説明

衝突検出装置

【課題】衝突対象を正確に判別可能にすることを目的とする。
【解決手段】圧力チャンバ22内の圧力を検出する圧力センサ24と、車速を検出する車速センサ28と、が接続された衝突検出ECU26を備え、衝突検出ECU26が、予め定めた車速変換マップ等を用いて車速センサ28の車速信号から予め定めた値αを差分した変換車速信号を求めて、求めた変換車速信号と、圧力センサ24によって検出した圧力信号を時間積分した力積信号と、に基づいて、衝突物の有効質量を求める。そして、求めた有効質量が予め定めた閾値を超えた場合に、衝突物が歩行者であると判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突検出装置にかかり、特に、車両のバンパにおける圧力変化に基づいて衝突を検出する衝突検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のバンパに衝突した衝突物が歩行者か否かの判断が可能な衝突検出装置が従来より提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術では、車両バンパ内に配設されるチャンバ部材と、チャンバ空間内の圧力を検出する圧力センサと、車速センサと、コントローラと、を備えて、コントローラが、圧力センサによって検出した圧力変化の最大値と車両バンパの吸収エネルギとの相関関係を示す近似式又はテーブルを用いて車両バンパの吸収エネルギを求めて、求めた吸収エネルギから数式M=2E/Vにより衝突物の有効質量Mを算出し、有効質量Mが所定の閾値以上もしくは範囲内である場合に、衝突物の種類を歩行者と判定することが提案されている。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術では、車両バンパ内でバンパリンフォースの車両前方側に配置され且つチャンバ空間が内部に形成されたチャンバ部材の前端が、車両バンパ内でバンパリンフォースの車両前方側に配置され且つ衝突に伴って変形し衝撃を吸収するアブソーバの前端よりも車両後方側に位置するように構成することにより、歩行者保護装置の起動が不要な軽衝突時にはアブソーバのみが変形し、チャンバ部材は変形しないため、チャンバ空間内に圧力変化が生じないようにすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−227087号公報
【特許文献2】特開2009−18734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の技術のように、チャンバに対して上下に並列に配置されたアブソーバの車両前後方向長さが、チャンバよりも前方側へ突出した構造の場合には、衝突初期ではアブソーバのみが変形し、チャンバ内の圧力が変化せず、不感帯を有する。従って、低速衝突の場合には、衝突初期には有効質量が0(あるいは実際より小さい質量)となり、衝突対象を正確に判別することができない。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、衝突対象を正確に判別可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、車両バンパ内に配設された圧力チャンバの圧力を検出する圧力検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、前記圧力検出手段の検出結果及び前記車速検出手段の検出結果に基づいて衝突物の種類を判別するための判別値を算出する判別値算出手段と、衝突によって車両バンパ表面が変形してから前記圧力チャンバが変形するまでに必要なエネルギに基づいて前記判別値を補正する補正手段と、前記補正手段によって補正された前記補正値に基づいて衝突物の種類を判別する判別手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、圧力検出手段では、車両バンパ内に配設された圧力チャンバの圧力が検出され、車速検出手段では、車速が検出される。
【0010】
判別値算出手段では、圧力検出手段及び車速検出手段の検出結果に基づいて衝突物の種類を判別するための判別値が算出される。判別値算出手段は、例えば、請求項4に記載の発明のように、圧力検出手段の検出結果及び車速検出手段の検出結果に基づいて衝突物の有効質量を判別値として算出するようにしてもよい。すなわち、衝突によって発生する力積と運動量が等しいことを利用して、衝突物の有効質量を判別値として算出することができる。
【0011】
また、補正手段では、衝突によって車両バンパ表面が変形してからチャンバ空間が変形するまでに必要なエネルギに基づいて判別値が補正される。
