説明

衣料用洗浄剤組成物

【課題】高い洗浄力を示すだけではなく、陽イオン界面活性剤を繊維上に効率的に吸着させ、高い抗菌性や柔軟性を示す衣料用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)下記一般式(1)で示される非イオン界面活性剤、(b)特定の要件の陽イオン界面活性剤、及び(c)陰イオン界面活性剤を含有し、(a)/〔(b)+(c)〕の質量比が1〜10、(c)/(b)〕の質量比が0.1〜10である、衣料用洗浄剤組成物。
1O−(C24O)mH (1)
〔式中、R1は炭素数8〜22の直鎖1級アルキル基であり、mは平均付加モル数であって、mは20≦m≦50の数である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類、シーツ、タオル等の衣料用の繊維製品に好適な洗浄剤組成物、特には該繊維製品の水洗いに用いられる洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料用の洗浄剤は高い洗浄力が求められているため、一般的に非イオン界面活性剤や陰イオン界面活性剤が幅広く用いられている。しかし近年消費者の嗜好は多様化し、洗浄剤には洗浄力だけではなく抗菌性や柔軟性に代表されるような仕上がり性などといった付加価値が求められるようになってきたが、このような機能を発現させるためには陽イオン界面活性剤を効率的に繊維上に吸着させることが重要である。
【0003】
しかしながら、一般的に陽イオン界面活性剤は、洗浄力を高めるために配合されているその他の界面活性剤の働きにより、繊維上よりも洗浄液中に多く分配するため、効率的に繊維上に吸着させることは非常に困難である。また吸着量を上げるために陽イオン界面活性剤を多量に配合した場合、洗浄力は著しく低下する恐れがある。
【0004】
特許文献1〜5には、4級アンモニウム塩を含む柔軟液体洗浄剤が記載されている。このうち特に特許文献4には、エチレンオキシ基が15〜30のポリオキシエチレンアルキルエーテルと陽イオン界面活性剤を含有する洗浄力及び柔軟性に優れる洗浄剤が開示されているが、高温での洗浄を意図したものであるため、曇点を上げるために高付加モル数のエチレンオキシ基を有する非イオン界面活性剤を用いているものと思われる。特許文献5には、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、分岐アルコールのエチレンオキシ基を5〜25モル付加した非イオン界面活性剤が記載されている。また特許文献6には、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び無機塩を含有する皮脂除去剤組成物が開示されている。その技術は主に皮膚表面の皮脂を除去することでにきびなどの予防に関する発明であるが、その応用技術として実施例には、エチレンオキシ基の平均付加モル数が20又は25のポリオキシエチレンラウリルエーテルを配合する衣料用プリケア剤と衣料用洗浄剤の配合例が記載されている。また、特許文献7には、特定のノニオン界面活性剤、特定のカチオン界面活性剤、特定の溶剤を含有する、衣類に塗布した時の浸透性が低温においても良好で、泥汚れ塗布洗浄力に優れた液体洗浄剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−217585号公報
【特許文献2】特開平1−132691号公報
【特許文献3】特開昭62−70498号公報
【特許文献4】特開昭61−66796号公報
【特許文献5】特開昭62−223299号公報
【特許文献6】特開2000−128757号公報
【特許文献7】特開2001−187900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の特許文献1〜7では、洗浄力を低下させることなく、効果的に陽イオン界面活性剤を効率的に繊維製品表面に残留させることは出来ず、抗菌性や仕上がり性を完全に満足する物ではなかった。特許文献7のようにエチレンオキサイド付加型の非イオン性界面活性剤を陽イオン界面活性剤と組み合わせて所定の効果を得るためには、付加モル数の分布等の制御が必要となる。
【0007】
本発明の課題は、高い洗浄力を示すだけではなく、陽イオン界面活性剤を繊維上に効率的に吸着させ、高い抗菌性や柔軟性を示す洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、新たな視点から、陽イオン界面活性剤を効果的に繊維に残留させる一方で、洗浄力にも優れる洗浄剤を検討することを行った。その結果、驚くべき事に、従来、親水性が強すぎるため、界面への働きが弱く洗浄力が期待できないと考えられてきたエチレンオキシ基の付加モル数が多い非イオン界面活性剤を陽イオン界面活性剤と併用すると、該非イオン界面活性剤がエチレンオキシ基の短い、洗浄性に適した非イオン界面活性剤と同等の洗浄力をしかも温度が40℃以下の水において発揮することを見出し、更に陽イオン界面活性剤が効果的に繊維に付着し易くなることを新たに見出し本発明を達成するに至った。
【0009】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有する衣料用洗浄剤組成物であって、(a)/〔(b)+(c)〕の質量比が1〜10であり、(c)/(b)〕の質量比が0.1〜10である、衣料用洗浄剤組成物を提供する。
(a)成分:下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤
1O−(C24O)mH (1)
〔式中、R1は炭素数8〜22の直鎖1級アルキル基であり、mは平均付加モル数であって、20≦m≦50の数である。〕
(b)成分:窒素原子に結合する基として、途中にエーテル結合、エステル結合もしくはアミド結合又はフェニレン環を有してもよい炭素数6〜22(但し、エーテル結合、エステル結合もしくはアミド結合又はフェニレン環の炭素数は除く)のアルキル基又はアルケニル基を1つ又は2つ有し、残りがヒドロキシ基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基である陽イオン界面活性剤、及び炭素数6〜22の炭化水素基が窒素原子に結合したピリジニウム型陽イオン界面活性剤から選ばれる陽イオン界面活性剤
(c)成分:陰イオン界面活性剤
【0010】
本発明者らは、前記したように、エチレンオキシ基の平均付加モル数が20以上であるこのような非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び陰イオン界面活性剤を併用することで十分な洗浄力が得られることを見出した。これはこのように親水性の高い非イオン界面活性剤に、陽イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤とを特定比率で添加することにより界面活性剤系全体の親疎水性が変化し、洗浄に適切な状態になるためであると考えられる。
