血液型同定されたレシピエントに対する交差試験による、血液型が同定された輸血ドナーの選択
【課題】レシピエントと将来のドナーの輸血抗原遺伝子型(血液型の遺伝子型も)を交差試験することを基盤にした2つの血液型間の適合性を確立する方法、表現及びアルゴリズムを提供する。
【解決手段】適合性を決定するために、ハプロタイプを基礎とするセットと関連した発現条件によって血液型遺伝子型は対応する表現型にマッピングされ、適合性は組成表現型の組み合わせとして構築された血液型の適合性を確立することにより確立される。ビット記号列は合致し、アルゴリズム演算式を用いることが好ましい。遺伝子型をハプロタイプへマッピングすることにおける曖昧さが存在する場合、サンプル集合におけるハプロタイプの発生頻度に基づいて減ずることが、又は配偶子相によって解決することができる。
【解決手段】適合性を決定するために、ハプロタイプを基礎とするセットと関連した発現条件によって血液型遺伝子型は対応する表現型にマッピングされ、適合性は組成表現型の組み合わせとして構築された血液型の適合性を確立することにより確立される。ビット記号列は合致し、アルゴリズム演算式を用いることが好ましい。遺伝子型をハプロタイプへマッピングすることにおける曖昧さが存在する場合、サンプル集合におけるハプロタイプの発生頻度に基づいて減ずることが、又は配偶子相によって解決することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2005年10月24日に出願された米国仮特許出願第60/729,637号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、少数血液型抗原の交差試験に関する。
【背景技術】
【0003】
現在米国では、ドナーとレシピエントの血液型との適合性は、表現型の分類、他の抗原に対する同種異形抗体を用いてレシピエントをスクリーニングすること、及び、抗体が検出された場合のみに対応する抗原が無いドナーの血液(「抗原が陰性の血液」)を選択するために、抗体及び抗原を同定することによって、分類及びスクリーンパラダイムに従い決定される(Hiller、C.D.et al.,supra)。標準的な血清学的試験方法は、直接的な凝集、即時的なスピンテスト、並びに間接的な抗グロブリン試験(「IAT」という;I.Dunsford et al.,Techniques in Blood Grouping,2nd ed.Oliver and Boyd,Edinburgh(1967)参照)を含んでいる。IATは、ドナーの赤血球に発現した抗原を認識するレシピエントの血漿中の抗体を検出し、輸血反応を誘発することができる。実際に、レシピエント及びドナーのABO/RhD表現型をベースにした交差試験ガイダンスは、抗体スクリーニング、血液型チェック及び送達制御のシーケンス形態で(ABCD、J.Georgsen,et al.,Transifusion service of the country of Funen.Organisational and economic aspects of restructuring.Ugeskrift for Laeger,159,1758−1762(1997))、米国、英国、スウェーデン、オーストラリアで通常に使用されており、調査目録を増やし、通常の労力を減らすと同時に、合致したドナーユニットを同定し、発布するプロセスを大いに促進してきた。抗体スクリーンが陰性であるときに用いられるドナーとレシピエントのコンピュータ処理されたマッチングは、主要な抗原すなわち、AB及びRhDに対するレシピエント及びドナーの血液を決定するために設計された血清学的試験の正確性に依存している。主要な抗原のみと適合することが知られている、及び/又は特異的な抗体に対してのみ陰性であることが知られているドナーユニットの選択は、その他の血液型抗原の不適合に関連する同種免疫反応を誘発し、そのうちのいくつかは高い免疫原性があり、複数の抗原因子の存在が、臨床上有意なレベルへ副作用を大きくする。従って同種異系免疫化の危険を減ずることが、重要な臨床上の懸念である。このことは、大量輸血される患者、例えば、鎌状赤血球病又は血友病に苦しむ人、並びに癌や糖尿病を含む特定の慢性病の患者にとっては特にそうである。更に、現在の慣習は治療に遅延を誘導し、緊急事態を悪化させ、より一般的には患者の治療に更なる出費を引き起こす。
【0004】
抗体の同定及び抗原陰性の血液の供給は、患者の血流内を循環する抗体が、ドナーの赤血球上に陳列する抗原に出会うことによりトリガされる輸血の副作用の危険を最小化しようと努めることにより、安全な血液の輸血を保証する現在のアプローチを形成している。反応は「なし」から「重篤」までの範囲にある重症度に変化できる(Hillyer、C.D.et al.,Blood blanking and transfusion medicine:basic principles and practice,Elsevier Science Health Science 2002,pp.17)。例えば、ABO又はRh血液型中の臨床上の抗原は、合致しなければ、重篤な副作用を誘発するが、抗原Nは合致しなければ副作用を誘発しない。重症度の度合は、対象が成人か新生児の子供かどうかにも依存して変化する。例えば、攻撃的な抗原Sは、成人には軽い副作用しか生じさせないが、重篤な新生児溶血性疾患を引き起こすことができる。このような質的な記述子は有用ではあるが、量的に将来のドナーとレシピエントの互換性を決定することはより信頼性があり、許容性評価及びドナー探しを、より客観的かつ系統的方法で行うことが可能になる。
【0005】
不適合な血液の輸血を防ぎ、同種異形免疫化の危険を減少させるために、主要な抗原だけではなく、Rh変異体及び主要な少数血液型抗原も通常は分類することが好ましい。しかし、全ての臨床上の関連する抗原に対する血清学的分類の拡張は、複数の同種異形抗体又は弱く発現した抗原と出会う場合は特に、適切な抗血清の不足及び重労働の血清学的分類プロトコルの複雑さ及び信頼性の制限によって防止される。血清学的試験方法の限度の観点から、ほとんどのドナーセンタは、抗原の拡張セットとして、コホートのドナーしかスクリーンしておらず、限られた項目しか保存していない。感受性が、結果の正確性に対する別の懸念である。血清型検査のデータ解釈は、赤血球表面にあるタンパク質の量を反映する反応パターンに基づいているので、シグナルは探索される抗原の発現レベルと相関している。例えば、Duffy及びKiddのような少数群の抗原に対して作られる抗体は、同型接合の発現の反映に対してよりも、異形接合の発現を反映する抗原を有する細胞に出会う場合、あまり強く反応しない。
【0006】
対照的に、DNAレベルでの血液型遺伝子の分析は、表現型変異性の根底にある対立遺伝子多様性の詳細図を提供している。近頃述べられているように(Hashmi et al.,Transfusio,45,680−688(2005))、利用可能な方法論によって、Kell、Duffy、Kidd,MNS及びその他の抗原をコード化する遺伝子内にある臨床的に有意な単一ヌクレオチド多型性の同時分析が可能になり、これらの方法論が、高度に変異可能なRhD及びRhCE遺伝子(G.Hashmi et al.,“Typing of Rh Variants using Bead Arrays on Semiconductor Chips”,Abstract S64−040B,American Association of Blood Banks(AABB)Annual Meeting,October 2004,Transfusion Vol 45 No.3S,September 2005 Supplement)、ヒト白血球抗原、ヒト血小板抗原、及びその他抗原の分析に役に立っている。輸血抗原の発現に関する遺伝子型を基盤にした交差試験の利点は、免疫副作用の危険だけではなく、初期環境においてレシピエントを免疫化する危険を最小化し、又は除去すること、及び、ドナーの集団から輸血用血液製剤の迅速な選択を可能にすることである。遺伝学的な交差試験は、高価な血清学的試薬及び複雑かつ重労働の血清学的分類プロトコルの必要と、特定のドナー抗原への抗体に対する、レシピエントの再現試験の必要を除去している。
【0007】
更に、遺伝子学的な交差試験は、利用可能な抗体が抗原に対する弱い反応性のみとなる抗原の決定、最新の輸血患者の分析、新生児溶血性疾患に対する危険のある胎児の同定のような、血清学的技術によっては取り組むことのできない臨床的な問題に取り組むのを助ける。包括的なDNA分類ツールは、より利用しやすく対費用効果の高いものとなっており、通常は広範囲の輸血に関連するDNAマーカを標的としている。一例は、eMAPに基づき、BeadChipTMフォーマットで行われる包括的DNA分類である(“eMAP Application”引用によって取り込まれる2002年10月15日出願の米国特許出願第10/271602号;Hashmi G.et al,A flexible array format for large−scale,rapid blood group DNA−typing,Transfusion,45,680−688(2005)も参照; 後者の文献は、Dombrock、Landsteiner−Wiener、Colton、Scianna、Diego、Kidd、Kell、Lutheran及びMNS系の36の対立遺伝子を分離するために、18の単一ヌクレオチド多型性を具える1セットのパネルを記載している)。血液型分類を超えて、広域スペクトルのDNA分類は、ヒト血小板抗原やヒト白血球抗原等を発現するような他の関連したその他の遺伝子レパートリへ知識を拡張しており、レシピエントを特徴付け、ドナーを選択する通常の方法としての従来の血清学的方法を置き換える潜在能力を有する。
【0008】
従って、輸血抗原遺伝子型の基盤上に既知のレシピエント用の適合したドナー選択を可能にする実用的な方法を確立すること、及び、種々のドナー人口の限られた利用可能性を与えられると、所望することができる潜在的に、単に、部分的に適合可能なドナーの選択を導く曖昧な事象における量的危険度の評価を提供することは有用であり、一方、その曖昧さを減ずる又は除去する方法を提供している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
開示されるのは、レシピエントと将来のドナーの輸血抗原遺伝子型(血液型の遺伝子型も)を交差試験することを基盤にした2つの血液型間の適合性を確立する方法、表現及びアルゴリズムであり、プロセスもまた、遺伝学的な交差試験(「gXM」)である。適合性を決定するために、前記血液型遺伝子型は、根底にある対立遺伝子の組合せのセットに関連した発現状態による表現型に対応して位置づけられ、適合性は、組成の表現型から構成される血液型の適合性を確立することによって、確立される。
【0010】
更に、初期設定の厳密度の選択された交差試験の規則の下での、レシピエント(R)と候補のドナー(D)の2つの血液型間の適合性についての迅速な計算的評価方法が開示されている。例えば、適合性は、ドナーとレシピエントが同一の抗原のセットを発現するというような、正確な規則の下で確立させることができるが、代替的に、適合性は、例えばドナーによって発現された輸血抗原のセットが、レシピエントにより発現する輸血抗原のサブセットを形成するような緩やかな規則の下で確立してもよい(すなわち、ドナーはレシピエントが発現しない抗原を発現せず、その意味では、制限された抗原レパートリを有する)。効果的な計算実行を可能にするために、血液型は、文字内にあるビットの部分集合が、血液型の特異性に寄与する血液型システム内にある個別の表現型を定義した抗原の有「1」又は無「0」を反映する二進数記号(すなわち、8進数や16進数を含むいくつかの表現のうちの1つにおける「コード」)の形で表現される。本発明によると、交差試験規則は、RとDの記号列間の適合性を決定する操作に合致する高速なブール記号として実行される論理的表現に翻訳される。例えば、既知の人口の中でもっとも共通に観察されたもののような、第1と第2の血液型の集合の間の適合性の関係は、例えば、適合性を表す「1」の入力、不適合性を示す「0」の入力で、適合性マトリクスの中で便利に表現される。部分的な適合性の測定は、RとDの記号列間の個別に不合致なビットに関連する評点生成の点から提供され、各々の不合致な評点は、対応する抗原の不合致な臨床上の意味を反映するように0と1の間の値に配置される。適合性及び部分適合性マトリクスは、ここでは、少数の血液型系であるDuffy、Kell、Kidd、MNS、Dombrock及びその他のものを伴う報告された血清学的表現型頻度を基盤として、アフリカ系アメリカ人に最も共通に観察される(又は、予測される)25人の16抗体の血液型用として提供される。
【0011】
更に開示されるのは、血液型のマッピング及び遺伝学的な交差試験に対する遺伝子型のアルゴリズムと実行である。前記アルゴリズムは、遺伝子型を表現型にマッピングすることによって、候補のドナーと既知の輸血抗原遺伝子型のレシピエント間の適合性を確立させることが可能である。好ましくは遺伝子型は、選択された輸血抗原の発現を制御する遺伝子内にある各々の複数の多型性部位での正常型(N)及び変異体(V)対立遺伝子割当ての組合せを具えている。開示されるのは、マーカによって定義される遺伝子型の直接的な比較により、適合性の決定を可能にする多型性の輸血抗原マーカのセットである。より一般的には、上記マッピングは、特異的な表現型を定義するコード化した抗原の発現状態を決定するために、確立された遺伝の規則の下で結合される、組成点の突然変異集合(ここでは、「ハプロタイプ」と呼ばれる)内へ遺伝子型の分解を呼び出す。表現型割当てにおける曖昧な事象においては、遺伝子型が未知の配偶子相の多部位のヘテロ接合二倍体を含むときに一般的に生じ、この最初に述べたように、前記アルゴリズムは部分的な表現型適合性の評価を可能にし、ドナーとレシピエントとの組合せに関連した危険の量的評価を提供し、加えて、前記アルゴリズムは、統計的なハプロタイプ分析を適用することによる曖昧さの低減を、又は未知の配偶子相を決定する(又は、段階的に実行する)方法を適用することによる曖昧さの解決を可能にしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
I.血液型適合性の決定
交差実験の実用的な実装のための必要条件は、血液型の数学的表示と、厳格性が変化するレベルで有害な輸血反応を誘発することがある原因抗体の影響を評価する適合性評点システム確立の必要性である。原因抗体(または、ドナーから直接に取得された抗体)を含む輸血を以前に行った結果として誘発されることのあるアロ抗体の影響も考慮すべきである。
【0013】
I.1 血液型(bT)の表示
発現(または弱発現)抗原の組み合わせは、リストに要約されており、二進列の形で血液型の都合の良い表示を提供しており、各ビットは、特異な輸血抗原の存在(1)と欠如(0)を表わす。例えば、公知の抗原を:Fya、Fyb、Lua、Lub、M、N、S、s、K、k、Jka、Jkb、Doa、Dob、Jo(a)の順にリストにした場合、血液型コードc0101110101100111は、血液型(Fya−、Fyb+、Lua−、Lub+、M+、N+、S−、s+、K−、k+、Jka+、Jkb−、Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)を表わしており、Fyb、Lub、M、N、s、k、Jka、Dob、Hy、及びJo(a)の存在と、抗原Fya、Lua、S、K、Jkb及びDoaの欠如によって特徴付けられる。このコードは、また、16進形式、すなわちc5F67で表わすこともできる。
【0014】
個々の血液型のこの定義は、「仮想」抗原として道元の抗原をリストにすることによる個々が所有するものではなく、輸血抗原に対するアロ抗体の記録を含むこともできる。例えば、ドナーが、部分的に適合する血液、ドナーによって発現しない輸血された赤血球上の表示された抗原のすべてあるいはいくつかのみを以前に輸血したことがある場合、血液型記号列が拡張されて、これらの「仮想」抗原の「0」エントリを含む。例えば、以前に輸血を行ったドナーからのサンプルが遺伝子型決定に用いることができる場合、ドナーのものと異なる抗原が、拡張した受容者の血液型に含まれることがある。特に、おそらく、部分的に合致した血液を初期に輸血した結果として、ドナーが、輸血した赤血球に表示した不適合抗原の一つに対してアロ抗体を形成したことが見出されると、この血液型は、原因抗原に対して「0」をエントリすることによって拡張される。仮想抗原に対する「1」のエントリを用いて、特異的アロ抗体の欠如を示すこともできる。この拡張した表示によって、以下に述べる適合性評点リングと交差適合手順が、全体的に拡張した血液型にたいしてまだ正しいことが確実となる。
【0015】
I.2 適合性の設定
血液型がわかっているレシピエントに与えられる適合可能なドナーのサーチには、交差試験規則とも呼ばれる適合性基準の定義が必要である。
【0016】
第1の交差試験規則は、ここで正確な交差試験規則(Exact Cross−Matching rule)と呼ばれ、ドナーとレシピエントが比較用に選択された同じ輸血抗原セット発現する場合、ドナーが所定のレシピエントに適合していることを明言するものである。第2の交差試験規則は、ここで緩和交差試験規則(Relax Cross−Matching rule)と呼ばれ、レシピエントが発現しない抗原をドナーが発現しない場合に、ドナーが所定のレシピエントに適合していることを明言する、すなわち、基準が、制限されたドナー抗原レパートリを実行するものである。この規則の下では、ドナーの血液型を規定する選択された抗原セットが、レシピエントの血液型を規定するサブセットである。レシピエントの細胞上に表示された抗原以外の抗原が欠如しているいずれの血液型も、原理上は適合する。なぜなら、輸血反応を引きおこす反応型抗体がレシピエントの血清中に存在しない(レシピエントが自己抗体を形成しておらず、いずれの場合もドナーの血液輸血によって、予期したとおりによりひどくならないであろう)からである。緩和交差試験規則は、例3及び例5に記載されているように、正確な交差試験にくらべて、所定のレシピエントと適合するドナーの数が、有意に拡大されている。第3の規則は、緩和交差試験規則の変形であり、ドナーがレシピエントと弱く反応する抗原を発現するのみであれば、ドナーが所定のレシピエントと部分的に適合することを明言する。これらの原因抗原の免疫原生と対応する臨床的意義を反映する評点が割り振られており、ミスマッチが生じた場合の副作用の速度と厳格さを反映している。現在の輸血のやり方は、抗原(抗原負)の欠如に基づいて、適合ドナーを選択する交差試験規則に基づいている。この規則は、臨床的に有意な抗原とレシピエント中の対応する免疫原生反応との間の潜在的な不適合成を不必要に許す。図2は、異なる交差試験規則の下で、レシピエントとドナーの発現抗原セットとの関係を示すベン図である。
【0017】
緩和交差試験規則の下では、予測ドナーの抗原レパートリが(正確な交差試験規則の下で洗濯されたドナーの抗原レパートリに比べて)制限されている。なぜなら、発現した抗原のドナーレパートリは、所定のレシピエントのレパートリのサブセットを形成するからである。この制限されたドナーレパートリの基準は、少数の抗原を発現したドナー(あるいは、従来の用語では多数の「抗原負」を必要とするので、予測ドナーのプールを制限するように見えることがある。しかしながら、実際のところ、需要可能なドナー抗原サブセットは、レシピエントの抗原のどのような組み合わせでも良いので、緩和交差試験のもとで所定のレシピエントに適応する候補ドナーの数が、正確な交差試験のもとで可能な数より多い(例6も参照)。
【0018】
効率よく行うために、交差試験規則は、例えば、二進数、八進数、16進数形式といった記号列を含む、論理式に書き換えられる。拡大したマーカセット上でのドナー−レシピエント適合性を確実にするのに特に有意な緩和交差試験用の論理式は{[βd]i AND NOT[βr]i}EQ 0、であり、表示は、血液型記号列中のビットを計数するものである。この式は、ドナー血液型記号列のビットが「1」であり、かつ、レシピエントの血液型記号列の対応するビットが「0」である場合に、真値(1)の値となる。
【0019】
部分適合性
部分的適合性の数的評価のベースを設定するために、0から1の範囲の適合性評点を、ミスマッチが生じた場合の副作用の重傷度を低減する順に抗原に振り分けた。すなわち、非免疫原生抗原は、評点「1」に割り当てられ、禁止的免疫原生抗原は、評点「0」に割り振られた。例えば、ミスマッチが生じた場合に、「直ちに、軽度から重度の」反輸血作用を引きおこす臨床的優位性を反映しているABO抗原は、評点「0」に割り振られる。逆に、ミスマッチが生じた場合に、「遅れて」反輸血反応を引きおこす臨床的優位性を反映したリュスラン抗原は、評点0.75が割り振られている。「ルックアップ」表1は、ミスマッチが生じた場合、その量的な臨床反応速度(前述のHillyer、C.D.et al.)に基づいて、いくつかの共通した輸血抗原の適合性評点を示している。その他の定義も可能であり、例えば、特異的抗原の発生頻度や、誘発的臨床反応の重傷度と免疫原生評点の組み合わせの形で、いくつかの共通輸血抗原の適合性評点を示す。全体的な適合性評点は、ミスマッチが生じたビットの適合性評点を乗算することによって計算される。この結果、複数の免疫抗原性独立体(immunoantigenetic entities)が存在する場合に、副作用を構成する。この仮定は、感作リスクが特異的抗原に対して有意に変化するという事実にもかかわらず、現在の輸血手順が、第1の場所における感作を防止する血液ではなく、むしろ、同一の抗体に対して特異である抗原負を有する血液の使用を含む限り、追加の抗体フォーメーションが近年20年の遡及的エピソード数に別個に関連して示されている(Schonewille et al.輸血、46、630−635(2006))という観察に一致する。従って、ここの抗原を{si}によって個々の抗原の適合性評点をつけながら、血液型適合性マトリクス中の要素が、式に基づいて計算される。
ここで、[βd]と[βr]は、それぞれ、ドナーとレシピエントの血液型コードを示し、指数iは、血液型中の個々の抗原の存在あるいは欠如を表示するビットを意味する。すべての原因抗原の評点の積としての適合性評点siは、従って、0と1の間に固定されている。セット{i}が、空であれば、原因抗原は存在せず、また、結果が1であれば、ドナーの血液は、完全にレシピエントと適合すると考えられる。結果が0であれば、ドナーの血液は不適合であると考えられる。eの小数値は、部分的な適合性を表わしている。この値が大きいほど、適合性の度合いが高い。一の実施例では、部分的適合性評点には閾値がある。すなわち、輸血の目的にリスク方限ると考えられるこれらの血液型の検討から排除するために、e(βd、βr)<ethであれば、e(βd、βr):=0である。
【0020】
適合性マトリクス
