説明

衝突部材、粉体含有繊維ウエブ製造装置、粉体含有繊維ウエブの製造方法、及び粉体含有繊維ウエブ

【課題】 粉体が付着しにくい衝突部材、これを備えた粉体含有繊維ウエブ製造装置、前記装置を用いる粉体含有繊維ウエブの製造方法、及び前記装置により製造した粉体含有繊維ウエブを提供すること。
【解決手段】 本発明の衝突部材は、突起部と衝突部本体とを備えており、衝突部本体の上面・下面転換線よりも、衝突部本体表面に沿って5mm以上下面側の領域における衝突部材本体の表面が、セラミックスから構成されている。本発明の粉体含有繊維ウエブ製造装置は前記衝突部材を備えており、粉体含有繊維ウエブの製造方法はこの製造装置を用いる方法である。更に、粉体含有繊維ウエブはこの製造装置により製造した、粉体が均一に分散したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維及び粉体と衝突してこれらを分散させることのできる衝突部材、これを備えた粉体含有繊維ウエブ製造装置、前記装置を用いる粉体含有繊維ウエブの製造方法、及び前記装置により製造した粉体含有繊維ウエブに関する。
【背景技術】
【0002】
粉体を担持した粉体含有繊維ウエブは、粉体の形態が安定しない問題点を、繊維ウエブによって形態をもたせた、粉体の機能を発揮できるものである。そのため、粉体を繊維ウエブに担持させるために、様々な方法が提案されている。例えば、繊維ウエブで粉体を挟み込んだ後に、ニードルパンチなどで粉体を繊維間に物理的に閉じ込めて固定する方法、熱接着繊維を含む繊維ウエブで粉体を挟み込んだ後に、加熱処理により粉体と繊維や繊維間同士を接着する方法、湿式法により繊維と一緒に粉体を漉き込む方法、などが知られていた。しかしながら、物理的に閉じ込めるか、接着する方法によると、平均粒径が50μm以下の小粒径の粉体は、振動や衝撃によって脱離しやすく、平均粒径が50μmを越えるような比較的粒径の大きい粉体しか担持できないものであり、また、漉き込む方法によると、繊維や粉体を分散し、接着するために、界面活性剤や糊剤が添加されたスラリーを使用するため、これら界面活性剤や糊剤が粉体の表面を被覆してしまい、粉体本来の機能が失われ易いという欠点があった。
【0003】
そこで、本願出願人は粉体が本来の機能を失わないようにするために、極細短繊維の集合体を粉体と共に、圧縮気体の作用によりノズルから気体中に噴出させて、極細短繊維集合体を個々の極細短繊維に分割し、分散させるとともに、粉体を分散させ、続いて分散した極細短繊維及び粉体を集積して粉体含有繊維ウエブを形成する方法を提案した(特許文献1)。また、極細短繊維の集合体を粉体と共にノズルから噴出させた後、ノズル噴射口の前方に設けた衝突部材に衝突させることも提案した。
【0004】
また、この衝突部材として、本願出願人は、円錐状の突起部と平板状の衝突部とを備えたもの、平板状衝突部材、釣鐘状の衝突部材、円錐状の衝突部材、釣鐘状の突起部と平板状の衝突部とが一体化した衝突部材を例示した(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−235268号公報(請求項7、請求項11など)
【特許文献2】特開2003−268665号公報(段落番号0017)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような方法により粉体含有繊維ウエブを製造する場合、平均粒径の小さい粉体が脱落することがないように、極細短繊維及び粉体を集積する際に、コンベア等の捕集部材の上に目の細かい湿式不織布を載せておき、その上に粉体と極細短繊維とを集積し、更に、粉体含有繊維ウエブの粉体や極細短繊維の配置が乱れないように、集積した極細短繊維及び粉体の上に湿式不織布を載せた後に、乾燥機等により熱処理を実施し、粉体を繊維で融着固定した後に、前記2枚の湿式不織布を剥がして、融着固定した粉体含有繊維ウエブを製造していた。
【0007】
このようにして融着固定した粉体含有繊維ウエブを製造していたところ、粉体が存在しない箇所を有する融着固定した粉体含有繊維ウエブを製造する場合があった。その原因について本願発明者らが追求したところ、粉体含有繊維ウエブを形成する際に、衝突部材と衝突した粉体の一部が衝突部材に付着し、その付着量が一定量以上となると塊となって脱落してしまい、2枚の湿式不織布で挟んで熱処理を実施したとしても、粉体がその塊として存在する箇所には十分な量の繊維が存在しないため、湿式不織布を剥がした際に粉体の塊が脱落してしまうことがわかった。
【0008】
このような粉体が存在しない箇所を有する粉体含有繊維ウエブは、上述のような湿式不織布で挟み込む方法に限らず、別の製造方法であっても、十分な量の繊維が存在していないことによって生じるものであった。
【0009】
本発明はこのような問題を解決できる衝突部材、これを備えた粉体含有繊維ウエブ製造装置、前記装置を用いる粉体含有繊維ウエブの製造方法、及び前記装置により製造した粉体含有繊維ウエブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1にかかる発明は、「繊維及び粉体と衝突してこれらを分散させることのできる衝突部材であって、前記衝突部材は突起部と衝突部本体とを備えており、前記衝突部本体の下記に定義する上面・下面転換線よりも、衝突部本体表面に沿って5mm以上下面側の領域における衝突部材本体の表面が、セラミックスから構成されていることを特徴とする衝突部材。

上面・下面転換線:突起部の軸方向、かつ突起部側から見た時に、衝突部本体の輪郭を与える線」である。
【0011】
本発明の請求項2にかかる発明は、「アルミナ成分を10%以上含むセラミックスであることを特徴とする、請求項1記載の衝突部材。」である。
【0012】
