説明

衛生薄葉紙及び衛生薄葉紙製品

【課題】低温条件下における風合いの向上を図る。
【解決手段】基紙に対して、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する薄葉紙処理剤を塗布した、ことを特徴とする衛生薄葉紙。
(A)分岐鎖を有する炭素数6以上の1価のアルコール、
(B)多価アルコール、
(C)界面活性剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄葉紙に関し、特に、肌の清拭などの衛生用途に用いる衛生薄葉紙及びこれからなる衛生薄葉紙製品に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパーやティシュペーパー等の主に肌に触れる用途に多用される衛生薄葉紙からなる衛生薄葉紙製品においては、よりソフトな使用感が求められる。従来は、製紙方法によってソフトな使用感を実現する試みがなされてきた。
例えば、薄葉紙の表面をクレープ(シワ付き)処理する方法が提案されている。また、クレープ処理をした場合、表面繊維の毛羽立ちがざらつきとして残ることにより、ソフトな使用感が低下しやすいという観点から、さらにカレンダー処理で薄葉紙の表面を平滑化する方法等が提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、クレープ処理を行うとボリューム低下が避けられず、全体的なソフト感はむしろ損なわれるという問題がある。
そこで、このような欠点を解決する手法として、通常方法で抄紙した薄葉紙の表面に、風合いを向上する処理剤を塗布等することが試みられている。例えば、グリセリンや糖類等の親水成分を薄葉紙に塗布することにより、毛羽立ちを抑制する手法が広く知られている。しかしながら、この方法においては、薄葉紙に保湿性(しっとり感)が付与され、ざらつき感は軽減されるものの、べたつき感が強まってしまうという欠点がある。また、保湿性が大気の湿度に大きく影響され、冬場の低湿度条件下においては、風合いが著しく損なわれてしまうという問題もある。
そこで、近年、前記親水成分に、パラフィン等の鉱物油や(例えば、特許文献2)、動植物油(例えば、特許文献3)等の親油性化合物を併用した薄葉紙処理剤を用いることにより、薄葉紙に滑らかさを付与して、べたつき感を押さえる方法が提案されている。
また、さらに,両性界面活性剤やアミン化合物等の第三成分を併用した薄葉紙処理剤を用いて薄葉紙を処理することにより、滑らかさ、しっとり感、柔らかさ等の肌触り(風合い)をより向上させる方法も提案されている(例えば、特許文献4)。
また、特定の水素添加レシチンを含有し、薄葉紙に柔軟性、吸水性を付与することができる薄葉紙処理剤も提案されている(例えば、特許文献5)。
【特許文献1】特開平5−76464号公報
【特許文献2】特開平5−156596号公報
【特許文献3】特開平7−82662号公報
【特許文献4】特開平9−296389号公報
【特許文献5】特開2005−298995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来提案の薄葉紙処理剤は、低温度条件下における風合い低下の問題が十分に解決されていない。
親油性化合物を配合した特許文献3等に記載の薄葉紙処理剤においては、保存安定性(液安定性)に問題がある。通常、薄葉紙処理剤を調整した後、薄場紙処理剤は保存、輸送等される。したがって、薄葉紙処理剤を薄葉紙に塗布するまでの間には、タイムラグが生ずる。すなわち、薄葉紙処理剤の製造場所から塗布作業を行う向上への移送や倉庫での保存の期間や温度条件を考慮した保存安定性の向上は重要な課題である。特に、比重が重く親油性の極めて高い親油性化合物を含む薄葉紙処理剤においては、薄葉紙処理剤中に親油性化合物を均一に溶解、又は分散した液の状態を安定して維持することが難しい。
特定の水素添加レシチンを配合した特許文献5に記載の薄葉紙処理剤においても保存安定性(液安定性)は充分ではない。
そして、このような従来の薄葉処理剤は、その安定性の悪さおよびそれにともなう歩留まりの悪さに起因して衛生薄葉紙製品が高価となるという問題を生じせしめていた。
そこで、本発明の主たる課題は、低温度条件下でも滑らかさ、しっとり感、柔らかさ等の肌触り(風合い)が良好であり、しかも、薄葉紙処理剤の保存安定性が良好で、低コストすることができる衛生薄葉紙及び衛生薄葉紙製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
基紙に対して、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する薄葉紙処理剤を塗布した、ことを特徴とする衛生薄葉紙。
(A)分岐鎖を有する炭素数6以上の1価のアルコール、
(B)多価アルコール、
(C)界面活性剤。
【0005】
<請求項2記載の発明>
前記薄葉紙処理剤が、(D)成分としてリン脂質及び/又はその誘導体を含有する請求項1記載の衛生薄葉紙。
【0006】
<請求項3記載の発明>
前記(B)成分は、グリセリンと、2価のアルコールとを含む請求項1又は2記載の衛生薄葉紙。
【0007】
<請求項4記載の発明>
前記(C)成分は、スルホン酸系界面活性剤を含む請求項1〜3の何れか1項に記載の衛生薄葉紙。
【0008】
<請求項5記載の発明>
前記(D)成分は、酵素分解リン脂質及び、水酸化リン脂質からなる群から選ばれる1種類以上の化合物を含む請求項2〜4の何れか1項に記載の衛生薄葉紙。
【0009】
<請求項6記載の発明>
薄葉紙処理剤が基紙に対して、水を除いた有効成分換算質量で前記基紙の乾燥質量の1〜50質量%塗布されている、請求項1〜5の何れか1項に記載の衛生薄葉紙。
