説明

衛生薄葉紙

【課題】周辺湿度に起因する風合い変化の少ない衛生薄葉紙を提供する。
【解決手段】
有効成分中に、所定量の保湿剤、柔軟剤および、親水性高分子を0.001〜1.0重量%含み、かつ常温において流動性のある液状を呈する薄葉紙処理剤が5〜40重量%含有された衛生薄葉紙により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパー等の衛生薄葉紙に関し、特に保湿成分を含む薄葉紙処理剤を含有させた衛生薄葉紙に関する。
【背景技術】
【0002】
保湿成分を含む薄葉紙処理剤を含有させた、ローションタイプとも言われる衛生薄葉紙はよく知られる。この種の衛生薄葉紙は、ローションティシューとも言われ、湿潤タイプのウェットティシューとは区別され、非湿潤状態であり、一般的な非保湿系のティシュペーパーと同様に取り扱われ使用される。
この種の衛生薄葉紙は、非保湿系のものと比較して柔らかさ感、ぬめり感、滑らかさ感、きしみのなさ、ふんわり感といった風合いに優れ、肌への刺激が低減されており、鼻をかむさいやフェイシャル用途によく利用されている。
【0003】
しかし、従来製品においては、その保湿成分に起因する吸湿・排湿機能によって、環境によって風合い、物性が変化することがあった。例えば、使用される地域や季節、室内環境によってその風合いが変化し、所望の風合いが得られないことがあった。
より、具体的にいえば、低湿度環境下においてはしっとり感が低下し、高湿度環境下においては、引き裂き強度や引張り強度等の強度が低下することがあった。
また、使用環境によっては納められたティシュペーパーから排出された水分を収納箱が吸湿し、箱の強度が低下して、保管時の積載等によって歪み破損が生じることもあった。
【0004】
さらに、従来製品においては、使用場所の周辺雰囲気、特に乾燥雰囲気を考慮して、かかる状態における風合いを確保すべく、衛生薄葉紙にある程度過剰に薄葉紙処理剤を含有させる必要があり、これが、紙力の低下の原因となっていた。
【0005】
一方、薄葉紙処理剤としては、ゲル組成物からなる薬剤が提案されているが、そのままでは薄葉紙に均一に含ませることは困難であり、加熱や希釈して流動化させるなどの煩雑な工程や希釈水分の乾燥時間延長が必要であった。更に塗布後の薄葉紙は、紙力の低下及び、塗布ムラやゲル表面の乾燥進行により曲げ剛性、風合いを悪化させるなどの問題があった。
【特許文献1】特許3950400号公報
【特許文献2】特開平2007−203089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、湿度等に起因する風合いの変化が少ない、衛生薄葉紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明およびその作用効果は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
薄葉紙処理剤を5〜40重量%含有し、
湿度40%R.H.、温度25℃において測定された曲げ剛性B値が0.03〜0.07g・cm2/cm、水分率が4.5〜6.0重量%であり、
前記薄葉紙処理剤が、常温において流動性のある液状を呈し、かつ有効成分を70〜100重量%含み、
前記有効成分は、保湿剤を80.0〜97.0重量%、柔軟剤を0.5〜10.0重量%及び親水性高分子を0.001〜1.0重量%含み、
前記柔軟剤は、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤及び両性イオン界面活性剤のなかから選択されたものである、ことを特徴とする衛生薄葉紙。
【0008】
<請求項2記載の発明>
湿度70%R.H.、温度25℃において測定された、曲げ剛性B値が0.02〜0.04g・cm2/cm、水分率が10.0〜13.0重量%であり、
かつ、湿度40%R.H.、温度25℃で測定した曲げ剛性B値と、湿度70%R.H.、温度25℃で測定した曲げ剛性B値との差が、0.03〜0.01g・cm2/cmである請求項1記載の衛生薄葉紙。
【0009】
<請求項3記載の発明>
以下の(A)〜(C)の手順に従って測定された経過時的な表面水分率の差が、3時間経過時点、5時間経過時点、22時間経過時点のいずれの時点においても4.5%以下である請求項1又は2記載の衛生薄葉紙。
(A)試料を適当な温湿度条件に放置して、試料の表面水分率を12.0%±0.5%にする。
(B)(A)の後、試料を直ちに温度25℃、湿度0%R.H.の恒温、恒湿環境下に移して、経時的な表面水分率を測定する。
