血液浄化装置
【課題】 返血操作において、コストを低く抑えつつ、簡単な操作で、生食バッグ等の電解質液の収容体から、過剰な量の電解質液を供給することなく、所定量の電解質液のみを供給することのできる血液浄化装置を提供する。
【解決手段】 血液浄化装置において、所定面積の押圧面を備えた押圧手段60を用いて、電解質液が収容された可撓性容器56を押圧し圧潰することにより、可撓性容器56に収容された電解質液を押圧面の面積に応じた所定量だけ押し出して、所定量の電解質液だけを血液回路に導入するように構成した。
【解決手段】 血液浄化装置において、所定面積の押圧面を備えた押圧手段60を用いて、電解質液が収容された可撓性容器56を押圧し圧潰することにより、可撓性容器56に収容された電解質液を押圧面の面積に応じた所定量だけ押し出して、所定量の電解質液だけを血液回路に導入するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液浄化装置に係り、特に、患者の体内から取り出した血液を浄化して再び体内に戻すようにした、血液浄化装置の改良された構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腎不全の患者の治療や生命の維持のために、患者の血液を浄化する血液浄化装置として、所謂人工腎臓が広く知られている。そして、かかる装置には、函体内に中空繊維状のセルロース膜、キュプロアンモニウムレーヨン膜、ポリアクリロニトリル膜、ポリスルホン膜等の半透膜が収容されており、この半透膜を通じての透析作用や濾過作用によって血液の浄化を行う浄化器が用いられており、例えば血液透析操作を行う場合には、患者の血液が、浄化器として用いる血液透析器(ダイアライザ)の半透膜を介して透析液に接触し、血液中に蓄積した尿素、尿酸、水等が透析され、除去されるようになっている。
【0003】
ダイアライザのような血液浄化器を有する従来の血液浄化装置は、一般に、血液浄化器の血液の導入側に動脈側血液回路が接続される一方、血液浄化器の血液の返送側には、静脈側血液回路が接続されており、動脈側血液回路には血液ポンプが設けられている。そして、動脈側血液回路の血液導入側端部と静脈側血液回路の血液送出側端部には、それぞれ動脈側穿刺針と静脈側穿刺針が取り付けられており、動脈側穿刺針が患者の体内に設けられたシャント血管の上流側に穿刺される一方、静脈側穿刺針がシャント血管の下流側に穿刺されて、血液の循環路が構成されるようになっている。
【0004】
従って、このような血液の循環路を構成する血液浄化装置にあっては、動脈側穿刺針を通じて動脈側血液回路に導入された血液が、血液ポンプの作用により血液浄化器に送られ、血液浄化器で浄化された血液が静脈側血液回路に送られ、更に、静脈側穿刺針を通じて患者の体内に返送されるようになっている。
【0005】
ところで、このような血液浄化装置を用いて行う患者の血液の浄化操作の終了後には、血液透析器や血液回路等の内部に150〜250ml程度もの血液が残留するようになるため、この残留血液を患者の体内に戻す必要がある。そのため、血液浄化操作終了後においては、通常、動脈側穿刺針や静脈側穿刺針を患者から抜去することなく、患者に穿刺したままで血液を患者の体内に戻す返血操作(血液回収操作)が行われている。
【0006】
そして返血操作を行うに際しては、従来は通常、生理食塩水等の電解質液がリンス液として用いられ、リンス液で装置の内部に残留する血液を置換して押し流し、残留血液を患者の体内に戻すようにしている。この返血操作は、通常、短時間(数分〜10分程度)で終了するため、医師や看護師等のスタッフが目を離すと、血液浄化操作で血液中の余分な水分をせっかく除去しても、患者の体内に過剰な量の電解質液が流入したり、場合によっては、空気が混入したりする虞がある。そのため、スタッフは、返血操作を実施している間、その様子を常時監視する必要があり、返血操作中は患者のベッドサイドから殆ど離れることができなかった。
【0007】
ところで、近年、社会経済的な変化に伴って、透析医療の分野においても合理化が求められるようになっている。そして、特に返血操作は、上述のように労働集約的な作業であることから、その合理化は、透析医療全体の合理化に資するものと考えられてきている。このような状況下、血液浄化終了後の返血作業の合理化を目的とする各種のシステムが提案されてきている。例えば、非特許文献1には、全自動コンソール(全自動血液浄化装置)が開示されており、そこでは、除水量と透析時間が共に満たされた場合に、ダイアライザ内での透析液側の圧力を血液の圧力よりも自動的に高くすることにより、透析液をダイアライザの半透膜を介して血液側に移行せしめる、所謂逆濾過を行い、この逆濾過された透析液によって血液回路やダイアライザ内に残留する血液が置換され押し流されることによって返血操作が行われるようになっている。ところが、この逆濾過によって返血操作を行う場合には、定期的に透析液中のエンドトキシンを測定しなければならず、これが透析コストを高騰させる大きな要因の一つとなっている。
【0008】
また、特許文献1には、通常の血液回路に、血液ポンプをバイパスするバイパス流路が設けられた血液浄化装置(バイパス付き血液浄化装置)が提案されており、そこでは、返血操作時にバイパス流路における液流通を許容させることにより、血液ポンプの機能を無くし(血液ポンプの作動によって血液回路を含む血液の流路内が負圧になるのを防止し)、以て血液回路を血液ポンプに取り付けた状態のままで、生食バッグ等のリンス液バッグから重力の作用によって導入されるリンス液によって、血液回路内やダイアライザ内に残留する血液が置換され押し流されることによって返血操作が行われるようになっている。この血液浄化装置によれば、通常の血液回路を用いた場合と同程度のコストで返血操作を行うことができるといった利点がある。しかしながら、返血操作においては、通常、容量が500ml、1000ml、1300mlまたは1500mlのリンス液バッグが用いられるため、このバイパス付き血液浄化装置では、スタッフが目を離して放置してしまうと、リンス液バッグ内のリンス液が無くなるまでリンス液が血液回路中に導入され、過剰量のリンス液が患者の体内に入る虞がある。それ故、このバイパス付き血液浄化装置を使用して返血操作を実施する場合には、リンス液バッグ内に収容されるリンス液の液量を、返血に必要な量(約300ml程度)だけにする必要があった。
【0009】
尚、リンス液バッグ内のリンス液を所望とする量(約300ml程度)にするには、所望量の容量(300ml)のリンス液バッグを用いるようにすれば良いのであるが、そのような容量のリンス液バッグは特注品となるため商業的に入手することが困難であり、現実的ではない。また、血液浄化装置に一般的に装備されている自動プライミング機能を利用して、例えば1500mlのリンス液の入っているバッグ(例えば、フィシザルツ−FC、扶桑薬品工業(株)製)から1200mlの生理食塩水を血液回路やダイアライザーのプライミングに使用して、リンス液バッグ内に300mlのリンス液を残したり、あるいは500m入りのバッグから200mlのリンス液を予め捨てることにより、リンス液バッグ内に所望量のリンス液を残しておくことも可能である。しかしながら、そのようにして透析当初から返血に必要な量(約300ml程度)だけを準備すると、透析中に緊急に補液が必要になりリンス液バッグ内の生理食塩水を使ってしまった場合などには、返血操作に必要とされるリンス液が足りなくなるといった不都合が生じる。具体的には、透析中に急速な血圧降下が起こった際には、急速な補液が必要となり、リンス液バッグから約200ml程度の生理食塩水が患者の体内に導入されることとなるため、透析終了後の血液回収操作に必要なリンス液が不足する。それ故、緊急事態を想定すると、血液回収に必要な量だけでなく補液に必要な量のリンス液も予め準備しておくことが望ましいが、補液に必要なリンス液を用意すると、透析中に補液を必要としなかった場合、血液回収操作により過剰量のリンス液が患者の体内に導入される虞が生じる。
【0010】
尚、特許文献1においては、仕切器具を用いてリンス液バッグ(収容バッグ)の内部を二つに仕切ることによって、所定量の生理食塩水のみが血液回路内に導入され得るようになっているが、仕切器具によって所望量のリンス液となるように仕切ること自体が難しく、リンス液量が多すぎる場合には、過剰なリンス液が患者の体内に入る虞があり、また、リンス液量が少なすぎる場合には、血液回路内の残血量が多くなると言った問題があり、更なる改善の余地を有している。
【0011】
また、上記非特許文献1や特許文献1に記載の血液浄化装置とは別の血液浄化装置として、透析終了時に、血液ポンプを利用して丁度300mlの生理食塩水を生理食塩水バッグから血液回路に送り込み、その送り込みが終了すると同時に血液ポンプが自動的に停止するようにした装置も提案されている。この装置には、万一生理食塩水が空になっても血液ポンプが作動し続けるようなことがないように、タイマーが装備されているが、タイマーがうまく作動しないと、過剰量の生理食塩水が患者の体内に導入されたり、血液ポンプよりも上流側(生理食塩水バッグ側)の血液回路内が負圧となって接続部等から空気が混入したりする虞があるため、タイマーを過信することはできず、結局、不測の事態を想定して、所望量(300ml)の生理食塩水が血液回路内に送り込まれるのを監視する必要があった。
【0012】
【非特許文献1】田岡正宏、山本千恵子、金成泰、高杉昌幸「プライミングの適正量の検討と全自動コンソールの性能評価」、腎と透析(別冊)51、東京医学社、p177-181、2001
【特許文献1】特開2006-20967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、如上の事情に鑑みてなされたもので、返血操作において、コストを低く抑えつつ、簡単な作業で、生食バッグ等の電解質液の収容体から、過剰な量の電解質液を供給することなく、の電解質液のみを供給することが可能な血液浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の血液浄化装置は、血液浄化器と、血液回路と、前記血液浄化器より上流側の血液回路に設けられた血液ポンプ、血液浄化器より下流側の血液回路に設けられた静脈チャンバとを含んでなる血液浄化装置において、
電解質液が収容されており、外部からの押圧により容易に圧潰して内部に収容された前記電解質液が排出される可撓性容器と、この可撓性容器を押圧するための所定面積の押圧面を備え、押圧により前記可撓性容器から所定量の前記電解質液を排出させる押圧手段とを含んでなる電解質液導入手段が、前記血液浄化器より上流側又は、血液浄化器より下流側で血液回路に接続されるとともに、この電解質液導入手段と血液回路の接続部分より上流側及び/又は下流側の血液回路に流路開閉手段が設けられ、前記電解質液導入手段から前記血液回路に導入される電解質液によって前記血液回路及び血液浄化器内の血液が回収されるようにしたことを特徴とする。
この場合、電解質液導入手段と血液回路を接続する電解質液導入流路に、前記電解質液流路を開閉する流路開閉手段が更に設けられ、可撓性容器から所定量の電解質液が排出されたときに前記流路開閉手段が自動的に閉鎖されるようにされていてもよい。
また、電解質液導入手段は、血液浄化器と静脈チャンバの間で血液回路に接続されていても、血液浄化器より上流側で血液回路に接続されていてもよい。
電解質液導入手段が血液浄化器と静脈チャンバの間で血液回路に接続される場合、静脈チャンバより下流側の血液回路には流路開閉手段が設けられる。
また、電解質液導入手段が血液浄化器より上流側で血液回路に接続されている場合は、血液ポンプより上流側の血液回路と、血液ポンプと血液浄化器の間の血液回路、とを結ぶバイパス流路が設けられるとともに、このバイパス流路の下流側に流路開閉手段が設けられ、このバイパス流路より上流側の血液回路に流路開閉手段が設けられてなる構成が採用される。この場合、バイパス流路において、流路開閉手段より上流側に血栓を捕捉しうる血液濾過網が設けられるとともに、この血液濾過網より上流側に流路開閉手段が設けられ、更に電解質液導入手段がバイパス流路と血液浄化器の間で血液回路に接続されるとともに、血液浄化器と静脈チャンバの間の血液回路に流路開閉手段が設けられてなる構成や、電解質液導入手段が、バイパス流路より上流側の血液回路の流路開閉手段とバイパス流路の間で血液回路に接続されるとともに、この接続部分に近接してこの接続部分とバイパス流路の間の血液回路に流路開閉手段が設けられ、バイパス回路と血液浄化器の間の血液回路に血栓を捕捉しうる血液濾過網が設けられてなる構成、バイパス流路によりバイパスされる血液回路部分において、血液ポンプより下流側に血栓を捕捉しうる血液濾過網が設けられるとともに、電解質液導入手段が該血液濾過網と血液ポンプの間で血液回路に接続され、更に血液浄化器と静脈チャンバの間の血液回路に流路開閉手段が設けられてなる構成などが採用可能である。
【0015】
可撓性容器は、その内部に収容された電解質液の液圧がシャント内圧よりも低くなる位置に配置されるのが好ましい。
押圧手段としては、対向する押圧面を有し、バネの付勢力によって互いに圧接される一対の圧迫板と、このバネの付勢力に抗して一対のアーム部を接近させることにより前記一対の圧迫板を離間せしめるようにした把持部とを、少なくとも具備し、可撓性容器を該一対の圧迫板の間に挟みこむことにより、前記バネによる付勢力で可撓性容器に収容された電解質液を押し出すようにしたものであっても、また、モータの作動力により可撓性容器に対して接近移動する圧迫板を具備してなるものであっても、重りの重力により可撓性容器に対して接近移動する圧迫板を具備してなるものであってもよい。可撓性容器を押圧する圧迫板は複数個設けるのが好ましい。
以上、一般的に本発明を記述したが、より一層の理解は、いくつかの特定の実施例を参照することによって得ることが出来る。これらの実施例は本明細書に例示の目的のためにのみ提供されるものであり、他の旨が特定されない限り、限定的なものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下のような効果が期待できる。すなわち、本発明の血液浄化装置によれば、所定面積の押圧面を備えた押圧手段によって可撓性容器を押圧し、可撓性容器からから電解質液を押し出すようにしているので、可撓性容器からは押圧面の面積に応じた所定量の電解質液しか排出されないようになっている。したがって、押圧手段の押圧面の面積を、使用する可撓性容器の種類や形状、大きさに応じて適宜に設定すれば、従来の返血操作に加えて、押圧手段を可撓性容器に取り付けるだけの簡単な操作で、コストを低く抑えつつ、返血操作に必要な量の電解質液のみを、血液回路内に導入することができる。
その結果、血液回路内に導入される電解質液の量を、例えば、動脈側血液回路の容積と血液浄化器の容積と静脈側血液回路の容積の合計の容積と同程度とすれば、血液浄化装置内部に残留する血液の略全量が患者の体内に戻されるとともに、体内への電解質液の過剰な流入を防止することができる。
また、可撓性容器や電解質液導入流路内の生理食塩水の液圧が静脈側血液回路の内圧と等しくなった時点で、たとえ可撓性容器内に生理食塩水が残っていても、可撓性容器からの生理食塩水の流出が自動的に停止するようになっており、返血操作の開始から終了まで返血操作の進行を常に監視する必要がないので、一度に多くの患者の返血操作を実施する場合にあっても、多くの人手をかけることなく返血操作を安全に且つ確実に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
