血球分析装置、血球分析方法及びコンピュータプログラム
【課題】血液検体中の正常な白血球の分布データを取得し、取得した分布データに基づいて炎症関連マーカの測定データを精度良く推定することができる血球分析装置、血球分析方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】複数の検体に含まれる白血球の所定の成分を検出する検出部を有し、該検出部の検出結果に基づいて白血球の分布データを取得する。分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶しておき、取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定し、推定された炎症関連マーカの測定データを出力する。
【解決手段】複数の検体に含まれる白血球の所定の成分を検出する検出部を有し、該検出部の検出結果に基づいて白血球の分布データを取得する。分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶しておき、取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定し、推定された炎症関連マーカの測定データを出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液検体中の白血球の分布データに基づいて、直接の測定対象ではない炎症関連マーカの測定データを精度良く推定することができる血球分析装置、血球分析方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、正常な状態の末梢血液中には、リンパ球、単球、好酸球、好中球、及び好塩基球の5種類の正常な白血球が所定の比率で存在している。血液中の白血球の分類計数を実行することにより、これらの成分の存在比率が正常であるか否かを判断することができる。
【0003】
すなわち、疾患が存在する場合、これらの白血球の分類比率が変動する、異常細胞が出現する等の現象が生じる。例えば細菌感染等により、生体内で炎症反応が生じている場合、幼若な白血球の比率が増加し、分葉核数の少ない分葉核球、稈状核球等の比率が増加する、いわゆるレフトシフトが生じる。したがって、白血球の分類計数を実行することにより、疾患が生じているか否かを診断する上での有効な情報を取得することができる。また、C反応性蛋白(CRP)等の炎症関連マーカの値も高くなる。
【0004】
例えば特許文献1には、正常な白血球を計数するとともに、幼若な白血球を計数することができる白血球分類計数方法が開示されている。また、特許文献2には、採取した血液を遠心分離することなく血液中のCRP濃度を測定する測定方法が開示されている。特許文献3には、白血球粒度パターンにおいて類似検索を可能とする類似パターン検索装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006−91024号公報
【特許文献2】特許第3780599号公報
【特許文献3】WO2005/050479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1乃至3では、正常な白血球を計数する機構とともに、別途免疫学的測定方法によってCRPを測定する必要が生じ、そのための試薬、装置等が必要となる。もちろん1台の装置でCRP測定と白血球測定とを実行することが可能な装置も販売はされているが、CRP測定用の免疫測定用試薬が必要となる点では変わりはない。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、血液検体中の正常な白血球の分布データを取得し、取得した分布データに基づいて炎症関連マーカの測定データを精度良く推定することができる血球分析装置、血球分析方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために第1発明に係る血球分析装置は、複数の検体に含まれる白血球の所定の成分を検出する検出部を有し、該検出部の検出結果に基づいて白血球の分布データを取得する血球分析装置において、前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶する相関関係情報記憶手段と、取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定する炎症関連マーカ推定手段と、推定された炎症関連マーカの測定データを出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、第2発明に係る血球分析装置は、第1発明において、取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類するカテゴリ分類手段を備え、前記相関関係情報記憶手段は、分類されたカテゴリごとに含まれる前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶するようにしてあることを特徴とする。
【0009】
また、第3発明に係る血球分析装置は、第2発明において、取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換する変換手段を備え、前記相関関係情報記憶手段は、変換された分布データ及び炎症関連マーカの測定データを重回帰分析した結果として前記相関関係情報を記憶するようにしてあり、前記炎症関連マーカ推定手段は、変換された分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定するようにしてあることを特徴とする。
【0010】
また、第4発明に係る血球分析装置は、第3発明において、前記相関関係情報記憶手段は、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて算出された、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを前記相関関係情報として記憶するようにしてあり、前記炎症関連マーカ推定手段は、取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰関数hに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(1)により算出するようにしてあることを特徴とする。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(1)
【0011】
また、第5発明に係る血球分析装置は、第3発明において、前記相関関係情報記憶手段は、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて線形重回帰分析を実行して算出された重回帰係数c0、ciを前記相関関係情報として記憶するようにしてあり、前記炎症関連マーカ推定手段は、取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰係数c0、ciに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(2)により算出するようにしてあることを特徴とする。
【0012】
【数1】
【0013】
また、第6発明に係る血球分析装置は、第1乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれかであることを特徴とする。
【0014】
また、第7発明に係る血球分析装置は、第1乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記炎症関連マーカはC反応性蛋白であり、推定された炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであることを特徴とする。
【0015】
次に、上記目的を達成するために第8発明に係る血球分析方法は、複数の検体に含まれる白血球の所定の成分を検出し、検出結果に基づいて白血球の分布データを取得する血球分析装置で実行することが可能な血球分析方法において、前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶し、取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定し、推定された炎症関連マーカの測定データを出力することを特徴とする。
【0016】
また、第9発明に係る血球分析方法は、第8発明において、取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類し、分類されたカテゴリごとに含まれる前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶することを特徴とする。
【0017】
また、第10発明に係る血球分析方法は、第9発明において、取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換し、変換された分布データ及び炎症関連マーカの測定データを重回帰分析した結果として前記相関関係情報を記憶し、変換された分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定することを特徴とする。
【0018】
また、第11発明に係る血球分析方法は、第10発明において、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて算出された、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを前記相関関係情報として記憶し、取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰関数hに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(3)により算出することを特徴とする。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(3)
【0019】
また、第12発明に係る血球分析方法は、第10発明において、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて線形重回帰分析を実行して算出された重回帰係数c0、ciを前記相関関係情報として記憶し、取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰係数c0、ciに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(4)により算出することを特徴とする。
【0020】
【数2】
【0021】
また、第13発明に係る血球分析方法は、第8乃至第12発明のいずれか1つにおいて、前記炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれかであることを特徴とする。
【0022】
また、第14発明に係る血球分析方法は、第8乃至第12発明のいずれか1つにおいて、前記炎症関連マーカはC反応性蛋白であり、推定された炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであることを特徴とする。
【0023】
次に、上記目的を達成するために第15発明に係るコンピュータプログラムは、複数の検体に含まれる白血球の所定の成分を検出する検出部を有し、該検出部の検出結果に基づいて白血球の分布データを取得する血球分析装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、前記血球分析装置を、前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶する相関関係情報記憶手段、取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定する炎症関連マーカ推定手段、及び推定された炎症関連マーカの測定データを出力する出力手段として機能させることを特徴とする。
【0024】
また、第16発明に係るコンピュータプログラムは、第15発明において、前記血球分析装置を、取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類するカテゴリ分類手段として機能させ、前記相関関係情報記憶手段を、分類されたカテゴリごとに含まれる前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶する手段として機能させることを特徴とする。
【0025】
また、第17発明に係るコンピュータプログラムは、第16発明において、前記血球分析装置を、取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換する変換手段として機能させ、前記相関関係情報記憶手段を、変換された分布データ及び炎症関連マーカの測定データを重回帰分析した結果として前記相関関係情報を記憶する手段として機能させ、前記炎症関連マーカ推定手段を、変換された分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定する手段として機能させることを特徴とする。
【0026】
また、第18発明に係るコンピュータプログラムは、第17発明において、前記相関関係情報記憶手段を、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて算出された、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを前記相関関係情報として記憶する手段として機能させ、前記炎症関連マーカ推定手段を、取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰関数hに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(5)により算出する手段として機能させることを特徴とする。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(5)
【0027】
また、第19発明に係るコンピュータプログラムは、第17発明において、前記相関関係情報記憶手段を、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて線形重回帰分析を実行して算出された重回帰係数c0、ciを前記相関関係情報として記憶する手段として機能させ、前記炎症関連マーカ推定手段を、取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰係数c0、ciに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(6)により算出する手段として機能させることを特徴とする。
【0028】
【数3】
【0029】
また、第20発明に係るコンピュータプログラムは、第15乃至第19発明のいずれか1つにおいて、前記炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれかであることを特徴とする。
【0030】
また、第21発明に係るコンピュータプログラムは、第15乃至第19発明のいずれか1つにおいて、前記炎症関連マーカはC反応性蛋白であり、推定された炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであることを特徴とする。
【0031】
