説明

血球計数装置、診断支援装置、診断支援方法及びコンピュータプログラム

【課題】検査に必要な手間と費用を軽減しつつ、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか否かの判別を支援することが可能な血球計数装置、診断支援装置、診断支援方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】血球計数装置は、検出部と、分析情報取得手段と、診断支援情報出力手段とを備える。分析情報取得手段は、検出部による検出結果に基づいて、血液中の赤血球のヘモグロビン量に関する第1分析情報、及び血液中の顆粒球に関する第2分析情報を取得する。診断支援情報出力手段は、分析情報取得手段で取得した第1分析情報及び第2分析情報に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血球計数装置、診断支援装置、診断支援方法及びコンピュータプログラムに関し、特に、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する血球計数装置、診断支援装置、診断支援方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
全身性炎症反応症候群(SIRS:Systemic Inflammatory Response Syndrome)は、感染、外傷、手術、急性膵炎等によって全身に重篤な炎症反応を呈している状態である。
【0003】
全身性炎症反応症候群(SIRS)のうち感染性炎症反応を伴うものが、敗血症である。敗血症は、早期に適切な治療を受けない場合、重篤な敗血症、敗血症性ショック、多臓器機能障害(MOD)へと症状が進行し、最終的には死に至る病気である。したがって、被験者が全身性炎症反応症候群(SIRS)であると診断された場合に、感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を行い、早期に敗血症であるか否かを診断することは、その後の被験者の治療に大きな影響を与える。また、感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別は、全身性炎症反応症候群(SIRS)以外の被験者の治療に大きな影響を与えることもある。
【0004】
従来、敗血症であるか否かの診断は、被験者の血液を培養することにより感染菌の存在を確認することで行われてきた。また、特許文献1には、単球数、リンパ球数、白血球数等の検出項目と、サイトカイン、細胞表面バイオマーカー等の検出項目とを組み合わせて、敗血症であるか否かの診断を支援する方法が開示してある。単球数、リンパ球数、白血球数等の検出項目は、被験者から採取した血液を血球計数装置で検出することによって得られ、サイトカイン、細胞表面バイオマーカー等の検出項目は、被験者から採取した血液を遠心分離し、得られた血清または血漿を蛍光ビーズアレイシステム等で抗原抗体反応を用いて分析することによって得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−522604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、被験者の血液を培養することにより感染菌の存在を確認して敗血症であるか否かを診断する方法では、血液を培養する作業が必ず必要となり、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を行うために、多くの手間と費用が必要となるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1に開示してある診断支援方法は、血液を血球計数装置で検出した結果に基づく情報以外に、サイトカイン、細胞表面バイオマーカー等の情報も必要であるため、やはり多くの手間と費用が必要となるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、検査に必要な手間と費用を軽減しつつ、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援することが可能な血球計数装置、診断支援装置、診断支援方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために第1発明に係る血球計数装置は、被験者の血液中の血球を検出する検出部と、該検出部による検出結果に基づいて、前記血液中の赤血球のヘモグロビン量に関する第1分析情報、及び前記血液中の顆粒球に関する第2分析情報を取得する分析情報取得手段と、該分析情報取得手段で取得した前記第1分析情報及び前記第2分析情報に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援情報を出力する診断支援情報出力手段とを備える。
【0010】
また、第2発明に係る血球計数装置は、第1発明において、前記第1分析情報は、網赤血球のヘモグロビン量に関する分析情報である。
【0011】
また、第3発明に係る血球計数装置は、第1発明において、前記第1分析情報は、網赤血球のヘモグロビン量と成熟赤血球のヘモグロビン量との差に関する分析情報である。
【0012】
また、第4発明に係る血球計数装置は、第1乃至第3発明のいずれか一つにおいて、前記第2分析情報は、好中球又は幼若顆粒球に関する分析情報である。
【0013】
また、第5発明に係る血球計数装置は、第1乃至第4発明のいずれか一つにおいて、前記分析情報取得手段は、前記検出部による検出結果に基づいて、形質細胞に関する第3分析情報をさらに取得し、前記診断支援情報出力手段は、前記第1分析情報乃至前記第3分析情報の全ての分析情報に基づいて前記診断支援情報を出力する。
【0014】
また、第6発明に係る血球計数装置は、第5発明において、前記検出部は、染色処理された血液中の血球を検出するように構成されており、前記分析情報取得手段は、前記第2分析情報として好中球の数に関する分析情報を取得するとともに、前記検出部による検出結果に基づいて、好中球の染色度合いを示す第4分析情報及び幼若顆粒球の数に関する第5分析情報をさらに取得し、前記診断支援情報出力手段は、前記第1分析情報乃至前記第5分析情報の全ての分析情報に基づいて前記診断支援情報を出力する。
【0015】
また、第7発明に係る血球計数装置は、第1乃至第6発明のいずれか一つにおいて、前記分析情報取得手段で取得した前記第1分析情報及び前記第2分析情報に基づく指標を、所定の基準で算出する診断支援指標算出手段をさらに備え、前記診断支援情報出力手段は、前記診断支援指標算出手段で算出した前記指標に基づいて、前記診断支援情報を出力する。
【0016】
また、第8発明に係る血球計数装置は、第7発明において、前記診断支援情報出力手段は、前記診断支援指標算出手段で算出した前記指標と、所定の閾値とを比較し、比較結果に基づいて前記診断支援情報を出力する。
【0017】
また、第9発明に係る血球計数装置は、第1乃至第6発明のいずれか一つにおいて、前記分析情報取得手段で取得した前記第1分析情報及び前記第2分析情報に基づく指標を、所定の基準で算出する診断支援指標算出手段をさらに備え、前記診断支援情報出力手段は、前記診断支援指標算出手段で算出した前記指標を、前記診断支援情報として出力する。
【0018】
また、第10発明に係る血球計数装置は、第1乃至第9発明のいずれか一つにおいて、前記検出部は、前記血液が通過するフローセルと、該フローセルを通過する血液に光を照射する光源と、該光源から光が照射された血液からの光を受光する受光部とを備える。
【0019】
上記目的を達成するために第11発明に係る診断支援装置は、被験者の血液中の血球を検出した結果に基づく、前記血液中の赤血球のヘモグロビン量に関する第1分析情報、及び前記血液中の顆粒球に関する第2分析情報の入力を受け付ける分析情報受付手段と、該分析情報受付手段で入力を受け付けた前記第1分析情報及び前記第2分析情報に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援情報を出力する診断支援情報出力手段とを備える。
【0020】
上記目的を達成するために第12発明に係る診断支援方法は、被験者の血液中の血球を検出した結果に基づく、前記血液中の赤血球のヘモグロビン量に関する第1分析情報、及び前記血液中の顆粒球に関する第2分析情報の入力を受け付ける第1ステップと、該第1ステップで入力を受け付けた前記第1分析情報及び前記第2分析情報に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援情報を出力する第2ステップとを含む。
