説明

血液凝固タンパク質複合体

本発明は、水溶性ポリマーを、血液凝固タンパク質の酸化炭水化物部分に共役させる物質および方法に関し、共役を可能にする条件下で、酸化炭水化物部分を活性化水溶性ポリマーと接触させることを含む。より具体的には、本発明は、上述の物質および方法に関し、前記水溶性ポリマーは、活性アミノオキシ基を含有し、オキシム連結が、酸化炭水化物部分と水溶性ポリマー上の活性アミノオキシ基との間に形成される。本発明の一実施形態では、共役は、求核触媒アニリンの存在下で実施される。加えて、生成されたオキシム連結は、NaCNBHでの還元によって安定化させ、アルコキシアミン連結を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2010年5月21に出願された米国特許仮出願第61/347,136号、および2009年7月27日に出願された米国特許仮出願第61/228,828号の利益を主張し、これらのすべては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、水溶性ポリマーを血液凝固タンパク質に共役させるための物質および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、およびADAMTS13プロテアーゼを含む、血液凝固タンパク質等の治療的ポリペプチドは、タンパク質分解酵素によって迅速に分解され、抗体によって中和される。これは、それらの半減期および循環時間を減少させ、それによって、それらの治療有効性を制限する。比較的高い用量および頻繁な投与が、これらの凝固タンパク質の所望の治療効果または予防効果に達し、かつ持続するために必要である。その結果、適切な用量調節を得ることは困難であり、頻繁な静脈内投与の必要性により、患者の生活様式が制限される。
【0004】
ポリペプチド薬物のPEG化は、循環血中のそれらを保護し、それらの薬力学的および薬物動態プロファイルを改善させる(Harris and Chess,Nat Rev Drug Discov.2003;2:214−21)。PEG化プロセスは、エチレングリコール(ポリエチレングリコール(PEG))の反復単位を、ポリペプチド薬物に付着させる。PEG分子は、流体力学的に大容量(球状タンパク質のサイズの5〜10倍)を有し、非常に水溶性であり、水和されており、非毒性であって、非免疫原性であり、身体から迅速に除去される。分子のPEG化は、薬物の酵素分解に対する耐性の増大、生体内半減期の増大、投薬頻度の減少、免疫原性の減少、物理的および熱的安定性の増大、溶解度の増大、液体安定性の増大、および凝集の低減をもたらすことができる。最初のPEG化薬物は、1990年代初期にFDAによって承認された。それ以降、FDAは、経口、注入可能、および局所投与のための種々のPEG化薬物を承認している。
【0005】
コロミン酸(CA)とも称されるポリシアル酸(PSA)は、天然由来の多糖である。それは、α(2→8)ケトシド連結を有するN−アセチルノイラミン酸のホモポリマーであり、その非還元末端において隣接ジオール基を含有する。それは負荷電され、かつヒトの身体の天然成分である。それは大量の細菌から容易に、かつ規定の物理的特長を有して産生することができる(米国特許第5,846,951号)。細菌によって産生されたPSAが、ヒトの身体内で産生されたPSAと化学的および免疫学的に同一であるため、細菌性PSAは、タンパク質に結合したときでさえ、非免疫原性である。いくつかのポリマーとは異なり、PSA酸は、生物分解性である。カタラーゼおよびアスパラギナーゼへのコロミン酸の共有結合は、タンパク質分解酵素または血漿の存在下での酵素安定性を増大することが明らかになっている。ポリシアル酸化および非修飾アスパラギナーゼとの生体内比較研究は、ポリシアル酸化が酵素の半減期を増大させたことを明らかにした(Fernandes and Gregoriadis,Int Biochimica Biophysica Acta 1341:26−34,1997)。
【0006】
水溶性ポリマーと治療的タンパク質との間の共有連結を形成することによる複合体の調製は、種々の化学的方法によって実施することができる。例えば、ペプチドまたはタンパク質へのPEG誘導体の結合は、Robertsら(Adv Drug Deliv Rev 2002;54:459−76)によって検討されている。治療的タンパク質への水溶性ポリマーの結合のための1つの方法は、タンパク質の炭水化物部分を介するポリマーの共役である。タンパク質中の炭水化物の隣接ヒドロキシル(OH)基は、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)で容易に酸化され、活性アルデヒド基を形成することができる(Rothfus et Smith,J Biol Chem 1963;238:1402−10、van Lenten et Ashwell,J Biol Chem 1971;246:1889−94)。その後、ポリマーは、例えば、活性ヒドラジド基を含有する試薬の使用によって、炭水化物のアルデヒド基に結合することができる(Wilchek M and Bayer EA,Methods Enzymol 1987;138:429−42)。より近年の技術は、アルデヒドと反応してオキシム連結を形成するアミノオキシ基を含有する試薬の使用である(国際公開第96/40662号、国際公開第2008/025856号)。
【0007】
治療タンパク質への水溶性ポリマーの共役を説明する更なる例は、フォンヴィレブランド因子中の炭水化物部分の酸化、およびヒドラジド化学を使用するPEGへのその後の結合を教示する国際公開第06/071801号、rFVIIIの酸化、ならびにヒドラジド化学を使用するPEGおよび他の水溶性ポリマー(例えば、PSA、HES、デキストラン)へのその後の結合を教示する米国公開第2009/0076237号、異なる凝固因子(例えば、rFIX、FVIIIおよびFVIIa)の酸化、ならびにオキシム連結を形成することによって、アミノオキシ化学を使用する、例えば、PEGへのその後の結合を教示する国際公開第2008/025856号、およびFIXの酸化、ならびにヒドラジド化学を使用するPEGへのその後の結合を教示する米国特許第5,621,039号に説明されている。
【0008】
近年、アルデヒドを生成するためのシアル酸の温和な過ヨウ素酸塩酸化後、触媒量のアニリンの存在下で、試薬を含有するアミノオキシ基との反応を含む、改善された方法が説明された(Dirksen A et Dawson PE,Bioconjugate Chem.2008;19,2543−8、およびZeng Y et al.,Nature Methods 2009;6:207−9)。アニリン触媒は、オキシムライゲーションを著しく加速させ、非常に低い濃度の試薬の使用を可能にする。
【0009】
水溶性ポリマーを治療的タンパク質に共役させるための方法が使用可能であるにもかかわらず、種々の試薬に関連する費用を最小限化したまま、タンパク質の薬力学的および/または薬物動態特性を改善する、タンパク質に水溶性ポリマーを共役させるための物質および方法を開発する必要性が、依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、タンパク質にポリマーを共役させるための物質および方法を提供し、種々の試薬に関連する費用を最小限化したまま、タンパク質の薬力学的および/または薬物動態特性を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態では、血液凝固タンパク質の酸化炭水化物部分に水溶性ポリマーを共役させる方法は、酸化炭水化物部分を、共役を可能にする条件下で、活性化水溶性ポリマーに接触することを含み、血液凝固タンパク質は、第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、およびADAMTS13プロテアーゼ、またはその生物学的に活性なフラグメント、誘導体、もしくは変異体から成る群より選択され、水溶性ポリマーは、活性アミノオキシ基を含有し、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキシド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボン酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリスチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)から成る群より選択され、炭水化物部分は、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)、四酢酸鉛(Pb(OAc)4)、および過ルテニウム酸カリウム(KRuO4)から成る群より選択される酸化剤を含む緩衝液でのインキュベーションによって酸化され、オキシム連結が、酸化炭水化物部分と水溶性ポリマー上の活性アミノオキシ基との間に形成される。
【0012】
本発明の別の実施形態では、上述の方法に従う水溶性ポリマーは、PSAである。関連する実施形態では、PSAは、約5〜500または10〜300個のシアル酸単位から成る。さらに別の実施形態では、上述の方法に従う血液凝固タンパク質は、FIXである。別の実施形態では、上述の方法に従う血液凝固タンパク質は、FVIIaである。さらに別の実施形態では、上述の方法に従う血液凝固タンパク質は、FVIIIである。また別の実施形態では、酸化剤が過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)である上述の方法が提供される。別の実施形態では、上述の方法に従う血液凝固タンパク質の酸化炭水化物部分は、血液凝固タンパク質の活性化ペプチド内に位置する。
【0013】
また本発明の別の実施形態では、PSAが活性化アミノオキシリンカーを酸化PSAと反応させることによって調製される、上述の方法が提供され、アミノオキシリンカーは、式:
【0014】
【化1】

【0015】
の3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンリンカー、および式:
【0016】
【化2】

【0017】
の3,6,9−トリオキサ−ウンデカン−1,11−ジオキシアミンリンカーから成る群より選択され、
【0018】
PSAは、酸化剤とのインキュベーションによって酸化され、PSAの非還元末端において末端アルデヒド基を形成する。さらに別の実施形態では、活性化アミノオキシリンカーが1〜50個のエチレングリコール単位を含む、上述の方法が提供される。さらに別の実施形態では、アミノオキシリンカーが、3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンである、上述の方法が提供される。関連する実施形態では、酸化剤は、NaIOである。
【0019】
本発明の別の実施形態では、酸化炭水化物部分を、活性化水溶性ポリマーと接触させることが、アニリンおよびアニリン誘導体から成る群より選択される求核触媒を含有する緩衝液中で生じる、上述の方法が提供される。
【0020】
また本発明の別の実施形態では、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)およびアスコルビン酸(ビタミンC)から成る群より選択される還元化合物を含む、緩衝液中の共役された血液凝固タンパク質のインキュベーションによって、共役された血液凝固タンパク質内でオキシム連結を還元するステップをさらに含む、上述の方法が提供される。関連する実施形態では、還元化合物は、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)である。
【0021】
本発明の別の実施形態では、上述の方法によって産生された、修飾された血液凝固タンパク質が提供される。
【0022】
本発明のさらに別の実施形態では、FIX分子、またはその生物学的に活性なフラグメント、誘導体、もしくは変異体を含み、FIX分子に少なくとも1つのアミノオキシPSAが結合する、修飾されたFIXが提供され、該アミノオキシPSAは、1つまたは複数の炭水化物部分を介して、FIXに付着する。
【0023】
本発明の別の実施形態では、FVIIa分子、またはその生物学的に活性なフラグメント、誘導体、もしくは変異体を含み、少なくとも1つのアミノオキシPSAがFVIIa分子に結合する、修飾されたFVIIaが提供され、該アミノオキシPSAは、1つまたは複数の炭水化物部分を介して、FVIIaに付着する。
【0024】
本発明のさらに別の実施形態では、FVIII分子、またはその生物学的に活性なフラグメント、誘導体、もしくは変異体を含み、少なくとも1つのアミノオキシPSAがFVIII分子に結合する、修飾されたFVIIIが提供され、該アミノオキシPSAは、1つまたは複数の炭水化物部分を介して、FVIIIに付着する。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態では、FIX分子、またはその生物学的に活性なフラグメント、誘導体、もしくは変異体を含み、少なくとも1つのアミノオキシPEGがFIX分子に結合する、修飾されたFIXが提供され、該アミノオキシPEGは、1つまたは複数の炭水化物部分を介して、FIXに付着する。
【0026】
本発明の別の実施形態では、FVIIa分子、またはその生物学的に活性なフラグメント、誘導体、もしくは変異体を含み、少なくとも1つのアミノオキシPEGがFVIIa分子に結合する、修飾されたFVIIaが提供され、該アミノオキシPEGは、1つまたは複数の炭水化物部分を介して、FVIIaに付着する。
【0027】
本発明のさらに別の実施形態では、FVIII分子、またはその生物学的に活性なフラグメント、誘導体、もしくは変異体を含み、少なくとも1つのアミノオキシPEGがFVIII分子に結合する、修飾されたFVIIIが提供され、該アミノオキシPEGは、1つまたは複数の炭水化物部分を介して、FVIIIに付着する。
【0028】
さらに別の実施形態では、活性アミノオキシリンカーを含む水溶性ポリマーが提供され、該水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキシド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボン酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリスチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)から成る群より選択され、該活性アミノオキシリンカーは、式:
【0029】
【化3】

【0030】
の3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンリンカー、および式:
【0031】
【化4】