第1発明、第8発明及び第15発明では、取得した分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶しておき、取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定し、推定された炎症関連マーカの測定データを出力する。他の装置等で測定する必要がある炎症関連マーカの測定データと、取得した白血球全体の分布データとの間の相関関係情報を算出して記憶しておくことにより、未知の白血球の分布データを取得した場合であっても、記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定することができる。したがって、炎症関連マーカの測定データを取得するための別の装置、試薬等を必要とせず、従来の血球分析装置の結果のみから、測定対象ではない炎症関連マーカの測定データを精度良く推定することができ、簡素な構成で安価な血球分析装置にて疾患の発生を早期に発見することが可能となる。
【0032】
第2発明、第9発明及び第16発明では、取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類し、分類されたカテゴリごとに含まれる白血球の分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶する。白血球の分布データと炎症関連マーカの測定データとの間で高い相関を示すカテゴリに基づいて相関関係情報を算出して記憶しておくことにより、炎症関連マーカの測定データをより精度良く推定することができる。
【0033】
第3発明、第10発明及び第17発明では、取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換し、変換された分布データ及び炎症関連マーカの測定データを重回帰分析した結果として相関関係情報を記憶しておく。変換された分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定する。取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換することにより、例えば疾患により生体内で炎症反応が生じている場合、幼若な白血球の比率が増加し、分葉核数の少ない細胞、稈状核球等の比率が増加する、いわゆるレフトシフトが生じる等の分布データ上の変化が大きい領域を選択して重回帰分析を行うことができ、効率良く相関関係情報を算出することができる。
【0034】
第4発明、第11発明及び第18発明では、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて算出された、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを記憶しておく。取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰関数hに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(7)により算出する。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(7)
【0035】
これにより、小領域の分布データに基づいて炎症関連マーカの測定データを精度良く推定することができる。
【0036】
第5発明、第12発明及び第19発明では、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて線形重回帰分析を実行して算出された、重回帰係数c0、ciを記憶しておく。取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰係数c0、ciに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(8)により算出する。
【0037】
【数4】
【0038】
取得した白血球の分布データと炎症関連マーカの測定データとの関係が線形であることを前提として重回帰分析を実行することにより、小領域の分布データに基づいて炎症関連マーカの測定データを精度良く推定することができる。
【0039】
第6発明、第13発明及び第20発明では、炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれかであることが好ましい。また、第7発明、第14発明及び第21発明では、炎症関連マーカはC反応性蛋白であり、推定した炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであることがより好ましい。
【発明の効果】
【0040】
上記構成によれば、他の装置等で測定する必要がある炎症関連マーカの測定データと、血球分析装置により取得した白血球の分布データとの間の相関関係情報を算出して記憶しておくことにより、未知の白血球の分布データに対して、記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定することができる。したがって、炎症関連マーカの測定データを取得するための別の装置、試薬等を必要とせず、従来の血球分析装置の結果のみから、測定対象ではない炎症関連マーカの測定データを精度良く推定することができ、簡素な構成で安価な血球分析装置にて疾患の発生を早期に発見することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本実施の形態では、血球の分類処理を実行する血球分析装置を一例とし、図面に基づいて具体的に説明する。
【0042】
図1は、本発明の実施の形態に係る血球分析装置の構成を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係る血球分析装置は、測定装置1と、測定装置1とデータ通信することが可能に接続されている演算表示装置2とで構成されている。
【0043】
測定装置1と演算表示装置2とは、図示しない通信線を介して接続されており、相互にデータ通信することにより、測定装置1の動作を制御し、測定装置1から出力された測定データを処理して分析結果を取得する。測定装置1と演算表示装置2とは、ネットワーク網を介して接続されていても良いし、一体として一つの装置を構成し、プロセス間通信等でデータの授受を行っても良い。
【0044】
測定装置1は、フローサイトメトリー法を用いて、血液中の白血球、網状赤血球等の特徴情報を検出して、検出結果を測定データとして演算表示装置2へ送信する。ここで、フローサイトメトリー法とは、測定試料を含む試料流を形成し、該試料流にレーザ光を照射することによって、測定試料中の粒子(血球)が発する前方散乱光、側方散乱光、側方蛍光等の光を検出し、これにより、測定試料中の粒子(血球)を検出する方法である。
【0045】
図2は、本発明の実施の形態に係る血球分析装置の測定装置1の構成を示すブロック図である。測定装置1は、装置機構部4と、測定試料の測定を実行する検出部5と、検出部5の出力に対するアナログ処理部6と、表示・操作部7と、上述のハードウェア各部の動作を制御する制御基板部9とを備えている。
【0046】
制御基板部9は、制御用プロセッサ及び制御用プロセッサを動作させるためのメモリを有する制御部91と、アナログ処理部6から出力された信号をデジタル信号に変換する12ビットのA/D変換部92と、A/D変換部92から出力されたデジタル信号を記憶するとともに、制御部91に出力するデータを選択する処理を実行する演算部93とを有している。制御部91は、バス94a及びインタフェース95bを介して表示・操作部7と接続され、バス94b及びインタフェース95cを介して演算表示装置2と接続されている。また、演算部93は、演算結果をインタフェース95d及びバス94aを介して制御部91に出力する。さらに制御部91は、演算結果(測定データ)を演算表示装置2へ送信する。
【0047】
装置機構部4には、試薬と血液とから測定試料を調製する試料調製部41が設けられている。試料調製部41は、白血球測定用試料、網状赤血球測定用試料、血小板測定用試料を調製する。
【0048】
図3は、本発明の実施の形態に係る試料調製部41の構成を模式的に説明するブロック図である。試料調製部41は、血液が所定量充填される採血管41aと、血液が吸引されるサンプリングバルブ41bと、反応チャンバ41cとを備えている。
【0049】
サンプリングバルブ41bは、図示しない吸引ピペットにより吸引された採血管41a内の血液を定量することが可能に構成されている。反応チャンバ41cは、サンプリングバルブ41bに接続されており、サンプリングバルブ41bにより定量された血液に所定の試薬と染色液とをさらに混合することが可能となるように構成されている。また、反応チャンバ41cは、検出部5に接続されており、反応チャンバ41cにおいて所定の試薬と染色液とが混合された測定試料を検出部5に流入するように構成されている。
【0050】
これにより、試料調製部41は、白血球測定用試料として、白血球が染色されるとともに赤血球が溶血された測定試料を調製することができる。また、網状赤血球測定用試料として、網状赤血球が染色された測定試料を調製することもできるし、血小板測定用試料として、血小板が染色された測定試料を調製することもできる。調製された測定試料は、シース液とともに後述する検出部5のシースフローセルに供給される。
【0051】
図4は、本発明の実施の形態に係る検出部5及びアナログ処理部6の構成を模式的に説明するブロック図である。図4に示すように、検出部5は、レーザ光を出射する発光部501と、照射レンズユニット502と、レーザ光が照射されるシースフローセル503と、発光部501から出射されるレーザ光が進む方向の延長線上に配置されている集光レンズ504、ピンホール505、及びPD(フォトダイオード)506と(シースフローセル503と集光レンズ504との間には図示しないビームストッパが配置されている)、発光部501から出射されるレーザ光が進む方向と交差する方向に配置されている集光レンズ507、ダイクロイックミラー508、光学フィルタ509、ピンホール510及びAPD(アバランシェフォトダイオード)511と、ダイクロイックミラー508の側方に配置されているPD(フォトダイオード)512とを備えている。
【0052】
発光部501は、シースフローセル503の内部を通過する測定試料を含む試料流に対して光を出射するために設けられている。照射レンズユニット502は、発光部501から出射された光を試料流に照射するために設けられている。また、PD506は、シースフローセル503から出射された前方散乱光を受光するために設けられている。なお、シースフローセル503から出射された前方散乱光により、測定試料中の粒子(血球)の大きさに関する情報を得ることができる。
【0053】
ダイクロイックミラー508は、シースフローセル503から出射された側方散乱光及び側方蛍光を分離するために設けられている。具体的には、ダイクロイックミラー508は、シースフローセル503から出射された側方散乱光をPD512に入射させるとともに、シースフローセル503から出射された側方蛍光をAPD511に入射させるために設けられている。また、PD512は、側方散乱光を受光するために設けられている。シースフローセル503から出射された側方散乱光により、測定試料中の粒子(血球)の核の大きさ等の内部情報を得ることができる。
【0054】
また、APD511は、側方蛍光を受光するために設けられている。染色された血球のような蛍光物質に光を照射すると、照射した光の波長より長い波長の光が発せられる。側方蛍光強度は染色度合いが高いほど強くなる。そのため、シースフローセル503から出射された側方蛍光強度を測定することによって血球の染色度合いに関する特徴情報を得ることができる。したがって、側方蛍光強度の差によって、白血球の分類その他の測定を行うことができる。PD506、512及びAPD511は、それぞれ受光した光信号を電気信号に変換して、増幅器61、62、及び63にて増幅して制御基板部9へ送信する。
【0055】
図5は、本発明の実施の形態に係る血球分析装置の演算表示装置2の構成を示すブロック図である。演算表示装置2は、従来の血球分析装置を構成する演算表示装置の機能に加えて、白血球の分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を取得する機能を有する。図5に示すように、演算表示装置2は、CPU(中央演算装置)21、RAM22、記憶装置23、入力装置24、表示装置25、出力装置26、通信インタフェース27、可搬型ディスクドライブ28、及び上述したハードウェアを接続する内部バス29で構成されている。CPU21は、内部バス29を介して演算表示装置2の上述したようなハードウェア各部と接続されており、記憶装置23に記憶されているコンピュータプログラム100に従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。RAM22は、SRAM、SDRAM等の揮発性メモリで構成され、コンピュータプログラム100の実行時にロードモジュールが展開され、コンピュータプログラム100の実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0056】
記憶装置23は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク)、SRAM等の揮発性メモリ、ROM等の不揮発性メモリ等で構成されている。記憶装置23に記憶されているコンピュータプログラム100は、プログラム及びデータ等の情報を記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体90から、可搬型ディスクドライブ28によりダウンロードされ、実行時には記憶装置23からRAM22へ展開して実行される。もちろん、通信インタフェース27を介してネットワークに接続されている外部のコンピュータからダウンロードされたコンピュータプログラムであっても良い。
【0057】
記憶装置23は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク)等で構成されている。記憶装置23は、測定装置1で取得した白血球の分布データを記憶する分布データ記憶部231、他の検査装置3で取得した炎症関連マーカの測定データを記憶する炎症関連マーカ測定データ記憶部232、及び相関関係に関する相関関係情報を記憶する相関関係情報記憶部233を備えている。CPU21は、分布データ記憶部231及び炎症関連マーカ測定データ記憶部232にそれぞれ記憶してある白血球の分布データ及び炎症関連マーカの測定データを分析することにより、白血球の分布データから炎症関連マーカの測定データを推定するための相関関係情報を算出する。なお、分布データ記憶部231、炎症関連マーカ測定データ記憶部232、及び相関関係情報記憶部233は記憶装置23に備えることに限定されるものではなく、外部のコンピュータに記憶しておき、通信インタフェース27を介して照会する構成であっても良い。また、演算表示装置2と同様の構成を備えた外部のコンピュータで相関関係情報を算出し、算出された相関関係情報を予め記憶装置23の相関関係情報記憶部233に記憶させておくようにしても良い。この場合には、相関関係情報の算出に必要な分布データ及び測定データを演算表示装置2の記憶装置23に記憶しておく必要が無く、CPU21による相関関係情報の算出処理を省略することができる。
【0058】
通信インタフェース27は内部バス29に接続されており、測定装置1と通信線を介して接続されることにより、データの送受信を行うことが可能となっている。すなわち、測定の開始を示す指示情報等を測定装置1へ送信し、測定データ等を受信する。
【0059】
入力装置24は、キーボード及びマウス等のデータ入力媒体である。表示装置25は、CRTモニタ、LCD等の表示装置であり、分析結果をグラフィカルに表示する。出力装置26は、レーザプリンタ、インクジェットプリンタ等の印刷装置等である。
