説明

血液浄化装置

【課題】プライミング処理を簡単に行い、また輸液処理時の血液の漏れの可能性をなくす。
【解決手段】血液浄化装置1は、血液を通過させて浄化する血液浄化器10と、採血側端部11aから血液浄化器10に血液を供給し、血液浄化器10を通過した血液を返血側端部11bに戻す血液回路11と、所定の液体の容器60が接続可能で、容器60から血液回路11に液体を導入する液体導入流路12を有している。血液回路11には、液体導入流路12が着脱自在で当該液体導入流路12が接続されているときに開き取り外されているときに閉じる弁が付いたコネクタ30が設けられている。液体導入流路12は、血液回路11の採血側端部11a又は返血側端部11bの少なくともいずれかにも着脱可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液を浄化する血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液を透析する血液透析装置や、血液中の血漿を分離し交換する血漿交換装置などの血液浄化装置は、一般的に例えば図5に示すように血液浄化器100と、ポンプ101により採血側端部102aから血液浄化器100に血液を供給し、血液浄化器100を通過した血液を返血側端部102bに戻す血液回路102を有している。また、血液浄化装置は、容器103から血液回路102に生理食塩水などの液体を導入する輸液ライン104を有している(特許文献1参照)。輸液ライン104は、血液回路102の分岐路102cに対しコネクタ105などを用いて接続可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−178046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記輸液ライン104により、血液浄化処理に先立って血液回路102内に例えば生理食塩水を供給して血液回路102を浄化するプライミング処理や、血液浄化処理の後に血液回路102内に残存している血液を例えば生理食塩水で押し出し返血する返血処理、血液浄化処理中の例えば血圧低下時などの緊急時に血液回路102に例えば生理食塩水を供給する輸液処理などを行うことができる。
【0005】
しかしながら、上述の血液浄化装置では、輸液ライン104が血液回路102の分岐路102cに接続されている。このため、プライミング処理を行う際には、血液回路102の全区間に生理食塩水を供給するために、複数のクランプ106の操作により血液回路102における生理食塩水の流入部(血液回路102の分岐路102cの分岐部A)より上流側と下流側に切り替えて、生理食塩水を供給する必要がある。よって、クランプ106による煩雑な操作が必要になる。
【0006】
また、上述の血液浄化装置では、輸液ライン104が血液回路102の分岐路102cにコネクタ105により着脱可能になっている。このため、輸液処理を行う際に仮にコネクタ105部分にゆるみなどが生じると、患者の血液が漏れる可能性がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、プライミング処理を簡単に行うことができ、また輸液処理時の血液の漏れの可能性をなくすことができる血液浄化装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、血液を浄化する血液浄化装置であって、血液を通過させて浄化する血液浄化器と、採血側端部から前記血液浄化器に血液を供給し、前記血液浄化器を通過した血液を返血側端部に戻す血液回路と、所定の液体の容器が接続可能で、当該容器から前記血液回路に前記液体を導入する液体導入流路と、を有し、前記血液回路には、前記液体導入流路が着脱自在な弁付きコネクタが設けられ、前記弁付きコネクタの弁は、前記液体導入流路が接続されているときに開き取り外されているときに閉じるものであり、前記液体導入流路は、前記血液回路の採血側端部又は返血側端部の少なくともいずれかに着脱可能である。
【0009】
本発明によれば、弁付きコネクタが血液回路に設けられ、液体導入流路がその弁付きコネクタに着脱でき、さらに血液回路の採血側端部又は返血側端部に着脱できるので、プライミング処理時に液体導入流路を採血側端部又は返血側端部に接続し、液体を血液回路に流すことができる。こうすることにより、一度の液体の流入で血液回路の採血側端部から返血側端部の全区間に液体を送ることができるので、プライミング処理を簡単に行うことができる。また、弁付きコネクタが血液回路上にあるので、血液回路には、従来のように液体導入流路の接続のための分岐路がなく、血液回路のプライミング処理を血液回路の全区間に亘って漏れなく十分に行うことができる。また、液体導入流路と血液回路との接続に弁付きコネクタを用いるので、血液回路の血液が漏れる可能性をなくすことができる。
【0010】
前記液体導入流路は、他のコネクタを介して前記採血側端部又は前記返血側端部の少なくともいずれかに着脱可能であってもよい。
【0011】
前記血液回路は、前記採血側端部から前記血液浄化器に血液を供給する採血流路と、前記血液浄化器を通過した血液を前記返血側端部に戻す返血流路と、を有し、前記弁付きコネクタは、前記採血流路に設けられていてもよい。
【0012】
前記液体導入流路は、少なくともプライミング処理用の液体の容器、返血処理用の液体の容器、輸液処理用の液体の容器を選択的に接続可能であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プライミング処理を簡単に行うことができ、また輸液処理時の血液の漏れの可能性をなくすことができるので、より使い易く安全性の高い血液浄化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】血液浄化装置の構成の概略を示す模式図である。