本発明の請求項3にかかる発明は、「繊維及び粉体を噴出できるノズルと、前記ノズルへの圧縮気体導入手段と、前記ノズルの噴出口の前方に配置した請求項1又は請求項2に記載の衝突部材と、前記衝突部材を囲むとともに、前記衝突部材との衝突によって分散した繊維及び粉体を導く囲い部材と、前記囲い部材によって導かれた繊維及び粉体を捕集して粉体含有繊維ウエブを形成できる捕集部材、とを備えている粉体含有繊維ウエブ製造装置。」である。
【0013】
本発明の請求項4にかかる発明は、「請求項3に記載の粉体含有繊維ウエブ製造装置を用いる粉体含有繊維ウエブの製造方法。」である。
【0014】
本発明の請求項5にかかる発明は、「粉体として無機粉体を使用することを特徴とする、請求項4記載の粉体含有繊維ウエブの製造方法。」である。
【0015】
本発明の請求項6にかかる発明は、「請求項3に記載の粉体含有繊維ウエブ製造装置を用いて製造された粉体含有繊維ウエブ。」である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1にかかる発明は、衝突部材の粉体が付着しやすい箇所をセラミックスから構成することによって、粉体の付着量を少なくすることができる。このように、粉体の付着量を少なくすることができるため、粉体が塊となって脱落することを防ぐことができ、結果として粉体が存在しない箇所がない、粉体が均一に分散した粉体含有繊維ウエブを製造することができる。
【0017】
本発明の請求項2にかかる発明は、アルミナ成分を10%以上含むセラミックスであると、衝突部材への粉体付着量を極めて少なくすることができ、結果として粉体が存在しない箇所がない、粉体が均一に分散した粉体含有繊維ウエブを製造することができる。
【0018】
本発明の請求項3にかかる発明は、請求項1又は請求項2の衝突部材を使用したものであるため、粉体が存在しない箇所がない、粉体が均一に分散した粉体含有繊維ウエブを製造できる装置である。
【0019】
本発明の請求項4にかかる発明は、請求項3の製造装置を使用したものであるため、粉体が存在しない箇所がない、粉体が均一に分散した粉体含有繊維ウエブを製造できる方法である。
【0020】
本発明の請求項5にかかる発明は、粉体として無機粉体を使用している。無機粉体は衝突部材本体の表面を構成するセラミックスとの帯電列が近いため、無機粉体の付着量を更に少なくすることができ、粉体が存在しない箇所がない、粉体が均一に分散した粉体含有繊維ウエブを製造することができる。
【0021】
本発明の請求項6にかかる発明は、請求項3の製造装置により製造されたものであるため、粉体が存在しない箇所がない、粉体が均一に分散した粉体含有繊維ウエブである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の衝突部材について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は本発明の衝突部材を後述の突起部の軸を含む平面で切断した断面図であり、図2は本発明の衝突部材を突起部の軸方向、かつ突起部側から見た図である。これらの図における突起部1aは、突起部1a側から供給された繊維の開繊及び粉体を解す作用をし、衝突部本体1bの上面は供給された繊維及び粉体と衝突し、繊維の開繊と粉体を解す作用と、四方八方へ分散させる作用をする。図1、2の衝突部材1においては、突起部1aは円錐形状であり、衝突部本体1bはたて断面U字の釣鐘状である。このような衝突部材1に対して、突起部1a側から繊維及び粉体を供給し、衝突させてこれらを分散させようとすると、衝突部本体1bの湾曲部Cuから上面方向にかけて粉体が付着しやすいものであるが、図1、2の衝突部材1においては、上面・下面転換線Ltよりも衝突部本体表面に沿って5mm以上下面側の領域における衝突部材本体1bの表面がセラミックスCeから構成されているため、粉体の付着量を少なくすることができ、粉体の脱落を防止することができる。
【0024】
本発明における「上面・下面転換線」とは、突起部の軸方向、かつ突起部側から見た時に、衝突部本体の輪郭を与える線を意味する。また、「上面」とは衝突部本体における上面・下面転換線よりも突起部側表面を意味し、「下面」とは衝突部本体における上面・下面転換線よりも突起部の反対側表面を意味する。
【0025】
なお、本発明においては、図1に示すように、上面・下面転換線Ltから下面方向5mm程度までの領域においては、繊維及び粉体がスムーズに流れるため、衝突部本体表面に粉体が付着しにくいが、それよりも下面側においては、徐々に粉体量が多くなる傾向があったため、上面・下面転換線Ltよりも、衝突部本体1b表面に沿って5mm以上(好ましくは3mm以上、更に好ましくは1mm以上)下面側の領域における衝突部材本体1bの表面をセラミックスCeから構成している。しかしながら、上面・下面転換線Ltよりも下面側の領域における衝突部材本体の全表面がセラミックスから構成されていても良いし、衝突部材本体の上面・下面転換線Ltよりも上面側の一部又は全部の表面がセラミックスから構成されていても良いし、更には、突起部1aの一部又は全部の表面がセラミックスから構成されていても良い。このようなセラミックスは、例えば、溶射する方法、焼成する方法、切削加工する方法等により形成することができる。
【0026】
このセラミックスが、アルミナ成分を10%以上含む(より好ましくは15%以上含む)ものであると、衝突部材1への粉体付着量を極めて少なくすることができ、粉体が均一に分散した粉体含有繊維ウエブを製造できるため好適である。
【0027】
衝突部本体表面がセラミックスから構成されている領域以外の領域はどのような素材から構成されていても良く、特に限定するものではないが、例えば、ステンレススチール等から構成することができる。なお、突起部1aもセラミックス及び/又はステンレススチール等から構成することができる。
【0028】