【0032】
の3,6,9−トリオキサ−ウンデカン−1,11−ジオキシアミンリンカーから成る群より選択される。
【0033】
さらに別の実施形態では、活性化アミノオキシリンカーが1〜50個のエチレングリコール単位を含む、上述の方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】凝固第IX因子の一次構造を示す。
【図2】アミノオキシ−PSAへの酸化rFIXの結合を示す。
【図3】水溶性ジアミノオキシリンカー(3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンおよび3,6,9−トリオキサ−ウンデカン−1,11−ジオキシアミン)の合成を示す。
【図4】アミノオキシ−PSAの調製を示す。
【図5】SDS−PAGEおよびクマシー染色を用いるPSA−rFIX複合体の解析評価を示す。
【図6】抗FIXおよび抗PSA抗体での検出を用いるPSA−rFIX複合体の解析評価を示す。
【図7】注入後の時間に対する、天然rFIXおよびPSA−rFIX複合体の活性を示す。
【図8】注入後の時間に対する、PSA−rFVIIIおよびAdvateレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
治療的タンパク質の薬理学的および免疫学的特性は、化学修飾、およびポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキシド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボン酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリスチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)等のポリマー化合物との共役によって改善することができる。得られた複合体の特性は、一般に、ポリマーの構造および大きさに強く左右される。したがって、画定された狭い大きさの分布を有するポリマーが、通常、当該技術分野において好ましい。PEG等の合成ポリマーは、狭い大きさの分布で容易に製造することができ、PSAは、狭い大きさの分布を有する最終PSA調製をもたらすような方法で精製することができる。加えて、画定されたポリマー鎖および狭い大きさの分布を有するPEG化試薬は、市場に出回っており、手頃な価格で市販されている。
【0036】
ポリシアル化等を介する可溶性ポリマーの追加は、FIX等の血液凝固タンパク質、ならびに他の凝固タンパク質(例えば、VWF、FVIIa(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2008/0221032A1号を参照)、およびFVIII)の特性を改善するための1つの方法である。
【0037】
血液凝固タンパク質
本明細書に説明するとき、第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、およびADAMTS13プロテアーゼを含むが、これらに限定されない、血液凝固タンパク質が、本発明によって意図される。本明細書に使用するとき、「血液凝固タンパク質」という用語は、任意の第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、およびADAMTS13プロテアーゼを指し、それらは特定の天然血液凝固タンパク質に関連する、生物学的活性を呈する。
【0038】
血液凝固カスケードは、3つの異なるセグメント、すなわち内因性、外因性、および一般的経路に分割される(Schenone et al.,Curr Opin Hematol.2004;11:272−7)。カスケードには、一連のセリンプロテアーゼ酵素(チモーゲン)およびタンパク質補因子が関与する。必要なとき、不活性キモーゼン前駆体が活性形態に変換され、それは、その後、カスケード中の次の酵素を変換する。
【0039】
内因性経路は、凝固因子VIII、IX、X、XI、およびXIIを必要とする。内因性経路の開始は、プレカリクレイン、高分子量キニノゲン、第XI因子(FXI)、および第XII因子(FXII)が負荷電された表面に暴露されるときに生じる。血小板から分泌されるカルシウムイオンおよびリン脂質も必要とされる。
【0040】
外因性経路は、血管の血管腔が損傷されたときに開始される。膜糖タンパク質組織因子が暴露され、次いで、循環因子VII(FVII)に、かつ既存の少量のその活性型FVIIaに結合する。この結合は、FVIIaへのFVIIの完全な変換に続き、カルシウムおよびリン脂質の存在下で、第IX因子(FIX)の第IX因子a(FIXa)への変換、および第X因子(FX)の第X因子a(FXa)への変換を促進する。組織因子とのFVIIaの会合は、基質(FIXおよびFX)のためのFVIIの結合部位を接近させることによって、かつ構造変化を誘発させることによって、タンパク質分解活性を強化させ、それは、FVIIaの酵素活性を強化させる。
【0041】
FXの活性は、2つの経路の共有点である。リン脂質およびカルシウムの他に、因子Va(FVa)およびXaは、プロトロンビンをトロンビン(プロトロンビナーゼ錯体)に変換し、それは、次いで、フィブリノゲンを開裂して、フィブリンモノマーを形成する。モノマーは、重合化されフィブリン鎖を形成する。第XIIIa因子(FXIIIa)は、これらの鎖を相互に共有結合して、剛性メッシュを形成する。
【0042】
FVIIaへのFVIIの変換はまた、トロンビン、FIXa、FXa、第XIa因子(FXIa)、および第XIIa因子(FXIIa)を含む、多くのプロテアーゼによって触媒される。カスケードの初期段階の阻害のために、組織因子経路阻害剤は、FVIIa/組織因子/FXa生成物錯体を標的とする。
【0043】
A.ポリペプチド
一態様では、本発明の出発物質は、血液凝固タンパク質であり、それは、ヒト血漿に由来することができるか、または米国特許第4,757,006号、米国特許第5,733,873号、米国特許第5,198,349号、米国特許第5,250,421号、米国特許第5,919,766号、およびEP第306 968号に説明する、組換え操作技術によって産生することができる。本明細書に説明するとき、血液凝固タンパク質という用語は、天然血液凝固タンパク質に関連する生物学的活性を呈する、任意の血液凝固タンパク質分子を指す。本発明の一実施形態では、血液凝固タンパク質分子は、完全長の血液凝固タンパク質である。
【0044】
意図される血液凝固タンパク質分子は、完全長のタンパク質、完全長のタンパク質の前駆体、完全長のタンパク質の生物学的に活性なサブユニットまたはフラグメント、ならびに血液凝固タンパク質のこれらの形態のうちのいずれかの生物学的に活性な誘導体および変異体を含む。したがって、血液凝固タンパク質は、(1)少なくとも約25、約50、約100、約200、約300、約400以上のアミノ酸の領域にわたって、参照核酸、または本明細書に説明するアミノ酸配列によってコードされたポリペプチドと、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%以上のアミノ酸配列同一性を有する、アミノ酸配列を有し、および/または(2)本明細書に説明する参照アミノ酸配列を含む免疫原、その免疫原性フラグメント、および/またはその保存的に修飾された変異体に対して生成された抗体、例えば、ポリクロナールまたはモノクローナル抗体に特異的に結合する、血液凝固タンパク質を含む。
【0045】
本発明に従い、「組換え血液凝固タンパク質」という用語は、組換えDNA技術を介して得られた任意の血液凝固タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、この用語は、本明細書に説明するタンパク質を包含する。
【0046】
本明細書に使用するとき、「内在性血液凝固タンパク質」は、治療を受けることを企図されている哺乳類に由来する血液凝固タンパク質を含む。該用語はまた、該哺乳類に存在する導入遺伝子または任意の他の外来DNAから転写された血液凝固タンパク質を含む。本明細書に使用するとき、「外在性血液凝固タンパク質」は、治療を受けることを企図されている哺乳類に由来しない血液凝固タンパク質を含む。
【0047】
本明細書に使用するとき、「血漿由来血液凝固タンパク質」または「血漿性」は、凝固経路に関与する特性を有する哺乳類から得られた、血中に見られるタンパク質のすべての形態を含む。
【0048】
本明細書に使用するとき、「生物学的に活性な誘導体」または「生物学的に活性な変異体」は、該分子の実質的に同一の機能的および/または生物学的特性(結合特性等)、および/または同一の構造基盤(ペプチド主鎖または塩基ポリマー単位)を有する分子の任意の誘導体または変異体を含む。
【0049】
「類似体」、「変異体」、または「誘導体」は、天然由来の分子と構造が実質的に同様であり、ある特定の例では、異なる程度ではあるが、同一の生物学的活性を有する化合物である。例えば、ポリペプチド変異体は、参照ポリペプチドと実質的に同様の構造を有し、同一の生物学的活性を有するポリペプチドを指す。変異体または類似体は、(i)ポリペプチドの1つまたは複数の末端、および/または自然発生のポリペプチド配列(例えば、フラグメント)の1つまたは複数の内部領域における1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失、(ii)ポリペプチドの1つまたは複数の末端、および/または自然発生のポリペプチド配列の1つまたは複数の内部領域(典型的には、「挿入」)における1つまたは複数のアミノ酸の挿入または追加(典型的には、「追加」または「融合」)、または(iii)自然発生のポリペプチド内の他のアミノ酸への1つまたは複数のアミノ酸の置換に関与する1つまたは複数の変異に基づき、類似体が由来する自然発生ポリペプチドと比較して、それらのアミノ酸配列の組成において異なる。例として、「誘導体」は、例えば、化学的に修飾されている参照ポリペプチドと同一または実質的に同様の構造を有するポリペプチドを指す。
【0050】
変異体または類似体ポリペプチドは、挿入変異体を含み、1つまたは複数のアミノ酸残基が本発明の血液凝固タンパク質アミノ酸配列に追加される。挿入は、タンパク質の末端のいずれか、または両方に位置してもよい、および/または血液凝固タンパク質アミノ酸配列の内部領域内に位置付けられてもよい。末端のいずれか、または両方において追加の残基を伴う挿入変異体は、例えば、融合タンパク質、およびアミノ酸タグまたは他のアミノ酸ラベルを含むタンパク質を含む。一態様では、血液凝固タンパク質分子は、特に、分子が大腸菌等の細菌性細胞内に組換えで発現するときに、随意に、N−末端Metを含有する。
【0051】
欠失変異体では、本明細書に説明する血液凝固タンパク質ポリペプチド中の1つまたは複数のアミノ酸残基が除去される。欠失は、血液凝固タンパク質ポリペプチドの1つまたは両方の末端において、および/または血液凝固タンパク質アミノ酸配列内の1つまたは複数の残基の除去によって達成することができる。したがって、欠失変異体は、血液凝固タンパク質ポリペプチド配列のフラグメントを含む。
【0052】
置換変異体では、血液凝固タンパク質ポリペプチドの1つまたは複数のアミノ酸残基が除去され、代替の残基で交換される。一態様では、置換は、性質上保存的であり、このタイプの保存的置換は、当該技術分野において公知である。代替的には、本発明は、非保存的でもある置換を包含する。例示的な保存的置換を、Lehninger,[Biochemistry,2nd Edition;Worth Publishers,Inc.,New York(1975),pp.71−77]に説明されており、下に提示する。
保存的置換
側鎖の特徴 アミノ酸
非分極性(疎水性):
A.脂肪族 ALIVP
B.芳香族 FW
C.硫黄含有 M
D.境界 G
非荷電極性:
A.ヒドロキシル STY
B.アミド NQ
C.スルフヒドリル C
D.境界 G
正電荷(塩基性) KRH
負電荷(酸性) DE
【0053】
代替的には、例示的保存置換を下に提示する。
保存的置換II
元の残基 例示の置換
Ala(A) Val、Leu、Ile
Arg(R) Lys、Gln、Asn
Asn(N) Gln、His、Lys、Arg
Asp(D) Glu
Cys(C) Ser
Gln(Q) Asn
Glu(E) Asp
His(H) Asn、Gln、Lys、Arg
Ile(I) Leu、Val、Met、Ala、Phe
Leu(L) Ile、Val、Met、Ala、Phe
Lys(K) Arg、Gln、Asn
Met(M) Leu、Phe、Ile
Phe(F) Leu、Val、Ile、Ala
Pro(P) Gly
Ser(S) Thr
Thr(T) Ser
Trp(W) Tyr
Tyr(Y) Trp、Phe、Thr、Ser
Val(V) Ile、Leu、Met、Phe、Ala
【0054】
B.ポリヌクレオチド
本発明の血液凝固タンパク質をコードする核酸としては、例えば、遺伝子、pre−mRNA、mRNA、cDNA、多形変異体、対立遺伝子、合成および自然発生の変異が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
また、本発明の血液凝固タンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、(1)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に説明する参照アミノ酸配列をコードする核酸、およびその保存的に修飾された変異体に特異的にハイブリダイズする、(2)少なくとも約25、約50、約100、約150、約200、約250、約500、約1000以上のヌクレオチド(最大、成熟タンパク質の1218ヌクレオチドの完全長配列)の領域にわたって、本明細書に説明する参照核酸配列と、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%以上のヌクレオチド配列同一性を有する、核酸配列を有するポリヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な「ストリンジェントなハイブリダイゼーション」条件は、50%のホルムアミド、5×SSC、20mMのNaPO4、pH6.8中の42℃でのハイブリダイゼーション、および30分間、55℃での1×SSCの洗浄を含む。これらの例示的条件の変化は、ハイブリダイズされる配列の長さおよびGCヌクレオチド含有量に基づき行うことができることを理解されたい。当該技術分野における標準公式は、適切なハイブリダイゼーション条件を決定するために適切である。Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Second ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)9.47−9.51を参照。
【0056】
「天然由来の」ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、典型的には、霊長類(例えば、ヒト)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスター)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、または任意の哺乳類が挙げられるが、これらに限定されない哺乳類からのものである。本発明の核酸およびタンパク質は、組換え分子(例えば、異種であり、野生型配列またはその変異体をコードする、または非天然由来)であることができる。
【0057】
本発明のある特定の実施形態では、上述のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、以下の血液凝固タンパク質によって例示される。
【0058】
第VIIa因子
FVII(安定因子またはプロコンベルチンとも称される)は、止血および凝固における中枢的役割を有する、ビタミンK依存性セリンプロテアーゼ糖タンパク質である(Eigenbrot,Curr Protein Pept Sci.2002;3:287−99)。
【0059】
FVIIは、肝臓内で合成され、48kDの単鎖糖タンパク質として分泌される。FVIIは、すべてのビタミンK依存性セリンプロテアーゼ糖タンパク質と、脂質膜とのタンパク質の相互作用に関与する、9〜12残基を有するアミノ末端γカルボキシシグルタミン酸(Gla)ドメイン、カルボキシ末端セリンプロテアーゼドメイン(触媒ドメイン)、および組織因子との相互作用を媒介する、カルシウムイオン結合部位を含有する2つの上皮成長因子様ドメインから成る同一のタンパク質ドメイン構造を共有する。γグルタミルカルボキシラーゼは、分子のアミノ末端タンパク質部分内のGla残基のカルボキシル化を触媒する。カルボキシラーゼは、その作用に対してビタミンKの還元型に左右され、それは、エポキシド型に酸化される。ビタミンKエポキシド還元酵素がビタミンKのエポキシド型を還元型に変換し戻すために必要である。
【0060】
主要な割合のFVIIは、酵素原形態の血漿中で循環し、この形態の活性は、アルギニン152とイソロイシン153との間のペプチド結合の開裂をもたらす。結果の活性FVIIaは、単一ジスルフィド結合(Cys135〜Cys262)を介して連結した、NH由来の軽鎖(20kD)およびCOOH末端由来の重鎖(30kD)から成る。軽鎖は、膜結合Glaドメインを含有し、重鎖は、触媒ドメインを含有する。
【0061】
遺伝因子および環境因子によって決定されるFVIIの血漿濃度は、約0.5mg/mLである(Pinotti et al.,Blood.2000;95:3423−8)。異なるFVII遺伝子型は、平均FVIIレベルにおいて数倍の差異をもたらすことができる。血漿FVIIレベルは、健康な女性の妊娠中に上昇し、また、年齢とともに増大し、女性および高トリグリセリド血症を罹患するヒトにおいてより高い。FVIIは、すべての凝固促進要因のうち最短の半減期(3〜6時間)を有する。健康な個人におけるFVIIaの平均血漿濃度は、3.6ng/mLであり、FVIIaの循環半減期は、他の凝固因子と比較して、比較的長い(2.5時間)。
【0062】
遺伝性FVII欠損症は、一般集団において500,000人当たり1症例であると推定される有病率を有する、稀な常染色体劣性出血性疾患である(Acharya et al.,J Thromb Haemost.2004;2248−56)。阻害剤からの後天的FVII欠損症もまた、非常に稀である。セファロスポリン、ペニシリン、および経口抗凝固剤等の薬物に関連して生じる欠損症の症例も報告されている。さらに、後天的FVII欠損症は、自然に、または例えば骨髄腫、敗血症、再生不良性貧血等の他の症状とともに、インターロイキン−2および抗胸腺細胞グロブリン療法で生じることが報告されている。
【0063】
参照ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列としては、例えば、ゲノム配列のGenBank受託番号J02933、cDNAのM13232(Hagen et al.PNAS 1986;83:2412−6)、およびポリペプチド配列のP08709(参照は、その全体が本明細書に組み込まれる)が挙げられる。FVIIの種々の多形性は、例えば、Sabater−Lleal et al(Hum Genet.2006;118:741−51を参照)(参照は、その全体が本明細書に組み込まれる)に説明されている。
【0064】
第IX因子
FIXは、カルシウムイオン、リン脂質、およびFVIIIaの存在下で、FXをその活性型に変換することによって、血液凝固の内因性経路に関与するビタミンK依存性血漿タンパク質である。FIXの主要な触媒能力は、FX内の特定のアルギニン−イソロイシン結合に対して特性を有する、セリンプロテアーゼとしての触媒能力である。FIXの活性化は、FIXからの活性化ペプチドの切除をもたらし、1つまたは複数のジスルフィド結合によって保持される2つの鎖を含む活性FIX分子を産生する、FXIaによって生じる。FIXの欠損は、X連鎖血友病Bの原因である。
【0065】
血友病AおよびBはそれぞれ、FVIIIおよびFIXポリペプチドの欠損を特徴とする遺伝性疾患である。欠損の根本的な原因は、頻繁に、FVIIIおよびFIX遺伝子の突然変異の結果であり、それらの両方は、X染色体上に位置する。血友病に対する従来の療法は、しばしば、正常の個人からのプール血漿または半精製された凝固タンパク質の静脈内投与を伴う。これらの調製は、感染性プリオン、HIV、パルボウイルス、A型肝炎、およびC型肝炎等の病原体またはウイルスによって汚染される可能性がある。したがって、ヒト血清の使用を必要としない治療薬に対する緊急の必要性が存在する。
【0066】