【図2】弁付きコネクタの構成の概略を示す説明図である。
【図3】液体導入流路が接続された状態の弁付きコネクタの構成の概略を示す説明図である。
【図4】血液回路の採血側端部に液体導入流路が接続された状態の血液浄化装置を示す説明図である。
【図5】改良前の血液浄化装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る血液浄化装置1の構成の概略を示す説明図である。
【0016】
血液浄化装置1は、図1に示すように例えば血液を通過させて浄化する血液浄化器10と、採血側端部11aから血液浄化器10に血液を供給し、血液浄化器10を通過した血液を返血側端部11bに戻す血液回路11と、血液回路11に着脱可能な液体導入流路12を有している。
【0017】
血液浄化器10は、例えば中空糸膜や吸着材を内蔵するものであり、通過する血液から目的に応じて所定の物質を除去或いは分離して血液を浄化できる。
【0018】
血液回路11は、例えば患者に穿刺される針部を付ける採血側端部11aから血液浄化器10に通じる採血流路20と、血液浄化器10から、針部を付ける返血側端部11bに通じる返血流路21を有している。採血流路20と返血流路21は、例えばチューブにより構成されている。採血流路20には、例えば液体導入流路12が着脱可能な弁付きコネクタ30と、血液を圧送するポンプ31が設けられている。返血流路21には、クランプ32が設けられている。
【0019】
弁付きコネクタ30は、液体導入流路12が接続されているときに開き取り外されているときに閉じる弁を有している。例えば図2に示すように弁付きコネクタ30は、容器部40と、弁部41を有している。容器部40は、例えば対向する上下面と、側面の三か所に開口部40a、40b、40cが形成されている。上下面の開口部40a、40bには、採血流路20のチューブが気密に接続されている。また、弁部41は、例えばスワバブル弁(Swabable Valve)であり、容器部40の開口部40cのある側面に設けられ、弁箱50と、弁体51を有している。弁箱50は、例えば略筒状に形成され、他の部分よりも径が小さい先端開口部50aを有している。この先端開口部50aには、液体導入流路12のチューブを気密に挿入できる。弁体51は、弁箱50内に設置されている。弁体51は、例えば略筒状に形成され、中央に弁流路51aを有している。弁体51は、ゴムなどの柔軟性、伸縮性のある材質で形成されている。弁体51は、弁箱50内に設置された状態で、先端開口部50a周辺の先端部分が圧縮され、弁流路51aが閉鎖されている。これにより、弁が閉じた状態となっている。また、図3に示すように液体導入流路12のチューブが先端開口部50aに挿入されると、弁体51の先端部分が液体導入流路12のチューブに押されて変形し弁流路51aが開放される。これにより、弁が開いた状態となり、液体導入流路12と採血流路20が連通する。弁部41は、液体導入流路12のチューブが十分に装着されないと、弁が閉じた状態になる。
【0020】
液体導入流路12は、例えばチューブにより構成されている。図1に示すように液体導入流路12の一端部12aには、プライミング処理用の液体が入った容器、返血処理用の液体が入った容器、輸液処理用の液体が入った容器などの複数の容器60を接続可能なコネクタ61が設けられている。液体導入流路12の他端部12bは、弁付きコネクタ30に着脱可能であり、また、図4に示すようにメス型のコネクタ62を介して採血側端部11a又は返血側端部11bに着脱可能である(図4は、採血側端部11aに接続された状態を示す)。コネクタ62は、両側がメス型になっており、オス型の液体導入流路12の他端部12bと採血側端部11aを両側から挿入して気密に接続できる。液体導入流路12には、その他例えばクランプ63と点滴筒64が設けられている。
【0021】
次に、以上のように構成された血液浄化装置1の動作を説明する。例えばプライミング処理時には、図4に示すように液体導入流路12の一端部12aに、プライミング処理用の生理食塩水などの液体が入った容器60が接続され、他端部12bがコネクタ62を介して採血流路20の採血側端部11aに接続される。次に、クランプ63が開放され、容器60の液体が液体導入流路12を通じて採血側端部11aから採血流路20内に流入し、採血流路20、血液浄化器10、返血流路21を通って返血側端部11bから排出される。これにより、血液回路20が液体に置換され、血液回路20内が洗浄される。なお、この際、弁付きコネクタ30では、液体導入流路12が接続されていないため、弁が閉じられている。また、このプライミング処理時には、液体導入流路12の他端部12bが返血側端部11bに接続されてもよい。
【0022】
血液浄化処理時の血圧低下時などに行われる輸液処理時には、図1に示すように液体導入流路12の一端部12aに、輸液処理用の生理食塩水などの液体が入った容器60が接続され、他端部12bが採血流路20の弁付きコネクタ30に接続される。この際、液体導入流路12のチューブが弁箱50の先端開口部50aに挿入され、弁が開き、液体導入流路12と採血流路20が連通する。なお、このとき液体導入流路12のチューブの挿入が不十分であると、弁が閉じたままになる。次に、クランプ63が開放され、容器60の液体が液体導入流路12を通じて弁付きコネクタ30から採血流路20内に導入される。これにより、血液回路20の血液に液体が供給され、例えば血圧の上昇が図られる。輸液処理の終了時には、クランプ63が閉じられる。
【0023】
