説明

血液凝集塊トラップ及び血液バッグ

【課題】血液バッグ内の血液をスムーズに排出することができ、排出時間を短縮することができ、さらに作業者の採血操作、血針の選択の負担を軽減することができる血液凝集塊トラップを提供すること。
【解決手段】大径部2は側部方向に側壁2Wを有し、当該側壁2Wに側部方向に沿うように、複数の側孔2Pを形成し、大径部2は第1端部に底部開口2BOを有し、大径部2は第2端部側で、小径部3の第1端部側と接続され、大径部2の第2端部側の壁は、大径部2の第2端部側と小径部3の第1端部側との間の段部1Dを形成し、小径部3の第2端部側は、上部開口3UOを形成し、大径部2の側壁2Wは、長さ2L:5mm以上〜15mm以下、及び径2D:1mm以上〜2mm未満を有し、径が2mm以上の血液凝集塊が、大径部2内の血液流路2BPWに流入するのを阻止することができる血液凝集塊トラップ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自己血輸血用の血液を保存し、保存後に血液中に生成した血液凝集塊のうち、特に大きな血液凝集塊を除去することのできる機能を有する血液凝集塊トラップ及び血液凝集塊トラップを備えた血液バッグに関する。大きな血液凝集塊を除去することができれば、自己血輸血用の血液バッグ以外の全ての血液バッグに利用することができる。以下、自己血輸血用の血液バッグの例について説明する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自己血輸血用の血液を保存する血液バックでは、血液を長期間(例えば、35日間)、4°Cで保存するため、通常の成分輸血用の保存血液と比較して保存中に血液凝集塊が生成しやすい。
輸血は、輸血セットに接続された輸血針(外径1.2mm以上、1.8mm以下と薬事法ディスポーザブル輸血セット基準で定められている)を血液バッグに接続して、輸血セットの点滴筒に配置されている濾過器(フィルターともいう、210μmより細かい均一の網目を使用するよう定められている)を通して行う。
その際、大きな血液凝集塊が、輸血針の血液通路(開口部)を塞いだり、濾過器を塞いだりして、目詰まりを起こし、輸血ができなくなるという課題を抱えている。
この課題の原因は、(1)作業者(採血者)の採血操作(例えば輸血針の接続操作、血液バッグの上下反転操作の不足)次第により、血液凝集塊ができやすくなるため、自己血輸血の作業現場(病院)では、第一義の対策として、作業者に凝集塊ができないように採血操作を行うよう指導されている。
【0003】
また、(2)使用器材(血液バッグ、輸血セット等)の対策として、輸血針に血液凝集塊が詰まることを想定して、血液凝集塊が詰まらない程度の大きな血液通路(開口部)を有する輸血針を使用するように指導されている。
しかし、現実では、前記(1)、(2)の点を隅々まで周知徹底するのは難しいので、作業者(採血者)が前記(1)、(2)の点をできるだけ気にしなくてよいように、使用器材(血液バッグ、輸血セット等)を改良し、使用器材で、(大きな)血液凝集塊をトラップさせることが所望される。
【0004】
ところで、特許文献1には、血液を血液バッグに長期保存後に輸血を実施する際に、血液バッグの輸血口などの狭窄部分に血液凝集塊が侵入し該部分の閉塞、血液の流出減少を起こさないような血液バッグを提供することを目的とした発明が開示されている。
特許文献1に記載の発明は、血液バッグ内に開口した輸血口、血液導入口および血液導出口を少なくとも備え、輸血口、必要に応じてさらに血液導入口および/または血液導出口の開口部が、血漿および血球は通過させるが、血液凝集塊の通過は阻止することのできる濾過網で覆われている発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−67933号公報([要約の欄]、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明のように、血液バッグの血液導入口および/または血液導出口の開口部を、濾過網で覆うようにすることは、確実に血液凝集塊を捕捉するための優れた発明であるが、意外にも、濾過網の濾過面積が小さいこと、さらに血液バッグ内の血液全部を濾過網の孔を通過させることになるので、濾過網の目開きの大きさの設定にもよるが、あまり濾過網の目開きの大きさを小さくしすぎると、数個の赤血球が集合した赤血球塊の径と近くなる。