【0021】
また、第13発明に係る診断支援方法は、第12発明において、前記第1ステップで入力を受け付ける前記第1分析情報及び前記第2分析情報は、全身性の炎症反応を呈している被験者の血液中の血球を検出した結果に基づく。
【0022】
また、第14発明に係る診断支援方法は、第12発明において、前記第1ステップで入力を受け付ける前記第1分析情報及び前記第2分析情報は、全身性炎症反応症候群と診断された被験者の血液中の血球を検出した結果に基づく。
【0023】
また、第15発明に係る診断支援方法は、第12乃至第14発明のいずれか一つにおいて、前記第1ステップで入力を受け付ける前記第1分析情報及び前記第2分析情報は、集中治療室の被験者の血液中の血球を検出した結果に基づく。
【0024】
上記目的を達成するために第16発明に係るコンピュータプログラムは、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、前記診断支援装置を、被験者の血液中の血球を検出した結果に基づく、前記血液中の赤血球のヘモグロビン量に関する第1分析情報、及び前記血液中の顆粒球に関する第2分析情報の入力を受け付ける分析情報受付手段、及び該分析情報受付手段で入力を受け付けた前記第1分析情報及び前記第2分析情報に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援情報を出力する診断支援情報出力手段として機能させる。
【0025】
第1発明、第11発明、第12発明及び第16発明では、血液中の赤血球のヘモグロビン量に関する第1分析情報、及び血液中の顆粒球に関する第2分析情報に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援情報を出力するので、血液を培養する作業が不要で、抗原抗体反応を用いる装置等の、血球計数装置以外の装置で血液中の血球を検出する必要も生じないため、検査に必要な手間と費用を軽減することができる。なお、血球計数装置とは、血液に希釈・溶血・染色等の処理を施し、光学的又は電気的に血球を計数する装置である。血球計数装置としては、XE−2100(シスメックス株式会社製)、LH700シリーズ(ベックマン・コールター製)、セルダイン−4000(アボット社製)、ADVIA−2120(シーメンス社製)等が挙げられる。これらの血球計数装置は、CBC項目、白血球分類、及び網赤血球(RET)を検出するように構成されている。
【0026】
第2発明では、第1分析情報は、網赤血球のヘモグロビン量に関する分析情報であるので、血球計数装置から得られる分析情報に基づき感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援することができる。
【0027】
第3発明では、第1分析情報は、網赤血球のヘモグロビン量と成熟赤血球のヘモグロビン量との差に関する分析情報であるので、血球計数装置から得られる分析情報に基づき感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援することができる。
【0028】
第4発明では、第2分析情報は、好中球又は幼若顆粒球に関する分析情報であるので、血球計数装置から得られる分析情報に基づき感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援することができる。
【0029】
第5発明では、形質細胞に関する第3分析情報をさらに取得し、第1分析情報乃至第3分析情報の全ての分析情報に基づいて診断支援情報を出力するので、血球計数装置から得られる分析情報に基づき感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援することができる。
【0030】
第6発明では、検出部は、染色処理された血液中の血球を検出するように構成されており、分析情報取得手段は、第2分析情報として好中球の数に関する分析情報を取得するとともに、検出部による検出結果に基づいて、好中球の染色度合いを示す第4分析情報及び幼若顆粒球の数に関する第5分析情報をさらに取得し、第1分析情報乃至第5分析情報の全ての分析情報に基づいて診断支援情報を出力するので、血球計数装置から得られる分析情報に基づき感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援することができる。
【0031】
第7発明では、分析情報取得手段で取得した第1分析情報及び第2分析情報に基づく指標を、所定の基準で算出する診断支援指標算出手段をさらに備え、診断支援情報出力手段は、診断支援指標算出手段で算出した指標に基づいて、診断支援情報を出力するので、複雑な処理を行うことなく、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援することができる。
【0032】
第8発明では、診断支援情報出力手段は、診断支援指標算出手段で算出した指標と、所定の閾値とを比較し、比較結果に基づいて診断支援情報を出力するので、複雑な処理を行うことなく、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援することができる。
【0033】
第9発明では、分析情報取得手段で取得した第1分析情報及び第2分析情報に基づく指標を、所定の基準で算出する診断支援指標算出手段をさらに備え、診断支援情報出力手段は、診断支援指標算出手段で算出した指標を、診断支援情報として出力するので、複雑な処理を行うことなく、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援することができる。
【0034】
第10発明では、検出部が、血液が通過するフローセルと、フローセルを通過する血液に光を照射する光源と、光源から光が照射された血液からの光を受光する受光部とを備えるので、抗原抗体反応を用いて検出する場合等と比較して安価に、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別の支援に必要な検出結果を得ることができる。
【0035】
第13発明では、入力を受け付ける第1分析情報及び第2分析情報が、全身性の炎症反応を呈している被験者の血液中の血球を検出した結果に基づくので、全身性の炎症反応を呈しているが、全身性炎症反応症候群と診断される条件を満たしていない被験者に対して、検査に必要な手間と費用を軽減しつつ、血球計数装置から得られる分析情報に基づき感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援することができる。
【0036】
第14発明では、入力を受け付ける第1分析情報及び第2分析情報が、全身性炎症反応症候群と診断された被験者の血液中の血球を検出した結果に基づくので、全身性炎症反応症候群と診断された被験者に対しても、検査に必要な手間と費用を軽減しつつ、血球計数装置から得られる分析情報に基づき感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援することができる。
【0037】
第15発明では、入力を受け付ける第1分析情報及び第2分析情報が、集中治療室の被験者の血液中の血球を検出した結果に基づくので、集中治療室の被験者に対しても、検査に必要な手間と費用を軽減しつつ、血球計数装置から得られる分析情報に基づき感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援することができる。
【発明の効果】
【0038】
