説明

衝撃吸収繊維構造体

二つの連結区分と該二つの連結区分間の伸張区分とを有する織物構造体が提供される。織物構造体は、シースを形成する地糸(31、32)と、バインダー糸(38)と、シースによって囲まれる伸長糸(34)と、横方向糸(36)とを含む。伸張区分(14)において、横方向糸(36)の少なくともいくつかが伸長糸と織り交ぜられて、伸長糸をシートに横方向に連結する。伸張区分の熱処理は、製造中、伸長糸の長さを収縮する。シースは、伸長糸に比べて熱処理により実質的に縮まず、アコーディオン状配置で集まる。織物構造体にかけられた引張り荷重は、伸長部材を伸ばし、集まったシースを展開する。高強度シースは、完全に展開した際に該引張り荷重を支持し、他方、伸長部材は、織物構造体が伸びるすなわち伸長する際にエネルギーを吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、表題が「衝撃吸収繊維構造体」である2008年7月31日付け出願の米国出願第12/183,491号の利益を主張する。米国出願第12/183,491号は、表題が「衝撃吸収ランヤード」である2008年4月15日付け出願の米国出願第12/103,565号の継続出願である。米国出願第12/103,565号は、表題が「衝撃吸収ランヤード」である2004年3月1日付け出願の米国出願第10/790,394号の継続出願である。これら出願のすべては、参照によりここに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
床あるいは他の相対的に低い面の上方の高い位置にいる人々には、落下し負傷する危険があり得る。例えば、足場上等の高い位置にいることが要求される仕事を持つ作業者及び他の人員には、落下し負傷する危険があり得る。安全ハーネスが、人の落下を止め、損傷を防止又は低減するために装着され得る。シートベルト等の安全ハーネスも、突然の停止あるいは衝突した場合に自動車の乗員を守り、損傷の危険を低減するために装着され得る。
【0003】
安全ハーネスは、一般に、使用者が装着するハーネス部と、ハーネス部から延びるつなぎ綱もしくはランヤードとを有する。ランヤードは、ハーネス部を安全な構造体に連結する。ある人が高い位置から落ちたり、自動車の突然の停止により慣性を受けた場合、全ハーネスは、その人の落下を止め、あるいは前方への動きを防ぎ、この時、ランヤードは真っ直ぐになる。しかしながら、一般的なランヤードでは、人の動きがやや唐突に止められ、また、その人は不意の停止による衝撃力を受ける。
【0004】
人の落下の衝撃を吸収することを試みるランヤードが知られている。現在のランヤードは、互いに組み付けられた二つの別個の帯ひもから形成されている。一方の帯ひもは、部分延伸糸(POY帯ひも)から織られた細い平らな帯ひもであり、他方の帯ひもは、比較的高強度の管形状の帯ひもである。二つの帯ひもの製造後、POY帯ひもが管形状帯ひもの一端部内に挿入され、管形状帯ひもを通って引っ張られる。管形状帯ひもの他端部内に挿入されるフックもしくは他の機器が、管形状帯ひもを通ってPOY帯ひもを引くのに用いられ得る。POY帯ひもが管形状帯ひもを通って引かれ、POY帯ひもは管形状帯ひも内部で一端部から他端部へと延びる。次いで、POY帯ひもと管形状帯ひもの相対的長さが、調整されなければならない。POY帯ひもを所定の位置に保持しながら、管形状帯ひもの一端部が他端部に近付けられ、管形状帯ひもをPOY帯ひも上でアコーディオン状の姿勢に置く。これら帯ひもの相対的長さの調整は手動により行われ、既存のランヤードの著しく不利な点である。相対的帯ひも長さの手動調整後、POY帯ひもは、管形状帯ひものアコーディオン形状配向の内部で本質的に真っ直ぐな直線配向にある。該二つの帯ひもは、次いで、端部で縫合することにより互いに取り付けられる。管形状帯ひもの両端部から外部に突出する過剰なPOY帯ひもがあれば切断されて廃棄される。
【0005】
慣用のランヤードが、互いに組み付けられなければならない二つの別個の帯ひもから形成されるので、ランヤードの製造は、退屈で出費がかさむ、管形状帯ひもへのPOY帯ひもの挿入等の組立プロセスを必要とする。また、挿入プロセス後、POY帯ひもを直線姿勢に保ちながら管形状帯ひもをアコーディオン姿勢に置くことにより、相対的帯ひも長さを調整する追加の手動プロセスが要求される。次に、POY帯ひもを直線姿勢に、管形状帯ひもをアコーディオン形状姿勢に維持しながら、二つの別個の帯ひもを共に取り付ける別のプロセスが必要である。POY帯ひもと管形状帯ひもの相対的長さは、ランヤードの適切な機能にとって決定的に重要である。製造プロセスは、二つの帯ひもの肝要な相対的長さの適切な制御及び手動設定により、複雑である。
【0006】
衝撃を低減すると称する既存のランヤードは、米国特許第5,113,981号、第6,085,802号、第6,390,234号及び第6,533,066、及びWIPO公開第WO/01/026738号に見つけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,113,981号明細書
【特許文献2】米国特許第6,085,802号明細書
【特許文献3】米国特許第6,390,234号明細書
【特許文献4】米国特許第6,533,066号明細書
【特許文献5】国際公開第WO/01/026738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明のある実施形態は、一般に、織物構造体及び衝撃吸収・荷重制限織物構造体等の織物構造(体)と、これらを形成する方法に関する。更に詳しくは、本発明のいくつかの実施形態は、衝撃吸収部材及び荷重負担(耐荷重)部材を有する衝撃吸収・力制限構造体に関し、衝撃吸収部材は実質的に荷重負担部材よりも短い。衝撃吸収部材と荷重負担部材の相対的長さは自動的に調整される。また、衝撃吸収部材と荷重負担部材は、該構造体のある部分で互いに織られ得る。本発明のある実施形態は更に、衝撃吸収織物構造体等の織物構造体を形成する方法に関する。本発明のある実施形態は、伸長し、エネルギーを吸収し、更に荷重を支持することができる改良された織物構造体を提供する。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、織物構造体は、織られたワンピース(一体型)帯ひもであり、該帯ひもは、複数の地糸から形成されるシースと、シースによって囲まれる伸長部材とを含む。いくつかの実施形態において、シースは高強度シースであり得る。織物構造体はまた、複数のバインダー糸と複数の横方向糸とを含むことができる。
