説明

衝突時のドアロック解除アルゴリズム付きシステム

【課題】車両の側面にエアバッグを装備していない車両において、側面衝突時に、車両のドアを自動的に解除する技術を提供する。
【解決手段】車両の加速度を測定するACU(Airbag Control Unit)と、ACUで測定した値と、既に設定された値とを比べて判断するアルゴリズムと、アルゴリズムにより判断された信号が伝達されるBCM(Body Control Module)とを含み、側面エアバッグを装備した車両の場合には、側面エアバッグが膨らんだ時に、側面衝突アルゴリズムから信号を送り出してドアロックを解除し、側面エアバッグを装備しない車両の場合には、側面衝突ドアロック解除アルゴリズムから信号を送り出してドアロックを解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック解除システムに係り、より詳しくは、車両の側面にエアバックを装備していない車両の場合の、側面衝突時に車両のドアを自動解除するドアロック解除アルゴリズム及びロジックに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、殆どの車両に装備されているオートドアロック装置は、車両が一定の速度以上で走行するときに、BCM(Body Control Module)が信号を送って各ドアを自動的に施錠する装置である。
このような車両のオートドアロック装置は、車両の高速走行時に、乗客の不注意等によりドアが開いてしまう事故を防止するためのものであり、車両の衝突時には、外部からの乗客救助のため、ドアロックが自動的に解除されるようなっている。
【0003】
そして、既存のドアロック解除システムは、特許文献1に記載された解除システムにあるように、エアバッグが膨らんだか否か、車両が停止したか否かを判断し、ドアロック解除の信号を出力するものである。
即ち、従来のシステムでは、図1に示すように、エアバッグを装備した車両において、エアバッグが膨らむほどの衝突事故が発生した場合、ACU(Airbag Control Unit)が、エアバッグとプリテンショナーを作動させ、クラッシュアウトプット(Crash Output)を出力してBCMにその信号を伝達する。
【0004】
BCMは、クラッシュアウトプットを認識してアクチュエーター(Actuator)を作動させることになり、リレー(Relay)が作動すると、バッテリから電源が供給され、ドアロックが解除される。
図2に従来のシステムのフローを示したが、従来のシステムでは、エアバッグの膨らみにより衝突を検知すると、ACUは車両の加速度を測定し、その値が設定値以上であれば、BCMへ直ちにドアロック解除信号を送ることになる。
【0005】
しかし、前述の従来システムでは、車両の側面にエアバッグを装備していない車両において側面衝突が起こった場合、エアバッグが膨らんだか否かの判断では、衝突が検知できないので、ACUからドアロック解除信号を送り出すことができないという問題点があった。このような場合、別途、機械式もしくは電子式のセンサを用いて検知し、BCMへ衝突信号を送り出さなければならないが、当然、設置コストや設置空間の問題が発生してしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−59855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、側面にエアバッグを装備していない車両において、側面衝突時に、車両のドアを自動的に解除する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するための本発明のドアロック解除アルゴリズム付きシステムは、車両の加速度を測定するACU(Airbag Control Unit)と、ACUで測定した値と、既に設定された値とを比べて判断するアルゴリズムと、アルゴリズムにより判断されて出された信号が伝達されるBCM(Body Control Module)とを含む。
【0009】
好ましくは、ACUは、デュアル加速度センサデータを利用するものであり、側面エアバッグを装備した車両においては、側面エアバッグが膨らんだ時に、側面衝突アルゴリズム(Side Crash Algorithum)から信号を送り出してドアロックを解除し、側面エアバッグを装備しない車両においては、側面衝突ドアロック解除アルゴリズム(Side Crash Unlock Algorithum)から信号を送り出して、ドアロックを解除することが好ましい。
【0010】
また、アルゴリズムは、ロールオーバーアルゴリズム(Rollover Algorithum)、正面衝突アルゴリズム(Front Crash Algorithum)、側面衝突アルゴリズム(Side Crash Algorithum)及び側面衝突ドアロック解除アルゴリズム(Side Crash Unlock Algorithum)を含むことが好ましい。
【0011】
更にまた、アルゴリズムが動作したあと、一定の時間のあいだリセット条件を満たした場合は、衝突ドアロック解除アルゴリズム(Side Crash Unlock Algorithum)がリセットされることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
前述のように、本発明の衝突時のドアロック解除アルゴリズム付きシステムによれば、側面エアバッグを装備していない車両においても、側面衝突ドアロック解除アルゴリズム(Side Crash Unlock Algorithum)を用いて衝突ドアロック解除(Crash Unlock)信号を送り出すことにより、側面衝突時に車両のドアロックを解除させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の技術に係るドアロックアルゴリズムを示した図である。