(C)(A)後に測定された試料の表面水分率と、所定時間経過時点における試料の表面水分率との差を算出する。
【発明の効果】
【0010】
以上の本発明によれば、周辺環境の湿度等に起因する風合いの変化が少ない衛生薄葉紙が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳説する。
〔構造例〕
本発明に係る衛生薄葉紙は、2枚以上の薄葉紙(以下、原紙シートともいう)が積層されたプライ構造であるのが望ましい。積層される原紙シートの枚数は特に限定されるものではなく、例えば2枚、3枚、4枚、又はそれ以上の複数枚と適宜変更することができる。特に、2枚又は3枚がティシュペーパーとしての使用に適することから望ましい。ただし、本発明は、積層構造を有する形態に限定されるわけではない。
【0012】
〔薄葉紙〕
他方、本発明に係る衛生薄葉紙を構成する薄葉紙(原紙シート)の原料パルプは、特に限定されない。衛生薄葉紙の用途に応じて適宜の原料パルプを選択して使用することができる。原料パルプとしては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプなどから、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、脱墨パルプ(DIP)、ウエストパルプ(WP)等の古紙パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
【0013】
特には、原料パルプは、トイレットペーパー、ティシュペーパーとするのであれば、NBKPとLBKPとを配合したものが好ましい。適宜古紙パルプが配合されていてもよいが、風合いなどの点で、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよく、その場合配合割合としては、NBKP:LBKP=30:70〜50:50がよく、特に、NBKP:LBKP=40:60が望ましい。
【0014】
パルプ繊維等の原料は、例えば、公知の抄紙工程、具体的には、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、サイズプレス、カレンダパート等を経るなどして、基紙とする。
この抄紙に際しては、例えば、分散剤、苛性ソーダ、アンモニア水等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、離型剤、耐水化剤、流動変性剤、歩留まり向上剤などの適宜の薬品を添加することができる。
【0015】
〔曲げ剛性〕
他方、本発明の衛生薄葉紙は、柔らかさ感及びふんわり感の指標となる曲げ剛性が、0.03〜0.07g・cm2/cmであるのが望ましい。ここで本発明にいう曲げ剛性とは、上記湿度、温度条件において、四つ折にしたティシュを10cm×10cmに裁断したものを測定試料とし、KES−FB2−S(カトーテック株式会社製)により縦および横方向について各々測定した値を平均した値である。なお、曲げ剛性の値が小さいほど、やわかさ感、ふんわり感が高いと評価できる。
さらに、本発明の衛生薄葉紙は、湿度70%R.H.、温度25℃の条件で測定した曲げ剛性と、湿度40%R.H.、温度25℃の条件で測定した曲げ剛性の差が、0.03〜0.01g・cm2/cmである。好ましくは0.025〜0.015g・cm2/cmである。
本発明の衛生薄葉紙は、上記湿度及び温度による曲げ剛性の差が小さく、もって、周辺湿度及び温度に起因する風合いの変化が極めて小さいという特徴を有する。
【0016】
〔水分率〕
他方、本発明の衛生薄葉紙は、湿度40%R.H.、温度25℃において測定された、水分率が4.5〜6.0wt%である。
また、湿度70%R.H.、温度25℃において測定された、水分率が10.0〜13.0wt%である。
さらに、上記湿度範囲における水分率の差が8.0wt%未満であることが望ましい。なお、水分率は、測定試料を測定環境に放置してから24時間後に測定した値であり、水分率の定義は、水分率(wt%)=[(調湿後の重量)/(絶乾時の重量)−1]×100である。
【0017】
さらに、本発明の衛生薄葉紙は、以下の(A)〜(C)の手順に従って測定された経過時的な表面水分率の差が、3時間経過時点、5時間経過時点、22時間経過時点のいずれの時点においても4.5%以下である。4.5%以下であると、湿度等に起因する風合いの変化が少ないという効果が十分かつ確実となる。なお、請求項1又は2記載の発明では、本条件である4.5%以下の表面水分率差を達成する。
