説明

衝撃試験装置

【課題】装置の高さを大きくすることなく、落下試験と略等価といえる衝撃を高い再現性をもって供試体に加えることが可能な衝撃試験装置を提供する。
【解決手段】衝撃試験装置が、衝撃ブロックと、衝撃ブロックの上に配置されており衝撃ブロックを通過させるための開口が設けられており且つ略直方体形状の包装貨物である供試体がこの開口の上に載置されるようになっている可動テーブルと、可動テーブルを衝撃ブロックに向けて下方に駆動して供試体を衝撃ブロックに衝突させる駆動手段と、供試体を前記可動テーブルとの間で挟み込むことによって供試体の姿勢を保持する姿勢保持手段と、可動テーブルを降下させて供試体が衝撃ブロックに衝突する直前に姿勢保持手段を供試体から退避させるよう姿勢保持手段を制御する制御手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然落下させた時と同等の衝撃を包装貨物に加える衝撃試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
包装貨物が流通過程において受ける落下衝撃に対する包装の保護が適正であるかを評価するため、非特許文献1及び2に規定されている落下試験が行われる。
【非特許文献1】JIS Z 0200:1999「包装貨物−評価試験方法通則」
【非特許文献2】JIS Z 0202:1994「包装貨物−落下試験方法」
【0003】
非特許文献2に示されている落下試験装置は、包装貨物である供試体を落下高さまで持ち上げるための昇降手段と、昇降手段から供試体を切り離す切離手段と、切り離されて落下する供試体が衝突する落下面とを備えている。また、落下試験装置の代わりに、供試体のみを切り離して落下させる代わりに、衝撃台に供試体を載置して昇降手段により持ち上げ、衝撃台ごと供試体を落下させて衝撃波形発生手段に衝突させる衝撃試験装置を使用してもよい。
【0004】
また、非特許文献1及び2に規定されている落下試験としては、供試体の1面を落下面に衝突させる面落下と、供試体の稜を落下面に衝突させる稜落下と、供試体の角を落下面に衝突させる角落下がある。このため、落下試験装置や衝撃試験装置には、供試体の面、稜及び角のいずれかを落下面や衝撃波形発生手段と対向するように供試体の姿勢を保持する姿勢保持手段を備えることが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような落下試験装置や衝撃試験装置においては、供試体を重力によって自然落下させるものであるため、装置の高さは、少なくとも供試体の寸法と落下高さの和よりも大きくなる。特に、角落下を行う場合は、装置の高さは供試体の対角長さと落下高さの和よりも大きくなる。
【0006】
また、落下試験装置においては、切離手段によって供試体が姿勢保持手段から切り離されるので、偏心している供試体においては、落下中に供試体の姿勢が変化してしまう可能性があった。これは、特に稜落下や角落下を行う場合に顕著である。供試体の姿勢が変化してしまうと、落下試験の試験結果の再現性が低下してしまうという問題が生じる。
【0007】
一方、衝撃試験装置においては、姿勢保持手段によって供試体の姿勢が保持されたまま供試体が落下するよう構成されているが、衝撃波形発生手段への衝突時に姿勢保持手段から不要な荷重が供試体に加わってしまうという問題がある。また、衝撃試験装置においては、供試体は衝撃台の上に載せられた状態で落下するので、供試体は衝撃台の底面を介して衝撃波発生手段に衝突することになる。すなわち、衝突時に供試体が受ける衝撃荷重は、供試体の重量や衝突速度のみならず、衝撃台の底面の剛性や弾性の影響を受ける。このように、衝撃試験装置による衝撃試験は、落下試験と完全に等価とはいえなかった。
【0008】
本発明は上記の目的を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、装置の高さを大きくすることなく、落下試験と略等価といえる衝撃を高い再現性をもって供試体に加えることが可能な衝撃試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の衝撃試験装置は、衝撃ブロックと、衝撃ブロックの上に配置されており衝撃ブロックを通過させるための開口が設けられており且つ略直方体形状の包装貨物である供試体がこの開口の上に載置されるようになっている可動テーブルと、可動テーブルを衝撃ブロックに向けて下方に駆動して供試体を衝撃ブロックに衝突させる駆動手段と、供試体を前記可動テーブルとの間で挟み込むことによって供試体の姿勢を保持する姿勢保持手段と、可動テーブルを降下させて供試体が衝撃ブロックに衝突する直前に姿勢保持手段を供試体から退避させるよう姿勢保持手段を制御する制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明の衝撃試験装置は、供試体を自然落下させる代わりに、駆動手段によって供試体を所望の速度で衝撃ブロックに衝突させることができるようになっている。