説明

血液回路セット

【課題】滅菌シートが折り畳まれた状態で、チューブをプライミングすることができ、さらに、そのプライミングされたチューブを視認することができる血液回路セットを提供すること。
【解決手段】血液回路セット1は、血液が通過するチューブ2と、チューブ2の一部を収納する内袋3と、展開された状態で、手術室における清潔域と不潔域とを仕切る滅菌シート4とを備えている。滅菌シート4は、清潔面41を内側にして、チューブ2を内袋3ごと包み込むように折り畳まれ、その折り畳み状態でチューブ2を不潔面42側から視認可能な窓部43を有している。また、血液回路セット1は、滅菌シート4の折り畳み状態でチューブ2をプライミング可能に構成され、プライミングされたチューブ2を窓部43を介して視認するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液回路セットに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓手術における血液体外循環回路としては、リザーバ(貯血槽)と、人工肺と、脱血ラインと、送血ラインと、吸引ラインとを備え、これらがボードに配置、固定されたものがある(例えば、特許文献1参照)。さらに、特許文献1に記載の血液体外循環回路は、未使用状態(保管時、運搬時)で、ボードが滅菌シートに包まれている(以下この状態を「包装状態」と言う)。そして、この血液体外循環回路を使用する際には、包装状態にあるボードを滅菌シートから取り出し、その取り出されたボードを立てた状態(直立した状態)とする。次いで、血液体外循環回路内をプライミング液で満たすプライミングを行ない、その後、血液の体外循環を開始する。
【0003】
このような構成の血液体外循環回路では、できれば、例えば血液の体外循環を迅速に開始するために、包装状態で、予めプライミングをしておきたいという場合があった。しかしながら、特許文献1に記載の血液体外循環回路は、包装状態でプライミングを可能な構成とはなっていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−299729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、滅菌シートが折り畳まれた状態で、チューブをプライミングすることができ、さらに、そのプライミングされたチューブを視認することができる血液回路セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(9)の本発明により達成される。
(1) 血液が通過する少なくとも1本のチューブと、
前記チューブの少なくとも一部を収納する袋体と、
展開された状態で、手術室における清潔域と不潔域とを仕切る滅菌シートとを備え、
前記滅菌シートは、前記清潔域に臨む面を内側にして、前記チューブを前記袋体ごと包み込むように折り畳まれ、その折り畳み状態で前記チューブを前記不潔域に臨む面側から視認可能な窓部を有し、
前記折り畳み状態で前記チューブをプライミング可能に構成され、該プライミングされたチューブを前記窓部を介して視認するよう構成されていることを特徴とする血液回路セット。
【0007】
(2) 前記滅菌シートは、その少なくとも前記窓部となる部分が透明性を有する上記(1)に記載の血液回路セット。
【0008】
(3) 前記滅菌シートは、展開された状態では、長方形をなすものであり、
前記折り畳み状態では、前記展開された状態の滅菌シートを、その長辺方向および短辺方向のうちの一方向に沿って蛇腹状に折り、さらに、他方向に沿って蛇腹状に折ったものとなっている上記(1)または(2)に記載の血液回路セット。
【0009】
(4) 前記滅菌シートには、前記折り畳み状態を維持する複数枚の維持テープが貼付されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の血液回路セット。
【0010】
(5) 前記各維持テープは、それぞれ、前記滅菌シートを前記折り畳み状態から展開する際に剥離されるものであり、
前記各維持テープには、それぞれ、剥離する順番が付されている上記(4)に記載の血液回路セット。
【0011】
(6) 前記滅菌シートは、吊るされた際、前記折り畳み状態から自重で展開するものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の血液回路セット。