血液浄化器と、血液回路と、前記血液浄化器より上流側の血液回路に設けられた血液ポンプ、血液浄化器より下流側の血液回路に設けられた静脈チャンバとを含んでなる血液浄化装置において、
電解質液が収容されており、外部からの押圧により容易に圧潰して内部に収容された前記電解質液が排出される可撓性容器と、この可撓性容器を押圧するための所定面積の押圧面を2つ備え、押圧により前記可撓性容器から所定量の前記電解質液を排出させる押圧手段からなる電解質液導入手段が、前記血液浄化器と静脈チャンバの間で血液回路に接続されるとともに、この静脈チャンバより下流側の血液回路に流路開閉手段が設けられている。そして、前記電解質液導入手段から前記血液回路に導入される電解質液によって前記血液回路及び血液浄化器内の血液が回収されるようになっている。可撓性容器は、その内部に収容された電解質液の液圧がシャント内圧よりも低くなる位置に配置されている。また、電解質液導入手段と血液回路を接続する電解質液導入流路に、前記電解質液流路を開閉する流路開閉手段を更に設け、可撓性容器から所定量の電解質液が排出されたときに前記流路開閉手段が自動的に閉鎖されるようにしている。
【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1の血液浄化装置を示す概略系統図である。
実施例1の血液浄化装置は、図1に示すように、血液浄化器としてのダイアライザ(血液透析器)10と、血液回路(ダイアライザ10より上流側の動脈側血液回路12とダイアライザ10より下流側の静脈側血液回路14からなる)と、動脈側血液回路12に設けられた血液ポンプ20、静脈側血液回路14に設けられた静脈チャンバ50とを含んでなる血液浄化装置において、電解質液導入手段が血液浄化器10より下流側で静脈側血液回路14に接続されているケースであり、可撓性容器56は内部に収容されている電解質液の液圧がシャント内圧よりも低くなる位置に配置されている。
電解質液導入手段は、電解質液が収容されており、外部からの押圧により容易に圧潰して内部に収容された前記電解質液が排出される可撓性容器56と、この可撓性容器56を押圧するための所定面積の押圧面を備え、押圧により可撓性容器56から所定量の前記電解質液を排出させる押圧手段60とを含んでなる。電解質液導入手段は、ダイアライザ10と静脈チャンバ50の間で静脈側血液回路14に接続されている。静脈チャンバ50より下流側の静脈側血液回路14には流路開閉手段としてのピンチバルブ84が設けられ、前記電解質液導入手段から静脈側血液回路14に導入される電解質液によって血液回路12、14及び血液浄化器10内の血液が回収されるようになっている。
【0019】
血液浄化操作に際しては、動脈側血液回路12の端部に取り付けられた動脈側穿刺針16が、患者のシャント血管42の上流側(動脈側)に穿刺される一方、静脈側血液回路14の端部に取り付けられた静脈側穿刺針18が、シャント血管42の下流側(静脈側)に穿刺される。かくして、動脈側穿刺針16から導入された患者の血液が動脈側血液回路12を通ってダイアライザ10に送られ、ダイアライザ10で浄化された血液が静脈側血液回路14を通って静脈側穿刺針18から患者の体内に返送される体外循環が可能になる。
なお、本明細書において、動脈側血液回路12や静脈側血液回路14における上流側および下流側とは、血液浄化操作の実施時における血液の上流側および下流側のことを意味するものとする。
【0020】
また、ダイアライザ10には、透析液供給流路44と透析液排出流路46が接続されており、透析液供給流路44を通して新鮮な透析液をその貯槽(図示していない)からダイアライザ10内に導き、この新鮮な透析液と、動脈側血液回路12を通してダイアライザ10に供給された血液を、ダイアライザ10の半透膜を介して接触させることにより、半透膜の透析および濾過作用により、血液中の不要物質乃至は有害物質、水分を透析液側に移行せしめ、これらの不要物質乃至は有害物質、水分を含んだ透析液(使用済透析液という)を透析液排出流路46を通して排出するようになっている。
【0021】
また、実施例1の血液浄化装置においては、静脈側血液回路14上に静脈チャンバ50が設けられているが、血液濾過網48は静脈チャンバ50の内部に配設されている。血液の浄化操作(透析操作)が行われる際に、静脈側血液回路14内の血液が、静脈チャンバ50内に一旦貯留されて、血液中に混入する空気が除去されるとともに、静脈チャンバ50の内部に配設された血液濾過網48により血液が濾過され、血液中の血栓が捕捉されて取り除かれることで、血液浄化操作が安全に実施され得るようになっている。
【0022】
電解質液導入手段は、可撓性容器56と押圧手段60と電解質液導入流路52から構成されており、電解質液導入流路52はダイアライザ10と静脈チャンバ50の間の部分54で静脈側血液回路14に接続されている。可撓性容器56には、電解質液としての生理食塩水が収容されており、外部からの押圧により容易に圧潰して内部に収容された前記電解質液が排出されるようになっており、押圧手段60は、この可撓性容器56を押圧するための所定面積の押圧面を備え、押圧により可撓性容器56から所定量の前記電解質液を排出させることができるようになっている。そして、前記電解質液導入手段から静脈側血液回路14に導入される電解質液によって血液回路12、14及び血液浄化器10内の血液が回収されるようになっている。
【0023】
可撓性容器56は、外部からの押圧力により、膨らんだ状態から容易に圧潰する柔軟性を有し、その膨らんだ状態と潰れた状態との間で容積が可変とされたバッグで構成されている。可撓性容器56には、返血操作時に必要とされる量(約250〜350ml程度)と血液浄化時の急激な血圧降下等を処置するために必要とされる補液の量(約100〜200ml程度)とを合計した量(約400〜600ml程度)、またはそれよりも多い量の生理食塩水が収容されるのが好ましい。本実施態様では、可撓性容器56は、可撓性容器56を外部から押圧していない状態下において、患者のシャント血管42の内圧(シャント内圧)、即ち体内から動脈側血液回路12に流れ込む血液の圧力または静脈側血液回路14から体内に血液が戻る圧力のいずれよりも、可撓性容器56内に収容された生理食塩水の内圧が低くなるような位置に取り付けられている。例えばベッドサイドにおいては、患者のシャント血管42と同じ高さの位置か、あるいはシャント血管42よりも低い位置に配置される。このようにすれば、可撓性容器56に対して外圧を作用せしめない限り、可撓性容器56に収容された生理食塩水が、電解質液導入流路52を通って接続部54から静脈側血液回路14に導入されることはない。
尚、可撓性容器56には、これをスタンド等の支持部材(図示していない)に取り付けるための取付孔58が設けられており、取付孔58を支持部材に係止することにより、可撓性容器56を所望の高さに容易に位置させることができる。
【0024】
可撓性容器56にはこれに収容された生理食塩水を押し出すための押圧手段としての押圧治具60が装着されている。押圧治具60としては、図3および図4に示すようなものが採用されている。
押圧治具60は、図1、図3、図4に示されるように、略矩形形状の硬質平板からなる一対の圧迫板62、62を有しており、一対の圧迫板62、62の対向面が可撓性容器56を押圧する押圧面64、64になっている。押圧面64、64は、所定量の生理食塩水だけを押し出すことができるように、用いる可撓性容器56の種類や形状、大きさに応じてその面積が適宜に設定されており、ここでは返血に必要な量(約300ml程度)だけが押し出されるように、押圧面64、64の横方向(図1の水平方向)の長さが可撓性容器56の幅と略同程度とされている一方、縦方向(図1の垂直方向)の長さが可撓性容器の生理食塩水の収容部の長さの3/5程度とされている。また、圧迫板62、62は押圧面64、64とは反対側の面において、それぞれ押圧治具60の本体66の先端側に固着されて支持されている。より具体的にいうと、押圧治具60の本体66の先端側は、挟持部68、68のそれぞれに、角度調節片70、70を介して圧迫板62、62が固着されている。
【0025】
押圧治具60の本体66は、硬質樹脂材料製の二つの挟持片72、72を有しており、対向する二つの挟持片72、72がその長手方向の中間部分で回動軸74により軸支されている。また、挟持片72、72の軸支された部位よりも基端側の部位(アーム部76、76)には、図4に示すように、それらの対向する部位に、ねじりコイルバネ78が一体的に取り付けられており、アーム部76、76同士は互いに離隔する方向に付勢されている。従って、挟持片72、72の先端部68、68にそれぞれ取り付けられた圧迫板62、62同士は互いに接近する方向に付勢されている。押圧治具60の使用に際しては、一対のアーム部76、76からなる把持部80を握って一対の圧迫板62、62を離隔せしめた状態で、それら一対の圧迫板62、62の対向する押圧面64、64の間に可撓性容器56が配置されるようにし、把持部80から手を離せばよい。可撓性容器56は圧迫板62、62により押圧されて、押圧面64、64によって挟まれた部分の生理食塩水が、電解質液導入流路52を通って静脈側血液回路14に導入される。
【0026】
電解質液導入流路52には、静脈側血液回路14への電解質液の流入を制御するための流路開閉手段として、ピンチバルブ82が着脱可能に取り付けられている。このピンチバルブ82を閉じると、静脈側血液回路14内への生理食塩水の流入が阻止されるようになっている一方、ピンチバルブ82を開けると、押圧治具60によって液圧が高められた生理食塩水が、電解質液導入流路52を通って静脈側血液回路14に導入されるようになっている。
また、本実施態様においては、電解質液導入流路52との接続部54よりも下流側の静脈側血液回路14には、内部に血液濾過網48が配設された静脈チャンバ50が設けられており、この静脈チャンバ50より下流側には血液等の流通を制御するための流路開閉手段として、ピンチバルブ84が着脱可能に取り付けられている。このピンチバルブ84を閉じるとバルブ配設部位を通じての血液等の流通が阻止される一方、ピンチバルブ84を開けるとバルブ配設部位を通じての血液等の流通が許容され得るようになっている。
【0027】
なお、本実施態様においては、血液ポンプ20として、図2に示されるような構造のローラポンプを採用している。すなわち、チューブ(動脈側血液回路12の一部)を支持するためのU字状の支地面を有するハウジング部24と一対のローラ26、26を一体的に備えたローラ部28とを有して構成されており、図示していないモータによってローラ部28の中心にある回転軸30が回転作動させられると、回転軸30の回転に伴って、ロータ25の両端部に設けられた一対のローラ26、26も、回転軸30を中心として一体的に回転するようになっている。そして本実施態様の血液ポンプ20には、動脈側血液回路12を血液ポンプ20から取り外すことなく、血液ポンプ20の作動停止時における血液等の流通を必要に応じて許容しうるような機構が設けられている。
すなわち、ハウジング部24が一対の分割体32、34から構成されており、この分割体32、34の当接面を固定するボルト36を取り外して、仮想線(一点鎖線)で示されるように、U字状の開口部側の端部部位にそれぞれ設けられた回動軸38、40を中心にして、分割体32、34を互いに離間する方向に移動させると、チューブに関してハウジング部24の当接面と反対側でチューブと当接する支持ロール41、41が回動軸411、411を中心に回転自在になっているため、分割体32、34の支持面に押されてチューブが図の下方に移動し、チューブの閉塞状態が解除される様になっている。
【0028】
次に、実施例1の血液浄化装置を用いた血液浄化操作について説明する。
血液浄化操作を実施するには、先ずプライミング操作が行われる。プライミング操作は、ピンチバルブ82と84を開いて血液回路12、14やダイアライザ10、電解質液導入流路52のそれぞれの流路内に生理食塩水を充填する操作で、通常、別途用意された生理食塩水を使用するが、可撓性容器56に収容された生理食塩水を使用することも可能である(但し、可撓性容器56内にその使用量に見合った生理食塩水を過剰に収容しておく必要がある)。
プライミング操作が終了したら、電解質液導入流路52のピンチバルブ82を閉じ、図1に示すように、動脈側穿刺針16を患者のシャント血管42の血液流通方向上流側に穿刺する一方、静脈側穿刺針18をシャント血管42の血液流通方向下流側に穿刺して、所謂体外循環回路を構成する。血液ポンプ20を作動させると、動脈側穿刺針を通して動脈側血液回路12に導入された患者の血液が、ダイアライザ10に供給され、ここで半透膜を介して透析液と接触して浄化され、更にこの浄化された血液が、静脈側血液回路14を経て静脈側穿刺針18から患者に返送される。
【0029】
血液浄化操作が終了したら、装置内部に残留する血液を患者の体内に返送する所謂残留血液の返血操作が実施されることになるが、この返血操作は以下の手順に従って行われる。すなわち、動脈側穿刺針16と静脈側穿刺針18を患者のシャント血管42に穿刺した状態で、血液ポンプ20の作動を停止し、電解質液導入流路52上のピンチバルブ82を開ける。すると可撓性容器56に収容された生理食塩水が、押圧治具60の押圧作用によって、電解質液導入流路52を通して接続部54よりも下流側の静脈側血液回路14に導入され、この部分に残留する血液が、導入された生理食塩水に押し出され、静脈側穿刺針18を通って患者の体内に戻される。こうして接続部54よりも下流側の静脈側血液回路14には残留血液と置換された生理食塩水が残される。
なお、血液浄化操作においては、血液回路の分岐部(ここでは接続部54)にしばしば血栓が形成されることがあるが、上述のような生理食塩水の導入によって、接続部54に形成された血栓が下流側に向かって押し流され、静脈チャンバ50の血液濾過網48によって捕捉されるようになっている。これにより、患者の体内に血栓が入るようなことが確実に防止される。
【0030】
そして、接続部54よりも下流側の静脈側血液回路14内の残留血液の略全量を患者の体内に戻したら、静脈チャンバ50よりも下流側のピンチバルブ84を閉じ、血液ポンプ20において、ハウジング部24の分割体32、34の当接面を固定するボルト36を取り外し、分割体32、34を互いに離隔する方向に移動させてチューブの閉塞状態を解除する。すると、電解質液導入流路52内および可撓性容器56内に収容された生理食塩水が、今度は接続部54よりも上流側に導入される。この結果、接続部54よりも上流側の静脈側血液回路14とダイアライザ10、動脈側血液回路12の内部に残留する血液が、導入された生理食塩水によって動脈側穿刺針16を通って患者の体内に戻される。こうして接続部54よりも上流側の静脈側血液回路14とダイアライザ10、動脈側血液回路12の内部には残留血液と置換された生理食塩水が残される。そして、可撓性容器56や電解質液導入流路52内の生理食塩水の液圧が静脈側血液回路14の内圧と等しくなった時点で、たとえ可撓性容器56内に生理食塩水が残っていても、可撓性容器56からの生理食塩水の流出は自動的に停止する。その結果、余分な生理食塩水が患者の体内に導入されることが効果的に防止される。
【0031】
