説明

衝撃吸収構造体及び衝撃吸収構造体の製造方法、並びに、移動体

【課題】設置する構造体に要求される耐衝撃特性で、確認試験の手間を最小限として容易に設置することが可能な衝撃吸収構造体及び衝撃吸収構造体の製造方法、並びに、移動体を提供する。
【解決手段】想定される衝撃方向に衝撃が発生した際に該衝撃を吸収する衝撃吸収構造体であって、軸心が衝撃方向Pに沿って配設された筒状体であり、該衝撃方向Pに発生した衝撃により圧縮破壊することで衝撃を吸収可能な複数の衝撃吸収部材11を備え、これら複数の衝撃吸収部材11の少なくとも一つが、衝撃方向P前方P1側となる先端11bの位置を、他の衝撃吸収部材11の先端11bの位置と異なるように配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機や自動車を例とする移動体など、衝撃を受け得る構造体において、衝撃を吸収するために用いられる衝撃吸収構造体及び衝撃吸収構造体の製造方法、並びに、衝撃吸収構造体を備えた移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衝撃を受け得る構造体においては、万一衝撃を受けた時に、その衝撃が保護対象物に伝わらないように、衝撃を吸収する構造を備えている。このような衝撃を吸収する構造としては、移動体として、例えば航空機や自動車などが挙げられる。航空機には、回転翼航空機であるヘリコプターや、飛行機などがある。そして、例えばヘリコプターでは、不時着時における乗員の安全確保のために、床下構造に衝撃吸収構造体が備えられている。ここで、上記においてヘリコプターの乗員の安全性を確保するためには、床面加速度の最大値を抑えるとともに、衝撃が発生した直後における床面加速度の初期勾配を、乗員が着席する耐衝撃座席が保証する図17に示すような加速度プロファイル内となるように小さくすることが望しい。このため、望ましい加速度プロファイルを実現するために、衝撃吸収構造体を構成する衝撃吸収部材が段階的に破壊される構造が様々提案されている。
【0003】
具体的には、繊維強化樹脂で形成され、軸心に沿って肉厚が段階的に変化する筒状体で構成された衝撃吸収部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような衝撃吸収部材では、衝撃を受けた際に、肉厚の薄い箇所から段階的に破壊が発生するものとされている。また、他の例としては、樹脂と繊維積層体からなり、ニードリングやスティッチングなどが段階的に設けられた衝撃吸収部材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このような衝撃吸収部材では、衝撃を受けた際に、ニードリングやスティッチングを設けた位置によって段階的に破壊して衝撃を吸収することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3141570号公報
【特許文献2】特許第4247038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の衝撃吸収部材では、軸心に沿って肉厚が異なる各区間で、その肉厚によって破壊特性が異なり、区間毎に破壊特性を確認するための確認試験を実施する必要があった。また、荷重水準の幅、すなわち衝撃による破壊開始時の荷重と破壊終了時の荷重の比が大きい場合、与えられた長さ寸法の中で最大荷重と対応する肉厚まで、肉厚を段階的に変化させていくのが困難となってしまう場合があった。これらは、特許文献2のようなニードリングやスティッチングを設ける構造でも同様であり、ニードリングやスティッチングを設けた位置毎に確認試験を実施する必要があり、また、最大荷重と対応するまで段階的にニードリングやスティチングを設けることが困難となってしまう場合があった。
【0006】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、設置する構造体に要求される耐衝撃特性で、確認試験の手間を最小限として容易に設置することが可能な衝撃吸収構造体及び衝撃吸収構造体の製造方法、並びに、移動体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明は、想定される衝撃方向に衝撃が発生した際に該衝撃を吸収する衝撃吸収構造体であって、軸心が前記衝撃方向に沿って配設された筒状体であり、該衝撃方向に発生した衝撃により圧縮破壊することで衝撃を吸収可能な複数の衝撃吸収部材を備え、これら複数の衝撃吸収部材の少なくとも一つが、前記衝撃方向前方側となる先端の位置を、他の衝撃吸収部材の先端の位置と異なるように配設されていることを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、衝撃方向に衝撃が発生した場合、筒状体である複数の衝撃吸収部材が圧縮破壊することで衝撃が吸収される。ここで、複数の衝撃吸収部材は、少なくとも一の衝撃吸収部材が衝撃方向前方側となる先端の位置を、他の衝撃部材の先端の位置と異なるように配設されていることで、破壊開始タイミングが異なることとなる。このため、例えば、当該一の衝撃吸収部材の先端の位置が他の衝撃吸収部材の先端の位置よりも衝撃方向前方側に位置した場合には、当該一の衝撃吸収部材が先行して圧縮破壊して、次に当該一の衝撃吸収部材とともに、他の衝撃吸収部材も圧縮破壊することで、破壊に伴う荷重の変化、すなわち耐衝撃特性を構造体全体で段階的なものとすることができる。また、複数の衝撃吸収部材の先端の位置を異ならせるだけであるので、構造体全体の耐衝撃特性を衝撃吸収部材の設置数と対応する段階数だけ変化させることができる。このため、荷重水準の幅が大きくても細かい荷重で変化させることができ、また、最大荷重時では複数の衝撃吸収部材全体が破壊することで、最大荷重の値が大きくても必要な耐衝撃特性を得ることができる。また、複数の衝撃吸収部材は単に先端の位置を異なるようにしているだけであるので、衝撃吸収部材を同じ断面形状のものとしても段階的に変化する耐衝撃特性を得ることができる。このため、破壊の段階数に応じた回数だけ衝撃吸収部材の耐衝撃特性の確認試験を実施する必要がなく、衝撃吸収部材を全て同一の断面形状とすれば1回の確認試験のみで全体の耐衝撃特性を把握することができる。
【0009】