そしてこれらの赤血球塊と小さな血液凝集塊が濾過網に目詰まりを起こし、濾過に時間がかる等の技術的課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、以上の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、次の発明に到達した。本発明にしたがえば、以下の血液バッグ1が提供される。
【0008】
[1]本発明は、長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向とを有し、
前記長手方向の第1端部側に大径部(2)を有し、前記長手方向の第2端部側に小径部(3)を有し、
前記大径部(2)と前記小径部(3)は、長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向とを有し、前記長手方向に第1端部と第2端部とを有し、
前記大径部(2)は側部方向に側壁(2W)を有し、当該側壁(2W)に側部方向に沿うように、複数の側孔(2P)を形成し、
前記大径部(2)は第1端部に底部開口(2BO)を有し、
前記大径部(2)は第2端部側で、小径部(3)の第1端部側と接続され、
前記大径部(2)の第2端部側の壁は、大径部(2)の第2端部側と小径部(3)の第1端部側との間の段部(1D)を形成し、
前記小径部(3)の第2端部側は、上部開口(3UO)を形成し、
前記大径部(2)の側壁(2W)は、
長さ(2L):5mm以上〜15mm以下、及び径(2D)1mm以上〜2mm未満を有し、
径が2mm以上の血液凝集塊が、前記大径部(2)内の血液流路(2BPW)に流入するのを阻止することができる血液凝集塊トラップ(1)を提供する。
[2]本発明は、前記大径部(2)の内部壁は、前記第1端部側から第2端部側へ向けて、先細りテーパー(2T)を形成した[1]に記載の血液凝集塊トラップ(1)を提供する。
【0009】
[3]本発明は、前記側孔(2P)は、長手縁部壁(2WL)と側部縁部壁(2WS)とを有し、
前記長手縁部壁(2WL)は、前記大径部(2)の血液流路(2BPW)側に向けて下るテーパー(2WLT)を有する[1]または[2]に記載の血液凝集塊トラップ(1)を提供する。
[4]本発明は、長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向とを有し、
前記長手方向の第1端部側に大径部(2)を有し、前記長手方向の第2端部側に小径部(3)を有し、
前記大径部(2)と前記小径部(3)は、長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向とを有し、前記長手方向に第1端部と第2端部とを有し、
前記大径部(2)は側部方向に側壁(2W)を有し、当該側壁(2W)に側部方向に沿うように、複数の側孔(2P)を形成し、
前記大径部(2)は第1端部に底部開口(2BO)を有し、
前記大径部(2)は第2端部側で、小径部(3)の第1端部側と接続され、
前記大径部(2)の第2端部側の壁は、大径部(2)の第2端部側と小径部(3)の第1端部側との間の段部(1D)を形成し、
前記小径部(3)の第2端部側は、上部開口(3UO)を形成し、
前記大径部(2)の側壁(2W)は、
長さ(2L):5mm以上〜15mm以下、及び径(2D)1mm以上〜2mm未満を有し、
径が2mm以上の血液凝集塊が、前記大径部(2)内の血液流路(2BPW)に流入するのを阻止することができ、
前記大径部(2)の内部壁は、前記第1端部側から第2端部側へ向けて、先細りテーパー(2T)を形成し、
前記側孔(2P)は、長手縁部壁(2WL)と側部縁部壁(2WS)とを有し、
前記長手縁部壁(2WL)は、前記大径部(2)の血液流路(2BPW)側に向けて下るテーパー(2WLT)を有する血液凝集塊トラップ(1)を提供する。
【0010】
[5]本発明は、血液を貯留するバッグ本体(12)を有し、
バッグ本体(12)は、長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向とを有し、
