説明

衝撃検知装置及び梱包装置

【課題】簡単な構造の衝撃検知装置で複数方向の衝撃を検知できるようにする。
【解決手段】球形の錘1の輪郭部付近を第1接触部2A、第2接触部を備えた保持部材2で±X方向,Z方向の3方向に離脱可能に保持して衝撃センサ10を形成し、この衝撃センサ10をケース30に配置する。ケースには、衝撃を検知する3方向に保持部材2から離脱した錘1を案内する案内部31,32,33を形成すると共に、案内された錘1を視認可能に表示する3つの表示部21,22,23を一つの方向から視認可能に一つの面側に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密機器輸送時の衝撃検知に用いる衝撃検知装置及びこの衝撃検知装置を備えた梱包装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密機器などの物品を輸送する場合、その輸送過程での荷扱いにより、衝撃を受けると物品が破損する可能性がある。そこで、衝撃が加わることで保持された錘が離脱することで衝撃の有無を検知するものとしてドロップサイン(非特許文献1)や特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、筒状体内に同筒状体の軸方向に移動可能に収容された質量体、前記筒状体外にその軸方向に配置され下端が固定され互いに対向する1対の板ばね、及び同板ばねの各々に取り付けられ前記筒状体内に対向して進退可能に突出し前記質量体を支持するくさびの複数段を備えたことを特徴とする加速度測定装置が記載されている。
【0004】
また、複数方向の転倒を検知する衝撃検知装置として、特許文献2には、1個の取り付けで輸送中の貨物の3次元方向の転倒を監視すると共に貨物の転倒方向を特定する2個の球体と、各球体をそれぞれ別々に収納可能な空間が内部に形成されたケース本体とを備え、各空間には、各球体を初期位置に保持する初期位置保持空間と、各球体を貨物転倒時の移動位置に保持する移動位置保持空間と、初期位置保持空間と移動位置保持空間との間を連通する球体通過孔とがそれぞれ形成されており、移動位置保持空間には、移動位置保持空間における球体の保持状態を視認可能な視認窓が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に記載のものの場合、検知対象物が傾くことにより錘が移動する構成であるため、物品に影響を与える衝撃が加わらなくても検知してしまうことになり、正常な物品を開梱して調べるという無駄な作業が発生してしまう。これに対し、非特許文献1及び特許文献1の場合、所定量の衝撃が加わることで挟持された錘が離脱されて表示される。しかし、非特許文献1及び特許文献1の場合、一軸方向への錘の移動のみを想定した保持構成であるため、錘の移動方向に直交する方向への錘の挟持更に同方向への所定量の衝撃が加わった場合に錘を離脱させることができない。
【0006】
従って、非特許文献1及び特許文献1のような錘の挟持・離脱による衝撃検知装置を特許文献2のように複数方向へ適用しようとすると、検知方向の分だけ検知装置が必要になってしまい装置が複雑で高価なものになってしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、簡単な構造で複数方向の衝撃を検知できる衝撃検知装置を提供すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、球形の錘、及び、相対向する第1及び第2の方向及びこの2方向に直交する第3の方向から前記錘の表面に接触して前記錘を保持する保持部材からなり、前記保持部材は、弾性部材で形成され、前記保持部が接触する3方向以外の方向に前記錘を離脱可能に保持し、前記離脱可能な方向に沿う衝撃を受けたとき錘の付勢保持を開放し錘を放出する衝撃センサと、放出された錘が案内される放出方向毎の経路を備えた案内部と、前記方向毎の経路の終焉部に配置され、前記案内された錘が保持され外部から視認可能となる表示部と、を備えることを特徴とする衝撃検知装置である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の衝撃検知装置において、前記保持部材は、前記第3の方向と反対方向である第4の方向に前記錘を放出する第1の放出領域と、この第1の放出方向に直交する方向に前記錘を放出する第2及び第3の放出領域とを形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の衝撃検知装置において、前記保持部材は、前記錘の輪郭部に前記錘の中心線に対して対称に配置されて前記錘に接触する1対の接触部材を備え、各接触部材は前記輪郭部を挟んで少なくとも2本の部材が並設されてなり、前記第2及び第3の放出領域は前記中心線に沿って形成され