説明

血液成分を提供する方法及び装置

方法は、試料(134)中の少なくとも1つの規定容積の標的成分(164)を提供するために提案される。方法は、以下の手順を含む:少なくとも2つの開口部(112、114)を有する少なくとも1つの計量キャピラリー(110)を準備すること;計量キャピラリー(110)を試料(134)で少なくとも部分的に満たすこと;計量キャピラリー(110)内の試料(134)中の少なくとも2つの成分(150、154)の少なくとも部分的な分離のために、成分分離を行なうこと;及び、計量キャピラリー(110)を少なくとも2つの部分片(160、162)に分割し、ここで、部分片の少なくとも1つ(160)は、規定容積の標的成分(164)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中、特に血液試料中の少なくとも1つの規定容積の標的成分を提供するための方法に関する。本発明は、さらに、試料中の少なくとも1つの規定容積の標的成分を提供するための計量キャピラリー及び装置に関する。かかる方法、計量キャピラリー、及び装置は、特に、毛細管血から規定量の血漿を得るために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
体液、例えば血液の検査は、医療診断の重要な要素であることが多い。かかる検査は、病院、及びポイントオブケア部門又はホームモニタリングで行なわれ得る。以下に記載の本発明は、特に血液試料に関するものであるが、他のタイプの試料、特に液体試料、好ましくは体液も同様に検査することができる。他の検査可能な試料に対して制限を加えるものではないが、以下では主に血液試料に関して本発明を説明する。
【0003】
試料は、通常、少なくとも1つの医療用及び/又は診断用に提供される。診断用では、例えばそれらは少なくとも1つの性質、例えば、物理的に、及び/又は化学的に、又は生化学的に測定することが可能な少なくとも1つのパラメータに関して検査され得る。例えば、試料は、少なくとも1つの検体、特に、少なくとも1つの代謝物の定性的検出及び/又は定量的検出の対象となり得る。そのため、従来から多くの検出方法が知られている。
【0004】
例えば、グルコース、コレステロール、トリグリセリド、ヘモグロビン、尿素、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ガンマ−グルタミントランスフェラーゼ(GGT)、クレアチニン(CREA)若しくは高比重リポタンパクコレステロール(HDLC)、又は上記分析物若しくは他の分析物の組み合わせの検出が可能である。さらに、血液の他の性質、例えば、血球成分の割合(ヘマトクリット値)が測定され得る。
【0005】
血液試料を検査する上での問題は、例えば、他のタイプの試料でも言えることだが、多くの場合、これらの血液試料を、更なる使用の前に処理しなければならないことである。具体的には、多くの用途で、血液試料を血球成分と血漿とに分離する等、血液試料をそれらの構成成分に分画する必要がある。血液試料をその構成成分にするこの分離は、正確な規定量の試料を用いると同時に、多くの検査が高い純度、すなわち、高い分離度を必要とするので、一般に、非常に慎重に行なわれる必要がある。多くの場合、これらの試料調製の正確さという点での厳しい要件は、未熟練者による分析を困難又は不可能にする。なぜなら、規定の要件を満たす試料調製は、一般に、熟練者によって行なわざるを得ないからである。例えば、現在、パラメータHDLC(高比重リポタンパクコレステロール)を測定することが可能な装置は市場にはないか、或いはほんのわずかの装置しか存在しない。その主な理由は、分離の際に凝固が生じるため、このパラメータが、抗凝固剤が添加される血漿で、且つ、正確に規定された試料容積(例えば、31±1.5μl)を用いる場合にのみ、すなわち、非常に慎重な試料調製の後においてのみ、測定され得るからである。
【0006】
血液試料から血漿、例えば、毛細管血漿を得る既知の方法は、毛細管血を得た後、遠心分離を行なう方法である。例えば、体表面の切開により出てくる血液は、キャピラリーを用いて採集され、次いで、遠心分離され得る。
【0007】
毛細管血を採集して遠心分離する装置は、原則的には、従来から知られている。例えば、採集し、分離し、そして二相の液体に分配する管が、米国特許第5,456,885号明細書に開示されている。他方で、充填された後、正確な検体容積を得るために、所定の区切り点で切断されるキャピラリーも市販されている。かかるキャピラリーは、例えばDr. Muller Geratebau GmbH, D−01705 Freital, Germanyから市販されているか、或いは、例えば、ドイツ実用新案第29520918号に開示されている。切断されたキャピラリー部分は、その中にある血液とともに、次いで、試料管、例えばカップに入れられる。かかる試料管は、次いで、遠心分離機にかけられ、遠心分離される。また別の方法として、毛細管血漿の試料はまた、毛細管血を試料管に直接、採集することによって、毛細管血から得ることができる。血液試料中の血球部分が血漿と分離する遠心分離の後、余剰の血漿から、所望量の過剰な血漿がピペットで取り除かれる。
【0008】
しかしながら、このピペット操作では、一般に、ピペット操作中に試料管の底部の凝血塊に触れ、その結果、非血漿成分もピペットで取るという危険があるので、この操作は非常に慎重に行なわれなければならないという課題がある。血漿画分がこのように汚染され得るので、その結果として、測定値が大きな影響を受け得る。
【0009】
この血漿画分の汚染の危険性は、不必要に多量の血液又は血漿を採集することによってのみ、低減され得る。例えば、汚染の危険性のない必要量の血漿を得るためには、必要な血漿の約5〜7倍の量が毛細管血として採集されなければならない。
【0010】
しかしながら、非常に多量の血液を抜くことは、それ自体、非常に困難である。例えば、一般に、約31±1.5μlの純粋な血漿が、通常の検査、例えば、1つ以上の上記検体の定量的検出に必要とされる。上記の方法では、毛細管血が多量に入手できることを前提とするが、これは必ずしも可能とは限らない。例えば、上記によれば、約150〜200μlの毛細管血がこのために必要とされるが、多くの場合、現実には入手することだけでも難しい。
【0011】
所定の区切り点を備えるキャピラリーもまた、他の先行技術文献で知られている。例えば、血液又は他の液体を検査する混合装置が米国特許第4,066,407号明細書に開示されている。とりわけ、ピペットが切り込みによってあらかじめ分離されることが記載されている。遠心分離後、ピペットは切り込みに沿って分割される。
【0012】
キャピラリー管内の正確な試料量を測定する方法及び装置がドイツ特許第1598501号に開示されている。とりわけ、上記文献には、試料で満たされたキャピラリー管がどのようにキャップで閉じられて、遠心分離されるかが記載されている。ヘマトクリット値は、次いで、測定され得る。キャピラリー管はまた、正確な規定容積の血漿量を検査するためにキャピラリー管を切断させる刻み目を有する。
【0013】
正確な量の液体試料を分離するための使い捨て器具もまた、ドイツ特許出願公開第2217230号に開示されている。所定の区切り点を有する精密測定用のキャピラリー管が用いられる。
【0014】
同様に、液体の容量測定を行なうピペット操作のための、特に、毛細管血を採集するための使い捨てマイクロピペットがドイツ特許出願公開第2724465号に開示されている。例えば、それを正確なマイクロ単位の量の血漿を得るために用いることができる。そのマイクロピペットは所定の区切り点を多数有している。これら所定の区切り点は、マイクロピペットの外側の表面に配置されている。
【0015】
水性液体試料を採集する器具及び方法がドイツ特許出願公開第10106362号に開示されている。キャピラリーと閉鎖エレメントが用いられ、その周囲にキャピラリー部分を含む閉鎖エレメントは、所定の区切り点によって切断され得るか、又は破壊開放され得る。さらに、キャピラリーはその内部に、強磁性物質でできた混合エレメント及び混合エレメントを保持する役割を有する保持エレメントを有する。しかしながら、強磁性の混合エレメントとこれらの保持エレメントは、高速でキャピラリーを遠心分離する際に、該キャピラリーチャンネルに損傷をもたらし得る。キャピラリー端部のひとつの可能な構造として、特にルアーコーン、すなわち、キャピラリー端部の周辺において外径が縮小された円錐形が開示されている。
【0016】
