説明

血糖増加を制御する組成物

本発明は、ガレートカテキン(GC)を含む緑茶抽出物(GTE)と、GCの腸内吸収を防止するために高分子とを含む血糖制御用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食後の血糖増加を低めるカテキン関連組成物に関し、より詳細には、本発明は、ガレートカテキン(GC)を含む緑茶抽出物(GTE)と、ガレートカテキン(GC)の腸内吸収を妨害する高分子とを含む血糖調節のための機能性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
2型糖尿病は末梢のインスリン抵抗性及びβ-細胞機能不全の二つの主な特性を有する。肥満、長期高血糖などの遺伝的及び環境的要因により、人間の2型糖尿病が誘発または悪化される恐れがある。高血糖は複数のメカニズムを通って末梢のインスリン抵抗性及びβ-細胞の損傷を引き起こし、これを総括して糖毒性と呼ばれる(Borona,2008)。MODY−2糖尿病では、グルコキナーゼ遺伝子の機能的な欠陥により、肝臓での糖取り組みが制限され、食後高血糖が長期化(Jiang等、2008)され、結果的にβ−細胞の過負荷が発生する。従って、空腹時血糖調節だけでなく、食後の高血糖を最小化するための努力は、2型糖尿病を予防及び治療するにおいて重要である。今までのアミラーゼ阻害剤またはグルコシダーゼ阻害剤が食後の高血糖を減少させることができるが、これらの使用は、単糖への転換を妨げ、いくつかの胃腸の副作用を引き起こす恐れがある。緑茶(Camellia sinensis)の葉はポリフェノールを含んでおり、カテキン系は主なポリフェノールである。緑茶葉から水で抽出されたカテキンには、主にガレート、エピカテキンガレート(ECG)及びエピガロカテキンガレート(EGCG)を含むガレートカテキン(GC)が含まれる。2型糖尿病について、生体外(in vitro)及び生体内(in vivo)で緑茶抽出物(GTE)またはEGCGの効果を総合的に検討した。しかし、GTEまたはEGCGが実際に人間の肥満及び2型糖尿病を予防または治療するために利用することができるかについての議論は、まだ確立されていない(Anderson&Polansky、2002;Fukino等、2005;Naftalin等、2003)。最近、数ヶ月の期間に亘って糖尿病患者に毎日緑茶を飲ませた結果、血糖値、HbA1C値、インスリン抵抗性及び炎症マーカーの軽減に効果がないことが明かになった(Fukino等、2005)。興味深いことに、経口投与されたGTEは胃腸管からの糖(Johnston等、2005;Kobayashi等、2000;Zhu等、2001)及びコレステロール(Raederstorff等、2003)の吸収を抑制することができるということが確認された。これは、GTEが2型糖尿病及び肥満に影響を与える基本メカニズムの一つであると考えられる。EGCG及びエピカテキン−3−ガレート(ECG)を含むガレートカテキン(GC)は、主に腸管内腔での混合ミセル形成(Raederstorff等、2003)及び 腸上皮でのNa−糖共輸送体(SGLT1)の抑制(Kobayashi等、2000)によって、抑制効果に関与すると示される。ルミナール効果を発揮するために必要なGCの摂取量は、分子らの低い経口バイオアベイラビリティにより、人間が耐えられる量であると思われる(Kobayashi等、2000;Van Amelsvoort等、2001)。しかし、摂取したカテキンの一定比率は必然的に血液に吸収され、人体内の他の部位に活性を有する。従って、経口摂取されたGTEの糖及び脂質代謝に及ぶ効果は、胃腸管及び循環に及ぶ効果を合わせたものである。一部報告で、GTEの経口摂取は鼠(Sabu等、2002)及び人間(Tsuneki等、2004)で経口糖負荷試験(OGTT)時に血糖値を減少させるということが確認された。しかし、高糖がカテキン攝取の直後に適用されたため、このような結果はGCのルミナール効果に起因する可能性がある(Naftalin等、2003)。また、鼠は実験中にGTEの非常に低い経口バイオアベイラビリティを有するため、GTEが循環に吸収された後のGTE効果の検出はより難しい。従って、循環だけでなく胃腸管中のGTE及びEGCGの効果を評価することが求められる。
【0003】
本発明者らは循環系でのGCが血糖値の増加及びインスリン過分泌を引き起こすことを発見した。従って、腸GTEの吸収阻害剤とGTEを組み合わせて適用すると、腸管内腔での肯定的なGTE効果が効果的に得られ、食後血糖値の増加を低めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、利用可能な血糖降下剤とは相違するメカニズムを用いる液体吸収だけでなく、腸内糖吸収を抑制することにより、副作用を発生することなく食後の血糖を低める組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
長期間の食後高血糖は2型糖尿病及び肥満において有害な要因である。緑茶抽出物(GTE)の消費の利点は、依然として確認が必要な事項である。本発明者らは、血糖及びインスリン値に及ぶ循環する緑茶カテキンの効果を報告する。人間にGTEを摂取させて1時間後、経口糖負荷により血糖及びインスリン値が対照群に比べて高くなる。ガレートカテキンは腸管内腔内で糖とコレステロール吸収を減少させると知られているが、前記効果のために必要である。エピガロカテキン−3−ガレートによる治療は、肝臓、脂肪、膵臓β−細胞及び骨格筋細胞への2−デオキシグルコース取り込みを妨げる。グルコース不耐性は、ガレートカテキンの腸管吸収の阻害剤として用いられるポリエチレングリコールと混合されたGTEまたはガレートカテキン−欠乏GTEによって改善された。このような発見は、循環されている時のガレートカテキンが組職への正常な糖取り込みを遮断することにより、血糖値を増加させ、副次的な高インスリン血症を引き起こす反面、これらが腸管内腔内にある場合、糖の循環への流入を減少させることを示唆する。このような知見は、特に肯定的なルミナール効果を誘発する2型糖尿病及び肥満の予防治療のためのガレートカテキンの非吸収性誘導体の開発を促進する。
【0006】