【0010】
<請求項7記載の発明>
1枚の衛生薄葉紙からなる又は衛生薄葉紙が2枚以上の重ね合わせられてなる衛生薄葉紙製品であって、
少なくともそのうちの一枚が、請求項1〜6の何れか1項に記載の衛生薄葉紙であることを特徴とする衛生薄葉紙製品。
【0011】
<請求項8記載の発明>
衛生薄葉紙が3枚重ね合わせられている請求項7記載の衛生薄葉紙製品。
【0012】
<請求項9記載の発明>
表裏面に位置する衛生薄葉紙の坪量より、それらの間に介在されている衛生薄葉紙の坪量が大きい請求項8記載の衛生薄葉紙製品。
【0013】
<請求項10記載の発明>
隣接する衛生薄葉紙同士が、熱融着、超音波融着、粘着剤による接着及びプライボンディングの群から選ばれた1つの接合方法により接合されている請求項7〜9のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙製品。
【0014】
<請求項11記載の発明>
米坪が10〜55g/m2である請求項6〜10の何れか1項に記載の衛生薄葉紙製品。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低温度条件下でも滑らかさ、しっとり感、柔らかさ等の肌触り(風合い)が良好であり、しかも、薄葉紙処理剤の保存安定性が良好で、低コストすることができる衛生薄葉紙及び衛生薄葉紙製品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次いで、本発明の実施の形態を以下に詳述する。
本発明の衛生薄葉紙は基紙に対して、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する薄葉紙処理剤を塗布した、ことを特徴とする衛生薄葉紙である。
(A)分岐鎖を有する炭素数6以上の1価のアルコール、
(B)多価アルコール、
(C)界面活性剤。
好ましくは、薄葉紙処理剤は、(D)成分としてリン脂質及び/又はその誘導体を含有する。
【0017】
<基紙について>
本衛生薄葉紙における基紙は、例えば鼻水、涙、唾液等の体液を拭き取る用途に用いるティシュペーパー、清拭用シートなどに利用されている既知の薄葉紙を用いることができる。その原料は、特に限定されず、ティシュペーパー、トイレットペーパー等の利用用途に応じて、適宜の原料を使用することができる。原料として、パルプ繊維を使用する場合、このパルプ繊維(原料パルプ)としては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプ、などから、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、脱墨パルプ(DIP)、ウエストパルプ(WP)等の古紙パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
パルプ繊維等の原料は、例えば、公知の抄紙工程、具体的には、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、サイズプレス、カレンダパート等を経るなどして、1つの層とする。この抄紙に際しては、例えば、分散剤、苛性ソーダ、アンモニア水等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、離型剤、耐水化剤、流動変性剤、歩留まり向上剤などの適宜の薬品を添加することができる。
【0018】
<薄葉紙処理剤について>
[(A)成分について]
(A)成分は、分岐鎖を有する炭素数6以上の1価のアルコールである。(A)成分は、主として風合い向上剤として機能する。また、保存安定性向上効果も有する。
(A)成分の炭素数は、6以上であり、好ましくは8以上、より好ましくは8〜22、さらに好ましくは12〜18である。下限値以上、好ましくは8以上であることにより、滑らかさが向上する。また、臭気が低減され、使用性が向上する。22以下であることにより、液安定性の面で好ましく、天然界で存在する範囲なので、経済性の点からも好ましい。
また、分岐鎖の炭素数は、1〜10であることが好ましく、特にメチル分岐鎖を有するタイプが保存安定性の面でより好ましい。
なお、炭素数6以上のアルコールは、通常、そのほとんどが1価のアルコールである。
具体例としては、2−メチル−ヘキシルアルコール、5−メチル−ヘキシルアルコール、2−メチル−ヘプチルアルコール、6−メチル−ヘプチルアルコール、2−メチル−オクチルアルコール、7−メチル−オクチルアルコール、2−メチル−ノナノール、8−メチル−ノナノール、2−メチル−デシルアルコール、9−メチル−デシルアルコール、2−メチル−ウンデシルアルコール、10−メチル−ウンデシルアルコール、2−メチル−ドデシルアルコール、2−ヘキシル−ドデシルアルコール、11−メチル−ドデシルアルコール、2−4−6−8−テトラメチル−ノナノール、5−メチル−ヘキサノール、2−メチル−ペンタデシルアルコール、14−メチル−ペンタデシルアルコール、2−メチル−ヘプタデシルアルコール、2−ヘプチル−ウンデシルアルコール、2−オクチル−デシルアルコール、16−メチル−ヘプタデシルアルコール、トリデシルアルコール等が挙げられ、2−オクチル−デシルアルコール、16−メチル−ヘプタデシルアルコール、2−メチル−ドデシルアルコール、2−ヘキシル−ドデシルアルコール、2−メチル−ペンタデシルアルコール、トリデシルアルコールが好ましい。さらには、16−メチル−ヘプタデシルアルコール、2−メチル−ドデシルアルコール、2−ヘキシル−ドデシルアルコール、2−オクチル−デシルアルコール、トリデシルアルコールが好ましい。