FIX活性の減少レベルは、血友病Bの重症度に直接比例する。血友病Bの現在の治療は、血漿由来または組換えFIX(FIX置換または交換治療もしくは療法と称される)による、不足したタンパク質の交換から成る。
【0067】
FIXのポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列は、例えば、UniProtKB/Swiss−Prot受託番号P00740、米国特許第6,531,298号、および図1において見出すことができる。
【0068】
第VIII因子
凝固第VIII因子(FVIII)は、非常に低い濃度で血漿中を循環し、フォンヴィレブランド因子(VWF)に非共有結合する。止血中、FVIIIは、VWFから分離され、カルシウムおよびリン脂質、または細胞膜の存在下で、活性化の速度を強化させることによって、活性第IX因子(FIXa)媒介のFX活性化のための補因子として機能する。
【0069】
FVIIIは、ドメイン構造A1−A2−B−A3−C1−C2を有する、約270〜330kDの単鎖前駆体として合成される。血漿(例えば、「血漿由来」または「血漿性」)から精製されるとき、FVIIIは、重鎖(A1−A2−B)および軽鎖(A3−C1−C2)から成る。軽鎖の分子質量は、80kDであり、Bドメイン内のタンパク質分解により、重鎖は、90〜220kDの範囲内である。
【0070】
FVIIIはまた、出血性障害における治療用途のための組換えタンパク質として合成される。種々の生体内アッセイは、治療薬物としての組換えFVIII(rFVIII)の潜在的有効性を決定するために考案されている。これらのアッセイは、内在性FVIIIの生体内効果を模倣する。FVIIIのin vitroトロンビン治療は、in vitroアッセイによって測定される、その凝固促進活性の迅速な増加およびその後の減少をもたらす。この活性化および不活性化は、例えば、FVIIIをVWFから解離させ、かつリン脂質表面に結合させて、異なる結合エピトープの有効性を調整するか、またはある特定のモノクローナル抗体への結合能力を調整する、重鎖および軽鎖の両方における特定の制限されたタンパク質分解と一致する。
【0071】
FVIIIの欠如および機能不全は、最も頻度の高い出血性障害である血友症Aと関連する。血友症Aの管理のための治療選択は、血漿由来、またはrFVIII濃縮物を用いる交換療法である。1%以下のFVIIIレベルを有する重度の血友症Aを罹患する患者は、一般に、FVIIIを用量との間で1%以上に維持することを目的とする予防療法を受けている。循環血中の種々のFVIII生成物の平均半減期を考慮すると、この結果は、通常、FVIIIを週に2〜3回投与することによって達成することができる。
【0072】
参照ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列としては、例えば、UniProtKB/Swiss−Prot P00451(FA8_HUMAN)、Gitschier J et al.,Characterization of the Human Factor VIII gene,Nature,312(5992):326−30(1984)、Vehar GH et al.,Structure of human Factor VIII,Nature,312(5992):337−42(1984)、Thompson AR.Structure and Function of the Factor VIII gene and protein,Semin Thromb Hemost,2003:29;11−29(2002)が挙げられる。
【0073】
フォンヴィレブランド因子
フォンヴィレブランド因子(VWF)は、約500〜20,000kDの範囲のサイズの一連の多量体として血漿中を循環する糖タンパク質である。VWFの多量体形態は、ジスルフィド結合によって相互に連結された250kDのポリペプチドサブユニットから成る。VWFは、損傷した血管壁の内皮下層への初期血小板粘着を媒介する。より大きな多量体のみが止血活性を呈する。内皮細胞は大きいポリマー形態のVWFを分泌し、低分子重量を有するVWFの形態(低分子重量のVWF)はタンパク質分解開裂から生じることが想定されている。高分子質量を有する多量体は、内皮細胞のバイベルパラーデ小体内に保管され、刺激時に遊離される。
【0074】
VWFは、大部分の反復ドメインから成るプレプロVWFとして内皮細胞および巨核球によって合成される。シグナルペプチドの開裂時に、プロVWFは、そのC末端領域においてジスルフィド連結を介して二量体化する。二量体は、多量体化のためのプロトマーとして機能し、それは、遊離と末端の間のジスルフィド連結によって支配される。多量体へのアセンブリの後、プロペプチド配列のタンパク質分解除去が続く(Leyte et al.,Biochem.J.274(1991),257−261)。
【0075】
VWFのクローン化cDNAから予測される一次翻訳生成物は、2813残基の前駆体ポリペプチド(プレプロVWF)である。プレプロVWFは、22個のアミノ酸シグナルペプチドおよび741個のアミノ酸プロペプチドから成り、成熟VWFは2050個のアミノ酸を含む(Ruggeri Z.A.,and Ware,J.,FASEB J.,308−316(1993)。
【0076】
VWFの欠損は、ほぼ顕著な出血性表現型を特徴とする、フォンヴィレブランド病(VWD)の原因である。3型VWDは、VWFが完全に欠損している最も重度な形態であり、1型VWDは、VWFの量的減少に関連し、その表現型は、非常に軽度である可能性がある。2型VWDは、VWFの質的欠損に関連し、3型VWDと同様の重度である可能性がある。2型VWDは、多くの亜種形態を有し、そのうちのいくつかは、高分子重量の多量体の損失または減少に関連する。2a型フォンヴィレブランド病(VWD−2A)は、中間体および大きい多量体の両方の損失を特徴とする。VWD−2Bは、最も高い分子重量の多量体の損失を特徴とする。VWFに関連する他の疾患および障害は、当該技術分野において既知である。
【0077】
プレプロVWFのポリヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ、GenBankアクセッション番号NM_000552およびNP_000543で入手可能である。
【0078】
本発明に従う他の血液凝固タンパク質は、例えば、Mann KG,Thromb Haemost,1999;82:165−74の当該技術分野において説明されている。
【0079】
C.血液凝固タンパク質の産生
血液凝固タンパク質の産生は、(i)遺伝子操作による組換えDNAの産生、(ii)例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、またはマイクロインジェクションによる(これらに限定されない)原核細胞または真核細胞への組換えDNAの導入、(iii)形質転換細胞のインキュベーション、(iv)例えば、構造的に、または誘導時の血液凝固タンパク質の発現、および(v)精製された血液凝固タンパク質を得るために、例えば、培養培地から、または形質転換細胞を収集することによる血液凝固タンパク質の単離のための、当該技術分野において既知の任意の方法を含む。
【0080】
他の態様では、血液凝固タンパク質は、薬理学的に許容される血液凝固タンパク質分子を産生することによって特徴付けられる好適な原核または真核宿主系内の発現によって産生される。真核細胞の例は、CHO、COS、HEK293、BHK、SK−Hep、およびHepG2等の哺乳類細胞である。
【0081】
多種多様なベクターが血液凝固タンパク質の調製に使用され、真核および原核発現ベクターから選択される。原核発現のためのベクターの例としては、pRSET、pET、およびpBAD等のプラスミドが挙げられるが、これらに限定されず、原核発現ベクターに使用されるプロモーターは、lac、trc、trp、recA、またはaraBADのうちの1つまたは複数が挙げられるが、これらに限定されない。真核発現のためのベクターの例としては、(i)酵母における発現では、AOX1、GAP、GAL1、またはAUG1等に制限されないプロモーターを使用する、pAO、pPIC、pYES、またはpMET等が挙げられるが、これらに限定されないベクター、(ii)昆虫細胞における発現では、PH、p10、MT、Ac5、OpIE2、gp64、またはpolh等のプロモーターを使用する、pMT、PAc5、pIB、pMIB、またはpBAC等に限定されないベクター、および(iii)哺乳類細胞における発現では、pSVL、pCMV、pRc/RSV、pcDNA3、またはpBPV等に限定されないベクター、および一態様では、CMV、SV40、EF−1、UbC、RSV、ADV、BPV、およびβ−アクチン等に制限されないプロモーターを使用する、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、またはレトロウイルス等に限定されないウイルス系に由来するベクターが挙げられる。
【0082】
D.投与
一実施形態では、本発明の共役された血液凝固タンパク質は、静脈内、筋肉内、または腹腔内注入等の注入によって投与されてもよい。
【0083】
本発明の血液凝固タンパク質を含む共役組成物を、ヒトまたは試験動物に投与するために、一態様では、組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む。「薬学的に」または「薬理学的に許容される」という用語は、安定し、凝集および開裂生成物等のタンパク質分解を阻害し、加えて、下記に説明するとおり、当該技術分野において公知の経路を使用して投与されるとき、アレルギー反応または他の有害反応を産生しない分子的実体および組成物を指す。「薬学的に許容される担体」は、上記に開示する薬剤を含む、任意の、かつすべての臨床的に有用な溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、ならびに同等物を含む。
【0084】
本明細書に使用するとき、「有効量」は、本明細書に説明する出血性障害を有する哺乳類を治療するために好適な用量を含む。
【0085】
組成物は、経口的、局所的、経皮的、非経口的、吸引スプレーによって、経膣的、経直腸的、または頭蓋内注入によって、投与されてもよい。本明細書に使用するとき、非経口という用語は、皮下注入、静脈内注入、筋肉内注入、嚢内注入、または点滴技術を含む。特定の部位における静脈内、皮下、筋肉内、乳房内、腹腔内、髄腔内、球後、肺内注入、または外科的移植による投与もまた、意図される。一般に、組成物には、実質的に発熱物質、ならびに受容者に有害である可能性がある他の不純物がない。
【0086】
組成物の単一または複数の投与は、治療する医師によって選択される用量レベルまたはパターンで実行することができる。疾患の予防または治療では、適切な投与量は、上述のとおり、治療される疾患の種類、疾患の重症度および経過、薬物が予防または治療目的のために投与されているか、以前の療法、患者の病歴および薬物への反応、ならびに担当医の判断に左右される。
【0087】
本発明はまた、本明細書に定義する有効量の共役された血液凝固タンパク質を含む薬学的組成物に関する。薬学的組成物はさらに、薬学的に許容される担体、希釈剤、塩、緩衝液、または賦形剤を含んでもよい。薬学的組成物は、上記に定義する出血性障害を治療するために使用することができる。本発明の薬学的組成物は、溶液または凍結乾燥された生成物であってもよい。薬学的組成物の溶液は、任意の好適な凍結乾燥プロセスに供してもよい。
【0088】
さらなる態様として、本発明は、対象に投与するためのその使用を促進する方法で梱包された本発明の組成物を含むキットを含む。一実施形態では、かかるキットは、本明細書に説明する化合物または組成物(例えば、共役された血液凝固タンパク質を含む組成物)を含み、それは密封ボトルまたは器等の容器に梱包され、その容器にはラベルが貼られているか、または方法を実践する上での化合物または組成物の使用を説明するパッケージに含まれる。一実施形態では、キットは、共役された血液凝固タンパク質を含む組成物を有する第1の容器、および第1の容器内の組成物のための生理的に許容される再構成溶液を有する第2の容器を含有する。一態様では、化合物または組成物は、単位用量形態で梱包される。キットはさらに、具体的な投与経路に従い組成物を投与するための好適な装置を含んでもよい。好ましくは、キットは、治療的タンパク質またはペプチド組成物の使用を説明するラベルを含有する。
【0089】
水溶性ポリマー
一態様では、提供される血液凝固タンパク質誘導体(すなわち、共役された血液凝固タンパク質)分子は、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキシド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボン酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリスチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)が挙げられるが、これらに限定されない、水溶性ポリマーに結合する。本発明の一実施形態では、水溶性ポリマーは、350〜120,000、500〜100,000、1000〜80,000、1500〜60,000、2,000〜45,000Da、3,000〜35,000Da,および5,000〜25,000Daの範囲の分子重量を有する、シアル酸分子から成る。水溶性ポリマーの結合は、タンパク質への直接結合によって、またはリンカー分子を介して実行することができる。化学的リンカーの一例は、炭水化物−選択的ヒドラジドおよびスルフヒドリル反応マレイミド基を含有する、MBPH(4−[4−N−マレイミドフェニル]酪酸ヒドラジド)である(Chamow et al.,J Biol Chem 1992;267:15916−22)。他の例示的および好ましいリンカーは、下記に説明される。
【0090】
一実施形態では、誘導体は、天然の治療的血液凝固タンパク質生成物の完全な機能活性を保持し、天然の治療的血液凝固タンパク質生成物と比較して、延長した生体内半減期を提供する。別の実施形態では、誘導体は、天然の血液凝固タンパク質に対して、少なくとも20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56,57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、または150パーセント(%)の生物学的活性を保持する。関連する態様では、誘導体および天然の血液凝固タンパク質の生物学的活性は、血液凝固因子抗原値に対する色原体活性の割合(血液凝固因子:Chr:血液凝固因子:Ag)によって決定される。本発明のさらに別の実施形態では、構築物の半減期は、天然の血液凝固タンパク質の生体内半減期に対して、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍減少または増大する。
【0091】
A.シアル酸およびPSA
本明細書に使用するとき、「シアル酸部分」は、水性溶液または懸濁液中で可溶性であり、薬学的に有効量のPSA−血液凝固タンパク質複合体の投与時に、哺乳類への副作用等の悪影響がわずか、または全くない、シアル酸モノマーまたはポリマー(「多糖類」)を含む。一態様では、ポリマーは、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、または500個のシアル酸単位を有することを特徴とする。ある特定の態様では、異なるシアル酸単位が鎖に組み込まれる。
【0092】
本発明の一実施形態では、多糖化合物のシアル酸部分は、非常に親水性であり、別の実施形態では、全化合物は、非常に親水性である。親水性は、主に、シアル酸単位のペンダントカルボキシル基、ならびにヒドロキシル基によって与えられる。サッカリド単位は、アミン基、ヒドロキシル基、または硫酸基等の他の官能基、またはその組み合わせを含有してもよい。これらの基は、自然発生のサッカリド化合物上に存在してもよいか、または誘導体多糖化合物中に導入されてもよい。
【0093】
自然発生するポリマーPSAは、広域な大きさの分布(例えば、Sigma C−5762)、および高い多分散性(PD)を示す、多分散調製物として使用可能である。多糖類は通常、共精製する内毒素の特有のリスクを持つ細菌内で産生されるため、長いシアル酸ポリマー鎖の精製は、内毒素含有量の増大の可能性を上げる場合がある。1〜4個のシアル酸単位を有する短いPSA分子はまた、合成的に調製することができ(Kang SH et al.,Chem Commun.2000;227−8、Ress DK and Linhardt RJ,Current Organic Synthesis.2004;1:31−46)、したがって、高い内毒素レベルのリスクを最小限化させる。しかしながら、ここで、内毒素もない、狭い大きさの分布および低い多分散性を有するPSA調製物を製造することができる。一態様では、本発明のための特定の使用の多糖化合物は、細菌によって産生された多糖化合物である。これらの自然発生の多糖類のうちのいくつかは、糖脂質として知られている。一実施形態では、多糖化合物には、実質的に、末端ガラクトース単位がない。
【0094】
B.ポリエチレングリコール(PEG)およびPEG化
ある特定の態様では、血液凝固因子、例えば、FVIII、FVIIa、FIX、または他の血液凝固因子分子は、種々の化学的方法のいずれかによって、水溶性ポリマーに共役される(Roberts JM et al.,Advan Drug Delivery Rev 2002;54:459−76)。例えば、一実施形態では、FVIII、FVIIa、またはFIXは、PEGの共役によって、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルを使用して、タンパク質の遊離アミノ基に修飾される。別の実施形態では、水溶性ポリマー、例えば、PEGは、マレインイミド化学、または前酸化後に、FVIII、FVIIa、もしくはFIXの炭水化物部分へのPEGヒドラジドもしくはPEGアミンの結合を使用して、遊離SH基に結合される。
【0095】
一態様では、共役は、水溶性ポリマーの直接結合(またはリンカー系を介する結合)によって、安定結合の形成下で、血液凝固因子、例えば、FVIII、FVIIa、またはFIXに対して実行される。分解性に加えて、放出性または加水分解性リンカー系が本発明のある特定の態様に使用される(Tsubery et al.J Biol Chem 2004;279:38118−24/Greenwald et al.,J Med Chem 1999;42:3657−67/Zhao et al.,Bioconj Chem 2006;17:341−51/国際公開第2006/138572A2号/米国特許第7259224B2号/米国特許第7060259B2号)。
【0096】
本発明の一実施形態では、血液凝固因子、例えば、FVIII、FVIIa、またはFIXは、コハク酸スクシンイミジル、グルタル酸スクシンイミジル、またはプロピオン酸スクシンイミジル等のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)を含有するポリエチレングリコール誘導体の使用によって、リジン残基を介して修飾される。これらの誘導体は、安定アミド結合を形成することによって、温和な条件下で、FVIII、FVIIa、またはFIXのリジン残基と反応する。本発明の一実施形態では、PEG誘導体の鎖長は、5,000Daである。直鎖および分岐構造を含む、500〜2,000Da、2,000〜5,000Da、5,000以上〜最大10,000Da、または10,000以上〜最大20,000Da、または20,000以上〜最大150,000Daの鎖長を有する他のPEG誘導体が、種々の実施形態に使用される。
【0097】
アミノ基のPEG化のための代替の方法としては、ウレタン結合を形成することによるPEGカルボン酸での化学的共役、または二級アミド結合を形成する還元アミノ化によるアルデヒドもしくはケトンとの反応が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
本発明の一実施形態では、血液凝固因子、例えば、FVIII、FVIIa、FIX、または他の血液凝固因子、分子は、市販されるPEG誘導体を使用して化学修飾される。代替的態様におけるこれらのPEG誘導体は、直鎖または分岐構造を有する。NHS基を含有するPEG誘導体の例は、下記に列挙される。
【0099】
以下のPEG誘導体は、Nektar Therapeutics(Huntsville,Ala.、www.nektar.com/PEG試薬カタログ;Nektar Advanced PEGylation、価格表2005〜2006を参照)から市販されるPEG誘導体の非制限的な例である:
mPEG−プロピオン酸スクシンイミジル(mPEG−SPA)
【0100】
【化5】