【0060】
上述した構成の血球分析装置の測定装置1及び演算表示装置2にて、患者の血液を測定して、血液中に含まれている白血球をリンパ球、単球、好酸球、好中球、及び好塩基球に分類した場合、図6に示されるようなスキャッタグラムが作成されて表示装置25に表示される。図6は、白血球分類測定(DIFF測定)時のスキャッタグラムの例示図である。図6において、縦軸は側方蛍光強度を、横軸は側方散乱光強度を、それぞれ示している。以下、本実施の形態に係る血球分析装置で用いられる白血球の分類方法について説明する。
【0061】
本発明の実施の形態に係る血球分析装置においては、図6に示すようなスキャッタグラムを得ることができる。スキャッタグラムには、クラスタリング技術によって分類されたリンパ球が分布するリンパ球分布領域101、単球が分布する単球分布領域102、好酸球が分布する好酸球分布領域103、好中球が分布する好中球分布領域104、好塩基球が分布する好塩基球分布領域105が表示されている。そして、分類された血球を計数することにより、リンパ球、単球等の数を求めることができる。上述の白血球の分類、計数は、米国特許第5555196号公報に記載された方法によって行った。なお、上述の白血球の分類方法を実行するためのコンピュータプログラム及びコンピュータプログラムの実行に用いられるデータは、記憶装置23に事前に記憶されている。
【0062】
本発明者らは、各種の疾患と白血球の分布データの粒度パターンとの関係を抽出するべく重回帰分析をすることにより、白血球の分布データと、炎症関連マーカの測定データとの間で高い相関を示すことを発見した。したがって、従来の血球分析装置で取得した白血球の分布データと、他の検査装置で取得した炎症関連マーカの測定データとの間の相関関係を事前に求めておくことにより、白血球の分布データから炎症関連マーカの測定データを推定することができる。
【0063】
まず、白血球の分布データと、炎症関連マーカの測定データとの間の相関関係を求める手順について説明する。以下、実施の形態に係る演算表示装置2にて相関関係に関する相関関係情報を算出する場合について説明するが、相関関係情報を演算表示装置2にて算出することに限定されるものではなく、外部のコンピュータで算出した後、ネットワークを介して、あるいは可搬型記録媒体を介して取得しても良い。
【0064】
図7は、本発明の実施の形態に係る演算表示装置2のCPU21の相関関係に関する相関関係情報を算出する処理の手順を示すフローチャートである。演算表示装置2のCPU21は、記憶装置23の分布データ記憶部231に記憶してある白血球の分布データを読み出す(ステップS701)。
【0065】
CPU21は、他の方法、例えば他の検査装置で取得され、記憶装置23の炎症関連マーカ測定データ記憶部232に記憶してある炎症関連マーカの測定データを読み出し(ステップS702)、読み出した白血球の分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を算出する。
【0066】
具体的には、読み出した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換し(ステップS703)、変換された小領域ごとの分布データ及び読み出した炎症関連マーカの測定データに基づいて重回帰分析して(ステップS704)、相関関係に関する相関関係情報を算出する(ステップS705)。図8は、白血球の分布データを表示するスキャッタグラムに基づく小領域ごとの分布データへの変換方法の説明図である。
【0067】
図8の例では、スキャッタグラムをn×n(n=256)の各番地(i、j)に度数F(i、j)を割り当てたデータ群として表現している。取扱うデータの種類が多すぎる場合にはスキャッタグラムデータを圧縮することが好ましい。例えば、スキャッタグラムの番地を4つの番地ごとに一の番地(小領域)となるように変換する、すなわちスキャッタグラムをn/2×n/2に圧縮した場合、圧縮スキャッタグラムの各番地の度数G(i、j)は、式(9)のように表すことができる。
【0068】
【数5】
【0069】
例えば疾患により生体内で炎症反応が生じている場合、幼若な白血球の比率が増加し、分葉核数の少ない分葉核球、稈状核球等が増加する、いわゆるレフトシフトが生じる。このように、元の分布データを4つの番地からなる小領域ごとの分布データに変換することにより、データ数を圧縮することができ、相関関係情報を効率的に算出することができる。
【0070】
256×256の分布データを32×32の分布データに圧縮して重回帰分析を行う場合、CPU21は、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)(s=1024)を説明変数とし、及び取得した炎症関連マーカの測定データCk目的変数として、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを算出する。相関関係情報として重回帰関数hを算出することにより、CPU21が新たに白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxiを取得した場合、CPU21は、炎症関連マーカの推定測定データCを式(10)により算出することができる。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(10)
【0071】
もちろん、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)と、取得した炎症関連マーカの測定データCkとの間に線形の相関関係が存在すると仮定して、線形重回帰分析を実行しても良い。この場合、CPU21は、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)を説明変数とし、取得した炎症関連マーカの測定データCkを目的変数として線形重回帰分析を実行し、相関関係情報として重回帰係数c0、ciを算出する。重回帰係数c0、ciを算出することにより、CPU21が、新たに白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxiを取得した場合、CPU21は、炎症関連マーカの推定測定データCを式(11)により算出することができる。
【0072】
【数6】
【0073】
CPU21は、算出した相関関係情報を、記憶装置23の相関関係情報記憶部233に記憶する(ステップS706)。
【0074】
なお、取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類し、分類されたカテゴリごとに、分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶しても良い。分布データと炎症関連マーカの測定データとの間で高い相関を示すカテゴリに基づいて相関関係情報を算出して記憶しておくことにより、炎症関連マーカの測定データをより精度良く推定することができるからである。
【0075】
図9は、本発明の実施の形態に係る測定装置1の制御基板部9の制御部91及び演算表示装置2のCPU21の処理手順を示すフローチャートである。測定装置1の制御基板部9の制御部91は、測定装置1が起動されたことを検知した場合、初期化を実行し(ステップS912)、測定装置1各部の動作チェックを行う。また、演算表示装置2のCPU21も、演算表示装置2が起動されたことを検知した場合、初期化(プログラムの初期化)を実行し(ステップS901)、表示装置25にメニュー画面を表示する(ステップS902)。メニュー画面では、DIFF測定、RET測定、CBC測定の選択を受け付けること、測定開始指示及びシャットダウン指示を受け付けること等が可能である。本実施の形態では上記メニュー画面においてDIFF測定が選択された場合について、以下説明する。
【0076】
演算表示装置2のCPU21は、測定開始指示を受け付けたか否かを判断し(ステップS903)、CPU21が、測定開始指示を受け付けていないと判断した場合(ステップS903:NO)、CPU21は、ステップS904乃至ステップS909をスキップする。CPU21が、測定開始指示を受け付けたと判断した場合(ステップS903:YES)、CPU21は、測定開始を示す指示情報を測定装置1へ送信する(ステップS904)。測定装置1の制御基板部9の制御部91は、測定開始を示す指示情報を受信したか否かを判断し(ステップS913)、制御部91が、測定開始を示す指示情報を受信したと判断した場合(ステップS913:YES)、制御部91は、血液を収容している容器に貼付されているバーコードラベル(図示せず)をバーコードリーダ(図示せず)に読み取らせ、血液の識別情報(試料ID)を取得する(ステップS914)。制御部91が、測定開始を示す指示情報を受信していないと判断した場合(ステップS913:NO)、制御部91は、ステップS914乃至ステップS918をスキップする。
【0077】
制御部91は、取得した識別情報(試料ID)を演算表示装置2へ送信し(ステップS915)、演算表示装置2のCPU21は、識別情報(試料ID)を受信したか否かを判断する(ステップS905)。CPU21が、識別情報(試料ID)を受信していないと判断した場合(ステップS905:NO)、CPU21は、受信待ち状態となる。CPU21が、識別情報(試料ID)を受信したと判断した場合(ステップS905:YES)、CPU21は、記憶装置23を照会して記憶してある患者情報を取得し(ステップS906)、患者情報を測定装置1へ送信する(ステップS907)。これにより、分析対象となる検体が誰の血液であるか特定することができる。
【0078】
次に、測定装置1の制御基板部9の制御部91は、患者情報を受信したか否かを判断し(ステップS916)、制御部91が、受信していないと判断した場合(ステップS916:NO)、制御部91は、受信待ち状態となる。制御部91が、受信したと判断した場合(ステップS916:YES)、制御部91は、測定試料を調製するよう試料調製部41を制御した後、測定試料の測定処理を開始する(ステップS917)。具体的には、DIFF測定を実行し、検出部5及びアナログ処理部6を介して側方散乱光及び側方蛍光の受光強度に相当する電気信号が制御基板部9へ出力される。制御基板部9のA/D変換部92は、取得したアナログ信号を例えば12ビットのデジタル信号に変換し、演算部93は、A/D変換部92から出力されたデジタル信号に所定の処理を施して制御部91へ渡す。制御部91は、受け取った整数列情報を測定データとして、演算表示装置2へ送信する(ステップS918)。
【0079】
CPU21は、測定データを受信したか否かを判断し(ステップS908)、CPU21が、測定データを受信したと判断した場合(ステップS908:YES)、CPU21は、受信した測定データに基づいて解析処理を実行する(ステップS909)。CPU21が、測定データを受信していないと判断した場合(ステップS908:NO)、CPU21は、受信待ち状態となる。
【0080】
図10は、本発明の実施の形態に係る演算表示装置2のCPU21の図9のステップS909で実行する解析処理手順を示すフローチャートである。図10において、演算表示装置2のCPU21は、受信した測定データに基づいて分布データを作成し(ステップS1001)、分布データを患者情報に対応付けて記憶装置23の分布データ記憶部231に記憶する(ステップS1002)。CPU21は、図6に示すようなスキャッタグラムを作成し、白血球の分類結果として表示装置25に表示する(ステップS1003)。
【0081】
CPU21は、患者情報をキー情報として分布データ記憶部231に記憶してある分布データ及び相関関係情報記憶部233に記憶してある相関関係情報を読み出し(ステップS1004)、炎症関連マーカの測定データを推定し、記憶装置23の炎症関連マーカ測定データ記憶部232へ記憶する(ステップS1005)。CPU21は、推定された炎症関連マーカの測定データの表示指示を受け付けたか否かを判断する(ステップS1006)。
【0082】
CPU21が、表示指示を受け付けていないと判断した場合(ステップS1006:NO)、CPU21は、処理を図9のステップS910へ戻す。CPU21が、表示指示を受け付けたと判断した場合(ステップS1006:YES)、CPU21は、炎症関連マーカ測定データ記憶部232から炎症関連マーカ(例えばCRP)の測定データを読み出し(ステップS1007)、表示装置25に表示して(ステップS1008)、処理を図9のステップS910へ戻す。
【0083】
図9に戻って、演算表示装置2のCPU21は、シャットダウン指示を受け付けたか否かを判断し(ステップS910)、CPU21が、シャットダウン指示を受け付けていないと判断した場合(ステップS910:NO)、CPU21は、処理をステップS903へ戻し、上述した処理を繰り返す。CPU21が、シャットダウン指示を受け付けたと判断した場合(ステップS910:YES)、CPU21は、シャットダウンの指示情報を測定装置1へ送信する(ステップS911)。
【0084】
測定装置1の制御基板部9の制御部91は、シャットダウンの指示情報を受信したか否かを判断し(ステップS919)、制御部91が、シャットダウンの指示情報を受信していないと判断した場合(ステップS919:NO)、制御部91は、処理をステップS913へ戻し、上述した処理を繰り返す。制御部91が、シャットダウンの指示情報を受信したと判断した場合(ステップS919:YES)、制御部91は、シャットダウンを実行して(ステップS920)、処理を終了する。
【0085】
なお、分類された白血球分布データごとに、分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報が記憶されている場合には、血球分析装置において、分布データを複数のカテゴリに分類する処理が必要となる。これにより、分類されたカテゴリに対応する相関関係情報を用いて、炎症関連マーカの測定データを推定することができる。分布データを分類する手法として、自己組織化マップ等の手法を用いることができる。
【0086】
図11は、炎症関連マーカとしてC反応性蛋白(CRP)を採用し、自己組織化マップを用いて5×5のカテゴリに分類した白血球分布図の例示図である。図11の例では、最上段の左から右へ向かってクラス0、クラス1、クラス2、クラス3、クラス4とし、一段下がって次の段の左から右へ向かってクラス5、クラス6、・・・となるようにクラス分類し、最下段の左から右へ向かってクラス20、クラス21、クラス22、クラス23、クラス24となっている。例えばクラス8は、正常検体及び比較的炎症程度が低い検体が多く含まれるグループと考えられ、クラス6は、炎症程度の高い検体が多く含まれるグループと考えられる。
【0087】
図12及び図13は、それぞれクラス8、クラス6におけるCRPの実測値と推定値との相関を示すグラフである。図12及び図13では、縦軸に本実施の形態に係る血球分析装置での推定値を、横軸に実測値をとっている。また、推定値は、白血球のDIFF測定時の大きさが256チャンネル×256チャンネルの1つの分布データを大きさが4チャンネル×4チャンネルの32×32個の小領域に分割した場合の分布データを説明変数とし、稈状核球を目的変数として重回帰分析を実行して求めた重回帰関数を用いて推定している。図12及び図13に示すように、両者間の相関係数rはそれぞれ0.683、0.708であり、推定値と実測値との間で高い相関を示しており、臨床検査情報として利用することが可能であることが確認できた。
【0088】