(A)成分は、例えば天然系原料である油脂等からの抽出精製や、石油系原料の合成等により得られる。
(A)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(A)成分の薄葉紙処理剤中の配合量は、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜10質量%である。下限値以上とすることにより、滑らかさや柔らかさが向上し、上限値以下であることにより、経済性の点で有利であり、さらに保存安定性が向上する。
【0019】
[(B)成分について]
(B)成分は多価アルコールである。(B)成分は親水性成分であり、主として基剤として機能する。また、(B)成分を配合することにより、衛生薄葉紙(基紙)の風合いが向上する。
(B)成分は、2価以上のアルコールであれば、特に限定することなく用いることができる。中でも、2〜3価のアルコールが好ましく、3価のアルコールが特に好ましい。また、炭素数は、適度な親水性の確保によって保水力が向上し、風合いも向上することから、2〜10であることが望ましい。
具体的には、グリセリン、ジグリセリン、エチレングルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等が挙げられる。中でも、グリセリン、プロプレングリコール、1,3−ブチレングリコールが好ましく、特にグリセリンが好ましい。
グリセリンを用いる場合、その配合量は、(B)成分中、40質量%以上であることが好ましく、特に60質量%以上であることが好ましく、100質量%であってもよい。40質量%以上にすることにより、衛生薄葉紙(基紙)の保湿性が向上し、しっとり感と柔らかさが向上する。
ここで、(B)成分は1種類または2種類以上混合して用いることができる。
特に保存安定性の点から、グリセリンと他の多価アルコールを併用すると好ましい。併用する多価アルコールとしては、2価のアルコールが好ましく、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコールが好ましい。
併用する場合、グリセリン以外の多価アルコールの配合量は、(B)成分中好ましくは1〜60質量%、より好ましくは5〜40質量%である。下限値以上であることにより保存安定性が向上し、上限値以下であることにより、特に保湿性が向上する。
(B)成分の薄葉紙処理剤中の配合量は、好ましくは40〜99.9質量%であり、特に好ましくは50〜98質量%であり、さらに好ましくは70〜96質量%である。下限値以上であることにより、保湿性が向上し、しっとり感が向上する。上限値以下であることにより、相対的に(A)成分の好ましい含有量を確保でき、滑らかさが向上する。
【0020】
[(C)成分について]
(C)成分は界面活性剤である。
(C)成分は、さらに保存安定性を向上させる機能を有する。また、さらに風合いを向上させる効果も有する。
(C)成分を配合することにより、風合いが向上する理由は定かではないが、(A)成分を(B)成分中に均一に溶解、分散させることが可能となるとともに、薄葉紙処理剤を薄葉紙の表面に均一に塗布することができ、(A)成分の機能をさらに有効に発揮させることができるためではないかと推測される。
(C)成分としては、アニオン界面活性剤(c−1)、カチオン界面活性剤(c−2)、ノニオン界面活性剤(c−3)、両性界面活性剤(c−4)のいずれも用いることができる。
【0021】
(c−1)成分としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、痾−オレフィンスルホン酸塩、痾−スルホ脂肪酸エステル塩等のスルホン酸系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸エステル塩、N−アルキル−N−メチル−竈−アラニン塩、ラウリン酸カリウム等の脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩等が挙げられる。
(c−1)成分の中でも、スルホン酸系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩が好ましい。特に、抗ウィルス性(インフルエンザなどのウィルスに対する抗菌性)が向上することから、スルホン酸系界面活性剤が好ましい。
なお、塩を構成する対イオンとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン;マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられ、ナトリウムが好ましい。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウムが好ましく、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数3)ラウリルエーテル酢酸ナトリウムが特に好ましい。
【0022】
また、本明細書及び特許請求の範囲において、「スルホン酸系界面活性剤」とは、スルホン酸塩基(−SO3M;Mは対イオンを示す。)を有する界面活性剤を示す。
スルホン酸系界面活性剤の構造中の炭素数は、好ましくは8〜22、さらに好ましくは10〜20である。
スルホン酸系界面活性剤としては、例えば下記一般式によってそれぞれ表される痾−スルホ脂肪酸エステル塩(一般式(1))、痾−オレフィンスルホン酸塩(一般式(2))、アルキルベンゼンスルホン酸塩(一般式(3))等が挙げられる。

[式中、R1、R2はそれぞれ独立してアルキル基を示し、Mは対イオンを示す。]