(A)試料を適当な温湿度条件、例えば温度25℃、湿度50%R.H.の恒温、恒湿環境下にて24時間程度放置して、試料の表面水分率12.0%±0.5%にする。ここでの表面水分率は、サンコー電子製、紙・段ボール水分計KG-100i等の水分率計により測定すればよい。
(B)次いで、(A)の後、試料を直ちに温度25℃、湿度0%R.H.の恒温、恒湿環境下、例えば恒温室内に保管したデシケーター内に移し、経時的に上記水分率計を用いて表面水分率を測定する。なお、デシケーター内における湿度は、デシケーター内に湿度計を入れて確認する。湿度計としては、例えば、シンワ測定株式会社製「ST−4丸形4.5cm」が使用できる。
(C)(A)後に測定された試料の表面水分率と、所定時間経過時点における試料の表面水分率との差を算出する。
【0018】
〔乾燥引張強度〕
他方、本発明の衛生薄葉紙は、乾燥引張強度が縦方向120〜350cN/25mmであるのが望ましい。より望ましくは、140〜310cN/25mmである。
ここで、本発明における乾燥引張強度とは、ミネベア株式会社製「万能引張圧縮試験機 TG−200N」を用いて測定した値である。
乾燥引張強度が、120cN/25mm未満であると、操業中の断紙の原因となり、350cN/mmを超えるとやわらかさなどの使用感悪化の原因となる。
この乾燥引張強度は、原紙シート製造時に抄紙原料に対して乾燥紙力剤を添加したり、クレープ率を調整して適宜調整することができる。なお、クレープ率とは、(((製紙時のドライヤーの周速)−(リール周速))/(製紙時のドライヤーの周速)×100)を意味する。
【0019】
〔薄葉紙処理剤〕
他方、本発明の衛生薄葉紙は、後述の所定の組成の薄葉紙処理剤を5〜40重量%含有する。衛生薄葉紙が、複数の薄葉紙を積層してなる場合には、構成する薄葉紙のうちの少なくとも表裏の何れか一枚の薄葉紙に対して薄葉紙処理材が5〜40重量%含有されていればよい。
薄葉紙処理剤の含有量が5重量%未満であると、表面のなめらかさ等の風合いの向上効果が十分発揮されず、40重量%を超えると強度低下により断紙の原因となる。
【0020】
他方、本発明の特徴的な薄葉紙処理剤は、後述の有効成分を70〜100重量%含む。有効成分が70%未満であると十分な効果が発揮されない。ここで、有効成分以外の成分とは水である。
前記有効成分は、本発明においては、保湿剤、柔軟剤、親水性高分子である。有効成分中における配合割合は、保湿剤80.0〜97.0重量%、柔軟剤0.5〜10.0重量%及び、親水性高分子0.001〜1.0重量%である。
【0021】
柔軟剤 としては、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤および両性イオン界面活性剤のなかから適宜選択して用いることができ、特にアニオン系界面活性剤が好適である。アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸塩系、スルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、燐酸エステル塩系のものなど用いることができ、アルキル燐酸エステル塩が好ましい。また、保湿剤としては、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類、グルコール系薬剤およびその誘導体、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール、流動パラフィン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、セラミド等の1種以上を任意の組合せで用いることができる。これらの使用によって、薄葉紙の柔軟性及び保湿性が高まる。
【0022】
さらに前記親水性高分子は、本発明においては、熱水あるいは冷水に溶解、分散または膨潤する高分子化合物であり、動物系、植物系、微生物系、多糖類系などの天然高分子、デンプン誘導体(可溶性デンプン、カルボキシル化デンプン、ブリティッシュゴム、ジアルデヒドデンプン、デキストリン、カチオン化デンプンなど)、セルロース誘導体(ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)などの半合成高分子、(メタ)アクリルアミド系重合体、N―置換(メタ)アクリルアミド系重合体、N−ビニル(メチル)アミド系重合体、(メタ)アクリル酸(塩)系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ポリビニルアコール、ポリビニルアミン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリアリルアミンなどの合成高分子のいずれも用いることができるが、環境衛生問題の観点から、直接人体に接触した場合でも安全性に優れ、廃棄などが容易で自然分解性に優れた天然高分子が好ましく、中でも水溶性多糖類が好ましい。