図1、図2における衝突部材1は突起部1aが円錐形状で、衝突部本体1bが断面U字の釣鐘状であるが、この形状に限定されず、例えば、突起部は三角錐などの多角錘形状、釣鐘状(図3参照)、円錐の外壁面が軸方向に湾曲した円錐形状(図4参照)であることができ、衝突部本体は円錐状(図3参照)、三角錐などの多角錘形状、円柱状、三角柱などの多角柱、半球状(図4参照)、たて断面が長円又は楕円のみかん状(図5参照)、たて断面がホームベースのこま状(図6参照)、断面が半楕円又は半長円のにんじん状(図7参照)であることができる。
【0029】
本発明の粉体含有繊維ウエブ製造装置は、繊維及び粉体を噴出できるノズルと、前記ノズルへの圧縮気体導入手段と、前記ノズルの噴出口の前方に配置した前述の衝突部材と、前記衝突部材を囲むとともに、前記衝突部材との衝突によって分散した繊維及び粉体を導く囲い部材と、前記囲い部材によって導かれた繊維及び粉体を捕集して粉体含有繊維ウエブを形成できる捕集部材、とを備えている。このように、前述の衝突部材を使用しており、衝突部材に多量の粉体が付着し、塊となって脱落することがないため、粉体が均一に分散した粉体含有繊維ウエブを製造できる装置である。
【0030】
本発明の粉体含有繊維ウエブ製造装置について、図面を参照しながら説明する。図8は本発明の繊維ウエブ製造装置を、捕集部材に対して垂直かつ捕集部材の流れ方向と平行な平面で切断した時の模式的断面図であり、図9は本発明の繊維ウエブ製造装置を、捕集部材に対して垂直かつ捕集部材の幅方向と平行な平面で切断した時の模式的断面図である。これらの図から明らかなように、本発明の粉体含有繊維ウエブ製造装置10はノズル12、圧縮気体導入口13、衝突部材1、囲い部材15、及び捕集部材16とを備えている。
【0031】
図8におけるノズル12は供給された繊維及び粉体を、後述のような圧縮気体の作用によって、ノズル噴出口12aから後述のような囲い部材15で形成された空間へ噴出する。
【0032】
図8におけるノズル12は圧縮気体供給側(紙面上、上側)からノズル噴出口12aへ向かって、一定の横断面積を有するものであるが、本発明におけるノズルはこのようなノズルに限定されず、例えば、圧縮気体供給側からノズル噴出口12aへ向かって、連続的に又は不連続的に横断面積が小さく又は大きくなるノズルであっても使用することができる。特に、圧縮気体供給側からノズル噴出口12aへ向かって、連続的に横断面積が大きくなるノズルは、繊維及び粉体が詰まらず、繊維及び粉体を均一に分散させることができるため好適である。このようなノズルとして、ベンチュリー管を挙げることができる。
【0033】
このようなノズル12には、図8で示すように、圧縮気体導入口13が接続されている。そのため、圧縮気体導入手段によって、圧縮気体導入口13を介して圧縮気体を導入することによって、材料供給口11から繊維及び粉体をノズル12へ供給することができるとともに、ノズル12から繊維及び粉体が噴出された時の圧縮気体の膨張力によって、繊維が開繊され、個々の繊維に分散、及び粉体を解すことができる。この圧縮気体導入手段(図示していない)として、コンプレッサーを挙げることができる。この圧縮気体はどのような気体を利用しても良いが、空気を用いるのが製造上好適である。
【0034】
なお、圧縮気体導入手段によるノズル12への圧縮気体の供給が渦巻き状であると、繊維同士が絡み合い、繊維の分散性を低下させる傾向があるため、圧縮気体の流れが実質的に層流であるように、ノズル12へ圧縮気体を供給するのが好ましい。
【0035】
また、圧縮気体は繊維の開繊性、分散性及び粉体を解しやすいように、ノズル噴出口12aにおける気体通過速度が100m/sec以上であるように導入するのが好ましい。同様の理由で、圧縮気体の圧力は2kg/cm以上で導入するのが好ましい。更に、後述のような囲い部材15を設けることによって、囲い部材15の内壁に繊維や粉体が付着し、堆積しやすいため、囲い部材15の内壁は、内壁に沿って気流が滑らかに流れる形状と平滑性を備えていることが好ましい。長時間粉体含有繊維ウエブを製造すると、堆積物が脱落して、粉体含有繊維ウエブの地合いを損なう場合があるため、後述のような囲い部材15の捕集部材側端部15bにおける気体流速が1m/s以上であるように、圧縮気体を導入するのが好ましい。なお、この「ノズル噴出口における気体通過速度」は、ノズル12から噴出された気体の1気圧における流量(m/sec)を、ノズル噴出口12aの横断面積(m)で除した値をいい、「囲い部材の捕集部材側端部における気体流速」は、囲い部材15の捕集部材側端部15bからの気体流出量(m/sec)を、囲い部材15の捕集部材側端部15bの横断面積(m)で除した値をいう。
【0036】
前述のようなノズル噴出口12aの前方には、前述のような衝突部材1が配置されている。この衝突部材1が配置されていることによって、ノズル12から噴出された繊維及び粉体と衝突して、繊維の開繊及び分散並びに粉体を分散させる。つまり、突起部1aとの衝突による開繊と、その突起部1aの表面に沿って衝突部本体1bに到達した時の衝突により、繊維の開繊と繊維及び粉体の移動方向を変更させて繊維及び粉体を分散させる。
【0037】
このような衝突部材1は噴出された繊維及び粉体と衝突できるように、ノズル噴出口12aの前方に配置されていれば良いが、繊維の開繊性及び分散性並びに粉体の分散性に優れているように、突起部1aと衝突部本体1bとの接続部(図1におけるCo)とノズル噴出口12aとの最短距離が1〜100mmであるように設置するのが好ましく、5〜40mmであるように設置するのがより好ましく、5〜30mmであるように設置するのが更に好ましく、10〜30mmであるように設置するのが更に好ましく、10〜20mmであるように設置するのが最も好ましい。また、衝突部材1は繊維の開繊性及び分散性並びに粉体の分散性に優れているように、突起部1aがノズル噴出口12aと対向し、突起部1aの軸Aがノズル噴出口12aの中心と一致するように配置するのが好ましい。
【0038】