、前記第1の放出領域が各接触部材の先端部の間の隙間部に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載の衝撃検知装置において、前記1対の保持部材は、先端部が湾曲形成されて略U字形状をなすとともに全体が前記錘の輪郭部に沿って配置され2つの先端部の間に間隙部が配置された接触部と、これらの接触部を連結するアーム部と、を備えて構成され、前記先端部と前記アーム部とは、衝撃が加わる前の状態において前記錘の移動を規制するとともに、衝撃が加わって前記錘が移動した状態において、前記錘の衝撃が加わる前の位置への戻りを防止することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4記載の衝撃検知装置において、前記表示部は検出対象となる全ての方向について保持された錘を一方向から視認可能となるよう一つの面部に配置されてなり、前記案内部は、各前後方向を含む複数の方向に移動した錘を前記表示部まで案内することを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の衝撃検知装置において、前記衝撃センサは第1の錘及び第2の錘を備えてなり、前記保持部は、第1の錘を保持する輪郭部を含む平面と、第2の錘を保持する輪郭部を含む平面とが直交するよう共通のアーム部の両端に設けられ、第1の錘を直交する3方向で離脱可能に、第2の錘を前記第1の錘が離脱可能な3方向と異なる直交する3方向で離脱可能に保持することを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6に記載の衝撃検知装置において、前記案内部及び表示部は組み合わされる上部ケース及び下部ケースで構成され前記衝撃センサは前記案内部を構成する上部ケース及び下部ケース部で挟持されて固定され配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、被梱包物を梱包する梱包材の一の表面に対して、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の衝撃検知装置を備えてなることを特徴とする梱包装置である。
【0016】
請求項9の発明は、請求項8に記載の梱包装置において、前記一の表面が、前記被梱包物の立壁面の一つであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る衝撃検知装置によれば、物流における様々な状況での外力に対して、物品が受ける垂直方向の落下や横倒し、水平方向からの衝撃といった、品質低下の原因となる異なる複数の方向の衝撃を一つの装置で検知し、受けた衝撃の履歴を残すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例に係る衝撃検知装置の衝撃センサを示す斜視図である。
【図2】衝撃センサを示すものであり、(a)の平面図、(b)は側面図である。
【図3】実施例に係る衝撃検知装置を示すX−Z平面に沿う断面模式図である。
【図4】実施例に係る衝撃検知装置を示すY−Z平面に沿う断面模式図である。
【図5】第2の実施例に係る衝撃検知装置の衝撃センサを示す斜視図である。
【図6】第2の実施例に係る衝撃検知装置を示すX−Z平面に沿う断面模式図である。
【図7】第2の実施例に係る衝撃検知装置を示すY−Z平面に沿う断面模式図である。
【図8】第2の実施例に係る衝撃検知装置を示す−Z方向からの模式図である
【図9】第2の実施例に係る衝撃検知装置を示すZ方向からの模式図である
【図10】実施例に係る梱包装置を示す斜視図である。
【図11】第3の実施例に係る衝撃検知装置に使用される衝撃センサを示す斜視図である。
【図12】第3の実施例に係る衝撃検知装置を示すものであり、(a)はY−Z平面に沿う断面模式図、(b)は(a)中のB−B線に相当する断面模式図である。
【図13】第4の実施例に係る衝撃検知装置を示すX−Z平面に沿う断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る衝撃検知装置は、球形の錘、及び、相対向する第1及び第2の方向及びこの2方向に直交する第3の方向から前記錘の表面に接触して前記錘を保持する保持部材からなり、前記保持部材は、弾性部材で形成され、前記保持部が接触する3方向以外の方向に前記錘を離脱可能に保持し、前記離脱可能な方向に沿う衝撃を受けたとき錘の付勢保持を開放し錘を放出する衝撃センサと、放出された錘が案内される放出方向毎の経路を備えた案内部と、前記方向毎の経路の終焉部に配置され、前記案内された錘が保持され外部から視認可能となる表示部と、を備える衝撃検知装置である。本例では、所定方向(包装製品6面)の衝撃を受けたときにそのいずれの方向の衝撃であっても検知することが可能な錘とばねの構成作用を備えている衝撃検知装置である。これにより、使用個数の低減による、部品コスト削減、確認作業工数の低減が図れる。