【0012】
(7) 前記チューブは、前記袋体に収納されていない部分が前記滅菌シートを貫通して、該滅菌シートの前記不潔域に臨む面から突出している上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の血液回路セット。
【0013】
(8) 前記チューブは、巻回された状態で前記袋体に収納されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の血液回路セット。
【0014】
(9) 前記袋体は、前記滅菌シートに対し固定されている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の血液回路セット。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、滅菌シートが折り畳まれた状態で、その内側に位置するチューブをプライミングすることができる。
【0016】
さらに、そのプライミングされたチューブを滅菌シートの窓部を介して視認することができ、よって、チューブが十分にプライミングされたか否かを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の血液回路セットの実施形態を示す平面図である。
【図2】図1中のA−A線断面図である。
【図3】図1に示す血液回路セットにおける滅菌シートの折り畳み順序を示す図である。
【図4】図1に示す血液回路セットにおける滅菌シートの折り畳み順序を示す図である。
【図5】図1に示す血液回路セットにおける滅菌シートの折り畳み順序を示す図である。
【図6】図1に示す血液回路セットにおける滅菌シートの折り畳み順序を示す図である。
【図7】図1に示す血液回路セットにおける滅菌シートの折り畳み順序を示す図である。
【図8】図1に示す血液回路セットにおける滅菌シートの折り畳み順序を示す図である。
【図9】図1に示す血液回路セットにおける滅菌シートの折り畳み順序を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の血液回路セットを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の血液回路セットの実施形態を示す平面図、図2は、図1中のA−A線断面図、図3〜図9は、それぞれ、図1に示す血液回路セットにおける滅菌シートの折り畳み順序を示す図である。なお、以下では、説明の都合上、図2〜図9中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0019】
図1、図2に示す血液回路セット1は、チューブ2と、チューブ2のほとんどの部分を収納する内袋(袋体)3と、チューブ2を内袋3ごと包み込む滅菌シート4と、その滅菌シート4をさらに収納する外袋5とを備えている。このような構成の血液回路セット1は、血液の体外循環をする際には、滅菌シート4を展開した状態(展開状態)として、当該滅菌シート4で手術室における清潔域(術野側)と不潔域(器械側)とを仕切り、チューブ2を血液回路(体外循環回路)として使用する(図3参照)。以下、各部の構成について説明する。
【0020】
チューブ2は、血液が通過する血液回路の一部を構成するものである。血液の体外循環をする際には、その体外循環を開始するのに先立って、当該チューブ2内をプライミング液Q(例えば生理食塩水)で満たすプライミングを行なう。このプライミングは、チューブ2の一端側からプライミング液Qを供給し、その供給されたプライミング液Qを他端側から排出することにより、行われる。そして、プライミング完了後、体外循環を開始する。
【0021】
チューブ2の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド等の各種樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらを単独であるいは任意に組み合わせて用いることができる。
【0022】
なお、チューブ2の本数は、図示の構成では1本であるが、これに限定されず、複数本であってもよい。
【0023】
内袋3は、チューブ2を収納するものである。内袋3は、塵や埃を遮断し得るもの、特に菌不透過性を有する清潔袋であるのが好ましい。
【0024】