しかしながら、実際のところ、従来技術により既知の装置及び方法には、多くの技術的課題及び技術的欠点がある。特に、重要な欠点は、既知の装置の取り扱いの安全性にある。このように、所定の区切り点を有するキャピラリーは、特に、試料中の所望の標的成分を提供することができるまでに、手動で又は自動で、数回操作される必要がある。この操作は、その性質上、測定結果のずれを引き起こし得る、多くの振盪動作と、多種多様の位置及び方向へのキャピラリーの反復位置決めとを含んでいる。これが、試料の漏れ、試料成分の望ましくない混合、或いは計量の人為的な影響につながり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,456,885号
【特許文献2】ドイツ実用新案第29520918号
【特許文献3】米国特許第4,066,407号
【特許文献4】ドイツ特許第1598501号
【特許文献5】ドイツ特許出願公開第2217230号
【特許文献6】ドイツ特許出願公開第2724465号
【特許文献7】ドイツ特許出願公開第10106362号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の目的は、試料中の正確な容積の標的成分を提供するための既知の方法及び装置の欠点を少なくとも実質的に回避する方法及び装置を利用可能にすることである。詳細には、提案の方法及び装置は、試料中の他の成分による標的成分の汚染の危険を伴うことなく、同時に高純度を確保する一方で、試料中の標的成分、特に、血液試料中の血漿成分の容積を、安全に、一定に、かつ正確に提供することを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、独立項に規定の特徴を有する方法及び装置によって達成される。個々に、又は、一緒に実現され得る本発明の有利な成果は、従属項に規定されている。以下に記載の方法は、特に、記載されている装置の1つ以上を用いることによって実施され得る。そして、該装置は、記載されている変形例の1つ以上で本発明に係る方法を実施するように設計され得る。したがって、本方法の可能な実施態様に関して、装置の説明を参照することができ、その逆もまた同様である。
【0020】
本発明は、まずキャピラリーによって毛細管血を採集した後、規定容積の血液を得るためにキャピラリーを切断し、次いで、得られた血液(適当な場合には任意の追加処理後)を遠心分離するという従来から知られている方法が、血液を遠心分離前にキャピラリーから取り除かない場合には、非常に簡略化、且つ、改良され得るとの認識に基づく。したがって、本発明は、特に、正確に規定された容積の血漿の採集及び利用に用い得る方法及び装置に関する。少なくともその開口部の1つに狭窄部を有する、特別に改造された計量キャピラリーが用いられる。したがって、本発明は、特別なキャピラリー内に血液を採集すること、このキャピラリー内の血液を遠心分離して血漿を採集すること、そして最後に、正確に規定された内部容積を有するこのキャピラリーの一端を折り取り、その後の試験のためにこの規定容積の血漿を空にすることによって、一定容積の血漿採取・適用(volume-dosed plasma application)を実施する、例えばテストストリップにそれを塗布することの組み合わせを含み得る。本発明は、血液の必要量を大幅に抑え、かつ、手作業の分離やピペット操作を不要にする。同時に、得られる血漿の量は容積が一定で正確である。
【0021】
概して、試料中の少なくとも1つの規定容積の標的成分を提供するための方法が提案される。上述したように、この試料は、特に、毛細管血等の血液試料、及び/又は、他の体液試料であり得る。しかし、原則として、他の試料も用いることができる。
【0022】
標的成分とは、一般に、更なる使用に利用できるようにするため等、提供に関心が持たれている試料成分であると理解され得る。上述したように、標的成分は、特に、血漿であり得る。提供とは、この標的成分の採集、及び/又は、この標的成分の利用、詳細にはそれを少なくとも1つの医療用途及び/又は診断用途に利用することであると理解される。「規定」容積とは、所定の誤差限界の範囲内、例えば、±5%以下、好ましくは±1%以下の誤差限界の範囲内で再現可能な方法で提供され得る容積であると理解される。
【0023】
提案している方法は、以下の方法手順を含み、記載された順序で実施することが好ましいが、必ずしもそうする必要はない。また、記載されていない追加の方法手順を実施してもよい。さらに、個々の方法手順又は追加の方法手順を繰り返したり、同時に又は時間をずらして実施したりしてもよい。
【0024】
最初の方法手順では、少なくとも2つの開口部を有する少なくとも1つの計量キャピラリーを準備する。計量キャピラリーとは、広く知られている寸法のキャピラリーチャンネルを有するキャピラリーであると理解される。寸法は、少なくとも既知であるか、或いは上記の許容誤差が満たされ得る程度に再現性があるものでなければならない。計量キャピラリー及び計量チャンネルは、好ましくは実質的に真っ直ぐな形状であり得る。しかし、他の形状もまた、原則として、可能であり、例えば、U字形に曲がった計量キャピラリー等、湾曲した計量キャピラリーも可能である。
【0025】
計量キャピラリーは、少なくとも2つの開口部を有する。例えば、開口部は、計量キャピラリーの両端、又は、計量キャピラリーの両端近傍、例えば、その両端から計量キャピラリーの外径の最大20倍離れたところに配置され得る。代わりに、或いは、追加で、開口部の少なくとも1つはまた、計量キャピラリーの他の位置に配置されてもよい。例えば、計量キャピラリーは、計量キャピラリーの少なくとも1つのキャピラリーチャンネルの両末端等、互いに向き合う2つの開口部を有してもよい。計量キャピラリーは、それゆえに、好ましくは両端が開口する線形の計量キャピラリーとして設計される。より詳しく以下に説明するように、これらの少なくとも2つの開口部は、少なくとも1つの遠位開口部及び少なくとも1つの近位開口部から構成され得る。近位開口部とは、充填が行なわれる開口部であると理解されるのに対して、遠位開口部とは、充填が行なわれない別の開口部であると理解される。
【0026】
本発明によれば、計量キャピラリーの開口部の少なくとも1つは、狭窄部を有する。本発明との関連において、狭窄部とは、概して、計量キャピラリーの内径が、計量キャピラリーの長手方向で見て、狭窄部の上流及び/又は下流等狭窄部周辺領域の計量キャピラリーの内径に比べて狭くなっていることであると理解される。例えば、狭窄部の外側で、キャピラリーチャンネルは、実質的に一定の内径を有していてもよい。しかし、他の形状もまた、原則として可能であり、例えば、円錐形のキャピラリーチャンネルも可能である。特に、狭窄部は、計量キャピラリーの内径を半分以下、より特定的には4分の1以下に狭くすることができる。
【0027】
狭窄部は、キャピラリーチャンネルの長手方向の広がりに沿って、好ましくは狭窄部の外側でキャピラリーチャンネルの平均内径の20倍以下、特に好ましくは10倍以下、又は5倍以下又は2倍以下の長さを有する。したがって、狭窄部は、キャピラリーチャンネルの内径の局部的な狭窄として形成され得る。しかし、他の形状も可能である。
【0028】
1つの開口部がかかる狭窄部を有する場合、これは、本発明では、狭窄部が開口部に直接、又は、開口部のすぐ近くに、配置されていることを意味し得る。すぐ近くとは、例えば、開口部から、開口部の直径の20倍以下、好ましくは10倍以下、特に好ましくは5倍以下、もしくは2倍以下の距離離れて配置されていることであると理解される。上述したように、開口部は、特に計量キャピラリーの一端又は一端の近傍に配置され得るので、狭窄部も同様に、特に一端又は一端の近傍に配置され得ることになる。したがって、狭窄部は、特に、端部に位置している狭窄部として形成され得る。
【0029】
例えば、狭窄部は、キャピラリーの少なくとも1つの内側に突出した周縁エッジを含み得る。しかし、キャピラリーの他のタイプの狭窄形状の他の狭窄部も可能である。一般に、狭窄部は、キャピラリーに適した押出成形法等により、技術的に簡単に作られる。
【0030】
狭窄部は、特に計量キャピラリーの一端に配置され得、その末端は以下で狭窄部末端とも称される。例えば、狭窄部は、狭窄によって、計量キャピラリーの内径が、この狭窄部外側領域における内径の10〜80%の値に、特に20〜60%の値に、特に好ましくはおよそ40%の値に、例えば42%に縮小されるように設計され得る。狭窄部領域、すなわち、狭窄部末端等の狭窄によって最も狭くなった計量キャピラリーの位置では、計量キャピラリーの内径は、好ましくは1.0mm以下、特に好ましくは0.8mm以下、特に0.6mm以下で、例えば0.5±0.2mmである。例えば、狭窄部領域における計量キャピラリーの内径は、0.2mmから0.8mmの間、好ましくは0.3mmから0.7mmの間、そして、特に好ましくは0.5±0.2mmであり得る。狭窄部外側領域では、計量キャピラリーは、例えば、0.5mm〜2.0mm、特に0.8mm〜1.6mm、好ましくは1.0mm〜1.4mm、そして、特に好ましくは1.2mmで、例えば1.20±0.02mmの内径を有し得る。計量キャピラリーは、例えば、0.05mm〜3.0mm、好ましくは0.07mm〜0.5mm、そして、特に好ましくは0.1mm〜0.2mm、例えば0.175mm±0.02mmの壁厚を有し得る。分割されていない状態では、計量キャピラリーは、例えば、20mm〜200mm、好ましくは30mm〜120mm、そして、特に好ましくは70mm〜80mmで、例えば75.0mm±0.5mmの長さを有し得る。分割操作によって、計量キャピラリーは、例えば2分割され得る。ここで、望ましくは狭窄部末端に面する第1の部分片は、例えば5mmから60mmの間、特に20mmから40mmの間、そして、特に好ましくは25mmから30mmの間で、例えば28.0±0.9mmの長さを有する。計量キャピラリーの全容積に対する第1の部分片の容積の割合は、例えば、10%〜70%、好ましくは20%〜60%、そして、特に好ましくは30%〜40%で、例えば37%±2%であり得る。