【0020】
また、本発明に係る衝撃検知装置の保持部材は、前記第3の方向と反対方向である第4の方向に前記錘を放出する第1の放出領域と、この第1の放出方向に直交する方向に前記錘を放出する第2及び第3の放出領域とを形成したものである。
【0021】
また、本発明に係る衝撃検知装置の保持部材は、前記錘の輪郭部付近に前記錘の中心線に対して対称に配置されて前記錘に接触する1対の接触部材を備え、各接触部材は前記輪郭部を挟んで少なくとも2本の部材が並設されてなり、前記第2及び第3の放出領域は前記中心線に沿って形成され、前記第1の放出領域が各接触部材の先端部の間の隙間部に形成されている。
【0022】
また、本発明に係る衝撃検知装置の1対の保持部材は、先端部が湾曲形成されて略U字形状をなすとともに全体が前記錘の輪郭部に沿って配置され2つの先端部の間に間隙部が配置された接触部と、これらの接触部を連結するアーム部と、を備えて構成され、前記先端部と前記アーム部とは、衝撃が加わる前の状態において前記錘の移動を規制するとともに、衝撃が加わって前記錘が移動した状態において、前記錘の衝撃が加わる前の位置への戻りを防止する。
【0023】
また、本発明に係る衝撃検知装置の表示部は、検出対象となる全ての方向について保持された錘を一方向から視認可能となるよう一つの面部に配置されてなり、前記案内部は、各前後方向を含む複数の方向に移動した錘を前記表示部まで案内する。
【0024】
また、本発明に係る衝撃検知装置の衝撃センサは第1の錘及び第2の錘を備えてなり、前記保持部は、第1の錘を保持する輪郭部を含む平面と、第2の錘を保持する輪郭部を含む平面とが直交するよう共通のアーム部の両端に設けられ、第1の錘を直交する3方向で離脱可能に、第2の錘を前記第1の錘が離脱可能な3方向と異なる直交する3方向で離脱可能に保持する。
【0025】
また、本発明に係る梱包装置は被梱包物を梱包する梱包材の一つの表面に上記衝撃検知装置を備える。
【0026】
そして、本発明に係る梱包装置は、衝撃検知装置が取り付けられる表面が、前記被梱包物の立壁面の一つとしている。
【実施例】
【0027】
以下本発明に係る衝撃検知装置の実施例を図面に基づいて説明する。本例に係る衝撃検知装置はケース内に3方向の衝撃を検知する衝撃センサ10を備える。以下衝撃センサ10について説明する。図1は実施例に係る衝撃検知装置の衝撃センサを示す斜視図、図2は衝撃センサを示すものであり、(a)は平面図、(b)は側面図である。本例に係る衝撃センサ10は錘1と、この錘1を所定方向に離脱可能に保持する保持部材2とで構成されている。錘1は、球形、例えば、直径5mmの鋼球であって、摺動抵抗の小さい表面性をもった一般な玉軸受けに使用される汎用クロム球を使用することができる。保持部材2は、1本の線細工ばねで構成することができ、例えば径0.1mmのSUS430−SWPを折曲加工したものを使用することができる。
【0028】
保持部材2は、1本の線材を以下のように折曲加工して形成されている。保持部材2は、図2(a)に示すように、錘1の輪郭部に略沿い、先端部2fで接続された湾曲部2a,2eで構成される第1接触部2A、先端部2jで接続された湾曲部2b,2iからなる第2接触部2Bを備えている。前記先端部2f,2jは、略U字状に形成されており、この先端部2f,2jは、錘1の中心Oに対して対称(θ1=θ2)の位置となるよう形成される。
【0029】
更に、第1接触部2A、第2接触部2Bをなす線材のうち錘1の中心から−X側で錘1の周囲に巻きつけられている湾曲部2e,2iの端部には折曲部2c,2dが屈曲形成されている。そして、この折曲部2c,2dの先端には、ケースに取り付けられる取付部2g,2hが設けられている。本例では、折曲部2c,2d及び取付部2g,2hは、アーム部をなしている。
【0030】
また、湾曲部2aと湾曲部2bとは連続して形成されており、それぞれの先端部2f,2jで折り返された湾曲部2e,2iの先端が、錘1の中心Oを通る半径の延長方向で合流し、その後、折曲部2c,2d、取付部2g,2hと連続して形成されている。ここで、図2に示すように、第1接触部2A及び第2接触部2Bがなす円の直径βは、錘1の径αよりやや小さいものとして、第1接触部2A、第2接触部2Bで錘1をY方向、−Y方向、−Z方向に保持し、Z方向、−X方向、X方向に離脱可能に保持する。
【0031】
即ち、Z方向についてみると、錘1は、保持部材2の第1接触部2A及び第2接触部2Bで挟持されて保持されている。錘1がZ方向に移動すると、錘1は第1接触部2A及び第2接触部2Bを拡開するよう変形させ、先端部2f,2jの間隙から離脱可能である。このとき錘1は、角度θ3が大きくなるように第1接触部2A及び第2接触部2Bが広げながらZ方向に移動する。このため、θ3の値を大きくすれば(ただし180°よりも小)、錘1は、Z方向へ離脱しやすくなり、逆にθ3の値を小さくすれば離脱しにくくなる。なお、θ3の設定にあたっては、目標とする衝撃量に対して、保持部材2の許容応力と錘1の引き抜き力を考慮して決定される。なお、−Z方向に対して錘は移動しない。