図1、図3に示すように、チューブ2は、その内袋3に収納されている部分が巻回された状態となっている。内袋3により、チューブ2の巻回状態が維持され、よって、例えばチューブ2がプライミング中や血液の体外循環中(術中)に邪魔になるのを防止することができる。
【0025】
また、チューブ2の内袋3に収納されていない一端側の部分21と他端側の部分22とは、それぞれ、内袋3に形成された2つのチューブ挿通部31を介して、内袋3の外側に突出している(図1参照)。各チューブ挿通部31は、それぞれ、一端側の部分21および他端側の部分22と液密に嵌合する。これにより、内袋3内の無菌状態を維持することができる。
【0026】
内袋3は、滅菌シート4の清潔域に臨む面(清潔面41)のほぼ中央部に対し固定されている(図3参照)。これにより、滅菌シート4を展開状態とし、スタンド(図示せず)に吊るされた際に、滅菌シート4から内袋3が離脱するのが防止され、よって、当該内袋3に収納されたチューブ2の位置を規制することができる。これにより、体外循環を迅速に行なうことができる。なお、内袋3の滅菌シート4に対する固定方法は、特に限定されず、例えば、接着剤により接着固定する方法、両面粘着テープで固定する方法、融着により固定する方法、ピン、ベルト、紐等により固定する方法、その他、各種固定部材で固定する方法等が挙げられる。図2に示す構成では、内袋3と滅菌シート4とは、接着剤33を介して接着されている。
【0027】
このような内袋3は、可撓性を有する2枚のシート材32を重ね、縁部321同士を融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)して構成されたものである(図2参照)。なお、このシート材32の構成材料としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル系樹脂、あるいはこれらを複合した材料が挙げられる。また、内袋3では、その内部の視認性を確保するために、全体が透明性を有している。
【0028】
滅菌シート4は、展開状態(拡げた状態)で手術室における清潔域と不潔域とを仕切るものである。図3に示すように、展開状態の滅菌シート4は、その形状が長方形(正方形を含む)をなし、その面積が、0.5〜10m程度が好ましく、2〜6m程度がより好ましい。これにより、手術室における清潔域と不潔域とを十分に仕切ることができる。
【0029】
また、滅菌シート4は、その全体が透明な材料(例えば、透明な樹脂)で構成されている。これにより、清潔域、不潔域間の視認性を確保することができ、特に、不潔域にいる技師等が、滅菌シート4を通して清潔域にいる患者や医師の様子を確認することができる。
【0030】
また、図3に示すように、滅菌シート4の上部には、図中左側の部分と右側の部分にそれぞれリング状の吊り下げ部45a、45bが固定されている。各吊り下げ部45a、45bは、それぞれ、手術室を仕切る際にスタンド(図示せず)に係合する部材である。各吊り下げ部45a、45bそれぞれ前記スタンドに係合することにより、滅菌シート4の展開状態が維持され、よって、手術室を確実に仕切ることができる。
【0031】
吊り下げ部45aと吊り下げ部45bとは、それぞれ、色が異なっている。この場、例えば、吊り下げ部45aの色を赤色とすることができ、吊り下げ部45bの色を青色とすることができる。
【0032】
また、吊り下げ部45aと吊り下げ部45bとに、それぞれ、滅菌シート4を前記スタンドに掛ける際、当該滅菌シート4の清潔面41が清潔域に臨み、不潔面42が不潔域に臨むようにするための指標が付されているのが好ましい。例えば、吊り下げ部45aには、その清潔面41側の部分に「術野側右」と記載された指標が付され、不潔面42側の部分に「器械側左」と記載された指標が付されている。また、吊り下げ部45bには、その清潔面41側の部分に「術野側左」と記載された指標が付され、不潔面42側の部分に「器械側右」と記載された指標が付されている。
【0033】
滅菌シート4は、可撓性を有し、折り畳んで折り畳み状態とすることができる。この折り畳み状態では、その清潔面41を内側にして、チューブ2を内袋3ごと包み込むことができる(図2参照)。そして、図2に示す状態で、不潔域に臨む面(不潔面42)側から、外袋5、滅菌シート4、内袋3を通して、最も内側にするチューブ2を視認することができる。このように滅菌シート4では、折り畳み状態でチューブ2を視認可能とする部分が窓部43として機能している。本実施形態では、滅菌シート4の全体が透明な材料で構成されているため、目線の位置に関わらず、チューブ2を確実に視認することができる。