水溶性多糖類は、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、難消化性デキストリン、グアーガム、グアーガム分解物、プルラン、水溶性コーンファイバー、ヘミセルロース、低分子ヘミセルロース、ローカストビーンガム、コンニャクマンナン、ガードラン、ポリデキストロースなどの水溶性中性多糖類、低分子アルギン酸、カラギーナン、寒天、ペクチン、フコイダン、ポルフィラン、アガロペクチン、カラヤガム、ジェランガム、キサンタンガムなどの水溶性酸性多糖類、キトサン、ポリガラクトサミン、水溶性キチンなどの水溶性塩基性多糖類が挙げられ、特に分子中に酸性基、塩基性基を持たず、臭気および色相変化の虞、pHによる水溶性低下の虞、イオン性物質と錯体を形成し沈殿を生じる虞などがない水溶性中性多糖類が好ましい。これらの親水性高分子化合物は1種又は2種以上を混合して用いることができる。親水性高分子化合物は自重の数十倍から数百倍の水を吸って保持することから、処理紙に含まれる水分の湿度環境による変化を抑制することが可能となり、よって薄葉紙の風合変化を少なくすることが可能となる。
親水性高分子が0.001%未満であると、湿度環境変化に対する風合い維持効果が低下する虞があり、1.0重量%を超えると、薄葉紙が硬化し柔軟性を失い、風合いを悪化させるおそれがある。
【0023】
薄葉紙処理剤を調製する際は、ゲル化させないようにすることが重要である。処理剤がゲル化し、流動性を失った状態になると、処理剤の保管・移送時の取り扱い性が悪く、薄葉紙への塗布工程で液状化させるための加熱操作などが必要となり、不経済、非効率的である。更に塗布後の薄葉紙は塗布ムラやゲル表面の乾燥進行によるざらざら感が発現し、風合いを悪化させることとなる。そこで処理剤をゲル化させないようにするには、例えば、ゲル化しやすい高架橋度の高分子化合物を酵素により適宣分解後、酵素を失活し、保水性を維持した親水性高分子化合物を得ることにより、流動性のある液状物を得たり、更にこの分解物に低分子量の糖類を適宣配合し、保水性を向上させ流動性のある液状物を得ることができる。また親水性高分子化合物の種類によっては、酸、アルカリや特定のイオンまたは糖類、他の親水性高分子化合物などの存在によりゲル化したり、熱履歴によるヒステリシス現象として挙動の変化やゲル化する場合があるので、選択した親水性高分子化合物自身の特性を把握した上で、他の成分、比率や添加量を適切に調整し、流動性のある液状物を得る必要がある。
【0024】
他方、本発明の薄葉紙処理剤を、薄葉紙に対して含有させるには、既知の塗工機、印刷機、スプレー塗布機を用いた、適宜の塗布・塗工方法によることができる。特に本発明にかかる薄葉紙処理剤は、粘度100〜500mPa・secとすることができることから、高速かつオンライン印刷による塗布・塗工が適し、特にオンライングラビア印刷による塗布・塗工が好ましい。
このオンライングラビア印刷による塗布・塗工であれば、塗布量については12〜20g/m2とするのが望ましい。
【0025】
〔米坪〕
他方、本発明に係る衛生薄葉紙の米坪は、その用途によって適宜調整することができるが、好適には、全体として20〜80g/m2、好ましくは26〜40g/m2、積層構造とするならば、各層あたり10〜40g/m2。好ましくは12〜20g/m2である。10g/m2未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、使用に耐えうる十分な強度を適正に確保することが困難となり、また、40g/m2超では、硬くなりすぎて、肌触りが悪いものとなりやすい。この範囲は、衛生薄葉紙の用途として、ティシュペーパーとする場合に、特に適する。なお、米坪は、JIS P 8124の米坪測定方法による。
【0026】
〔紙厚〕
紙厚もまた、衛生薄葉紙の用途によって適宜調整することができる。ティシュペーパーの場合、60〜250μmとするのが好ましい。紙厚が60μm未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、ティシュペーパーとしての強度を適正に確保することがで困難となる。また、250μm超では、ティシュペーパーの肌触りが悪化するとともに、使用時にゴワツキ感が生じるようになる。なお、積層構造とする場合に、各層を構成する原紙シートの紙厚は、すべて統一する必要はない。
