説明

血清プロテオミクスシステムと関連する方法

プロテオミクス分析の方法を提供する。例えば1つの実施形態では、ペプチドの同定及び配列決定の方法は、少なくとも部分的にペプチドを単離するために対象ペプチドを含む生物サンプルを分画すること、ペプチドのマススペクトルを得ること、及び、複数の離散的衝突エネルギーそれぞれについて複数のペプチドフラグメントを形成するために、1の離散時間において複数の離散衝突エネルギーでペプチドを衝突室中に加速することを含むことができる。更に該方法は、複数の離散的衝突エネルギーそれぞれについて複数のペプチド断片から複数の断片化マススペクトルを得ること、それぞれの離散的衝突エネルギーからのひとつの離散的衝突エネルギーマススペクトル、及び複数の離散的衝突エネルギーマススペクトルを形成するために、複数の離散的衝突エネルギーそれぞれからの複数の断片化マススペクトルを集計すること、ペプチドの最終的なマススペクトルを形成するために、複数の離散的衝突エネルギーマススペクトルを集計すること、及び、最終的なマススペクトルからペプチドに対応するアミノ酸配列を同定することを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権データ
本出願は、2006年12月26日に出願された米国仮出願第60/877,209号の利益を主張する。この出願は、参照することにより全体が本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本発明は生物サンプルからのペプチドの単離と同定に関する。従って、本発明はバイオテクノロジー、化学及び他の健康科学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
プロテオミクスは、構造と機能における多くの問題に特定の焦点を当てたタンパク質の大規模研究に関連する。タンパク質を研究することは難しいと認められており、特にこのような大規模な研究は困難である。このような困難の原因のひとつは、異なったタイプの細胞間や、異なった生物学的相互作用を発揮する同じタイプの細胞間でのタンパク発現における高い変動性である。更に、選択的スプライシング又は翻訳後修飾によって一つの遺伝子から多くのタンパク質が発現される。ヒトでは、ヒトゲノム中の約2万5000のコーディング遺伝子から50万個以上のタンパク質が発現すると推定されている。ひとつの生物サンプルに存在するかもしれないそのような莫大な数のタンパク質について考えると、一つのサンプル中又は多くのサンプルにわたって単一のペプチド又はタンパク質を調べることは難しい課題である。
【0004】
特に困難なプロテオミクスの1つの例は、一般的な集団には存在しないのに、又は著しく異なった濃度で、医学的又は他の状況に起因して被験体に存在しているペプチドの位置や配列に関連する。また、そのようなペプチドは、生物サンプル中で非常に低い量で存在し、その結果、更にペプチドの同定が困難となる。多くの場合、ペプチドが未知であるために、この調査の複雑さが更に悪化する。従って、調査のひとつは、病気を仲介、診断又は予測するそれらの因子を見つける目的で、調査する被験体からの生物サンプルとコントロールグループからの生物サンプルとの間のペプチドの違いについて行われる。しかしながら、一度見つかれば、そのようなペプチドの違いは、特定の病気の診断又は予後検査につながり、その病気又はその病気による影響を最小限したり、取り除いたりするための、その後の医療措置につなげることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明はプロテオミクスのシステムと方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの実施形態では、例えば、異なった生物サンプルからの複数のマススペクトルを比較する方法、非生物学的ばらつきを補正するためのアプローチ後に量的に異なった質量イオンの位置を特定する方法、及びペプチドの同定の対象とする1つ以上のペプチドを生物サンプルから単離して配列を決定する方法が提供される。そのような方法には、複数の溶出物を形成する複数の生物サンプルをそれぞれ分画する方法、複数の溶出時間で複数の溶出物それぞれから複数のマススペクトルを得る方法、及び生物サンプル間で量的に異なっている対象の分子イオンピークを見つける方法が含まれてもよい。更に、その方法には、生物サンプル間でほぼ一致する内因性リファレンス分子や、対象ピークに実質的に類似する溶出時間と質量対電荷比を有する内因性リファレンス分子に対応するマススペクトルリファレンスピークの同定方法、及び内因性リファレンス分子のマススペクトルピークに対して対象ピークを正規化することによって複数の溶出物間における各生物サンプルの非生物学的ばらつきを補正する方法が含まれてもよい。更にその方法には、同時に生じる複数の衝突エネルギーを各々使用し、シングル累積娘フラグメントマススペクトルを形成するために平均化は行わずに複数のフラグメントイオンマススペクトルを集計する衝突誘起フラグメンテーション研究の実施、及びシングル・アライメントされたマススペクトル中の対象ピークに対応するペプチドを同定するために用いられるアミノ酸配列決定データを確立するための娘フラグメントマススペクトルの使用が含まれてもよい。
【0007】
本発明のさらなる実施形態では、その方法に、複数の溶出物がそれぞれ1つ以上のマススペクトル溶出時間アライメントピークを含むような複数の内因性アライメント分子に対応する複数のマススペクトル中の複数のマススペクトル溶出時間アライメントピークを同定すること、及び複数のマススペクトル溶出時間アライメントピークの少なくとも一部をアライメントすることによって複数のマススペクトルの少なくとも一部をアライメントすることが含まれてもよい。
【0008】
もうひとつの実施形態では、生物サンプルからのペプチドの単離方法と同定方法が提供される。そのような方法には、複数の溶出物を形成する複数の生物サンプルそれぞれを分画すること、複数の溶出時間における複数の溶出物それぞれからの複数のマススペクトルを得ること、及び複数の溶出物それぞれにおいて溶出した内因性アライメント分子に対応するマススペクトルアライメントピークを同定することが含まれてもよい。更にその方法には、複数の溶出物それぞれからのマススペクトルアライメントピークを並べることによって各溶出物からの複数のマススペクトルを補正すること、シングル・アライメントされたマススペクトルを形成するために複数のアライメントマススペクトルを集計すること、及びシングル・アライメントマススペクトル中の対象ピークに対応するペプチドを同定することが含まれてもよい。様々な技術が想定されるが、ひとつの実施形態では、複数のマススペクトルのアライメントには、更に視覚的な複数のマススペクトルのアライメントが含まれてもよい。更に、複数の生物サンプル中に存在する複数の生物分子それぞれの分画は、多くの方法、例えば、キャピラリー液体クロマトグラフィー(cLC)によって達成されてもよい。
【0009】
本発明の別の実施形態では、シングルマススペクトル中の対象ピークに対応するペプチドの同定には、更に、ペプチドを少なくとも部分的に単離するために対象ピークに関係するペプチドを含むひとつ以上の生物サンプルを分画すること、そのペプチドのマススペクトルを得ること、及び複数の離散的衝突エネルギーそれぞれに関して複数のペプチドフラグメントを形成するために、ある離散時間において複数の離散的衝突エネルギーでペプチドを衝突室中に加速することが含まれてもよい。更に、その方法には、複数の離散的衝突エネルギーそれぞれについて複数のペプチド断片から複数の断片化マススペクトルを得ること、各離散的衝突エネルギーからのひとつの離散的衝突エネルギーマススペクトル、及び複数の離散的衝突エネルギーマススペクトルを形成するために複数の離散的衝突エネルギーそれぞれからの複数の断片化マススペクトルを集計すること、そのペプチドについての最終的なマススペクトルを形成するために複数の離散的衝突エネルギーマススペクトルを集計すること、及び最終的なマススペクトルからペプチドに対応するアミノ酸配列を同定することが含まれてもよい。