上述の押圧手段は補液を行う場合にも利用可能であり、例えば、図1において仮想線(1点鎖線)で示すように、補液に必要な量(約200〜250ml程度)の生理食塩水のみを押し出すことのできる押圧面を備えた、上記押圧治具60と同様な構造の押圧治具60'を、補液時に上記押圧治具60の代わりに可撓性容器56に装着すればよい。
なお、図5以降において、同様な構造の部材および部位については、図中、それぞれ同一の符号を付与することにより、その詳細な説明を省略する。
【実施例2】
【0032】
図5は、実施例2の血液浄化装置を示す概略系統図である。
実施例2の血液浄化装置は、図5に示すように、実施例1において、可撓性容器56が、血液回路12、14やダイアライザ10よりも高い位置に配置されている。従って、可撓性容器56内に収容された生理食塩水が、押圧手段による押圧作用だけでなく、自重による重力の作用によっても、電解質液導入流路52を通して装置内に導入される。以て、返血操作がより一層スムーズ且つ迅速に実施され得るようになっている。
また、本実施態様においては、実施例1で採用されていた押圧治具60と略同様な構造を有するものの、異なる所定量の生理食塩水を押し出すことができるように、実施例1の押圧面64、64とは異なる押圧面積を有する押圧板88、88が用いられている。
更に、本実施態様においては、押圧治具86により所定量の生理食塩水が押し出された後、可撓性容器56内に残った生理食塩水がその自重によって更に流れ出すことが無いように、押圧治具86による可撓性容器56の押圧操作に連動して電解質液導入流路52を閉塞し、生理食塩水の更なる流出を阻止するための閉塞手段が設けられており、所定量の生理食塩水のみが静脈側血液回路14内に確実に導入され得るようになっている。
【0033】
閉塞手段は、具体的には、例えば図5に示すように、圧迫板88、88の押圧面間の距離を検出するためのセンサ90と、このセンサ90からの検出信号を受信するコントローラ91と、このコントローラ91からの開閉信号によって開閉操作が自動的に行われる電磁弁92とによって構成されており、返血操作時において、圧迫板88、88の押圧面間の距離が予め設定された所定の距離(ここでは、圧迫板の押圧面同士が略重なり合う距離)になると、その検出信号がセンサ90からコントローラ91に送られるようになっている。そしてコントローラ91は、センサ90からの検出信号を受けて、電磁弁92に対して閉信号を送り、電磁弁92を自動的に閉じて電解質液導入流路52を閉塞するようになっている。尚、センサ90としては、例えば、光電スイッチ等の非接触型のものや、リミットスイッチ等の接触型のものを挙げることが出来る。
【実施例3】
【0034】
図6は、実施例3の血液浄化装置を示す概略系統図である。
実施例3の血液浄化装置は、図6に示すように、電解質液導入手段が血液浄化器10より上流側で動脈側血液回路12に接続されているケースであり、可撓性容器56は内部に収容されている電解質液の液圧がシャント内圧よりも低くなる位置に配置されている。
血液ポンプ94より上流側の動脈側血液回路12と、血液ポンプ94と血液浄化器10の間の動脈側血液回路12、とを結ぶバイパス流路96が設けられるとともに、このバイパス流路96の下流側にピンチバルブ108が設けられ、このバイパス流路96より上流側の動脈側血液回路12にはピンチバルブ112が設けられている。そして、バイパス流路96において、ピンチバルブ108より上流側に血栓を捕捉しうるバイパスチャンバ102が設けられるとともに、このバイパスチャンバ102より上流側のバイパス流路96にピンチバルブ106が設けられ、更に電解質液導入手段がバイパス流路96と血液浄化器10の間で動脈側血液回路12に接続されるとともに、血液浄化器10と静脈チャンバ50の間の静脈側血液回路14にピンチバルブ114が設けられている。
尚、ピンチバルブ106、108はどちらか一方を省略することも可能である。
【0035】
本実施態様においては、ポンプ手段として、実施例1や実施例2とは異なり、従来から公知の構造を有する血液ポンプ94が用いられており、バイパスチャンバ102内には、静脈チャンバ50と同様、血液濾過網104が配設されている。但し、バイパスチャンバ102は、血液が上方から流入し底部より流出する静脈チャンバ50とは異なり、血液あるいは電解質液の流入および流出が何れもバイパスチャンバ102の底部から行われる構造になっている。
【0036】
次に、実施例3の血液浄化装置を用いた血液浄化操作について説明する。
血液浄化操作を実施するには、先ずプライミング操作が行われる。即ち、ピンチバルブ106、108、112、114を開き、次いでピンチバルブ82を開いて血液回路12、14やダイアライザ10、電解質液導入流路52、バイパス流路96内に生理食塩水を充填すればよい。
プライミング操作が終了したら、ピンチバルブ82、106、108を閉じ、実施例1と同様の手順で血液浄化操作を行う。
【0037】
血液浄化操作が終了したら、装置内部に残留する血液を患者の体内に返送する所謂残留血液の返血操作が実施されることになるが、この返血操作は以下の手順に従って行われる。すなわち、動脈側穿刺針16と静脈側穿刺針18を患者のシャント血管42に穿刺した状態で、血液ポンプ94を作動させたままバイパス流路96上のピンチバルブ106、108を開ける一方、動脈側血液回路12のピンチバルブ112と静脈側血液回路14のピンチバルブ114を閉じ、電解質液導入流路52上のピンチバルブ82を開ける。すると血液ポンプ94の作動量に応じて、動脈側血液回路12の本線流路13(接続部98と接続部100の間の部分)とバイパス流路96とで形成される環状流路内を、一定量の液が矢印B方向に循環するようになる。この際、接続部98、100に生じた血栓はバイパスチャンバ102により捕捉され、除去される。
【0038】
次に、血液ポンプ94の作動を停止させ、静脈側血液回路14のピンチバルブ114を開けると、接続部110よりも下流側の動脈側血液回路12と電解質液導入流路52とが連通され、可撓性容器56内の生理食塩水が接続部110よりも下流側の動脈側血液回路12に導入される。その結果、接続部110よりも下流側の動脈側血液回路12とダイアライザ10と静脈側血液回路14の内部に残留する血液が、導入された生理食塩水によって静脈側穿刺針18を通って患者の体内に戻される。こうして接続部110よりも下流側の動脈側血液回路12とダイアライザ10、静脈側血液回路14の内部には残留血液と置換された生理食塩水が残される。
この時、実施例1の場合と同様に、接続部110に形成された血栓が下流側に向かって押し流され、静脈チャンバ50の血液濾過網48によって捕捉される。
【0039】
そして、接続部110よりも下流側の静脈側血液回路14内の残留血液の略全量を患者の体内に戻したら、静脈側血液回路14のピンチバルブ114を閉じ、動脈側血液回路12のピンチバルブ112を開ける。すると、電解質液導入流路52内および可撓性容器56内に収容された生理食塩水が、今度は接続部110よりも上流側に導入される。この結果、接続部110よりも上流側の動脈側血液回路12とバイパス流路96の内部に残留する血液が、導入された生理食塩水によって動脈側穿刺針16を通って患者の体内に戻される。こうして接続部110よりも上流側の動脈側血液回路12とバイパス回路96の内部には残留血液と置換された生理食塩水が残される。尚、本線流路13の内部に残留する血液は、血液ポンプ94の作動によりポンプ下流側の接続部100方向に向かって流通した後、接続部100において可撓性容器56内から電解質液導入流路52を経て導入された生理食塩水と混ざり合い、バイパス流路96を通じて患者の体内に戻される。
そして、可撓性容器56や電解質液導入流路52内の生理食塩水の液圧が静脈側血液回路14の内圧と等しくなった時点で、たとえ可撓性容器56内に生理食塩水が残っていても、可撓性容器56からの生理食塩水の流出は自動的に停止する。その結果、余分な生理食塩水が患者の体内に導入されることが効果的に防止される。
また、本実施態様の血液浄化装置においては、血液ポンプ94に対してバイパスとなるバイパス回路96が設けられていることから、返血操作の際に動脈側血液回路12を血液ポンプ94から取り外すという煩雑な作業を行う必要がない。
【実施例4】
【0040】
次に、実施例4について図7を用いて説明する。
図7は、実施例4の血液浄化装置を示す概略系統図である。
実施例4の血液浄化装置は、図7に示すように、実施例3と同様、電解質液導入手段が血液浄化器10より上流側で動脈側血液回路12に接続されているケースであり、可撓性容器56は内部に収容されている電解質液の液圧がシャント内圧よりも低くなる位置に配置されている。
電解質液導入手段は、実施例3とは異なり、バイパス流路116より上流側の動脈側血液回路12に、流路開閉手段126と接続部98の間で接続されており、動脈側血液回路12との接続部124に近接して、この接続部124と接続部98の間の動脈側血液回路12にピンチバルブ128が設けられ、バイパス回路116と血液浄化器10の間の動脈側血液回路12には、静脈チャンバ50と同様な構造の、血液濾過網118の配置された動脈チャンバ120が設けられている。
【0041】
実施例4の血液浄化装置おける返血操作は以下の手順に従って行われる。すなわち、バイパス流路116のピンチバルブ122を閉じ、動脈側血液回路12のピンチバルブ126、128を開いて血液浄化操作を行った後、動脈側穿刺針16と静脈側穿刺針18を患者のシャント血管42に穿刺した状態で、血液ポンプ94を作動させたままバイパス流路116上のピンチバルブ122を開ける一方、動脈側血液回路12のピンチバルブ126を閉じる。すると血液ポンプ94の作動量に応じて、動脈側血液回路12の本線流路13(接続部98と接続部100の間の部分)とバイパス流路116とで形成される環状流路内を、一定量の液が矢印B方向に循環するようになる。この時接続部98、100に形成された血栓は、循環する液の中に混入する。
【0042】
次に、電解質液導入流路52のピンチバルブ82を開け、バイパス流路116のピンチバルブ122を閉じると、接続部124よりも下流側の動脈側血液回路12と電解質液導入流路52とが連通され、可撓性容器56内の生理食塩水が血液ポンプ94によって接続部124よりも下流側の動脈側血液回路12に導入される。
その結果、接続部124よりも下流側の本線流路13までの動脈側血液回路12と本線流路13の内部に残留する血液が、導入された生理食塩水によって押し出され、この押し出された血液と同量の血液が静脈側穿刺針18を通って患者の体内に戻される。こうして、電解質液導入流路52と動脈側血液回路12との接続部124と、バイパス流路116と血液ポンプ94より下流側の動脈側血液回路12との接続部100、との間の血液が、生理食塩水によって置換される。
【0043】
少なくとも接続部124と接続部100の間の血液が生理食塩水によって置換されたら、血液ポンプ94の作動を停止し、バイパス流路116のピンチバルブ122を開ける。すると今度は、押圧治具60による押圧により、接続部124より下流側の本線流路13を除く動脈側血液回路12とバイパス流路116、ダイアライザ10と静脈側血液回路14の内部に、可撓性容器56内の生理食塩水が導入され、この部分に残存する血液が、導入された生理食塩水によって静脈側穿刺針18を通って患者の体内に戻される。
こうして接続部124よりも下流側の動脈側血液回路12(本線流路13を含む)とバイパス流路116、ダイアライザ10と静脈側血液回路14の内部には、残留血液と置換された生理食塩水が残される。
この時、実施例1の場合と同様に、接続部98、100、124に形成された血栓が下流側に向かって押し流され、静脈チャンバ50の血液濾過網48によって捕捉される。
【0044】
但し、バイパス流路116のピンチバルブ122を開け、血液ポンプ94を作動させた状態でピンチバルブ126を閉じ、ピンチバルブ82を開けた状態にしても、実質的にはバイパス流路116の残留血液が殆んど返血され得ることが試験により確認されている。恐らく、押圧治具60によって液圧が高められた生理食塩水の影響で、生理食塩水によって押し出された血液がバイパス流路116側に流入せず、むしろバイパス流露116の血液が接続部100を通って動脈チャンバ120側に押し出されるためと思われる。
【0045】
次に、接続部124よりも上流側のピンチバルブ126が開けられるとともに、接続部より下流側のピンチバルブ128が閉じられる。すると可撓性容器56内の生理食塩水が電解質液導入流路52を通って導入され、この部分に残存する血液が、導入された生理食塩水によって動脈側穿刺針16を通って患者の体内に戻される。
こうして接続部124よりも上流側の動脈側血液回路12の内部には、残留血液と置換された生理食塩水が残される。
【実施例5】
【0046】
次に、実施例5について図8を用いて説明する。
図8は、実施例5の血液浄化装置を示す概略系統図である。
実施例5の血液浄化装置は、図8に示すように、実施例3と同様、電解質液導入手段が血液浄化器10より上流側で動脈側血液回路12に接続されているケースであり、可撓性容器56は内部に収容されている電解質液の液圧がシャント内圧よりも低くなる位置に配置されている。
実施例3や実施例4と異なり、バイパス流路116より上流側かつ血液ポンプ94より下流側の動脈側血液回路12に血栓を捕捉しうる動脈チャンバ120が設けられるとともに、電解質液導入手段は、この動脈チャンバ120と血液ポンプ94の間で動脈側血液回路12に接続されている。また、血液浄化器10と静脈チャンバ50の間の静脈側血液回路14には流路開閉手段134が設けられている。尚、動脈チャンバ120には、静脈チャンバ50と同様な構造の血液濾過網118が配置されている。
【0047】
実施例5の血液浄化装置おける返血操作は以下の手順に従って行われる。すなわち、バイパス流路116のピンチバルブ122を閉じ、動脈側血液回路12のピンチバルブ132、静脈側血液回路14のピンチバルブ134を開いて血液浄化操作を行った後、動脈側穿刺針16と静脈側穿刺針18を患者のシャント血管42に穿刺した状態で、血液ポンプ94を作動させたままバイパス流路116上のピンチバルブ122を開ける一方、ピンチバルブ132を閉じる。すると血液ポンプ94の作動量に応じて、動脈側血液回路12の本線流路13(接続部98と接続部100の間の部分)とバイパス流路116とで形成される環状流路内を、一定量の液が矢印B方向に循環するようになる。この時、接続部98、100に形成された血栓は、循環する液の中に混入し、動脈チャンバ120で捕捉され取り除かれる。
【0048】
次に、血液ポンプ94の作動を停止し、電解質液導入流路52のピンチバルブ82と静脈側血液回路14のピンチバルブ134を開けると、本線流路13と電解質液導入流路52とが連通され、押圧治具60による押圧により、可撓性容器56内の生理食塩水が接続部130を通って本線流路13に導入される。
その結果、接続部130よりも下流側の動脈側血液回路12と本線流路13、ダイアライザ10、静脈側血液回路14の内部に残留する血液が、導入された生理食塩水によって押し出され、静脈側穿刺針18を通って患者の体内に戻される。
【0049】
次に、ピンチバルブ134を閉じ、ピンチバルブ122、132を開ける。すると今度は、接続部130より下流側の本線流路13とバイパス流路116、バイパス回路116より上流側の動脈側血液回路12の内部に、可撓性容器56内の生理食塩水が導入され、この部分に残存する血液が、導入された生理食塩水によって動脈側穿刺針16を通って患者の体内に戻される。