本発明の繊維ウエブ製造装置10においては、前述のような衝突部材1を囲むとともに、後述のような捕集部材16の方向へ伸びており、衝突部材1との衝突によって分散した繊維及び粉体を捕集部材16へ導く囲い部材15を配置している。本発明においては、この囲い部材15は衝突部材1によって分散した繊維及び粉体を捕集部材16へ導くことができるものであれば良く、特に限定するものではないが、衝突部材側端部15aにおける横断面形状と、捕集部材側端部15bにおける横断面形状が相違しているものを使用すると、繊維及び粉体を均一に分散させることができるため好適である。
【0039】
図8、9においては、衝突部材側端部15aにおける横断面形状が円形であり、捕集部材側端部15bにおける横断面形状が長方形である囲い部材15を使用している。このような囲い部材15においては、衝突部材1によって繊維及び粉体を四方八方に分散させることができるのに加えて、囲い部材15の横断面形状が円形から長方形に変化しているため、幅方向における目付を均一にすることが容易である。なお、このような囲い部材である必要はなく、衝突部材側端部15aにおける横断面形状が円形、楕円、或いは長円であり、捕集部材側端部15bにおける横断面形状が非円形である囲い部材を好適に使用できる。特に、衝突部材側端部15aにおける横断面形状が円形であり、捕集部材側端部15bにおける横断面形状が非円形である囲い部材が好ましい。より具体的には、(衝突部材側端部15aにおける横断面形状)−(捕集部材側端部15bにおける横断面形状)の組合せが、(円形)−(多角形)、(円形)−(長円)、(円形)−(楕円)、(楕円)−(多角形)、(楕円)−(長円)、(長円)−(多角形)、(長円)−(楕円)などを挙げることができる。
【0040】
このような囲い部材15は衝突部材1を囲っているが、その状態は特に限定するものではなく、衝突部材1による繊維及び粉体の分散を妨げないように適度な距離をおいて囲っていれば良い。この距離は実験を繰り返すことにより適宜設定することができる。また、囲い部材15は衝突部材1により分散する繊維及び粉体の飛散を防ぐために、ノズル12と連結しているのが好ましい。
【0041】
このような囲い部材15によって導かれた繊維及び粉体を捕集して粉体含有繊維ウエブを形成できるように、捕集部材16を備えている。この捕集部材16が移動可能であれば、連続的に粉体含有繊維ウエブを製造することができる。この捕集部材16は繊維及び粉体を捕集できるものであれば良く、特に限定するものではないが、図8及び図9においては、ネットを配置している。その他にも、多孔性ロール、無孔フィルム、無孔ロールなども使用することができる。これらの中でも、多孔性の捕集部材(ネット、多孔性ロールなど)は気体を透過させることができるため、粉体含有繊維ウエブの形成を安定して行なうことができ、しかも気体を吸引して繊維及び粉体を捕集することにより、地合いの優れる粉体含有繊維ウエブを形成することができるため好適である。つまり、捕集部材上の繊維や粉体の多い領域は圧力損失が高いため、繊維や粉体が少なく、圧力損失がより低い領域へ繊維や粉体が吸引されやすいため、地合いのより優れる粉体含有繊維ウエブを形成することができる。
【0042】
以上は本発明の繊維ウエブ製造装置10の基本的な構造であるが、前記構造に加えて、繊維や粉体の分散性を高めるために、ノズル12の手前に繊維や粉体をほぐす装置(例えば、ミキサー)を設置することができる。また、捕集部材16がネットや多孔性ロールなど、多孔性である場合には、捕集部材16の捕集面とは反対面側に繊維や粉体を吸引することのできる吸引装置(例えば、サクションボックス)を設置するのが好ましい。なお、図8、9の態様は、1つのノズル12に対して1つの囲い部材15を使用した態様であるが、2つ以上のノズルに対して1つの囲い部材を使用する態様であっても良い。また、図8、9の態様は、1つのノズル12と1つの囲い部材15からなる粉体含有繊維ウエブ製造装置10であるが、同様のノズルと囲い部材を2組以上、捕集部材16の幅方向に、及び/又は長さ方向に並べることもできる。この場合、幅の広い粉体含有繊維ウエブを製造することができたり、粉体含有繊維ウエブの生産性を高めることができる。更に、図8、9においては、囲い部材15の捕集部材側端部15bの横断面形状が長方形であり、その長辺方向を捕集部材16の幅方向と一致させる態様であるが、このように配置する必要はなく、長辺方向を捕集部材16の流れ方向と一致させるように配置しても、同様に地合いの優れる繊維ウエブを製造することができる。
【0043】
また、囲い部材15の捕集部材側端部15bと捕集部材16との相対的な位置を移動させることのできる手段(移動手段)を備えていることによって、地合いのより優れる粉体含有繊維ウエブを製造することができる。この移動手段は、例えば、囲い部材15の捕集部材側端部15bを繊維ウエブの流れ方向及び/又は巾方向に往復運動をさせたり、円又は楕円を描くように移動させたり、或いは捕集部材16を繊維ウエブの流れ方向及び/又は巾方向に往復運動させることができる。
【0044】
本発明の粉体含有繊維ウエブの製造方法は、上述の粉体含有繊維ウエブ製造装置10を使用した製造方法であるため、粉体が存在しない箇所がない、粉体が均一に分散した粉体含有繊維ウエブを製造できる方法である。
【0045】
より具体的には、まず、ノズル12へ繊維及び粉体を供給するとともに、前記ノズル12へ圧縮気体を導入して、ノズル12から繊維及び粉体を噴出させる。本発明において供給する繊維は特に限定されるものではないが、繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維、繊維径が4μmを超え、50μm以下であり、繊維長が10mm以下の太短繊維を使用するのが好ましい。
【0046】
