血液循環補助装置
血液循環補助装置(1)は、血液導管(6)を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素(3)を有する。前記チャンバは一以上のカフ要素(3)の両端にて開放されていて血液導管(6)がそこを通って延在するように構成されている。血液導管(6)の周りに一以上のカフ要素(3)を設置するために前記チャンバの各末端間の一以上のカフ要素(3)の側面に開口部(22)が設けられている。一以上のカフ要素(3)は、血液導管(6)を圧迫するための2個の内方拡張型膨張性要素(4、5)を有する。膨張性要素(4、5)は前記チャンバを挟んで互いに正反対に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液循環補助装置と、カウンターパルセーション(特に拡張期カウンターパルセーション)を行う方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
機械的循環補助は、心不全の管理においてますます用いられるようになっている。特に、生来の心室と並行に設置される心室補助装置(VAD)は、心臓移植を待つ患者にとっては血行力学的補助となり(移植への橋渡し)1、また、自然な心筋機能の回復をもたらす(回復への橋渡し)2。ごく最近では、VADは心臓移植(destination therapy、永久使用)の代替手段として考えられている3。完全人工心臓4はVADに比べて広く用いられておらず、完全人工心臓の場合、生体心臓を除去する必要があるが、移植への橋渡しとして、また、永久使用(destination therapy)のために設計されている。VADや完全人工心臓は血液との接触を伴うため、血液凝固(血栓形成)の危険性を最小限に抑えるために患者に対し継続的に抗血液凝固処置を行うことが絶対的に必要である。
【0003】
大動脈内バルーンカウンターパルセーション(IABC)5は広く利用されている治療法であり、主に急性心不全の場合に用いられる。大動脈内バルーン(IAB)の挿入はVADに対して比較的非侵襲性であるが、患者は歩行不能である(non-ambulant)ことから、補助持続期間が通常数週間未満に制限され、また、IABカテーテルを挿入する動脈が閉塞し下肢虚血を招く危険性が高い6。VADや完全人工心臓と同様にIABカテーテルも血液と接触するため、患者は継続的に抗血液凝固処置を受ける必要がある。
【0004】
WO−A−02/24254には、高性能の電気液圧式エネルギー変換器を有する、歩行可能な患者における長期使用に適した新しい完全埋め込み型血管外(非血液接触)カウンターパルセータが開示されている。該エネルギー変換器はインペラを有するが、このインペラは流体を駆動するために軸を中心に回転し、インペラ自身の配置を変えるために軸方向に往復移動する。即ち、作動原理は次の通りである。心臓拡張期が始まると、前記エネルギー変換器によって作動流体が一体型(integral)体内貯留器(US−A−5,346,458に記載)から大動脈周囲(peri-aortic)ジャケット内に送り出され、これによって大動脈が圧迫され、血液が近位に(心臓に向かって)及び遠位に(心臓から離れて)移動する。これによって、拡張期血圧を上昇させる効果がもたらされ、臓器灌流(特に心筋の灌流)が向上し、拡張期に血液供給の大部分を受ける。拡張末期には、該エネルギー変換器が液圧式駆動流体を送り出す方向が迅速に反転し、その結果、大動脈周囲ジャケットが収縮して、拡張末期動脈血圧が低下する(前収縮期低下(the pre-systolic dip))。これによって、次の拍動の駆出期(収縮期)に心臓が行う必要のある仕事の量が減少する。
【0005】
この種のエネルギー変換器に伴う一問題は、インペラの往復軸方向移動により対応する反作用(reaction)がカウンターパルセータ装置の残部で生じることである。この反作用によって、カウンターパルセータ装置が大動脈に対して移動し、大動脈外傷を招くことが考えられる。
【0006】
また、WO−A−02/24254には、大動脈に直接連結された固体アクチュエータによって大動脈外カウンターパルセーションを実現する代替手段も開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最も重要な点は、大動脈周囲ジャケット内の大動脈が、大動脈の機械的不全(mechanical failure)や有害な組織改造を引き起こさずに長期間の度重なる変形に持ちこたえることができることである。更に、埋め込み型システムの構成が外傷を最小限に抑える外科的処置と両立し得ることが非常に望ましい。本発明は、このような要求の一以上を満たそうとするものであり、重要な観点において、本発明の各実施形態の性能は、現在入手し得る最も高性能なIABシステムの性能を上回ることが判明した(図19参照)。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はその一様相において、血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素(cuff elements)を有する血液循環補助装置であって、前記チャンバは前記一以上のカフ要素の両端にて開放されていて血液導管がそこを通って延在するように構成されており、前記一以上のカフ要素は、血液導管を圧迫するための少なくとも1個の内方拡張型膨張性要素(inwardly expanding inflatable element)を有する、血液循環補助装置を提供する。
【0009】
血液導管の周りに前記一以上のカフ要素を設置するために、前記チャンバの各末端間の前記一以上のカフ要素の一側に開口部が設けられているのが好都合である。
【0010】
幾つかの実施形態においては、1個の膨張性要素が設けられている。
【0011】
少なくとも2個又は正確に2個の内方拡張型膨張性要素が設けられているのが好ましい。幾つかの実施形態においては、1組(例えば、2個)の膨張性要素が連動して、実際には単一の膨張性要素として作動する。本明細書において、「膨張性要素」は連動して作動する1組の膨張性要素を包含する。
【0012】
前記膨張性要素は前記チャンバを挟んで互いに正反対に配置されているのが有利である。
【0013】
本明細書において、「正反対に」や「全く反対に」とは、前記膨張性要素の膨張時に互いに最も接近し得る該要素の先端を考えた場合、各先端におけるそれぞれの法線間の角度が少なくとも135°、好ましくは160°、より好ましくは170°、より好ましくは175°、最も好ましくは180°であることを意味する。
【0014】
2個のカフ要素が前記チャンバを形成し、前記開口部は前記2個のカフ要素間に設けられているのが好都合である。
【0015】
前記2個のカフ要素、前記膨張性要素、及びそれらによって形成される前記チャンバは長尺であり、前記チャンバはその内部で長手方向に血液導管を収容することができるように構成されていると共に、前記カフ要素及び前記膨張性要素は血液導管に対して平行であるのが好ましい。
【0016】
血液循環補助装置は、前記2個の内方拡張型膨張性要素に通じる入口を更に有するのが有利である。
【0017】
前記入口は、各膨張性要素の長手方向軸に沿って該要素の中央に通じるのが好都合である。
【0018】
或いは、前記入口は、各膨張性要素の一端に通じる。
【0019】
或いは、前記入口は、各膨張性要素の両端に通じる。
【0020】
或いは、前記入口は、各膨張性要素の全長に沿って該要素の側面に通じる。
【0021】
前記入口は、前記膨張性要素の長手方向軸に対して実質的に平行であるのが好ましい。
【0022】
或いは、前記入口は、前記膨張性要素の長手方向軸に対して鋭角を成す。
【0023】
或いは、前記入口は、各膨張性要素の長手方向軸の中央と末端との間のある点において該要素の側面に通じる。
【0024】
前記2個の膨張性要素は同時に膨張可能であるのが好都合である。
【0025】
前記血液循環補助装置は、前記膨張性要素に通じるマニホールドを更に有し、各膨張性要素に通じるマニホールドの断面は異なっているのが好ましい。
【0026】
前記2個の膨張性要素の最大拡張時に、前記チャンバに収容されている血液導管の相対する側面が互いに接触しないのが有利である。
【0027】
前記膨張性要素の最大拡張時に、前記チャンバに収容されている血液導管の最小横断面曲率が最大になるのが好都合であり、最小横断面曲率半径が元の値の少なくとも30%となり、例えば、元の値の少なくとも36.3%又は正確に36.3%となるのが好ましい。最小横断面曲率半径が元の値の少なくとも40.4%又は正確に40.4%であることが特に好ましい。
【0028】
前記2個の膨張性要素の最大拡張時における、前記チャンバに収容されている血液導管の内腔断面積の減少は元の値の50%を超える率であるのが好ましく、元の値の51.5%を超える率であるのがより好ましい。
【0029】
圧迫時の血管の内腔隙間が安静時直径の少なくとも10%であることが好ましく、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%である。この点においては、当然のことながら、血管の圧迫時に内腔隙間が当初合わせた際の20%となるように血液循環補助装置を設定することができるが、膨張性要素は若干伸びるため、内腔隙間が経時的に例えば15%又は10%に変化することもある。
【0030】
前記膨張性要素は弾性変形に耐える材料から成るのが有利である。
【0031】
前記膨張性要素の両端は丸みを帯びているのが好都合である。
【0032】
前記膨張性要素の両端は、前記チャンバに収容されている血液導管の軸に沿って、前記一以上のカフ要素から長手方向に突出しているのが好ましい。
【0033】
前記血液循環補助装置は、前記膨張性要素と流体連通するポンプを更に有するのが有利である。
【0034】
前記ポンプから前記膨張性要素への流体路は断面積が増加するのが好都合である。
【0035】
前記ポンプと前記膨張性要素との間を連絡する流体は粘度が8×10-4〜1.2×10-3Pa.s(0.8〜1.2cP)であるのが好ましく、1×10-3Pa.s(1.0cP)であるのがより好ましい。
【0036】
前記ポンプと前記膨張性要素との間を連絡する流体はフッ化炭素であるのが有利である。
【0037】
前記ポンプと前記膨張性要素との間を流体連通させるためにそれらの間に設けた連結部は可撓性であるのが好都合である。
【0038】
前記可撓性連結部は、通路が内部に延在するボールを有し、ソケットの両端に回転可能に接続されているジョイントから成るのが好ましい。
【0039】
前記可撓性連結部は可撓性を得るために蛇腹状(concertinaed)であるのが有利である。
【0040】
前記可撓性連結部は特定の配置にロック可能であるのが好都合である。
【0041】
前記ポンプは前記一以上のカフ要素に隣接しており、前記開口部は前記チャンバの該カフとは反対側に設けられているのが好ましい。
【0042】
前記ポンプは前記一以上のカフ要素に隣接しており、前記開口部は前記チャンバ上、前記ポンプに対して90°の位置に設けられているのが有利である。
【0043】
前記ポンプは、軸を中心に回転してポンプ作用をもたらすことができるインペラを有し、前記インペラは、軸方向に第1の位置から第2の位置まで移動してポンプ作用の方向を逆にすることができるのが好都合である。
【0044】
前記血液循環補助装置は平衡錘(counterbalance)を更に有し、前記平衡錘は、前記インペラと同期して前記インペラの軸方向移動とは反対方向に移動して前記インペラの移動の反作用に拮抗することができるのが好ましい。
【0045】
前記平衡錘は前記インペラと平行に移動可能であるのが有利である。
【0046】
前記平衡錘は第2の回転可能なインペラを有し、両方のインペラが軸を中心に回転してポンプ作用をもたらすことができるのが好都合である。
【0047】
前記血液循環補助装置は、前記インペラが第1の位置又は第2の位置にあることを検出することが可能なセンサと、前記膨張性要素の膨張を引き起こす位置に前記インペラがロックされたことを前記センサが検出するのに応じて前記インペラをシャットダウンするための制御メカニズムとを更に有するのが好ましい。
【0048】
前記ポンプは、回転可能なインペラと、流体を吸引するための流入口と、流体を排出するための流出口と、前記回転可能なインペラと前記膨張性要素との間に設けられたバルブアセンブリとを有し、前記バルブアセンブリは、前記流入口が前記膨張性要素と流体連通する第1の位置から前記流出口が前記膨張性要素と流体連通する第2の位置まで摺動可能又は回転可能であり、前記バルブアセンブリが第1の位置と第2の位置との間を移動することによって前記膨張性要素はそれぞれ収縮及び膨張するように構成されているのが有利である。
【0049】
前記ポンプは胸腔内に設置可能であるのが好都合である。
【0050】
或いは、前記ポンプは腹膜前腔(pre-peritoneal)又は腹腔内に設置可能であり、液圧チューブを介して前記膨張性要素に接続されている。腹膜前腔は外科医によって形成され得る。
【0051】
或いは、前記ポンプは体外に設置可能である。
【0052】
前記ポンプと前記膨張性要素との間にフローガイドが設けられているのが有利である。前記フローガイドはベーン、スイベル及び/又はデスワーラ(deswirlers)であるのが好ましい。前記フローガイドは、望ましくない二次的流動挙動を最小限に抑えるか、又は望ましい二次的流動特性をもたらすのが好ましい。
【0053】
前記血液循環補助装置は、前記一以上のカフ要素の外周に設けられたスリーブを更に有するのが好ましい。
【0054】
前記血液循環補助装置は、前記一以上のカフ要素の周りに少なくとも1個のバンドを更に有するのが有利である。
【0055】
一以上のカフ要素は、前記チャンバのサイズを増加又は減少させるように移動可能であるのが好都合である。
【0056】
ロック可能なヒンジで接続された二以上のカフ要素が設けられているのが好ましい。
前記血液循環補助装置は、前記膨張性要素と前記チャンバとの間に設置された内スリーブを更に有するのが有利である。
【0057】
前記血液循環補助装置は、該装置自身を構造物に取り付けるための一以上の小穴を更に有するのが好都合である。
【0058】
前記膨張性要素は長さが3〜15cmであるのが好ましく、5〜9cmであるのがより好ましい。
【0059】
前記膨張性要素は、該装置を装着した患者の各心周期において1回膨張可能であるのが有利である。
【0060】
前記膨張性要素は、該装置を装着した患者の各心周期の拡張期、又はそれより低い頻度(例えば、一心周期置き(alternative cardiac cycles))で膨張可能であるのが好都合である。
【0061】
該装置はヒトの左傍脊椎溝(left paravertebral gutter)内に設置可能であるのが好ましい。
【0062】
前記血液循環補助装置は、個体の心拍を検出するための一又は複数の一体型ECG電極を更に有するのが有利である。
【0063】
前記血液循環補助装置は、個体の心拍を検出するための位置センサ、圧力センサ又は加速度計を更に有するのが好都合である。
【0064】
本発明はその更なる様相において、血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素を有する血液循環補助装置であって、前記一以上のカフ要素は、前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための内方拡張型膨張性要素を有し、該膨張性要素は、その最大拡張時に前記チャンバに収容された血液導管の最小横断面曲率半径が最大になるように拡張可能である血液循環補助装置を提供する。
【0065】
前記血液導管の最小横断面曲率半径は元の値の少なくとも30%であるのが好都合であり、少なくとも36.3%又は正確に36.3%であるのが好ましく、少なくとも40.4%又は正確に40.4%であるのがより好ましい。
【0066】
前記膨張性要素の最大拡張時に、前記血液導管の内腔断面積の減少は元の値の50%超までであるのが好ましく、51.5%超までであるのが好ましい。
【0067】
圧迫時の血管の内腔隙間が安静時直径の少なくとも10%であるのが有利であり、少なくとも15%であるのが好ましく、少なくとも20%であるのがより好ましい。
【0068】
本発明はその別の様相において、血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素と、ポンプとを有する血液循環補助装置であって、前記一以上のカフ要素は、前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための内方拡張型膨張性要素を有し、前記ポンプは、回転可能なインペラと、流体を吸引するための流入口と、流体を排出するための流出口と、前記回転可能なインペラと前記膨張性要素との間に設けられたバルブアセンブリとを有し、前記バルブアセンブリは、前記流入口が前記膨張性要素と流体連通する第1の位置から前記流出口が前記膨張性要素と連通する第2の位置まで摺動可能又は回転可能であり、前記バルブアセンブリが第1の位置と第2の位置との間を移動することによって前記膨張性要素はそれぞれ収縮及び膨張するように構成されている血液循環補助装置を提供する。
【0069】
本発明はその更に他の様相において、血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素と、ポンプとを有する血液循環補助装置であって、前記一以上のカフ要素は、前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための内方拡張型膨張性要素を有し、前記ポンプは、該膨張性要素と流体連通し、軸を中心に回転してポンプ作用をもたらすことができるインペラを有しており、前記インペラは、軸方向に第1の位置から第2の位置まで移動してポンプ作用の方向を逆にすることができ、更に平衡錘が設けられており、前記平衡錘は、前記インペラと同期して前記インペラの軸方向移動とは反対方向に移動して前記インペラの移動の反作用に拮抗することができる血液循環補助装置を提供する。
【0070】
前記血液循環補助装置は、前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための第2の内方拡張型膨張性要素を更に有するのが好都合である。
【0071】
本発明はその更なる様相において、血管のカウンターパルセーションを行う方法であって、血管の一部の各末端において前記血管の内腔に環状ステントを導入することと、前記血管の一部の各末端において前記血管の周りに外部バンドを設け、前記血管の一部分が各外部バンドとそれぞれの環状ステントとの間にトラップされるようにすることと、2個の環状ステント間で前記血管にカウンターパルセーションを行うこととを含む方法を提供する。
【0072】
上述の血液循環補助装置を用いて血液導管の圧迫を行うのが好ましい。
【0073】
各環状ステントは、それぞれの外部バンドを収容するための円周溝を該ステントの外表面に有するのが有利である。
【0074】
本明細書において、「有し(comprising)」とは「含み」や「〜から成り」を意味し、「有する(comprises)」とは「含む」や「〜から成る」を意味する。
【0075】
本明細書において、「血液導管」とは、生来の血管、合成血管や人工血管、又は血液を運搬するための他の管状構造物を意味する。
【0076】
大動脈外傷の危険性を最小限に抑えるため、本発明の実施形態を設計するに当っては、次のことを考慮した。
【0077】
1.大動脈内皮の対側接触(即ち、相対する側面の接触)は内皮の剥離やアテローム生成に関与することが判明したため、大動脈が十分に圧迫される際の対側接触を防止する。
【0078】
2.大動脈壁応力を最小限に抑えるため、圧迫時の大動脈の最大横断面曲率を最小限に抑える(即ち、最小横断面曲率半径を最大にする)(図2)。
【0079】
3.大動脈周囲ジャケットの両端における大動脈の長手方向断面の急激な変化を回避して、該ジャケットの両端における応力集中を最小限に抑える(図3)。
【0080】
4.変形時の大動脈の形態を確実に予測できるようにする(即ち、大動脈壁の湾曲(creasing)とそれに伴う壁応力集中とを回避する)。
【0081】
5.大動脈に対する大動脈周囲ジャケットの相対移動を最小限に抑えて大動脈の糜爛を回避する。
【0082】
6.圧迫期及び解放期にカウンターパルセータの作動によって誘導される大動脈への横断反作用(transverse reaction)を最小限に抑える。
【0083】
本発明がより容易に理解され、また、本発明の更なる特徴が理解されるように、次の添付図面を参照しつつ、一例として本発明の実施形態について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0084】