こうして接続部130よりも下流側の本線流路13とバイパス流路116、バイパス回路116より上流側の動脈側血液回路12の内部には、残留血液と置換された生理食塩水が残される。
この時、接続部130に形成された血栓が下流側に向かって押し流され、動脈チャンバ120の血液濾過網118によって捕捉される。
尚、接続部98から接続部130までの本線流路13に残留する血液は、血液ポンプ94の作動により、静脈側穿刺針18もしくは動脈側穿刺針16を通して返血される。
【0050】
押圧治具としては、図3〜4に示すものの他、図9や図10に示すようなものも採用可能である。
図9に示す押圧治具136は、所定面積の押圧面138を有する略矩形形状の硬質平板からなる圧迫板140を有しており、圧迫板140がモータ142によって可撓性容器56に対して接近移動させられるようになっている。より具体的には、モータ142の回転軸143にピニオン144が一体的に取り付けられており、モータ142の作動力によって回転軸143が回転すると、それに連動してピニオン144も同一方向(図中、C方向)に回転するようになっている。圧迫板140の押圧面138は、所定量(約250〜350ml程度)の生理食塩水だけを押し出すことができるように、可撓性容器56の種類や形状、大きさ等に応じてその面積が適宜に設定されている。
【0051】
図9では、可撓性容器56は、その一方の面が平坦な壁面148に略当接した常態で吊り下げられており、押圧治具136のモータ142を作動させて圧迫板140を可撓性容器56に対して接近移動させると、可撓性容器56が壁面148と押圧治具136の圧迫板140によって挟まれ、更に圧迫板140をD方向に移動させると、圧迫板140の押圧面138によって圧迫されて壁面148と押圧面138との間の生理食塩水が押し出される。
尚、ここでは、モータ142の回転運動をピニオン144とラック146によって直線運動に変換して可撓性容器を押圧していたが、ピニオンとラック以外にも、モータ142の回転運動を直線運動に変換する公知の機構も採用可能である。
【0052】
図10に示す押圧治具150は、所定面積の押圧面152、154をそれぞれ有する矩形形状の硬質平板からなる二つの圧迫板156、158を有しており、ここでは、下方に配置された圧迫板156の押圧面152によって、血液浄化操作の終了後に行われる返血操作に必要とされる量(約250〜350ml程度)の生理食塩水だけを押し出すことができるように、また、上方に配置された押圧板158の押圧面154によって、血液浄化操作時の急激な血圧降下等を処置するために必要とされる量(約100〜200ml程度)の生理食塩水だけを押し出すことができるように、各圧迫板156、158の押圧面152、154の面積はそれぞれ、可撓性容器56の種類や形状、大きさ等に応じてその面積が適宜に設定されている。
押圧治具150では、重り160をピストン162の上側の載置部164に載置することによって、ピストン162がその重力で下方に移動させられ、シリンダ166内に収容された油や水等の非圧縮性の流体168の圧力が高められるようになっており、この重り160の重力によって発生した流体圧により圧迫板156、158が可撓性容器56方向に移動し可撓性容器56を押圧するようになっている。
【0053】
シリンダ166の内部は、各圧迫板156、158に連結された樹脂製の蛇腹部材170、172の内部に、配管174を介して連通されている。配管174は分岐した形状を有しており、シリンダ166の内部に収容された流体168が配管174の分岐部からそれぞれ蛇腹部材170、172の内部に導入され得るようになっている。配管174の分岐部より蛇腹部材170、172側の部位にはそれぞれ、流体の流通を許容ないしは阻止するコック176、178が設けられており、図10では、圧迫板156に連結された蛇腹部材170に通じる側のコック176が閉じられている一方、圧迫板158に連結された蛇腹部材172に通じる側のコック178が開けられている。この状態では、重り160の重力によって生じた流体圧により蛇腹部材172が可撓性容器56側(E方向)に伸び、以て、蛇腹部材172に連結された圧迫板158が可撓性容器56方向に移動し可撓性容器56を押圧して、壁面148と圧迫板158の押圧面154との間の生理食塩水を押し出す。同様に、下方のコック176を開くと、重り160の重力によって生じた流体圧により蛇腹部材170が可撓性容器56側(F方向)に伸び、以て、蛇腹部材170に連結された圧迫板156が可撓性容器56方向に移動し、可撓性容器56を押圧して壁面148と圧迫板156の押圧面152との間の生理食塩水を押し出す。
【0054】
尚、この押圧治具150では、返血操作で用いられる蛇腹部材170と補液操作で用いられる蛇腹部材172の大きさ(径)が異なっており、補液用の蛇腹部材172の方が大きな径を有している。そのため、同じ重さの重り160を使用した場合には、補液側の押圧力が返血側の押圧力よりも大きくなり、補液を急速に行うことが出来るようになっている。
また、ここでは、蛇腹部材170、172を支持するための支持板180、182が固定的に設置されているとともに、蛇腹部材170、172の可撓性容器56側の端部と支持板182の間には、それぞれコイルバネ184、186が介装されており、コック176、178を開口した状態で重り160をピストン162の載置部164から取り除くと、コイルバネ184、186の付勢力によって蛇腹部材170、172が押圧されて縮み、圧迫板156、158が可撓性容器56から離隔するようになっている。
押圧治具150は、重り160の重力を利用して可撓性容器56を押圧するようにしたものであるため、モータ等の電力を必要とする図9に示す押圧部材136とは異なり、停電時においても補液操作や返血操作を確実に行うことが出来るといったメリットがある。
【0055】
〔試験例1〕扶桑薬品工業製の500ml入り生食バッグ(フィシザルツ500ccバッグ)を準備し、これを図7に示す血液浄化装置(実施例4)に取り付けた(但し、シャント血管42に対する動脈側穿刺針16と静脈側穿刺針18の穿刺は行っていない)。そして、ピンチバルブ82およびピンチバルブ126を開け、ピンチバルブ128を閉じた状態で、押圧治具60の性能試験(1)〜(3)を行った。尚、未使用のフィシザルツ500ccバッグには、523mlの生理食塩水と59mlのエアーが入っている。
(1)図11(a)に示すように、13cm×6.3cmの押圧面(P)を有する押圧治具を用いて生食バッグを押圧したところ、200mlの生理食塩水が押し出されて、生理食塩水の流出が止まった。
(2)図11(b)に示すように、13cm×6.8cmの押圧面(Q)を有する押圧治具を用いて生食バッグを押圧したところ、300mlの生理食塩水が押し出されて、生理食塩水の流出が止まった。
(3)図11(c)に示すように、13cm×6.3cmの押圧面(P)を有する押圧治具を用いて生食バッグを押圧した後、13cm×6.8cmの押圧面(Q)を有る押圧治具を用いて生食バッグを押圧したところ、上方と下方の圧迫板の間に10〜20mlの生理食塩水が残った状態で、生理食塩水の流出が止まった。
この結果から、面積を適宜に設定した押圧面を備えた押圧手段で生食バッグを押圧すれば、所定量の生理食塩水が流出され得ることが分かった。
【0056】
〔試験例2〕扶桑薬品工業製の500ml入り生食バッグ(フィシザルツ500ccバッグ)を準備し、これを図7に示す血液浄化装置(実施例4)に取り付けた。但し、流路開閉手段としては、ピンチバルブ82、122、126、128に代えて、鉗子を用いた。尚、押圧治具60は血液浄化操作の終了直前に生食バッグに取り付けた。そして、血液浄化操作の終了後、バイパス流路116をクランプしている鉗子122を外し、これでピンチバルブ126の部位をクランプし、更に電解質液導入流路52をクランプしている鉗子82を外した。
すると、生食バッグ56から流出した生理食塩水が接続部124から動脈側血液回路12に流入し、接続部124より上流側の血液回路内およびバイパス流路116内に残留する血液を押し出して、ダイアライザ側10側の方向に流れていった。そして、この生理食塩水による返血が自動的に停止するか否かを、10人の患者で確認した。
【0057】
その結果、すべての患者で、生食バッグ56から300mlの生理食塩水は流出した時点で、自動的に返血が終了した。また、返血後静脈チャンバ50内に残留した残留液中のヘマトクリット値(平均値)を測定したところ、0.5±0.1%であった。これに対し、押圧治具60を用いず、看護師が返血操作の開始から終了まで監視して行う、従来の返血操作の場合におけるヘマトクリット値(平均値)は、0.35±0.15%(測定数:10)であった。両者のヘマトクリット値を比べると、差はきわめて小さく、略同程度であると言える。したがって、本発明に従う血液浄化装置を用いて行う返血操作は、監視を常に行う必要がないにも拘らず、従来の返血操作と比べて遜色なく行うことが出来ることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1の血液浄化装置を示す概略系統図である。
【図2】図1に示す血液浄化装置で採用された血液ポンプを示す平面説明図である。
【図3】図1に示す血液浄化装置で採用された押圧治具を示す平面説明図であり、(a)は、ねじりコイルバネの付勢力によって一対の圧迫板が押圧された状態を、(b)は、ねじりコイルバネの付勢力に抗して一対のアーム部を接近させることにより、一対の圧迫板を離隔させた状態を、それぞれ示している。
【図4】図2(a)に示す押圧治具の右側面図である。
【図5】実施例2の血液浄化装置を示す概略系統図である。
【図6】実施例3の血液浄化装置を示す概略系統図である。
【図7】実施例4の血液浄化装置を示す概略系統図である。
【図8】実施例5の血液浄化装置を示す概略系統図である。
【図9】押圧治具の他の実施例を示す概略説明図である。
【図10】押圧治具の更に他の実施例を示す一部切欠き概略説明図である。
【図11】可撓性容器の押圧部位を説明するための図である。
【符号の説明】
【0059】
10:ダイアライザ 12:動脈側血液回路
13:本線流路 14:静脈側血液回路
16:動脈側穿刺針 18:静脈側穿刺針
20、94:血液ポンプ 22:支持面
24:ハウジング部 25:ロータ
26:ローラ 28:ローラ部
30:回転軸 32、34:分割体
36:ボルト 38、40:回動軸
41:支持ロール 411:回動軸
42:シャント血管 48、104、118:血液濾過網
50:静脈チャンバ 52:電解質液導入流路
54、98、100、110、124、130:接続部
56:可撓性容器 58:取付孔
60、86、136、150:押圧治具(押圧手段)
62、88、140、156、158:圧迫板
64、138、152、154:押圧面
66:本体 68:挟持部
70:角度調節片 72:挟持片
74:回動軸 76:アーム部
78:ねじりコイルバネ 80:把持部
82、84、106、108、112、114、122、126、128、
132、134:ピンチバルブ(流路開閉手段)
90:センサ 91:コントローラ
92:電磁弁 96、116:バイパス流路
102:バイパスチャンバ 120:動脈チャンバ
142:モータ 144:ピニオン
146:ラック 148:壁面
160:重り 162:ピストン
164:載置部 166:シリンダ
168:流体 170、172:蛇腹部材
174:配管 176、178:コック
184、186:コイルバネ
【技術分野】
【0001】
本発明は血液浄化装置に係り、特に、患者の体内から取り出した血液を浄化して再び体内に戻すようにした、血液浄化装置の改良された構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腎不全の患者の治療や生命の維持のために、患者の血液を浄化する血液浄化装置として、所謂人工腎臓が広く知られている。そして、かかる装置には、函体内に中空繊維状のセルロース膜、キュプロアンモニウムレーヨン膜、ポリアクリロニトリル膜、ポリスルホン膜等の半透膜が収容されており、この半透膜を通じての透析作用や濾過作用によって血液の浄化を行う浄化器が用いられており、例えば血液透析操作を行う場合には、患者の血液が、浄化器として用いる血液透析器(ダイアライザ)の半透膜を介して透析液に接触し、血液中に蓄積した尿素、尿酸、水等が透析され、除去されるようになっている。
【0003】
ダイアライザのような血液浄化器を有する従来の血液浄化装置は、一般に、血液浄化器の血液の導入側に動脈側血液回路が接続される一方、血液浄化器の血液の返送側には、静脈側血液回路が接続されており、動脈側血液回路には血液ポンプが設けられている。そして、動脈側血液回路の血液導入側端部と静脈側血液回路の血液送出側端部には、それぞれ動脈側穿刺針と静脈側穿刺針が取り付けられており、動脈側穿刺針が患者の体内に設けられたシャント血管の上流側に穿刺される一方、静脈側穿刺針がシャント血管の下流側に穿刺されて、血液の循環路が構成されるようになっている。
【0004】
従って、このような血液の循環路を構成する血液浄化装置にあっては、動脈側穿刺針を通じて動脈側血液回路に導入された血液が、血液ポンプの作用により血液浄化器に送られ、血液浄化器で浄化された血液が静脈側血液回路に送られ、更に、静脈側穿刺針を通じて患者の体内に返送されるようになっている。
【0005】
ところで、このような血液浄化装置を用いて行う患者の血液の浄化操作の終了後には、血液透析器や血液回路等の内部に150〜250ml程度もの血液が残留するようになるため、この残留血液を患者の体内に戻す必要がある。そのため、血液浄化操作終了後においては、通常、動脈側穿刺針や静脈側穿刺針を患者から抜去することなく、患者に穿刺したままで血液を患者の体内に戻す返血操作(血液回収操作)が行われている。
【0006】
そして返血操作を行うに際しては、従来は通常、生理食塩水等の電解質液がリンス液として用いられ、リンス液で装置の内部に残留する血液を置換して押し流し、残留血液を患者の体内に戻すようにしている。この返血操作は、通常、短時間(数分〜10分程度)で終了するため、医師や看護師等のスタッフが目を離すと、血液浄化操作で血液中の余分な水分をせっかく除去しても、患者の体内に過剰な量の電解質液が流入したり、場合によっては、空気が混入したりする虞がある。そのため、スタッフは、返血操作を実施している間、その様子を常時監視する必要があり、返血操作中は患者のベッドサイドから殆ど離れることができなかった。
【0007】
ところで、近年、社会経済的な変化に伴って、透析医療の分野においても合理化が求められるようになっている。そして、特に返血操作は、上述のように労働集約的な作業であることから、その合理化は、透析医療全体の合理化に資するものと考えられてきている。このような状況下、血液浄化終了後の返血作業の合理化を目的とする各種のシステムが提案されてきている。例えば、非特許文献1には、全自動コンソール(全自動血液浄化装置)が開示されており、そこでは、除水量と透析時間が共に満たされた場合に、ダイアライザ内での透析液側の圧力を血液の圧力よりも自動的に高くすることにより、透析液をダイアライザの半透膜を介して血液側に移行せしめる、所謂逆濾過を行い、この逆濾過された透析液によって血液回路やダイアライザ内に残留する血液が置換され押し流されることによって返血操作が行われるようになっている。ところが、この逆濾過によって返血操作を行う場合には、定期的に透析液中のエンドトキシンを測定しなければならず、これが透析コストを高騰させる大きな要因の一つとなっている。