母集団中に観察されたあるいは観察が予測された第1及び第2の血液型の間の適合性評点は、マトリクスの形でコンパクトに表示することができる。特異的第1の血液型によってインデックスされた各列と、例えば、選択した血液型の発し頻度を低減させることによって順序付けられた列は、選択されたセット中の第1の血液型と第2の血液型の間の適合性の度合いを表示する評点でなる記号列を含む。正確な交差試験規則によれば、血液型は「e−Match」としてここで引用されている状態で、自身と適合性があり、直交するマトリクス要素「1」によって表示される。緩和交差試験規則の下では、各第1の血液型が、いくつかの第2の血液型を適合することがあり、対応する(直交しない)マトリクスの要素も、要素「1」、すなわち、ここで「r−Match」と呼ばれる状態、あるいは、上述したように、部分的適合性の評価によって得た値を示す要素すなわち、ここで「p−Match」と呼ばれる状態の要素を含むであろう。ゼロの値を含むマトリクス要素は、不適合の第I及び第2の血液型対を表わす。一般的に、緩和交差試験規則の下では、レシピエントの血液型を表わす第1の血液型が、候補ドナーの血液型を表わすいくつかの第2の血液型と適合する一方で、逆はなく、マトリクスは対称ではない。
【0021】
ドナープールの評価
一般的には、輸血ドナーは、同種異型免疫の結果、以前に輸血のレシピエントであったかどうかは認定されないことがある。しかしながら、緊急の場合、このようなドナーは、適合性評点が変形ドナー及びレシピエントコードに基づいて計算されている限り、現在行われている交差試験規則の下に受容可能である。このコードは、各「仮想」抗原位置において、レシピエントビットがドナービットに複写されて「0」にセットされる。
【0022】
II.輸血抗原遺伝子型適合性の決定
II.1 遺伝子型の表示
本発明の目的のために、位置又はそれ以上の対象の遺伝子内の特異的可変部位(遺伝子座)におけるターゲット核酸の配置(対立遺伝子)を与える値の記号列として、輸血遺伝子型を定義する。好ましくは、各指定された部位は、一対のオリゴヌクレオチドプローブと共に識別される。オリゴヌクレオチドプローブの一方は、正常(N)を検出するように、他方は特異的変位(V)遺伝子座を検出するように設計されている。好ましくは、細長プローブを、ポリメラーゼ触媒プローブ細長が、すなわち、3’終端が対応するマーカ対立遺伝子に合致するが、合致しなかったプローブについては合致しない適合したプローブに確かに生じた状態で使用される。MAPTMフォーマット(上述の米国特許出願第10/271,602号参照)に基づいて個々のプローブ延長反応の産生を表示する分析信号強度パターンが、対内のプローブに関連した分析信号強度の比率(あるいはその他の組み合わせ)へ、予め設定されたしきい値を適用することで、離散的反応パターンに転換された。
【0023】
更に、遺伝子型は、記号列G={(NV)i,k}によって表示される。ここで、iは対象となる選択された遺伝子セット中の遺伝子を表わし、kは、i番目の遺伝子内の指定された多型部位を示す。NおよびVは、対立遺伝子をの状態を表わす値をとり、この開示においては、自然型(あるいは正常)及び突然変異(変異)遺伝子座は、それぞれ、「A」及び「B」の文字で表わされることが好ましい。例えば、多型部位GYPB143において、MNSシステムではT>Cであり、「A」が正常な遺伝子座Tを表わし、「B」は、変異遺伝子座Cを表わす。二つの遺伝子座のみを有する対立遺伝子では、従って、二対立遺伝子の組み合わせ(NV)が、AA、AB(あるいはBA)及びBBの値をとる。その他の文字を用いて、対立遺伝子の状態を表わすこともできる。例えば、文字「D」は、遺伝子欠失を表わす。好ましい実施例では、同じマーカに向けられたプローブ対に関連する信号強度が、非特異的(バックグラウンド)寄与を取り除くことによって好適に補正され、正常な対立遺伝子を検出するプローブに関連するINなどの一の強度、及び、サンプル中の変異対立遺伝子座を検出するプローブに関連するIVなどのその他の強度が組み合わされて、識別パラメータΔ=(IN−IV)/(IN+IV)を形成する。この量は、−1と1の間で変化する。所定のサンプル用に、所定の下方しきい値以下のΔの値は、同型接合変異を表示し、所定の上方しきい値以上のΔの値は、同型接合正常を示し、下方しきい値以上で上方しきい値以下のΔの値は、同型接合配位を示す。輸血抗原遺伝子型は、したがって、記号列、G={Δik}によって表わすことができる。ここでは、上述したとおり、iが対象となる選択した遺伝性セット中の遺伝子を表わし、kは、i番目の遺伝子中の指定された多型マーカを示す。従って、輸血抗原遺伝子型は、ここでは、AA、AB(またはBA)及びBBのいずれかであるか、あるいは、均等に、1、0、−1で表わされる。遺伝子型は、ここでは、ハプロタイプと呼ばれる、二本の構成記号列の組み合わせを表わしており、各々が、全マーカ部位(マーカ当たり一の対立遺伝子)における対立遺伝子状態の特別な組み合わせを表わす。
【0024】
II.2 マーカの選択
以下により詳しく述べるように、レシピエントと候補ドナーの、例えば同一、あるいはほぼ同一といった適合性テストは、関連する遺伝子内のマーカセットに限定される。この遺伝子は、発現すると、レシピエントがすでに抗体(アロ抗体)を作っている(初期の露出に基づいて)か、あるいは抗体を作ることができる血液由来細胞上に表示された特定のヒト赤血球抗原(HEA)をコード化する。レシピエント、輸血される血液の候補ドナー中で同定された、合致あるいはほぼ合致は、−血液型抗原をコード化する、及び特に、マイナな血液型抗原を含む、遺伝子内に配置された多型部位に対応するマーカ− は、一般的に、レシピエントの免疫感作のリスクと、免疫化したレシピエントでは、アロ抗体を投与した反輸血作用のリスクを最小にする。すなわち、マーカセットを選択して、このような反応に関連する関連対立遺伝子をプローブするように選択されると、レシピエントとドナーのマーカ対立遺伝子の比較を行って、適合する候補ドナーの起訴を提供することができる。マーカセットは、継続中の出願第11/257285号に開示されている(例2も参照されたい)。これらは、発現を制御する追加のマーカ、例えばサイレンシング突然変異、及び、削除、挿入あるいは組み替えを検出するマーカ含めるように拡張することができる。
【0025】
一般的な場合にドナーを選択するためには、すべての臨床的に関連する血液型抗原の適合を確実にするために、臨床的に優位な輸血抗原の発現に関連する遺伝子型の比較に基づいて、ドナーとレシピエントの適合性を決定する手順を有することが好ましい。
【0026】
II.3 遺伝子型−血液型マッピング
本発明による遺伝子交差試験を行うためには、プロセス中のあいまいさに取り組む態様(「遺伝子型は表現型ではない」との格言に関連して)で遺伝子型を血液型にマッピングして、ついで、パートIに開示した方法を用いて血液型適合性を評価する。遺伝子型−表現型マッピングによって適合性を決定することは、血清学的分類を含む現在のやり方と逆に、発現する限り、それが強いか弱いかにかかわらず、両方の潜在的な原因エンティティ、すなわち、輸血によって誘発される抗体と、ドナーの赤血球の「外部」抗原と、が寄与している。多くの場合、表現型は、遺伝し方によって直接的にまたあいまいでなく、同定される(上述のHashmi et al.)。本発明が取り組んだ位一つの課題は、遺伝子型を表現型にマッピングすることの縮退から生じるあいまいさに関するリスク及びあいまいさの解決の定量的評価である。
【0027】
指定された対立遺伝子で構成された遺伝子型が与えられている場合、血液型決定の第Iステップは、これらの対立遺伝子でコード化された個々の輸血抗原の発現状態を決定することである。各マーカについて、(Ee)は遺伝子型(NV)中の対立遺伝子N及びVの優性特性を示し、EとeはD(優性遺伝子)、R(劣性遺伝子)及びN(非発現遺伝子)の3つの値の一つをとる。操作可能な遺伝パターンを反映している、対応する抗原発現状態(AgNAgV)が、ついで都合よく一対のブール変数(Xx)によって表わされる。ここで、値「1」(あるいは「真」)と「0」(あるいは「偽」)は、パートIで述べたように、それぞれ、抗原の存在と欠如を表わしている。
【0028】
(Xx)の値は、以下の論理式を評価して決定する。
X=(E EQ “D”)OR((E EQ “R”)AND STATUS)
x=(e EQ “D”)OR((e EQ “R”)AND STATUS)
ここで、
STATUS=(Ee NEQ “DR”)AND(Ee NEQ “RD”)AND(Ee NEQ “NN”)
である。
【0029】
ここで、OR、AND、EQ、およびNEQは、論理演算子であり、それぞれ、対応する「オア」、「アンド」、「イコール」、及び「イコールにあらず」の関係の有効性に基づいて、「1」(真)あるいは「0」(偽)のブール値に戻る。
【0030】
1対1の写像: SNPマーカ(例2Aも参照)
いくつかの重要な血液型群システムの対立遺伝子は、コード化抗原中の単アミノ酸変化に対応する単ヌクレオチド多型を具える。この場合、抗原の式は(Xx)であり、表2及び表3に示すように、表現型は容易かつ明確に上述の式から評価される。対象となるほとんどの場合において、対立遺伝子は相互優性であり、正反対の抗原が発現する。例えば、Kiddシステム中の単ヌクレオチド多型(SNP)JK838G>Aは、正常抗原Jkaを正反対の抗原Jkbに変える単アミノ酸置換に対応する。
【0031】
「多対1」マッピング(例2Bも参照)
その他の場合、対立遺伝子は、多数の可変遺伝子座を具える。例えば、表4に示すように、Dombrockシステム内の位置DO−793、DO−624、DO−378、DO−350及びDO−328にある5つの可変遺伝子座は、多数の遺伝子型を規定するものであり、いくつかの場合は、この遺伝子型はハプロタイプの単一の組み合わせより多くの組み合わせを表わす。特筆すべきことには、既知の遺伝パターン(Reid、M.及びLomas−Francis、C.“The Blood Group Antigen Facts Book”、Academic Press、2nd ed.,2004)による個々のハプロタイプ組み合わせについて抗原発現状態の評価は、例えば、DOB/DOA及びHA/SHが表現型Do(a+b+)にマッピングを行うというように、様々なハプロタイプ組み合わせ(ディプロタイプ)が同じ表現型にマッピングを行い、一方、多数の様々な遺伝子肩が4つの(既知の)表現型の各々にマッピングを行う。この状態は、ここで、「多対1」(また、「崩壊性」)マッピングと呼ぶ。
【0032】
一義的マッピングは次の関数で表わすことができる。
fgT→βT:gr(d)→βr(d)
【0033】
血液型の決定に関連するすべての抗原が、正反対の抗原に対応する単ヌクレオチド多型を具える相互優性対立遺伝子によってコード化されるのであれば、交差試験の特別なケースである、完全に適応可能な交差「g−交差」が、レシピエントとドナーが同じ遺伝子型を有していれば、存在する。例えば、「1対1」マッピングの場合、遺伝子型の同一性は、正確な交差試験規則の下の適合性を意味する。
【0034】
「1対多」マッピング:あいまいさ
より一般的には、不確定な配偶子相を伴う2−遺伝子座(あるいは多遺伝子座)ヘテロ接合遺伝子型に潜在するあいまいさによって、あいまいな表現型が生じる。例えば(表5)、Duffyシステムにおける遺伝子座Fy−33及びFy125の対のヘテロ接合組み合わせは、配偶子相に応じて、抗原Fya又は正反対の抗原Fybのいずれかをコード化する。すなわち、Duffy−Fy(FY125)部位に「G」を有する正常な対立遺伝子は、抗原Fyaをコード化し、この部位に「A」を有する可変対立遺伝子は、正反対の抗原Fybをコード化するが、別のマーカであるDuffy−GATA(FY−33)によって発現は制御される。Duffy−GATA(FY−33)が突然変異すると、これが遺伝子転写を中断し、FYA/Bの発現をとめる。ヘテロ接合対立遺伝子の2−遺伝子座組み合わせ、すなわち、{GATA、FY}における(AB、AB)は、表現型の予測にあいまいさを生じさせ、ハプロタイプ組み合わせは、Fy(a+b)をコード化するA−A/B−B、あるいは、Fy(a−b+)をコード化するA−B/B−Aのいずれになることもできる。輸血で適合しない場合、Duffy抗原は、e=0.375の部分的適合性評点で表わされるような、「軽度から重度」の輸血反応を起こすことがあるので、遺伝子型のあいまいさは、更なる説明を必要とする。ハプロタイプ分析によるあいまいさの低減あるいは除去法が、例3及び4に記載されている。
【0035】
あいまいさマッピングは、以下の関数によって表わすことができる。
fgT→βT:gr→{βrv}
【0036】
II.4 マッピングあいまいさに関連するリスクの評価
「1対多」マッピングによって生じる多数の潜在的な(ファントム)血液型は、一般的に、特異的抗原を表わすビットが異なる。例えば、3つのファントム血液型c1001、c0001、及びc1000は、最初と最後のビットが異なる。マッピングのあいまいさに関連するリスクと、従ってその潜在的な臨床的重要性は、合致しないビットにおいて、及び対応する潜在的な原因抗原の異なる発現状態において、明らかである。特に、緊急事態では、特異的「1対多」マッピングにおけるあいまいさに関する定量的リスク評価を行うことが、特に決定がレシピエントに対してなされるべきである場合に、有益となるであろう。リスク評価は、特異的ファントム血液型のあいまいさ固有の残留リスクを受け入れるか否かを決定する基礎を提供し、図3にチャートで示す手順に従って、更なる明確化を進めるあるいは探すために開示されている。
【0037】
「最悪のケース」のシナリオを仮定して、一つの戦略を進める。すなわち、レシピエントの血液型であるべきファントム血液型を想定して、すべてのファントム血液型のすべての可能な候補ドナーとの(部分)適合性を計算し、最も低い部分的適合性評点を、手順を進めるかどうかを決定するベースとして採用する。しかしながら、潜在的な原因抗原が臨床的に重要である場合は、レシピエントのファントム血液型と候補ドナーの血液型感の適合性評点は広く異なり、最悪のケースのシナリオが、過度の保守的な評価を生じることがある。更に、ファントム血液型の発生頻度は一般的に同じではない。従って、最悪のケースのシナリオは、低い頻度でファントム血液型に関連する。従って、すべてのファントム血液型と可能な候補ドナーについての適合性評点を評価する前に、ここに記載する戦略に従って、ファントム血液型をより詳細に調べることが推奨される。まず、確率{cv}を、マッピングに一致する潜在的(ファントム)血液型に割り当てて、一又はそれ以上のファントム血液型がまれであるかどうかを評価する。次いで、生ファントム血液型を{cv}に従ってランク付けを行い、血液型が受け入れがたい低適合性評点となる可能性を反映するリスクしきい値を決める。リスク評点は、{cv}と適合性評点のいくつかの可能な組み合わせの一つの形で定義することができる。
【0038】
血液型頻度の予測
ここで、免疫抗原性エンティティ(immunoantigenetic entities)の組み合わせとして規定される血液型は、典型的に、10以上の抗原を含んでおり、このほとんどが遺伝子の非常に多型である点突然変異に関連している。発生頻度の予測は、例えば、血液センタのデータベースなど、大規模な交差試験ドナーと患者については明らかである。にもかかわらず、これらの抗原の膨大な数の組み合わせが、実行不可能に大きなサイズのサンプルに影響するため、統計的に有意な結果となる直接計数による正確な予測は困難である。ここに記載されている所望の手順は、部分母集団における、同じDNAストレッチ、すなわち、対立遺伝子またはハプロタイプ、に沿っている非常に近い点突然変異間のリンケージと、様々な遺伝子あるいはクロモソームのこれらの関連する状態間の統計的関係を有効に使うステップを具える。
【0039】
多数の点突然変異を具える対立遺伝子については、特に、突然変異の抑制が抗原決定因子リンクしている場合、同定されたハプロタイプが抗原の発現を抽出するのに有益である。例えば、例9に示す大規模な研究では、突然変異を抑制するGPB−int5が、S−決定点突然変異対立遺伝子、GYPBSに常にリンクしているが、突然変異対立遺伝子GYPBSには決してリンクしないことが認められている。換言すると、ハプロタイプGPB−int5“B”−GYPBSのみが存在しており、GPB−int5“B”−GYPBSは存在しない。次いで、例えば、(ABのGPB−int5及びABのGPB)、S−S+表現型の分類を振り分けるのにより自信を持つであろう。
【0040】
ハプロタイプ分世紀は、期待値最大化(EM)アルゴリズムを用いて、短DNAストレッチに沿った点突然変異のリンクした状態を見出して、その頻度を予測する。集団遺伝学で共通に用いられている特別な方法は、遺伝子計数である。これは、多項データ用のEMアルゴリズムであり(Weir BS. Genetic Data analysis II:Methods for Discrete population Genetic Data.Sunderland,MA:Sinauer Associates;1996;Dempster A,Laird N,Rubin D.Maximum likelihood from incomplete data via the EM algorithm.Jounal of Royal Statistical Society 1977;39:1−38)、このアルゴリズムでハプロタイプ頻度(下の完全データセット)を、設定したパラメータ間の相互依存の知識を考慮して反復法によって、遺伝子型頻度(実験で決定した潜在的不完全データセット)から予測することができる(Lange K.Mathematical and Statistical Methods for Genetic Analysis.2nd ed.New York:Springer;2002)。次いで、ディプロタイプ頻度を以下の通り計算する(Lange et al.):
ここで、Hおよびhは、特異的ディプロタイプの二つの構成ハプロタイプであり;二つの蓋然性が等しいディプロタイプ用の2アカウントの乗算ファクタは、遺伝による場合に位置を切り替える二つのハプロタイプからなる。この結果、ディプロタイプ頻度対{dk、ck}を形成する。点突然変異の完全セットの発生頻度は、一つが親の一方から遺伝するので、広い意味で「ハプロタイプ」と呼ばれ、関連性がないことが試験された、異なる遺伝子の対立遺伝子/ハプロタイプの発生頻度の積として計算される。「ファントム」血液型の確率は、レシピエント及び/又はドナーについてのハプロタイプ分析から予測されるように、以下の形で書くことができる。
fgT→βT:gr→βrv,Cvr}、及び
fgT→βT:gd→βdμ,Cμd}
【0041】
所定のしきい値以下の予測した頻度で現れるファントム血液型は、過度のリスクなく、更なる考察から取り除かれる。血液型頻度は、関連性がないことが試験された、各血液型群の抗原または遺伝子の組み合わせの発生頻度の積として計算され、ほとんどの場合正しい。さもなければ、別の遺伝子又はクロモソームに配置されている、他方を条件とする一つの配置発生の条件付き確率を計算に入れて考える必要がある。
【0042】
小母集団サンプルの分析に続いて、新しい遺伝子型が確立されたハプロタイプの組み合わせで表せない場合は、記号列マッチングを行って、確立されたハプロタイプのいずれか一つと組み合わせた所定の遺伝子型を形成する新しいハプロタイプを探す。実際にこの方法は、最近報告された二つの新しいハプロタイプである、DombrockシステムのHaとSh(表4)を同定した(上述の、Hashmi et al.)。新しいハプロタイプの頻度は、基本的にランダムな組み合わせを仮定して、構成対立遺伝子の頻度を掛けることによって予測され、その他のハプロタイプの頻度は、適宜、再正規化される。次いで、対応するファントム血液型とその頻度を、上述の式に従って再度計算する。ランダムドナープールは、より多くの遺伝子型ケースを蓄積するので、EM計算を繰り返して、頻度を細かく調整することができる。
【0043】
リスク評点の計算
曖昧さの定量測定は、ファントム血液型を互いに比較することによって、好ましくは、すべての記号列中の対応する位置にあるビットを加算することによって、得られる。ファントム血液型の数である、「0」または「N」以上の値になんらかの和を加算して、ファントム血液型の少なくとも一つがその他の型と異なる位置を同定し、これらの位置には、チェックビットが設定される。曖昧さの度合いの臨床的に有意な定量的測定は、パートIに記載の部分的適合性の評価に類似した方法で、全てのチェックビット位置に関連した適合性評点(表1)の積を作ることによって得られる。関連するリスクについての評点uは、この積を1から減ずることによって決定される。
ここで、レシピエント又はドナーについての血液型βは、βrまたはβdのいずれであっても良い。積が1に近い場合、そして、対応するリスク評点uが予め設定したしきい値より下にある場合、ファントム血液型の差は臨床的に有意でないと考えられる。このような場合、“最良のケース”のシナリオを探すことが推奨される。すなわち、いずれかのファントム血液型と最も適合性評点のよいドナーを処理する、あるいはリニア組み合わせ:
によって処理する。
【0044】
予め設定したしきい値を超えるuの値で表されるように、リスク評点が「高い」場合、ハプロタイプ分析(例2および3)と、選択的フェージング(例4)を分散した血液銀行マネージャで実行することができる。緊急の場合、このような追加の分析的測定が、可能な時間に容易にアクセス可能でない場合、予め決めたカットオフ以下の予測頻度を有するファントム血液型を考慮しないことによって、曖昧さの度合いを低減することが推奨される。
【0045】
部分的適合性
さもなければ、部分的適合性評点は、全ての生きているファントム血液型について計算されることになる。これらが比較可能な予測頻度を有するのであれば、また、曖昧さのリスク評点が余り高くない場合は、部分的適合性評点は、頻度重み付け平均値として決定することができる。一方、曖昧さのリスク評点が高い場合、部分的適合性評点は、上記で考えられる「最悪のケース」の仮定に従って、レシピエントのファントム血液型と最も近いところで合致するドナー血液型の間の交差試験の全てのありうる交差試験の組み合わせからピックアップすることによって、設定することができる。最も低い適合性評点を有するものは:
【0046】
III.適合ドナーのサーチ及び交差試験アルゴリズム
定義した二進(あるいは等価)血液型表示と、予め逼迫設定し、論理式に書き換えた交差試験規則と、完了したマッピングの曖昧さに関連するリスク評価の指示を用いて、実用アルゴリズムが開示される。このアルゴリズムは、これらの概念を含んでロイ、遺伝子型決定法に基づいて所定のレシピエントのための候補ドナーの迅速な選択方法と実施を提供する。
【0047】
予め計算した適合性マトリクスと、遺伝子決定−表現型マッピングによって抽出されたドナー血液型のデータベースを与えると、高速サーチアルゴリズムを実行して、所定のレシピエントについての候補ドナーを以下のように同定することができる。
【0048】
まず、潜在的に適合性のある血液型が列挙されたプライオリティリストを構築する。このリストには、3つの大まかなセクションがある:プライオリティが下がる順に、e(exact)−Match(es)、r(relaxed)−Match(es)、及びp(partial)−Match(es)のセクションである。e−Matchesとr−Matchesにおいては、発現頻度がより高い血液型がより高いプライオリティを持ち;p−Matchesでは、適合性評点がより高い血液型がより高いプライオリティを持つ。複数の入力が同じ適合性評点を有する場合は、より頻度の高い型がより高いプライオリティを持つ。次いで、プライオリティリストのサーチを行って、リスト中のプライオリティの順に候補ドナーを見つける;プライオリティの順を維持しながら受け入れ可能な適合候補ドナーを全て示し、「部分的適合」カテゴリにおけるすべての候補ドナーに対して適合性評点を付す。