さらに、ある時点の白血球の分布データと、それから数日後のCRPの測定データとの重回帰分析を行って得られた相関関係を用いることにより、現在の白血球の分布データから数日後のCRPの測定データを推定することも可能である。図14及び図15は、それぞれクラス8、クラス6におけるCRPの4〜7日後の実測値と推定値との相関を示すグラフである。図14では、縦軸に本実施の形態に係る血球分析装置での推定値を、横軸に実測値をとっている。図15では、横軸に本実施の形態に係る血球分析装置での推定値を、縦軸に実測値をとっている。
【0089】
図14及び図15に示すように、両者間の相関係数rはそれぞれ0.933、0.665であり、数日後のCRPの値を予測することも可能であることを示唆している。
【0090】
また、特徴強調フィルタにより分布データの特徴をより強調し、強調された分布データを5×5に分類し、各相関関係を求めても良い。このようにすることで、より精度良く桿状核球又は分葉核球の測定データの推定を行うことができる。特徴強調フィルタとしては、例えば分布データの単回帰分析結果を用いても良い。
【0091】
以上のように本実施の形態によれば、血球分析装置以外から取得した炎症関連マーカの測定データと、血球分析装置により取得した白血球の分布データとの間の相関関係情報を算出して記憶しておくことにより、未知の白血球の分布データに対して、記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定することができる。したがって、炎症関連マーカの測定データを取得するための別の装置、試薬等を必要とせず、従来の血球分析装置の結果のみから、測定対象ではない炎症関連マーカの測定データを精度良く推定することができ、簡素な構成で安価な血球分析装置にて疾患の発生を早期に発見することが可能となる。
【0092】
なお、上述の実施の形態では、分析結果を演算表示装置2の表示装置25で表示しているが、特にこれに限定されるものではなく、ネットワークを介して接続されている他のコンピュータが有している表示装置に表示させるものであっても良い。
【0093】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変形、置換等が可能であることは言うまでもない。例えば、炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれであっても良いし、炎症関連マーカがC反応性蛋白である場合、推定した炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施の形態に係る血球分析装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る血球分析装置の測定装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る試料調製部の構成を模式的に説明するブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る検出部及びアナログ処理部の構成を模式的に説明するブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る血球分析装置の演算表示装置の構成を示すブロック図である。
【図6】白血球分類測定(DIFF測定)時のスキャッタグラムの例示図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る演算表示装置のCPUの相関関係に関する相関関係情報を算出する処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】白血球の分布データを表示するスキャッタグラムに基づく小領域ごとの分布データへの変換方法の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る測定装置の制御基板部の制御部及び演算表示装置のCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態に係る演算表示装置のCPUの解析処理手順を示すフローチャートである。
【図11】炎症関連マーカとしてC反応性蛋白(CRP)を採用し、自己組織化マップを用いて5×5に分類した白血球分布図の例示図である。
【図12】クラス8におけるCRPの実測値と推定値との相関を示すグラフである。
【図13】クラス6におけるCRPの実測値と推定値との相関を示すグラフである。
【図14】クラス8におけるCRPの4〜7日後の実測値と推定値との相関を示すグラフである。
【図15】クラス6におけるCRPの4〜7日後の実測値と推定値との相関を示すグラフである。
【符号の説明】
【0095】
1 測定装置
2 演算表示装置
4 装置機構部
5 検出部
6 アナログ処理部
9 制御基板部
21 CPU
22 RAM
23 記憶装置
24 入力装置
25 表示装置
26 出力装置
27 通信インタフェース
28 可搬型ディスクドライブ
29 内部バス
90 可搬型記録媒体
91 制御部
92 A/D変換部
93 演算部
100 コンピュータプログラム
231 分布データ記憶部
232 炎症関連マーカ測定データ記憶部
233 相関関係情報記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液検体中の白血球の分布データに基づいて、直接の測定対象ではない炎症関連マーカの測定データを精度良く推定することができる血球分析装置、血球分析方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、正常な状態の末梢血液中には、リンパ球、単球、好酸球、好中球、及び好塩基球の5種類の正常な白血球が所定の比率で存在している。血液中の白血球の分類計数を実行することにより、これらの成分の存在比率が正常であるか否かを判断することができる。
【0003】
すなわち、疾患が存在する場合、これらの白血球の分類比率が変動する、異常細胞が出現する等の現象が生じる。例えば細菌感染等により、生体内で炎症反応が生じている場合、幼若な白血球の比率が増加し、分葉核数の少ない分葉核球、稈状核球等の比率が増加する、いわゆるレフトシフトが生じる。したがって、白血球の分類計数を実行することにより、疾患が生じているか否かを診断する上での有効な情報を取得することができる。また、C反応性蛋白(CRP)等の炎症関連マーカの値も高くなる。
【0004】
例えば特許文献1には、正常な白血球を計数するとともに、幼若な白血球を計数することができる白血球分類計数方法が開示されている。また、特許文献2には、採取した血液を遠心分離することなく血液中のCRP濃度を測定する測定方法が開示されている。特許文献3には、白血球粒度パターンにおいて類似検索を可能とする類似パターン検索装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006−91024号公報
【特許文献2】特許第3780599号公報
【特許文献3】WO2005/050479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1乃至3では、正常な白血球を計数する機構とともに、別途免疫学的測定方法によってCRPを測定する必要が生じ、そのための試薬、装置等が必要となる。もちろん1台の装置でCRP測定と白血球測定とを実行することが可能な装置も販売はされているが、CRP測定用の免疫測定用試薬が必要となる点では変わりはない。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、血液検体中の正常な白血球の分布データを取得し、取得した分布データに基づいて炎症関連マーカの測定データを精度良く推定することができる血球分析装置、血球分析方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために第1発明に係る血球分析装置は、複数の検体に含まれる白血球の所定の成分を検出する検出部を有し、該検出部の検出結果に基づいて白血球の分布データを取得する血球分析装置において、前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶する相関関係情報記憶手段と、取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定する炎症関連マーカ推定手段と、推定された炎症関連マーカの測定データを出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、第2発明に係る血球分析装置は、第1発明において、取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類するカテゴリ分類手段を備え、前記相関関係情報記憶手段は、分類されたカテゴリごとに含まれる前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶するようにしてあることを特徴とする。
【0009】
また、第3発明に係る血球分析装置は、第2発明において、取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換する変換手段を備え、前記相関関係情報記憶手段は、変換された分布データ及び炎症関連マーカの測定データを重回帰分析した結果として前記相関関係情報を記憶するようにしてあり、前記炎症関連マーカ推定手段は、変換された分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定するようにしてあることを特徴とする。
【0010】
また、第4発明に係る血球分析装置は、第3発明において、前記相関関係情報記憶手段は、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて算出された、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを前記相関関係情報として記憶するようにしてあり、前記炎症関連マーカ推定手段は、取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰関数hに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(1)により算出するようにしてあることを特徴とする。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(1)
【0011】
また、第5発明に係る血球分析装置は、第3発明において、前記相関関係情報記憶手段は、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて線形重回帰分析を実行して算出された重回帰係数c0、ciを前記相関関係情報として記憶するようにしてあり、前記炎症関連マーカ推定手段は、取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰係数c0、ciに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(2)により算出するようにしてあることを特徴とする。
【0012】
【数1】
【0013】
また、第6発明に係る血球分析装置は、第1乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれかであることを特徴とする。
【0014】
また、第7発明に係る血球分析装置は、第1乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記炎症関連マーカはC反応性蛋白であり、推定された炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであることを特徴とする。
【0015】
次に、上記目的を達成するために第8発明に係る血球分析方法は、複数の検体に含まれる白血球の所定の成分を検出し、検出結果に基づいて白血球の分布データを取得する血球分析装置で実行することが可能な血球分析方法において、前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶し、取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定し、推定された炎症関連マーカの測定データを出力することを特徴とする。
【0016】
また、第9発明に係る血球分析方法は、第8発明において、取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類し、分類されたカテゴリごとに含まれる前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶することを特徴とする。
【0017】
また、第10発明に係る血球分析方法は、第9発明において、取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換し、変換された分布データ及び炎症関連マーカの測定データを重回帰分析した結果として前記相関関係情報を記憶し、変換された分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定することを特徴とする。
【0018】
また、第11発明に係る血球分析方法は、第10発明において、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて算出された、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを前記相関関係情報として記憶し、取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰関数hに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(3)により算出することを特徴とする。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(3)
【0019】
また、第12発明に係る血球分析方法は、第10発明において、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて線形重回帰分析を実行して算出された重回帰係数c0、ciを前記相関関係情報として記憶し、取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰係数c0、ciに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(4)により算出することを特徴とする。
【0020】
【数2】
【0021】
また、第13発明に係る血球分析方法は、第8乃至第12発明のいずれか1つにおいて、前記炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれかであることを特徴とする。
【0022】
また、第14発明に係る血球分析方法は、第8乃至第12発明のいずれか1つにおいて、前記炎症関連マーカはC反応性蛋白であり、推定された炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであることを特徴とする。
【0023】
次に、上記目的を達成するために第15発明に係るコンピュータプログラムは、複数の検体に含まれる白血球の所定の成分を検出する検出部を有し、該検出部の検出結果に基づいて白血球の分布データを取得する血球分析装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、前記血球分析装置を、前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶する相関関係情報記憶手段、取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定する炎症関連マーカ推定手段、及び推定された炎症関連マーカの測定データを出力する出力手段として機能させることを特徴とする。