【0008】
また、特許文献1には、通常の血液回路に、血液ポンプをバイパスするバイパス流路が設けられた血液浄化装置(バイパス付き血液浄化装置)が提案されており、そこでは、返血操作時にバイパス流路における液流通を許容させることにより、血液ポンプの機能を無くし(血液ポンプの作動によって血液回路を含む血液の流路内が負圧になるのを防止し)、以て血液回路を血液ポンプに取り付けた状態のままで、生食バッグ等のリンス液バッグから重力の作用によって導入されるリンス液によって、血液回路内やダイアライザ内に残留する血液が置換され押し流されることによって返血操作が行われるようになっている。この血液浄化装置によれば、通常の血液回路を用いた場合と同程度のコストで返血操作を行うことができるといった利点がある。しかしながら、返血操作においては、通常、容量が500ml、1000ml、1300mlまたは1500mlのリンス液バッグが用いられるため、このバイパス付き血液浄化装置では、スタッフが目を離して放置してしまうと、リンス液バッグ内のリンス液が無くなるまでリンス液が血液回路中に導入され、過剰量のリンス液が患者の体内に入る虞がある。それ故、このバイパス付き血液浄化装置を使用して返血操作を実施する場合には、リンス液バッグ内に収容されるリンス液の液量を、返血に必要な量(約300ml程度)だけにする必要があった。
【0009】
尚、リンス液バッグ内のリンス液を所望とする量(約300ml程度)にするには、所望量の容量(300ml)のリンス液バッグを用いるようにすれば良いのであるが、そのような容量のリンス液バッグは特注品となるため商業的に入手することが困難であり、現実的ではない。また、血液浄化装置に一般的に装備されている自動プライミング機能を利用して、例えば1500mlのリンス液の入っているバッグ(例えば、フィシザルツ−FC、扶桑薬品工業(株)製)から1200mlの生理食塩水を血液回路やダイアライザーのプライミングに使用して、リンス液バッグ内に300mlのリンス液を残したり、あるいは500m入りのバッグから200mlのリンス液を予め捨てることにより、リンス液バッグ内に所望量のリンス液を残しておくことも可能である。しかしながら、そのようにして透析当初から返血に必要な量(約300ml程度)だけを準備すると、透析中に緊急に補液が必要になりリンス液バッグ内の生理食塩水を使ってしまった場合などには、返血操作に必要とされるリンス液が足りなくなるといった不都合が生じる。具体的には、透析中に急速な血圧降下が起こった際には、急速な補液が必要となり、リンス液バッグから約200ml程度の生理食塩水が患者の体内に導入されることとなるため、透析終了後の血液回収操作に必要なリンス液が不足する。それ故、緊急事態を想定すると、血液回収に必要な量だけでなく補液に必要な量のリンス液も予め準備しておくことが望ましいが、補液に必要なリンス液を用意すると、透析中に補液を必要としなかった場合、血液回収操作により過剰量のリンス液が患者の体内に導入される虞が生じる。
【0010】
尚、特許文献1においては、仕切器具を用いてリンス液バッグ(収容バッグ)の内部を二つに仕切ることによって、所定量の生理食塩水のみが血液回路内に導入され得るようになっているが、仕切器具によって所望量のリンス液となるように仕切ること自体が難しく、リンス液量が多すぎる場合には、過剰なリンス液が患者の体内に入る虞があり、また、リンス液量が少なすぎる場合には、血液回路内の残血量が多くなると言った問題があり、更なる改善の余地を有している。
【0011】
また、上記非特許文献1や特許文献1に記載の血液浄化装置とは別の血液浄化装置として、透析終了時に、血液ポンプを利用して丁度300mlの生理食塩水を生理食塩水バッグから血液回路に送り込み、その送り込みが終了すると同時に血液ポンプが自動的に停止するようにした装置も提案されている。この装置には、万一生理食塩水が空になっても血液ポンプが作動し続けるようなことがないように、タイマーが装備されているが、タイマーがうまく作動しないと、過剰量の生理食塩水が患者の体内に導入されたり、血液ポンプよりも上流側(生理食塩水バッグ側)の血液回路内が負圧となって接続部等から空気が混入したりする虞があるため、タイマーを過信することはできず、結局、不測の事態を想定して、所望量(300ml)の生理食塩水が血液回路内に送り込まれるのを監視する必要があった。
【0012】
【非特許文献1】田岡正宏、山本千恵子、金成泰、高杉昌幸「プライミングの適正量の検討と全自動コンソールの性能評価」、腎と透析(別冊)51、東京医学社、p177-181、2001
【特許文献1】特開2006-20967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、如上の事情に鑑みてなされたもので、返血操作において、コストを低く抑えつつ、簡単な作業で、生食バッグ等の電解質液の収容体から、過剰な量の電解質液を供給することなく、の電解質液のみを供給することが可能な血液浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の血液浄化装置は、血液浄化器と、血液回路と、前記血液浄化器より上流側の血液回路に設けられた血液ポンプ、血液浄化器より下流側の血液回路に設けられた静脈チャンバとを含んでなる血液浄化装置において、
電解質液が収容されており、外部からの押圧により容易に圧潰して内部に収容された前記電解質液が排出される可撓性容器と、この可撓性容器を押圧するための所定面積の押圧面を備え、押圧により前記可撓性容器から所定量の前記電解質液を排出させる押圧手段とを含んでなる電解質液導入手段が、前記血液浄化器より上流側又は、血液浄化器より下流側で血液回路に接続されるとともに、この電解質液導入手段と血液回路の接続部分より上流側及び/又は下流側の血液回路に流路開閉手段が設けられ、前記電解質液導入手段から前記血液回路に導入される電解質液によって前記血液回路及び血液浄化器内の血液が回収されるようにしたことを特徴とする。
この場合、電解質液導入手段と血液回路を接続する電解質液導入流路に、前記電解質液流路を開閉する流路開閉手段が更に設けられ、可撓性容器から所定量の電解質液が排出されたときに前記流路開閉手段が自動的に閉鎖されるようにされていてもよい。
また、電解質液導入手段は、血液浄化器と静脈チャンバの間で血液回路に接続されていても、血液浄化器より上流側で血液回路に接続されていてもよい。
電解質液導入手段が血液浄化器と静脈チャンバの間で血液回路に接続される場合、静脈チャンバより下流側の血液回路には流路開閉手段が設けられる。
また、電解質液導入手段が血液浄化器より上流側で血液回路に接続されている場合は、血液ポンプより上流側の血液回路と、血液ポンプと血液浄化器の間の血液回路、とを結ぶバイパス流路が設けられるとともに、このバイパス流路の下流側に流路開閉手段が設けられ、このバイパス流路より上流側の血液回路に流路開閉手段が設けられてなる構成が採用される。この場合、バイパス流路において、流路開閉手段より上流側に血栓を捕捉しうる血液濾過網が設けられるとともに、この血液濾過網より上流側に流路開閉手段が設けられ、更に電解質液導入手段がバイパス流路と血液浄化器の間で血液回路に接続されるとともに、血液浄化器と静脈チャンバの間の血液回路に流路開閉手段が設けられてなる構成や、電解質液導入手段が、バイパス流路より上流側の血液回路の流路開閉手段とバイパス流路の間で血液回路に接続されるとともに、この接続部分に近接してこの接続部分とバイパス流路の間の血液回路に流路開閉手段が設けられ、バイパス回路と血液浄化器の間の血液回路に血栓を捕捉しうる血液濾過網が設けられてなる構成、バイパス流路によりバイパスされる血液回路部分において、血液ポンプより下流側に血栓を捕捉しうる血液濾過網が設けられるとともに、電解質液導入手段が該血液濾過網と血液ポンプの間で血液回路に接続され、更に血液浄化器と静脈チャンバの間の血液回路に流路開閉手段が設けられてなる構成などが採用可能である。
【0015】
可撓性容器は、その内部に収容された電解質液の液圧がシャント内圧よりも低くなる位置に配置されるのが好ましい。
押圧手段としては、対向する押圧面を有し、バネの付勢力によって互いに圧接される一対の圧迫板と、このバネの付勢力に抗して一対のアーム部を接近させることにより前記一対の圧迫板を離間せしめるようにした把持部とを、少なくとも具備し、可撓性容器を該一対の圧迫板の間に挟みこむことにより、前記バネによる付勢力で可撓性容器に収容された電解質液を押し出すようにしたものであっても、また、モータの作動力により可撓性容器に対して接近移動する圧迫板を具備してなるものであっても、重りの重力により可撓性容器に対して接近移動する圧迫板を具備してなるものであってもよい。可撓性容器を押圧する圧迫板は複数個設けるのが好ましい。
以上、一般的に本発明を記述したが、より一層の理解は、いくつかの特定の実施例を参照することによって得ることが出来る。これらの実施例は本明細書に例示の目的のためにのみ提供されるものであり、他の旨が特定されない限り、限定的なものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下のような効果が期待できる。すなわち、本発明の血液浄化装置によれば、所定面積の押圧面を備えた押圧手段によって可撓性容器を押圧し、可撓性容器からから電解質液を押し出すようにしているので、可撓性容器からは押圧面の面積に応じた所定量の電解質液しか排出されないようになっている。したがって、押圧手段の押圧面の面積を、使用する可撓性容器の種類や形状、大きさに応じて適宜に設定すれば、従来の返血操作に加えて、押圧手段を可撓性容器に取り付けるだけの簡単な操作で、コストを低く抑えつつ、返血操作に必要な量の電解質液のみを、血液回路内に導入することができる。
その結果、血液回路内に導入される電解質液の量を、例えば、動脈側血液回路の容積と血液浄化器の容積と静脈側血液回路の容積の合計の容積と同程度とすれば、血液浄化装置内部に残留する血液の略全量が患者の体内に戻されるとともに、体内への電解質液の過剰な流入を防止することができる。
また、可撓性容器や電解質液導入流路内の生理食塩水の液圧が静脈側血液回路の内圧と等しくなった時点で、たとえ可撓性容器内に生理食塩水が残っていても、可撓性容器からの生理食塩水の流出が自動的に停止するようになっており、返血操作の開始から終了まで返血操作の進行を常に監視する必要がないので、一度に多くの患者の返血操作を実施する場合にあっても、多くの人手をかけることなく返血操作を安全に且つ確実に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
血液浄化器と、血液回路と、前記血液浄化器より上流側の血液回路に設けられた血液ポンプ、血液浄化器より下流側の血液回路に設けられた静脈チャンバとを含んでなる血液浄化装置において、
電解質液が収容されており、外部からの押圧により容易に圧潰して内部に収容された前記電解質液が排出される可撓性容器と、この可撓性容器を押圧するための所定面積の押圧面を2つ備え、押圧により前記可撓性容器から所定量の前記電解質液を排出させる押圧手段からなる電解質液導入手段が、前記血液浄化器と静脈チャンバの間で血液回路に接続されるとともに、この静脈チャンバより下流側の血液回路に流路開閉手段が設けられている。そして、前記電解質液導入手段から前記血液回路に導入される電解質液によって前記血液回路及び血液浄化器内の血液が回収されるようになっている。可撓性容器は、その内部に収容された電解質液の液圧がシャント内圧よりも低くなる位置に配置されている。また、電解質液導入手段と血液回路を接続する電解質液導入流路に、前記電解質液流路を開閉する流路開閉手段を更に設け、可撓性容器から所定量の電解質液が排出されたときに前記流路開閉手段が自動的に閉鎖されるようにしている。
【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1の血液浄化装置を示す概略系統図である。
実施例1の血液浄化装置は、図1に示すように、血液浄化器としてのダイアライザ(血液透析器)10と、血液回路(ダイアライザ10より上流側の動脈側血液回路12とダイアライザ10より下流側の静脈側血液回路14からなる)と、動脈側血液回路12に設けられた血液ポンプ20、静脈側血液回路14に設けられた静脈チャンバ50とを含んでなる血液浄化装置において、電解質液導入手段が血液浄化器10より下流側で静脈側血液回路14に接続されているケースであり、可撓性容器56は内部に収容されている電解質液の液圧がシャント内圧よりも低くなる位置に配置されている。
電解質液導入手段は、電解質液が収容されており、外部からの押圧により容易に圧潰して内部に収容された前記電解質液が排出される可撓性容器56と、この可撓性容器56を押圧するための所定面積の押圧面を備え、押圧により可撓性容器56から所定量の前記電解質液を排出させる押圧手段60とを含んでなる。電解質液導入手段は、ダイアライザ10と静脈チャンバ50の間で静脈側血液回路14に接続されている。静脈チャンバ50より下流側の静脈側血液回路14には流路開閉手段としてのピンチバルブ84が設けられ、前記電解質液導入手段から静脈側血液回路14に導入される電解質液によって血液回路12、14及び血液浄化器10内の血液が回収されるようになっている。
【0019】
血液浄化操作に際しては、動脈側血液回路12の端部に取り付けられた動脈側穿刺針16が、患者のシャント血管42の上流側(動脈側)に穿刺される一方、静脈側血液回路14の端部に取り付けられた静脈側穿刺針18が、シャント血管42の下流側(静脈側)に穿刺される。かくして、動脈側穿刺針16から導入された患者の血液が動脈側血液回路12を通ってダイアライザ10に送られ、ダイアライザ10で浄化された血液が静脈側血液回路14を通って静脈側穿刺針18から患者の体内に返送される体外循環が可能になる。
なお、本明細書において、動脈側血液回路12や静脈側血液回路14における上流側および下流側とは、血液浄化操作の実施時における血液の上流側および下流側のことを意味するものとする。
【0020】
また、ダイアライザ10には、透析液供給流路44と透析液排出流路46が接続されており、透析液供給流路44を通して新鮮な透析液をその貯槽(図示していない)からダイアライザ10内に導き、この新鮮な透析液と、動脈側血液回路12を通してダイアライザ10に供給された血液を、ダイアライザ10の半透膜を介して接触させることにより、半透膜の透析および濾過作用により、血液中の不要物質乃至は有害物質、水分を透析液側に移行せしめ、これらの不要物質乃至は有害物質、水分を含んだ透析液(使用済透析液という)を透析液排出流路46を通して排出するようになっている。
【0021】
また、実施例1の血液浄化装置においては、静脈側血液回路14上に静脈チャンバ50が設けられているが、血液濾過網48は静脈チャンバ50の内部に配設されている。血液の浄化操作(透析操作)が行われる際に、静脈側血液回路14内の血液が、静脈チャンバ50内に一旦貯留されて、血液中に混入する空気が除去されるとともに、静脈チャンバ50の内部に配設された血液濾過網48により血液が濾過され、血液中の血栓が捕捉されて取り除かれることで、血液浄化操作が安全に実施され得るようになっている。
【0022】