このため、試験開始前の被検体と衝撃ブロックとの間隔を自然落下時の落下高さよりも小さくすることができるので、装置の高さ方向寸法を抑えることができる。また、供試体が載置される可動テーブルには衝撃ブロックを通過させるための開口が設けられており、開口を通過した衝撃ブロックと供試体とが直接衝突するようになっている。さらに、衝撃ブロックに被検体が衝突する寸前に姿勢保持手段が供試体から離れるように制御されるので、衝突時に姿勢保持手段から不要な荷重が供試体に加わることは無い。この結果、落下試験時とほとんど等価といえる衝撃を供試体に加えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1、図2及び図3は、夫々本実施形態の衝撃試験装置1の上面図、正面図、側面図である。なお、図2ににおける領域A及びBは、夫々図1の二点鎖線A及びBに対応する断面図である。
【0012】
本実施形態の衝撃試験装置1は、包装貨物である供試体Sを衝撃ブロック21の上面21aに衝突させるための試験装置である。本実施形態の衝撃試験装置1は、可動テーブル11の上に供試体Sを載せ、次いで可動テーブル11を任意の速度で降下させ、衝撃ブロック21に供試体Sを衝突させるようになっている。これにより、所望の高さから供試体Sを自由落下させた場合と等価の衝撃を供試体Sに与えられるようになっている。
【0013】
図1〜3に示されるように、可動テーブル11の底11aは、アルニウム製の複数のはりを#形状に組み合わせて形成されており、はりの間に3×3マスの9個の開口11bが設けられている。また、衝撃ブロック21も、この開口11bに収まるように9個設けられている。このため、可動テーブル11が衝撃ブロック21の上面よりも低い位置にあるときは、衝撃ブロック21の夫々は開口11bを通過するようになっている。従って、衝撃ブロック21の上面21aよりも低い位置まで可動テーブル11を降下させても可動テーブル11の底11aが衝撃ブロック21の上面21aに衝突することはなく、底11aの上の供試体Sのみが衝撃ブロック21に衝突する。
【0014】
次いで、可動テーブル11を駆動するための機構について以下に説明する。本実施形態においては、可動テーブル11は送りねじ機構30によって上下方向に駆動される。送りねじ機構30の送りねじ31及びナット32は、可動テーブル11の幅方向(図1及び図2における左右方向)両端の外側に、夫々1組ずつ設けられている。可動テーブル11の幅方向両端には、ナット32を可動テーブル11に固定するためのナット固定用プレート12が固定されている。図2及び3に示されるように、ナット32はナット把持部材33を介してナット固定用プレート12に固定されている。ナット把持部材33は、ナット32を把持する第1部33aと、図示しないボルトにてナット固定用プレート12に固定されている第2部33bとを有する。第1部33aと第2部33bとは鉛直方向に並んで配置されており、図示しないボルトによって両者は固定されている。第1部33aと第2部33bとの間には荷重センサが取り付けられており、第1部33aと第2部33bとの間に加わる荷重の大きさを検出することができる。
【0015】
送りねじ31は、ベルト機構35を介してサーボモータ34によって回転駆動されるようになっている。ベルト機構35は、サーボモータ34の駆動軸34aに取り付けられている駆動プーリ35aと、送りねじ31の下端に取り付けられている従動プーリ35bと、駆動プーリ35aと従動プーリ35bとに掛け渡されている無端ベルト35cとを有する。このため、サーボモータ34の駆動軸34aを回転駆動すると、その回転運動はベルト機構35によって送りねじ31に伝達され、送りねじ31が回転する。なお、図示されているように、従動プーリ35bの径は駆動プーリ35aの径の約5倍となっている。すなわち、ベルト機構35は一種の減速機構であり、低トルク且つ高速回転可能なサーボモータ34によって、送りねじ31を高いトルクをもって回転させることができる。なお、従動プーリ35bと駆動プーリ35aの径の比は本実施形態の構成に限定されるものではなく、3〜10倍の範囲の中から、サーボモータ34の最大トルク、送りねじ31のリード、供試体Sの重量などに応じて適宜選択されるものである。
【0016】
