10に押し込まれる。これに伴って、血液透析器10に予め充填されていた充填液は、上流側血液返送流路51に押し出され、予め上流側血液返送流路51に存在していた空気は、ドリップチャンバ60及び空気・電解質液排出ライン70を通って血液透析装置1の外部に排出され、同時に、上流側血液返送流路51は充填液で満たされる(第一正回転工程:S3)。なお、血液ポンプ30は、上流側血液返送流路51の容積に相当する量よりもやや多い量の充填液を送出すると自動的に停止するが、この量は、血液透析器10の容量よりも少ないので、血液透析器10を充填していた充填液の一部のみが空気に押されて上流側血液返送流路51に流出するに過ぎず、血液透析器10内の充填液の全てが空気に置き換わることはない。
【0039】
第一正回転工程S3により、上流側血液返送流路51に存在していた空気がドリップチャンバ60及び空気・電解質液排出ライン70を経て血液透析装置1の外部に排出された後には、血液ポンプ30よりも下流側の下流側血液供給流路22内及び血液透析器10内に存在していた空気を、血液ポンプ30よりも上流側に移動させる工程を実施する。すなわち、第一正回転工程S3において、血液ポンプ30が正回転することにより、上流側血液返送流路51の容積に相当する量よりもやや多い量の充填液を送出し終えると、空気・電解質液排出ライン70上の電磁弁71、電磁弁42が閉鎖し、血液ポンプ30が逆回転を開始する。この結果、血液透析器10の上流側部分と下流側血液供給流路22に存在していた空気の一部が、上流側血液供給流路21と下流側血液返送流路52及びドリップチャンバ60に移動せしめられる。これと伴に、上流側血液供給流路21と下流側血液返送流路52及びドリップチャンバ60を満たしていた電解質液が上流側血液返送流路51と血液透析器10と下流側血液供給流路22に移動する。血液ポンプ30の供給量が、電解質液供給流路41と上流側血液供給流路21との接続部21aから動脈側アクセス接合部20aまでの上流側血液供給流路21内の容積と、コネクタ90を介して静脈側アクセス接合部50aからドリップチャンバ60までの下流側血液返送流路52内の容積と、ドリップチャンバ60の容積と、の和に相当する量に到達した段階で、血液ポンプ30は自動的に逆回転を停止する(逆回転工程:S4)。
【0040】
逆回転工程S4が終了すると、自然流下工程を実施する。すなわち、空気・電解質液排出ライン70に設けられた電磁弁71を開き、続いて、電解質液供給流路41に設けられた電磁弁42を開く。これにより、電解質液供給源40から重力に従って電解質液供給流路41を自然流下して上流側血液供給流路21に流入した電解質液が、上流側血液供給流路21と下流側血液返送流路52及びドリップチャンバ60に存在していた空気を、ドリップチャンバ60に設けられている空気・電解質液排出ライン70を通して血液透析装置1の外部に排出する。空気がすべて排出されて電解質液が電解質液センサ80に流れ込むと、電解質液センサ80からは血液ポンプ30、電磁弁71及び電磁弁42に信号が送られる(第二自然流下工程:S5)。
【0041】
第二自然流下工程S5を経て電解質液センサ80から送られる信号により、電磁弁71及び電磁弁42は閉鎖し、血液ポンプ30は逆回転を開始する。この結果、下流側血液供給流路22に存在していた空気の一部が、上流側血液供給流路21と下流側血液返送流路52及びドリップチャンバ60に移動せしめられる。これと伴に、上流側血液供給流路21と下流側血液返送流路52及びドリップチャンバ60を満たしていた電解質液が上流側血液返送流路51と血液透析器10と下流側血液供給流路22に移動する。血液ポンプ30の供給量が、電解質液供給流路41と上流側血液供給流路21との接続部21aから動脈側アクセス接合部20aまでの上流側血液供給流路21内の容積と、コネクタ90を介して静脈側アクセス接合部50aからドリップチャンバ60までの下流側血液返送流路52内の容積と、ドリップチャンバ60の容積と、の和に相当する量に到達した段階で、血液ポンプ30は自動的に逆回転を停止する(第二逆回転工程:S6)。
【0042】
逆回転工程S6に次いで、再び自然流下工程を実施する。すなわち、空気・電解質液排出ライン70に設けられた電磁弁71を開き、続いて、電解質液供給流路41に設けられた電磁弁42を開く。これにより、電解質液供給源40から自然流下してくる電解質液により、上流側血液供給流路21及び下流側血液返送流路52に存在していた空気が、ドリップチャンバ60に設けられている空気・電解質液排出ライン70を通して、血液透析装置1の外部に排出される。空気がすべて排出されて電解質液が電解質液センサ80に流れ込むと、電解質液センサ80からは血液ポンプ30、電磁弁71及び電磁弁42に信号が送られる(第三自然流下工程:S7)。
【0043】
これら逆回転工程及び自然流下工程が、空気・電解質液排出ライン70内の空気がなくなるまで繰り返される。空気・電解質液排出ライン70の内部に空気がなくなり電解質液が流れ込むようになると、電解質液供給流路41に設けられた電磁弁42が開いたままで、血液ポンプ30が急速に正回転を続けるようになる(第二正回転工程:S8)。これにより、電解質液供給源40から重力に従って電解質液供給流路41を自然流下して上流側血液供給流路21に流入した電解質液の一部は、上流側血液供給流路21、下流側血液供給流路22、血液透析器10、上流側血液返送流路51、ドリップチャンバ60、下流側血液返送流路52、上流側血液供給流路21の順に循環し、残りの部分は、上流側血液供給流路21、下流側血液供給流路22、血液透析器10、上流側血液返送流路51、ドリップチャンバ60、空気・電解質液排出ライン70の順に流れて、血液透析装置1の外部に排出され、電解質液センサ80を経て廃棄される。第二正回転工程S8では、血液透析器10が電解質液により洗浄される。