前記バッグ本体(12)は、長手方向に第1上端部と第2下端部とを有し、側部方向に第1側端部と第2側端部とを有し、
前記バッグ本体(12)は、前記第1上端部を区画する上部壁(UW)、前記第2下端部を区画する下部壁(DW)と、前記第1側端部と前記第2側端部とを区画する側部壁SW(SWR、SWL)とを有し、
前期バッグ本体(12)は、前記上部壁(UW)に、血液を前記バッグ本体(12)内に取り込むための血液入口(16)を形成し、
前記バッグ本体(12)は、前記上部壁(UW)に、複数の輸血口(13)を装着し、
前記輸血口(13)は、長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向とを有し、
前記輸血口(13)は、長手方向に第1端部と第2端部とを有し、
前記第2端部側に第2開口(13UO)、前記第1端部側に第1開口(13BO)とを有し、
前記輸血口(13)に[1]〜[4]に記載の前記血液凝集塊トラップ(1)を接続し、
前記血液凝集塊トラップ(1)は、前記小径部(3)の第2端部側の外径が、前記輸血口(13)の第1端部側の内径と同じかまたは若干大きく形成し、
前記血液凝集塊トラップ(1)の前記小径部(3)の第2端部側を、前記輸血口(13)の第1端部側の第1開口(13BO)より挿入し、輸血口(13)の第2端部方向へ押し進め、前記輸血口(13)の第1端部壁が、前記血液凝集塊トラップ1の前記段部(1D)に当接することにより接続し、
前記血液凝集塊トラップ(1)の前記小径部(3)は、外周の全域を前記輸血口(13)の第1端部側の内周壁に圧入することにより接続し、
前記血液凝集塊トラップ(1)の前記複数の側孔(2P)を形成した前記大径部(2)が、前記バッグ本体(12)内に露出するように配置した血液バッグ(11)を提供する。
[6]本発明は、前記大径部(2)の長手方向の長さ(2LL)は、前記バッグ本体(12)の長手方向の長さ12L:100に対して、10〜35に形成した[5]に記載の血液バッグ(11)を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の血液凝集塊トラップは、特許文献1に記載の血液凝集塊補足用の濾過網と比較して、以下の効果を有する。
〈1〉輸血針の血液通路(開口部)を塞いで、目詰まりを起こすような大きな血液凝集塊のみを選択的に捕捉し、これらよりも小さい血液凝集塊は速やかに排出することができるので、血液バッグ内の血液をスムーズに排出することができ、排出時間を短縮することができる。
〈2〉作業者の前記(1)採血操作、(2)輸血針の選択の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の血液凝集塊トラップの一例を示す概略図(斜視図)である。
【図2】図2は図1の血液凝集塊トラップを180°背面の角度からみた概略図(斜視図)である。
【図3】図3は、図1の血液凝集塊トラップの概略図で、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は左側面図、(D)は右側面図、(E)は(D)のC−C断面図、(F)は(D)のE−E断面図、(G)は(B)のF−F断面図である。
【0013】
【図4】図4は、図1の血液凝集塊トラップを装着した本発明の血液バッグの概略図である。
【図5】図5は、図1の血液凝集塊トラップを、輸血口に装着したところの概略図(断面図)である。 (A)は装着前、(B)は装着後の断面図である。
【図6】本発明の血液凝集塊トラップを装着した本発明の血液バッグの使用方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
[血液凝集塊トラップ1]
本発明の血液凝集塊トラップ1は、図1〜図3に例示するように、管状(またはチューブ状、筒状という場合もある)に形成される。
血液凝集塊トラップ1は、長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向(または半径方向という場合もある)とを有する。
長手方向の第1端部側に、大径部2を有し、長手方向の第2端部側に、小径部3を有する。