返血処理時には、例えば図1に示すように血液浄化処理時に弁付きコネクタ30に接続されていた液体導入流路12が取り外される。これにより弁付きコネクタ30の弁が閉じられる。次に、図4に示すように液体導入流路12の一端部12aに、返血処理用の生理食塩水などの液体が入った容器60が接続され、他端部12bがコネクタ62を介して採血流路20の採血側端部11aに接続される。次に、クランプ63が開放され、容器60の液体が液体導入流路12を通じて採血側端部11aから採血流路20内に流入し、採血流路20、血液浄化器10、返血流路21を通って返血側端部11bから患者に送られる。これにより、血液回路20に残存している血液が液体により押されて患者に戻される。
【0024】
以上の実施の形態によれば、弁付きコネクタ30が血液回路11に設けられ、液体導入流路12が弁付きコネクタ30に着脱でき、さらに血液回路11の採血側端部11a又は返血側端部11bに着脱できる。このため、プライミング処理時に液体導入流路12を採血側端部11a又は返血側端部11bに接続し、液体を血液回路11の採血側端部11aから返血側端部11bまで流すことができる。こうすることにより、一度の液体の流入で血液回路11の全区間に液体を送ることができるので、プライミング処理を簡単に行うことができる。また、弁付きコネクタ30が血液回路11上にあるので、血液回路11には、従来のように液体導入流路12の接続のための分岐路がなく、血液回路11のプライミング処理や返血処理を血液回路11の全区間に亘って漏れなく十分に行うことができる。また、液体導入流路12と血液回路11との接続に弁付きコネクタ30を用いるので、例えば当該接続が不十分の場合には、弁が閉じた状態となり、血液回路11の血液が漏れる可能性をなくすことができる。
【0025】
液体導入流路12は、コネクタ62を介して採血側端部11a又は返血側端部11b に着脱可能であるので、例えば従来の液体導入流路12と採血側端部11a又は返血側端部11bの形状を変えずにそのまま利用できる。
【0026】
弁付きコネクタ30は、採血流路20に設けられているので、血液回路11の血液浄化器10よりも上流側に液体を導入できる。これにより、例えば血液回路11に導入された液体が直ちに患者内に入ることを防止し、気泡混入などの緊急時などには液体の体内への導入を阻止することができる。また、液体導入流路12は、少なくともプライミング処理用の液体、返血処理用の液体、輸液処理用の液体の各容器60を選択的に接続可能であるので、これらの処理を適切に行うことができる。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0028】
例えば以上の実施の形態で記載した血液回路11や液体導入流路12の構成は、これに限られるものではなく、回路や流路に必要に応じてドリップチャンバや圧力センサなどの他の部材が設けられていてもよい。また、血液浄化器10には、血液浄化の目的に応じて血液浄化器10に対して液体を導入又は排出する分岐回路が接続されていてもよい。また、血液回路11の弁付きコネクタ30も他の構造のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、プライミング処理を簡単に行い、また輸液処理時の血液の漏れの可能性をなくす際に有用である。
【符号の説明】
【0030】
1 血液浄化装置
10 血液浄化器
11 血液回路
11a 採血側端部
11b 返血側端部
12 液体導入流路
12a 一端部
12b 他端部
20 採血流路
21 返血流路
30 弁付きコネクタ
31 ポンプ
32 クランプ
60 容器
61 コネクタ
62 コネクタ
63 クランプ
64 点滴筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を浄化する血液浄化装置であって、
血液を通過させて浄化する血液浄化器と、
採血側端部から前記血液浄化器に血液を供給し、前記血液浄化器を通過した血液を返血側端部に戻す血液回路と、
所定の液体の容器が接続可能で、当該容器から前記血液回路に前記液体を導入する液体導入流路と、を有し、
前記血液回路には、前記液体導入流路が着脱自在な弁付きコネクタが設けられ、
前記弁付きコネクタの弁は、前記液体導入流路が接続されているときに開き取り外されているときに閉じるものであり、
前記液体導入流路は、前記血液回路の採血側端部又は返血側端部の少なくともいずれかに着脱可能である、血液浄化装置。
【請求項2】
前記液体導入流路は、他のコネクタを介して前記採血側端部又は前記返血側端部の少なくともいずれかに着脱可能である、請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記血液回路は、
前記採血側端部から前記血液浄化器に血液を供給する採血流路と、
前記血液浄化器を通過した血液を前記返血側端部に戻す返血流路と、を有し、
前記弁付きコネクタは、前記採血流路に設けられている、請求項1又は2に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記液体導入流路は、少なくともプライミング処理用の液体の容器、返血処理用の液体の容器、輸液処理用の液体の容器を選択的に接続可能である、請求項1〜3のいずれかに記載の血液浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−194122(P2011−194122A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66206(P2010−66206)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000116806)旭化成クラレメディカル株式会社 (133)
【Fターム(参考)】