【0010】
ある離散時間における複数の離散的衝突エネルギーで断片化マススペクトルを得ることにより、現在の技術を用いてこれまで可能であったものに比べてより大きなペプチドの配列決定及び同定が可能となる。1つの実施形態では、その離散時間はペプチドの溶出時間とほぼ等しく、言い換えれば、cLCカラムからペプチドが溶出するのにかかる時間とほぼ等しい。別の実施形態では、離散時間はペプチドの溶出時間以上である。更に別の実施形態では、離散時間は約30秒から約3分である。その上、サンプルとサンプル間の非生物学的ばらつきは、ペプチドの同定に悪影響を与え得る。従って、1つの実施形態では、その方法には、対象ピークに近接する内因性リファレンス分子に対応するマススペクトルリファレンスピークを同定すること、及び生物サンプル間の非生物学的ばらつきを補正するために複数の溶出物それぞれからの複数のマススペクトルをマススペクトルリファレンスピークに正規化することが、更に含まれてもよい。
【0011】
本発明は更に、ペプチドの配列決定の方法を提供する。例えば、ひとつの実施形態では、そのような方法には、少なくとも部分的にペプチドを単離するために対象ペプチドを含む生物サンプルを分画すること、そのペプチドのマススペクトルを得ること、及び複数の離散的衝突エネルギーそれぞれに関して複数のペプチドフラグメントを形成するために、ある離散時間において複数の離散衝突エネルギーによってペプチドを衝突チャンバー中に加速することが含まれてもよい。その方法には、更に、複数の離散的衝突エネルギーそれぞれに関して複数のペプチド断片から複数の断片化マススペクトルを得ること、各離散的衝突エネルギーから複数の離散的衝突エネルギーマススペクトル、ひとつの離散的衝突エネルギーマススペクトルを形成するために、複数の離散的衝突エネルギーそれぞれからの複数の断片化マススペクトルを集計すること、そのペプチドについての最終的なマススペクトルを形成するために複数の離散的衝突エネルギーマススペクトルを集計すること、及び最終的なマススペクトルからのペプチドに対応するアミノ酸配列を同定することが含まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1つの実施例によるキャピラリー液体クロマトグラフィーの溶媒勾配の溶出特性である。
【図2A】本発明の別の実施例によるクロマトグラフィー溶出時間のアラインメントに使用される一連の分子種の溶出特性である。
【図2B】本発明の別の実施例によるクロマトグラフィー溶出時間のアラインメントに使用される一連の分子種の溶出特性である。
【図3】本発明のまた別の実施例によるキャピラリー液体クロマトグラフィーの溶媒勾配の溶出特性である。
【図4】本発明の更なる実施例によるマススペクトル断片化パターンのグラフプロットである。
【図5】本発明のまた更なる実施例によるマススペクトル断片化パターンのグラフプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
主な用語の定義
本発明を説明及びクレームする際には、以下の定義に従って以下の用語が使用される。
【0014】
単数形の「a」、「an」及び「the」は、特に明記しない限り、複数形の指示対象物を含む。従って、例えば「a peptide」の対象物には、1つ以上のそのペプチドが対象物として含まれる。また「an antibody」の対象物には、1つ以上のその抗体が対象物として含まれる。
【0015】
本明細書では、「被験体」は薬剤組成の投与又は本発明の方法の利益を得ることができる哺乳動物を表す。被験体の例にはヒトを含み、また、ウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、ウサギ及び水生哺乳動物などの他の動物を含むことができる。
【0016】
本明細書では、「生物サンプル」は、被験体から採取された任意の生物学的物質を表すために使用できる。そのような物質には、血清、全血、リンパ液、尿、唾液、組織、糞、又はペプチド類を含む他の生物学的物質のどれもを含むことができる。
【0017】
本明細書では、「ペプチド」という用語は、1つのアミノ酸のカルボキシル基が別のアミノ酸のα‐アミノ基に結合した2つ以上のアミノ酸を含む天然分子又は合成分子を表すために使用できる。本発明のペプチドには長さの制限はなく、そのため「ペプチド」はポリペプチドとタンパク質を含むことができる。
【0018】
本明細書では、ペプチド類に関する「単離された」という用語は、物質が天然物である場合に、元の環境から取り出された物質を表す。例えば、生きている動物に存在する天然物のペプチドは単離されていないが、同じペプチドでも、自然のシステムの中で共存している物質のいくつか又は全てから分離しているものは単離されている。組成物は自然環境の一部分でないので、この単離されたペプチドは、単離されたままで組成物の一部となることができる。また「単離された」ペプチドには、組み換えDNA技術で合成又は生産された物質も含まれる。
【0019】
本明細書では、「非生物学的ばらつき」という用語は、生物サンプル間における検出可能な非生物学的なマススペクトルのどんな「ばらつき」も表す。例えば、この「ばらつき」には、サンプルの保管、cLCの前処理、cLC処理、MS法などに起因する「ばらつき」を含むことができる。
【0020】
本明細書では、「実質的に同一の存在量」という用語は、複数のサンプルそれぞれの物質について、実質的に同一のマススペクトルピークを発生させる複数のサンプルにおけるそれぞれの物質の存在量を表す。
【0021】
本明細書では、「実質的」という用語は、作用、特性、性質、状態、構造、要素又は結果について、完全な、又はほぼ完全な範囲又は程度を表す。例えば、「実質的に」囲まれた対象は、対象が完全に囲まれているか、又はほぼ完全に囲まれていることを意味する。場合によっては、絶対的完全性からの逸脱について正確に許容できる程度を特定の文脈によって決めることができる。しかし、一般的には、絶対的な、そして完全な成立性に類似するということは、あたかも絶対的な、そして完全な成立性が得られたかのように総合的に同様の結果を有するものである。作用、特性、性質、状態、構造、要素又は結果について、完全に、又はほぼ完全に欠如していると否定的な意味合いに使用しても「実質的に」の使用は同様に適切である。例えば、粒子を「実質的に含まない」組成物とは、粒子を完全に含まない組成物か、又は粒子を全く含まないのと同様の効果を有する、粒子をほぼ完全に含まない組成物である。言い換えれば、成分又は要素を「実質的に含まない」組成物とは、測定できるその効果がみられない限り、その要素を実際には含むことができる。
【0022】
本明細書では、「約」という用語は、望まれる結果に影響することなく、規定値を「少し上の」点、又は「少し下の」点とすることによって、数値範囲の境界点に弾力性を与えるために使用される。
【0023】
本明細書では、複数の要素、構造成分、組成成分及び/又は材料が、便宜上、一般的なリストに示されることがある。しかし、これらのリストでは、リスト中の各々のものは、別個の唯一のものとして個別に特定されていると解釈されるべきである。即ち、一般的なグループに提示され、それと反対の表示がないということのみを根拠にして、このようなリストの個々のものは同じリストの他のものと事実上の同等物であると解釈されるべきではない。
【0024】