電解質液導入手段は、可撓性容器56と押圧手段60と電解質液導入流路52から構成されており、電解質液導入流路52はダイアライザ10と静脈チャンバ50の間の部分54で静脈側血液回路14に接続されている。可撓性容器56には、電解質液としての生理食塩水が収容されており、外部からの押圧により容易に圧潰して内部に収容された前記電解質液が排出されるようになっており、押圧手段60は、この可撓性容器56を押圧するための所定面積の押圧面を備え、押圧により可撓性容器56から所定量の前記電解質液を排出させることができるようになっている。そして、前記電解質液導入手段から静脈側血液回路14に導入される電解質液によって血液回路12、14及び血液浄化器10内の血液が回収されるようになっている。
【0023】
可撓性容器56は、外部からの押圧力により、膨らんだ状態から容易に圧潰する柔軟性を有し、その膨らんだ状態と潰れた状態との間で容積が可変とされたバッグで構成されている。可撓性容器56には、返血操作時に必要とされる量(約250〜350ml程度)と血液浄化時の急激な血圧降下等を処置するために必要とされる補液の量(約100〜200ml程度)とを合計した量(約400〜600ml程度)、またはそれよりも多い量の生理食塩水が収容されるのが好ましい。本実施態様では、可撓性容器56は、可撓性容器56を外部から押圧していない状態下において、患者のシャント血管42の内圧(シャント内圧)、即ち体内から動脈側血液回路12に流れ込む血液の圧力または静脈側血液回路14から体内に血液が戻る圧力のいずれよりも、可撓性容器56内に収容された生理食塩水の内圧が低くなるような位置に取り付けられている。例えばベッドサイドにおいては、患者のシャント血管42と同じ高さの位置か、あるいはシャント血管42よりも低い位置に配置される。このようにすれば、可撓性容器56に対して外圧を作用せしめない限り、可撓性容器56に収容された生理食塩水が、電解質液導入流路52を通って接続部54から静脈側血液回路14に導入されることはない。
尚、可撓性容器56には、これをスタンド等の支持部材(図示していない)に取り付けるための取付孔58が設けられており、取付孔58を支持部材に係止することにより、可撓性容器56を所望の高さに容易に位置させることができる。
【0024】
可撓性容器56にはこれに収容された生理食塩水を押し出すための押圧手段としての押圧治具60が装着されている。押圧治具60としては、図3および図4に示すようなものが採用されている。
押圧治具60は、図1、図3、図4に示されるように、略矩形形状の硬質平板からなる一対の圧迫板62、62を有しており、一対の圧迫板62、62の対向面が可撓性容器56を押圧する押圧面64、64になっている。押圧面64、64は、所定量の生理食塩水だけを押し出すことができるように、用いる可撓性容器56の種類や形状、大きさに応じてその面積が適宜に設定されており、ここでは返血に必要な量(約300ml程度)だけが押し出されるように、押圧面64、64の横方向(図1の水平方向)の長さが可撓性容器56の幅と略同程度とされている一方、縦方向(図1の垂直方向)の長さが可撓性容器の生理食塩水の収容部の長さの3/5程度とされている。また、圧迫板62、62は押圧面64、64とは反対側の面において、それぞれ押圧治具60の本体66の先端側に固着されて支持されている。より具体的にいうと、押圧治具60の本体66の先端側は、挟持部68、68のそれぞれに、角度調節片70、70を介して圧迫板62、62が固着されている。
【0025】
押圧治具60の本体66は、硬質樹脂材料製の二つの挟持片72、72を有しており、対向する二つの挟持片72、72がその長手方向の中間部分で回動軸74により軸支されている。また、挟持片72、72の軸支された部位よりも基端側の部位(アーム部76、76)には、図4に示すように、それらの対向する部位に、ねじりコイルバネ78が一体的に取り付けられており、アーム部76、76同士は互いに離隔する方向に付勢されている。従って、挟持片72、72の先端部68、68にそれぞれ取り付けられた圧迫板62、62同士は互いに接近する方向に付勢されている。押圧治具60の使用に際しては、一対のアーム部76、76からなる把持部80を握って一対の圧迫板62、62を離隔せしめた状態で、それら一対の圧迫板62、62の対向する押圧面64、64の間に可撓性容器56が配置されるようにし、把持部80から手を離せばよい。可撓性容器56は圧迫板62、62により押圧されて、押圧面64、64によって挟まれた部分の生理食塩水が、電解質液導入流路52を通って静脈側血液回路14に導入される。
【0026】
電解質液導入流路52には、静脈側血液回路14への電解質液の流入を制御するための流路開閉手段として、ピンチバルブ82が着脱可能に取り付けられている。このピンチバルブ82を閉じると、静脈側血液回路14内への生理食塩水の流入が阻止されるようになっている一方、ピンチバルブ82を開けると、押圧治具60によって液圧が高められた生理食塩水が、電解質液導入流路52を通って静脈側血液回路14に導入されるようになっている。
また、本実施態様においては、電解質液導入流路52との接続部54よりも下流側の静脈側血液回路14には、内部に血液濾過網48が配設された静脈チャンバ50が設けられており、この静脈チャンバ50より下流側には血液等の流通を制御するための流路開閉手段として、ピンチバルブ84が着脱可能に取り付けられている。このピンチバルブ84を閉じるとバルブ配設部位を通じての血液等の流通が阻止される一方、ピンチバルブ84を開けるとバルブ配設部位を通じての血液等の流通が許容され得るようになっている。
【0027】
なお、本実施態様においては、血液ポンプ20として、図2に示されるような構造のローラポンプを採用している。すなわち、チューブ(動脈側血液回路12の一部)を支持するためのU字状の支地面を有するハウジング部24と一対のローラ26、26を一体的に備えたローラ部28とを有して構成されており、図示していないモータによってローラ部28の中心にある回転軸30が回転作動させられると、回転軸30の回転に伴って、ロータ25の両端部に設けられた一対のローラ26、26も、回転軸30を中心として一体的に回転するようになっている。そして本実施態様の血液ポンプ20には、動脈側血液回路12を血液ポンプ20から取り外すことなく、血液ポンプ20の作動停止時における血液等の流通を必要に応じて許容しうるような機構が設けられている。
すなわち、ハウジング部24が一対の分割体32、34から構成されており、この分割体32、34の当接面を固定するボルト36を取り外して、仮想線(一点鎖線)で示されるように、U字状の開口部側の端部部位にそれぞれ設けられた回動軸38、40を中心にして、分割体32、34を互いに離間する方向に移動させると、チューブに関してハウジング部24の当接面と反対側でチューブと当接する支持ロール41、41が回動軸411、411を中心に回転自在になっているため、分割体32、34の支持面に押されてチューブが図の下方に移動し、チューブの閉塞状態が解除される様になっている。
【0028】
次に、実施例1の血液浄化装置を用いた血液浄化操作について説明する。
血液浄化操作を実施するには、先ずプライミング操作が行われる。プライミング操作は、ピンチバルブ82と84を開いて血液回路12、14やダイアライザ10、電解質液導入流路52のそれぞれの流路内に生理食塩水を充填する操作で、通常、別途用意された生理食塩水を使用するが、可撓性容器56に収容された生理食塩水を使用することも可能である(但し、可撓性容器56内にその使用量に見合った生理食塩水を過剰に収容しておく必要がある)。
プライミング操作が終了したら、電解質液導入流路52のピンチバルブ82を閉じ、図1に示すように、動脈側穿刺針16を患者のシャント血管42の血液流通方向上流側に穿刺する一方、静脈側穿刺針18をシャント血管42の血液流通方向下流側に穿刺して、所謂体外循環回路を構成する。血液ポンプ20を作動させると、動脈側穿刺針を通して動脈側血液回路12に導入された患者の血液が、ダイアライザ10に供給され、ここで半透膜を介して透析液と接触して浄化され、更にこの浄化された血液が、静脈側血液回路14を経て静脈側穿刺針18から患者に返送される。
【0029】
血液浄化操作が終了したら、装置内部に残留する血液を患者の体内に返送する所謂残留血液の返血操作が実施されることになるが、この返血操作は以下の手順に従って行われる。すなわち、動脈側穿刺針16と静脈側穿刺針18を患者のシャント血管42に穿刺した状態で、血液ポンプ20の作動を停止し、電解質液導入流路52上のピンチバルブ82を開ける。すると可撓性容器56に収容された生理食塩水が、押圧治具60の押圧作用によって、電解質液導入流路52を通して接続部54よりも下流側の静脈側血液回路14に導入され、この部分に残留する血液が、導入された生理食塩水に押し出され、静脈側穿刺針18を通って患者の体内に戻される。こうして接続部54よりも下流側の静脈側血液回路14には残留血液と置換された生理食塩水が残される。
なお、血液浄化操作においては、血液回路の分岐部(ここでは接続部54)にしばしば血栓が形成されることがあるが、上述のような生理食塩水の導入によって、接続部54に形成された血栓が下流側に向かって押し流され、静脈チャンバ50の血液濾過網48によって捕捉されるようになっている。これにより、患者の体内に血栓が入るようなことが確実に防止される。
【0030】
そして、接続部54よりも下流側の静脈側血液回路14内の残留血液の略全量を患者の体内に戻したら、静脈チャンバ50よりも下流側のピンチバルブ84を閉じ、血液ポンプ20において、ハウジング部24の分割体32、34の当接面を固定するボルト36を取り外し、分割体32、34を互いに離隔する方向に移動させてチューブの閉塞状態を解除する。すると、電解質液導入流路52内および可撓性容器56内に収容された生理食塩水が、今度は接続部54よりも上流側に導入される。この結果、接続部54よりも上流側の静脈側血液回路14とダイアライザ10、動脈側血液回路12の内部に残留する血液が、導入された生理食塩水によって動脈側穿刺針16を通って患者の体内に戻される。こうして接続部54よりも上流側の静脈側血液回路14とダイアライザ10、動脈側血液回路12の内部には残留血液と置換された生理食塩水が残される。そして、可撓性容器56や電解質液導入流路52内の生理食塩水の液圧が静脈側血液回路14の内圧と等しくなった時点で、たとえ可撓性容器56内に生理食塩水が残っていても、可撓性容器56からの生理食塩水の流出は自動的に停止する。その結果、余分な生理食塩水が患者の体内に導入されることが効果的に防止される。
【0031】
上述の押圧手段は補液を行う場合にも利用可能であり、例えば、図1において仮想線(1点鎖線)で示すように、補液に必要な量(約200〜250ml程度)の生理食塩水のみを押し出すことのできる押圧面を備えた、上記押圧治具60と同様な構造の押圧治具60'を、補液時に上記押圧治具60の代わりに可撓性容器56に装着すればよい。
なお、図5以降において、同様な構造の部材および部位については、図中、それぞれ同一の符号を付与することにより、その詳細な説明を省略する。
【実施例2】
【0032】
図5は、実施例2の血液浄化装置を示す概略系統図である。
実施例2の血液浄化装置は、図5に示すように、実施例1において、可撓性容器56が、血液回路12、14やダイアライザ10よりも高い位置に配置されている。従って、可撓性容器56内に収容された生理食塩水が、押圧手段による押圧作用だけでなく、自重による重力の作用によっても、電解質液導入流路52を通して装置内に導入される。以て、返血操作がより一層スムーズ且つ迅速に実施され得るようになっている。
また、本実施態様においては、実施例1で採用されていた押圧治具60と略同様な構造を有するものの、異なる所定量の生理食塩水を押し出すことができるように、実施例1の押圧面64、64とは異なる押圧面積を有する押圧板88、88が用いられている。
更に、本実施態様においては、押圧治具86により所定量の生理食塩水が押し出された後、可撓性容器56内に残った生理食塩水がその自重によって更に流れ出すことが無いように、押圧治具86による可撓性容器56の押圧操作に連動して電解質液導入流路52を閉塞し、生理食塩水の更なる流出を阻止するための閉塞手段が設けられており、所定量の生理食塩水のみが静脈側血液回路14内に確実に導入され得るようになっている。
【0033】
閉塞手段は、具体的には、例えば図5に示すように、圧迫板88、88の押圧面間の距離を検出するためのセンサ90と、このセンサ90からの検出信号を受信するコントローラ91と、このコントローラ91からの開閉信号によって開閉操作が自動的に行われる電磁弁92とによって構成されており、返血操作時において、圧迫板88、88の押圧面間の距離が予め設定された所定の距離(ここでは、圧迫板の押圧面同士が略重なり合う距離)になると、その検出信号がセンサ90からコントローラ91に送られるようになっている。そしてコントローラ91は、センサ90からの検出信号を受けて、電磁弁92に対して閉信号を送り、電磁弁92を自動的に閉じて電解質液導入流路52を閉塞するようになっている。尚、センサ90としては、例えば、光電スイッチ等の非接触型のものや、リミットスイッチ等の接触型のものを挙げることが出来る。
【実施例3】
【0034】
図6は、実施例3の血液浄化装置を示す概略系統図である。
実施例3の血液浄化装置は、図6に示すように、電解質液導入手段が血液浄化器10より上流側で動脈側血液回路12に接続されているケースであり、可撓性容器56は内部に収容されている電解質液の液圧がシャント内圧よりも低くなる位置に配置されている。
血液ポンプ94より上流側の動脈側血液回路12と、血液ポンプ94と血液浄化器10の間の動脈側血液回路12、とを結ぶバイパス流路96が設けられるとともに、このバイパス流路96の下流側にピンチバルブ108が設けられ、このバイパス流路96より上流側の動脈側血液回路12にはピンチバルブ112が設けられている。そして、バイパス流路96において、ピンチバルブ108より上流側に血栓を捕捉しうるバイパスチャンバ102が設けられるとともに、このバイパスチャンバ102より上流側のバイパス流路96にピンチバルブ106が設けられ、更に電解質液導入手段がバイパス流路96と血液浄化器10の間で動脈側血液回路12に接続されるとともに、血液浄化器10と静脈チャンバ50の間の静脈側血液回路14にピンチバルブ114が設けられている。
尚、ピンチバルブ106、108はどちらか一方を省略することも可能である。
【0035】
本実施態様においては、ポンプ手段として、実施例1や実施例2とは異なり、従来から公知の構造を有する血液ポンプ94が用いられており、バイパスチャンバ102内には、静脈チャンバ50と同様、血液濾過網104が配設されている。但し、バイパスチャンバ102は、血液が上方から流入し底部より流出する静脈チャンバ50とは異なり、血液あるいは電解質液の流入および流出が何れもバイパスチャンバ102の底部から行われる構造になっている。
【0036】
次に、実施例3の血液浄化装置を用いた血液浄化操作について説明する。
血液浄化操作を実施するには、先ずプライミング操作が行われる。即ち、ピンチバルブ106、108、112、114を開き、次いでピンチバルブ82を開いて血液回路12、14やダイアライザ10、電解質液導入流路52、バイパス流路96内に生理食塩水を充填すればよい。
プライミング操作が終了したら、ピンチバルブ82、106、108を閉じ、実施例1と同様の手順で血液浄化操作を行う。
【0037】