また、可動テーブル11はガイド機構40によって、その移動方向が鉛直方向のみとなるようにガイドされている。ガイド機構40は、装置フレーム2に固定されている4本のガイドバー41と、ガイドバー41に沿って摺動可能に設けられた摺動部材42とを有する。ガイドバー41は鉛直方向に延びており、また、摺動部材42はナット固定用プレート12にボルトで固定されている(図1)ので、可動テーブル11の移動方向は鉛直方向のみに制限される。
【0017】
以上のように、本実施形態による衝撃試験装置1においては、送りねじ機構30によって可動テーブル11を所望の速度で上下方向に移動させることが可能であり、可動テーブル11の上に載せられた供試体Sを所望の速度で衝撃ブロック21の上面21aに衝突させることができる。また、装置フレーム2の底板2aには、近接センサ13が取り付けられている。近接センサ13は、可動テーブル11の真下且つ衝撃ブロック21の上面21aよりも低い位置に配置されており、可動テーブル11が近接センサ13に近接している状態では、それ以上可動テーブル11が降下しないようにサーボモータ34は制御される。
【0018】
本実施形態においては、可動テーブル11が下方に移動している間に供試体Sの姿勢が変化しないよう、姿勢保持手段50によって上方から供試体Sが可動テーブル11に向けて押圧されるようになっている。姿勢保持手段50は、鉛直方向に伸びる4本のガイドバー51と、摺動部材52aを介してガイドバー51にガイドされ、ガイドバー51に沿って鉛直方向に移動可能な可動プレート52と、可動プレート52をガイドバー51に対して上下方向に駆動するエアシリンダユニット53とを有する。
【0019】
ガイドバー51の上端には、天板54が固定されており、天板54とガイドバー51は一体となっている。エアシリンダユニット53のスリーブ53bは、天板53に固定されている。また、エアシリンダユニット53のシャフト53aは、可動プレート52に固定されている。また、ガイドバー51の下端はナット固定用プレート12に溶接されており、ガイドバー51、天板54及びエアシリンダユニット53は可動テーブル11と一体となって、ガイドバー41に沿って上下動する。
【0020】
可動プレート52の下面には、供試体Sと当接して押さえ込むための押圧ブロック55が固定されている。エアシリンダユニット53を駆動して天板54を押し下げると、押圧ブロック55と供試体Sとが当接し、供試体Sは下方に(すなわち、可動テーブル11に向かって)付勢される。これによって、供試体Sは可動テーブル11と押圧ブロック55の間でその姿勢が保持される。
【0021】
なお、押圧ブロック55の下部には、略水平な第1の当接面55a、水平面に対して略45°傾斜している2つの第2の当接面55b、及び水平面に対して略43.8°傾斜している3つの第3の当接面55cとを有している。第2の当接面55bは互いに直交しており、また、第3の当接面55cのうち任意の2面は互いに直交している。このため、略直方体形状の包装貨物である供試体Sのある面を第1の当接面55aに当接させた状態では、図2及び3に示されるように、その反対側の面が可動テーブル11と当接する。また、供試体Sの2面を第2の当接面55bに当接させた状態では、この2面が形成する稜と反対側の稜が可動テーブル11と当接する。また、供試体の3面を第3の当接面に当接させた状態では、この3面以外の3面によって形成される頂点と衝撃ブロック21の上面21aとが向かい合う形となる。このため、押圧ブロック55のどの当接面に供試体Sを合わせるかによって、供試体の面、稜、角のいずれかを衝撃ブロック21に衝突させるかを選択することができる。
【0022】
本実施形態においては、供試体Sが衝撃ブロック21に衝突するときに、押圧ブロック55から余計な荷重が加わらないように、供試体Sが衝突する直前にエアシリンダユニット53のシャフト53aを引き込んで押圧ブロック55を上昇させ、押圧ブロック55を供試体Sから引き離すようになっている。具体的には、供試体Sが衝撃ブロックSに衝突するまでの可動テーブル11の移動距離を予め計測しておき、その移動距離よりわずかに短い距離だけ可動テーブル11が降下したときに、エアシリンダユニット53を制御して押圧ブロック55を供試体Sから離すよう制御する。
【0023】
以上のように、本実施形態による衝撃試験装置1は、サーボモータ34にて駆動される送りねじ機構30によって可動テーブル11を降下させて所望の速度で供試体Sを衝撃ブロック21によって衝突させることによって、この速度に対応した高さから供試体Sを自然落下させたときと同等の衝撃を供試体Sに与えることができる。送りねじ機構30は可動テーブル11を重力加速度以上の加速度で降下させることが可能であるため、可動テーブル11の降下距離を、同等の落下試験を行う際の落下高さよりも小さくすることができる。この結果、同等の機能を有する落下試験装置と比べて、高さ方向寸法を小さくすることができる。
【0024】