上記構成によれば、本発明における血球計数装置、診断支援装置、診断支援方法及びコンピュータプログラムは、血液中の赤血球のヘモグロビン量に関する第1分析情報、及び血液中の顆粒球に関する第2分析情報に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援情報を出力するので、血液を培養する作業が不要で、血球計数装置以外の装置で血液中の血球を検出する必要も生じないため、検査に必要な手間と費用を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係る血球計数装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る血球計数装置の検出ユニットの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る血球計数装置の検出部の構成を模式的に示す概略平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る血球計数装置のデータ処理ユニットの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る血球計数装置のデータ処理ユニットのデータ処理部のCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係る血球計数装置で作成したRETスキャッタグラムを示した図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る血球計数装置で作成した4DIFFスキャッタグラムを示した図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る血球計数装置で作成したWBC/BASOスキャッタグラムを示した図である。
【図9】ROC曲線を示した図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る血球計数装置のデータ処理ユニットのCPUによる指標(ICIS)を算出する手順を示すフローチャートである。
【図11】指標(ICIS(Delta−He))の変化を、感染性炎症反応の被験者及び非感染性炎症反応の被験者のそれぞれについて示した図である。
【図12】指標(ICIS(RET−He))の変化を、感染性炎症反応の被験者及び非感染性炎症反応の被験者のそれぞれについて示した図である。
【図13】被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別にCRP量を用いた場合のCRP量の変化を示した図である。
【図14】好中球の数(Neut#)のスコア値の変化を示した図である。
【図15】指標(ICIS)の算出に用いる分析情報の組み合わせと、AUCの値とを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態における血球計数装置、診断支援装置、診断支援方法及びコンピュータプログラムについて、図面を用いて具体的に説明する。以下の実施の形態は、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではなく、実施の形態の中で説明されてある特徴的事項の組み合わせの全てが解決手段の必須事項であるとは限らないことは言うまでもない。
【0041】
図1は、本発明の実施の形態に係る血球計数装置の概略構成を示す正面図である。図1に示すように、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1は、全身性の炎症反応を呈している被験者の血液中の血球を検出し、該炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する装置であり、主として検出ユニット2及びデータ処理ユニット3により構成されている。検出ユニット2は、被験者の血液中の血球を検出する。データ処理ユニット3は、検出ユニット2で検出した結果を含むデータを受信して分析処理を行う。血球計数装置1は、例えば、病院、病理検査施設等の医療機関の施設内に設置してある。検出ユニット2とデータ処理ユニット3とは、互いにデータ通信が可能であるように、伝送ケーブル3aによって接続してある。なお、伝送ケーブル3aで検出ユニット2とデータ処理ユニット3とを直接接続する構成に限定されるものではなく、例えば電話回線を使用した専用回線、LAN、インターネット等の通信ネットワークを介して検出ユニット2とデータ処理ユニット3とを接続してもよい。
【0042】
検出ユニット2の正面の右下部分には、被験者の血液を収容した採血管をセットすることが可能な採血管セット部2aが設けてある。採血管セット部2aは、その近傍に設けてあるボタンスイッチ2bを操作者が押すことにより操作者側へ迫り出して、採血管をセットすることが可能な状態となる。採血管セット部2aは、採血管をセットした後、操作者が再度ボタンスイッチ2bを押すことで、検出ユニット2側へ移動して収納される。
【0043】
図2は、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1の検出ユニット2の構成を示すブロック図である。図2に示すように、検出ユニット2は、従来の血球計数装置の本体部と同様の構成を備えており、試料供給部4と、検出部5と、制御部8と、通信部9とを備えている。試料供給部4は、チャンバ、複数の電磁弁、ダイヤフラムポンプ等を備えた流体ユニットであり、検出ユニット2にセットされた被験者の血液と試薬とを混合した検出試料を検出部5に供給する。制御部8は、検出ユニット2の各種構成要素の動作制御を行う。通信部9は、例えばRS−232Cインタフェース、USBインタフェース、Ethernet(登録商標)インタフェースであり、データ処理ユニット3との間でデータの送受信を行う。
【0044】
図3は、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1の検出部5の構成を模式的に示す概略平面図である。図3に示すように、検出部5は、光学式のフローサイトメータであり、半導体レーザによるフローサイトメトリー法により血液中の白血球(WBC)、網赤血球(RET)及び成熟赤血球(RBC)を検出する。なお、本明細書においては、「赤血球」を、「網赤血球(RET)」及び「成熟赤血球(RBC)」の両方を含む概念で用いる。検出部5は、検出試料の液流を形成するフローセル51を備えている。フローセル51は、透光性を有する石英、ガラス、合成樹脂等の材料によって管状に構成されており、その内部が検出試料及びシース液が通流する流路となっている。検出部5では、フローセル51へ向けてレーザ光を出射するように半導体レーザ光源52を配置してある。半導体レーザ光源52とフローセル51との間には、複数のレンズからなる照射レンズ系53を配置してある。照射レンズ系53によって、半導体レーザ光源52から出射された平行ビームがビームスポットに集光される。また、半導体レーザ光源52から直線的に延びた光軸上に、フローセル51を挟んで照射レンズ系53と対向するようにフォトダイオード54を設け、半導体レーザ光源52からの直接光を遮光するようにビームストッパ54aを配置してある。
【0045】
フローセル51に検出試料が通流すると、レーザ光により散乱光及び蛍光の光が発生する。発生した光のうち、レーザ光の照射方向(前方)の光がフォトダイオード54で光電変換される。半導体レーザ光源52から直線的に延びた光軸に沿って進行する光のうち、半導体レーザ光源52からの直接光はビームストッパ54aによって遮光され、フォトダイオード54には概ね光軸方向に沿って進行する散乱光(以下、前方散乱光という)のみが入射する。フローセル51を通流する検出試料から発せられた前方散乱光は、フォトダイオード54で光電変換され、光電変換された電気信号(以下、前方散乱光信号という)がアンプ54bによって増幅され、制御部8に出力される。前方散乱光信号は、血球の大きさを反映している。
【0046】
また、フローセル51の側方であって、半導体レーザ光源52からフォトダイオード54へ直線的に延びる光軸に対して交差する方向に、側方集光レンズ55を配置してあり、側方集光レンズ55は、フローセル51を通流する検出試料にレーザ光を照射したときに発生する側方光(光軸に対して交差する方向へ出射される光)を集光する。側方集光レンズ55の下流側にはダイクロイックミラー56を配置してあり、側方集光レンズ55で集光した光は、ダイクロイックミラー56で散乱光成分と蛍光成分とに分けられる。ダイクロイックミラー56で反射する光軸方向(側方集光レンズ55とダイクロイックミラー56とを結ぶ光軸方向に交差する方向)には、側方散乱光受光用のフォトダイオード57が配置してあり、ダイクロイックミラー56を透過する光軸方向には、側方蛍光受光用の光学フィルタ58a及びフォトダイオード58を配置してある。
【0047】
ダイクロイックミラー56で反射された光は、側方散乱光であり、フォトダイオード57で光電変換され、光電変換された電気信号(以下、側方散乱光信号という)がアンプ57aによって増幅され、制御部8に出力される。側方散乱光信号は、血球の内部情報(核の大きさ等)を反映している。また、ダイクロイックミラー56を透過した光は、側方蛍光であり、光学フィルタ58aによって波長選択された後、フォトダイオード58で光電変換され、光電変換された電気信号(以下、側方蛍光信号という)がアンプ58bによって増幅され、制御部8に出力される。側方蛍光信号は、血球の染色度合いを示す情報を反映している。