【0044】
このような第二正回転工程S8を経て電解質液供給源40が空になると、電解質液センサ80にはそれ以上電解質液が流入しなくなるため、電極82aと電極82bとの間には電流が流れなくなる。これが信号となって、血液ポンプ30及び電磁弁71に送られると、血液ポンプ30は停止し、電磁弁71が閉鎖する(ポンプ停止・弁閉鎖工程:S9)。以上の工程群を経て自動プライミング処理が終了する。その後は、血液供給流路20の血液透析器10側と反対側の端部である動脈側アクセス接続部20aと、血液返送流路50の血液透析器10側と反対側の端部である静脈側アクセス接続部50aと、をコネクタ90から外し、動脈側アクセス接続部20aに動脈側穿刺針を取り付ける一方、静脈側アクセス接続部50aに静脈側穿刺針を取り付け、透析患者のシャント血管にそれぞれ穿刺する。
【0045】
以上説明した実施形態に係る血液透析装置1においては、血液流通方向において血液ポンプ30の下流側にある空気を、血液ポンプ30の逆回転駆動により血液ポンプ30の上流側に移動させることができる。さらに、この空気を、電解質液供給源40から電解質液供給流路41を介して血液供給流路20へと供給される電解質液によって置換して、血液返送流路50のドリップチャンバ60に設けられた空気・電解質液排出ライン70から外部に排出することができる。従って、動脈側ドリップチャンバが設けられていない低廉で簡素な構成で自動プライミング処理を実施することが可能となる。
【0046】
また、以上説明した実施形態に係る血液透析装置1においては、空気・電解質液排出ライン70からの必要な量の空気の排出が終了したことを電解質液センサ80が検知した場合に、血液ポンプ30、電磁弁71及び電磁弁42を連動させることができるので、自動プライミング処理の次の工程に効率良く移行することが可能となる。
【0047】
また、以上説明した実施形態に係る血液透析装置1においては、血液流通方向において血液ポンプ30の上流側に移動させられた空気を、電解質液供給流路41を介して血液供給流路20へと重力により自然流下してくる電解質液によって置換して、ドリップチャンバ60に設けられた空気・電解質液排出ライン70から外部に排出することができる。従って、電解質液供給源40から電解質液供給流路41を介して血液供給流路20へと電解質液を供給するための特別な機構が不要となるため、装置のさらなる簡素化及び低廉化を達成することが可能となる。
【0048】
<第二実施形態>
続いて、図3及び図5を用いて、本発明の第二実施形態について説明する。
【0049】
まず、図3を用いて、本実施形態に係る血液透析装置2の構成について説明する。血液透析装置2は、第一実施形態に係る血液透析装置1の電解質液センサ80に代えて圧力測定装置65を採用したものであり、その他の構成については第一実施形態と実質的に同一である。このため、異なる構成を中心に説明することとし、重複する構成については第一実施形態と同様の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0050】
血液透析装置2は、血液透析器10、血液供給流路20(上流側血液供給流路21及び下流側血液供給流路22)、血液ポンプ30、電解質液供給源40、電解質液供給流路41、血液返送流路50(上流側血液返送流路51及び下流側血液返送流路52)、ドリップチャンバ60、空気・電解質液排出ライン70、電磁弁71、排液受け72等を備えている。そして、血液透析装置2では、空気・電解質液排出ライン70の先端部73の内径が紡錘形に細くなっており、更に、ドリップチャンバ60にはドリップチャンバ60内の圧力をモニタリングするための圧力測定装置65が設けられている。
【0051】
このような構成では、ドリップチャンバ60内に空気が存在し空気・電解質液排出ライン70から空気が排出されている場合においては、ドリップチャンバ60内の圧力は大気圧に等しくなっている。しかし、ドリップチャンバ60内に電解質液が流れ込み、さらに、空気・電解質液排出ライン70を通して電解質液が血液透析装置2外に排出されるようになると、空気・電解質液排出ライン70の先端部73の内径が細くなり、以て、流量抵抗が増大しているため、ドリップチャンバ60内の圧力は、電解質液供給源40の高さと空気・電解質液排出ライン70の流量抵抗に応じたレベルに上昇する。すなわち、圧力測定装置65のモニタ値が大気圧から所定の値以上に上昇したことは、空気・電解質液排出ライン70を通しての空気の排出が終了したことを示すものであり、したがって、先端が細くなって流量抵抗が増した空気・電解質液排出ライン70とドリップチャンバ60内の圧力をモニタリングする圧力測定装置65は、本発明における空気排出終了センサとして機能するものである。そして、圧力測定装置65は、血液ポンプ30、電磁弁42及び電磁弁71と連動するように構成されており、効率良く次の工程に移行できるようになっている。
【0052】
次に、図5のフローチャートを用いて、本実施形態に係る血液透析装置2において自動プライミング処理を実施する場合の各工程について説明する。本プライミング処理は、電解質液が充填されていない(いわゆるドライタイプの)血液透析器10を含む血液回路のプライミング処理である。
【0053】
まず、プライミング処理に先立って、血液供給流路20の血液透析器10側と反対側の端部である動脈側アクセス接続部20aと、血液返送流路50の血液透析器10側と反対側の端部である静脈側アクセス接続部50aと、をコネクタ90を用いて接続して血液回路をループ状とする(閉回路形成工程:S11)。
【0054】