【図2】従来の技術に係るドアロック制御方法を示したフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係るドアロックアルゴリズム/ロジックを示したフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る衝突時のドアロック解除アルゴリズム/ロジックを示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態の一例を、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係るドアロックアルゴリズム/ロジックを示したフローチャートである。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、車両が側面衝突した時に、側面エアバッグ(Side Airbag)を装備している車両においては、側面衝突センサ(Side Impact Sensor)によって側面エアバッグが膨らんだことを検知し、ドアロックを解除する。
一方、車両が側面エアバッグを装備していない場合は、側面衝突センサによる衝突の検知ができないので、ACUが、ACU内部の「Y」加速度センサ装置を利用して「Y」加速度(「G」)を測定し、この測定値を用いて衝突時における衝突ドアロック解除信号送出の可否を判断する(Yは縦方向を意味する、Y方向加速度=G)。
【0016】
即ち、ACUの側面衝突ドアロック解除アルゴリズムは、一定時間内の「G」値の時間積分値である速度変化量「V」値が、基準値閾値(Threshold,V)以上なのか否かによって、衝突ドアロック解除信号の送出の可否を判断する(S320)。
ここで、閾値(Threshold,V)は、ウィンドウ(Window)区間内積分値を意味する(ウィンドウ区間はV値算出のための基準時間であり、ウィンドウ区間及び基準値Vは、実車試験によって算出された値である)。
【0017】
このとき、基準時間内の「G」値の積分値が、基準リセット(Reset)値(V、Threshold値よりは低い)以上で、基準時間内の「G」値が、閾値(Threshold、G)以下で連続して維持される場合(S315)には、側面衝突ドアロック解除アルゴリズム(Side Crash Unlock Algorithum)はリセットされる(S325)。
側面衝突ドアロック解除アルゴリズムがリセットされた後、「Y」加速度は常時モニタリングされ、基準以上の「G」値が測定されると、アルゴリズムは再度作動する(S300)。
【0018】
そして、「G」積分値が、閾値(Threshold,V)以上の場合には、衝突ドアロック解除信号が送り出される(S330)。
この時、ドアロック解除の誤動作を防止するため、別途のSAFINGロジックを同時に満足した場合にドアロック解除信号が送り出されるようになっている(S400〜S420)。
衝突ドアロック解除信号が送り出されたあと、全てのドアロックを解除することができるアクチュエーター(Actuator)が作動する(S340)。
【0019】
図4は、本発明の一実施例に係る衝突時のドアロック解除アルゴリズム/ロジックを示す図である。
図4に示す通り、車両の衝突が発生すると、直ちにACU400は車両の加速度を測定し、その測定した値が設定値以上であれば、アルゴリズム410が作動する。
アルゴリズム410は、ロールオーバーアルゴリズム(Rollover Algorithum)、正面衝突アルゴリズム(Front Crash Algorithum)、側面衝突アルゴリズム(Side Crash Algorithum)及び側面衝突ドアロック解除アルゴリズム(Side Crash Unlock Algorithum)で構成されている。
これらのアルゴリズムによって判断されて出された信号は、直ちにBCM420へ送信される。
【0020】
以上、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明は前記実施例に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0021】
400 ACU
410 アルゴリズム
420 BCM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の加速度を測定するACU(Airbag Control Unit)と、
前記ACUで測定した値と、既に設定された値とを比べて判断するアルゴリズムと、
前記アルゴリズムにより判断されて出された信号が伝達されるBCM(Body Control Module)と、
を含むドアロック解除アルゴリズム付きシステム。
【請求項2】
前記ACUは、デュアル加速度センサデータを利用することを特徴とする、請求項1に記載のドアロック解除アルゴリズム付きシステム。
【請求項3】
側面エアバッグを装備した車両の場合には、
側面エアバッグが膨らんだ時に、側面衝突アルゴリズム(Side Crash Algorithum)から信号を送り出してドアロックを解除し、
側面エアバッグを装備しない車両の場合には、
側面衝突ドアロック解除アルゴリズム(Side Crash Unlock Algorithum)から信号を送り出して、ドアロックを解除することを特徴とする、請求項1に記載のドアロック解除アルゴリズム付きシステム。
【請求項4】
前記アルゴリズムは、ロールオーバーアルゴリズム(Rollover Algorithum)、正面衝突アルゴリズム(Front Crash Algorithum)、側面衝突アルゴリズム(Side Crash Algorithum)及び側面衝突ドアロック解除アルゴリズム(Side Crash Unlock Algorithum)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のドアロック解除アルゴリズム付きシステム。
【請求項5】
前記アルゴリズムが動作したあと、一定の時間のあいだリセット条件を満たした場合は、衝突ドアロック解除アルゴリズム(Side Crash Unlock Algorithum)がリセットされることを特徴とする、請求項1に記載のドアロック解除アルゴリズム付きシステム。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−116350(P2011−116350A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205608(P2010−205608)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】