【0048】
図4は、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1のデータ処理ユニット3の構成を示すブロック図である。図4に示すように、データ処理ユニット3は、少なくとも、CPU(中央演算装置)等で構成されるデータ処理部31、画像表示部32、入力部33で構成されている。データ処理部31は、CPU31a、メモリ31b、ハードディスク31c、読出装置31d、入出力インタフェース31e、画像出力インタフェース31f、通信インタフェース31g、内部バス31hで構成されている。データ処理部31は、CPU31aと、メモリ31b、ハードディスク31c、読出装置31d、入出力インタフェース31e、画像出力インタフェース31f、通信インタフェース31gのそれぞれとは、内部バス31hを介して接続されている。
【0049】
CPU31aは、上述したハードウェア各部の動作を制御するとともに、ハードディスク31cに記憶されているコンピュータプログラム34に従って、検出ユニット2から受信したデータの処理を行う。
【0050】
メモリ31bは、SRAM、フラッシュメモリ等の揮発性メモリで構成され、コンピュータプログラム34の実行時にロードモジュールが展開され、コンピュータプログラム34の実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0051】
ハードディスク31cは、内蔵される固定型記憶装置等で構成されている。ハードディスク31cに記憶されているコンピュータプログラム34は、プログラム及びデータ等の情報を記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体35から、可搬型ディスクドライブである読出装置31dによりダウンロードされ、実行時にはハードディスク31cからメモリ31bへ展開して実行される。もちろん、通信インタフェース31gを介して外部のコンピュータからダウンロードされたコンピュータプログラムであっても良い。ハードディスク31cには、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援情報として、被験者が感染性炎症であることを示すメッセージ又は感染性炎症である可能性が高いことを示すメッセージと、被験者が非感染性炎症であることを示すメッセージ又は非感染性炎症である可能性が高いことを示すメッセージとが記憶されている。また、分析情報をスコア化するときに用いられる分析情報ごとの第1乃至第3のスコア用閾値(後に説明する)、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかを判別するための判別用閾値(後に説明する)も記憶されている。
【0052】
入出力インタフェース31eは、キーボード、タブレット等で構成される入力部33と接続されている。画像出力インタフェース31fは、CRTモニタ、LCD等の画像表示部32と接続されている。
【0053】
通信インタフェース31gは内部バス31hに接続されており、インターネット、LAN、WAN等の外部のネットワーク網に接続されることにより、外部のコンピュータ、検出ユニット2等とデータ送受信を行うことが可能となっている。例えば上述したハードディスク31cは、データ処理ユニット3に内蔵される構成に限定されるものではなく、通信インタフェース31gを介して接続されている外部のストレージ等の外部記録媒体であっても良い。
【0054】
以下、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1の動作について説明する。まず、血球計数装置1の試料供給部4は、採血管セット部2aにセットされた採血管から血液を吸引し、吸引した血液を3つのアリコートに分割し、所定の専用試薬を添加することにより、RET検出試料、4DIFF検出試料、及びWBC/BASO検出試料を調製する。なお、RET検出試料は、血液を希釈処理し、さらに網状赤血球検出用の専用試薬を用いて染色処理することによって調製される。4DIFF検出試料は、血液を希釈処理し、白血球分類用の専用試薬を用いて溶血処理し、さらにDIFF検出用の専用試薬を用いて染色処理することによって調製される。WBC/BASO検出試料は、血液を希釈処理し、さらに白血球検出用の専用試薬を用いて溶血処理することによって調製される。試料供給部4は、調製された検出試料を、検出部5のフローセル51に供給する。
【0055】
図5は、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1のデータ処理ユニット3のデータ処理部31のCPU31aの処理手順を示すフローチャートである。まず、フローセル51に検出試料が供給されると、CPU31aは、通信インタフェース31gを介して、検出ユニット2の検出部5から出力された前方散乱光信号、側方散乱光信号、側方蛍光信号のデータをそれぞれ受信し、メモリ31bに記憶する(ステップS51)。CPU31aは、メモリ31bに記憶した検出部5で検出した前方散乱光信号、側方散乱光信号、側方蛍光信号のデータから複数のスキャッタグラムを作成する(ステップS52)。ステップS52において、検出部5から出力された網赤血球(RET)の前方散乱光信号をY軸方向に、網赤血球(RET)の側方蛍光信号をX軸方向としたRETスキャッタグラム、検出部5から出力された白血球(WBC)の側方蛍光信号をY軸方向に、白血球(WBC)の側方散乱光信号をX軸方向とした4DIFFスキャッタグラム、検出部5から出力された白血球(WBC)の前方散乱光信号をY軸方向に、白血球(WBC)の側方散乱光信号をX軸方向としたWBC/BASOスキャッタグラムを少なくとも作成する。
【0056】
次に、CPU31aは、RETスキャッタグラムを用いて、網赤血球に含まれるヘモグロビンの量(RET−He)、又は網赤血球(RET)に含まれるヘモグロビンの量と成熟赤血球(RBC)に含まれるヘモグロビンの量との差(Delta−He)を算出し(ステップS53)、赤血球のヘモグロビン量に関する分析情報として取得する。図6は、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1で作成したRETスキャッタグラムを示した図である。図6に示すように、RETスキャッタグラムは、血球を、成熟赤血球(RBC)領域60、血小板(PLT)領域61、網赤血球(RET)領域62の三つの領域に分類する。また、RETスキャッタグラムから、成熟赤血球領域60に含まれる全ての細胞(すなわち成熟赤血球(RBC))の前方散乱光強度の平均値であるRBC−Y、網赤血球領域62に含まれる全ての細胞(すなわち網赤血球(RET))の前方散乱光強度の平均値であるRET−Yを算出することができる。
【0057】
RET−Heは、RETスキャッタグラムから算出したRET−Yを(数1)に、代入することで算出することができる。
【0058】
【数1】

【0059】
Delta−Heは、RET−Heから成熟赤血液の量であるRBC−Heを減算することによって算出される。したがって、Delta−Heを算出するために、まずRBC−Heを算出する必要があり、RBC−Heは、RETスキャッタグラムから算出したRBC−Yを(数2)に代入することで算出する。なお、米国特許第7283217号明細書には、Delta−He及びRET−Heの詳しい算出方法について記載してある。
【0060】
【数2】

【0061】
次に、CPU31aは、4DIFFスキャッタグラム及びWBC/BASOスキャッタグラムを用いて、好中球の数(Neut#)を算出し(ステップS54)、顆粒球に関する分析情報として取得する。なお、本明細書においては、「顆粒球」を「成熟顆粒球」及び「幼若顆粒球」の両方を含む概念で用いる。「成熟顆粒球」には、好中球(Neut)、好酸球(EO)、好塩基球(BASO)が含まれる。図7は、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1で作成した4DIFFスキャッタグラムを示した図である。図8は、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1で作成したWBC/BASOスキャッタグラムを示した図である。図7に示すように、4DIFFスキャッタグラムは、白血球を、単球(MONO)領域71、リンパ球(LYMPH)領域72、好中球(Neut)+好塩基球(BASO)領域73、好酸球(EO)領域74、幼若顆粒球(IG)領域75、及びBリンパ球が分化した細胞(HFLC)領域76の六つの領域に分類する。そのため、4DIFFスキャッタグラムから、好中球(Neut)+好塩基球(BASO)領域73の白血球の個数を数えることで、好中球(Neut)の数と好塩基球(BASO)の数との和を算出することができる。