次いで、血液ポンプ30が停止した状態で、電解質液供給流路41に設けられた電磁弁42を開く。これにより、電解質液供給源40に保存されていた電解質液を、重力に従って電解質液供給流路41を自然流下させて上流側血液供給流路21に流入させる。このように流入させた電解質液により、上流側血液供給流路21内(血液流通方向において電解質液供給流路41と上流側血液供給流路21との接続部21aよりも上流側の部分)に存在していた空気と、下流側血液返送流路52内に存在していた空気と、ドリップチャンバ60内に存在していた空気と、がドリップチャンバ60に設けられている空気・電解質液排出ライン70を通って血液透析装置1の外部に排出される。そして、このように、ドリップチャンバ60に設けられている空気・電解質液排出ライン70を通って、空気が血液透析装置2の外部に排出されている間は、圧力測定装置65がモニタリングしているドリップチャンバ60内の圧力は大気圧に等しい。空気がすべて排出されると、電解質液供給源40から電解質液供給流路41を自然流下して上流側血液供給流路21に流入した電解質液が、空気に続いて上流側血液供給流路21及び下流側血液返送流路52をドリップチャンバ60に向かって流通し、空気・電解質液排出ライン70を通って血液透析装置2の外部に排出される。ここで、ドリップチャンバ60内の圧力は、電解質液供給源40の高さと空気・電解質液排出ライン70の流量抵抗に応じたレベルに上昇する。ドリップチャンバ60内の圧力をモニタリングしている圧力測定装置65が、ドリップチャンバ60内の圧力が大気圧から所定のレベル上昇したこと(すなわち、電解質液が、電解質液供給源40から電解質液供給流41を自然流下して上流側血液供給流路21に流入し、下流側血液返送流路52をドリップチャンバ60に向かって流通し、さらに空気・電解質液排出ライン70に到達してこれを満たしたこと)を検知すると、圧力測定装置65から血液ポンプ30、電磁弁71及び電磁弁42に信号が送られる(第一自然流下工程:S12)。
【0055】
第一自然流下工程S12を経て圧力測定装置65から送られる信号により、電磁弁71及び電磁弁42を閉鎖し、血液ポンプ30は逆回転を開始する。この結果、下流側血液供給流路22、血液透析器10及び上流側血液返送流路51に存在していた空気の一部が、上流側血液供給流路21側に移動せしめられる。これと同時に、電解質液供給流路41と上流側血液供給流路21との接続部21aから動脈側アクセス接合部20aまでの上流側血液供給流路21と、コネクタ90を介して静脈側アクセス接合部50aからドリップチャンバ60までの下流側血液返送流路52と、ドリップチャンバ60と、に充填されていた電解質液が上流側血液返送流路51側に移動せしめられる。血液ポンプ30の供給量が、電解質液供給流路41と上流側血液供給流路21との接続部21aから動脈側アクセス接合部20aまでの上流側血液供給流路21内の容積と、コネクタ90を介して静脈側アクセス接合部50aからドリップチャンバ60までの下流側血液返送流路52内の容積と、ドリップチャンバ60の容積と、の和に相当する量に到達すると、血液ポンプ30は自動的に逆回転を停止する(第一逆回転工程:S13)。
【0056】
第一逆回転工程S13に次いで、再び自然流下工程を実施する。すなわち、空気・電解質液排出ライン70に設けられた電磁弁71を開き、続いて、電解質液供給流路41に設けられた電磁弁42を開く。これにより、電解質液供給源40から重力に従って電解質液供給流路41を自然流下して上流側血液供給流路21に流入した電解質液が、接続部21aから動脈側アクセス接合部20aまでの上流側血液供給流路21と下流側血液返送流路52とドリップチャンバ60に存在していた空気を、ドリップチャンバ60に設けられている空気・電解質液排出ライン70を通して血液透析装置2の外部に押し流し、排出する。空気がすべて排出され、電解質液が電解質液供給源40から電解質液供給流41を自然流下して上流側血液供給流路21に流入し、下流側血液返送流路52をドリップチャンバ60に向かって流通し、さらに空気・電解質液排出ライン70に到達してこれを満たすと、圧力測定装置65は、ドリップチャンバ60内の圧力が大気圧から所定の値だけ上昇したことを検知する。この結果、圧力測定装置65からは血液ポンプ30、電磁弁71及び電磁弁42に信号が送られる(第二自然流下工程:S14)。
【0057】
第二自然流下工程S14を経て圧力測定装置65から送られる信号により、電磁弁71及び電磁弁42は閉鎖し、血液ポンプ30は再び逆回転を開始する。この結果、下流側血液供給流路22、血液透析器10、上流側血液返送流路51等に残存していた空気の一部が、上流側血液供給流路21側に移動せしめられる。これと伴に、ドリップチャンバ60と下流側血液返送流路52等を満たしていた電解質液が、上流側血液返送流路51、血液透析器10、下流側血液供給流路22、上流側血液供給流路21方向に移動する。血液ポンプ30の供給量が、電解質液供給流路41と上流側血液供給流路21との接続部21aから動脈側アクセス接合部20aまでの上流側血液供給流路21内の容積と、コネクタ90を介して静脈側アクセス接合部50aからドリップチャンバ60までの下流側血液返送流路52内の容積と、ドリップチャンバ60の容積と、の和に相当する量に到達すると、血液ポンプ30は自動的に逆回転を停止する(第二逆回転工程:S15)。
【0058】
第二逆回転工程S15に次いで、再び自然流下工程を実施する。すなわち、空気・電解質液排出ライン70に設けられた電磁弁71を開き、続いて、電解質液供給流路41上の電磁弁42を開く。これにより、電解質液供給源40から自然流下してくる電解質液により、上流側血液供給流路21及び下流側血液返送流路52及びドリップチャンバ60に存在していた空気が、ドリップチャンバ60に設けられている空気・電解質液排出ライン70を通して、血液透析装置2の外部に排出される。空気がすべて排出されて空気・電解質液排出ライン70が電解質液で満たされると、圧力測定装置65は、ドリップチャンバ60内の圧力が大気圧から所定の値だけ上昇したことを検知する。この結果、圧力測定装置65からは血液ポンプ30及び電磁弁71に信号が送られる(第三自然流下工程:S16)。