また、上記の衝撃吸収構造体において、前記衝撃吸収部材として、長さの異なるものを複数有し、これら長さの異なる前記衝撃吸収部材同士が、基端の位置を前記衝撃方向に位置を同じくして配設されていることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、衝撃吸収部材として長さの異なるものを複数有していることで、複数の衝撃吸収部材を、基端の位置を衝撃方向に同じくして配設するだけで、先端の位置を異なるものとして設置することができる。
【0011】
また、上記の衝撃吸収構造体において、前記衝撃吸収部材同士の間に配設されたコア部材と、該コア部材及び前記衝撃吸収部材を挟み込む一対の面板とを備えることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、通常時においては、コア部材及び一対の面板によって、発生する荷重を支持しつつ衝撃吸収部材を保持し、衝撃発生時においては、複数の衝撃吸収部材によって効果的に衝撃を吸収することができる。
【0013】
また、上記の衝撃吸収構造体において、一対の前記面板の間で前記衝撃吸収部材の先端側に配設された充填部材を有することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、一対の面板の間で衝撃吸収部材の先端側の空間に充填部材が配設されていることで、衝撃が発生してコア部材及び面板が破壊される際に、破壊されたコア部材及び面板が当該空間に侵入してしまうことが、充填部材により規制される。このため、破壊されたコア部材及び面板により衝撃吸収部材の破壊が阻害されてしまうことを防止することができる。
【0015】
また、上記の衝撃吸収構造体において、前記充填部材は、前記コア部材が延長されてなることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、充填部材がコア部材を延長して形成されていることで、衝撃発生時には、コア部材において衝撃部材間の本体部分同様に破壊されつつ、当該本体部分や一対の面板が衝撃吸収部材の先端側に侵入してしまうことを規制することができる。
【0017】
また、上記の衝撃吸収構造体において、前記衝撃吸収部材と前記充填部材とが一体として形成されていることを特徴としている。
【0018】
この構成によれば、衝撃吸収部材と充填部材とが一体として形成されていることで、組立て時に一体的に取り扱うことができ、組立がより容易なものとなる。
【0019】
また、上記の衝撃吸収構造体において、前記衝撃吸収部材の先端の開口を閉塞するフィルムを備えることを特徴としている。
【0020】
この構成によれば、フィルムにより衝撃吸収部材の先端の開口が閉塞されていることで、衝撃発生時に破壊されたコア部材や一対の面板が衝撃吸収部材の内部に進入して破壊が阻害されてしまうことを防止することができる。
【0021】
また、上記の衝撃吸収構造体において、前記衝撃吸収部材同士の間に位置する前記コア部材の前記衝撃方向前方側には、該衝撃方向に衝撃が生じた際に前記コア部材の破壊を助長させる破壊補助手段を備えることを特徴としている。
【0022】
この構成によれば、衝撃発生時に破壊補助手段によりコア部材の破壊が促進されることにより、コア部材が破壊の進行を阻害してしまうことを確実に防止することができる。
【0023】
また、本発明の移動体は、上記の衝撃吸収構造体と、該衝撃吸収構造体の前記衝撃方向前方側に設けられ、該衝撃吸収構造体に連結された外側構造部材と、前記衝撃吸収構造体の前記衝撃方向後方側に設けられ、該衝撃吸収構造体に連結された内側構造部材とを備えることを特徴としている。
【0024】
この構成によれば、移動体に衝撃が与えられたとしても、外側構造部材と内側構造部材との間に配設され、段階的に変化する耐衝撃特性を有する上記衝撃吸収構造体により、効果的に衝撃を吸収することができる。
【0025】
また、本発明は、想定される衝撃方向に衝撃が発生した際に該衝撃を吸収する衝撃吸収構造体の製造方法であって、筒状体で、前記衝撃方向に発生した衝撃により圧縮破壊して衝撃を吸収可能な複数の衝撃吸収部材を、これら衝撃吸収部材の少なくとも一つの前記衝撃方向前方側となる先端の位置が他の衝撃吸収部材の先端の位置と異なるように、それぞれ軸心が前記衝撃方向に沿うようにして配設する衝撃吸収部材配設工程と、前記衝撃吸収部材同士を連結させる衝撃吸収部材連結工程とを備えることを特徴としている。
【0026】
この方法によれば、衝撃吸収部材配設工程において筒状体である複数の衝撃吸収部材を、少なくとも一の衝撃吸収部材の衝撃方向前方側となる先端の位置が他の衝撃吸収部材の先端の位置と異なるように配設し、衝撃吸収部材連結工程でこれらを連結するだけで、衝撃吸収構造体を製造することができる。そして、衝撃方向に衝撃が発生した場合、筒状体である複数の衝撃吸収部材が圧縮破壊することで衝撃が吸収される。ここで、複数の衝撃吸収部材は、少なくとも一の衝撃吸収部材が衝撃方向前方側となる先端側の位置を、他の衝撃部材の先端の位置と異なるように配設されていることで、破壊開始タイミングが異なることとなる。このため、例えば、当該一の衝撃吸収部材の先端の位置が他の衝撃吸収部材の先端の位置よりも衝撃方向前方側に位置した場合には、当該一の衝撃吸収部材が先行して圧縮破壊して、次に当該一の衝撃吸収部材とともに、他の衝撃吸収部材も圧縮破壊することで、破壊に伴う荷重の変化、すなわち耐衝撃特性を構造体全体で段階的なものとすることができる。また、複数の衝撃吸収部材の先端の位置を異ならせるだけであるので、構造体全体の耐衝撃特性を衝撃吸収部材の設置数と対応する段階数だけ変化させることができる。このため、荷重水準の幅が大きくても細かい荷重で変化させることができ、また、最大荷重時では複数の衝撃吸収部材全体が破壊することで、最大荷重の値が大きくても必要な耐衝撃特性を得ることができる。また、複数の衝撃吸収部材は単に先端の位置を異なるようにしているだけであるので、衝撃吸収部材を同じ断面形状のものとしても段階的に変化する耐衝撃特性を得ることができる。このため、破壊の段階数に応じた回数だけ衝撃吸収部材の耐衝撃特性の確認試験を実施する必要がなく、衝撃吸収部材を全て同一の断面形状とすれば1回の確認試験のみで耐衝撃特性全体を把握することができる。
【0027】
また、上記の衝撃吸収構造体の製造方法において、前記衝撃吸収部材連結工程では、複数の前記衝撃吸収部材を挟み込むように一対の面板を配設して、一対の前記面板と前記衝撃吸収部材とを固定することを特徴としている。
【0028】
この方法によれば、衝撃吸収部材連結工程において、一対の面板で衝撃吸収部材を挟み込んで固定するだけで、先端の位置が異なる衝撃吸収部材同士を連結させて一体的に成形することができる。
【0029】
また、上記の衝撃吸収構造体の製造方法において、前記衝撃吸収部材配設工程では、互いに平行に配設された複数の部材挿入孔を有するコア部材を、前記部材挿入孔が前記衝撃方向に沿うように設置し、各前記部材挿入孔に前記衝撃吸収部材を挿入することを特徴としている。
【0030】
この方法によれば、衝撃吸収部材配設工程において、コア部材の部材挿入孔に衝撃吸収部材を挿入するだけで、衝撃吸収部材を所定の間隔をもって軸心が衝撃方向に沿うようにして容易に配設することができる。
【0031】
また、上記の衝撃吸収構造体の製造方法において、前記衝撃吸収部材の内部に先端側から挿入可能な挿入部、及び、該挿入部に挿入される前記衝撃吸収部材の先端を係止可能な係止部を有する治具を、前記衝撃吸収部材配設工程で配設する前記衝撃吸収部材の先端側となる位置に配置する準備工程を備え、前記衝撃吸収部材配設工程では、配置された前記治具の前記挿入部を前記衝撃吸収部材に、先端が前記係止部に係止されるまで挿入させて、該衝撃吸収部材を位置決めするとともに、前記衝撃吸収部材の先端側空間を確保することを特徴としている。
【0032】
この方法によれば、衝撃吸収部材配設工程では、準備工程で配置された治具の挿入部に、先端が係止部に係止されるまで複数の衝撃吸収部材をそれぞれ挿入するだけで、互い配列する方向及び衝撃方向に所定の位置となるように容易に位置決めすることができる。また、位置決めされた状態で衝撃吸収部材の先端側には治具が配置されていることで、衝撃吸収部材連結工程において一対の面板を設置する際に、衝撃吸収部材の先端側の空間を確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の衝撃吸収部材によれば、設置する構造体に要求される耐衝撃特性で、確認試験の手間を最小限として容易に設置することができる。
また、本発明の衝撃吸収部材の製造方法によれば、確認試験の手間を最小限として容易に設置することができるとともに、設置する構造体で要求される耐衝撃特性を得ることができる。
また、本発明の移動体によれば、衝撃吸収構造体により、効果的に衝撃を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施形態のヘリコプターの概要図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のヘリコプターにおいて、床下部構造の詳細を示す部分斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の衝撃吸収構造体の詳細を示す部分斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の衝撃吸収構造体の内部の構造の詳細を示す正面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の衝撃吸収構造体の製造方法において使用される治具の詳細を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の衝撃吸収構造体の製造方法において、衝撃吸収部材配設工程を説明する説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の衝撃吸収構造体の製造方法において、衝撃吸収部材配設工程を説明する説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の衝撃吸収構造体の製造方法において、衝撃吸収部材連結工程を説明する説明図である。
【図9】比較例の衝撃吸収構造体の正面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態及び比較例の衝撃吸収構造体の耐衝撃特性を示すグラフである。
【図11】本発明の第1の実施形態の変形例の衝撃吸収構造体の詳細を示す正面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態の衝撃吸収構造体の内部の構造の詳細を示す正面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態の衝撃吸収構造体の内部の構造の詳細を示す正面図である。
【図14】本発明の第4の実施形態の衝撃吸収構造体の内部の構造の詳細を示す正面図である。
【図15】図14の切断線I−Iにおける断面図である。
【図16】本発明の第4の実施形態の衝撃吸収構造体において、破壊補助手段の詳細を説明する斜視図である。
【図17】加速度プロファイルの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態を図1から図11に基づいて説明する。図1及び図2は、本実施形態の衝撃吸収構造m体が組み付けられた移動体であるヘリコプターを示している。図1に示すように、ヘリコプター1は、外郭をなし外側構造部材となる外郭部材2と、外郭部材2内部において、床面3aを形成する床部材3と、床部材3を支持し内側構造部材となるビーム4及びフレーム5と、外郭部材2の底部2aとビーム4及びフレーム5との間に設けられた衝撃吸収構造体10とを備える。衝撃吸収構造体10は、不時着時などに外郭部材2の底部2aから床部材3を支持するビーム4及びフレーム5に向かって外部から受ける衝撃を吸収するためのものである。すなわち、衝撃吸収構造体10は、外郭部材2の底部2aからビーム4及びフレーム5に向かう方向を想定される衝撃方向Pとして、該衝撃方向Pに発生した衝撃を吸収可能に配置されている。なお、図2に示すように、ビーム4は、外郭部材2の前後方向に配設された部材である。また、フレーム5は、ビーム4と直交する方向にビーム4間及びビーム4から側方へと張り出された部材である。そして、このため、ビーム4とフレーム5とにより格子状の構造が構成されており、衝撃吸収構造体10も、外郭部材2の底部2aと、ビーム4及びフレーム5との間で格子状に配設されている。
【0036】
図2から図4に示すように、衝撃吸収構造体10は、軸心が衝撃方向Pに沿って配設された筒状体であり、該衝撃方向Pに発生した衝撃により圧縮破壊することで衝撃を吸収可能な複数の衝撃吸収部材11と、衝撃吸収部材11同士の間に配設されたコア部材12と、該コア部材12及び衝撃吸収部材11を挟み込む一対の面板13、13とを備えたサンドイッチパネル15となっている。そして、当該サンドイッチパネル15が、衝撃方向P前方P1側となる下側でT形レール16によって外郭部材2の底部2aと連結されているとともに、衝撃方向P後方P2側となる上側で、L形レール17によって対応するビーム4またはフレーム5と連結されている。
【0037】
一対の面板13、13は、薄板状とされ、通常時におけるサンドイッチパネル15の強度を主として負担するとともに、衝撃発生時には衝撃荷重を負担することなく圧縮破壊可能な強度で構成されている。面板13を形成する材料としては、複合材、樹脂、金属等の様々な材料を選択することが可能であるが、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が好適に選択される。コア部材12は、一対の面板13、13の間で挟み込まれて接着剤によって各面板13と固定されており、所定間隔で衝撃方向Pに沿って部材挿入孔12aが形成され、該部材挿入孔12aに衝撃吸収部材11が配設されている。コア部材12も、一対の面板13、13同様に、衝撃発生時には衝撃荷重を負担することなく圧縮破壊可能な強度で構成されている。接着剤としては、例えばエポキシ系のフィルム接着剤などが好適に選択される。また、コア部材12は、強度確保及び軽量化の観点からハニカム構造となっていることが好ましい。コア部材12を形成する材料としては、複合材、樹脂、金属等の様々な材料が選択することが可能であるが、例えば芳香族ポリアミド(アラミド)が好適に選択される。
【0038】
本実施形態において、複数の衝撃吸収部材11は、それぞれ横断面が四角形で同一形状となる角筒状をなしている。なお、必ずしも角筒状である必要はなく、少なくとも筒状であれば、横断面形状が円形や五角形などであっても良い。また、衝撃吸収部材11は、本実施形態では、樹脂と補強繊維との複合材料からなり、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が好適に選択される。複合材料に用いられる樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド意樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリカーボネードなどの熱可塑性樹脂がその用途の応じて選択される。また、複合材料に用いられる補強繊維としては、炭素繊維が好適に選択される。なお、その他選択可能な補強繊維としては、例えばガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、アルミナ繊維、炭素ケイ素繊維、ボロン繊維などが挙げられる。
【0039】
そして、本実施形態では、衝撃吸収部材11として、上記のとおり横断面形状が同一であるものの、部材延長が長い順に第一〜第四の衝撃吸収部材11A〜11Dの長さが異なる四種類により構成されており、これらが組となって配列されている。これら、衝撃吸収部材11は、いずれも衝撃方向P後方P2側となる基端11aが、面板13の一縁部13aと一致するようにして対応するビーム4またはフレーム5に当接されていて、これにより長さが異なる各衝撃吸収部材11は、先端11b側の位置が衝撃方向Pに位置を異なるようにして配設されている。すなわち、第一の衝撃吸収部材11Aの先端11bは、面板13の一縁部13aと反対側の他縁部13bに一致するように設定されている一方、第二〜第四の衝撃吸収部材11B〜11Dの先端11bは、順に衝撃方向P後方P2側となる上方に順に位置がずれるように設定されている。このため、第一の衝撃吸収部材11Aを除く、他の第二〜第四の衝撃吸収部材11B〜11Dでは、先端11b側において、部材挿入孔12aの一部として、一対の面板13、13とコア部材12に挟まれた空間18が形成されている。また、各衝撃吸収部材11は、一対の面板13、13のそれぞれと接着剤により固定されていて、これにより一体的に成形されている。ここで、図4に示すように、本実施形態では、基端11a側の一部のみを接着領域Aとして接着固定されており、他の部分は離型材19で覆われており非接着領域Bとされている。接着剤としては、面板13とコア部材12との接着剤同様に、例えばエポキシ系のフィルム接着剤などが好適に選択される。また、離型材19としては、例えばFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化)フィルムなどの離型フィルムが好適に用いられる。なお、FEPフィルムは、RICHMOND社からA5000 WHITEと称する商品名にて入手可能である。
【0040】
次に、本実施形態の衝撃吸収構造体10の製造方法について説明する。本実施形態の衝撃吸収構造体10の製造方法は、各種部材を準備する準備工程と、準備工程で準備された衝撃吸収部材11を配設する衝撃吸収部材配設工程と、配設された衝撃吸収部材11を連結する衝撃吸収部材連結工程とを備える。以下、各工程の詳細を説明する。
【0041】
まず、準備工程として、予め所定の寸法に成形された一対の面板13、13、コア部材12及び衝撃吸収部材11を用意する。衝撃吸収部材11において非接着領域Bとなる部位には、離型材19を巻いて被覆しておく。また、所定の位置に図5に示す治具20を配置する。図5に示すように、治具20は、所定の位置において衝撃吸収部材11が配列する方向に沿って延設された基部21と、基部21から各衝撃吸収部材11が配置される位置で衝撃方向Pとなる方向に突出する本体部22と、本体部22または基部21から突出する挿入部23とを有する。本体部22は、部材挿入孔12aに隙間無く挿入可能に、部材挿入孔12aの幅寸法と略等しいか、若しくは僅かに小さい幅寸法に設定されている。また、挿入部23は、衝撃吸収部材11の内部に隙間無く挿入可能に、衝撃吸収部材11の内部幅寸法と略等しいか、若しくは内部幅寸法より僅かに小さい幅寸法に設定されている。このため、本体部22と挿入部23との間には段状の部分が形成され当該部分が後述するように衝撃吸収部材11の先端11bが係止される係止部24として機能する。本体部22の長さは、第一〜第四の衝撃吸収部材11A〜11Dそれぞれの先端11b側の空間18と対応する長さに設定されており、すなわち第一の衝撃吸収部材11Aと対応する位置では本体部22が設けられておらず、基部21から挿入部23が直接突出し、基部21自体が係止部24を構成している。第二〜第四の衝撃吸収部材11B〜11Dと対応する位置では、本体部22の突出する長さが次第に長くなるように設定されている。