【0034】
また、前述したように、チューブ2には、その内袋3からチューブ挿通部31を介して突出した一端側の部分21と他端側の部分22とがある。そして、滅菌シート4には、チューブ2の一端側の部分21と他端側の部分22とがそれぞれ貫通する2つの貫通孔44が形成されている(図1、図3参照)。各貫通孔44は、それぞれ、滅菌シート4の内袋3が固定されている部分近傍に配置されている。
【0035】
血液回路セット1では、チューブ2の一端側の部分21と他端側の部分22とは、それぞれ、滅菌シート4の各貫通孔44を介して、滅菌シート4の外側へ、すなわち、不潔面42から突出する。また、この突出した一端側の部分21と他端側の部分22とは、それぞれ、後述するように外袋5からも突出している(図1参照)。
【0036】
このような構成により、血液回路セット1では、滅菌シート4を外袋5から取り出さず、まだ展開状態としない状態、すなわち、滅菌シート4が折り畳み状態で外袋5に収納された状態で、チューブ2の一端側の部分21からプライミング液Qを供給して、当該チューブ2をプライミングすることができる。また、このとき、プライミングされたチューブ2を、外袋5、滅菌シート4(窓部43)、内袋3を通して、視認することができる。これにより、チューブ2が十分にプライミングされたか否かを確認することができる。
【0037】
次に、滅菌シート4を折り畳み状態とする際の、当該滅菌シート4の折り畳み方について図3〜図9を参照しつつ説明する。
【0038】
図3に示す展開状態の滅菌シート4を、清潔面41を正面に見て、その長辺方向(上下方向)の中央部の第1の折り部461を谷折りとするとともに、第1の折り部461と滅菌シート4の下端47との間の中央部の第2の折り部462を山折りとする。これにより、滅菌シート4は、図4に示す状態となる。
【0039】
次に、図4に示す状態の滅菌シート4を、滅菌シート4の上端48と第1の折り部461との間の中央部の第3の折り部463を谷折りとするとともに、滅菌シート4の上端48と第3の折り部463との間の中央部の第4の折り部464を山折りとする。これにより、図5に示すように、滅菌シート4は、その長辺方向に沿ってほぼ蛇腹状に折り畳まれた状態となる。
【0040】
また、滅菌シート4の短辺方向(左右方向)の中央部に、図5に示す状態を維持する維持テープ61を貼付する。この維持テープ61には、滅菌シート4を折り畳み状態から展開する際に剥離されるものであり、その剥離する際の順番「3」が付されている。
【0041】
図5に示す状態の滅菌シート4を、その左端49から、全幅の2/6に当たる部分の第5の折り部465を谷折りとするとともに、全幅の1/6に当たる部分の第6の折り部466を山折りとする。これにより、図6に示すように、滅菌シート4は、その一部が、短辺方向に沿ってほぼ蛇腹状に折り畳まれた状態となる。
【0042】
次に、図7に示すように、滅菌シート4の左端49と第5の折り部とが重なった部分に、図6に示す状態を維持する維持テープ62を貼付する。この維持テープ62には、滅菌シート4を折り畳み状態から展開する際に剥離する順番「2」が付されている。
【0043】
次に、滅菌シート4を、その左端49から、全幅の4/6に当たる部分の第7の折り部467を谷折りとするとともに、全幅の5/6に当たる部分の第8の折り部468を山折りとする。これにより、図8に示すように、滅菌シート4は、その全体が、短辺方向に沿ってほぼ蛇腹状に折り畳まれた状態となる。
【0044】
次に、図9に示すように、滅菌シート4の右端40と第7の折り部467とが重なった部分に、図8に示す状態を維持する維持テープ63を貼付する。この維持テープ63には、滅菌シート4を折り畳み状態から展開する際に剥離する順番「1」が付されている。
【0045】
以上のような折り方により、展開状態の滅菌シート4を折り畳み状態とすることができる。また、この折り畳み状態では、滅菌シート4は、展開状態となるまで、清潔面41が内側のままとなり、清潔面41の清潔状態を維持することができる。これについては、後述する。なお、折り畳み状態の滅菌シート4を展開状態とするには、前記折り畳み順序と反対の順序で行なうことができる。
【0046】