本発明の製造方法で使用できる繊維はどのような成分から構成されていても良く、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ポリスチレン系樹脂(例えば、結晶性ポリスチレン、非晶性ポリスチレンなど)、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの有機成分、ガラス、炭素、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、酸化亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ワラストナイトなどの無機成分から構成することができる。
【0047】
なお、繊維が融着可能であると、繊維の融着によって粉体含有繊維ウエブに強度を付与できるため好適である。この融着可能な繊維は繊維表面を構成する成分の少なくとも一部が熱可塑性樹脂から構成されていれば良い。例えば、繊維表面を構成する成分が、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、結晶性ポリスチレン系樹脂などの結晶性の熱可塑性樹脂、或いはポリ塩化ビニル系樹脂、非晶性ポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などの非晶性の熱可塑性樹脂から構成されていれば良い。
【0048】
この融着可能な繊維が2種類以上の成分から構成されていると、1種類の成分が融着したとしても、少なくとも1種類の成分によって繊維形態を維持することができるため好適である。この2種類以上の成分から構成されている繊維の横断面形状は、例えば、芯鞘型、偏芯型、海島型、サイドバイサイド型、多重バイメタル型、オレンジ型であることができ、特に芯鞘型、偏芯型、或いは海島型であるのが好ましい。
【0049】
また、繊維は未延伸状態であることもできるが、強度的に優れているように、延伸状態にあるのが好ましい。この「延伸」とは、紡糸工程とは別の延伸工程(例えば、延伸ねん糸機による延伸工程)により延伸されていることをいう。例えば、メルトブロー法のように溶融押し出した樹脂に対して熱風を吹き付けて繊維化した繊維は、紡糸工程と延伸工程とが同じであるため延伸されていない。なお、海島型複合繊維の海成分を除去して製造した繊維は、海島型複合繊維が延伸されていれば、延伸された状態にある。
【0050】
なお、繊維は、例えば、規則正しく一定方向に繊維が配向した束状態、ランダムに配向した凝集状態にあっても、本発明の装置10を用いれば、開繊し、均一な地合いの粉体含有繊維ウエブを製造することができる。これらの中でも、束状態であると、後述の圧縮気体及び衝突部材の作用によって分散性しやすいため好適である。
【0051】
また、繊維径、繊維長、或いは成分の相違する繊維を2種類以上組み合わせて供給しても良い。また、経時変化に伴って、その配合量を変化させても良い。
【0052】
他方の粉体は、有機粉体、無機粉体、金属粉体、又は有機物と無機物との複合粉体(例えば、有機樹脂被覆無機粉体)などであることができ、用途によって適宜選択されるが、無機粉体であると、衝突部材本体の表面を構成するセラミックスとの帯電列が近く、無機粉体の付着量を更に少なくすることができるため好適である。例えば、粉体含有繊維ウエブをオゾン分解用途に使用する場合には、前記粉体として活性炭などを使用することができ、粉体含有繊維ウエブをイオン交換用途に使用する場合には、イオン交換樹脂粉体などを使用することができ、粉体含有繊維ウエブを触媒用途に使用する場合には、二酸化マンガン、白金、又は酸化チタンなどの触媒粉体などを使用することができ、粉体含有繊維ウエブを脱臭や消臭用途に使用する場合には、脱臭剤粉体や消臭剤粉体などを使用することができ、粉体含有繊維ウエブを繊維強化プラスチック(FRP)やシート状プリプレグ(sheet molding compound;SMC)などの用途に使用する場合には、熱接着性樹脂粉体などを使用することができ、粉体含有繊維ウエブを船や浴槽などの繊維強化プラスチック(オーバーレイ)などの用途に使用する場合には、熱硬化性樹脂粉体などを使用することができ、あるいは粉体含有繊維ウエブを耐火ボードに使用する場合には、無機粉体などを使用することができる。
【0053】
なお、粉体として、例えば、熱融着性樹脂粉体(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)、熱硬化性樹脂粉体(例えば、熱硬化性ポリエチレンテレフタレート、フェノール樹脂)、無機粉体(例えば、ガラス)、金属粉体(例えば、亜鉛、アルミニウム、錫など)を含んでいると、これら粉体の接着作用によって粉体を粉体含有繊維ウエブに確実に固着することができる。また、粉体表面の一部として熱融着性樹脂を含んでいると、この熱融着性樹脂の融着によって、粉体を粉体含有繊維ウエブに確実に固着することができる。
【0054】
本発明の粉体含有繊維ウエブにおいて、前述のような極細短繊維を使用すると、従来は脱落しやすかった平均粒径が50μm以下の粉体であっても脱落することなく保持することができる。この粉体は繊維によって保持されているため、繊維の直径によって保持できる粉体も変化する。すなわち、保持すべき粉体の平均粒径に応じて、適切な繊維径を有する繊維を選択する必要がある。例えば、繊維径と最適な粉体の平均粒径との関係は表1のようになる。なお、粉体の平均粒径が50μmを越えていても、前述のような繊維によって粉体を保持することができる。本発明における粉体の「平均粒径」は、コールターカウンター法により得られる値をいう。
【0055】
【表1】

【0056】