血液浄化操作が終了したら、装置内部に残留する血液を患者の体内に返送する所謂残留血液の返血操作が実施されることになるが、この返血操作は以下の手順に従って行われる。すなわち、動脈側穿刺針16と静脈側穿刺針18を患者のシャント血管42に穿刺した状態で、血液ポンプ94を作動させたままバイパス流路96上のピンチバルブ106、108を開ける一方、動脈側血液回路12のピンチバルブ112と静脈側血液回路14のピンチバルブ114を閉じ、電解質液導入流路52上のピンチバルブ82を開ける。すると血液ポンプ94の作動量に応じて、動脈側血液回路12の本線流路13(接続部98と接続部100の間の部分)とバイパス流路96とで形成される環状流路内を、一定量の液が矢印B方向に循環するようになる。この際、接続部98、100に生じた血栓はバイパスチャンバ102により捕捉され、除去される。
【0038】
次に、血液ポンプ94の作動を停止させ、静脈側血液回路14のピンチバルブ114を開けると、接続部110よりも下流側の動脈側血液回路12と電解質液導入流路52とが連通され、可撓性容器56内の生理食塩水が接続部110よりも下流側の動脈側血液回路12に導入される。その結果、接続部110よりも下流側の動脈側血液回路12とダイアライザ10と静脈側血液回路14の内部に残留する血液が、導入された生理食塩水によって静脈側穿刺針18を通って患者の体内に戻される。こうして接続部110よりも下流側の動脈側血液回路12とダイアライザ10、静脈側血液回路14の内部には残留血液と置換された生理食塩水が残される。
この時、実施例1の場合と同様に、接続部110に形成された血栓が下流側に向かって押し流され、静脈チャンバ50の血液濾過網48によって捕捉される。
【0039】
そして、接続部110よりも下流側の静脈側血液回路14内の残留血液の略全量を患者の体内に戻したら、静脈側血液回路14のピンチバルブ114を閉じ、動脈側血液回路12のピンチバルブ112を開ける。すると、電解質液導入流路52内および可撓性容器56内に収容された生理食塩水が、今度は接続部110よりも上流側に導入される。この結果、接続部110よりも上流側の動脈側血液回路12とバイパス流路96の内部に残留する血液が、導入された生理食塩水によって動脈側穿刺針16を通って患者の体内に戻される。こうして接続部110よりも上流側の動脈側血液回路12とバイパス回路96の内部には残留血液と置換された生理食塩水が残される。尚、本線流路13の内部に残留する血液は、血液ポンプ94の作動によりポンプ下流側の接続部100方向に向かって流通した後、接続部100において可撓性容器56内から電解質液導入流路52を経て導入された生理食塩水と混ざり合い、バイパス流路96を通じて患者の体内に戻される。
そして、可撓性容器56や電解質液導入流路52内の生理食塩水の液圧が静脈側血液回路14の内圧と等しくなった時点で、たとえ可撓性容器56内に生理食塩水が残っていても、可撓性容器56からの生理食塩水の流出は自動的に停止する。その結果、余分な生理食塩水が患者の体内に導入されることが効果的に防止される。
また、本実施態様の血液浄化装置においては、血液ポンプ94に対してバイパスとなるバイパス回路96が設けられていることから、返血操作の際に動脈側血液回路12を血液ポンプ94から取り外すという煩雑な作業を行う必要がない。
【実施例4】
【0040】
次に、実施例4について図7を用いて説明する。
図7は、実施例4の血液浄化装置を示す概略系統図である。
実施例4の血液浄化装置は、図7に示すように、実施例3と同様、電解質液導入手段が血液浄化器10より上流側で動脈側血液回路12に接続されているケースであり、可撓性容器56は内部に収容されている電解質液の液圧がシャント内圧よりも低くなる位置に配置されている。
電解質液導入手段は、実施例3とは異なり、バイパス流路116より上流側の動脈側血液回路12に、流路開閉手段126と接続部98の間で接続されており、動脈側血液回路12との接続部124に近接して、この接続部124と接続部98の間の動脈側血液回路12にピンチバルブ128が設けられ、バイパス回路116と血液浄化器10の間の動脈側血液回路12には、静脈チャンバ50と同様な構造の、血液濾過網118の配置された動脈チャンバ120が設けられている。
【0041】
実施例4の血液浄化装置おける返血操作は以下の手順に従って行われる。すなわち、バイパス流路116のピンチバルブ122を閉じ、動脈側血液回路12のピンチバルブ126、128を開いて血液浄化操作を行った後、動脈側穿刺針16と静脈側穿刺針18を患者のシャント血管42に穿刺した状態で、血液ポンプ94を作動させたままバイパス流路116上のピンチバルブ122を開ける一方、動脈側血液回路12のピンチバルブ126を閉じる。すると血液ポンプ94の作動量に応じて、動脈側血液回路12の本線流路13(接続部98と接続部100の間の部分)とバイパス流路116とで形成される環状流路内を、一定量の液が矢印B方向に循環するようになる。この時接続部98、100に形成された血栓は、循環する液の中に混入する。
【0042】
次に、電解質液導入流路52のピンチバルブ82を開け、バイパス流路116のピンチバルブ122を閉じると、接続部124よりも下流側の動脈側血液回路12と電解質液導入流路52とが連通され、可撓性容器56内の生理食塩水が血液ポンプ94によって接続部124よりも下流側の動脈側血液回路12に導入される。
その結果、接続部124よりも下流側の本線流路13までの動脈側血液回路12と本線流路13の内部に残留する血液が、導入された生理食塩水によって押し出され、この押し出された血液と同量の血液が静脈側穿刺針18を通って患者の体内に戻される。こうして、電解質液導入流路52と動脈側血液回路12との接続部124と、バイパス流路116と血液ポンプ94より下流側の動脈側血液回路12との接続部100、との間の血液が、生理食塩水によって置換される。
【0043】
少なくとも接続部124と接続部100の間の血液が生理食塩水によって置換されたら、血液ポンプ94の作動を停止し、バイパス流路116のピンチバルブ122を開ける。すると今度は、押圧治具60による押圧により、接続部124より下流側の本線流路13を除く動脈側血液回路12とバイパス流路116、ダイアライザ10と静脈側血液回路14の内部に、可撓性容器56内の生理食塩水が導入され、この部分に残存する血液が、導入された生理食塩水によって静脈側穿刺針18を通って患者の体内に戻される。
こうして接続部124よりも下流側の動脈側血液回路12(本線流路13を含む)とバイパス流路116、ダイアライザ10と静脈側血液回路14の内部には、残留血液と置換された生理食塩水が残される。
この時、実施例1の場合と同様に、接続部98、100、124に形成された血栓が下流側に向かって押し流され、静脈チャンバ50の血液濾過網48によって捕捉される。
【0044】
但し、バイパス流路116のピンチバルブ122を開け、血液ポンプ94を作動させた状態でピンチバルブ126を閉じ、ピンチバルブ82を開けた状態にしても、実質的にはバイパス流路116の残留血液が殆んど返血され得ることが試験により確認されている。恐らく、押圧治具60によって液圧が高められた生理食塩水の影響で、生理食塩水によって押し出された血液がバイパス流路116側に流入せず、むしろバイパス流露116の血液が接続部100を通って動脈チャンバ120側に押し出されるためと思われる。
【0045】
次に、接続部124よりも上流側のピンチバルブ126が開けられるとともに、接続部より下流側のピンチバルブ128が閉じられる。すると可撓性容器56内の生理食塩水が電解質液導入流路52を通って導入され、この部分に残存する血液が、導入された生理食塩水によって動脈側穿刺針16を通って患者の体内に戻される。
こうして接続部124よりも上流側の動脈側血液回路12の内部には、残留血液と置換された生理食塩水が残される。
【実施例5】
【0046】
次に、実施例5について図8を用いて説明する。
図8は、実施例5の血液浄化装置を示す概略系統図である。
実施例5の血液浄化装置は、図8に示すように、実施例3と同様、電解質液導入手段が血液浄化器10より上流側で動脈側血液回路12に接続されているケースであり、可撓性容器56は内部に収容されている電解質液の液圧がシャント内圧よりも低くなる位置に配置されている。
実施例3や実施例4と異なり、バイパス流路116より上流側かつ血液ポンプ94より下流側の動脈側血液回路12に血栓を捕捉しうる動脈チャンバ120が設けられるとともに、電解質液導入手段は、この動脈チャンバ120と血液ポンプ94の間で動脈側血液回路12に接続されている。また、血液浄化器10と静脈チャンバ50の間の静脈側血液回路14には流路開閉手段134が設けられている。尚、動脈チャンバ120には、静脈チャンバ50と同様な構造の血液濾過網118が配置されている。
【0047】
実施例5の血液浄化装置おける返血操作は以下の手順に従って行われる。すなわち、バイパス流路116のピンチバルブ122を閉じ、動脈側血液回路12のピンチバルブ132、静脈側血液回路14のピンチバルブ134を開いて血液浄化操作を行った後、動脈側穿刺針16と静脈側穿刺針18を患者のシャント血管42に穿刺した状態で、血液ポンプ94を作動させたままバイパス流路116上のピンチバルブ122を開ける一方、ピンチバルブ132を閉じる。すると血液ポンプ94の作動量に応じて、動脈側血液回路12の本線流路13(接続部98と接続部100の間の部分)とバイパス流路116とで形成される環状流路内を、一定量の液が矢印B方向に循環するようになる。この時、接続部98、100に形成された血栓は、循環する液の中に混入し、動脈チャンバ120で捕捉され取り除かれる。
【0048】
次に、血液ポンプ94の作動を停止し、電解質液導入流路52のピンチバルブ82と静脈側血液回路14のピンチバルブ134を開けると、本線流路13と電解質液導入流路52とが連通され、押圧治具60による押圧により、可撓性容器56内の生理食塩水が接続部130を通って本線流路13に導入される。
その結果、接続部130よりも下流側の動脈側血液回路12と本線流路13、ダイアライザ10、静脈側血液回路14の内部に残留する血液が、導入された生理食塩水によって押し出され、静脈側穿刺針18を通って患者の体内に戻される。
【0049】
次に、ピンチバルブ134を閉じ、ピンチバルブ122、132を開ける。すると今度は、接続部130より下流側の本線流路13とバイパス流路116、バイパス回路116より上流側の動脈側血液回路12の内部に、可撓性容器56内の生理食塩水が導入され、この部分に残存する血液が、導入された生理食塩水によって動脈側穿刺針16を通って患者の体内に戻される。
こうして接続部130よりも下流側の本線流路13とバイパス流路116、バイパス回路116より上流側の動脈側血液回路12の内部には、残留血液と置換された生理食塩水が残される。
この時、接続部130に形成された血栓が下流側に向かって押し流され、動脈チャンバ120の血液濾過網118によって捕捉される。
尚、接続部98から接続部130までの本線流路13に残留する血液は、血液ポンプ94の作動により、静脈側穿刺針18もしくは動脈側穿刺針16を通して返血される。
【0050】
押圧治具としては、図3〜4に示すものの他、図9や図10に示すようなものも採用可能である。
図9に示す押圧治具136は、所定面積の押圧面138を有する略矩形形状の硬質平板からなる圧迫板140を有しており、圧迫板140がモータ142によって可撓性容器56に対して接近移動させられるようになっている。より具体的には、モータ142の回転軸143にピニオン144が一体的に取り付けられており、モータ142の作動力によって回転軸143が回転すると、それに連動してピニオン144も同一方向(図中、C方向)に回転するようになっている。圧迫板140の押圧面138は、所定量(約250〜350ml程度)の生理食塩水だけを押し出すことができるように、可撓性容器56の種類や形状、大きさ等に応じてその面積が適宜に設定されている。
【0051】
図9では、可撓性容器56は、その一方の面が平坦な壁面148に略当接した常態で吊り下げられており、押圧治具136のモータ142を作動させて圧迫板140を可撓性容器56に対して接近移動させると、可撓性容器56が壁面148と押圧治具136の圧迫板140によって挟まれ、更に圧迫板140をD方向に移動させると、圧迫板140の押圧面138によって圧迫されて壁面148と押圧面138との間の生理食塩水が押し出される。
尚、ここでは、モータ142の回転運動をピニオン144とラック146によって直線運動に変換して可撓性容器を押圧していたが、ピニオンとラック以外にも、モータ142の回転運動を直線運動に変換する公知の機構も採用可能である。
【0052】
図10に示す押圧治具150は、所定面積の押圧面152、154をそれぞれ有する矩形形状の硬質平板からなる二つの圧迫板156、158を有しており、ここでは、下方に配置された圧迫板156の押圧面152によって、血液浄化操作の終了後に行われる返血操作に必要とされる量(約250〜350ml程度)の生理食塩水だけを押し出すことができるように、また、上方に配置された押圧板158の押圧面154によって、血液浄化操作時の急激な血圧降下等を処置するために必要とされる量(約100〜200ml程度)の生理食塩水だけを押し出すことができるように、各圧迫板156、158の押圧面152、154の面積はそれぞれ、可撓性容器56の種類や形状、大きさ等に応じてその面積が適宜に設定されている。
押圧治具150では、重り160をピストン162の上側の載置部164に載置することによって、ピストン162がその重力で下方に移動させられ、シリンダ166内に収容された油や水等の非圧縮性の流体168の圧力が高められるようになっており、この重り160の重力によって発生した流体圧により圧迫板156、158が可撓性容器56方向に移動し可撓性容器56を押圧するようになっている。
【0053】
シリンダ166の内部は、各圧迫板156、158に連結された樹脂製の蛇腹部材170、172の内部に、配管174を介して連通されている。配管174は分岐した形状を有しており、シリンダ166の内部に収容された流体168が配管174の分岐部からそれぞれ蛇腹部材170、172の内部に導入され得るようになっている。配管174の分岐部より蛇腹部材170、172側の部位にはそれぞれ、流体の流通を許容ないしは阻止するコック176、178が設けられており、図10では、圧迫板156に連結された蛇腹部材170に通じる側のコック176が閉じられている一方、圧迫板158に連結された蛇腹部材172に通じる側のコック178が開けられている。この状態では、重り160の重力によって生じた流体圧により蛇腹部材172が可撓性容器56側(E方向)に伸び、以て、蛇腹部材172に連結された圧迫板158が可撓性容器56方向に移動し可撓性容器56を押圧して、壁面148と圧迫板158の押圧面154との間の生理食塩水を押し出す。同様に、下方のコック176を開くと、重り160の重力によって生じた流体圧により蛇腹部材170が可撓性容器56側(F方向)に伸び、以て、蛇腹部材170に連結された圧迫板156が可撓性容器56方向に移動し、可撓性容器56を押圧して壁面148と圧迫板156の押圧面152との間の生理食塩水を押し出す。
【0054】
尚、この押圧治具150では、返血操作で用いられる蛇腹部材170と補液操作で用いられる蛇腹部材172の大きさ(径)が異なっており、補液用の蛇腹部材172の方が大きな径を有している。そのため、同じ重さの重り160を使用した場合には、補液側の押圧力が返血側の押圧力よりも大きくなり、補液を急速に行うことが出来るようになっている。