【0059】
これら第二逆回転工程S15及び第三自然流下工程S16が、空気・電解質液排出ライン70内の空気がなくなるまで繰り返される。圧力測定装置65が、ドリップチャンバ60内の圧力が大気圧に戻らなくなったことを検知すると、電解質液供給流路41上の電磁弁42が開いたままで、血液ポンプ30が急速に正回転を続ける(正回転工程:S17)。血液ポンプ30の正回転により、電解質液供給源40から上流側血液供給流路21に流入した電解質液の一部は、上流側血液供給流路21、下流側血液供給流路22、血液透析器10、上流側血液返送流路51、ドリップチャンバ60、下流側血液返送流路52、上流側血液供給流路21の順に循環し、残りの部分は、上流側血液供給流路21、下流側血液供給流路22、血液透析器10、上流側血液返送流路51、ドリップチャンバ60、空気・電解質液排出ライン70の順に流れて、血液透析装置2の外部に排出される。正回転工程S17では、血液透析器10が電解質液により洗浄される。
【0060】
このような正回転工程S17を経て電解質液供給源40が空になると、血液回路及び血液透析器10内の電解質液は、上流側血液供給流路21、下流側血液供給流路22、血液透析器10、上流側血液返送流路51、ドリップチャンバ60、下流側血液返送流路52、上流側血液供給流路21の順に循環を続け、一方、空気・電解質液排出ライン70からの電解質液の排出は停止する。空気・電解質液排出ライン70を通して電解質液が血液透析装置2外に排出されている間は、圧力測定装置65がモニタするドリップチャンバ60内の圧力は、電解質液供給源40の高さと空気・電解質液排出ライン70の流量抵抗に応じたレベルに上昇しているが、空気・電解質液排出ライン70からの電解質液の排出が停止すると、圧力測定装置65がモニタするドリップチャンバ60内の圧力は大気圧に戻る。そこで、正回転工程S17が開始してから後、圧力測定装置65がモニタするドリップチャンバ60内の圧力が所定の値だけ低下したことを検知すると、血液ポンプ30は停止し、電磁弁71は閉鎖する(ポンプ停止・弁閉鎖工程S18)。以上の工程群を経て自動プライミング処理は終了する。その後は、血液供給流路20の血液透析器10側と反対側の端部である動脈側アクセス接続部20aと、血液返送流路50の血液透析器10側と反対側の端部である静脈側アクセス接続部50aと、をコネクタ90から外し、動脈側アクセス接続部20aに動脈側穿刺針を取り付ける一方、静脈側アクセス接続部50aに静脈側穿刺針を取り付け、透析患者のシャント血管にそれぞれ穿刺する。
【0061】
以上説明した実施形態に係る血液透析装置2においては、血液流通方向において血液ポンプ30の下流側にある空気を、血液ポンプ30の逆回転駆動により血液ポンプ30の上流側に移動させることができる。さらに、この空気を、電解質液供給源40から電解質液供給流路41を介して血液供給流路20へ、自然落下により供給される電解質液によって置換して、血液返送流路50のドリップチャンバ60に設けられた空気・電解質液排出ライン70から外部に排出することができる。従って、動脈側ドリップチャンバが設けられていない低廉で簡素な構成で自動プライミング処理を実施することが可能となる。
【0062】
また、以上説明した実施形態に係る血液透析装置2においては、空気・電解質液排出ライン70からの必要な量の空気の排出が終了したことを圧力測定装置65が検知した場合に、血液ポンプ30、電磁弁71及び電磁弁42を連動させることができるので、自動プライミング処理の次の工程に効率良く移行することが可能となる。
【0063】
また、以上説明した実施形態に係る血液透析装置2においては、血液流通方向において血液ポンプ30の上流側に移動させられた空気を、電解質液供給流路41を介して血液供給流路20へと重力により自然流下してくる電解質液によって置換して、ドリップチャンバ60に設けられた空気・電解質液排出ライン70から外部に排出することができる。従って、電解質液供給源40から電解質液供給流路41を介して血液供給流路20へと電解質液を供給するための特別な機構が不要となるため、装置のさらなる簡素化及び低廉化を達成することが可能となる。
【0064】
なお、本実施形態に係る血液透析装置2において、正回転工程S17で血液透析器10の透析液流路を大気に開放しておけば、電解質液は空気・電解質液排出ライン70のみならず血液透析器10の透析膜を通して透析液流路にも排出されることとなる。このようにすると、正回転工程S17の所要時間を短縮することができる。
【0065】
<第三実施形態>
続いて、図4及び図5を用いて、本発明の第三実施形態について説明する。
【0066】
まず、図4を用いて、本実施形態に係る血液透析装置3の構成について説明する。血液透析装置3は、第二実施形態に係る血液透析装置2の圧力測定装置65に代えて電解質液供給源重量モニタ43を採用したものであり、その他の構成については第二実施形態と実質的に同一である。このため、異なる構成を中心に説明することとし、重複する構成については第二実施形態と同様の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0067】