大径部2と小径部3は、長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向を有し、長手方向は第1端部と第2端部を有する。
長手方向の第1端部側とは、図4の血液バッグ11の第2下端部方向(または底部方向ともいう)をいい、長手方向の第2端部側とは、図4の血液バッグ11の第1上端部方向(または上部方向ともいう)をいう。
【0015】
大径部2は側部方向に側壁2Wを有し、当該側壁2Wに側部方向に沿うように、複数の側孔2Pを形成している。大径部2は第1端部に第1開口(底部開口)2BOを有する。
後述する図5(A)に例示するように、大径部2の内部壁は、第1端部側から第2端部側へ向けて、先細りテーパー2Tを形成している。先細りテーパー2Tにより、血液バッグ11からの血液の排出を促進することができる。
大径部2は第2端部側で、小径部3の第1端部側と一体成形により接続されている。
大径部2の第2端部側の壁は、大径部2の第2端部側と小径部3の第1端部側との間の段部1Dを形成する。大径部2の第1端部側の壁を以下、「段部1D」という。
小径部3の第2端部側は、当該第2端部側へ向けて先細りテーパー3Tを形成し、さらに第2開口(上部開口) 3UOを形成している。
【0016】
血液凝集塊トラップ1は、構成材料として、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンのように可撓性合成樹脂が用いられる。その中でも軟質のポリ塩化ビニル樹脂が好ましい。
側孔2Pは、図1に例示するように、矩形状に形成されている。矩形状以外にも、例えば、楕円形、円形、台形等に形成することができる。
側孔2Pは、大径部2と同様に、長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向とを有する。
図1〜図2に例示するように、側孔2Pは、長手方向の縁部壁2WL(長手縁部壁2WL)と側部方向の縁部壁2WS(側部縁部壁2WS)とを有する。
長手縁部壁2WLは、大径部2の血液流路2BPW側に向けて下るテーパー2WLTを有する。
テーパー2WLTは、血液が側孔2Pから血液流路2BPWへ流入するのを、促進させることができる。
図1〜図2の例示では側部縁部壁2WSは、大径部2の血液流路2BPWに向けてほとんど垂直に形成されているが、血液流路2BPW側に向けて下るテーパーを有するように形成してもよい。
【0017】
本発明で側孔2Pは、長手方向を、単に「長さ2L」、側部方向を「径2D」という。
本発明では、「長さ2L」と「径2D」は、図1〜図2に例示するように、大径部2の外部壁表面で現される寸法である。
側孔2Pは、図1〜図3の例示では、4個等間隔に形成しているが、形成する数は、形状・大きさにもよるが数は多いほうが良い。通常4個、または6個、または8個形成するのがよい。あまり数が多いと径が小さいくなりすぎて、目詰の原因となるので好ましくない。逆にあまり少ないと径が大きくなりすぎて、大径部2の形状が不安定になるので好ましくない。
【0018】
血液凝集塊の大きさは、さまざまであるが、本発明の血液凝集塊トラップ1は、輸血針(管状で内部に血液流路が形成されている)の血液流路の目詰まりを招来するレベルの大きさ、すなわち、直径2mm以上の大きな血液凝集塊を捕捉することを目的としている。
側孔2Pの大きさは、直径2mm以上の大きな血液凝集塊が、通過できないように少なくとも「径2D」の大きさが、最大2mm未満、好ましくは1.8mm未満、より好ましくは、1.6mm未満に形成する。
逆にあまり径2Dを小さくしすぎると、小さな血液凝集塊が、目詰まりを招来するので好ましくない。幅の最小値は、1.4mm、好ましくは1.2mm、より好ましくは1mm以上形成するのがよい。
なお側孔2Pは、直径2mm未満の血液凝集塊は、通過させるほうがよいので、長さ(2L)は、5mm以上〜15mm以下(5mm、10mm、15mm)に形成するのがよい。
あまり小さいと、直径2mm未満の血液凝集塊が通過しにくくなり、あまり大きいと、大径部2の形状が不安定になるので好ましくない。
【0019】
[血液バッグ11]
図4は、本発明の血液バッグ11の一例を示す概略図である。