また、本実施形態においては、姿勢保持手段50によって供試体Sの姿勢が保持された状態で供試体Sが衝撃ブロック21に衝突するようになっており、安定性の高い落下衝撃試験を行えるようになっている。また、本実施形態による衝撃試験装置1は、供試体Sの面、稜、或いは角のいずれを衝撃ブロック21に衝突させるかを選択可能であり、面落下試験、稜落下試験、角落下試験と同等の落下衝撃試験を行うことができる。加えて、本実施形態による衝撃試験装置1においては、供試体Sが衝突する寸前に押圧ブロック55が供試体Sから離れるようになっているので、衝突時に余計な荷重が供試体Sに加わらず、自然落下による落下試験とほとんど同一の衝撃試験を行うことができる。
【0025】
また、本実施形態による衝撃試験装置1は、供試体Sに圧縮荷重を加えるための圧縮試験装置としても使用可能である。圧縮試験を行う場合は、衝撃ブロック21の上に供試体Sを配置し、送りねじ機構30によって可動テーブル11を降下させることによって、可動テーブル11と衝撃ブロック21との間で供試体Sに圧縮荷重を加えることができる。この時の圧縮荷重の大きさは、荷重センサ33c(図2、図3)によって検出される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態の衝撃試験装置の上面図である。
【図2】本発明の実施の形態の衝撃試験装置の正面図である。
【図3】本発明の実施の形態の衝撃試験装置の側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 衝撃試験装置
11 可動テーブル
12 ナット固定用プレート
21 衝撃ブロック
30 送りねじ機構
31 送りねじ
32 ナット
33 ナット把持部材
33c 荷重センサ
34 サーボモータ
35 ベルト機構
35a 駆動プーリ
35b 従動プーリ
35c 無端ベルト
40 ガイド機構
50 姿勢保持手段
51 ガイドバー
52 可動プレート
53 エアシリンダユニット
53a シャフト
55 押圧ブロック
55a 第1の当接面
55b 第2の当接面
55c 第3の当接面
S 供試体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃ブロックと、
前記衝撃ブロックの上に配置されており、該衝撃ブロックを通過させるための開口が設けられており、且つ略直方体形状の包装貨物である供試体が該開口の上に載置されるようになっている可動テーブルと、
前記可動テーブルを前記衝撃ブロックに向けて下方に駆動して前記供試体を前記衝撃ブロックに衝突させる駆動手段と、
前記供試体を前記可動テーブルとの間で挟み込むことによって、該供試体の姿勢を保持する姿勢保持手段と、
前記可動テーブルを降下させて前記供試体が前記衝撃ブロックに衝突する直前に、前記姿勢保持手段を前記供試体から退避させるよう前記姿勢保持手段を制御する制御手段と、
を有する、衝撃試験装置。
【請求項2】
前記駆動手段が、サーボモータ及び送りねじ機構によって前記可動テーブルを駆動することを特徴とする請求項1に記載の衝撃試験装置。
【請求項3】
前記サーボモータ側に設けられた駆動プーリと、前記送りねじ側に設けられた従動プーリと、該駆動及び従動プーリに掛け渡された無端ベルトを備えたベルト−プーリ機構によって、該サーボモータの駆動軸と該送りねじとが連結されていることを特徴とする請求項2に記載の衝撃試験装置。
【請求項4】
前記従動プーリの径は前記駆動プーリの径の3〜10倍であることを特徴とする請求項3に記載の衝撃試験装置。
【請求項5】
前記姿勢保持手段が前記供試体と当接する押圧ブロックと、前記押圧ブロックを前記供試体に対して離接させるよう駆動する押圧ブロック駆動手段とを有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の衝撃試験装置。
【請求項6】
前記押圧ブロック駆動手段がエアシリンダユニットを有することを特徴とする請求項5に記載の衝撃試験装置。
【請求項7】
前記押圧ブロックの下部には、前記供試体の1面と当接可能な第1当接面と、該供試体の稜を構成する2面と当接可能な第2当接面と、該供試体の角を構成する3面と当接可能な第3当接面とが形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の衝撃試験装置。
【請求項8】
前記可動テーブルと前記駆動手段との間に、前記可動テーブルに加わる荷重を計測するための荷重センサが設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の衝撃試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate