説明

血糖を非侵襲的に検出するための光分光デバイスと関連する使用方法

光を集めるための装置と、関連の使用方法とが開示されている。本装置は、前端と後端と内面と外面とを有する第1の外壁であって、内面が内側部分を画定し、内側部分が前端と後端とを有する第1の外壁と、内側部分内に配置される光源とを備える。第1の外壁は後端内に開口を有し、開口は開口直径を有する。内側部分は略円錐台形状を有し、かつ開口における開口直径に等しい断面直径と、前端近くにおける開口直径より小さい第2の断面直径とを有し、内面は光反射性である。光は、サンプルを通過して開口および集光レンズまたは第2の外壁を通って進む。透過回折格子が利用されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖を非侵襲的に検出する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、制御されなければ、やがて神経、血管、目、腎臓および心臓を含む多くの体組織に深刻な損傷を与えることになる慢性疾患である。国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)は、2007年度において、合衆国における2360万人または人口の7.8パーセントが糖尿病であったと推定している。世界的には、世界保健機関(WHO)が、1億8000万人を超える人々が糖尿病を煩っていて、2030年までにその数は3億6600万人にまで増加し、そのうちの3030万人が米国人であると推定している。WHOによれば、2005年には、推定110万人が糖尿病によって死亡した。WHOは、糖尿病による死者は2006年から2015年までの間に全体としては50%を超えて増加し、高中所得国では80%を超えて増加すると見積もっている。
【0003】
糖尿病に関わる個人的および社会全体としての経済的負担は多大である。米国糖尿病協会によれば、2007年の米国において、糖尿病に関わる経済的費用の年間総額は1740億ドルであったと推定された。これは、2002年以降420億ドルの増加である。この32%増加は、金額が毎年80億ドルを超えて上昇していることを意味する。
【0004】
糖尿病管理の極めて重要な要素は、糖尿病患者による自宅環境での血糖濃度の自己監視(SMBG)である。血糖レベルを頻繁に検査することによって、糖尿病患者は、健康に対する長期的な負の影響を制御し続けかつこれを防止するために、投薬、食事療法および運動をより良く管理することができる。実際、1,441名の糖尿病患者を数年間追跡調査した糖尿病コントロールと合併症に関する臨床試験(DCCT)は、毎日複数回の血液検査を行う強化制御プログラムに従った者では、従来療法グループに比べて、糖尿病性眼疾患を発症した者が僅かに4分の1、腎臓病を発症した者が2分の1、神経疾患を発症した者が3分の1であり、これら3つの合併症の初期症状を既に呈していた者で症状をさらに悪化させた者は遙かに少ないものであったことを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の監視技法は、分析に先立って皮膚を介して血液を抜き取るというその不便かつ痛みを伴う性質によって習慣的使用をためらわせるものであり、多くの糖尿病患者が良好な血糖管理をするために必要な熱心さを欠く原因となっている。結果的に、糖尿病の管理にとっては、グルコース濃度の非侵襲的測定は望ましくかつ有益な開発である。非侵襲の監視装置は、毎日の複数回の検査を痛みのないものにし、かつ糖尿病を抱える子供達にとって受け入れやすいものにする。2005年に公表された研究(J.Wagner、C.MalchoffおよびG.Abbott共著「Diabetes Technology&Therapeutics」7(4)、2005年、612〜619)によれば、非侵襲の血糖監視デバイスによって、糖尿病患者はより頻繁にSMBGを実行し、よって生活の質を向上させている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
血糖を決定するための非侵襲的手法は、幾つか存在する。血液生化学成分を非侵襲的に検出する1つの技法は、光スペクトルデータを収集して分析することを含む。
【0007】
分光法から得られるスペクトルまたは他のデータからグルコース濃度等の血液の性状に関する情報を抽出することは、検出対象である領域に血液以外の成分(例えば、皮膚、脂肪、筋肉、骨、間質液)が存在することに起因して複雑な問題である。このような他の成分は、読取り値を変えるような影響をこれらの信号に与える可能性がある。具体的には、結果的に得られる信号は、その大きさが信号の血液に対応する部分より遙かに大きくなる場合があり、よって血液の性状に関する情報を正確に抽出する能力を制限する。
【0008】