【0012】
そして、判別手段では、補正手段によって補正された判別値に基づいて衝突物の種類が判別される。
【0013】
すなわち、補正手段によって判別値が補正されることによって、バンパ表面とチャンバ部材間に存在する空間やアブソーバ等による圧力検出手段の不感帯が補正され、補正された判別値を用いて衝突物の種類を判別するため、衝突対象を正確に判別可能となる。
【0014】
補正手段は、請求項2に記載の発明のように、車両バンパ表面が変形してから前記圧力チャンバが変形するまでに必要なエネルギに基づいて車速検出手段の検出結果を補正することによって判別値を補正するようにしてもよい。例えば、車両バンパ表面が変形してから圧力チャンバが変形するまでに必要なエネルギに基づいて予め定めた変換車速を実車速から差分して車速検出手段の検出結果を補正することにより、判別値を補正することができ、これによって衝突対象を正確に判別することが可能となる。
【0015】
また、補正手段は、請求項3に記載の発明のように、車両バンパ表面が変形してから圧力チャンバが変形するまでに必要なエネルギに基づいて圧力検出手段の検出結果を補正することによって判別値を補正するようにしてもよい。例えば、車両バンパ表面が変形してから圧力チャンバが変形するまでに必要なエネルギに基づいて予め定めた力積値を実際の圧力から求めた力積値に加算して圧力検出手段の検出結果を補正することにより、判別値を補正することができ、これによって衝突対象を正確に判別することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、衝突物の種類を判別するための判別値を補正して衝突物の種類を判別することにより、衝突対象を正確に判別可能にすることができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係わる衝突検出装置の概略構成を示す図である。
【図2】(A)アブソーバのみが変形する場合を示す図であり、(B)圧力チャンバが変形する場合を示す図であり、(C)は圧力センサの不感帯を説明するための図である。
【図3】(A)は本発明の実施の形態に係わる衝突検出装置の衝突検出ECUの機能を示す機能ブロック図であり、(B)は車速変換マップを示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係わる衝突検出装置の衝突検出ECUで行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図5】車速信号を補正しない場合と、車速信号を補正した場合の衝突物の判別結果を説明するための図である。
【図6】(A)は本発明の第2実施形態に係わる衝突検出装置における衝突検出ECUの機能を示す機能ブロック図であり、(B)は力積補正マップを示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係わる衝突検出装置の衝突検出ECUで行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図8】力積信号を補正しない場合と、力積信号を補正した場合の衝突物の判別結果を説明するための図であり、(A)は力積信号を補正しない場合を示し、(B)は力積信号を補正する場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる衝突検出装置の概略構成を示す図である。なお、図中に示す矢印FRは車体前後方向の前方向を示し、矢印UPは車体上下方向の上方向を示すものとする。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係わる衝突検出装置10は、自動車の前端に配置されたフロントバンパ12への衝突体を判別するようになっている。
【0020】
フロントバンパ12は、バンパリインフォースメント14を備えている。バンパリインフォースメント14は、例えば、金属系(鉄やアルミ等)の材料や、樹脂材料等により構成され、車幅方向に長手の骨格部材として構成されている。このバンパリインフォースメント14は、図視しない車体側の左右一対の骨格部材における前端間を架け渡して車体に支持されている。
【0021】
また、フロントバンパ12は、バンパリインフォースメント14を車体前後方向の外側すなわち前側から覆うバンパカバー16を備えている。バンパカバー16は、樹脂材等で構成され、バンパリインフォースメント14との間に空間Sが形成されるように、図示しない部分で車体に支持されている。
【0022】