血液バッグ11は、血液を貯留するバッグ本体12を有する。
バッグ本体12は、長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向とを有する。
バッグ本体12は、長手方向に第1上端部(図2で上側)と第2下端部(図2で下側)とを有し、側部方向に第1側端部(図2で右側)と第2側端部(図2で左側)とを有する。
【0020】
バッグ本体12は、熱溶着、超音波溶着、接着等の接着手段により、少なくともその第1上部を区画する上部壁UW、第2下部を区画する下部壁DWと、第1側端部と第2側端部とを区画する側部壁SW(右側壁SWR、左側壁SWL)とを有している。
バッグ本体12は、第1上端部の上部壁UWに、血液をバッグ本体12内に取り込むための血液入口16を形成し、当該血液入口16は、採血チューブTの一端部を接続し、当該採血チューブTの他方の端部は、採血針14を接続している。
【0021】
バッグ本体12は、第1上端部の上部壁UWに、複数の輸血口13(図4の例示では二個)を装着している。
図5に例示するように、輸血口13は、長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向とを有する。
輸血口13は、長手方向に第1端部(図4の血液バッグ11の第2下部方向、または底部方向ともいう)と、第2端部(図4の血液バッグ11の第1上部方向、または上部方向ともいう)とを有する。
第2端部側に第2開口(上部開口)13UO、第1端部側に第1開口(底部開口)13BOを有する。
輸血口13は、長さ方向の略中間部の内部に、血液流路の閉塞壁13Wを配置(形成)している。
輸血口13は、バッグ本体12内に保存した血液を排出するためのものである。輸血口13が汚染されないように、プロテクタ15(保護カバーともいう)で覆っている。
【0022】
バッグ本体12を構成する材料として、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンのように可撓性合成樹脂が好ましく用いられる。
バッグ本体12内には、採血時または輸血保存時における血液の凝固の防止または保存のために、例えばACD液、CPD液、CPDA液のような抗凝固剤やMAP液のような赤血球保存液を収納している。
【0023】
[血液凝集塊トラップ1と輸血口13の接続]
図5(A)に例示するように、血液凝集塊トラップ1は、小径部3の第2端部側の外径が、輸血口13の第1端部側の内径と同じかまたは若干大きく形成されている。
血液凝集塊トラップ1の小径部3の第2端部側を、輸血口13の第1端部側の底部開口13BOより挿入し、輸血口13の第2端部方向へ押し進め、輸血口13の第1端部壁が、血液凝集塊トラップ1の段部1Dに当接することにより接続される。
血液凝集塊トラップ1の小径部3は、外周の全域を、輸血口13の第1端部側の内周壁に圧入することにより接続される。
血液凝集塊トラップ1の複数の側孔2Pを形成した大径部2が、バッグ本体12内に露出するように装着(配置)している。
大径部2の長手方向の長さ2LLは、バッグ本体12の長手方向きの長さ12L:100に対して、10〜35、好ましくは15〜30、より好ましくは20〜25に形成するのがよい。
【0024】
バッグ本体12の長手方向の長さ12Lとは、図4に示したように上部壁UWと下部壁との間の長さ(距離)である。
長さ2LLがあまり小さいと(10未満)側孔2Wの形成面積が小さくなりすぎて、血液流入量が減少したり、もしくは目詰まりを起こす可能性があるので好ましくない。またあまり大きいと(35を超えると)バッグ本体12の表面に貼り付けたラベルLB(採血情報を記載)に、第1端部側が隠れて、血液の排出が確認しずらい。また血液保存の障害物となる等の事情により好ましくない。
保存血液の大部分と直径2mm未満の血液凝集塊を、大径部2の底部開口2BO、側孔2Pを経て、輸血口13の第1開口(上部開口)13UOを経て、スムーズに輸血針(図示せず)へ排出することができる。
また、側孔2Pの幅よりも大きな直径2mm以上の血液凝集塊BLは、側孔2Pを通過できず、大径部2の外周でトラップされ、大径部2の第2端部側の外周に溜めることができる。
【0025】