前記一般式(1)で表される痾−スルホ脂肪酸エステル塩において、R1の炭素数は8〜18程度である。R2の炭素数は1〜6程度である。Mは、上記対イオンと同様のものが挙げられる。

[式中、Rはアルキル基を示し、nは0以上の整数であり、Mは対イオンを示す。]
前記一般式(2)で表される痾−オレフィンスルホン酸塩において、Rの炭素数は9〜15程度である。nは0〜5程度である。Mは、上記対イオンと同様のものが挙げられる。
係る痾−オレフィンスルホン酸塩は、アルケンスルホン酸塩(60〜70質量%)と、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩(30〜40質量%)との混合物である。
また、係る痾−オレフィンスルホン酸は、例えばエチレンのオリゴマー化、n−パラフィンの脱水素化、アルコールの脱水、または石油ワックスの熱分解で得られたα−オレフィンを3酸化イオウ等のスルホン化剤でスルホン化することにより得ることができる。
原料のα−オレフィンは、一般に炭素数の異なるオレフィンの混合物である。
なお、α−オレフィンスルホン酸は、前記α−オレフィンを3酸化イオウ等のスルホン化剤でスルホン化して得られるが、アルケンスルホン酸及びサルトンが生成し、当該サルトンはアルカリ性条件下で加水分解し、ヒドロキシアルカンスルホン酸が生じるため、これらの混合物となる。
また、係る前記痾−オレフィンスルホン酸塩は、不純物または副生物として硫酸ナトリウム、ジスルホネート、未反応α−オレフィンを含むものを包含する。

[式中、Rはアルキル基を示し、Mは対イオンを示す。]
前記一般式(3)で表されるアルキルベンゼンスルホン酸塩において、Rの炭素数は10〜15程度である。Mは、上記対イオンと同様のものが挙げられる。
スルホン酸系界面活性剤としては、より好ましくは痾−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩であり、特にドデシルベンゼンスルホン酸塩(炭素数:18)が、抗ウィルス性の点から好ましい。
なお、スルホン酸系界面活性剤が、特にインフルエンザなどのウィルスに対して効果を有する理由は定かではないが、スルホン酸系界面活性剤は、ウィルスを形成するたんぱく質を可溶化、あるいは乳化する力が強く、ウィルスの構造を破壊できるためではないかと考えられる。
上述のように、(C)成分としてスルホン酸系界面活性剤を用いることにより、柔軟性等の風合い向上に加えて、さらに抗ウィルス性の付与ができる。
従来の薄葉紙処理剤においては、スルホン酸系界面活性剤を使用するとインフルエンザなどのウィルスに対する抗菌性は付与できるが、その一方で、滑らかさ、しっとり感、柔らかさ等の肌触り(風合い)が損なわれる傾向がある。本発明によれば、薄葉紙に優れた抗ウィルス性が付与でき、かつ、薄葉紙の風合いにも優れ、保存安定性も良好な薄葉紙処理剤が提供できる。
【0023】
(c−2)成分としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、N,N−ジアルキロイルオキシエチル−N−メチル,N−ヒドロキシエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0024】
(c−3)成分としては、脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等が挙げられる。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノドデカン酸ポリオキシエチレンソルビタンが好ましく、さらにはモノドデカン酸ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数20)ソルビタンが好ましい。
ポリオキシエチレン硬化ひまし油としては、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数40)硬化ひまし油が好ましい。
【0025】
(c−4)成分としては、脂肪酸アミドプロピルベタイン、N−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、DL−ピロリドンカルボン酸塩が挙げられる。
なお、塩を構成する対イオンとしては、上記と同様のものが挙げられ、好ましくはナトリウム、カリウム等が挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。
【0026】
上記(C)成分の中でも、(c−1)成分と、(c−3)成分のポリオキシエチレン硬化ひまし油、(c−3)成分のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、(c−1)成分と、(c−3)成分のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが、特に保存安定性の点から好ましい。
また、上記(C)成分の中でも、抗ウィルス性が向上することから、スルホン酸系界面活性剤が好ましい。さらに、スルホン酸系界面活性剤の抗ウィルス性を充分に発揮させることができる点から、スルホン酸系界面活性剤以外の(c−1)成分、(c−3)成分が好ましく、さらに好ましくはモノドデカン酸ポリオキシエチレンソルビタンである。
(C)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(C)成分の配合量は、薄葉紙処理剤中、下限値について、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは1質量%以上である。上限値について、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。下限値以上であることにより保存安定性が向上し、上限値以下であることにより、経済性において有利である。