そして、フロントバンパ12におけるバンパリインフォースメント14とバンパカバー16との間の空間Sには、チャンバ部材18と緩衝部材としてのアブソーバ20とが配置されている。チャンバ部材18は、バンパリインフォースメント14の前面上部側に設けられ、アブソーバ20は、バンパリインフォースメント14の前面下部に設けられている。
【0023】
アブソーバ20は、車幅方向にバンパリインフォースメント14に沿って設けられ、例えば、発泡部材(ポリプロピレンフォーム等)の部材で構成されている。アブソーバ20の形状は、図1に示す断面形状に限るものではない。
【0024】
チャンバ部材18は、車幅方向に長手の中空構造とされた圧力チャンバ22を構成しており、バンパリインフォースメント14の前面の上部に固定されている。
【0025】
また、チャンバ部材18は、その後端部においてバンパリインフォースメント14の前面に固定された状態で、その中空形状(圧力チャンバ22の形状)を維持可能な剛性を有している。
【0026】
さらに、衝突検出装置10は、圧力チャンバ22内の圧力に応じた信号を出力する圧力センサ24が設けられている。圧力センサ24から出力された信号は、衝突検出ECU26に出力される。
【0027】
衝突検出ECU26には、車速を検出する車速センサ28が接続されており、車速センサ28によって検出された車速信号が入力されるようになっている。
【0028】
衝突検出ECU26は、衝突物の種類を判別するための判別値を算出する。具体的には、圧力センサ24からの圧力信号と車速信号に基づいて、衝突物重量を判別値として推定するようにしている。さらに具体的には、入力荷重F、時間:t、有効質量M、車速Vとした場合に、衝突によって発生する力積と運動量は等しいので、MV=Ftの関係が得られ、有効質量M=Ft/Vとなる。すなわち、力積と車速Vにより有効質量Mを求めることができるので、有効質量を判別値として算出する。なお、力積は、衝突によって入力される荷重が圧力チャンバ22の圧力変化に相当するので、圧力センサ22の圧力信号を時間積分することによって求める。
【0029】
また、衝突検出ECU26は、判別値としての有効質量Mに基づいて、衝突物を判別するようになっている。具体的には、衝突検出ECU26は、求めた有効質量Mが予め定めた閾値を超えた場合に、衝突物が歩行者であると判別するようになっている。これにより、衝突検出装置10では、フロントバンパ12への衝突物が歩行者であるか、路側マーカーポール等の路上固定物であるかを判別することができる。
【0030】
さらに、衝突検出ECU26は、判別結果を歩行者保護装置などの装置に出力する。そして、歩行者保護装置は、判別結果が衝突物が歩行者である場合に、歩行者を保護するための装置を作動する。
【0031】
ところで、本実施の形態に係わる衝突検出装置10は、上述したように、圧力チャンバ22の圧力変化に基づいて、衝突物を判別するようにしているが、バンパカバー16と圧力チャンバ22間に空間Sやアブソーバ20が介在するため、図2(A)に示すように、衝突物とバンパカバー16が衝突してもアブソーバ20のみが変形し圧力チャンバ22に圧力変化が発生せず、図2(B)に示すように、衝突物が更に侵入したところで圧力チャンバ22に圧力変化が生じる。従って、図2(C)に示すように、圧力センサ22に不感帯があり、低速時出力が小さくなり、低速衝突時の有効質量が小さくなって歩行者衝突であることの判別が困難となる。
【0032】
そこで、本実施の形態の衝突検出ECU26では、バンパカバー16が変形してから圧力チャンバ22が変形するまでに必要なエネルギに基づいて、圧力センサ22の不感帯の部分を補正して、衝突物を判別するようになっている。具体的な補正方法については以下の各実施形態で説明する。
(第1実施形態)
ここで、上述の圧力センサ22の不感帯の部分を補正する、本発明の第1実施形態に係わる衝突検出装置10における衝突検出ECU26の概略構成について説明する。図3(A)は、本発明の実施の形態に係わる衝突検出装置10の衝突検出ECU26の機能を示す機能ブロック図である。
【0033】
本実施形態では、衝突物を判別するための判別値としての有効質量を補正するために、有効質量を求めるための車速を補正することによって判別値を補正するようにしている。
【0034】
本実施形態の衝突検出ECU26は、車速補正部30、有効質量算出部32、及び歩行者判定部34の機能を備えている。
【0035】
車速補正部30には、車速センサ28によって検出された車速信号が入力される。車速補正部30は、予め定めた車速変換マップ等を用いて車速センサ28の車速信号から予め定めた値αを差分した変換車速信号を求めて有効質量算出部32に出力するようになっている。
【0036】