【0031】
この少なくとも1つの狭窄部が、従来から知られている装置を上回る、本発明にかかる計量キャピラリーの顕著に有利な効果を示す。例えば、前述したドイツ特許出願公開第2217230号には、提案されている装置の取り扱い中、血液の漏出を防ぐために特別なおさえが必要とされる旨が開示されている。さらに、ドイツ特許出願公開第2217230号によれば、提案されている装置は、非常に慎重に操作される必要があり、また、キャピラリー管を水平な位置で保持する必要がある。
【0032】
本発明にかかる今回提案している計量キャピラリー、および本発明にかかる方法では、取り扱いにおけるこれらの制約をほぼ完全に回避することができる。このように、サンプリング及び相分離の間、計量キャピラリーを水平に保持することは、今ではもはや不可欠ではなく、それどころか狭窄部によれば、試料漏出の危険を冒すことなく、傾斜状態の保管、取扱位置、及び取扱方向を採択することも可能である。ここでいう方向とは、計量キャピラリーの長手方向が水平面に対して0°以外の角度、例えば少なくとも20°、又は少なくとも50°、さらにはおよそ垂直方向までの角度であることを想定している。一方では、これがこの方法及びこの計量キャピラリーのユーザーフレンドリーな使い勝手の良い特質を高めている。けれども、他方では、それはまた、特に医療用途の場合に、誤りの可能性を大きく低減させる。その理由は、例えば計量キャピラリーを斜めに保持することによりユーザーによって引き起こされる誤りが、例えば、液体試料の漏れやその結果としての計量キャピラリーの不完全な充填に起因する人為的なサンプリングミス及び/又は人為的な計量ミスを引き起こし、結果的に測定結果を歪めることが今ではもはや必ずしも起こるというわけではないからである。
【0033】
また一方、それと同時に、提案している計量キャピラリーは、上述のドイツ特許出願公開第10106362号に記載された設計等と比較して、より詳しく以下に記載される方法であって、計量キャピラリー内で成分分離した後、計量キャピラリーを部分片に分割することを含む方法に適している。このように、提案している計量キャピラリーは、特に、混合エレメント及び保持エレメントの影響を受けることなく、また、試料成分の損傷又は混ざり合いの危険を伴うことなく遠心分離することが可能である。切断方法はまた、混合エレメント及び/又は保持エレメントがこの作業に影響を与え得ることなく、構成成分を分離するために、例えば所定の区切り点で行なわれ得る。さらに、これらの方法手順の詳細は、以下でより詳細に説明される。
【0034】
さらなる方法手順において、計量キャピラリーは、少なくとも一部が試料で満たされる。例えば、充填は、少なくとも2つの開口部の1つ以上、すなわち、近位開口部を介して行なわれる。充填は、好ましくはキャピラリーチャンネルが試料で完全に満たされるように、少なくとも実質的に完全であることが好ましい。このため、少量の試料が充填には用いられない開口部、例えば上述の遠位開口部から出現し得る。遠位開口部から出てくる過剰量は、充填操作の後、例えば単に拭き取られることによって除去することができる。しかし、キャピラリーチャンネルの主要部、即ち後に規定容積を提供する部分が実質的に完全に充填される限りにおいて、計量キャピラリーの不完全な充填もまた原則として起こり得る。
【0035】
さらに、この方法は、計量キャピラリー内で試料中の少なくとも2つの成分の少なくとも部分的な分離のために行なう成分分離の方法手順を実施することを含む。特に、血液試料の場合、これら少なくとも2つの成分は、血液試料のすでに述べた血漿と血球部分(凝血塊)とを含み得る。しかしながら、一方では、別の種類の分離、例えば、2つ以上の構成成分への分離もまた可能である。従来から知られている方法とは対照的に、この場合の成分分離は、試料を計量キャピラリーから取り除くことなく、キャピラリー自体の中で行なわれる。それゆえ、例えば、この提案している方法は、キャピラリーの内容物を遠心分離容器に入れるために、そしてその後、遠心分離にかけるために、キャピラリーの切断部分を遠心分離容器に入れるという、既知の方法とは異なる。
【0036】
この成分分離は、特に、計量キャピラリー及び/又は該計量キャピラリーに入っている試料に対する力の作用により行なわれる。具体的には、これらは、重力及び/又は慣性力であり得る。例えば、重力は、成分分離のための静的分離又は沈降という状況において用いられ得る。例えば、慣性力は、例えば遠心分離機、特にヘマトクリット遠心分離機等によって、計量キャピラリー及び/又は計量キャピラリー内の試料に対して加えられる遠心力を含み得る。
【0037】
さらなる方法手順では、計量キャピラリーは、少なくとも2つの部分片に分割され、部分片の少なくとも1つは、規定容積の標的成分を含む。
【0038】
この計量キャピラリーの少なくとも2つの部分片への分割は、成分分離に好適な様々な方法で行なわれ得る。例えば、2つの部分片は、例えば、計量キャピラリーが、該計量キャピラリーの両端に各々対応する2つの部分片に正確に分割され得るように、提供され得る。これらの部分片の1つは、次いで、例えば、標的部分片として用いられ得るし、規定容積の標的成分を含み得る。しかしながら、あるいは、例えば、計量キャピラリーの2つの両端を折り取り、真ん中の部分片だけを、規定容積の標的成分を含む標的部分片として用いるような、いくつかの部分片への分割もまた可能である。様々な形態が可能である。
【0039】
上で説明したように、方法は、規定容積の標的成分を少なくとも医療用途及び/又は診断用途に提供することを更に含み得る。例えば、この提供は、標的成分中の少なくとも1つの分析物の検出のための分析方法、及び/又は、標的成分の少なくとも1つの他の性質を測定する別の方法の提供を含み得る。この提供のために、例えば、規定容積の標的成分が標的部分片から分注され得る。例えば、この場合、例えば、少なくとも1つの部分片、すなわち、その中に受容した規定容積の標的成分を有する標的部分片の部分片開口部を試験エレメント及び/又は試料キャリアと接触させることによって、毛細管力を再び利用することができる。例えば、この接触は、部分片開口部を試料キャリアの上に置くことによって行なわれ得る。例えば、この試験エレメント及び/又は試料キャリアは、例えば、試験紙又は平らな顕微鏡用スライドのように、フラットに設計され得る。規定容積の標的成分を分注する、すなわち、提供するための部分片開口部は、例えば、計量キャピラリーに予めすでに存在していた開口部、好ましくは、遠位開口部又は近位開口部からなり得る。しかしながら、あるいは、部分片開口部はまた、計量キャピラリーが少なくとも2つの部分片に分割される場合にのみ形成される少なくとも1つの開口部、例えば、切断端にある開口部からなり得る。しかしながら、すでに存在する開口部を介する分注が好ましい。なぜなら、この開口部は、異なる分割手順の場合であっても、常に規定されたままであるからである。
【0040】
成分分離では、特に、血液試料の場合、血液試料の血球成分は、遠心力及び/又は重力の作用の下、血漿から少なくとも部分的に分離され得る。次いで、計量キャピラリーは、好ましくは、規定容積の標的成分ができる限り血漿だけを含むような方法で分割される。しかし、他の血液成分による汚染は、所定の許容限度内で適切な場合には、許容され得る。代わりに又は追加で、他の標的成分も言うまでもなく選択することができる。例えば、血球成分が、特に、標的成分として選択され得る。しかし、以下では、別の可能な実施形態について限定することなく、選択される標的成分は血漿であることを前提とする。
【0041】
上で説明したように、少なくとも1つの標的成分は、特に、成分分離後の計量キャピラリーから標的成分を選択するために計量キャピラリーを分割することによって選択される。これは、特に、計量キャピラリーを少なくとも2つの部分片への分割によって行なわれ得る。一例に基づいて以下に詳細に説明するように、例えば、少なくとも1つの機械的な切断方法が計量キャピラリーを分割するために用いられ得る。例えば、計量キャピラリーは、少なくとも1つの所定の区切り点を、例えば、全体的に又は部分的に周囲に切れ込みが入った形状で有し得る。切れ込みという用語は、広義に解釈され、原則として、壁厚の所望の局所的減少を含む。例えば、研削面も含み得る。特に、切れ込みは、切断の際に、円滑に切断されるように作られ得る。いくつかの所定の区切り点を設けることも可能である。所定の区切り点は、例えば、150μm〜300μmの間、特に175μm、又は200μmの壁厚で、10μm〜100μmの間、特に35μm〜50μmの間の切れ込み深さの切れ込みを有し得る。切れ込み深さの壁厚に対する比は、例えば、1/4〜1/6の間であり得る。
【0042】
計量キャピラリーは、さらに1つ以上の視覚的に認識可能な印を含み得る。所定の区切り点は、特に、色によって、例えば、所定の切断点の周辺の計量キャピラリーの外表面に設けられる、使用者が認識できる1つ以上の標識によって、印が付けられ得る。例えば、1つ以上のリングマークが、所定の区切り点の一端又は両端に、例えば、所定の区切り点に対して対称的に設けられ得る。この色の標識は、計量キャピラリーの取り扱い、特に、部分片の分割を容易にし得る。
【0043】
計量キャピラリーは、例えば、適当な切断によって、例えば、目標容積が計量キャピラリーのキャピラリー容積の50%未満、好ましくは最大45%、特に好ましくは37%を占めるように分割され得る。例えば、キャピラリーの直径が一定のキャピラリーが用いられ得る。例えば、計量キャピラリーは、70μl〜150μlの間、好ましくは80μl〜90μlの間、特に好ましくは84μlのキャピラリー容積を有し得る。上記分割で、標的成分の容積は、全キャピラリー容積が約84μlの場合には、例えば、31μlであり得る。
【0044】
特に、キャピラリーの直径が一定のキャピラリーを計量キャピラリーとして用いる場合、計量キャピラリーは、例えば、上記の切断方法によって、例えば、2つ以上の部分片に分割され得る。例えば、計量キャピラリーは、x比で分割され得る。例えば、この比xは、計量キャピラリーの全長、及び/又は、最初に充填した計量キャピラリーの全長に対する、規定容積の標的成分を含む部分片におけるキャピラリーの部分的な長さに対応している。この好ましい比は、通常60%を超えない典型的なヘマトクリット値から導かれる。このように、例えば、37%の比xによって、例えば、所定の区切り点の位置の適切な選択によって、血液試料を用いる場合に、分割が、血漿のみで満たされた計量キャピラリーの領域内で常に確実に行なわれるようにすることが可能となる。規定容積の標的成分は、次いで、特に2つの部分片のより短い方、言い換えると、計量キャピラリーの全長の50%未満、又は、好ましくは最大45%、特に計量キャピラリーの全長の37%の長さを有する部分片から取り出され得る。
【0045】
成分分離が行なわれた後であって、且つ、計量キャピラリーが分割される前に、例えば、試料の別の性質を測定するために、別の措置が行なわれ得る。例えば、成分分離が行なわれた後であって、且つ、計量キャピラリーが分割される前に、少なくとも1つの中間の分析工程が行なわれ得る。この少なくとも1つの中間の分析工程では、例えば、試料中の少なくとも2つの成分の少なくとも部分的な分離から、例えば、血漿の血液試料及び血液試料の血球部分の場合に、計量キャピラリー内で、試料の少なくとも1つの性質に関する結果を得ることが可能である。例えば、血液試料の血球成分の割合に関する、特に、ヘマトクリット値に関する結果を得ることができる。
【0046】
この中間の分析工程は、特に、比較的簡単な方法、例えば、光学的測定及び/又は光学的検査によって行なわれ得る。これは、完全に自動で、或いは、手動でも行なわれ得る。
【0047】
例えば、計量キャピラリー内の成分の分離を視覚的に観察できるように、ガラス又は少なくとも部分的に透明な材料でできている計量キャピラリーが用いられ得る。このように、少なくとも2つの成分間に少なくとも1つの仕切り線の位置を設けることによって、例えば、ヘマトクリット値等の少なくとも1つの性質に関する結果を得ることができる。計量キャピラリーの直径が一定であれば、これは、ヘマトクリット値を算出するためには、例えば、血球成分で満たされた計量キャピラリー部分の長さを、例えば、簡単な定規又は他の測定器具を用いることによって測定すること、及びこの長さを計量キャピラリーの全長又は計量キャピラリーの充填された全長と比較することを含み得る。
【0048】
上で説明したように、少なくとも1つの計量キャピラリーは、例えば、線形の形状の計量キャピラリーとして設計され得るが、他のデザインも可能である。例えば、計量キャピラリーは、遠位端及び近位端を有してもよく、遠位開口部が遠位端に配置され、近位開口部が近位端に配置される。それゆえに、遠位及び近位開口部は、好ましくは互いに計量キャピラリーの反対端に配置される。
【0049】
本発明によれば、計量キャピラリーの開口部の少なくとも1つが狭窄部を有する。狭窄部の可能なデザインに関しては、上記記述を参照のこと。特に、少なくとも1つの遠位開口部は、かかる狭窄部をもつように設計され得る。少なくとも1つの近位開口部、すなわち、計量キャピラリーに充填するための開口部は、かかる狭窄をもつことなく設計され得る。遠位開口部にある狭窄部の代わりに、又は、それに加えて、近位開口部等の他の開口部にも、言うまでもなく、かかる狭窄部が設けられ得る。
【0050】
上で説明したように、計量キャピラリーは、具体的には、近位開口部の方から充填され得る。上で説明したように、充填操作中、ある量の試料が遠位開口部に現れ得る。これが、計量キャピラリーが完全に満たされたことを裏付ける。遠位開口部に現れた試料は、成分分離が行なわれる前、及び/又は、本発明の方法中の他のときに、例えば、計量キャピラリーを拭くか、或いは、他のクリーニング手順によって除き得る。この発明によって提案しているように、狭窄部を有する計量キャピラリーが用いられる場合、計量キャピラリーの遠位端における試料のこの出現は、ほとんどの場合、防止され得るか、或いは、少なくとも抑え得る。
【0051】
上で説明したように、計量キャピラリーが分割された後、したがって、規定容積の標的成分が得られた後、この規定容積の標的成分は、特に、少なくとも1つの医療用途及び/又は診断用途に提供され得る。この提供は、例えば、開口部の少なくとも1つを介して達成され得る。例えば、仕切り線に面した開口部、例えば、計量キャピラリーが切断された後の区切り点にある開口部が用いられ得る。しかしながら、切断端は、場合によっては、不明確であり得るため、規定容積の標的成分はもともと存在する開口部、例えば遠位開口部を介して少なくとも1つの医療用途及び/又は診断用途に提供される場合が特に好ましい。
【0052】
上で説明したように、計量キャピラリーの充填は、好ましくは、計量キャピラリーが試料によって実質的に完全に満たされるように行なわれる。例えば、これは、遠位開口部からの少量の試料の上記出現によって成し遂げられ得る。成分分離、特に、遠心分離方法による成分分離が行なわれる前に、開口部の少なくとも1つが閉じられる必要がある。
【0053】
近位開口部が、特に、閉じられ得る。しかし、代わりに又は追加で、別の開口部、例えば、いずれにしても成分分離で試料が送りこまれる方向にある開口部も閉じられ得る。これはまた、特に、近位開口部であってもよい。しかし、他の実施形態も原則として可能である。
【0054】
少なくとも1つの開口部は、様々な方法で閉じられ得る。特に、1つ以上の以下の閉鎖片が用いられ得る:しっくい;キャップ、特にプラスチックキャップ、好ましくはシリコーンキャップ;ワックス、特にヘマトクリットワックス、樹脂、接着剤。
【0055】
少なくとも1つの計量キャピラリーとして、原則として、従来から知られている材料を用いることが可能である。例えば、少なくとも1つの計量キャピラリーは、少なくとも1つのガラス物質を含み得、及び/又は全体がガラスから作られ得る。しかしながら、原則として、石英、セラミック、プラスチック等の他の材料も可能である。特に、用いられる材料は、用いられる特定の分割方法に適応され得る。破壊方法が用いられる場合には、硬い脆性材料を用いることが好ましい。他の分割方法、例えば、切断方法が用いられる場合には、容易に切断され得る材料、例えば、プラスチックを用いることが好ましい。特に、透明な、或いは、少なくとも部分的に透明な材料を用いることが可能である。
【0056】
計量キャピラリーは、特に0.5mm〜4mmの間、特に1.0mm〜1.2mmの間のキャピラリー内径を有し得る。これらのキャピラリー径は、特に、実際に血液試料を受け入れる上で、適切であることが証明されている。しかしながら、他のキャピラリー径も、原則として可能である。
【0057】
さらに、計量キャピラリーはまた、1つ以上の活性物質を含み得る。特に、計量キャピラリーは、少なくとも1つの抗凝固剤物質、すなわち、血液試料の凝固を少なくとも部分的に防止する活性物質を含み得る。例えば、この活性物質は、計量キャピラリーの材料に組み込まれ得る。しかしながら、代わりに又は追加で、活性物質が計量キャピラリーの内面にコーティングとして、特に、抗凝固剤コーティングの形で塗布される場合が特に好ましい。一般的に用いられる抗凝固剤、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)コーティング、及び/又は、Na−ヘパリン及び/又はLi−ヘパリン及び/又はアンモニウムへパリン等のヘパリンコーティングが用いられ得る。しかし、他の抗凝固剤もまた知られており、代わりに又は追加で、用いられ得る。
【0058】
計量キャピラリーの他の好ましい実施形態では、計量キャピラリーは、狭窄部を備えている開口部、すなわち、狭窄部末端が滑らか、且つ/或いは、平らである。特に、計量キャピラリーは、この狭窄部末端が平面状であるか、扁平状であり得る。特に、鋭利な切断端は、このようにして避けられ得る。例えば、この滑らか、且つ/或いは、平らなデザインは、研磨及び/又は熱による丸み付け等の熱処理によって形成され得る。例えば、狭窄部が設けられている開口部における外表面は、計量キャピラリーの縦軸に対して、実質上、垂直に、例えば、計量キャピラリーの縦軸に対して90°から5°を超えない偏差で延びていることができる。例えば、ここでいう「滑らか」とは、100μm未満、好ましくは50μm未満、特に好ましくは20μm未満、又は10μm未満、5μm未満、または2μm未満の粗さ値(二乗平均平方根粗さ)であることを意味し得る。
【0059】
例えば、このように、狭窄部末端は、例えば、破壊方法によって作り出され、成分分離及びそれに続く計量キャピラリーの少なくとも2つの部分片への分割の後、規定容積の標的成分を含む第1の部分片の一部であり得る。以下においてより詳しく説明されるように、第1の部分片の狭窄部末端は、少なくとも1つの試験エレメント、例えば、試験エレメントの適用領域及び/又は試験領域に接触させ得る。狭窄部末端の動き、例えば、円運動を試験エレメント上で行うことができ、第1の部分片から試験エレメント上に試料を広げることを促進する。試験エレメントの損傷は、狭窄部末端の望ましい滑らかな性質によって防止される。
【0060】
記載されている方法のバリエーションの1つでは、記載されている方法に加えて、前述の実施形態の1つにかかる方法に用いるのに、特に適切であることが期待できる計量キャピラリーがまた、提案される。この計量キャピラリーは、少なくとも2つの開口部を含む。開口部の少なくとも1つは、少なくとも1つの狭窄部を有する。計量キャピラリーはまた、開口部の間に、少なくとも1つの仕切り線、特に、少なくとも1つの所定の区切り点を備える少なくとも1つの仕切り線を有する。仕切り線とは、一般に、ここでは特に、キャピラリーの長手方向に対して、特に使用者が肉眼で確認できるように垂直に延びる線であって、これに沿って分割され得る線として理解され得る。所定の区切り点の代わりに、又はそれに加えて、仕切り線もまた、計量キャピラリーが少なくとも2つの部分片に分割される場合に、計量キャピラリーの仕切りの位置を特定する、例えば、リング状の印又は同様の形態で、例えば、少なくとも1つの仕切り印を付けるといった、他の方法で形成され得る。さらなる可能な詳細については、上記記述を参照のこと。
【0061】
上述の1つ以上の実施形態のバリエーションにおける方法及び計量キャピラリーに加えて、本発明はまた、試料中、特に、血液試料中の少なくとも1つの規定容積の標的成分を提供するため、特に、規定容積の血漿を提供するための装置を提案する。装置は、特に、上述の1つ以上の実施形態のバリエーションにかかる方法を実施するために設計され得る。装置は、少なくとも1つの計量キャピラリー、特に、上記タイプの計量キャピラリーを含む。計量キャピラリーは、少なくとも2つの開口部、及び、少なくとも1つの仕切り線、特に、所定の区切り点を備えるか、及び/又は、少なくとも1つの仕切り印を備える仕切り線を含む。さらに、装置は、計量キャピラリー内の血液試料の少なくとも2つの成分の少なくとも部分的な分離のために、成分分離を行なうための少なくとも1つの分離装置を含む。この分離装置は、特に、ヘマトクリット遠心分離機等の遠心分離機を含み得る。さらなる装置の任意の実施形態については、例えば、上記記述を参照のこと。
【0062】
装置は、計量キャピラリーに試料を少なくとも部分的に充填するための規定位置に計量キャピラリーを固定するように設計された少なくとも1つの保持装置をさらに含み得る。この規定位置とは、空間位置も方向も含む表現であり、特に、実質的に水平位置であり得る。実質的に水平位置とは、ここでは、わずかな偏差、例えば、最大20°まで、好ましくは最大5°までの偏差も許容され得るが、計量キャピラリーが水平線に対して0°の角であろう位置として理解される。しかしながら、他の方向もまた、原則として可能である。例えば、保持装置は、簡単なキャピラリークランプ状のキャピラリーホルダー等を含み得る。代わりに又は追加で、例えば、保持装置はまた、例えば、上記の成分分離も続いて保持装置にて行なわれ得るというように、成分分離を実施するための分離装置の一部であり得る。
【0063】
提案した方法、提案している計量キャピラリー、及び提案している装置は、この種の既知の方法及び装置に勝る数多くの利点がある。例えば、提案している方法は、非常に単純な方法で、且つ、実際のヘマトクリット値とは無関係に、84μlの毛細管血から正確に31μl採集する等、毛細管血漿中の正確に規定された試料の採集を可能にする。好ましくは遠位端に少なくとも1つの狭窄部を備える計量キャピラリーが、特に有益であることがわかる。特に、狭窄部は、一方では、計量キャピラリーが折られる場合等に、計量キャピラリーの分割中及び分割後に血漿の漏れを防止し得るし、他方では、充填操作中、毛管移動を止めることによって、計量キャピラリーの過剰充填を回避し得る。この種の狭窄部は、原理上、例えば、計量キャピラリーの斜め状態での保管にとっても、有益であることがわかる。
【0064】
計量キャピラリーは、原則として、1つ以上の開口部の方向から充填され得る。計量キャピラリーは、例えば、近位端が閉じられ得る。あるいは、遠位端の閉鎖もまた、原則として可能である。この場合の利点は、計量キャピラリーの遠位端閉鎖用の栓、例えば、しっくいの塊が試料によってあまり汚染されないことである。このように、遠位端はしっくいで閉じられ得る。そして、それは血液採集部位を有するその外表面に、例えば、指に接触していなかった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
さらに、本発明の詳細及び特徴を、特に従属クレームとともに、以下の好ましい実施形態の記載から明らかにする。それぞれの特徴は、個々に、或いは、互いに組み合わせたいくつかに当てはめられ得る。本発明は、実施形態に限定されない。実施例は、図に概略的に示される。個々の図における同一の参照番号は、同一の要素を指すか、又は同一の機能を有する要素若しくはそれらの機能の観点から互いに対応する要素を表す。
【図1】本発明にかかる計量キャピラリーの実施形態を示す図である。
【図2A】本発明にかかる方法の実施形態の方法手順を示す図である。
【図2B】本発明にかかる方法の実施形態の方法手順を示す図である。
【図2C】本発明にかかる方法の実施形態の方法手順を示す図である。
【図2D】本発明にかかる方法の実施形態の方法手順を示す図である。
【図2E】本発明にかかる方法の実施形態の方法手順を示す図である。
【図2F】本発明にかかる方法の実施形態の方法手順を示す図である。
【実施例】
【0066】
図1は、本発明にかかる計量キャピラリー110の簡単な例示の実施形態を示す。計量キャピラリー110は、例えば、ガラスキャピラリーとして設計され、例えば0.05〜5mm、特に約0.2mmの壁厚を有する。計量キャピラリーは、好ましくは50〜150mm、特に約75mmの長さlを有する。計量キャピラリーの内径は、例えば1.1〜1.2mmであり、一方外径は、例えば1.6mmであり得る。図1では外径をΦで表し、さらに、内径をΦで表す。
【0067】
図示した実施形態で、計量キャピラリーは、好ましくは、計量キャピラリー110の内容積が計量キャピラリー110の長さに沿って均一に分布するように、実質的に一定の内径Φを有する。
【0068】
図示した実施形態で、計量キャピラリー110は、両端が2つの対向する開口部112、114で開口している真っ直ぐな形状の計量キャピラリー110として設計されている。これらの2つの開口部112、114の1つ目を、以下、遠位開口部116と表し、一方、これらの開口部112、114の2つ目を、近位開口部118と表す。図1を見てわかるように、遠位開口部116は、図示した実施形態では、狭窄部120を有する。この狭窄部120では、計量キャピラリー110の内径Φは、例えば半分に、特に4分の1あるいはそれ以下に縮小されている。
【0069】
計量キャピラリー110はまた、仕切り線122を有する。この仕切り線122は、例えば、視覚的に認識可能な印を含み得る。しかしながら、図1に示すように、この仕切り線122は、特に好ましくは、計量キャピラリー110に切り込まれた、所定の区切り点124からなる。この切り込みの切り込み深さは、例えば、計量キャピラリー110の壁厚の1/20〜1/2、特に、1/4〜1/6であり得る。例えば、約0.2mmの壁厚で、切り込み深さ、例えば、開先深さが35μm〜50μmであることが好ましい。
【0070】
仕切り線122は、2つの開口部112、114の1つから、好ましくは遠位開口部116から距離l’離れて配置される。l’のlに対する比は以下xとも表す。好ましくは、xは<50%であり、特に、最大45%或いはそれ以下であり、特に37%である。したがって、容積V’は、仕切り線122から遠位開口部116がある遠位端126までの間の計量キャピラリー110の内部に受け入れられ、この容積V’(遠位端126にある狭窄部120によって見込まれるわずかな偏差を考慮する)は、遠位端126と近位端128との間の全容積Vに対してxと同様に考えられる。例えば、全容積Vは、約84μlからなり得るし、さらに、以下参照番号130でも表される規定容積V’は、好ましくは31μl±1.5μlである。しかしながら、他の容積及び区切りも、原則として可能である。以下に示した方法では、規定容積130が標的成分を受け入れる。
【0071】
計量キャピラリー110は、様々な方法で任意に発展させ得る。例えば、図1にも示されているように、計量キャピラリー110は、その内表面にEDTAコーティング等の抗凝固剤コーティング132を有し得る。
【0072】
図2Aから図2Fは、試料134中の規定容積の標的成分を提供するための本発明にかかる方法の実施形態の方法手順を示す。本例では、試料134は、例えば、血漿と血球成分とに分けられる血液試料である。以下の本文では、試料が、最初から最後まで参照番号134で表されるように、方法の前後の試料134間で用語の区別は行なわれていない。それに加えて、これらの図は、試料134中の規定容積の標的成分を提供するための本発明にかかる計量キャピラリー110と、ある部分では、装置136の使用を示す。
【0073】
図2Aでは、まず初めに、装置136の一部である計量キャピラリー110が提供される。例えば、それは、図1に記載のタイプの計量キャピラリー110であり得る。例えば、約84μlの容積と、75mmの長さlと、1.2mmの内径Φを有し、EDTAでコーティングされ、その遠位端126に小さい狭窄部120を有する計量キャピラリー110を用いることが可能である。さらに、計量キャピラリー110は、適当な場所に、例えば、遠位端126から約27mmの距離l’に、仕切り線122、特に、所定の区切り点124を有し得る。
【0074】
図2Aはまた、計量キャピラリー110が、例えば毛細管血の形態で、その開口部112、114の1つの方から試料134で満たされる操作も示している。図の実施形態に示すように、この充填は開口部112の方から行なわれ、その結果開口部112は定義により近位開口部118となる。しかしながら、代わりに、充填は、他の開口部114の方からも行なうことができよう。充填は、好ましくは、少なくともほぼ完全に行なわれる。
【0075】
充填操作の間、計量キャピラリー110は、例えば、保持装置138に支えられ得る。この保持装置138は、例えば、クランプ装置として設計され得る。図2Aにおいて、参照番号140で示されるように、この保持装置138はまた、分離装置、例えば、遠心分離機、特に、ヘマトクリット遠心分離機の一部であり得る。しかしながら、分離保持装置138も、原則として、考えられ得る。保持装置138は、特に、水平位置で計量キャピラリー110を保持するように設計され得る。このようにして、計量キャピラリー110は、患者の指腹144上の血液滴142で充填され得る。しかしながら、代わりに又は追加で、他のタイプの試料、例えば、前もって血液を充填してある別の容器からの試料も提供され得る。しかしながら、提案したように血液滴142から直接充填することは、非常に多くの利点を有する。
【0076】
図2Aに示すように計量キャピラリー110を充填した後、計量キャピラリー110の少なくとも1つの開口部112、114が図2Bに示す方法手順で閉じられる。計量キャピラリー110は、図2Bには示されていないが、今までどおり保持装置138に支えられていてもよい。図2Bに示す実施形態では、近位開口部118が閉じられる。通常、閉じられる開口部112、114は、特に、以下に記載する、分離装置140として遠心分離機を用いる分離工程で、試料134がこの閉じられた開口部112、114の方に送り込まれるように、遠心分離機の回転軸から1番遠くに位置している1つであり得る。本例では、それは近位開口部118である。
【0077】
例えば、開口部112、114は、例えば、シリコンキャップ、ヘマトクリットワックス、樹脂、又は適切な接着剤を含み得る、閉鎖片146で閉じられ得る。
【0078】
図2Aに示すように計量キャピラリー110を充填する間、また、閉鎖片146で近位開口部118を閉鎖する間も、その正反対の位置にある、計量キャピラリー110の遠位端126の狭窄部120は、特に好ましい効果を有する。例えば、この狭窄部120は、充填操作の間、又は、閉鎖片146が装着される時に、比較的多量の試料134が遠位開口部116から出てくることを防止することができる。しかしながら、図2Bに示されるように、比較的少量の試料134が遠位開口部116から現れることがあり、その後、例えば単に拭き取られることによって除去され得る。遠位開口部116から現れるこの過剰分を、図2Bでは参照番号148で表す。
【0079】
最後に、図2Cは、閉鎖片146で閉じられた充填した計量キャピラリー110を示す。この計量キャピラリー110は、ここでも図2Cには示されていないが、保持装置138に今までどおり保持されてもよい。しかしながら、計量キャピラリー110の輸送の代わりに、又は加えて、他のタイプの保管も、原則として、可能である。この目的のために、例えば、遠位開口部116も、例えば、キャップによって、及び/又は、接着剤によって、又は、同様の閉鎖物によって、任意に閉じられ得る。
【0080】
その後、図2Dに象徴的に示される、成分分離を伴う手順が行なわれる(上からの斜視図をここに示す)。この成分分離は、試料134中の第1の成分と第2の成分154との少なくとも実質的な分離を含み、第1の成分は試料134中の血球部分152からなり、第2の成分は図示の例では血漿156からなる。この分離は、例えば、上記分離装置140、特に、遠心分離機を用いて行なわれる。遠心分離機は、例えば、ヘマトクリット遠心分離機又は同等のものとして設計され得る。具体的には、単純な遠心分離機が、調節の可能性なしで、例えば所定の回転速度及び/又は運転時間で、用いられ得る。この場合には、2つの成分150、154の分離が、遠心力によって行なわれ、ここでは、高密度の血球成分152が、計量キャピラリー110の近位端128へ向かって動かされる。それに対し、低密度成分の血漿156は、遠位端126に向かって落ち着く。図2Dに示されるように、2つの成分150、154の間には、相境界158ができる。この相境界158の位置は、現在のヘマトクリット値によって決められる。仕切り線122の、例えば、所定の区切り点124の位置は、通常のヘマトクリット値で、第2の成分154の領域内であって、相境界158に限りなく近くに位置されるように選択される。具体的には、上述したように、遠位端126から30mm離れて配置され得る。
【0081】
分離工程では、場合によって、気泡が計量キャピラリー110の遠位端126に留まる可能性がある。このような場合には、これらの気泡は、例えば、さらなる任意の方法手順において、例えば、近位開口部118で閉鎖片146のしっくいをさらに押し込むことによって、遠位開口部116から押し出すことができる。例えば、近位端128は、分離工程後、しっくい組成物中に押し戻され得る。このように、規定容積130が気泡を含まないことを確実なものとすることが可能である。
【0082】
分離工程後、計量キャピラリー110は、分離装置140から取り出され、少なくとも2つの部分片160、162に分割され得る。これを、図2Eに、所定の区切り点124に沿った計量キャピラリー110の単純な破壊によって示す。しかしながら、計量キャピラリー110はまた、2つ以上の部分片にも分割され得る。
【0083】
計量キャピラリー110を部分片160、162に分割することによって、標的成分164が選択される。この実施形態に示すように、この標的成分164は血漿156のできるだけ大きな部分であり、これが試料134の第2の成分154を形成する。図1を参照して既に記載したように、標的成分164は、正確に規定容積V’を含んでいる。
【0084】
例えば、計量キャピラリー110のコーティング132に応じて、標的成分164中にこのように得られた血漿156は、それに対して添加する種々の抗凝固剤を有し得る。しかし、例えば、適切に迅速に行なわれる操作によって、非抗凝固処理血液から血漿156を調製することも可能である。
【0085】
上述したように、遠心分離される標的成分164の標的容積は、例えば、正確に31μlであり得る。この標的成分164は、例えば、試験エレメント166に適用され得る。この例を図2Fに示す。ここでは、試験エレメント166を、少なくとも1つの試験領域168を有するテストストリップの形態で一例として示す。例えば、試験領域168は、適切な試験化学物質を含み得る。例えば、Reflotron(登録商標)系分析器用のHDLC試薬ホルダーが用いられ得る。第1の部分片160中の標的成分164は、例えば、狭窄部120がある遠位開口部116を試験領域168の担体メッシュに接触させることによって適用され得る。しかしながら、代案として、図2Eに示される、所定の区切り点124に面し、2つの部分片160、162の分割により生じる開口部170が、担体メッシュに適用され得る。しかしながら、示されている改良型が優先され、ここでは、最初の開口部112、114の1つ、好ましくは狭窄部120がある開口部114が、試験領域168に適用される。なぜなら、この開口部は、より明確な界面、例えば、滑らかな、平滑化された、或いは、磨かれた界面を提供するからである。試験エレメント166に適用後、例えば、現時点では血漿試料である試料134の性質の測定、例えば、血漿試料中の少なくとも1つの分析物の定性的検出及び/又は定量的検出を行なうことが可能である。例えば、高密度リポタンパクコレステロールが検出され得る。
【0086】
さらに、記載した方法及び図示した装置136はまた、毛細管血試料の他の性質の測定も可能である。このように、1つ以上の中間分析法もまた、例えば、図2Dに示す分離工程後であって、2つの部分片162、164の分割を含む図2Eに示す工程の前に、行なわれ得る。例えば、相境界158の位置は、例えば、適切な測定装置を用いることによって、測定され得る。このような方法で、例えば、血球部分152の割合について、そして、試料134のヘマトクリット値について、結果が直接導き出され得る。例えば、これは、赤血球カラムの長さ、すなわち、第1の成分の血球部分152の長さを測定するための目盛り付きの定規を用いることによって行なわれ得る。計量キャピラリー110は、常に均一に、且つ、好ましくは完全に満たされているので、ヘマトクリット管からヘマトクリットを測定するのと同様に、ノモグラムは通常、不要である。
【0087】
測定後、計量キャピラリー110の両方の部分片160、162は、廃棄されるか、或いは、さらに測定に用いられ得る。適切な印及び/又は所定の区切り点124がある計量キャピラリーを製造するために求められるテクニックは、原則として、当業者に知られている。血漿等の得られる標的成分164の量に関する要求精度は、生産技術の観点から問題はない。
【0088】
遠心分離機等の分離装置140の回転速度及び/又は運転時間の正確さも、通常、求められない。生じる遠心力は、計量キャピラリー110の近位端128にある閉鎖片146の栓にあまり多くの負担をかけないために、できるだけ低くなるように選択される必要がある。例えば、5,000g〜10,000g、特に7,000〜9,000g、特に好ましくは8,000gの相対遠心力(rcf)を用いることができる。ここで、gは、重力加速度である。例えば、最大60%のヘマトクリット値のために提案したキャピラリーの容積は、31μlの血漿を得るのに十分である。
【0089】
計量キャピラリー110の遠位端126にある所定の区切り点124の適切な位置決めによって、或いは、計量キャピラリー110の内径の変更によって、異なる規定容積の血漿、又は、異なる規定容積の標的成分164を得ることも可能である。これは、基本的な操作を変更しない。
【0090】
記載した計量キャピラリー110はまた、分離工程が行なわれることなく用いられ得ることに留意されたい。例えば、所定量の血液を、遠心分離工程なしに、計量キャピラリー110によって、適用し得る。
【0091】
方法は、図2A〜2Fに象徴的にのみ示され、本発明の範囲内で任意の所望の方法に変更され得ることもまた留意されたい。例えば、狭窄部120はまた、代案として、又は加えて、もう1つ別の開口部112、114に備えられ得る。さらに、充填はまた、別の開口部112、114の方から行なわれ得る。開示された方法の様々なバリエーションが考えられ得る。
【0092】
上述したように、狭窄部120は、特に、計量キャピラリー110の取り扱いを大幅に改善し、かつ、容易にする効果を有する。特に、望ましくない漏出から保護することによって、向上した操作の安全性を提供する。種々の試験がこれを確認するために行なわれた。
【0093】
これらの試験では、計量キャピラリー110を、新鮮な毛細管血(以下、「C」とも表す)、又は、静脈血(以下、「V」とも表す)の形態の試料とともに用いた。計量キャピラリー110は、EDTAでコーティングし、狭窄部120を有していた。計量キャピラリー110は、75.00mm±0.50mmの長さ、1.20mm±0.2mmの内径、1.55mm±0.02mmの外径、及び28.00mm±0.90mmの長さの第1の部分片160を有していた。狭窄部120の周辺では、計量キャピラリー110は、0.50mm±0.20mmの内径を有していた。所定の区切り点124は、0.80mm±0.10mmの幅を有する黒いリングマークによって両側に印を付けた。マークは、所定の区切り点124から1.0mm±0.20mmの距離に各々配置した。
【0094】
計量キャピラリー110を、試料134で完全に満たし、水平に対して所定の傾斜角で、各場合に5秒間、傾けて保った。分離測定は、両方の傾斜方向に対して、すなわち、狭窄部120を備えている開口部114が下方を指す(以下、「狭窄部末端下向き」又は「CD」とも表す)傾斜の各場合の1回、及び狭窄部120を備えていない開口部112が下方を指す(以下、「開口末端下向き」又は「OD」とも表す)傾斜の各場合の1回、行なった。
【0095】
これらの測定結果を表1に示す。この表1で用いた略語「C」、「V」、「CD」、及び「OD」は、すでに上で説明した。さらに、表1はまた、傾斜角で表した欄において、試験毎に、試験に用いられた試料134が計量キャピラリー110内に留まっている(「+」で表した)か、或いは漏れ出した(「−」で表した)かを示す。
【0096】
表1の結果は、1つの例外(番号6)を除いて、両タイプの血液(毛細管血及び静脈血)が傾斜角30°までの試験条件を満たすことを示す。これは、計量キャピラリー110を取り扱う間、例えば、ホルダーから取り外す間、ヘマトクリットワックスでの閉鎖の間、或いは、同様の取り扱い操作の間、漏出に対して十分な安全性を確実にする。これらの容積を有するが、狭窄部120を有さない完全に充填された計量キャピラリー110は、取り扱いの間に故意ではなくとも起こり得るように、約5°の傾斜角を保った場合であっても漏れる。さらに、狭窄部120によれば、計量キャピラリー110を180°ですばやく1回転させることができるようになり、そして、それは、狭窄部120なしでは可能でない。このように、狭窄部120は、計量キャピラリー110を取り扱う間、重要な安全機能を担う。
【表1】

【0097】
記載されている試験において使用した5秒間の保持時間は、手で計量キャピラリー110の取り扱いを実行する上で十分な時間を提供している。試験はまた、計量キャピラリー110を取り扱う使用者の誰もが、試験の間に、計量キャピラリー110から漏れるという事故に遭わないことを示した。しかしながら、完全に充填される開放のヘマトクリットキャピラリーについては、実際に、このような事故が頻繁に起こる。さらに、試験は、例えば、ヘマトクリットワックスによる一端の任意の閉鎖後、狭窄部120を有する計量キャピラリー110が、少なくとも分割操作が行なわれるまで、漏出に対して実に完全に保護されていたことを明らかにした。
【0098】