本発明の一側面は、ガレートカテキン(GC)を含む緑茶抽出物(GTE)と、ガレートカテキン(GC)の腸内吸収を防ぐための高分子と、を含む血糖調節用組成物に関する。前記GC成分はEGCGまたはECGのうち一つ以上を含むことができる。前記高分子は、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG誘導体、PEG共重合体、水溶性共重合体、メトキシPEG(mPEG)、またはポリプロピレングリコール(PPG)であることができる。前記高分子は1,000〜2,000,000ダルトンの分子量を有することができる。
【0007】
本発明の他の側面は、前記組成物を含む機能性食品に関する。前記食品は飲料、錠剤及び粉末であることができるが、これに限らない。
【0008】
本発明のさらに他の側面は、前記組成物の血糖調節量及びその薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物に関する。前記GCはEGCGまたはECG、または両方を含むことができる。前記高分子はPEG、PEG誘導体、PEG共重合体、水溶性共重合体、メトキシPEG(mPEG)、またはPPGを含むことができる。前記高分子は1,000〜50,000ダルトンの分子量を有することが好ましい。
【0009】
本発明のさらに他の側面は、前記組成物を対象体に投与する段階を含む被験者の血糖値を制御する方法に関する。
【0010】
本発明の前記目的及びその他の目的は、添付図面及び請求の範囲を参照する下記詳細な説明によってより明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明はただ例示的に示した添付図面及び以下の詳細な説明によって、より完全に理解することができ、本発明をこれに制限しない。
【図1】糖耐性に及ぶGTEの両面的な効果を示す。GTE摂取直後の人間のOGTT中の血糖(A)及び血漿インスリン(B)値を変化させる。摂取されたGTEには〜500mgEGCGが含まれている。各グループ当たりn=6である。GTE摂取1時間後の人間のOGTT中の血糖(C)及び血漿インスリン(D)値を変化させる。摂取されたGTEには〜250mgのEGCGが含まれている。各グループ当たりn=5である。個々は実験前に一晩絶食させた。対照群被験者には同量の水を摂取させた。Two−tailed、unpaired Student’s t−testで同一時点での対照群値と比較して*P<0.05及び**P<0.01で示した。
【図2】糖耐性に及ぶ循環GCの効果を示す。(A)各カテキン注入30分後に鼠のIPGTT中の血糖値を変化させた。鼠は、12時間絶食させた後、静脈内にPBSのみ、またはDMSO中にECを含むPBS、ECG、EGCまたはEGCG(各10mg/kg)を注入した。曲線下面積(AUC)はカテキンがない対照群値の比率として(B)に図示した。ANOVAのボンフェローニ補正(Bonferroni correction)によって、対照群値(B)または同一時点でのもの(A)と比較して*P<0.05及び**P<0.01で示した。各グループ当りn=5−7である。
【図3】糖取り込みのEGCG−仲裁減少を示す。2−デオキシ−[3H]糖は(A)分化されたL6筋芽細胞、(B)HepG2肝細胞、(C)分化された3T3−L1脂肪細胞及び(D)INS−1β細胞を含む培地での100nMのインスリンを含むかまたは含まないEGCGの指定された濃度で20分培養した後添加した。結果はインスリン存在または不存在時の各対照群値の比率で示した。ANOVAのボンフェローニ補正によってインスリンがない対応する対照群と比較して*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、インスリンがある各対照群と比較して#P<0.05、##P<0.01、###P<0.001で示した。各グループ当りn=3である。
【図4】分化されたL6筋芽細胞(A)、HepG2肝細胞(B)、分化された3T3−L1脂肪細胞(C)及びINS−1β細胞(D)でのEGCGの前処理によって基底またはインスリン−刺激PKBのリン酸化が変更されたことを示す代表的なデータである。
【図5】血糖値及びインスリン抵抗性に及ぶ循環するEGCGの効果を示す。EGCG注入(10mg/kg、i.v.)は4時間絶食した鼠(A及びC)及びKir6.2k/oマウス(B及びD)で行った。対照群動物はPBSのみ処理した。EGCGの注入30分後に血糖値の大幅な増加が観察された。次に、インスリン(1IU/kg、i.p.)を矢印で示す時間に注入した。血糖値の変化率はC及びDで示し、インスリン注入直前に得られた二つのグループの値を100に正規化した。Two−tailed、unpaired Student's t−testによって、同一時点での対照群値と比較して*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001で示した。##P<0.01はtwo−tailed、paired Student's t−testによってEGCG注入直前及び30分後との比較を示す。各グループ当りn=5である。
【図6】GC−欠乏GTEが循環及び胃腸管での天然GTEの効果を減少させることを示す。(A)4時間絶食した鼠に、対照群としてPBS、天然GTE(100mg/kg)またはGC−欠乏GTE(100mg/kg)をインスリン注入(1IU/kg、i.p.)30分前に静脈内に注入した。(B)インスリン注入直前に得られる三つのグループの値を100に正規化させた。#P<0.05はtwo−tailed、paired Student's t−testによってEGCG注入直前及び30分後との比較を示す。各グループ当りn=5である。(C)鼠は、12時間絶食させた後、腹腔内高糖負荷30分前にGC−欠乏GTEまたは天然GTEを含むPBS、またはPBSのみを静脈中に注入した。各グループ当りn=5である。(D)鼠は、12時間絶食させた後、経口高糖負荷直前に蒸溜水のみ、または天然GTE(900mg/kg)、GC−欠乏GTE(900mg/kg)またはEGCG(90mg/kg)を含む蒸溜水を経口摂取させた。 ANOVAのボンフェローニ補正によって同一時点での対照群値と比較して*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001で示した。各グループ当りn=6である。
【図7】GTEとともにPEGを摂取するとGTEの循環効果が遮断されるということを示す。(A)鼠は、12時間絶食させた後、経口高糖負荷直前に蒸溜水のみ(対照群)、またはPEG、天然GTE(900mg/kg)またはGTEとともにPEGを含む蒸溜水を経口摂取させる。各グループ当りn=4である。(B)志願者を実験前に一晩絶食させる。翌朝には、水のみ、またはEGCG125mgまたは500mgを含むGTEを含む水、またはEGCG500mgと含むGTEとともにPEGを摂取させる。経口糖負荷は摂取直後に得られる。各グループ当りn=8−10である。(C及びD)一晩絶食した志願者に500mgのEGCGを含むGTEを含む水またはGTEとともにPEGを摂取させた1時間後に経口糖負荷が得られた。対照群被験者に同量の水を摂取させた。各グループ当りn=5−6である。ANOVAのボンフェローニ補正によって同一時点での対照群値と比較して、*P<0.05、**P<0.01及び***P<0.001で示した。
【図8】腸及び循環内に及ぶGCの両面的効果を示す。点線は分子の動きを示し、矢印線はインスリンによる促進を示し、ブロック線はGCによる阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで用いるように、「担体(carriers)」は適用する投与量及び濃度でこれに露出する細胞または哺乳動物に非毒性である薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を含む。薬学的に許容される担体は、多くの場合水性pH緩衝溶液である。薬学的に許容される担体の例としては制限されず、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10未満の残基)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または兔疫グロブリンを含むタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリシンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノースまたはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ソディウムなどの塩形成対イオン;及び/またはTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0013】
ここで用いるように、「有効量(effective amount)」は、有利または所望の臨床的または生化学結果をもたらすために効果的な量である。有効量は、1回またはそれ以上投与することができる。本発明の目的において、阻害剤化合物の有効量は、疾患状態の進行を緩和、改善、安定化、逆転、遅延させるために十分な量である。
【0014】
ここで用いるように、治療目的用の「哺乳動物(mammal)」は、人間、家畜、及び犬、猫、牛、馬、羊、豚などの動物園、スポーツまたはペット動物等を含む哺乳動物として分類される任意の動物を指す。
【0015】
ここで用いるように、「薬学的に許容される担体及び/または希釈剤(pharmaceutically acceptable carrier and/or diluent)」は、任意及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング抗菌剤及び抗真菌剤等、等張及び吸収遅延剤等を含む。このような媒質及び薬学的活性物質の作用剤の使用は当業界で公知されている。任意の従来媒質または作用剤が活性成分と不適合な場合を除き、治療組成物においてその使用が考慮される。補助活性成分も組成物に混合することができる。
【0016】
特に、投与の便利さ及び投薬量の均一性のために、投与単位形態で非経口組成物を策定することが有利である。ここで用いる投与単位形態は、治療される哺乳動物のための単一用量として適する物理的に別個の単位を指し、各単位は求められる薬学的担体に関連して所望の治療効果を生むために計算された活性物質の所定量を含む。本発明の投与単位形態における明細書では、(a)達成される活性物質の特異的特性及び特定治療効果、及び(b)身体の健康が損なわれた疾患状態を有する生存の被験者の疾患治療のために従来技術で規定された前記活性成分の化合物の限界による。
【0017】
主な活性成分は投与単位形態に適切な薬学的に許容される担体と有効量の便利かつ効果的な投与のために配合される。単位投与形態は、例えば、約0.5μg〜2,000mg範囲の量で主要な活性化合物を含むことができる。比率で示すと、活性化合物は一般的に担体の約0.5μg/mlから存在する。補助活性成分を含む組成物の場合には、投与量は前記成分の投与方式及び通常の容量を参照して決める。
【0018】
ここで用いるように、「対象体(subject)」は哺乳動物であり、好ましくは人間である。
【0019】
本発明に係る血糖を低める効果を有する組成物の製造方法は、EGCGまたはECGのうち少なくとも一つ以上を含むGCを緑茶から抽出する段階、GC−含有抽出液または粉末、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG誘導体(例えば、PEG−アルキル、PEG−ジアルキル、PEG−エステル、PEG−ジエステル等)、PEG共重合体(例えばPEG−PPG、PEG−PPG−PEG(ポロクサマー、プルロニック))、水溶性共重合体(例えば、ポリビニルピロリジン等)のようなポリグリコール(PG)、または選択的にGCと結合する高分子のうち少なくとも一つ と混合する段階を含む。
【0020】
前記組成物はまた、濃縮された商業的に利用可能なGCとPGを混合することにより製造されることができる。前記組成物は、10〜2,000mgの濃度のGC及びPG(0.01〜50g/gGC)を含む。前記PG分子量は、100〜2,000,000ダルトン、より好ましくは500〜100,000ダルトン、もっとも好ましくは1,000〜80,000、1,000〜50,000ダルトン、または1,000〜8,000ダルトンであり、この場合、不快感を与えない摂取や血糖の制御に優れる。
【0021】
この際、用いられるPGの化学構造は、求められる物性及び性質に応じて、PGの末端にC1−C6アルキル、アリール、アセチル、C1−C6アルキルまたはアリールが置換されたアセチル、C1−C6アルキルまたはアリールが置換されたスルホンなどが一つまたは二つが置換された多様なPG誘導体であることができる。
【0022】
前記GCの製造方法は、
【0023】
1.乾燥された葉を沸騰水抽出して得られた抽出液を濾過する段階と、
【0024】
2.前記濾過液を凍結乾燥して粉末を得る段階と、
【0025】
3.前記粉末を蒸溜水に溶解させた後、カラムクロマトグラフィーによってGCまたはこれを含む分画を錠剤する段階と含む。
【0026】
