説明

衝突後の損傷を軽減させる産業用巻き取り形ドアの羽根板案内システム

産業用ドアに対する衝撃時の損傷を防止するための方法及び装置であり、この装置には、複数の薄層体と、薄層体に接続可能な複数の端部材とを備えた巻き取り形ドアが含まれる。また、産業用ドアは、ドアを上昇及び下降させるために複数の端部材に接続可能な駆動システムを備えている。上記薄層体は、それに形成された複数の開口部を備え、開口部は、薄層体の少なくとも一つの末端部に配置される。上記端部材は、開口部に係合するための複数の摩擦嵌合安全手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、衝突を受けた時に、産業用ドアへの損傷を防止するための方法と装置とに関する。より詳細に、この発明は、衝突を受けた時に、産業用ドアの端部材と駆動システムとへの損傷を防止することに関する。
【背景技術】
【0002】
1970年代以降、高速動作するドア、集合的に産業用ドアと呼ばれるドアを、建物内に産業用として使用することが必要とされてきた。これは、外壁への適用と同様に、屋内の開口に対しても適用されており、上記ドアによって、種々の活動間をシールドしたり、隙間風や熱損失を防止したりしている。産業用ドアの一つの種類として、巻き取り形ドアがある。巻き取り形ドアは、その目的のために曲がり易いドア板を使用して形成されることが多く、また、重合体や金属の薄層体を用いた羽根板からなるドアのように、より堅い構造物を使用して形成されることもある。周知の例では、これらのドアは、上方に配置された一つの駆動シリンダ、或いは独立駆動される2つのディスク上に巻き取られ、また、風荷重や釣合い重りシステム、張力システム、窓等に対抗するために、風用の横補強材といった付加的な要素が備えられる。巻き取り形ドアには、安全上の理由から、エッジ保護、フェールセーフ装置、落下保護、衝突安全機能が更に備えられる。
【0003】
垂直開閉するほとんどの巻き取り形ドア組立において、一般に、ドアは2本の堅いドアガイド間を走行する。その結果、ドア、より具体的にドア板は、上記ガイド内の開口部内を走行することになる。
【0004】
他の周知な産業用ドアとして、垂直揚重形ドアがある。このドアは、真っ直ぐ或いは斜めに持ち上げられて開放され、利用者がそこを通過することを可能にする。
【0005】
巻き取り形ドアや垂直揚重形ドアは、時に、可撓性のある引張装置、ヒンジベルト、従来の固いヒンジ、或いは、衝撃時に曲がり易いシーリング材に接続される。このような装置の一例として、同一出願人によるPCT出願WO04/076795がある。これは、参照することによって本明細書に組み込まれるものとする。これらの装置の利点は、ドアの速度を増大させる助けとなることである。一般に、薄層体は、可撓性のある引張装置或いはヒンジベルトに対して、横方向に接続される。これらヒンジベルトや引張装置は、ドアのガイド内に配置され、直接接続により或いは薄層体にそれ自体が接続された端部材を介して、薄層体にしっかりと接続される。衝突発生時には、端部材がガイドから抜け出て、ヒンジが外れてしまう可能性がある。或いは、引張ベルトが裂けてしまうことがある。その結果、ドアを修復するために、多大な時間と労力とが必要になってしまう。
【0006】
WO03/018950には、衝突によって生じた損傷を軽減させるための助けとなる揚重形ドアが記載されている。出願WO03/018950に記載されたこのシステムでは、端部材は、薄層体に対して移動可能に接続されている。これは、水平移動が可能な典型的な接続である。結果として、薄層体は、ある程度の衝撃を受けた際に薄層体と端部材との接合部内を単に移動するだけとなり、薄層体或いは端部材には、何ら損傷は生じない。しかし、衝撃が激しく、薄層体の移動が端部材内に与えられていた距離を超えてしまう場合は、この薄層体の移動が、薄層体や駆動部品、端部材を損傷させる原因となってしまう。また、薄層体は、壊れ易い接続部によって端部材に接続されることもある。かかる場合、この壊れ易い接続部は、薄層体がドアの端部材から離れることを可能にして、これら端部材の損傷を制限する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この揚重形ドアシステムは、ドアの性能を最大限利用することができず、更に重要なことには、風力が非常に大きい場合に、薄層体が現に端部材から外れてしまうといった不利な点を有している。かかる構成では、限られた安全性しか提供することができず、泥棒や侵入者を受けやすいことは明白である。端部材が破壊点を有している場合は、薄層体及び端部材の双方の部品に破壊による損傷が発生して、交換が必要になってしまう。