【0027】
紙厚の測定方法としては、JIS P 8111の条件下で、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料(例えば、トイレットペーパー。)を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。なお、紙厚は測定を10回行って得られる平均値とする。
【0028】
本発明に係る衛生薄葉紙の引張強度は、JIS P 8113の引張試験方法に準じて行う。その中でJIS P 8111に規定された標準条件下で、縦方向及び横方向に幅25mmに裁断するものとする。
【0029】
〔プライ剥離強度〕
積層構造とする場合、原紙シートのプライ剥離強度[cN/50mm]としては5〜100cN/50mmであることが好ましい。5cN/50mmを下回ると、原紙シートどうしの貼り合わせが十分ではなく、意図せず剥離することがあり、100cN/50mmを上回ると、衛生薄葉紙として硬くなりすぎて肌触りがする。プライ剥離強度の測定方法は、JIS P 8113の引張試験方法に準じて行う。その中でJIS P 8111に規定された標準条件下で、縦方向に幅50mmに裁断するものとする。裁断した後、試料を縦方向に剥離し、剥離試験用ロードセル(TG200N、ミネビア社製)に対して、剥離した一方を上側のつかみ具に、他方を下側のつかみ具にそれぞれ固定し、その間隔を8cmとする。次に、垂直方向に100mm/分の速度で引張り、さらに5cm剥離させて、その時の強度を測定するものである。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の効果を確認すべく本発明の実施例と従来例を挙げて説明する。尚、実施例、従来例、比較例に用いた薄葉紙処理剤、試料は以下の通りである。
<薄葉紙処理剤>
実施例1及び2に用いた薄葉紙処理剤は、保湿剤(グリセリン)83.0重量%、柔軟剤(アルキル燐酸エステル塩)1.9重量%、親水性高分子(水溶性中性多糖類)0.1重量%、水15.0重量%からなる粘度230mPa・sec(25℃)の液状物である。
従来例1及び2に用いた薄葉紙処理剤は、保湿剤(グリセリン)88.1重量%、柔軟剤(アルキル燐酸エステル塩)1.9重量%、水10.0重量%からなる粘度210mPa・sec(25℃)の液状物である。
比較例1〜4に用いた試料は、市中で販売されているローションティシューである。
実施例1、従来例1、比較例1〜4を用いて、周辺環境と風合い及び曲げ剛性との関係について試験を行ったので、その結果について説明する。
【0031】
<試験1:官能評価>
本発明にかかる試料(実施例1)と、従来製品(従来例1)とについて、高湿度環境(湿度70%R.H.程度)と低湿度環境(湿度40%R.H.程度)とにおいて官能評価を行った。
本発明例の薄葉紙処理剤含有量は20重量%、従来例1の薄葉紙処理剤含有量は23重量%、表1の通りである。
結果は、図1及び図2に示す。
なお、官能評価は、「しっとり感」、「柔らかさ感」、「ぬめり感」、「滑らかさ感」、「きしみのなさ」、「ふんわり感」について行った。評価は従来例を基準の3点とし、これと比較して本発明例を5段階で評価する方法とした。図中における点数は、100人の平均値である。
図1及び2から理解されるように、本発明例においては、高湿度環境下であっても低湿度環境下であっても、官能評価上、従来例1よりも高い評価となっている。このことから、本発明例においては、周辺環境に関係なく高い風合いであることが理解できる。
【0032】
<試験2:曲げ剛性>
本発明にかかる試料(実施例1)と、従来例1、比較例1〜4とについて、温度25℃、湿度40%R.H.の環境下と、温度25℃、湿度70%R.H.環境下における曲げ剛性を測定し、その差について評価した。また、水分率についても測定した。
曲げ剛性の測定は、KES−FB2−S(カトーテック株式会社製)により測定した。
試料の大きさは10cm×10cmとした。結果は下記表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示されるとおり、本発明の実施例1は、40%R.H.環境下と70%R.H.環境下における曲げ剛性の差が従来例1、比較例1〜4と比較して格段に小さい。特に、低湿度環境下における柔らかさに優れることが確認できる。
以上の試験1及び2から、本発明は風合いに優れるし、また、低湿度環境下でも高湿度環境下でも優れた風合いであり、さらに、周辺湿度の差による柔らかさの変化も少ない。