図面は必ずしも一定の縮尺で描かれていないが、幾つかの図を通じて、類似の数字は実質的に類似のコンポーネントを記述している。異なる接尾文字を有する類似の数字は、実質的に類似のコンポーネントの異なる例を表す。諸図は、概して、本文書において検討される様々な実施形態を、限定ではなく例として示している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】幾つかの実施形態による、動脈血の光吸収に対応する脈波を示すプロットである。
【図2】本発明による、光計測システムのコンポーネントを示す簡易ブロック図である。
【図3】幾つかの実施形態による、生体サンプルの光学的測定を実行するための既存の光学構成を示す。
【図4A】生体サンプルの光学的測定を実行するための第1の代替実施形態を示す。
【図4B】生体サンプルの光学的測定を実行するための好適な実施形態を示す。
【図4C】生体サンプルの光学的測定を実行するための第2の代替実施形態を示す。
【図5】例示的な光漏斗および半角(α)を示す断面図である。
【図6】例示的な光漏斗および光源を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明は、詳細な説明の一部を形成する添付の図面を参照することを含む。これらの図面は、本発明が実施され得る特有の実施形態を例示として示している。以下、本明細書では「例」とも称されるこれらの実施形態を、当業者による本発明の実施を可能にするために詳細に説明する。本発明の範囲を逸脱することなく、これらの実施形態は組み合わされてもよく、他の実施形態が利用されてもよく、または構造的かつ論理的変更が行われてもよい。従って、以下の詳細な説明は限定的な意味で捉えられるべきものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその同等物によって規定される。
【0011】
本文書において、「a(1つの)」または「an(1つの)」という用語は1つ、または2つ以上を包含して使用され、「or(または)」という用語は、別段の指摘のない限り、非排他的な「or(または)」を指して用いられる。さらに、本明細書において使用される表現法または用語法は、別段の定義のない限り、単に説明のためのものであって、限定を目的とするものではないことも理解されるべきである。さらに、本文書において参照される全ての公報、特許および特許文献は、参照によりその全体が、参照により個別に組み込まれるかのように本明細書に組み込まれる。本文書と、こうして参照により組み込まれるこれらの文献との間で使用法に不一致が生じる場合、組み込まれる引例における使用法は本文書の使用法の補足として考慮されるべきであり、相容れない不一致であれば、本文書における使用法が優先する。
【0012】
本発明の実施形態は、サンプルを照射してその光学的性質を測定するための光漏斗等の光学コンポーネントに関する。ヒトまたは動物の身体部位の分光学的サンプリングが例示されるが、これらの実施形態は、光検出器、光学顕微鏡、分光計等を含むあらゆるタイプの光学的計測に関連している。
【0013】
光分光は、ヒトの指等の生体サンプルによって吸収される光の量を決定するために使用されることが可能である。指によって吸収される光量を測定すれば、ヒトのグルコース、コレステロールおよびヘモグロビンのレベルを非侵襲的に決定することが可能である。通常は、指先での測定は、多くの毛細血管が指先に集まっている、および動脈血から静脈血への転換が指先で生じる、という理由で好ましい。しかしながら、本発明による技法は、ヒトの指での用途に限定されない。例えば、ヒトの耳たぶ等の他のサンプルの使用が望ましい場合もある。
【0014】
光は、ヒトの指等の生体サンプルを介して透過されると、皮膚、筋肉、骨、脂肪、間質液および血液を含む指の様々な構成要素によって吸収されかつ散乱される。しかしながら、ヒトの指による光の吸収は、心拍に一致する小さな周期性パターンを呈することが観察されている。図1は、ユーザの心拍に起因する毛細血管内の動脈血の光吸収に対応する周期的な検出器光電流、I(t)のプロット102を描いている。この周期性パターンの大きさは、検出器によって発生される合計光電流に比べると小さいが、プロット102のこの周期性パターンからはかなりの情報の抽出が可能である。例えば、ヒトの心拍数が毎分60であるとすれば、任意の脈拍の始まりから終わりまでの時間は1秒である。この1秒間に、光電流は、最大またはピーク104の読取り値と、最少または谷106の読取り値とを有する。プロットのピーク104の読取り値は、毛細血管内に最小量の血液が存在するときに一致し、かつ谷106の読取り値は、毛細血管内に最大量の血液が存在するときに一致する。周期性プロットのピークおよび谷によって提供される情報を用いることにより、毛細血管内に存在しない、皮膚、脂肪、骨、筋肉および間質液等の指の主要な構成要素による光の吸収および散乱は除外される。毛細血管内に存在しないこれらの主要な構成要素が除外される理由は、これらが1拍の時間間隔において変化しないと思われることにある。言い替えれば、血液によって吸収される光は、プロット102のピークと谷とを基礎として検出されることが可能である。