【0011】
またエチレンオキシ基の平均付加モル数が25以上、特には30以上の非イオン界面活性剤は親水性が高いため、陽イオン界面活性剤及び陰イオン界面活性剤と混合ミセルを形成した場合でも、その相互作用が比較的弱く、混合ミセルが繊維と接触した場合、容易に陽イオン界面活性剤を繊維上に吸着させ、非イオン界面活性剤は分離することが出来る。これにより陽イオン界面活性剤を効率的に繊維上に吸着できるようになる。
【0012】
一般的に非イオン界面活性剤のエチレンオキシ基の平均付加モル数が多くなると洗浄力が低下する傾向にあり、これまで20を超える非イオン界面活性剤は衣料用の洗浄剤用途にほとんど使われることがなかった。その理由として、親水性が高まることで繊維に作用するよりも、水中への分散力が高まるためであることが考えられていた。本発明はこのような技術常識からは予測できない効果をもたらしたものである。なお、エチレンオキシ基の平均付加モル数が低い一般的な非イオン界面活性剤を陽イオン界面活性剤と併用した場合、陽イオン界面活性剤の繊維製品に対する抗菌性や柔軟性といった効果を十分に発揮することができない。洗浄力が期待できるエチレンオキシ基の平均付加モル数を有する非イオン界面活性剤は陽イオン界面活性剤ときわめて強い混合ミセルを形成する傾向にあるため、結果として洗浄液中に陽イオン界面活性剤が多く分布することになり、洗浄過程で布上に吸着しにくくなるだけではなく、すすぎ工程で残留した非イオン界面活性剤により繊維上から容易に洗い流されてしまうため、陽イオン界面活性剤を効率的に繊維に吸着させることは困難であると考えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の衣料用洗浄剤組成物は、洗浄力に優れるだけではなく、機能性成分である陽イオン界面活性剤が洗濯物繊維上に効率的に吸着し、抗菌性や柔軟性などの高い仕上がり性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<(a)成分>
(a)成分の一般式(1)中、R1は炭素数8〜22の直鎖1級アルキル基であり、好ましくは炭素数8〜18、より好ましくは10〜16の直鎖1級アルキル基である。(a)成分に関しての直鎖1級アルキル基とは、酸素原子に結合するR1の炭素原子が第1炭素原子であることを意味する。このようなアルキル基は、天然油脂由来の脂肪族アルコールを原料として用いることで得ることができる。一般式(1)中のR1−O−の酸素原子に結合するR1の炭素原子が第1炭素原子であるものは、第2炭素原子による化合物や分岐アルキル基を有する化合物よりも洗浄力に優れる。
【0015】
一般式(1)の化合物を得る方法は、特に限定されるものではないが、炭素数8〜22の直鎖1級アルコールにエチレンオキシドを付加反応することによって得ることができる。
【0016】
一般式(1)中のmはR1OHに対して付加反応させたエチレンオキシドの割合あるいは付加反応後のエチレンオキシ基(以下、EO基という場合もある)の平均付加モル数のいずれであってもよく、mは(b)成分の効果を十分に発揮させること及び洗浄性能の点から下限値は、20以上、好ましくは25以上、より好ましくは30以上であって、上限値は50以下、好ましくは45以下、より好ましくは40以下である。
【0017】
本発明は、(a)成分のエチレンオキシ基の平均付加モル数が大きい点に特徴があり、(b)成分の繊維製品への付着性を促進させ殺菌性や柔軟性を高めることができる。
【0018】
(a)成分の製造に関して、R1−OHのアルコキシル化に用いられる触媒は塩基触媒、酸触媒が挙げられる。このうち特に、コストの面から塩基触媒を使用することが好ましく、塩基として水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムがより好ましく、水酸化カリウムを使用することが最も好ましい。
【0019】
水酸化カリウムを触媒として使用する場合の製造条件の一例を以下に示す。まず原料となる炭素数8〜18の飽和もしくは不飽和の高級アルコール(R1−OHで表される化合物)に水酸化カリウムを仕込んだ後、窒素置換し、100〜110℃、1〜7kPaで30分〜1時間脱水を行う。次いで100〜170℃、0.3〜0.6MPaでエチレンオキシドの付加を行い、添加した水酸化カリウムと当モル量の酸剤(酢酸、乳酸、グリコール酸等)で中和することによって得られる。
【0020】
(a)成分の配合量は、洗浄力の観点から、本発明の衣料用洗浄剤組成物中、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは15〜35質量%である。
【0021】
<(b)成分>
本発明の(b)成分は、窒素原子に結合する基として、途中にエーテル結合、エステル結合もしくはアミド結合又はフェニレン環を有してもよい炭素数6〜22(但し、エーテル結合、エステル結合もしくはアミド結合又はフェニレン環の炭素数は除く)のアルキル基又はアルケニル基を1つ又は2つ有し、残りが炭素数1〜3のヒドロキシ基を有してもよいアルキル基又はベンジル基である陽イオン界面活性剤、及び炭素数6〜22の炭化水素基が窒素原子に結合したピリジニウム型陽イオン界面活性剤から選ばれる陽イオン界面活性剤である。
【0022】
(b)成分が主として抗菌剤として用いられる場合、通常市販されているものを使用してもよく、また周知の方法で合成されたものを用いることができるが、抗菌剤としては、木綿金巾#2003に該化合物1質量%を均一に付着させた布を用いJIS L 1902「繊維製品の抗菌性試験法」に準じた方法で抗菌性試験を行い阻止帯が見られる化合物が好ましい。
【0023】
本発明の(b)成分としては、一般式(b1)〜(b3)で表される化合物から選ばれる1種以上が好ましい。
【0024】
【化1】

【0025】
〔式中、R1bは炭素数5〜19のアルキル基又はアルケニル基であり、R2b、R3bは炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。Xは−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−又は
【0026】
【化2】

【0027】
である。R4bは炭素数1〜3のアルキレン基であり、R5bは炭素数1〜6のアルキレン基又は−(O−R7bt−である。ここでR7bはエチレン基又はプロピレン基であり、tは1〜10の数である。R6bは炭素数6〜19のアルキル基又はアルケニル基である。sは0又は1である。Y-は陰イオン基、好ましくはハロゲンイオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸イオン又は脂肪酸イオンである。但し、R1bとR5bの炭素数の合計は6〜22である。また、R5bが−(O−R7bt−の場合、R1bの炭素数は6〜19である。〕
【0028】
【化3】

【0029】