特に、(C)成分としてスルホン酸系界面活性剤を使用する場合、スルホン酸系界面活性剤の配合量は、薄葉紙処理剤中、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは1〜20質量%である。下限値以上であることにより、抗ウィルス性が向上し、上限値以下であることにより、薄葉紙の風合いの低下をより抑制することができ、好適には薄葉紙の風合いを向上させることができる。また、保存安定性も向上する。
また、(C)成分としてスルホン酸系界面活性剤を使用する場合、スルホン酸系界面活性剤と(B)成分の質量比率は、好ましくは1/99〜50/50、さらに好ましくは5/95〜30/70であることが望ましい。スルホン酸系界面活性剤と(B)成分の質量比率を1/99以上、すなわちスルホン酸系界面活性剤の配合比率を下限値以上にすることにより、抗ウィルス性が向上し、スルホン酸系界面活性剤と(B)成分の質量比率を50/50以下、すなわちスルホン酸系界面活性剤の配合比率を上限値以下にすることにより、スルホン酸系界面活性剤の配合量が適度になり、薄葉紙処理剤の風合いが向上し(B)成分にスルホン酸系界面活性剤が充分に溶解するので、析出等が生じにくく、保存安定性がさらに向上するとともにハンドリング性が向上する。
【0027】
[(D)成分について]
(D)成分は、リン脂質及び/またはその誘導体である。
本発明の薄葉紙処理剤は、さらにリン脂質及び/またはその誘導体(D)を含有することが好ましい。(D)成分は、さらに風合いを向上させる効果を有する。また、さらに保存安定性を向上させる機能を有する。
(D)成分については、その由来に限定はない。
(D)成分は、動植物界における生体細胞の構成成分として広く分布する化合物であるため、卵黄以外に、現在では大豆を主原料として工業的に大量生産されている。
使用する原料の形態としては、通常流通している、ホスファジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸などの各種リン脂質を、それらの混合物として含有したレシチンを用いると経済的に有利である。これらの混合率は特に限定されないが、リン脂質の総含有量は高い方が好ましい。具体的な商品としては、例えば、日清オイリオグル−プ社 ベイシスLP−20、LP−60(以上、全て商品名)等が挙げられる。
また、リン脂質の含有量が高純度となるように精製処理したものが、風合い向上の面で好ましい。具体的な商品としては、例えば、辻製油社製 SLP−ホワイト(商品名)等が挙げられる。
(D)成分としては、より親水的な方が、例えばグリセリン溶液とした際の液安定性や、薄葉紙の保湿性の面で好ましい。従って、水素添加物よりは非水素添加物が好ましい。
また、リン脂質をより親水的にした誘導体はさらに好ましい。具体的には、ポリオキシエチレン付加体、グリセリン脂肪酸エステル部位を酵素などにより加水分解した「酵素分解リン脂質」、あるいは分子構造中の脂肪酸残基の不飽和部位に、過酸化水素処理などにより水酸基を導入した「水酸化リン脂質」などが挙げられる。
「酵素分解リン脂質」を含有するレシチンとしては、日光ケミカルズ社製 レシノールS−10、S−10E、LL−20(以上、全て商品名);辻製油社製 SLP−ペーストリゾ、SLP−ホワイトリゾ(以上、全て商品名)等が挙げられる。
「水酸化リン脂質」を含有するレシチンとしては、日光ケミカルズ社製 レシノールSH−50、WS−50(以上、全て商品名);辻製油社製 HL−50(商品名)等が挙げられる。
上記(D)成分の中でも、酵素分解リン脂質、水酸化リン脂質がより好ましい。特に、水酸化大豆リン脂質は、保存安定性の点で好ましい。
(D)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(D)成分の薄葉紙処理剤中の配合量は、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜10質量%である。下限値以上とすることにより、滑らかさや柔らかさが向上し、上限値以下であることにより、経済性の点で有利であり、さらに保存安定性が向上する。
本発明においては、特に、滑らかさ、しっとり感、柔らかさをバランスよく向上させることができるため、(A)成分と(D)成分とを併用することが好ましい。併用する場合、(A)成分と(D)成分の質量比は1:9〜9:1であることが望ましい。
なお、(A)成分(分岐鎖を有する炭素数6以上の1価のアルコール)において、風合い向上効果と保存安定性向上効果が得られる理由は定かではないが、(A)成分は、炭化水素基(疎水基)からなる分岐鎖を有するため、立体障害により、複数の分子間において、疎水基同士の会合がマイルドになり、その結果、(B)成分に対する(A)成分の溶解性が向上していると考えられる。そのため、ティッシュ等の薄葉紙の繊維の表面に薄葉紙処理剤を塗布すると、均一な親油性の保護膜が形成され、水の蒸発をより効率的に抑制することができるのではないかと推測される。また、(A)成分によって形成された保護膜は、滑り性が高く、かつ湿度の影響をうけにくい。この特性も風合い向上効果に寄与しているものと推測される。