【0015】
光検出デバイスによって発生される周期性光電流のピークをI、周期性光電流の隣接する谷をI、およびサンプルなしの状態で光検出デバイスによって発生される光電流をIとすると、ピークおよび谷の光電流に対応する透過率は、次のように定義されることが可能である:
【数1】

および、
【数2】

【0016】
対応するピークおよび谷の吸光度は、
=−log(T) (3)
および、
=−log(T) (4)
である。
【0017】
とAとの差は、指内の血液のみによる光の吸収および散乱を反映している:
【数3】

【0018】
式(5)に示されているアルゴリズムでは、指を透過される光パワーに対応する光電流を監視するだけでよい。その結果、ヒトの指がない状態で光検出デバイスにより発生される光電流を決定する必要はない。
【0019】
図2は、サンプル(例えば、ヒトの指)内の血液のみによって光の吸収および散乱量を決定するための、「拍動」の概念を利用する、概して数字200で示されている現在の光計測システムのコンポーネントを示す簡易ブロック図である。電池等の電源201は、ユーザの指の先端へ方向づけられる複数の光ビーム204、206、208、210を発生する光源202へ電力を供給する。光計測システムの一態様200によれば、光ビーム204、206、208、210は各々、典型的には約700nmから約1600nmまでである同じ波長範囲を有する。本明細書において、光計測システム200は4つの光ビームを発生するものとして記述されているが、他の実施形態では、光源202がより少ない光ビームまたは追加の光ビームを発生するように変更され得ることは予期される。
【0020】
第1の開口212は、光ビーム204、206、208、210がサンプル(例えば、ヒトの指)の標的部位に当たることを保証する。第2の開口214は、光ビームのサンプルを介して透過される部分がレンズ216に当たることを保証する。光ビーム204、206、208、210はサンプルおよび光計測システム200のコンポーネントによって減衰され、よって、サンプルからは減衰された光ビーム218、220、222、224が放射される。減衰された光ビーム218、220、222、224はレンズ216に当たり、レンズ216は減衰された光ビーム218、220、222、224を、これらが検出器ブロック226上へより効率的に当たるように集める。
【0021】
検出器ブロック226はレンズ216の直下に位置合わせされ、フォトダイオードアレイ等の複数の光検出デバイス(LSD)228、230、232、234を備える。光計測システム200の一態様によれば、光検出デバイス228、230、232、234は各々、特有の1つの(または複数の)光スペクトルを検出するように調整される。例えば、各光検出デバイスは、フィルタ236、238、240、242等の対応する1つの干渉フィルタ(IF)に関連づけられてもよい。干渉フィルタは、光の1つまたは複数のスペクトルバンドまたはスペクトル線を透過させて他を実質的に遮断する。
【0022】
光検出デバイス228、230、232、234は各々、特定の光検出デバイスによって受け入れられる光のパワーに比例する対応した光電流信号244、246、248、250を発生する。フォトダイオードによって発生される光電流信号は、アナログ電圧信号またはデジタル信号等の別の信号形式に変換されることが可能である。
【0023】
検出器ブロック226へはプロセッサ243が結合され、これは、光電流信号244、246、248、250の変化を計算するように構成される。ある例示的な実施形態において、プロセッサ243は、指内の血液のみによって引き起こされる光吸収(ΔA)の変化を計算するために、上記の数式(5)によって示される式に示されているようなアルゴリズムを実行する。この後、血液の光吸収のこの定量的計算は、血液の特性を決定するために使用されることが可能である。例えば、ユーザのグルコースレベルは、計算された光吸収値をメモリ(不図示)に記憶されている異なるグルコースレベルに対応する既定値と比較することによって決定されることが可能である。
【0024】
周期性パターンの振幅(即ち、ピークと谷との差分)は、典型的には、サンプル(例えば、ヒトの指)を透過される光パワーによって発生される総光電流の1%−2%であることから、指ベースの拍動検出方法に関連づけられる困難さは、信号対雑音(「S/N」)比が低いことにある。ΔAの決定に際して100:1のS/N比を達成するためには、サンプルによる光吸収の測定に用いられているデバイスのベースライン雑音の吸収が10Hzの帯域幅内で3.0×10−5(ピーク間)を超えるべきではない。
【0025】
しかしながら、帯域幅10Hz内でのベースライン雑音の3.0×10−5という(ピーク間)吸収レベルは、幾つかの電池電源式ハンドヘルド非侵襲血液生化学成分計測デバイスによって用いられる低い光パワーレベルでは達成が困難である。