【0101】
mPEG−スクシンイミジルα−メチルブタノアート(mPEG−SMB)
【0102】
【化6】

【0103】
mPEG−CM−HBA−NHS(CM=カルボキシメチル;HBA=ヒドロキシ酪酸)
【0104】
【化7】

【0105】
分岐PEG誘導体(Nektar Therapeutics)の構造:
分岐PEG N−ヒドロキシスクシンイミド(mPEG2−NHS)
【0106】
【化8】

【0107】
分岐構造を有するこの試薬は、Kozlowski et al.(BioDrugs 2001;5:419−29)によって、より詳細に説明されている。
【0108】
PEG誘導体の他の非制限的例は、NOF Corporation(Tokyo,Japan;www.nof.co.jp/english:カタログ2005を参照)から市販されている。
直鎖PEG誘導体(NOF Corp.)の一般構造:
【0109】
【化9】

【0110】
X=カルボキシメチル
【0111】
【化10】

【0112】
X=カルボキシペンチル
【0113】
【化11】

【0114】
X=コハク酸
【0115】
【化12】

【0116】
X=グルタル酸
【0117】
【化13】

【0118】
分岐PEG誘導体(NOF Corp.)の構造:2,3−ビス(メチルポリオキシエチレン−オキシ)−1−(1,5−ジオキソ−5−スクシンイミジルオキシ、ペンチルオキシ)プロパン
【0119】
【化14】