【0042】
次に、衝撃吸収部材配設工程として、図6に示すように、まず所定の位置に設置した治具20において本体部22に部材挿入孔12aが挿入されるようにコア部材12を配置する。次に、部材挿入孔12aに各衝撃吸収部材11を挿入していく。そして、図7に示すように、衝撃吸収部材11を挿入していくと、各衝撃吸収部材11の先端11bには治具20の挿入部23が挿入されていき、最後に先端11bが係止部24に係止される。ここで、本体部22の長さは、上記のとおり、第一〜第四の衝撃吸収部材11A〜11Dそれぞれの先端11b側の空間18と対応する長さに設定されていることで、第一〜第四の衝撃吸収部材11A〜11Dのそれぞれは基端11aがコア部材12の一縁部12bと一致するようにして、かつ、先端11bが互いに部材挿入孔12aの軸線方向に位置が異なるようにして位置決めされることとなる。
【0043】
次に、衝撃吸収部材連結工程として、図8に示すように、まずコア部材12の露出する全領域及び、衝撃吸収部材11の基端11a側の接着領域A、すなわち離型材19で被覆されていない領域に接着剤となる接着フィルム25、26を貼り付ける。この状態で、両側から一対の面板13、13を挟み込むようにして貼り付け、これにより一対の面板13、13、コア部材12及び衝撃吸収部材11が接着により一体となる。ここで、衝撃吸収部材11は正確に位置決めされていることから、一対の面板13、13、コア部材12及び衝撃吸収部材11を正確に組み付けることができる。また、衝撃吸収部材11の先端11b側の空間18は、治具20の本体部22によって満たされていることにより、当該空間18を確保し、接着剤が衝撃吸収部材11の先端11b側に流れてしまったり面板13が接着時の圧力によって窪んで当該空間18が狭くなってしまったりしてしまうことを防止することができる。
【0044】
次に、本実施形態の衝撃吸収構造体10の作用について説明する。
衝撃方向P、すなわち図1に示す外郭部材2の底部2aから床部材3を支持するビーム4及びフレーム5に向かって外部から衝撃が発生した場合、筒状体である複数の衝撃吸収部材11が圧縮破壊することで衝撃が吸収される。ここで、第一〜第四の衝撃吸収部材11A〜11Dは、互いに先端11bの位置と異なるように配設されていることで、破壊開始のタイミングが異なることとなる。すなわち、図3及び図4において、衝撃が発生すると、まずその衝撃が第一の衝撃吸収部材11Aの先端11b、一対の面板13、13及びコア部材12の他縁部12c、13bに伝わる。一対の面板13、13及びコア部材12は、衝撃に対してほとんど荷重を負担しない程度の強度に設定されていることで破壊が進行するとともに、第一の衝撃吸収部材11Aも先端11bから衝撃を受けて圧縮破壊し、これにより衝撃が吸収される。第一の衝撃吸収部材11Aの圧縮破壊が進行し、第二の衝撃吸収部材11Bの先端11bまで達すると、第二の衝撃吸収部材11Bも衝撃を受けて圧縮破壊することとなり、これにより第一の衝撃吸収部材11Aと第二の衝撃吸収部材11Bとにより衝撃が吸収されることとなる。このようにして、第三の衝撃吸収部材11C及び第四の衝撃吸収部材11Dも順次圧縮破壊し、最後は第一〜第四の衝撃吸収部材11A〜11D全てで圧縮破壊が進行することとなる。
【0045】
図10は、図9のような比較例の衝撃吸収構造体30と本実施形態の衝撃吸収構造体10の耐衝撃特性を比較したグラフである。具体的には、図4及び図9に示すような衝撃吸収構造体10、30をモデル化して、衝撃方向Pに衝撃を発生させ、その際の外郭部材2の底部2aの変位と、作用する荷重とを測定し、変位と荷重との関係をグラフ化したものである。ここで、比較例の衝撃吸収構造体30は、横断面形状が本実施形態の衝撃吸収部材11と同一の衝撃吸収部材11´を複数有しているものの、長さが同じで先端11bの位置が全て同位置となっている。このため、図10に示すように、衝撃を受けると、衝撃発生初期において変位に対して荷重が線形に変化し、荷重が衝撃吸収構造体11´の破壊荷重に達すると破壊荷重でほぼ一定のまま変位し破壊が進行することとなる。一方、本実施形態の衝撃吸収構造体10では、まず、第一の衝撃吸収部材11Aが圧縮変形することで変位に対して荷重が線形に変化する。そして、荷重が第一の衝撃吸収部材11Aの破壊荷重に達すると、第二の衝撃吸収部材11Bの先端11bの位置まで当該破壊荷重でほぼ一定のまま変位する。そして、第二の衝撃吸収部材11Bの先端11bの位置まで変位すると、第二の衝撃吸収部材11Bが荷重を受けることで、第二の衝撃吸収部材11Bが圧縮変形することで変位に対して荷重が線形に変化する。次に、荷重が第一の衝撃吸収部材11A及び第二の衝撃吸収部材11Bの破壊荷重の和に達すると、第二の衝撃吸収部材11Bも圧縮破壊し、第三の衝撃吸収部材11Cの先端11bの位置まで当該破壊荷重の和でほぼ一定のまま変位する。このように、衝撃吸収部材11の先端11bの位置を段階的に異なるようにすることで、耐衝撃特性もその段階数に応じて段階的に変化し、全体としては初期勾配の低い耐衝撃特性となることになる。このため、本実施形態の衝撃吸収構造体10では、組み込まれるヘリコプター1の座席が保証する加速度プロファイル(例えば図17)を実現する耐衝撃特性を容易に得ることができる。
【0046】
また、本実施形態の衝撃吸収構造体10では、複数の衝撃吸収部材11の先端11bの位置を衝撃方向Pに異ならせることにより段階的に変化する耐衝撃特性を実現していることで、衝撃吸収部材11の設置数に応じた段階数まで設定することが可能である。このため、荷重水準の幅が大きくても細かい荷重で変化させることができ、また、最大荷重時では複数の衝撃吸収部材11全体が破壊することで、最大荷重の値が大きくても必要な耐衝撃特性を得ることができる。また、複数の衝撃吸収部材11は、単に先端11bの位置を衝撃方向Pに異なるようにしているだけであるので、衝撃吸収部材11を同じ横断面形状のものとしても段階的に変化する耐衝撃特性を得ることができる。そして、本実施形態のように、衝撃吸収部材11全てを同一横断面形状とすることで、破壊の段階数に応じた回数だけ衝撃吸収部材11の耐衝撃特性の確認試験を実施する必要がなく、同一横断面形状の衝撃吸収部材についての1回の確認試験のみで全体の耐衝撃特性を把握することができる。
【0047】