【0062】
好中球(Neut)の数と好塩基球(BASO)の数との和から好中球の数(Neut#)を算出するために、WBC/BASOスキャッタグラムを用いて好塩基球(BASO)の数を求める。図8に示すように、WBC/BASOスキャッタグラムは、白血球を、単球(MONO)+リンパ球(LYMPH)+好中球(Neut)+好酸球(EO)領域81と、好塩基球(BASO)領域82との二つの領域に分類する。そのため、WBC/BASOスキャッタグラムから、好塩基球(BASO)領域82の白血球の個数を数えることで、好塩基球(BASO)領域82中の好塩基球(BASO)の数を算出することができる。4DIFFスキャッタグラムから算出した好中球(Neut)の数と好塩基球(BASO)の数との和から、WBC/BASOスキャッタグラムから算出した好塩基球(BASO)の数を減算することで、好中球の数(Neut#)を算出することができる。
【0063】
次に、CPU31aは、4DIFFスキャッタグラムを用いて、好中球の染色度合いを示す値(Neut−Y)を算出し(ステップS55)、顆粒球に関する分析情報として取得する。具体的には、4DIFFスキャッタグラムから、好中球(Neut)+好塩基球(BASO)領域73に含まれる全ての細胞(すなわち好中球(Neut)及び好塩基球(BASO))の側方蛍光強度の平均値を算出することで、好中球の染色度合いを示す値(Neut−Y)を算出することができる。なお、算出した好中球の染色度合いを示す値(Neut−Y)には、好塩基球(BASO)の側方散乱光強度の影響が含まれるが、好塩基球(BASO)の数が少なく影響は小さい。
【0064】
次に、CPU31aは、4DIFFスキャッタグラムを用いて、幼若顆粒球の数(IG#)を算出し(ステップS56)、顆粒球に関する分析情報として取得する。具体的には、4DIFFスキャッタグラムから、幼若顆粒球(IG)領域75の白血球の個数を数えることで、幼若顆粒球の数(IG#)を算出することができる。
【0065】
次に、CPU31aは、4DIFFスキャッタグラムを用いて、Bリンパ球が分化した細胞の数(HFLC#)を算出し(ステップS57)、形質細胞に関する分析情報として取得する。具体的には、4DIFFスキャッタグラムから、Bリンパ球が分化した細胞(HFLC)領域76の白血球の個数を数えることで、Bリンパ球が分化した細胞の数(HFLC#)を算出することができる。
【0066】
次に、CPU31aは、ステップS53乃至ステップS57で取得した複数の分析情報(RET−He、Delta−He、Neut#、Neut−Y、IG#、HFLC#)から、少なくとも二つの分析情報を選び、分析情報ごとに、所定の基準でスコア値を設定し、設定したスコア値を合算して指標を算出する(ステップS58)。なお、ステップS58で算出する指標は、以下、指標(ICIS:Intensive Care Infection Score)と呼ぶ。分析情報ごとに設定したスコア値は、ステップS53乃至ステップS57で取得した分析情報と、ハードディスク31cに予め分析情報ごとに記憶されているスコア用閾値とを比較することにより取得される。
【0067】
ここで、スコア用閾値の決め方について説明する。スコア用閾値は、例えば以下の方法により血球計数装置1の開発者等によって予め決定され、ハードディスク31cに記憶されている。本発明の実施の形態では、スコア用閾値を決定するためにROC(Receiver Operating Characteristic)曲線によるROC分析を用いている。一般的にROC分析は、スクリーニング検査等の精度の評価や従来の検査と新しい検査との比較に用いられている。ROC曲線は、縦軸を感度(%)、横軸を100−特異度(%)とする平面図上に示される。なお、感度(%)とは、感染性炎症である被験者の数に対して感染性炎症反応と判別した被験者の数の割合である。特異度(%)とは、非感染性炎症である被験者の数に対して非感染性炎症反応と判別した被験者の数の割合である。
【0068】
ROC曲線は、血球計数装置1の開発者等により、以下のように生成される。例えば好中球の数(Neut#)を分析情報として用いた場合、開発者等は、ある閾値を設定し、該閾値と、被験者の好中球の数(Neut#)とに基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかを判別する。当該判別は、複数の被験者について実行される。そして、開発者等は、複数の被験者の判別結果から、感度(%)及び特異度(%)を算出する。さらに、開発者等は、前述の縦軸を感度(%)、横軸を100−特異度(%)とする平面図上において、算出した感度(%)及び特異度(%)に対応する位置に、マーク(点)を付す。すなわち、当該マーク(点)は、設定された閾値における感度(%)及び特異度(%)に対応する。開発者等は、順次閾値を変化させながら、上記の判別、算出、及びマーキングを繰り返す。そして、開発者等は、上記平面図上に付された複数のマーク(点)を近似する曲線を描く。当該曲線がROC曲線である。
【0069】
図9は、ROC曲線を示した図である。図9に示す平面図は、縦軸が感度、横軸が100−特異度で、曲線91が好中球の数(Neut#)のROC曲線である。曲線91において、座標(0,100)から曲線91までの距離lが最短となる点91aが、感度と特異度のバランスが最適となる点である。そして、点91aをマーキングしたときに設定された閾値がベストカットオフ値である。また、曲線91と軸とで囲む面積のうち、座標(100,0)側の面積が好中球の数(Neut#)のAUC(Area Under the Curve)91bである。曲線91は、被験者116人(感染性炎症である被験者61人、非感染性炎症である被験者55人)に対して描いたROC曲線である。
【0070】
スコア用閾値の決め方の説明に戻る。まず開発者等は、ROC曲線に基づきベストカットオフ値を取得し、当該ベストカットオフ値を第1のスコア用閾値として決める。次に開発者等は、ROC曲線に基づき特異度が80%となる点について設定された閾値を、第2のスコア用閾値として決める。さらに開発者等は、ROC曲線に基づき特異度が90%となる点について設定された閾値を、第3のスコア用閾値として決める。例えば、好中球の数(Neut#)の第1乃至第3のスコア用閾値は、それそれ、480個/μl、500個/μl、550個/μlとなる。
【0071】
開発者等は、他の分析情報(RET−He、Delta−He、Neut−Y、IG#、HFLC#)についても同様の方法で、第1乃至第3のスコア用閾値を決める。なお、本実施の形態では、特異度が80%となる点について設定された閾値を第2のスコア用閾値、特異度が90%となる点について設定された閾値を第3のスコア用閾値としているが、第2及び第3のスコア用閾値に対応する特異度は得られたROC曲線に応じて適宜変更可能である。
【0072】
ハードディスク31cに予め記憶されている前述のスコア用閾値を用いて、CPU31aが分析情報ごとにスコア値を算出し、算出したスコア値を合算して指標(ICIS)を算出する処理を以下に説明する。図10は、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1のデータ処理ユニット3のデータ処理部31のCPU31aによる指標(ICIS)を算出する手順を示すフローチャートである。CPU31aは、図5のステップS53乃至ステップS57で算出して取得した複数の分析情報から、少なくとも二つの分析情報を選び、選んだ複数の分析情報の中から順次スコア化する分析情報を選択する(ステップS101)。例えば、選んだ複数の分析情報が、網赤血球(RET)に含まれるヘモグロビンの量と成熟赤血球(RBC)に含まれるヘモグロビンの量との差(Delta−He)、好中球の数(Neut#)、好中球の染色度合いを示す値(Neut−Y)、幼若顆粒球の数(IG#)、Bリンパ球が分化した細胞の数(HFLC#)の場合、CPU31aは、まずスコア化する分析情報として好中球の数(Neut#)を選択する。次に、CPU31aは、ステップS54において算出した好中球の数(Neut#)が、第1のスコア用閾値よりも大きいか否かを判断する(ステップS102)。CPU31aが算出した好中球の数(Neut#)が第1のスコア用閾値以下であると判断した場合(ステップS102:NO)、CPU31aは、スコア値を‘0(ゼロ)’に設定する(ステップS103)。