このような繊維と粉体との質量比率は、粉体の平均粒径、比重、あるいは繊維径などによって異なるが、繊維の質量比率が40mass%以下であれば、平均粒径50μm以下の粒径の小さい粉体であっても脱落しないように保持することができ、20mass%以下でも殆ど粉体が脱落しない粉体含有繊維ウエブを製造でき、10mass%以下でも実用上問題なく、かつ実用上取り扱いの際の強度的にも問題ない粉体含有繊維ウエブを製造することができる。他方、繊維の質量比率が1mass%以上であれば、粉体が脱落しにくく、実用的な取り扱い強度を有する。なお、繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維の比率が高ければ高い程、前記効果に優れているため、繊維として極細短繊維を20mass%以上含んでいるのが好ましく、50mass%以上含んでいるのがより好ましく、100mass%極細短繊維からなるのが最も好ましい。
【0057】
このような繊維及び粉体のノズル12への供給は、ノズル12への圧縮気体の導入によって行なわれる。この圧縮気体は繊維同士が絡みにくいように、圧縮気体の流れが実質的に層流であるように、ノズル12へ供給するのが好ましい。また、繊維の開繊及び分散性並びに粉体の分散性を高めることができるように、ノズル噴出口12aにおける気体通過速度が100m/sec以上であるように導入するのが好ましい。同様の理由で、圧縮気体の圧力は2kg/cm以上で導入するのが好ましい。更に、囲い部材15の内壁に繊維や粉体が付着しにくいように、囲い部材15の捕集部材側端部15bにおける気体流速が1m/s以上であるように、圧縮気体を導入するのが好ましい。
【0058】
この繊維と粉体とを噴出する工程においては、圧縮気体の作用によって、繊維及び粉体をノズル12から勢いよく噴出させる。この噴出させた時の圧縮気体の膨張力、ノズル12の内部とノズル12の外部との気圧差などの相互作用によって、繊維は個々の繊維に開繊され、分散し、粉体は解される。
【0059】
次いで、ノズル噴出口12aの前方に位置する衝突部材1に、ノズル12から噴出させた繊維及び粉体を衝突させて、繊維及び粉体を分散させる。つまり、噴出された繊維及び粉体は、まず突起部1aと衝突して繊維が開繊され、分散し、粉体が解された状態で、その突起部1aの表面に沿って衝突部本体1bの突起部1aとの接続面へ到達し、この接続面と衝突して、更に繊維が開繊され、繊維が解されると同時に繊維及び粉体の移動方向が変更させられて、四方八方に分散する。本発明においては、この衝突部材1として、前述のような衝突部材を用いており、衝突部材に粉体が付着しにくいため、粉体が塊となって脱落することを防ぐことができ、結果として、粉体が均一に分散した粉体含有繊維ウエブを製造することができる。
【0060】
このような衝突部材1によって分散させた繊維及び粉体を、衝突部材1を囲むとともに、捕集部材方向へ伸びる囲い部材15により、捕集部材16へ導く。このように囲い部材15によって繊維及び粉体の移動経路が規制されているため、繊維及び粉体は確実に捕集部材16へ導かれる。
【0061】
そして、この囲い部材15によって導かれた繊維及び粉体は捕集部材16上に集積し、粉体含有繊維ウエブとなる。この繊維や粉体は直接捕集部材16上に集積させても良いが、粉体が脱落しにくいように、捕集部材16の上に支持体(例えば、目の細かい湿式不織布)を載せておき、その上に粉体と繊維とを集積しても良い。
【0062】
なお、ネットや多孔性ロールなどの多孔性の捕集部材16を使用し、捕集部材16の捕集面と反対面から気体を吸引すると、粉体含有繊維ウエブの形成を安定して行なうことができ、しかも地合いの優れる粉体含有繊維ウエブを形成することができる。この吸引する際の吸引力は所望とする粉体含有繊維ウエブによって適宜調節することができるが、圧縮気体のノズル噴出口12aからの噴出風量に対して、1.1倍以上、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.3倍以上の風量で吸引すると、地合いのより優れる粉体含有繊維ウエブを製造できる。なお、上限は特に限定するものではないが、前記噴出風量の3倍以下であるのが経済的である。
【0063】
また、捕集部材16が移動可能であると、連続的に繊維ウエブを製造することができる。その移動速度は所望とする粉体含有繊維ウエブの目付、使用繊維、ノズル等の能力等によって適宜調節することができる。例えば、高目付の粉体含有繊維ウエブを製造する場合には捕集部材16の移動速度を遅くし、低目付の粉体含有繊維ウエブを製造する場合には捕集部材16の移動速度を速くする。
【0064】
なお、繊維及び粉体を捕集部材16で集積する際に、囲い部材15の捕集部材側端部15bと捕集部材16との相対的な位置を移動させると、地合いのより優れる粉体含有繊維ウエブを製造することができる。この移動として、例えば、囲い部材15の捕集部材側端部15bの粉体含有繊維ウエブの流れ方向及び/又は巾方向の往復運動、円移動又は楕円移動、或いは捕集部材16の繊維ウエブの流れ方向及び/又は巾方向の往復運動などを挙げることができる。
【0065】
このように製造した粉体含有繊維ウエブは繊維に粉体が付着しているものの、強固に固定された状態にはなく、脱落しやすいものであり、また、繊維同士も結合しておらず、機械的強度の弱いものであるため、粉体含有繊維ウエブを結合するのが好ましい。この結合方法は特に限定するものではないが、例えば、繊維及び/又は粉体を融着する方法、エマルジョンやラテックスなどのバインダーにより接着する方法、などを単独で、或いは併用して結合することができる。これらの方法によれば、嵩高な粉体含有繊維ウエブとすることができる。なお、繊維及び/又は粉体を融着する場合、粉体含有繊維ウエブを構成する粉体や繊維の配置が乱れないように、集積した繊維及び粉体の上にカバー材(例えば、湿式不織布)を載せた後に、乾燥機等により熱処理を実施し、融着固定しても良い。
【0066】