【0120】
2,3−ビス(メチルポリオキシエチレン−オキシ)−1−(スクシンイミジルカルボキシペンチルオキシ)プロパン
【0121】
【化15】

【0122】
これらのプロパン誘導体は、1,2置換パターンを有するグリセロール主鎖を示す。本発明では、1,3置換を有するグリセロール構造、または米国特許第2003/0143596A1号に説明される他の分岐構造に基づく分岐PEG誘導体もまた、意図される。
【0123】
Tsubery et al.(J Biol Chem 2004;279:38118−24)、およびShechter et al.(国際公開第04089280A3号)によって説明される、分解性を有するPEG誘導体(例えば、加水分解性リンカー)もまた、意図される。
【0124】
驚くべきことに、本発明のPEG化されたFVIII、FVIIa、FIX、または他の血液凝固因子は、延長した生体内半減期と組み合わせて、機能活性を呈する。加えて、PEG化されたrFVIII、FVIIa、FIX、または他の血液凝固因子は、トロンビン不活性化に対してより耐性であるように思える。
【0125】
C.付着方法
血液凝固タンパク質は、当業者に既知の種々の技術のいずれかによって、多糖化合物に共有連結され得る。本発明の種々の態様では、シアル酸部分は、例えば、米国特許第4,356,170号に説明される方法(参照により、本明細書に組み込まれる)によって、血液凝固タンパク質、例えば、FIX、FVIII、FVIIa、またはVWFに結合される。
【0126】
PSAをポリペプチドに結合するための他の技術はまた、既知であり、本発明によって意図される。例えば、米国公開第2007/0282096号は、例えば、PSAのアミンまたはヒドラジド誘導体をタンパク質に共役させることを説明する。加えて、米国公開第2007/0191597号は、還元末端において基質(例えば、タンパク質)との反応のためのアルデヒド基を含有するPSA誘導体を説明する。これらの参照文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0127】
種々の方法が米国特許第5,846,951号の7列、15行〜8列、5行に開示される(参照によりその全体が組み込まれる)。例示的な技術は、血液凝固タンパク質または多糖のうちのいずれかの上のカルボキシル基と、血液凝固タンパク質または多糖のアミン基との間のペプチド結合、または血液凝固タンパク質または多糖のカルボキシル基と、血液凝固タンパク質または多糖のヒドロキシル基との間のエステル連結を介する連結を含む。血液凝固タンパク質が多糖化合物に共有結合される、別の連結は、過ヨウ素酸塩酸化によって多糖の非還元末端において形成されたアルデヒド基と反応させられる血液凝固タンパク質上の遊離アミノ基の間のシッフ塩基を介する(Jennings HJ and Lugowski C,J Immunol.1981;127:1011−8;Fernandes AI and Gregoriadis G,Biochim Biophys Acta.1997;1341;26−34)。一態様では、生成されたシッフ塩基は、NaCNBH3での特異的還元によって安定化され、二級アミンを形成する。代替の方法は、前酸化後のNHClでの還元アミノ化によるPSA内の末端遊離アミノ基の生成である。二官能性試薬を2つのアミノ基または2つのヒドロキシル基を連結するために使用することができる。例えば、アミノ基を含有するPSAは、BS3(ビス(スルホスクシンイミジル)スベリン酸/Pierce,Rockford,IL)等の試薬で、タンパク質のアミノ基に結合される。加えて、スルホ−EMCS(N−ε−マレインイミドカプロイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル/Pierce)等のヘテロ二官能性架橋連結試薬を使用して、例えば、アミン基およびチオール基を連結する。
【0128】
別の方法では、PSAヒドラジドが、前酸化、およびアルデヒド官能基の生成の後に調製され、タンパク質の炭水化物部分に連結される。
【0129】
上述のとおり、治療的タンパク質の遊離アミン基は、シアル酸残基の1−カルボキシル基と反応してペプチド結合を形成するか、またはエステル連結が1−カルボキシル酸基と血液凝固タンパク質上のヒドロキシルまたは他の好適な活性基との間に形成される。代替的には、カルボキシル基は、脱アセチル化5−アミノ基とのペプチド連結を形成するか、または血液凝固タンパク質の分子のアルデヒド基は、シアル酸残基のN−脱アセチル化5−アミノ基を有するシッフ塩基を形成する。
【0130】
代替的には、多糖化合物は、非共有方法で血液凝固タンパク質と会合する。例えば、一態様では、多糖化合物および薬学的に活性化合物は、疎水性相互作用を介して連結される。他の非共有会合は、相互に求引する逆帯電されたイオンでの静電相互作用を含む。
【0131】
種々の実施形態では、血液凝固タンパク質は、化学量論量(例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:7、1:8、1:9、または1:10等)の多糖化合物に連結、または会合される。種々の実施形態では、1〜6、7〜12、または13〜20の多糖類が血液凝固タンパク質に連結される。さらに別の実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上の多糖類が血液凝固タンパク質に連結される。
【0132】
種々の実施形態では、血液凝固タンパク質は、修飾されて、グリコシル化部位(すなわち、天然のグリコシル化部位以外の部位)に導入される。かかる修飾は、当該技術分野において既知の標準分子生物学的技術によって達成されてもよい。その上、1つまたは複数の炭水化物部分を介する水溶性ポリマーへの共役前に、血液凝固タンパク質は、生体内または生体外でグリコシル化されてもよい。これらのグリコシル化部位は、水溶性ポリマーとのタンパク質の共役のための標的として機能することができる(米国特許出願第20090028822号、米国特許出願第2009/0093399号、米国特許出願第2009/0081188号、米国特許出願第2007/0254836号、米国特許出願第2006/0111279号、およびDeFrees S.et al.,Glycobiology,2006,16,9,833−43)。
【0133】
D.アミノオキシ連結
本発明の一実施形態では、オキシム基を形成するための、アルデヒド(例えば、過ヨウ素酸ナトリウムによる酸化後の炭水化物部分上)とのヒドロキシルアミンまたはヒドロキシアミン誘導体の反応が、血液凝固タンパク質の複合体の調製に適用される。例えば、糖タンパク質(例えば、本発明に従う血液凝固タンパク質)は、まず、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)等の酸化剤で酸化される(Rothfus JA et Smith EL.,J Biol Chem 1963,238,1402−10、およびVan Lenten L and Ashwell G.,J Biol Chem 1971,246,1889−94)。糖タンパク質の過ヨウ素酸塩酸化は、1928年のthe oxidation of vicinal diols with periodate to form an active aldehyde group(Malaprade L.,Aanalytical application,Bull Soc Chim France,1928,43,683−96)に説明された古典的マラプラード反応に基づく。かかる酸化剤のさらなる例は、四酢酸鉛(Pb(OAc))、酢酸マンガン(MnO(Ac))、酢酸コバルト(Co(OAc))、酢酸タリウム(TlOAc)、硫酸セリウム(Ce(SO)(米国特許第4,367,309号)、または過ルテニウム酸カリウム(KRuO)(Marko et al.,J Am Chem Soc 1997,119,12661−2)である。「酸化剤」とは、炭水化物中の隣接ジオールを酸化し、それによって、生理学的反応条件下で、活性アルデヒド基を生成することが可能な温和な酸化化合物を意味する。
【0134】
第2のステップは、オキシム連結を形成するための、酸化炭水化物部分へのアミノオキシ基を含有するポリマーの結合である。本発明の一実施形態では、このステップは、触媒量の求核触媒アニリンまたはアニリン誘導体の存在下で実施することができる(Dirksen A et Dawson PE,Bioconjugate Chem.2008;Zeng Y et al.,Nature Methods 2009;6:207−9)。アニリン触媒は、オキシムライゲーションを著しく加速させ、非常に低い濃度の試薬の使用を可能にする。本発明の別の実施形態では、オキシム連結は、NaCNBHでの還元により安定化され、アルコキシアミン連結を形成する(図2)。
【0135】
本発明の一実施形態では、水溶性ポリマーを血液凝固タンパク質に共役させるための反応ステップは、別個に、かつ順次実施され(すなわち、出発材料(例えば、血液凝固タンパク質、水溶性ポリマー等))、試薬(例えば、酸化剤、アニリン等)、および反応性生物(例えば、血液凝固タンパク質上の酸化炭水化物、活性化アミノオキシ水溶性ポリマー等)は、個々の反応ステップの間で分離される)。
【0136】
アミノオキシ技術についてのさらなる情報は、以下の参照文献で確認することができ、それらのそれぞれは、その全体が組み込まれる:欧州特許第1681303A1号(HAS化エリスロポエチン)、国際公開第2005/014024号(オキシム連結基によって連結されるポリマーおよびタンパク質の複合体)、国際公開第96/40662号(アミノオキシ含有リンカー化合物、およびそれらの複合体における用途)、国際公開第2008/025856号(修飾タンパク質)、Peri F et al.,Tetrahedron 1998,54,12269−78、Kubler−Kielb J et.Pozsgay V.,J Org Chem 2005,70,6887−90;Lees A et al.,Vaccine 2006,24(6),716−29、およびHeredia KL et al.,Macromoecules 2007,40(14),4772−9。
【0137】
本発明の種々の実施形態では、本明細書に説明するアミノオキシ技術に従い、血液凝固タンパク質(例えば、FVIII、FVIIa、またはFIX)の酸化炭水化物部分に連結される水溶性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキシド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボン酸塩、ポリビニルピロリドン、、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリスチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
以下の実施例は、本発明の具体的な実施形態を制限するものではなく、例示目的のみである。
【実施例】
【0139】
(実施例1)
ホモ二官能性リンカーNH[OCHCHONHの調製
ホモ二官能性リンカーNH[OCHCHONH
【0140】
【化16】

【0141】
2つの活性アミノオキシ基を含有する(3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミン)を、一級アミンの修飾ガブリエル合成を採用する2ステップ有機反応で、Boturyn et al(Tetrahedron 1997;53:5485−92)に従い合成した(図3)。第1のステップでは、2,2−クロロジエチルエーテルの1つの分子を、ジメチルホルムアミド(DMF)中のエンド−N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミドの2つの分子と反応させた。所望のホモ二官能性生成物を、エタノール中のヒドラジン分解によって、得られる中間体から調製した。
【0142】
(実施例2)
ホモ二官能性リンカーNH[OCHCHONHの調製
ホモ二官能性リンカーNH[OCHCHONH
【0143】
【化17】

【0144】
2つの活性アミノオキシ基を含有する(3,6,9−トリオキサ−ウンデカン−1,11−ジオキシアミン)を、一級アミンの修飾ガブリエル合成を採用する2ステップ有機反応で、Boturyn et al(Tetrahedron 1997;53:5485−92)に従い合成した(図3)。第1のステップでは、ビス−(2−(2−クロロエトキシ)−エチル)−エーテルの1つの分子を、DMF中のエンド−N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミドの2つの分子と反応させた。所望のホモ二官能性生成物を、エタノール中のヒドラジン分解によって、得られる中間体から調製した。
【0145】
(実施例3)
アミノオキシ−PSAの調製
Serum Institute of India(Pune,India)から得た500mgの酸化PSA(分子量=18.8kD)を、8mLの50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.5中に溶解した。次に、100mgの3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンを添加した。室温で、2時間、振とうした後、44mgのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。4℃で、さらに4時間、振とうした後、反応混合物を、Slide−A−Lyzer(Pierce,Rockfold,IL)透析カセット(3.5kDの膜、再生成セルロース)に装填し、4日間、PBS pH7.2に対して透析した。生成物を、−80℃で凍結した。本手順に従うアミノオキシ−PSAの調製を、図4に示す。
【0146】
アミノオキシPSA調製のための代替的手順
Serum Institute of India(Pune,India)から得た1000mgの酸化PSA(分子量=20kD)を、16mLの50mMのリン酸緩衝液、pH6.0中に溶解した。次いで、170mgの3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンを、反応混合物に与えた。室温で、2時間、振とうした後、78.5mgのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加し、反応を、一晩、18時間実行した。次いで、反応混合物を、再生成されたセルロース(Millipore)から作製された5kDのカットオフを有する膜を使用して、限外ろ過/ダイアろ過手順(UF/DF)に供した。
【0147】
(実施例4)
rFIXへのアミノオキシ−PSAの結合、および複合体の精製
6.3mLの50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH6.0中に溶解した、12.6mgのrFIXに、289μLの水性過ヨウ素酸ナトリウム溶液(10mM)を添加した。混合物を、4℃で、1時間、暗室で、振とうし、6.5μLの1Mのグリセロールの添加によって、室温で、15分間、反応停止処理をした。低分子重量の不純物を、ビバスピン(Sartorius,Goettingen,Germany)濃縮器(30kDの膜、再生成セルロース)を採用する限外ろ過/ダイアろ過手順(UF/DF)によって除去した。次に、43mgのアミノオキシ−PSAを、UF/DF残余分に添加し、混合物を、4℃で、18時間、振とうした。過剰なPSA試薬を、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって除去した。冷却した反応混合物の伝導率を、180mS/cmに引き上げ、50mMのHEPES、3Mの塩化ナトリウム、6.7mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH6.9で事前に平衡化した5mLのHiTrapブチルFF(GE Healthcare,Fairfield,CT)HICカラム(1.6×2.5cm)上に装填した。複合体を、5mL/分の流量で、2.4カラム体積(CV)で、50mMのHEPES、6.7mMの塩化カルシウム、0.005%のTween80、pH7.4で溶出した。調製物を、総タンパク質(BCA)およびFIX色原体活性を測定することによって分析的に特徴付けた。PSA−rFIX複合体に対して、80.2IU/mgのタンパク質の特異的活性を決定した(天然rFIXと比較して56.4%)。結果を、表1に要約する。
【0148】
【表1】