【0049】
実装
好ましくは、コンピュータプログラムを用いて、以下の擬似コードアウトラインに従って、本発明の交差試験手順を実装する。
【0050】
例1:正確及び緩和交差試験規則
血液型を、表現型の組み合わせ、(Fy(a−b+)、Lu(a−b+)、M+N+S−s+、K−k+、Jk(a+b−)、Do(a−b+))として規定する。一の文献(上述の、Reid,M. &Lomas−Francis,L.)及びランダムな組み合わせによる分析によれば、この表現型は、約1.5%の頻度でアフリカ系アメリカ人に生じる。表6は、正確及び緩和交差試験規則による、適合前表現型を示す。正確交差試験規則の下では、ドナーはレシピエントの表現型に完全同一の表現型を有するであろう。緩和交差試験規則の下では、FyaもFybも持たない赤血球は、レシピエントの免疫システムに対して、潜在的原因Duffy抗原を示さないので、表現型Fy(a−b+)をもつレシピエントに適合する空の表現型であるFy(a−b−)を期待するであろう。同じ理由がその他のマーカにも適用される。従って、例えば、(Fy(a−b+)、Lu(a−b+)、M+N+S−s+、K−k+、Jk(a+b−)、Do(a−b+))の組み合わせは、緩和交差試験規則のもとでは、適合型であると考えられ、約12.5%の可能な候補ドナーに対応する、トータルで54の表現型が適合し、これは、正確交差試験規則の下で可能な割合を実質的に超える。従って、緩和交差試験規則の名がある。
【0051】
例2:遺伝子型−表現型マッピング及び遺伝子型適合性
本例は、遺伝子型−表現型のマッピングを示すものであり、表現型の血液型への組み合わせを行った後、交差試験規則を表現型に適用して、適合遺伝子型セットを取り出す。Duffy、Lutheran、MNS、Kell、Kidd、Dombrock、Scianna、Diego、Colton、及びLandsteiner−Wiener血液型群システム中の26の表現型に関連する18の多型遺伝子座の特別な選択の上で定義した遺伝子型は、Hashmi et al.(前述)に報告されているように、いくつかの群に層を成した、496の血液ドナーについての対立遺伝子特異的プローブ対のパネルを用いて同定される。
【0052】
2A 視覚的検査による直接転写
DombrockとDuffy血液型群システムのものを除く全ての、選択されたパネル中の対立遺伝子を定義する単ヌクレオチド多型は、1対1の遺伝子型−表現型マッピングを有し、遺伝子型から「読み切られる」対応する抗原の組み合わせが可能である。例えば、Coltonでは、遺伝子型AA、AB、BBは、それぞれ、抗原の状態(Coa+、Cob−)、(Coa+、Cob+)、(Coa−、Cob+)に対応する。対立遺伝子A(正常)とB(変位)が、相互優性である場合、遺伝子型に適用する交差試験規則は、以下の通りである。正確交差試験については、3つの型全てが自身に適合であり、緩和交差試験については、AA及びBBが自身に適合であり、3つの型全ては、ABに適合である。
【0053】
2B 複数遺伝子座対立遺伝子及び統計的ハプロタイプ分析
Dombrock − Dombrock血液型群システムについては、DO−793、DO−624、DO−378、DO−350、及びDO−323の5つの多型遺伝子座の用語で規定される対立遺伝子が、(既知の5つのうちの)4つの抗原、すなわち、Doa、Dob、Holley(Hy)及びJoseph(Jo(a))をコード化する。表現型が複数遺伝子座対立遺伝子によって決まる場合、一般的に視覚的検査はマッピングを構築するには不十分である。処理を行うためには、ハプロタイプを構築して、観察した遺伝子型を計数しなければならず、遺伝学的に確立された規則を適用して、表現型が同定される。統計的ハプロタイプ分析は、ハプロタイプの最もありそうなセットを同定して、遺伝子型に観察される分布を計数するのによく確立された方法を提供する。
【0054】
ハーディ・バインベルグ平衡についての18遺伝子座(36対の対立遺伝子に関する)全セットの公開分類結果の試験すると、0.1以上のP−値が生じ、これは、母集団中で平衡である対立遺伝子を示し、更に、サンプリング及び分類エラーを無視できることを示している。公に入手可能な実装における、期待値最大化(EM)アルゴリズム(Dempster AP,et al.,“Maximum Likelihood from Incomplete Data via the EM Algorithm”,J.R.Stat.Soc.B 1997:39:1−38参照)、HAPLORE(Zhang K,et al.,“HAPLORE:a program for haplotype reconstruction in general pedigrees without recombination”Bioinformatics 2005:21:90−103)を用いて、ハプロタイプ頻度を予測し、報告された遺伝し方頻度を計数した。HAPLOREへの入力として、生じた対立遺伝子型セットである、各多型遺伝子座におけるAまたはBから家系ファイルを構築した。この遺伝子座は、内部ID、すなわち1または2に割り振られている。連続的EM反復におけるハプロタイプ頻度予測のインクリメンタル相対的改良に関する収束基準は、10−8に設定され、ハプロタイプを保持する頻度しきい値は、10−6に設定された。このアルゴリズムは、これまでに報告されている(前述のHashmi et al)6つのハプロタイプ同定するのみでなく、対応する予測頻度も提供した。関連する遺伝学的規則に関する文献を参照して、すべての抗原状態を、これらのハプロタイプと、予測される表現型頻度(図示せず)とから容易に構築することができた。
【0055】
表7は、この結果をリストにしたものであり、表8は、Dombrock遺伝子型の対応する表現型と抗原状態へのマッピングをまとめたものである。例えば、抗原コード0111を用いて、遺伝子型DOB/DOBへ、次いで、抗原状態(Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)へマッピングを行う。特筆すべきは、以前に観察されている(上述のHashmi et al)一方、いくつかのケースにあるように、同じ遺伝子型を作る複数の明らかなハプロタイプ組み合わせが見られた。その他の遺伝子型を伴うこれらの組み合わせはすべて、同じ血液型へのマップに見られ、この場合は、レシピエントとドナーの遺伝し方の同一性からDombrock表現型の適合性を推測した。よりシステマティックなことに、適合性マトリクスは、選択した交差試験規則を用いて、レシピエント抗原コードをその適合するドナー抗原コードに関連付ける。例えば、適合性マトリクスは、ドナーコード0111をレシピエントコード0111と1111に結びつける。
【0056】
逆マッピングと遺伝子型適合性
表現型適合性マトリクスを与えると、表8のマッピングは、適合するドナー遺伝子型セットを産出する。例えば、DOB/HYの遺伝子型を与えると、まず対応する表現型が、抗原コード0111を用いて、Do(a−b+)として同定される。表に示すように、適合する遺伝子型を同定するには、検索を開始して、コード0111(破線の円で示す)と、二つの適合ドナー抗原コード0111と0101に結びつける。第1のコード01111は、正確交差試験を表わす、マトリクスの対角線に沿った適合要素に対応する。DOB/DOB、DOB/HY、DOB/SH、HY/SH及びSH/SHの、5つの適合遺伝子型が見出される。適合遺伝子型の全セットが表9に上げられている。第2のコードである0101は、緩和交差試験を表わす、適合性マトリクスの対角線外要素に対応する。一の適合遺伝子型、HY/HYのみが見出される。表4は、全ての適合遺伝子型がまとめられており、緩和交差試験規則の下に適合する遺伝子型をイタリック体で示す。レシピエント用の表現型が既知である場合、単純にマッピングを飛ばして抗原コードから始める。
【0057】
例3:GATA−Duffy除去による曖昧さの低減
配偶子相を解決することのない二つの2対立遺伝子の遺伝子座におけるヘテロ接合性は、一般的に、曖昧性を含んでいる。しかしながら、ある状態、特にハーディ・バインベルグ平衡の欠落が非ランダムサンプリングを低減している場合、データを検証することによって、この曖昧性を解決することが可能である。適切なケースは、FY−33、DuffyのGATAボックス中の突然変異の抑制、及び、FY125におけるマーカの組み合わせであり、FYA./FYB.と記載されている。表10は、上述の公開データセット(前述のHashmi et al.)における、不特定種族的出身の430のランダムドナーセットに観察されるようなGATA突然変異とFYA/FYBの遺伝子型頻度を示しており、ハーディ・バインベルグ平衡テスト(ここには示さず)は、ドナー母集団が強い層をなして、EMアルゴリズムの適用を排除することを低減している。しかしながら、直接的な検査は、必須の洞察を提供している。従って、観察された遺伝子型を生み出す{GATA、 FY}の2−遺伝子座 2対立遺伝子組み合わせが、観察された頻度(表10の下側パネル)と共に、リストにあげられている(表10、中央パネル)。この表の全ての要素は、(AB、AB)を除いて容易に割り当てられる。ハプロタイプB−Aの行と列に沿って観察された遺伝子型の検査は、対応する組み合わせ、(AB、AA)(BB、AA)、および(BB、AB)のいずれも観察されなかったことを示している。このことは、ハプロタイプB−Aの欠如と、組み合わせ(A−A/B−B)が明確に遺伝子型(AB、AB)を計数することを強く示している。
【0058】
例4:DNA単相化によるハプロタイプ曖昧性の解決
本例は、単相化を使用して、統計的ハプロタイプ分析も、直接の目視による検査も、曖昧さを受け入れ可能なレベルに低減しない、あるいはすべて除去しない、2つまたはそれ以上の2対立遺伝子の遺伝子座におけるヘテロ接合性から生じる曖昧さを解決することを示している。前例のGATA−Duffy構造について図4に示すように、単相化、好ましくは、BeadChip(登録商標)フォーマット(米国特許出願第11/257285号;米国特許出願10/271,602号(eMAP)、療法とも参照されている)におけるプローブ伸張の発動は、以下の4つのステップを具えている。(a)ターゲットをプローブにアニール化させて、二つのプローブの3’末端を、ターゲット内の指定の多型部位に整列させる条件下で、カラーコード化ビーズ上に二つの縮重プローブ対を提供する;GATA−Duffy(図4)として示すように、一のプローブ(プローブ−W)の3’末端は、GATA野生型対立遺伝子に相補になるように設計されており、その他のプローブ(プローブ−M)の3末端は、GATA突然変異対立遺伝子に相補になるように設計されている。(b)FY−33の本例では、適宜の条件下では、ターゲット(PCRアンプリコン)をハイブリダイズすることができ、ThermoSequenaseなどの、3’及び5’のエクソヌクレアーゼ活性が掛けているDNAポリメラーゼを付加して、特に、3’末端がターゲットに相補であるプローブを伸張させることができる。(c)切迫した状態下では、DNAハイブリッドを分離する。(d)選択的に、洗浄してターゲットストランドを除去する。及び、(e)本例では、FY125である、伸張生成物中の対象となる第2の可変部位へハイブリダイズすることによって、伸張生成物を分析する。二つの検出プローブは、一方のプローブNが例えば、赤い蛍光色で標識化されて、正常対立遺伝子に向けられており、他方のプローブVは、例えば緑の蛍光色で標識化されて、変異対立遺伝子に向けられている。このプローブは、溶液中の経口バックグラウンドを最小にするために、好ましくは、分子ビーコンまたはループプローブの形に設計されている(米国特許出願第10/032,657号)。図4は、生じうる結果を示す図である。プローブWを表わすビーズが、赤色を示し、プローブMを表わすビーズが緑色を示す場合、ハプロタイプは、W−N/M−Vである。代わりに、プローブWを表わすビーズが緑色を示し、プローブMを表わすビーズが赤色を示す場合、ハプロタイプは、W−V/M−Nである。二つのヘテロ接合2対立遺伝子ハプロタイプの配偶子相は、このように解決され、観察された遺伝子型の表現型へのマッピングにおける曖昧性は取り除かれる。
【0059】
例5:アフリカ系アメリカ人ドナー母集団の遺伝子由来の血液型
本例は、アフリカ系アメリカ人ドナーの小母集団の輸血抗原遺伝子型の未公開データセットの分析を表わすものであり、集団遺伝学の観点から遺伝子型由来の血液型の有効性を確認するものである。
【0060】
ニューヨークに住む80人の親族でないアフリカ系アメリカ人から血液サンプルを集めて、18の対立遺伝子特定プローブ対を用いて、DNA分類を行い、上述したように(前述のHashmi et al)Duffy、Lutheran、MNS、Kell、Kidd、Dombrock、Scianna、Diego、Colton、及びLandsteiner−Wiener血液型群システムの26の表現型に関連する対立遺伝子と、鎌状細胞疾患に関連するヘモグロビン突然変異である、ヘモグロビンSを同定した。Sciannna、Diego、Colton、Landsteiner−Wienerシステム、及びHbSには、変異対立遺伝子は観察されなかったので、この課題実行においてマッチしたデフォルトによるものと考えられる。
【0061】
ハプロタイプの決定
まず、全てのマーカの遺伝子型データを、プログラムPEDSTATS(Wigginton et al.Bioinformatics 2005 21(16):3445−3447)を用いて選択したSNPsセットに性格交差試験を実行することによって、ハーディ−バインベルグ平衡(HWE)について試験を行った。家系ファイルを構築して、親戚でない個々人を表示した。データファイルは、マーカ名を含むように構築された。結果は、すべてのマーカに平衡を示し、p値は、MNS群でM/N抗原をコード化しているGPA以外は、0.04ないし1の間であり、pchが0.005未満であることを示した。HWEからの無視できる全体的な偏差は、サンプリングおよび遺伝し方分類からのエラーが最小であることを示唆している。にもかかわらず、サンプルサイズ80は、例2におけるデータセットに見られる300以上の様々な遺伝子型対して比較的小さかった。また、実際の実験カウントは、遺伝子型由来の血液型の頻度を予測するに当たり、信頼性が限定的であることが考えられる。
【0062】
この分析の第1ステップは、基礎をなすハプロタイプの再構築と、各血液群中の遺伝子計数と期待値最大化(EM)(前述のDempster et al)によるその頻度を予測することである。EMアルゴリズムは、集団遺伝学に適用されて位、遺伝子型頻度(不完全な実験的に決定したデータセット)からハプロタイプ頻度(基礎的な完全データセット)を、この場合、遺伝子計数によって確立されたパラメータ間の相互依存の知識を取り入れた反復法によって、予測する。EMの実装は、HAPLOREプログラムに提供されている(例2を参照)。入力として、HAPLOREは、対立遺伝子の可能な組み合わせから構築した家系ファイルを用いており、例えば、正常(最も普及している)についてはAによって、変異についてはBによって、表わす。連続的な反復におけるハプロタイプ頻度予測のインクリメンタル相対改善に関連する収束基準が、10−8に設定され、ハプロタイプを維持する頻度しきい値は10−6に設定された。様々な遺伝子間でハプロタイプと対立遺伝子が、群集について試験され、なにも見出されなかった。関連する頻度をもって、アフリカ系アメリカ人に設定された、10の最も通常の点突然変異セット、あるいは広義の「ハプロタイプ」、及び遺伝子型が表11と表12にそれぞれリストとしてあげられている。
【0063】
217のありうる組み合わせのうちから、セット{GATA、FY、FY−265、GPA、GPB、K、Jk、DO−323、DO−350、DO378、DO−624、DO−793、LU、SC、DI、CO、LW}に規定された44のハプロタイプが、有意な高頻度を持つものとして、見つかった。最も一般的なハプロタイプは、頻度23.2%であり、B−B−A〜A−B〜B−A〜A−A−B−B−B〜B〜A〜A〜A〜Aであることがわかり、10の最も一般的なハプロタイプは、テストを行った母集団中で同定された全てのハプロタイプの65%を数えることがわかった。ダッシュは、様々なクロもソームに位置しているSNPsの統計的関連性を示す。最も一般的な遺伝子型は、頻度6%である、(BB、BB、AA、AB、BB、BB、AA、AA、AA、AA、BB、BB、BB、BB、AA、AA、AA、AA)であることがわかった。10の最も一般的な遺伝子型は、テストを行った母集団中の全ての遺伝子型の28%を数える。
【0064】
特筆すべきは、44の同定したハプロタイプ全てにおいて、FY−33T>C(Duffy GATA)において、変異対立遺伝子FY125G>Aと共に、突然変異が発現し、これは変異抗原Fybの抑制を意味している。すなわち、期待値最大化が、血清学的タイピング(前述のReid&Lomas−Fracis)に基づいて上記に報告されている観察を確認する。この報告は、アフリカ系アメリカ人では、{GATA、FY}における2−遺伝子座GATA−Duffy遺伝子型(AB、AB)が、常に、ディプロタイプ(A−A、B−B)を持っており、これは、表現型Fy(a+b−)に対応する、というものである。この観察は、Fy(a−b+)とFy(a+b+)頻度の双方を計数して、血清学的に決定したコード化血清(前述のReid&Lomas−Francis)の頻度23%のFybが、なぜ変異FYA/FYBの観察した対立遺伝子頻度91%より有意に低いのかを説明している。
【0065】
マッピング
GATA−Duffy曖昧さの解決によって、表3及び4に示すように、明確な遺伝子型−表現型マッピングが可能となった。{GATA、FY}における遺伝子型(AB、AB)は、ここで、{Fya、Fyb}で抗原コード10に割り振られる。
【0066】
血液型表示
表現型のマッピングに続いて、各血液サンプルを、血液型コード、この場合、好ましくは、16ビット記号列に振り分ける。抗原ビットは、以下の順に配置されている:Fya、Fyb、Lua、Lub、M、N、S、s、K、k、Jka、Jkb、Doa、Dob、Hy、Jo(a)。遺伝子型−表現型、ついで、表現型−血液型マッピングによって得た、最も一般的な20の血液型と、それらの頻度を表13に上げた。ここで取り出した血液型の正確度をチェックするために、この方法によって得た表現型頻度を、血清学的方法(前述のReid&Lomas−Francis)を用いた直接表現型決定法によってすでに確立されている表現型頻度と比較した。表14に明らかなとおり、よく一致しており、特に、小集団についてはよく一致している。妥当性を確認するもう一つの方法は、ハプロタイプから得た頻度を、純粋なチャンスによる組み合わせを仮定して、報告された表現型頻度を乗算して得た頻度と比較する方法である。図5は、結果として生じた53の血液型すべてとの比較を棒グラフで表示したものである。図6は、このサイズの小さい集団を反映している統計的なばらつきとは別に、遺伝子型から得た血液型の有効性を更に支持する二つの頻度セット間の相関関係を示すものであり、二つのセット間の残る不一致は、選択したパネルにおけるいくつかの対立遺伝子間の統計的な相関関係を示すものである。
【0067】
本例においてはサンプルサイズが非常に限定されているため、同定したハプロタイプと頻度は、アフリカ系アメリカ人の最も代表的なものではない可能性がある。実際、ニューヨークの2000人を超すドナーについてより遅れて行った大規模な研究で、わずかに異なる組み合わせ及び頻度のセットを得た。ついで、遺伝子型−表現型マッピングをいくつかのマイナーチェンジについて行った。ここに開示した表と例は、本発明の原理を説明することを目的としている。
【0068】
例6:アフリカ系アメリカ人母集団における交差試験
例5における分析に続いて、最も高い頻度が予測される血液型の適合性評点を評価することによって、適合性マトリクスを構築した。表15は、部分的に適合する血液型を一時的にフィルタにかけた後、アフリカ系アメリカ人の遺伝子型から得た最も一般的な25の血液型についてのこのマトリクスを示す。対角線に沿った“1”は、自己適合型血液型を表わし、正確な交差試験規則に適合した交差を表わす。上記で議論したとおり、各血液型は、表3−5に関連して述べたように、複数遺伝子型に対応する。対角線外の“1”は、緩和交差試験規則による適合した交差を表わす。
【0069】
例えば、16進コードc5D67、あるいは2進コードc0101110101100111、で同定された血液型、すなわち、(Fya−、Fyb+、Lua−、Lub+、M+、N+、S−、s+、K−、k+、Jka+、Jkb−、Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)、あるいは、表現型の組み合わせ、(Fy(a−b+)、Lu(a−b+)、M+N+S−s+、K−k+、Jk(a+b−)、Do(a−b+))を考慮されたい。この適合性マトリクスは、3つの適合性コード、すなわち、それぞれ、血液型に対応するc1D67、c1967、及びc1567を同定する。
(Fya−、Fyb−、Lua−、Lub+、M+、N+、S−、s+、K−、k+、Jka+、Jkb−、Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)
(Fya−、Fyb−、Lua−、Lub+、M+、N−、S−、s+、K−、k+、Jka+、Jkb−、Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)
(Fya−、Fyb−、Lua−、Lub+、M−、N+、S−、s+、K−、k+、Jka+、Jkb−、Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)
各々、一の抗原、Fybの欠落、二つの抗原、FybとNの欠落、及び、2つの抗原FybとMの欠落によって特徴付けられる。適合血液型の全ての頻度を加えて表示すると、25の最も頻度の高いドナー血液型を考慮しても、緩和交差試験規則の適用によって、頻度がわずか1.5%の血液型についての適合ドナーを見つけるチャンスが22%に上がる。
【0070】
部分的適合性
部分的適合性マトリクスも、対象の抗原について、表1に示すように、重大性レベルが下降する順に、0から1の範囲のミスマッチ評点を用いて構築した。表16は、アフリカ系アメリカ人母集団の最も一般的な25の血液型についてのマトリクスを示し、これは、適合性評点が0.5以下の全ての要素を「0」(または、単にブランクにしておく)に設定している。値「1」の要素はすべて表11の値に合致する。しかし、表11のマトリクスに残るいくつかの「ブランク」の欄は、適合性評点が0.5以上の部分的に適合性のアルドナー血液型に対応する有限評点を示す。また、血液型コードc5D67を考慮する。例5では、c5D67は、3つの適合コード、すなわち、c1D67、c1967、及びc1567を同定している。この例では、これらの3つの完全適合コードに加えて、二つのコード、すなわち、5G67と1F67が部分的に適合していることがわかる。これらは、