車速変換マップは、車速センサによって検出された車速信号に対して、予め定めた値を差分した変換車速を求めるものであり、例えば、図3(B)に示す車速変換マップを適用することができる。なお、車速マップとしては、車速センサ28によって検出された車速信号に対する変換車速が予め記憶されたルックアップテーブルとしてもよいし、車速センサ28によって検出された車速信号から予め定めた値αを差分する演算式としてもよい。
【0037】
また、有効質量算出部32には、圧力センサ24によって検出した圧力信号を時間積分した信号が力積信号として入力されると共に、車速補正部30から車速信号が入力される。有効質量算出部32は、入力された力積信号及び車速信号に基づいて有効質量を算出し、算出結果を歩行者判定部34へ出力する。有効質量は、具体的には、有効質量[kg]=力積[N/s]/変換車速[km/h]×3.6によって算出する。なお、3.6は単位変換による値である。
【0038】
歩行者判定部34は、有効質量算出部32によって算出された有効質量が予め定めた閾値以上か否かを判定し、該判定が肯定された場合に衝突物が歩行者であると判別し、判定が否定された場合に衝突物が歩行者以外の路上固定物であると判別する。そして、判別結果を歩行者保護装置等の装置に出力するようになっている。
【0039】
続いて、上述のように構成された本発明の第1実施形態に係わる衝突検出装置10の衝突検出ECU26で行われる処理の流れについて説明する。図4は、本発明の第1実施形態に係わる衝突検出装置10の衝突検出ECU26で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0040】
まず、ステップ100では、圧力センサ24によって検出された圧力信号が衝突検出ECU26に入力されてステップ102へ移行する。
【0041】
ステップ102では、圧力チャンバ22の圧力変化があるか否かが衝突検出ECU26によって判定される。該判定は、圧力信号の検出結果に変化があるか否かを判定し、該判定が否定された場合にはステップ100に戻って圧力チャンバ22の圧力が再び検出され、判定が肯定された場合にはステップ104へ移行する。
【0042】
ステップ104では、圧力信号の時間積分が衝突検出ECU26によって検出されてステップ106へ移行する。すなわち、圧力チャンバ22へ加わる力積が算出される。
【0043】
ステップ106では、車速センサ28によって検出された車速信号が衝突検出ECU26に入力されてステップ108へ移行する。
【0044】
ステップ108では、車速信号が衝突検出ECU26によって補正されてステップ110へ移行する。すなわち、上述したように、車速センサ28によって検出された車速信号から予め定めた値を差分した変換車速信号が車速補正部30によって算出される。
【0045】
ステップ110では、衝突物の有効質量が衝突検出ECU26によって算出されてステップ112へ移行する。すなわち、車速補正部30によって補正された車速信号と、ステップ104で算出された力積信号と、に基づいて、衝突物の有効質量が有効質量算出部32によって算出される。
【0046】
ステップ112では、算出された有効質量が閾値以上か否か歩行者判定部34によって判定され、該判定が肯定された場合にはステップ114へ移行し、否定された場合にはステップ116へ移行する。
【0047】
ステップ114では、衝突物が歩行者であると判別しステップ118へ移行し、ステップ116では、衝突物が歩行者以外の路上固定物であると判別してステップ118へ移行する。なお、ステップ116では、衝突物が路上固定物と判別するが、路上固定物に限るものではなく、歩行者以外の物であると判別するようにしてもよい。
【0048】
ステップ118では、判別結果が歩行者保護装置等の装置へ出力されて一連の処理を終了する。
【0049】
すなわち、本実施形態では、車速信号を補正することにより、バンパカバー16と圧力チャンバ22との間の空間Sやアブソーバ20等による圧力センサ24の不感帯を補正するようにしている。これによって、歩行者等の衝突対象を正確に判別することが可能となる。
【0050】
図5は、車速信号を補正しない場合と、車速信号を補正した場合の衝突物の判別結果を説明するための図である。
【0051】
図5中の実線で示す実車速が車速信号を補正しないで衝突物を判別する際の閾値を表し、点線で示す変換車速が車速信号を補正して衝突物を判別する際の閾値を表す。また、図5中の車速25[km/h]、40[km/h]、55[km/h]のプロット及び実線は、車両の全ばらつきを評価したものである。また、図5中の一点鎖線で示す領域(オン衝突出力)が歩行者と判別する領域であり、点線で示す(オフ衝突出力)が歩行者以外と判別する領域である。
【0052】