また、本実施形態では、衝撃吸収部材11の先端11bの位置を異ならせるために、衝撃吸収部材11として長さの異なるものを用意したことで、これらを基端11aの位置を面板13の一縁部13aで衝撃方向Pに位置を同じくして配設するだけで、先端11bの位置を異なるものとして設置することができる。また、本実施形態の衝撃吸収構造体10は、衝撃吸収部材11、コア部材12及び一対の面板13、13によって構成されていることで、通常時においては、コア部材12及び一対の面板13、13によって発生する荷重を支持しつつ衝撃吸収部材11を保持し、衝撃発生時においては、上記のとおり複数の衝撃吸収部材11によって効果的に衝撃を吸収することができる。
【0048】
また、本実施形態の衝撃吸収構造体10の製造方法では、上記のような構造を、衝撃吸収部材配設工程において筒状体である複数の衝撃吸収部材11を先端11bの位置が互いに異なるように配設し、衝撃吸収部材連結工程でこれらを連結するだけで製造することができる。特に、衝撃吸収部材配設工程では、コア部材12の部材挿入孔12aに衝撃吸収部材11を挿入するだけで、所定の向きで配設することができ、治具20を利用することでより正確に位置決めをすることができる。また、衝撃吸収部材連結工程では、一対の面板13、13で衝撃吸収部材11を挟み込んで互いに接着して固定するだけであるので、容易に、先端11bの位置が異なる衝撃吸収部材11同士を連結させて一体的に成形することができる。また、その際治具20を利用していることで、上記のとおり衝撃吸収部材11の先端11b側の空間18の確保と、該空間18への接着剤の流入の防止を確実に図ることができる。
【0049】
なお、上記実施形態では、衝撃吸収部材11を、第一〜第四の衝撃吸収部材11A〜11Dからなる長さが異なる四種類のものから構成するものとし、これらにより先端11bの位置が衝撃方向Pに四段階に異なるものとしたが、これに限るものではない。少なくともいずれか一つの衝撃吸収部材11の先端11bが、他の衝撃吸収部材11の先端11bと衝撃方向Pに位置が異なることで、一段階以上で段階的に耐衝撃特性を変化させることができ、設置される全ての衝撃吸収部材11の先端11bの位置を衝撃方向Pに異ならせるようにしても良い。
【0050】
また、本実施形態では、衝撃吸収構造体10は、衝撃吸収部材11と、コア部材12と、一対の面板13、13で構成されるものとしたが、これに限るものではない。図11は、本実施形態の変形例を示している。図11に示すように、本変形例の衝撃吸収構造体40では、長さの異なる第一〜第四の衝撃吸収部材11A〜11Dが、それぞれ基端11aを床部材3を支持するビーム4またはフレーム5に接着接合されているだけで、コア部材12及び一対の面板13、13を備えておらず、衝撃方向P前方P1側に位置する外郭部材2とも連結されていない。このような構成としても、衝撃が発生した場合、外郭部材2が破壊され衝撃吸収構造部材の先端11bに接触して衝撃が伝わることで、ビーム4またはフレーム5と破壊された外郭部材2とに挟まれる衝撃吸収部材11が圧縮破壊され衝撃を吸収することができ、これら衝撃吸収部材11の先端11bの位置が異なることで段階的な耐衝撃特性を得ることができる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図12は、本発明の第2の実施形態を示したものである。なお、この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
図12に示すように、この実施形態の衝撃吸収構造体50は、長さが異なるとともに横断面形状が同一となる四種類の衝撃吸収部材11(11A〜11B)と、衝撃吸収構造部材の間に設けられたコア部材12と、コア部材12及び衝撃吸収部材11を挟み込む一対の面板(不図示)とを備えるとともに、各衝撃吸収部材11の先端11b側の空間に充填された充填部材51を備える。充填部材51は、コア部材12の部材挿入孔12aの横断面形状と対応した外形が四角形の筒状体である。そして、充填部材51は、各衝撃吸収部材11の先端11b側の空間の長さに応じた長さに設定されていることで、衝撃吸収部材11の先端11bから一対の面板13、13及びコア部材12の他縁部12c、13bまで充填されている。すなわち、充填部材51は、空間が形成される第二〜第四の衝撃吸収部材11B〜11Dの先端11b側に配設されており、これら第二〜第四の衝撃吸収部材11B〜11Dの順に、対応する充填部材51の部材延長が短く設定されている。
【0053】
充填部材51は、衝撃発生時に、コア部材12及び一対の面板13、13同様に破壊されて、衝撃吸収部材11の圧縮破壊を阻害しないような材質及び断面寸法に設定されている。すなわち、充填部材51の肉厚としては、衝撃吸収部材11の肉厚よりも薄く設定されている。また、充填部材51を形成する材料としては、コア部材12同様に、複合材、樹脂、金属等の様々な材料が選択することが可能であるが、例えば芳香族ポリアミド(アラミド)が好適に選択される。なお、本実施形態の衝撃吸収構造体50でも、製造方法は基本的に第1の実施形態と同様であり、衝撃吸収部材配設工程として、予め配置したコア部材12の部材挿入孔12aに、充填部材51及び衝撃吸収部材11を挿入し、衝撃吸収部材連結工程として、一対の面板13、13でコア部材12、充填部材51及び衝撃吸収部材11を挟み込んで固定することで行われる。
【0054】
本実施形態の衝撃吸収構造体50では、第1の実施形態同様の作用効果を奏するとともに、一対の面板13、13の間で衝撃吸収部材11の先端11b側の空間18に充填部材51が配設されていることで、衝撃が発生してコア部材12及び面板13が破壊される際に、破壊されたコア部材12及び面板13が当該空間18に侵入してしまうことが、充填部材51により規制される。このため、破壊されたコア部材12及び面板13により衝撃吸収部材11の破壊が阻害されてしまうことを確実に防止することができ、これにより衝撃吸収部材11の耐衝撃特性をより確実に発揮させることができる。
【0055】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図13は、本発明の第3の実施形態を示したものである。なお、この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0056】
図13に示すように、この実施形態の衝撃吸収構造体60は、基本的に第2の実施形態の構造と同じであるが、衝撃吸収部材及び充填部材が、成形部材61として、一体的に成形されている。すなわち、成形部材61は、衝撃吸収部材として機能する本体部62と、充填部材として機能する充填部63とを有する。各成形部材61の本体部62は、衝撃吸収部材として機能するために、第2の実施形態の第一〜第四の衝撃吸収部材11A〜11Dと同一の横断面形状を有するとともに、部材延長としてはそれぞれ対応する長さに設定されている。また、各成形部材61の充填部63は、衝撃発生時に本体部62の耐衝撃吸収特性を阻害せずに破壊されるよう、本体部62に対して肉厚が薄く設定されている。
【0057】
このような成形部材61は、例えば本体部62が炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を複数積層させて形成される場合には、本体部62と充填部63とで炭素繊維強化プラスチックの積層数を変化させることで形成される。すなわち、例えば最初の1、2層について本体部62及び充填部63の全体で積層しつつ、3層目以降は本体部62のみに積層していくことで、内部幅寸法が本体部62と充填部63とで同じである一方、外部幅寸法が本体部62の方が大きくなることで、本体部62が肉厚に、充填部63が肉薄に形成されることとなる。
【0058】
そして、このような本実施形態の衝撃吸収構造体60では、衝撃吸収部材と充填部材とが一体として形成されていることで、組立て時に一体的に取り扱うことができる。すなわち、衝撃吸収部材配設工程においては、衝撃吸収部材と充填部材とを構成する本体部62及び充填部63を一部材として部材挿入孔12aに挿入すれば良く、また、衝撃吸収部材連結工程を完了するまでの間、両者が離間したりしてしまうことなく取り扱うことができ、組立がより容易なものとなる。
【0059】
なお、本実施形態では、衝撃吸収部材を構成する本体部62と、充填部材を構成する充填部63とで、肉厚を異ならせるために、外部幅寸法を本体部62に対して充填部63を小さくするものとしたが、これに限ることはなく、外部幅寸法を等しくして、内部幅寸法を小さくすることで、肉厚を変化させても良い。この場合には本体部62及び充填部63いずれもコア部材12との間に隙間が形成されないようにして配設することができる。
【0060】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図14から図16は、本発明の第4の実施形態を示したものである。なお、この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0061】
図14に示すように、この実施形態の衝撃吸収構造体70は、基本的に第2の実施形態と同様の構成であるが、衝撃吸収部材11の先端11b側を充填する充填部材がコア部材12が延長されることによって形成される点で異なる。すなわち、コア部材12は、衝撃吸収部材11同士の間に配設されるコア本体部71と、衝撃吸収部材11の先端11b側となる範囲に配設される充填部72とが、一体的に成形されている。このため、衝撃吸収部材11が挿入されたコア部材12における部材挿入孔12dは、衝撃方向P前方P1側となる下側に底部12eを形成していて、衝撃吸収部材11は、底部12eに突き当たるようにして挿入されている。ここで、衝撃吸収部材11の先端11bには、自身の開口を閉塞するフィルム74が設けられている。このため、衝撃吸収部材11の先端11bは、フィルム74を介して部材挿入孔12dの底部12eに突き当てられている。また、本実施形態の衝撃吸収構造体70は、コア本体部71において衝撃方向P前方P1側となる他縁部12cに設けられ、衝撃発生時にコア部材12の破壊を助長させる破壊補助手段75を備えている。破壊補助手段75は、図15及び図16(a)に示すように、クサビ状の部材で構成され、底面75aをコア部材12の他縁部12cの端面に一致させるとともに、先端75bが衝撃方向P後方P2側となる上側に向かってコア部材12のコア本体部71内部に食い込むようにして配設されている。
【0062】
この実施形態の衝撃吸収構造体70では、以下のように製造される。すなわち、準備工程として、コア部材12として、コア本体部71と充填部72とが、コア本体部71に破壊補助手段75を埋め込んだ形で一体的に形成されたものを用意する。そして、コア部材12の部材挿入孔12dの底部12eにフィルム74を貼り付ける。次に、衝撃吸収部材配設工程として、部材挿入孔12dに先端11bがフィルム74に突き当たるまで挿入し、その後衝撃吸収部材連結工程として、一対の面板(不図示)を貼り付ければ良い。
【0063】
そして、この実施形態の衝撃吸収構造体70によれば、第2の実施形態同様の作用、効果を奏するとともに、充填部材がコア部材12を延長して形成されていることで、衝撃発生時には、コア部材12において衝撃吸収部材11間のコア本体部71同様に破壊されつつ、破壊されたコア本体部71や一対の面板(不図示)が衝撃吸収部材11の先端11b側に侵入してしまうことを規制することができる。また、フィルム74により衝撃吸収部材11の先端11bの開口が閉塞されていることで、衝撃発生時に破壊されたコア部材12や一対の面板(不図示)が衝撃吸収部材11の内部に進入して破壊が阻害されてしまうことを防止することができる。また、衝撃発生時に破壊補助手段75を構成するクサビ状の部材がコア部材12にさらに食い込み、先端11bで応力集中が生じることによりコア部材12の破壊が促進されることととなり、コア部材12が破壊の進行を阻害してしまうことを確実に防止することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、破壊補助手段75が、クサビ状の部材で構成されるものとしたが、これに限るものではなく、衝撃発生時にコア部材12の破壊を助長させるものであれば、様々な形状が適用できる。例えば、図16(b)に示すように、破壊補助手段76として、基板76aと、基板76aから突出した突出板76bとによってT字状に形成された部材としても良い。そして、基板76aをコア部材12の他縁部12cの端面に一致させるとともに、衝撃方向P後方P2側となる上側に向かってコア部材12内部に食い込むように突出部76bを配設させることで、衝撃発生時に突出部76bの先端で応力集中が生じコア部材12の破壊を促進させることができる。また、同様に図16(c)に示すように、破壊補助手段77を単なる板部材で構成したとしても、当該板部材を衝撃方向Pに平行となるようにコア部材12に埋め込むことで、端部で応力集中が生じ衝撃発生時の破壊を促進させることができる。また、本実施形態の破壊補助手段を第1〜3の実施形態の各構成に適用することが当然に可能である。