〔式中、R8b〜R11bの中で1つ又は2つは炭素数8〜22のアルキル基であり、それ以外は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、好ましくはメチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基である。Y-は陰イオン基、好ましくはハロゲンイオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸イオン又は脂肪酸イオンである。〕
【0030】
一般式(b1)において、Xがパラフェニレン基(−C64−)でs=1の場合、R1bは好ましくは炭素数5〜16、更に好ましくは炭素数6〜13、最も好ましくは炭素数7〜10のアルキル基であり、R5bは好ましくは−(O−R7bt−基であり、R7bは好ましくはエチレン基であり、tは好ましくは1〜5の数であり、R2b及びR3bは好ましくはメチル基又はヒドロキシエチル基であり、R4bは好ましくはメチレン基である。また、一般式(b1)において、s=0の場合、あるいはXが−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−でs=1の場合、R1bは好ましくは炭素数7〜18、更に好ましくは炭素数9〜17、最も好ましくは炭素数11〜16のアルキル基であり、R5bは好ましくはメチレン基であり、R2b及びR3bは好ましくはメチル基又はヒドロキシエチル基であり、R4bは好ましくはメチレン基である。
【0031】
一般式(b2)において、R6bは好ましくは炭素数8〜18、更に好ましくは炭素数11〜17のアルキル基である。
【0032】
本発明では、一般式(b3)の化合物が殺菌効果又は柔軟効果と洗浄力の向上効果の点で好ましい。殺菌効果の観点からは、一般式(b3)において、好ましくはR8b〜R11bのうち1つが炭素数8〜22、更に8〜18、より更に8〜14のアルキル基であり、残りがメチル基又はヒドロキシエチル基である化合物が好ましい。
【0033】
また、本発明では、一般式(b3)の化合物と、一般式(b1)及び一般式(b2)の少なくとも1つの化合物とを併用するもできる。その場合の質量比は〔一般式(b3)の化合物〕/〔一般式(b1)の化合物+一般式(b2)の化合物〕=1/10〜10/1、特に1/5〜5/1が好ましい。
【0034】
(b)成分が主として柔軟基剤として用いられる場合、(b)成分としては、分子中に炭素数11〜22の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基(以下、長鎖結合基という)を有する第3級アミン化合物、更に該第3級アミン化合物であって、少なくとも1個のエステル基を有しているもの、更にこれらの酸塩(無機酸又は炭素数1〜6の有機酸の塩)を用いることができる。無機酸の塩としては塩酸塩、硝酸塩、燐酸塩、硫酸塩等を挙げることができ、炭素数1〜6の有機酸の塩としては、酢酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩等を挙げることができる。更に、長鎖結合基以外の結合基としてはメチル基を有することが好ましい。
【0035】
第3級アミン化合物の長鎖結合基を構成する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基部分は、ステアリン酸、パルミチン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和高級脂肪酸のほか、牛脂、豚脂、パーム油、パーム核油、オリーブ油等の天然油脂を分解、精製して得られる脂肪酸から由来するものである。これらの中でも特に、オレイン酸、ステアリン酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、硬化パーム核油脂肪酸が好適である。なお、不飽和高級脂肪酸としては、立体異性体がシス体又はトランス体であっても、両者の混合物であってもよいが、特にシス体/トランス体の比率が25/75〜100/0(質量比)であることが好ましい。
【0036】
第3級アミン化合物の長鎖結合基がエーテル結合を含む場合には、牛脂、豚脂、パーム油、オリーブ油を還元して得られるアルコール由来のほか、それらからゲルベ反応によって得られる合成アルコールも使用できる。
【0037】
また、第3級アミン化合物の4級化物を柔軟基剤として用いることができる。4級化物は、メチルクロライド等の炭素数が1〜4のアルキルハライド又は炭素数が2〜6のジアルキルサルフェートを用いて4級化したものを用いることができる。4級塩型の化合物としては、柔軟効果の観点からは、一般式(b3)において、好ましくはR8b〜R11bのうち2つが炭素数8〜22、更に8〜18、より更に8〜14のアルキル基であり、残りがメチル基又はヒドロキシエチル基である化合物が好ましい。
【0038】
(b)成分の配合量は、(a)成分及び(c)成分との組み合わせにより、洗浄力を損なうことなく抗菌性や柔軟性を付与するために、本発明の衣料用洗浄剤組成物中、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1.5〜15質量%、更に好ましくは2〜10質量%である。
【0039】
<(c)成分>
本発明の衣料用洗浄剤組成物は、(c)成分として陰イオン界面活性剤を含有する。陰イオン界面活性剤は、その一部が陽イオン界面活性剤と結合し、より効率的に繊維上に陽イオン界面活性剤が吸着するため、柔軟効果や抗菌効果が高まる。
【0040】
陰イオン界面活性剤としては、例えば下記(c1)〜(c5)が使用できるが、洗浄性能、安定性、溶解性の点で、(c1)、(c2)、(c4)が好ましく、更に(c1)を含有することがより好ましい。
【0041】
(c1)平均炭素数10〜20のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩
(c2)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1〜5であり、オキシアルキレン基としてエチレンオキシ基を含み、平均付加モル数0.2〜3モルの範囲でオキシプロピレン基を含んでいてもよい、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩
(c3)平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩
(c4)平均炭素数8〜20の脂肪酸塩
(c5)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1〜5であり、オキシアルキレン基としてエチレンオキシ基を含み、平均付加モル数0.2〜3モルの範囲でオキシプロピレン基を含んでいてもよい、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩
【0042】
(c)成分を構成する塩はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アルカノールアミン塩、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などを挙げることができるが、特に安定性の観点からアルカノールアミン塩であることが好ましい。陰イオン界面活性剤は、組成物の製造段階では酸型で添加して、混合物中でアルカリにより中和してもよい。本発明では、(c)成分はアルカノールアミン塩か、酸型で添加して系中でアルカノールアミンで中和することが好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属系の対イオンは、変色防止剤や酵素安定化剤として亜硫酸ナトリウムなどの塩として配合する場合の他に(a)成分の製造工程を経て、或いは金属イオン封鎖剤やその他の陰イオン性化合物の塩として含有する可能性があるが、組成物中少量であることが好ましく、組成物中、5質量%以下、更に3質量%以下であることが好ましい。
【0043】
(c)成分の配合量は、本発明の衣料用洗浄剤組成物中、好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは2〜10質量%である。
【0044】
<衣料用洗浄剤組成物>
本発明の衣料用洗浄剤組成物では、洗浄性能、溶解性、安定性の観点から、(a)/〔(b)+(c)〕の質量比が1〜10、好ましくは1.2〜5である。また(c)/(b)の質量比が0.1〜10であり、下限値は好ましくは0.2以上、より好ましくは0.4以上であり、また上限値は好ましくは8以下である。
【0045】
(a)成分は、分子量として平均分子量を用いて組成物中の質量を求める。また、(b)成分は、対イオンを塩化物と仮定して分子量を用いて組成物中の質量を求める。(c)成分は酸型と仮定して分子量を用いて組成物中の質量を求める。また、(b)成分のうち、第3級アミンは組成物中の形態(酸塩かどうか)にかかわらず、第3級アミンとしての分子量を用いて組成物中の質量を求める。
【0046】
本発明は(a)成分を主界面活性剤とする衣料用洗浄剤組成物である。従って組成物中の全界面活性剤中(a)成分の割合は50質量%以上、更に70質量%以上であることが好ましい。また、(b)成分及び(c)成分を加えた合計、すなわち(a)成分、(b)成分及び(c)成分の含有量の合計が全界面活性剤中の好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上を占めることであり、最も好ましくは実質的に(a)成分、(b)成分及び(c)成分により全界面活性剤が構成されていることである。その他の界面活性剤については以下(d)成分で説明する。
【0047】
<(d)成分>
本発明の衣料用洗浄剤組成物は、(d)成分として、(a)成分、(b)成分及び(c)成分以外の界面活性剤を含有することができる。
【0048】
(d)成分としては、下記の(d1)及び(d2)が挙げられる。
(d1)(a)成分に該当しない非イオン界面活性剤。
例えば、下記(d1−1)及び(d1−2)が挙げられる。
(d1−1)次の一般式で表される多糖型界面活性剤。
1d−(OR2dxy
〔式中、R1dは直鎖又は分岐鎖の炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基、R1dは炭素数2〜4のアルキレン基、Gは炭素数5又は6の還元糖に由来する残基、xは平均値0〜6の数、yは平均値1〜10の数を示す。〕
(d1−2)脂肪酸アルカノールアミド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド。
(d2)両性界面活性剤
例えば、炭素数10〜18のアルキル基を有するスルホベタイン又はカルボベタインを挙げることができる。
【0049】
(d)成分の割合は、全界面活性剤中の好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0050】
なお、本発明の衣料用洗浄剤組成物では、下記一般式(d’)で示される化合物〔以下、化合物(d’)分という〕の割合が全界面活性剤中に10質量%以下、更に5質量%以下であることが、(b)成分の効果を十分に発揮させる点から好ましい。(d’)で示される化合物は、(b)成分の陽イオン界面活性剤をミセル内に取り込んでしまい放出しなくなるものがある。更には、エチレンオキシ基の付加モル数が5以下の非イオン界面活性剤は、水に対する溶解度が低いことから、それらもまた繊維に吸着しようとするため、(b)成分の陽イオン界面活性剤との間に、繊維への吸着の競合が生じる。これらの影響により、(b)成分の繊維への十分な吸着が損なわれることになる。
1d−O−(C24O)p1−H (d’)
〔式中、R1dは炭素数8〜22の鎖式炭化水素基であって、p1は0〜10の整数である。〕
【0051】
本発明の衣料用洗浄剤組成物は、(a)〜(d)成分以外に、一般に衣料用洗浄剤に使用されているキレート剤、アルカリ剤、酵素、増量剤(粉末組成物の場合の硫酸ナトリウム等)、香料、洗浄補助剤などを含有することが好ましい。
【0052】
<(e)成分>
本発明の衣料用洗浄剤組成物はキレート剤を含有することができるが、分子量が1000以下のキレート剤〔以下、(e)成分という〕の含有量が少ないことが好ましい。(e)成分のキレート剤は、例えば、
ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩、
ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸又はこれらの塩、
アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属又は低級アミン塩等が挙げられる。本発明では後述の(f)成分として挙げたアルカノールアミンを塩とすることが好ましく、酸で配合し系中でアルカリ剤で中和した塩であってもよい。
【0053】
(e)成分の組成物中の配合割合は、酸型とみなした場合に好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。なお(e)成分は任意成分であるが、酢酸、グリコール酸又は乳酸などの有機酸を(a)成分のアルキレンオキシドの付加反応の際に用いた塩基触媒の中和剤として用いることが一般に行われており、キレート剤を中和剤として用いた場合に(a)成分に混じって本発明の衣料用洗浄剤組成中に0.05質量%以上含有することがある。
【0054】
<(f)アルカリ剤>