【0024】
また、第16発明に係るコンピュータプログラムは、第15発明において、前記血球分析装置を、取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類するカテゴリ分類手段として機能させ、前記相関関係情報記憶手段を、分類されたカテゴリごとに含まれる前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶する手段として機能させることを特徴とする。
【0025】
また、第17発明に係るコンピュータプログラムは、第16発明において、前記血球分析装置を、取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換する変換手段として機能させ、前記相関関係情報記憶手段を、変換された分布データ及び炎症関連マーカの測定データを重回帰分析した結果として前記相関関係情報を記憶する手段として機能させ、前記炎症関連マーカ推定手段を、変換された分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定する手段として機能させることを特徴とする。
【0026】
また、第18発明に係るコンピュータプログラムは、第17発明において、前記相関関係情報記憶手段を、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて算出された、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを前記相関関係情報として記憶する手段として機能させ、前記炎症関連マーカ推定手段を、取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰関数hに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(5)により算出する手段として機能させることを特徴とする。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(5)
【0027】
また、第19発明に係るコンピュータプログラムは、第17発明において、前記相関関係情報記憶手段を、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて線形重回帰分析を実行して算出された重回帰係数c0、ciを前記相関関係情報として記憶する手段として機能させ、前記炎症関連マーカ推定手段を、取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰係数c0、ciに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(6)により算出する手段として機能させることを特徴とする。
【0028】
【数3】
【0029】
また、第20発明に係るコンピュータプログラムは、第15乃至第19発明のいずれか1つにおいて、前記炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれかであることを特徴とする。
【0030】
また、第21発明に係るコンピュータプログラムは、第15乃至第19発明のいずれか1つにおいて、前記炎症関連マーカはC反応性蛋白であり、推定された炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであることを特徴とする。
【0031】
第1発明、第8発明及び第15発明では、取得した分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶しておき、取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定し、推定された炎症関連マーカの測定データを出力する。他の装置等で測定する必要がある炎症関連マーカの測定データと、取得した白血球全体の分布データとの間の相関関係情報を算出して記憶しておくことにより、未知の白血球の分布データを取得した場合であっても、記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定することができる。したがって、炎症関連マーカの測定データを取得するための別の装置、試薬等を必要とせず、従来の血球分析装置の結果のみから、測定対象ではない炎症関連マーカの測定データを精度良く推定することができ、簡素な構成で安価な血球分析装置にて疾患の発生を早期に発見することが可能となる。
【0032】
第2発明、第9発明及び第16発明では、取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類し、分類されたカテゴリごとに含まれる白血球の分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶する。白血球の分布データと炎症関連マーカの測定データとの間で高い相関を示すカテゴリに基づいて相関関係情報を算出して記憶しておくことにより、炎症関連マーカの測定データをより精度良く推定することができる。
【0033】
第3発明、第10発明及び第17発明では、取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換し、変換された分布データ及び炎症関連マーカの測定データを重回帰分析した結果として相関関係情報を記憶しておく。変換された分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定する。取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換することにより、例えば疾患により生体内で炎症反応が生じている場合、幼若な白血球の比率が増加し、分葉核数の少ない細胞、稈状核球等の比率が増加する、いわゆるレフトシフトが生じる等の分布データ上の変化が大きい領域を選択して重回帰分析を行うことができ、効率良く相関関係情報を算出することができる。
【0034】
第4発明、第11発明及び第18発明では、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて算出された、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを記憶しておく。取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰関数hに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(7)により算出する。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(7)
【0035】
これにより、小領域の分布データに基づいて炎症関連マーカの測定データを精度良く推定することができる。
【0036】
第5発明、第12発明及び第19発明では、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて線形重回帰分析を実行して算出された、重回帰係数c0、ciを記憶しておく。取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰係数c0、ciに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(8)により算出する。
【0037】
【数4】
【0038】
取得した白血球の分布データと炎症関連マーカの測定データとの関係が線形であることを前提として重回帰分析を実行することにより、小領域の分布データに基づいて炎症関連マーカの測定データを精度良く推定することができる。
【0039】
第6発明、第13発明及び第20発明では、炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれかであることが好ましい。また、第7発明、第14発明及び第21発明では、炎症関連マーカはC反応性蛋白であり、推定した炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであることがより好ましい。
【発明の効果】
【0040】
上記構成によれば、他の装置等で測定する必要がある炎症関連マーカの測定データと、血球分析装置により取得した白血球の分布データとの間の相関関係情報を算出して記憶しておくことにより、未知の白血球の分布データに対して、記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定することができる。したがって、炎症関連マーカの測定データを取得するための別の装置、試薬等を必要とせず、従来の血球分析装置の結果のみから、測定対象ではない炎症関連マーカの測定データを精度良く推定することができ、簡素な構成で安価な血球分析装置にて疾患の発生を早期に発見することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本実施の形態では、血球の分類処理を実行する血球分析装置を一例とし、図面に基づいて具体的に説明する。
【0042】
図1は、本発明の実施の形態に係る血球分析装置の構成を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係る血球分析装置は、測定装置1と、測定装置1とデータ通信することが可能に接続されている演算表示装置2とで構成されている。
【0043】
測定装置1と演算表示装置2とは、図示しない通信線を介して接続されており、相互にデータ通信することにより、測定装置1の動作を制御し、測定装置1から出力された測定データを処理して分析結果を取得する。測定装置1と演算表示装置2とは、ネットワーク網を介して接続されていても良いし、一体として一つの装置を構成し、プロセス間通信等でデータの授受を行っても良い。
【0044】
測定装置1は、フローサイトメトリー法を用いて、血液中の白血球、網状赤血球等の特徴情報を検出して、検出結果を測定データとして演算表示装置2へ送信する。ここで、フローサイトメトリー法とは、測定試料を含む試料流を形成し、該試料流にレーザ光を照射することによって、測定試料中の粒子(血球)が発する前方散乱光、側方散乱光、側方蛍光等の光を検出し、これにより、測定試料中の粒子(血球)を検出する方法である。
【0045】
図2は、本発明の実施の形態に係る血球分析装置の測定装置1の構成を示すブロック図である。測定装置1は、装置機構部4と、測定試料の測定を実行する検出部5と、検出部5の出力に対するアナログ処理部6と、表示・操作部7と、上述のハードウェア各部の動作を制御する制御基板部9とを備えている。
【0046】
制御基板部9は、制御用プロセッサ及び制御用プロセッサを動作させるためのメモリを有する制御部91と、アナログ処理部6から出力された信号をデジタル信号に変換する12ビットのA/D変換部92と、A/D変換部92から出力されたデジタル信号を記憶するとともに、制御部91に出力するデータを選択する処理を実行する演算部93とを有している。制御部91は、バス94a及びインタフェース95bを介して表示・操作部7と接続され、バス94b及びインタフェース95cを介して演算表示装置2と接続されている。また、演算部93は、演算結果をインタフェース95d及びバス94aを介して制御部91に出力する。さらに制御部91は、演算結果(測定データ)を演算表示装置2へ送信する。
【0047】
装置機構部4には、試薬と血液とから測定試料を調製する試料調製部41が設けられている。試料調製部41は、白血球測定用試料、網状赤血球測定用試料、血小板測定用試料を調製する。
【0048】
図3は、本発明の実施の形態に係る試料調製部41の構成を模式的に説明するブロック図である。試料調製部41は、血液が所定量充填される採血管41aと、血液が吸引されるサンプリングバルブ41bと、反応チャンバ41cとを備えている。
【0049】
サンプリングバルブ41bは、図示しない吸引ピペットにより吸引された採血管41a内の血液を定量することが可能に構成されている。反応チャンバ41cは、サンプリングバルブ41bに接続されており、サンプリングバルブ41bにより定量された血液に所定の試薬と染色液とをさらに混合することが可能となるように構成されている。また、反応チャンバ41cは、検出部5に接続されており、反応チャンバ41cにおいて所定の試薬と染色液とが混合された測定試料を検出部5に流入するように構成されている。
【0050】
これにより、試料調製部41は、白血球測定用試料として、白血球が染色されるとともに赤血球が溶血された測定試料を調製することができる。また、網状赤血球測定用試料として、網状赤血球が染色された測定試料を調製することもできるし、血小板測定用試料として、血小板が染色された測定試料を調製することもできる。調製された測定試料は、シース液とともに後述する検出部5のシースフローセルに供給される。
【0051】
図4は、本発明の実施の形態に係る検出部5及びアナログ処理部6の構成を模式的に説明するブロック図である。図4に示すように、検出部5は、レーザ光を出射する発光部501と、照射レンズユニット502と、レーザ光が照射されるシースフローセル503と、発光部501から出射されるレーザ光が進む方向の延長線上に配置されている集光レンズ504、ピンホール505、及びPD(フォトダイオード)506と(シースフローセル503と集光レンズ504との間には図示しないビームストッパが配置されている)、発光部501から出射されるレーザ光が進む方向と交差する方向に配置されている集光レンズ507、ダイクロイックミラー508、光学フィルタ509、ピンホール510及びAPD(アバランシェフォトダイオード)511と、ダイクロイックミラー508の側方に配置されているPD(フォトダイオード)512とを備えている。
【0052】
発光部501は、シースフローセル503の内部を通過する測定試料を含む試料流に対して光を出射するために設けられている。照射レンズユニット502は、発光部501から出射された光を試料流に照射するために設けられている。また、PD506は、シースフローセル503から出射された前方散乱光を受光するために設けられている。なお、シースフローセル503から出射された前方散乱光により、測定試料中の粒子(血球)の大きさに関する情報を得ることができる。
【0053】
ダイクロイックミラー508は、シースフローセル503から出射された側方散乱光及び側方蛍光を分離するために設けられている。具体的には、ダイクロイックミラー508は、シースフローセル503から出射された側方散乱光をPD512に入射させるとともに、シースフローセル503から出射された側方蛍光をAPD511に入射させるために設けられている。また、PD512は、側方散乱光を受光するために設けられている。シースフローセル503から出射された側方散乱光により、測定試料中の粒子(血球)の核の大きさ等の内部情報を得ることができる。
【0054】
また、APD511は、側方蛍光を受光するために設けられている。染色された血球のような蛍光物質に光を照射すると、照射した光の波長より長い波長の光が発せられる。側方蛍光強度は染色度合いが高いほど強くなる。そのため、シースフローセル503から出射された側方蛍光強度を測定することによって血球の染色度合いに関する特徴情報を得ることができる。したがって、側方蛍光強度の差によって、白血球の分類その他の測定を行うことができる。PD506、512及びAPD511は、それぞれ受光した光信号を電気信号に変換して、増幅器61、62、及び63にて増幅して制御基板部9へ送信する。
【0055】