狭窄部120は、記載されている試験においても、好ましくは一端に備えられているに過ぎない。一端に狭窄部120を配置する他の重要な理由は、計量キャピラリー110の折り取った部分、例えば、図2Eにおける第1の部分片160の漏出挙動である。この第1の部分片160の内容物、例えば、血漿のその内容物は、例えば遠心分離後、Reflotron HDLC試験サポート等の試験エレメント166に完全に適用されなければならない。しかしながら、多くの場合、これは、第1の部分片160が、試験領域168及び/又は適用領域、例えば、Reflotron HDLC試験サポートにおける黄色の適用領域に、圧力なしに置かれ、完全に空になるまで、徐々に循環運動させる場合に、機能するに過ぎない。狭窄部120を有する狭窄部末端は、多くの場合、滑らかに磨かれるか、或いは、熱で丸くされる等、丸みをつけられる。それに対し、第1の部分片160の他端が適用の間、移動のために用いられることになっている場合、試験領域168、例えば、この試験領域168の被覆布上は、容易に損傷を受け得るし、この第1の部分片160の鋭利なキャピラリー端部に擦られることによって、使用不能の状態にされ得る。したがって、狭窄部末端は、特に好ましくは平面的である。
【0099】
計量キャピラリー110はまた、好ましくは狭窄部末端を経由して試料134で満たされる。それにより、充填操作の後、計量キャピラリー110は、もっぱら狭窄部末端で、通常、血液等の試料134で外側が汚染される。しかしながら、外側から計量キャピラリー110を洗浄することは、実際のところ、比較的難しく、熟練を必要とする。例えば、開放のキャピラリーである計量キャピラリー110を拭くことは、例えば、拭くために用いるセルロース布が、その吸引力等で計量キャピラリー110から血液等の試料134の一部を引き出さないことを確実にするために、スピードと熟練とを必要とする。それに対し、狭窄部120が用いられる場合、洗浄操作は、この狭窄部120のため、実際のところ、全く問題がなく、熟練していない者によって容易に行なわれ得る。狭窄部120で増大した毛細管力は、確実に、血液等の試料134が拭う布によって吸引されることを防止する。
【符号の説明】
【0100】
110:計量キャピラリー
112:開口部
114:開口部
116:遠位開口部
118:近位開口部
120:狭窄部
122:仕切り線
124:所定の区切り点
126:遠位端
128:近位端
130:規定容積
132:抗凝固剤コーティング
134:試料
136:血液試料の標的成分を提供する装置
138:保持装置
140:分離装置
142:血液滴
144:指腹
146:閉鎖片
148:過剰分
150:第1の成分
152:血球部分
154:第2の成分
156:血漿
158:相境界
160:第1の部分片
162:第2の部分片
164:標的成分
166:試験エレメント
168:試験領域
170:開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(134)中の少なくとも1つの規定容積の標的成分(164)を提供するための計量キャピラリー(110)であって、少なくとも2つの開口部(112、114)を有し、開口部(112、114)の少なくとも1つは、少なくとも1つの狭窄部(120)を有し、計量キャピラリー(110)はまた、開口部(112、114)の間に、少なくとも1つの仕切り線(122)、特に、少なくとも1つの所定の区切り点(124)、及び/又は、少なくとも1つの仕切り印を備える少なくとも1つの仕切り線(122)を有する、計量キャピラリー(110)。
【請求項2】
計量キャピラリー(110)は、キャピラリー容積を有し、規定容積の標的成分(164)がキャピラリー容積の50%未満を占める、請求項1に記載の計量キャピラリー(110)。
【請求項3】
計量キャピラリー(110)は、少なくとも1つの抗凝固剤物質、特に抗凝固剤コーティング(132)、特に、EDTAコーティングを有する、請求項1又は2に記載の計量キャピラリー(110)。
【請求項4】
計量キャピラリー(110)は、狭窄部(120)を備えている開口部(112、114)が、滑らか、且つ/或いは、平らであり、特に、磨かれているか、且つ/或いは、熱で丸くされている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の計量キャピラリー(110)。
【請求項5】
試料(134)中の少なくとも1つの規定容積の標的成分(164)を提供するための装置であって、請求項1〜4いずれかに記載の少なくとも1つの計量キャピラリー(110)を含み、さらに、計量キャピラリー(110)内の試料(134)中の少なくとも2つの成分(150、154)の少なくとも部分的な分離のために、成分分離を行なう少なくとも1つの分離装置(140)を含む、装置。
【請求項6】
さらに、試料(134)で少なくとも部分的に満たされている計量キャピラリー(110)のために、計量キャピラリー(110)を規定位置で固定するように設計されている保持装置(138)を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
試料(134)中の少なくとも1つの規定容積の標的成分(164)を提供するための方法、特に、計量キャピラリー(110)に関する請求項1〜4のいずれか1項に記載の計量キャピラリー(110)を用いる方法であって、前記方法は、以下の手順を含む:
少なくとも2つの開口部(112、114)を有する少なくとも1つの計量キャピラリー(110)を準備し、ここで、開口部(112、114)の少なくとも1つ、特に、遠位開口部(116)は、狭窄部(120)を有する;
計量キャピラリー(110)を試料(134)で少なくとも部分的に満たすこと;
計量キャピラリー(110)内の試料(134)中の少なくとも2つの成分(150、154)の少なくとも部分的な分離のために、成分分離を行なうこと;及び、
計量キャピラリー(110)を少なくとも2つの部分片(160、162)に分割し、ここで、部分片の少なくとも1つ(160)は、規定容積の標的成分(164)を含有する。
【請求項8】
さらに、少なくとも1つの医療用途及び/又は診断用途、特に、標的成分(164)中の少なくとも1つの分析物を検出する分析方法のために、規定容積の標的成分(164)を提供することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
規定容積の標的成分(164)は、試験エレメント(166)及び/又は試料スライドに持ってこられる少なくとも1つの部分片(160)の部分片開口部(114、118、170)によって提供される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
試料(134)は、血液試料を含み、成分分離は、試料(134)中の血球成分(152)が遠心力及び/又は重力の作用によって血漿(156)から少なくとも部分的に分離されることを伴い、計量キャピラリー(110)は、規定容積の標的成分(164)が血漿(156)のみを含むように分割される、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
計量キャピラリー(110)は、キャピラリー容積を有し、規定容積の標的成分(164)がキャピラリー容積の50%未満を占める、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
さらに、成分分離が行なわれた後、計量キャピラリー(110)が分割される前に行なわれる少なくとも1つの中間分析工程を含み、計量キャピラリー(110)内の試料(134)中の少なくとも2つの成分の少なくとも部分的な分離が、試料(134)の少なくとも1つの性質に関する、特に、試料(134)中の血球成分の割合に関する結果を引き出させる、請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
開口部(112、114)の少なくとも1つ、特に、近位開口部(118)は、成分分離が行なわれる前に閉鎖され、閉鎖は、好ましくは少なくとも1つの以下の栓(146):しっくい;キャップ、特にプラスチックキャップ、好ましくはシリコンキャップ;ワックス、特にヘマトクリットワックス;樹脂;接着剤によってもたらされる、請求項7〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの機械的な切断方法が、計量キャピラリー(110)を分割するために用いられ、計量キャピラリー(110)は、好ましくは、少なくとも1つの所定の区切り点(124)を有する、請求項7〜13のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【公表番号】特表2012−518157(P2012−518157A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549489(P2011−549489)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000908
【国際公開番号】WO2010/094440
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】