【0026】
ある知られているソリューションはデータの平均化を含んでいる。S/N比を高めるために、下式により定義されるようなΔAの平均値が、血糖濃度を抽出するためのさらなる計算に使用される:
【数4】

この式において、Mは拍動測定の時間間隔の間の心拍数である。しかしながら、この手法は、心拍数が毎秒約1であるということに起因して長いデータ収集時間を要する。例えば、S/N比を5倍に上げるためには25秒が必要とされ、またS/N比を10倍に上げるためには100秒が必要とされることになる。これに比べて、現在市販されている血液を抜き取るグルコース測定器は5秒以内で血糖レベルを決定することができる。さらに、検出時間が長ければ、指の移動、光パワーのドリフト、温度変化等によって測定エラーは著しく増大する。
【0027】
別のソリューションは、光の照射パワーを増大することを含んでいる。しかしながら、デバイスによってはサイズが制限されることから、所望のベースライン雑音レベル(例えば、電池消耗)を達成するために照射パワーを増大することは不可能である場合があり、または効率的でない場合がある。従って、デバイスのサイズ、光の照射パワーおよび電池の電力消費量を著しく増大することなく、このようなデバイスによって検出され得る光パワー量を増大するためのシステムおよび方法が必要とされている。
【0028】
図3は、サンプル(例えば、ヒトの指)によって吸収される光の量を測定するための従来の先行技術装置の構成を描いている。ランプ302は、近赤外(「NIR」)線または700nmから1600nmまでの光ビームを発生する。発生されたNIR光ビームは入口開口304へ入り、サンプルを通過する。サンプルを介して透過されたNIR光ビームは出口開口306を通過してレンズ308上へ至る。レンズ308は光ビームをコリメートし、光ビームをフィルタアレイ310上へ、次に検出器アレイ312上へ投射する。本装置は、迷光が光検出器に到達することを防止するための壁ハウジング314も含む。
【0029】
図3に示されている光学系は、極めて低い光パワー効率を有する。光は、入口開口304を介してサンプルに進入する。典型的には、子供の小さい指サイズに対応するために、入口開口304は約0.25(1/4)インチ以下の直径を有する。サンプルを介して透過された光は、出口開口306を介して集められる。出口開口306は、典型的には、約0.25(1/4)インチ以下の直径を有する。ランプ302から放射される大部分の光パワーは、照射立体角が小さいことに起因して標的部位へ達することができない。図3に示されている光学的構成はまた、集光用の小さい立体角を有する。光は、出口開口306から放射されてサンプルより下の2π立体角全体へ進入する。図3に示されている光学系を用いて集められる総光パワーは、典型的には、開口306を介して放射される光パワーの約10%である。さらに、検出器アレイ312内のあらゆる検出器へ全体で700nmから1600nmまでの光パワー分布が透過されるが、各検出器は、典型的には、〜10nmという比較的狭い波長の帯域幅しか検出しない。従って、光パワーの98%まで(またはそれ以上)が無駄にされる。
【0030】
図4Aは、例示的な第1の代替実施形態による、生体サンプルの光検出を実行するための光計測システム400を描いている。本システムは、図5を参照して後述する技法に従って構築されてもよい光照射漏斗412を含む。光照射漏斗412の内部には、例えばランプである小さい光源402が配置され、これが複数の光ビーム404、406、408、410を発する。光ビーム404、406、408、410は各々、例えば約700nmから約1600nmまでの同じ波長範囲を有する。光計測システム400は、本明細書では4つの光ビームを発生するものとして記述されているが、他の実施形態では、光源がより少ない光ビームまたは追加的な光ビームを発生するように変更され得ることが予期される。
【0031】
光源402からの光ビーム404、406、408、410は、ビームの幾分かが漏斗の側壁によって反射されながら出口開口416を介して光照射漏斗412を出る。光照射漏斗412の出口開口416の直径は、前端に近い漏斗直径414より大きいか等しい。光源402の電極413および415は、ランプ制御盤401へ接続されている。例えば、ある実施形態によれば、漏斗直径414は約0.125(1/8)インチであり、出口開口416の直径は約0.25(1/4)インチである。従って、図3に描かれている構造とは対照的に、光照射漏斗412は光ビーム404、406、408、410を概して同じ方向にサンプルの頂部へ向かって集束させる。光照射漏斗は、図3の配置に比べて標的部位が受け入れる総光パワーを大幅に増大させ、よって、S/N比を実質的に増大させる場合がある。
【0032】