【0149】
クマシー染色でのSDS−PAGEによるPSA−rFIX複合体の分析的特長付けを図5に示す。SDS−PAGE後の、抗FIXおよび抗PSA抗体を用いるウエスタンブロットを図6に示す。
【0150】
(実施例5)
求核触媒としてのアニリンの存在下でのrFIXへのアミノオキシ−PSAの結合
1.4mLの50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH6.0中に溶解した、3.0mgのrFIXに、14.1μLの水性過ヨウ素酸ナトリウム溶液(10mM)を添加した。混合物を、4℃で、1時間、暗室で、振とうし、1.5μLの1Mのグリセロールの添加によって、室温で、15分間、反応停止処理をした。低分子重量の不純物を、PD−10脱塩カラム(GE Healthcare,Fairfield,CT)を用いる、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって除去した。1.33mLの50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH6.0中に溶解した、1.2mgの酸化rFIXを、70μLのアニリン(200mMの水性貯蔵溶液)と混合し、室温で、45分間、振とうした。次に、4.0mgのアミノオキシ−PSAを添加し、混合物を、室温で、2時間、4℃で、さらに16時間振とうした。サンプルを、1時間後、2時間後、および18時間後の反応の最後に引き出した。次に、過剰のPSA試薬および遊離rFIXを、HICによって除去した。冷却した反応混合物の伝導率を、180mS/cmに引き上げ、50mMのHEPES、3Mの塩化ナトリウム、6.7mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH6.9で事前に平衡化した5mLのHiTrapブチルFF(GE Healthcare,Fairfield,CT)HICカラム(1.6×2.5cm)上に装填した。複合体を、5mL/分の流量で、20CVで、50mMのHEPES、6.7mMの塩化カルシウム、0.005%のTween80、pH7.4に対して直線勾配で溶出した。
【0151】
(実施例6)
rFIXへのアミノオキシ−PSAの結合、およびNaCNBHでの還元
5.25mLの50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH6.0中に溶解した、10.5mgのrFIXに、53μLの水性過ヨウ素酸ナトリウム溶液(10mM)を添加した。混合物を、4℃で、1時間、暗室で、振とうし、5.3μLの1Mのグリセロールの添加によって、室温で、15分間、反応停止処理をした。低分子重量の不純物を、ビバスピン(Sartorius,Goettingen,Germany)濃縮器(30kDの膜、再生成セルロース)を用いるUF/DFによって除去した。次に、35.9mgのアミノオキシ−PSAを、UF/DF残余分に添加し、混合物を、室温で、2時間、振とうした。次いで、53μLの水性シアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液(5M)を添加し、反応を、さらに16時間進行させた。次いで、過剰なPSA試薬を、HISによって除去した。冷却した反応混合物の伝導率を、180mS/cmに引き上げ、50mMのHEPES、3Mの塩化ナトリウム、6.7mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH6.9で事前に平衡化した5mLのHiTrapブチルFF HIC(GE Healthcare,Fairfield,CT)カラム(1.6×2.5cm)上に装填した。複合体を、5mL/分の流量で、2.4CV内で、50mMのHEPES、6.7mMの塩化カルシウム、0.005%のTween80、pH7.4で溶出した。
【0152】
(実施例7)
rFIXへのアミノオキシ−PSA(リンカー:NH[OCHCHONH)の結合、および複合体の精製
2.8mLの50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH6.0中に溶解した、5.6mgのrFIXに、102μLの過ヨウ素酸ナトリウムの水溶液(10mM)を添加した。混合物を、4℃で、1時間、暗室で、振とうし、2.9μLの1Mのグリセロールの添加によって、室温で、15分間、反応停止処理をした。低分子重量の不純物を、ビバスピン(Sartorius,Goettingen,Germany)濃縮器(30kDの膜、再生成セルロース)を用いるUF/DFによって除去した。次いで、19mgのアミノオキシ−PSAを、UF/DF残余分に添加し、混合物を、4℃で、18時間、振とうした。過剰なPSA試薬を、HICによって除去した。冷却した反応混合物の伝導率を、180mS/cmに引き上げ、50mMのHEPES、3Mの塩化ナトリウム、6.7mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH6.9で事前に平衡化した5mLのHiTrapブチルFF(GE Healthcare,Fairfield,CT)HICカラム(1.6×2.5cm)上に装填した。複合体を、5mL/分の流量で、2.4CV内で、50mMのHEPES、6.7mMの塩化カルシウム、0.005%のTween80、pH7.4で溶出した。
【0153】
(実施例8)
rFVIIIへのアミノオキシ−PSAの結合
11mLのHepes緩衝液、pH6(50mMのHepes、5mMのCaCl、150mMのNaCl、0.01%のTween)中に溶解した、11mgのrFVIIIに、57μLの10mMの過ヨウ素酸ナトリウムを添加した。混合物を、4℃で、30分間、暗室で、振とうし、107μLの1Mのグリセロール水溶液の添加によって、4℃で30分間反応停止処理をした。次いで、19.8mgのアミノオキシ−PSA(18.8kD)を添加し、混合物を、4℃で、一晩、振とうした。イオン強度を、8Mの酢酸アンモニウム(8Mの酢酸アンモニウム、50mMのHepes、5mMのCaCl、350mMのNaCl、0.01%のTween80、pH6.9)を含有する緩衝液の添加によって増大して、最終濃度の2.5Mの酢酸アンモニウムを得た。次に、反応混合物を、HiTrapブチルFF(GE Healthcare,Fairfield,CT)カラム上に装填し、平衡緩衝液(2.5Mの酢酸アンモニウム、50mMのHepes、5mMのCaCl、350mMのNaCl、0.01%のTween80、pH6.9)で平衡化した。生成物を、溶出緩衝液(50mMのHepes、5mMのCaCl、0.01%のTween80、pH7.4)で溶出し、溶出物を、30,000MWCOを有するビバスピン(Sartorius,Goettingen,Germany)デバイスを使用する遠心ろ過によって濃縮した。
【0154】
(実施例9)
血友病マウスにおけるPKの試験
FIX欠損マウスに、10mL/kgの体重の体積用量の製剤緩衝液(10mMのヒスチジン、260mMのグリシン、29mMのスクロース、0.005%のTween80、pH6.8)中のrFIXまたはPSA−rFIX(実施例4に従い調製)のいずれかを注入した。6匹のマウスのグループを、物質注射の5分後、3時間後、9時間後、16時間後、24時間後、および48時間後に安楽死させ、血液を心臓穿孔によって収集した。クエン酸血漿を調製し、FIX活性の分析まで冷凍保存した。
【0155】
FIX活性を、色原体FIXアッセイ(Biophen FIXアッセイ、Hyphen Biomed,Neuville−sur−Oise,France)で決定し、抽出曲線を構築した(図7)。実際のFIX活性用量は、PSA−rFICでは、123IU FIX/kgであり、rFIXでは143IU FIX/kgであった。薬物動態パラメータを、プログラムR(the R Foundation for Statistical Computing,2008)で計算した。生体内回収率は、rFIXでは、13%であり、PSA−rFIXでは、29%であった。PSA−rFIXに対して用量適合されたAUCは、rFIXに対して6.4倍増大し、末端半減期は、1.2倍増大し、MRTは、rFIXと比較して、PSA−rFIXでは1.7倍長かった(表2)。
【0156】
【表2】

【0157】
(実施例10)
血液凝固タンパク質のポリシアル化
本明細書に説明するポリシアル化は、他の凝固タンパク質まで拡大され得る。例えば、本発明の種々の態様では、実施例5、6、および9に説明する、アミノオキシ−PSAでの上記のポリシアル化を、FVIII、FVIIa、およびVWF等の凝固タンパク質で繰り返す。
【0158】
(実施例11)
ホモ二官能性リンカーNH[OCHCHONHの調製
ホモ二官能性リンカーNH[OCHCHONH
【0159】
【化18】

【0160】
2つの活性アミノオキシ基を含有する(3,6,9,12,15−ペンタオキサ−ヘプタデカン−1,17−ジオキシアミン)を、一級アミンの修飾ガブリエル合成を採用する2ステップ有機反応で、Boturynら(Tetrahedron 1997;53:5485−92)に従い合成した。第1のステップでは、二塩化ヘキサエチレングリコールの1つの分子を、DMF中のエンド−N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミドの2つの分子と反応させた。所望のホモ二官能性生成物を、エタノール中のヒドラジン分解によって、得られる中間体から調製した。
【0161】
(実施例12)
マレイミド/アミノオキシリンカー系を用いるrFIXのポリシアル化
A.修飾試薬の調製
アミノオキシ−PSA試薬を、マレイミド/アミノオキシリンカー系の使用によって調製する(Toyokuni et al.,Bioconjugate Chem 2003;14,1253−9)。遊離末端SH−基を含有するPSA−SH(20kD)を、2ステップ手順(a)国際公開第05016973A1号に従う、NHClでの酸化PSAの還元アミン化によるPSA−NHの調製、およびb)米国特許第7645860号に説明するとおり、2−イミノチオラン(トラウト試薬/Pierce,Rockford,IL)との末端一級アミノ基の反応によるスルフヒドリル基の導入)を使用して調整する。PSA−SHを、10倍のモル過剰のリンカー、および50mg/mLのPSA−SH濃度を使用して、PBS−緩衝液中のpH7.5のリンカーのマレイミド基に結合する。反応混合物を、室温で、穏やかな振とうで、2時間、インキュベートする。次いで、過剰リンカー試薬を除去し、アミノオキシ−PSAを、ダイアろ過によって、酸化緩衝液(50mMのリン酸ナトリウム、pH6.0)に緩衝液交換する。緩衝液を、Pellicon XL 5kDで再生成されたセルロース膜(Millipore,Billerica,MA)を用いて、25回交換する。
【0162】
B.NaIOでの前酸化後のrFIXの修飾
rFIXを、緩衝液中の100μMの過ヨウ素酸ナトリウムを用いて、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)中で酸化する。混合物を、4℃で、1時間、暗室で、振とうし、5mMの最終濃度まで、グリセロールの添加によって、室温で、15分間、反応停止処理をした。低分子重量の不純物を、PD−10脱塩カラム(GE Healthcare,Fairfield,CT)を用いるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって除去した。次いで、酸化rFIXを、アニリンでスパイクして、10mMの最終濃度を得、アミノオキシ−PSA試薬と混合して、5倍のモル過剰のPSAを達成する。反応混合物を、室温で、暗室で、穏やかな振とうで、2時間インキュベートした。
【0163】
C.複合体の精製
過剰のPSA試薬および遊離rFIXをHICによって除去する。反応混合物の伝導率を、180mS/cmに引き上げ、50mMのHepes、3Mの塩化ナトリウム、6.7mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH6.9で、事前に平衡化した48mLのブチル−セファロースFF(GE Healthcare,Fairfield,CT)で充填されたカラム上に装填した。その後、複合物を、40CVで、60%の溶出緩衝液(50mMのHepes,6.7mMの塩化カルシウム、pH7.4)の線形勾配で溶出する。最後に、PSA−rFIXを含有する画分を収集し、再生成されたセルロース(Millipore)から作製された30kDの膜の使用によって、UF/DFに供する。調製を、総タンパク質(BCA)およびFIX色原体活性を測定することによって、分析的に特徴付ける。両方の変異体で調製されたPSA−rFIX複合体に対して、天然のrFIXと比較して、50%超の特性活性を決定する。
【0164】
(実施例13)
アミノオキシ−PSA試薬の調製
アミノオキシ−PSA試薬を実施例3に従い調製した。最終生成物を、5kDの膜(再生成されたセルロース、Millipore)を使用して、緩衝液、pH7.2(50mMのHepes)に対してダイアろ過し、−80℃で凍結し、凍結乾燥した。凍結乾燥後、試薬を、適切な水容積中で溶解し、炭水化物修飾を介してPSA−タンパク質複合体の調製のために使用した。
【0165】
(実施例14)
FVIII欠損ノックアウトマウスモデルにおけるポリシアル化されたrFVIIIの薬物動態
PSA−FVIII複合体を実施例8に従い調製した。複合体は、6237IU/mgの特異的活性(色原体アッセイによって決定されたFVIII活性、ブラッドフォードアッセイによって決定された総タンパク質)を示し、レソルシノールアッセイ(Svennerholm L,Biochim Biophys Acta 1957;24:604−11)によって測定して、6.7のポリシアル化の度合い(モルFVIII当たりモルPSA)を有した。
【0166】
Biら(Nat Genet 1995;10:119−21)によって詳細に説明されるFVIII欠損マウスを、重度のヒト血友病Aのモデルとして使用した。6匹のマウスのグループが、200IU FVIII/体重kgの用量で、実施例8に従い調製されたPSA−rFVIIIまたは天然のrFVIII(ADVATE、Baxter Healthcare Corporation)のいずれかで、尾静脈を介するボーラス注入(200IU FVIII/kg)を受けた。麻酔後の心臓穿孔によるクエン酸血漿を、注入5分後、3時間後、6時間後、9時間後、16時間後、24時間後、32時間後、および42時間後に、それぞれのグループから調製した。FVIII活性レベルを、色原体アッセイの使用によって、血漿サンプル中で測定した。この実験の結果を表3に要約し、図8に示す。すべての計算を、Rバージョン2.10.1(A language and environment for statistical computing.R Foundation for Statistical Computing,Vienna,Austria.http://www.R−project.org.)で実行した。その結果、平均滞留時間(MRT)は、PSA−rFVIII複合体では、5.4時間(アドベイト対照)から11.1時間に増大した。
【0167】
【表3】