図1〜図3、図5に例示した本発明の血液凝集塊トラップを装着した本発明の図4の血液バッグ11の使用方法の一例について図6を参照して説明する。
保存後の血液バッグ1を図6のように、反転(上下逆転)させる。
バッグ本体12内の第2下端部(底部)に、溜った血液凝集塊は、重いため重力により、バッグ本体12内の底部側(図6では、反転しているため第1上端部側)に移動する。
血液凝集塊の大きさはさまざまであるが、小さいもの(軽いもの)はバッグ本体12内を浮遊し、大きなもの(重いもの)BLは、底部側(図6では第1上端部側)に移動する。
なお図6では、血液凝集塊の大きなもの(重いもの)BLを誇長するため、実際のものよりもあえて大きく記載している。形状も円として記載している。
【0026】
プロテクター15の覆いを、輸血口13から取り除いて、輸血口13の第1端部に輸血針(図示せず)を挿入する。輸血針(図示せず)を輸血口13の第1端部方向におしすすめて、血液流路13BPW内の閉塞壁13Wを突き破って、輸血口13に接続する。
保存血液BBの大部分と直径2mm未満の血液凝集塊は、大径部2の底部開口2BO、側孔2Pを経て、大径部2内部、小径部3内部、輸血口13内部、輸血口13の上部開口13UOを経て、スムーズに輸血針(図示せず)へ排出される。
なお直径2mm未満の血液凝集塊は、[0002]で説明したように輸血セットに設けられた濾過器(フィルター)で捕捉される。
また、輸血針の目詰まりを起こす程度の大きな血液凝集塊BL、言い換えれば、側孔2Pの径2Dよりも大きな直径2mm以上の血液凝集塊BLは、側孔2Pを通過できず、大径部2の外周でトラップされ、大径部2の第2端部側の外周に溜まる。
【符号の説明】
【0027】
1 血液凝集塊トラップ
1D 段部
2 大径部
2W 側壁
2P 側孔
2L 長さ
2D 径
2WL 長手縁部壁
2WS 側部縁部壁
2BO 第1開口(底部開口)
2BPW 血液流路
2T テーパー
3 小径部
3UO 第2開口(上部開口)
3T テーパー
11 血液バッグ
12 バッグ本体
13 輸血口
13BO 第1開口(底部開口)
13UO 第2開口(上部開口)
13W 閉塞壁
13BPW 血液流路
14 採血針
15 プロテクタ
16 血液入口
UW 上部壁
LW 下部壁
SW 側部壁
SWL 左側部壁
SWR 右側部壁
T 採血チューブ
LB ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向とを有し、
前記長手方向の第1端部側に大径部(2)を有し、前記長手方向の第2端部側に小径部(3)を有し、
前記大径部(2)と前記小径部(3)は、長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向とを有し、前記長手方向に第1端部と第2端部とを有し、
前記大径部(2)は側部方向に側壁(2W)を有し、当該側壁(2W)に側部方向に沿うように、複数の側孔(2P)を形成し、
前記大径部(2)は第1端部に底部開口(2BO)を有し、
前記大径部(2)は第2端部側で、小径部(3)の第1端部側と接続され、
前記大径部(2)の第2端部側の壁は、大径部(2)の第2端部側と小径部(3)の第1端部側との間の段部(1D)を形成し、
前記小径部(3)の第2端部側は、上部開口(3UO)を形成し、
前記大径部(2)の側壁(2W)は、
長さ(2L):5mm以上〜15mm以下、及び径(2D)1mm以上〜2mm未満を有し、
径が2mm以上の血液凝集塊が、前記大径部(2)内の血液流路(2BPW)に流入するのを阻止することができることを特徴とする血液凝集塊トラップ(1)。
【請求項2】
前記大径部(2)の内部壁は、前記第1端部側から第2端部側へ向けて、先細りテーパー(2T)を形成したことを特徴とする請求項1に記載の血液凝集塊トラップ(1)。
【請求項3】
前記側孔(2P)は、長手縁部壁(2WL)と側部縁部壁(2WS)とを有し、
前記長手縁部壁(2WL)は、前記大径部(2)の血液流路(2BPW)側に向けて下るテーパー(2WLT)を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の血液凝集塊トラップ(1)。
【請求項4】