また、(D)成分(リン脂質及び/またはその誘導体)において、風合い向上効果と保存安定性が向上する効果が得られる理由は定かではないが、(D)成分は(B)成分中において、(B)成分とともに会合体を形成し、この会合体は水分を抱き込む力が強いものと推定される。そのため、会合体の形成により、保存安定性が向上するとともに、この会合体が水分を抱き込むことにより、風合いを向上させることができると考えられる。また、(D)成分によって形成された保護膜は、滑らかで、感触が良好であり、仮に著しい低湿度条件下において、薄葉紙の保有水分が少なくなることがあったとしても、薄葉紙においては、良好な風合いが維持でき、環境中の湿度の影響を受けにくいものと推測される。
すなわち、(A)成分の風合い向上と保存安定性向上の効果は、(A)成分と(B)成分の化学的挙動及び(A)成分の物理的な特性の両方によって発揮されているものと推測される。
また、(D)成分の風合い向上と保存安定性向上の効果も、(A)成分の場合と同様、(D)成分と(B)成分の化学的挙動及び(D)成分の物理的な特性の両方によって発揮されているものと推測される。
【0028】
[水について]
本発明にかかる薄葉紙処理剤は水が配合されているのが好ましい、水を配合することにより、さらに保存安定性が向上する。
水は、例えばイオン交換水を使用することが望ましい。
水の配合量は、薄葉紙処理剤中、0.5〜40質量%、さらに好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%である。下限値以上であることにより保存安定性が向上し、上限値以下であることにより、塗布工程において、泡立ちが生じて塗布直後の衛生薄葉紙(基紙)にシワが生ずる現象を抑制することができる。
【0029】
[その他の成分について]
また、薄葉紙処理剤には、その他任意成分を配合することができる。
例えば、風合い向上剤(E)(以下、(E)成分という。)が挙げられる。
ここで、(E)成分は、(A)成分及び(D)成分以外の成分である。
(E)成分としては、例えば、平滑性付与や保湿効果付与するため、植物油、鉱物油、またはそれらの誘導体が挙げられる。具体的には、パラフィン、スクワラン、オリーブ油、ラノリン、脂肪族高級アルコール[(A)成分を除く;例えば直鎖状の1価の高級アルコール等]、脂肪酸、ポリオリガノシロキサン、グリシン、セリン、ピロリドンカルボン酸塩、水溶性コラーゲン、ヒアルロン酸塩、コンドロイチン酸塩等が挙げられる。
(E)成分を配合する場合、その量は、(A)成分とあわせて、(D)成分を含有する場合は(A)成分と(D)成分とあわせて、薄葉紙処理剤中、0.01〜30質量%であり、より好ましくは0.05〜10質量%である。下限値以上であることにより、目的とする滑らかさや柔らかさを向上させることができる。上限値以下であることにより、経済的に有利であり、かつ保存安定性を向上させることができる。
薄葉紙処理剤において、他に配合可能な成分としては、例えば防腐剤が挙げられる。
防腐剤としては、例えば安息香酸塩、メチルパラベン、エチルパラベン等のオキシ安息香酸系防腐剤;ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジンに代表される有機窒素系防腐剤;1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン、N−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等に代表される有機窒素硫黄系防腐剤;1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、ビストリブロモメチルスルホンに代表されるような有機ブロム系防腐剤;4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンで代表されるような有機硫黄系防腐剤等が挙げられる。
防腐剤の配合量は、薄葉紙処理剤中、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。
他の任意成分としては、果糖、ブドウ糖、オリゴ糖等の糖類;ビタミンC、ビタミンE等の抗酸化剤;香料、消臭剤、色素、エキス類等が挙げられる。
また、消泡剤;ジメチルシリコーン、無機フィラー複合コンパウンド型シリコーンまたはそれらのエマルション、POE(ポリオキシエチレン)変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、高級アルコールのPOE(ポリオキシエチレン)・POP(ポリオキシプロピレン)付加体等も挙げられる。
薄葉紙処理剤は、各配合成分を均一に混合することにより、得ることができる。
薄葉紙処理剤のpHは、必要に応じて適当なpH調整剤(例えば水酸化ナトリウム、硫酸等)を用いて、pH5〜9の中性領域とすることが好ましい。さらに好ましくはpH6〜8である。この範囲にすることにより保存安定性が向上する。また、肌に対して、よりやさしく、低刺激性になり、好ましい。
【0030】
<薄葉紙処理剤の塗布方法等について>
上述の薄葉紙処理剤を、上述の基紙に塗布等することにより、風合いなどの良好な衛生薄葉紙製品が得られる。
なお、薄葉紙処理剤は、塗布等により基紙表裏面に保護膜等を形成することにより滑らかさ等の向上が図られると考えられる。従って、塗布すべき、基紙は層構造あるいはプライ構造を有する場合には、最外層表面に塗布等されているのが最も好適である。
基紙に薄葉紙処理剤を塗布する方法としては、従来公知の方法、例えば、ロール転写法、スプレー塗布法等の任意の方法をとることができる。
薄葉紙処理剤の塗布量としては、基紙に対して絶対量としては1〜5.0g/m2、好ましくは2〜4g/m2、特に好ましくは2.5〜3.5g/m2とするのが適する。下限値未満では、均一塗布が困難であり、上限値を越えるとシワの原因となる。