本発明の衣料用洗浄剤組成物には、アルカリ剤〔以下、(f)成分という〕を配合することが好ましい。アルカリ剤は、アルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩などの他に、液体洗浄剤では一般的な、炭素数2〜4のアルカノール基を1〜3つ有するアルカノールアミンをあげることができる。このうちアルカノール基はヒドロキシエチル基であるものが好ましい。アルカノール基以外は水素原子であるが、炭素数1〜5のアルキル基、特にはメチル基であってもアルカリ剤として使用することができる。アルカノールアミンとしては、2−アミノエタノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン混合物(モノ、ジ、トリの混合物)等のアルカノールアミン類が挙げられる。本発明では、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンが好ましい。
【0055】
(f)成分は後述するpH調整剤として用いることができる。また前記した(c)成分の対塩として配合してもよい。
【0056】
本発明の組成物が液体洗浄剤組成物の場合は、(f)成分を、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%含有する。なかでも、(f)成分としてアルカノールアミンを、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%含有する。なおアルカノールアミンは、(c)成分の塩などの対イオンとして配合することもでき、それらの量も(f)成分として算入する。
【0057】
<その他の成分>
更に本発明の衣料用洗浄剤組成物には、次の(i)〜(xiii)に示す成分を本発明の効果を損なわない程度で配合することができる。
(i)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、重量平均分子量5000以上のポリエチレングリコール、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び特開昭59−62614号公報の請求項1〜21(1頁3欄5行〜3頁4欄14行)記載のポリマーなどの再汚染防止剤及び分散剤
(ii)ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤
(iii)過酸化水素、過炭酸ナトリウム又は過硼酸ナトリウム等の漂白剤
(iv)テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6−316700号の一般式(I−2)〜(I−7)で表される漂白活性化剤等の漂白活性化剤
(v)セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素
(vi)ホウ素化合物、カルシウムイオン源(カルシウムイオン供給化合物)、ビヒドロキシ化合物、蟻酸等の酵素安定化剤
(vii)蛍光染料、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料
(viii)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤
(ix)パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸塩(防腐剤としての効果もある)などの可溶化剤
(x)平均分子量約200のポリエチレングリコール、平均分子量約400のポリエチレングリコール、平均分子量約2000のポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール系ゲル化防止重合体
(xi)オクタン、デカン、ドデカン、トリデカンなどのパラフィン類、デセン、ドデセンなどのオレフィン類、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン化アルキル類、D−リモネンなどのテルペン類などの水非混和性有機溶剤。
(xii)ゼオライトや結晶性層状シリケートなどの金属イオン交換剤
(xiii)その他、色素、香料、抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤
【0058】
以下に本発明の衣料用洗浄剤組成物中、前記任意成分を配合する場合の指標としての濃度を示すが、洗浄剤組成物の形態によって選定される。また本効果を損なわない程度に適宜調整され、配合に適さない場合は除外される。(i)の再汚染防止剤及び分散剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(ii)の色移り防止剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(iii)の漂白剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(vi)の漂白活性化剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(v)の酵素の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vi)の酵素安定化剤の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vii)の蛍光染料の含有量は0.001〜1質量%が好ましい。(viii)の酸化防止剤の含有量は0.01〜2質量%が好ましい。(ix)の可溶化剤は0.1〜2質量%が好ましい。(x)のポリアルキレングリコール系ゲル化防止重合体は0.01〜2%が好ましい。(xi)の水非混和性有機溶剤は0.001〜2質量%が好ましい。(xii)及び(xiii)のその他の成分は例えば公知の濃度で配合することができる。
【0059】
なおアルカリ土類金属塩又はアルカリ土類金属イオンは、繊維の汚れに潜む脂肪酸とコンプレックスを作るため、本発明の衣料用洗浄剤組成物に含有する全界面活性剤100質量部に対して、アルカリ土類金属に換算して、5質量部以下が好ましく、更には1質量部以下が好ましく、特には組成物中に実質的に配合しないことが好ましい。
【0060】
本発明の衣料用洗浄剤組成物は、本発明の衣料用洗浄剤組成物を、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計濃度が0.5g/Lとなるようにイオン交換水にて希釈した希釈物のpHが、好ましくは6〜10、より好ましくは7〜9.5である。このpHは、JIS K3362:1998の項目8.3に従って、温度20℃で測定する。また、水性の液体洗浄剤組成物を調整する場合のpHは、好ましくは6〜11、より好ましくは8〜10である。このpHは、JIS K3362:1998の項目8.3に従って、温度20℃で測定する。
【0061】
本発明の衣料用洗浄剤組成物は、後述の洗濯方法のところで詳述するが、洗浄液の水温が40℃以下、下限値としては2℃以上、特には5〜30℃の洗浄に用いることに適した組成物であり、この温度において洗浄力及び抗菌性又は柔軟性に関して優れた効果を発揮する。
【0062】
本発明の衣料用洗浄剤組成物の形態は、液体状、粉末状ないし粒状、タブレット状、シート状などが挙げられる。特に液体洗浄剤組成物が好ましい。