図1に示すように、血液循環補助装置1は、中空の大動脈周囲(peri-aortic)ジャケット又はカフ3に接続されたポンプ又はエネルギー変換器2を有する。大動脈周囲カフ3は剛性又は半剛性であり、その内部に実質的に円筒状のチャンバを形成するように湾曲している。大動脈周囲カフ3の内表面に接触して、2個の長尺の膨張性要素4、5が設けられており、これらは大動脈周囲カフ3によって、チャンバを挟んで互いに正反対の所定位置に保持されている。チャンバのサイズ及び形状は下行大動脈6を(優先的に)収容するように構成されており(但し、他の実施形態においては、チャンバのサイズ及び形状は上行大動脈を収容するように構成されている)、膨張性要素4、5は下行大動脈6と平行し、且つ大動脈6に対して反対側に位置している。チャンバの各末端は、大動脈6がそこを通って延在するように開放されている。大動脈周囲カフ又はジャケット3にはスリット(又は開口部)22が設けられているが、これは2個の膨張性要素間からチャンバ内に通じていると共に、チャンバの一端から他端へ延在しており、大動脈周囲カフ3が大動脈6上を大動脈6の長手方向軸に垂直な方向に摺動できるように構成されている。これによって、大動脈6の切断(即ち、外科的分断)を要せずに装置1を設置することができる。
【0085】
膨張性要素4、5は、通常の低コンプライアンスのマニホールド7内に含まれる液圧駆動媒体で満たされており、前記ポンプ又はエネルギー変換器と流体連通している。
【0086】
前記ポンプと膨張性要素4、5との間の作動流体の流路は、実施可能な限り、断面変化による流動抵抗を最小限に抑えると共に、液圧式駆動流体の望ましくない二次的流動特性(例えば、膨張性要素4、5における流体の充填及び排出に支障を来し得る急激な断面変化に伴う反対回転)を最小限に抑えることによって、膨張性要素4、5における流体の充填及び排出を迅速に行うことができるように設計されている。しかし、二次的流動特性は必ずしも弊害をもたらすだけではなく、実際には、例えば、液圧流体路内での同時二方向流動を回避するよう流体を混合させるためのフローガイドを設けて、該流動特性を増強することが望ましい場合もある。
【0087】
液圧駆動媒体がエネルギー変換器2からマニホールド7へ流入すると膨張性要素4、5が膨張する。膨張性要素4、5の外表面が大動脈周囲カフ3によって圧迫されると、膨張性要素4、5の内表面が共に動いてジャケット3内で大動脈を圧迫する。大動脈周囲ジャケット3の長さは好ましくは3〜15cmの範囲内である。
【0088】
インビトロ実験や動物実験によって、比較的短い大動脈周囲ジャケット(5cm)を用いた場合に大動脈内バルーンに比べて前収縮期動脈圧低下が顕著であることが判明した(図19参照)。カウンターパルセーション装置によって前収縮期圧が低下する度合いは、特に心不全の場合において臨床的有効性を決める上で非常に重要である。
【0089】
大動脈を圧迫する際には次の二種類の状態、即ち、i)内皮対側表面間の接触と、ii)大動脈内皮の過剰に高い屈曲とを回避しなければならない。これら両方の状態によって、内皮の損傷や剥離(denudation)、即ち、アテローム生成的と考えられるプロセスが生じる。本発明者らの実験的研究から、好ましい実施形態においては、2個の膨張性要素4、5のサイズ及び位置を選択することによって、(同じ血行力学的利益を引き出すためにより多くの膨張性要素を有するシステムと比べて)最大横断面大動脈曲率が比較的低くても大動脈が確実に変形することが分かった。本発明者らの動物実験によって、2個の膨張性要素を有する大動脈周囲ジャケットを大動脈に配置することは比較的簡単であることが分かった。
【0090】
2個の膨張性要素4、5を設ける実施形態においては、大動脈6上での潜在的に有害な反作用を回避するためには2個の要素が同時に膨張することが重要である。このような同時膨張は、個々の膨張性要素を提供するマニホールド分枝の微分断面積(differential cross section)を設計することによって実現することができる。膨張性要素が十分に膨張すると、図2及び3に示すように膨張性要素の内表面間にギャップが生じる。このギャップは、大動脈内皮の剥離(即ち、高アテローム生成的プロセス)の危険性を最小限に抑えるために大動脈内皮の対側接触を防止するには十分大きい。このギャップは、所定の作動条件下で大幅な弾性変形を受けない膨張性要素を用いるか、或いは、該システム内で液圧流体の量を制限することによって保持される。
【0091】
本発明者らの実験(実施例2参照)によって、膨張性要素の最適な数は2であることが分かった。
【0092】
大動脈周囲カフ又はジャケット3と組合わせた膨張性要素4、5は、比較的低コンプライアンスであるため膨張時に大幅な弾性変形を受けず、機械的疲労寿命を最大にできる。とはいえ、上述の十分な内腔間隙に適応(accommodated)されて膨張/収縮サイクルが反復されることにより、膨張性要素には低程度のクリープの発生が予想される。材料と壁厚を適切に選択することによって許容し得る機械的疲労寿命が得られる。膨張性要素を強化ポリマー又は充填ポリマーから形成することによって該要素の適切な物理的特性を得ることができるであろう。用いる駆動流体は、膨張性要素膜の物理的特性の時間に対する好ましくない変化とは関連しない。潜在的に好適な駆動流体としては、粘度が0.8cP〜1.2cP、好ましくは1.0cP(8×10-4Pa.s〜1.2×10-3Pa.s、好ましくは1×10-3Pa.s)の水性液体及び非水液体が挙げられる。幾つかの実施形態においては、駆動媒体はフッ化炭素である。
【0093】
大動脈損傷の危険性を更に低下させるためには、膨張性要素4、5の両末端を丸みを帯びた形状とし、該末端が剛性大動脈周囲カフ又はジャケット3から長手方向に若干突出するようにして、大動脈周囲ジャケットの両端における大動脈断面の急激な変化を回避するようにする(図1及び3参照)。
【0094】
本発明者らのインビトロ実験によって、大動脈6の長手方向軸に平行に設けられた2個の長尺の膨張性要素4、5を用いた場合、円周カフ(circumferential cuff)(該カフの場合、通常顕著な大動脈の折り曲げ(creasing)や局所的な応力集中を伴うことが本発明者らの研究によって示された)と比べて、大動脈の変形特性が一層予測可能になることが分かった。従って、好ましい実施形態は、大動脈の耐久性については、横断円周(transverse, circumferential)大動脈周囲カフよりも本質的に長期カウンターパルセーションに適している。
【0095】
エネルギー変換器とカフの相対位置
大動脈周囲カフ3とエネルギー変換器2との距離を確実に最小化することによって数々の利点が得られる。
i)装置全体のサイズが減少することによって、埋め込み時の外科的外傷が減少する。
ii)液圧流体路内の「デッドスペース」及び流動抵抗がいずれも最小限に抑えられる。これは、非常に動的なプロセスである拡張期カウンターパルセーションのコンテクストにおいて特に重要である。液圧流体の流動抵抗及び時間に対する流量の変化率(dQ/dt)はいずれも、大きなデッドスペースの慣性効果(inertial effects)によって悪影響を受ける。
【0096】
好ましい実施形態においては、エネルギー変換器2と大動脈周囲ジャケット3との距離を最小限に抑えることによって、流体のデッドスペースを最小限に抑える。血液循環補助装置の特に好ましい実施形態を図4、即ち、膨張性要素4、5と流体連通しているインペラ口(impeller ports)8のレベルにおける横断面図に示す。この図から分かるように、過度の流動抵抗や流動抵抗の変化を回避するために液圧流体路の断面は均一ではない。
【0097】
本発明の一実施形態においては、液圧流体路内にフローガイドを導入して、流動抵抗、延いてはdQ/dtに悪影響を及ぼし得る望ましくない二次的流動挙動を最小限に抑える。望ましくない二次的流動の一例としては、断面が急激に変化した場合に生じ得る逆回転(counter-rotation)特性が挙げられる。逆に、一実施形態においては、フローガイドを設けて望ましい二次的流動特性をもたらす。例えば、混合を促進して同時二方向流動を抑制するガイドによって、装置の性能特性(dQ/dt)を向上させることができる。フローガイドは、流体路内でベーン、スワーラ(swirlers)又はデスワーラ(deswirlers)の形状をとる。
【0098】
一実施形態においては、図示したエネルギー変換器2及び大動脈周囲カフ3のサイズと形状は左胸膜腔に合うようにする。血液循環補助装置の設計に当っては、外科医によって、該カフの大動脈周囲への設置後、該装置が左傍脊椎溝(left paravertebral gutter)内に設置されるようする。このアプローチの実現可能性は、図5に示すように、コンピュータ断層撮影(CT)による正常なヒトの左胸膜腔境界線(下行大動脈の境界線を含む)内で好ましい実施形態の境界線を重ね合わせるコンピュータベースの適合研究(fitting studies)によって確認した。
【0099】
ポンプ又はエネルギー変換器2と膨張性要素4、5との流体接続は実施形態によってそれぞれ異なる。
【0100】
図6に示す実施形態においては、マニホールド7によってポンプ2が膨張性要素4、5とその長手方向軸の中央で接続されている。マニホールド7は、膨張性要素4、5の長手方向軸に対して垂直である。
【0101】
図7に示す実施形態においてマニホールド7は、膨張性要素4、5と、これら要素の一方の端である9、10において接続されている。マニホールド7の方向は長尺の膨張性要素4、5とは鋭角を成しており、流体がポンプから膨張性要素4、5へ、又はその逆方向に移動する際に流体がマニホールド7の奥の壁(far wall)11から反射して戻ってくる(reflected back)ように構成されている。
【0102】
図8に示す実施形態において、入口7は、膨張性要素4、5の中央において、その長手方向軸に沿い且つ該軸に対して垂直に位置している。マニホールド7は第1及び第2のダクト12、13に分岐している。第1のダクトによってマニホールド7は膨張性要素4、5のそれぞれの第1の端9、10に接続されており、また、第2のダクト13によってマニホールド7は膨張性要素4、5のそれぞれの第2の端13、14に接続されている。こうして、ポンプ2は膨張性要素4、5の各々の両端と流体連通している。
【0103】
図9に示す実施形態においては、上述の実施形態と同様に、マニホールド7は膨張性要素4、5の長手方向軸の中央において該軸に対して垂直に位置している。しかし、この実施形態において、マニホールド7は長尺の膨張性要素4、5の全長に沿ってその両側に接続されている。
【0104】
図10に示す実施形態においては、図7に示す実施形態と同様に、マニホールド7は膨張性要素4、5のそれぞれの第1の端9、10に設けられている。しかし、この実施形態において、マニホールド7は膨張性要素4、5の長手方向軸に対して実質的に平行であるがオフセットになっており、マニホールド7の主要部分と膨張性要素4、5のそれぞれの第1の端9、10との間にマニホールド7の「ドッグレッグ」部15が存在している。
【0105】
図6〜11に示す実施形態の各々において、マニホールド7は2個の膨張性要素4、5から等距離に設置されている。しかし、図11に示す実施形態において、マニホールド7は膨張性要素4、5の長手方向軸の中央と膨張性要素4、5のそれぞれの第1の端9、10との間に設置されている。マニホールド7は膨張性要素4、5の長手方向軸に対して実質的に垂直である。
【0106】
患者間のわずかな解剖学的差異に対応するため、幾つかの実施形態においては、エネルギー変換器2と大動脈周囲カフ3との間に自在継手(universal coupling)を設けて、該カフのずれを確実に回避している。このようなずれは、次の二理由、即ち、カウンターパルセーションの有効性が低下する場合があること、そして、局所的な大動脈壁応力の増大によって大動脈外傷の危険性が増加する場合があることから望ましくない。
【0107】
図12及び13に示すように、自在継手16は「ボールとダブルソケット」接合を有する。より詳細には、自在継手16は、穴20を内部に有するボール19によって接続された第1及び第2の略円筒状部分17、18を有する。第1及び第2の部分17、18は相対移動が可能なように各々、ボール19に対して旋回可能となっている。穴20によって第1の部分17と第2の部分18とは流体連通している。
【0108】
図14及び15に示す本発明の他の実施形態においては、自在継手16は第1及び第2の略円筒状部分17、18を有し、第1及び第2の略円筒状部分17、18は、これらが相対移動可能なように十分可撓な蛇腹状部分(concertinaed section)21によって接続されている。
【0109】
幾つかの実施形態においては、例えば、エネルギー変換器2に対するカフ3の位置調整が一面内でしかできないようなキー溝(key-ways)を用いて、図12〜15に示す自在継手の移動を制限する。
【0110】
このような自在継手によって体積が変化するとカフにおける流体の充填や排出の遅延によって装置の有効性が低下するため、自在継手のコンプライアンスは低い必要がある。好ましい実施形態の一変形例(variant)においては、埋め込み時に外科医が調整した上で、患者の組織に最も適した方法で自在継手を特定の配置で堅くロックすることができる。幾つかの実施形態においては、外科医が埋め込み処置時にねじ付き圧縮リングやグラブねじをしっかりと締めることによって自在継手をロックし、埋め込んだ装置を適切な配置に保持する。
【0111】
好ましい実施形態においては、ポンプ2を大動脈周囲カフ3と平行に隣接するように設置する。幾つかの実施形態においては、図16に示すように、ポンプ2と大動脈周囲カフ3とによって形成される面の一側にスリット22を設ける。即ち、スリット22は後内方に(postero-medially)向けられる。他の実施形態においては、図17に示すように、大動脈周囲カフ3のポンプ2から遠方側にスリット22を設ける。即ち、スリット22は前内方に(antero-medially)向けられる。
【0112】
エネルギー変換器−大動脈周囲カフアセンブリの安定化
カウンターパルセーションの有効性を最大限にし、且つ大動脈外傷の危険性を最小限に抑えようとする場合、大動脈6に対する大動脈周囲カフ3の位置安定性は最も重要である。本発明の実施形態の重要な利点は、大動脈周囲ジャケット3内のスリット22によって、大動脈の外科的分断や心肺バイパスを必要とせずに迅速に大動脈周囲ジャケットを大動脈6に設置できることである。しかし、大動脈6に大動脈周囲ジャケット3を設置した場合、その後、該ジャケット3がずれないことが重要である。このようなずれを防止するため、幾つかの実施形態においては、装置1を大動脈6に対して固定する。
【0113】
幾つかの実施形態においては、大動脈6に大動脈周囲ジャケット3を設置した後、ポリエステル織布やDacron(登録商標)、PTFE等の強合成繊維から成る低伸張性の不活性スリーブを該ジャケットの外周に設ける。外科医によってこのような材料から成るシートはスリーブ形状に縫合される。また、幾つかの実施形態においては、このようなスリーブを予め形成しておいて、外科医が大動脈6の両端に該スリーブを縫合する。
【0114】
更なる実施形態においては、引張強度の高いラチェットプラスチックバンド(例えば、ナイロンや他の材料から成るバンド)を大動脈周囲ジャケット3の外側に設ける。このような実施形態の変形例においては、該バンドの外周を変化させるために調整可能なバックルをバンドに設ける。他の変形例においては、このようなバンドは織材料から成っており、外科医によって縫合することができる。幾つかの実施形態においては、不活性スリーブとプラスチックバンドの両方を設ける。
【0115】
大動脈直径の変化への適応(Accommodation)
下行大動脈に血液循環補助装置を設置するために優先的にサイズ及び形状を調節する本発明の実施形態の重要な利点は、上行大動脈に比べて、下行大動脈では直径の変化が小さいため該装置の有効性が予測可能であることである。しかし、大動脈の直径とは関係無く、該装置が大動脈に効果的に連結できることは重要である。一実施形態においては、スリット22の両側に当接している大動脈周囲カフ3の外縁は半剛性であり、通常の条件下では若干広がっている(splayed)。こうして、安静時(即ち、該装置のスイッチを入れる前)に該カフ3にかかる円周張力(circumferential tension)が弱くなるように該カフを適切に形成することによって、外科医が2個の膨張性要素4、5を所望の程度に近づけることができる。大動脈の直径は手術前又は手術時に撮像によって測定することができるため、大動脈周囲ジャケット3の直径を不連続に増大するよう調節できれば、大動脈内皮の対側接触を回避しながら大動脈の最適な圧縮を確実にする手段が存在することになる。
【0116】
このような利益は他の実施形態、即ち、大動脈周囲カフ3が1個又は2個のヒンジ顎部(hinged jaws)を有し、該顎部に膨張性要素4、5が設置されており、該顎部を大動脈6のサイズに適した直径にロックすることができる実施形態において得ることができる。
【0117】
大動脈の強化
本発明の装置を埋め込む外科医は、大動脈外膜(最外層)と膨張性要素4、5とが直接に接触しないことを望んでいると考えられる。これを実現するためには、ポリエステル織布(Dacron(登録商標))スリーブやPTFEスリーブ、組織工学的構築物(tissue engineered construct)、又は動員肋間筋や他の自己組織(心膜等)を膨張性要素4、5と大動脈6を収容するチャンバとの間に設ける。調節可能な大動脈周囲ジャケット3によって、埋め込み処置におけるこのような組込みが可能となる。
【0118】
ある状況下では、装置1によって大動脈の解離及び/又は剥離が生じ得る危険性が高いと考えられる場合、該解離/剥離の伝播を防止するため、2個の環状ステントを大動脈周囲ジャケットの両端において大動脈6の内腔に導入する。大動脈6内の各環状ステントが存在する位置において、外部結紮(External banding)を大動脈6の周囲に施す。こうして、大動脈6は内側のステントと外側の外部バンドとの間に挟まれる。これによって大動脈解離の伝播を防止する。
【0119】
好ましい実施形態においては、各環状ステントにはその縁に沿って円周溝を設けて外部バンドを適用する際に大動脈6を収容するようにし、大動脈6を該溝内に押し込む。これによって、ステントと外部バンドが適所に保持されるよう補助する。
【0120】
エネルギー変換器の安定化
幾つかの実施形態においては、エネルギー変換器2の外表面上に小穴を設け、胸腔(例えば、脊椎や肋骨、肋間筋、軟骨)内で血液循環補助装置が剛性構造物又は半剛性構造物に縫合、有線結着又は螺設できるようして該変換器を安定化させる。
【0121】
エネルギー変換器の変形例
本発明の血液循環補助装置の作動時においては、大動脈外傷を最小限に抑えることが好ましい。ポンプ3がインペラを有し、このインペラが軸を中心に回転し、軸方向に移動して逆ポンプ作用(reversal of pumping)をもたらす実施形態(WO−A−02/24254に詳述)においては、該装置作動時の大動脈6への反力を回避する特徴が得られることが好ましい。エネルギー変換器2の場合、通常の作動時にインペラアセンブリが二方向軸並進することによる軸反作用(axial reactions)は小さい。この反作用は大動脈6に伝達され得るが、インペラアセンブリの質量はエネルギー変換器/カフアセンブリ2、3の残部に対して小さいため、この作用は臨床上重要ではなさそうであると考えられる。しかし、この反作用が大動脈6や他の器官に望ましくない影響を及ぼし得ることが考えられる。従って、一実施形態においては、エネルギー変換器2は2個のインペラアセンブリを有し、該アセンブリは同時に互いに近づく方向又は離れる方向に動き、軸反作用を排除する。
【0122】
他の変形例においては、インペラアセンブリの軸方向運動に伴う反作用は、等価質量(an equivalent mass)の反対方向への同時電磁駆動運動によって除去する。当然のことながら、等価質量の運動の方向は、該運動が反対方向の成分を有していれば正確に反対方向である必要はない。
【0123】
このような問題に対する解決策としては、線形並進(linear translation)しない回転インペラから構成され、軸方向往復バルブアセンブリ又は回転バルブアセンブリによって流体の流動方向が変化するエネルギー変換器が挙げられる。
【0124】
図22及び23を参照しつつ、軸方向往復バルブアセンブリを有するエネルギー変換器の実施形態について説明する。
【0125】
エネルギー変換器24は、図1に示すようなカフ(図示せず)に通じる第1の円筒状連結部26と、流体貯留器(図示せず)に通じる第2の円筒状連結部27とを有する略管状のハウジング25から成る。該管状ハウジングは両端がシールされている。管状ハウジング25の内部には、第1の円筒状連結部26と位置合わせされた第1の開口部29を有する軸方向に摺動可能な管状バルブアセンブリ28が設けられている。第1の開口部29とは半径方向に対向して、第2及び第3の開口部30、31が管状バルブアセンブリ28に設けられている。第2及び第3の開口部30、31は軸方向に沿って並べられているが、管状バルブアセンブリ28が軸方向に移動する際、第2及び第3の開口部30、31の両方ではなくいずれか一方が(即ち、少なくともそれら両方の全幅に亘らないように)第2の円筒状連結部27と位置合わせされるように該開口部30、31は互いに離れている。