【0032】
更に、±X方向についてみると、錘1は、保持部材2の第1接触部2A及び第2接触部2Bで挟持されて保持されている。そして、錘がX方向及び−Xに移動すると、第1接触部2A及び第2接触部2Bを拡開するように変形させなければならない。このとき錘1の離脱のしやすさ、即ち第1接触部2A及び第2接触部2Bの変形のしやすさは、素材を同一とすれば、第1接触部2A及び第2接触部2Bの形状による。例えば第1接触部2Aの湾曲部2a、2e、第2接触部2Bの湾曲部2b,2jの間隔寸法(同L1+L2)を狭めると、第1接触部2A及び第2接触部2Bで構成される円の直径βと錘1の直径αとの差は小さくなり、第1接触部2A及び第2接触部2Bは変形しやすくなり錘1は離脱しやすくなる。
【0033】
逆に接触部2Aの湾曲部2a、2e、第2接触部2Bの湾曲部2b,2jの間隔寸法(同L1+L2)を広げると、第1接触部2A及び第2接触部2Bで構成される円の直径βと錘1の直径αとの差が大きくなり、第1接触部2A及び第2接触部2Bは変形しにくくなり錘1は±X方向に離脱しにくくなる。なお、巻きつけ位置は、目的とする衝撃量に対して、保持部材2の許容応力と錘1の引き抜き力を考慮して決定される。なお、巻きつけ位置は、狙いとする衝撃量に対して、保持部材2の許容応力と錘1の引き抜き力を考慮して決定される。以上のように、錘1を各方向において所望の衝撃量で検知するには、保持部材2の形状を設定すればよい。
【0034】
なお、この実施例では、保持部材2は、線細工ばねとして、ばね線材を折り曲げて形成したが、湾曲部2aと湾曲部2eとの間又は湾曲部2bと湾曲部2iに相当する個所を平面状の板ばねを用いて形成してもよい。
【0035】
次に前記衝撃センサ10を使用した衝撃検知装置20について説明する。図3は実施例に係る衝撃検知装置を示すX−Z平面に沿う断面模式図、図4は実施例に係る衝撃検知装置を示すY−Z平面に沿う断面模式図である。衝撃検知装置20は、梱包箱100の側面101に図3の‐Y側が表面となるように取り付けられる(衝撃検知装置20は図10中破線で示されている)。
【0036】
衝撃検知装置20のケース30内には、衝撃センサ10が配置されている。またケース30には、錘1の移動後の状態を視認できるよう開口が形成された表示部21,22,23が配置されている。本例では表示部21に錘1が視認できればX方向に衝撃が加わったことが、表示部22に錘1が視認できれば−X方向に衝撃が加わったことが、表示部23に錘1が視認できればZ方向に衝撃が加わったことがわかる。本例では一方(Y方向)からの観察で全て表示部21,22,23が視認できるよう、表示部21,22,23は、一つの−Y側面に配置されている。
【0037】
また、ケース30には、衝撃センサ10の錘1を前記表示部21に導く案内部31、表示部22に導く案内部32、表示部23に導く案内部33が形成されている。
【0038】
ここで、Z方向へ移動した後の錘1は、保持部材2の先端2fと錘1の外周とが接しており、元の位置(−Z方向)に戻らない構成となっている。一方、±X方向へ移動した後の錘1は、元の位置に戻ることを規制する図示しない規制部がケース30に形成されている。
【0039】
錘1は、表示部11の開口に位置したときに視認しやすくするために着色されている。よって、錘1が移動すると各表示部21,22,23の開口部から着色された錘1が露出するので、どの方向に衝撃が加わったかを容易に視認することができる。
【0040】
また、ケース30は、上部ケース35と下部ケース36とを嵌合して形成されており、上部ケース35と下部ケース36の間には、保持部材2の取付部2g,2hが嵌合され固定される固定部15が形成されている。なお、図中上部ケース35と下部ケース36の分割線37を二点鎖線で示している。固定部15に前記取付部2g,2hを固定することにより、この固定個所がばね作用の受け点となる。本例に係る衝撃検知装置20は、受け点から先端部2f,2jにかけての湾曲部2a、2e、2b,2jのばね応力だけで錘1を保持できるので、湾曲部の形状等を調整するだけで、検知する衝撃の大きさを設定することができ、信頼性の高い検知性能を提供することができる。
【0041】
次に第2の実施例に係る衝撃検知装置について説明する。本例に係る衝撃検知装置90は、±X方向、±Y方向、±Z方向の6方向の衝撃を検知する。図5は第2の実施例に係る衝撃検知装置の衝撃センサを示す斜視図、図6は第2の実施例に係る衝撃検知装置を示すX−Z平面に沿う断面模式図、図7は第2の実施例に係る衝撃検知装置を示すY−Z平面に沿う断面模式図、図8は第2の実施例に係る衝撃検知装置を示す−Z方向からの模式図、図9は第2の実施例に係る衝撃検知装置を示すZ方向からの模式図、図10は梱包装置を示す斜視図である。