図5は、本発明の実施の形態に係る血球分析装置の演算表示装置2の構成を示すブロック図である。演算表示装置2は、従来の血球分析装置を構成する演算表示装置の機能に加えて、白血球の分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を取得する機能を有する。図5に示すように、演算表示装置2は、CPU(中央演算装置)21、RAM22、記憶装置23、入力装置24、表示装置25、出力装置26、通信インタフェース27、可搬型ディスクドライブ28、及び上述したハードウェアを接続する内部バス29で構成されている。CPU21は、内部バス29を介して演算表示装置2の上述したようなハードウェア各部と接続されており、記憶装置23に記憶されているコンピュータプログラム100に従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。RAM22は、SRAM、SDRAM等の揮発性メモリで構成され、コンピュータプログラム100の実行時にロードモジュールが展開され、コンピュータプログラム100の実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0056】
記憶装置23は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク)、SRAM等の揮発性メモリ、ROM等の不揮発性メモリ等で構成されている。記憶装置23に記憶されているコンピュータプログラム100は、プログラム及びデータ等の情報を記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体90から、可搬型ディスクドライブ28によりダウンロードされ、実行時には記憶装置23からRAM22へ展開して実行される。もちろん、通信インタフェース27を介してネットワークに接続されている外部のコンピュータからダウンロードされたコンピュータプログラムであっても良い。
【0057】
記憶装置23は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク)等で構成されている。記憶装置23は、測定装置1で取得した白血球の分布データを記憶する分布データ記憶部231、他の検査装置3で取得した炎症関連マーカの測定データを記憶する炎症関連マーカ測定データ記憶部232、及び相関関係に関する相関関係情報を記憶する相関関係情報記憶部233を備えている。CPU21は、分布データ記憶部231及び炎症関連マーカ測定データ記憶部232にそれぞれ記憶してある白血球の分布データ及び炎症関連マーカの測定データを分析することにより、白血球の分布データから炎症関連マーカの測定データを推定するための相関関係情報を算出する。なお、分布データ記憶部231、炎症関連マーカ測定データ記憶部232、及び相関関係情報記憶部233は記憶装置23に備えることに限定されるものではなく、外部のコンピュータに記憶しておき、通信インタフェース27を介して照会する構成であっても良い。また、演算表示装置2と同様の構成を備えた外部のコンピュータで相関関係情報を算出し、算出された相関関係情報を予め記憶装置23の相関関係情報記憶部233に記憶させておくようにしても良い。この場合には、相関関係情報の算出に必要な分布データ及び測定データを演算表示装置2の記憶装置23に記憶しておく必要が無く、CPU21による相関関係情報の算出処理を省略することができる。
【0058】
通信インタフェース27は内部バス29に接続されており、測定装置1と通信線を介して接続されることにより、データの送受信を行うことが可能となっている。すなわち、測定の開始を示す指示情報等を測定装置1へ送信し、測定データ等を受信する。
【0059】
入力装置24は、キーボード及びマウス等のデータ入力媒体である。表示装置25は、CRTモニタ、LCD等の表示装置であり、分析結果をグラフィカルに表示する。出力装置26は、レーザプリンタ、インクジェットプリンタ等の印刷装置等である。
【0060】
上述した構成の血球分析装置の測定装置1及び演算表示装置2にて、患者の血液を測定して、血液中に含まれている白血球をリンパ球、単球、好酸球、好中球、及び好塩基球に分類した場合、図6に示されるようなスキャッタグラムが作成されて表示装置25に表示される。図6は、白血球分類測定(DIFF測定)時のスキャッタグラムの例示図である。図6において、縦軸は側方蛍光強度を、横軸は側方散乱光強度を、それぞれ示している。以下、本実施の形態に係る血球分析装置で用いられる白血球の分類方法について説明する。
【0061】
本発明の実施の形態に係る血球分析装置においては、図6に示すようなスキャッタグラムを得ることができる。スキャッタグラムには、クラスタリング技術によって分類されたリンパ球が分布するリンパ球分布領域101、単球が分布する単球分布領域102、好酸球が分布する好酸球分布領域103、好中球が分布する好中球分布領域104、好塩基球が分布する好塩基球分布領域105が表示されている。そして、分類された血球を計数することにより、リンパ球、単球等の数を求めることができる。上述の白血球の分類、計数は、米国特許第5555196号公報に記載された方法によって行った。なお、上述の白血球の分類方法を実行するためのコンピュータプログラム及びコンピュータプログラムの実行に用いられるデータは、記憶装置23に事前に記憶されている。
【0062】
本発明者らは、各種の疾患と白血球の分布データの粒度パターンとの関係を抽出するべく重回帰分析をすることにより、白血球の分布データと、炎症関連マーカの測定データとの間で高い相関を示すことを発見した。したがって、従来の血球分析装置で取得した白血球の分布データと、他の検査装置で取得した炎症関連マーカの測定データとの間の相関関係を事前に求めておくことにより、白血球の分布データから炎症関連マーカの測定データを推定することができる。
【0063】
まず、白血球の分布データと、炎症関連マーカの測定データとの間の相関関係を求める手順について説明する。以下、実施の形態に係る演算表示装置2にて相関関係に関する相関関係情報を算出する場合について説明するが、相関関係情報を演算表示装置2にて算出することに限定されるものではなく、外部のコンピュータで算出した後、ネットワークを介して、あるいは可搬型記録媒体を介して取得しても良い。
【0064】
図7は、本発明の実施の形態に係る演算表示装置2のCPU21の相関関係に関する相関関係情報を算出する処理の手順を示すフローチャートである。演算表示装置2のCPU21は、記憶装置23の分布データ記憶部231に記憶してある白血球の分布データを読み出す(ステップS701)。
【0065】
CPU21は、他の方法、例えば他の検査装置で取得され、記憶装置23の炎症関連マーカ測定データ記憶部232に記憶してある炎症関連マーカの測定データを読み出し(ステップS702)、読み出した白血球の分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を算出する。
【0066】
具体的には、読み出した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換し(ステップS703)、変換された小領域ごとの分布データ及び読み出した炎症関連マーカの測定データに基づいて重回帰分析して(ステップS704)、相関関係に関する相関関係情報を算出する(ステップS705)。図8は、白血球の分布データを表示するスキャッタグラムに基づく小領域ごとの分布データへの変換方法の説明図である。
【0067】
図8の例では、スキャッタグラムをn×n(n=256)の各番地(i、j)に度数F(i、j)を割り当てたデータ群として表現している。取扱うデータの種類が多すぎる場合にはスキャッタグラムデータを圧縮することが好ましい。例えば、スキャッタグラムの番地を4つの番地ごとに一の番地(小領域)となるように変換する、すなわちスキャッタグラムをn/2×n/2に圧縮した場合、圧縮スキャッタグラムの各番地の度数G(i、j)は、式(9)のように表すことができる。
【0068】
【数5】
【0069】
例えば疾患により生体内で炎症反応が生じている場合、幼若な白血球の比率が増加し、分葉核数の少ない分葉核球、稈状核球等が増加する、いわゆるレフトシフトが生じる。このように、元の分布データを4つの番地からなる小領域ごとの分布データに変換することにより、データ数を圧縮することができ、相関関係情報を効率的に算出することができる。
【0070】
256×256の分布データを32×32の分布データに圧縮して重回帰分析を行う場合、CPU21は、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)(s=1024)を説明変数とし、及び取得した炎症関連マーカの測定データCk目的変数として、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを算出する。相関関係情報として重回帰関数hを算出することにより、CPU21が新たに白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxiを取得した場合、CPU21は、炎症関連マーカの推定測定データCを式(10)により算出することができる。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(10)
【0071】
もちろん、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)と、取得した炎症関連マーカの測定データCkとの間に線形の相関関係が存在すると仮定して、線形重回帰分析を実行しても良い。この場合、CPU21は、白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)を説明変数とし、取得した炎症関連マーカの測定データCkを目的変数として線形重回帰分析を実行し、相関関係情報として重回帰係数c0、ciを算出する。重回帰係数c0、ciを算出することにより、CPU21が、新たに白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxiを取得した場合、CPU21は、炎症関連マーカの推定測定データCを式(11)により算出することができる。
【0072】
【数6】
【0073】
CPU21は、算出した相関関係情報を、記憶装置23の相関関係情報記憶部233に記憶する(ステップS706)。
【0074】
なお、取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類し、分類されたカテゴリごとに、分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶しても良い。分布データと炎症関連マーカの測定データとの間で高い相関を示すカテゴリに基づいて相関関係情報を算出して記憶しておくことにより、炎症関連マーカの測定データをより精度良く推定することができるからである。
【0075】
図9は、本発明の実施の形態に係る測定装置1の制御基板部9の制御部91及び演算表示装置2のCPU21の処理手順を示すフローチャートである。測定装置1の制御基板部9の制御部91は、測定装置1が起動されたことを検知した場合、初期化を実行し(ステップS912)、測定装置1各部の動作チェックを行う。また、演算表示装置2のCPU21も、演算表示装置2が起動されたことを検知した場合、初期化(プログラムの初期化)を実行し(ステップS901)、表示装置25にメニュー画面を表示する(ステップS902)。メニュー画面では、DIFF測定、RET測定、CBC測定の選択を受け付けること、測定開始指示及びシャットダウン指示を受け付けること等が可能である。本実施の形態では上記メニュー画面においてDIFF測定が選択された場合について、以下説明する。
【0076】
演算表示装置2のCPU21は、測定開始指示を受け付けたか否かを判断し(ステップS903)、CPU21が、測定開始指示を受け付けていないと判断した場合(ステップS903:NO)、CPU21は、ステップS904乃至ステップS909をスキップする。CPU21が、測定開始指示を受け付けたと判断した場合(ステップS903:YES)、CPU21は、測定開始を示す指示情報を測定装置1へ送信する(ステップS904)。測定装置1の制御基板部9の制御部91は、測定開始を示す指示情報を受信したか否かを判断し(ステップS913)、制御部91が、測定開始を示す指示情報を受信したと判断した場合(ステップS913:YES)、制御部91は、血液を収容している容器に貼付されているバーコードラベル(図示せず)をバーコードリーダ(図示せず)に読み取らせ、血液の識別情報(試料ID)を取得する(ステップS914)。制御部91が、測定開始を示す指示情報を受信していないと判断した場合(ステップS913:NO)、制御部91は、ステップS914乃至ステップS918をスキップする。
【0077】
制御部91は、取得した識別情報(試料ID)を演算表示装置2へ送信し(ステップS915)、演算表示装置2のCPU21は、識別情報(試料ID)を受信したか否かを判断する(ステップS905)。CPU21が、識別情報(試料ID)を受信していないと判断した場合(ステップS905:NO)、CPU21は、受信待ち状態となる。CPU21が、識別情報(試料ID)を受信したと判断した場合(ステップS905:YES)、CPU21は、記憶装置23を照会して記憶してある患者情報を取得し(ステップS906)、患者情報を測定装置1へ送信する(ステップS907)。これにより、分析対象となる検体が誰の血液であるか特定することができる。
【0078】
次に、測定装置1の制御基板部9の制御部91は、患者情報を受信したか否かを判断し(ステップS916)、制御部91が、受信していないと判断した場合(ステップS916:NO)、制御部91は、受信待ち状態となる。制御部91が、受信したと判断した場合(ステップS916:YES)、制御部91は、測定試料を調製するよう試料調製部41を制御した後、測定試料の測定処理を開始する(ステップS917)。具体的には、DIFF測定を実行し、検出部5及びアナログ処理部6を介して側方散乱光及び側方蛍光の受光強度に相当する電気信号が制御基板部9へ出力される。制御基板部9のA/D変換部92は、取得したアナログ信号を例えば12ビットのデジタル信号に変換し、演算部93は、A/D変換部92から出力されたデジタル信号に所定の処理を施して制御部91へ渡す。制御部91は、受け取った整数列情報を測定データとして、演算表示装置2へ送信する(ステップS918)。
【0079】
CPU21は、測定データを受信したか否かを判断し(ステップS908)、CPU21が、測定データを受信したと判断した場合(ステップS908:YES)、CPU21は、受信した測定データに基づいて解析処理を実行する(ステップS909)。CPU21が、測定データを受信していないと判断した場合(ステップS908:NO)、CPU21は、受信待ち状態となる。
【0080】
図10は、本発明の実施の形態に係る演算表示装置2のCPU21の図9のステップS909で実行する解析処理手順を示すフローチャートである。図10において、演算表示装置2のCPU21は、受信した測定データに基づいて分布データを作成し(ステップS1001)、分布データを患者情報に対応付けて記憶装置23の分布データ記憶部231に記憶する(ステップS1002)。CPU21は、図6に示すようなスキャッタグラムを作成し、白血球の分類結果として表示装置25に表示する(ステップS1003)。
【0081】
CPU21は、患者情報をキー情報として分布データ記憶部231に記憶してある分布データ及び相関関係情報記憶部233に記憶してある相関関係情報を読み出し(ステップS1004)、炎症関連マーカの測定データを推定し、記憶装置23の炎症関連マーカ測定データ記憶部232へ記憶する(ステップS1005)。CPU21は、推定された炎症関連マーカの測定データの表示指示を受け付けたか否かを判断する(ステップS1006)。