【0008】
上述したものは一定の付随する利点を有しているものの、更なる改良及び/又は代替の形態が常時望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明における一つの対象は、衝突或いは衝撃を受けた時に、薄層体のみが損傷を受け、端部材や引張装置には損傷が生じない高速巻き取り形ドアに関するものである。
この発明における他の対象は、安全性を増大させ、風や泥棒によってドアが開けられたり、ドアがガイドから外れたりする可能性を低減させる薄層体及び端部材間の接続部を提供することである。
この発明における他の対象は、衝突や衝撃に対する抵抗力を保持するとともに、風圧に対する抵抗力を増大させた巻き取り形ドアに関するものである。
また、この発明における更なる対象は、薄層体を破壊する衝撃を受けた場合に、端部材が依然として再使用可能である巻き取り形ドアに関するものである。
この発明における一つの態様は、複数の薄層体と、薄層体に接続可能な複数の端部材とを備えた産業用ドアに関するものである。この産業用ドアは、産業用ドアを上昇及び下降させるために、複数の端部材に接続可能な駆動システムも備えている。上記薄層体は、それに形成された複数の開口部を備え、この開口部は、薄層体の少なくとも一つの末端部に配置される。上記端部材は、開口部に係合するための複数の摩擦嵌合安全手段を備えている。
この発明における他の態様は、複数の薄層体、薄層体に接続可能な複数の端部材、産業用ドアを上昇及び下降させるために複数の端部材に接続可能な駆動システム、薄層体に形成され、薄層体の少なくとも一つの末端部に配置された複数の開口部、端部材に形成された複数の摩擦嵌合安全手段、少なくとも一つのガイドを有する産業用ドアを準備するステップを備えた産業用ドアへの損傷防止方法に関するものである。上記方法は、記摩擦嵌合安全手段が、薄層体に形成された開口部に係合するように、端部材上に薄層体を挿入するステップを備えるとともに、端部材に形成された風用アンカーがガイドに衝突するまで、端部材がガイドの方向に向かってスライドするステップと、開口部内に摩擦嵌合安全手段を保持している摩擦力に打ち勝つステップと、薄層体がスライドして端部材の端部から離れるステップとによって、衝撃を受けた時のドアへの損傷を防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明に対する理解をより完全にするため、以下の説明及び添付図面について言及する。
【0011】
この発明の目的、すなわち、耐風力を増加させること、泥棒に対する防備を増強させること、繰り返しの使用が可能であることは、図1及び図1aに示されたような装置によって達成される。
【0012】
図1は、例えば、複数の薄層体2を備えた巻き取り形ドア10によって説明された産業用ドアを示している。薄層体2は、端部材1にそれぞれ接続されており、端部材1自体は、引張装置4に固定されている。上記端部材1は、図1aに示されているように、風用アンカー5を備えている。ガイド3は薄層体の両側に形成され、薄層体2は、運転中に、2本のガイド3によって形成された案内路内を動く。薄層体2には孔6が形成されている。端部材1に接続されたリベット或いは丸頭体7は、孔6を介して、薄層体2をガイド間で端部材1に固定し、巻き取り形ドアの開放或いは閉鎖時に、巻き取り形ドア10が引張装置によって駆動されることを可能する。
【0013】
図2a乃至図2cは、衝突或いは衝撃が作用した時の巻き取り形ドア10を示している。図2aにおいて、端部材1は、図示されていない滑り接続部を介して引張装置4に接続されている。滑り接続部は、薄層体の縦方向に対して垂直な力(F)が加えられた時に、端部材1が薄層体2の方向に移動することを可能にする。端部材は、かかる力が加えられると、風用アンカー5がガイドに接触するまでガイド3の方向に移動する。風用アンカー5は端部材1に強固に接続されており、薄層体2が、単なる風の衝撃によってガイドから外れてしまうことを防止し、また、泥棒に対するある程度の安全性を提供する。薄層体2は、風が関連する典型的な力よりも大きな力の衝撃を受けた時、例えば、商品の保管場所で発生するような、トラックやフォークリフトの衝撃を受けた時に、風用アンカー5によって移動が妨げられている端部材1から離れる方向に移動する。薄層体2は、丸頭体7によって端部材上に保持されている。しかし、薄層体2は、十分な力が加えられると、孔6の部分が弾性変形して丸頭体7を越えてスライド可能となり、端部材1から離れる方向に移動する。これにより、薄層体2が巻き取り形ドア10から解放される。
【0014】