【0126】
管状バルブアセンブリ28内には、管状マニホールド32が管状バルブアセンブリ28及び管状ハウジング25に対して同軸上に設けられている。マニホールド32によって実質的に円筒状の内部33が形成されている。マニホールド32の一側には収縮入口34及び膨張出口35が設けられており、これらは両方とも第1の円筒状連結部26と位置合わせされている。管状バルブアセンブリの第1の開口部29のサイズと設置場所は、該開口部が収縮入口34及び膨張出口35の両方ではなくいずれか一方と位置合わせできるように(即ち、少なくともそれら両方の全幅に亘らないように)決められている。
【0127】
マニホールド33の反対側には、第2の円筒状連結部27と位置合わせされた膨張入口36及び収縮出口37が設けられている。第2及び第3の開口部30、31のサイズ及び設置場所は、第1の開口部29が収縮入口34と位置合わせされる場合には、第3の開口部31が収縮出口37と位置合わせされ、膨張入口36がバルブアセンブリ28によってブロックされるように決められる。一方、第1の開口部29が膨張出口35と位置合わせされる場合には、第2の開口部30が膨張入口36と位置合わせされ、管状バルブアセンブリ28が収縮出口37をブロックする。
【0128】
駆動流体は、前記カフ、エネルギー変換器24及び流体貯留器によって形成されるエンクロージャに提供される。
【0129】
円筒状の内部33には遠心インペラ38が設けられており、インペラ38は駆動流体を軸方向入口39に吸引し、該流体をインペラ38の縁40にて排出する。インペラ38の縁40は、一側において収縮出口37と、他側において膨張出口35と位置合わせされている。
【0130】
使用する際、カフのブラダは収縮しており、管状バルブアセンブリは図22に示す第1の位置にある。この位置においては、矢印41で示すように、インペラ38によって駆動流体が第1の円筒状連結部26、第1の開口部29及び収縮入口34を経由して軸方向入口39からインペラ38内に吸引され、該流体はインペラ38の縁40から収縮出口37、第3の開口部31及び第2の円筒状連結部27を経由して駆動流体貯留器へと排出される。こうして、駆動流体はカフのブラダから駆動流体貯留器へと送り出される。
【0131】
インペラ38によって同じ方向へ(即ち、軸方向入口39から縁40へ)ポンプ作用が継続されるが、ポンプ作用の方向を逆にするため、電磁アクチュエータ(図示せず)によって管状バルブアセンブリ28を図23に示す第2の位置へ軸方向に移動する。
【0132】
第2の位置においては、駆動流体が第2の円筒状連結部27から第2の開口部30及び膨張入口36を経由してインペラ38の軸方向入口39へと送り出される。矢印42で示すように、そこから該流体はインペラ38の縁40へと送り出され、膨張出口35及び第1の開口部29を経由して、カフのブラダに通じる第1の円筒状連結部26に排出される。こうして、駆動流体は矢印42に示すようにカフのブラダに送り出され、ブラダは膨張する。
【0133】
次に、カフのブラダを再度収縮するため、管状バルブアセンブリ28は電磁アクチュエータによって図22に示す第1の位置に戻される。こうして、カフのブラダの収縮と膨張を交互に行うため、管状バルブアセンブリ28は軸方向に往復移動する。
【0134】
図24〜29を参照しつつ、回転バルブアセンブリを有するエネルギー変換器の実施形態について説明する。図22及び図23に示した実施形態と同様の構成部品に対しては同一の参照番号を用いる。上述の実施形態と同様に、エネルギー変換器24は、第1及び第2の円筒状連結部26、27を互いに反対側に設けた略管状のハウジング25を有する。該ハウジング内にはそれと同軸上に管状バルブアセンブリ28が設けられており、該アセンブリは、第1の円筒状コネクタ26と位置合わせ可能な第1の開口部29と、第2の円筒状コネクタ27と位置合わせ可能な第2及び第3の開口部30、31とを有する。しかし、この実施形態においては、第2の開口部30と第3の開口部31とは軸方向に沿って並べられておらず、軸方向及び円周方向において互いにオフセットしており、管状バルブアセンブリ28の回転によって、第2の開口部30及び第3の開口部31の両方ではなくいずれか一方が第2の円筒状コネクタ27と位置合わせされる(即ち、少なくともこれらの両方が完全に位置合わせされない)ように構成されている。
【0135】
更に、第4の開口部43が管状バルブアセンブリ28の第1の開口部29と同じ側に設けられている。ここでも、第1の開口部29と第4の開口部43とは円周方向及び軸方向において互いにオフセットしており、管状バルブアセンブリ28の回転によって、第1の開口部29及び第4の開口部43の両方ではなくいずれか一方が第1の円筒状コネクタ26と位置合わせされる(即ち、少なくともこれらの両方が完全に位置合わせされない)ように構成されている。
【0136】
管状バルブアセンブリ28の開口部29、30、31及び43の配置は、第1の開口部29が収縮入口34と位置合わせされる場合に、第3の開口部31が収縮出口37と位置合わせされ、膨張出口35と膨張入口36は管状バルブアセンブリ28によってブロックされるように構成されている。逆に、第2の開口部30が膨張入口36と位置合わせされる場合には、第4の開口部43が膨張出口35と位置合わせされ、収縮入口34と収縮出口37は管状バルブアセンブリ28によってブロックされる。
【0137】
管状バルブアセンブリ28内においては、上述の実施形態と同様に、マニホールド32及びインペラ38が該アセンブリと同軸上に設けられている。
【0138】
使用する際、管状バルブアセンブリ28は図24〜26に示す第1の位置にある。第1の位置においては、第1の開口部29は第1の円筒状コネクタ26と収縮入口34とに位置合わせされており、第3の開口部31は、収縮出口37と第2の円筒状コネクタ27とに位置合わせされている。インペラ38によって駆動流体が第1の円筒状コネクタ26、第1の開口部29及び収縮入口34を経由して軸方向入口39内に吸引される。次に、矢印41に従い、インペラ38の駆動によって、駆動流体はインペラ38の縁40から収縮出口37、第3の開口部31及び第2の円筒状コネクタ27を経由して排出される。こうして、駆動流体は、第1の円筒状コネクタ26と流体連通しているカフのブラダから、第2の円筒状コネクタ27に流体連通している貯留器へと送り出される。
【0139】
エネルギー変換器24のポンプ作用の方向を逆にする際、インペラ38のポンプ作用の方向を逆にする必要がない場合には、電磁アクチュエータ(図示せず)によって管状バルブアセンブリ28を図27〜29に示す第2の位置へ回転させる。第2の位置においては、第4の開口部43は第1の円筒状コネクタ26と膨張出口35とに位置合わせされている。同様に、第2の開口部30、31は膨張入口36と第2の円筒状コネクタ27とに位置合わせされている。こうして、インペラ38によって、駆動流体は第2の円筒状コネクタ27から第2の開口部30及び膨張入口36を経由してインペラ38の軸方向入口39へと送り出される。矢印42で示すように、そこから該流体はインペラ38の縁40へと送り出され、膨張出口35、第4の開口部43及び第1の円筒状コネクタ26を経由して、カフのブラダ(図示せず)に排出される。従って、管状バルブアセンブリ28の第2の位置においては、インペラ38は駆動流体をブラダに送り出してブラダを膨張させる作用を有する。
【0140】
次に、管状バルブアセンブリを回転させ、第1の位置に戻して収縮させ、このプロセスを反復する。
【0141】
当然理解されうるであろうが、概念的には、インペラ38の軸方向入口39は「流入口」と見なすことができ、インペラ38の縁40は「流出口」と見なすことができる。従って、図22〜29の実施形態は、流入口39がカフの膨張性ブラダと流体連通している第1の位置から、流出口40が膨張性ブラダと流体連通している第2の位置へ移動可能なバルブアセンブリ28から成る。
【0142】
エネルギー変換器のフェイルセーフ特性
本発明の血液循環補助装置1の潜在的に危険な故障モードは、大動脈6が全心周期で閉塞し続けて左室1回仕事量が上昇する場合である。本発明の実施形態のポンプは、軸を中心に回転可能で軸方向に移動してポンプ作用方向を逆にすることが可能なインペラを有しており(WO−A−02/24254に詳述)、本発明の実施形態は固有のフェイルセーフ特性に関する利点を有する。エネルギー変換器2のインペラが回転を停止した場合、大動脈圧によって作動流体が膨張性要素4、5からエネルギー変換器の貯留器へ流れる。しかし、故障モードによってインペラが回転し続け、インペラアセンブリが大動脈圧迫を伴う状態に留まった場合には、左心室に悪影響を及ぼすことになるであろう。このような問題に対処するため、幾つかの実施形態においては、インペラアセンブリの軸方向の位置を検出するセンサを設ける。該センサからの入力を受け取る制御メカニズムを設ける。インペラが軸方向に移動しなくなったことをセンサが検出するのに応じて、膨張性要素4、5が充填される位置で、制御メカニズムによってインペラへの電力をシャットダウンする。一実施形態において、このセンサは、インペラアセンブリの一以上の磁石が接近していることを検出するホール効果センサである。
【0143】
エネルギー変換器の代替位置
図21に示す本発明の実施形態においては、大動脈周囲カフ3を下行大動脈6に固定する一方、エネルギー変換器2を腹腔又は前腹腔(pre-peritoneal cavity)内に設置し、液圧チューブ23によって該変換器を埋め込まれた大動脈周囲カフ3に連結する。本発明の更なる実施形態においては、エネルギー変換器2を体外に設置する。
【0144】
大動脈周囲カフの代替位置
好ましい実施形態においては、大動脈周囲ジャケット3を下行胸部大動脈6に設置する。しかし、他の実施形態においては、大動脈周囲ジャケット3を他の全身動脈位置(systemic arterial locations)に設ける。
【0145】
電力の供給
次の二手段の内の一手段によって埋め込まれた部品に電力を供給する。
【0146】
1.経皮的駆動系(Driveline)
幾つかの実施形態においては、この駆動系に余剰の電気ケーブルを設け、個々のケーブルが故障した場合にも確実に電力の供給が継続されるようにする。引張強度及び可撓性が高いケーブル(例えば、カドミウム/銅マルチフィラメント系)を設ける。幾つかの実施形態においては、組織の内部成長を促進し、感染の危険性を最小限に抑えるために、該駆動系にテクスチャ加工した外スリーブも設ける。特定の実施形態においては、電力の供給に加え、経皮的駆動系にコンダクタを設けて、オペレータが血液循環補助装置(即ち、カウンターパルセータ)の作動特性を調節することができ、且つ心拍シグナルや警報、データを外部コントローラ/モニタへ送ることができるようにする。
【0147】
2.経皮的誘導カップリング系(Transcutaneous Inductive Coupling System)(TETS)
幾つかの実施形態においては、電力の供給に加え、TETS系に遠隔測定リンクも設けて、オペレータがカウンターパルセータの作動特性を調節することができ、且つ心拍シグナルや警報、データを外部コントローラ/モニタへ送ることができるようにしている。
【0148】
コントローラ
幾つかの実施形態においては、血液循環補助装置1は、経皮的駆動系又はTETS系から電力を受け取る電子コントローラを有する。該コントローラは、心拍を検出して該装置の作動が適切に同期することを確実にする手段を有する。該装置の作動と心拍とを同期させるには、心電図(ECG)の検出や他の方法(位置センサや圧力センサ、加速度計等)の使用が必要となる場合がある。動脈のパルス波をトリガーに用いることができる。心拍の検出にECGモニタリングが必要な場合、幾つかの実施形態においては、埋め込まれた部品に少なくとも1個のECG電極を組み込む。幾つかの実施形態においては、ECG検出器は一体除細動保護(integral defibrillation protection)を有する。
【0149】
該コントローラによってエネルギー変換器2の機能を調節する。該コントローラに警報器(音声警報器又は振動警報器)を設けて患者に機能不良を警告することができる。該コントローラにはデータロギング設備を設けることができる。該システムが経皮的駆動系を有する場合、該コントローラは体内にあってもよく、体外にあってもよい。該コントローラが体内にある場合、これをTETS系の二次コイル又はエネルギー変換器/大動脈周囲ジャケットアセンブリと一体化させることができる。
【0150】
埋め込み電池
心室補助装置サポートとは異なり、カウンターパルセーションのサポートは短期間中断しても患者は十分耐えられるであろう。従って、通常、外部電源が不意又は故意に切断された場合に該システムに電力を供給するための埋め込み型再充電可能電池を設ける必要はない。しかし、幾つかの実施形態においては、例えば、カウンターパルセータの連続機能への依存度が高い患者が風呂に入りたい場合には、埋め込み型の再充電可能な電池を設ける。
【0151】
大動脈周囲ジャケットの代替構成
幾つかの実施形態においては、特に製造を容易にするために、大動脈周囲ジャケット3には単一の膨張性要素4を設ける。このような実施形態において、大動脈は、膨張性要素と大動脈周囲ジャケット3の一部となり得る剛性又は半剛性の要素対向面との間で圧迫される。
【0152】
実施例
以下、実施例によって本発明を更に説明する。
【実施例1】
【0153】
このデータは、WO−A−02/24254に記載のエネルギー変換器と図18に示す設計のプロトタイプカフとを用いたカウンターパルセーションの短期間ブタモデルにおいて得た。このプロトタイプ装置の有効性は、同一ブタモデルの40cm3大動脈内バルーンに対して評価した。
【0154】
近位左冠動脈前可行枝における動脈血圧と超音波冠血流量とを連続的にモニタリングした。図18に示すように大動脈周囲ジャケットを用いた。膨張性要素の長さが5cm及び9cmの2種類のカフを選択した。
【0155】
5cm及び9cmのいずれのカフの場合にも、拡張期圧の上昇は大動脈内バルーンの場合に匹敵することが分かった(図19参照)。後負荷軽減(afterload reduction)は、大動脈内バルーンの場合と比べて優れているとはいえないまでも、それに匹敵することが分かった。例えば、5cm長の大動脈周囲ジャケットの場合、大動脈内バルーンに比べて拡張末期圧が10mmHgも低下した。この典型的な装置の場合、拡張期冠血流量が50mL/分だけ増加し、補助無しの拍動(unassisted beats)時に比べて拡張/収縮移行期により大きな血流逆転スパイクが誘導されたが、これによって効果的な左室後負荷軽減の有力な証拠が得られた(図20参照)。
【0156】
短期間(1日)の実験後に大動脈周囲ジャケットのレベルでは大動脈への外傷を示すものは無かったが、これは、長期の自己骨格筋を動力とする大動脈外カウンターパルセーション研究(大動脈筋形成術(aortomyoplasty))7の組織学的知見と一致する。
【実施例2】
【0157】
上で詳述した設計仕様基準を実現させる目的で実験的モデル研究を行った。本発明の好ましい実施形態では、膨張性要素が2個の大動脈周囲ジャケットを用いたが、それは、このジャケットの場合、より対称な長手方向の大動脈応力やひずみ特性が得られ、カウンターパルセータによって誘導される大動脈壁のピーク循環偏位(peak cyclical excursion)が低くなるからである。これによって、カウンターパルセーションの臨床的有効性を決める上で非常に重要な因子である、大動脈血流量の時間に対する変化率(dQ/dt)の観点、及び大動脈の機械的疲労の観点の両方から理論的な利益が得られる。しかし、重要な問題は、膨張性要素の数を2からそれより多くした場合に更なる利益が得られるかどうかであった。本発明者らによる検討は、そうではないことを示唆している。
【0158】
図30〜33は、大動脈が大動脈周囲ジャケットの中央にある場合(即ち、大動脈の変形が最大の場合)を表わすモデルの断面図である。これらは、断面直径及びリング内径がそれぞれ2mm及び99.1mmのブチルゴム製Oリングをモデルとして使用し、このリングに向けてエアロゾルを噴霧して得たものであり、A4サイズのグラフ用紙上で安静状態44(円形)及び変形状態45を示す。直径76.1mmの剛性ディスク46で圧迫して変形させ、膨張性要素の膨張状態の作用をシミュレートした。大動脈/膨張性要素の直径比は、該ジャケットの製造及び大動脈周囲への設置の両方の観点から実際的と思われる値に基づいて選択した(続いて行った検討から、大動脈の変形はこの直径比には比較的影響を受けないことが分かった。)。
【0159】
図30はシミュレートした大動脈を示し、その安静時の状態と、最も狭い部分の隙間が安静時の大動脈内径の20%になる程度に圧迫された状態とを示す。この変形においては、断面積が元の値の51.5%に減少した。この変形した大動脈プロファイルにおいては、最小横断面曲率半径は18mm(即ち、安静時半径の36.3%)であった。結論として、この実験では、大動脈壁プロファイルに対する内腔圧の影響を無視したため、最小横断面曲率半径は少なく見積もられた。結果として、このモデルにおいては、インビボで見られるのと比べてより楕円形の大動脈の屈曲が膨張性要素との接触箇所から最も離れた位置で生じた。
【0160】
内腔圧の作用をモデル化して大動脈変形をより良く実現するため、膨張性要素の動きに対して垂直方向の軸に設けたバー47でOリングを抑えた(図31参照)。この場合、最小横断面曲率半径値は20mmより大きくなった(即ち、安静時半径の40.4%を超えた)。
【0161】
図32及び33は、3個の膨張性要素設計に対する動きの作用を示す。図32の場合、内腔の隙間は安静時直径の20%に維持されたが、断面積は元の値の41%まで減少し、これによって、最小曲率半径は10mm(即ち、安静時半径の20.2%)に減少し、その結果、局所的な大動脈応力やひずみが増大した。図33の場合、(変形時の)最小曲率半径は図31で測定した値と同等であり、断面積の減少は元の値の54%に抑えられた。
【0162】
これらの知見から、2個の膨張性要素設計が3個(又はそれ以上)の要素を有する設計よりも好ましいことが分かる。また、2個の膨張性要素設計の方が、他の解剖学的構造への干渉が少ないため、3個(又はそれ以上)の膨張性要素のシステムに比べて大動脈の周囲に設置し易いという利点もある。臨床的コンピュータ断層撮影データを用いた本発明者らの適合研究によってこの結論が立証される。
【0163】
本発明者らが行った短期間の動物実験的研究(実施例1参照)によって、2個の膨張性要素を有する大動脈周囲ジャケットは埋め込み時の設置が比較的容易であり、また、このような設計によって視覚的にも組織学的にも大動脈外傷を伴わないことが分かった。
【0164】
参考文献
1.Abou-Awdi NL(アボウ−アウディ), Frazier OH(フラツィア), The HeartMate(ハートメイト):A left ventricular assist device as a bridge to cardiac transplantation. (心臓移植への橋渡しとしての左心室補助装置), Transplantation Proceedings 1992;24:2002-2003。
2.Yacoub MH(ヤコウブ), Tansley P(タンスリー), Birks EJ(バークス), Banner NR(バナー), Khaghani A(カガニ), Bowles C(ボウルズ), A novel combination therapy to reverse end-stage heart failure (末期心不全を回復させるための新しい併用療法).Transplantation Proceedings 2001 33(5):2762-4。
3.Rose EA(ローズ), Gelijns AC(ゲリーンズ), Moskowitz AJ(モスコウィッツ) et al., Long-term mechanical left ventricular assistance for end-stage heart failure(末期心不全のための長期機械的左心室補助).New England Journal of Medicine 2001;345(20):1435-1443。
4.De Vries WC(デヴリーズ), Anderson JL(アンダーソン) et al., Clinical use of the total artificial heart(完全人工心臓の臨床的使用). New England Journal of Medicine 1984;310:273-278。