本明細書では、濃度、量、及び他の数値データは、範囲を表す形式で表現又は提示できる。このような範囲を表す形式は単に便宜と簡潔さのために用いられるため、範囲の限界として明確に示された数値のみを含むのではなく、各数値とサブ範囲が明確に示していると思われる範囲に包含されるすべての個々の数値又はサブ範囲をも含んでいると柔軟に解釈されるべきであると理解される。例えば「約1〜約5」という数値範囲は、明確に示された数値である約1、約5のみを含むのではなく、示された範囲内の個々の数値及びサブ範囲をも含んでいると解釈されるべきである。即ち、この数値範囲に含まれるのは、2、3、4などの個々の数値と、1〜3、2〜4、3〜5などのサブ範囲や、1、2、3、4、5の一つ一つである。
【0025】
この同じ原理は、最小限又は最大限として1つの数値だけを示す範囲に適用される。更に、この解釈は範囲の幅や記載された特性にかかわらず適用されるべきである。
【0026】
発明の詳細な説明
本発明の実施形態は、生物サンプルからペプチドを単離及び同定するための技術を提供する。その技術の多くはサンプルからスクリーニング及び単離されるペプチドの数を非常に増加させ、同定及び配列決定されるペプチドのサイズを非常に大きくするために利用される。一般的に、本発明の1つの実施形態には、ペプチドの分離、ペプチド量について医学的、科学的に意味のある定量的な差の同定、及びペプチドの配列決定と同定が含まれる。ペプチドの分離、同定及び配列決定について本明細書に記載された技術は、単なる例示であることに注意すべきであり、本発明の範囲は制限されるべきでない。
【0027】
例えば、ペプチドの分離又は分画は、さまざまな技術で実施でき、どのような分離法も本発明の範囲内にあると考えられる。1つの実施形態では、ペプチドの分離は、キャピラリー液体クロマトグラフィー(cCL)によって達成される。cLCは移動相が液体であり、生物サンプルが充填カラムを通って移動するのに従ってペプチドの分離が起こる分離技術である。即ち、カラムを通るペプチドの移動速度の差異を生じさせる充填材と混合物中のペプチドの相互作用の違いによって分離が起こる。ペプチドを輸送する移動相は、ペプチドのサイズや、時には電荷の分布を含む化学的特性に対応した溶出時間でカラムから溶出するペプチドとともに溶出物としてカラムから出る。従って、溶出物は生物サンプル全体のうちのほとんどの部分の分画を表すこともあり、生物サンプルのほんの一部が分画される離散時間幅を表すこともある。いくつかの実施形態では、生物サンプルは、それぞれの離散的な溶出時間を持つ複数の溶出物に分画することができる。
【0028】
更に、cLC装置は非常に小さな直径のカラムを利用しているため、比較的少ない量の生物サンプルを処理できる。また場合によっては、比較的高い圧力を用いることができ、その技術は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と呼ばれる。
【0029】
またペプチドの同定は、当業者に公知のいずれの方法でも実施できる。1つの実施形態では、例えばcLCキャピラリーカラムからの溶出物は、その後の分析と同定のために質量分析計に直接つなぐことができる。マススペクトロメトリー(MS)は、イオン種の質量/電荷比(m/z)を測定するために使用される分析技術である。一般的に、溶出液中のペプチドは帯電した針を通り、移動相の酸性液は非常に微細な液滴中に噴霧される。この噴霧中の水と他の溶媒は、帯電したペプチドを残して急速に蒸発する。ペプチドは電荷を持っているので、電場又は磁場によってそれらをコントロールできる。これらのペプチドイオンは、質量検出チャンバーに移動する。そこでは、磁力又は電極によってパルスを印加され、又は誘起されて垂直方向にスリットを通り、飛行時間型(TOF)ドリフトチューブに入る。このイオンは、パルスから同様の運動エネルギーを受け、それらの質量に反比例する速度で進み、小イオンはより急速に動く。運動エネルギーの小さな違いはドリフトチューブ中のイオンミラーによって補正され、そのイオンは、反射されて、更に検出器に移動する。イオンが検出器に届くのに要する時間により、高精度な電荷質量比(m/z)が得られる。所定のペプチドの量は、質量分析計の検出器によって記録される所定のm/zのピークの大きさに比例する。ペプチドが対象であり、更に特性評価が求められる場合は、多くの場合、2つの質量分析計を結合することが必要である。これはタンデム質量分析、又は二次若しくは2セクター質量分析と呼ばれる。これによって、一次質量分析で確認された対象のペプチドイオンが、電圧によって最初の質量分析計から移動し、低レベルの不活性ガスを含むチャンバーを通って加速することを可能とする。この衝突チャンバーでは、イオンはランダムに1分子あたり平均1回の割合で生成したガスと衝突する。電圧の違いは加速割合と衝突エネルギーを決定する。衝突は優先的にペプチド結合を切断し、アミノ酸の間が壊された親ペプチドのイオン断片を作り出す。そして作られたその断片は2番目の質量分析計に移動する。ここで、それらは装置のフライトチューブに送られ、m/z比が測定される。この一連の断片によって、実質的にすべてのアミノ酸の間が切断されたイオン断片の完全セットが得られる。
【0030】
分子量に最も近い断片間の質量の違いは、失われたアミノ酸の質量を表す。従って、断片の全てによる十分なシグナルがあれば、親ペプチドのアミノ酸配列が決定できる。
【0031】
多くのプロテオミクスの方法で生じるであろう1つの問題は、生物サンプルの実施間での解析のばらつきに関連している。例えば、異なる日又は異なるカラムで実施したサンプルは溶出時間が異なることがある。そのようなばらつきはプロテオミクスの方法から集められた情報内容に影響を及ぼし得る。これらの問題を克服するために、今回、ピークアライメントの新しい形式を通じてそのようなばらつきを減少又は排除できることが発見された。例えば、1つの実施形態では、溶出時間を通して分画された多くの内因性リファレンス分子が同定できる。これらは比較的多量であり、cLCカラムからほぼ周期的に溶出されるグループにおいてテストされるすべての生物サンプルに存在する。異なった日に実施されたり、異なった生物サンプルに由来したり、又は異なったカラムで実施されたりしても、多くの溶出物にわたって調整された溶出時間によって、マススペクトルをアライメントする参照点として内因性アライメント分子を使用できる。いくらかの溶出物のマススペクトルをアライメントすることによって、ペプチドピークの発生ポイントは、他のサンプル溶出物中と同じ種でアライメントされ、その結果精度が高くなるのでマススペクトルから得られる情報内容を増やすことができる。
【0032】
また、いくつかの実施形態では、内因性アライメント分子のピークの中心をより正確に位置づけ、更に、アライメント処理の正確性を高めるためにマススペクトルを平滑化することは有益であるかもしれない。ガウス関数やその他のフィルター関数を含む公知の方法によって、この平滑化は達成できる。一旦、平滑化されると、記載のように、溶出時間にわたってマススペクトルをアライメントできる。
【0033】
マススペクトルのアライメントは、自動及び手動操作方法などの公知のいずれの技術によっても行うことができる。しかしながら1つの実施形態では、それらの間でより正確に一致する可能性が得られるように、マススペクトルを視覚的にアライメントすることが有用である。そのような視覚的なアライメントでは、MS装置に付随するソフトウェアは、マススペクトルの視覚的なイメージを作成できる。それは、異なったサンプルの同じ溶出区間のスペクトルを重ね合わせることができるように、ソフトウェア内で手動操作できる。スペクトルを重ね合わせることにより、自動で再現することが困難なサンプル間の違いを視覚的に調べることができる。そのような違いは、ひとつのサンプル中に存在するペプチドについては指標となるが、他のサンプル中のペプチドについての指標にはならない。