なお、滅菌シート4の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル系樹脂、ポリスチレン等の各種樹脂材料、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0047】
また、滅菌シート4は、通気性を有する部分を有するのが好ましい。これにより、折り畳み状態の滅菌シート4を滅菌処理した際に、通気性部分の存在により、滅菌のための気体の流通性が確保され、滅菌を良好に行なうことができる。なお、このような滅菌シート4の通気性を有する部分としては、織布(布地)、不織布、紙類、メッシュ、発泡体やその他の多孔質体等で構成することができる。
【0048】
図1、図2に示すように、外袋5は、チューブ2を内袋3ごと包み込んだ折り畳み状態の滅菌シート4をさらに収納するものである。この外袋5は、内袋3と同様に、塵や埃を遮断し得るもの、特に菌不透過性を有する清潔袋であるのが好ましい。血液回路セット1では、外袋5は、折り畳み状態の滅菌シート4を取り出した後には破棄されもよいし、使用済みの滅菌シート4(チューブ2、内袋3を含む)を再度収納するのに用いられてもよい。
【0049】
また、チューブ2の滅菌シート4から突出した一端側の部分21と他端側の部分22とは、それぞれ、外袋5に形成された2つのチューブ挿通部51を介して、外袋5の外側に突出している(図1参照)。各チューブ挿通部51は、それぞれ、一端側の部分21および他端側の部分22と液密に嵌合する。これにより、外袋5内の無菌状態を維持することができる。
【0050】
このような外袋5は、可撓性を有する2枚のシート材52を重ね、縁部521同士を融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)して構成されたものである(図2参照)。なお、このシート材52の構成材料としては、例えば、内袋3を構成するシート材32と同様の構成材料を用いることができる。また、外袋5では、その内部の視認性を確保するために、全体が透明性を有している。
【0051】
また、図1に示すように、外袋5には、図中左側の部分と右側の部分との間に紐部材53が架設されている。この紐部材53は、例えば、血液回路セット1を運搬する際に把持される把持部として機能したり、血液回路セット1を一時的に吊るす際に用いられる吊り下げ部としても機能する。なお、紐部材53は、シート材52と一体的に形成されたものであってもよいし、シート材52と別体で構成され、その別体をシート材52に固定したものであってもよい。
【0052】
次に、血液回路セットの使用方法の一例について説明する。
[1] まず、図1に示す状態の血液回路セット1を用意する。そして、血液回路セット1の外袋5の紐部材53を、スタンド(図示せず)に掛ける。これにより、血液回路セット1が吊られた状態となる。この状態で、チューブ2の一端側の部分21および他端側の部分22をそれぞれプライミング液の供給源に接続し、プライミングを行なう回路を構成する。
【0053】
[2] 次に、プライミングを行なう。前述したように、このプライミングは、滅菌シート4が折り畳み状態で外袋5に収納された状態で行われる。また、プライミングされたチューブ2を、外袋5、滅菌シート4、内袋3を通して、視認することができる。これにより、チューブ2が十分にプライミングされたか否かを確認することができる。
【0054】
[3] チューブ2が十分にプライミングされたことを確認したら、血液回路セット1を前記スタンドから取り外し、さらに、外袋5から折り畳み状態の滅菌シート4を取り出す。
【0055】
[4] 次に、折り畳み状態の滅菌シート4の吊り下げ部45aを、不潔域に向かって右側のスタンドのフック(図示せず)に掛ける。このとき、前述したように滅菌シート4で、チューブ2を収納する内袋3が覆われているため、当該内袋3(チューブ2を含む)の無菌状態が維持される。
【0056】
[5] その後、滅菌シート4に貼付されている、順番「1」が付された維持テープ63を剥離する。そして、滅菌シート4の左側の部分を把持して、左方向に向かって引張り、第7の折り部467、第8の折り部468を展開する(図7参照)。図7に示す状態でも、滅菌シート4で内袋3が覆われているため、当該内袋3の無菌状態が維持される。
【0057】
[6] 次に、滅菌シート4に貼付されている、順番「2」が付された維持テープ62を剥離する。そして、滅菌シート4の左側の部分を把持して、左方向に向かって引張り、第5の折り部465、第6の折り部466を展開する(図5参照)。図5に示す状態でも、滅菌シート4で内袋3が覆われているため、当該内袋3の無菌状態が維持される。
