説明

衛生器具、一般什器などの陶磁器面、及びほうろう面、並びにガラス面などの無機質基材に施す表面処理方法

【課題】本フッ素系化合物におけるコーティング加工は、液剤の特性が非常に特殊な構造を有するコーティング剤であるため、現場での加工が不安定且つ容易にできなかったものを、コーティング施工が可能な工法を開発すること。
【解決手段】本発明では、シランカップリング剤を用いて製造したフッ素系化合物にグリコールエーテル類を添加して沸点を上昇させ、その後、衛生器具、一般什器などの陶磁器面、及びほうろう面、並びにガラス面などの無機質基材の表面に一方方向へ向けて一度だけ塗布することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素系化合物を用いた衛生器具、一般什器などの陶磁器面、及びほうろう面、並びにガラス面などの無機質基材に対するコーティング工法による表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本来、フッ素系化合物などのコーティング剤は、シランカップリング剤を用いた製造法にて、非常に特殊な構造を有するフッ素系化合物からなるコーティング剤であるため、従来の防汚コーティング剤に比べ格段に優れた防汚性能を有しているのが大きな特徴である(たとえば、特許文献参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−216047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フッ素系化合物などのコーティング剤は、原材料が高価なことや施工条件にも左右されることから、主に工場ラインでの加工が主で、現場施工をするには湿度、温度、施工条件的にも不向きといったものである。そこで、この非常に特殊な構造を有するフッ素系化合物からなるコーティング剤を現場施工において加工し、安定させる技術開発を構築した。
【0005】
従来のフッ素樹脂、フッ素樹脂微粒子とフッ素系ワニスを主成分とするコーティング剤は、高価な材料であるが、鉛筆硬度にてB〜4Bといった柔らかいもので、色んな基材に密着し、且つ施工は容易で誰でも簡単にコーティングができるといったものであるが、IPA(イソプロピルアルコール)やシンナーなどで拭くと簡単に取れてしまうことや磨耗性にも弱いため施工条件が限られていた。
【0006】
本発明者の技術開発したシランカップリング剤を用いて製造されたフッ素系化合物は、一度他の元素と結びつくと、熱に強い薬品や、溶剤に侵されにくいといった「安全性の高い」化合物を作りだすものであるが、他の元素と結合をさせるため、シランカップリング剤が用いられる。
【0007】
このシランカップリング剤は、空気中の水分などに反応して加水分解していくものであり、保存安定性、使用条件、使用目的などでかなり左右されるため、現場でのコーティング加工は不安定であり困難とされている。
【0008】
本発明者は、この困難な問題を極力回避すべくフッ素系化合物からなる、シランカップリング剤が用いられる原材料を、室内温度をエアコンにて、20℃から24℃に設定し、コーティング剤を20mlから100mlの遮光性のビンに充填した後、窒素ガスにて脱気処理を行い、シラン系からなる原材料の空気中の水分などに反応して加水分解していく被害を最低限度に抑えた。
【0009】
一般にフッ素系化合物に添加されているシランカップリング剤は、アルコキシ基側が加水分解し、シラノールとなって無機素材へ作用し、その効果を発揮するものであるが、金属に対してはメルカブト基やスルフィド基など有機官能基側も作用されることから、密着効果が得られる場合がある。
【0010】
シランカップリング剤のアルコキシシリル基は、水に溶解するとシラノール基となる。このシラノール基は不安定で、経時変化により縮合反応が起こり、この結果、シロキサン結合が生じてゲル化したりするので、長期保存や常時在庫するといったことが難しい。一般的にシラノール基は水溶液中では不安定であるが、弱酸性領域になると安定性がよくなる。また、アミノシランはアミノ基との相互作用によって、水溶液中内で非常に安定性がよくなる。
【0011】
以上の非常に特殊な構造を有するフッ素系化合物からなるコーティング剤は、湿度、温度、施工環境などの管理条件のもと、設備が整った精密工場でのコーティング加工が主で、実用例としては顕微鏡、カメラ、メガネのレンズ、液晶画面、電子機器などの撥水防汚に用いられることが主流であった。
【0012】
本発明者は、この非常に特殊な構造を有するフッ素系化合物からなるコーティング剤を、一般の陶器、磁器タイル、ガラス、鏡、鋳物ホーロー、鋼板ホーローといった無機質に対するコーティング被塗面との安定した定着と、その技術開発の安定性を構築すべく、いかなる施工条件であっても、確実な施工を可能とする、コーティング工法を開発することが本発明の課題である。
【0013】
また、この非常に特殊な構造を有するフッ素系化合物からなるコーティング剤は、プラスチック、ABS、ウレタン樹脂などに対しては、付着力が弱いためその場合は、プライマーを下に塗りその上からコーティングすることが好ましい。