【0034】
生物サンプルを処理するときに生じ得る1つの問題は、時折みられるサンプル間の非生物学的なばらつきに関係する。一般的に、そのようなばらつきは溶出中のすべてのマススペクトルピークに影響を及ぼす。従って、任意のペプチドセットのスペクトルピークの全体的なレベルは、別に実行した溶出とはかなり異なる場合がある。そのようなばらつきが、間違って生物サンプル間の違いであるととらえられることがあり、その結果、プロテオミクス分析中の実際の重要データが分かりにくくなる。それを補正するために、対象のペプチドピークに近接する内因性リファレンス分子に対応するマススペクトルリファレンスピークの同定を行い、且つ、マススペクトルリファレンスピークを用いて各溶出中の複数のマススペクトルを正規化することによって、非生物学的なばらつきを明らかにできることが分かった。内因性リファレンス分子が、すべての生物サンプルにわたって高い値で比較的一定の量であれば、正確な正規化を可能とするために有益である。
【0035】
例えば、特定の医学的問題を有する個体群と、その医学的問題を有さない個体群の2つのグループからの試料に相当するマススペクトルについて、溶出時間のアライメントと、色によるコード化表示を行った後、量的に異なると思われるピークを決めるために、異なる溶出区間中のピークを調べることは可能である。また、いくつかの実施形態では、グループ間で違いはないが、量的に異なると思われる対象ピークの質量及び溶出時間に近似する分析された試料から生じるマススペクトルピークを使用することによって、プレ分析及び分析のばらつきを減少させることは有用である。これらの内にある内因性コントロールにより、このリファレンスピークと量的に異なると思われるピークを正規化(再スケール)することで、プレ分析及び分析のばらつきが補正できる。ほとんどのマススペクトルピークが、ひとつの試料の全体のマススペクトルにわたって比例的に表れるので、これは可能である。例えば、1個の試料が別の試料と比べてマススペクトルで表される量が少ない場合は、生物学的変化がある場合を除いて、その試料の大多数のピークは小さくなる。非生物学的なばらつきを減少させると、比較グループ間のペプチド量について、生物学的に調節された違いの同定がより簡単でより正確になる。
【0036】
MS分析によって量的に異なると特定されたペプチドは、更に、当業者に公知のいずれかの方法によって分析及び配列決定できる。1つの実施形態では、例えば、さらなる分析のために選択されるペプチドは、タンデムMS‐MSシステムによって処理できる。cLCを用いたペプチドの溶出には、オリジナルの生物サンプルが使用できる。引き続きcLC溶出物からタンパク質を単離するために、溶出物は、上記のように機能する最初のMSプロセスに直接導入することができる。次に、選択されたペプチドは、衝突セルの中へ加速し、上記のように不活性ガスと衝突し、ペプチド結合が壊れる。2番目のMSプロセスが最初のMSプロセスからの娘断片を分析し、その結果は、配列照合用タンパク質データベースを検索するためのアミノ酸配列情報を提供するために使用される。
【0037】
ペプチドの断片化パターンは、ペプチドの衝突セルの中への加速度に比例してさまざまに変化する。従って、ペプチドの衝突エネルギーを高めることによって、低い衝突エネルギーでは壊れないで残っているペプチド結合を高い衝突エネルギーで壊すことができる。様々な先行技術は、ペプチドの断片化パターンを作成するために、衝突エネルギーの直線的で連続的な増加を利用している。しかしながら、ペプチド量が多くない場合は、そのような直線的で連続的な増加では、いずれの衝突エネルギーにおいてもペプチド断片を集めるための十分な時間はとれない。この技術を使用するペプチド配列決定は、このような限界があった。今回、配列決定できるペプチドのサイズを大きくし、アミノ酸配列の結果の信頼性を高めた新規の配列決定の方法が発見された。それにより、1つの実施形態では、離散時間において複数の衝突エネルギーでペプチドは衝突セル中に加速され、1つの衝突エネルギーが1回のcLC‐MSの実施に適用される。1つの実施形態では、離散時間はピークの溶出時間である。離散時間の衝突エネルギーを一定に維持することによって、一連のペプチド断片について多くのイオンを得ることができる。次に、2番目、3番目又は多くの衝突エネルギーを用いて試料の分析を再び実行し、これにより、はるかに高いイオン数とピークの大きさの追加フラグメントイオンを投入し、その後の配列決定と同定を改良する。このようにして、それぞれの離散的な衝突エネルギーにおいて、ペプチド断片から、多くのマススペクトル断片化パターンを得ることができる。
【0038】
従来の技術では、直線的で連続的な衝突エネルギー増加から得られたマススペクトル断片パターンを単一のマススペクトルパターンへ一体化するために、対象の溶出区間のピークのすべてのマススペクトルを平均化する方法を利用している。このような過程では、スペクトルを平均化することによって、ピークの大きさと不明瞭な細かい部分が小さくなる傾向がある。このアプローチはシグナルをノイズレベルにもしないし、対象とする振幅のピークの増幅もしない。いずれの衝突エネルギーレベルであっても十分な数のフラグメントイオンが不足しているので、スペクトルピークは更に不明確になる。今回発見されたことは、対象とする溶出区間のピーク全体にわたって累積されたいくらかのマススペクトル(例えば、1秒あたり1つ)を集計することと、各離散衝突エネルギーから得られる娘フラグメントイオンを集計することにより、劇的にスペクトルピークサイズを増幅し、ノイズレベルを低下させる簡略なマススペクトルを作り出すことである。言い換えれば、その離散的レベルの衝突エネルギーで複数のマススペクトル断片化パターンを得ることができるので、この手順により、集計の結果増幅される実質的にすべてのマススペクトルにわたって一貫したピークが生じる。一方、ノイズはよりランダムなので、システムのノイズはマススペクトル全体にわたって消される傾向にある。
【0039】
ペプチドの配列決定に用いる離散的な衝突エネルギーの数はペプチドの状況によって変わる。例えば、1つの実施形態では、3つ以上の離散的な衝突エネルギーを使用できる。もう1つの実施形態では、5つ以上の離散的な衝突エネルギーを使用できる。更に別の実施形態では、7つ以上の離散的な衝突エネルギーを使用できる。更なる実施形態では、10個以上の離散的な衝突エネルギーを使用できる。同様に、単一の離散的衝突エネルギーからマススペクトル断片データを集めるために用いられる離散時間は、ペプチドの性質によって変わる。ペプチドの正確な配列決定を促進するための十分なデータ収集を可能にするために離散時間は十分に長くすべきである。いくつかの実施形態では、その時間はピークの溶出に必要な長さの時間である。干渉性のピークが対象となるピークのすぐ前又は後に溶出する場合、これは時折短くされる。1つの特定の実施形態では、例えば、離散時間はcLC又は他の分離プロセスからのペプチドの溶出時間にほぼ等しいことがある。別の特定の実施形態では、離散時間はペプチドの溶出時間以上となることがある。更に別の実施形態では、離散時間はペプチドの溶出時間未満となることがある。更なる特定の実施形態では、離散時間は約30秒から約3分である。
【0040】
各離散衝突エネルギーの離散的衝突エネルギーマススペクトルの作成に続き、積算されたマススペクトルは、最終的なペプチドのマススペクトルを形成するために集計される。ペプチドの最終的なマススペクトルを形成するための離散的な衝突エネルギーマススペクトルの集計では、単一のスペクトルにそれぞれの離散的衝突エネルギーからのスペクトルピークを加える。その結果、ペプチド断片化パターンの正確なマススペクトルの図が形成される。記載された他の集計の操作と同様に、マススペクトルの信号雑音比(SN比)を増加させるためにこのプロセスが機能する。