血液透析装置3は、血液透析器10、血液供給流路20(上流側血液供給流路21及び下流側血液供給流路22)、血液ポンプ30、電解質液供給源40、電解質液供給流路41、血液返送流路50(上流側血液返送流路51及び下流側血液返送流路52)、ドリップチャンバ60、空気・電解質液排出ライン70、電磁弁71、排液受け72等を備えている。また、血液透析装置3は、電解質液供給源40の重量をモニタリングしている電解質液供給源重量モニタ(重量センサ)43を備えている。電解質液供給源重量モニタ43は、電解質液供給源40の重量を測定して空気・電解質液排出ライン70から排出すべき空気と同容積の電解質液の質量が減少したことを検知するものであり、本発明における空気排出終了センサとして機能するものである。電解質液供給源重量モニタ43は、血液ポンプ30、電磁弁42及び電磁弁71と連動するように構成されており、効率良く次の工程に移行できるようになっている。
【0068】
次に、図5のフローチャートを用いて、本実施形態に係る血液透析装置3において自動プライミング処理を実施する場合の各工程について説明する。本プライミング処理は、電解質液が充填されていない(いわゆるドライタイプの)血液透析器10を含む血液回路のプライミング処理である。
【0069】
まず、プライミング処理に先立って、血液供給流路20の血液透析器10側と反対側の端部である動脈側アクセス接続部20aと、血液返送流路50の血液透析器10側と反対側の端部である静脈側アクセス接続部50aと、をコネクタ90を用いて接続して血液回路をループ状とする(閉回路形成工程:S11)。
【0070】
次いで、血液ポンプ30が停止しており空気・電解質液排出ライン70に設けられた電磁弁71が開かれた状態で、電解質液供給流路41に設けられた電磁弁42を開く。これにより、電解質液供給源40に保存されていた電解質液を、重力に従って電解質液供給流路41を自然流下させて上流側血液供給流路21に流入させる。このように流入させた電解質液により、上流側血液供給流路21内(血液流通方向において電解質液供給流路41と上流側血液供給流路21との接続部21aよりも上流側の部分)に存在していた空気と、下流側血液返送流路52内に存在していた空気と、ドリップチャンバ60内に存在していた空気と、がドリップチャンバ60に設けられている空気・電解質液排出ライン70を通って血液透析装置3の外部に排出される。空気が排出されると、電解質液供給源40から電解質液供給流路41を自然流下して上流側血液供給流路21に流入した電解質液が、空気に続いて上流側血液供給流路21及び下流側血液返送流路52をドリップチャンバ60に向かって流通し、空気・電解質液排出ライン70を通って血液透析装置3の外部に排出される。ここで、電解質液供給源40の重量をモニタリングしている電解質液供給源重量モニタ43が、電解質液供給源40の重量が空気・電解質液排出ライン70から排出すべき空気と同容積の電解質液の重さの分だけ減少したこと(すなわち、電解質液が、電解質液供給源40から電解質液供給流41を自然流下して上流側血液供給流路21に流入し、下流側血液返送流路52をドリップチャンバ60に向かって流通し、さらに空気・電解質液排出ライン70に到達してこれを満たしたこと)を検知すると、電解質液供給源重量モニタ43から血液ポンプ30、電磁弁71及び電磁弁42に信号が送られる(第一自然流下工程:S12)。
【0071】
第一自然流下工程S12を経て電解質液供給源重量モニタ43から送られる信号により、電磁弁71及び電磁弁42は閉鎖し、血液ポンプ30は逆回転を開始する。この結果、下流側血液供給流路22、血液透析器10及び上流側血液返送流路51に存在していた空気の一部が、上流側血液供給流路21側に移動せしめられる。これと同時に、電解質液供給流路41と上流側血液供給流路21との接続部21aから動脈側アクセス接合部20aまでの上流側血液供給流路21と、コネクタ90を介して静脈側アクセス接合部50aからドリップチャンバ60までの下流側血液返送流路52と、ドリップチャンバ60と、に充填されていた電解質液が上流側血液返送流路51側に移動せしめられる。血液ポンプ30の供給量が、電解質液供給流路41と上流側血液供給流路21との接続部21aから動脈側アクセス接合部20aまでの上流側血液供給流路21内の容積と、コネクタ90を介して静脈側アクセス接合部50aからドリップチャンバ60までの下流側血液返送流路52内の容積と、ドリップチャンバ60の容積と、の和に相当する量に到達すると、血液ポンプ30は自動的に逆回転を停止する(第一逆回転工程:S13)。
【0072】
第一逆回転工程S13に次いで、再び自然流下工程を実施する。すなわち、空気・電解質液排出ライン70に設けられた電磁弁71を開き、続いて、電解質液供給流路41に設けられた電磁弁42を開く。これにより、電解質液供給源40から重力に従って電解質液供給流路41を自然流下して上流側血液供給流路21に流入した電解質液が、下流側血液返送流路52に存在していた空気を、ドリップチャンバ60の方向に押し流し、ドリップチャンバ60に設けられている空気・電解質液排出ライン70を通して血液透析装置3の外部に排出する。空気がすべて排出され、電解質液が電解質液供給源40から電解質液供給流41を自然流下して上流側血液供給流路21に流入し、下流側血液返送流路52をドリップチャンバ60に向かって流通し、さらに空気・電解質液排出ライン70に到達してこれを満たすと、電解質液供給源重量モニタ43は、電解質液供給源40の重量が空気・電解質液排出ライン70から排出すべき空気と同容積の電解質液の重さの分だけ減少したことを検知する。この結果、電解質液供給源重量モニタ43からは血液ポンプ30、電磁弁71及び電磁弁42に信号が送られる(第二自然流下工程:S14)。
【0073】
