説明

血液流動性改善作用をもたらす機能性食品

【課題】血流停滞の改善を促し、生活習慣病への移行を予防することに有効な機能性食品を提供する。
【解決手段】機能性食品に、松笠、松樹皮、および松葉からの抽出物を含有させるものとする。これにより、本来、食材として用いられることのない強い生命力を持つ植物の1つである松の複成分(実、樹皮、葉)からの抽出物を利用して、免疫調節作用、抗酸化作用、及び血管強化作用等の相乗作用により、血流停滞の改善を促し、健康を増進することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液流動性改善作用をもたらす機能性食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、日本国内においても家庭内での調理を主体とした1日3食(内食)の食生活が乱れつつあり、化学物質が添加された惣菜、冷凍調理品などの加工食品(中食)の家庭内への浸透にはじまり、ハンバーガー、フライドチキン等のファストフードに代表される外食産業の台頭が著しく進行している。そしてこれに連れて心疾患や脳疾患を伴う生活習慣病が急増している。
【0003】
こうした生活習慣病の原因の一つに血流停滞が挙げられるが、この血流停滞を改善する作用のある食品として納豆が知られている。しかし納豆は、健康に役立つと言っても、独特の臭いやねばねばした食感を嫌う人も多い。そこで納豆嫌いの人にも手軽に摂取できるような納豆菌の産生物を含んだカプセルや錠剤が提案されている(特許文献1を参照されたい)。
【特許文献1】特開平11−18712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、本来、日常の食生活で摂取すべき健康増進に役立つ成分を、食品そのものから摂らずに、わざわざ食材を加工してまで健康食品化することは、本末転倒とも言える。
【0005】
本発明は、このような現状を踏まえて創案されたものであり、本来、食品としては供されることのない強い生命力を持つ植物の1つである松の複成分を利用して生活習慣病の元凶ともいえる血流停滞の改善を促し、生活習慣病への移行を予防することに有効な機能性食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するため、本発明は、松笠、松樹皮および松葉からの抽出物を含有することを特徴とする血液流動性改善作用をもたらす機能性食品を提供するものとした。特に、前記松笠は、マツ科に属するゴヨウマツ或いはチョウセンゴヨウに由来するものとし、前記松樹皮および松葉は、マツ科に属するラジアタマツ、フランスカイガンショウ、アカマツ、或いはクロマツに由来するものとすると良い。
また、これら松から抽出した成分以外に、日常不足しがちなビタミン、ミネラル及びハーブ類などを補助的に加えても良い。
【発明の効果】
【0007】
このような本発明によれば、本来、食材として用いられることのない松の複成分(実、樹皮、葉)からの抽出物を含有した機能性食品を摂ることにより、免疫調節作用、抗酸化作用、及び血管強化作用等の相乗作用により、急増する生活習慣病の元凶ともいえる血流停滞の改善を促し、健全な体に保つ上に大きな効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明による機能性食品に含有させる物質について詳細に説明する。本発明に関わる物質は、松笠、松樹皮、および松葉から、周知の抽出法を利用して抽出することができる。
【0009】
松笠、松樹皮、および松葉は、抽出効率を高めるために適宜な粒径に粉砕する。これらを個々に、加熱した水(好ましくは純水)に浸漬して水溶性成分を抽出し、濾過あるいは遠心分離にて残渣を除去した抽出液を減圧濃縮してそれぞれのエキスを得る。また場合によっては、さらに水性溶媒(例えばエタノール)を用いて可溶成分を抽出した後、減圧乾燥して溶媒を除去して得られた固形物を粉末化しても良い。
【0010】
このようにして得られた粉末剤あるいは液剤は、カプセルや錠剤などの適宜な形態の経口剤としたり、或いは菓子類などの食品や清涼飲料などに混ぜ合わせたりすることにより、容易に摂取することができる。
【0011】