5.Moulopoulos SD(モウロポウロス), Topaz S(トパーズ), Kolff WJ(コルフ), Diastolic balloon pumping (with carbon dioxide) in the aorta - a mechanical assistance to the failing circulation(大動脈における拡張期バルーンポンプ(二酸化炭素使用)−循環不全に対する機械的補助), American Heart Journal 1962;63:669。
6.Arafa, OE(アラファ) et al., Annals of Thoracic Surgery 1999;67:645-651。
7.Pattison CW(パティソン), Cumming DVE(カミング), Williamson A(ウィリアムソン) et al., Aortic counterpulsation for up to 28 days using autologous latissimus dorsi in sheep(ヒツジの自己広背筋を用いた最大28日間の大動脈カウンターパルセーション), J Thorac Cardiovasc Surg 1991;102:766-73。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】図1は、本発明の一実施形態における血液循環補助装置の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態における、大動脈の周りに設置した大動脈周囲カフの断面図である(収縮状態(左)及び膨張状態(右))。
【図3】図3は、図2の実施形態における大動脈周囲カフ及び大動脈の線A−A(左)及び線B−B(右)に沿った長手方向断面図であり、膨張性要素が収縮している状態(左)及び膨張している状態(右)を示す。
【図4】図4は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置の軸方向断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態における血液循環補助装置の斜視図であり、コンピュータ断層撮影によるヒトの胸部のイラストを重ね合わせている。
【図6】図6は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置のマニホールド及び膨張性要素の斜視図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置のマニホールド及び膨張性要素の斜視図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置のマニホールド及び膨張性要素の斜視図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置のマニホールド及び膨張性要素の斜視図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置のマニホールド及び膨張性要素の斜視図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置のマニホールド及び膨張性要素の斜視図である。
【図12】図12は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置のエネルギー変換器と膨張性要素との間の第1の位置にある自在継手の斜視図である。
【図13】図13は、図12に示す自在継手が第2の位置にある場合の斜視図である。
【図14】図14は、本発明の更なる実施形態における血液循環補助装置のエネルギー変換器と膨張性要素との間の第1の位置にある他の自在継手の斜視図である。
【図15】図15は、図14に示す自在継手が第2の位置にある場合の斜視図である。
【図16】図16は、本発明の更に他の実施形態における血液循環補助装置の斜視図である。
【図17】図17は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置の斜視図である。
【図18】図18は、本発明の実施例1で用いる血液循環補助装置の大動脈周囲カフ及びマニホールドの斜視図である。
【図19】図19は、50mm長の大動脈周囲ジャケット(上)及び40cm3大動脈内バルーン(下)の場合の時間に対する動脈血圧を示すグラフである(記号:A=補助付き拍動、U=補助無し拍動)。
【図20】図20は、50mm長の大動脈周囲ジャケットを用いたモデルにおける時間に対するi)心電図(ECG)、ii)瞬時冠動脈血流(左冠動脈前下行枝近位部)、iii)動脈血圧のグラフである。これらグラフは補助比1:2で同時に得た。補助付き拍動を「A」で表わし、補助無し拍動を「U」で表わす。
【図21】図21は、本発明の更なる実施形態における血液循環補助装置の斜視図であり、ヒト胴体内の位置を示す。
【図22】図22は、軸方向往復バルブアセンブリを有する、本発明の一実施形態におけるエネルギー変換器の「カフ収縮」状態における長手方向断面概略図である。
【図23】図23は、図22に示す実施形態におけるエネルギー変換器の「カフ膨張」状態における長手方向断面概略図である。
【図24】図24は、回転バルブアセンブリを有する、本発明の他の実施形態におけるエネルギー変換器の「カフ収縮」状態における長手方向断面概略図である。
【図25】図25は、図24の線A−A’に沿った断面概略図である。
【図26】図26は、図24の線B−B’に沿った断面概略図である。
【図27】図27は、図24に示す実施形態におけるエネルギー変換器の「カフ膨張」状態における長手方向断面概略図である。
【図28】図28は、図27に示すエネルギー変換器の線A−A’に沿った断面概略図である。
【図29】図29は、図27に示すエネルギー変換器の線B−B’に沿った断面概略図である。
【図30】図30は、実験モデルを用い、2個の膨張性要素で圧迫する際の大動脈の屈曲について検討した結果である。
【図31】図31は、実験モデルを用い、2個の膨張性要素で圧迫し、内腔圧の作用をモデル化するために更に圧迫する際の大動脈の屈曲について検討した結果である。
【図32】図32は、実験モデルを用い、3個の膨張性要素で圧迫する際の大動脈の屈曲について検討した結果である。
【図33】図33は、実験モデルを用い、3個の膨張性要素で圧迫する際の大動脈の屈曲について検討した結果である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液循環補助装置と、カウンターパルセーション(特に拡張期カウンターパルセーション)を行う方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
機械的循環補助は、心不全の管理においてますます用いられるようになっている。特に、生来の心室と並行に設置される心室補助装置(VAD)は、心臓移植を待つ患者にとっては血行力学的補助となり(移植への橋渡し)1、また、自然な心筋機能の回復をもたらす(回復への橋渡し)2。ごく最近では、VADは心臓移植(destination therapy、永久使用)の代替手段として考えられている3。完全人工心臓4はVADに比べて広く用いられておらず、完全人工心臓の場合、生体心臓を除去する必要があるが、移植への橋渡しとして、また、永久使用(destination therapy)のために設計されている。VADや完全人工心臓は血液との接触を伴うため、血液凝固(血栓形成)の危険性を最小限に抑えるために患者に対し継続的に抗血液凝固処置を行うことが絶対的に必要である。
【0003】
大動脈内バルーンカウンターパルセーション(IABC)5は広く利用されている治療法であり、主に急性心不全の場合に用いられる。大動脈内バルーン(IAB)の挿入はVADに対して比較的非侵襲性であるが、患者は歩行不能である(non-ambulant)ことから、補助持続期間が通常数週間未満に制限され、また、IABカテーテルを挿入する動脈が閉塞し下肢虚血を招く危険性が高い6。VADや完全人工心臓と同様にIABカテーテルも血液と接触するため、患者は継続的に抗血液凝固処置を受ける必要がある。
【0004】
WO−A−02/24254には、高性能の電気液圧式エネルギー変換器を有する、歩行可能な患者における長期使用に適した新しい完全埋め込み型血管外(非血液接触)カウンターパルセータが開示されている。該エネルギー変換器はインペラを有するが、このインペラは流体を駆動するために軸を中心に回転し、インペラ自身の配置を変えるために軸方向に往復移動する。即ち、作動原理は次の通りである。心臓拡張期が始まると、前記エネルギー変換器によって作動流体が一体型(integral)体内貯留器(US−A−5,346,458に記載)から大動脈周囲(peri-aortic)ジャケット内に送り出され、これによって大動脈が圧迫され、血液が近位に(心臓に向かって)及び遠位に(心臓から離れて)移動する。これによって、拡張期血圧を上昇させる効果がもたらされ、臓器灌流(特に心筋の灌流)が向上し、拡張期に血液供給の大部分を受ける。拡張末期には、該エネルギー変換器が液圧式駆動流体を送り出す方向が迅速に反転し、その結果、大動脈周囲ジャケットが収縮して、拡張末期動脈血圧が低下する(前収縮期低下(the pre-systolic dip))。これによって、次の拍動の駆出期(収縮期)に心臓が行う必要のある仕事の量が減少する。
【0005】
この種のエネルギー変換器に伴う一問題は、インペラの往復軸方向移動により対応する反作用(reaction)がカウンターパルセータ装置の残部で生じることである。この反作用によって、カウンターパルセータ装置が大動脈に対して移動し、大動脈外傷を招くことが考えられる。
【0006】
また、WO−A−02/24254には、大動脈に直接連結された固体アクチュエータによって大動脈外カウンターパルセーションを実現する代替手段も開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最も重要な点は、大動脈周囲ジャケット内の大動脈が、大動脈の機械的不全(mechanical failure)や有害な組織改造を引き起こさずに長期間の度重なる変形に持ちこたえることができることである。更に、埋め込み型システムの構成が外傷を最小限に抑える外科的処置と両立し得ることが非常に望ましい。本発明は、このような要求の一以上を満たそうとするものであり、重要な観点において、本発明の各実施形態の性能は、現在入手し得る最も高性能なIABシステムの性能を上回ることが判明した(図19参照)。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はその一様相において、血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素(cuff elements)を有する血液循環補助装置であって、前記チャンバは前記一以上のカフ要素の両端にて開放されていて血液導管がそこを通って延在するように構成されており、前記一以上のカフ要素は、血液導管を圧迫するための少なくとも1個の内方拡張型膨張性要素(inwardly expanding inflatable element)を有する、血液循環補助装置を提供する。
【0009】
血液導管の周りに前記一以上のカフ要素を設置するために、前記チャンバの各末端間の前記一以上のカフ要素の一側に開口部が設けられているのが好都合である。
【0010】
幾つかの実施形態においては、1個の膨張性要素が設けられている。
【0011】
少なくとも2個又は正確に2個の内方拡張型膨張性要素が設けられているのが好ましい。幾つかの実施形態においては、1組(例えば、2個)の膨張性要素が連動して、実際には単一の膨張性要素として作動する。本明細書において、「膨張性要素」は連動して作動する1組の膨張性要素を包含する。
【0012】
前記膨張性要素は前記チャンバを挟んで互いに正反対に配置されているのが有利である。
【0013】
本明細書において、「正反対に」や「全く反対に」とは、前記膨張性要素の膨張時に互いに最も接近し得る該要素の先端を考えた場合、各先端におけるそれぞれの法線間の角度が少なくとも135°、好ましくは160°、より好ましくは170°、より好ましくは175°、最も好ましくは180°であることを意味する。
【0014】
2個のカフ要素が前記チャンバを形成し、前記開口部は前記2個のカフ要素間に設けられているのが好都合である。
【0015】
前記2個のカフ要素、前記膨張性要素、及びそれらによって形成される前記チャンバは長尺であり、前記チャンバはその内部で長手方向に血液導管を収容することができるように構成されていると共に、前記カフ要素及び前記膨張性要素は血液導管に対して平行であるのが好ましい。
【0016】
血液循環補助装置は、前記2個の内方拡張型膨張性要素に通じる入口を更に有するのが有利である。
【0017】
前記入口は、各膨張性要素の長手方向軸に沿って該要素の中央に通じるのが好都合である。
【0018】
或いは、前記入口は、各膨張性要素の一端に通じる。
【0019】
或いは、前記入口は、各膨張性要素の両端に通じる。
【0020】
或いは、前記入口は、各膨張性要素の全長に沿って該要素の側面に通じる。
【0021】
前記入口は、前記膨張性要素の長手方向軸に対して実質的に平行であるのが好ましい。
【0022】
或いは、前記入口は、前記膨張性要素の長手方向軸に対して鋭角を成す。
【0023】
或いは、前記入口は、各膨張性要素の長手方向軸の中央と末端との間のある点において該要素の側面に通じる。
【0024】
前記2個の膨張性要素は同時に膨張可能であるのが好都合である。
【0025】
前記血液循環補助装置は、前記膨張性要素に通じるマニホールドを更に有し、各膨張性要素に通じるマニホールドの断面は異なっているのが好ましい。
【0026】
前記2個の膨張性要素の最大拡張時に、前記チャンバに収容されている血液導管の相対する側面が互いに接触しないのが有利である。
【0027】
前記膨張性要素の最大拡張時に、前記チャンバに収容されている血液導管の最小横断面曲率が最大になるのが好都合であり、最小横断面曲率半径が元の値の少なくとも30%となり、例えば、元の値の少なくとも36.3%又は正確に36.3%となるのが好ましい。最小横断面曲率半径が元の値の少なくとも40.4%又は正確に40.4%であることが特に好ましい。
【0028】
前記2個の膨張性要素の最大拡張時における、前記チャンバに収容されている血液導管の内腔断面積の減少は元の値の50%を超える率であるのが好ましく、元の値の51.5%を超える率であるのがより好ましい。
【0029】
圧迫時の血管の内腔隙間が安静時直径の少なくとも10%であることが好ましく、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%である。この点においては、当然のことながら、血管の圧迫時に内腔隙間が当初合わせた際の20%となるように血液循環補助装置を設定することができるが、膨張性要素は若干伸びるため、内腔隙間が経時的に例えば15%又は10%に変化することもある。
【0030】
前記膨張性要素は弾性変形に耐える材料から成るのが有利である。
【0031】
前記膨張性要素の両端は丸みを帯びているのが好都合である。
【0032】
前記膨張性要素の両端は、前記チャンバに収容されている血液導管の軸に沿って、前記一以上のカフ要素から長手方向に突出しているのが好ましい。
【0033】
前記血液循環補助装置は、前記膨張性要素と流体連通するポンプを更に有するのが有利である。
【0034】
前記ポンプから前記膨張性要素への流体路は断面積が増加するのが好都合である。
【0035】
前記ポンプと前記膨張性要素との間を連絡する流体は粘度が8×10-4〜1.2×10-3Pa.s(0.8〜1.2cP)であるのが好ましく、1×10-3Pa.s(1.0cP)であるのがより好ましい。
【0036】
前記ポンプと前記膨張性要素との間を連絡する流体はフッ化炭素であるのが有利である。
【0037】
前記ポンプと前記膨張性要素との間を流体連通させるためにそれらの間に設けた連結部は可撓性であるのが好都合である。
【0038】
前記可撓性連結部は、通路が内部に延在するボールを有し、ソケットの両端に回転可能に接続されているジョイントから成るのが好ましい。
【0039】
前記可撓性連結部は可撓性を得るために蛇腹状(concertinaed)であるのが有利である。
【0040】
前記可撓性連結部は特定の配置にロック可能であるのが好都合である。
【0041】
前記ポンプは前記一以上のカフ要素に隣接しており、前記開口部は前記チャンバの該カフとは反対側に設けられているのが好ましい。
【0042】
前記ポンプは前記一以上のカフ要素に隣接しており、前記開口部は前記チャンバ上、前記ポンプに対して90°の位置に設けられているのが有利である。
【0043】
前記ポンプは、軸を中心に回転してポンプ作用をもたらすことができるインペラを有し、前記インペラは、軸方向に第1の位置から第2の位置まで移動してポンプ作用の方向を逆にすることができるのが好都合である。
【0044】
前記血液循環補助装置は平衡錘(counterbalance)を更に有し、前記平衡錘は、前記インペラと同期して前記インペラの軸方向移動とは反対方向に移動して前記インペラの移動の反作用に拮抗することができるのが好ましい。
【0045】
前記平衡錘は前記インペラと平行に移動可能であるのが有利である。
【0046】
前記平衡錘は第2の回転可能なインペラを有し、両方のインペラが軸を中心に回転してポンプ作用をもたらすことができるのが好都合である。
【0047】
前記血液循環補助装置は、前記インペラが第1の位置又は第2の位置にあることを検出することが可能なセンサと、前記膨張性要素の膨張を引き起こす位置に前記インペラがロックされたことを前記センサが検出するのに応じて前記インペラをシャットダウンするための制御メカニズムとを更に有するのが好ましい。
【0048】
前記ポンプは、回転可能なインペラと、流体を吸引するための流入口と、流体を排出するための流出口と、前記回転可能なインペラと前記膨張性要素との間に設けられたバルブアセンブリとを有し、前記バルブアセンブリは、前記流入口が前記膨張性要素と流体連通する第1の位置から前記流出口が前記膨張性要素と流体連通する第2の位置まで摺動可能又は回転可能であり、前記バルブアセンブリが第1の位置と第2の位置との間を移動することによって前記膨張性要素はそれぞれ収縮及び膨張するように構成されているのが有利である。
【0049】
前記ポンプは胸腔内に設置可能であるのが好都合である。
【0050】
或いは、前記ポンプは腹膜前腔(pre-peritoneal)又は腹腔内に設置可能であり、液圧チューブを介して前記膨張性要素に接続されている。腹膜前腔は外科医によって形成され得る。
【0051】
或いは、前記ポンプは体外に設置可能である。
【0052】
前記ポンプと前記膨張性要素との間にフローガイドが設けられているのが有利である。前記フローガイドはベーン、スイベル及び/又はデスワーラ(deswirlers)であるのが好ましい。前記フローガイドは、望ましくない二次的流動挙動を最小限に抑えるか、又は望ましい二次的流動特性をもたらすのが好ましい。
【0053】
前記血液循環補助装置は、前記一以上のカフ要素の外周に設けられたスリーブを更に有するのが好ましい。
【0054】
前記血液循環補助装置は、前記一以上のカフ要素の周りに少なくとも1個のバンドを更に有するのが有利である。
【0055】
一以上のカフ要素は、前記チャンバのサイズを増加又は減少させるように移動可能であるのが好都合である。
【0056】
ロック可能なヒンジで接続された二以上のカフ要素が設けられているのが好ましい。
前記血液循環補助装置は、前記膨張性要素と前記チャンバとの間に設置された内スリーブを更に有するのが有利である。
【0057】
前記血液循環補助装置は、該装置自身を構造物に取り付けるための一以上の小穴を更に有するのが好都合である。
【0058】
前記膨張性要素は長さが3〜15cmであるのが好ましく、5〜9cmであるのがより好ましい。
【0059】
前記膨張性要素は、該装置を装着した患者の各心周期において1回膨張可能であるのが有利である。
【0060】
前記膨張性要素は、該装置を装着した患者の各心周期の拡張期、又はそれより低い頻度(例えば、一心周期置き(alternative cardiac cycles))で膨張可能であるのが好都合である。
【0061】
該装置はヒトの左傍脊椎溝(left paravertebral gutter)内に設置可能であるのが好ましい。
【0062】
前記血液循環補助装置は、個体の心拍を検出するための一又は複数の一体型ECG電極を更に有するのが有利である。
【0063】
前記血液循環補助装置は、個体の心拍を検出するための位置センサ、圧力センサ又は加速度計を更に有するのが好都合である。
【0064】
本発明はその更なる様相において、血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素を有する血液循環補助装置であって、前記一以上のカフ要素は、前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための内方拡張型膨張性要素を有し、該膨張性要素は、その最大拡張時に前記チャンバに収容された血液導管の最小横断面曲率半径が最大になるように拡張可能である血液循環補助装置を提供する。