【0042】
本例に係る衝撃検知装置90はケース80内に、衝撃センサ40を保持して構成されている。衝撃センサ40は、2つの錘41,42を保持部材50で保持して構成され、錘41でX方向、−X方向、Z方向の衝撃を検出し、錘42でY方向、−Y方向、−Z方向の衝撃を検出する。
【0043】
錘41,42は、前記第1実施例に係る衝撃センサ10の錘1と同一のものを使用する。また、保持部材50は、錘41を保持する第1保持部51と、錘42を保持する第2保持部52とからなる。この保持部材50は、1本の線材を折曲して形成され、前記第1実施例の保持部材2と同一の材質で構成することができる。第1保持部51は、湾曲部51a,51e、先端部51fからなる第1接触部51A、湾曲部51b,51i、先端部51jからなる第2接触部51B、折曲部51c,51d及び取付部51hを備えて構成される。また、第2保持部52は湾曲部52a、52e、先端部52fからなる第1接触部52A、湾曲部52b,52i、先端部52jからなる第2接触部52B、折曲部52c,52d及び取付部52gを備えて構成される。
【0044】
折曲部51cと、折曲部52cとは連続するよう構成され、第1保持部51の第1接触部51A及び第2接触部51Bがなす平面と、第2保持部52の第1接触部52A及び第2接触部52Bがなす平面は直交するよう、第1保持部51と第2保持部52とはねじるように形成されている。
【0045】
ここで、錘41は、第1保持部51の第1接触部51A、第2接触部51BでY方向、−Y方向、−Z方向に保持され、Z方向、−X方向、X方向に離脱可能に保持されている。
【0046】
Z方向については、前記第1実施例と同様に錘41は、第1保持部51の第1接触部51A及び第2接触部51Bで挟持されて保持されている。錘41がZ方向に移動すると、錘41は第1接触部51A及び第2接触部51Bを拡開するよう変形させ、先端部51f,51jの間隙から離脱可能である。なお、錘41は、−Z方向に対して錘は移動しない。また、±X方向についてみると、錘41は、第1保持部51の第1接触部51A及び第2接触部51Bで挟持されて保持されている。錘41がX方向及び−X方向に移動すると、第1接触部51A及び第2接触部51Bを拡開するように変形させ離脱する。以上のZ方向及び±X方向について、錘41の離脱強度の調整は前記第1の実施例と同様に行うことができる。
【0047】
錘41の第1保持部51における各方向の離脱強度に付いての議論は、錘42の第2保持部52による保持に際しても同様に成り立つ。この場合、第2保持部52は、第1保持部51をZ軸について正負を入れ替え、Z軸を中心として90度回転したものに相当するから、前記第1保持部51について説明は、Zを−Zとして、−ZをZとして、XをYとして、−Xを−Yとして、YをXとして、−Yを−Xとして読み替えることとなる。
【0048】
ケース80は、上部ケース81と下部ケース82を嵌めあわされて構成される。図中上部ケース81と下部ケース82の分割線83を二点鎖線で示している。また、ケース80は、Z方向及びX方向及び−X方向を検出する第1検出部60と−Z方向、Y方向及び−Y方向を検出する第2検出部70とを備え、第1検出部60に前記衝撃センサ40の錘41を配置し、第2検出部70に錘42を配置するよう保持部材50の折曲部51c,51d、折曲部52c,52d、取付部51h、取付部52gを固定している。
【0049】
第1検出部60には、保持部材50の第1保持部51から外れた錘41をX,−X及びZ方向に案内する案内部61,62,63と、錘41の移動後の状態を視認できるよう開口が形成された表示部64,65,66が形成されている。この例では、表示部64は案内部61に連通しており、表示部64に錘41が視認できれば錘がX方向に移動したことがわかる。同様に案内部62は表示部65に連通しており、表示部65に錘41が視認できれば錘41が−X方向に移動したことわかり、案内部63は表示部66に連通しており表示部66に錘41が視認できれば錘41がZ方向に移動したことがわかる。本例では一方からの観察で全て表示部64,65,66が視認できるよう、表示部64,65,66は、第1検出部60の−Y側の表側面に配置されている。
【0050】