【0041】
ペプチドの最終的なマススペクトルはペプチドのアミノ酸配列を決定するために利用できる。配列を決定するいずれの方法も本発明の範囲内にあると考えられる。1つの方法には、タンパク質データベースの利用が含まれる。そのようなデータベースの1つの例は、MASCOT(商標)MS/MS Ion Search databaseにある。このデータベースの使用についての考察は以下の実施例に含まれる。
【実施例】
【0042】
以下の実施例は、本発明のいくらかの実施態様について、理解をより明確にするために提供されるものであり、本発明を限定するものではない。
【0043】
実施例1:血清の収集
以下の実施例で使用される試料は、Maternal Fetal Medicine Units Network(MFMU)で実施された多施設試験の一部として収集されたものである。サンプルは自然早産のバイオマーカーであるペプチドを同定するために解析された。多様な人種と民族の妊娠期間24週までの単胎妊娠の女性約3000人を米国内の10施設に登録した。試験された女性はその後出産した。選択された特定のタンパク質を測定するために血清試料を妊娠期間24週と28週で収集した。
【0044】
2つのグループ(コードAとB)から約400の試料をプロテオミクス研究のために収集した。2つのグループのうち1番目には合併症の無い正期産である母親を組み入れ、2番目には早産(37週未満)の母親を組み入れた。妊娠24週目の来院と28週目の来院の両方からの試料を用いた。サンプルの妊娠結果及び他のすべての人口統計学的、医学的又は産科学的データに関してはプロテオミクス分析の間はブラインドとされた。
【0045】
実施例2:アセトニトリル沈殿
2倍量のHPLC分析グレードのアセトニトリル(400μL)を200μLの血清に加え、5秒間強くボルテックスし、室温で30分間放置した。実施例1のサンプルをIEC Micromax RF遠心機(Thermo Fisher Scientific,ウォルサム,MA)を用いて、12,000rpm、室温で10分間遠心した。分取した上清(550μL以下)を300μLのHPLC分析グレードの水を含む遠心チューブに移した。Labconco CentriVap Concentrator(Labconco Corporation,カンザスシティ,MO)で200μL以下に凍結乾燥した溶液を混合するためにそのサンプルを軽くボルテックスした。溶液からアセトニトリルを完全除去するために凍結乾燥の補助の前に等量の水を加えた。アセトニトリルは、タンパク濃度を測定するために用いるアッセイで混合できないのでこの操作が必要である。上清のタンパク濃度は、取扱説明書に従ってBio‐Rad社のマイクロタイタープレートタンパクアッセイを用いて測定した。4μgのタンパクを含む溶液を新しいマイクロ遠心チューブに移し、乾燥近くまで凍結乾燥した。サンプルをHPLCグレードの水で20μLにし、20μLの88%蟻酸を用いて酸性化した。
【0046】
アセトニトリル処理(ポスト沈殿)した血清試料(40μL)を、隔壁を持つポリプロピレンスナップキャップで閉じられた250μLの円錐形のポリプロピレンバイアル(Dionex Corporation,サニーベール,CA)に移し、4℃で保持されたFAMOS(商標)オートサンプラーの48穴プレートに置いた。FAMOSオートサンプラーによって、5μLの各血清サンプルは、0.1%の蟻酸で酸性化されたHPLC水を用いて40μL/minの流速で液体クロマトグラフガードカラムに注入された。詳細なオートサンプラーの設定を表1に示す。塩と他の不純物は酸性化水を用いてガードカラムから洗い流された。FAMOSオートサンプラーはカラムに注入する液の3倍量を吸い上げるので、サンプルの容量が限られている場合は手動でサンプルを注入する必要があった。これは、10μLのサンプルをガードカラムの上流のブランクループに注入し、サンプルの代わりに10μLのHPLC水を注入するようにFAMOSオートサンプラーをプラグラムすることによって達成された。血清試料は、円錐形のバイアルから注入されたようにガードカラムに注入され、脱塩された。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例3:マススペクトル分析のための液体クロマトグラフィーによる分離
実施例2で入手したサンプルを分画するためにキャピラリー液体クロマトグラフィー(cCL)を実施した。cLCには1mm(16.2μL)のマイクロボアガードカラム(Upchurch Scientific,オークハーバー,WA)及び内部に取り付けた15cm×250μm(内径(i.d))キャピラリーカラムを使用した。ガードカラムは乾燥充填され、キャピラリーカラムはPOROS Rl逆相媒体(Applied Biosystems,フレーミングハム,MA)を用いてスラリー充填された。カラム平衡化とクロマト分離は、水相(98%HPLCグレードHO、2%アセトニトリル、0.1%蟻酸)及び有機相(2%HPLC HO、98%アセトニトリル、0.1%蟻酸)を用いて実施された。分離は、95%水相で3分間のカラム平衡化をした後、1分間あたり2.75%の勾配で有機相を60%まで増加させ、そして、1分間あたり7%の勾配で有機相を95%濃度まで増加させた。より多くのサンプルの疎水性成分を溶出させるために95%有機相で7分間勾配を保持し、5分以上かけて、95%水相に戻し、カラムを平衡化するために2分間この濃度で保持した。図1は、このcLCの溶媒勾配溶出プロファイルを示す。すべての分離が5μL/minの流速で実施された。クロマトグラフィーは、FAMOSオートサンプラーを装備したLC Packings Ultimate Capillary HPLC pump system(Dionex Corporation,サニーベール,CA)を用い、QSTAR(商標)マススペクトル(Applied Biosystems,フォスターシティ,CA)に搭載されたAnalyst QS(商標)ソフトウェアによって制御した。
【0049】
実施例4:MS分析
マススペクトルのキャリブレーションは、内因性ではない合成ペプチドである[Glu]‐フィブリノペプチドB(Sigma,セントルイス,MO)を用いて、サンプルを流す前に毎日実行した。必要に応じて、信号雑音比を最適化して感度が最大になるように設定を調整した。
【0050】
cLCシステムは直接マススペクトルと結合した。キャピラリーカラムからの流出物はIonSpray source(商標)(Applied Biosystems)を通してQSTAR(商標)Pulsar i四重極直交飛行時間型質量分析計に直接注入した。データは、m/z値500〜2500で収集し、5分に開始して55分に終了した。開始時間のこの遅延をプログラムしたのは、流速5μl/minでは、ガードカラムから質量分析装置までサンプルが到達するのに5分以上かかり、有用なデータが5分の前には得られないためである。データ収集、加工、及び予備的なフォーマットは、BioAnalyst(商標)add‐ons(Applied Biosystems)に付属のAnalyst QS(商標)ソフトウェアを用いて行った。MS分析のための具体的な機器設定を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
実施例1の臨床グループAとBの両方の各試料について、cLC溶出の全期間を通して1秒毎にマススペクトルを得た。以前行ったヒト血清と一致していることを保証するために、全体のイオンクロマトグラムが報告されたそれぞれの被験体の血清を除去したcLC分画タンパクの溶出プロファイルを測定した。全体量が基準の50%未満又は基準の200以上であるか、3つのブロードなイオン強度領域の一連の特徴を欠いた試料は再施行し、分析のやり直しに不適当な試料があった場合は除外した。