【0014】
かかる課題を解決せんとして、本発明者は鋭意技術開発の結果、このコーティング剤を塗布する被塗面に対するコーティング工法と下地処理工法を開発したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では、衛生器具、一般什器などの陶磁器面、及びほうろう面、並びにガラス面などの無機質基材に施す表面処理方法において、シランカップリング剤を用いて製造したフッ素系化合物にグリコールエーテル類を添加して沸点を上昇させ、その後、衛生器具、一般什器などの陶磁器面、及びほうろう面、並びにガラス面などの無機質基材の表面に一方方向へ向けて一度だけ塗布することにした。
【発明の効果】
【0016】
フッ素系化合物のコーティングを実施するには、シランカップリング剤の問題や湿度、温度、水分などの管理条件のもと、設備が整った精密工場でのコーティングが主で、カメラのレンズ、メガネのレンズ、顕微鏡のレンズ、液晶画面、電子機器、部品類並びに精密機器などの産業でのコーティングが主流であったが、本発明により幅広い産業でのコーティングが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本工法は、乾式工法で陶器、磁器タイル、ガラス、鏡、鋳物ホーロー、鋼板ホーローの無機質に対しての撥水防汚コートが大きな目的であり、基材は完全に湿気を除去する必要がある。この加工を施すことにより、従来のフッ素系コーティング剤とは異なる、長期間にわたっての耐摩耗性、耐久性、撥水防汚効果が可能となる。
【0018】
そこで、本発明者は、フッ素系化合物からなる成分の耐摩耗性、耐久性、撥水防汚効果の根拠を裏付けるため、フッ素樹脂コーティングなどの撥水コート剤をはじめ、工業用のフッ素樹脂コーティング剤を用いて予備実験を行った。
【0019】
まず、被塗面となる素材を用意すべく、ガラス板サンプルとしては、製造元:セントラル硝子株式会社のガラス、厚さ約2mmを寸法70mm×120mmで50枚カットしたものを用意し、その表面をハロゲン化炭化水素、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロポリエーテルからなる、不燃性フッ素系溶剤を用いて、一種単独、又は二種以上を混合して基材に対して脱脂して使用し、日本製紙クレシア株式会社製のキムワイプにて完全に拭き取り作業を行う。
【0020】
次に、本発明者の技術開発の構築にあたり、試験比較対象品としてフッ素樹脂製造元の原材料を5社選択し、同じ条件にてコーティングを行い、24時間後にその撥水、耐久性の基礎実験を行った。
【0021】
今回、実験に当たって使用したコーティング剤は、
No.1 フッ素樹脂、シリコーンとIPA(イソプロピルアルコール)の混合剤
No.2 フッ素樹脂、ハロゲン化炭化水素の混合溶剤
No.3 撥水ガラスコーティング剤
No.4 フッ素系ポリマー、ハイドロフルオロカーボンの混合溶剤
No.5 ポリテトラフルオロエチレン系フッ素樹脂(水溶性)
である。以上のNo.1〜No.5のコーティング剤を用いて、本出願人の工法を構築したフッ素系化合物からなる成分との防汚効果の比較検証を行った。
【0022】
撥水防汚実験内容については、試験用ガラスとしてセントラル硝子株式会社製造元のガラスを厚さ約2mm、寸法70mm×120mmで50枚カットしたものを用意し、上記のコーティング剤をガラスへ塗り、24時間放置した後、その被塗面に油性マジックで文字を書いた後、キッチンペーパーにて拭き取り、その後、IPA(イソプロピルアルコール)にて拭きあげる検証にて撥水防汚効果の実験を50回行った。
【0023】
使用した、マジックは商品名:RiKotaマーカー耐水性(MADE IN CHIINA)を使用、拭き上げに使用したペーパーは、商品名:エリエール(超吸水キッチンタオル 製造元:大王製紙株式会社)にて行った結果、No.2〜No.5のコーティング剤は、1回目の実験にて完全に表面の被膜が除去され、マジックを弾く効果はなくなった。
【0024】
No.1のコーティング剤に関しては、防汚テストを繰り返し行って10回目からマジックの拭き上げた痕が残りキッチンペーパのみでの除去は不可能であった。
【0025】
そこで、IPA(イソプロピルアルコール)にて拭きあげ除去し、撥水効果の検証をした結果、撥水は残っていた。
【0026】
一方、本発明者の技術開発のフッ素系化合物からなる成分との防汚テストを繰り返し行って、20回目からマジックの弾きが悪くなってきたが、取るのにはそんなに力も必要とせず、時間もそんなに掛からなかった。また、40回目のころから多少力を入れて取らないと時間が掛かるといった感じがしたが、マジックは完全に除去でき50回でも同じ結果であった。
【0027】
このフッ素系化合物からなる成分と、No.1のコーティング剤と、50回の比較テストをした結果、フッ素系化合物からなる成分を用いた無機質材に対する加工と、そのコーティング工法が撥水、防汚ともその効果は明らかであった。