【0065】
前記血液導管の最小横断面曲率半径は元の値の少なくとも30%であるのが好都合であり、少なくとも36.3%又は正確に36.3%であるのが好ましく、少なくとも40.4%又は正確に40.4%であるのがより好ましい。
【0066】
前記膨張性要素の最大拡張時に、前記血液導管の内腔断面積の減少は元の値の50%超までであるのが好ましく、51.5%超までであるのが好ましい。
【0067】
圧迫時の血管の内腔隙間が安静時直径の少なくとも10%であるのが有利であり、少なくとも15%であるのが好ましく、少なくとも20%であるのがより好ましい。
【0068】
本発明はその別の様相において、血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素と、ポンプとを有する血液循環補助装置であって、前記一以上のカフ要素は、前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための内方拡張型膨張性要素を有し、前記ポンプは、回転可能なインペラと、流体を吸引するための流入口と、流体を排出するための流出口と、前記回転可能なインペラと前記膨張性要素との間に設けられたバルブアセンブリとを有し、前記バルブアセンブリは、前記流入口が前記膨張性要素と流体連通する第1の位置から前記流出口が前記膨張性要素と連通する第2の位置まで摺動可能又は回転可能であり、前記バルブアセンブリが第1の位置と第2の位置との間を移動することによって前記膨張性要素はそれぞれ収縮及び膨張するように構成されている血液循環補助装置を提供する。
【0069】
本発明はその更に他の様相において、血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素と、ポンプとを有する血液循環補助装置であって、前記一以上のカフ要素は、前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための内方拡張型膨張性要素を有し、前記ポンプは、該膨張性要素と流体連通し、軸を中心に回転してポンプ作用をもたらすことができるインペラを有しており、前記インペラは、軸方向に第1の位置から第2の位置まで移動してポンプ作用の方向を逆にすることができ、更に平衡錘が設けられており、前記平衡錘は、前記インペラと同期して前記インペラの軸方向移動とは反対方向に移動して前記インペラの移動の反作用に拮抗することができる血液循環補助装置を提供する。
【0070】
前記血液循環補助装置は、前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための第2の内方拡張型膨張性要素を更に有するのが好都合である。
【0071】
本発明はその更なる様相において、血管のカウンターパルセーションを行う方法であって、血管の一部の各末端において前記血管の内腔に環状ステントを導入することと、前記血管の一部の各末端において前記血管の周りに外部バンドを設け、前記血管の一部分が各外部バンドとそれぞれの環状ステントとの間にトラップされるようにすることと、2個の環状ステント間で前記血管にカウンターパルセーションを行うこととを含む方法を提供する。
【0072】
上述の血液循環補助装置を用いて血液導管の圧迫を行うのが好ましい。
【0073】
各環状ステントは、それぞれの外部バンドを収容するための円周溝を該ステントの外表面に有するのが有利である。
【0074】
本明細書において、「有し(comprising)」とは「含み」や「〜から成り」を意味し、「有する(comprises)」とは「含む」や「〜から成る」を意味する。
【0075】
本明細書において、「血液導管」とは、生来の血管、合成血管や人工血管、又は血液を運搬するための他の管状構造物を意味する。
【0076】
大動脈外傷の危険性を最小限に抑えるため、本発明の実施形態を設計するに当っては、次のことを考慮した。
【0077】
1.大動脈内皮の対側接触(即ち、相対する側面の接触)は内皮の剥離やアテローム生成に関与することが判明したため、大動脈が十分に圧迫される際の対側接触を防止する。
【0078】
2.大動脈壁応力を最小限に抑えるため、圧迫時の大動脈の最大横断面曲率を最小限に抑える(即ち、最小横断面曲率半径を最大にする)(図2)。
【0079】
3.大動脈周囲ジャケットの両端における大動脈の長手方向断面の急激な変化を回避して、該ジャケットの両端における応力集中を最小限に抑える(図3)。
【0080】
4.変形時の大動脈の形態を確実に予測できるようにする(即ち、大動脈壁の湾曲(creasing)とそれに伴う壁応力集中とを回避する)。
【0081】
5.大動脈に対する大動脈周囲ジャケットの相対移動を最小限に抑えて大動脈の糜爛を回避する。
【0082】
6.圧迫期及び解放期にカウンターパルセータの作動によって誘導される大動脈への横断反作用(transverse reaction)を最小限に抑える。
【0083】
本発明がより容易に理解され、また、本発明の更なる特徴が理解されるように、次の添付図面を参照しつつ、一例として本発明の実施形態について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0084】
図1に示すように、血液循環補助装置1は、中空の大動脈周囲(peri-aortic)ジャケット又はカフ3に接続されたポンプ又はエネルギー変換器2を有する。大動脈周囲カフ3は剛性又は半剛性であり、その内部に実質的に円筒状のチャンバを形成するように湾曲している。大動脈周囲カフ3の内表面に接触して、2個の長尺の膨張性要素4、5が設けられており、これらは大動脈周囲カフ3によって、チャンバを挟んで互いに正反対の所定位置に保持されている。チャンバのサイズ及び形状は下行大動脈6を(優先的に)収容するように構成されており(但し、他の実施形態においては、チャンバのサイズ及び形状は上行大動脈を収容するように構成されている)、膨張性要素4、5は下行大動脈6と平行し、且つ大動脈6に対して反対側に位置している。チャンバの各末端は、大動脈6がそこを通って延在するように開放されている。大動脈周囲カフ又はジャケット3にはスリット(又は開口部)22が設けられているが、これは2個の膨張性要素間からチャンバ内に通じていると共に、チャンバの一端から他端へ延在しており、大動脈周囲カフ3が大動脈6上を大動脈6の長手方向軸に垂直な方向に摺動できるように構成されている。これによって、大動脈6の切断(即ち、外科的分断)を要せずに装置1を設置することができる。
【0085】
膨張性要素4、5は、通常の低コンプライアンスのマニホールド7内に含まれる液圧駆動媒体で満たされており、前記ポンプ又はエネルギー変換器と流体連通している。
【0086】
前記ポンプと膨張性要素4、5との間の作動流体の流路は、実施可能な限り、断面変化による流動抵抗を最小限に抑えると共に、液圧式駆動流体の望ましくない二次的流動特性(例えば、膨張性要素4、5における流体の充填及び排出に支障を来し得る急激な断面変化に伴う反対回転)を最小限に抑えることによって、膨張性要素4、5における流体の充填及び排出を迅速に行うことができるように設計されている。しかし、二次的流動特性は必ずしも弊害をもたらすだけではなく、実際には、例えば、液圧流体路内での同時二方向流動を回避するよう流体を混合させるためのフローガイドを設けて、該流動特性を増強することが望ましい場合もある。
【0087】
液圧駆動媒体がエネルギー変換器2からマニホールド7へ流入すると膨張性要素4、5が膨張する。膨張性要素4、5の外表面が大動脈周囲カフ3によって圧迫されると、膨張性要素4、5の内表面が共に動いてジャケット3内で大動脈を圧迫する。大動脈周囲ジャケット3の長さは好ましくは3〜15cmの範囲内である。
【0088】
インビトロ実験や動物実験によって、比較的短い大動脈周囲ジャケット(5cm)を用いた場合に大動脈内バルーンに比べて前収縮期動脈圧低下が顕著であることが判明した(図19参照)。カウンターパルセーション装置によって前収縮期圧が低下する度合いは、特に心不全の場合において臨床的有効性を決める上で非常に重要である。
【0089】
大動脈を圧迫する際には次の二種類の状態、即ち、i)内皮対側表面間の接触と、ii)大動脈内皮の過剰に高い屈曲とを回避しなければならない。これら両方の状態によって、内皮の損傷や剥離(denudation)、即ち、アテローム生成的と考えられるプロセスが生じる。本発明者らの実験的研究から、好ましい実施形態においては、2個の膨張性要素4、5のサイズ及び位置を選択することによって、(同じ血行力学的利益を引き出すためにより多くの膨張性要素を有するシステムと比べて)最大横断面大動脈曲率が比較的低くても大動脈が確実に変形することが分かった。本発明者らの動物実験によって、2個の膨張性要素を有する大動脈周囲ジャケットを大動脈に配置することは比較的簡単であることが分かった。
【0090】
2個の膨張性要素4、5を設ける実施形態においては、大動脈6上での潜在的に有害な反作用を回避するためには2個の要素が同時に膨張することが重要である。このような同時膨張は、個々の膨張性要素を提供するマニホールド分枝の微分断面積(differential cross section)を設計することによって実現することができる。膨張性要素が十分に膨張すると、図2及び3に示すように膨張性要素の内表面間にギャップが生じる。このギャップは、大動脈内皮の剥離(即ち、高アテローム生成的プロセス)の危険性を最小限に抑えるために大動脈内皮の対側接触を防止するには十分大きい。このギャップは、所定の作動条件下で大幅な弾性変形を受けない膨張性要素を用いるか、或いは、該システム内で液圧流体の量を制限することによって保持される。
【0091】
本発明者らの実験(実施例2参照)によって、膨張性要素の最適な数は2であることが分かった。
【0092】
大動脈周囲カフ又はジャケット3と組合わせた膨張性要素4、5は、比較的低コンプライアンスであるため膨張時に大幅な弾性変形を受けず、機械的疲労寿命を最大にできる。とはいえ、上述の十分な内腔間隙に適応(accommodated)されて膨張/収縮サイクルが反復されることにより、膨張性要素には低程度のクリープの発生が予想される。材料と壁厚を適切に選択することによって許容し得る機械的疲労寿命が得られる。膨張性要素を強化ポリマー又は充填ポリマーから形成することによって該要素の適切な物理的特性を得ることができるであろう。用いる駆動流体は、膨張性要素膜の物理的特性の時間に対する好ましくない変化とは関連しない。潜在的に好適な駆動流体としては、粘度が0.8cP〜1.2cP、好ましくは1.0cP(8×10-4Pa.s〜1.2×10-3Pa.s、好ましくは1×10-3Pa.s)の水性液体及び非水液体が挙げられる。幾つかの実施形態においては、駆動媒体はフッ化炭素である。
【0093】
大動脈損傷の危険性を更に低下させるためには、膨張性要素4、5の両末端を丸みを帯びた形状とし、該末端が剛性大動脈周囲カフ又はジャケット3から長手方向に若干突出するようにして、大動脈周囲ジャケットの両端における大動脈断面の急激な変化を回避するようにする(図1及び3参照)。
【0094】
本発明者らのインビトロ実験によって、大動脈6の長手方向軸に平行に設けられた2個の長尺の膨張性要素4、5を用いた場合、円周カフ(circumferential cuff)(該カフの場合、通常顕著な大動脈の折り曲げ(creasing)や局所的な応力集中を伴うことが本発明者らの研究によって示された)と比べて、大動脈の変形特性が一層予測可能になることが分かった。従って、好ましい実施形態は、大動脈の耐久性については、横断円周(transverse, circumferential)大動脈周囲カフよりも本質的に長期カウンターパルセーションに適している。
【0095】
エネルギー変換器とカフの相対位置
大動脈周囲カフ3とエネルギー変換器2との距離を確実に最小化することによって数々の利点が得られる。
i)装置全体のサイズが減少することによって、埋め込み時の外科的外傷が減少する。
ii)液圧流体路内の「デッドスペース」及び流動抵抗がいずれも最小限に抑えられる。これは、非常に動的なプロセスである拡張期カウンターパルセーションのコンテクストにおいて特に重要である。液圧流体の流動抵抗及び時間に対する流量の変化率(dQ/dt)はいずれも、大きなデッドスペースの慣性効果(inertial effects)によって悪影響を受ける。
【0096】
好ましい実施形態においては、エネルギー変換器2と大動脈周囲ジャケット3との距離を最小限に抑えることによって、流体のデッドスペースを最小限に抑える。血液循環補助装置の特に好ましい実施形態を図4、即ち、膨張性要素4、5と流体連通しているインペラ口(impeller ports)8のレベルにおける横断面図に示す。この図から分かるように、過度の流動抵抗や流動抵抗の変化を回避するために液圧流体路の断面は均一ではない。
【0097】
本発明の一実施形態においては、液圧流体路内にフローガイドを導入して、流動抵抗、延いてはdQ/dtに悪影響を及ぼし得る望ましくない二次的流動挙動を最小限に抑える。望ましくない二次的流動の一例としては、断面が急激に変化した場合に生じ得る逆回転(counter-rotation)特性が挙げられる。逆に、一実施形態においては、フローガイドを設けて望ましい二次的流動特性をもたらす。例えば、混合を促進して同時二方向流動を抑制するガイドによって、装置の性能特性(dQ/dt)を向上させることができる。フローガイドは、流体路内でベーン、スワーラ(swirlers)又はデスワーラ(deswirlers)の形状をとる。
【0098】
一実施形態においては、図示したエネルギー変換器2及び大動脈周囲カフ3のサイズと形状は左胸膜腔に合うようにする。血液循環補助装置の設計に当っては、外科医によって、該カフの大動脈周囲への設置後、該装置が左傍脊椎溝(left paravertebral gutter)内に設置されるようする。このアプローチの実現可能性は、図5に示すように、コンピュータ断層撮影(CT)による正常なヒトの左胸膜腔境界線(下行大動脈の境界線を含む)内で好ましい実施形態の境界線を重ね合わせるコンピュータベースの適合研究(fitting studies)によって確認した。
【0099】
ポンプ又はエネルギー変換器2と膨張性要素4、5との流体接続は実施形態によってそれぞれ異なる。
【0100】
図6に示す実施形態においては、マニホールド7によってポンプ2が膨張性要素4、5とその長手方向軸の中央で接続されている。マニホールド7は、膨張性要素4、5の長手方向軸に対して垂直である。
【0101】
図7に示す実施形態においてマニホールド7は、膨張性要素4、5と、これら要素の一方の端である9、10において接続されている。マニホールド7の方向は長尺の膨張性要素4、5とは鋭角を成しており、流体がポンプから膨張性要素4、5へ、又はその逆方向に移動する際に流体がマニホールド7の奥の壁(far wall)11から反射して戻ってくる(reflected back)ように構成されている。
【0102】
図8に示す実施形態において、入口7は、膨張性要素4、5の中央において、その長手方向軸に沿い且つ該軸に対して垂直に位置している。マニホールド7は第1及び第2のダクト12、13に分岐している。第1のダクトによってマニホールド7は膨張性要素4、5のそれぞれの第1の端9、10に接続されており、また、第2のダクト13によってマニホールド7は膨張性要素4、5のそれぞれの第2の端13、14に接続されている。こうして、ポンプ2は膨張性要素4、5の各々の両端と流体連通している。
【0103】
図9に示す実施形態においては、上述の実施形態と同様に、マニホールド7は膨張性要素4、5の長手方向軸の中央において該軸に対して垂直に位置している。しかし、この実施形態において、マニホールド7は長尺の膨張性要素4、5の全長に沿ってその両側に接続されている。
【0104】
図10に示す実施形態においては、図7に示す実施形態と同様に、マニホールド7は膨張性要素4、5のそれぞれの第1の端9、10に設けられている。しかし、この実施形態において、マニホールド7は膨張性要素4、5の長手方向軸に対して実質的に平行であるがオフセットになっており、マニホールド7の主要部分と膨張性要素4、5のそれぞれの第1の端9、10との間にマニホールド7の「ドッグレッグ」部15が存在している。
【0105】
図6〜11に示す実施形態の各々において、マニホールド7は2個の膨張性要素4、5から等距離に設置されている。しかし、図11に示す実施形態において、マニホールド7は膨張性要素4、5の長手方向軸の中央と膨張性要素4、5のそれぞれの第1の端9、10との間に設置されている。マニホールド7は膨張性要素4、5の長手方向軸に対して実質的に垂直である。
【0106】
患者間のわずかな解剖学的差異に対応するため、幾つかの実施形態においては、エネルギー変換器2と大動脈周囲カフ3との間に自在継手(universal coupling)を設けて、該カフのずれを確実に回避している。このようなずれは、次の二理由、即ち、カウンターパルセーションの有効性が低下する場合があること、そして、局所的な大動脈壁応力の増大によって大動脈外傷の危険性が増加する場合があることから望ましくない。
【0107】
図12及び13に示すように、自在継手16は「ボールとダブルソケット」接合を有する。より詳細には、自在継手16は、穴20を内部に有するボール19によって接続された第1及び第2の略円筒状部分17、18を有する。第1及び第2の部分17、18は相対移動が可能なように各々、ボール19に対して旋回可能となっている。穴20によって第1の部分17と第2の部分18とは流体連通している。
【0108】
図14及び15に示す本発明の他の実施形態においては、自在継手16は第1及び第2の略円筒状部分17、18を有し、第1及び第2の略円筒状部分17、18は、これらが相対移動可能なように十分可撓な蛇腹状部分(concertinaed section)21によって接続されている。
【0109】
幾つかの実施形態においては、例えば、エネルギー変換器2に対するカフ3の位置調整が一面内でしかできないようなキー溝(key-ways)を用いて、図12〜15に示す自在継手の移動を制限する。
【0110】
このような自在継手によって体積が変化するとカフにおける流体の充填や排出の遅延によって装置の有効性が低下するため、自在継手のコンプライアンスは低い必要がある。好ましい実施形態の一変形例(variant)においては、埋め込み時に外科医が調整した上で、患者の組織に最も適した方法で自在継手を特定の配置で堅くロックすることができる。幾つかの実施形態においては、外科医が埋め込み処置時にねじ付き圧縮リングやグラブねじをしっかりと締めることによって自在継手をロックし、埋め込んだ装置を適切な配置に保持する。
【0111】
好ましい実施形態においては、ポンプ2を大動脈周囲カフ3と平行に隣接するように設置する。幾つかの実施形態においては、図16に示すように、ポンプ2と大動脈周囲カフ3とによって形成される面の一側にスリット22を設ける。即ち、スリット22は後内方に(postero-medially)向けられる。他の実施形態においては、図17に示すように、大動脈周囲カフ3のポンプ2から遠方側にスリット22を設ける。即ち、スリット22は前内方に(antero-medially)向けられる。
【0112】
エネルギー変換器−大動脈周囲カフアセンブリの安定化
カウンターパルセーションの有効性を最大限にし、且つ大動脈外傷の危険性を最小限に抑えようとする場合、大動脈6に対する大動脈周囲カフ3の位置安定性は最も重要である。本発明の実施形態の重要な利点は、大動脈周囲ジャケット3内のスリット22によって、大動脈の外科的分断や心肺バイパスを必要とせずに迅速に大動脈周囲ジャケットを大動脈6に設置できることである。しかし、大動脈6に大動脈周囲ジャケット3を設置した場合、その後、該ジャケット3がずれないことが重要である。このようなずれを防止するため、幾つかの実施形態においては、装置1を大動脈6に対して固定する。
【0113】
幾つかの実施形態においては、大動脈6に大動脈周囲ジャケット3を設置した後、ポリエステル織布やDacron(登録商標)、PTFE等の強合成繊維から成る低伸張性の不活性スリーブを該ジャケットの外周に設ける。外科医によってこのような材料から成るシートはスリーブ形状に縫合される。また、幾つかの実施形態においては、このようなスリーブを予め形成しておいて、外科医が大動脈6の両端に該スリーブを縫合する。
【0114】
更なる実施形態においては、引張強度の高いラチェットプラスチックバンド(例えば、ナイロンや他の材料から成るバンド)を大動脈周囲ジャケット3の外側に設ける。このような実施形態の変形例においては、該バンドの外周を変化させるために調整可能なバックルをバンドに設ける。他の変形例においては、このようなバンドは織材料から成っており、外科医によって縫合することができる。幾つかの実施形態においては、不活性スリーブとプラスチックバンドの両方を設ける。
【0115】
大動脈直径の変化への適応(Accommodation)