(Fya−、Fyb+、Lua−、Lub+、M+、N+、S−、s+、K−、k+、Jka+、Jkb−、Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)
(Fya−、Fyb−、Lua−、Lub+、M+、N+、S−、s+、K−、k+、Jka+、Jkb−、Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)レシピエントコードc5D67に比較すると、ドナーコードc5F67は,中程度の原因抗原Sを具え、部分的適合性評点0.625は、中低度の受容性を提示している。コードc1F67は、Duffyについてゼロ表現型Fy(a−b−)を具え、これは、緩和交差試験規則では適合であるが、中適度の原因抗原Sも具えており、レシピエントコードc5D67に対する全体の部分的適合性を、c5F67の部分的適合性と比較可能にしている。
【0071】
例7:アフリカ系アメリカ人母集団における適合ドナーの高速サーチ
血液型コードc5D67のレシピエントが、アフリカ系アメリカ人のドナープール中の適合ドナーを求めるリクエストを出したと仮定する。まず、潜在的な適合ドナー血液型の優先リストが、表14などの確立された適合性マトリクスの「ルックアップ」によって構築される。c5D67に割り当てられた行は、6つの潜在的な適合血液型を示している。ついで、サーチリストが、レシピエントの血液型と同一の最も優先度の高い血液コードc5D67と、発生頻度によって仕分けされたr−マッチ、c1D67、c1967、c1567及びc5D67を含む優先度が中程度のセクションと、部分的適合血液型であるc5F67とc1F67を含む優先度が低い血液型(p−マッチ)である第3のセクションを含むように構築されている。
【0072】
例8:遺伝子型交差試験及びサーチ
表17は、表16中の血液型適合マトリクスから得た、例7及び8で検討したアフリカ系アメリカ人母集団の遺伝子型適合マトリクスを示す。この新マトリクスでは、行と列が遺伝子型に振り分けられており、特定の行(レシピエントの遺伝子型)と列(ドナーの遺伝子型)の好転におけるマトリクス要素が、対応する血液型の適合性評点を含んでいる。表18は、アフリカ系アメリカ人母集団中の50の最も一般的な16−抗原少数―群遺伝子型についての遺伝子型適合性マトリクスを示す。所定の遺伝子型(0、−1、1、−1、0、−1、1、1、1、−1、−1、−1、−1、1、1、1、1)を有する一人の患者についての、表19に示すような50個の選択枝のうちの適合ドナー遺伝子型は、一のe−マッチ、すなわち、同一コードを具え、同様に、
4つのr−マッチ、すなわち:
(−1、−1、1、−1、0、−1、1、1、1、−1、−1、−1、−1、1、1、1、1)、
(−1、−1、1、−1、1、−1、1、1、1、−1、−1、−1、−1、1、1、1、1)、
(−1、−1、1、−1、−1、−1、1、1、1、−1、−1、−1、−1、1、1、1、1)、
(−1、−1、1、−1、0、−1、1、0、1、0、−1、−1、−1、1、1、1、1)、
及び、2つのp−マッチ、すなわち:
(0、−1、1、0、0、−1、1、1、1、−1、−1、−1、−1、1、1、1、1)、
(−1、−1、1、0、0、−1、1、1、1、−1、−1、−1、−1、1、1、1、1)を具える。
【0073】
例9:ニューヨークの実際の白人ドナープールの二人の白人についての適合血液型決定
様々な人種バックグラウンドを持つ2300人以上の潜在的ドナープールを、BeadChip(登録商標)プラットフォームを用いて分析した。DNA分析から得た表現型は、MNS、Lutheran、Kell、Duffy、Kidd、Dombrock、及びColton血液型群システムについての血球凝集による4534対の部分的抗原判定のうち、4,510対と適合した。24の不適合結果のうち、16はBeadChip(登録商標)の結果を選んで、シーケンシング及びRFLP分析により決められる。その他の8つの不適合結果は、GYPBの抑制のために示した。すなわち、関連するSNPsがHEA BeadChip(登録商標)パネルの後のバージョンに順次加えらた(Hashmi et al.,Determination of 24 Minor Red Blood Cell Antigens for More Than 2000 Blood Donors by High−Throughput DNA Analysis,Manuscript ID Trans−2006−0329,R1,Transfusion,2006)。
【0074】
二人の白人がボランティアで血液抗原を分類した。二人の匿名を保つため、彼らを「ジョン」と「キャシー」と名づけた。DNA分類{GATA、FY、FY−265、GPA、GPB、K、Jk、DO−323、DO−350、DO−378、DO−624、DO−793、LU、SC、DI、CO、LW}セットは、ジョンがタイプ(K−、k+、Fya+、Fyb+、M+、N−、S+、s+、Lua+、Lub+、Doa+、Dob+、Jo(a)+、Hy+、Lwa+、LWb−、Dia−、Dib+、Coa+、Cob−、Scl+、Sc2−)、又は2進コード(c0111101111111110011010)を持っており、キャシーがタイプタイプ(K−、k+、Fya−、Fyb+、M+、N−、S−、s+、Lua−、Lub+、Doa−、Dob+、Jo(a)+、Hy+、Lwa+、LWb−、Dia−、Dib+、Coa+、Cob−、Scl+、Sc2−)、又は2進コード(c0101100101011110011010)を持っており、ジョンの血液は、対応するLUA対立遺伝子が白人の3%にのみ見られるまれな正のLua抗原があるため、まれな組み合わせであることを示す。マッチングが8つの抗原、K、k、S、s、Fya、Fyb、Jka、Jkbに基づくものであれば、ジョンは、ドナープールの1243人の白人サブセットから87人の正確にマッチするドナーを見つけることができる。しかし、8つの追加抗原、M、N、Lua、Lub、Doa、Dob、JOa、及びHyが含まれている場合は、ジョンはこのサブセット中に正確なマッチを一つだけ見つけることができる。ここに開示した方法を行った後の、ジョンの拡大タイプの予測される頻度は、CAUコホートのうちわずか0.09%であり、CAUコホート中に一つのマッチのみが見つかったという観察に合致する。一方、緩和交差試験規則を続けて行う場合は、白人に高頻度で発生することが期待される適合血液型を少なくとも二つ、直ちに見つける。すなわち、オプション1として、(K−、k+、Fya+、Fyb+、M+、N−、S+、s+、Lua−、Lub+、Doa+、Dob+、Jo(a)+、Hy+、Lwa+、LWb−、Dia−、Dib+、Coa+、Cob−、Scl+、Sc2−)又は2進コード(c0111101101111110011010)であり、Luaが負であるものと、オプション2として、(K−、k+、Fya−、Fyb+、M+、N−、S+、s+、Lua−、Lub+、Doa+、Dob+、Jo(a)+、Hy+、Lwa+、LWb−、Dia−、Dib+、Coa+、Cob−、Scl+、Sc2−、f=1.24%)又は2進コード(c0101101101111110011010)であり、LuaとFyaの双方が負のものである。
【0075】
表21は、サイズが異なり、ランダムに採用したドナーセット中で、少なくとも一の交差試験適合ドナーを見つける継続中の特許出願(Zhang et al,“A Transfusion Registry and Exchange Network,“US 11/412,667,Apr 27,2006、ここに参照されている)を用いて予測した交差試験の確率を示す。例えば、200のランダムに選択した白人ドナー群中にいずれかの血液型を探し当てる確率は、90%以上である。白人コホート(N=1243)におけるサーチでは、予測に合致する、血液型オプション1および血液型オプション2について、10及び7の合致した適合ドナーが生じる。
【0076】
キャシーのタイプは、ジョンより一般的であり、頻度0.53%である。200人及び400人のランダム白人ドナーにおける予測交差試験確率は、それぞれ、66%と88%である。白人サブセットの適合ドナーサーチは、サンプリング失敗のエラー内に、16の性格にマッチする抗原が生じ、これも予測に合致する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、遺伝子型の表現型ないし血液型へのマッピング、血液型における交差試験を示す図である。
【図2】図2は、異なる交差試験規則下で、発現したレシピエントとドナーの抗原の集合間の関係を描いたベン図を示す。
【図3】図3は、遺伝子型を同定する輸血抗原を基礎として、レシピエント用の適合性ドナー血液を同定するプロセス用のフローチャートである。
【図4】図4は、カラーコード化した微小粒子上に陳列したエロンゲーション生成物を分析することにより段階的に実行する配偶子を示す。
【図5】図5は、80人(自己識別)のアフリカ系アメリカ人ドナーの母集団におけるハプロタイプ由来の16抗原の少数群の血液型頻度と、無作為な組合せの公表され、血清学的に決定された抗原頻度に由来する頻度との比較である。
【図6】図6は、図5において示した相関を散布図で示す。
【図7】図7(表1)は、ミスマッチの抗原を含有する血液の輸血に対する副作用の重症度、及び相関した適合性(又は、「ミスマッチ」、MM)評点を記載した。
【図8】図8(表2)は、対立遺伝子の優位関係を特定する遺伝形質の法則の応用によって決定される抗原発現状態を示す。
【図9】図9(表3)は、遺伝子型の抗原表現型への「一対一」マッピングを示す。
【図10】図10(表4)は、Dombrock血液型系の例について、遺伝子型の抗原表現型への「多対一」マッピングを示す。
【図11】図11(表5)は、Duffy血液型系の例について、遺伝子型の抗原表現型への「一対多」マッピングを示す。
【図12】図12(表6)は、既知のレシピエント表現型に適合する表現型の部分的なリストである。
【図13】図13(表7)は、Dombrock血液型系のハプロタイプと対応する抗原状態を示す。
【図14】図14(表8)は、遺伝子型DOB/HYに対する遺伝子型ベースの交差試験と、対応する表現型Do(a−b+)を示す。
【図15】図15(表9)は、遺伝子型DOB/HYに適合する遺伝子型の概略である。
【図16】図16(表10)は、遺伝子型頻度の検査によるハプロタイプ分析を示す。
【図17】図17A(表11)は、アフリカ系アメリカ人についての最も共通のハプロタイプとその頻度を記載する。図17Bは(表12)、アフリカ系アメリカ人についての最も共通の遺伝子型とその頻度を記載する。
【図18】図18(表13)は、80人の(自己同定)アフリカ系アメリカ人の集団において20の最も共通の16抗原の少数群血液型とそれらの遺伝子型由来の頻度とを公表されている血清学的に決定した抗原頻度の無作為な組合せに由来する頻度と比較する。
【図19】図19(表14)は、ハプロタイプ由来の表現型頻度を、公表されている血清学的に決定した抗原頻度と比較している。
【図20】図20(表15)は、アフリカ系アメリカ人における、25の最も共通な16抗原の少数群血液型用の適合マトリクスである。
【図21】図21(表16)は、アフリカ系アメリカ人における、25の最も共通な16抗原の少数群血液型用の部分的適合マトリクス(しきい値=0.5)である。
【図22】図22(表17)は、遺伝子型交差試験を示す。
【図23】図23(表18)は、アフリカ系アメリカ人における、25の最も共通な16抗原少数群遺伝子型用の適合マトリクスである。
【図24】図24(表19)は、アフリカ系アメリカ人における、公知の遺伝子型の患者用の適合ドナー遺伝子型の選択を示している。部分的適合マトリクスである。
【図25】図25(表20)は、80人の自己同定のアフリカ系アメリカ人から推定される50の最も共通の16抗原の少数群血液型用の
【図26】図26(表21)は、DNA分析由来の2人の白人を分類する抗原と交差試験の予測と実際の3州のドナープールでの治療を示す。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2005年10月24日に出願された米国仮特許出願第60/729,637号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、少数血液型抗原の交差試験に関する。
【背景技術】
【0003】
現在米国では、ドナーとレシピエントの血液型との適合性は、表現型の分類、他の抗原に対する同種異形抗体を用いてレシピエントをスクリーニングすること、及び、抗体が検出された場合のみに対応する抗原が無いドナーの血液(「抗原が陰性の血液」)を選択するために、抗体及び抗原を同定することによって、分類及びスクリーンパラダイムに従い決定される(Hiller、C.D.et al.,supra)。標準的な血清学的試験方法は、直接的な凝集、即時的なスピンテスト、並びに間接的な抗グロブリン試験(「IAT」という;I.Dunsford et al.,Techniques in Blood Grouping,2nd ed.Oliver and Boyd,Edinburgh(1967)参照)を含んでいる。IATは、ドナーの赤血球に発現した抗原を認識するレシピエントの血漿中の抗体を検出し、輸血反応を誘発することができる。実際に、レシピエント及びドナーのABO/RhD表現型をベースにした交差試験ガイダンスは、抗体スクリーニング、血液型チェック及び送達制御のシーケンス形態で(ABCD、J.Georgsen,et al.,Transifusion service of the country of Funen.Organisational and economic aspects of restructuring.Ugeskrift for Laeger,159,1758−1762(1997))、米国、英国、スウェーデン、オーストラリアで通常に使用されており、調査目録を増やし、通常の労力を減らすと同時に、合致したドナーユニットを同定し、発布するプロセスを大いに促進してきた。抗体スクリーンが陰性であるときに用いられるドナーとレシピエントのコンピュータ処理されたマッチングは、主要な抗原すなわち、AB及びRhDに対するレシピエント及びドナーの血液を決定するために設計された血清学的試験の正確性に依存している。主要な抗原のみと適合することが知られている、及び/又は特異的な抗体に対してのみ陰性であることが知られているドナーユニットの選択は、その他の血液型抗原の不適合に関連する同種免疫反応を誘発し、そのうちのいくつかは高い免疫原性があり、複数の抗原因子の存在が、臨床上有意なレベルへ副作用を大きくする。従って同種異系免疫化の危険を減ずることが、重要な臨床上の懸念である。このことは、大量輸血される患者、例えば、鎌状赤血球病又は血友病に苦しむ人、並びに癌や糖尿病を含む特定の慢性病の患者にとっては特にそうである。更に、現在の慣習は治療に遅延を誘導し、緊急事態を悪化させ、より一般的には患者の治療に更なる出費を引き起こす。
【0004】
抗体の同定及び抗原陰性の血液の供給は、患者の血流内を循環する抗体が、ドナーの赤血球上に陳列する抗原に出会うことによりトリガされる輸血の副作用の危険を最小化しようと努めることにより、安全な血液の輸血を保証する現在のアプローチを形成している。反応は「なし」から「重篤」までの範囲にある重症度に変化できる(Hillyer、C.D.et al.,Blood blanking and transfusion medicine:basic principles and practice,Elsevier Science Health Science 2002,pp.17)。例えば、ABO又はRh血液型中の臨床上の抗原は、合致しなければ、重篤な副作用を誘発するが、抗原Nは合致しなければ副作用を誘発しない。重症度の度合は、対象が成人か新生児の子供かどうかにも依存して変化する。例えば、攻撃的な抗原Sは、成人には軽い副作用しか生じさせないが、重篤な新生児溶血性疾患を引き起こすことができる。このような質的な記述子は有用ではあるが、量的に将来のドナーとレシピエントの互換性を決定することはより信頼性があり、許容性評価及びドナー探しを、より客観的かつ系統的方法で行うことが可能になる。
【0005】
不適合な血液の輸血を防ぎ、同種異形免疫化の危険を減少させるために、主要な抗原だけではなく、Rh変異体及び主要な少数血液型抗原も通常は分類することが好ましい。しかし、全ての臨床上の関連する抗原に対する血清学的分類の拡張は、複数の同種異形抗体又は弱く発現した抗原と出会う場合は特に、適切な抗血清の不足及び重労働の血清学的分類プロトコルの複雑さ及び信頼性の制限によって防止される。血清学的試験方法の限度の観点から、ほとんどのドナーセンタは、抗原の拡張セットとして、コホートのドナーしかスクリーンしておらず、限られた項目しか保存していない。感受性が、結果の正確性に対する別の懸念である。血清型検査のデータ解釈は、赤血球表面にあるタンパク質の量を反映する反応パターンに基づいているので、シグナルは探索される抗原の発現レベルと相関している。例えば、Duffy及びKiddのような少数群の抗原に対して作られる抗体は、同型接合の発現の反映に対してよりも、異形接合の発現を反映する抗原を有する細胞に出会う場合、あまり強く反応しない。
【0006】
対照的に、DNAレベルでの血液型遺伝子の分析は、表現型変異性の根底にある対立遺伝子多様性の詳細図を提供している。近頃述べられているように(Hashmi et al.,Transfusio,45,680−688(2005))、利用可能な方法論によって、Kell、Duffy、Kidd,MNS及びその他の抗原をコード化する遺伝子内にある臨床的に有意な単一ヌクレオチド多型性の同時分析が可能になり、これらの方法論が、高度に変異可能なRhD及びRhCE遺伝子(G.Hashmi et al.,“Typing of Rh Variants using Bead Arrays on Semiconductor Chips”,Abstract S64−040B,American Association of Blood Banks(AABB)Annual Meeting,October 2004,Transfusion Vol 45 No.3S,September 2005 Supplement)、ヒト白血球抗原、ヒト血小板抗原、及びその他抗原の分析に役に立っている。輸血抗原の発現に関する遺伝子型を基盤にした交差試験の利点は、免疫副作用の危険だけではなく、初期環境においてレシピエントを免疫化する危険を最小化し、又は除去すること、及び、ドナーの集団から輸血用血液製剤の迅速な選択を可能にすることである。遺伝学的な交差試験は、高価な血清学的試薬及び複雑かつ重労働の血清学的分類プロトコルの必要と、特定のドナー抗原への抗体に対する、レシピエントの再現試験の必要を除去している。
【0007】
更に、遺伝子学的な交差試験は、利用可能な抗体が抗原に対する弱い反応性のみとなる抗原の決定、最新の輸血患者の分析、新生児溶血性疾患に対する危険のある胎児の同定のような、血清学的技術によっては取り組むことのできない臨床的な問題に取り組むのを助ける。包括的なDNA分類ツールは、より利用しやすく対費用効果の高いものとなっており、通常は広範囲の輸血に関連するDNAマーカを標的としている。一例は、eMAPに基づき、BeadChipTMフォーマットで行われる包括的DNA分類である(“eMAP Application”引用によって取り込まれる2002年10月15日出願の米国特許出願第10/271602号;Hashmi G.et al,A flexible array format for large−scale,rapid blood group DNA−typing,Transfusion,45,680−688(2005)も参照; 後者の文献は、Dombrock、Landsteiner−Wiener、Colton、Scianna、Diego、Kidd、Kell、Lutheran及びMNS系の36の対立遺伝子を分離するために、18の単一ヌクレオチド多型性を具える1セットのパネルを記載している)。血液型分類を超えて、広域スペクトルのDNA分類は、ヒト血小板抗原やヒト白血球抗原等を発現するような他の関連したその他の遺伝子レパートリへ知識を拡張しており、レシピエントを特徴付け、ドナーを選択する通常の方法としての従来の血清学的方法を置き換える潜在能力を有する。
【0008】
従って、輸血抗原遺伝子型の基盤上に既知のレシピエント用の適合したドナー選択を可能にする実用的な方法を確立すること、及び、種々のドナー人口の限られた利用可能性を与えられると、所望することができる潜在的に、単に、部分的に適合可能なドナーの選択を導く曖昧な事象における量的危険度の評価を提供することは有用であり、一方、その曖昧さを減ずる又は除去する方法を提供している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
開示されるのは、レシピエントと将来のドナーの輸血抗原遺伝子型(血液型の遺伝子型も)を交差試験することを基盤にした2つの血液型間の適合性を確立する方法、表現及びアルゴリズムであり、プロセスもまた、遺伝学的な交差試験(「gXM」)である。適合性を決定するために、前記血液型遺伝子型は、根底にある対立遺伝子の組合せのセットに関連した発現状態による表現型に対応して位置づけられ、適合性は、組成の表現型から構成される血液型の適合性を確立することによって、確立される。
【0010】
更に、初期設定の厳密度の選択された交差試験の規則の下での、レシピエント(R)と候補のドナー(D)の2つの血液型間の適合性についての迅速な計算的評価方法が開示されている。例えば、適合性は、ドナーとレシピエントが同一の抗原のセットを発現するというような、正確な規則の下で確立させることができるが、代替的に、適合性は、例えばドナーによって発現された輸血抗原のセットが、レシピエントにより発現する輸血抗原のサブセットを形成するような緩やかな規則の下で確立してもよい(すなわち、ドナーはレシピエントが発現しない抗原を発現せず、その意味では、制限された抗原レパートリを有する)。効果的な計算実行を可能にするために、血液型は、文字内にあるビットの部分集合が、血液型の特異性に寄与する血液型システム内にある個別の表現型を定義した抗原の有「1」又は無「0」を反映する二進数記号(すなわち、8進数や16進数を含むいくつかの表現のうちの1つにおける「コード」)の形で表現される。本発明によると、交差試験規則は、RとDの記号列間の適合性を決定する操作に合致する高速なブール記号として実行される論理的表現に翻訳される。例えば、既知の人口の中でもっとも共通に観察されたもののような、第1と第2の血液型の集合の間の適合性の関係は、例えば、適合性を表す「1」の入力、不適合性を示す「0」の入力で、適合性マトリクスの中で便利に表現される。部分的な適合性の測定は、RとDの記号列間の個別に不合致なビットに関連する評点生成の点から提供され、各々の不合致な評点は、対応する抗原の不合致な臨床上の意味を反映するように0と1の間の値に配置される。適合性及び部分適合性マトリクスは、ここでは、少数の血液型系であるDuffy、Kell、Kidd、MNS、Dombrock及びその他のものを伴う報告された血清学的表現型頻度を基盤として、アフリカ系アメリカ人に最も共通に観察される(又は、予測される)25人の16抗体の血液型用として提供される。