【0058】
[7] 次に、滅菌シート4の吊り下げ部45bを、不潔域に向かって左側のスタンドのフック(図示せず)に掛ける。その後、滅菌シート4に貼付されている、順番「3」が付された維持テープ61を剥離する。このとき、滅菌シート4は、自重で展開し、チューブ2を収納する内袋3が露出する(図3参照)。このように、血液回路セット1では、滅菌シート4が完全に展開するまで、内袋3やそれを覆う清潔面41に触れることなく、内袋3の無菌状態を維持することができる。また、展開した滅菌シート4により、清潔域と不潔域とが仕切られる。
【0059】
以上、本発明の血液回路セットを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、血液回路セットを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 血液回路セット
2 チューブ
21 一端側の部分
22 他端側の部分
3 内袋(袋体)
31 チューブ挿通部
32 シート材
321 縁部
33 接着剤
4 滅菌シート
40 右端
41 清潔面
42 不潔面
43 窓部
44 貫通孔
45a、45b 吊り下げ部
461 第1の折り部
462 第2の折り部
463 第3の折り部
464 第4の折り部
465 第5の折り部
466 第6の折り部
467 第7の折り部
468 第8の折り部
47 下端
48 上端
49 左端
5 外袋
51 チューブ挿通部
52 シート材
521 縁部
53 紐部材
61、62、63 維持テープ
Q プライミング液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液が通過する少なくとも1本のチューブと、
前記チューブの少なくとも一部を収納する袋体と、
展開された状態で、手術室における清潔域と不潔域とを仕切る滅菌シートとを備え、
前記滅菌シートは、前記清潔域に臨む面を内側にして、前記チューブを前記袋体ごと包み込むように折り畳まれ、その折り畳み状態で前記チューブを前記不潔域に臨む面側から視認可能な窓部を有し、
前記折り畳み状態で前記チューブをプライミング可能に構成され、該プライミングされたチューブを前記窓部を介して視認するよう構成されていることを特徴とする血液回路セット。
【請求項2】
前記滅菌シートは、その少なくとも前記窓部となる部分が透明性を有する請求項1に記載の血液回路セット。
【請求項3】
前記滅菌シートは、展開された状態では、長方形をなすものであり、
前記折り畳み状態では、前記展開された状態の滅菌シートを、その長辺方向および短辺方向のうちの一方向に沿って蛇腹状に折り、さらに、他方向に沿って蛇腹状に折ったものとなっている請求項1または2に記載の血液回路セット。
【請求項4】
前記滅菌シートには、前記折り畳み状態を維持する複数枚の維持テープが貼付されている請求項1ないし3のいずれかに記載の血液回路セット。
【請求項5】
前記各維持テープは、それぞれ、前記滅菌シートを前記折り畳み状態から展開する際に剥離されるものであり、
前記各維持テープには、それぞれ、剥離する順番が付されている請求項4に記載の血液回路セット。
【請求項6】
前記滅菌シートは、吊るされた際、前記折り畳み状態から自重で展開するものである請求項1ないし5のいずれかに記載の血液回路セット。
【請求項7】
前記チューブは、前記袋体に収納されていない部分が前記滅菌シートを貫通して、該滅菌シートの前記不潔域に臨む面から突出している請求項1ないし6のいずれかに記載の血液回路セット。
【請求項8】
前記チューブは、巻回された状態で前記袋体に収納されている請求項1ないし7のいずれかに記載の血液回路セット。
【請求項9】
前記袋体は、前記滅菌シートに対し固定されている請求項1ないし8のいずれかに記載の血液回路セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−220681(P2010−220681A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69050(P2009−69050)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】