第2検出部70には、保持部材50の第2保持部52から外れた錘42を−Z,Y及び−Y方向に案内する案内部71,72,73と、錘42の移動後の状態を視認できるよう開口が形成された表示部74,75,76が配置されている。この例では、表示部74は案内部71が連通しており、表示部74に錘42が視認できれば錘が−Z方向に移動したことがわかる。同様に案内部72は表示部75に連通しており、表示部75に錘42が視認できれば錘42がY方向に移動したことわかり、案内部73は表示部76に連通しており表示部76に錘41が視認できれば錘42が−Y方向に移動したことがわかる。本例では一方からの観察で全て表示部74,75,76が視認できるよう、表示部74,75,76は、第2検出部70の−Y側の表側面に配置されている。
【0051】
また、第2検出部70において、錘42がY方向及び−Y方向に移動するとき、錘42は立体的に移動し表示部75及び表示部76に到る。即ち、本例では、前面からの衝撃を受け錘42が−Y方向に移動したときには、錘42は、−Y方向に移動しつつ下方に移動して表示部75に到る。そして、後面からの衝撃を受け、錘42がY方向に移動したときには、錘42は、Y方向に移動しつつ誘導斜面部77に案内されて図6中Z方向に移動して表示部76に到る。
【0052】
ここで、錘41,42は、表示部64,65,66、74,75,76の開口に位置したときに視認しやすくするために着色されている。このため、錘41,42が移動すると各表示部64,65,66、74,75,76の開口から着色された錘41,42が露出するので、どの方向に衝撃が加わったかを容易に視認することができる。
【0053】
本例に係る衝撃検知装置90は、図10に示すように、梱包箱100の側面101に受け込むように配置される。本例では、これにより梱包装置を構成することができる。
【0054】
次に第3の実施例について説明する。この実施例は、前記第1の実施形態を変形したものである。図11は第3の実施例に係る衝撃検知装置に使用される衝撃センサを示す斜視図、図12は第3の実施例に係る衝撃検知装置を示すものであり、(a)はX−Y平面に沿う断面模式図、(b)は(a)中のB−B線に相当する断面模式図である。
【0055】
本実施例に係る衝撃検知装置110はケース120内に衝撃センサ130を配置して構成される。衝撃センサ130は、錘1を保持部材132で挟持している。保持部材132は、±Y方向から見た形状を第1接触部132A、第2接触部132Bの形状を略円形としている。また、この第1接触部132Aから延びる折曲部132aの先端と、第2接触部132Bから延びる折曲部132bの先端を連結してコ字状の第1取付部132cを形成すると共に、第1接触部132Aから延びる折曲部132d及び第2接触部132Bから延びる折曲部132eの先端部を折曲形成して第2取付部132f,132gを形成している。
【0056】
本例では、第1接触部132A及び第2接触部132Bの大きさ及びその先端部132h,132iは、第1の実施例と同様に、検知する衝撃の大きさに基づいて位置が決定される。なお、錘1は、第1接触部132A及び第2接触部132Bを構成する線材の内周とのみ接触して押圧挟持される。
【0057】
また、本例に係る衝撃検知装置110のケース120は、上部ケース124と下部ケース125とから構成されており、下部ケース125には、第1取付部132cを固定するための載置面121及び起立部122、第2取付部132f,132gを固定する固定穴123が形成される。衝撃センサ130がケース120に配置された状態で、第1取付部132c両腕部は、ケース120の起立部122に沿って配置されるとともに、載置面121に載置され、ケース120を構成する上部ケース124及び下部ケース125で挟み込まれる。これにより第1取付部132cの±X方向の位置が確定する。
【0058】
また、第2取付部132f,132gは、固定穴123,123に挿入され、衝撃センサ130は、ケース120の間隙Sに配置される。この状態で、前記折曲部132a,132bは、図2(a)に示すように、上側支点Rを支点として、折曲部132aが−Y方向に、折曲部132bがY方向に弾性変形できる。また、折曲部132d,132eは、固定穴123,123を支点として折曲部132eがY方向に、折曲部132dが−Y方向に弾性変形できる。よって、錘1がZ方向に移動するときは、第1接触部132A及び第2接触部132Bが前記上側支点R及び固定穴123から±Y方向に押し広げられることで錘1の挟持状態が解除される。
【0059】
ケース120には、錘1の移動後の状態を視認できるよう開口が形成された表示部141,142,143が配置されている。本例では表示部141に錘1が視認できればX方向に衝撃が加わったことが、表示部142に錘1が視認できれば−X方向に衝撃が加わったことが、表示部143に錘1が視認できればZ方向に衝撃が加わったことがわかる。本例では一方(Y方向)からの観察で全て表示部141,142,142が視認できるよう、表示部141,142,142は、一つの−Y側面に配置されている。
【0060】
また、ケース120には、衝撃センサ130の錘1を前記表示部141に導く案内部144、表示部142に導く案内部145、表示部143に導く案内部146が形成されている。
【0061】
次に第4の実施例に係る衝撃検知装置について説明する。この衝撃検知装置150はケース160内に2台の衝撃センサ、即ち第1衝撃センサ180及び第2衝撃センサ190を配置して±X方向、±Y方向、±Z方向の6方向の衝撃を検知する。図13は第4の実施例に係る衝撃検知装置を示すX−Z平面に沿う断面模式図である。
【0062】
ここで、第1衝撃センサ180は、X方向、−X方向及びZ方向の衝撃を検出するよう前記第3と同じ方向に配置されている。また、第2衝撃センサ190は、−Z方向、Y方向及び−Y方向の衝撃を検出するよう前記第1衝撃センサ180に対してZ方向に反対向き且つZ軸を中心として90度回転して配置される。第1衝撃センサ180及び第2衝撃センサ190は、それぞれ錘181,191を前記衝撃センサ130と同じ構造の保持部材182,192で保持したものである。
【0063】
また、ケース160のうち第1衝撃センサ180が配置された側には、第1衝撃センサ180から外れた錘181をX,−X及びZ方向に案内する案内部161,162,163と、錘181の移動後の状態を視認できるよう開口が形成された表示部164,165,166が形成されている。この例では、表示部164には案内部161が連通しており、表示部164に錘181が視認できれば錘がX方向に移動したことがわかる。同様に案内部162は表示部165に連通しており、表示部165に錘181が視認できれば錘181が−X方向に移動したことわかり、案内部63は表示部66に連通しており表示部66に錘41が視認できれば錘41がZ方向に移動したことがわかる。本例では一方からの観察で全て表示部64,65,66が視認できるよう、表示部64,65,66は、第1検出部60の−Y側の表側面に配置されている。
【0064】
また、ケース160のうち第2衝撃センサ190が配置された側には、−Z方向、Y方向及び−Y方向に案内する案内部171,172,173と、錘191の移動後の状態を視認できるよう開口が形成された表示部174,175,176が形成されている。この例では、表示部174は案内部171が連通しており、表示部174に錘191が視認できれば錘が−Z方向に移動したことがわかる。同様に案内部172は表示部175に連通しており、表示部175に錘191が視認できれば錘191がY方向に移動したことわかり、案内部173は表示部176に連通しており表示部176に錘191が視認できれば錘191が−Y方向に移動したことがわかる。本例では一方からの観察で全て表示部174,175,176が視認できるよう、表示部174,175,176は、ケース160の−Y側の表側面に配置されている。
【0065】
また、錘191がY方向及び−Y方向に移動するとき、錘191は立体的に移動し表示部175及び表示部176に到る。即ち、本例では、前面からの衝撃を受け錘191が−Y方向に移動したときには、錘191は、−Y方向に移動しつつ−X方向(下方)に移動して表示部175に到る。そして、後面からの衝撃を受け、錘191がY方向に移動したときには、錘191は、Y方向に移動しつつ誘導斜面部177に案内されて図13中Z方向に移動して表示部176に到る。
【符号の説明】
【0066】
1 錘
2 保持部材
2A 第1接触部
2B 第2接触部
2a,2b 湾曲部
2c,2d 折曲部
2f,2j 先端部
2h,2g 取付部
2e,2i 湾曲部
2f,2j 先端部
10 衝撃センサ
11 表示部
15 固定部
20 衝撃検知装置
21,22,23 表示部
30 ケース
31,32,33 案内部
35 上部ケース
36 下部ケース
37 分割線
40 衝撃センサ
41,42 錘
50 保持部材
51 第1保持部
51A 第1接触部
51B 第2接触部
51a,51e 湾曲部
51b,51i 湾曲部
51c,51d 折曲部
51a、51e 湾曲部
51f 先端部
51h 取付部
52 第2保持部
52A 第1接触部
52B 第2接触部
52a、52e 湾曲部
52b,52i 湾曲部
52c,52d 折曲部
52f 先端部
52g 取付部
60 第1検出部
61,62,63 案内部
64,65,66 表示部
70 第2検出部
71,72,73 案内部
74,75,76 表示部
77 誘導斜面部
80 ケース
81 上部ケース
82 下部ケース
83 分割線
90 衝撃検知装置
100 梱包箱
101 側面
110 衝撃検知装置
120 ケース
121 載置面
122 起立部
123 固定穴
124 上部ケース
125 下部ケース
130 衝撃センサ
132 保持部材
132A 第1接触部
132B 第2接触部
132a 折曲部
132b 折曲部
132c 第1取付部
132d 折曲部
132e 折曲部
132f,132g 第2取付部
132h,132i 先端部