薄層体2は、単に薄層体を端部材に再挿入して、丸頭体7が薄層体2の孔6内に再び配置されるまで薄層体をスライドさせることにより、端部材1上の元の位置に戻すことができる。一つ以上の薄層体が損傷した場合は、個々の薄層体を新しいものに取り替えることが可能である。
【0015】
上述の巻き取り形ドア10の利点が、衝突時にドアを正常運転の状態に容易に戻せることであることは、当業者にとって明白である。更に、このシステムは、引張装置4或いは端部材1に生じる損傷を、ほとんどの場合に防止する。
【0016】
図3a及び図3bは、この発明の一つの態様における平面図と側面図とを示している。図3aに示されているように、薄層体2は2つの孔6を有している。丸頭体7は、薄層体2が端部材1に適切に接続された際に、上記2つの孔6内に配置される。更に、図3aは、薄層体2を端部材1から解除する時の力(F)の方向を示している。かかる力は、上述した通り、薄層体2の縦方向である。図3bは、丸頭体7が固定位置にある時に、薄層体2の孔6内にどのように配置されているのかを示している。
【0017】
図4a及び図4bは、丸頭体7として可能性がある、2つの異なる構成を示している。図4aにおいて、丸頭体7は現に丸頭リベットからなり、当業者に知られているリベット締めの方法により、端部材1に形成された孔に挿入されている。図4bはこの発明における丸頭体7の他の態様を示しており、端部材の一部が、端部材1の平面に対して実質的に垂直に変形されている。端部材1の変形部分は、図4aに示されたリベットと同様に、薄層体2の孔6内にぴったりと収まり、薄層体2の好ましくない動きを防止する。
【0018】
丸頭体7の上述の例は円形である必要はなく、くさび状のものや隆起部等を含め、製造業者が望む如何なる形状であっても良いことは、当業者に明白である。したがって、ここでは丸頭体として説明したが、これらの装置は実際に固定手段からなり、如何なる形状であっても構わない。同様に、孔6は図示された丸孔に限られるものではなく、細長い孔や角孔、薄層体に開口部を有していないリブ、当業者に知られている如何なる摩擦嵌合安全手段であっても良い。
【0019】
また、ここでは、薄層体を貫通する孔として示したが、孔6は、必ずしも、薄層体の表面を貫通する必要はなく、薄層体を端部材に固定した時に丸頭体が配置される薄層体の内部にくぼみを形成しても良いことは、当業者に明白である。
【0020】
また、当業者が理解し得る追加的な特徴は、丸頭体7が薄層体に形成され、孔が端部材に形成されることである。かかる構成の動作は、上述した動作と同様である。
【0021】
この発明における更なる態様は、図5を参照して理解することができる。図5には、上述した態様に一致する薄層体2が示されている。薄層体2は、端部材1と引張装置4とを薄層体の各端部に備えている。薄層体2はガイド3内を動き、端部材5が、薄層体2の両端部に示されている。また、薄層体には、安全装置8が組み込まれている。安全装置8は、ロープ、コード、紐、ゴム紐、或いは、薄層体2の端部材1からの移動を可能にする他の保持手段からなるが、安全装置8は、薄層体2をドア10の残りの部分に実質的に接続された状態に保持する。安全装置8は、図5に示されているようにドア10の両端部に接続されるが、ドア10の各端部に取り付けられたコードやロープ、ゴム紐といった2つの分離した部材であっても良い。また、更なる実施の形態においては、ドア10の一つの端部に設けられた一つの安全装置8のみを備えても良い。薄層体2が一方向或いは双方向に振れて外れることを制限し、周囲面や薄層体自体に対する損傷を防止することが望ましい場合、安全装置8を使用することは特に有益である。かかる場合、弾性体からなる安全装置8が、適宜選択され得る。
【0022】
このように、上述の例によって、この発明の目的と利点とが明確に理解された。好適な実施の形態が本明細書で詳細に開示及び説明されているが、その範囲や目的は、それらによって制限されない。正確に言えば、その範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一つの態様における巻き取り形ドアを示す正面図である。
【図1a】この発明の一つの態様における巻き取り形ドアを示す水平断面図である。
【図1b】この発明の一つの態様における巻き取り形ドアを示す垂直断面図である。
【図1c】図1bにおいてXで示された部分の拡大図である。
【図2a】この発明の一つの態様における巻き取り形ドアを示す水平断面図であり、開始位置にある端部材を示している。
【図2b】この発明の一つの態様における巻き取り形ドアを示す水平断面図であり、風圧を受けた端部材を示している。