図5に示すように、車速を補正しない場合には、車速25[km/h]、及び40[km/h]でばらつきによっては歩行者と判別する必要があるのに、歩行者以外と判別する可能性があったが、車速を補正することによって、ばらつきを含めて正確に衝突物を判別することができることがわかる。
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態に係わる衝突検出装置の衝突検出ECU26について説明する。図6(A)は、本発明の第2実施形態に係わる衝突検出装置10における衝突検出ECU26の機能を示す機能ブロック図である。
【0053】
第1実施形態では、衝突物を判別するための判別値を補正する方法として、車速を補正するようにしたが、本実施形態では、力積を補正すなわち圧力信号の時間積分値を補正するようしたものである。なお、第1実施形態と同一構成については同一符号を付して説明する。
【0054】
本実施形態の衝突検出ECU26は、力積補正部36、有効質量算出部32、及び歩行者判別部34の機能を備えている。
【0055】
力積補正部36には、圧力センサ24によって検出された圧力信号を時間積分した信号が力積信号として入力される。力積補正部36は、予め定めた力積補正マップ等を用いて力積信号に対して予め定めた値を加算した力積補正信号を求めて有効質量算出部32に出力するようになっている。
【0056】
力積補正マップは、力積信号に対して予め定めた値を加算した力積補正信号を求めるものであり、例えば、図6(B)に示すように、点線で示す実際の力積信号に対して、実線で示す力積補正信号を求めるマップを適用することができる。なお、力積補正マップとしては、力積信号に対する力積補正信号が予め記憶されたルックアップテーブルとしてもよいし、力積信号に対して予め定めた値を加算する演算式としてもよい。
【0057】
また、有効質量算出部32には、力積補正部36から力積補正信号が入力されると共に、車速センサ28によって検出された車速信号が入力される。有効質量算出部32は、入力された力積補正信号及び車速信号に基づいて有効質量を算出し、算出結果を歩行者判定部34へ出力する。有効質量は、具体的には、有効質量[kg]=力積補正値[N/s]/車速[km/h]×3.6によって算出する。なお、3.6は単位変換による値である。
【0058】
歩行者判定部34は、有効質量算出部32によって算出された有効質量が予め定めた閾値以上か否かを判定し、該判定が肯定された場合に衝突物が歩行者であると判別し、判定が否定された場合に衝突物が歩行者以外の路上固定物であると判別する。そして、判別結果を歩行者保護装置等の装置に出力するようになっている。
【0059】
続いて、上述のように構成された本発明の第2実施形態に係わる衝突検出装置10の衝突検出ECU26で行われる処理の流れについて説明する。図7は、本発明の第2実施形態に係わる衝突検出装置10の衝突検出ECU26で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、第1実施形態と同一処理については同一符号を付して説明する。
【0060】
まず、ステップ100では、圧力センサ24によって検出された圧力信号が衝突検出ECU26に入力されてステップ102へ移行する。
【0061】
ステップ102では、圧力チャンバ22の圧力変化があるか否かが衝突検出ECU26によって判定される。該判定は、圧力信号の検出結果に変化があるか否かを判定し、該判定が否定された場合にはステップ100に戻って圧力チャンバ22の圧力が再び検出され、判定が肯定された場合にはステップ104へ移行する。
【0062】
ステップ104では、圧力信号の時間積分が衝突検出ECU26によって検出されてステップ105へ移行する。すなわち、圧力チャンバ22へ加わる力積が算出される。
【0063】
ステップ105では、力積信号が衝突検出ECU26によって補正されてステップ106へ移行する。すなわち、上述したように、力積信号に対して予め定めた値を加算した力積補正信号が力積補正部36によって算出される。
【0064】
ステップ106では、車速センサ28によって検出された車速信号が衝突検出ECU26に入力されてステップ110へ移行する。
【0065】
ステップ110では、衝突物の有効質量が衝突検出ECU26によって算出されてステップ112へ移行する。すなわち、車速センサ28によって検出された車速信号と、力積補正部36によって補正された力積補正信号と、に基づいて、衝突物の有効質量が有効質量算出部32によって算出される。
【0066】
ステップ112では、算出された有効質量が閾値以上か否か歩行者判定部34によって判定され、該判定が肯定された場合にはステップ114へ移行し、否定された場合にはステップ116へ移行する。