下行大動脈に血液循環補助装置を設置するために優先的にサイズ及び形状を調節する本発明の実施形態の重要な利点は、上行大動脈に比べて、下行大動脈では直径の変化が小さいため該装置の有効性が予測可能であることである。しかし、大動脈の直径とは関係無く、該装置が大動脈に効果的に連結できることは重要である。一実施形態においては、スリット22の両側に当接している大動脈周囲カフ3の外縁は半剛性であり、通常の条件下では若干広がっている(splayed)。こうして、安静時(即ち、該装置のスイッチを入れる前)に該カフ3にかかる円周張力(circumferential tension)が弱くなるように該カフを適切に形成することによって、外科医が2個の膨張性要素4、5を所望の程度に近づけることができる。大動脈の直径は手術前又は手術時に撮像によって測定することができるため、大動脈周囲ジャケット3の直径を不連続に増大するよう調節できれば、大動脈内皮の対側接触を回避しながら大動脈の最適な圧縮を確実にする手段が存在することになる。
【0116】
このような利益は他の実施形態、即ち、大動脈周囲カフ3が1個又は2個のヒンジ顎部(hinged jaws)を有し、該顎部に膨張性要素4、5が設置されており、該顎部を大動脈6のサイズに適した直径にロックすることができる実施形態において得ることができる。
【0117】
大動脈の強化
本発明の装置を埋め込む外科医は、大動脈外膜(最外層)と膨張性要素4、5とが直接に接触しないことを望んでいると考えられる。これを実現するためには、ポリエステル織布(Dacron(登録商標))スリーブやPTFEスリーブ、組織工学的構築物(tissue engineered construct)、又は動員肋間筋や他の自己組織(心膜等)を膨張性要素4、5と大動脈6を収容するチャンバとの間に設ける。調節可能な大動脈周囲ジャケット3によって、埋め込み処置におけるこのような組込みが可能となる。
【0118】
ある状況下では、装置1によって大動脈の解離及び/又は剥離が生じ得る危険性が高いと考えられる場合、該解離/剥離の伝播を防止するため、2個の環状ステントを大動脈周囲ジャケットの両端において大動脈6の内腔に導入する。大動脈6内の各環状ステントが存在する位置において、外部結紮(External banding)を大動脈6の周囲に施す。こうして、大動脈6は内側のステントと外側の外部バンドとの間に挟まれる。これによって大動脈解離の伝播を防止する。
【0119】
好ましい実施形態においては、各環状ステントにはその縁に沿って円周溝を設けて外部バンドを適用する際に大動脈6を収容するようにし、大動脈6を該溝内に押し込む。これによって、ステントと外部バンドが適所に保持されるよう補助する。
【0120】
エネルギー変換器の安定化
幾つかの実施形態においては、エネルギー変換器2の外表面上に小穴を設け、胸腔(例えば、脊椎や肋骨、肋間筋、軟骨)内で血液循環補助装置が剛性構造物又は半剛性構造物に縫合、有線結着又は螺設できるようして該変換器を安定化させる。
【0121】
エネルギー変換器の変形例
本発明の血液循環補助装置の作動時においては、大動脈外傷を最小限に抑えることが好ましい。ポンプ3がインペラを有し、このインペラが軸を中心に回転し、軸方向に移動して逆ポンプ作用(reversal of pumping)をもたらす実施形態(WO−A−02/24254に詳述)においては、該装置作動時の大動脈6への反力を回避する特徴が得られることが好ましい。エネルギー変換器2の場合、通常の作動時にインペラアセンブリが二方向軸並進することによる軸反作用(axial reactions)は小さい。この反作用は大動脈6に伝達され得るが、インペラアセンブリの質量はエネルギー変換器/カフアセンブリ2、3の残部に対して小さいため、この作用は臨床上重要ではなさそうであると考えられる。しかし、この反作用が大動脈6や他の器官に望ましくない影響を及ぼし得ることが考えられる。従って、一実施形態においては、エネルギー変換器2は2個のインペラアセンブリを有し、該アセンブリは同時に互いに近づく方向又は離れる方向に動き、軸反作用を排除する。
【0122】
他の変形例においては、インペラアセンブリの軸方向運動に伴う反作用は、等価質量(an equivalent mass)の反対方向への同時電磁駆動運動によって除去する。当然のことながら、等価質量の運動の方向は、該運動が反対方向の成分を有していれば正確に反対方向である必要はない。
【0123】
このような問題に対する解決策としては、線形並進(linear translation)しない回転インペラから構成され、軸方向往復バルブアセンブリ又は回転バルブアセンブリによって流体の流動方向が変化するエネルギー変換器が挙げられる。
【0124】
図22及び23を参照しつつ、軸方向往復バルブアセンブリを有するエネルギー変換器の実施形態について説明する。
【0125】
エネルギー変換器24は、図1に示すようなカフ(図示せず)に通じる第1の円筒状連結部26と、流体貯留器(図示せず)に通じる第2の円筒状連結部27とを有する略管状のハウジング25から成る。該管状ハウジングは両端がシールされている。管状ハウジング25の内部には、第1の円筒状連結部26と位置合わせされた第1の開口部29を有する軸方向に摺動可能な管状バルブアセンブリ28が設けられている。第1の開口部29とは半径方向に対向して、第2及び第3の開口部30、31が管状バルブアセンブリ28に設けられている。第2及び第3の開口部30、31は軸方向に沿って並べられているが、管状バルブアセンブリ28が軸方向に移動する際、第2及び第3の開口部30、31の両方ではなくいずれか一方が(即ち、少なくともそれら両方の全幅に亘らないように)第2の円筒状連結部27と位置合わせされるように該開口部30、31は互いに離れている。
【0126】
管状バルブアセンブリ28内には、管状マニホールド32が管状バルブアセンブリ28及び管状ハウジング25に対して同軸上に設けられている。マニホールド32によって実質的に円筒状の内部33が形成されている。マニホールド32の一側には収縮入口34及び膨張出口35が設けられており、これらは両方とも第1の円筒状連結部26と位置合わせされている。管状バルブアセンブリの第1の開口部29のサイズと設置場所は、該開口部が収縮入口34及び膨張出口35の両方ではなくいずれか一方と位置合わせできるように(即ち、少なくともそれら両方の全幅に亘らないように)決められている。
【0127】
マニホールド33の反対側には、第2の円筒状連結部27と位置合わせされた膨張入口36及び収縮出口37が設けられている。第2及び第3の開口部30、31のサイズ及び設置場所は、第1の開口部29が収縮入口34と位置合わせされる場合には、第3の開口部31が収縮出口37と位置合わせされ、膨張入口36がバルブアセンブリ28によってブロックされるように決められる。一方、第1の開口部29が膨張出口35と位置合わせされる場合には、第2の開口部30が膨張入口36と位置合わせされ、管状バルブアセンブリ28が収縮出口37をブロックする。
【0128】
駆動流体は、前記カフ、エネルギー変換器24及び流体貯留器によって形成されるエンクロージャに提供される。
【0129】
円筒状の内部33には遠心インペラ38が設けられており、インペラ38は駆動流体を軸方向入口39に吸引し、該流体をインペラ38の縁40にて排出する。インペラ38の縁40は、一側において収縮出口37と、他側において膨張出口35と位置合わせされている。
【0130】
使用する際、カフのブラダは収縮しており、管状バルブアセンブリは図22に示す第1の位置にある。この位置においては、矢印41で示すように、インペラ38によって駆動流体が第1の円筒状連結部26、第1の開口部29及び収縮入口34を経由して軸方向入口39からインペラ38内に吸引され、該流体はインペラ38の縁40から収縮出口37、第3の開口部31及び第2の円筒状連結部27を経由して駆動流体貯留器へと排出される。こうして、駆動流体はカフのブラダから駆動流体貯留器へと送り出される。
【0131】
インペラ38によって同じ方向へ(即ち、軸方向入口39から縁40へ)ポンプ作用が継続されるが、ポンプ作用の方向を逆にするため、電磁アクチュエータ(図示せず)によって管状バルブアセンブリ28を図23に示す第2の位置へ軸方向に移動する。
【0132】
第2の位置においては、駆動流体が第2の円筒状連結部27から第2の開口部30及び膨張入口36を経由してインペラ38の軸方向入口39へと送り出される。矢印42で示すように、そこから該流体はインペラ38の縁40へと送り出され、膨張出口35及び第1の開口部29を経由して、カフのブラダに通じる第1の円筒状連結部26に排出される。こうして、駆動流体は矢印42に示すようにカフのブラダに送り出され、ブラダは膨張する。
【0133】
次に、カフのブラダを再度収縮するため、管状バルブアセンブリ28は電磁アクチュエータによって図22に示す第1の位置に戻される。こうして、カフのブラダの収縮と膨張を交互に行うため、管状バルブアセンブリ28は軸方向に往復移動する。
【0134】
図24〜29を参照しつつ、回転バルブアセンブリを有するエネルギー変換器の実施形態について説明する。図22及び図23に示した実施形態と同様の構成部品に対しては同一の参照番号を用いる。上述の実施形態と同様に、エネルギー変換器24は、第1及び第2の円筒状連結部26、27を互いに反対側に設けた略管状のハウジング25を有する。該ハウジング内にはそれと同軸上に管状バルブアセンブリ28が設けられており、該アセンブリは、第1の円筒状コネクタ26と位置合わせ可能な第1の開口部29と、第2の円筒状コネクタ27と位置合わせ可能な第2及び第3の開口部30、31とを有する。しかし、この実施形態においては、第2の開口部30と第3の開口部31とは軸方向に沿って並べられておらず、軸方向及び円周方向において互いにオフセットしており、管状バルブアセンブリ28の回転によって、第2の開口部30及び第3の開口部31の両方ではなくいずれか一方が第2の円筒状コネクタ27と位置合わせされる(即ち、少なくともこれらの両方が完全に位置合わせされない)ように構成されている。
【0135】
更に、第4の開口部43が管状バルブアセンブリ28の第1の開口部29と同じ側に設けられている。ここでも、第1の開口部29と第4の開口部43とは円周方向及び軸方向において互いにオフセットしており、管状バルブアセンブリ28の回転によって、第1の開口部29及び第4の開口部43の両方ではなくいずれか一方が第1の円筒状コネクタ26と位置合わせされる(即ち、少なくともこれらの両方が完全に位置合わせされない)ように構成されている。
【0136】
管状バルブアセンブリ28の開口部29、30、31及び43の配置は、第1の開口部29が収縮入口34と位置合わせされる場合に、第3の開口部31が収縮出口37と位置合わせされ、膨張出口35と膨張入口36は管状バルブアセンブリ28によってブロックされるように構成されている。逆に、第2の開口部30が膨張入口36と位置合わせされる場合には、第4の開口部43が膨張出口35と位置合わせされ、収縮入口34と収縮出口37は管状バルブアセンブリ28によってブロックされる。
【0137】
管状バルブアセンブリ28内においては、上述の実施形態と同様に、マニホールド32及びインペラ38が該アセンブリと同軸上に設けられている。
【0138】
使用する際、管状バルブアセンブリ28は図24〜26に示す第1の位置にある。第1の位置においては、第1の開口部29は第1の円筒状コネクタ26と収縮入口34とに位置合わせされており、第3の開口部31は、収縮出口37と第2の円筒状コネクタ27とに位置合わせされている。インペラ38によって駆動流体が第1の円筒状コネクタ26、第1の開口部29及び収縮入口34を経由して軸方向入口39内に吸引される。次に、矢印41に従い、インペラ38の駆動によって、駆動流体はインペラ38の縁40から収縮出口37、第3の開口部31及び第2の円筒状コネクタ27を経由して排出される。こうして、駆動流体は、第1の円筒状コネクタ26と流体連通しているカフのブラダから、第2の円筒状コネクタ27に流体連通している貯留器へと送り出される。
【0139】
エネルギー変換器24のポンプ作用の方向を逆にする際、インペラ38のポンプ作用の方向を逆にする必要がない場合には、電磁アクチュエータ(図示せず)によって管状バルブアセンブリ28を図27〜29に示す第2の位置へ回転させる。第2の位置においては、第4の開口部43は第1の円筒状コネクタ26と膨張出口35とに位置合わせされている。同様に、第2の開口部30、31は膨張入口36と第2の円筒状コネクタ27とに位置合わせされている。こうして、インペラ38によって、駆動流体は第2の円筒状コネクタ27から第2の開口部30及び膨張入口36を経由してインペラ38の軸方向入口39へと送り出される。矢印42で示すように、そこから該流体はインペラ38の縁40へと送り出され、膨張出口35、第4の開口部43及び第1の円筒状コネクタ26を経由して、カフのブラダ(図示せず)に排出される。従って、管状バルブアセンブリ28の第2の位置においては、インペラ38は駆動流体をブラダに送り出してブラダを膨張させる作用を有する。
【0140】
次に、管状バルブアセンブリを回転させ、第1の位置に戻して収縮させ、このプロセスを反復する。
【0141】
当然理解されうるであろうが、概念的には、インペラ38の軸方向入口39は「流入口」と見なすことができ、インペラ38の縁40は「流出口」と見なすことができる。従って、図22〜29の実施形態は、流入口39がカフの膨張性ブラダと流体連通している第1の位置から、流出口40が膨張性ブラダと流体連通している第2の位置へ移動可能なバルブアセンブリ28から成る。
【0142】
エネルギー変換器のフェイルセーフ特性
本発明の血液循環補助装置1の潜在的に危険な故障モードは、大動脈6が全心周期で閉塞し続けて左室1回仕事量が上昇する場合である。本発明の実施形態のポンプは、軸を中心に回転可能で軸方向に移動してポンプ作用方向を逆にすることが可能なインペラを有しており(WO−A−02/24254に詳述)、本発明の実施形態は固有のフェイルセーフ特性に関する利点を有する。エネルギー変換器2のインペラが回転を停止した場合、大動脈圧によって作動流体が膨張性要素4、5からエネルギー変換器の貯留器へ流れる。しかし、故障モードによってインペラが回転し続け、インペラアセンブリが大動脈圧迫を伴う状態に留まった場合には、左心室に悪影響を及ぼすことになるであろう。このような問題に対処するため、幾つかの実施形態においては、インペラアセンブリの軸方向の位置を検出するセンサを設ける。該センサからの入力を受け取る制御メカニズムを設ける。インペラが軸方向に移動しなくなったことをセンサが検出するのに応じて、膨張性要素4、5が充填される位置で、制御メカニズムによってインペラへの電力をシャットダウンする。一実施形態において、このセンサは、インペラアセンブリの一以上の磁石が接近していることを検出するホール効果センサである。
【0143】
エネルギー変換器の代替位置
図21に示す本発明の実施形態においては、大動脈周囲カフ3を下行大動脈6に固定する一方、エネルギー変換器2を腹腔又は前腹腔(pre-peritoneal cavity)内に設置し、液圧チューブ23によって該変換器を埋め込まれた大動脈周囲カフ3に連結する。本発明の更なる実施形態においては、エネルギー変換器2を体外に設置する。
【0144】
大動脈周囲カフの代替位置
好ましい実施形態においては、大動脈周囲ジャケット3を下行胸部大動脈6に設置する。しかし、他の実施形態においては、大動脈周囲ジャケット3を他の全身動脈位置(systemic arterial locations)に設ける。
【0145】
電力の供給
次の二手段の内の一手段によって埋め込まれた部品に電力を供給する。
【0146】
1.経皮的駆動系(Driveline)
幾つかの実施形態においては、この駆動系に余剰の電気ケーブルを設け、個々のケーブルが故障した場合にも確実に電力の供給が継続されるようにする。引張強度及び可撓性が高いケーブル(例えば、カドミウム/銅マルチフィラメント系)を設ける。幾つかの実施形態においては、組織の内部成長を促進し、感染の危険性を最小限に抑えるために、該駆動系にテクスチャ加工した外スリーブも設ける。特定の実施形態においては、電力の供給に加え、経皮的駆動系にコンダクタを設けて、オペレータが血液循環補助装置(即ち、カウンターパルセータ)の作動特性を調節することができ、且つ心拍シグナルや警報、データを外部コントローラ/モニタへ送ることができるようにする。
【0147】
2.経皮的誘導カップリング系(Transcutaneous Inductive Coupling System)(TETS)
幾つかの実施形態においては、電力の供給に加え、TETS系に遠隔測定リンクも設けて、オペレータがカウンターパルセータの作動特性を調節することができ、且つ心拍シグナルや警報、データを外部コントローラ/モニタへ送ることができるようにしている。
【0148】
コントローラ
幾つかの実施形態においては、血液循環補助装置1は、経皮的駆動系又はTETS系から電力を受け取る電子コントローラを有する。該コントローラは、心拍を検出して該装置の作動が適切に同期することを確実にする手段を有する。該装置の作動と心拍とを同期させるには、心電図(ECG)の検出や他の方法(位置センサや圧力センサ、加速度計等)の使用が必要となる場合がある。動脈のパルス波をトリガーに用いることができる。心拍の検出にECGモニタリングが必要な場合、幾つかの実施形態においては、埋め込まれた部品に少なくとも1個のECG電極を組み込む。幾つかの実施形態においては、ECG検出器は一体除細動保護(integral defibrillation protection)を有する。
【0149】
該コントローラによってエネルギー変換器2の機能を調節する。該コントローラに警報器(音声警報器又は振動警報器)を設けて患者に機能不良を警告することができる。該コントローラにはデータロギング設備を設けることができる。該システムが経皮的駆動系を有する場合、該コントローラは体内にあってもよく、体外にあってもよい。該コントローラが体内にある場合、これをTETS系の二次コイル又はエネルギー変換器/大動脈周囲ジャケットアセンブリと一体化させることができる。
【0150】
埋め込み電池
心室補助装置サポートとは異なり、カウンターパルセーションのサポートは短期間中断しても患者は十分耐えられるであろう。従って、通常、外部電源が不意又は故意に切断された場合に該システムに電力を供給するための埋め込み型再充電可能電池を設ける必要はない。しかし、幾つかの実施形態においては、例えば、カウンターパルセータの連続機能への依存度が高い患者が風呂に入りたい場合には、埋め込み型の再充電可能な電池を設ける。
【0151】
大動脈周囲ジャケットの代替構成
幾つかの実施形態においては、特に製造を容易にするために、大動脈周囲ジャケット3には単一の膨張性要素4を設ける。このような実施形態において、大動脈は、膨張性要素と大動脈周囲ジャケット3の一部となり得る剛性又は半剛性の要素対向面との間で圧迫される。
【0152】
実施例
以下、実施例によって本発明を更に説明する。
【実施例1】
【0153】
このデータは、WO−A−02/24254に記載のエネルギー変換器と図18に示す設計のプロトタイプカフとを用いたカウンターパルセーションの短期間ブタモデルにおいて得た。このプロトタイプ装置の有効性は、同一ブタモデルの40cm3大動脈内バルーンに対して評価した。
【0154】
近位左冠動脈前可行枝における動脈血圧と超音波冠血流量とを連続的にモニタリングした。図18に示すように大動脈周囲ジャケットを用いた。膨張性要素の長さが5cm及び9cmの2種類のカフを選択した。
【0155】
5cm及び9cmのいずれのカフの場合にも、拡張期圧の上昇は大動脈内バルーンの場合に匹敵することが分かった(図19参照)。後負荷軽減(afterload reduction)は、大動脈内バルーンの場合と比べて優れているとはいえないまでも、それに匹敵することが分かった。例えば、5cm長の大動脈周囲ジャケットの場合、大動脈内バルーンに比べて拡張末期圧が10mmHgも低下した。この典型的な装置の場合、拡張期冠血流量が50mL/分だけ増加し、補助無しの拍動(unassisted beats)時に比べて拡張/収縮移行期により大きな血流逆転スパイクが誘導されたが、これによって効果的な左室後負荷軽減の有力な証拠が得られた(図20参照)。
【0156】
短期間(1日)の実験後に大動脈周囲ジャケットのレベルでは大動脈への外傷を示すものは無かったが、これは、長期の自己骨格筋を動力とする大動脈外カウンターパルセーション研究(大動脈筋形成術(aortomyoplasty))7の組織学的知見と一致する。
【実施例2】
【0157】
上で詳述した設計仕様基準を実現させる目的で実験的モデル研究を行った。本発明の好ましい実施形態では、膨張性要素が2個の大動脈周囲ジャケットを用いたが、それは、このジャケットの場合、より対称な長手方向の大動脈応力やひずみ特性が得られ、カウンターパルセータによって誘導される大動脈壁のピーク循環偏位(peak cyclical excursion)が低くなるからである。これによって、カウンターパルセーションの臨床的有効性を決める上で非常に重要な因子である、大動脈血流量の時間に対する変化率(dQ/dt)の観点、及び大動脈の機械的疲労の観点の両方から理論的な利益が得られる。しかし、重要な問題は、膨張性要素の数を2からそれより多くした場合に更なる利益が得られるかどうかであった。本発明者らによる検討は、そうではないことを示唆している。