【0082】
CPU21が、表示指示を受け付けていないと判断した場合(ステップS1006:NO)、CPU21は、処理を図9のステップS910へ戻す。CPU21が、表示指示を受け付けたと判断した場合(ステップS1006:YES)、CPU21は、炎症関連マーカ測定データ記憶部232から炎症関連マーカ(例えばCRP)の測定データを読み出し(ステップS1007)、表示装置25に表示して(ステップS1008)、処理を図9のステップS910へ戻す。
【0083】
図9に戻って、演算表示装置2のCPU21は、シャットダウン指示を受け付けたか否かを判断し(ステップS910)、CPU21が、シャットダウン指示を受け付けていないと判断した場合(ステップS910:NO)、CPU21は、処理をステップS903へ戻し、上述した処理を繰り返す。CPU21が、シャットダウン指示を受け付けたと判断した場合(ステップS910:YES)、CPU21は、シャットダウンの指示情報を測定装置1へ送信する(ステップS911)。
【0084】
測定装置1の制御基板部9の制御部91は、シャットダウンの指示情報を受信したか否かを判断し(ステップS919)、制御部91が、シャットダウンの指示情報を受信していないと判断した場合(ステップS919:NO)、制御部91は、処理をステップS913へ戻し、上述した処理を繰り返す。制御部91が、シャットダウンの指示情報を受信したと判断した場合(ステップS919:YES)、制御部91は、シャットダウンを実行して(ステップS920)、処理を終了する。
【0085】
なお、分類された白血球分布データごとに、分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報が記憶されている場合には、血球分析装置において、分布データを複数のカテゴリに分類する処理が必要となる。これにより、分類されたカテゴリに対応する相関関係情報を用いて、炎症関連マーカの測定データを推定することができる。分布データを分類する手法として、自己組織化マップ等の手法を用いることができる。
【0086】
図11は、炎症関連マーカとしてC反応性蛋白(CRP)を採用し、自己組織化マップを用いて5×5のカテゴリに分類した白血球分布図の例示図である。図11の例では、最上段の左から右へ向かってクラス0、クラス1、クラス2、クラス3、クラス4とし、一段下がって次の段の左から右へ向かってクラス5、クラス6、・・・となるようにクラス分類し、最下段の左から右へ向かってクラス20、クラス21、クラス22、クラス23、クラス24となっている。例えばクラス8は、正常検体及び比較的炎症程度が低い検体が多く含まれるグループと考えられ、クラス6は、炎症程度の高い検体が多く含まれるグループと考えられる。
【0087】
図12及び図13は、それぞれクラス8、クラス6におけるCRPの実測値と推定値との相関を示すグラフである。図12及び図13では、縦軸に本実施の形態に係る血球分析装置での推定値を、横軸に実測値をとっている。また、推定値は、白血球のDIFF測定時の大きさが256チャンネル×256チャンネルの1つの分布データを大きさが4チャンネル×4チャンネルの32×32個の小領域に分割した場合の分布データを説明変数とし、稈状核球を目的変数として重回帰分析を実行して求めた重回帰関数を用いて推定している。図12及び図13に示すように、両者間の相関係数rはそれぞれ0.683、0.708であり、推定値と実測値との間で高い相関を示しており、臨床検査情報として利用することが可能であることが確認できた。
【0088】
さらに、ある時点の白血球の分布データと、それから数日後のCRPの測定データとの重回帰分析を行って得られた相関関係を用いることにより、現在の白血球の分布データから数日後のCRPの測定データを推定することも可能である。図14及び図15は、それぞれクラス8、クラス6におけるCRPの4〜7日後の実測値と推定値との相関を示すグラフである。図14では、縦軸に本実施の形態に係る血球分析装置での推定値を、横軸に実測値をとっている。図15では、横軸に本実施の形態に係る血球分析装置での推定値を、縦軸に実測値をとっている。
【0089】
図14及び図15に示すように、両者間の相関係数rはそれぞれ0.933、0.665であり、数日後のCRPの値を予測することも可能であることを示唆している。
【0090】
また、特徴強調フィルタにより分布データの特徴をより強調し、強調された分布データを5×5に分類し、各相関関係を求めても良い。このようにすることで、より精度良く桿状核球又は分葉核球の測定データの推定を行うことができる。特徴強調フィルタとしては、例えば分布データの単回帰分析結果を用いても良い。
【0091】
以上のように本実施の形態によれば、血球分析装置以外から取得した炎症関連マーカの測定データと、血球分析装置により取得した白血球の分布データとの間の相関関係情報を算出して記憶しておくことにより、未知の白血球の分布データに対して、記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定することができる。したがって、炎症関連マーカの測定データを取得するための別の装置、試薬等を必要とせず、従来の血球分析装置の結果のみから、測定対象ではない炎症関連マーカの測定データを精度良く推定することができ、簡素な構成で安価な血球分析装置にて疾患の発生を早期に発見することが可能となる。
【0092】
なお、上述の実施の形態では、分析結果を演算表示装置2の表示装置25で表示しているが、特にこれに限定されるものではなく、ネットワークを介して接続されている他のコンピュータが有している表示装置に表示させるものであっても良い。
【0093】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変形、置換等が可能であることは言うまでもない。例えば、炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれであっても良いし、炎症関連マーカがC反応性蛋白である場合、推定した炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施の形態に係る血球分析装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る血球分析装置の測定装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る試料調製部の構成を模式的に説明するブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る検出部及びアナログ処理部の構成を模式的に説明するブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る血球分析装置の演算表示装置の構成を示すブロック図である。
【図6】白血球分類測定(DIFF測定)時のスキャッタグラムの例示図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る演算表示装置のCPUの相関関係に関する相関関係情報を算出する処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】白血球の分布データを表示するスキャッタグラムに基づく小領域ごとの分布データへの変換方法の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る測定装置の制御基板部の制御部及び演算表示装置のCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態に係る演算表示装置のCPUの解析処理手順を示すフローチャートである。
【図11】炎症関連マーカとしてC反応性蛋白(CRP)を採用し、自己組織化マップを用いて5×5に分類した白血球分布図の例示図である。
【図12】クラス8におけるCRPの実測値と推定値との相関を示すグラフである。
【図13】クラス6におけるCRPの実測値と推定値との相関を示すグラフである。
【図14】クラス8におけるCRPの4〜7日後の実測値と推定値との相関を示すグラフである。
【図15】クラス6におけるCRPの4〜7日後の実測値と推定値との相関を示すグラフである。
【符号の説明】
【0095】
1 測定装置
2 演算表示装置
4 装置機構部
5 検出部
6 アナログ処理部
9 制御基板部
21 CPU
22 RAM
23 記憶装置
24 入力装置
25 表示装置
26 出力装置
27 通信インタフェース
28 可搬型ディスクドライブ
29 内部バス
90 可搬型記録媒体
91 制御部
92 A/D変換部
93 演算部
100 コンピュータプログラム
231 分布データ記憶部
232 炎症関連マーカ測定データ記憶部
233 相関関係情報記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検体に含まれる白血球の所定の成分を検出する検出部を有し、該検出部の検出結果に基づいて白血球の分布データを取得する血球分析装置において、
前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶する相関関係情報記憶手段と、
取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定する炎症関連マーカ推定手段と、
推定された炎症関連マーカの測定データを出力する出力手段と
を備えることを特徴とする血球分析装置。
【請求項2】
取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類するカテゴリ分類手段を備え、
前記相関関係情報記憶手段は、分類されたカテゴリごとに含まれる前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶するようにしてあることを特徴とする請求項1記載の血球分析装置。
【請求項3】
取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換する変換手段を備え、
前記相関関係情報記憶手段は、変換された分布データ及び炎症関連マーカの測定データを重回帰分析した結果として前記相関関係情報を記憶するようにしてあり、
前記炎症関連マーカ推定手段は、変換された分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定するようにしてあることを特徴とする請求項2記載の血球分析装置。
【請求項4】
前記相関関係情報記憶手段は、
白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて算出された、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを前記相関関係情報として記憶するようにしてあり、
前記炎症関連マーカ推定手段は、
取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰関数hに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(1)により算出するようにしてあることを特徴とする請求項3記載の血球分析装置。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(1)
【請求項5】
前記相関関係情報記憶手段は、
白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて線形重回帰分析を実行して算出された重回帰係数c0、ciを前記相関関係情報として記憶するようにしてあり、
前記炎症関連マーカ推定手段は、
取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰係数c0、ciに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(2)により算出するようにしてあることを特徴とする請求項3記載の血球分析装置。
【数1】
【請求項6】
前記炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の血球分析装置。
【請求項7】
前記炎症関連マーカはC反応性蛋白であり、
推定された炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の血球分析装置。
【請求項8】
複数の検体に含まれる白血球の所定の成分を検出し、検出結果に基づいて白血球の分布データを取得する血球分析装置で実行することが可能な血球分析方法において、
前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶し、
取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定し、
推定された炎症関連マーカの測定データを出力することを特徴とする血球分析方法。
【請求項9】
取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類し、
分類されたカテゴリごとに含まれる前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶することを特徴とする請求項8記載の血球分析方法。
【請求項10】
取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換し、
変換された分布データ及び炎症関連マーカの測定データを重回帰分析した結果として前記相関関係情報を記憶し、
変換された分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定することを特徴とする請求項9記載の血球分析方法。
【請求項11】
白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて算出された、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを前記相関関係情報として記憶し、
取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰関数hに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(3)により算出することを特徴とする請求項10記載の血球分析方法。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(3)
【請求項12】
白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて線形重回帰分析を実行して算出された重回帰係数c0、ciを前記相関関係情報として記憶し、
取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰係数c0、ciに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(4)により算出することを特徴とする請求項10記載の血球分析方法。
【数2】
【請求項13】
前記炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれかであることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか一項に記載の血球分析方法。
【請求項14】
前記炎症関連マーカはC反応性蛋白であり、
推定された炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか一項に記載の血球分析方法。
【請求項15】