また、薄葉紙処理剤の塗布量としては、水を除いた有効成分換算質量でいえば、基紙の乾燥質量に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。下限値以上にすることにより、風合いが向上する。上限値以下にすることにより、シワ等が生じて薄葉紙の外観を損なう傾向を抑制でき、また、経済的にも有利である。
【0031】
<衛生薄葉紙製品について>
本発明にかかる衛生薄葉紙は、そのまま又は2枚以上を重ね合わせた「プライ接合体」として衛生薄葉紙製品とされる。なお、業界では「〜プライ」を「〜枚重ね」とあらわすことがある。プライ接合手段としては、プライボンディング加工、熱融着接合、超音波融着接合、あるいは粘着剤を介在させる手段などを採用できる。これらの接合部位は全面であるほか、平面的にみてストライプ状、散点状、格子状、スパイラル状など部分的であってもよい。
プライ接合手段としてプライボンディング加工をとる場合には、シートの縦方向及び横方向の少なくともいずれか1方向の両端縁に沿って層間剥離を防止するエンボス加工によるライン状のプライボンディング加工を施すことができる。
プライボンディング加工は、シートの両端縁からそれぞれ5〜40mm離れた位置に施すのが好ましく、10〜20mm離れた位置に施すのがより好ましい。5mm未満であると、プライ剥がれから中層が肌に接するおそれがある。他方、40mmを超えると、端部がめくれ中層が肌に接するおそれがある。
プライボンディング加工としては、エンボス加工(付与)により接合する処理のほか、スリット形成による処理、接着剤による処理などを例示することができる。
一方、製品は米坪が10〜55g/m2であるのが望ましい。2プライ以上、特に3プライの重ね合わせ衛生薄葉紙製品の場合も、過度の米坪とするのは柔らかを損なうため、55g/m2以下とするのが望ましい。なお、米坪が10g/m2未満であると吸液性が十分とし難いなどの問題を残す。
また、例えば、3プライ構造とするのであれば、外層の坪量(JIS P 8124)を10〜20g/m2とし、かつ、中間層の坪量(JIS P 8124)を15〜35g/m2としておくと、薄さ、柔らかさが損なわれないという点で、特に好ましいものとなる。
他方、本衛生薄葉紙製品は、特に、ソフトネスが0.5〜3.0gとされ、かつKES肌触り指数が8〜15とされているのが好ましい。この値を満たせば、十分な柔らかさである。
ここで、ソフトネスとは、10cm巾の衛生薄葉紙製品を端子によって巾5.0mmの隙間に押し込んだときの抵抗値(縦横の平均値)であり、値が小さいほど、柔らかいことを意味する。本明細書でソフトネスは、ハンドルオメータ法(JIS L−1096 E法)によって測定した値をいう。ソフトネスは、例えば、坪量、基紙の層数、層を形成する繊維の種類、密着加工条件などを変化させることにより、調節することができる。
以上、詳述の本発明の衛生薄葉紙製品は、低温度条件下でも滑らかさ、しっとり感、柔らかさ等の肌触り(風合い)が良好であり、しかも、薄葉紙処理剤の保存安定性が良好で、低コストすることができる。また、本発明の衛生薄葉紙は、家庭用の衛生用途に特に適する。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、配合組成の単位は質量%(合計100質量%)である。
(実施例、比較例)
<薄葉紙処理剤の調製>
表1に記載の材料を用いて、表2〜4に示した組成の薄葉紙処理剤を以下の様にして調製した。
200mlビーカーに、(B)成分、必要に応じて配合するイオン交換水を所定量取り、常温で撹拌・混合した後、(C)成分を所定量添加して、均一で透明な状態になるまでさらに撹拌した。次に、ウォータバスで40℃に加温し、(A)成分と、その他の成分((D)成分、直鎖オクタデシルアルコール)を所定量添加して目視にて均一になるまで撹拌・混合し、薄葉紙処理剤を得た。
なお、実施例13〜15の薄葉紙処理剤のpHを表4に示した。pHは、ガラス電極pHメーター(堀場製作所製、商品名:F−21)を用い、25℃における薄葉紙処理剤のpHを測定した。
【0033】
上記で得られた各薄葉紙処理剤について、保存安定性を以下の様にして評価した。
「保存安定性の評価1」
実施例1〜12及び比較例1〜4の薄葉紙処理剤を25℃条件下で、3ヶ月保存し、分離の有無を目視で判定した。結果を表2、3にそれぞれ示した。
◎:透明均一で分離なし
○:微濁均一で分離なし
△:僅かに分離が認められる
×:著しい分離または沈殿が認められる
「保存安定性の評価2」
実施例13〜15の薄葉紙処理剤を25℃条件下で、3ヶ月保存し、分離の有無を目視で判定した。結果を表4に示した。
◎:透明均一で分離なし
○:微濁均一で分離なし
×:分離または沈殿が認められる
【0034】
上記で得られた薄葉紙処理剤を用いて、下記に示す処理方法により処理した薄葉紙について、その風合いを以下の様にして評価した。
「風合いの評価」
<衛生薄葉紙の処理方法>
前記薄葉紙処理剤を、有効成分(水を除いた成分)換算で15質量%となるようにイオン交換水でそれぞれ希釈し、二次処理剤を調製した。
なお、上述の様に薄葉紙処理剤にて薄葉紙を処理する際には、二次処理剤とせずに直接薄葉紙に薄葉紙処理剤を塗布等して処理することが通常である。ここでは、研究室用の評価方法として、二次処理剤を調製し、これを薄葉紙(基紙)の処理に適用した。
次に、この二次処理剤を、未処理のティッシュペーパー(基紙)に対して20質量%の質量分だけ均一にスプレー塗布し、実施例1〜12及び比較例1〜4の薄葉紙処理剤を用いた場合には2種の条件の恒温恒湿室(温度25℃・湿度65%RH、温度20℃・湿度40%RH)内で、また、実施例13〜15の薄葉紙処理剤を用いた場合には1種の条件の恒温恒湿室(温度25℃・湿度65%RH)内で、それぞれ24時間放置した。このようにして得られた処理済みティッシュペーパーについて風合いを評価した。