【0067】
ステップ114では、衝突物が歩行者であると判別しステップ118へ移行し、ステップ116では、衝突物が歩行者以外の路上固定物であると判別してステップ118へ移行する。なお、ステップ116では、衝突物が路上固定物と判別するが、路上固定物に限るものではなく、歩行者以外の物であると判別するようにしてもよい。
【0068】
ステップ118では、判別結果が歩行者保護装置等の装置へ出力されて一連の処理を終了する。
【0069】
すなわち、本実施形態では、力積信号を補正することにより、バンパカバー16と圧力チャンバ22との間の空間Sやアブソーバ20等による圧力センサ24の不感帯を補正するようにしている。これによって、歩行者等の衝突対象を正確に判別することが可能となる。
【0070】
図8は、力積信号を補正しない場合と、力積信号を補正した場合の衝突物の判別結果を説明するための図であり、図8(A)は力積信号を補正しない場合を示し、図8(B)は力積信号を補正する場合を示す。また、図8中の車速25[km/h]、40[km/h]、55[km/h]のプロット及び実線は、車両の全ばらつきを評価したものである。また、図8中の一点鎖線で示す領域(オン衝突出力)が歩行者と判別する領域であり、点線で示す(オフ衝突出力)が歩行者以外と判別する領域である。
【0071】
力積信号を補正しない場合には、図8(A)に示すように、車速25[km/h]でばらつきによって歩行者と判別する必要があるのに、歩行者以外と判別する可能性があった。また、車速55[km/h]でばらつきによって歩行者以外と判別する必要があるのに、歩行者と判別する可能性があった。
【0072】
これに対して、力積を補正した場合には、図8(B)に示すように、ばらつきを含めて正確に衝突物を判別することができることがわかる。
【0073】
なお、上記の実施の形態では、衝突によってバンパカバー16が変形して圧力チャンバ22が変形する前にアブソーバ20が変形する構造としたが、フロントバンパ12の構造はこれに限るものではなく、バンパカバー16とチャンバ部材18との間に空間やアブソーバ20、或いは他の部材などが介在するものでもあればよい。例えば、アブソーバ20の形状をL字形状としてバンパカバー16とバンパリインフォースメント14間、及びバンパカバー16とチャンバ部材18間に配置するようにしてもよいし、他の形状のアブソーバ20を適用してもよい。
【0074】
また、上記の実施の形態では、衝突物の種類を判別するための判別値として有効質量を算出する場合を例に挙げて説明したが、判別値は有効質量に限るものではなく、例えば、衝突によって発生する力積をそのまま用いて衝突物の種類を判別するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 衝突検出装置
12 フロントバンパ
16 バンパカバー
18 チャンバ部材
20 アブソーバ
22 圧力チャンバ
24 圧力センサ
26 衝突検出ECU
28 車速センサ
30 車速補正部
32 有効質量算出部
34 歩行者判定部
36 力積補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両バンパ内に配設された圧力チャンバの圧力を検出する圧力検出手段と、
車速を検出する車速検出手段と、
前記圧力検出手段の検出結果及び前記車速検出手段の検出結果に基づいて衝突物の種類を判別するための判別値を算出する判別値算出手段と、
衝突によって車両バンパ表面が変形してから前記圧力チャンバが変形するまでに必要なエネルギに基づいて前記判別値を補正する補正手段と、
前記補正手段によって補正された前記補正値に基づいて衝突物の種類を判別する判別手段と、
を備えた衝突検出装置。
【請求項2】
前記補正手段は、車両バンパ表面が変形してから前記圧力チャンバが変形するまでに必要なエネルギに基づいて車速検出手段の検出結果を補正することによって前記判別値を補正する請求項1に記載の衝突検出装置。
【請求項3】
前記補正手段は、車両バンパ表面が変形してから前記圧力チャンバが変形するまでに必要なエネルギに基づいて前記圧力検出手段の検出結果を補正することによって前記判別値を補正する請求項1に記載の衝突検出装置。
【請求項4】
前記判別値算出手段は、前記圧力検出手段の検出結果及び前記車速検出手段の検出結果に基づいて衝突物の有効質量を前記判別値として算出する請求項1〜3の何れか1項に記載の衝突検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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