複数の検体に含まれる白血球の所定の成分を検出する検出部を有し、該検出部の検出結果に基づいて白血球の分布データを取得する血球分析装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、
前記血球分析装置を、
前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶する相関関係情報記憶手段、
取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定する炎症関連マーカ推定手段、及び
推定された炎症関連マーカの測定データを出力する出力手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項16】
前記血球分析装置を、
取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類するカテゴリ分類手段として機能させ、
前記相関関係情報記憶手段を、分類されたカテゴリごとに含まれる前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶する手段として機能させることを特徴とする請求項15記載のコンピュータプログラム。
【請求項17】
前記血球分析装置を、
取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換する変換手段として機能させ、
前記相関関係情報記憶手段を、変換された分布データ及び炎症関連マーカの測定データを重回帰分析した結果として前記相関関係情報を記憶する手段として機能させ、
前記炎症関連マーカ推定手段を、変換された分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定する手段として機能させることを特徴とする請求項16記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
前記相関関係情報記憶手段を、
白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて算出された、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを前記相関関係情報として記憶する手段として機能させ、
前記炎症関連マーカ推定手段を、
取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰関数hに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(5)により算出する手段として機能させることを特徴とする請求項17記載のコンピュータプログラム。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(5)
【請求項19】
前記相関関係情報記憶手段を、
白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて線形重回帰分析を実行して算出された重回帰係数c0、ciを前記相関関係情報として記憶する手段として機能させ、
前記炎症関連マーカ推定手段を、
取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰係数c0、ciに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(6)により算出する手段として機能させることを特徴とする請求項17記載のコンピュータプログラム。
【数3】
【請求項20】
前記炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれかであることを特徴とする請求項15乃至19のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項21】
前記炎症関連マーカはC反応性蛋白であり、
推定された炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであることを特徴とする請求項15乃至19のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項1】
複数の検体に含まれる白血球の所定の成分を検出する検出部を有し、該検出部の検出結果に基づいて白血球の分布データを取得する血球分析装置において、
前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶する相関関係情報記憶手段と、
取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定する炎症関連マーカ推定手段と、
推定された炎症関連マーカの測定データを出力する出力手段と
を備えることを特徴とする血球分析装置。
【請求項2】
取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類するカテゴリ分類手段を備え、
前記相関関係情報記憶手段は、分類されたカテゴリごとに含まれる前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶するようにしてあることを特徴とする請求項1記載の血球分析装置。
【請求項3】
取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換する変換手段を備え、
前記相関関係情報記憶手段は、変換された分布データ及び炎症関連マーカの測定データを重回帰分析した結果として前記相関関係情報を記憶するようにしてあり、
前記炎症関連マーカ推定手段は、変換された分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定するようにしてあることを特徴とする請求項2記載の血球分析装置。
【請求項4】
前記相関関係情報記憶手段は、
白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて算出された、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを前記相関関係情報として記憶するようにしてあり、
前記炎症関連マーカ推定手段は、
取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰関数hに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(1)により算出するようにしてあることを特徴とする請求項3記載の血球分析装置。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(1)
【請求項5】
前記相関関係情報記憶手段は、
白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて線形重回帰分析を実行して算出された重回帰係数c0、ciを前記相関関係情報として記憶するようにしてあり、
前記炎症関連マーカ推定手段は、
取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰係数c0、ciに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(2)により算出するようにしてあることを特徴とする請求項3記載の血球分析装置。
【数1】
【請求項6】
前記炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の血球分析装置。
【請求項7】
前記炎症関連マーカはC反応性蛋白であり、
推定された炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の血球分析装置。
【請求項8】
複数の検体に含まれる白血球の所定の成分を検出し、検出結果に基づいて白血球の分布データを取得する血球分析装置で実行することが可能な血球分析方法において、
前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶し、
取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定し、
推定された炎症関連マーカの測定データを出力することを特徴とする血球分析方法。
【請求項9】
取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類し、
分類されたカテゴリごとに含まれる前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶することを特徴とする請求項8記載の血球分析方法。
【請求項10】
取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換し、
変換された分布データ及び炎症関連マーカの測定データを重回帰分析した結果として前記相関関係情報を記憶し、
変換された分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定することを特徴とする請求項9記載の血球分析方法。
【請求項11】
白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて算出された、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを前記相関関係情報として記憶し、
取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰関数hに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(3)により算出することを特徴とする請求項10記載の血球分析方法。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(3)
【請求項12】
白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて線形重回帰分析を実行して算出された重回帰係数c0、ciを前記相関関係情報として記憶し、
取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰係数c0、ciに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(4)により算出することを特徴とする請求項10記載の血球分析方法。
【数2】
【請求項13】
前記炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれかであることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか一項に記載の血球分析方法。
【請求項14】
前記炎症関連マーカはC反応性蛋白であり、
推定された炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか一項に記載の血球分析方法。
【請求項15】
複数の検体に含まれる白血球の所定の成分を検出する検出部を有し、該検出部の検出結果に基づいて白血球の分布データを取得する血球分析装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、
前記血球分析装置を、
前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶する相関関係情報記憶手段、
取得した白血球の分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定する炎症関連マーカ推定手段、及び
推定された炎症関連マーカの測定データを出力する出力手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項16】
前記血球分析装置を、
取得した白血球の分布データを複数のカテゴリに分類するカテゴリ分類手段として機能させ、
前記相関関係情報記憶手段を、分類されたカテゴリごとに含まれる前記分布データと炎症関連マーカの測定データとの相関関係に関する相関関係情報を記憶する手段として機能させることを特徴とする請求項15記載のコンピュータプログラム。
【請求項17】
前記血球分析装置を、
取得した白血球の分布データを複数の小領域ごとの分布データに変換する変換手段として機能させ、
前記相関関係情報記憶手段を、変換された分布データ及び炎症関連マーカの測定データを重回帰分析した結果として前記相関関係情報を記憶する手段として機能させ、
前記炎症関連マーカ推定手段を、変換された分布データ及び記憶してある相関関係情報に基づいて、炎症関連マーカの測定データを推定する手段として機能させることを特徴とする請求項16記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
前記相関関係情報記憶手段を、
白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて算出された、炎症関連マーカの測定データCkと複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)との重回帰関数hを前記相関関係情報として記憶する手段として機能させ、
前記炎症関連マーカ推定手段を、
取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰関数hに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(5)により算出する手段として機能させることを特徴とする請求項17記載のコンピュータプログラム。
C=h(x1、x2、・・・、xi、・・・、xs) ・・・ 式(5)
【請求項19】
前記相関関係情報記憶手段を、
白血球の分布データXk(k=1、2、・・・、n)から変換された複数の小領域の分布データxki(i=1、2、・・・、s)、及び取得した炎症関連マーカの測定データCkに基づいて線形重回帰分析を実行して算出された重回帰係数c0、ciを前記相関関係情報として記憶する手段として機能させ、
前記炎症関連マーカ推定手段を、
取得した白血球の分布データXから変換された小領域ごとの分布データxi及び前記重回帰係数c0、ciに基づいて、炎症関連マーカの推定測定データCを式(6)により算出する手段として機能させることを特徴とする請求項17記載のコンピュータプログラム。
【数3】
【請求項20】
前記炎症関連マーカは、C反応性蛋白、血清アミロイドA、赤血球沈降速度のいずれかであることを特徴とする請求項15乃至19のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項21】
前記炎症関連マーカはC反応性蛋白であり、
推定された炎症関連マーカの測定データは、C反応性蛋白の所定日数経過後の測定データであることを特徴とする請求項15乃至19のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−122136(P2010−122136A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297695(P2008−297695)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(504174180)国立大学法人高知大学 (174)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(504174180)国立大学法人高知大学 (174)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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