前記段階をより詳細に説明すると、段階1では、緑茶葉をお湯(80〜95℃、葉重量の10〜50倍)に入れ、抽出及び濾過のために5分〜1時間徐々に撹拌した。段階2では、前記濾過液を凍結乾燥して緑茶のポリフェノールを含む粉末を得た。段階3では、粉末中のポリフェノール化学物質を精製及び修得するためにカラムクロマトグラフィーを行った。本発明では、高多孔性ポリスチレンゲルカラムクロマトグラフィー(粒径75〜150μm、Diaion HP−20、Mitsubishi Kagaku Co.、Japan;Column、25ΦX1,000mm)を用いた。この際、抽出溶媒は100mlのメタノール:H2O(1:5)を用いて抽出し、さらに100mlのメタノール:H2O(2:5)を用いて再抽出した。流速は5ml/分である。
【0027】
前記方法によって得られた緑茶ポリフェノール化合物の成分を分析した結果、分画1ではガロカテキン及びエピガロカテキンが検出され、分画2ではカテキン、エピカテキン、ガロカテキンガレート及びEGCGが検出された。分画物3ではECGが検出された。
【0028】
本発明によると、製造された組成物に含まれるGCは、腸管内でSGLT(sodium−dependent glucose transporter)の活性を阻害して腸の糖吸収を抑制する。これは、アミラーゼ活性を阻害する既存の血糖降下剤より副作用が少ない。また、循環で血糖を増加させるGC自体の腸内吸収は、ポリグリコール(PG)をともに投与することにより抑制することができる。従って、本発明は食後の血糖値を減少させることにより、健常人の糖尿病予防、糖尿素因をもっている人の糖尿病の進行を抑制し、糖尿病患者の糖尿病合併症を緩和させることができる。
【0029】
本発明のGC含有組成物は、 市販のタイプで経口投与する。これは食前または食事中に投与することができ、食事直前に投与することが好ましい。
【0030】
本発明のGC含有組成物は、緑茶から抽出された天然の生理活性物質であるため、動物及び人間に経口投与した場合、循環に吸収されないため、副作用及び急性毒性をもたらすことなく、安全である。従って、本発明は、GC及びPGを含む植物または機能性健康食品を提供して食後血糖を制御する。
【0031】
本発明によって薬学的製剤に製造する場合、GC及びPGは商業及び薬学的に利用可能な物質とともに混合して形成され、経口摂取を目的とする錠剤、硬質または軟質のカプセル、チュアブル錠、粉末、液剤または懸濁剤に製造されることができる。
【0032】
組成物を用いて経口投与可能な材料として錠剤、硬質または軟質のカプセル、チュアブル錠、粉末、液剤または懸濁剤の形成するにおいて、アラビアガム、コーンスターチ、微細結晶質セルロースまたはゼラチンのような結合剤、リン酸カルシウムまたはラクトースのような賦形剤、アルギン酸、コーンスターチまたはジャガイモ澱粉のような崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、スクロースまたはサッカリンのような甘味剤、及びサリチル酸メチルまたはフルーツフレーバーのような香味剤を含むことができる。カプセルの場合には、前記材料に他に、油脂のような液状材料を含むことができる。
【0033】
GC及びPGを含む経口適用可能な材料を形成するにおいて、薬学的で純粋であり、実質的に無毒性であり、活性物質の作用に影響を与えない潜在的な全ての補助材料を混合及び使用することができる。
【0034】
本発明において血糖調節剤として効果を達成するための量は、疾患の種類、疾患の重症度、性別、年齢、体重、健康状態、投与方式、投与回数及び時間、併用薬物の有無及び他の関連環境を考慮して、医者によって決めることができる。
【0035】
本発明のGC及びPG(0.01〜50グラムGC)を含む前記薬学的薬剤は、経口摂取の場合、EGCG、ECGまたはこれらの混合物を基準に、体重kg当たり0.5〜100mg、好ましくは1〜50mgを一日に1〜数回、より好ましくは一日に1〜3回で食事前、食事中、または食事後に投与することができる。
【0036】
本発明のGC及びPGは、市販飲料 、ミネラルウォーター、アルコール飲料、チューインガム、キャラメル、キャンディー、アイスクリーム、クッキーの補助材料に製造されることができる。また、食後血糖を低めるために、ビタミン及びミネラルなどを含む健康食品や健康補助食品に適用することができる。
【0037】
データ分析
本発明により、EGCG及びECGのような録茶のGCが循環する時、血糖値を増加させながら胃腸管で活性化されて血糖値を急激に減少させるということを確認した(図8参照)。緑茶ポリフェノールは、腸内のスクラーゼ及びα−アミラーゼ活性を抑制すると報告されているが、GCは主要抑制剤ではないことができ、これは緑茶の抑制効果は少量のGCを有する紅茶の場合より弱いためである(19)。腸の糖取り込みはSGLT1によって仲裁され、GTE及びGCは人間の腸象皮細胞のSGLT1の競争的阻害剤であることが確認された(9、20)。本研究では、代謝的に重要な細胞への血糖取り込みがEGCGの存在下で抑制された。細胞の糖輸送体に及ぶGCの阻害効果は、マウスの脂肪細胞(21)、鼠の脂肪細胞(22)、人間の赤血球(7)で観察されている。従って、GCはNa−glucose co−transportersだけでなくNa−independent glucose transportersを含む人体での多様な糖輸送体の活性を妨げる可能性があることを推測することができる。従って、胃腸管でのGCは糖が循環に流入することを減少させることにより、糖尿病及び肥満の調節には役立てることができるが(23)、循環では有害である可能性がある。このような二つの部分でのGCの両面的な効果は、血糖調節でのこれらの正確な役割を評価しようとする試みを混乱させる可能性がある。本発明者らは、またEGCGのみの循環またはより顕著にGTEを循環させることにより、急性インスリン抵抗性を観察した。後者の増幅は、追加の効果を発揮することができる他の構成要素、例えばECG及び没食子酸に起因することができ、または他の緑茶成分の存在下でEGCGの遅延された代謝に起因する可能性がある(16)。従って、緑茶カテキンによる循環での糖の蓄積はインスリンの過多分泌を誘導することができるということが予想される。長期間のβ−細胞過負荷が、結局β−細胞の障害を誘導する有害な結果を表すということは驚くべきことではない。
【0038】