具体的には、処理後のティッシュペーパーの風合い(滑らかさ、しっとり感、柔らかさ)を、グリセリン単独の処理品との比較による官能評価法により、下記の点数基準でパネラー5人にそれぞれ評価してもらった。
(実施例1〜12、比較例1〜4についての点数基準)
4点:未処理品に比べ、極めて良好
3点:未処理品に比べ、良好
2点:未処理品に比べ、やや良好
1点:未処理品と同等以下
そして、この評価で得られた5人分の点数を合計し、以下の基準で◎〜×を判定し、その結果を表2、3にそれぞれ示した。
(判定基準、実施例1〜12、比較例1〜4についての判定基準)
◎:合計17〜20点
○:合計13〜16点
△:合計9〜12点
×:合計5〜8点
(実施例13〜15についての点数基準)
3点:未処理品に比べて良好
2点:未処理品と同等か、やや良好
1点:未処理品に比べ不良
そして、この評価で得られた5人分の点数を合計し、以下の基準で◎〜×を判定し、その結果を表4に示した。
(実施例13〜15についての判定基準)
◎:合計13〜15点
○:合計9〜12点
×:合計5〜8点
【0035】
また、実施例13〜15の薄葉紙処理剤については、抗ウィルス性を以下の様にして評価した。
「抗ウィルス性の評価」
10日発育鶏卵に、インフルエンザウィルス(A型:H5N1)を所定量添加した培地に、薄葉紙処理剤を80倍希釈した試料液を0.1mlずつ加え、35℃で48時間培養し、感染価(EID50/0.1ml)を求めた。
一方、薄葉紙処理剤を加えなかった培養液中のウィルス数を測定し、対照の感染価(EID50/0.1ml)を求めた。
以下の式に従って、前記対照と比較して、各薄葉紙処理剤を加えた場合に、感染価がどれだけ小さい値を示したか(ウィルス減少効果)を算出した。
そして、下記基準に基づいてその抗ウィルス性を判定し、結果を表4に示した。
ウィルス減少効果の値を算出する式は以下の通りである。
ウィルス減少効果=LOG[対照感染価(EID50/0.1ml)−処理剤接触時の感染価(EID50/0.1ml)]
抗ウィルス性の評価の判定基準は以下の通りである。
◎:3以上
○:2以上、3未満
×:2未満
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【0040】
表2〜4に示した結果より、本発明に係る実施例では、低湿度条件下でも風合いが良好で、かつ薄葉紙処理剤の保存安定性に優れることからコスト削減が可能であることが確認できた。
また、特に表4に示した結果より、本発明に係る衛生薄葉紙は、抗ウィルス性が優れていることが確認できた。
してみると、本発明の衛生薄葉紙及び衛生薄葉紙製品は、低温条件下でも滑らかさ、しっとり感、柔らかさ等の肌触り(風合い)を十分に有し、さらに低コスト化が達成されるとともに、抗ウィルス性にも優れたものであるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、鼻水、涙、唾液等の体液を拭き取る用途に用いるティシュペーパー、清拭用シートなどの紙製品、シート製品に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙に対して、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する薄葉紙処理剤を塗布した、ことを特徴とする衛生薄葉紙。
(A)分岐鎖を有する炭素数6以上の1価のアルコール、
(B)多価アルコール、
(C)界面活性剤。
【請求項2】
前記薄葉紙処理剤が、(D)成分としてリン脂質及び/又はその誘導体を含有する請求項1記載の衛生薄葉紙。
【請求項3】
前記(B)成分は、グリセリンと、2価のアルコールとを含む請求項1又は2記載の衛生薄葉紙。
【請求項4】
前記(C)成分は、スルホン酸系界面活性剤を含む請求項1〜3の何れか1項に記載の衛生薄葉紙。
【請求項5】
前記(D)成分は、酵素分解リン脂質及び、水酸化リン脂質からなる群から選ばれる1種類以上の化合物を含む請求項2〜4の何れか1項に記載の衛生薄葉紙。
【請求項6】
薄葉紙処理剤が基紙に対して、水を除いた有効成分換算質量で前記基紙の乾燥質量の1〜50質量%塗布されている、請求項1〜5の何れか1項に記載の衛生薄葉紙。
【請求項7】
1枚の衛生薄葉紙からなる又は衛生薄葉紙が2枚以上の重ね合わせられてなる衛生薄葉紙製品であって、
少なくともそのうちの一枚が、請求項1〜6の何れか1項に記載の衛生薄葉紙であることを特徴とする衛生薄葉紙製品。
【請求項8】
衛生薄葉紙が3枚重ね合わせられている請求項7記載の衛生薄葉紙製品。
【請求項9】
表裏面に位置する衛生薄葉紙の坪量より、それらの間に介在されている衛生薄葉紙の坪量が大きい請求項8記載の衛生薄葉紙製品。
【請求項10】
隣接する衛生薄葉紙同士が、熱融着、超音波融着、粘着剤による接着及びプライボンディングの群から選ばれた1つの接合方法により接合されている請求項7〜9のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙製品。
【請求項11】
米坪が10〜55g/m2である請求項6〜10の何れか1項に記載の衛生薄葉紙製品。

【公開番号】特開2008−73118(P2008−73118A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253540(P2006−253540)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】