【0053】
実施例5:ピークのアライメント
異なった日や異なったカラムで流したサンプルは溶出時間が異なることがあるので、溶出時間を均一化するためにピークアライメント作業をおこなった。クロマトグラムの最も有益な部分を通して約2分間隔で溶出される比較的多量の10個の内因性分子種が見つかった。抽出イオンクロマトグラム(XIC)機能は、所望のm/z範囲の溶出を視覚化するために使用された。10個の内因性分子種のそれぞれのXIC範囲を表3に示す。更に、クロマトグラム溶出時間アラインメントに用いられる個々の分子種の溶出プロファイルを図2A及び図2Bに示す。Gaussian Smooth機能を5回の各XICの平滑化に使用し、正確な溶出時間を決めるためのアライメントリファレンスピークの中心の位置を確実にした。すべての試料の溶出時間をアライメントした。そして、それぞれの試料についてこれらのアライメントリファレンスピークの溶出時間を決定した。次いで、これらの各溶出時間を、質量分析装置の設定選択機能を用いて2分幅の中心として使用した。ショースペクトル機能は、その2分幅のすべての1秒マススペクトルから1個の平均されたマススペクトルを作成するために使用された。その後、ソフトウェアは、サンプルグループ間の違いを視覚的に調べるために、異なった試料による同じ2分間隔の溶出のスペクトルを重ねるために使用した。
【0054】
【表3】

【0055】
実施例6:データの分析
Q‐Star(q‐TOF)質量分析装置をサポートするソフトウェアプログラムであるAnalyst(商標)は、16の個々の液体クロマトグラムの稼動を編集し、同様の溶出時間で稼働中のマススペクトルの比較を行うことができる。20分間以上溶出する実施例5で記載したように、10個の2分幅を定めたことでデータファイルサイズを扱いやすくした。その2分幅をまた実施例5に記載のようにアライメントした。通常、多くのペプチド種が存在していることから、選ばれた10個の2分溶出間隔のうち分析されるべき1番目が、2番目の2分幅であった。ペプチドは、1個のピーク又は質量電荷比1によって分かれるピークではなく、むしろ質量電荷比1未満によって分かれる個々のピークと共に、Gaussian型のピークのはっきりとしたクラスターとして現れる多価状態の特徴的な外観によって同定された。ひとつのグループの8名の被験体と、別のグループの8名の被験体とを含むグループを色でコード化して重ね合わせた。次にデータを目視で調べ、1つの色が強く出る分子種を記録した。この過程を追加の8症例と8対照例で繰り返した。更に検討すべき化合物については、データセットの少なくとも3分の2で、グループAとグループBの間と同じ位の見かけ上の差が認められることを必要とした。
【0056】
その後、2つの試験グループ間で異なるように見えた分子は、個別に調べられた。これらの候補の種はすべてペプチドであった。定量データを抽出する前に、マススペクトルについて、そのペプチドピークが同じm/zを持つことを調べ、更に、同じペプチドであると考えられることを保証するために同じ電荷を示すことを調べた。更に、2つのグループ間で大きな違いを示さなかった2番目に近いピークをリファレンスとして選択した。このピークは、対象となる候補ピークを正規化し、試料の加工、試料の注入、イオン化効率におけるばらつきを修正するために使用した。
【0057】
この分子種は、Analystソフトウェアによって「抽出」され、個々の各実施における個々の分子種の最大ピークを決定した。この特徴は、2分抽出幅に対する特定のm/zの調査を制限するものではなく、従ってcLC溶出時間をアライメントするのに用いられるピークは、更に、溶出プロファイルにおける位置が同じであり、同じ分子種がその都度選択されたことを保証するために使用することができる。
【0058】
各分子種のピークの高さは、その量の合理的な概算であると考えられた。各候補化合物の量を表に示し、各候補分子種の計算値は近接するリファレンス分子種との比で表した。ひとつの分子種が考えられたので、2つのグループ間のペプチド量について見込まれる違いを評価するために単変量統計分析が用いられた。
【0059】
実施例7:MS‐MS及びアミノ酸配列解析
MS‐MSキャリブレーションは、内因性ではない合成ペプチドである[Glu]‐フィブリノペプチドB(Sigma,セントルイス,MO)を用いて、サンプルを流す前に毎日実行した。必要に応じて、信号雑音比を最適化して感度が最大になるように設定を調整した。
【0060】
対象の候補マーカーを多量に有するピークについて、上記の実施例に記載のあらかじめ実行されたMSスペクトルを調べた。それらのサンプルについては、凍結した上清を溶解し、残りのサンプルの容量を測定した。利用可能なサンプルの容量の半分の88%蟻酸を加え、酸性化したサンプルを混合するために10秒間強くボルテックスした。容量が限られていたため、すべてのサンプルを手で注入してMS‐MS分析を行った。
【0061】
MS‐MS分析用のキャピラリー液体クロマトグラフィー(cLC)は、以下のように変更して実施例3に記載のサンプルに対して実施した。ペプチドは勾配の前半で溶出される分画を標的としたので、プログラムの一部は変更しなかった。しかしながら、MS‐MS分析においては、95%の有機相で保持する勾配時間を4分まで短くし、95%の水相にもどす勾配を5分ではなく3分にし、この濃度での保持時間を5分短くしてカラムを再平衡化した。図3は、このcLCの溶媒勾配溶出プロファイルを示す。すべての分離は、5μL/minの流速で実施した。
【0062】
飛行時間型(TOF)‐MS‐MS実験は、m/z比500〜2500についての1秒のTOF‐MSスキャンと、それに続く対象の質量での3秒のPositive Product Ionスキャンによって構成された。選択されたイオンは衝突セル中に移動し、不活性ガスと衝突してペプチド結合で寸断された。衝突断片は2番目のMSで「読まれ」た。
【0063】
最初の標的ペプチド(676.66m/z)は、中性親分子の質量の2026.98Daに相当する+3の電荷を有していた。2番目と3番目の標的ペプチド(856.85m/zと860.05m/z)はそれぞれ中性親分子の質量の4279.25Daと4295.25Daに相当する+5の電荷を有していた。Qlの解像度を「LOW」に設定すると断片化される四重極を通したm/z値が小幅になった。+5のピークに関しては、モノアイソトピックピークのわずかに上の同位元素の幅におけるピークを標的にすることによって十分な断片化が達成された。これらのTOF‐MS‐MSスペクトルについてピーク溶出時間を調べ、使用された衝突エネルギーを最適化した。機器の設定を表4と表5に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
実施例8:m/z676.66のピーク
実施例7に記載したm/z676.7のピークは、12.7〜13.7分でcLCシステムから溶出した。対象ピークと同じm/z範囲内にピークを有し、異なる溶出時間と荷電状態である分子種が認められた。これらの他の分子種の断片化を避けるために、m/z値70〜2000でのMS‐MS断片化データの収集は12.7分で開始し13.7分で終了した。1分の幅で60のスペクトルを収集できることから、1つのスペクトルは毎秒取った。MCA機能により、収集した60MS‐MSスペクトルすべての集計が可能となった。提供されたこれらの合計スペクトルは大幅にシグナルを増幅し、ノイズを減少させた。回転している衝突エネルギーにはMCAの機能を使うことができないので、0.5μgのサンプルは27、30、35及び40の衝突エネルギーの設定で4回実施した。異なった衝突エネルギーの使用により、断片化パターンにおいてより良好な配列カバー率となった。加えたデータの特徴は、これら4つのMCAスペクトルを一緒に集計するために使用され、その結果、ペプチド配列のほとんどにおいて良好な断片化カバー率で単一のMS‐MSスペクトルとなった。このスペクトルの閾値を手動で1.5に設定し、そのデータをセントロイドとした。セントロイドデータの閾値を3.0に設定した後に、そのデータリストをExcel(商標)に転送した。ソフトウェアが正しく荷電状態を割り当てたことを確認するために、スペクトルを目視で点検し、転送したデータリストと比較した。修正後、すべての分子種が+1の質量を持つようにそのデータリストについて式(I)を用いて変換した。