【0073】
CPU31aが算出した好中球の数(Neut#)が第1のスコア用閾値よりも大きいと判断した場合(ステップS102:YES)、CPU31aは、算出した好中球の数(Neut#)が、第2のスコア用閾値よりも大きいか否かを判断する(ステップS104)。CPU31aが算出した好中球の数(Neut#)が第2のスコア用閾値以下であると判断した場合(ステップS104:NO)、CPU31aは、スコア値を‘1’に設定する(ステップS105)。
【0074】
CPU31aが算出した好中球の数(Neut#)が第2のスコア用閾値よりも大きいと判断した場合(ステップS104:YES)、CPU31aは、算出した好中球の数(Neut#)が、第3のスコア用閾値よりも大きいか否かを判断する(ステップS106)。CPU31aが算出した好中球の数(Neut#)が第3のスコア用閾値以下であると判断した場合(ステップS106:NO)、CPU31aは、スコア値を‘2’に設定する(ステップS107)。CPU31aが算出した好中球の数(Neut#)が第3のスコア用閾値よりも大きいと判断した場合(ステップS106:YES)、CPU31aは、スコア値を‘4’に設定する(ステップS108)。
【0075】
ステップS103、S105、S107、S108において、CPU31aが算出した好中球の数(Neut#)のスコア値を設定した場合、CPU31aは、ステップS101において選んだ複数の分析情報で、まだスコア化していない分析情報があるか否かを判断する(ステップS109)。CPU31aが、ステップS101において選んだ複数の分析情報で、まだスコア化していない分析情報があると判断した場合(ステップS109:YES)、CPU31aは、処理をステップS101に戻す。CPU31aが、ステップS101において選んだ複数の分析情報のすべてをスコア化したと判断した場合(ステップS109:NO)、CPU31aは、分析情報ごとのスコア値を合算して指標(ICIS)を算出する(ステップS110)。なお、指標(ICIS)を算出するために分析情報ごとのスコア値を合算する方法は、分析情報ごとのスコア値を単純に合算する方法に限定されるものではなく、分析情報ごとのスコア値を所定の指標(ICIS)算出式に当てはめる方法を用いれば良く、例えば、分析情報ごとのスコア値に適宜重み付けをして合算する方法であっても良い。
【0076】
図5に戻って、CPU31aは、ステップS58で算出した指標(ICIS)に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別をする(ステップS59)。指標(ICIS)に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別をする方法として、例えば、指標(ICIS)がハードディスク31cに記憶してある判別用閾値以上であれば、被験者の炎症反応が感染性炎症反応である又は感染性炎症反応である可能性が高いと判別し、指標(ICIS)が判別用閾値未満であれば、被験者の炎症反応が非感染性炎症反応である又は非感染性炎症反応である可能性が高いと判別する。
【0077】
次に、ステップS58で算出した指標(ICIS)に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別をすることが可能であること、及び指標(ICIS)と比較する判別用閾値の決め方について、以下に説明する。なお、判別用閾値は、血球計数装置1の開発者等により予め決定され、ハードディスク31cに記憶されている。
【0078】
図11は、指標(ICIS(Delta−He))の変化を、感染性炎症反応の被験者及び非感染性炎症反応の被験者のそれぞれについて示した図である。図12は、指標(ICIS(RET−He))の変化を、感染性炎症反応の被験者及び非感染性炎症反応の被験者のそれぞれについて示した図である。図11では、被験者が全身性の炎症反応を呈してからの日数を横軸、Delta−He、Neut#、Neut−Y、IG#、HFLC#のそれぞれをスコア化して合算して算出した指標(ICIS(Delta−He))を縦軸としている。折れ線111は、非感染性炎症である被験者の指標(ICIS(Delta−He))の平均値を、折れ線112は、感染性炎症である被験者の指標(ICIS(Delta−He))の平均値を、それぞれ示している。なお、折れ線111、112に示すエラーバーは、それぞれの指標(ICIS(Delta−He))の最高値と最低値とを表している。
【0079】
折れ線111は、指標(ICIS(Delta−He))が‘5’より大きくなることはほとんどなく、折れ線112は、指標(ICIS(Delta−He))が‘5’以下になることはほとんどないため、‘5’を被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかを判別する判別用閾値と決定することができる。つまり、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1を用いて、全身性の炎症反応を呈してから12日以内の被験者の指標(ICIS(Delta−He))を算出し、算出した指標(ICIS(Delta−He))が‘5’より大きければ被験者の炎症反応が感染性炎症反応であると判別することができる。
【0080】
同様に、図12の例では、被験者が全身性の炎症反応を呈してからの日数を横軸、RET−He、Neut#、Neut−Y、IG#、HFLC#のそれぞれをスコア化して合算して算出した指標(ICIS(RET−He))を縦軸としている。折れ線121は、非感染性炎症である被験者の指標(ICIS(RET−He))の平均値を、折れ線122は、感染性炎症である被験者の指標(ICIS(RET−He))の平均値を、それぞれ示している。なお、折れ線121、122に示すエラーバーは、それぞれの指標(ICIS(RET−He))の最高値と最低値とを表している。
【0081】
折れ線121は、指標(ICIS(RET−He))が‘4’より大きくなることはほとんどなく、折れ線122は、指標(ICIS(RET−He))が‘4’以下になることはほとんどないため、‘4’を被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかを判別する判別用閾値とすることができる。つまり、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1を用いて、全身性の炎症反応を呈してから12日以内の被験者の指標(ICIS(RET−He))を算出し、算出した指標(ICIS(RET−He))が‘4’より大きければ被験者の炎症反応が感染性炎症反応であると判別することができる。
【0082】
従来、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかを判別するのに、炎症や細胞の破壊が起きるとCRPといわれるタンパク質が血液中に増加することを利用して、CRP量を用いる場合がある。図13は、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別にCRP量を用いた場合のCRP量の変化を示した図である。図13の例では、被験者が全身性の炎症反応を呈してからの日数を横軸、CRP量(8.5mg/dlに対する割合(%))を縦軸としている。折れ線131は、非感染性炎症である被験者のCRP量の平均値を、折れ線132は、感染性炎症である被験者のCRP量の平均値をそれぞれ示している。なお、折れ線131、132に示すエラーバーは、それぞれのCRP量の最高値と最低値とを表している。
【0083】
折れ線131と折れ線132とをある閾値で分けることができないので、全身性の炎症反応を呈している被験者に対してCRP量を算出しても、炎症反応を呈してから10日以内においては、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別をすることができない。
【0084】
次に、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1で算出する指標(ICIS)は、選んだ複数の分析情報を、分析情報ごとにスコア化し、スコア化した値を合算することで算出している。以下に、指標(ICIS)の算出に用いる分析情報の組み合わせについて具体的に説明する。
【0085】