図5は、ある例示的な光漏斗512の横断面図を描いたものである。光漏斗512は、例えば図4A、図4Bもしくは図4Cにおいて412である光照射漏斗、または図4Cにおいて434である集光漏斗として用いられることも可能である。例示的な光漏斗512は、直径D1を有する略円筒形の外壁502と、略円錐台形状を有する内壁506によって画定される内側部分とを有する。漏斗の内側部分は、前端504において直径D2を有する。漏斗は、後端に出口開口508を有する。開口508(光の出口)は、D2より大きい直径D3を有する。これらの2端間の分離距離はLであり、内面の円錐台形状の半角はαである。半角は、例えば約45度未満である。ある例示的な実施形態では、半角αの値は約5度から約25度までであってもよい。光漏斗512は、任意の所望される屈折率を有するプラスチック、金属または他の適切な材料もしくは材料の複合物/層から形成されてもよい。ある態様によれば、光漏斗512は金属から作られ、内壁506の表面は高反射性にされる。光照射漏斗の場合、標的部位によって受け入れられる総光照射パワーは、図3に示されている光照射構造体の3倍から4倍に増大される場合がある。
【0033】
図6は、概して数字600で示される例示的な光学装置を描いたものであり、本光学装置は、例えばランプである光源606と、光照射漏斗612とを含む。光照射漏斗の前端近く、または前端に接触して、ランプパワーを制御するためのプリント基板(「PCB」)が位置合わせされてもよい。例えばランプである光源606は、漏斗の前端を通って延びるワイヤを介して基板602へ接続される。例えばランプである光源606は、PCB602へ取り付けられてもよい。PCB602は、例えば図2に示されている電源201である電源、例えば電池へ接続される電力線604を介して電力を受け取る。電力線604を介して電力が供給されると、例えばランプである光源606は、例えば図4A、図4Bおよび図4Cに示されている光ビーム404、406、408および410である複数の光ビームを発生する。漏斗内の例えばランプである光源606の位置は、大きい開口608(光の出口)によって受け入れられる照射パワーを最大にするように調整されることが可能である。
【0034】
ある例示的な実施形態では、光照射漏斗612はPCB602へねじ、ポストまたは他の接続手段を介して取り付けられる。光照射漏斗612の内面の円錐台形状は、ランプから図4A、図4Bおよび図4Cに示されている光ビーム404、406、408、410を概して円錐形のビームに集めて指へ集束させる働きをする。
【0035】
図4Aを再度参照すると、光ビーム404、406、408、410はサンプルおよび光計測システム400のコンポーネントによって減衰される。減衰された光ビームは次に出口開口418を通り、例えば非球面レンズである集光レンズ420によって集められる。例えば非球面レンズである集光レンズ420を出るビーム421は、次にフィルタ426を通過し、検出器428へ至ってもよい。
【0036】
光を集めるために例えば非球面レンズである集光レンズ420を用いる優位点は、集光のためにその大きい立体角にある。適切に構成されれば、標的部位から放射される光を集めるために例えば非球面レンズである集光レンズ420が用いられる場合に各検出器によって受け入れられる総光パワーは、図3に示されている集光構成に比べて3倍から4倍増大されることがある。光照射漏斗412と、集光器としての例えば非球面レンズである集光レンズ420とを用いる組合せは、各検出器によって受け入れられる総光パワーを、図3に示されている光学構成に比べて約9倍から約16倍増大することがある。
【0037】
検出器ブロック428は例えば非球面レンズである集光レンズ420の下に位置合わせされ、かつフォトダイオードアレイ等の複数の光検出デバイスを含んでもよい。光検出デバイスは各々、光の特有のスペクトルを検出する。ある例示的な実施形態では、干渉フィルタ426は各光検出デバイスの上に置かれる。
【0038】
検出器ブロック428へは、例えば図2に示されているプロセッサ243であるプロセッサが結合されてもよく、このプロセッサは、光検出デバイスによって発生される電流信号の変化を計算するように構成されてもよい。例えば、図2を参照して先に述べたように、プロセッサ243は、指内の血液のみに起因して発生される光吸収の変化(ΔA)を計算するために、式(5)に示されているようなアルゴリズムを実行する。この後、血液の光吸収のこの定量的計算は、血液の特性を決定するために使用されることが可能である。
【0039】