長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向とを有し、
前記長手方向の第1端部側に大径部(2)を有し、前記長手方向の第2端部側に小径部(3)を有し、
前記大径部(2)と前記小径部(3)は、長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向とを有し、前記長手方向に第1端部と第2端部とを有し、
前記大径部(2)は側部方向に側壁(2W)を有し、当該側壁(2W)に側部方向に沿うように、複数の側孔(2P)を形成し、
前記大径部(2)は第1端部に底部開口(2BO)を有し、
前記大径部(2)は第2端部側で、小径部(3)の第1端部側と接続され、
前記大径部(2)の第2端部側の壁は、大径部(2)の第2端部側と小径部(3)の第1端部側との間の段部(1D)を形成し、
前記小径部(3)の第2端部側は、上部開口(3UO)を形成し、
前記大径部(2)の側壁(2W)は、
長さ(2L):5mm以上〜15mm以下、及び径(2D)1mm以上〜2mm未満を有し、
径が2mm以上の血液凝集塊が、前記大径部(2)内の血液流路(2BPW)に流入するのを阻止することができ、
前記大径部(2)の内部壁は、前記第1端部側から第2端部側へ向けて、先細りテーパー(2T)を形成し、
前記側孔(2P)は、長手縁部壁(2WL)と側部縁部壁(2WS)とを有し、
前記長手縁部壁(2WL)は、前記大径部(2)の血液流路(2BPW)側に向けて下るテーパー(2WLT)を有することを特徴とする血液凝集塊トラップ(1)。
【請求項5】
血液を貯留するバッグ本体(12)を有し、
バッグ本体(12)は、長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向とを有し、
前記バッグ本体(12)は、長手方向に第1上端部と第2下端部とを有し、側部方向に第1側端部と第2側端部とを有し、
前記バッグ本体(12)は、前記第1上端部を区画する上部壁(UW)、前記第2下端部を区画する下部壁(DW)と、前記第1側端部と前記第2側端部とを区画する側部壁SW(SWR、SWL)とを有し、
前期バッグ本体(12)は、前記上部壁(UW)に、血液を前記バッグ本体(12)内に取り込むための血液入口(16)を形成し、
前記バッグ本体(12)は、前記上部壁(UW)に、複数の輸血口(13)を装着し、
前記輸血口(13)は、長手方向と当該長手方向に略垂直に交差する側部方向とを有し、
前記輸血口(13)は、長手方向に第1端部と第2端部とを有し、
前記第2端部側に第2開口(13UO)、前記第1端部側に第1開口(13BO)とを有し、
前記輸血口(13)に請求項1〜請求項4に記載の前記血液凝集塊トラップ(1)を接続し、
前記血液凝集塊トラップ(1)は、前記小径部(3)の第2端部側の外径が、前記輸血口(13)の第1端部側の内径と同じかまたは若干大きく形成し、
前記血液凝集塊トラップ(1)の前記小径部(3)の第2端部側を、前記輸血口(13)の第1端部側の第1開口(13BO)より挿入し、輸血口(13)の第2端部方向へ押し進め、前記輸血口(13)の第1端部壁が、前記血液凝集塊トラップ1の前記段部(1D)に当接することにより接続し、
前記血液凝集塊トラップ(1)の前記小径部(3)は、外周の全域を前記輸血口(13)の第1端部側の内周壁に圧入することにより接続し、
前記血液凝集塊トラップ(1)の前記複数の側孔(2P)を形成した前記大径部(2)が、前記バッグ本体(12)内に露出するように配置した、ことを特徴とする血液バッグ(11)。
【請求項6】
前記大径部(2)の長手方向の長さ(2LL)は、前記バッグ本体(12)の長手方向の長さ12L:100に対して、10〜35に形成したことを特徴とする請求項5に記載の血液バッグ(11)。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−130431(P2012−130431A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283428(P2010−283428)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】