第二自然流下工程S14を経て電解質液供給源重量モニタ43から送られる信号により、電磁弁71及び電磁弁42は閉鎖し、血液ポンプ30は再び逆回転を開始する。この結果、下流側血液供給流路22、血液透析器10、上流側血液返送流路51等に存在していた残存した空気の一部が、上流側血液供給流路21側に移動せしめられる。これと伴に、ドリップチャンバ60と下流側血液返送流路52等を満たしていた電解質液が、上流側血液返送流路51、血液透析器10、下流側血液供給流路22、上流側血液供給流路21方向に移動する。血液ポンプ30の供給量が、電解質液供給流路41と上流側血液供給流路21との接続部21aから動脈側アクセス接合部20aまでの上流側血液供給流路21内の容積と、コネクタ90を介して静脈側アクセス接合部50aからドリップチャンバ60までの下流側血液返送流路52内の容積と、ドリップチャンバ60の容積と、の和に相当する量に到達すると、血液ポンプ30は自動的に逆回転を停止する(第二逆回転工程:S15)。
【0074】
第二逆回転工程S15に次いで、再び自然流下工程を実施する。すなわち、空気・電解質液排出ライン70に設けられた電磁弁71を開き、続いて、電解質液供給流路41上の電磁弁42を開く。これにより、電解質液供給源40から自然流下してくる電解質液により、上流側血液供給流路21及び下流側血液返送流路52に存在していた空気が、ドリップチャンバ60に設けられている空気・電解質液排出ライン70を通して、血液透析装置3の外部に排出される。空気がすべて排出されて空気・電解質液排出ライン70が電解質液で満たされると、電解質液供給源重量モニタ43は、電解質液供給源40の重量が、空気・電解質液排出ライン70から排出すべき空気と同容積の電解質液の重さの分だけ減少したことを検知する。この結果、電解質液供給源重量モニタ43からは血液ポンプ30、電磁弁71及び電磁弁42に信号が送られる(第三自然流下工程:S6)。
【0075】
これら第二逆回転工程S15及び第三自然流下工程S16が、空気・電解質液排出ライン70内の空気がなくなるまで繰り返される。電解質液供給源重量モニタ43が電解質液供給源40の重量が、血液供給流路20の容積と、血液透析器10の容積と、血液返送流路50の容積と、ドリップチャンバ60の容積と、の和に相当する重量に、さらに所定の重量を加えた重量だけ減少したことを検知すると、電解質液供給流路41上の電磁弁42が開いたままで、血液ポンプ30が急速に正回転を続けるようになる(正回転工程:S17)。これにより、電解質液供給源40から重力に従って電解質液供給流路41を自然流下して上流側血液供給流路21に流入した電解質液の一部は、上流側血液供給流路21、下流側血液供給流路22、血液透析器10、上流側血液返送流路51、ドリップチャンバ60、下流側血液返送流路52、上流側血液供給流路21の順に循環し、残りの部分は、上流側血液供給流路21、下流側血液供給流路22、血液透析器10、上流側血液返送流路51、ドリップチャンバ60、空気・電解質液排出ライン70の順に流れて、血液透析装置1の外部に排出される。正回転工程S17では、血液透析器10が電解質液により洗浄される。
【0076】
このような正回転工程S17を経て電解質液供給源40が空になると、電解質液供給源重量モニタ43はこれを検知し、血液ポンプ30及び電磁弁71に信号が送られる。これにより、血液ポンプ30は停止し、電磁弁71が閉鎖する(ポンプ停止・弁閉鎖工程:S18)。以上の工程群を経て自動プライミング処理が終了する。その後は、血液供給流路20の血液透析器10側と反対側の端部である動脈側アクセス接続部20aと、血液返送流路50の血液透析器10側と反対側の端部である静脈側アクセス接続部50aと、をコネクタ90から外し、動脈側アクセス接続部20aに動脈側穿刺針を取り付ける一方、静脈側アクセス接続部50aに静脈側穿刺針を取り付け、透析患者のシャント血管にそれぞれ穿刺する。
【0077】
なお、以上の各実施形態においては、重力による自然流下によって電解質液を電解質液供給源40から電解質液供給流路41を介して血液供給流路20へと供給することにより、血液流通方向において血液ポンプ30の上流側に移動させられた空気を空気・電解質液排出ライン70から外部に排出した例を示したが、電解質液供給流路41に電解質液供給ポンプ(プライミング液供給ポンプ)を設け、この電解質液供給ポンプによって電解質液を電解質液供給源40から電解質液供給流路41を介して血液供給流路20へと供給することにより、血液流通方向において血液ポンプ30の上流側に移動させられた空気を空気・電解質液排出ライン70から外部に排出することもできる。
【0078】
このような構成を採用すると、血液流通方向において血液ポンプ30の上流側に移動させられた空気を、電解質液供給ポンプによって強制的に供給される電解質液で置換して、ドリップチャンバ60に設けられた空気・電解質液排出ライン70から外部に排出することができる。従って、電解質液供給源40が低い位置にある場合においてもプライミングを実施することができ、透析液流路を流れる透析液をプライミング液として利用することも可能となる。
【0079】
また、空気・電解質液排出ライン70から排出すべき空気と同容積の電解質液が排出された場合に電解質液供給ポンプを停止させる制御装置を採用することもできる。このような構成を採用すると、電解質液供給ポンプの停止により、空気・電解質液排出ライン70からの必要な量の空気の排出が終了したことを知ることができる。かかる場合における電解質液供給ポンプ及び制御装置は、本発明における空気排出終了センサを構成する。
【0080】
また、空気排出終了センサ(電解質液センサ80や圧力測定装置65)で必要な量の空気の排出が終了したことを検知した場合に電解質液供給ポンプが連動するような構成を採用することもできる。このような構成を採用すると、空気・電解質液排出ライン70からの必要な量の空気の排出が終了したことを空気排出終了センサが検知した場合に、電解質液供給ポンプを連動させることができるので、自動プライミング処理の次の工程に効率良く移行することが可能となる。
【0081】