図9において、曲線92は、分析情報として、Delta−He、Neut#を選び、分析情報ごとのスコア値を合算した指標(ICIS−2d)に対して得られたROC曲線である。同様に、曲線93は、分析情報として、Delta−He、Neut#、Neut−Yを選び、分析情報ごとのスコア値を合算した指標(ICIS−3d)に対して得られたROC曲線である。曲線94は、分析情報として、Delta−He、Neut#、Neut−Y、IG#を選び、分析情報ごとのスコア値を合算した指標(ICIS−4d)に対して得られたROC曲線である。曲線95は、分析情報として、Delta−He、Neut#、Neut−Y、IG#、HFLC#を選び、分析情報ごとのスコア値を合算した指標(ICIS(Delta−He))に対して得られたROC曲線である。
【0086】
曲線92、曲線93、曲線94、曲線95のそれぞれのAUCの値は、0.837、0.879、0.895、0.891と、曲線91のAUCの値(0.745)に比べて大きくなっている。図14は、好中球の数(Neut#)のスコア値の変化を示した図である。図14では、被験者が全身性の炎症反応を呈してからの日数を横軸、好中球の数(Neut#)のスコア値を縦軸としている。折れ線141は、非感染性炎症である被験者の好中球の数(Neut#)のスコア値の平均値を、折れ線142は、感染性炎症である被験者の好中球の数(Neut#)のスコア値の平均値をそれぞれ示している。なお、折れ線141、142に示すエラーバーは、それぞれのスコア値の最高値と最低値とを表している。
【0087】
折れ線141及び折れ線142はともにスコア値が‘1’の近傍にあり、折れ線141と折れ線142とをある閾値で分けることができない。つまり、全身性の炎症反応を呈している被験者に対して好中球の数(Neut#)のスコア値のみを算出しても、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別をすることが困難であることが分かる。
【0088】
これに対して、指標(ICIS(Delta−He))は、AUCの値が0.891と、好中球の数(Neut#)のAUCの値(0.745)に比べてかなり大きく、図11に示すように被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別に用いることができる。また、ROC曲線のAUCの値は、その値が大きいほど、判別の指標として有用であることが一般的に知られている。このことから、指標(ICIS−2d、ICIS−3d、ICIS−4d)についても、好中球の数(Neut#)のAUCの値と比べてかなり大きなAUCの値を有しているので、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別に用いることができると考えられる。
【0089】
図15は、指標(ICIS)の算出に用いる分析情報の組み合わせと、AUCの値とを示した図である。図15に示す丸印は、指標(ICIS)の算出に用いる分析情報を表し、AUCの欄は、丸印の分析情報のスコア値を合算した指標(ICIS)のAUCの値を示している。なお、参考のため、単数の分析情報から算出したAUCの値も示している。複数の分析情報を組み合わせて算出した指標(ICIS)は、単数の分析情報(例えば好中球の数(Neut#))から算出したAUCの値と比べてかなり大きなAUCの値を有しているので、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別に用いることができると考えられる。
【0090】
CPU31aによる診断支援情報出力処理の説明に戻る(図5参照)。CPU31aは、ステップS59での判別結果に基づき、ハードディスク31cから診断支援情報を読み出し、画像出力インタフェース31fを介して画像表示部32に、通信インタフェース31gを介して他のコンピュータ、プリンタ等に出力する(ステップS60)。具体的に、ステップS60において、ステップS59での判別結果が感染性炎症反応である又は感染性炎症反応である可能性が高いとの判別(すなわち、指標(ICIS)が判別用閾値より大きい)であれば、ハードディスク31cから、被験者が感染性炎症であることを示すメッセージ又は感染性炎症である可能性が高いことを示すメッセージを読み出し、診断支援情報として出力する。また、ステップS60において、ステップS59での判別結果が非感染性炎症反応である又は非感染性炎症反応である可能性が高いとの判別(すなわち、指標(ICIS)が判別用閾値以下である)であれば、ハードディスク31cから、被験者が非感染性炎症であることを示すメッセージ又は非感染性炎症である可能性が高いことを示すメッセージを読み出し、診断支援情報として出力する。
【0091】
以上のように、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1は、データ処理ユニット3が、検出ユニット2の検出部5で血球を検出した結果に基づき、血液中の赤血球のヘモグロビン量に関する分析情報(例えば、Delta−HeやRet−He)である第1分析情報、及び血液中の顆粒球に関する分析情報(例えば、Neut#、IG#、Neut−Y)である第2分析情報を取得し、取得した第1分析情報及び第2分析情報に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援情報を出力することで、血液を培養する作業が不要で、血球計数装置以外の装置で血液中の血球を検出する必要も生じないため、検査に必要な手間と費用を軽減することができる。
【0092】
また、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1は、全身性の炎症反応を呈している被験者の血液中の血球を検出した結果に基づき指標(ICIS)を、所定の基準で算出し、算出した指標(ICIS)に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかを判別することが可能で、全身性炎症反応症候群と診断されていない被験者に対して、血球計数装置1で取得した分析情報に基づく指標で感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援することができるため検査に必要な手間と費用を軽減することができる。
【0093】
さらに、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1は、全身性炎症反応症候群(SIRS)であると診断された被験者の血液中の血球を検出した結果に基づき指標(ICIS)を、所定の基準で算出し、算出した指標(ICIS)に基づいて被験者の炎症反応が感染性の全身性炎症反応症候群(敗血症)であるか否かの判別をすることが可能で、全身性炎症反応症候群と診断された被験者に対しても、血球計数装置1で取得した分析情報に基づく指標で感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援することができるため検査に必要な手間と費用を軽減することができる。
【0094】
またさらに、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1は、集中治療室の被験者の血液中の血球を検出した結果に基づき指標(ICIS)を、所定の基準で算出し、算出した指標(ICIS)に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別をすることが可能で、集中治療室の被験者に対しても、血球計数装置1で取得した分析情報に基づく指標で感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援することができるため検査に必要な手間と費用を軽減することができる。
【0095】
なお、上記実施の形態に係る血球計数装置1は、診断支援情報として、被験者が非感染性炎症であることを示すメッセージ又は非感染性炎症である可能性が高いことを示すメッセージを出力しているが、本発明はこれに限らず、診断支援情報として、ステップS58で算出した指標(ICIS)を出力しても良い。
【0096】
また、上記実施の形態に係る血球計数装置1は、指標(ICIS)を算出し、算出した指標(ICIS)に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を行っているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の判別式を用いて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を行ってもよい。判別式は、感染性炎症である被験者及び非感染性炎症である被験者のそれぞれについて分析情報を取得し、取得した分析情報を多変量解析することによって作成してもよい。