本発明の粉体含有繊維ウエブは、上述のような方法で製造されたものであるため、粉体が均一に分散したものであり、粉体の有する各種特性を利用する分野に用いることができる。例えば、電子写真装置用、トイレ用脱臭用、又はオゾン発生装置用などのオゾン分解用シート;イオン交換水精製機などのイオン交換用シート;自動車用、又は化学反応装置用などの触媒用シート;生活用品用、生理用品用、フィルタ用、又は靴用などの脱臭又は消臭シート;繊維強化プラスチック(FRP)やシート状プリプレグ(SMC);あるいは耐火ボードなどの各種用途に使用することができる。粉体含有繊維ウエブは各種用途に適合するように、各種後処理が施されていても良い。例えば、帯電処理、スルホン化処理、フッ素ガス処理などの親水化処理、プラズマ処理などの放電処理、撥水処理などを挙げることができる。
【0067】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
(極細短繊維Aの準備)
ポリ乳酸からなる海成分中に、高密度ポリエチレンとポリプロピレンとからなる島成分が25個存在する、複合紡糸法により得た海島型複合短繊維(繊度:1.7dtex、切断長:1mm)を用意した。この海島型複合短繊維を10mass%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、海成分であるポリ乳酸を加水分解により抽出除去した後、風乾して、高密度ポリエチレンとポリプロピレンとが混在した極細短繊維A(繊維径:2μm、繊維長:1mm、フィブリル化していない、延伸されている、断面形状:海島型)の束状集合体を得た。
【0069】
(極細短繊維Bの準備)
ポリ乳酸からなる海成分中に、ポリプロピレンからなる島成分が25個存在する、複合紡糸法により得た海島型複合短繊維(繊度:1.7dtex、切断長:1mm)を用意した。この海島型複合短繊維を10mass%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、海成分であるポリ乳酸を加水分解により抽出除去した後、風乾して、ポリプロピレンからなる極細短繊維B(繊維径:2μm、繊維長:1mm、フィブリル化していない、延伸されている、断面形状:円形)の束状集合体を得た。
【0070】
(粉体Aの準備)
粉体Aとして、コロイダルシリカ(ゲルタイプ、平均粒径:7μm、東ソーシリカ(株)製)を準備した。
【0071】
(粉体Bの準備)
粉体Bとして、フュームドシリカ(平均粒径:12nm、日本アエロジル(株)製)を準備した。
【0072】
(粉体Cの準備)
粉体Cとして、γアルミナ(平均粒径:10nm、大明化学工業(株)製)を準備した。
【0073】
(粉体Dの準備)
粉体Dとして、低密度ポリエチレンパウダー(平均粒径:6μm、住友精化(株)製)を準備した。
【0074】
(衝突部材Aの準備)
衝突部材Aとして、突起部(高さ:10mm)及び衝突部本体(高さ:30mm)がセラミックス(アルミナ成分:16%)からなり、図1に示すような形状を有するものを準備した。つまり、突起部1aが円錐形状で、衝突部本体1bが断面U字の釣鐘状の衝突部材Aを準備した。なお、この衝突部材Aはセラミックスを切削加工して製造した。
【0075】
(衝突部材Bの準備)
衝突部材Bとして、突起部(高さ:10mm)がステンレススチールからなり、衝突部本体(高さ:30mm)の上面・下面転換線Ltから衝突部本体表面に沿って5mmまでの領域がステンレススチールからなり、上面・下面転換線Ltよりも衝突部本体表面に沿って5mm以上下面側の領域がセラミックス(アルミナ成分:16%)からなり、図1に示すような形状を有するものを準備した。つまり、突起部1aが円錐形状で、衝突部本体1bが断面U字の釣鐘状の衝突部材Bを準備した。なお、この衝突部本体1bのセラミックス領域はセラミックスを切削加工して製造した。
【0076】
(衝突部材Cの準備)
衝突部材Cとして、突起部(高さ:10mm)がステンレススチールからなり、衝突部本体(高さ:30mm)の上面・下面転換線Ltから衝突部本体表面に沿って20mmまでの領域がステンレススチールからなり、上面・下面転換線Ltよりも衝突部本体表面に沿って20mm以上下面側の領域がセラミックス(アルミナ成分:16%)からなり、図1に示すような形状を有するものを準備した。つまり、突起部1aが円錐形状で、衝突部本体1bが断面U字の釣鐘状の衝突部材Cを準備した。なお、この衝突部本体1bのセラミックス領域はセラミックスを切削加工して製造した。
【0077】
(衝突部材Dの準備)
衝突部材Dとして、突起部(高さ:10mm)及び衝突部本体(高さ:30mm)がステンレススチールからなり、図1に示すような形状を有するものを準備した。つまり、突起部1aが円錐形状で、衝突部本体1bが断面U字の釣鐘状の衝突部材Dを準備した。
【0078】
(実施例1〜8及び比較例1〜8)
図8、9に示すような粉体含有繊維ウエブ製造装置10を用いて、粉体含有繊維ウエブを製造した。
【0079】
つまり、極細短繊維Aの束状集合体と極細短繊維Bの束状集合体とを1対1の質量比で混合した極細短繊維混合物と、粉体A〜Dとを、それぞれ1対2の質量比で混合した繊維粉体混合物を、それぞれミキサーに供給して解すとともに混合する一方で、ノズル噴出口12aにおける横断面形状が円形(直径:8.5mm)のベンチュリー管へ、コンプレッサーから圧縮気体導入口13を通じて圧縮空気(圧力=6kg/cm、実質的に層流)を導入することにより、前記繊維粉体混合物を材料供給口11からベンチュリー管へそれぞれ供給し、ベンチュリー管から極細短繊維A又はその集合体、極細短繊維B又はその集合体、及び粉体A〜Dを空気中にそれぞれ噴出(ベンチュリー管の噴出口における気体通過速度:147m/s、噴出口からの噴出量:約0.5m/min.)し、ベンチュリー管の噴出口前方に設けた、衝突部材A〜Dにそれぞれ衝突させて、極細短繊維A、極細短繊維B及び粉体A〜Dを分散させた(粉体と衝突部材との組み合わせは表1に示す通り)。なお、突起部1aと衝突部本体1bとの接続部(図1におけるCo)とノズル噴出口12aとの最短距離が15mmであり、しかも突起部1aの軸Aが、ノズル噴出口12aの中心と一致し、突起部1aの頂点がノズル噴出口12aと対向するようにそれぞれ配置した。
【0080】