また、以上の各実施形態においては、動脈側ドリップチャンバを有しない血液透析装置において自動プライミング処理を実施した例を示したが、動脈側ドリップチャンバを設けた場合においても同様の手順で自動プライミング処理を実施することができる。
【0082】
また、以上の各実施形態においては、血液透析装置に本発明を適用した例を示したが、同様の構成(血液処理器、血液供給流路、正逆回転可能な血液ポンプ、プライミング液供給源、プライミング液供給流路、血液返送流路、ドリップチャンバ等)を備える他の血液体外循環装置に本発明を適用することもできる。例えば、単純血漿交換療法(Plasma Exchange:PE)、二重濾過血漿交換療法(Double Filtration Plasmapheresis:DFPP)、持続的血液濾過療法(Continuous Hemofiltration:CHF)等に使用される血液浄化装置に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0083】
1・2・3…血液透析装置(血液体外循環装置)
10…血液透析器(血液処理器)
20…血液供給流路
20a…動脈側アクセス接続部(血液供給流路の血液処理器側と反対側の端部)
30…血液ポンプ
40…電解質液供給源(プライミング液供給源)
41…電解質液供給流路(プライミング液供給流路)
43…電解質液供給源重量モニタ(重量センサ、空気排出終了センサ)
50…血液返送流路
50a…静脈側アクセス接続部(血液返送流路の血液処理器側と反対側の端部)
60…ドリップチャンバ
65 圧力測定装置(空気排出終了センサ)
70…空気・電解質液排出ライン(排出流路)
71…電磁弁
80…電解質液センサ(プライミング液センサ、空気排出終了センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化膜を介して血液が流れる血液流路及び透析液が流れる透析液流路が形成されて成る、血液を浄化するための血液処理器と、体内から取り出された血液を前記血液処理器に供給するための血液供給流路と、前記血液供給流路に設けられ血液を前記血液処理器に送出するための正逆回転可能な血液ポンプと、プライミング液を前記血液供給流路に供給するためのプライミング液供給源と、血液流通方向において前記血液ポンプの上流側に位置する前記血液供給流路の部位に前記プライミング液供給源を連結するプライミング液供給流路と、前記血液処理器で処理された血液を体内に返送するための血液返送流路と、前記血液返送流路に設けられ前記血液返送流路を流れる気泡が体内に流入することを防止するためのドリップチャンバと、を備える血液体外循環装置であって、
前記血液供給流路の前記血液処理器側と反対側の端部と、前記血液返送流路の前記血液処理器側と反対側の端部と、が接続されるように構成され、前記ドリップチャンバには、プライミング液及び/又は空気を外部に排出するための排出流路が設けられている、
血液体外循環装置。
【請求項2】
前記排出流路からの必要な量の空気の排出が終了したことを検知する空気排出終了センサをさらに備える、
請求項1に記載の血液体外循環装置。
【請求項3】
前記空気排出終了センサが、前記排出流路から空気の後にプライミング液が排出されたことを検知するプライミング液センサである、
請求項2に記載の血液体外循環装置。
【請求項4】
前記空気排出終了センサが、前記プライミング液供給源の重量を測定して前記排出流路から排出すべき空気と同容積のプライミング液の質量が減少したことを検知する重量センサである、
請求項2に記載の血液体外循環装置。
【請求項5】
前記空気排出終了センサが、前記排出流路から排出すべき空気と同容積のプライミング液を供給したことを検知する、前記プライミング液供給流路に設けられたプライミング液供給ポンプと、前記プライミング液供給ポンプを制御するための制御装置と、から構成される、
請求項2に記載の血液体外循環装置。
【請求項6】
前記空気排出終了センサが、前記ドリップチャンバ内の圧力を測定するための圧力測定装置である、
請求項2に記載の血液体外循環装置。
【請求項7】
前記排出流路に設けられた電磁弁をさらに備え、
前記空気排出終了センサで必要な量の空気の排出が終了したことを検知した場合に前記血液ポンプ及び前記電磁弁が連動するように構成される、
請求項2から6の何れか一項に記載の血液体外循環装置。
【請求項8】
血液を特定の態様で処理する、初期充填液体で充填されていない血液処理器と、体内から取り出された血液を前記血液処理器に供給するための血液供給流路と、前記血液供給流路に設けられ血液を前記血液処理器に送出するための正逆回転可能な血液ポンプと、プライミング液を前記血液供給流路に供給するためのプライミング液供給源と、血液流通方向において前記血液ポンプの上流側に位置する前記血液供給流路の部位に前記プライミング液供給源を連結するプライミング液供給流路と、前記血液処理器で処理された血液を体内に返送するための血液返送流路と、前記血液返送流路に設けられ前記血液返送流路を流れる気泡が体内に流入することを防止するためのドリップチャンバと、プライミング液及び空気を前記ドリップチャンバから外部に排出するための排出流路と、を備えている血液体外循環装置を用いたプライミング方法であって、
治療前のプライミング時、前記血液供給流路の前記血液処理器側と反対側の端部と、前記血液返送流路の前記血液処理器側とは反対側の端部と、を接続して連通可能とするとともに、前記血液処理器を血液導入口が上方を向いた状態にし、さらに、前記血液ポンプを停止させた状態で、前記プライミング液供給源から前記プライミング液供給流路を通って前記血液供給流路に供給されるプライミング液で、前記血液供給流路と前記プライミング液供給流路との接続部から前記ドリップチャンバまでの間の血液流路を充填するとともに、前記血液供給流路と前記プライミング液供給流路との接続部から前記ドリップチャンバまでの間の前記血液流路に存在していた空気を前記排出流路から外部に排出させる第1プライミング工程と、