図4Bは、概して数字460で示される、生体サンプルの光検出を実行するための光学構成の好適な一実施形態を示している。光源402は、複数の光ビーム404、406、408、410を発生する。光源402は、例えば白熱光源または赤外線発光ダイオードであってもよい。光計測システム460の一態様によれば、光ビーム404、406、408、410は各々、例えば700nmから1600nmまでの同一の波長範囲を有する。本明細書において、光計測システム460は4つの光ビームを発生するものとして記述されているが、他の実施形態では、光源がより少ない光ビームまたは追加の光ビームを発生するように変更され得ることが予期される。光源402からの光ビーム404、406、408、410は、出口開口416を介して光照射漏斗412を出る。光照射漏斗412の出口開口416の直径は、光源402の2つの電極413および415がランプ制御盤401へ接続される上部の開口414の直径より大きいか等しい。例えば、ある実施形態によれば、入口開口414の直径は約0.125(1/8)インチであり、出口開口416の直径は約0.25(1/4)インチである。従って、図3に描かれている配置とは対照的に、光照射漏斗412は光ビーム404、406、408、410を概して同じ方向にユーザの指の頂部へ向かって集束させる。光照射漏斗は、図3の配置に比べて標的部位により受け入れられる総光パワーを大幅に増大させ、よって、S/N比を実質的に増大させる場合がある。
【0040】
数字460によって示される図4Bに描かれている例示的な好ましい実施形態において、光ビーム404、406、408、410はサンプルおよび光計測システムのコンポーネントによって減衰される。減衰された光NIRビームは、次に出口開口418を通って例えば非球面レンズである集光レンズ420によって集められ、透過格子デバイス422上へ投射される。透過回折格子422は、混合されたNIR光ビームの様々な波長成分を、矢印430によって描かれている方向へ単調増加する波長を有するスペクトルに角度分解する。言い替えれば、回折角度は波長に依存することから、光ビームの異なる波長成分は回折格子422によって異なる方向へ送られる。透過回折格子422を出る光スペクトル424は、次にオプションである干渉フィルタアレイ426によって狭められてもよい。光は、光検出器アレイ428(例えば、フォトダイオード)によって検出される。アレイ428における検出器は、光の特定のスペクトルに同調された検出器が透過回折格子422からそのスペクトル内の光を受け入れるように位置合わせされてもよい。例えば、フィルタアレイ426における各干渉フィルタの中心波長は、透過回折格子422からのスペクトルの対応する波長成分と一致するように単調増加して配列されてもよい。例えばフィルタアレイ426であるフィルタの使用が任意選択であって、必須でないことは明らかであろう。
【0041】
700nmから1600nmまでの光パワー分布全体が全ての検出器へ送られる図3における集光構造に比べると、透過回折格子を用いる手法は、各検出器へ送られるスペクトルを検出器(および/または対応するフィルタ)の中心波長に近い波長成分に限定する。その結果、無駄にされる光の量は著しく低減され、フォトダイオードによって受け入れられる光パワーは、図4Aを参照して記述された集光構成に比べて10倍から20倍増大される場合がある。従って、光照射漏斗412と、集光器としての例えば非球面レンズである集光レンズ420と、波長分離デバイスとしての透過格子422とを利用する組合せは、フォトダイオードによって受け入れられる光パワーを、図3に示されている光学構成に比べて約100倍から約200倍増大させる場合がある。
【0042】
図4Cは、概して数字462で示される例示的な第2の代替実施形態を示している。本明細書において、光計測システム462は4つの光ビームを発生するものとして記述されているが、他の実施形態では、光源がより少ない光ビームまたは追加の光ビームを発生するように変更され得ることは予期される。光源402からの光ビーム404、406、408、410は、出口開口416を介して光照射漏斗412を出る。光照射漏斗412の出口開口416の直径は、光源402の2つの電極413および415がランプ制御盤401へ接続される上部の開口414の直径より大きいか等しい。例えば、ある実施形態によれば、入口開口414の直径は約0.125(1/8)インチであり、出口開口416の直径は約0.25(1/4)インチである。光照射漏斗412は、サンプル(例えば、指)を照射する。光ビーム404、406、408、410は、サンプルおよび光計測システムのコンポーネントによって減衰される。サンプルからは、減衰された光ビーム436、438、444、446が放出される。減衰された光ビーム436、438、444、446は入口開口442(第1の開口)を介して集光漏斗434へ入り、出口開口440(第2の開口)を介して集光漏斗434を出る。集光漏斗434の入口開口442の直径は、出口開口440の直径より小さいか等しい。例えば、ある実施形態によれば、出口開口440の直径は約0.625(5/8)インチであり、入口開口442の直径は約0.25(1/4)インチである。集光漏斗434は、集められた光をフィルタアレイ426上へ投射してもよい。
【0043】