【0158】
図30〜33は、大動脈が大動脈周囲ジャケットの中央にある場合(即ち、大動脈の変形が最大の場合)を表わすモデルの断面図である。これらは、断面直径及びリング内径がそれぞれ2mm及び99.1mmのブチルゴム製Oリングをモデルとして使用し、このリングに向けてエアロゾルを噴霧して得たものであり、A4サイズのグラフ用紙上で安静状態44(円形)及び変形状態45を示す。直径76.1mmの剛性ディスク46で圧迫して変形させ、膨張性要素の膨張状態の作用をシミュレートした。大動脈/膨張性要素の直径比は、該ジャケットの製造及び大動脈周囲への設置の両方の観点から実際的と思われる値に基づいて選択した(続いて行った検討から、大動脈の変形はこの直径比には比較的影響を受けないことが分かった。)。
【0159】
図30はシミュレートした大動脈を示し、その安静時の状態と、最も狭い部分の隙間が安静時の大動脈内径の20%になる程度に圧迫された状態とを示す。この変形においては、断面積が元の値の51.5%に減少した。この変形した大動脈プロファイルにおいては、最小横断面曲率半径は18mm(即ち、安静時半径の36.3%)であった。結論として、この実験では、大動脈壁プロファイルに対する内腔圧の影響を無視したため、最小横断面曲率半径は少なく見積もられた。結果として、このモデルにおいては、インビボで見られるのと比べてより楕円形の大動脈の屈曲が膨張性要素との接触箇所から最も離れた位置で生じた。
【0160】
内腔圧の作用をモデル化して大動脈変形をより良く実現するため、膨張性要素の動きに対して垂直方向の軸に設けたバー47でOリングを抑えた(図31参照)。この場合、最小横断面曲率半径値は20mmより大きくなった(即ち、安静時半径の40.4%を超えた)。
【0161】
図32及び33は、3個の膨張性要素設計に対する動きの作用を示す。図32の場合、内腔の隙間は安静時直径の20%に維持されたが、断面積は元の値の41%まで減少し、これによって、最小曲率半径は10mm(即ち、安静時半径の20.2%)に減少し、その結果、局所的な大動脈応力やひずみが増大した。図33の場合、(変形時の)最小曲率半径は図31で測定した値と同等であり、断面積の減少は元の値の54%に抑えられた。
【0162】
これらの知見から、2個の膨張性要素設計が3個(又はそれ以上)の要素を有する設計よりも好ましいことが分かる。また、2個の膨張性要素設計の方が、他の解剖学的構造への干渉が少ないため、3個(又はそれ以上)の膨張性要素のシステムに比べて大動脈の周囲に設置し易いという利点もある。臨床的コンピュータ断層撮影データを用いた本発明者らの適合研究によってこの結論が立証される。
【0163】
本発明者らが行った短期間の動物実験的研究(実施例1参照)によって、2個の膨張性要素を有する大動脈周囲ジャケットは埋め込み時の設置が比較的容易であり、また、このような設計によって視覚的にも組織学的にも大動脈外傷を伴わないことが分かった。
【0164】
参考文献
1.Abou-Awdi NL(アボウ−アウディ), Frazier OH(フラツィア), The HeartMate(ハートメイト):A left ventricular assist device as a bridge to cardiac transplantation. (心臓移植への橋渡しとしての左心室補助装置), Transplantation Proceedings 1992;24:2002-2003。
2.Yacoub MH(ヤコウブ), Tansley P(タンスリー), Birks EJ(バークス), Banner NR(バナー), Khaghani A(カガニ), Bowles C(ボウルズ), A novel combination therapy to reverse end-stage heart failure (末期心不全を回復させるための新しい併用療法).Transplantation Proceedings 2001 33(5):2762-4。
3.Rose EA(ローズ), Gelijns AC(ゲリーンズ), Moskowitz AJ(モスコウィッツ) et al., Long-term mechanical left ventricular assistance for end-stage heart failure(末期心不全のための長期機械的左心室補助).New England Journal of Medicine 2001;345(20):1435-1443。
4.De Vries WC(デヴリーズ), Anderson JL(アンダーソン) et al., Clinical use of the total artificial heart(完全人工心臓の臨床的使用). New England Journal of Medicine 1984;310:273-278。
5.Moulopoulos SD(モウロポウロス), Topaz S(トパーズ), Kolff WJ(コルフ), Diastolic balloon pumping (with carbon dioxide) in the aorta - a mechanical assistance to the failing circulation(大動脈における拡張期バルーンポンプ(二酸化炭素使用)−循環不全に対する機械的補助), American Heart Journal 1962;63:669。
6.Arafa, OE(アラファ) et al., Annals of Thoracic Surgery 1999;67:645-651。
7.Pattison CW(パティソン), Cumming DVE(カミング), Williamson A(ウィリアムソン) et al., Aortic counterpulsation for up to 28 days using autologous latissimus dorsi in sheep(ヒツジの自己広背筋を用いた最大28日間の大動脈カウンターパルセーション), J Thorac Cardiovasc Surg 1991;102:766-73。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】図1は、本発明の一実施形態における血液循環補助装置の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態における、大動脈の周りに設置した大動脈周囲カフの断面図である(収縮状態(左)及び膨張状態(右))。
【図3】図3は、図2の実施形態における大動脈周囲カフ及び大動脈の線A−A(左)及び線B−B(右)に沿った長手方向断面図であり、膨張性要素が収縮している状態(左)及び膨張している状態(右)を示す。
【図4】図4は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置の軸方向断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態における血液循環補助装置の斜視図であり、コンピュータ断層撮影によるヒトの胸部のイラストを重ね合わせている。
【図6】図6は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置のマニホールド及び膨張性要素の斜視図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置のマニホールド及び膨張性要素の斜視図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置のマニホールド及び膨張性要素の斜視図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置のマニホールド及び膨張性要素の斜視図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置のマニホールド及び膨張性要素の斜視図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置のマニホールド及び膨張性要素の斜視図である。
【図12】図12は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置のエネルギー変換器と膨張性要素との間の第1の位置にある自在継手の斜視図である。
【図13】図13は、図12に示す自在継手が第2の位置にある場合の斜視図である。
【図14】図14は、本発明の更なる実施形態における血液循環補助装置のエネルギー変換器と膨張性要素との間の第1の位置にある他の自在継手の斜視図である。
【図15】図15は、図14に示す自在継手が第2の位置にある場合の斜視図である。
【図16】図16は、本発明の更に他の実施形態における血液循環補助装置の斜視図である。
【図17】図17は、本発明の他の実施形態における血液循環補助装置の斜視図である。
【図18】図18は、本発明の実施例1で用いる血液循環補助装置の大動脈周囲カフ及びマニホールドの斜視図である。
【図19】図19は、50mm長の大動脈周囲ジャケット(上)及び40cm3大動脈内バルーン(下)の場合の時間に対する動脈血圧を示すグラフである(記号:A=補助付き拍動、U=補助無し拍動)。
【図20】図20は、50mm長の大動脈周囲ジャケットを用いたモデルにおける時間に対するi)心電図(ECG)、ii)瞬時冠動脈血流(左冠動脈前下行枝近位部)、iii)動脈血圧のグラフである。これらグラフは補助比1:2で同時に得た。補助付き拍動を「A」で表わし、補助無し拍動を「U」で表わす。
【図21】図21は、本発明の更なる実施形態における血液循環補助装置の斜視図であり、ヒト胴体内の位置を示す。
【図22】図22は、軸方向往復バルブアセンブリを有する、本発明の一実施形態におけるエネルギー変換器の「カフ収縮」状態における長手方向断面概略図である。
【図23】図23は、図22に示す実施形態におけるエネルギー変換器の「カフ膨張」状態における長手方向断面概略図である。
【図24】図24は、回転バルブアセンブリを有する、本発明の他の実施形態におけるエネルギー変換器の「カフ収縮」状態における長手方向断面概略図である。
【図25】図25は、図24の線A−A’に沿った断面概略図である。
【図26】図26は、図24の線B−B’に沿った断面概略図である。
【図27】図27は、図24に示す実施形態におけるエネルギー変換器の「カフ膨張」状態における長手方向断面概略図である。
【図28】図28は、図27に示すエネルギー変換器の線A−A’に沿った断面概略図である。
【図29】図29は、図27に示すエネルギー変換器の線B−B’に沿った断面概略図である。
【図30】図30は、実験モデルを用い、2個の膨張性要素で圧迫する際の大動脈の屈曲について検討した結果である。
【図31】図31は、実験モデルを用い、2個の膨張性要素で圧迫し、内腔圧の作用をモデル化するために更に圧迫する際の大動脈の屈曲について検討した結果である。
【図32】図32は、実験モデルを用い、3個の膨張性要素で圧迫する際の大動脈の屈曲について検討した結果である。
【図33】図33は、実験モデルを用い、3個の膨張性要素で圧迫する際の大動脈の屈曲について検討した結果である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素を有する血液循環補助装置であって、前記チャンバは前記一以上のカフ要素の両端にて開放されていて血液導管がそこを通って延在するように構成されており、血液導管の周りに前記一以上のカフ要素を設置するために前記チャンバの各末端間の前記一以上のカフ要素の一側に開口部が設けられており、前記一以上のカフ要素は、血液導管を圧迫するための2個の内方拡張型膨張性要素を有し、該膨張性要素は前記チャンバを挟んで互いに正反対に配置されている血液循環補助装置。
【請求項2】
2個のカフ要素が前記チャンバを形成し、前記開口部は前記2個のカフ要素間に設けられている、請求項1に記載の血液循環補助装置。
【請求項3】
前記2個のカフ要素、前記膨張性要素、及びそれらによって形成される前記チャンバは長尺であり、前記チャンバはその内部で長手方向に血液導管を収容することができるように構成されていると共に、前記カフ要素及び前記膨張性要素は血液導管に対して平行である、請求項2に記載の血液循環補助装置。
【請求項4】
前記2個の内方拡張型膨張性要素に通じる入口を更に有する、請求項3に記載の血液循環補助装置。
【請求項5】
前記入口は、各膨張性要素の長手方向軸に沿って該要素の中央に通じる、請求項4に記載の血液循環補助装置。
【請求項6】
前記入口は、各膨張性要素の一端に通じる、請求項4に記載の血液循環補助装置。
【請求項7】
前記入口は、各膨張性要素の両端に通じる、請求項4に記載の血液循環補助装置。
【請求項8】
前記入口は、各膨張性要素の全長に沿って該要素の側面に通じる、請求項4に記載の血液循環補助装置。
【請求項9】
前記入口は、前記膨張性要素の長手方向軸に対して実質的に平行である、請求項6に記載の血液循環補助装置。
【請求項10】
前記入口は、前記膨張性要素の長手方向軸に対して鋭角を成す、請求項6に記載の血液循環補助装置。
【請求項11】
前記入口は、各膨張性要素の長手方向軸の中央と末端との間のある点において該要素の側面に通じる、請求項4に記載の血液循環補助装置。
【請求項12】
前記2個の膨張性要素は同時に膨張可能である、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項13】
前記膨張性要素に通じるマニホールドを更に有し、各膨張性要素に通じるマニホールドの断面は異なっている、請求項12に記載の血液循環補助装置。
【請求項14】
前記2個の膨張性要素の最大拡張時に、前記チャンバに収容されている血液導管の相対する側面が互いに接触しない、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項15】
前記膨張性要素の最大拡張時に、前記チャンバに収容されている血液導管の最小横断面曲率半径が最大になり、好ましくは、最小横断面曲率半径が元の値の少なくとも30%となる、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項16】
前記2個の膨張性要素の最大拡張時に、前記チャンバに収容されている血液導管の内腔断面積の減少は元の値の50%未満であり、好ましくは元の値の51.5%未満である、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項17】
前記膨張性要素は弾性変形に耐える材料から成る、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項18】
前記膨張性要素の両端は丸みを帯びている、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項19】
前記膨張性要素の両端は、前記チャンバに収容されている血液導管の軸に沿って、前記一以上のカフ要素から長手方向に突出している、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項20】
前記膨張性要素と流体連通するポンプを更に有する、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項21】
前記ポンプから前記膨張性要素への流体路は断面積が増加する、請求項20に記載の血液循環補助装置。
【請求項22】
前記ポンプと前記膨張性要素との間を連絡する流体は粘度が8×10-4〜1.2×10-3Pa.s(0.8〜1.2cP)であり、好ましくは1×10-3Pa.s(1.0cP)である、請求項20又は21に記載の血液循環補助装置。
【請求項23】
前記ポンプと前記膨張性要素との間を連絡する流体はフッ化炭素である、請求項20〜22のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項24】
前記ポンプと前記膨張性要素との間を流体連通させるためにそれらの間に設けた連結部は可撓性である、請求項20〜23のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項25】
前記可撓性連結部は、通路が内部に延在するボールを有し、ソケットの両端に回転可能に接続されているジョイントから成る、請求項24に記載の血液循環補助装置。
【請求項26】
前記可撓性連結部は可撓性を得るために蛇腹状である、請求項24に記載の血液循環補助装置。
【請求項27】
前記可撓性連結部は特定の配置にロック可能である、請求項24〜26のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項28】
前記ポンプは前記一以上のカフ要素に隣接しており、前記開口部は前記チャンバの該カフとは反対側に設けられている、請求項20〜27のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項29】
前記ポンプは前記一以上のカフ要素に隣接しており、前記開口部は前記チャンバの、前記ポンプに対して90°の位置に設けられている、請求項20〜27のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項30】
前記ポンプは、軸を中心に回転してポンプ作用をもたらすことができるインペラを有し、前記インペラは、軸方向に第1の位置から第2の位置まで移動してポンプ作用の方向を逆にすることができる、請求項20〜29のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項31】
平衡錘を更に有し、前記平衡錘は、前記インペラと同期して前記インペラの軸方向移動とは反対方向に移動して前記インペラの移動の反作用に拮抗することができる、請求項30に記載の血液循環補助装置。
【請求項32】
前記平衡錘は前記インペラと平行に移動可能である、請求項31に記載の血液循環補助装置。
【請求項33】
前記平衡錘は第2の回転可能なインペラを有し、両方のインペラが軸を中心に回転してポンプ作用をもたらすことができる、請求項31又は32に記載の血液循環補助装置。
【請求項34】
前記インペラが第1の位置又は第2の位置にあることを検出することが可能なセンサと、前記膨張性要素の膨張を引き起こす位置に前記インペラがロックされたことを前記センサが検出するのに応じて前記インペラをシャットダウンするための制御メカニズムとを更に有する、請求項30〜33のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項35】
前記ポンプは、回転可能なインペラと、流体を吸引するための流入口と、流体を排出するための流出口と、前記回転可能なインペラと前記膨張性要素との間に設けられたバルブアセンブリとを有し、前記バルブアセンブリは、前記流入口が前記膨張性要素と流体連通する第1の位置から前記流出口が前記膨張性要素と流体連通する第2の位置まで摺動可能又は回転可能であり、前記バルブアセンブリが第1の位置と第2の位置との間を移動することによって前記膨張性要素はそれぞれ収縮及び膨張するように構成されている、請求項20〜29のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項36】
前記ポンプは腹腔内に設置可能であり、液圧チューブを介して前記膨張性要素に接続されている、請求項20〜29のいずれかに記載の血液循環補助装置。
【請求項37】
前記ポンプと前記膨張性要素との間にフローガイドが設けられている、請求項20〜36のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項38】
前記一以上のカフ要素の外周に設けられたスリーブを更に有する、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項39】
前記一以上のカフ要素の周りに少なくとも1個のバンドを更に有する、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項40】
前記一以上のカフ要素は、前記チャンバのサイズを増加又は減少させるように移動可能である、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項41】
ロック可能なヒンジで接続された二以上のカフ要素が設けられている、請求項40に記載の血液循環補助装置。
【請求項42】
前記膨張性要素と前記チャンバとの間に設置された内スリーブを更に有する、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項43】