【図2c】この発明の一つの態様における巻き取り形ドアを示す水平断面図であり、再使用可能な接続部が衝突によって解除された時の端部材を示している。
【図3a】この発明の一つの態様における再使用可能なスナップ接続部を示す正面図である。
【図3b】この発明の一つの態様における再使用可能なスナップ接続部を示す水平断面図である。
【図3c】この発明の一つの態様における再使用可能なスナップ接続部を示す側面図である。
【図4a】リベットを利用した再使用可能なスナップ接続部を示す側面図である。
【図4b】薄層体の材料から形成された再使用可能なスナップを示す側面図である。
【図5】この発明の態様の一つにおける薄層体を示す斜視図であり、ここで、上記薄層体は、衝突や強風によって端部材から外れた後、安全装置によって支持されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の薄層体と、
前記薄層体に接続可能な複数の端部材と、
巻き取り形ドアを上昇及び下降させるために、前記複数の端部材に接続可能な駆動システムと、
前記薄層体に形成され、前記薄層体の少なくとも一つの末端部に配置された複数の開口部と、
前記開口部に係合するために、前記端部材に形成された複数の摩擦嵌合安全手段と、
を備えた産業用ドア。
【請求項2】
風用アンカーを更に備えた請求項1に記載の産業用ドア。
【請求項3】
端部材は、駆動システムに接続するための滑り係合部材を備えた請求項1に記載の産業用ドア。
【請求項4】
巻き取り形ドアに対して十分な力が加えられた際に、摩擦嵌合安全手段が解除されて、薄層体が端部材から離れることを可能にする請求項1に記載の産業用ドア。
【請求項5】
巻き取り形ドアが開閉する間、前記巻き取り形ドアの進路を導くためのガイドと、
を更に備えた請求項1に記載の産業用ドア。
【請求項6】
複数の端部材のうちの一つ以上に形成された風用アンカーと、
を更に備え、
十分な力が加えられた際に、前記風用アンカーは、ガイドに衝突して前記端部材がそれ以上移動することを防止する請求項5に記載の産業用ドア。
【請求項7】
摩擦嵌合安全手段は、丸頭リベットと、端部材に形成された変形部と、前記端部材に形成され、薄層体の縦方向に対して実質的に垂直な隆起部と、前記端部材に取り付けられたくさび形状の突起部とによって構成されたグループの中から選択される請求項1に記載の産業用ドア。
【請求項8】
開口部は、丸孔と、角孔と、端部材に形成されたくさび状のものと相互作用するための隆起部と、前記端部材に形成された隆起部と相互作用するための一対の隆起部とによって構成されたグループの中から選択される請求項1に記載の産業用ドア。
【請求項9】
開口部と摩擦嵌合安全手段とは、薄層体の両端部に設けられた請求項1に記載の産業用ドア。
【請求項10】
薄層体が端部材から外れた時に、前記薄層体の移動を制限する安全装置と、
を更に備えた請求項1に記載の産業用ドア。
【請求項11】
複数の薄層体、前記薄層体に接続可能な複数の端部材、巻き取り形ドアを上昇及び下降させるために前記複数の端部材に接続可能な駆動システム、前記薄層体に形成され、前記薄層体の少なくとも一つの末端部に配置された複数の開口部、前記端部材に形成された複数の摩擦嵌合安全手段、少なくとも一つのガイドを有する巻き取り形ドアを準備するステップと、
前記摩擦嵌合安全手段が、前記薄層体に形成された前記開口部に係合するように、前記端部材上に前記薄層体を挿入するステップと、
を備え、
衝撃を受けた時に、前記ドアへの損傷が、
前記端部材に形成された風用アンカーが前記ガイドに衝突するまで、前記端部材が、前記ガイドの方向に向かってスライドするステップと、
前記開口部内に前記摩擦嵌合安全手段を保持している摩擦力に打ち勝つステップと、
前記薄層体がスライドして前記端部材から離れるステップと、
によって防止される巻き取り形ドアへの損傷防止方法。

【図1】
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【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−526144(P2009−526144A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553265(P2008−553265)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/002061
【国際公開番号】WO2007/092169
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】