【0168】
(実施例15)
アミノオキシ−PSA試薬の詳細な合成
3−オキサ−ペンタン−1,5ジオキシアミンを、実施例1に列挙する2ステップの有機合成で、Boturynら(Tetrahedron 1997;53:5485−92)に従い合成した。
【0169】
ステップ1:
700mLの無水N,N−ジメチルホルムアミド中のエンド−N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミドの(59.0g;1.00等量)の溶液に、無水KCO(45.51g、1.00等量)および2,2−ジクロロジエチルエーテル(15.84mL、0.41等量)を添加した。反応混合物を、50℃で22時間攪拌した。混合物を、減圧下で乾燥するまで蒸発させた。残基を、2Lのジクロロメタン中で懸濁し、NaCl飽和水溶液(各1L)で2回、抽出した。ジクロロメタン層を、NaSOで乾燥させ、次いで、減圧下で乾燥するまで蒸発させ、高真空内で乾燥して、白黄色の固体(中間体1)として64.5gの3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシ−エンド−2’,3’−ジカルボキシジイミドノールボルネンを得た。
【0170】
ステップ2:
800mLの無水エタノール中の中間体1(64.25g、1.00等量)の溶液に、31.0mLのヒドラジン水和物(4.26等量)を添加した。次いで、反応混合物を、2時間、還流させた。混合物を、減圧下で、溶媒を蒸発させることによって、出発容量の半分まで濃縮した。生じた沈殿物をろ過した。残りのエタノール層を、減圧下で、乾燥するまで蒸発させた。粗生成物3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンを含有する残基を、真空内で乾燥させ、46.3gを得た。粗生成物をさらに、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、ジクロロメタン/メタノール混合物での定組成溶離、9+1)によって精製して、11.7gの純最終生成物3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンを得た。
【0171】
(実施例16)
PSAヒドラジドを使用するrFIXのポリシアル化
rFIXを、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)との酸化PSAの反応によって調製されたPSAヒドラジド試薬の使用によってポリシアル化する。
【0172】
ステップ1:PSAヒドラジドの調製
Serum Institute of India(Pune,India)から得た500mgの酸化PSA(分子量=20kD)を、8mLの50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.5中に溶解した。次いで、100mgのアジピン酸ジヒドラジド(ADH)を添加した。溶液を、2時間、弱く振とうした。次いで、44mgのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。反応物を、4℃で、さらに4時間、インキュベートした後、反応混合物を、Slide−A−Lyzer(Pierce,Rockford,IL)透析カセット(3.5kDの膜、再生成セルロース)に装填し、4日間、PBS pH7.2に対して透析した。生成物を−80℃で凍結した。
【0173】
ステップ2:rFIXでのPSAヒドラジドの反応、および複合体の精製
rFIXを、ステップ1に説明するPSAヒドラジド試薬の使用によってポリシアル化する。rFIX(濃度1mg/mL)を、穏やかな振とうで、暗室で、NaIO(濃度:80μM)で、4℃で、1時間、酸化する。反応を、グリセロールの添加によって停止し、酸化FIXを、再生成されたセルロース(Vivaspin)から作製された30kDの膜の使用によって、UF/DFに供する。次いで、酸化rFIXを、200倍のモル過剰の試薬、および1mg/mLのタンパク質濃度を使用して、pH6.5でポリシアル化する。rFIXおよびポリシアル化試薬を、室温で、暗室で、穏やかな振とうで、2時間、インキュベートする。最後に、PSA−rFIX複合体を、HICによって精製する。反応混合物の伝導率を、酢酸アンモニウムを含有する緩衝液(50mMのHepes、350mMのNaCl、5mMの塩化カルシウム、8Mの酢酸アンモニウム、0.01%のTween80、pH6.9)を添加することによって、130mS/cmに引き上げ、50mMのHepes、2.5Mの酢酸アンモニウム、350mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH6.9で事前に平衡化したHiTrapブチルFFカラム(5mL、GE Healthcare,Fairfield,CT)上に装填する。その後、複合体を、50mMのHepes、5mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH7.4で溶出する。最後に、留分を含有するPSA−rFIXを収集し、再生成されたセルロース(Vivaspin)から作製された30kDの膜の使用によって、UF/DFに供する。PEG−rFIX複合体では、天然のrFIXと比較して、50%超の特異性活性を決定する(色原体アッセイ)。
【0174】
(実施例17)
求核触媒としてのアニリンの存在下で、PSAヒドラジドを使用するrFIXのポリシアル化
123mgのrFIXを、60mLのリン酸緩衝液(50mMのNaPO、pH6.5)緩衝液中に溶解する。次いで、1.2mLの水性過ヨウ素酸ナトリウム溶液(10mM)を添加し、混合物を、穏やかな攪拌で、4℃で、暗室で、1時間、インキュベートする。その後、反応物を、600μLの1Mのグリセロール水溶液の添加によって、室温で、15分間、反応停止処理する。その後、混合物を、Pellicon XL Ultracel 30kDの膜を使用するUF/DFに供する。
【0175】
酸化されたrFIXを含有する、UF/DF残余分(63.4mL)をさらに、59.6mLのリン酸緩衝液(50mMのNaPO、pH6.0)で希釈し、6.5mLの水性アニリン溶液(200mM)と混合し、室温で、30分間、インキュベートする。次いで、12.3mLのPSA−ヒドラジド試薬(実施例16に従い調製)を添加して、5倍の試薬モル過剰を得る。この混合物を、穏やかな攪拌で、暗室で、室温で、2時間、インキュベートする。
【0176】
過剰のPSA−ヒドラジド試薬および遊離rFIXを、HICによって除去する。反応混合物の伝導率を、180mS/cmに引き上げ、48mLのブチル−セファロースFF(GE Healthcare,Fairfield,CT)で充填されたカラム上に装填し、50mMのHepes、3Mの塩化ナトリウム、6.7mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH6.9で事前に平衡化する。その後、複合体を、50mMのHepes、5mMの塩化ナトリウム、0.01%のTween80、pH7.4で溶出する。最後に、留分を含有するPSA−rFIXを収集し、再生成されたセルロース(Millipore)から作製された、30kDの膜を使用することによって、UF/DFに供する。調製を、総タンパク質(BCA)およびFIX色原体活性を測定することによって分析的に特徴付ける。PSA−rFIX複合体では、天然のrFIXと比較して、50%超の特異的活性が決定される。
【0177】
(実施例18)
rFIXのポリシアル化および2ステップ手順を使用する精製
140mgのrFIXを、62mLのリン酸緩衝液(50mMのNaPO、pH6.0)緩衝液中に溶解した。次いで、1.92mLの水性過ヨウ素酸ナトリウム溶液(10mM)を添加し、混合物を、穏やかな攪拌で、4℃で、暗室で、1時間、インキュベートし、64μLの1Mの水性グリセロール溶液の添加によって、室温で、15分間、反応停止処理をした。その後、混合物を、Pellicon XL Ultracel 30kDの膜を採用するUF/DFに供した。
【0178】
酸化されたrFIXを含有する、UF/DF残余分(69.4mL)をさらに、73.8mLのリン酸緩衝液(50mMのNaPO、pH6.0)で希釈し、8.2mLの水性アニリン溶液(200mM)と混合し、室温で、30分間、インキュベートした。次いで、12.3mLのアミノオキシ試薬(実施例3に従い調製)を添加して、2.5倍の試薬モル過剰を得た。この混合物を、穏やかな攪拌で、暗室で、室温で、2.5時間、インキュベートした。
【0179】
遊離rFIXを、アニオン交換クロマトグラフィー(AIEC)によって除去する。反応混合物を、20mLの緩衝液A(50mMのHepes、5mMのCaCl、pH7.5)で希釈し、Q−セファロースFF26/10カラム(GE Healthcare,Fairfield,CT)上に装填し、緩衝液Aで事前に平衡化する。次いで、カラムを、緩衝液B(50mMのHepes、1MのNaCl、5mMのCaCl、pH7.5)で溶出する。遊離rFIXは12〜25mS/cmの間の伝導率で、および複合体は27〜45mS/cmの間の伝導率で溶出する。次いで、複合体を含有する画分の伝導率を、緩衝液C(50mMのHepes、5MのNaCl、5mMのCaCl、pH6.9)の添加によって、190mS/cmに引き上げ、ブチルセファロースFF26/10カラム(GE Healthcare,Fairfield,CT)上に装填し、緩衝液D(50mMのHepes、3MのNaCl、5mMのCaCl、pH6.9)で事前に平衡化する。遊離PSA試薬を、5CVの緩衝液D内で洗浄する。その後、複合体を、100%の緩衝液E(50mMのHepes、5mMのCaCl、pH7.4)で溶出する。複合体を含有する画分を、再生成されたセルロース(88cm、カットオフ10kD/Millipore)から作製された10kDの膜を使用するUF/DFによって濃縮する。最終ダイアろ過ステップを、150mMのNaClおよび5mMのCaClを含有する、ヒスチジン緩衝液、pH7.2に対して実行する。調製物を、総タンパク質(BCA)およびFIX色原体活性を測定することによって分析的に特徴付ける。PSA−rFIX複合体では、天然のrFIXと比較して、50%超の特異的活性が決定される。
【0180】
(実施例19)
rFVIIaへのアミノオキシ−PSAの結合、および複合体の精製
5mLの反応緩衝液(50mMのHepes、150mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、pH6.0)中の10mgのrFVIIaの溶液を、NaIOの水溶液(最終濃度:100μM)と混合し、暗室で、穏やかな攪拌で、4℃で、1時間、インキュベートし、15分間、システインの水性溶液(最終濃度:1mM)の添加によって反応停止処理する。その後、反応混合物を、UF/DFに供する。残余分(10mL)に、30倍モル過剰のアミノオキシ試薬(実施例1に従い調製)を添加する。結合反応を、暗室で、室温で、2時間、実行する。過剰のアミノオキシ試薬を、HICによって除去する。反応混合物の伝導率を、酢酸アンモニウム(50mMのHepes、350mMのNaCl、5mMの塩化カルシウム、8Mの酢酸アンモニウム、0.01%のTween80、pH6.9)を含有する緩衝液を添加することによって、130mS/cmに引き上げ、HiTrap ブチルFFカラム(5mL、GE Healthcare,Fairfield,CT)上に装填し、50mMのHepes、2.5Mの酢酸アンモニウム、350mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH6.9で事前に平衡する。その後、複合体を、20CV中の100%溶出緩衝液の線形勾配によって、50mMのHepes、5mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH7.4で溶出する。最後に、PSA−rFVIIaを含有するを画分を収集し、再生成されたセルロース(Vivaspin)から作製された30kDの膜の使用によるUF/DFに供する。調製を、総タンパク質(BCA)およびFVIIa色原体活性(Staclotアッセイ、Diagnostica Stago,Asnieres,France)を測定することによって分析的に特徴付け、rFVIIa出発物質と比較して、20%超の特異的活性を示す。
【0181】
(実施例20)
求核触媒としてのアニリンの存在下でのrFVIIaへのアミノオキシ−PSAの結合
1.4mLの50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH6.0中に溶解した、3.0mgのrFVIIaに、14.1μLの水性過ヨウ素酸ナトリウム溶液(10mM)を添加する。混合物を、4℃で、1時間、暗室で、振とうし、1.5μLの1Mのグリセロールの添加によって、室温で15分間反応停止処理する。低分子重量の不純物を、PD−10脱塩カラム(GE Healthcare,Fairfield,CT)を用いる、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって除去する。3mLの50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH6.0中に溶解した、3mgの酸化されたrFVIIaを、アニリン(求核触媒、最終濃度:10mM)と混合し、室温で、30分間、振とうする。次に、アミノオキシ−PSAを添加して、5倍のモル過剰を得、混合物を、室温で、2時間、振とうする。その後、過剰PSA試薬および遊離rFIXを、HICによって除去する。冷却した反応混合物の伝導率を、180mS/cmに引き上げ、5mLのHiTrapブチルFF(GE Healthcare,Fairfield,CT)HICカラム(1.6×2.5cm)上に装填し、50mMのHEPES、3Mの塩化ナトリウム、6.7mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH6.9で事前に平衡化する。複合体を、5mL/分の流量で、20CVで、50mMのHepes、6.7mMの塩化カルシウム、0.005%のTween80、pH7.4に対する線形勾配で溶出する。
【0182】
(実施例21)
アミノオキシ−PEG試薬の調製
分岐PEG−アルデヒド(分子量40kD)を、実施例1に説明するとおり調製する、ジアミノオキシリンカーへ結合のために使用する。このPEG−アルデヒド試薬は、NOF(NOF Corp.,Tokyo,Japan)から入手可能である。500mgのPEG−アルデヒドを、8mLの50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.5中に溶解する。次いで、100mgの3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンを添加する。室温で、2時間、振とうした後、44mgのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加する。4℃で、さらに4時間、振とうした後、反応混合物を、Slide−A−Lyzer(Pierce,Rockford,IL)透析カセット(3.5kDの膜、再生成されたセルロース)上に装填し、4日間、PBS、pH7.2に対して透析する。生成物を、−80℃で凍結する。
【0183】
(実施例22)
アミノオキシPEG試薬でのrFIXのPEG化
rFIXを、アミノオキシ基を含有する直鎖20kDのPEG化試薬の使用によって、PEG化する。このタイプの試薬の例は、NOF(NOF Corp.,Tokyo,Japan)のSunbright(登録商標)CAシリーズである。rFIXを、反応緩衝液(50mMのHepes、150mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、pH6.0)中で、4℃で、暗室で、穏やかな振とうで、1時間、NaIO(最終:濃度:100μM)での2mg/mLのタンパク質濃度で酸化させ、15分間、グリセロールの水性溶液(最終濃度:1mM)の添加によって反応停止処理する。その後、反応混合物を、UF/DFに供する。残余分に、3倍のモル過剰のアミノオキシ試薬およびアニリン(求核触媒、最終濃度:10mM)を追加する。結合反応を、穏やかな振とうで、暗室で、室温で、2時間、実行する。最後に、PEG−rFIX複合体を、Q−セファロースFF上でイオン交換クロマトグラフィーによって精製する。1.5mgのタンパク質/mLゲルを、カラム上に装填し、50mMのトリス、pH8.0で事前に平衡する。複合体を、20CVで、50mMのトリス、および1Mの塩化ナトリウム、pH8.0で溶出し、次いで、30kDの膜を使用するUF/DFに供する。調製を、総タンパク質(BCA)およびFIX色原体活性を測定することによって分析的に特徴付ける。PSA−rFIX複合体では、天然のrFIXと比較して、75%超の特異的活性が決定される。
【0184】
(実施例23)
アミノオキシPEG試薬でのrFVIIIのPEG化
rFVIIIを、アミノオキシ基を含有する直鎖20kDのPEG化試薬の使用によってPEG化する。この種類の試薬の例は、NOF(NOF Corp.,Tokyo,Japan)のSunbright(登録商標)CAシリーズである。rFVIIIを、反応緩衝液(50mMのHepes、150mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、pH6.0)中で、4℃で、暗室で、穏やかな振とうで、1時間、NaIO(最終:濃度:100μM)での1mg/mLのタンパク質濃度で酸化させ、15分間、システインの水性溶液(最終濃度:1mM)の添加によって反応停止処理する。その後、反応混合物を、UF/DFに供する。残余分に、20倍のモル過剰のアミノオキシ試薬およびアニリン(求核触媒、最終濃度:10mM)を追加する。結合反応を、穏やかな振とうで、暗室で、室温で2時間実行する。最後に、PEG−rFVIII複合体を、Q−セファロースFF上でイオン交換クロマトグラフィーによって精製する。1.5mgのタンパク質/mLゲルを、カラム上に装填し、5mMのCaClを含有する50mMのHepes緩衝液、pH7.4で事前に平衡する。複合体を、5mMのCaClおよび500mMの塩化ナトリウム、pH7.4を含有する50mMのHepes緩衝液で溶出し、次いで、30kDの膜を使用するUF/DFに供する。FVIII色原体アッセイによる複合体の分析的特長付け、および総タンパク質(BCAアッセイ)決定は、rFVIII出発物質と比較して、60%超の特異的活性が決定される。
【0185】
(実施例24)
アミノオキシPEG試薬でのrFVIIaのPEG化
rFVIIaを、アミノオキシ基を含有する直鎖20kDのPEG化試薬の使用によって、PEG化する。このタイプの試薬の例は、NOF(NOF Corp.,Tokyo,Japan)のSunbright(登録商標)CAシリーズである。rFVIIaを、反応緩衝液(50mMのHepes、150mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、pH6.0)中で、4℃で、暗室で、 穏やかな振とうで、1時間、NaIO(最終:濃度:100μM)での2mg/mLのタンパク質濃度で酸化させ、15分間、グリセロールの水性溶液(最終濃度:1mM)の添加によって反応停止処理する。その後、反応混合物を、UF/DFに供する。残余分に、5倍のモル過剰のアミノオキシ試薬およびアニリン(求核触媒、最終濃度:10mM)を追加する。結合反応を、穏やかな振とうで、暗室で、室温で、2時間、実行する。最後に、PEG−rFVIIa複合体を、Q−セファロースFF上でイオン交換クロマトグラフィーによって精製する。1.5mgのタンパク質/mLゲルを、カラム上に装填し、1mMのCaCl、pH7.4を含有する20mMのHepes緩衝液で事前に平衡する。複合体を、1mMのCaClおよび500mMの塩化ナトリウム、pH7.4を含有する、20mMのHepes緩衝液で溶出し、次いで、30kDの膜を使用するUF/DFに供する。FVIIa活性(Staclotアッセイ、Diagnostica Stago,Asnieres,France)、および総タンパク質(BCAアッセイ)を測定することによる複合体の分析的特長付けは、rFVIIa出発物質と比較して、25%超の特異的活性を示す。
【0186】
(実施例25)
PEGヒドラジド試薬でのrFIXのPEG化
rFIXを、ヒドラジド基を含有する直鎖20kDのPEG化試薬の使用によって、PEG化する。このタイプの試薬の例は、NOF(NOF Corp.,Tokyo,Japan)のSunbright(登録商標)HZシリーズである。rFIXを、反応緩衝液(50mMのHepes、150mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、pH6.0)中で、4℃で、暗室で、穏やかな振とうで、1時間、NaIO(最終:濃度:100μM)での2mg/mLのタンパク質濃度で酸化させ、15分間、グリセロールの水性溶液(最終濃度:1mM)の添加によって反応停止処理する。その後、反応混合物を、UF/DFに供する。残余分に、50倍のモル過剰のヒドラジド試薬およびアニリン(求核触媒、最終濃度:10mM)を追加する。結合反応を、穏やかな振とうで、暗室で、室温で、2時間、実行する。最後に、PEG−rFIX複合体を、Q−セファロースFF上でイオン交換クロマトグラフィーによって精製する。反応混合物を、カラム(1.5mgのタンパク質/mLゲル)上に装填し、50mMのトリス−緩衝液、pH8.0で事前に平衡する。複合体を、20CVのトリス−緩衝液、pH8.0(50mMのトリス、1MのNaCl)で溶出し、次いで、30kDの膜を使用するUF/DFに供する。調製を、総タンパク質(BCA)およびFIX色原体活性を測定することによって分析的に特徴付ける。PSA−rFIX複合体では、天然のrFIXと比較して、50%超の特異的活性が決定される(色原体アッセイ)。
【0187】
(実施例26)
2mMのアニリンの存在下でのrFVIIIのポリシアル化
rFVIIIを、反応緩衝液(50mMのHepes、350mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH6)に移し、1mg/mLのタンパク質濃度まで希釈し、反応緩衝液(50mMのHepes、150mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、pH6.0)中で、4℃で、暗室で、穏やかな振とうで、1時間、NaIO(最終:濃度:100μM)で酸化させ、15分間、システインの水性溶液(最終濃度:1mM)の添加によって反応停止処理する。その後、反応混合物を、UF/DFに供する。残余分に、20倍のモル過剰のアミノオキシ試薬およびアニリン(求核触媒、最終濃度:2mM)を添加する。結合反応を、穏やかな振とうで、暗室で、室温で、2時間、実行する。過剰なアミノオキシ試薬をHICによって除去する。反応混合物の伝導率を、酢酸アンモニウムを含有する緩衝液(50mMのHepes、350mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、8Mの酢酸アンモニウム、0.01%のTween80、pH6.9)を添加することによって、130mS/cmに引き上げ、50mMのHepes、2.5Mの酢酸アンモニウム、350mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH6.9で事前に平衡化した53mLのブチル−セファロースFF(GE Healthcare,Fairfield,CT)で充填されたカラム上に装填する。その後、複合体を、50mMのHepes、5mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH7.4で溶出する。最後に、留分を含有するPSA−rFIXを収集し、再生成されたセルロース(Millipore,Billerica,MA)から作製された、30kDの膜を使用することによるUF/DFに供する。調製を、総タンパク質(BCA)およびFVIII色原体活性を測定することによって分析的に特徴付ける。PSA−rFVIII複合体では、天然rFVIIIと比較して、80%の特異的活性が決定される。
【0188】
(実施例27)
10mMのアニリンの存在下でのrFVIIIのポリシアル化
rFVIIIを、反応緩衝液(50mMのHepes、350mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH6)に移し、1mg/mLのタンパク質濃度まで希釈し、反応緩衝液(50mMのHepes、150mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、pH6.0)中で、4℃で、暗室で、穏やかな振とうで、1時間、NaIO(最終:濃度:100μM)で酸化させ、15分間、システインの水性溶液(最終濃度:1mM)の添加によって反応停止処理する。その後、反応混合物を、UF/DFに供する。残余分に、20倍のモル過剰のアミノオキシ試薬およびアニリン(求核触媒、最終濃度:10mM)を添加する。結合反応を、穏やかな振とうで、暗室で、室温で、2時間、実行する。過剰なアミノオキシ試薬をHICによって除去する。反応混合物の伝導率を、酢酸アンモニウムを含有する緩衝液(50mMのHepes、350mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、8Mの酢酸アンモニウム、0.01%のTween80、pH6.9)を添加することによって、130mS/cmに引き上げ、50mMのHepes、2.5Mの酢酸アンモニウム、350mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH6.9で事前に平衡化した53mLのブチル−セファロースFF(GE Healthcare,Fairfield,CT)で充填されたカラム上に装填する。その後、複合体を、50mMのHepes、5mMの塩化カルシウム、0.01%のTween80、pH7.4で溶出する。最後に、PSA−rFIXを含有する画分を収集し、再生成されたセルロース(Millipore,Billerica,MA)から作製された、30kDの膜を使用することによるUF/DFに供する。調製物を、総タンパク質(BCA)およびFVIII色原体活性を測定することによって分析的に特徴付ける。PSA−rFVIII複合体では、天然のrFVIIIと比較して、80%の特異的活性が決定される。
【0189】
(実施例28)
分岐PEGを使用する血液凝固タンパク質のPEG化
血液凝固タンパク質(実施例22〜25に説明するFIX、FVIII、およびFVIIa等)のPEG化は、実施例21に説明する分岐または直鎖PEG試薬まで延長されてもよく、それは、アルデヒド、および活性アミノオキシ基を含有する好適なリンカーから作製される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリマーを、血液凝固タンパク質の酸化炭水化物部分に共役させる方法であって、共役を可能にする条件下で、前記酸化炭水化物部分を、活性化水溶性ポリマーと接触させることを含み、
前記血液凝固タンパク質は、第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第VIIa因子(FVIIa)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI−1、組織因子(TF)、およびADAMTS13プロテアーゼ、またはその生物学的に活性なフラグメント、誘導体、もしくは変異体から成る群より選択され、
前記水溶性ポリマーは、活性アミノオキシ基を含有し、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デンプン、デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、ポリアルキレンオキシド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボン酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリスチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)から成る群より選択され、
前記炭水化物部分は、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)、四酢酸鉛(Pb(OAc))、および過ルテニウム酸カリウム(KRuO4)から成る群より選択される酸化剤を含む緩衝液でのインキュベーションによって酸化され、オキシム連結が、前記酸化炭水化物部分と前記水溶性ポリマー上の前記活性アミノオキシ基との間に形成される、方法。
【請求項2】
前記水溶性ポリマーは、PSAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PSAは、約10〜300個のシアル酸単位から成る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記血液凝固タンパク質は、FIXである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記血液凝固タンパク質は、FVIIaである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記血液凝固タンパク質は、FVIIIである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化剤は、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記血液凝固タンパク質の前記酸化炭水化物部分は、前記血液凝固タンパク質の活性化ペプチド内に位置する、請求項4〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記PSAは、活性化アミノオキシリンカーを、酸化PSAと反応させることによって、調製され、
前記アミノオキシリンカーは、
a)式:
【化1】