前記血液ポンプを逆回転させて、前記血液供給流路と前記プライミング液供給流路との接続部と前記ドリップチャンバとの間の前記血液流路のプライミング液、及び前記ドリップチャンバに存在するプライミング液を、血流方向において前記ドリップチャンバよりも上流側に流通させると共に、前記血液供給流路における前記プライミング液供給流路との接続部よりも血流方向において下流側にある空気を、前記接続部と前記ドリップチャンバとの間の前記血液流路及び前記ドリップチャンバに移動させる第2プライミング工程と、
前記プライミング液供給源から前記プライミング液供給流路を通して前記血液供給流路にプライミング液を供給することにより、前記接続部と前記ドリップチャンバとの間の前記血液流路に移動した空気を前記排出流路から外部に排出する第3プライミング工程と、
前記プライミング液供給源から前記プライミング液供給流路を通して前記血液供給流路に供給されるプライミング液を、前記血液ポンプを正回転又は逆回転させつつ、前記排出流路から外部に排出させる第4プライミング工程と、を含む、
プライミング方法。
【請求項9】
前記血液処理器は、血液浄化膜を介して血液が流れる血液流路及び透析液が流れる透析液流路が形成されて成るものであり、
前記第4プライミング工程において、前記プライミング液供給源から前記プライミング液供給流路を通して前記血液供給流路に供給されるプライミング液を、前記血液ポンプを正回転又は逆回転させつつ、前記血液処理器から前記血液浄化膜を介して前記血液流路から前記透析液流路へ排出する、
請求項8に記載のプライミング方法。
【請求項10】
血液を特定の態様で処理する、初期充填液体が充填された血液処理器と、体内から取り出された血液を前記血液処理器に供給するための血液供給流路と、前記血液供給流路に設けられ血液を前記血液処理器に送出するための正逆回転可能な血液ポンプと、プライミング液を前記血液供給流路に供給するためのプライミング液供給源と、血液流通方向において前記血液ポンプの上流側に位置する前記血液供給流路の部位に前記プライミング液供給源を連結するプライミング液供給流路と、前記血液処理器で処理された血液を体内に返送するための血液返送流路と、前記血液返送流路に設けられ前記血液返送流路を流れる気泡が体内に流入することを防止するためのドリップチャンバと、プライミング液及び空気を前記ドリップチャンバから外部に排出するための排出流路と、を備えている血液体外循環装置を用いたプライミング方法であって、
治療前のプライミング時、前記血液供給流路の前記血液処理器側と反対側の端部と、前記血液返送流路の前記血液処理器側とは反対側の端部と、を接続して連通可能とするとともに、前記血液処理器を血液導入口が上方を向いた状態にし、さらに、前記血液ポンプを停止させた状態で、前記プライミング液供給源から前記プライミング液供給流路を通って前記血液供給流路に供給されるプライミング液で、前記血液供給流路と前記プライミング液供給流路との接続部から前記ドリップチャンバまでの間の血液流路を充填するとともに、前記血液供給流路と前記プライミング液供給流路との接続部から前記ドリップチャンバまでの間の前記血液流路に存在していた空気を前記排出流路から外部に排出させる第1プライミング工程と、
前記血液ポンプを正回転させて、前記血液処理器を充填していた充填液を血液流出口から前記ドリップチャンバに導く第2プライミング工程と、
前記血液ポンプを逆回転させて、前記血液供給流路と前記プライミング液供給流路との接続部と前記ドリップチャンバとの間の前記血液流路のプライミング液及び前記ドリップチャンバに存在するプライミング液を、血流方向において前記ドリップチャンバよりも上流側に流通させると共に、前記血液供給流路における前記プライミング液供給流路との接続部よりも血流方向において下流側にある空気を、前記接続部と前記ドリップチャンバとの間の前記血液流路及び前記ドリップチャンバに移動させる第3プライミング工程と、
前記プライミング液供給源から前記プライミング液供給流路を通して前記血液供給流路にプライミング液を供給することにより、前記接続部と前記ドリップチャンバとの間の前記血液流路に移動した空気を前記排出流路から外部に排出する第4プライミング工程と、
前記プライミング液供給源から前記プライミング液供給流路を通して前記血液供給流路に供給されるプライミング液を、前記血液ポンプを正回転又は逆回転させつつ、前記排出流路から外部に排出させる第5プライミング工程と、を含む、
プライミング方法。
【請求項11】
前記血液処理器は、血液浄化膜を介して血液が流れる血液流路及び透析液が流れる透析液流路が形成されて成るものであり、
前記第5プライミング工程において、前記プライミング液供給源から前記プライミング液供給流路を通して前記血液供給流路に供給されるプライミング液を、前記血液ポンプを正回転又は逆回転させつつ、前記血液処理器から前記血液浄化膜を介して前記血液流路から前記透析液流路へ排出する、
請求項10に記載のプライミング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−152286(P2012−152286A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12146(P2011−12146)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(507365204)旭化成メディカル株式会社 (65)
【出願人】(500277803)有限会社ネクスティア (17)
【Fターム(参考)】