【0063】
以下、本発明が衣料用の液体洗浄剤組成物の場合の成分について説明する。
<(g)成分>
本発明の衣料用洗浄剤組成物を液体洗浄剤組成物として用いる場合は、(g)成分として、水を含有する。水は組成物中に5〜80質量%、更には、10〜70質量%含有する。界面活性剤濃度が濃縮系の場合、例えば(a)成分、(b)成分及び(c)成分の含有量の合計が組成物中40質量%以上の場合は、水は30質量%以下であることが好ましい。
【0064】
<(h)成分>
本発明の衣料用洗浄剤組成物を液体洗浄剤組成物として用いる場合は、安定性、溶解性向上の点で、(h)水混和性有機溶剤を含有することが好ましい。本発明でいう水混和性有機溶剤とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解するもの、すなわち、溶解の程度が50g/L以上である溶剤を指す。
【0065】
(h)成分としては、洗浄性能、安定性、溶解性の点で、水酸基及び/又はエーテル基を有する水混和性有機溶剤が好ましい。
【0066】
水混和性有機溶剤としては、(h1)エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルカノール類、(h2)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどの炭素数2〜6のアルキレングリコール類やグリセリン、(h3)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール又は重量平均分子量400〜4000のポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールなどの炭素数2〜4のアルキレングリコール単位からなるポリアルキレングリコール類、(h4)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、又は1−エトキシ−2−プロパノールなどの炭素数2〜4のアルキレングリコール単位の(ポリ)アルキレングリコールと炭素数1〜5のアルカノールからなる(ポリ)アルキレングリコール(モノ又はジ)アルキルエーテル、(h5)1−メチルグリセリンエーテル、2−メチルグリセリンエーテル、1,3−ジメチルグリセリンエーテル、1−エチルグリセリンエーテル、1,3−ジエチルグリセリンエーテル、トリエチルグリセリンエーテル、1−ペンチルグリセリルエーテル、2−ペンチルグリセリルエーテル、1−オクチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテルなどの炭素数1〜8のアルキルを有するアルキルグリセリルエーテル類、(h6)2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の炭素数2〜3のアルキレングリコール単位を有する(ポリ)アルキレングリコールの芳香族エーテル類、が挙げられる。
【0067】
(h)成分は、組成物の粘度調整剤、ゲル化抑制剤として有効であり、上記の(h1)〜(h6)の分類から選ばれる1種以上を使用する。上記の(h1)アルカノール類、(h2)グリコール類、(h4)アルキルエーテル類、及び(h6)芳香族エーテル類から選ばれる溶剤を用いることが好ましく、より具体的にはエタノール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル及びトリエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる溶剤を1種以上、特には2種以上を併用することで効果的に組成物の粘度調整、ゲル化抑制を達成できることから更に好ましい。本発明では、特にプロピレングリコール及び/又はジエチレングリコールモノブチルエーテルを好ましい例としてあげることができる。
(h)成分の含有量は、安定性、溶解性の点から、組成物中、1〜40質量%であり、2〜35質量%が好ましい。界面活性剤濃度が濃縮系ではない場合は、10質量%未満であってもよい。
【0068】
本発明の衣料用の液体洗浄剤組成物の20℃における粘度は、取り扱いの容易さの点で10〜500mPa・sが好ましく、50〜400mPa・sがより好ましく、100〜300mPa・sが更に好ましい。(h)成分や可溶化剤によりこのような範囲になるように調整することが好ましい。
【0069】
本発明において粘度はB型粘度計により測定する。ローターは粘度に合ったものを選択する。回転数60r/minで回転し、回転開始から60秒後の粘度を液体洗浄剤組成物の粘度とする。
【0070】
<洗濯方法>
本発明の衣料用洗浄剤組成物は、該組成物と水とを含有する水性洗浄液を用いた洗濯方法に用いることができる。
【0071】
水性洗浄液は、(a)成分と(b)成分と(c)成分の合計濃度が、100〜400mg/L、更に150〜350mg/Lであることが好ましい。この水性洗浄液は、本発明の衣料用洗浄剤組成物を水道水などで希釈することで得ることができる。本発明の洗剤組成物を用いる場合の水性洗浄液の温度は、非イオン界面活性剤の親水性と陽イオン界面活性剤及び陰イオン界面活性剤との組み合わせによる効果を得るために40℃以下であり、更には30℃以下であり、特には25℃以下である、下限値は2℃以上、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上である。本発明の非イオン界面活性剤は曇天が高いことから、高い温度での洗浄の可能性が考えられるが、温度が高まると非イオン界面活性剤の親水性が低下するため、陽イオン界面活性剤及び陰イオン界面活性剤とのバランスを崩してしまう。本発明で規定する非イオン界面活性剤は、陽イオン界面活性剤、そして陰イオン界面活性剤を併用することで、該温度で十分な洗浄力を発揮することができ、更に陽イオン界面活性剤の繊維への付着性の向上との両立を図ることができる。
【0072】
水性洗浄液中、(a)成分、(b)成分及び(c)成分との質量比の好ましい範囲は、前記本発明の衣料用洗浄剤組成物と同じである。
【0073】
また、水性洗浄液中の(e)成分の分子量1000以下のキレート剤の濃度は、好ましくは30mg/L以下、より好ましくは15mg/L以下、更に好ましくは10mg/L以下である。
【0074】
また、水性洗浄液のpHは、好ましくは6〜10、より好ましくは7〜9.5である。このpHは、前記したように洗浄剤組成物、更には(a)成分、(b)成分及び(c)成分を合計で0.5g/Lの濃度でイオン交換水に溶解させた時の20℃での数値であるが、好ましくは洗濯液の温度が40℃以下の使用温度でのpHであり、好ましくは5℃〜30℃範囲内で設定される使用温度の洗濯液のpHである。測定方法は前記と同じである。
【0075】