141,142,143 表示部
144,145,146 案内部
150 衝撃検知装置
160 ケース
161,162,163 案内部
164,165,166 表示部
171,172,173 案内部
174,175,176 表示部
177 誘導斜面部
180 第1衝撃センサ
181 錘
182 保持部材
190 第2衝撃センサ
191錘,
192 保持部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】実開平04−43266号
【特許文献2】実用新案登録第3145187号
【非特許文献】
【0068】
【非特許文献1】日本化工機材株式会社カタログ「ドロップサイン」

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球形の錘、及び、相対向する第1及び第2の方向及びこの2方向に直交する第3の方向から前記錘の表面に接触して前記錘を保持する保持部材からなり、前記保持部材は、弾性部材で形成され、前記保持部が接触する3方向以外の方向に前記錘を離脱可能に保持し、前記離脱可能な方向に沿う衝撃を受けたとき錘の付勢保持を開放し錘を放出する衝撃センサと、
放出された錘が案内される放出方向毎の経路を備えた案内部と、
前記方向毎の経路の終焉部に配置され、前記案内された錘が保持され外部から視認可能となる表示部と、
を備えることを特徴とする衝撃検知装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記第3の方向と反対方向である第4の方向に前記錘を放出する第1の放出領域と、この第1の放出方向に直交する方向に前記錘を放出する第2及び第3の放出領域とを形成したことを特徴とする請求項1に記載の衝撃検知装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記錘の輪郭部付近に前記錘の中心線に対して対称に配置されて前記錘に接触する1対の接触部材を備え、各接触部材は前記輪郭部を挟んで少なくとも2本の部材が並設されてなり、
前記第2及び第3の放出領域は前記中心線に沿って形成され、前記第1の放出領域が各接触部材の先端部の間の隙間部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の衝撃検知装置。
【請求項4】
前記1対の保持部材は、先端部が湾曲形成されて略U字形状をなすとともに全体が前記錘の輪郭部に沿って配置され2つの先端部の間に間隙部が配置された接触部と、
これらの接触部を連結するアーム部と、を備えて構成され、
前記先端部と前記アーム部とは、衝撃が加わる前の状態において前記錘の移動を規制するとともに、衝撃が加わって前記錘が移動した状態において、前記錘の衝撃が加わる前の位置への戻りを防止することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の衝撃検知装置。
【請求項5】
前記表示部は検出対象となる全ての方向について保持された錘を一方向から視認可能となるよう一つの面部に配置されてなり、
前記案内部は、各前後方向を含む複数の方向に移動した錘を前記表示部まで案内することを特徴とする請求項4記載の衝撃検知装置。
【請求項6】
前記衝撃センサは第1の錘及び第2の錘を備えてなり、
前記保持部は、第1の錘を保持する輪郭部を含む平面と、第2の錘を保持する輪郭部を含む平面とが直交するよう共通のアーム部の両端に設けられ、第1の錘を直交する3方向で離脱可能に、第2の錘を前記第1の錘が離脱可能な3方向と異なる直交する3方向で離脱可能に保持することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の衝撃検知装置。
【請求項7】
前記案内部及び表示部は組み合わされる上部ケース及び下部ケースで構成され
前記衝撃センサは前記案内部を構成する上部ケース及び下部ケース部で挟持されて固定され配置されていることを特徴とする請求項6に記載の衝撃検知装置。
【請求項8】
被梱包物を梱包する梱包材の一の表面に対して、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の衝撃検知装置を備えてなることを特徴とする梱包装置。
【請求項9】
前記一の表面が、前記被梱包物の立壁面の一つであることを特徴とする請求項8に記載の梱包装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−276402(P2010−276402A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127467(P2009−127467)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】