【0011】
更に開示されるのは、血液型のマッピング及び遺伝学的な交差試験に対する遺伝子型のアルゴリズムと実行である。前記アルゴリズムは、遺伝子型を表現型にマッピングすることによって、候補のドナーと既知の輸血抗原遺伝子型のレシピエント間の適合性を確立させることが可能である。好ましくは遺伝子型は、選択された輸血抗原の発現を制御する遺伝子内にある各々の複数の多型性部位での正常型(N)及び変異体(V)対立遺伝子割当ての組合せを具えている。開示されるのは、マーカによって定義される遺伝子型の直接的な比較により、適合性の決定を可能にする多型性の輸血抗原マーカのセットである。より一般的には、上記マッピングは、特異的な表現型を定義するコード化した抗原の発現状態を決定するために、確立された遺伝の規則の下で結合される、組成点の突然変異集合(ここでは、「ハプロタイプ」と呼ばれる)内へ遺伝子型の分解を呼び出す。表現型割当てにおける曖昧な事象においては、遺伝子型が未知の配偶子相の多部位のヘテロ接合二倍体を含むときに一般的に生じ、この最初に述べたように、前記アルゴリズムは部分的な表現型適合性の評価を可能にし、ドナーとレシピエントとの組合せに関連した危険の量的評価を提供し、加えて、前記アルゴリズムは、統計的なハプロタイプ分析を適用することによる曖昧さの低減を、又は未知の配偶子相を決定する(又は、段階的に実行する)方法を適用することによる曖昧さの解決を可能にしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
I.血液型適合性の決定
交差実験の実用的な実装のための必要条件は、血液型の数学的表示と、厳格性が変化するレベルで有害な輸血反応を誘発することがある原因抗体の影響を評価する適合性評点システム確立の必要性である。原因抗体(または、ドナーから直接に取得された抗体)を含む輸血を以前に行った結果として誘発されることのあるアロ抗体の影響も考慮すべきである。
【0013】
I.1 血液型(bT)の表示
発現(または弱発現)抗原の組み合わせは、リストに要約されており、二進列の形で血液型の都合の良い表示を提供しており、各ビットは、特異な輸血抗原の存在(1)と欠如(0)を表わす。例えば、公知の抗原を:Fya、Fyb、Lua、Lub、M、N、S、s、K、k、Jka、Jkb、Doa、Dob、Jo(a)の順にリストにした場合、血液型コードc0101110101100111は、血液型(Fya−、Fyb+、Lua−、Lub+、M+、N+、S−、s+、K−、k+、Jka+、Jkb−、Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)を表わしており、Fyb、Lub、M、N、s、k、Jka、Dob、Hy、及びJo(a)の存在と、抗原Fya、Lua、S、K、Jkb及びDoaの欠如によって特徴付けられる。このコードは、また、16進形式、すなわちc5F67で表わすこともできる。
【0014】
個々の血液型のこの定義は、「仮想」抗原として道元の抗原をリストにすることによる個々が所有するものではなく、輸血抗原に対するアロ抗体の記録を含むこともできる。例えば、ドナーが、部分的に適合する血液、ドナーによって発現しない輸血された赤血球上の表示された抗原のすべてあるいはいくつかのみを以前に輸血したことがある場合、血液型記号列が拡張されて、これらの「仮想」抗原の「0」エントリを含む。例えば、以前に輸血を行ったドナーからのサンプルが遺伝子型決定に用いることができる場合、ドナーのものと異なる抗原が、拡張した受容者の血液型に含まれることがある。特に、おそらく、部分的に合致した血液を初期に輸血した結果として、ドナーが、輸血した赤血球に表示した不適合抗原の一つに対してアロ抗体を形成したことが見出されると、この血液型は、原因抗原に対して「0」をエントリすることによって拡張される。仮想抗原に対する「1」のエントリを用いて、特異的アロ抗体の欠如を示すこともできる。この拡張した表示によって、以下に述べる適合性評点リングと交差適合手順が、全体的に拡張した血液型にたいしてまだ正しいことが確実となる。
【0015】
I.2 適合性の設定
血液型がわかっているレシピエントに与えられる適合可能なドナーのサーチには、交差試験規則とも呼ばれる適合性基準の定義が必要である。
【0016】
第1の交差試験規則は、ここで正確な交差試験規則(Exact Cross−Matching rule)と呼ばれ、ドナーとレシピエントが比較用に選択された同じ輸血抗原セット発現する場合、ドナーが所定のレシピエントに適合していることを明言するものである。第2の交差試験規則は、ここで緩和交差試験規則(Relax Cross−Matching rule)と呼ばれ、レシピエントが発現しない抗原をドナーが発現しない場合に、ドナーが所定のレシピエントに適合していることを明言する、すなわち、基準が、制限されたドナー抗原レパートリを実行するものである。この規則の下では、ドナーの血液型を規定する選択された抗原セットが、レシピエントの血液型を規定するサブセットである。レシピエントの細胞上に表示された抗原以外の抗原が欠如しているいずれの血液型も、原理上は適合する。なぜなら、輸血反応を引きおこす反応型抗体がレシピエントの血清中に存在しない(レシピエントが自己抗体を形成しておらず、いずれの場合もドナーの血液輸血によって、予期したとおりによりひどくならないであろう)からである。緩和交差試験規則は、例3及び例5に記載されているように、正確な交差試験にくらべて、所定のレシピエントと適合するドナーの数が、有意に拡大されている。第3の規則は、緩和交差試験規則の変形であり、ドナーがレシピエントと弱く反応する抗原を発現するのみであれば、ドナーが所定のレシピエントと部分的に適合することを明言する。これらの原因抗原の免疫原生と対応する臨床的意義を反映する評点が割り振られており、ミスマッチが生じた場合の副作用の速度と厳格さを反映している。現在の輸血のやり方は、抗原(抗原負)の欠如に基づいて、適合ドナーを選択する交差試験規則に基づいている。この規則は、臨床的に有意な抗原とレシピエント中の対応する免疫原生反応との間の潜在的な不適合成を不必要に許す。図2は、異なる交差試験規則の下で、レシピエントとドナーの発現抗原セットとの関係を示すベン図である。
【0017】
緩和交差試験規則の下では、予測ドナーの抗原レパートリが(正確な交差試験規則の下で洗濯されたドナーの抗原レパートリに比べて)制限されている。なぜなら、発現した抗原のドナーレパートリは、所定のレシピエントのレパートリのサブセットを形成するからである。この制限されたドナーレパートリの基準は、少数の抗原を発現したドナー(あるいは、従来の用語では多数の「抗原負」を必要とするので、予測ドナーのプールを制限するように見えることがある。しかしながら、実際のところ、需要可能なドナー抗原サブセットは、レシピエントの抗原のどのような組み合わせでも良いので、緩和交差試験のもとで所定のレシピエントに適応する候補ドナーの数が、正確な交差試験のもとで可能な数より多い(例6も参照)。
【0018】
効率よく行うために、交差試験規則は、例えば、二進数、八進数、16進数形式といった記号列を含む、論理式に書き換えられる。拡大したマーカセット上でのドナー−レシピエント適合性を確実にするのに特に有意な緩和交差試験用の論理式は{[βd]i AND NOT[βr]i}EQ 0、であり、表示は、血液型記号列中のビットを計数するものである。この式は、ドナー血液型記号列のビットが「1」であり、かつ、レシピエントの血液型記号列の対応するビットが「0」である場合に、真値(1)の値となる。
【0019】
部分適合性
部分的適合性の数的評価のベースを設定するために、0から1の範囲の適合性評点を、ミスマッチが生じた場合の副作用の重傷度を低減する順に抗原に振り分けた。すなわち、非免疫原生抗原は、評点「1」に割り当てられ、禁止的免疫原生抗原は、評点「0」に割り振られた。例えば、ミスマッチが生じた場合に、「直ちに、軽度から重度の」反輸血作用を引きおこす臨床的優位性を反映しているABO抗原は、評点「0」に割り振られる。逆に、ミスマッチが生じた場合に、「遅れて」反輸血反応を引きおこす臨床的優位性を反映したリュスラン抗原は、評点0.75が割り振られている。「ルックアップ」表1は、ミスマッチが生じた場合、その量的な臨床反応速度(前述のHillyer、C.D.et al.)に基づいて、いくつかの共通した輸血抗原の適合性評点を示している。その他の定義も可能であり、例えば、特異的抗原の発生頻度や、誘発的臨床反応の重傷度と免疫原生評点の組み合わせの形で、いくつかの共通輸血抗原の適合性評点を示す。全体的な適合性評点は、ミスマッチが生じたビットの適合性評点を乗算することによって計算される。この結果、複数の免疫抗原性独立体(immunoantigenetic entities)が存在する場合に、副作用を構成する。この仮定は、感作リスクが特異的抗原に対して有意に変化するという事実にもかかわらず、現在の輸血手順が、第1の場所における感作を防止する血液ではなく、むしろ、同一の抗体に対して特異である抗原負を有する血液の使用を含む限り、追加の抗体フォーメーションが近年20年の遡及的エピソード数に別個に関連して示されている(Schonewille et al.輸血、46、630−635(2006))という観察に一致する。従って、ここの抗原を{si}によって個々の抗原の適合性評点をつけながら、血液型適合性マトリクス中の要素が、式に基づいて計算される。
ここで、[βd]と[βr]は、それぞれ、ドナーとレシピエントの血液型コードを示し、指数iは、血液型中の個々の抗原の存在あるいは欠如を表示するビットを意味する。すべての原因抗原の評点の積としての適合性評点siは、従って、0と1の間に固定されている。セット{i}が、空であれば、原因抗原は存在せず、また、結果が1であれば、ドナーの血液は、完全にレシピエントと適合すると考えられる。結果が0であれば、ドナーの血液は不適合であると考えられる。eの小数値は、部分的な適合性を表わしている。この値が大きいほど、適合性の度合いが高い。一の実施例では、部分的適合性評点には閾値がある。すなわち、輸血の目的にリスク方限ると考えられるこれらの血液型の検討から排除するために、e(βd、βr)<ethであれば、e(βd、βr):=0である。
【0020】
適合性マトリクス
母集団中に観察されたあるいは観察が予測された第1及び第2の血液型の間の適合性評点は、マトリクスの形でコンパクトに表示することができる。特異的第1の血液型によってインデックスされた各列と、例えば、選択した血液型の発し頻度を低減させることによって順序付けられた列は、選択されたセット中の第1の血液型と第2の血液型の間の適合性の度合いを表示する評点でなる記号列を含む。正確な交差試験規則によれば、血液型は「e−Match」としてここで引用されている状態で、自身と適合性があり、直交するマトリクス要素「1」によって表示される。緩和交差試験規則の下では、各第1の血液型が、いくつかの第2の血液型を適合することがあり、対応する(直交しない)マトリクスの要素も、要素「1」、すなわち、ここで「r−Match」と呼ばれる状態、あるいは、上述したように、部分的適合性の評価によって得た値を示す要素すなわち、ここで「p−Match」と呼ばれる状態の要素を含むであろう。ゼロの値を含むマトリクス要素は、不適合の第I及び第2の血液型対を表わす。一般的に、緩和交差試験規則の下では、レシピエントの血液型を表わす第1の血液型が、候補ドナーの血液型を表わすいくつかの第2の血液型と適合する一方で、逆はなく、マトリクスは対称ではない。
【0021】
ドナープールの評価
一般的には、輸血ドナーは、同種異型免疫の結果、以前に輸血のレシピエントであったかどうかは認定されないことがある。しかしながら、緊急の場合、このようなドナーは、適合性評点が変形ドナー及びレシピエントコードに基づいて計算されている限り、現在行われている交差試験規則の下に受容可能である。このコードは、各「仮想」抗原位置において、レシピエントビットがドナービットに複写されて「0」にセットされる。
【0022】
II.輸血抗原遺伝子型適合性の決定
II.1 遺伝子型の表示
本発明の目的のために、位置又はそれ以上の対象の遺伝子内の特異的可変部位(遺伝子座)におけるターゲット核酸の配置(対立遺伝子)を与える値の記号列として、輸血遺伝子型を定義する。好ましくは、各指定された部位は、一対のオリゴヌクレオチドプローブと共に識別される。オリゴヌクレオチドプローブの一方は、正常(N)を検出するように、他方は特異的変位(V)遺伝子座を検出するように設計されている。好ましくは、細長プローブを、ポリメラーゼ触媒プローブ細長が、すなわち、3’終端が対応するマーカ対立遺伝子に合致するが、合致しなかったプローブについては合致しない適合したプローブに確かに生じた状態で使用される。MAPTMフォーマット(上述の米国特許出願第10/271,602号参照)に基づいて個々のプローブ延長反応の産生を表示する分析信号強度パターンが、対内のプローブに関連した分析信号強度の比率(あるいはその他の組み合わせ)へ、予め設定されたしきい値を適用することで、離散的反応パターンに転換された。
【0023】
更に、遺伝子型は、記号列G={(NV)i,k}によって表示される。ここで、iは対象となる選択された遺伝子セット中の遺伝子を表わし、kは、i番目の遺伝子内の指定された多型部位を示す。NおよびVは、対立遺伝子をの状態を表わす値をとり、この開示においては、自然型(あるいは正常)及び突然変異(変異)遺伝子座は、それぞれ、「A」及び「B」の文字で表わされることが好ましい。例えば、多型部位GYPB143において、MNSシステムではT>Cであり、「A」が正常な遺伝子座Tを表わし、「B」は、変異遺伝子座Cを表わす。二つの遺伝子座のみを有する対立遺伝子では、従って、二対立遺伝子の組み合わせ(NV)が、AA、AB(あるいはBA)及びBBの値をとる。その他の文字を用いて、対立遺伝子の状態を表わすこともできる。例えば、文字「D」は、遺伝子欠失を表わす。好ましい実施例では、同じマーカに向けられたプローブ対に関連する信号強度が、非特異的(バックグラウンド)寄与を取り除くことによって好適に補正され、正常な対立遺伝子を検出するプローブに関連するINなどの一の強度、及び、サンプル中の変異対立遺伝子座を検出するプローブに関連するIVなどのその他の強度が組み合わされて、識別パラメータΔ=(IN−IV)/(IN+IV)を形成する。この量は、−1と1の間で変化する。所定のサンプル用に、所定の下方しきい値以下のΔの値は、同型接合変異を表示し、所定の上方しきい値以上のΔの値は、同型接合正常を示し、下方しきい値以上で上方しきい値以下のΔの値は、同型接合配位を示す。輸血抗原遺伝子型は、したがって、記号列、G={Δik}によって表わすことができる。ここでは、上述したとおり、iが対象となる選択した遺伝性セット中の遺伝子を表わし、kは、i番目の遺伝子中の指定された多型マーカを示す。従って、輸血抗原遺伝子型は、ここでは、AA、AB(またはBA)及びBBのいずれかであるか、あるいは、均等に、1、0、−1で表わされる。遺伝子型は、ここでは、ハプロタイプと呼ばれる、二本の構成記号列の組み合わせを表わしており、各々が、全マーカ部位(マーカ当たり一の対立遺伝子)における対立遺伝子状態の特別な組み合わせを表わす。
【0024】
II.2 マーカの選択
以下により詳しく述べるように、レシピエントと候補ドナーの、例えば同一、あるいはほぼ同一といった適合性テストは、関連する遺伝子内のマーカセットに限定される。この遺伝子は、発現すると、レシピエントがすでに抗体(アロ抗体)を作っている(初期の露出に基づいて)か、あるいは抗体を作ることができる血液由来細胞上に表示された特定のヒト赤血球抗原(HEA)をコード化する。レシピエント、輸血される血液の候補ドナー中で同定された、合致あるいはほぼ合致は、−血液型抗原をコード化する、及び特に、マイナな血液型抗原を含む、遺伝子内に配置された多型部位に対応するマーカ− は、一般的に、レシピエントの免疫感作のリスクと、免疫化したレシピエントでは、アロ抗体を投与した反輸血作用のリスクを最小にする。すなわち、マーカセットを選択して、このような反応に関連する関連対立遺伝子をプローブするように選択されると、レシピエントとドナーのマーカ対立遺伝子の比較を行って、適合する候補ドナーの起訴を提供することができる。マーカセットは、継続中の出願第11/257285号に開示されている(例2も参照されたい)。これらは、発現を制御する追加のマーカ、例えばサイレンシング突然変異、及び、削除、挿入あるいは組み替えを検出するマーカ含めるように拡張することができる。
【0025】
一般的な場合にドナーを選択するためには、すべての臨床的に関連する血液型抗原の適合を確実にするために、臨床的に優位な輸血抗原の発現に関連する遺伝子型の比較に基づいて、ドナーとレシピエントの適合性を決定する手順を有することが好ましい。
【0026】
II.3 遺伝子型−血液型マッピング
本発明による遺伝子交差試験を行うためには、プロセス中のあいまいさに取り組む態様(「遺伝子型は表現型ではない」との格言に関連して)で遺伝子型を血液型にマッピングして、ついで、パートIに開示した方法を用いて血液型適合性を評価する。遺伝子型−表現型マッピングによって適合性を決定することは、血清学的分類を含む現在のやり方と逆に、発現する限り、それが強いか弱いかにかかわらず、両方の潜在的な原因エンティティ、すなわち、輸血によって誘発される抗体と、ドナーの赤血球の「外部」抗原と、が寄与している。多くの場合、表現型は、遺伝し方によって直接的にまたあいまいでなく、同定される(上述のHashmi et al.)。本発明が取り組んだ位一つの課題は、遺伝子型を表現型にマッピングすることの縮退から生じるあいまいさに関するリスク及びあいまいさの解決の定量的評価である。
【0027】
指定された対立遺伝子で構成された遺伝子型が与えられている場合、血液型決定の第Iステップは、これらの対立遺伝子でコード化された個々の輸血抗原の発現状態を決定することである。各マーカについて、(Ee)は遺伝子型(NV)中の対立遺伝子N及びVの優性特性を示し、EとeはD(優性遺伝子)、R(劣性遺伝子)及びN(非発現遺伝子)の3つの値の一つをとる。操作可能な遺伝パターンを反映している、対応する抗原発現状態(AgNAgV)が、ついで都合よく一対のブール変数(Xx)によって表わされる。ここで、値「1」(あるいは「真」)と「0」(あるいは「偽」)は、パートIで述べたように、それぞれ、抗原の存在と欠如を表わしている。
【0028】
(Xx)の値は、以下の論理式を評価して決定する。
X=(E EQ “D”)OR((E EQ “R”)AND STATUS)
x=(e EQ “D”)OR((e EQ “R”)AND STATUS)
ここで、
STATUS=(Ee NEQ “DR”)AND(Ee NEQ “RD”)AND(Ee NEQ “NN”)
である。
【0029】
ここで、OR、AND、EQ、およびNEQは、論理演算子であり、それぞれ、対応する「オア」、「アンド」、「イコール」、及び「イコールにあらず」の関係の有効性に基づいて、「1」(真)あるいは「0」(偽)のブール値に戻る。
【0030】
1対1の写像: SNPマーカ(例2Aも参照)
いくつかの重要な血液型群システムの対立遺伝子は、コード化抗原中の単アミノ酸変化に対応する単ヌクレオチド多型を具える。この場合、抗原の式は(Xx)であり、表2及び表3に示すように、表現型は容易かつ明確に上述の式から評価される。対象となるほとんどの場合において、対立遺伝子は相互優性であり、正反対の抗原が発現する。例えば、Kiddシステム中の単ヌクレオチド多型(SNP)JK838G>Aは、正常抗原Jkaを正反対の抗原Jkbに変える単アミノ酸置換に対応する。
【0031】
「多対1」マッピング(例2Bも参照)
その他の場合、対立遺伝子は、多数の可変遺伝子座を具える。例えば、表4に示すように、Dombrockシステム内の位置DO−793、DO−624、DO−378、DO−350及びDO−328にある5つの可変遺伝子座は、多数の遺伝子型を規定するものであり、いくつかの場合は、この遺伝子型はハプロタイプの単一の組み合わせより多くの組み合わせを表わす。特筆すべきことには、既知の遺伝パターン(Reid、M.及びLomas−Francis、C.“The Blood Group Antigen Facts Book”、Academic Press、2nd ed.,2004)による個々のハプロタイプ組み合わせについて抗原発現状態の評価は、例えば、DOB/DOA及びHA/SHが表現型Do(a+b+)にマッピングを行うというように、様々なハプロタイプ組み合わせ(ディプロタイプ)が同じ表現型にマッピングを行い、一方、多数の様々な遺伝子肩が4つの(既知の)表現型の各々にマッピングを行う。この状態は、ここで、「多対1」(また、「崩壊性」)マッピングと呼ぶ。
【0032】
一義的マッピングは次の関数で表わすことができる。
fgT→βT:gr(d)→βr(d)
【0033】
血液型の決定に関連するすべての抗原が、正反対の抗原に対応する単ヌクレオチド多型を具える相互優性対立遺伝子によってコード化されるのであれば、交差試験の特別なケースである、完全に適応可能な交差「g−交差」が、レシピエントとドナーが同じ遺伝子型を有していれば、存在する。例えば、「1対1」マッピングの場合、遺伝子型の同一性は、正確な交差試験規則の下の適合性を意味する。
【0034】
「1対多」マッピング:あいまいさ
より一般的には、不確定な配偶子相を伴う2−遺伝子座(あるいは多遺伝子座)ヘテロ接合遺伝子型に潜在するあいまいさによって、あいまいな表現型が生じる。例えば(表5)、Duffyシステムにおける遺伝子座Fy−33及びFy125の対のヘテロ接合組み合わせは、配偶子相に応じて、抗原Fya又は正反対の抗原Fybのいずれかをコード化する。すなわち、Duffy−Fy(FY125)部位に「G」を有する正常な対立遺伝子は、抗原Fyaをコード化し、この部位に「A」を有する可変対立遺伝子は、正反対の抗原Fybをコード化するが、別のマーカであるDuffy−GATA(FY−33)によって発現は制御される。Duffy−GATA(FY−33)が突然変異すると、これが遺伝子転写を中断し、FYA/Bの発現をとめる。ヘテロ接合対立遺伝子の2−遺伝子座組み合わせ、すなわち、{GATA、FY}における(AB、AB)は、表現型の予測にあいまいさを生じさせ、ハプロタイプ組み合わせは、Fy(a+b)をコード化するA−A/B−B、あるいは、Fy(a−b+)をコード化するA−B/B−Aのいずれになることもできる。輸血で適合しない場合、Duffy抗原は、e=0.375の部分的適合性評点で表わされるような、「軽度から重度」の輸血反応を起こすことがあるので、遺伝子型のあいまいさは、更なる説明を必要とする。ハプロタイプ分析によるあいまいさの低減あるいは除去法が、例3及び4に記載されている。
【0035】
あいまいさマッピングは、以下の関数によって表わすことができる。
fgT→βT:gr→{βrv}
【0036】
II.4 マッピングあいまいさに関連するリスクの評価
「1対多」マッピングによって生じる多数の潜在的な(ファントム)血液型は、一般的に、特異的抗原を表わすビットが異なる。例えば、3つのファントム血液型c1001、c0001、及びc1000は、最初と最後のビットが異なる。マッピングのあいまいさに関連するリスクと、従ってその潜在的な臨床的重要性は、合致しないビットにおいて、及び対応する潜在的な原因抗原の異なる発現状態において、明らかである。特に、緊急事態では、特異的「1対多」マッピングにおけるあいまいさに関する定量的リスク評価を行うことが、特に決定がレシピエントに対してなされるべきである場合に、有益となるであろう。リスク評価は、特異的ファントム血液型のあいまいさ固有の残留リスクを受け入れるか否かを決定する基礎を提供し、図3にチャートで示す手順に従って、更なる明確化を進めるあるいは探すために開示されている。
【0037】
「最悪のケース」のシナリオを仮定して、一つの戦略を進める。すなわち、レシピエントの血液型であるべきファントム血液型を想定して、すべてのファントム血液型のすべての可能な候補ドナーとの(部分)適合性を計算し、最も低い部分的適合性評点を、手順を進めるかどうかを決定するベースとして採用する。しかしながら、潜在的な原因抗原が臨床的に重要である場合は、レシピエントのファントム血液型と候補ドナーの血液型感の適合性評点は広く異なり、最悪のケースのシナリオが、過度の保守的な評価を生じることがある。更に、ファントム血液型の発生頻度は一般的に同じではない。従って、最悪のケースのシナリオは、低い頻度でファントム血液型に関連する。従って、すべてのファントム血液型と可能な候補ドナーについての適合性評点を評価する前に、ここに記載する戦略に従って、ファントム血液型をより詳細に調べることが推奨される。まず、確率{cv}を、マッピングに一致する潜在的(ファントム)血液型に割り当てて、一又はそれ以上のファントム血液型がまれであるかどうかを評価する。次いで、生ファントム血液型を{cv}に従ってランク付けを行い、血液型が受け入れがたい低適合性評点となる可能性を反映するリスクしきい値を決める。リスク評点は、{cv}と適合性評点のいくつかの可能な組み合わせの一つの形で定義することができる。
【0038】
血液型頻度の予測
ここで、免疫抗原性エンティティ(immunoantigenetic entities)の組み合わせとして規定される血液型は、典型的に、10以上の抗原を含んでおり、このほとんどが遺伝子の非常に多型である点突然変異に関連している。発生頻度の予測は、例えば、血液センタのデータベースなど、大規模な交差試験ドナーと患者については明らかである。にもかかわらず、これらの抗原の膨大な数の組み合わせが、実行不可能に大きなサイズのサンプルに影響するため、統計的に有意な結果となる直接計数による正確な予測は困難である。ここに記載されている所望の手順は、部分母集団における、同じDNAストレッチ、すなわち、対立遺伝子またはハプロタイプ、に沿っている非常に近い点突然変異間のリンケージと、様々な遺伝子あるいはクロモソームのこれらの関連する状態間の統計的関係を有効に使うステップを具える。
【0039】
多数の点突然変異を具える対立遺伝子については、特に、突然変異の抑制が抗原決定因子リンクしている場合、同定されたハプロタイプが抗原の発現を抽出するのに有益である。例えば、例9に示す大規模な研究では、突然変異を抑制するGPB−int5が、S−決定点突然変異対立遺伝子、GYPBSに常にリンクしているが、突然変異対立遺伝子GYPBSには決してリンクしないことが認められている。換言すると、ハプロタイプGPB−int5“B”−GYPBSのみが存在しており、GPB−int5“B”−GYPBSは存在しない。次いで、例えば、(ABのGPB−int5及びABのGPB)、S−S+表現型の分類を振り分けるのにより自信を持つであろう。
【0040】
ハプロタイプ分世紀は、期待値最大化(EM)アルゴリズムを用いて、短DNAストレッチに沿った点突然変異のリンクした状態を見出して、その頻度を予測する。集団遺伝学で共通に用いられている特別な方法は、遺伝子計数である。これは、多項データ用のEMアルゴリズムであり(Weir BS. Genetic Data analysis II:Methods for Discrete population Genetic Data.Sunderland,MA:Sinauer Associates;1996;Dempster A,Laird N,Rubin D.Maximum likelihood from incomplete data via the EM algorithm.Jounal of Royal Statistical Society 1977;39:1−38)、このアルゴリズムでハプロタイプ頻度(下の完全データセット)を、設定したパラメータ間の相互依存の知識を考慮して反復法によって、遺伝子型頻度(実験で決定した潜在的不完全データセット)から予測することができる(Lange K.Mathematical and Statistical Methods for Genetic Analysis.2nd ed.New York:Springer;2002)。次いで、ディプロタイプ頻度を以下の通り計算する(Lange et al.):
ここで、Hおよびhは、特異的ディプロタイプの二つの構成ハプロタイプであり;二つの蓋然性が等しいディプロタイプ用の2アカウントの乗算ファクタは、遺伝による場合に位置を切り替える二つのハプロタイプからなる。この結果、ディプロタイプ頻度対{dk、ck}を形成する。点突然変異の完全セットの発生頻度は、一つが親の一方から遺伝するので、広い意味で「ハプロタイプ」と呼ばれ、関連性がないことが試験された、異なる遺伝子の対立遺伝子/ハプロタイプの発生頻度の積として計算される。「ファントム」血液型の確率は、レシピエント及び/又はドナーについてのハプロタイプ分析から予測されるように、以下の形で書くことができる。
fgT→βT:gr→βrv,Cvr}、及び
fgT→βT:gd→βdμ,Cμd}
【0041】
所定のしきい値以下の予測した頻度で現れるファントム血液型は、過度のリスクなく、更なる考察から取り除かれる。血液型頻度は、関連性がないことが試験された、各血液型群の抗原または遺伝子の組み合わせの発生頻度の積として計算され、ほとんどの場合正しい。さもなければ、別の遺伝子又はクロモソームに配置されている、他方を条件とする一つの配置発生の条件付き確率を計算に入れて考える必要がある。
【0042】
小母集団サンプルの分析に続いて、新しい遺伝子型が確立されたハプロタイプの組み合わせで表せない場合は、記号列マッチングを行って、確立されたハプロタイプのいずれか一つと組み合わせた所定の遺伝子型を形成する新しいハプロタイプを探す。実際にこの方法は、最近報告された二つの新しいハプロタイプである、DombrockシステムのHaとSh(表4)を同定した(上述の、Hashmi et al.)。新しいハプロタイプの頻度は、基本的にランダムな組み合わせを仮定して、構成対立遺伝子の頻度を掛けることによって予測され、その他のハプロタイプの頻度は、適宜、再正規化される。次いで、対応するファントム血液型とその頻度を、上述の式に従って再度計算する。ランダムドナープールは、より多くの遺伝子型ケースを蓄積するので、EM計算を繰り返して、頻度を細かく調整することができる。
【0043】
リスク評点の計算
曖昧さの定量測定は、ファントム血液型を互いに比較することによって、好ましくは、すべての記号列中の対応する位置にあるビットを加算することによって、得られる。ファントム血液型の数である、「0」または「N」以上の値になんらかの和を加算して、ファントム血液型の少なくとも一つがその他の型と異なる位置を同定し、これらの位置には、チェックビットが設定される。曖昧さの度合いの臨床的に有意な定量的測定は、パートIに記載の部分的適合性の評価に類似した方法で、全てのチェックビット位置に関連した適合性評点(表1)の積を作ることによって得られる。関連するリスクについての評点uは、この積を1から減ずることによって決定される。
ここで、レシピエント又はドナーについての血液型βは、βrまたはβdのいずれであっても良い。積が1に近い場合、そして、対応するリスク評点uが予め設定したしきい値より下にある場合、ファントム血液型の差は臨床的に有意でないと考えられる。このような場合、“最良のケース”のシナリオを探すことが推奨される。すなわち、いずれかのファントム血液型と最も適合性評点のよいドナーを処理する、あるいはリニア組み合わせ:
によって処理する。
【0044】
予め設定したしきい値を超えるuの値で表されるように、リスク評点が「高い」場合、ハプロタイプ分析(例2および3)と、選択的フェージング(例4)を分散した血液銀行マネージャで実行することができる。緊急の場合、このような追加の分析的測定が、可能な時間に容易にアクセス可能でない場合、予め決めたカットオフ以下の予測頻度を有するファントム血液型を考慮しないことによって、曖昧さの度合いを低減することが推奨される。
【0045】
部分的適合性
さもなければ、部分的適合性評点は、全ての生きているファントム血液型について計算されることになる。これらが比較可能な予測頻度を有するのであれば、また、曖昧さのリスク評点が余り高くない場合は、部分的適合性評点は、頻度重み付け平均値として決定することができる。一方、曖昧さのリスク評点が高い場合、部分的適合性評点は、上記で考えられる「最悪のケース」の仮定に従って、レシピエントのファントム血液型と最も近いところで合致するドナー血液型の間の交差試験の全てのありうる交差試験の組み合わせからピックアップすることによって、設定することができる。最も低い適合性評点を有するものは:
【0046】
III.適合ドナーのサーチ及び交差試験アルゴリズム
定義した二進(あるいは等価)血液型表示と、予め逼迫設定し、論理式に書き換えた交差試験規則と、完了したマッピングの曖昧さに関連するリスク評価の指示を用いて、実用アルゴリズムが開示される。このアルゴリズムは、これらの概念を含んでロイ、遺伝子型決定法に基づいて所定のレシピエントのための候補ドナーの迅速な選択方法と実施を提供する。
【0047】
予め計算した適合性マトリクスと、遺伝子決定−表現型マッピングによって抽出されたドナー血液型のデータベースを与えると、高速サーチアルゴリズムを実行して、所定のレシピエントについての候補ドナーを以下のように同定することができる。
【0048】
まず、潜在的に適合性のある血液型が列挙されたプライオリティリストを構築する。このリストには、3つの大まかなセクションがある:プライオリティが下がる順に、e(exact)−Match(es)、r(relaxed)−Match(es)、及びp(partial)−Match(es)のセクションである。e−Matchesとr−Matchesにおいては、発現頻度がより高い血液型がより高いプライオリティを持ち;p−Matchesでは、適合性評点がより高い血液型がより高いプライオリティを持つ。複数の入力が同じ適合性評点を有する場合は、より頻度の高い型がより高いプライオリティを持つ。次いで、プライオリティリストのサーチを行って、リスト中のプライオリティの順に候補ドナーを見つける;プライオリティの順を維持しながら受け入れ可能な適合候補ドナーを全て示し、「部分的適合」カテゴリにおけるすべての候補ドナーに対して適合性評点を付す。
【0049】
実装
好ましくは、コンピュータプログラムを用いて、以下の擬似コードアウトラインに従って、本発明の交差試験手順を実装する。
【0050】
例1:正確及び緩和交差試験規則
血液型を、表現型の組み合わせ、(Fy(a−b+)、Lu(a−b+)、M+N+S−s+、K−k+、Jk(a+b−)、Do(a−b+))として規定する。一の文献(上述の、Reid,M. &Lomas−Francis,L.)及びランダムな組み合わせによる分析によれば、この表現型は、約1.5%の頻度でアフリカ系アメリカ人に生じる。表6は、正確及び緩和交差試験規則による、適合前表現型を示す。正確交差試験規則の下では、ドナーはレシピエントの表現型に完全同一の表現型を有するであろう。緩和交差試験規則の下では、FyaもFybも持たない赤血球は、レシピエントの免疫システムに対して、潜在的原因Duffy抗原を示さないので、表現型Fy(a−b+)をもつレシピエントに適合する空の表現型であるFy(a−b−)を期待するであろう。同じ理由がその他のマーカにも適用される。従って、例えば、(Fy(a−b+)、Lu(a−b+)、M+N+S−s+、K−k+、Jk(a+b−)、Do(a−b+))の組み合わせは、緩和交差試験規則のもとでは、適合型であると考えられ、約12.5%の可能な候補ドナーに対応する、トータルで54の表現型が適合し、これは、正確交差試験規則の下で可能な割合を実質的に超える。従って、緩和交差試験規則の名がある。
【0051】
例2:遺伝子型−表現型マッピング及び遺伝子型適合性
本例は、遺伝子型−表現型のマッピングを示すものであり、表現型の血液型への組み合わせを行った後、交差試験規則を表現型に適用して、適合遺伝子型セットを取り出す。Duffy、Lutheran、MNS、Kell、Kidd、Dombrock、Scianna、Diego、Colton、及びLandsteiner−Wiener血液型群システム中の26の表現型に関連する18の多型遺伝子座の特別な選択の上で定義した遺伝子型は、Hashmi et al.(前述)に報告されているように、いくつかの群に層を成した、496の血液ドナーについての対立遺伝子特異的プローブ対のパネルを用いて同定される。
【0052】
2A 視覚的検査による直接転写
DombrockとDuffy血液型群システムのものを除く全ての、選択されたパネル中の対立遺伝子を定義する単ヌクレオチド多型は、1対1の遺伝子型−表現型マッピングを有し、遺伝子型から「読み切られる」対応する抗原の組み合わせが可能である。例えば、Coltonでは、遺伝子型AA、AB、BBは、それぞれ、抗原の状態(Coa+、Cob−)、(Coa+、Cob+)、(Coa−、Cob+)に対応する。対立遺伝子A(正常)とB(変位)が、相互優性である場合、遺伝子型に適用する交差試験規則は、以下の通りである。正確交差試験については、3つの型全てが自身に適合であり、緩和交差試験については、AA及びBBが自身に適合であり、3つの型全ては、ABに適合である。
【0053】
2B 複数遺伝子座対立遺伝子及び統計的ハプロタイプ分析
Dombrock − Dombrock血液型群システムについては、DO−793、DO−624、DO−378、DO−350、及びDO−323の5つの多型遺伝子座の用語で規定される対立遺伝子が、(既知の5つのうちの)4つの抗原、すなわち、Doa、Dob、Holley(Hy)及びJoseph(Jo(a))をコード化する。表現型が複数遺伝子座対立遺伝子によって決まる場合、一般的に視覚的検査はマッピングを構築するには不十分である。処理を行うためには、ハプロタイプを構築して、観察した遺伝子型を計数しなければならず、遺伝学的に確立された規則を適用して、表現型が同定される。統計的ハプロタイプ分析は、ハプロタイプの最もありそうなセットを同定して、遺伝子型に観察される分布を計数するのによく確立された方法を提供する。
【0054】
ハーディ・バインベルグ平衡についての18遺伝子座(36対の対立遺伝子に関する)全セットの公開分類結果の試験すると、0.1以上のP−値が生じ、これは、母集団中で平衡である対立遺伝子を示し、更に、サンプリング及び分類エラーを無視できることを示している。公に入手可能な実装における、期待値最大化(EM)アルゴリズム(Dempster AP,et al.,“Maximum Likelihood from Incomplete Data via the EM Algorithm”,J.R.Stat.Soc.B 1997:39:1−38参照)、HAPLORE(Zhang K,et al.,“HAPLORE:a program for haplotype reconstruction in general pedigrees without recombination”Bioinformatics 2005:21:90−103)を用いて、ハプロタイプ頻度を予測し、報告された遺伝し方頻度を計数した。HAPLOREへの入力として、生じた対立遺伝子型セットである、各多型遺伝子座におけるAまたはBから家系ファイルを構築した。この遺伝子座は、内部ID、すなわち1または2に割り振られている。連続的EM反復におけるハプロタイプ頻度予測のインクリメンタル相対的改良に関する収束基準は、10−8に設定され、ハプロタイプを保持する頻度しきい値は、10−6に設定された。このアルゴリズムは、これまでに報告されている(前述のHashmi et al)6つのハプロタイプ同定するのみでなく、対応する予測頻度も提供した。関連する遺伝学的規則に関する文献を参照して、すべての抗原状態を、これらのハプロタイプと、予測される表現型頻度(図示せず)とから容易に構築することができた。
【0055】
表7は、この結果をリストにしたものであり、表8は、Dombrock遺伝子型の対応する表現型と抗原状態へのマッピングをまとめたものである。例えば、抗原コード0111を用いて、遺伝子型DOB/DOBへ、次いで、抗原状態(Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)へマッピングを行う。特筆すべきは、以前に観察されている(上述のHashmi et al)一方、いくつかのケースにあるように、同じ遺伝子型を作る複数の明らかなハプロタイプ組み合わせが見られた。その他の遺伝子型を伴うこれらの組み合わせはすべて、同じ血液型へのマップに見られ、この場合は、レシピエントとドナーの遺伝し方の同一性からDombrock表現型の適合性を推測した。よりシステマティックなことに、適合性マトリクスは、選択した交差試験規則を用いて、レシピエント抗原コードをその適合するドナー抗原コードに関連付ける。例えば、適合性マトリクスは、ドナーコード0111をレシピエントコード0111と1111に結びつける。
【0056】
逆マッピングと遺伝子型適合性
表現型適合性マトリクスを与えると、表8のマッピングは、適合するドナー遺伝子型セットを産出する。例えば、DOB/HYの遺伝子型を与えると、まず対応する表現型が、抗原コード0111を用いて、Do(a−b+)として同定される。表に示すように、適合する遺伝子型を同定するには、検索を開始して、コード0111(破線の円で示す)と、二つの適合ドナー抗原コード0111と0101に結びつける。第1のコード01111は、正確交差試験を表わす、マトリクスの対角線に沿った適合要素に対応する。DOB/DOB、DOB/HY、DOB/SH、HY/SH及びSH/SHの、5つの適合遺伝子型が見出される。適合遺伝子型の全セットが表9に上げられている。第2のコードである0101は、緩和交差試験を表わす、適合性マトリクスの対角線外要素に対応する。一の適合遺伝子型、HY/HYのみが見出される。表4は、全ての適合遺伝子型がまとめられており、緩和交差試験規則の下に適合する遺伝子型をイタリック体で示す。レシピエント用の表現型が既知である場合、単純にマッピングを飛ばして抗原コードから始める。
【0057】
例3:GATA−Duffy除去による曖昧さの低減
配偶子相を解決することのない二つの2対立遺伝子の遺伝子座におけるヘテロ接合性は、一般的に、曖昧性を含んでいる。しかしながら、ある状態、特にハーディ・バインベルグ平衡の欠落が非ランダムサンプリングを低減している場合、データを検証することによって、この曖昧性を解決することが可能である。適切なケースは、FY−33、DuffyのGATAボックス中の突然変異の抑制、及び、FY125におけるマーカの組み合わせであり、FYA./FYB.と記載されている。表10は、上述の公開データセット(前述のHashmi et al.)における、不特定種族的出身の430のランダムドナーセットに観察されるようなGATA突然変異とFYA/FYBの遺伝子型頻度を示しており、ハーディ・バインベルグ平衡テスト(ここには示さず)は、ドナー母集団が強い層をなして、EMアルゴリズムの適用を排除することを低減している。しかしながら、直接的な検査は、必須の洞察を提供している。従って、観察された遺伝子型を生み出す{GATA、 FY}の2−遺伝子座 2対立遺伝子組み合わせが、観察された頻度(表10の下側パネル)と共に、リストにあげられている(表10、中央パネル)。この表の全ての要素は、(AB、AB)を除いて容易に割り当てられる。ハプロタイプB−Aの行と列に沿って観察された遺伝子型の検査は、対応する組み合わせ、(AB、AA)(BB、AA)、および(BB、AB)のいずれも観察されなかったことを示している。このことは、ハプロタイプB−Aの欠如と、組み合わせ(A−A/B−B)が明確に遺伝子型(AB、AB)を計数することを強く示している。
【0058】
例4:DNA単相化によるハプロタイプ曖昧性の解決
本例は、単相化を使用して、統計的ハプロタイプ分析も、直接の目視による検査も、曖昧さを受け入れ可能なレベルに低減しない、あるいはすべて除去しない、2つまたはそれ以上の2対立遺伝子の遺伝子座におけるヘテロ接合性から生じる曖昧さを解決することを示している。前例のGATA−Duffy構造について図4に示すように、単相化、好ましくは、BeadChip(登録商標)フォーマット(米国特許出願第11/257285号;米国特許出願10/271,602号(eMAP)、療法とも参照されている)におけるプローブ伸張の発動は、以下の4つのステップを具えている。(a)ターゲットをプローブにアニール化させて、二つのプローブの3’末端を、ターゲット内の指定の多型部位に整列させる条件下で、カラーコード化ビーズ上に二つの縮重プローブ対を提供する;GATA−Duffy(図4)として示すように、一のプローブ(プローブ−W)の3’末端は、GATA野生型対立遺伝子に相補になるように設計されており、その他のプローブ(プローブ−M)の3末端は、GATA突然変異対立遺伝子に相補になるように設計されている。(b)FY−33の本例では、適宜の条件下では、ターゲット(PCRアンプリコン)をハイブリダイズすることができ、ThermoSequenaseなどの、3’及び5’のエクソヌクレアーゼ活性が掛けているDNAポリメラーゼを付加して、特に、3’末端がターゲットに相補であるプローブを伸張させることができる。(c)切迫した状態下では、DNAハイブリッドを分離する。(d)選択的に、洗浄してターゲットストランドを除去する。及び、(e)本例では、FY125である、伸張生成物中の対象となる第2の可変部位へハイブリダイズすることによって、伸張生成物を分析する。二つの検出プローブは、一方のプローブNが例えば、赤い蛍光色で標識化されて、正常対立遺伝子に向けられており、他方のプローブVは、例えば緑の蛍光色で標識化されて、変異対立遺伝子に向けられている。このプローブは、溶液中の経口バックグラウンドを最小にするために、好ましくは、分子ビーコンまたはループプローブの形に設計されている(米国特許出願第10/032,657号)。図4は、生じうる結果を示す図である。プローブWを表わすビーズが、赤色を示し、プローブMを表わすビーズが緑色を示す場合、ハプロタイプは、W−N/M−Vである。代わりに、プローブWを表わすビーズが緑色を示し、プローブMを表わすビーズが赤色を示す場合、ハプロタイプは、W−V/M−Nである。二つのヘテロ接合2対立遺伝子ハプロタイプの配偶子相は、このように解決され、観察された遺伝子型の表現型へのマッピングにおける曖昧性は取り除かれる。
【0059】
例5:アフリカ系アメリカ人ドナー母集団の遺伝子由来の血液型
本例は、アフリカ系アメリカ人ドナーの小母集団の輸血抗原遺伝子型の未公開データセットの分析を表わすものであり、集団遺伝学の観点から遺伝子型由来の血液型の有効性を確認するものである。
【0060】
ニューヨークに住む80人の親族でないアフリカ系アメリカ人から血液サンプルを集めて、18の対立遺伝子特定プローブ対を用いて、DNA分類を行い、上述したように(前述のHashmi et al)Duffy、Lutheran、MNS、Kell、Kidd、Dombrock、Scianna、Diego、Colton、及びLandsteiner−Wiener血液型群システムの26の表現型に関連する対立遺伝子と、鎌状細胞疾患に関連するヘモグロビン突然変異である、ヘモグロビンSを同定した。Sciannna、Diego、Colton、Landsteiner−Wienerシステム、及びHbSには、変異対立遺伝子は観察されなかったので、この課題実行においてマッチしたデフォルトによるものと考えられる。
【0061】
ハプロタイプの決定
まず、全てのマーカの遺伝子型データを、プログラムPEDSTATS(Wigginton et al.Bioinformatics 2005 21(16):3445−3447)を用いて選択したSNPsセットに性格交差試験を実行することによって、ハーディ−バインベルグ平衡(HWE)について試験を行った。家系ファイルを構築して、親戚でない個々人を表示した。データファイルは、マーカ名を含むように構築された。結果は、すべてのマーカに平衡を示し、p値は、MNS群でM/N抗原をコード化しているGPA以外は、0.04ないし1の間であり、pchが0.005未満であることを示した。HWEからの無視できる全体的な偏差は、サンプリングおよび遺伝し方分類からのエラーが最小であることを示唆している。にもかかわらず、サンプルサイズ80は、例2におけるデータセットに見られる300以上の様々な遺伝子型対して比較的小さかった。また、実際の実験カウントは、遺伝子型由来の血液型の頻度を予測するに当たり、信頼性が限定的であることが考えられる。
【0062】
この分析の第1ステップは、基礎をなすハプロタイプの再構築と、各血液群中の遺伝子計数と期待値最大化(EM)(前述のDempster et al)によるその頻度を予測することである。EMアルゴリズムは、集団遺伝学に適用されて位、遺伝子型頻度(不完全な実験的に決定したデータセット)からハプロタイプ頻度(基礎的な完全データセット)を、この場合、遺伝子計数によって確立されたパラメータ間の相互依存の知識を取り入れた反復法によって、予測する。EMの実装は、HAPLOREプログラムに提供されている(例2を参照)。入力として、HAPLOREは、対立遺伝子の可能な組み合わせから構築した家系ファイルを用いており、例えば、正常(最も普及している)についてはAによって、変異についてはBによって、表わす。連続的な反復におけるハプロタイプ頻度予測のインクリメンタル相対改善に関連する収束基準が、10−8に設定され、ハプロタイプを維持する頻度しきい値は10−6に設定された。様々な遺伝子間でハプロタイプと対立遺伝子が、群集について試験され、なにも見出されなかった。関連する頻度をもって、アフリカ系アメリカ人に設定された、10の最も通常の点突然変異セット、あるいは広義の「ハプロタイプ」、及び遺伝子型が表11と表12にそれぞれリストとしてあげられている。
【0063】
217のありうる組み合わせのうちから、セット{GATA、FY、FY−265、GPA、GPB、K、Jk、DO−323、DO−350、DO378、DO−624、DO−793、LU、SC、DI、CO、LW}に規定された44のハプロタイプが、有意な高頻度を持つものとして、見つかった。最も一般的なハプロタイプは、頻度23.2%であり、B−B−A〜A−B〜B−A〜A−A−B−B−B〜B〜A〜A〜A〜Aであることがわかり、10の最も一般的なハプロタイプは、テストを行った母集団中で同定された全てのハプロタイプの65%を数えることがわかった。ダッシュは、様々なクロもソームに位置しているSNPsの統計的関連性を示す。最も一般的な遺伝子型は、頻度6%である、(BB、BB、AA、AB、BB、BB、AA、AA、AA、AA、BB、BB、BB、BB、AA、AA、AA、AA)であることがわかった。10の最も一般的な遺伝子型は、テストを行った母集団中の全ての遺伝子型の28%を数える。
【0064】
特筆すべきは、44の同定したハプロタイプ全てにおいて、FY−33T>C(Duffy GATA)において、変異対立遺伝子FY125G>Aと共に、突然変異が発現し、これは変異抗原Fybの抑制を意味している。すなわち、期待値最大化が、血清学的タイピング(前述のReid&Lomas−Fracis)に基づいて上記に報告されている観察を確認する。この報告は、アフリカ系アメリカ人では、{GATA、FY}における2−遺伝子座GATA−Duffy遺伝子型(AB、AB)が、常に、ディプロタイプ(A−A、B−B)を持っており、これは、表現型Fy(a+b−)に対応する、というものである。この観察は、Fy(a−b+)とFy(a+b+)頻度の双方を計数して、血清学的に決定したコード化血清(前述のReid&Lomas−Francis)の頻度23%のFybが、なぜ変異FYA/FYBの観察した対立遺伝子頻度91%より有意に低いのかを説明している。
【0065】
マッピング
GATA−Duffy曖昧さの解決によって、表3及び4に示すように、明確な遺伝子型−表現型マッピングが可能となった。{GATA、FY}における遺伝子型(AB、AB)は、ここで、{Fya、Fyb}で抗原コード10に割り振られる。
【0066】
血液型表示
表現型のマッピングに続いて、各血液サンプルを、血液型コード、この場合、好ましくは、16ビット記号列に振り分ける。抗原ビットは、以下の順に配置されている:Fya、Fyb、Lua、Lub、M、N、S、s、K、k、Jka、Jkb、Doa、Dob、Hy、Jo(a)。遺伝子型−表現型、ついで、表現型−血液型マッピングによって得た、最も一般的な20の血液型と、それらの頻度を表13に上げた。ここで取り出した血液型の正確度をチェックするために、この方法によって得た表現型頻度を、血清学的方法(前述のReid&Lomas−Francis)を用いた直接表現型決定法によってすでに確立されている表現型頻度と比較した。表14に明らかなとおり、よく一致しており、特に、小集団についてはよく一致している。妥当性を確認するもう一つの方法は、ハプロタイプから得た頻度を、純粋なチャンスによる組み合わせを仮定して、報告された表現型頻度を乗算して得た頻度と比較する方法である。図5は、結果として生じた53の血液型すべてとの比較を棒グラフで表示したものである。図6は、このサイズの小さい集団を反映している統計的なばらつきとは別に、遺伝子型から得た血液型の有効性を更に支持する二つの頻度セット間の相関関係を示すものであり、二つのセット間の残る不一致は、選択したパネルにおけるいくつかの対立遺伝子間の統計的な相関関係を示すものである。
【0067】
本例においてはサンプルサイズが非常に限定されているため、同定したハプロタイプと頻度は、アフリカ系アメリカ人の最も代表的なものではない可能性がある。実際、ニューヨークの2000人を超すドナーについてより遅れて行った大規模な研究で、わずかに異なる組み合わせ及び頻度のセットを得た。ついで、遺伝子型−表現型マッピングをいくつかのマイナーチェンジについて行った。ここに開示した表と例は、本発明の原理を説明することを目的としている。
【0068】
例6:アフリカ系アメリカ人母集団における交差試験
例5における分析に続いて、最も高い頻度が予測される血液型の適合性評点を評価することによって、適合性マトリクスを構築した。表15は、部分的に適合する血液型を一時的にフィルタにかけた後、アフリカ系アメリカ人の遺伝子型から得た最も一般的な25の血液型についてのこのマトリクスを示す。対角線に沿った“1”は、自己適合型血液型を表わし、正確な交差試験規則に適合した交差を表わす。上記で議論したとおり、各血液型は、表3−5に関連して述べたように、複数遺伝子型に対応する。対角線外の“1”は、緩和交差試験規則による適合した交差を表わす。
【0069】
例えば、16進コードc5D67、あるいは2進コードc0101110101100111、で同定された血液型、すなわち、(Fya−、Fyb+、Lua−、Lub+、M+、N+、S−、s+、K−、k+、Jka+、Jkb−、Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)、あるいは、表現型の組み合わせ、(Fy(a−b+)、Lu(a−b+)、M+N+S−s+、K−k+、Jk(a+b−)、Do(a−b+))を考慮されたい。この適合性マトリクスは、3つの適合性コード、すなわち、それぞれ、血液型に対応するc1D67、c1967、及びc1567を同定する。
(Fya−、Fyb−、Lua−、Lub+、M+、N+、S−、s+、K−、k+、Jka+、Jkb−、Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)
(Fya−、Fyb−、Lua−、Lub+、M+、N−、S−、s+、K−、k+、Jka+、Jkb−、Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)
(Fya−、Fyb−、Lua−、Lub+、M−、N+、S−、s+、K−、k+、Jka+、Jkb−、Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)
各々、一の抗原、Fybの欠落、二つの抗原、FybとNの欠落、及び、2つの抗原FybとMの欠落によって特徴付けられる。適合血液型の全ての頻度を加えて表示すると、25の最も頻度の高いドナー血液型を考慮しても、緩和交差試験規則の適用によって、頻度がわずか1.5%の血液型についての適合ドナーを見つけるチャンスが22%に上がる。
【0070】
部分的適合性
部分的適合性マトリクスも、対象の抗原について、表1に示すように、重大性レベルが下降する順に、0から1の範囲のミスマッチ評点を用いて構築した。表16は、アフリカ系アメリカ人母集団の最も一般的な25の血液型についてのマトリクスを示し、これは、適合性評点が0.5以下の全ての要素を「0」(または、単にブランクにしておく)に設定している。値「1」の要素はすべて表11の値に合致する。しかし、表11のマトリクスに残るいくつかの「ブランク」の欄は、適合性評点が0.5以上の部分的に適合性のアルドナー血液型に対応する有限評点を示す。また、血液型コードc5D67を考慮する。例5では、c5D67は、3つの適合コード、すなわち、c1D67、c1967、及びc1567を同定している。この例では、これらの3つの完全適合コードに加えて、二つのコード、すなわち、5G67と1F67が部分的に適合していることがわかる。これらは、
(Fya−、Fyb+、Lua−、Lub+、M+、N+、S−、s+、K−、k+、Jka+、Jkb−、Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)
(Fya−、Fyb−、Lua−、Lub+、M+、N+、S−、s+、K−、k+、Jka+、Jkb−、Doa−、Dob+、Hy+、Jo(a)+)レシピエントコードc5D67に比較すると、ドナーコードc5F67は,中程度の原因抗原Sを具え、部分的適合性評点0.625は、中低度の受容性を提示している。コードc1F67は、Duffyについてゼロ表現型Fy(a−b−)を具え、これは、緩和交差試験規則では適合であるが、中適度の原因抗原Sも具えており、レシピエントコードc5D67に対する全体の部分的適合性を、c5F67の部分的適合性と比較可能にしている。
【0071】
例7:アフリカ系アメリカ人母集団における適合ドナーの高速サーチ
血液型コードc5D67のレシピエントが、アフリカ系アメリカ人のドナープール中の適合ドナーを求めるリクエストを出したと仮定する。まず、潜在的な適合ドナー血液型の優先リストが、表14などの確立された適合性マトリクスの「ルックアップ」によって構築される。c5D67に割り当てられた行は、6つの潜在的な適合血液型を示している。ついで、サーチリストが、レシピエントの血液型と同一の最も優先度の高い血液コードc5D67と、発生頻度によって仕分けされたr−マッチ、c1D67、c1967、c1567及びc5D67を含む優先度が中程度のセクションと、部分的適合血液型であるc5F67とc1F67を含む優先度が低い血液型(p−マッチ)である第3のセクションを含むように構築されている。
【0072】
例8:遺伝子型交差試験及びサーチ
表17は、表16中の血液型適合マトリクスから得た、例7及び8で検討したアフリカ系アメリカ人母集団の遺伝子型適合マトリクスを示す。この新マトリクスでは、行と列が遺伝子型に振り分けられており、特定の行(レシピエントの遺伝子型)と列(ドナーの遺伝子型)の好転におけるマトリクス要素が、対応する血液型の適合性評点を含んでいる。表18は、アフリカ系アメリカ人母集団中の50の最も一般的な16−抗原少数―群遺伝子型についての遺伝子型適合性マトリクスを示す。所定の遺伝子型(0、−1、1、−1、0、−1、1、1、1、−1、−1、−1、−1、1、1、1、1)を有する一人の患者についての、表19に示すような50個の選択枝のうちの適合ドナー遺伝子型は、一のe−マッチ、すなわち、同一コードを具え、同様に、
4つのr−マッチ、すなわち:
(−1、−1、1、−1、0、−1、1、1、1、−1、−1、−1、−1、1、1、1、1)、
(−1、−1、1、−1、1、−1、1、1、1、−1、−1、−1、−1、1、1、1、1)、
(−1、−1、1、−1、−1、−1、1、1、1、−1、−1、−1、−1、1、1、1、1)、
(−1、−1、1、−1、0、−1、1、0、1、0、−1、−1、−1、1、1、1、1)、
及び、2つのp−マッチ、すなわち:
(0、−1、1、0、0、−1、1、1、1、−1、−1、−1、−1、1、1、1、1)、
(−1、−1、1、0、0、−1、1、1、1、−1、−1、−1、−1、1、1、1、1)を具える。
【0073】
例9:ニューヨークの実際の白人ドナープールの二人の白人についての適合血液型決定
様々な人種バックグラウンドを持つ2300人以上の潜在的ドナープールを、BeadChip(登録商標)プラットフォームを用いて分析した。DNA分析から得た表現型は、MNS、Lutheran、Kell、Duffy、Kidd、Dombrock、及びColton血液型群システムについての血球凝集による4534対の部分的抗原判定のうち、4,510対と適合した。24の不適合結果のうち、16はBeadChip(登録商標)の結果を選んで、シーケンシング及びRFLP分析により決められる。その他の8つの不適合結果は、GYPBの抑制のために示した。すなわち、関連するSNPsがHEA BeadChip(登録商標)パネルの後のバージョンに順次加えらた(Hashmi et al.,Determination of 24 Minor Red Blood Cell Antigens for More Than 2000 Blood Donors by High−Throughput DNA Analysis,Manuscript ID Trans−2006−0329,R1,Transfusion,2006)。
【0074】
二人の白人がボランティアで血液抗原を分類した。二人の匿名を保つため、彼らを「ジョン」と「キャシー」と名づけた。DNA分類{GATA、FY、FY−265、GPA、GPB、K、Jk、DO−323、DO−350、DO−378、DO−624、DO−793、LU、SC、DI、CO、LW}セットは、ジョンがタイプ(K−、k+、Fya+、Fyb+、M+、N−、S+、s+、Lua+、Lub+、Doa+、Dob+、Jo(a)+、Hy+、Lwa+、LWb−、Dia−、Dib+、Coa+、Cob−、Scl+、Sc2−)、又は2進コード(c0111101111111110011010)を持っており、キャシーがタイプタイプ(K−、k+、Fya−、Fyb+、M+、N−、S−、s+、Lua−、Lub+、Doa−、Dob+、Jo(a)+、Hy+、Lwa+、LWb−、Dia−、Dib+、Coa+、Cob−、Scl+、Sc2−)、又は2進コード(c0101100101011110011010)を持っており、ジョンの血液は、対応するLUA対立遺伝子が白人の3%にのみ見られるまれな正のLua抗原があるため、まれな組み合わせであることを示す。マッチングが8つの抗原、K、k、S、s、Fya、Fyb、Jka、Jkbに基づくものであれば、ジョンは、ドナープールの1243人の白人サブセットから87人の正確にマッチするドナーを見つけることができる。しかし、8つの追加抗原、M、N、Lua、Lub、Doa、Dob、JOa、及びHyが含まれている場合は、ジョンはこのサブセット中に正確なマッチを一つだけ見つけることができる。ここに開示した方法を行った後の、ジョンの拡大タイプの予測される頻度は、CAUコホートのうちわずか0.09%であり、CAUコホート中に一つのマッチのみが見つかったという観察に合致する。一方、緩和交差試験規則を続けて行う場合は、白人に高頻度で発生することが期待される適合血液型を少なくとも二つ、直ちに見つける。すなわち、オプション1として、(K−、k+、Fya+、Fyb+、M+、N−、S+、s+、Lua−、Lub+、Doa+、Dob+、Jo(a)+、Hy+、Lwa+、LWb−、Dia−、Dib+、Coa+、Cob−、Scl+、Sc2−)又は2進コード(c0111101101111110011010)であり、Luaが負であるものと、オプション2として、(K−、k+、Fya−、Fyb+、M+、N−、S+、s+、Lua−、Lub+、Doa+、Dob+、Jo(a)+、Hy+、Lwa+、LWb−、Dia−、Dib+、Coa+、Cob−、Scl+、Sc2−、f=1.24%)又は2進コード(c0101101101111110011010)であり、LuaとFyaの双方が負のものである。
【0075】
表21は、サイズが異なり、ランダムに採用したドナーセット中で、少なくとも一の交差試験適合ドナーを見つける継続中の特許出願(Zhang et al,“A Transfusion Registry and Exchange Network,“US 11/412,667,Apr 27,2006、ここに参照されている)を用いて予測した交差試験の確率を示す。例えば、200のランダムに選択した白人ドナー群中にいずれかの血液型を探し当てる確率は、90%以上である。白人コホート(N=1243)におけるサーチでは、予測に合致する、血液型オプション1および血液型オプション2について、10及び7の合致した適合ドナーが生じる。
【0076】
キャシーのタイプは、ジョンより一般的であり、頻度0.53%である。200人及び400人のランダム白人ドナーにおける予測交差試験確率は、それぞれ、66%と88%である。白人サブセットの適合ドナーサーチは、サンプリング失敗のエラー内に、16の性格にマッチする抗原が生じ、これも予測に合致する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、遺伝子型の表現型ないし血液型へのマッピング、血液型における交差試験を示す図である。
【図2】図2は、異なる交差試験規則下で、発現したレシピエントとドナーの抗原の集合間の関係を描いたベン図を示す。
【図3】図3は、遺伝子型を同定する輸血抗原を基礎として、レシピエント用の適合性ドナー血液を同定するプロセス用のフローチャートである。
【図4】図4は、カラーコード化した微小粒子上に陳列したエロンゲーション生成物を分析することにより段階的に実行する配偶子を示す。
【図5】図5は、80人(自己識別)のアフリカ系アメリカ人ドナーの母集団におけるハプロタイプ由来の16抗原の少数群の血液型頻度と、無作為な組合せの公表され、血清学的に決定された抗原頻度に由来する頻度との比較である。
【図6】図6は、図5において示した相関を散布図で示す。
【図7】図7(表1)は、ミスマッチの抗原を含有する血液の輸血に対する副作用の重症度、及び相関した適合性(又は、「ミスマッチ」、MM)評点を記載した。
【図8】図8(表2)は、対立遺伝子の優位関係を特定する遺伝形質の法則の応用によって決定される抗原発現状態を示す。
【図9】図9(表3)は、遺伝子型の抗原表現型への「一対一」マッピングを示す。
【図10】図10(表4)は、Dombrock血液型系の例について、遺伝子型の抗原表現型への「多対一」マッピングを示す。
【図11】図11(表5)は、Duffy血液型系の例について、遺伝子型の抗原表現型への「一対多」マッピングを示す。
【図12】図12(表6)は、既知のレシピエント表現型に適合する表現型の部分的なリストである。
【図13】図13(表7)は、Dombrock血液型系のハプロタイプと対応する抗原状態を示す。
【図14】図14(表8)は、遺伝子型DOB/HYに対する遺伝子型ベースの交差試験と、対応する表現型Do(a−b+)を示す。
【図15】図15(表9)は、遺伝子型DOB/HYに適合する遺伝子型の概略である。
【図16】図16(表10)は、遺伝子型頻度の検査によるハプロタイプ分析を示す。
【図17】図17A(表11)は、アフリカ系アメリカ人についての最も共通のハプロタイプとその頻度を記載する。図17Bは(表12)、アフリカ系アメリカ人についての最も共通の遺伝子型とその頻度を記載する。
【図18】図18(表13)は、80人の(自己同定)アフリカ系アメリカ人の集団において20の最も共通の16抗原の少数群血液型とそれらの遺伝子型由来の頻度とを公表されている血清学的に決定した抗原頻度の無作為な組合せに由来する頻度と比較する。
【図19】図19(表14)は、ハプロタイプ由来の表現型頻度を、公表されている血清学的に決定した抗原頻度と比較している。
【図20】図20(表15)は、アフリカ系アメリカ人における、25の最も共通な16抗原の少数群血液型用の適合マトリクスである。
【図21】図21(表16)は、アフリカ系アメリカ人における、25の最も共通な16抗原の少数群血液型用の部分的適合マトリクス(しきい値=0.5)である。
【図22】図22(表17)は、遺伝子型交差試験を示す。
【図23】図23(表18)は、アフリカ系アメリカ人における、25の最も共通な16抗原少数群遺伝子型用の適合マトリクスである。
【図24】図24(表19)は、アフリカ系アメリカ人における、公知の遺伝子型の患者用の適合ドナー遺伝子型の選択を示している。部分的適合マトリクスである。
【図25】図25(表20)は、80人の自己同定のアフリカ系アメリカ人から推定される50の最も共通の16抗原の少数群血液型用の
【図26】図26(表21)は、DNA分析由来の2人の白人を分類する抗原と交差試験の予測と実際の3州のドナープールでの治療を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
将来のドナーとレシピエントの遺伝子型を基礎として、輸血をするかどうか決定する方法であって、他の方法で下記を提供するものを除き、どの順番においても、前記方法が;
(i)選択された潜在的な免疫原性の抗原の発現を制御する遺伝子内の指定された変異部位の組のために、このような各部位でホモ接合型標準、ホモ接合型変異体、又はヘテロ接合としての割当てを可能にする変性プローブの対を用いて将来のドナーとレシピエントの遺伝子型を決定し、このような記録された割当てのセットが遺伝子型を構成するステップと;
(ii)ドナーとレシピエントのハプロタイプの組み合わせの中へ、前記ドナーとレシピエントを分解し、ハプロタイプにおける前記部位が標準を示す値か、変異を示す値かのいずれかに指定され、一対のハプロタイプの組み合わせが遺伝子型を与えるステップをと;