集光漏斗434は、図5を参照して後述する技法に従って構築されてもよい。例えば、例示的な集光漏斗434は、略円筒形の外壁502と、円錐台形状である内壁506によって画定される中央開口とを有する。集光漏斗434もまた、任意の所望される屈折率を有するプラスチック、金属または他の適切な材料もしくは材料の複合物/層から形成されてもよい。集光漏斗434は金属から製造されてもよく、円錐台形状である内壁の表面は高反射性にされてもよい。集光漏斗434の全体的な集光効率は80%を超えることが観察されているが、これは、図3に示されている従来の集光構造体を用いて達成される効率の8倍である。光照射漏斗412と集光漏斗434とを用いる組合せは、検出器によって受け入れられる光パワーを、図3における光学構成に比べて約20倍から約30倍増大させる場合がある。
【0044】
フィルタアレイ426および検出器アレイ428は集光漏斗434の出口開口440の下に位置合わせされ、フォトダイオードのアレイ等の例えば図2に示されている光検出デバイス228、230、232、234である複数の光検出デバイスを備える。ある例示的な実施形態では、各光検出デバイスは光の特定の波長を検出する。
【0045】
本発明の実施形態は、上述の装置または集光システムを用いる方法も含む場合がある。光源は、透過性、半透過性または反射性の光を発生するのに十分な照射漏斗を介して標的に接触してもよい。透過され、半透過され、または反射された光は集光システムへ入り、例えば1つまたは複数の検出器へ配向されてもよい。
【0046】
このように、新規の発明の幾つかの実施形態を示しかつ説明した。これまでの説明から明らかであるように、本発明の所定の態様は本明細書に例示されている例の特定の詳細によって限定されるものではなく、よって、当業者にはこれらの態様の他の修正および用途または同等物が想起されることは予期される。本明細書においてこれまでに使用された用語「have(有する)」、「having(有する)」および「include(含む)」、「including(含んでいる)」ならびに類似の用語は、「required(必須)」の意味合いではなく、「optional(任意選択)」または「may include(含む場合がある)」という意味合いで使用されている。しかしながら、本明細書および添付の図面を考察した後、当業者には、本発明構造の多くの変更、修正、変形および他の使用法および用途が明らかとなるであろう。本発明の精神および範囲を逸脱しないこのような変更、修正、変形ならびに他の使用法および用途は全て、添付の請求の範囲によってのみ限定される本発明によって包含されるものと見なされる。本明細書に開示されている実施形態が任意の従属クレームに記載されている特徴の任意および全ての組合せを含むことは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を集めるための装置であって、
前端と後端と内面と外面とを有する第1の外壁であって、内面が内側部分を画定し、内側部分が前端と後端とを有する第1の外壁と、
内側部分内に配置される光源とを備え、
第1の外壁が後端内に開口を有し、開口が開口直径を有し、
内側部分が略円錐台形状を有し、
内側部分が、開口における開口直径に等しい断面直径と、前端近くにおける開口直径より小さい第2の断面直径とを有し、
内面が光反射性である、装置。
【請求項2】
第1の外壁が金属を含み、かつ内面が研磨される、請求項1に記載の光を集めるための装置。
【請求項3】
第2の断面直径から第1の断面直径へ延びて円錐台形状を二等分する垂線からの円錐台形状の半角が約45度未満である、請求項1に記載の光を集めるための装置。
【請求項4】
円錐台形状の半角が、約5度より大きくかつ約25度より小さい、請求項3に記載の光を集めるための装置。
【請求項5】
サンプルを介する光を受け入れるための開口の下に位置合わせされる集光レンズをさらに備える、請求項1に記載の光を集めるための装置。
【請求項6】
集光レンズが非球面レンズである、請求項5に記載の光を集めるための装置。
【請求項7】
サンプルと集光レンズとの間に位置決めされる開口をさらに備える、請求項5に記載の光を集めるための装置。
【請求項8】
複数の光フィルタをさらに備え、
複数の光フィルタのうちの各光フィルタが、集光レンズからの光を受け入れかつ濾波された光を複数の光検出器のうちの対応する光検出器上へ放射するように位置合わせされ、
複数の光検出器のうちの各光検出器が、複数の光フィルタのうちの対応するフィルタによって放射されるスペクトルにおける光を検出するように調整される、請求項5に記載の光を集めるための装置。
【請求項9】
サンプルと集光レンズとの間に位置決めされる開口をさらに備える、請求項8に記載の光を集めるための装置。
【請求項10】
集光レンズの下に位置合わせされる回折格子をさらに備える、請求項8に記載の光を集めるための装置。
【請求項11】
サンプルと集光レンズとの間に位置決めされる開口をさらに備える、請求項10に記載の光を集めるための装置。