本研究において、GTEは緑茶を毎日経口投与することによって容易に得られる1〜2μMの血中EGCG濃度に効果的であった(24)。鼠を利用した実験でこのような循環効果をもっと観察することができ、鼠はEGCGの経口バイオアベイラビリティが非常に低いためである(15、16)。GTEの循環効果を明確に確認するために、本発明者らは鼠よりEGCGの比較的高い経口バイオアベイラビリティを有する人間に長期間OGTTを適用して、GTEは糖値が調節値に戻ることを妨げるということが分かった。人間に適用可能な濃度範囲内でEGCG循環効果を試す生体内報告で、比較的長期間の腹腔内EGCG適用により鼠の重量損失が誘導されるということを示した(17)。しかし、 本発明者らは生殖器官が大幅に劣化することを確認した。これは、おそらくアンドロゲン産生ライディッヒ細胞で糖取り込みのEGCGの抑制に起因することができる(7)。最近の研究(7)では、100nMのECGが赤血球細胞で1型糖輸送体に結合するために糖と競争して反応率がその最大値の半分であることが明らかになった。同じ効果が1μMのEGCGで達成された。このような点で、EGCGによって誘導される肝の糖新生に対する効果が減少することは、部分的に肝臓での糖取り込みのEGCG−仲裁阻害に起因すると想定することができる(7、25)。また、一部の癌治療においてEGCGの有益な効果は、部分的にEGCGが正常細胞より代謝的に活性状態であり、解糖に依存的な癌細胞に与えることができる糖欠乏効果に起因することができる(26)。他のポリフェノール、例えばケルセチン及びミリセチンは細胞の糖取り込みを約10μMに阻害するため、比較的広範の安全域を有することができる(27)。
【0039】
天然緑茶治療による2型糖尿病及び肥満管理の努力は、全身吸収されるGCが実際に細胞糖取り込みを妨げて血糖及びインスリン値を増加させるため、気を付けなければならない。食事中の適宜な緑茶摂取(一日1〜2コップ)は循環に流入されるGCが最小量であるため有益であることができるが、その長期間の効果は特定の人口カテゴリーでは制限されることができる(28)。多くの試験で腸内の糖吸収を阻害するために天然生成物の能力を測定した。しかし、これら試験の何れも糖及び脂質の吸収の非吸収性GC−誘導阻害剤の利用を突き止めることができなかった。循環での否定的な影響を最小化しながら、腸管内腔でのGCの肯定的な影響を最大化することが、このような代謝疾患を制御するために推薦されることができる。
【0040】
本発明は、ここに記載された特定の実施形態によって範囲が制限されない。上述した詳細な説明及び添付された図面から多様な変形が可能であることは、当業界において通常の知識を有する者には明白であろう。このような変形は添付された請求範囲内に属する。下記実施例は本発明を例示的に提供するものであり、これに制限されない。
【0041】
実施例
実施例1−材料及び方法
実施例1.1−材料
DMEM(Dulbecco's modified Eagle's medium)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、FBS(fetal bovine serum)及びFCS(fetal calf serum)はGibco(Carlsbad、CA)で購入した。RPMI−1640培地はWelgene(Daegu、Korea)で購入した。ポリエチレングリコール(PEG;Novasyn TG ヒドロキシ樹脂)は動物研究のためにNovabiochem(Darmstadt、Germany)から運送された。人間研究のためのPEGは親切にもTaejoon(Seoul、Korea)から提供された。緑茶葉(BOSUNG SEIJAK)はボソン緑茶会社(Jeonnam、Korea)で購入した。エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)、エピカテキン−3−ガレート(ECG)、エピガロカテキン(EGC)及びエピカテキン(EC)は、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)で購入した。他の全ての化学薬品はSigma−Aldrichから入手した。
【0042】
実施例1.2−細胞培養
鼠L6筋芽細胞は10%(v/v)FBSを含む低グルコースDMEMで培養密度が80%に逹するまで培養した。分化を誘導するために、細胞は、さらに7日間2%FBSを含むDMEM(24.9mMグルコース)で培養した。細胞の生存力はトリパンブルー生存力テストで評価した。筋管の状態への筋原性の分化は形態学的及び生化学的の両方で評価した。マウス3T3−L1前脂肪細胞を5%CO2と平衡化した培養器でビオチンまたはパントテン酸を添加しない10%FCSを含むDMEMの35−mm培養皿で37℃で融合されるように培養した。(0日)融合2日後に10%FBSを含むDMEMでメチルイソブチルキサンチン(0.5mM)、デキサメタゾン(0.5μM)及びインスリン(5μg/ml)に分化を誘導した。2日目にはメチルイソブチルキサンチンとデキサメタゾンを除去し、インスリン処理は追加2日間継続した。4日目以後には10%FBSを含むDMEM(インスリン補充なし)を2日毎に交換した。細胞(2X106細胞/皿)は8日目の実験に用いられた。細胞分化はオイルレッド−O染色で評価した。人間の肝細胞癌HepG2の細胞株を37℃で10%FBSを含むDMEMで維持させた。鼠のインスリン−分泌INS−I細胞を10%のFBS、10mMのN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N'−(2−エタンスルホン酸)(HEPES)、1mMのソディウムピルビン酸、50mMの2−メルカプトエタノール、100IU/mlのペニシリン及び100mg/mlのストレプトマイシンが補充されたRPMI−1640培地で培養した。
【0043】
実施例1.3−GTE製造
動物研究には、緑茶葉20gを超純水1,000mlに添加した。80℃で5分間撹拌した後、茶葉を減圧下で濾紙(Advantec2濾紙、Hyundai micro Co.,Seoul、Korea)を用いて濾過して除去した。抽出物を凍結乾燥して乾燥した。(総3gのGTEが 採取され、EGCG、ECG、EGC及びECは夫々約100、53、56及び31mg/gGTEである)。同量のGTE溶液を室温で5分間2gのPEGビーズと混合した。濾過後、上澄み液を凍結乾燥して(EGCG、ECG、EGC及びECは夫々約26、14、42及び25mg/gGTEである)GC−欠乏GTE(GTE−GC)を得た。その結果、樹脂の前処理が優先的にGTE溶液からGCを減少させるということが分かった。人間の研究のために、30gの緑茶葉を超純水500mlに添加した。80℃で3分間撹拌した後、茶葉を濾過で除去すると約500mgのEGCGを含む350ml溶液が残る。