本発明の衣料用洗浄剤組成物から調製した水性洗浄液を用いた洗濯方法では、浴比は好ましくは3〜40である。ここで浴比とは、水性洗浄液の質量を衣類の質量で割った値を意味する。本発明ではドラム式洗濯機のように、低浴比の洗濯機に対しても優れた効果が得られる。具体的には浴比が3〜12、特には3〜8であっても、優れた濯ぎ性、すなわち被洗濯物からの界面活性剤の除去性を発揮する。本発明の衣料用洗浄剤組成物から調製した水性洗浄液を用いた洗濯方法は、従来の限界と考えられた濯ぎ性を超えるものである。
【0076】
洗濯方法としては、手洗いによる方法、市販の洗濯機を用いる方法があり、いずれの方法においても、濯ぎ工程の回数を低減する効果、或いは少ない濯ぎ水でも優れた濯ぎ性を得ることができる。本発明の洗濯方法に用いる洗濯機としては、攪拌羽根に注水口と排水口とを有するだけの簡易洗濯機、脱水槽が分離したいわゆる二槽式洗濯機、全自動式洗濯機(ドラム式洗濯機を含む)を挙げることができる。洗濯機によっては、電気乾燥工程を含むものであってもよい。
【0077】
本発明の衣料用洗浄剤組成物から調製した水性洗浄液を用いた洗濯方法は、次の工程(I)〜(IV)を含むことができる。
洗浄工程(I):洗濯方法の中心となる工程。繊維製品を含む水性洗浄液或いは水性洗浄液を含浸させた繊維製品に物理的な応力、例えば攪拌や衝撃などを繊維製品に与えることにより洗浄する工程。繊維製品の種類や汚れの度合いにより攪拌時間や洗浄時間を変えてもよい。なお物理的な応力をかける前に、繊維製品に水性洗浄液を含浸させ、静置状態で放置すること、いわゆる“漬け置き”を行ってもよい。なお、本発明の衣料用洗浄剤組成物を用いる場合、該組成物は、被洗濯物を入れる前に先に水に溶かしてもよく、衣料用液体洗浄剤組成物の一部を繊維製品の汚れの多い部分に塗布などしてもよい。
排水工程(II):水性洗浄液を排水する。排水後又は排出途中で、脱水装置による遠心力によって水性洗浄液を強制排出してもよい。
濯ぎ工程(III):新たな水を投入し攪拌などの物理的応力をかけるなどして繊維内部に残った洗浄成分を新しい水に移動させることで、繊維製品内から洗浄基材を除去する工程。濯ぎ工程は、新しい水を追加しながらオーバーフローした水を除去していく工程(以下、流水濯ぎという場合もある)であってもよい。あるいは新しい水を追加することなく、一定の水を給水した後、それを洗濯槽内或いはポンプ等により巡回させてもよい。給水の方法としては、単純に水道口から直接洗濯槽に給水(あるいは水の巡回)してもよく、シャワー状にして、洗濯槽内の被洗濯物全体に注いでもよい。また脱水装置による緩やか又は断続的な脱水を行いながら給水(あるいは水の巡回)を行ってもよい。濯ぎ処理後、洗濯槽及び繊維製品から水は排水される。排水後に工程(III)を繰り返してもよく、工程(III)と(IV)を繰り返してもよい。
脱水工程(IV):遠心力或いは、圧縮や絞りによる繊維製品からの水の除去を行う工程。通常の洗濯工程では遠心力を用いた脱水装置により水が除去される。
【0078】
本発明は、工程(III)で柔軟剤を添加することを排除するものではないが、洗浄工程で陽イオン界面活性剤による十分な柔軟効果や殺菌効果を得ることができる。
【実施例】
【0079】
表1、2に示す各成分を混合して、実施例及び比較例の組成物を得た。液体洗浄剤組成物は、モノエタノールアミンを用いてpH(20℃)を8に調整した。表中では“+”として表示している。得られた各組成物を用い、下記の各評価を行った。結果を表1、2に示す。また、表中の成分は以下のものである。なお、表中では、(a’−1)、(a’−2)も(a)成分として質量比を示した。
【0080】
(a−1):C1225O(C24O)20H〔一般式(1)中のR1Oが炭素数12の直鎖1級アルキル基、mが20の非イオン界面活性剤、エチレンオキシ基の付加モル数が0〜10の整数の化合物は4.4質量%である。〕
(a−2):C1225O(C24O)30H〔一般式(1)中のR1Oが炭素数12の直鎖1級アルキル基、mが30の非イオン界面活性剤、エチレンオキシ基の付加モル数が0〜10の整数の化合物は1.1質量%である。〕
(a−3):C1225O(C24O)40H〔一般式(1)中のR1Oが炭素数12の直鎖1級アルキル基、mが40の非イオン界面活性剤、エチレンオキシ基の付加モル数が0〜10の整数の化合物は0.43質量%である。〕
(a’−1):C1225O(C24O)10H〔一般式(1)中のR1Oが炭素数12の直鎖1級アルキル基、mが10の非イオン界面活性剤、エチレンオキシ基の付加モル数が0〜10の整数の化合物は42質量%である。〕
(a’−2):C1225O(C24O)15H〔一般式(1)中のR1Oが炭素数12の直鎖1級アルキル基、mが15の非イオン界面活性剤、エチレンオキシ基の付加モル数が0〜10の整数の化合物は14質量%である。〕
【0081】
(b−1):C817+(CH33・Cl-〔和光純薬工業(株)製、試薬、一般式(b3)中のR8bが炭素数8の直鎖1級アルキル基、R9b、R10b、R11bが、それぞれメチル基、Y-が塩化物イオンである陽イオン界面活性剤〕
(b−2):C1225+(CH33・Cl-〔和光純薬工業(株)製、試薬、一般式(b3)中のR8bが炭素数12の直鎖1級アルキル基、R9b、R10b、R11bが、それぞれメチル基、Y-が塩化物イオンである陽イオン界面活性剤〕
(b−3):(R8b)(R9b)N+(CH32・Cl-〔花王株式会社製コータミンD86P、一般式(b3)中のR8b、R9bが、それぞれ牛脂組成アルキル基(炭素数14〜18のアルキル基と炭素数16〜18のアルケニル基の混合)、R10b、R11bが、それぞれメチル基、Y-が塩化物イオンである陽イオン界面活性剤〕
【0082】
(c−1):ドデシル硫酸エステルナトリウム〔和光純薬(株)製、試薬〕(なお表中の配合量はドデシル硫酸としたときの濃度である。)
(c−2):ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(なお表中の配合量はドデシルベンゼンスルホン酸としたときの濃度である。)
(f−1):炭酸ナトリウム〔和光純薬(株)製、試薬〕
(f−2):モノエタノールアミン
(g−1):イオン交換水
(x−1):ゼオライト(株)東ソー製、平均粒径3μmの4A型ゼオライト
(x−2):硫酸ナトリウム
【0083】
<洗浄試験>
(1)モデル皮脂汚れの調製
皮脂成分混合物(オレイン酸/トリオレイン/スクワレン(いずれも和光純薬工業(株)製)=45/40/15(質量比)10gに色素(オイルオレンジSS;東京化成工業(株)製)を0.01g添加して調製した。
【0084】
(2)モデル皮脂汚染布の調製
6cm×6cmに裁断した木綿金布#2023布1枚につきモデル皮脂汚れを80mg滴下し、60℃で10分加熱後、室温に戻し汚染布とした。
【0085】
(3)洗浄力の試験方法
温度20℃、4°DH硬水(カルシウム/マグネシウム=8/2(モル比))1Lに表1又は表2に示す組成の衣料用洗浄剤組成物1gを添加し、上記方法により調製した汚染布5枚を投入した。ターゴトメーターを用い、回転数80rpmで10分間撹拌洗浄した。洗濯液の温度は20℃であり、pHは7.5〜9.5の範囲内である。