+1質量=m/z値*電荷−(電荷−1)・・・(I)
【0067】
不明確な電荷のピークはそのまま残した。この修正されたリストを未修正の質量リストに追加し、対応する強度の質量リストをMascot(商標)に提供するタブ区切りのテキストファイルとして転送した。Mascot(www.matrixscience.com)は、タンパク質/ペプチドを同定するための検索用MSデータベースである。Mascotは+1と+2の断片とのみマッチするので、すべての種を+1に変換することによりMascotを+3を超える電荷を持つペプチドとマッチさせた。テキストファイルを以下のフォーマットに編集した。
【0068】
SEARCH=MIS
REPTYPE=Peptide
BEGIN IONS
PEPMASS=676.6
tab delimited data list (m/z intensity)
END IONS
【0069】
このテキストファイルはtmpファイルとして保存され、MASCOT“MS/MS Ions Search”に提供された。哺乳動物の配列に検索を限定してNCBInrデータベースを検索した。酵素設定下では、ペプチドとMS/MSのトレランス:±0.8Da、+3ペプチド電荷により、“none”が選択された。そのデータはMascotの一般的形式であり、使用された機器はESI‐QUAD‐TOFであった。この結果を表6に示す。
【0070】
【表6】

【0071】
表6において、以下の通りである。
中性ペプチドのモノアイソトピック質量Mr(計算値):2026.9901
イオンスコア:52
期待値:0.86
一致(太字):最も強度な156のピークを用いた50/150のフラグメントイオン
【0072】
太字のピークは同定された配列と一致した。ペプチド配列(標準的なアミノ酸1文字表記を使用)は「qlglpgppdvpdhaayhpf」(SEQ ID:NO1)であった。
【0073】
実施例9:m/z856.8のピーク
m/z676.6のピークのように、実施例7に記載したm/z856.8のピークが1分の時間幅内に溶出した。m/z856.8のピークと同じm/z範囲には、他の分子種は認められなかったので、断片化データを収集するためにより広い時間幅を使用できた。衝突エネルギー(CE)40で開始した1.5分の幅を用い、その後、CE38、CE42及びCE45で2分の幅を用いた。実施例8に記載のようにMS‐MS断片化データはm/z70〜2000で収集された。しかしながら、サンプル容量に限りがあったため、CE40、CE42及びCE45では0.5μgを用いたが、CE38では0.4μgしか使用できなかった。これらの4つのMCAスペクトルを一緒に加えるために「追加データ」の特徴を使用し、ペプチド配列のほとんどをカバーする良好な断片化カバー率で単一のMS‐MSスペクトルが得られた。スペクトルを一度平滑化した後、このスペクトルの閾値を手動で2.0に設定し、そのデータをセントロイドとした。セントロイドデータの閾値を3.0に設定した後に、そのデータリストをExcel(商標)に転送した。ソフトウェアが正しく荷電状態を割り当てたことを確認するために、スペクトルを目視で点検し、転送したデータリストと比較した。修正後、すべての種が、リストされた+1質量を持つように式(I)を用いて手動でデータリストを変換した。不明確な電荷のピークはそのまま残した。修正したこのリストを未修正のリストに追加し、対応する強度の質量リストをタブ区切りのテキストファイルとして転送した。テキストファイルを以下のフォーマットに編集した。
【0074】
SEARCH=MIS
REPTYPE=Peptide
BEGIN IONS
PEPMASS=856.8
tab delimited data list (m/z intensity)
END IONS
【0075】
実施例8の記載と同じ設定を用いて、このテキストファイルをtmpファイルとして保存し、MASCOT“MS/MS Ions Search”に提供した。この結果を表7に示す。
【0076】
【表7】

【0077】
表7において、以下の通りである。
中性ペプチドのモノアイソトピック質量Mr(計算値):4279.1245
イオンスコア:0
期待値:3.8e+04
一致(太字):最も強度な274のピークを用いた47/424のフラグメントイオン
太字のピークはペプチド配列との一致を表す。このペプチドのアミノ酸配列は「nvhsagaagsrmnfrpgvlssrqlglpgppdvpdhaayhpf」(SEQ ID:NO2)であった。
【0078】
実施例10:m/z860.0のピーク
実施例7に記載したm/z860.0のピークが1分の時間幅内に溶出した。対象となるこのピークと同じm/z範囲内に他の種が認められなかったため、断片化データを収集するためにより広い時間幅を使用できた。衝突エネルギー(CE)40で開始した2分の幅を用い、その後、CE38、CE42及びCE45で3分の幅を用いた。実施例8及び9のようにMS‐MS断片化データはm/z70〜2000で収集された。サンプル容量に限りがあったため、それぞれの4回の実施のために0.25μgのタンパク質を注入し、この分子種の断片化試験を行った。「追加データ」の特性はこれらの4つのMCAスペクトルを一緒に集計するために使用され、ペプチド配列のほとんどをカバーする良好な断片化カバー率で単一のMS‐MSスペクトルが得られた。この分子種の断片化はm/z856.7と同様に見えたので、2つのスペクトルを重ね合わせたところ、図4及び5に示すように多くの断片に+16m/zの質量シフトが認められた。図5の破線ピークはm/z857.8からの断片化ピークであり、実線ピークはm/z860.0からのピークである。16m/zシフトを示すピークのすべてが配列中の1個のメチオニンのC末端側であり、一方、シフトを示さないピークのすべてがメチオニンのN末端側であった。このことは、m/z860.0の分子種が、そのメチオニンで酸化されるか、そうでなければ、アミノ酸配列がm/z857.8のピークと一致していることを強く示唆する。従って、このペプチドのアミノ酸配列は「nvhsagaagsrm(0)nfrpgvlssrqlglpgppdvpdhaayhpf」(SEQ ID:NO3)である。ここでm(O)は酸化されたメチオニンを表す。
【0079】
上記の構成と実施形態は本発明が例証する好適な実施例にすぎないことが理解される。本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、当業者は多くの変形と変更のアレンジを考案でき、添付のクレームは、そのような変形とアレンジメントを網羅することを意図する。従って、現時点で本発明の最も実用的で好適な実施例と考えられるものに関して詳細に細部まで本発明を上に説明したが、例えばサイズのばらつき、材料、形状、外形、機能及び操作方法、アセンブリ並びに使用を含むがこれには限定されない多くの改良点が、本明細書に示された原理と概念から逸脱することなしに作られることは当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なった生物サンプルの複数のマススペクトルを比較し、非生物学的ばらつきを補正した後に量的に異なった質量イオンの位置を特定し、ペプチド同定の対象とする1つ以上のペプチドを生物サンプルから単離して配列を決定する方法であって、