松笠のエキスには、免疫機能を向上させるリグニンが多く含まれている。また松樹皮のエキスには、抗酸化作用の強いプロアントシアニジン類が多く含まれており、活性酸素に起因する生活習慣病の予防に効果的である。さらに松葉のエキスには、血管内膜を強化するケルセチンが多く含まれている。これらが相乗的に作用して血液流動性の改善を促しているものと考えられる。
【0012】
従って、これらの松笠、松樹皮、および松葉からの抽出物は、適宜な割合で混合して用いると良く、例えば、松笠エキス1に対し、松樹皮および松葉エキスを0.1〜1の間で適宜に調節すると良い。
【0013】
次に本発明物質の血液流動性改善作用の検証について説明する。
【0014】
先ず、血液停滞を生じているヒト試験協力者を、医療法人社団・和会・渋谷コアクリニックに通院する患者から、30歳代〜60歳代の男女各6名を募集した。試験協力者12名の年齢構成は、男性が、66歳、57歳、48歳、46歳、45歳、31歳各1名であり、女性が、58歳2名、52歳、50歳、31歳、30歳各1名であり、全体の平均年齢は47.7歳である。
【0015】
試験協力者12名の全員に対し、1粒当たり被験物質300mgを内包したソフトカプセル4粒を1日分として食前に摂取することを、2ヶ月間連続した。そして被験物質の摂取前および連続摂取2ヶ月後の血液を採取し、その検血の血液流動性を、ライカ製ATC−2000による明視法で測定した。
【0016】
被験物質の摂取前に、試験協力者12名の全員から、未消化性のタンパク質、糖質、脂質等の成分が赤血球の間隙に溜り、赤血球が10個以上連なったルロー(連銭)形成を主体に、プラーク形成及び尿酸結晶等が混在する血液流動性の停滞があることを確認した。しかし試験協力者12名は、血液流動性の停滞以外の肝機能、腎機能及び一般尿検査には異常は認められなかった。
【0017】
なお、すべての試験は、ヘルシンキ宣言の精神に則り、試験前に被験物質の松複成分を主成分とする試験食品の生理作用、機能性、安全性及び試験目的と実施方法等について説明した。また、試験参加は、如何なる時点でも中止を受け入れる自由意思であることを説明後、同意書が得られたヒト試験協力者のみを対象とした。
【0018】
血球像から、5機能(1.消化・吸収、2.栄養摂取、3.解毒・排泄、4.活性酸素、5.免疫力)における血液流動性改善効果の有無を各機能ごとに3段階評価した。正常をA評価とし、効果の程度が低くなるに従って評価をB〜Cとした。
【0019】
以下に項目別・血液分析評価(A、B、C)の基準を上げておく。各項目についてC評価が与えられた血液像の代表例を添付したので参照されたい。
【0020】
1.消化・吸収機能
A: 赤血球の重なりがない(接しているのは良い)。
B: 赤血球の3〜5の小さな重なり(小さなルロー)がない。
C :多数の赤血球が重なり、大きなルロー(連銭形成)、あるいは大きな凝集を形成している(図6:ルローの例)。
【0021】
2.栄養摂取機能
A:赤血球の大きさが均一である。標的細胞がないか、ときに標的細胞や楕円赤血球を認める。
B:赤血球の大きさがやや不均一(大小不同)。
C:赤血球の大きさが不均一(大小不同)。ときに標的細胞や楕円赤血球を認める(図7:大小不同の例)。
【0022】
3.解毒・排泄機能
A:尿酸やコレステロール、プラーク等を認めない。
B:尿酸やコレステロール、プラーク等の小さなものを認める。
C:尿酸やコレステロール、プラーク等の大きなものを多数認める(図8:プラークの例)。
【0023】
4.活性酸素機能
A:赤血球がまん丸で正円形である。
B:赤血球がやや固く、角ばった感じがある。
C:赤血球が変形し、ときに有棘赤血球を認める(図9:有棘赤血球の例)。
【0024】
5.免疫力機能
A:白血球の大きさが赤血球の2倍であり、動きが活発である。
B:白血球の大きさが赤血球の1〜2倍であり、動きはあるが活発ではない。
C:白血球の大きさが赤血球より小さく、動きは鈍いか、あるいは殆ど動きがない(図10:不全白血球の例)。
【0025】
その結果、消化・吸収機能については、図1に示す通り、女性は本発明物質の摂取前はA評価1名、B評価2名、C評価3名であったのが、本発明物質を連続摂取した2ヶ月後には、A評価4名、B評価2名と、有為な改善効果が認められた。以下同様に男性は、6名全員がC評価であったのが、全員がA評価となり、これも有為な改善効果が認められた。
【0026】