【0044】
実施例1.4−人間でのOGTT
HOMA指数によって判定されたインスリン抵抗性がなく、糖尿病の家族歴がない20〜29歳の健康な男性志願者を無作為に選別し、実験が始まる前に一晩絶食を行った。まず、100mg/dlを超える絶食血糖値を示す個人は 除外した。午前9:00に、夫々75gのグルコースを含む150ml水を飲む直前または1時間の前に350ml水のみ(対照群)、または125mg、250mgまたは500mgのEGCGを含むGTE溶液350mlを経口摂取するようにした。被験者の他のグループには、GTE溶液とともにPEG(110mg/100mgEGCG)を摂取するようにした。前腕の静脈に血管カテーテルを挿入して血液を採取した後、血糖と血漿インスリン値を指定された時間に測定した。血糖値はGlucocardテストストリップII(Arkray Inc.,Kyoto、Japan)を利用して測定した。血漿インスリン値は免疫放射測定キット(INSULIN MYRIA、Techno genetics、Sesto、Italy)を利用して測定した。研究を始める前に、その目的及び危険を注意深く説明し、作成された情報同意書を全ての参加者から受けた。プロトコルは、人間研究を規制する韓国大邱市のIRB啓明大学倫理委員会から承認を受けた。
【0045】
実施例1.5−動物の腹腔内のブドウ糖負荷試験(IPGTT)及びOGTT
スプラーグドーリー(Sprague−Dawley)鼠はHyochang Science Co.(Seoul、Korea)で購入した。12時間絶食後、ペントバルビタールナトリウム(40mg/kg、i.p.;Nembutal、50mg/ml、Hanlim Pharmaceutical Co.、Seoul、Korea)で鼠を麻酔させた後、エピカテキン:EGCG、EGC、ECG及びEC(夫々300μlのPBSで10mg/kg、i.v.)のうち一つを注入した。ECをPBS添加前に予め微量のDMSOに溶解させた。また、他の実験では、鼠を三つのグループに無作為分離した:対照群、GTE及びGTE−GC。GTEグループの鼠には尾静脈を介して天然GTE(300μlのPBSで100mg/kg、i.v.;EGCGとして10mg/kg)を注入し、対照群の鼠には300μlのPBSのみと注入し、GTE−GCグループの鼠には同量のGC−欠乏GTE(300μlのPBSで100mg/kg、i.v.;EGCGとして2.6mg/kg)を注入した。注入30分後、グルコース(600μlの蒸溜水で2.0g/kg、i.p.)を注入した。OGTTのために、鼠に1mlの蒸溜水のみ(対照群)、または天然GTE(900mg/kg)、GC−欠乏GTE(900mg/kg)、EGCG(90mg/kg)、天然GTEとともにPEG(110mg/100mgEGCG)またはPEGのみのうち一つを含む1mlの蒸溜水を摂取させた。摂取直後、各鼠にグルコース(2g/kg)を含む1mlの蒸溜水を経口で供給した。血糖値を分析するために、指定された時間に尾静脈から血液を採取した。全ての実験は、動物研究を管理するための韓国大邱市の啓明大学研究倫理委員会から承認を受けた。
【0046】
実施例1.6−動物のインスリン耐性試験(ITT)
Kir6.2ノックアウト(k/o)マウスは神戸大学のSusumu Seino教授から提供された。4時間絶食後、Kir6.2k/oマウスまたは正常鼠にPBS(マウスに100μl、鼠に300μl)のみ、またはEGCG(10mg/kg)、天然GTE(100mg/kg)またはGC−欠乏GTE(100mg/kg)を含むPBSを静脈内に注入した。注入30分後、マウスと鼠にインスリン(1IU/kg;INSULIN LISPRO、Eli Lilly、IN)を含む通常の生理食塩水(マウスに300μl、鼠に600μl)を腹腔内に注入した。血液サンプルの採取は、指定された時間に尾静脈を介して行われた。
【0047】
実施例1.7−2−デオキシ糖取り込み分析
要約すると、30分間血清がない状態で培養した後、細胞をKrebs−Ringerリン酸塩−HEPES緩衝液[KRPH緩衝液:10mMのリン酸塩緩衝液、pH7.4;1mMのMgSO4、1mMのCaCl2、136mMのNaCl、4.7mMのKCl及び10mMのHEPES、pH7.6]で洗滌した後、EGCG(0、0.1、1.0または10μM)を含むKRPH緩衝液に20分間100nMのインスリンがあるかまたはない状態で培養した。グルコース輸送は2−デオキシ−[3Η]グルコース(0.1mM、0.5μCi/ml;PerkinElmer Life and Analytical Science、Waltham、MA)を添加して測定した。培養10分後、氷冷のPBSで迅速に3回洗滌して反応を停止させた。次に、細胞は0.2MのNaOHを含むPBSに溶解させて糖取り込みをシンチレーション測定で評価した。
【0048】
実施例1.8−ウエスタンプロット分析
タンパク質キナーゼB(PKB)の活性に及ぶEGCGの効果を測定するために、PKBのリン酸化状態をEGCG及びインスリンの相違する濃度を含む培地にL6、INS−I、HEPG2及び3T3L−1細胞を露出させた後検討した。2−デオキシ糖取り込み分析として実験細胞を30分間グルコースのない培地に露出させた後、EGCG(0、0.1、1.0または10μM)を含むKRPHに20分間100nMのインスリンがあるかまたはない状態で培養した。5mMのグルコースを添加してさらに10分間培養した後、氷冷のPBSで迅速に3回洗滌して反応を停止させた。全細胞タンパク質を4℃で20分間溶解緩衝液[10mMのTris−Cl(pH7.4)、130niMのNaCl、5%(v/v)トリトンX−100、5mMのEDTA、200nMのアプロチニン、20mMのロイペプチン、50mMのフェナントロリン、280mMのベンズアミジン−HCl]から抽出した。ライセートをSDS−PAGEで分離し、Immobilion−p膜(Millipore、Billerica、MA)で電気泳動させる。特異抗体[抗ホスホ−PKB(Ser473)抗体(Cell Signaling Technology、Danvers、MA)及び抗β−アクチン抗体(Sigma)]で探針した後、免疫反応性バンドを強化された化学発光(Amersham Biosciences、Little Chalfont、UK)を利用してホースラディッシュペルオキシダーゼ−標識二次抗体(1:5,000;Santa Cruz、CA)で可視化した。