複数の溶出物を形成する複数の生物サンプルをそれぞれ分画すること;
複数の溶出時間で複数の溶出物それぞれの複数のマススペクトルを得ること;
生物サンプル間で量的に異なっている対象の分子イオンピークを見つけること;
生物サンプル間でほぼ一致する内因性リファレンス分子、及び対象ピークに実質的に類似する溶出時間と質量対電荷比を有する内因性リファレンス分子に対応するマススペクトルリファレンスピークを同定すること;
内因性リファレンス分子のマススペクトルピークに対して対象ピークを正規化することによって、複数の溶出物間における各生物サンプルの非生物学的ばらつきを補正すること;
同時に生じる複数の衝突エネルギーそれぞれを使用し、シングル累積娘フラグメントマススペクトルを形成するために平均化は行わずに複数のフラグメントイオンマススペクトルを集計する衝突誘起フラグメンテーションを検討すること;及び、
シングル・アライメントされたマススペクトル中の対象ピークに対応するペプチドを同定するために用いられるアミノ酸配列決定データを確立するための娘フラグメントマススペクトルを使用すること、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記生物サンプルが血液血清サンプルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の溶出物がそれぞれ1つ以上のマススペクトル溶出時間アライメントピークを含む複数の内因性アライメント分子に対応する複数のマススペクトル中の複数のマススペクトル溶出時間アライメントピークを同定すること;及び
複数のマススペクトル溶出時間アライメントピークの少なくとも一部をアライメントすることによって複数のマススペクトルの少なくとも一部をアライメントすること、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数のマススペクトルのアライメントが、マススペクトルアライメントピークをリファレンスとして用いた視覚的な複数のマススペクトルのアライメントを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記内因性アライメント分子が、複数の生物サンプルそれぞれにおいて実質的に同一の存在量であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数の生物サンプルをそれぞれ分画することが、キャピラリー液体クロマトグラフィーによって生物サンプルをそれぞれ分画することを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
シングルマススペクトル中の対象ピークに対応するペプチドの同定が、
少なくとも部分的にペプチドを単離するために、対象ピークに関係するペプチドを含むひとつ以上の生物サンプルを分画すること;
ペプチドのマススペクトルを得ること;
複数の離散的衝突エネルギーそれぞれについて複数のペプチドフラグメントを形成するために、1の離散時間において複数の離散的衝突エネルギーでペプチドを衝突室中に加速すること;
複数の離散的衝突エネルギーそれぞれについて複数のペプチド断片から複数の断片化マススペクトルを得ること;
それぞれの離散的衝突エネルギーからのひとつの離散的衝突エネルギーマススペクトル、及び複数の離散的衝突エネルギーマススペクトルを形成するために、複数の離散的衝突エネルギーそれぞれからの複数の断片化マススペクトルを集計すること;
ペプチドの最終的なマススペクトルを形成するために、複数の離散的衝突エネルギーマススペクトルを集計すること;
最終的なマススペクトルからペプチドに対応するアミノ酸配列を同定すること、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記離散時間が、ペプチドの溶出時間とほぼ等しいことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記離散時間が、ペプチドの溶出時間以上であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記離散時間が、ペプチドの溶出時間未満であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記離散時間が、約30秒〜約3分であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記内因性リファレンス分子が、複数の生物サンプルそれぞれにおいて実質的に典型的な存在量であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ペプチドの配列決定の方法であって、
少なくとも部分的にペプチドを単離するために対象ペプチドを含む生物サンプルを分画すること;
ペプチドのマススペクトルを得ること;
複数の離散的衝突エネルギーそれぞれについて複数のペプチドフラグメントを形成するために、1の離散時間において複数の離散衝突エネルギーでペプチドを衝突室中に加速すること;
複数の離散的衝突エネルギーそれぞれについて複数のペプチド断片から複数の断片化マススペクトルを得ること;
それぞれの離散的衝突エネルギーからのひとつの離散的衝突エネルギーマススペクトル、及び複数の離散的衝突エネルギーマススペクトルを形成するために、複数の離散的衝突エネルギーそれぞれからの複数の断片化マススペクトルを集計すること;
ペプチドの最終的なマススペクトルを形成するために、複数の離散的衝突エネルギーマススペクトルを集計すること;
最終的なマススペクトルからペプチドに対応するアミノ酸配列を同定すること、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記離散時間が、ペプチドの溶出時間とほぼ等しいことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記離散時間が、ペプチドの溶出時間以上であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記離散時間が、約30秒〜約3分であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記離散的衝突エネルギーが、3以上の離散的衝突エネルギーであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記離散的衝突エネルギーが、5以上の離散的衝突エネルギーであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記離散的衝突エネルギーが、7以上の離散的衝突エネルギーであることを特徴とする請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−526987(P2010−526987A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544087(P2009−544087)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/026346
【国際公開番号】WO2008/079407
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(592087647)ブリガム・ヤング・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRIGHAM YOUNG UNIVERSITY
【Fターム(参考)】