次いで、この分散させた極細短繊維A、極細短繊維B及び粉体A〜Dを、前記衝突部材1を囲むとともにベンチュリー管と連結しており、極細短繊維A、極細短繊維B及び粉体A〜Dを集積できるネットの方向へ直線状に伸びている囲い部材15により、ネット(捕集部材16)へそれぞれ供給し、移動するネット上に載置しておいたポリエチレンテレフタレート繊維からなる湿式不織布(目付:10g/m、平均繊維径:3.2μm)上に集積させて、粉体含有繊維ウエブ−湿式不織布集積体をそれぞれ得た。なお、ネットの下方に配置したサクションボックスにより、0.7m/min.で吸引した。また、囲い部材15は衝突部材側端部15aにおける横断面形状が円形(内径:50mm、断面積19.6cm)で、捕集部材側端部15bにおける横断面形状が長方形(30mm×60mm、断面積:18cm)で、横断面形状が連続的に変化したものを使用した。また、ノズル噴出口12aから囲い部材15の捕集部材側端部15bまでの距離は8cmであり、囲い部材15の捕集部材側端部15bにおける空気流速は4.6m/sであった。更に、この囲い部材15の捕集部材側端部15bは、長方形の長辺がネットの幅方向と平行であるように配置した。
【0081】
そして、前記粉体含有繊維ウエブ−湿式不織布集積体の粉体含有繊維ウエブ上に、更にポリエチレンテレフタレート繊維からなる湿式不織布(目付:10g/m、平均繊維径:3.2μm)をそれぞれ積層した後、温度130℃に設定したオーブンへ供給し、3分間熱処理を実施して、極細短繊維Aの高密度ポリエチレン成分によって融着させ、粉体含有繊維ウエブ−湿式不織布複合体をそれぞれ製造した。その後、粉体含有繊維ウエブ−湿式不織布複合体から両側の湿式不織布を剥離して、融着した粉体含有繊維ウエブをそれぞれ製造した。これら融着した粉体含有繊維ウエブにおける粉体の分散状況、及び粉体含有繊維ウエブ−湿式不織布集積体形成時における衝突部材への粉体の付着状況は、表1に示す通りであった。
【0082】
表1から、本発明の衝突部材を使用した粉体含有繊維ウエブは粉体が均一に分散しており、品位の優れるものであった。


【0083】
【表2】

#1:A・・湾曲部、側壁のいずれにも粉体の付着がないか、わずかであるため、粉体が堆積して落下する現象は観察されず
C・・湾曲部及び/又は側壁に粉体が付着し、付着した粉体が堆積して大きな塊となって落下する現象を繰り返した
#2:A・・粉体が均一に分散しており、品位が優れている
C・・粉体の存在しない箇所が点在し、品位が悪い
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の衝突部材を突起部の軸を含む平面で切断した断面図
【図2】本発明の衝突部材を突起部の軸方向、かつ突起部側から見た図
【図3】本発明の別の衝突部材を突起部の軸を含む平面で切断した断面図
【図4】本発明の更に別の衝突部材を突起部の軸を含む平面で切断した断面図
【図5】本発明の更に別の衝突部材を突起部の軸を含む平面で切断した断面図
【図6】本発明の更に別の衝突部材を突起部の軸を含む平面で切断した断面図
【図7】本発明の更に別の衝突部材を突起部の軸を含む平面で切断した断面図
【図8】本発明の粉体含有繊維ウエブ製造装置を、捕集部材に対して垂直かつ捕集部材の流れ方向と平行な平面で切断した時の模式的断面図
【図9】本発明の粉体含有繊維ウエブ製造装置を、捕集部材に対して垂直かつ捕集部材の幅方向と平行な平面で切断した時の模式的断面図
【符号の説明】
【0085】
1 衝突部材
1a 突起部
1b 衝突部本体
Lt 上面・下面転換線
Ce セラミックス
Cu 湾曲部
Co 突起部と衝突部本体との接続部
A 突起部の軸
10 粉体含有繊維ウエブ製造装置
11 材料供給口
12 ノズル
12a ノズル噴出口
13 圧縮気体導入口
15 囲い部材
15a 衝突部材側端部
15b 捕集部材側端部
16 捕集部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維及び粉体と衝突してこれらを分散させることのできる衝突部材であって、前記衝突部材は突起部と衝突部本体とを備えており、前記衝突部本体の下記に定義する上面・下面転換線よりも、衝突部本体表面に沿って5mm以上下面側の領域における衝突部材本体の表面が、セラミックスから構成されていることを特徴とする衝突部材。

上面・下面転換線:突起部の軸方向、かつ突起部側から見た時に、衝突部本体の輪郭を与える線
【請求項2】
アルミナ成分を10%以上含むセラミックスであることを特徴とする、請求項1記載の衝突部材。
【請求項3】
繊維及び粉体を噴出できるノズルと、前記ノズルへの圧縮気体導入手段と、前記ノズルの噴出口の前方に配置した請求項1又は請求項2に記載の衝突部材と、前記衝突部材を囲むとともに、前記衝突部材との衝突によって分散した繊維及び粉体を導く囲い部材と、前記囲い部材によって導かれた繊維及び粉体を捕集して粉体含有繊維ウエブを形成できる捕集部材、とを備えている粉体含有繊維ウエブ製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の粉体含有繊維ウエブ製造装置を用いる粉体含有繊維ウエブの製造方法。
【請求項5】
粉体として無機粉体を使用することを特徴とする、請求項4記載の粉体含有繊維ウエブの製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載の粉体含有繊維ウエブ製造装置を用いて製造された粉体含有繊維ウエブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−115505(P2008−115505A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302009(P2006−302009)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】