【0086】
(4)洗浄率の算出
未処理布及び洗浄前汚染布、洗浄後汚染布の反射率(460nm)を測色色差計(ND−300A;日本電色工業(株)製)にて測定し、次式によって洗浄率D(%)を算出した。尚洗浄率は汚染布5枚の平均値とした。
D(%)=[(L2−L1)/(L0−L1)]×100
(ここで、L0:未処理布の反射率、L1:洗浄前汚染布の反射率、L2:洗浄後汚染布の反射率を示す。)
洗浄率が75%以上の場合を◎、70%以上〜75%未満の場合を○、60%以上〜70%未満を△、60%未満を×として評価した。
【0087】
<抗菌性試験>
(1)試験布の調製
温度20℃、4°DH硬水(カルシウム/マグネシウム=8/2(モル比))1Lに表1に示す組成の衣料用洗浄剤組成物1gと、6cm×6cmに裁断した木綿金布#2023布5枚をターゴトメーターに入れ、回転数80rpmで10分間撹拌した後布を取り出し、水道水3Lですすいだ後、室温で1晩乾燥させた物を試験布とした。
【0088】
(2)抗菌性試験
上記で処理した布を1辺2cmの正方形に切断してバイアル瓶に入れて減菌した。試験菌には黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を用い、この菌液を滅菌バイアル瓶中の処理布に接種して37℃で18時間静置培養した。培養後のバイアル瓶に0.7%ポリソルベート−80、0.1%大豆レシチンを含む生理食塩水20mlを加えて振とうし、生菌を分散させた液を系列希釈して変法GAM寒天培地(ニッスイ社製)に塗布し、37℃で48時間培養後、菌数を測定した。未処理の布で同様の試験を行った場合と菌数を比較し、その減菌数を対数で表示した。対数で表した減菌数が2以上の場合有効な抗菌性を示す。減菌数が対数で4以上の場合を◎、2以上〜4未満の場合を○、2未満の場合を×として評価した。
【0089】
<柔軟性試験>
評価衣料として、新品の薄手のタオル(武井タオル製、綿100%、#220)、新品の厚手タオル((株)ユニクロ製、綿100%)、及び質量調整布として肌着((株)グンゼ製、丸首、綿100%、白)を市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製アタック)を用いて全自動洗濯機(松下製NA−F702P)で5回繰り返して洗濯した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水(20℃)47L使用)。
【0090】
これらのタオル2種類を各3枚用意し、これに質量調整布として上記で処理した肌着を加え、合計3.5kgの衣料をドラム型洗濯乾燥機(松下製NA―VR1100)を用いて、標準使用条件により、洗濯を行った。尚、標準条件では機械乾燥は行われない。表2の衣料用洗浄剤組成物22.5gを、それぞれドラム型洗濯乾燥機の洗剤自動投入口に入れて使用した。洗濯終了後に、評価用タオルを取り出し、物干し竿に掛けて、自然乾燥させ、柔軟性を評価した。
【0091】
・柔軟性評価法
5人のパネラーが、上記方法で処理された2種×3枚(すなわち6枚)すべてのタオルに対して、柔軟性の評価を行った。柔軟性を評価するに際しては、下記に示す柔軟性レベル1、2、3、4、5を柔軟性の等級の尺度として与え、5人の熟練パネラーにより採点をしてもらい、平均値を柔軟レベルとして取り扱った。
【0092】
なお、柔軟性の等級5は、前記全自動型洗濯機を用いて、前記と同じ3.5kg衣料(5回洗浄を行った後のタオル2種と肌着)を投入し、市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製アタック)を用いて洗浄した後、市販の柔軟剤(花王(株)製ハミング1/3)で柔軟処理を行ない、吊り干し乾燥処理を行なった時の状態とした。これは柔軟性効果が最も高い状態である。また柔軟性の等級1は、ごわつき感が得られ易い状況として、前記と同じドラム型洗濯乾燥機を用い、同様に3.5kg衣料(5回洗浄を行った後のタオル2種と肌着)を投入し、市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製アタック)を用いて洗浄した後、柔軟剤を使用せずに、吊り干し乾燥を行なった時の状態とする。これは柔軟性効果が最も低い状態である。
【0093】
柔軟性の等級
5:柔軟性がかなり良い(パイルの立ち上げが向上し、弾力がありふんわりしている)。
4:柔軟性が良い。
3:柔軟性がやや良い。
2:柔軟性が悪い。
1:柔軟性が悪く、ごわついている(パイルが倒れてボリュームがない)。
【0094】
柔軟性の平均等級が4以上の場合を◎、3以上4未満の場合を○、2以上3未満の場合を△、2未満の場合を×として評価した。表中の平均等級が3以上であれば、柔軟性がかなり改善され、明らかにふんわりとした感触を認知できる。また、表中の平均等級0.5ポイントの差があれば、柔軟性の差がわかるレベルである。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有する衣料用洗浄剤組成物であって、(a)/〔(b)+(c)〕の質量比が1〜10であり、(c)/(b)〕の質量比が0.1〜10である、衣料用洗浄剤組成物。
(a)成分:下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤
1O−(C24O)mH (1)
〔式中、R1は炭素数8〜22の直鎖1級アルキル基であり、mは平均付加モル数であって、20≦m≦50の数である。〕
(b)成分:窒素原子に結合する基として、途中にエーテル結合、エステル結合もしくはアミド結合又はフェニレン環を有してもよい炭素数6〜22(但し、エーテル結合、エステル結合もしくはアミド結合又はフェニレン環の炭素数は除く)のアルキル基又はアルケニル基を1つ又は2つ有し、残りがヒドロキシ基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基である陽イオン界面活性剤、及び炭素数6〜22の炭化水素基が窒素原子に結合したピリジニウム型陽イオン界面活性剤から選ばれる陽イオン界面活性剤
(c)成分:陰イオン界面活性剤
【請求項2】
(a)成分が、全界面活性剤中の50質量%以上を占める主界面活性剤である請求項1記載の衣料用洗浄剤組成物。
【請求項3】
(a)成分を5〜50質量%、(b)成分を1〜20質量%及び(c)成分を0.5〜20質量%含有する請求項1又は2に記載の衣料用洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2011−195667(P2011−195667A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62492(P2010−62492)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】