の3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンリンカー、および
b)式:
【化2】

の3,6,9−トリオキサ−ウンデカン−1,11−ジオキシアミンリンカーから成る群より選択され、
前記PSAは、酸化剤でのインキュベーションによって酸化され、前記PSAの非還元末端において、末端アルデヒド基を形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記アミノオキシリンカーは、3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化剤は、NaIOである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化炭水化物部分を、前記活性化水溶性ポリマーと接触させることは、アニリンおよびアニリン誘導体から成る群より選択される求核触媒を含む緩衝液中で生じる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH)およびアスコルビン酸(ビタミンC)から成る群より選択される還元化合物を含む、緩衝液中で、前記共役させた血液凝固タンパク質をインキュベートすることによって、前記共役させた血液凝固タンパク質中のオキシム連結を還元させるステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記還元化合物は、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH)である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法によって産生される、修飾された血液凝固タンパク質。
【請求項16】
(a)FIX分子、またはその生物学的に活性なフラグメント、誘導体、もしくは変異体と、
(b)前記(a)のFIX分子に結合した少なくとも1つのアミノオキシPSAであって、1つまたは複数の炭水化物部分を介して前記FIXに付着する、アミノオキシPSAと、を含む、修飾されたFIX。
【請求項17】
(a)FVIIa分子、またはその生物学的に活性なフラグメント、誘導体、もしくは変異体と、
(b)前記(a)のFVIIa分子に結合した少なくとも1つのアミノオキシPSAであって、1つまたは複数の炭水化物部分を介して前記FVIIaに付着する、アミノオキシPSAと、を含む、修飾されたFVIIa。
【請求項18】
(a)FVIII分子、またはその生物学的に活性なフラグメント、誘導体、もしくは変異体と、
(b)前記(a)のFVIII分子に結合した少なくとも1つのアミノオキシPSAであって、1つまたは複数の炭水化物部分を介して前記FVIIIに付着する、アミノオキシPSAと、を含む、修飾されたFVIII。
【請求項19】
(a)FIX分子、またはその生物学的に活性なフラグメント、誘導体、もしくは変異体と、
(b)前記(a)のFIX分子に結合した少なくとも1つのアミノオキシPEGであって、1つまたは複数の炭水化物部分を介して前記FIXに付着する、アミノオキシPEGと、を含む、修飾されたFIX。
【請求項20】
(a)FVIIa分子、またはその生物学的に活性なフラグメント、誘導体、もしくは変異体と、
(b)前記(a)のFVIIa分子に結合した少なくとも1つのアミノオキシPEGであって、1つまたは複数の炭水化物部分を介して前記FVIIaに付着する、アミノオキシPEGと、を含む、修飾されたFVIIa。
【請求項21】
(a)FVIII分子、またはその生物学的に活性なフラグメント、誘導体、もしくは変異体と、
(b)前記(a)のFVIII分子に結合した少なくとも1つのアミノオキシPEGであって、1つまたは複数の炭水化物部分を介して前記FVIIIに付着する、アミノオキシPEGと、を含む、修飾されたFVIII。
【請求項22】
活性アミノオキシリンカーを含む水溶性ポリマーであって、前記水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、ポリシアル酸(PSA)、炭水化物、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキシド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボン酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリスチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)から成る群より選択され、前記活性アミノオキシリンカーは、
a)式:
【化3】

の3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンリンカー、および
b)式:
【化4】

の3,6,9−トリオキサ−ウンデカン−1,11−ジオキシアミンリンカーから成る群より選択される、水溶性ポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−500343(P2013−500343A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522940(P2012−522940)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/043242
【国際公開番号】WO2011/017055
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】