【0010】
伸長部材は、POY等の伸長糸から形成され得る。いくつかの実施形態において、帯ひもは、第1連結区分と、伸張区分と、第2連結区分とを有する。第1及び第2連結区分において、バインダー糸は、地糸及び伸長糸と織り交ぜられ得る。伸張区分において、横方向糸のいくつかは、伸長糸をシースに連結するために伸長糸と織り交ぜられ得、また、バインダー糸は、シースの地糸と共に織られ得るが、伸長糸と共には織られない。また、伸張区分において、伸長糸の長さはシースの長さよりも短くされ得る。熱処理が伸張区分における伸長糸の長さを収縮させ得る。対照的に、シースの糸は、伸長部材に比べて熱処理により実質的に縮まず、アコーディオン状配置で集まる。
【0011】
所定の荷重を適用すると、織物構造体は伸長部材を伸ばし、集まった(ギャザー)シースを展開する。シースは展開しながら引張り荷重を支持し、他方、伸長部材は伸びながらエネルギーを吸収する。このように、織物構造体は、人の落下もしくは他の動きを止めると共に、該動きが止められる時に使用者が感じる衝撃力を低減するために使用可能である。いくつかの実施形態によれば、織物構造体はまた、ハードウェア部品、例えばクリップ、ハーネス、もしくはシートベルトの構成要素等に取り付けられ得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
いくつかの実施形態において織物構造体が提供され、該織物構造体は、(a)織帯ひもを備え、織帯ひもは、(1)複数の地糸と、(2)複数の伸長糸と、(3)複数のバインダー糸と、(4)複数の横方向糸とを備え、地糸、伸長糸及びバインダー糸が実質的に縦方向に延び、横方向糸が実質的に横方向に延び、前記伸長糸が部分延伸糸を含み、該織帯ひもは、(i)バインダー糸が地糸及び伸長糸と織り交ぜられる第1連結区分と、(ii)第1端部及び第2端部を有する伸張区分にして、伸張区分の第1端部が第1連結区分に隣接し、前記地糸が伸長糸を囲むシースを構成し、横方向糸の少なくともいくつかが伸長糸及びシースの地糸と織り交ぜられて伸長糸をシースに連結し、伸長糸の長さがシースの長さよりも短く、かつ、バインダー糸がシースの地糸と共に織られかつ伸長糸と共には織られない伸張区分と、(iii)第1端部及び第2端部を有する第2連結区分にして、第2連結区分の第1端部が伸張区分の第2端部に隣接し、かつ、バインダー糸が地糸及び伸長糸と織り交ぜられる第2連結区分とを備える。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、前記第1及び第2連結区分の少なくとも一方において、伸長糸は地糸と織り交ぜられ得る。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、前記第1及び第2連結区分の少なくとも一方の端部は、ハードウェア部品に取り付けられ得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記ハードウェア部品はクリップであり得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記ハードウェア部品はシートベルトの部品であり得る。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記伸張区分における伸長糸とシースとの間の長さの差は、シースの破壊強さよりも小さい所定の荷重がかかった際に伸長糸が伸びることを許容するのに十分なものであり得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記シースは上部シース層と底部シース層とを備え得、伸長糸は上部シース層と底部シース層との間に配置され得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記上部シース層は上方地糸を含み得、底部シース層は下方地糸を含み得、第1連結区分において上方地糸は下方地糸と織り交ぜられ得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記第2連結区分において上方地糸は下方地糸と織り交ぜられ得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記地糸は、集合的に、少なくとも5,000ポンド(2268kg)の引張り強さを有し得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、織物構造体はフラグと捕獲糸とを更に備え得、捕獲糸の一部は、少なくとも伸張区分においてシースの少なくとも一部内で織られ得、かつフラグに受け入れられ得、伸張区分が伸張すると、このような伸張を示すためにフラグの一部が放出され得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、織物構造体はマーカー糸を更に備え得、該マーカー糸は、伸張区分においてシースの一部として織られ得、かつ地糸とは異なる色であり得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、織物構造体が提供され、該織物構造体は、(a)シースと、(b)シース内部の伸長糸にして、伸長可能で、実質的に非弾性であり、かつ部分延伸糸を含む伸長糸と、(c)間隔があけられた複数の連結区分にして、伸長糸が複数のバインダー糸によってシースに留められる連結区分と、(d)前記間隔があけられた複数の連結区分間の伸張区分にして、バインダー糸がシースと共に織られ、かつ、横方向糸が伸長糸及びシースと織り交ぜられて伸長糸をシースと連結する伸張区分とを備え、伸長糸の長さがシースの長さよりも短く、伸長糸がシースに比べて伸張可能である。
【0025】
いくつかの実施形態において、織物構造体を形成する方法が提供され、該方法は、(i)帯ひもを織るステップにして、該帯ひもが、シースを形成する複数の地糸と、シースによって囲まれる複数の伸長糸と、複数のバインダー糸とを備え、前記伸長糸が部分延伸糸を含み、地糸、伸長糸及びバインダー糸が実質的に縦方向に延びる該ステップを含み、該帯ひもを織るステップは、(a)第1連結区分を織るステップにして、前記複数のバインダー糸を地糸及び伸長糸と共に織ることを含む該ステップと、(b)伸張区分を織るステップにして、(1)実質的に横方向に延びる複数の横方向糸を伸長糸と共に織ることにより、伸長糸をシースに連結すること、及び、(2)バインダー糸を伸長糸と共に織ることなしに、前記複数のバインダー糸をシースの前記複数の地糸と共に織ることを含む該ステップと、(c)第2連結区分を織るステップにして、前記複数のバインダー糸を地糸及び伸長糸と共に織ることを含む該ステップとを含み、該方法は、(ii)伸張区分に熱を加えるステップにして、伸張区分において、伸長糸の長さが地糸の長さよりも短くなるように縮小される該ステップを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、伸張区分に熱を加えるステップは、伸長糸とシースとの間の長さの差がシースの破壊強さより小さい所定の荷重がかかった際に伸長糸が延びることを許容するのに十分なものとなるように伸長糸の長さを自動的に調整するのに十分な熱を加えることを含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、伸張区分に熱を加えるステップは、インライン式連続加熱プロセスを含み得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、伸張区分に熱を加えるステップは、バッチプロセスにおいて少なくとも一つの織物構造体を熱処理することを含み得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、織物構造体を形成する方法は、前記第1及び第2連結区分の少なくとも一方の端部をハードウェア部品に取り付けることを更に含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態において、織物構造体を形成する方法は、クリップである前記ハードウェア部品を準備(提供)することを含み得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、織物構造体を形成する方法は、シートベルトの部品である前記ハードウェア部品を準備することを含み得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、織物構造体を形成する方法は、(i)捕獲糸を準備するステップと、(ii)少なくとも伸張区分においてシースの少なくとも一部内で捕獲糸の一部を編み、かつ捕獲糸をフラグ内に受け入れるステップとを更に含み得、伸張区分が伸張すると、このような伸張を示すためにフラグの一部が放出され得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、織物構造体を形成する方法は、前記伸張区分においてシースの一部としてマーカー糸を編むステップを更に含み得、該マーカー糸は地糸とは異なる色であり得る。
【発明の効果】
【0034】
本発明の一つ利点は、改良された衝撃吸収織物構造体等の改良された織物構造体を提供することである。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態の利点は、衝撃吸収織物構造体の伸長部材とシースの相対的長さを自動的に調整することである。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態の別の利点は、衝撃吸収部材の長さをシースに比べて(シースに対して)収縮することより、衝撃吸収織物構造体を形成することである。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態の別の利点は、展開時に引張り荷重を支持する高強度シースと、織物構造体が伸びるすなわち伸長する際にエネルギーを吸収する伸長糸とを有する改良された衝撃吸収織物構造体を提供することである。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態の更に別の利点は、ある人が感じる衝撃を低減しながらその落下を止めることができる織物構造体を提供することである。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態の更なる利点は、織物構造体の製造を改善し、織物構造体のコストを削減することである。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態の更なる利点は、衝撃吸収織物構造体の製造中、衝撃吸収部材と荷重負担ウェブ(織物)の相対的長さを制御することである。
【0041】
本発明の実施形態の少なくともいくつかの付加的な特徴及び利点、並びに本発明の種々の実施形態の構造及び動作は、図面を参照して以下に詳述される。該特徴及び利点は望ましいかもしれないが、本発明を実施するために必ずしも必要ではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従う織物構造体の写真である。
【図2】図2は、図1の織物構造体を一部破断した写真である。
【図3】図3は、図1の織物構造体の伸張区分における織りパターンの断面図である。
【図4】図4は、織物構造体の種々の実施形態に従う伸張区分の種々の織りパターンのピック図の一つである。
【図5】図5は、織物構造体の種々の実施形態に従う伸張区分の種々の織りパターンのピック図の一つである。
【図6】図6は、織物構造体の種々の実施形態に従う伸張区分の種々の織りパターンのピック図の一つである。
【図7】図7は、織物構造体の種々の実施形態に従う伸張区分の種々の織りパターンのピック図の一つである。
【図8】図8は、織物構造体の種々の実施形態に従う伸張区分の種々の織りパターンのピック図の一つである。
【図9】図9は、図3の織物構造体の断面9−9での該織物構造体の織りパターンの断面図である。
【図10】図10は、図3の織物構造体の断面10−10での該織物構造体の織りパターンの断面図である。
【図11】図11は、図3の織物構造体の断面11−11での該織物構造体の織りパターンの断面図である。
【図12】図12は、図1の織物構造体の連結区分における織りパターンの断面図である。
【図13】図13は、織物構造体の種々の実施形態に従う連結区分の種々の織りパターンのピック図の一つである。
【図14】図14は、織物構造体の種々の実施形態に従う連結区分の種々の織りパターンのピック図の一つである。
【図15】図15は、織物構造体の種々の実施形態に従う連結区分の種々の織りパターンのピック図の一つである。
【図16】図16は、織物構造体の種々の実施形態に従う連結区分の種々の織りパターンのピック図の一つである。
【図17】図17は、織物構造体の種々の実施形態に従う連結区分の種々の織りパターンのピック図の一つである。
【図18A】図18Aは、本発明の一実施形態に従う織物構造体の製図である。
【図18B】図18Bは、本発明の一実施形態に従う織物構造体の製図である。
【図19】図19は、図3の織物構造体の伸張区分の側面部分破断図である。
【図20】図20は、シートベルト部品と共に使用する図1の織物構造体を斜視する写真である。
【図21】図21は、フラグと共に使用する本発明の一実施形態に従う織物構造体の説明図である。
【図22】図22は、フラグと共に使用する本発明の一実施形態に従う織物構造体の説明図である。
【図23】図23は、フラグと共に使用する本発明の一実施形態に従う織物構造体の説明図である。
【図24】図24は、フラグと共に使用する本発明の一実施形態に従う織物構造体の説明図である。
【図25】図25は、フラグと共に使用する本発明の一実施形態に従う織物構造体の説明図である。
【図26】図26は、クリップと共に使用する図1の織物構造体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明のある実施形態は、織帯ひも10から構成される織物構造(体)を提供する。図1に示すように、一実施形態に従う織帯ひも10は、第1連結区分12と、伸張区分14と、第2連結区分16とを備える。第1連結区分12は、第1端部18と第2端部20を含む。伸張区分14は、第1端部22と第2端部24を含む。第2連結区分16は、第1端部26と第2端部28を含む。図1の実施形態において、伸張区分14の第1端部22は、第1連結区分12の第2端部20に隣接し、第2連結区分16の第1端部26は、伸張区分14の第2端部24に隣接する。
【0044】
図2の実施形態に示すように、織帯ひも10は複数の伸長糸(の)束34を含む。各束は、複数の伸長糸33とシース30とを備え、シース30は、複数の地糸31及び32から形成される。好ましい実施形態において、地糸はポリエステルであり、それぞれほぼ2,600デニールの線密度を有する。しかしながら、地糸31及び32は、他の適切な材料にして、比較的高強度であり、かつ熱処理中に収縮しないか又は伸長糸より収縮が実質的に小さい材料から形成可能である。例えば、いくつかの実施形態において、シース30を形成する地糸31及び32は、少なくとも5,000ポンド(約2268kg)引張り強さの強度を有する。他の実施形態において、29C.F.R.1926.104(d)(2008)、米国規格協会(「ANSI」)Z335.1、カナダ規格Z259.1.1クラスIA及びIB、及びヨーロッパ規格BS EN 355:2002、及びオーストラリア規格AN/NZS1891.1.1995に従い、地糸は、5,400ポンド(約2449kg)を超える公称破壊強さを有し、また、いくつかの実施形態において、6,000ポンド(約2722kg)を超える公称破壊強さを有する。
【0045】
伸長糸束34は、シース30によって囲まれる。伸長糸33は非常に伸張性があり、引張り荷重を受けると、かなり伸びる。伸長糸は、例えば、共に織られたもの又は織ったものでないもの等、どのような望ましい形態をも有し得る。いくつかの実施形態において、図2に示すように、伸長糸33は、伸長糸束34へとまとめられ得る。例えば、好ましい実施形態において、織帯ひも10は、ほぼ十二の束34にまとめられたほぼ七十五の伸長糸33を含む。伸長糸33は、織帯ひも10の衝撃吸収部材の一例である。好ましい実施形態において、伸長糸33は、ポリエステル等のポリマー材料から成る部分延伸糸(POY)であるが、伸長糸33は、高伸長特性、及び熱処理中等において長さが収縮する能力を有する一つ又は複数の適切な材料から形成され得る。いくつかの実施形態において、各伸長糸は、ほぼ300デニールからほぼ5,800デニールの線密度を有する。総合的に、伸長糸の各束は、ほぼ34,000デニールの線密度を有する。
【0046】
いくつかの実施形態において、シース30は、好ましくは、シース30の内部を通って実質的に縦糸方向(縦方向)に延びる伸長糸束34と共に織られる。シース30は、織帯ひも10にかけられた荷重を、伸長糸33が該荷重下で伸長した後、支持する。該織物構造体は、伸長糸33とシース30の地糸31及び32との同時製織により形成される。従って、織帯ひも10は、ワンピース(一体型)帯ひもとして織られる。伸長糸33及びシース30各々は、任意の望ましい構造を有する材料、例えば、織った材料、組んだ(編組)材料、編んだ材料、不織材料、及びこれらの組合せ等、から形成され得る。
【0047】
図2は、完成した形態の図1の織物構造体の破断図であり、伸張区分において、シース30は、伸長糸束34を囲むアコーディオン状形態である。シース30の内部の伸長糸束34は、シースのアコーディオン状形態ではなく、概ね直線状の形態を有する。伸張区分14におけるシース30のアコーディオン状形態は、好ましくは織帯ひもが織機から外れる前に、熱処理プロセスによって自動的に形成される。
【0048】
いくつかの実施形態において、更に後述するように、伸長糸33とシース30の地糸31及び32は、第1連結区分12及び第2連結区分16において、共に連結されて留められる。例えば、伸長糸33と地糸31及び32は、一体的に織られ得、又は、バインダー糸38及び39が共に織り交ぜられ得る。いくつかの実施形態において、バインダー糸39及び39は、地糸よりも軽く、より小さいデニールの糸である。例えば、いつくかの実施形態において、バインダー糸は、ほぼ300〜1500デニールのポリエステル糸であり得る。いくつかの実施形態において、バインダー糸は、産業用繊維のポリエステル、ナイロン、ノーメックス(登録商標)、ケブラー(登録商標)、又は他の任意の適切な糸であり得る。伸長糸33とシース30の地糸31及び32とが織り交ぜられる製織は、織帯ひも10の製織中、該二種類の糸を共に固定する(留める)。好ましくは、使用時に伸長糸33とシース30が第1連結区分12及び第2連結区分16において容易に分離し得ないように、伸長糸33はシース30に固定される。伸長糸33はまた、伸長糸33と地糸31及び32を共に縫うことにより、シース30に固定され得る。
【0049】
上述したように、伸長糸33は、熱処理中に長さが収縮する一つ又は複数の材料から成り、また、シース30の地糸31及び32は、長さが収縮しないか又は伸長糸33より収縮が実質的に小さい一つ又は複数の材料から成る。第1連結区分12及び第2連結区分14において伸長糸33とシース30が共に連結されるので、伸長糸33の長さは、シース30の地糸31及び32の長さに比べ著しく低減する。このように、伸長糸33の縮小は、第1連結区分12をこれが第2連結区分16により近付くように引っ張る。シース30の地糸31及び32の長さは、伸長糸33の長さに比べ有意には低減しない。シース30の長さは、長さが縮小した伸長糸33のためにより短い距離を占めるように強いられるので、シース30は伸張区分14に集まり、もしくはまとまる。この態様において、シース30は、織帯ひも10の熱処理後、伸張区分14においてアコーディオン状形態を自動的に形成する。
【0050】
衝撃吸収部材として機能し得る伸長糸33の重要な特性には、シースを「アコーディオン化」する高い伸長性、高い収縮性及び高い収縮力(収縮時に生じる力)のいくつか又はすべてを含み得る。建物からの落下、パラシュート降下、又は自動車もしくは航空機の事故等において身体が突然の減速状態にある人もしくは他の身体に対する衝撃を減らすように荷重エネルギーを吸収するため、伸長糸33は、荷重下において十分に高い伸長特性及び荷重負担(耐荷重)特性を有するべきである。収縮性は、伸長糸33とシース30との間の正確な相対的長さを実現する程度に十分高い(大きい)べきである。
【0051】
完成した織帯ひも10における伸長糸33とシース30の相対的長さは、形成された織帯ひも10の適切な伸長(伸長糸33の伸びとシース30の展開)を提供し、ある人の落下あるいは前方への移動を止め、さもなければその人が感じる衝撃力を低減する。伸長糸33とシース30は、ワンピース織帯ひもとして共に織られているため、伸長糸33とシース30の相対的長さは、都合よく正確に制御され得る。また、熱処理プロセスは、好ましくは伸長糸33とシース30が共に固定された後、シース30に比べ伸長糸33を縮ませることにより、該相対的長さの好都合で正確な制御を与える。この態様において、伸張区分14における伸長糸33とシース30の相対的長さは自動的に調整される。該相対的長さは、シース30に対する伸長糸33の組み付け前に調整される必要はない。これは、外側帯ひもに対する部分延伸糸(POY)の組み付け前に相対的長さが調整もしくは設定された従来のランヤードとは対照的である。
【0052】
種々の熱処理プロセスが伸長糸33を収縮させるために使用可能である。例えば、連続オーブンがインライン式連続加熱プロセスにおいて使用され得る。帯ひもは、連続的に織られて、熱処理のために連続オーブン内に供給され得る。連続オーブンを出た後、切れ目のない帯ひもは、個々の織物構造体もしくはランヤードを提供するため、所望の長さに切断され得る。熱処理の別の例はバッチプロセスであり、該バッチプロセスにおいて個々の織物構造体が熱処理される。
【0053】
伸長糸33は、伸長糸33が所定の引張り力下で十分に伸びることを許容する伸長特性を有する。伸長糸33は、熱処理プロセス後でさえこの伸長特性を有する。織物構造体が引張り荷重下に置かれると、伸長糸33が引っ張り下で伸び、織物構造体10にかかる力又はエネルギーを吸収する。従って、伸長糸33は、衝撃吸収特機能を提供する衝撃吸収部材である。
【0054】
いくつかの実施形態において、シース30は、上部シース層40及び底部シース層42を提供し、伸長糸束34は、上部シース層40と底部シース層42の間に配置される。このように、シース30は伸長糸束34を囲む。シース30は、別の実施形態において他の形態を有する。
【0055】
本発明の織物構造体は、ニードル織機等、どのような望ましいプログラム可能織機でも形成され得る。上述したように、織物構造体10は、第1連結区分12と伸張区分14と第2連結区分16とを有する。伸張区分は使用中に伸張する。図3は、本発明の一実施形態に従う織物構造体10の織りパターンを示す。織物構造体10は、複数の伸長糸33(該伸長糸は伸長糸束34へとまとめられ得る)と、複数の地糸31及び32と、複数のバインダー糸38及び39と、複数の横方向糸36とから形成される。いくつかの実施形態において、横方向糸は、ほぼ1,000デニールのポリエステル糸であり得る。他の実施形態において、横方向糸は、産業用繊維のポリエステル、ナイロン、ノーメックス(登録商標)、ケブラー(登録商標)、又は他の適切な糸であり得る。地糸31及び32はシース30を形成する。バインダー糸38及び39と地糸31及び32は、実質的に縦糸方向に延びる。POY等の伸長糸束34も、上部層40と底部層42間のシース30の内部に沿って実質的に縦糸方向に延びる。
【0056】
伸張区分14において、伸長糸束は、熱処理中、自由に収縮することができる。また、伸張区分14において、伸長糸束34は、複数の横方向糸36(「横」もしくは「緯(ピック)」糸とも称される)と共に織られる。図3に示す実施形態において、横方向糸36は、第1取り付け点44及び第2取り付け点46にて伸長糸束34と共に横糸方向(横方向)に織られる。図3の実施形態において、第1取り付け点44は、第5横/緯糸に対応し、第2取り付け点46は第14横/緯糸に対応する。従って、この実施形態の織りパターンは、十四の横糸ごとに繰り返す(十四横糸繰り返しパターン)。この実施形態において、上記二つの取り付け点は八つの横糸にって隔てられる。他の実施形態において、取り付け点は、四つ又は十六の横糸によって隔てられる。
【0057】
図19は、一実施形態に従う織帯ひも10の伸張区分14の部分破断図を示す。この実施形態において、七つの伸長糸束34が用いられる。図4〜8は、伸張区分14に対するピック図(チェーン図もしくはカム製図としても知られている)である。これらの図のすべてにおいて、四角(複数)の横列は、横方向糸(横糸もしくは緯糸とも呼ばれる)を表し、また、縦コラム(織機のハーネスに対応する)は、伸長糸束、地糸もしくはバインダー糸等の縦糸の群を表す。図4のピック図は十六ハーネス織機を示す。ハーネス1〜2はバインダー糸38及び39を表し、ハーネス3〜10は地糸31及び32を表し、ハーネス11〜14は伸長糸束を表し、更に、ハーネス15〜16はマーカー糸60を表す。
【0058】
図9は、織帯ひも10の図3の断面9−9に沿った断面図であり、織帯ひも10は、図3の非取り付け点48等の非取り付け点にて、この実施形態において九つの伸長糸束を備える。図9に示すように、非取り付け点において、横方向糸36は、地糸31及び32と共に織られ、伸長糸束34と共には織られない。
【0059】
図10は、図3の第1取り付け点46にて織帯ひも10の図3の断面10−10に沿った断面図を示す。織機は、横方向糸36が投入される際、交互の伸長糸束を持ち上げる。図11は、図3の第2取り付け点48にて織帯ひも10の図3の断面11−11に沿った断面図を示す。図11では、第1取り付け点44で横方向糸が投入された時に持ち上げれた伸長糸束34が今度は下げられると共に、第1取り付け点44で横方向糸が投入された時に下げられた伸長糸束34が今度は持ち上げられながら、横方向糸36が投入される。このように、第1取り付け点44での横方向糸36及び伸長糸束34の織りパターンは、第2取り付け点46での横方向糸36及び伸長糸束34の織りパターンとは反対である。この実施形態において、織りパターンは、十四の緯糸のサイクル後に繰り返す。図3は、十四の横糸の繰り返しを示すが、わずかほぼ十もしくはそれよりも少ない横糸、又は、ほぼ三十四ものもしくはそれより多い横糸が用いられ得る。しかしながら、横方向糸36は、他の取り付け点において伸長糸束34と共に織られ得、また、図3に示す繰り返しパターンよりも高頻度又は低頻度の繰り返しパターンで織られ得る。
【0060】
織帯ひもの伸張区分14は、種々の他の織りパターンを有する。図5〜8は、種々の織りパターンで織帯ひもの伸張区分14を作り出すためのピック図である。例えば、図5〜8は二十ハーネス織機を示し、ハーネス1〜2はバインダー糸を表し、ハーネス3〜10は地糸を表し、ハーネス11〜14は伸長糸を表し、更に、ハーネス15〜16はマーカー糸を表す。
【0061】
伸張区分14において、バインダー糸38は、地糸31及び32と織り交ぜられるが、バインダー糸38は伸長糸33と共には織られない。
【0062】
一実施形態に従う第1連結区分12の織りパターンが図12に例示される。いくつかの実施形態において、第2連結区分16は、第1連結区分12と同じ織りパターンを有する。第1連結区分12は、シース30(該シースは上部層40及び底部層42を有する)を形成するために織られた複数の地糸31及び32を備える。バインダー糸38及び39は、地糸31及び32と伸長糸束34の両方と共に織られ、もしくは該両方と織り交ぜられる。第1連結区分12及び第2連結区分16において、伸長糸束34は、シース30に連結及び留められる。従って、バインダー糸38及び39は、シースの上部層と底部層を共に縫うかもしくは他の方法で織り交ぜることにより、伸長糸束34をシース30に固定する。連結区分に適した製織の他の例は、バインダー糸を伴うか又は伴わない、上方の地糸と下方の地糸との織り交ぜを提供する。
【0063】
図13〜17は、種々の織りパターンによる織帯ひもの連結区分12又は14を作り出すためのピック図である。例えば、図13〜15は、二十ハーネス織機を示し、ハーネス1〜2はバインダー糸を表し、ハーネス3〜10は地糸を表し、ハーネス11〜14は伸長糸を表し、更に、ハーネス15〜16はマーカー糸を表す。図16〜17は、十七ハーネス織機を示し、ハーネス1〜2はバインダー糸を表し、ハーネス3〜10は地糸を表し、ハーネス11〜14は伸長糸を表し、更に、ハーネス15〜16はマーカー糸を表す。
【0064】
図18の製図は、図1及び2の織物構造体を作り出す、ハーネスにおける糸の配置を示す。図4〜8及び13〜17のピック図は、織られた織物構造体を作り出す、ハーネスの動作を表す。図18の縦軸は、この実施形態の織物構造体を形成するために使用される織機のハーネスの数を表す。この実施形態において、十二のハーネスが用いられる。図18の横軸は、織物構造体を作り出すために用いられる糸を表し、最下行は、各区域が繰り返す回数を示す。例えば、図18の第1コラムは、第1糸が第5ハーネスフレームにあり、他方、第2糸が第6ハーネスフレームにあることを例示する。
【0065】
好ましい実施形態において、織物構造体10は、ほぼ248のナイロン地糸(該地糸はほぼ1680デニールの線密度を有する)と、20のナイロンバインダー糸(該バインダー糸はほぼ1680デニールの線密度を有する)と、90の伸長糸(該伸長糸はほぼ5580デニールの線密度を有する部分延伸糸である)とから形成される、4フィート(1219mm)×1と3/8フィート(419mm)のナイロン構造である。図18に示すように、陰付きボックスは、マーカー糸60又は伸長糸33のいずれかに対応する。好ましい実施形態において、図18の製図に従って成る織物構造体10は、Mueller NFREQニードル織機で形成され得る。織物構造体10の伸張区分14は、華氏249度の温度でほぼ4.5分間、オーブン内で熱処理され得る。
【0066】
上述したもののような織物構造体10の伸張区分14が熱処理にかけられる際、伸長糸束34は長さが収縮し、第1及び第2連結区分において伸長糸束34がシース30に留められているため、第1連結区分12及び第2連結区分16は互いに近付く。その結果、伸張区分14は、第1連結区分12と第2連結区分16間の長さが低減する。しかしながら、シース30の地糸31及び32は縮まないため、シースは、伸張区分14においてアコーディオン状形態を形成するように集まる。伸張区分14において、シース30が伸長糸束34よりも収縮が実質的に小さく、伸長糸束34とシース30との間の望ましい長さの差を維持することが望ましい。
【0067】
連結区分12又は16の少なくとも一方は、クリップ、金属留め金、ハーネス、もしくはシートベルト部品等のハードウェア部品に取り付けられ得る。例えば、連結区分の一方は、使用者が装着したハーネスに取り付けられ得ると共に、他方の連結区分は荷重支持構造に取り付けられ得る。いくつかの実施形態において、連結区分の一方は、例えば自動車もしくは他の車両で使用されるチャイルドシートに取り付けるためハーネス及び/又はクリップに取り付けられ得る。別の例として、図20に示すように、連結区分12又は16はシートベルト部品52に取り付けられ得る。あるいは、図26に示すように、連結区分12又は16はクリップに取り付けられ得る。
【0068】
織物構造体10は、突然の停止から生じ得るか、又は人もしくは他の身体の急激な減速が生じ得る任意の他の用途における危険な運動から、車両の乗員を保護するための落下保護装置として使用可能である。織物構造体を落下保護装置として使用する場合、織物構造体10の一端部は、使用者が装着した安全ハーネスにしっかりと取り付けられる。織物構造体10の反対側端部は、固定構造物に確実に取り付けられる。使用者が落下すると、織物構造体10がその人の落下を止め、該使用者が停止状態にされる際にその人が感じる衝撃を低減する。使用者が落下する際、織物構造体10が真っ直ぐになって、その人の荷重が織物構造体10にかかり始める。伸長糸33が伸び、織物構造体10にかかる荷重の力を吸収する。伸長糸33が伸びるにつれ、シース30がアコーディオン形状を展開しながら伸長する。シース30がその最大長さに達すると、すなわち、アコーディオン形状が完全に展開されると、織物構造体10はその人の更なる落下を抑制する。シース30は、伸張した織物構造体10にかかる荷重を支える。落下する人がさもなければ感じるでろう落下停止の衝撃は、エネルギー吸収伸長糸33によって低減もしくは緩和される。
【0069】
いくつかの実施形態において、図21〜25に示すように、織物構造体10は一つ又は複数の捕獲糸50を含む。図21に示すように、モノフィラメントであり得る捕獲糸50は、織帯ひもを通る経糸としてシース30内部で地糸と共に織られ得、捕獲糸の少なくとも一部は織帯ひもを出る。図7は、捕獲糸50を含む伸張区分14に対するピック図を示し、他方、図16は、捕獲糸50を含む連結区分12又は16に対するピック図を示す。いくつかの実施形態において、捕獲糸50は、少なくとも一つの連結区分及び伸張区分14においてシースに留められる。いくつかの実施形態において、捕獲糸50は、少なくとも一つの連結区分をシースと織り交ぜることにより、該少なくとも一つの連結区分に留められる。他方、別の実施形態において、捕獲糸50は、接着剤、縫合又は他の適切な態様で留められ得る。織帯ひもを出る捕獲糸50の一部は、図22に示すように、フラグ54の内部に挿入され得る。フラグ54の一部は、捕獲糸50の周りで共に圧縮され、図23に示すように、フラグの圧縮部56を形成し得、フラグ54の非圧縮部はタブ部58を成す。捕獲糸50が織帯ひもを出る、第2連結区分16等の連結区分の一部は、図24に示すように、タブ部58に留められ得る。織物構造体に荷重がかけられて伸張区分を伸張させると、捕獲糸50は破断して引っ込み、同時にフラグ54が伸張して連結区分から放出され、図25に示すように、その元の非圧縮形態へと伸張する。フラグ54の上記放出は、伸長糸33が荷重下で伸長したこと、及び織物構造体10が展開されたことを示す。
【0070】
あるいは、マーカー糸60は、マーカー糸60が織帯ひも10の外側面上で目で見ることができるような態様で伸張区分14においてシース30と織り交ぜられ得る。いくつかの実施形態において、マーカー糸60は、シース30を形成する地糸31及び32とは異なる色である。荷重を受けた後に伸長糸33が伸長すると、マーカー糸60は伸張区分14に沿って伸び、該伸びたマーカー糸は織物構造体が展開されたことを示す。
【0071】
一実施形態において、織物構造体10は、落下する人を3.5フィート(約1m)以内で止めるように設計され、これは、29C.F.R1926.104(d)(2008)に従う。この実施形態において、織物構造体10は、約6フィート(約1.8m)の完成した使用可能状態の長さを有する。他の実施形態において、織物構造体は、約4フィート(約1.2m)の完成した使用可能状態の長さを有する。織物構造体10は、約9.5フィート(約2.9m)の長さを有する織帯ひもから形成される。熱処理後、伸長糸33は、約6フィート(約1.8m)の縮小した長さを有し、シース30はその約9.5フィートの長さを保つ。しかしながら、シース30は縦方向(長手方向)に集まり、6フィートの完成長にわたってアコーディオン形状を形成する。織物構造体10の使用中、伸長糸33は約6フィートから約9.5フィートへと伸び、アコーディオン形状のシース30を9.5フィートの最大長に展開する。織物構造体10が最大の9.5フィート長に達すると、織物構造体10は人の落下を止める。伸長糸33は、該落下のエネルギーを吸収し、また、織物構造体10が落下を止めた時のその人に対する不意の衝撃を低減する。
【0072】
本発明の別の実施形態において、織物構造体は、約11.75フィート(約3.6m)以内に落下する人を止めるための伸長糸及びシースの長さを有する。しかしながら、織物構造体は、本発明に従い、どのような所望長さにも形成可能である。
【0073】
本発明の織物構造体は、織物構造体を成すように織られる合成材料糸を含む(合成材料糸には限定されない)どのような適切な材料からでも形成され得る。
【0074】
ここに記述した目下好ましい実施形態に対する種々の変更及び変形は、当業者には明らかであろう。そのような変更及び変形は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、かつその所期の利点を低減することなくなされ得る。従って、そのような変更及び変形が特許請求の範囲によってカバーされることが企図される。
【符号の説明】
【0075】
10 織帯ひも
12 第1連結区分
14 伸張区分
16 第2連結区分
30 シース
31、32 地糸
33 伸長糸
34 伸長糸束
36 横方向糸
38、39 バインダー糸
40 上部シース層
42 底部シース層
50 捕獲糸
54 フラグ
60 マーカー糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物構造体であって、
(a)織帯ひもを備え、織帯ひもは、(1)複数の地糸と、(2)複数の伸長糸と、(3)複数のバインダー糸と、(4)複数の横方向糸とを備え、地糸、伸長糸及びバインダー糸が実質的に縦方向に延び、横方向糸が実質的に横方向に延び、前記伸長糸が部分延伸糸を含み、該織帯ひもは、
(i)バインダー糸が地糸及び伸長糸と織り交ぜられる第1連結区分と、
(ii)第1端部及び第2端部を有する伸張区分にして、伸張区分の第1端部が第1連結区分に隣接し、前記地糸が伸長糸を囲むシースを構成し、横方向糸の少なくともいくつかが伸長糸及びシースの地糸と織り交ぜられて伸長糸をシースに連結し、伸長糸の長さがシースの長さよりも短く、かつ、バインダー糸がシースの地糸と共に織られかつ伸長糸と共には織られない伸張区分と、
(iii)第1端部及び第2端部を有する第2連結区分にして、第2連結区分の第1端部が伸張区分の第2端部に隣接し、かつ、バインダー糸が地糸及び伸長糸と織り交ぜられる第2連結区分とを備える織物構造体。
【請求項2】
前記第1及び第2連結区分の少なくとも一方において、伸長糸は地糸と織り交ぜられる請求項1の織物構造体。
【請求項3】
前記第1及び第2連結区分の少なくとも一方の端部は、ハードウェア部品に取り付けられる請求項1の織物構造体。
【請求項4】
前記ハードウェア部品はクリップである請求項3の織物構造体。
【請求項5】
前記ハードウェア部品はシートベルトの部品である請求項3の織物構造体。
【請求項6】
前記伸張区分における伸長糸とシースとの間の長さの差は、シースの破壊強さよりも小さい所定の荷重がかかった際に伸長糸が伸びることを許容するのに十分なものである請求項1の織物構造体。
【請求項7】
前記シースは上部シース層と底部シース層とを備え、伸長糸は上部シース層と底部シース層との間に配置される請求項1の織物構造体。
【請求項8】
前記上部シース層は上方地糸を含み、底部シース層は下方地糸を含み、第1連結区分において上方地糸は下方地糸と織り交ぜられる請求項7の織物構造体。
【請求項9】
前記第2連結区分において上方地糸は下方地糸と織り交ぜられる請求項8の織物構造体。
【請求項10】
前記地糸は、集合的に、少なくとも5,000ポンド(2268kg)の引張り強さを有する請求項1の織物構造体。
【請求項11】
フラグと捕獲糸とを更に備え、捕獲糸の一部は、少なくとも伸張区分においてシースの少なくとも一部内で織られ、かつフラグに受け入れられ、伸張区分が伸張すると、このような伸張を示すためにフラグの一部が放出される請求項1の織物構造体。
【請求項12】
マーカー糸を更に備え、該マーカー糸は、伸張区分においてシースの一部として織られ、かつ地糸とは異なる色である請求項1の織物構造体。
【請求項13】
織物構造体であって、
(a)シースと、
(b)シース内部の伸長糸にして、伸長可能で、実質的に非弾性であり、かつ部分延伸糸を含む伸長糸と、
(c)間隔があけられた複数の連結区分にして、伸長糸が複数のバインダー糸によってシースに留められる連結区分と、
(d)前記間隔があけられた複数の連結区分間の伸張区分にして、バインダー糸がシースと共に織られ、かつ、横方向糸が伸長糸及びシースと織り交ぜられて伸長糸をシースと連結する伸張区分とを備え、
伸長糸の長さがシースの長さよりも短く、伸長糸がシースに比べて伸張可能である織物構造体。
【請求項14】
織物構造体を形成する方法であって、
(i)帯ひもを織るステップにして、該帯ひもが、シースを形成する複数の地糸と、シースによって囲まれる複数の伸長糸と、複数のバインダー糸とを備え、前記伸長糸が部分延伸糸を含み、地糸、伸長糸及びバインダー糸が実質的に縦方向に延びる該ステップを含み、
該帯ひもを織るステップは、
(a)第1連結区分を織るステップにして、前記複数のバインダー糸を地糸及び伸長糸と共に織ることを含む該ステップと、
(b)伸張区分を織るステップにして、(1)実質的に横方向に延びる複数の横方向糸を伸長糸と共に織ることにより、伸長糸をシースに連結すること、及び、(2)バインダー糸を伸長糸と共に織ることなしに、前記複数のバインダー糸をシースの前記複数の地糸と共に織ることを含む該ステップと、
(c)第2連結区分を織るステップにして、前記複数のバインダー糸を地糸及び伸長糸と共に織ることを含む該ステップとを含み、
該方法は、
(ii)伸張区分に熱を加えるステップにして、伸張区分において、伸長糸の長さが地糸の長さよりも短くなるように縮小される該ステップを含む織物構造体を形成する方法。
【請求項15】
伸張区分に熱を加えるステップは、伸長糸とシースとの間の長さの差がシースの破壊強さより小さい所定の荷重がかかった際に伸長糸が延びることを許容するのに十分なものとなるように伸長糸の長さを自動的に調整するのに十分な熱を加えることを含む請求項14の織物構造体を形成する方法。
【請求項16】
伸張区分に熱を加えるステップは、インライン式連続加熱プロセスを含む請求項14の織物構造体を形成する方法。
【請求項17】
伸張区分に熱を加えるステップは、バッチプロセスにおいて少なくとも一つの織物構造体を熱処理することを含む請求項14の織物構造体を形成する方法。
【請求項18】
前記第1及び第2連結区分の少なくとも一方の端部をハードウェア部品に取り付けることを更に含む請求項14の織物構造体を形成する方法。
【請求項19】
前記ハードウェア部はクリップである請求項18の織物構造体を形成する方法。
【請求項20】
前記ハードウェア部はシートベルトの部品である請求項18の織物構造体を形成する方法。
【請求項21】
(i)捕獲糸を準備するステップと、
(ii)少なくとも伸張区分においてシースの少なくとも一部内で捕獲糸の一部を編み、かつ捕獲糸をフラグ内に受け入れるステップとを更に含み、
伸張区分が伸張すると、このような伸張を示すためにフラグの一部が放出される請求項14の織物構造体を形成する方法。
【請求項22】
前記伸張区分においてシースの一部としてマーカー糸を編むステップを更に含み、該マーカー糸は地糸とは異なる色である請求項14の織物構造体を形成する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18A】
image rotate

【図18B】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公表番号】特表2011−517474(P2011−517474A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500826(P2011−500826)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/033431
【国際公開番号】WO2009/128976
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(508049422)ワイケイケイ コーポレーション オブ アメリカ (3)
【Fターム(参考)】