血液循環補助装置自身を構造物に取り付けるための一以上の小穴を更に有する、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項44】
前記膨張性要素は長さが3〜15cmであり、好ましくは5〜9cmである、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項45】
前記膨張性要素は、該装置を装着した患者の各心周期において1回膨張可能である、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項46】
前記膨張性要素は、該装置を装着した患者の各心周期の拡張期、又はそれより低い頻度で膨張可能である、請求項1〜44のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項47】
ヒトの左傍脊椎溝内に設置可能である、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項48】
個体の心拍を検出するための一又は複数の一体型ECG電極を更に有する、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項49】
個体の心拍を検出するための位置センサ、圧力センサ又は加速度計を更に有する、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項50】
血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素を有する血液循環補助装置であって、前記一以上のカフ要素は、前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための内方拡張型膨張性要素を有し、該膨張性要素は、その最大拡張時に前記チャンバに収容された血液導管の最小横断面曲率半径が最大になるように拡張可能である血液循環補助装置。
【請求項51】
前記血液導管の最小横断面曲率半径は元の値の少なくとも30%である、請求項50に記載の血液循環補助装置。
【請求項52】
前記膨張性要素の最大拡張時に、前記血液導管の内腔断面積の減少は元の値の50%超までである、請求項50又は51に記載の血液循環補助装置。
【請求項53】
血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素と、ポンプとを有する血液循環補助装置であって、前記一以上のカフ要素は、前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための内方拡張型膨張性要素を有し、前記ポンプは、回転可能なインペラと、流体を吸引するための流入口と、流体を排出するための流出口と、前記回転可能なインペラと前記膨張性要素との間に設けられたバルブアセンブリとを有し、前記バルブアセンブリは、前記流入口が前記膨張性要素と流体連通する第1の位置から前記流出口が前記膨張性要素と連通する第2の位置まで摺動可能又は回転可能であり、前記バルブアセンブリが第1の位置と第2の位置との間を移動することによって前記膨張性要素はそれぞれ収縮及び膨張するように構成されている血液循環補助装置。
【請求項54】
血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素と、ポンプとを有する血液循環補助装置であって、前記一以上のカフ要素は、前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための内方拡張型膨張性要素を有し、前記ポンプは、該膨張性要素と流体連通し、軸を中心に回転してポンプ作用をもたらすことができるインペラを有しており、前記インペラは、軸方向に第1の位置から第2の位置まで移動してポンプ作用の方向を逆にすることができ、更に平衡錘が設けられており、前記平衡錘は、前記インペラと同期して前記インペラの軸方向移動とは反対方向に移動して前記インペラの移動の反作用に拮抗することができる血液循環補助装置。
【請求項55】
前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための第2の内方拡張型膨張性要素を更に有する、請求項50〜54のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項56】
血管のカウンターパルセーションを行う方法であって、血管の一部の各末端において前記血管の内腔に環状ステントを導入することと、前記血管の一部の各末端において前記血管の周りに外部バンドを設け、前記血管の一部分が各外部バンドとそれぞれの環状ステントとの間にトラップされるようにすることと、2個の環状ステント間で前記血管にカウンターパルセーションを行うこととを含む方法。
【請求項57】
請求項1〜55のいずれか1項に記載の血液循環補助装置を用いて血液導管の圧迫を行う、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
各環状ステントは、それぞれの外部バンドを収容するための円周溝を該ステントの外表面に有する、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項1】
血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素を有する血液循環補助装置であって、前記チャンバは前記一以上のカフ要素の両端にて開放されていて血液導管がそこを通って延在するように構成されており、血液導管の周りに前記一以上のカフ要素を設置するために前記チャンバの各末端間の前記一以上のカフ要素の一側に開口部が設けられており、前記一以上のカフ要素は、血液導管を圧迫するための2個の内方拡張型膨張性要素を有し、該膨張性要素は前記チャンバを挟んで互いに正反対に配置されている血液循環補助装置。
【請求項2】
2個のカフ要素が前記チャンバを形成し、前記開口部は前記2個のカフ要素間に設けられている、請求項1に記載の血液循環補助装置。
【請求項3】
前記2個のカフ要素、前記膨張性要素、及びそれらによって形成される前記チャンバは長尺であり、前記チャンバはその内部で長手方向に血液導管を収容することができるように構成されていると共に、前記カフ要素及び前記膨張性要素は血液導管に対して平行である、請求項2に記載の血液循環補助装置。
【請求項4】
前記2個の内方拡張型膨張性要素に通じる入口を更に有する、請求項3に記載の血液循環補助装置。
【請求項5】
前記入口は、各膨張性要素の長手方向軸に沿って該要素の中央に通じる、請求項4に記載の血液循環補助装置。
【請求項6】
前記入口は、各膨張性要素の一端に通じる、請求項4に記載の血液循環補助装置。
【請求項7】
前記入口は、各膨張性要素の両端に通じる、請求項4に記載の血液循環補助装置。
【請求項8】
前記入口は、各膨張性要素の全長に沿って該要素の側面に通じる、請求項4に記載の血液循環補助装置。
【請求項9】
前記入口は、前記膨張性要素の長手方向軸に対して実質的に平行である、請求項6に記載の血液循環補助装置。
【請求項10】
前記入口は、前記膨張性要素の長手方向軸に対して鋭角を成す、請求項6に記載の血液循環補助装置。
【請求項11】
前記入口は、各膨張性要素の長手方向軸の中央と末端との間のある点において該要素の側面に通じる、請求項4に記載の血液循環補助装置。
【請求項12】
前記2個の膨張性要素は同時に膨張可能である、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項13】
前記膨張性要素に通じるマニホールドを更に有し、各膨張性要素に通じるマニホールドの断面は異なっている、請求項12に記載の血液循環補助装置。
【請求項14】
前記2個の膨張性要素の最大拡張時に、前記チャンバに収容されている血液導管の相対する側面が互いに接触しない、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項15】
前記膨張性要素の最大拡張時に、前記チャンバに収容されている血液導管の最小横断面曲率半径が最大になり、好ましくは、最小横断面曲率半径が元の値の少なくとも30%となる、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項16】
前記2個の膨張性要素の最大拡張時に、前記チャンバに収容されている血液導管の内腔断面積の減少は元の値の50%未満であり、好ましくは元の値の51.5%未満である、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項17】
前記膨張性要素は弾性変形に耐える材料から成る、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項18】
前記膨張性要素の両端は丸みを帯びている、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項19】
前記膨張性要素の両端は、前記チャンバに収容されている血液導管の軸に沿って、前記一以上のカフ要素から長手方向に突出している、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項20】
前記膨張性要素と流体連通するポンプを更に有する、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項21】
前記ポンプから前記膨張性要素への流体路は断面積が増加する、請求項20に記載の血液循環補助装置。
【請求項22】
前記ポンプと前記膨張性要素との間を連絡する流体は粘度が8×10-4〜1.2×10-3Pa.s(0.8〜1.2cP)であり、好ましくは1×10-3Pa.s(1.0cP)である、請求項20又は21に記載の血液循環補助装置。
【請求項23】
前記ポンプと前記膨張性要素との間を連絡する流体はフッ化炭素である、請求項20〜22のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項24】
前記ポンプと前記膨張性要素との間を流体連通させるためにそれらの間に設けた連結部は可撓性である、請求項20〜23のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項25】
前記可撓性連結部は、通路が内部に延在するボールを有し、ソケットの両端に回転可能に接続されているジョイントから成る、請求項24に記載の血液循環補助装置。
【請求項26】
前記可撓性連結部は可撓性を得るために蛇腹状である、請求項24に記載の血液循環補助装置。
【請求項27】
前記可撓性連結部は特定の配置にロック可能である、請求項24〜26のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項28】
前記ポンプは前記一以上のカフ要素に隣接しており、前記開口部は前記チャンバの該カフとは反対側に設けられている、請求項20〜27のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項29】
前記ポンプは前記一以上のカフ要素に隣接しており、前記開口部は前記チャンバの、前記ポンプに対して90°の位置に設けられている、請求項20〜27のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項30】
前記ポンプは、軸を中心に回転してポンプ作用をもたらすことができるインペラを有し、前記インペラは、軸方向に第1の位置から第2の位置まで移動してポンプ作用の方向を逆にすることができる、請求項20〜29のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項31】
平衡錘を更に有し、前記平衡錘は、前記インペラと同期して前記インペラの軸方向移動とは反対方向に移動して前記インペラの移動の反作用に拮抗することができる、請求項30に記載の血液循環補助装置。
【請求項32】
前記平衡錘は前記インペラと平行に移動可能である、請求項31に記載の血液循環補助装置。
【請求項33】
前記平衡錘は第2の回転可能なインペラを有し、両方のインペラが軸を中心に回転してポンプ作用をもたらすことができる、請求項31又は32に記載の血液循環補助装置。
【請求項34】
前記インペラが第1の位置又は第2の位置にあることを検出することが可能なセンサと、前記膨張性要素の膨張を引き起こす位置に前記インペラがロックされたことを前記センサが検出するのに応じて前記インペラをシャットダウンするための制御メカニズムとを更に有する、請求項30〜33のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項35】
前記ポンプは、回転可能なインペラと、流体を吸引するための流入口と、流体を排出するための流出口と、前記回転可能なインペラと前記膨張性要素との間に設けられたバルブアセンブリとを有し、前記バルブアセンブリは、前記流入口が前記膨張性要素と流体連通する第1の位置から前記流出口が前記膨張性要素と流体連通する第2の位置まで摺動可能又は回転可能であり、前記バルブアセンブリが第1の位置と第2の位置との間を移動することによって前記膨張性要素はそれぞれ収縮及び膨張するように構成されている、請求項20〜29のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項36】
前記ポンプは腹腔内に設置可能であり、液圧チューブを介して前記膨張性要素に接続されている、請求項20〜29のいずれかに記載の血液循環補助装置。
【請求項37】
前記ポンプと前記膨張性要素との間にフローガイドが設けられている、請求項20〜36のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項38】
前記一以上のカフ要素の外周に設けられたスリーブを更に有する、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項39】
前記一以上のカフ要素の周りに少なくとも1個のバンドを更に有する、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項40】
前記一以上のカフ要素は、前記チャンバのサイズを増加又は減少させるように移動可能である、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項41】
ロック可能なヒンジで接続された二以上のカフ要素が設けられている、請求項40に記載の血液循環補助装置。
【請求項42】
前記膨張性要素と前記チャンバとの間に設置された内スリーブを更に有する、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項43】
血液循環補助装置自身を構造物に取り付けるための一以上の小穴を更に有する、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項44】
前記膨張性要素は長さが3〜15cmであり、好ましくは5〜9cmである、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項45】
前記膨張性要素は、該装置を装着した患者の各心周期において1回膨張可能である、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項46】
前記膨張性要素は、該装置を装着した患者の各心周期の拡張期、又はそれより低い頻度で膨張可能である、請求項1〜44のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項47】
ヒトの左傍脊椎溝内に設置可能である、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項48】
個体の心拍を検出するための一又は複数の一体型ECG電極を更に有する、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項49】
個体の心拍を検出するための位置センサ、圧力センサ又は加速度計を更に有する、先の請求項のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項50】
血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素を有する血液循環補助装置であって、前記一以上のカフ要素は、前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための内方拡張型膨張性要素を有し、該膨張性要素は、その最大拡張時に前記チャンバに収容された血液導管の最小横断面曲率半径が最大になるように拡張可能である血液循環補助装置。
【請求項51】
前記血液導管の最小横断面曲率半径は元の値の少なくとも30%である、請求項50に記載の血液循環補助装置。
【請求項52】
前記膨張性要素の最大拡張時に、前記血液導管の内腔断面積の減少は元の値の50%超までである、請求項50又は51に記載の血液循環補助装置。
【請求項53】
血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素と、ポンプとを有する血液循環補助装置であって、前記一以上のカフ要素は、前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための内方拡張型膨張性要素を有し、前記ポンプは、回転可能なインペラと、流体を吸引するための流入口と、流体を排出するための流出口と、前記回転可能なインペラと前記膨張性要素との間に設けられたバルブアセンブリとを有し、前記バルブアセンブリは、前記流入口が前記膨張性要素と流体連通する第1の位置から前記流出口が前記膨張性要素と連通する第2の位置まで摺動可能又は回転可能であり、前記バルブアセンブリが第1の位置と第2の位置との間を移動することによって前記膨張性要素はそれぞれ収縮及び膨張するように構成されている血液循環補助装置。
【請求項54】
血液導管を収容するためのチャンバを形成する一以上のカフ要素と、ポンプとを有する血液循環補助装置であって、前記一以上のカフ要素は、前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための内方拡張型膨張性要素を有し、前記ポンプは、該膨張性要素と流体連通し、軸を中心に回転してポンプ作用をもたらすことができるインペラを有しており、前記インペラは、軸方向に第1の位置から第2の位置まで移動してポンプ作用の方向を逆にすることができ、更に平衡錘が設けられており、前記平衡錘は、前記インペラと同期して前記インペラの軸方向移動とは反対方向に移動して前記インペラの移動の反作用に拮抗することができる血液循環補助装置。
【請求項55】
前記チャンバに収容された血液導管を圧迫するための第2の内方拡張型膨張性要素を更に有する、請求項50〜54のいずれか1項に記載の血液循環補助装置。
【請求項56】
血管のカウンターパルセーションを行う方法であって、血管の一部の各末端において前記血管の内腔に環状ステントを導入することと、前記血管の一部の各末端において前記血管の周りに外部バンドを設け、前記血管の一部分が各外部バンドとそれぞれの環状ステントとの間にトラップされるようにすることと、2個の環状ステント間で前記血管にカウンターパルセーションを行うこととを含む方法。
【請求項57】
請求項1〜55のいずれか1項に記載の血液循環補助装置を用いて血液導管の圧迫を行う、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
各環状ステントは、それぞれの外部バンドを収容するための円周溝を該ステントの外表面に有する、請求項56又は57に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公表番号】特表2008−525077(P2008−525077A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547654(P2007−547654)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2005/005018
【国際公開番号】WO2006/067473
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(303035064)カーディアック・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2005/005018
【国際公開番号】WO2006/067473
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(303035064)カーディアック・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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