【0028】
上記予備実験の結果を元に、さらに現場での施工データを取るべく、陶磁器洗面ボール、バスルームの鏡にNo.1のコーティング剤と、フッ素系化合物からなる成分を用いたコーティング工法にて、撥水効果、耐久性、防汚性能の検証を行った。
【0029】
ここで、No.1のコーティング剤と、フッ素系化合物からなる成分は、紫外線を吸収して反応する光触媒とは違って、汚れを分解するセルフクリーニングといった機能は備わっていないので、汚れが付着し、撥水効果がなくなってきたらその被塗面となる表面を拭き上げ、洗浄する必要がある。したがって、その撥水効果と磨耗性に関しての耐久性が要求される。
【0030】
そのため、検証した内容については、被塗面となる素材を特定した陶磁器洗面ボール、バスルームの鏡に毎日、タオル生地にて拭き上げる実験を行った。バスルームの鏡については、ホームセンターなどで売っている掃除用具のナイロン製の束子を用いての実験を行った。
【0031】
No.1のコーティング剤と、フッ素系化合物からなる成分では、陶磁器洗面ボール、バスルームの鏡にコーティングを施した後、洗面ボールは毎日、市販のタオル生地にて拭き上げを行う。
鏡については、ナイロン製の束子に中性洗剤をつけて、円を描くようにして擦って洗い流したあと、シャワーをかけ、その撥水効果の確認を検証していった。
【0032】
上記の検証の結果で明らかになったことは、No.1のコーティング剤の成分は、撥水効果は残ってはいるものの、フッ素系化合物からなる成分と比べて、汚れを寄せつけ付着させる確率が非常に高いことが明らかであった。
【0033】
本発明においては、陶器、磁器タイル、ガラス、鏡、鋳物ホーロー、鋼板ホーローといった無機質などは焼成されて製造される為、その表面には肉眼では解らない無数のピンホールがあり、その中に色んな不純物が付着し混入している場合が多い。その他、基材の表面は凹凸となっており、その表面の下地処理も完全に行うための施工面を想定する。
【0034】
コーティングを施す基材に対し、まずは下地処理に関しては、成分が、珪酸70%、アルミナ14%、カルシウム3%、ナトリウム3%、磁鉄2%、カリウム2%、その他マグネシウム、チタン、マンガンなどを含む、天然無機質粉状の物質からなるシラスバルーンを超ミクロ化し、それをペースト状にて加工したものを、下地処理剤として加工することで、基材に傷も入らず且つ基材表面は、完全な親水性をもたらすほどの下地処理を可能にしたことで、フッ素系化合物と基材との密着効果を更に上げることを可能とする。
【0035】
更に、基材の焼成後にできるピンホールに混入付着している油分、不純物などを除去するためスチーム機を用いて完全な蒸気脱脂処理を行う。
【0036】
その後、基材を完全に乾燥させ拭き上げを行い、溶媒による脱脂処理を行う。
【0037】
この脱脂処理に使用するものは、液体からなる不燃性フッ素系溶剤として、沸点が40℃〜98.4℃の範囲にて構成されたハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン、ハロゲン化炭化水素、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロポリエーテル、等が挙げられる。これらの不燃性フッ素系溶剤は、一種単独で、又は二種以上を混合して基材に対して脱脂して使用することができる。
【0038】
このフッ素系化合物に関しては、沸点温度が40℃〜54℃と低く揮発性が高いので、現場での施工に適するように、沸点を76℃〜158.7℃に沸点調整するために、アリルグリコール(AG)主体のグリコールエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエ−テル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノisoプロピルエーテル、エチレングリコールモノisoブチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエ−テル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノisoプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジnブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノnプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノnブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエ−テル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノnブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノnブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノnプロピルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールラウリン酸ソルビタンエステル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールエチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシエチレントリメチロールプロパンエーテル、ポリオキシエチレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシプロピレントリメチロールプロパンエーテル、ポリエチレングリコールメタクリル酸エステル、ポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリル酸エステルフェニルグリコール(PhG)主体のグリコールエーテル、ノニルフェノールポリエチレングリコールエーテル、の一種単独、又は二種以上を混合して使用する。その場合、コーティング剤における添加含有量は、0.1〜30質量%の範囲がさらに好ましい。
【0039】
また、被塗面に対してスプレーガンを用いてのコーティングを行う場合は、揮発性が非常に高いため、通常のエアーコンプレッサーを用いたスプレーガンでの吹き付けでは、フッ素系化合物の液剤が気化して出るため、被塗面に対してのコーティング加工は困難であることや、スプレーノズルの先端部分で空気と水分が融合し合って化学反応にて縮合反応が起こり、フッ素系化合物の液剤分子が被塗面に対して結合しなくなる。
【0040】
これを解決すべく、本発明者は、ブロー式の圧送温風ガンを用いて、フッ素系化合物の液剤に
上述したように沸点を調整して吹き付けを行うことで、この問題を解決した。
【0041】
本発明によれば、通常の脱脂並びに下地処理を行った従来工法と、新工法にて行った工法での違いを福岡県工業技術センターの設備を使用して検証実験を行った結果、その実験結果のデータは以下の通りである。
【0042】
試験方法
協和界面化学(株)製 接触角計(CA-DT)
試験ガラス:(マイクロ スライド ガラス)
生地:JIS L0803に規程される(綿:3号)
検査内容:接触角及び耐磨耗試験
試験結果
従来工法
コーティング後の接触角:84.72
耐磨耗試験 10000回テスト結果:接触角は55.4
新工法
コーティング後の接触角:100.5
耐磨耗試験 10000回テスト結果:接触角は91.6
【0043】
下地処理以外、同様の条件にてコーティングを施した結果、新工法の方が従来工法よりも接触角、耐磨耗性とも良い結果を出すことが明らかとなった。
【0044】
ここで、従来工法によるものは、以下の処理を施したものである。
【0045】
水、湯水が日常的に流れ磨耗を要するトイレ、バスルーム、洗面ボール、鏡や油分が付着しやすい、窓ガラス、キッチン棚のガラスなどを施工面としてコーティング工法を適用した。
【0046】
まず、基材の表面の凹凸やピンホールとなっている部分の水分、油分などをシリコンオフ、炭化水素などを用いて、不織布ナイロンにて擦りながら洗浄脱脂を行い完全に乾燥させる。
【0047】
塗布する被塗面にフッ素系化合物の液剤をカップに入れた後、柔らかい刷毛、コットン、布、不織布の何れかを用いてそれに染込ませ、被塗面に塗りそのまま放置しておく。この場合、湿度の問題や、湿気が残っていないことを確認したうえで、コーティングを行い12時間〜24時間放置しておく。
【0048】
12時間〜24時間放置後、コーティング剤を塗布した被塗面はそのままでも構わないが、コーティングのムラが目立つ場合は、市販のIPA(イソプロピルアルコール)を用いて拭き上げるのが好ましい。
【0049】
また、新工法によるものは、以下の各工程の処理を施したものである。
【0050】
1.研磨工程
基材表面とフッ素系化合物との成分の密着を向上すべく、シラスバルーンからなる、微粒子にて専用のナイロン、ポリエステルから造られた、不織布に酸化アルミニウムの超微粒子を塗布した化学合成繊維を用いて、研磨下地処理を行う。
【0051】
2.清浄工程
上記1の処理が終わった後、基材のピンホール内部に混入している不純物等をスチーム機にて蒸気を出して、上記1の工程では除去できなかった不純物、油分の残りを浮上させ処理を行う。
【0052】
3.脱脂工程
上記2の水洗いを終えた後、乾燥させ沸点が40℃〜98.4℃の範囲にて構成されたハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン、ハロゲン化炭化水素、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロポリエーテルからなる、不燃性フッ素系溶剤を用いて、一種単独、又は二種以上を混合して基材に対して脱脂して使用する。
【0053】
4.沸点調整工程