【0097】
なお、本発明の実施の形態に係る血球計数装置1からデータ処理ユニット3を取り出し、被験者の血液中の血球を検出した結果に基づく、血液中の赤血球のヘモグロビン量に関する分析情報(例えば、Delta−HeやRet−He)である第1分析情報、及び血液中の顆粒球に関する分析情報(例えば、Neut#、IG#、Neut−Y)である第2分析情報を受け付け、第1分析情報及び第2分析情報に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援情報を出力する診断支援装置としても構成することができる。
【0098】
つまり、診断支援装置は、検出ユニット2を備えず、図5に示すステップS58乃至ステップS60の処理のみを行う装置として構成されている。そのため、診断支援装置は、第1分析情報及び第2分析情報を受け付けることができれば、検出ユニット2に対して遠隔な場所に配置されていても、被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別ができる。
【符号の説明】
【0099】
1 血球計数装置
2 検出ユニット
3 データ処理ユニット
4 試料供給部
5 検出部
8 制御部
9 通信部
51 フローセル
52 半導体レーザ光源
53 照射レンズ系
54、57、58 フォトダイオード
54a ビームストッパ
54b、57a、58b アンプ
55 側方集光レンズ
56 ダイクロイックミラー
58a 光学フィルタ
31 データ処理部
31a CPU
31b メモリ
31c ハードディスク
31d 読出装置
31e 入出力インタフェース
31f 画像出力インタフェース
31g 通信インタフェース
31h 内部バス
32 画像表示部
33 入力部
34 コンピュータプログラム
35 可搬型記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の血液中の血球を検出する検出部と、
該検出部による検出結果に基づいて、前記血液中の赤血球のヘモグロビン量に関する第1分析情報、及び前記血液中の顆粒球に関する第2分析情報を取得する分析情報取得手段と、
該分析情報取得手段で取得した前記第1分析情報及び前記第2分析情報に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援情報を出力する診断支援情報出力手段と
を備えることを特徴とする血球計数装置。
【請求項2】
前記第1分析情報は、網赤血球のヘモグロビン量に関する分析情報であることを特徴とする請求項1に記載の血球計数装置。
【請求項3】
前記第1分析情報は、網赤血球のヘモグロビン量と成熟赤血球のヘモグロビン量との差に関する分析情報であることを特徴とする請求項1に記載の血球計数装置。
【請求項4】
前記第2分析情報は、好中球又は幼若顆粒球に関する分析情報であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の血球計数装置。
【請求項5】
前記分析情報取得手段は、前記検出部による検出結果に基づいて、形質細胞に関する第3分析情報をさらに取得し、
前記診断支援情報出力手段は、前記第1分析情報乃至前記第3分析情報の全ての分析情報に基づいて前記診断支援情報を出力することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の血球計数装置。
【請求項6】
前記検出部は、染色処理された血液中の血球を検出するように構成されており、
前記分析情報取得手段は、前記第2分析情報として好中球の数に関する分析情報を取得するとともに、前記検出部による検出結果に基づいて、好中球の染色度合いを示す第4分析情報及び幼若顆粒球の数に関する第5分析情報をさらに取得し、
前記診断支援情報出力手段は、前記第1分析情報乃至前記第5分析情報の全ての分析情報に基づいて前記診断支援情報を出力することを特徴とする請求項5記載の血球計数装置。
【請求項7】
前記分析情報取得手段で取得した前記第1分析情報及び前記第2分析情報に基づく指標を、所定の基準で算出する診断支援指標算出手段をさらに備え、
前記診断支援情報出力手段は、前記診断支援指標算出手段で算出した前記指標に基づいて、前記診断支援情報を出力することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の血球計数装置。
【請求項8】
前記診断支援情報出力手段は、前記診断支援指標算出手段で算出した前記指標と、所定の閾値とを比較し、比較結果に基づいて前記診断支援情報を出力することを特徴とする請求項7に記載の血球計数装置。
【請求項9】
前記分析情報取得手段で取得した前記第1分析情報及び前記第2分析情報に基づく指標を、所定の基準で算出する診断支援指標算出手段をさらに備え、
前記診断支援情報出力手段は、前記診断支援指標算出手段で算出した前記指標を、前記診断支援情報として出力することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の血球計数装置。
【請求項10】
前記検出部は、
前記血液が通過するフローセルと、
該フローセルを通過する血液に光を照射する光源と、
該光源から光が照射された血液からの光を受光する受光部と
を備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の血球計数装置。
【請求項11】
被験者の血液中の血球を検出した結果に基づく、前記血液中の赤血球のヘモグロビン量に関する第1分析情報、及び前記血液中の顆粒球に関する第2分析情報の入力を受け付ける分析情報受付手段と、
該分析情報受付手段で入力を受け付けた前記第1分析情報及び前記第2分析情報に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援情報を出力する診断支援情報出力手段と
を備えることを特徴とする診断支援装置。
【請求項12】
被験者の血液中の血球を検出した結果に基づく、前記血液中の赤血球のヘモグロビン量に関する第1分析情報、及び前記血液中の顆粒球に関する第2分析情報の入力を受け付ける第1ステップと、
該第1ステップで入力を受け付けた前記第1分析情報及び前記第2分析情報に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援情報を出力する第2ステップと
を含むことを特徴とする診断支援方法。
【請求項13】
前記第1ステップで入力を受け付ける前記第1分析情報及び前記第2分析情報は、全身性の炎症反応を呈している被験者の血液中の血球を検出した結果に基づくことを特徴とする請求項12に記載の診断支援方法。
【請求項14】
前記第1ステップで入力を受け付ける前記第1分析情報及び前記第2分析情報は、全身性炎症反応症候群と診断された被験者の血液中の血球を検出した結果に基づくことを特徴とする請求項12に記載の診断支援方法。
【請求項15】
前記第1ステップで入力を受け付ける前記第1分析情報及び前記第2分析情報は、集中治療室の被験者の血液中の血球を検出した結果に基づくことを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載の診断支援方法。
【請求項16】
被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、
前記診断支援装置を、
被験者の血液中の血球を検出した結果に基づく、前記血液中の赤血球のヘモグロビン量に関する第1分析情報、及び前記血液中の顆粒球に関する第2分析情報の入力を受け付ける分析情報受付手段、及び
該分析情報受付手段で入力を受け付けた前記第1分析情報及び前記第2分析情報に基づいて被験者の炎症反応が感染性炎症反応であるか、非感染性炎症反応であるかの判別を支援する診断支援情報を出力する診断支援情報出力手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−69696(P2011−69696A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220310(P2009−220310)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】