栄養摂取機能については、図2に示す通り、女性はB評価1名、C評価5名であったのが、6名全員がB評価となり、有為な改善効果が認められた。また男性は、B評価2名、C評価4名であったのが、A評価3名、B評価3名となり、これも有為な改善効果が認められた。
【0027】
解毒・排泄機能については、図3に示す通り、女性はB評価3名、C評価3名であったのが、B評価2名、C評価4名となり、これについては顕著な改善効果が認められなかったが、男性は、B評価2名、C評価4名であったのが、A評価2名、B評価4名となり、これは有為な改善効果が認められた。
【0028】
活性酸素機能については、図4に示す通り、女性は全員がC評価であったのが、A評価3名、B評価3名となり、これについては有為な改善効果が認められた。また男性は、B評価1名、C評価5名であったのが、A評価5名、B評価1名となり、これも有為な改善効果が認められた。
【0029】
免疫力機能については、図5に示す通り、女性はA評価2名、B評価3名、C評価1名であったのが、全員A評価となり、これについては有為な改善効果が認められた。また男性は、B評価1名、C評価5名であったのが、これも全員A評価となり、有為な改善効果が認められた。
【0030】
以上、詳述した通り、マツ複成分配合の被験物質を2ヶ月間連続摂取したところ、試験協力者12名の全例において、血液像のルロー形成が消滅し、項目別血液分析評価でも、血液流動円滑化の評価が得られた。これにより、本発明物質の血液流動性改善効果が証明された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明による松笠、松樹皮、および松葉からの抽出物は、飲食品に添加して、血液流動性を改善するための機能性食品として使用することができることはもとより、周知の技術を適用して注射薬や内服薬として、医薬品、医薬部外品、化粧品などにも適用可能である。なお、機能性食品は、栄養素を一種以上含む天然物およびその加工物を指し、生体機能の調節など、生理面での働き(3次機能)を十分に発揮するように製造された食品として定義されている(平成15年7月30日、第一出版株式会社発行、健康・栄養食品アドバイザリー・スタッフ・テキストブック、第92、93頁を参照されたい)。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】消化・吸収機能に関わる本発明物質摂取前後の評価の変化を示すグラフである。
【図2】栄養摂取機能に関わる本発明物質摂取前後の評価の変化を示すグラフである。
【図3】解毒・排泄機能に関わる本発明物質摂取前後の評価の変化を示すグラフである。
【図4】活性酸素機能に関わる本発明物質摂取前後の評価の変化を示すグラフである。
【図5】免疫力機能に関わる本発明物質摂取前後の評価の変化を示すグラフである。
【図6】消化・吸収機能に関わるC評価の血液像の1例である。
【図7】栄養摂取機能に関わるC評価の血液像の1例である。
【図8】解毒・排泄機能に関わるC評価の血液像の1例である。
【図9】活性酸素機能に関わるC評価の血液像の1例である。
【図10】免疫力機能に関わるC評価の血液像の1例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
松笠、松樹皮および松葉からの抽出物を含有することを特徴とする血液流動性改善作用をもたらす機能性食品。
【請求項2】
前記松笠は、マツ科に属するゴヨウマツ或いはチョウセンゴヨウに由来するものであることを特徴とする請求項1に記載の血液流動性改善作用をもたらす機能性食品。
【請求項3】
前記松樹皮および松葉は、マツ科に属するラジアタマツ、フランスカイガンショウ、アカマツ、或いはクロマツに由来するものであることを特徴とする請求項1に記載の血液流動性改善作用をもたらす機能性食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−161077(P2008−161077A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351356(P2006−351356)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(505358945)株式会社スパングル (3)
【Fターム(参考)】