従って、本発明によれば、環境によらず十分に柔軟性等の風合いが向上され、しかも、周辺湿度の差による風合いの差も小さい衛生薄葉紙が提供される。
【0035】
実施例2、従来例2、比較例5を用いて、経時的な表面水分率の差がどの様に変化するかを測定した。尚、比較例5は上記比較例1に用いた試料である。
測定は、まず各例にかかる試料を温度25℃、湿度50%R.H.の恒温、恒湿環境下にて24時間程度放置して、試料の表面水分率を表2に示されるように調整した。表面水分率の測定にはサンコー電子製、紙・段ボール水分計KG-100iを用いた。
次いで、表面水分率を測定した後、各試料を直ちに温度25℃の恒温室内に保管したデシケーター内(内部湿度0%R.H.)に移し、経時的に上記水分率計を用いて表面水分率を測定した。測定結果は表2及び図3(グラフ)に示すとおりであった。なお、図3のグラフ中、縦軸は表面水分率(%)、横軸は時間(分)である。
【0036】
【表2】

【0037】
この結果から明らかであるように、本発明の実施例2に関しては、22時間までの測定において、表面水分率の減少が4.5%以下となっている。これに対して、従来例2及び比較例5については、表面水分率の低下が著しく。保水性に劣ると判断できる結果が得られた。
従って、本発明の衛生薄葉紙は、経時的な風合い変化に影響を与える要因である保水性に優れるものであるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の衛生薄葉紙は、清拭用途、特に身体の清拭用途、さらにはフェイシャル用途などに利用されるティシュペーパーに利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例及び従来例、比較例の高湿度環境下における官能評価の結果を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例及び従来例、比較例の低湿度環境下における官能評価の結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例及び従来例、比較例の経時的な表面水分率の変化の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄葉紙処理剤を5〜40重量%含有し、
湿度40%R.H.、温度25℃において測定された曲げ剛性B値が0.03〜0.07g・cm2/cm、水分率が4.5〜6.0重量%であり、
前記薄葉紙処理剤が、常温において流動性のある液状を呈し、かつ有効成分を70〜100重量%含み、
前記有効成分は、保湿剤を80.0〜97.0重量%、柔軟剤を0.5〜10.0重量%及び親水性高分子を0.001〜1.0重量%含み、
前記柔軟剤は、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤及び両性イオン界面活性剤のなかから選択されたものである、ことを特徴とする衛生薄葉紙。
【請求項2】
湿度70%R.H.、温度25℃において測定された、曲げ剛性B値が0.02〜0.04g・cm2/cm、水分率が10.0〜13.0重量%であり、
かつ、湿度40%R.H.、温度25℃で測定した曲げ剛性B値と、湿度70%R.H.、温度25℃で測定した曲げ剛性B値との差が、0.03〜0.01g・cm2/cmである請求項1記載の衛生薄葉紙。
【請求項3】
以下の(A)〜(C)の手順に従って測定された経過時的な表面水分率の差が、3時間経過時点、5時間経過時点、22時間経過時点のいずれの時点においても4.5%以下である請求項1又は2記載の衛生薄葉紙。
(A)試料を適当な温湿度条件に放置して、試料の表面水分率を12.0%±0.5%にする。
(B)(A)の後、試料を直ちに温度25℃、湿度0%R.H.の恒温、恒湿環境下に移して、経時的な表面水分率を測定する。
(C)(A)後に測定された試料の表面水分率と、所定時間経過時点における試料の表面水分率との差を算出する。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−263837(P2009−263837A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169604(P2008−169604)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【出願人】(000114318)ミヨシ油脂株式会社 (120)
【Fターム(参考)】