(iii)前記ハプロタイプを、選択した抗原用の遺伝形質の法則の応用によって、表現型と相関させるステップと;
(iv)ハプロタイプの割当て中のあいまいな事象において、遺伝子型と一致する2又はそれ以上のハプロタイプの組み合わせによって示され、異なる表現型へマッピングする少なくとも2のこれらの組み合わせが、最大の危険性を割当て、表現型のドナー及びレシピエント用のハプロタイプの組合せとの相関から決定した、異なる推定ドナーとレシピエントの表現型の組合せの間にある最大の不適合表現型を同定することによって決定するステップにおいて、不適合性が前記ドナーとレシピエントの表現型内のミスマッチした抗原の臨床上の有意性の程度に基づくステップと、各ドナーとレシピエントの特定の表現型において、全てのミスマッチの蓄積効果を表す部分的な適合性評定を演算することにより前記ドナー/レシピエントのミスマッチの臨床上の有意性の程度を表すステップと;
(v)最大危険度が危険度のしきい値より大きい危険度を表す事象において、ハプロタイプとして、レシピエント及びドナーの集団の中でより頻繁に起こると推定されるものを選択することによって、あいまいさを減じ、前記選択したハプロタイプに対応する前記表現型によって表された部分的な適合性評点を再計算するステップと;
(vi)ステップ(v)を行った後で、最大危険度が危険度のしきい値より大きい危険度を示す事象において、実際のハプロタイプを決定し、マッピングした表現型の中であいまいさを推定するための配偶子相を決定するステップと;
(vii)ドナーとレシピエントの表現型を合わせることによって、適合性を決定し、全ての部位での完全一致があるかどうかを決定し、又は、特定の部位でのミスマッチの事象において、実質上のマッチング規則の下で、又は部分的な適合性評点のために許容されるミスマッチがあるかどうかを決定するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記配偶子相がプローブ対を用いて決定される請求項1に記載の方法において、前記プローブが配偶子相を決定することによるハプロタイプの組合せにおいて、前記あいまいさを決めるように設計されることを特徴とする方法。
【請求項3】
段階的実行が、自分自身で抗原をコードしないが、抗原の発現(又は発現のサイレンシング)を制御する部位を決定するのに用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
将来のドナーとレシピエントが同じ抗原を発現する場合、前記将来のドナーは既知のレシピエントに適合するように分類され、あるいは前記ドナーは前記レシピエントが発現しないどんな抗原も発現せず、あるいはこれらの条件が満たされない事象においては、最大危険度の評点はしきい値以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
表現型の割当てにおける前記あいまいさを、適当なハプロタイプとして、レシピエント及びドナーの集団の中で最も頻繁に起こると推定されるものを選択することにより減ずることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
最も頻繁に起こると推定されるハプロタイプを、遺伝子係数によって、あるいは期待値最大化アルゴリズムの応用によって決定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
将来のドナー及びレシピエントそれぞれの集団における発生頻度を推定することにより、変性ハプロタイプの組合せを評価し、推定発生頻度がしきい値以下のハプロタイプを考慮から取り除くステップを更に具えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記最大危険度が、将来のドナーとレシピエント間に表現型のミスマッチがある各部位での割り当てた臨床上の危険値の製剤を決定することによって、割り当てられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
レシピエントと将来のドナーにおける対の表現型間の適合性のパターンが、適合性マトリクスで記録されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
集団における公知の発生頻度に基づいて、分解から生ずるあるハプロタイプが起こる尤度を決定するステップを更に具えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
不適合性の危険度を評価するために、前記決定した尤度をミスマッチの臨床上の有意性と組み合わせて用いることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
将来の血液製剤ドナーのレシピエントへの適合性の程度を、前記ドナーと前記レシピエントの輸血抗原遺伝子型の基礎として決定する方法であって、前記輸血抗原遺伝子型が、表現型を定義する特定の輸血抗原の発現に影響を与える指定された変異遺伝子座での対立遺伝子の組合せを具え:
− 前記輸血抗原遺伝子型を対応する表現型へ、前記遺伝子型をハプロタイプの組合せに分解し、遺伝形質の法則の下で前記抗原発現条件を決めることによってマッピングするステップと;
− マッピングにおけるあいまいさの事象において、遺伝子型を与えるが、異なる抗原発現状態を生成し、前記あいまいさを減じて解決する2又はそれ以上のハプロタイプの組合せによって示されるステップと;
− 将来のドナー及びレシピエントの輸血表現型(又は血液型)の適合性を決定するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
あいまいさを、しきい値以下の推定発生頻度を有するハプロタイプの組合せを除去することによって低減し、あるいは解決することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
マッピングにおけるあいまいさに関連する危険度評点を、少なくとも1のビット記号列が他のものと異なっている表現型で、異なるマッピング表現型を表す前記ビット記号列内のこのような位置を同定することにより取得する請求項12又は13に記載の方法であって、当該方法が、前記ドナー及びレシピエント表現型の中のこのような同定位置での、潜在的なミスマッチの抗原の、臨床上の有意性の程度を反映するミスマッチ評点の製剤を計算し、前記製剤が異なるマッピング表現型間のすべてのミスマッチの蓄積効果を表していることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記製剤が危険度のしきい値より大きい危険度を表す事象において、ハプロタイプとして、レシピエント及びドナーの集団の中でより頻繁に起こると推定されるものを選択することによって、前記あいまいさを減じ、前記選択したハプロタイプに対応する前記表現型によって表された部分的な適合性評点を再計算することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記製剤が危険度のしきい値より大きい危険度を表す事象において、前記あいまいさが配偶子相によって決定されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記配偶子相をプローブ対を用いて決定する請求項16に記載の方法において、前記配偶子相を決定することによって、前記プローブをハプロタイプの組合せにおける前記あいまいさを解決するように設計することを特徴とする方法。
【請求項18】
前記ハプロタイプが、存在するデータの目視検査又は遺伝子計数に基づいて、好ましくは期待値最大化アルゴリズムの応用によって選択されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ハプロタイプにマッピングされ、分解された前記ドナー及びレシピエントの表現型(及びそれらに対応する血液型)が、下記:
のようになることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項20】
集団における公知の発生頻度に基づいて、分解から生ずるあるハプロタイプが起こる尤度を決定するステップを更に具えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項21】
不適合性の危険度を評価するために、前記決定した尤度をミスマッチの臨床上の有意性と組み合わせて用いることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第1及び第2の遺伝子型の適合性を確立する方法であって、少数の血液型抗原の発現を制御する指定された変異遺伝子座を具える各遺伝子型において、各遺伝子座での前記遺伝子型が、標準、変異又はヘテロ接合として、プローブ対を有する各遺伝子座を標的にすることにより決定され、正の結果が標準を示す各対における一方のプローブによって生成され、正の結果が変異を示す前記対における他方のプローブによって生成され:
− 第1及び第2の遺伝子型を第1及び第2の表現型を定義する抗原のセットにマッピングするステップと;
− プリセットの交差試験判断基準の下で、第1及び第2の表現型の適合性を確立するステップと;
を具える方法において、前記第1及び第2の表現型の前記適合性が、前記交差試験判断基準の下で第1及び第2の遺伝子型の適合性を決定することを特徴とする方法。
【請求項23】
前記指定された変異遺伝子座が、少なくとも下記の表:
の中の前記型を具えることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記マッピングの下で、遺伝子型が独特に1の表現型へマッピングされ、従って第1及び第2の遺伝子型の同一性は、明確に適合性を示すことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記少数血液型遺伝子型がLU、JK、K、GPA又はGPBであることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第1及び第2の遺伝子型がそれぞれ候補の血液製剤ドナーとレシピエントのそれであり、前記交差試験判断基準が、候補ドナー及びレシピエントが前記同一の抗原を有している完全交差試験判断基準か、前記候補ドナーが前記レシピエントが有していないどの抗原も有していない交差試験判断基準かのいずれかであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項1】
将来のドナーとレシピエントの遺伝子型を基礎として、輸血をするかどうか決定する方法であって、他の方法で下記を提供するものを除き、どの順番においても、前記方法が;
(i)選択された潜在的な免疫原性の抗原の発現を制御する遺伝子内の指定された変異部位の組のために、このような各部位でホモ接合型標準、ホモ接合型変異体、又はヘテロ接合としての割当てを可能にする変性プローブの対を用いて将来のドナーとレシピエントの遺伝子型を決定し、このような記録された割当てのセットが遺伝子型を構成するステップと;
(ii)ドナーとレシピエントのハプロタイプの組み合わせの中へ、前記ドナーとレシピエントを分解し、ハプロタイプにおける前記部位が標準を示す値か、変異を示す値かのいずれかに指定され、一対のハプロタイプの組み合わせが遺伝子型を与えるステップをと;
(iii)前記ハプロタイプを、選択した抗原用の遺伝形質の法則の応用によって、表現型と相関させるステップと;
(iv)ハプロタイプの割当て中のあいまいな事象において、遺伝子型と一致する2又はそれ以上のハプロタイプの組み合わせによって示され、異なる表現型へマッピングする少なくとも2のこれらの組み合わせが、最大の危険性を割当て、表現型のドナー及びレシピエント用のハプロタイプの組合せとの相関から決定した、異なる推定ドナーとレシピエントの表現型の組合せの間にある最大の不適合表現型を同定することによって決定するステップにおいて、不適合性が前記ドナーとレシピエントの表現型内のミスマッチした抗原の臨床上の有意性の程度に基づくステップと、各ドナーとレシピエントの特定の表現型において、全てのミスマッチの蓄積効果を表す部分的な適合性評定を演算することにより前記ドナー/レシピエントのミスマッチの臨床上の有意性の程度を表すステップと;
(v)最大危険度が危険度のしきい値より大きい危険度を表す事象において、ハプロタイプとして、レシピエント及びドナーの集団の中でより頻繁に起こると推定されるものを選択することによって、あいまいさを減じ、前記選択したハプロタイプに対応する前記表現型によって表された部分的な適合性評点を再計算するステップと;
(vi)ステップ(v)を行った後で、最大危険度が危険度のしきい値より大きい危険度を示す事象において、実際のハプロタイプを決定し、マッピングした表現型の中であいまいさを推定するための配偶子相を決定するステップと;
(vii)ドナーとレシピエントの表現型を合わせることによって、適合性を決定し、全ての部位での完全一致があるかどうかを決定し、又は、特定の部位でのミスマッチの事象において、実質上のマッチング規則の下で、又は部分的な適合性評点のために許容されるミスマッチがあるかどうかを決定するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記配偶子相がプローブ対を用いて決定される請求項1に記載の方法において、前記プローブが配偶子相を決定することによるハプロタイプの組合せにおいて、前記あいまいさを決めるように設計されることを特徴とする方法。
【請求項3】
段階的実行が、自分自身で抗原をコードしないが、抗原の発現(又は発現のサイレンシング)を制御する部位を決定するのに用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
将来のドナーとレシピエントが同じ抗原を発現する場合、前記将来のドナーは既知のレシピエントに適合するように分類され、あるいは前記ドナーは前記レシピエントが発現しないどんな抗原も発現せず、あるいはこれらの条件が満たされない事象においては、最大危険度の評点はしきい値以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
表現型の割当てにおける前記あいまいさを、適当なハプロタイプとして、レシピエント及びドナーの集団の中で最も頻繁に起こると推定されるものを選択することにより減ずることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
最も頻繁に起こると推定されるハプロタイプを、遺伝子係数によって、あるいは期待値最大化アルゴリズムの応用によって決定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
将来のドナー及びレシピエントそれぞれの集団における発生頻度を推定することにより、変性ハプロタイプの組合せを評価し、推定発生頻度がしきい値以下のハプロタイプを考慮から取り除くステップを更に具えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記最大危険度が、将来のドナーとレシピエント間に表現型のミスマッチがある各部位での割り当てた臨床上の危険値の製剤を決定することによって、割り当てられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
レシピエントと将来のドナーにおける対の表現型間の適合性のパターンが、適合性マトリクスで記録されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
集団における公知の発生頻度に基づいて、分解から生ずるあるハプロタイプが起こる尤度を決定するステップを更に具えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
不適合性の危険度を評価するために、前記決定した尤度をミスマッチの臨床上の有意性と組み合わせて用いることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
将来の血液製剤ドナーのレシピエントへの適合性の程度を、前記ドナーと前記レシピエントの輸血抗原遺伝子型の基礎として決定する方法であって、前記輸血抗原遺伝子型が、表現型を定義する特定の輸血抗原の発現に影響を与える指定された変異遺伝子座での対立遺伝子の組合せを具え:
− 前記輸血抗原遺伝子型を対応する表現型へ、前記遺伝子型をハプロタイプの組合せに分解し、遺伝形質の法則の下で前記抗原発現条件を決めることによってマッピングするステップと;
− マッピングにおけるあいまいさの事象において、遺伝子型を与えるが、異なる抗原発現状態を生成し、前記あいまいさを減じて解決する2又はそれ以上のハプロタイプの組合せによって示されるステップと;
− 将来のドナー及びレシピエントの輸血表現型(又は血液型)の適合性を決定するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
あいまいさを、しきい値以下の推定発生頻度を有するハプロタイプの組合せを除去することによって低減し、あるいは解決することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
マッピングにおけるあいまいさに関連する危険度評点を、少なくとも1のビット記号列が他のものと異なっている表現型で、異なるマッピング表現型を表す前記ビット記号列内のこのような位置を同定することにより取得する請求項12又は13に記載の方法であって、当該方法が、前記ドナー及びレシピエント表現型の中のこのような同定位置での、潜在的なミスマッチの抗原の、臨床上の有意性の程度を反映するミスマッチ評点の製剤を計算し、前記製剤が異なるマッピング表現型間のすべてのミスマッチの蓄積効果を表していることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記製剤が危険度のしきい値より大きい危険度を表す事象において、ハプロタイプとして、レシピエント及びドナーの集団の中でより頻繁に起こると推定されるものを選択することによって、前記あいまいさを減じ、前記選択したハプロタイプに対応する前記表現型によって表された部分的な適合性評点を再計算することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記製剤が危険度のしきい値より大きい危険度を表す事象において、前記あいまいさが配偶子相によって決定されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記配偶子相をプローブ対を用いて決定する請求項16に記載の方法において、前記配偶子相を決定することによって、前記プローブをハプロタイプの組合せにおける前記あいまいさを解決するように設計することを特徴とする方法。
【請求項18】
前記ハプロタイプが、存在するデータの目視検査又は遺伝子計数に基づいて、好ましくは期待値最大化アルゴリズムの応用によって選択されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ハプロタイプにマッピングされ、分解された前記ドナー及びレシピエントの表現型(及びそれらに対応する血液型)が、下記:
のようになることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項20】
集団における公知の発生頻度に基づいて、分解から生ずるあるハプロタイプが起こる尤度を決定するステップを更に具えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項21】
不適合性の危険度を評価するために、前記決定した尤度をミスマッチの臨床上の有意性と組み合わせて用いることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第1及び第2の遺伝子型の適合性を確立する方法であって、少数の血液型抗原の発現を制御する指定された変異遺伝子座を具える各遺伝子型において、各遺伝子座での前記遺伝子型が、標準、変異又はヘテロ接合として、プローブ対を有する各遺伝子座を標的にすることにより決定され、正の結果が標準を示す各対における一方のプローブによって生成され、正の結果が変異を示す前記対における他方のプローブによって生成され:
− 第1及び第2の遺伝子型を第1及び第2の表現型を定義する抗原のセットにマッピングするステップと;
− プリセットの交差試験判断基準の下で、第1及び第2の表現型の適合性を確立するステップと;
を具える方法において、前記第1及び第2の表現型の前記適合性が、前記交差試験判断基準の下で第1及び第2の遺伝子型の適合性を決定することを特徴とする方法。
【請求項23】
前記指定された変異遺伝子座が、少なくとも下記の表:
の中の前記型を具えることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記マッピングの下で、遺伝子型が独特に1の表現型へマッピングされ、従って第1及び第2の遺伝子型の同一性は、明確に適合性を示すことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記少数血液型遺伝子型がLU、JK、K、GPA又はGPBであることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第1及び第2の遺伝子型がそれぞれ候補の血液製剤ドナーとレシピエントのそれであり、前記交差試験判断基準が、候補ドナー及びレシピエントが前記同一の抗原を有している完全交差試験判断基準か、前記候補ドナーが前記レシピエントが有していないどの抗原も有していない交差試験判断基準かのいずれかであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
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【図25】
【図26】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−254079(P2012−254079A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−136990(P2012−136990)
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【分割の表示】特願2008−536865(P2008−536865)の分割
【原出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(503369358)バイオアレイ ソリューションズ リミテッド (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【分割の表示】特願2008−536865(P2008−536865)の分割
【原出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(503369358)バイオアレイ ソリューションズ リミテッド (14)
【Fターム(参考)】
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