また、ここでは、蛇腹部材170、172を支持するための支持板180、182が固定的に設置されているとともに、蛇腹部材170、172の可撓性容器56側の端部と支持板182の間には、それぞれコイルバネ184、186が介装されており、コック176、178を開口した状態で重り160をピストン162の載置部164から取り除くと、コイルバネ184、186の付勢力によって蛇腹部材170、172が押圧されて縮み、圧迫板156、158が可撓性容器56から離隔するようになっている。
押圧治具150は、重り160の重力を利用して可撓性容器56を押圧するようにしたものであるため、モータ等の電力を必要とする図9に示す押圧部材136とは異なり、停電時においても補液操作や返血操作を確実に行うことが出来るといったメリットがある。
【0055】
〔試験例1〕扶桑薬品工業製の500ml入り生食バッグ(フィシザルツ500ccバッグ)を準備し、これを図7に示す血液浄化装置(実施例4)に取り付けた(但し、シャント血管42に対する動脈側穿刺針16と静脈側穿刺針18の穿刺は行っていない)。そして、ピンチバルブ82およびピンチバルブ126を開け、ピンチバルブ128を閉じた状態で、押圧治具60の性能試験(1)〜(3)を行った。尚、未使用のフィシザルツ500ccバッグには、523mlの生理食塩水と59mlのエアーが入っている。
(1)図11(a)に示すように、13cm×6.3cmの押圧面(P)を有する押圧治具を用いて生食バッグを押圧したところ、200mlの生理食塩水が押し出されて、生理食塩水の流出が止まった。
(2)図11(b)に示すように、13cm×6.8cmの押圧面(Q)を有する押圧治具を用いて生食バッグを押圧したところ、300mlの生理食塩水が押し出されて、生理食塩水の流出が止まった。
(3)図11(c)に示すように、13cm×6.3cmの押圧面(P)を有する押圧治具を用いて生食バッグを押圧した後、13cm×6.8cmの押圧面(Q)を有る押圧治具を用いて生食バッグを押圧したところ、上方と下方の圧迫板の間に10〜20mlの生理食塩水が残った状態で、生理食塩水の流出が止まった。
この結果から、面積を適宜に設定した押圧面を備えた押圧手段で生食バッグを押圧すれば、所定量の生理食塩水が流出され得ることが分かった。
【0056】
〔試験例2〕扶桑薬品工業製の500ml入り生食バッグ(フィシザルツ500ccバッグ)を準備し、これを図7に示す血液浄化装置(実施例4)に取り付けた。但し、流路開閉手段としては、ピンチバルブ82、122、126、128に代えて、鉗子を用いた。尚、押圧治具60は血液浄化操作の終了直前に生食バッグに取り付けた。そして、血液浄化操作の終了後、バイパス流路116をクランプしている鉗子122を外し、これでピンチバルブ126の部位をクランプし、更に電解質液導入流路52をクランプしている鉗子82を外した。
すると、生食バッグ56から流出した生理食塩水が接続部124から動脈側血液回路12に流入し、接続部124より上流側の血液回路内およびバイパス流路116内に残留する血液を押し出して、ダイアライザ側10側の方向に流れていった。そして、この生理食塩水による返血が自動的に停止するか否かを、10人の患者で確認した。
【0057】
その結果、すべての患者で、生食バッグ56から300mlの生理食塩水は流出した時点で、自動的に返血が終了した。また、返血後静脈チャンバ50内に残留した残留液中のヘマトクリット値(平均値)を測定したところ、0.5±0.1%であった。これに対し、押圧治具60を用いず、看護師が返血操作の開始から終了まで監視して行う、従来の返血操作の場合におけるヘマトクリット値(平均値)は、0.35±0.15%(測定数:10)であった。両者のヘマトクリット値を比べると、差はきわめて小さく、略同程度であると言える。したがって、本発明に従う血液浄化装置を用いて行う返血操作は、監視を常に行う必要がないにも拘らず、従来の返血操作と比べて遜色なく行うことが出来ることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1の血液浄化装置を示す概略系統図である。
【図2】図1に示す血液浄化装置で採用された血液ポンプを示す平面説明図である。
【図3】図1に示す血液浄化装置で採用された押圧治具を示す平面説明図であり、(a)は、ねじりコイルバネの付勢力によって一対の圧迫板が押圧された状態を、(b)は、ねじりコイルバネの付勢力に抗して一対のアーム部を接近させることにより、一対の圧迫板を離隔させた状態を、それぞれ示している。
【図4】図2(a)に示す押圧治具の右側面図である。
【図5】実施例2の血液浄化装置を示す概略系統図である。
【図6】実施例3の血液浄化装置を示す概略系統図である。
【図7】実施例4の血液浄化装置を示す概略系統図である。
【図8】実施例5の血液浄化装置を示す概略系統図である。
【図9】押圧治具の他の実施例を示す概略説明図である。
【図10】押圧治具の更に他の実施例を示す一部切欠き概略説明図である。
【図11】可撓性容器の押圧部位を説明するための図である。
【符号の説明】
【0059】
10:ダイアライザ 12:動脈側血液回路
13:本線流路 14:静脈側血液回路
16:動脈側穿刺針 18:静脈側穿刺針
20、94:血液ポンプ 22:支持面
24:ハウジング部 25:ロータ
26:ローラ 28:ローラ部
30:回転軸 32、34:分割体
36:ボルト 38、40:回動軸
41:支持ロール 411:回動軸
42:シャント血管 48、104、118:血液濾過網
50:静脈チャンバ 52:電解質液導入流路
54、98、100、110、124、130:接続部
56:可撓性容器 58:取付孔
60、86、136、150:押圧治具(押圧手段)
62、88、140、156、158:圧迫板
64、138、152、154:押圧面
66:本体 68:挟持部
70:角度調節片 72:挟持片
74:回動軸 76:アーム部
78:ねじりコイルバネ 80:把持部
82、84、106、108、112、114、122、126、128、
132、134:ピンチバルブ(流路開閉手段)
90:センサ 91:コントローラ
92:電磁弁 96、116:バイパス流路
102:バイパスチャンバ 120:動脈チャンバ
142:モータ 144:ピニオン
146:ラック 148:壁面
160:重り 162:ピストン
164:載置部 166:シリンダ
168:流体 170、172:蛇腹部材
174:配管 176、178:コック
184、186:コイルバネ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化器と、血液回路と、前記血液浄化器より上流側の血液回路に設けられた血液ポンプ、血液浄化器より下流側の血液回路に設けられた静脈チャンバとを含んでなる血液浄化装置において、
電解質液が収容されており、外部からの押圧により容易に圧潰して内部に収容された前記電解質液が排出される可撓性容器と、該可撓性容器を押圧するための所定面積の押圧面を備え、押圧により前記可撓性容器から所定量の前記電解質液を排出させる押圧手段とを含んでなる電解質液導入手段が、前記血液浄化器より上流側又は、血液浄化器より下流側で血液回路に接続されるとともに、該電解質液導入手段と血液回路の接続部分より上流側及び/又は下流側の血液回路に流路開閉手段が設けられ、前記電解質液導入手段から前記血液回路に導入される電解質液によって前記血液回路及び血液浄化器内の血液が回収されるようにしたことを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
電解質液導入手段と血液回路を接続する電解質液導入流路に、前記電解質液流路を開閉する流路開閉手段が更に設けられ、可撓性容器から所定量の電解質液が排出されたときに前記流路開閉手段が自動的に閉鎖されるようにされてなる請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
電解質液導入手段が血液浄化器と静脈チャンバの間で血液回路に接続されるとともに、静脈チャンバより下流側の血液回路に流路開閉手段が設けられてなる請求項1または2に記載の血液浄化器。
【請求項4】
血液ポンプより上流側の血液回路と、血液ポンプと血液浄化器の間の血液回路、とを結ぶバイパス流路が設けられるとともに、該バイパス流路の下流側に流路開閉手段が設けられ、該バイパス流路より上流側の血液回路に流路開閉手段が設けられてなる請求項1または2に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
バイパス流路において、流路開閉手段より上流側に血栓を捕捉しうる血液濾過網が設けられるとともに、該血液濾過網より上流側に流路開閉手段が設けられ、更に電解質液導入手段がバイパス流路と血液浄化器の間で血液回路に接続されるとともに、血液浄化器と静脈チャンバの間の血液回路に流路開閉手段が設けられてなる請求項4に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
電解質液導入手段が、バイパス流路より上流側の血液回路の流路開閉手段とバイパス流路の間で血液回路に接続されるとともに、該接続部分に近接して該接続部分とバイパス流路の間の血液回路に流路開閉手段が設けられ、バイパス回路と血液浄化器の間の血液回路に血栓を捕捉しうる血液濾過網が設けられてなる請求項4に記載の血液浄化装置。
【請求項7】
バイパス流路によりバイパスされる血液回路部分において、血液ポンプより下流側に血栓を捕捉しうる血液濾過網が設けられるとともに、電解質液導入手段が該血液濾過網と血液ポンプの間で血液回路に接続され、更に血液浄化器と静脈チャンバの間の血液回路に流路開閉手段が設けられてなる請求項4に記載の血液浄化装置。
【請求項8】
可撓性容器の内部に収容された電解質液の液圧がシャント内圧よりも低くなる位置に、該可撓性容器が配置されてなる請求項1〜7のいずれかに記載の血液浄化装置。
【請求項9】
押圧手段は、対向する押圧面を有し、バネの付勢力によって互いに圧接される一対の圧迫板と、該バネの付勢力に抗して一対のアーム部を接近させることにより前記一対の圧迫板を離間せしめるようにした把持部とを、少なくとも具備し、可撓性容器を該一対の圧迫板の間に挟みこむことにより、前記バネによる付勢力で可撓性容器に収容された電解質液を押し出すようにした請求工1〜8のいずれかに記載の血液浄化装置。
【請求項10】
押圧手段は、モータの作動力により可撓性容器に対して接近移動する圧迫板が具備されてなる請求項1〜8のいずれかに記載の血液浄化装置。
【請求項11】
押圧手段は、錘の重力により可撓性容器に対して接近移動する圧迫板が具備されてなる請求項1〜8のいずれかに記載の血液浄化装置。
【請求項12】
可撓性容器を押圧する圧迫板が複数個設けられてなる請求項8〜11のいずれかに記載の血液浄化装置。
【請求項1】
血液浄化器と、血液回路と、前記血液浄化器より上流側の血液回路に設けられた血液ポンプ、血液浄化器より下流側の血液回路に設けられた静脈チャンバとを含んでなる血液浄化装置において、
電解質液が収容されており、外部からの押圧により容易に圧潰して内部に収容された前記電解質液が排出される可撓性容器と、該可撓性容器を押圧するための所定面積の押圧面を備え、押圧により前記可撓性容器から所定量の前記電解質液を排出させる押圧手段とを含んでなる電解質液導入手段が、前記血液浄化器より上流側又は、血液浄化器より下流側で血液回路に接続されるとともに、該電解質液導入手段と血液回路の接続部分より上流側及び/又は下流側の血液回路に流路開閉手段が設けられ、前記電解質液導入手段から前記血液回路に導入される電解質液によって前記血液回路及び血液浄化器内の血液が回収されるようにしたことを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
電解質液導入手段と血液回路を接続する電解質液導入流路に、前記電解質液流路を開閉する流路開閉手段が更に設けられ、可撓性容器から所定量の電解質液が排出されたときに前記流路開閉手段が自動的に閉鎖されるようにされてなる請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
電解質液導入手段が血液浄化器と静脈チャンバの間で血液回路に接続されるとともに、静脈チャンバより下流側の血液回路に流路開閉手段が設けられてなる請求項1または2に記載の血液浄化器。
【請求項4】
血液ポンプより上流側の血液回路と、血液ポンプと血液浄化器の間の血液回路、とを結ぶバイパス流路が設けられるとともに、該バイパス流路の下流側に流路開閉手段が設けられ、該バイパス流路より上流側の血液回路に流路開閉手段が設けられてなる請求項1または2に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
バイパス流路において、流路開閉手段より上流側に血栓を捕捉しうる血液濾過網が設けられるとともに、該血液濾過網より上流側に流路開閉手段が設けられ、更に電解質液導入手段がバイパス流路と血液浄化器の間で血液回路に接続されるとともに、血液浄化器と静脈チャンバの間の血液回路に流路開閉手段が設けられてなる請求項4に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
電解質液導入手段が、バイパス流路より上流側の血液回路の流路開閉手段とバイパス流路の間で血液回路に接続されるとともに、該接続部分に近接して該接続部分とバイパス流路の間の血液回路に流路開閉手段が設けられ、バイパス回路と血液浄化器の間の血液回路に血栓を捕捉しうる血液濾過網が設けられてなる請求項4に記載の血液浄化装置。
【請求項7】
バイパス流路によりバイパスされる血液回路部分において、血液ポンプより下流側に血栓を捕捉しうる血液濾過網が設けられるとともに、電解質液導入手段が該血液濾過網と血液ポンプの間で血液回路に接続され、更に血液浄化器と静脈チャンバの間の血液回路に流路開閉手段が設けられてなる請求項4に記載の血液浄化装置。
【請求項8】
可撓性容器の内部に収容された電解質液の液圧がシャント内圧よりも低くなる位置に、該可撓性容器が配置されてなる請求項1〜7のいずれかに記載の血液浄化装置。
【請求項9】
押圧手段は、対向する押圧面を有し、バネの付勢力によって互いに圧接される一対の圧迫板と、該バネの付勢力に抗して一対のアーム部を接近させることにより前記一対の圧迫板を離間せしめるようにした把持部とを、少なくとも具備し、可撓性容器を該一対の圧迫板の間に挟みこむことにより、前記バネによる付勢力で可撓性容器に収容された電解質液を押し出すようにした請求工1〜8のいずれかに記載の血液浄化装置。
【請求項10】
押圧手段は、モータの作動力により可撓性容器に対して接近移動する圧迫板が具備されてなる請求項1〜8のいずれかに記載の血液浄化装置。
【請求項11】
押圧手段は、錘の重力により可撓性容器に対して接近移動する圧迫板が具備されてなる請求項1〜8のいずれかに記載の血液浄化装置。
【請求項12】
可撓性容器を押圧する圧迫板が複数個設けられてなる請求項8〜11のいずれかに記載の血液浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−119452(P2010−119452A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293529(P2008−293529)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]