上記3の作業が終わったら、乾いたウェスにて拭き上げ乾燥させた後、フッ素系化合物からなる原材料そのものが揮発性が非常に高い溶媒にて希釈されているため、現場施工には不向きである。それを解決すべく、現場施工が容易にできるように、沸点を76℃〜158.7℃に調整する沸点調整を行うため、グリコールエーテル類を0.1%から30%の範囲にて添加させたものを使用することで解決した。
【0054】
5.塗布工程
このフッ素系化合物をコーティングするやり方については、円を描くように塗ったり、左右に幾度も重ねるように塗ったりすると防汚、撥水効果が著しく損なわれることがあるので、この場合のコーティングは一方方向へ向けてスムーズに流れるように一度だけ塗る。手塗りにて使用するものは、柔らかいウェス、コットン、不織布、キムタオルなどが好ましい。スプレー工法にてコーティングを行う場合は、上記4の沸点調整を行ったコーティング剤を使用する。この時、使用するスプレーガンはブロー式の圧送温風ガンを用いてコーティングすることで、液剤の空気と水分が融合し合って化学反応にて縮合反応を起こす原因を解決した。
【0055】
6.赤外線照射工程
基材との結合反応を更に高めるためコーティング後、ハンディタイプの1kwのIRT近赤外線ランプを使用した照射機にて30分間〜60分間の照射をすることが好ましい。
【0056】
7.仕上工程
24時間乾燥後、塗りムラがある場合はIPA(イソプロピルアルコール)にて拭き上げることにより、表面の素材を損なうことなく仕上がる。
【0057】
具体的には、まず天然無機質粉状の物質を超ミクロ化したシラスバルーンを用いて、ナイロン、ポリエステルから造られた、不織布に酸化アルミニウムの超微粒子を塗布した化学合成繊維を用いて、基材の表面に付着している水垢、ウロコ、不純物などの除去するために研磨する。
【0058】
その後、更に凹凸やピンホールとなっている部分へスチームをあて中の汚れ、油分などを蒸気にて浮上させ洗浄した後、乾燥拭き上げを行い、沸点が40℃〜98.4℃の範囲にて構成されたハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン、ハロゲン化炭化水素、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロポリエーテルからなる、不燃性フッ素系溶剤を用いて、基材に対して脱脂して使用する。
【0059】
塗布する被塗面にフッ素系化合物の液剤をカップに入れた後、柔らかい刷毛、コットン、布、不織布の何れかを用いてそれに染込ませ、被塗面に塗りそのまま放置しておく。この場合、塗布した後、被塗面基材にハンディタイプの1kwのIRT近赤外線ランプを使用した照射機にて30分間の照射をすることで被塗面とコーティング剤との結合促進を早める。
【0060】
被塗面には湿度、湿気が残っていないことを確認したうえで、コーティングを行い12時間放置しておく。
【0061】
12時間放置後、コーティング剤を塗布した被塗面はそのままでも構わないが、コーティングのムラが目立つ場合は、市販のIPA(イソプロピルアルコール)を用いて拭き上げる。
【0062】
本発明者の技術開発したフッ素系化合物の被膜は、コーティング液組成物中の樹脂分が0.1〜2.0質量%程度のものであり、形成されるコーティング被膜の防汚層は加工条件にもよるが、0.1nm〜10nm以下の被膜で得られている。
【0063】
このコーティング加工後の性能試験を、福岡県工業技術センターへ接触角及び30000回の耐磨耗試験依頼をし、その検証データの結果は以下の通りであった。
試験方法
協和界面化学(株)製 接触角計(CA-DT)
試験ガラス:(マイクロ スライド ガラス)
生地:JIS L0803に規程される(綿:3号)
検査内容:接触角及び耐磨耗試験
試験結果
コーティング後の接触角:101.4
耐磨耗試験 30000回テスト結果:接触角は95.1
【0064】
以上の結果から、毎日10回の拭き上げを行ったと想定した場合、8年2ヶ月ちょっとの年数にて、コーティング加工当初の撥水効果より6.3%だけ減った結果となる。また、検証後IPA(イソプロピルアルコール)を用いて拭き上げても剥がれることなく、撥水効果を維持した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シランカップリング剤を用いて製造したフッ素系化合物にグリコールエーテル類を添加して沸点を上昇させ、その後、衛生器具、一般什器などの陶磁器面、及びほうろう面、並びにガラス面などの無機質基材の表面に一方方向へ向けて一度だけ塗布することを特徴とする衛生器具、一般什器などの陶磁器面、及びほうろう面、並びにガラス面などの無機質基材に施す表面処理方法。

【公開番号】特開2009−67625(P2009−67625A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237036(P2007−237036)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(306023989)
【Fターム(参考)】