【0049】
実施例1.9−HPLCを利用したGTEからのカテキン分析
HPLC分析は、モデル2487二重吸光検出器(Waters Co.,Milford、MA)が装着されたWaters Alliance2695液体クロマトグラフ上で行った。ウォーターズシンメトリー(Waters symmetry)Cl8逆相パッキングカラム(4.5mmx250mm、5μm)を本研究において分離のために25℃で用いられた。カテキンは235nmで同時に測定した。グラジエント溶離は1ml/分の流速で、溶媒A(水−トリフルオロ酢酸、99.9:0.1v/v)と溶媒B(アセトニトリル−トリフルオロ酢酸、99.9:0.1v/v)の比率を変化させることによって行った。移動相組成物は10分で9.5%から14%に直線的に変化させ、次に、10分間同一組成物を維持した後に15分内に溶媒Bを27.5%まで直線的に増加させる。次に、移動相組成物を次の進行のために5分間に亘って初期状態に戻す。製造溶液の全部を0.45μmの膜(Sartorius、Maisemore、UK)を介して濾過し、移動相はHPLCに注入する前に脱ガスさせた。
【0050】
実施例1.10−統計的分析
結果は平均±SEMで示した。統計的分析のためにSPSS(放出14.0)ソフトウェアパッケージ(SPSS Inc.,Chicago、IL)を用いた。曲線下面積はMicrocal Originソフトウェア(バージョン7.0;Northampton、MA)で計算した。両グループの比較はStudent's two−tailed Mest for paired or unpaired dataを用いて行った。二つ以上のグループの比較のためには、比較的少量のサンプルを扱うために、ボンフェローニ補正で分散分析(ANOVA)を用いてテストした。グループ間の差異はP<0.05である場合に有意のあるとみなした。
【0051】
実施例2−結果
実施例2.1−人間のOGTT中の血糖及び血漿インスリン値に及ぶGTE摂取の効果
健康な男性志願者で行われたOGTTの結果から、糖耐性に及ぶGTE摂取の効果はGTE及び糖投与の間の時間遅延の程度に応じて変わるということが分かった。経口投与されたGTEは、GTE投与直後に糖を摂取する場合にOGTT中の対照群でより低い血糖値を維持した(図1A)。このような効果は以前に報告された結果とも同様である(14)。OGTT中に血糖値を低めるGTEの効果は、糖投与より1時間前に投与する場合に逆転された(図1C)。血糖値は糖負荷60分後に対照群でよりGTEグループで顕著に高かった(P<0.01)。GTE及びグルコース摂取の間の1時間間隔は、茶成分、特にカテキンの血中濃度がGTE摂取1〜2時間後にピークになると知られているため選択した(4、15)。興味深いことに、血漿インスリン値も60分でGTEグループで顕著に高く(P<0.05)、これは高い血糖値が高い比率でインスリン分泌を誘導することができるということを示唆する。
【0052】
実施例2.2.−茶カテキンのEGCG及びECGは糖耐性に非常に重要
人間にGTE成分が非正常的なOGTTの原因となるかを明確にするために、IPGTTを鼠に行った(図2)。エピカテキンを糖耐性でのその役割を確認するために集中的に研究したため、EGCG、ECG、EGC及びECをIPGTTのために用いた。各カテキンをグルコース投与30分前に鼠に注入した。注入されたEGCGの量(10mg/kg、i.v.)は注入30分後に約1μMの血中濃度を得るために選択した(16、17)。相違する薬物動態学プロファイルがあるとしても他のカテキンも同量で用いた(10)。対照群に比べて糖負荷30分後に血糖値がEGCG及びECGによってより増加し(P<0.01)、EC及びEGCは効果がなかった。このような結果は、糖耐性に及ぶGTEの効果は主に二つのGC、即ち、EGCG及びECGによるものであるということを示唆する。水溶性GTEでEGCGの量はECGでより約2 〜3倍高いため、追加研究ではGCの代表としてEGCGを用いて行った。
【0053】
実施例2.3−細胞への2−デオキシ−[3H]−糖取り込みはEGCGによって阻害される
EGCGの基底及びインスリン−刺激糖取り込みの用量依存性は、β−細胞を含む代謝的に重要な細胞で評価した(図3)。基底及びインスリン−刺激糖取り込みの両方とも、全てのEGCG−前処理された細胞においてEGCG用量−依存性によって減少された。また、10μMのEGCGまでのテストされた細胞株でEGCGはホスホ−PKBの基底及びインスリン−調節発現を変化させなかった(図4)。
【0054】
実施例2.4−循環EGCGは急激に血糖値とインスリン抵抗性を増加させる
β−細胞のインスリン分泌だけでなく末梢のインスリン抵抗性を調節するATP−敏感性カリウム(KATP)チャンネル及びEGCG−仲裁糖耐性の間の関連可能性を検討した。正常鼠及びKir6.2k/oマウスはEGCG注入前4時間絶食させた。正常鼠及びKir6.2k/oマウス両方の血糖値の有意的な増加がEGCG注入30分後に確認された(P<0.01;図5A、B)。前記結果は、EGCG−誘導された血糖値の変化はKATPチャンネルに係わるメカニズムを介して仲裁されないことを示唆する。インスリンで処理する場合、血糖の消失速度が少々遅くなったが、EGCG−前処理鼠及びKir6.2k/oマウスでは顕著に観察された(P<0.01;図5C、D)。
【0055】
実施例2.5−GC−欠乏GTE効果
4時間絶食した鼠にGTEを注入すると、図5AでEGCGのみを注入した場合の結果と同様に血糖値が著しく増加し(P<0.05;図6A)、GC−欠乏GTE注入では変化しなかった(P=0.114)。ITTによってGTEグループで注目すべきのインスリン抵抗性が明かになり(20分にP<0.01)、一方、GTE−GCグループではインスリン抵抗性の顕著な改善が観察された(図6B)。また、他の実験では、鼠を4時間でなく12時間絶食させ、GTE自体による血糖値の増加を最小化させた。次に、糖負荷30分前にPBSのみ、天然GTEまたはGC−欠乏GTEを含むPBSを静脈内に注入した。図6Cで示すように、IPGTT中のGTE−処理グループでの血糖値はPBS対照群でより顕著に増加し(10及び20分にP<0.01)、一方、GTE−GCグループでは対照群と類似の糖値を示した。胃腸管内のGC循環での糖吸収効果は、鼠のOGTTによって評価した。これは、GTE経口摂取直後に糖摂取を行った(図6D)。予想通り、血糖値はPBSのみを摂取した対照群グループよりGTE投与グループが低い水準でOGTT中に維持された。GC−欠乏GTE、またはEGCG−投与グループは、GTE−処理グループでより低い効率で糖吸収を阻害することで観察され、これはまた腸管内腔での糖吸収の遮断に及ぶGTEの効果にもまた重要であるということを示す。