【請求項12】
複数の光フィルタをさらに備え、
複数の光フィルタのうちの各光フィルタが、集光レンズからの光を受け入れかつ濾波された光を複数の光検出器のうちの対応する光検出器上へ放射するように位置合わせされ、
複数の光検出器のうちの各光検出器が、複数の光フィルタのうちの対応するフィルタによって放射されるスペクトルにおける光を検出するように調整される、請求項10に記載の光を集めるための装置。
【請求項13】
前端と後端と内面と外面とを有する第2の外壁をさらに備え、内面が内側部分を画定し、内側部分が前端と後端とを有し、
第2の外壁の内側部分が後端に第1の断面直径を有する第1の開口を有し、かつ第2の外壁の内側部分が前端に第2の断面直径を有する第2の開口を有し、かつ第1の断面直径が第2の断面直径より大きく、
内側部分が略円錐台形状を有し、かつ光反射性であり、
サンプルが、第1の外壁における開口と第2の外壁の前端における第2の開口との間に位置合わせされることが可能である、請求項1に記載の光を集めるための装置。
【請求項14】
複数の光フィルタをさらに備え、
複数の光フィルタのうちの各光フィルタが、第2の外壁の後端における第1の開口からの光を受け入れかつ濾波された光を複数の光検出器のうちの対応する光検出器上へ放射するように位置合わせされ、
複数の光検出器のうちの各光検出器が、複数の光フィルタのうちの対応するフィルタによって放射されるスペクトルにおける光を検出するように調整される、請求項13に記載の光を集めるための装置。
【請求項15】
光を集めるための方法であって、
第1の外壁の内側部分内に位置決めされる光源を利用することを含み、
第1の外壁が前端と後端と光反射性の内面と外面とを含み、内面が内側部分を画定し、内側部分が前端を有し、後端が略円錐台形状であり、第1の外壁が後端内に開口を有し、開口が開口直径を有し、内側部分が開口における開口直径に等しい断面直径と、前端近くにおける開口直径より小さい第2の断面直径とを有する、方法。
【請求項16】
サンプルを介する光を受け入れるために開口の下に位置合わせされる集光レンズを利用することをさらに含む、請求項15に記載の光を集めるための方法。
【請求項17】
集光レンズが非球面レンズである、請求項16に記載の光を集めるための方法。
【請求項18】
サンプルと集光レンズとの間に位置決めされる開口を利用することをさらに含む、請求項16に記載の光を集めるための方法。
【請求項19】
複数の光フィルタを利用することをさらに含み、
複数の光フィルタのうちの各光フィルタが、集光レンズからの光を受け入れかつ濾波された光を対応する複数の光検出器上へ放射するように位置合わせされ、かつ複数の光検出器のうちの各光検出器が、複数の光フィルタのうちの対応する光フィルタによって放射されるスペクトルにおける光を検出するように調整される、請求項16に記載の光を集めるための方法。
【請求項20】
前端と後端と内面と外面とを有する第2の外壁を利用することであって、内面が内側部分を画定し、内側部分が略円錐台形状であって光反射性でありかつ前端と後端とを有し、第2の外壁の内側部分が後端において第1の断面直径を有する第1の開口を有し、第2の外壁の内側部分が前端において第2の断面直径を有する第2の開口を有し、第1の断面直径が第2の断面直径より大きいことと、
サンプルを第1の外壁における開口と第2の外壁の前端における第2の開口との間に位置合わせすることをさらに含む、請求項15に記載の光を集めるための方法。
【請求項21】
複数の光フィルタを利用することをさらに含み、
複数の光フィルタのうちの各光フィルタが、第2の外壁の後端における第1の開口からの光を受け入れかつ濾波された光を対応する複数の光検出器上へ放射するように位置合わせされ、かつ複数の光検出器のうちの各光検出器が、複数の光フィルタのうちの対応する光フィルタによって放射されるスペクトルにおける光を検出するように調整される、請求項20に記載の光を集めるための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−522579(P2012−522579A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503498(P2012−503498)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/028255
【国際公開番号】WO2010/114736
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(501305844)ザ・キュレーターズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミズーリ (12)
【氏名又は名称原語表記】THE CURATORS OF THE UNIVERSITY OF MISSOURI
【Fターム(参考)】