【0065】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0066】
なお、上記各実施形態では、衝撃吸収構造体はヘリコプター1の床構造に組み込まれるものとしたが、これに限るものではなく、飛行機や自動車など様々な移動体において、衝撃が発生し得る方向に対応させて配設することで同様の効果を奏する。また、移動体などの動体に限らず静止体でも衝撃を受けうるものであれば当該衝撃吸収構造体により同様の効果を期待することができ、移動体、静止体を含んだ様々な構造体に適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 ヘリコプター(移動体)
2 外郭部材(外側構造部材)
4 ビーム(内側構造部材)
5 フレーム(内側構造部材)
10、40、50、60、70 衝撃吸収構造体
11 衝撃吸収部材
11a 基端
11b 先端
12 コア部材
13 面板
15 サンドイッチパネル
16 T型レール
17 L型レール
18 空間
19 離型材
25 接着フィルム
26 接着フィルム
51 充填部材
61 成形部材
62 本体部(成形部材)
63 充填部(充填部材)
71 コア本体部
72 充填部(充填部材)
74 フィルム
75、76、77 破壊補助手段
P 衝撃方向
P1 前方
P2 後方

【特許請求の範囲】
【請求項1】
想定される衝撃方向に衝撃が発生した際に該衝撃を吸収する衝撃吸収構造体であって、
軸心が前記衝撃方向に沿って配設された筒状体であり、該衝撃方向に発生した衝撃により圧縮破壊することで衝撃を吸収可能な複数の衝撃吸収部材を備え、
これら複数の衝撃吸収部材の少なくとも一つが、前記衝撃方向前方側となる先端の位置を、他の衝撃吸収部材の先端の位置と異なるように配設されていることを特徴とする衝撃吸収構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の衝撃吸収構造体において、
前記衝撃吸収部材として、長さの異なるものを複数有し、
これら長さの異なる前記衝撃吸収部材同士が、基端の位置を前記衝撃方向に位置を同じくして配設されていることを特徴とする衝撃吸収構造体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の衝撃吸収構造体において、
前記衝撃吸収部材同士の間に配設されたコア部材と、
該コア部材及び前記衝撃吸収部材を挟み込む一対の面板とを備えることを特徴とする衝撃吸収構造体。
【請求項4】
請求項3に記載の衝撃吸収構造体において、
一対の前記面板の間で前記衝撃吸収部材の先端側に配設された充填部材を有することを特徴とする衝撃吸収構造体。
【請求項5】
請求項4に記載の衝撃吸収構造体において、
前記充填部材は、前記コア部材が延長されてなることを特徴とする衝撃吸収構造体。
【請求項6】
請求項4に記載の衝撃吸収構造体において、
前記衝撃吸収部材と前記充填部材とが一体として形成されていることを特徴とする衝撃吸収構造体。
【請求項7】
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の衝撃吸収構造体において、
前記衝撃吸収部材の先端の開口を閉塞するフィルムを備えることを特徴とする衝撃吸収構造体。
【請求項8】
請求項3から請求項7のいずれか一項に記載の衝撃吸収構造体において、
前記衝撃吸収部材同士の間に位置する前記コア部材の前記衝撃方向前方側には、該衝撃方向に衝撃が生じた際に前記コア部材の破壊を助長させる破壊補助手段を備えることを特徴とする衝撃吸収構造体。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の衝撃吸収構造体と、
該衝撃吸収構造体の前記衝撃方向前方側に設けられ、該衝撃吸収構造体に連結された外側構造部材と、
前記衝撃吸収構造体の前記衝撃方向後方側に設けられ、該衝撃吸収構造体に連結された内側構造部材とを備えることを特徴とする移動体。
【請求項10】
想定される衝撃方向に衝撃が発生した際に該衝撃を吸収する衝撃吸収構造体の製造方法であって、
筒状体で、前記衝撃方向に発生した衝撃により圧縮破壊して衝撃を吸収可能な複数の衝撃吸収部材を、これら衝撃吸収部材の少なくとも一つの前記衝撃方向前方側となる先端の位置が他の衝撃吸収部材の先端の位置と異なるように、それぞれ軸心が前記衝撃方向に沿うようにして配設する衝撃吸収部材配設工程と、
前記衝撃吸収部材同士を連結させる衝撃吸収部材連結工程とを備えることを特徴とする衝撃吸収構造体の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の衝撃吸収構造体の製造方法において、
前記衝撃吸収部材連結工程では、複数の前記衝撃吸収部材を挟み込むように一対の面板を配設して、一対の前記面板と前記衝撃吸収部材とを固定することを特徴とする衝撃吸収構造体の製造方法。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の衝撃吸収構造体の製造方法において、
前記衝撃吸収部材配設工程では、互いに平行に配設された複数の部材挿入孔を有するコア部材を、前記部材挿入孔が前記衝撃方向に沿うように設置し、各前記部材挿入孔に前記衝撃吸収部材を挿入することを特徴とする衝撃吸収構造体の製造方法。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の衝撃吸収構造体の製造方法において、
前記衝撃吸収部材の内部に先端側から挿入可能な挿入部、及び、該挿入部に挿入される前記衝撃吸収部材の先端を係止可能な係止部を有する治具を、前記衝撃吸収部材配設工程で配設する前記衝撃吸収部材の先端側となる位置に配置する準備工程を備え、
前記衝撃吸収部材配設工程では、配置された前記治具の前記挿入部を前記衝撃吸収部材に、先端が前記係止部に係止されるまで挿入させて、該衝撃吸収部材を位置決めするとともに、前記衝撃吸収部材の先端側空間を確保することを特徴とする衝撃吸収構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−162141(P2011−162141A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29554(P2010−29554)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】