【0056】
実施例2.6−GTEとともにPEGの投与効果
樹脂PEGがGTEのGCの腸内吸収を選別的に阻害するという仮定下で、天然GTEをPEGとともに摂取した 。摂取直後の鼠のOGTT中に血糖値は、GTEのみを投与したグループと比較すると、対照群(P<0.05)でよりGTE+PEGグループで顕著に低かった(図7A)。対照群グループとPEGのみが処理されたグループの間には、血糖値の差異がなく、これはPEG自体が用いられた濃度範囲での腸内運動性または糖吸収に影響を与えないことを示す。人間のOGTTのための時間は基底血糖値に及ぶGC循環効果を観察するために3時間に延長した(図7B)。OGTTの初期の間にはGTEグループでの血糖値が対照群より低く示されたが、OGTTの後期の間には対照群でより顕著に高かった。また、これはGTE+PEGグループでは観察されなかった。人間のOGTTをGTE+PEG摂取1時間後に行う場合、血糖及び血漿インスリン値も糖及びインスリン値の顕著な増加を示すGTEグループに対照的に正常であった(図7C、D)。
【0057】
実施例3−緑茶抽出物及び粉末の製造
動物研究のために、20gの緑茶葉を超純水1,000mlに添加した。80℃で5分間撹拌した後、茶葉を減圧下で濾紙(Advantec2濾紙、Hyundai micro Co.,Seoul、Korea)を用いて濾過して除去した。抽出物は凍結乾燥で乾燥した。(総3gのGTEが得られ、EGCG、ECG、EGC及びECは夫々約100、53、56及び31mg/gGTEである)
【0058】
実施例4−GC−欠乏GTE粉末の製造
実施例3の後、同量のGTE溶液を室温で5分間2gのPEG(3,000〜4,000)ビーズと混合した。濾過後、上澄み液を凍結乾燥(EGCG、ECG、EGC及びECは夫々約26、14、42及び25mg/gGTEである)して、GC−欠乏GTE(GTE−GC)が得られた。その結果、樹脂前処理はGTE溶液からGCを優先的に減少させるということが分かる。
【0059】
実施例5−緑茶抽出物及び粉末の製造
人間の研究のために、30gの緑茶葉を超純水500mlに添加した。80℃で3分間撹拌した後、茶葉を濾過で除去し、約500mgのEGCG及び約260mgのECGを含む350ml溶液が残る。
【0060】
実施例6−薬学組成物の製造
実施例6−1:錠剤
50mgのEGCG、ECGまたはその混合形態;50mgのPEG(4,000);20mgの澱粉;適量のステアリン酸マグネシウムを含む錠剤は、通常の錠剤製造の方法によって血糖調節剤として製造することができる。
【0061】
実施例6−2:カプセル
50mgのEGCG、ECGまたはその混合形態;50mgのPEG(4,000);19mgの澱粉;1mgのタルク;適量のステアリン酸マグネシウムを含むカプセルは、通常のカプセル製造の方法によって血糖調節剤として製造することができる。
【0062】
実施例6−3:顆粒
顆粒は通常の顆粒製造の方法の一般的な方法によって血糖調節剤として製造することができる。
【0063】
当業界において通常の知識を有した者は、ここで記載する本発明の具体的な実施形態は一般的な実験を用いて確認または認識することができる。このような均等物は本発明の請求範囲内に含むと認められる。
【0064】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
血糖調節用組成物であって、
ガレートカテキン(GC)を含む緑茶抽出物(GTE)と、GCの腸吸収を防止するための高分子とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記GCはEGCGまたはECGのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記高分子は、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG誘導体、PEG共重合体、水溶性共重合体、メトキシPEG(mPEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記高分子の分子量は1,000〜2,000,000ダルトンであることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物を含むことを特徴とする機能性食品。
【請求項6】
前記食品は、飲料、錠剤または粉末であることを特徴とする請求項5に記載の機能性食品。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物の血糖制御量及びその薬学的に許容される賦形剤を含むことを特徴とする薬学的組成物。
【請求項8】
前記GCは、EGCGまたはECGを含むことを特徴とする請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記高分子は、PEG、PEG誘導体、PEG共重合体、水溶性共重合体、メトキシPEG(mPEG)またはPPGであることを特徴とする請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記高分子の分子量は、1,000〜50,000ダルトンであることを特徴とする請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
対象体の血糖値を調節する方法であって、
請求項1に記載の組成物を対象体に投与する段階を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−529041(P2011−529041A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519276(P2011−519276)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053212
【国際公開番号】WO2010/010531
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(511020999)ケイミュン ユニバーシティ インダストリー アカデミック コーオペレイション ファンデーション (1)
【出願人】(511021000)
【Fターム(参考)】